邂逅遭遇? ふわもこ廃動物園
学園から依頼されたゴーストタウン浄化の手伝いを請け負った……まではよかったものの。
いや、色々と声は掛けたのだ。
なのだけれど……しかし同行を頼もうとした面子には皆、ことごとく用事が入っていると断られ。
こんなことで手を煩わせたくはなかったのだけれど、虹目・カイ(○月・f36455)は仕方なく。
「……いや、忙しいだろうにわざわざ申し訳ない」
「なに、気にするな。黄泉還り……ゴーストを退治することも我等書道使いのつとめだからな」
「君は本当に真面目だな……陽炎もごめんな」
墨枝・宗司郎に連絡し、彼の不滅の使者である陽炎も一緒に、ゴーストタウンへと向かうことに。
そんな申し訳なくもお願いしたそんな誘いにも、相変わらず律義で真面目な彼は時間の合間を縫って同行してくれることになり。
陽炎も張り切って、カイの声に答えるように羽耳をパタパタ。
「勿論一人でも遅れを取るわけないんだが、それでも流石に一人は骨が折れそうでさ」
そう冗談めかしたりもつつ、カイが宗司郎たちと向かうのは、今回発見されたゴーストタウン『ふわもこ廃動物園』。
因みに、行き先が動物園だからというわけとかではなく……今回はもう隠すことでもないので、耳と尻尾はそのまま。
最初は宗司郎も、以前からのそんな変化に瞳を瞬かせはしたが。
「あっでもないとは思うけど万が一にも触らないように頼むよ! くすぐったいからね!!」
「ふふ、承知した。もふもふするのは愛らしい陽炎の耳にだけにしよう」
「……相変わらず、陽炎には親ばか……いや、頼むよ」
特に彼自身気にするような性格でもなく、勿論以前と何ら変わらない。
そして向かう道中、そういえば気になっていたことを聞いてみる。
「あ、そう言えば聞き損ねてたんだけどさ。君って彼女とか嫁さんとかいるんだっけ? いや、このご時世、女性だとは限らないんだが……」
そんな問いに、宗司郎は一瞬きょとりとするも。
すぐに上品に笑って、こう返す。
「嫁がいるが、女性だな。相手は元々許婚であった幼馴染だ」
そう聞けば、カイはちょっぴりだけ遠慮するように視線を向けて。
「いや、いるならこういうの控えた方がいいのかなって思って」
そう紡ぐも、嫁は知人と会うことやゴーストタウンに赴くことを咎めるような狭量ではないし、勿論心配などないことは伝えてある、と。
そんな少し天然の惚気みたいなことを言う彼に、そっと肩を竦めてみせながらも。
「私ねー、残念ながら何もないのよ。相変わらず人付き合いが壊滅的に下手でさあ」
自分の現状も伝えつつ、でも思ってしまう。
(「……だから彼に甘えてるってのもあるんだろうなあ。友達と呼んでくれる人はいるにはいるけど、昔の……素の自分を晒け出すのは申し訳ないけど、嫌だ」)
……だから『私』は彼に――。
そんなふと急に言葉を切ったカイに、宗司郎は視線を向けて。
「? どうした?」
そう訊ねるも……次の瞬間。
「……って重たい!!!!!! 我ながら重たいな!! よくないわ!!」
……それで痛い目見ただろ自重しろ!! なんて。
ぶんぶん首を横に振りつつもシャウト!
「……?」
宗司郎は瞳をぱちり、首を傾けるも。
アッイエナンデモゴザイマセンノヨ、なんて気を取り直すカイに、こう真剣な表情で告げるのだった。
「事情はよく分からないが……私でよければ相談に乗るぞ」
「……どこまでも君は真面目だな」
それはともかく……行きましょ行きましょ、と。
心配気に自分を見つめる彼を促し、到着したゴーストタウンへといざ足を踏み入れる。
それから、詠唱銀を取り出して。
「……しかし浄化、ねえ。実は私、元を辿ればそこそこ名前と歴史のある家の血を引いてるらしいんだけど、分家も分家、末端も末端で普通に一般家庭だったのよね。身内にも能力者がいたとか、聞いたことないし」
だからそういうお家柄のヘリオンの皆さんがやるようなこと、やったことないんよなー、なんて。
そう言いつつも、ぱらり。
「こんなんでいいんか?」
残留思念に詠唱銀を撒きつつも、狐耳をぴこり。
「寧ろこういうのは、君のが上手くやれそうな気がするよね。と言うか実際やってたし」
「私は幼い頃から書道使いの組織に在り、黄泉還りを滅する活動をしてきたからな。それに……現れたようだ」
そんな他愛もない話とかしながらも、きりり表情を引き締める宗司郎の視線を追えば、もふもふな動物のゴーストの群れが。
とはいえ、あまりもふりたくないような見目であるし、数はいるものの大した敵ではないので。
「喰らえ、断罪の光槍を! わーあ、この口上も懐かしいー♪」
「滅せよ、黄泉還り!」
久々の共闘にはしゃぎつつ、宗司郎や陽炎と積極的に連携してコンビネーションもばっちり、さくさくと道中の敵を倒していって。
「実はほんの一時期バイトを妖狐にしてたんよね。この耳と尻尾はそれが原因かも」
「もふもふは正義、だと聞く。なので、良いのではないかと」
そう真剣に取り組みつつも、楽しくゴーストタウンを探索して。
「残るは最奥のフロアみか。此処に元凶がいるのだろうな」
「ボスもヤってしまいましょう!」
動物園の最奥、ふわもこふれあい広場へといざ足を踏み入れた瞬間。
「……!」
宗司郎目掛け、もふんっ! と突撃したのは、このゴーストタウンのボスらしき巨大な狐さんゴースト。
そしてすかさずもふもふ突撃を躱した彼をじいと見つめ、ぶんぶんと尻尾を振っている姿を見れば。
「は??」
カイの狐耳が、ピン。
同時に、何かがぷつんと切れた音が脳内に響いた刹那。
「――私の可愛い後輩を、邪な眼で見てんじゃねえよクソが!!!!!!」
『コ、コーン!?』
再び宗司郎へと飛びつこうとしたもふもふ女狐を全力でぼこぼこに滅します!!
ということで。
「ふふ、有難う。私の出る幕はなかったな」
「道中にあった武器なんかは、使えそうなものあったら君が持ってってくれたら」
「いいのか?」
「学園からもお礼は出るだろうけど、まあ私からのお礼代わりってことで。使わなそうなものはここで潰していっちゃうか」
ゴーストタウン浄化の依頼も無事に完了!
探索で見つけたものもさくっと分けたり潰したりもしたから。
あとは帰還するだけ……なのだけれど。
「ボスも倒したし、早々に引き上げ……ん? 箱?」
ふと見つけたのは、謎の宝箱……?
「キャリーケースくらいの大きさで、アンティークっぽい感じだな。うーん……蓋が壊れてるわけじゃなさそうだけど開かないな」
でもやはり、このまま置いて帰るのも何だから。
「学園に持って帰ろうか、っと……ちょっと重いな」
「大丈夫か? 私も手伝おう……、!」
「!?」
不意にぱかっと箱が開いて、瞳を見開いたカイは中にいた「彼」とぱちりと目が合う。
この瞬間が、今に至る原因になろうとは……宗司郎と顔を見合わせて首を傾けるこの時のカイは、まだ知らないのであった。
成功
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