煌めき甘やかチョコパーティー
人が行き交う街はいつもより心なしか賑やかで、そしてふわりと甘い空気が漂っている気がする。
だが、それもそのはず……何せ今日は、バレンタインなのだから。
冬真っ只中である2月に吹く風はさすがに冷たくは感じるけれど。
でも身を縮めるほどではないのは、ふたり並んで歩むこの地は冬でもそれなりに暖かい場所だから。
そして、バレンタインの喧騒から離れるかのように。
「今日は、誘いに乗ってくれてありがとう。こういった祝い事には疎いんだが、知らせを見た時にルカが好みそうだと思ってな」
そう告げつつもリグルド・ヴァンヘルガ(Re:・f36099)が足を踏み入れたのは、人の姿が少ない公園。
今日は、隣を共に歩く友人、ルカ・クルオーレ(Falce vestita di nero・f18732)をリグルドから初めて誘ったのだ。
……こういうイベントが好きそうだ、とそう思ったから。
それから、尻尾揺らしてそわり。
「……人気はあると落ち着かない」
そう続けるリグルドは、確かに人が沢山いるところは得意ではないのだけれど。
でも……今なんとなく落ち着かない気持ちなのは、人生初のチョコパーティに緊張と期待がいっぱいであることと。
そんなチョコパーティー、いわゆる自分のデートの誘いに応じてくれたルカときっと一緒だから。
そして今回ふたりで過ごす公園の東屋へと、リグルドと向かいながらも。
「人がいない方が気が楽だよねぇ……人が多い所はのんびりするには向かないから」
ルカもそう、こくりと頷き返せば。
リグルドは返ってきた言葉に、意外そうに耳をぴこり。
「ルカもそうなのか? 勝手に賑やかなのが好きだと思っていた」
でも意外だったけれど、自分と一緒で、あまり人がいない場所でのんびりしたいと聞けば、心の中で少しホッとする。
今日誘った場所は人が多い賑やかな場所ではないし。それにまたひとつ、ルカのことを知れたから。
そしてルカは吹き抜ける冬の風の冷たさを感じつつ、リグルドへと視線を向けて。
「寒くない? 大丈夫ならいいんだけど」
「俺は蒼炎を出せるからな、そうでなくても元々寒さには強い方だ。だからもしルカが寒いと思うなら、焚き火でも何でも用意出来るぞ」
そう紡ぐ彼にふわり笑み返しながらも、いつもよりもちょっとだけ気にしてしまう。
今回に関しては事前にデートだと、そう聞いているから。
でも甘いものが好きなかなりの甘党であるから、友人とのチョコパーティーは心躍るし。
お互いに色々と持ち寄ってふたりでのんびり過ごせることは、ルカも楽しみだから。
「ルカはどんなものを持ってきたんだ? 俺は、甘い果実や干し肉を取り敢えず用意してみたが」
「チョコのリキュールと宝石の形をしたチョコとか、あとは甘いものばかりでもと思ったから温かいお茶とチーズとか……あとは、グラスやお皿も持ってきたよ」
そう会話を交わしながらも、ゆったりと楽しく歩んでいく。
そしてリグルドは、そんな相手が持参したものを聞けば、その用意周到さに頭が上がらない思いで。
何処か恥ずかしさを覚えつつも後を着いていきながらも、成程、その手があったか……などと、彼の手にある籠を見てはそう思考したりする。
いや――何を用意すれば喜んで貰えるか、とそればかりを考えていて。
そこに意識を集中させた結果、緊張で気が回らずに、飲み物などのことは忘れていたから。
それから、公園の東屋に到着すれば。
お互いが持ち寄ったものをつまみつつ、のんびりとチョコパーティーを。
けれどその前に、リグルドはもうひとつ。
取り出してルカへと差し出すのは、キラキラとしたチョコ達。
イベントの為に叩き売りされていたチョコの中から、リグルドなりに友人の好みそうなものを選んで、プレゼントとして。
ルカはそんなチョコを嬉しそうに受け取って。
「有難う……困ったなあ、もったいなくて食べるのを迷いそうだよ」
自分の好きなキラキラ綺麗なチョコを選んでくれたことが嬉しくなる。
それから、それぞれ持ってきたものを並べて。
「こんな果実は見た事無いなあ」
「その実は、住処の近くで熟していたものだ」
「ひとつ食べてみてもいい? ……うん、チョコに合ってて美味しいね」
ルカはリグルドの持ち込んだものに興味深々、好奇心を擽られる見たことないものにわくわくしつつ早速口にしてみながらも。
「寒いから、リキュールやお茶で身体を温めてね」
自分はヤドリガミだからその辺りは気にしていないのだけれど、リグルドにはそう用意した体の温まるものを促したりして。
「俺は寒さには強い方だが、身体の芯から温まっていいな」
ルカの気遣いにゆうらり尻尾を揺らしながらも、ちょっと真剣に考えてみたりもするリグルド。
(「ワインでも持ってくれば良かったか……」)
いつも貰ってばかりのお返しがしたい、と思うものの、何だかんだペースを崩され気味に。
けれど、眼前のルカを見てみれば、こうも気が付く。
(「意外と肉が好みか? もっと用意してくれば良かったか」)
自分が用意した干し肉をちぎっては口に放り込んでいるその様子を見れば、結構気に入っているようだから。
それからルカは、並ぶチョコ達を改めてくるりと見回して。
「こっちのチョコはベリー系で、これがオレンジだって。味も香りも色々あるものだねえ」
「色々あるのだな、香りに味に……? 甘い、に甘いを重ねるのか……口の中が爆発しないか?」
未知の食べ物には過敏ゆえにかちょっぴり警戒気味ながらも、でもそろりと。
ひとつ食べてみたりしている相手の姿を、ルカは飲み物を口にしながらにこにこ。
じっと見つめながらも――ひょい、と。
「はい、これ食べてみて」
彼の口元へと差し出すのは、甘やかなひと粒。
そんな差し出されたチョコをぱくりと食べたリグルドも。
「む、……んまい。お返しだ」
摘まんだひと粒を差し出し返して、ルカの真似っこを。
ルカもそんなお返しのチョコを口にすれば、ふんわりほわほわ。
「……ふふ、美味しい」
リグルドと一緒に、のんびりゆったり満喫する。
楽しくて美味しくて穏やかな、甘いもの沢山のふたりの時間を。
成功
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