聖賢者の託宣~黒部ダム破壊作戦~
遥かな宇宙の果てか、それとも別の次元か。何処とも知れぬ異空間に、荘厳な声が響く。
集められた黒装束のデウスエクス達に、その「存在」は一方的に語りかけていた。
「よくぞ来た『螺心衆』そして『機巧忍カラクリエイター』よこれより汝には我より重要な使命を与えるケルベロスの強さはユーベルコードにあらず特務機関DIVIDEにもあらず全ては彼等を支えている民衆の支持によるものだ即ち地球人はひとつの群体と捉えるべきであるそう考えると彼等の最大の弱点即ち群体としての大動脈はインフラストラクチャである地球人は電力水力食糧等グラビティ・チェイン以外にも様々な資源を群体に循環させねば生存できぬ故に汝はこの動脈のひとつ『黒部ダム』を破壊せよこれは十二剣神たる我『聖賢者トリスメギストス』の命令である」
息も継がずに告げられた言葉に、デウスエクス達が返したのは「御意」の一言。
今ここに、新たな十二剣神による侵略の魔の手が、地球に迫ろうとしていた――。
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「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ケルベロスディバイドにて、未だ知られざる十二剣神『聖賢者トリスメギストス』の配下が、人類のライフラインに関わるインフラ施設を狙い、破壊活動を行おうとしています」
地球人のグラビティ・チェインを狙った侵略や虐殺とは異なり、これは今すぐに直接多数の人命が奪われるものではないが、破壊されたライフラインの復旧に人員が割かれてしまえば、その間決戦都市の運用人員は手薄となり、何よりこうしたインフラの修復は一朝一夕に行えるものではない。
「標的とされたのは『黒部ダム』。富山県立川町にある水力発電用の巨大ダムで、総貯水量は2億トンを誇ります」
ケルベロスディバイド世界では火力発電や水力発電を魔術で超強化しており、この黒部ダムから生み出される膨大な電力は日本のインフラを支える重要な一翼となっている。数々の苦難を経て険しい黒部峡谷に建設された、日本を代表するダムである。
「このダムがもし破壊されれば、決戦都市の運用や日本国民の生活に、深刻な影響が出ることは間違いありません」
決戦都市を裏から弱体化させつつ、人々から日常を長期にわたって奪いかねない、この悪質な作戦を見過ごす訳にはいかない。直ちに現地に急行し、デウスエクスを撃破して、聖賢者トリスメギストスの目論見を挫かなければ。
「黒部ダム及びその周辺の山岳地帯は観光地としても有名で、近辺にはアルペンルートを登る観光客に向けたレストハウスやテラス、遊覧船乗り場などの施設が整っています。まずはここに逗留して敵を待ち構えましょう」
現地ではご当地グルメとして知られる「黒部ダムカレー」をはじめ、おいしい料理や美しい景色を楽しむことができる。現地の人々もこちらがケルベロス(猟兵)だと知ればきっと歓迎してくれるだろう。十分に英気を養って戦いに備えるといい。
「実際に黒部ダムで働いている方から話を聞くこともできるかもしれませんし、その情報がデウスエクスを迎え撃つのに役立つこともあるでしょう」
なお、今回のデウスエクスの目的は黒部ダムそのものであり、人命を奪う意図はない。とはいえ巻き込まれる地球人の生命まで考慮するはずがないし、ことによっては避難を促しておくのも良いだろう。万が一にもダムを破壊されれば、決壊したダム湖の水量を含めて、深刻な被害が出ることは間違いない。
「ダム破壊のために送り込まれたデウスエクスの名は『螺心衆』。螺旋忍軍の中でも諜報を得意とする一派から、さらに破壊工作に特化した部隊のようです」
隠密活動に秀でるぶん直接的な戦闘は苦手なようで、搦め手や同僚との連携を巧みに使うが、それでも戦闘力はあまり高くない。とにかく1体も逃がさないよう素早く殲滅できるかがカギだと言えるだろう。彼らに工作を行わせる隙を与えてはならない。
「そして作戦指揮官の名は『機巧忍カラクリエイター』。こちらも螺旋忍軍に属するデウスエクスで、絡繰兵器の開発・改造を得意としています」
こちらも個人戦闘能力には乏しいようだが、それを補うために異空間に格納している自作の絡繰兵器を「口寄せ」して戦う。優秀な頭脳と|機械兵《ダモクレス》との共同開発によって作り出された新型兵器は対ケルベロス用としては勿論、施設の破壊にも大きな威力を発揮することは間違いなく、非常に危険なデウスエクスである。
「人々の生活を支えるダムを守り、デウスエクスの計画を阻止するため、どうか皆様の力をお貸しください」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ケルベロスディバイドの黒部ダムへと猟兵を送り出す。
これまでとは攻め方を変えてきたデウスエクス――新たに動きだした未知の十二剣神『聖賢者トリスメギストス』との戦いが幕を開ける。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはケルベロスディバイドにて、十二剣神『聖賢者トリスメギストス』の配下によるインフラ破壊作戦を阻止する依頼です。
1章は敵の標的となった「黒部ダム」に逗留します。
発電施設にして観光地でもある黒部ダムの近辺には、レストハウスやテラス等の観光施設も揃っており、住民もケルベロスと知れば歓迎してくれます。
現地のおいしいものを食べて観光したり、情報収集したり、避難を促したり、敵が来るまでの時間は自由に使ってくれて構いません。
2章はデウスエクス『螺心衆』との集団戦です。
破壊工作に特化した部隊なので直接戦闘力は高くありませんが、彼らに目的を達成されるとダム破壊による甚大な被害が発生するため、1体も逃さず迅速に殲滅することが重要になります。
3章は敵の指揮官である『機巧忍カラクリエイター』との決戦です。
こちらも個人戦闘力は高くないかわりに、自らが開発した兵器を口寄せして戦います。普通に戦ってもなかなか手ごわいですが、戦闘中にダムを破壊されないよう警戒する必要もあるでしょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 日常
『ご当地うまいもの広場』
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POW : どんどん出てくる料理を沢山食べる
SPD : 地元ならではの珍味に挑戦する
WIZ : 料理の作り方を教えてもらう
イラスト:del
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
サツキ・ウカガミ
レストハウスで黒部ダムカレーを待ちつつ、
リムからの依頼が纏められた【忍具『事忍の巻物』】を改めて確認。
インフラ破壊とは、非道い作戦だね。
カレーが来たら、どろんと巻物を消して、いただきます。
……ふふ、カレーが堰き止められてる!
美味しいカレーを楽しんだら、お仕事開始。
同じ忍びの目線で、ダムを見て回ろうかな。
[情報収集]で破壊工作に適した箇所を[見切り]チェック。
必要なら[目立たない]動きや[抜け道探し]、
[水上歩行]や[暗視]も駆使していくよ。
チェックしたポイントに人がいるなら、
[コミュ力]を活かして避難を促そう。
戦闘に巻き込むわけにはいかないもんね。
どんな手で来ても止めてみせるよ、螺心衆!
「インフラ破壊とは、非道い作戦だね」
黒部ダムを眼下に望むレストハウスにて、サツキ・ウカガミ(|忍夜皐曲者《しのびよるめいはくせもの》・f38892)はレストランの席で注文の品が来るのを待ちながら、グリモア猟兵からの依頼が纏められた【忍具『事忍の巻物』】を改めて確認していた。此度の仕事はこのダムを『聖賢者トリスメギストス』の配下から守ることだ。
「シノビだからね、お仕事を引き受けた以上、完遂するよ」
此方の世界にも螺旋忍軍なるデウスエクス忍者がいるらしいが、サツキも霊峰天舞アマツカグラ出身のエンドブレイカー忍者である。世界は違えども忍術を悪用する輩を許しておけないと、巻物を読んだ彼女の眼は静かに燃えていた。
「お待たせいたしました。ご注文の黒部ダムカレーです」
「あっ、待ってました!」
ほどなくして注文の品がやって来ると、サツキはどろんと巻物を消して「いただきます」と手を合わせる。これからの戦いに向けて英気を養うのも大事なこと。腹が減っては戦はできぬ、だ。折角のご当地メニューを味わわないのも勿体無い。
「……ふふ、カレーが堰き止められてる!」
ルーをダム湖に、ライスをダムの堰堤に、トッピングを遊覧船やダム周辺の景観に見立てた黒部ダムカレーは、このレストハウスの看板メニューだ。見た目の楽しさだけでなく、昭和から受け継ぎつつ改良を咥えてきたお味は、サツキの舌を十分に満足させるものだった。
「ごちそうさま! それじゃ、お仕事開始だね」
美味しいカレーを楽しんだところで、いよいよ本格的に活動を始めるサツキ。レストハウスを出てダムを見て回り、同じ忍びの目線から破壊工作に適した箇所をチェックする。もし自分ならどこから忍び込み、どこを攻めるだろう――ここぞと思った場所は頭の中でマークしておく。
「水遁が使える忍びなら、湖の側から潜入する可能性もあるかな」
調査範囲には観光客の立ち入りが制限されているエリアもあるが、目立たない動きや抜け道探しの技が染み付いているサツキを、誰かが見咎めることはなかった。ダム湖の上をアメンボのように歩き、暗いダムの内部を暗視で見通し、隅々まで調べ上げていく。
「ねえキミ、ちょっといい? さっきダムの職員さんがね……」
「えっ、そうなんですか? わかりました」
調査中、チェックしたポイントに人がいれば、サツキは持ち前のコミュ力を活かして避難を促す。今回の敵の目的は人命ではなく施設だが、かといって一般人を戦闘に巻き込むわけにはいかない。適当な理由をつけ、安全なエリアまで移動するように言えば、相手はすんなり納得してくれた。
「どんな手で来ても止めてみせるよ、螺心衆!」
避難する一般人を見送ってから、彼女は今一度決意をあらたにダムを見上げる。どこから敵が忍び込もうとも、迎え撃てるだけの下調べは済んだ。観光地にして人々の生活の支えである黒部ダムを壊させやしないと、使命感と自信がその身には漲っていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
まぁ戦争ですから、ダムぶっ壊そうって言うのはひでーですけど結構効果的な気がするですね。
水力発電を止められたら困るでしょうし、もしこのバカでかいダムを決壊でもさせられたら直接的な被害がものすげーですよ。
でもこれは戦争ですからね、黙ってやられなきゃいけねーって法はねーです!
何処を狙われるか分かってんですから、計画ごと敵をぶっ潰してやるです!
……いや、これはカレー食べてるだけに見えるでしょうけど違うんですよ?
やっぱり敵を待ち構えるなら一般の人に紛れないと警戒されちまうかなーって!
あ、船も良いですね!
空も良いけど、たまにはゆったりのろのろ水上を行くのも……だーかーらー!遊んでねーですって!
「まぁ戦争ですから、ダムぶっ壊そうって言うのはひでーですけど結構効果的な気がするですね」
どんなに兵器や兵隊が揃っていても、インフラが整っていなければ戦いは立ち行かないし、一般人も生活できない。
十二剣神『聖賢者トリスメギストス』は作戦は地球人の痛い所を突いていると、ファルコ・アロー(ベィビィバード・f42991)も認めていた。
「水力発電を止められたら困るでしょうし、もしこのバカでかいダムを決壊でもさせられたら直接的な被害がものすげーですよ」
今回の標的となった黒部ダムは、国内の発電用ダムの中でも有数の規模を誇る。破壊によって生じる物理的被害と、電力不足による間接的被害は、計算するのも嫌になるほどの規模だ。復旧に手をこまねいている間にさらなるデウスエクスの侵攻があれば、日本は危機的状況に陥る。
「でもこれは戦争ですからね、黙ってやられなきゃいけねーって法はねーです! 何処を狙われるか分かってんですから、計画ごと敵をぶっ潰してやるです!」
今回、破壊計画が実行に移される前に、敵の狙いが判明したのは僥倖だった。どんなデウスエクスが来ようが全員ぶちのめしてやればいいと、勇んで黒部ダムまでやって来たファルコ。その彼女が今なにをしているのかと言えば――。
「……いや、これはカレー食べてるだけに見えるでしょうけど違うんですよ? やっぱり敵を待ち構えるなら一般の人に紛れないと警戒されちまうかなーって!」
そんな言い訳を口走りながら、レストハウスでご当地メニューを堪能中だった。実際、彼女の正体を知らないものが見れば、普通のレプリカントの女の子が、ダム観光を楽しんでいるようにしか思われない。隠密作戦という意味なら、この上なく場に溶け込んでいた。
「うーん、おいしーです!」
堰堤の内側に溜まったダム湖の様子を盛り付けで再現した、レストハウス自慢の「黒部ダムカレー」。そのお味にはファルコもお気に召したようで、目をキラキラさせながら夢中で食べている。これも敵を欺くための演技なのだろう、たぶん、きっと、おそらく。
「あ、船も良いですね!」
満腹になってレストハウスを出た彼女が、次に目を留めたのは遊覧船「ガルベ」乗り場。黒部湖を周遊するこの船からは、名峰として知られる北アルプスの美しい山並みを眺めることができる。これを見るためにやって来る登山家たちも絶えないほどだ。
「空も良いけど、たまにはゆったりのろのろ水上を行くのも悪くねーです!」
飛行タイプのレプリカントとして生まれたファルコだが、だからこそ船に揺られながら眺める風景には、いつもと違う面白さがあった。人の力と自然が作り上げた雄大な景色に、すっかりご満悦な様子で――やっぱり観光してるだけなのでは? と誰かにツッコまれたりもするが。
「……だーかーらー! 遊んでねーですって!」
そのたびにムキになって否定する、年相応に子供っぽいところも可愛らしい。もちろん本当に依頼を忘れてしまったわけではないだろう。いざ有事となれば彼女の鋼の翼はいつでも戦場へと飛び立ち、敵を決して逃さないだろうから。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
まずは住民の避難を
ポジション、ディフェンダーの大量のバスと迅速な避難体制を
皆様、新たに存在を確認された十二剣神『聖賢者トリスメギストス』が、このダムを破壊目標と定めて行動を開始しました
今回、デウスエクスは人命でなくインフラを標的として活動しています
しかしダムが破壊された場合、水没の影響が発生すると予測されました
このため、最悪の事態に備えてDIVIDEは避難体制を整えました
重要な財産だけを以て避難して下さい
ですが、大丈夫です
――ここに、ケルベロスがいるのですから
そして、異世界のケルベロス……『六番目の猟兵』も加勢しています
直ぐに討ち取って、平和を確立して見せましょう!
「まずは住民の避難を」
今回の依頼を受けたアンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)が最初に向かったのは、黒部ダム及び黒部川の下流に位置する都市であった。ここで彼女は特務機関DIVIDEにディフェンダーの|決戦配備《ポジション》を要請し、迅速な避難体制を構築する。
「皆様、新たに存在を確認された十二剣神『聖賢者トリスメギストス』が、黒部ダムを破壊目標と定めて行動を開始しました」
役所に要請して緊急集会の場を設けてもらうと、彼女は住民に説明を行う。迫りくるデウスエクスの脅威は、この都市や市民を直接狙ったものではない。だが、ここにいる人々にとっても無視できない事案だとは直ぐに分かるだろう。
「今回、デウスエクスは人命でなくインフラを標的として活動しています。しかしダムが破壊された場合、水没の影響が発生すると予測されました」
黒部ダムの貯水量は最大で2億トン。その膨大な水量がダムの決壊によって一気に解放されれば、下流域に面する都市は甚大な被害を受けるだろう。濁流に呑み込まれる家屋の数は試算時点で目を覆いたくなるほどで、それに伴う人的被害も深刻となる。
「このため、最悪の事態に備えてDIVIDEは避難体制を整えました。重要な財産だけを以て避難して下さい」
ダム決壊の被害が予想された地域から避難するために、用意されたのは大量のバス。住民全員を乗せられるだけの数を短期間で揃えることができたのは、流石は特務機関DIVIDEと言うべきだろう。避難民を受け入れるための一時避難所の用意も、仮設ながら進められている。
「ですが、大丈夫です――ここに、ケルベロスがいるのですから」
ここまでの話を聞いて、不安を感じるであろう人々に向けて、アンジェリカは自信たっぷりに言った。これまでにもケルベロスは何度もデウスエクスの侵略を退け、地球を守ってきた。敵の標的が都市や都市や人間からインフラ設備に変わったからといって、やるべきことは何も変わらない。
「そして、異世界のケルベロス……『六番目の猟兵』も加勢しています」
すでに黒部ダム現地には多くの猟兵が集結し、デウスエクスを迎撃する準備を整えつつある。戦力は十分、負ける気など一切なし――だから、これはあくまで万が一に備えた避難なのだと。すぐに元通りの日常を取り戻してみせると、彼女はここにいる全ての人達に約束した。
「直ぐに討ち取って、平和を確立して見せましょう!」
「は、はい!」「信じます!」
アンジェリカの言葉で落ち着きを取り戻した人々は、パニックを起こさず整然と列を作ってバスに乗り込んでいく。
黒部ダム近辺にいる観光客及びダム職員に対しては、扇沢駅から黒部ダム駅の区間に臨時バスを運行させる予定だ。後顧の憂いをなくし、デウスエクスとの戦いに集中できる環境は整いつつあった――
大成功
🔵🔵🔵
鎬木・一郎
珍味に挑戦する
ハッ、大衆と同じ行動とっても仕方なィよなァ。危険に飛び込んでみるかァ。虎穴に入らずんばッてなァ!
甘いもンは神だが、俺は基本的に何でも食ゥぜェ。そうでなきゃァいざって時生き残れねェ。
こう言う所にゃ、大抵情報通が居るもんさァ。普通に珍しいもんに用はねェ、死ぬ程エグい奴を食ってみてェんだ。情報通なんて奴らは、総じてそう言う珍しいもんが好きなんだぜェ。
見た目で味が想像出来るなンて、つまらねェだろォ?世の中も料理も意外性があるから面白ェんだよォ。
毒を食らわば皿までッてなァ。ククッ、良いねェ、滾ってきた。
堪能したがよォ、やっぱ甘味に勝るもんはねェわなァ。ア?こりゃ煙草じゃねェ、ラムネ棒だァ。
「ハッ、大衆と同じ行動とっても仕方なィよなァ。危険に飛び込んでみるかァ。虎穴に入らずんばッてなァ!」
と、勇ましいことを言っているのは鎬木・一郎(人間のガンスリンガー・f42982)。敵の話ではなく、黒部ダムで食べる飯の話である。どうやら彼はレストハウスで食べられる一般的なメニューではなく、ここならではの珍味にあえて挑戦したいようだ。
「甘いもンは神だが、俺は基本的に何でも食ゥぜェ。そうでなきゃァいざって時生き残れねェ」
腹が減っては戦はできぬ。しっかりと飯を食うことの重要性を彼は分かっている。とはいえ急に珍味と言われても、レストランにも土産物置き場にもあるのはカレー、サイダー、クッキーなど、どこでも見られる常識的な品ばかりだ。
「こう言う所にゃ、大抵情報通が居るもんさァ。普通に珍しいもんに用はねェ、死ぬ程エグい奴を食ってみてェんだ」
情報通なんて奴らは、総じてそう言う珍しいもんが好きなんだぜェ――と言って、一郎はニヤリと笑いながら人探しを始めた。黒部ダムに精通し、黒部ダムの表も裏も知り尽くしたようなヤツを。それはダムの近くで暮らす住民だったり、熱心にリピートする観光客だったりする。
「見た目で味が想像出来るなンて、つまらねェだろォ? 世の中も料理も意外性があるから面白ェんだよォ」
「ほうほう、成程……アンタもそういうのがお好みかい。良いねぇ」
探し当てた情報通は、一郎のチャレンジ精神を気に入ったようで、メモ帳の切れ端を渡すと「ここで合言葉を言ってみな」と告げた。一般には提供されず、存在を知る人にしか出されない、いわゆる「裏メニュー」的なやつのようだ。
「へい、黒部ブラックカレー、お待ちどう!」
果たして、指定された店で一郎を待っていたのは、真っ黒なルーに真っ黒な具材の、白米とのコントラストが強烈なカレーだった。デザインは普通の「黒部ダムカレー」を踏襲しているが、使われている食材やレシピは全く別物だとわかる。一体どうすればこんな色になるのか、と不気味に思うほど黒い。
「毒を食らわば皿までッてなァ。ククッ、良いねェ、滾ってきた」
期待通りのメニューに心躍らせながら、一郎はスプーンを握り締める。ダムの堰堤型に盛り付けられたライスと一緒に、漆黒のルーをすくって豪快に一口。感じたのは舌を刺す辛味とほのかな苦味、そして旨味――なるほど、人を選ぶ味には違いないが、なかなか悪くない。
「フゥ、ご馳走さん。美味かったぜェ」
しっかりと味わいながら黒部ブラックカレーを完食した一郎は、満足げな笑みを浮かべ、お代を置いて去っていく。
上着の内ポケットから小さなケースを取り出し、中に入っている白い棒――煙草ではなく、ラムネ棒をくわえて一息つく。
「堪能したがよォ、やっぱ甘味に勝るもんはねェわなァ」
確かレストハウスにはここでしか食べられない限定スイーツもあったはずだ。折角だしそっちも食っていくかと、軽快な足取りで歩きだす一郎。観光を満喫しているようにも見えるが、いざ有事となれば、ここで養った英気を存分に発揮してくれることだろう。
大成功
🔵🔵🔵
薬袋・あすか
インフラを叩くなんざぁ随分とセコいことしてくれるね
ま、敵さんが出てくるまでにゃ少しある。ついでにゆっくり観光と洒落込もうかねぇ
レストハウスの名物料理を堪能
雄大な自然と堅牢な人工物の調和を眺めながら食べるご飯も乙なモンだよな
お気に入りを見つけたらレシピとか、聞いてみようか
や、うちの旦那に食べさせてやりたいと思ってさ
無理なら別に構わないし
アドリブ絡み歓迎
「インフラを叩くなんざぁ随分とセコいことしてくれるね」
薬袋・あすか(地球人の鹵獲術士・f40910)がいた世界では、魔法で建造物を|回復《ヒール》することが可能だったため、インフラを破壊されてもすぐに修復できたが、こちらの世界では事情が異なるようだ。デウスエクスも面倒くさい手段に訴えてくるようになったものだと、彼女は眉をひそめる。
「ま、敵さんが出てくるまでにゃ少しある。ついでにゆっくり観光と洒落込もうかねぇ」
油断してはいけないが、ずっと気を張り詰めっぱなしでは戦う前に疲れてしまう。歴戦のケルベロスほど理解していることだ。幸いにも黒部ダムは発電施設であると同時に観光地としても知られ、時間を潰す方法なら幾らでもあった。
「お待たせしました。黒部ダムカレーです」
「へえ、これが噂のヤツか」
そういう訳であすかがやって来たのは、黒部ダムの傍にあるレストハウス。グッズや土産物の売店もあるが、やはり有名なのはレストランで食べられる「黒部ダムカレー」だろう。ダム湖をイメージした盛り付けが特徴的な、観光客にも人気のメニューである。
「雄大な自然と堅牢な人工物の調和を眺めながら食べるご飯も乙なモンだよな」
ピリ辛のグリーンカレーを口に運びながら、峡谷を横断する巨大な堰堤を見上げる。大自然のただ中にこれほど巨大なものを築き上げるのには、どれほどの苦労があったのだろう。ここでしか見ることのできない壮大な光景であった。
「このカレー、美味しかったな。レシピとか教えてくれない? や、うちの旦那に食べさせてやりたいと思ってさ」
店舗にあるサイドメニューを幾つかと、デザートに木苺のソフトクリームも堪能した後、あすかは気に入った料理の作り方を聞いてみる。こう見えても彼女は既婚者で、興味本位でこちらの世界へのゲートをくぐったものの、故郷には愛する夫がいる。骨を埋めるなら互いの隣で、と誓った仲だ。
「無理なら別に構わないし」
「構いませんよ。こちらのルーにはホウレンソウを使っていまして……」
本来ならレシピは公開するものではないだろうが、今回は特別に教えてもらえることになった。旦那思いの気持ちに打たれたのと、日夜デウスエクスと戦うケルベロスへの感謝を込めてだろう。初心者向けにわかりやすく、調理の行程をまとめたメモもくれた。
「旦那様に喜んでもらえると良いですね」
「ありがとう。じゃあね」
美味しい料理と土産を貰い、あすかは軽い足取りでレストハウスを出る。予知された敵の襲来までもう間もなくだ。
これだけ観光を楽しんだのだ、そのぶんの働きはしなければ。気合十分といった表情で、彼女はダムに向かうのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
月隠・新月
直接人類を狙うのではなく、主要施設を破壊することで地球側を弱体化させる作戦か。その悪辣さと的確さは、流石は十二剣神だ。
奴の目論見を成就させるわけにはいかないな。
今のうちに敵を迎え撃つ備えをしておきたいですね。俺は黒部ダムで働いている者から話を聞きに行きましょう。ダムを破壊しようとする敵がどこを狙うかは、ダムで働く人間の方がよくわかるでしょう。
あとは、敵と戦闘になりそうな場所の下見をしましょうか。敵を逃がさず素早く殲滅できるよう、構造などを把握しておきたいですね。敵は破壊工作に特化しているそうですから、ダムを破壊されないよう念を入れましょう(【拠点防御】)
情報は味方と共有しておきましょう。
「直接人類を狙うのではなく、主要施設を破壊することで地球側を弱体化させる作戦か。その悪辣さと的確さは、流石は十二剣神だ」
聖賢者の称号を名乗るだけあって、此度の敵は地球の泣き所をよく理解していると見える。極論すればグラビティ・チェインがあればいいデウスエクスとは違って、定命たる人類はインフラの維持なくして奴らの侵略に耐えることも、生活を保つこともできない。それは月隠・新月(獣の盟約・f41111)も認めるところだった。
「奴の目論見を成就させるわけにはいかないな」
向こうの狙いが分かっているのならば迎撃のしようもある。予知にあった黒部ダムに彼女が赴いた時点では、現地は未だ平和そのものであった。峡谷をまたぐ巨大なダムの周辺は観光地として開発され、今も少なくない観光客で賑わう。それを見れば尚のこと強く、敵の企みを阻止せんと闘志が湧くだろう。
「今のうちに敵を迎え撃つ備えをしておきたいですね。俺は黒部ダムで働いている者から話を聞きに行きましょう」
同地で活動する猟兵たちにそう伝えて、新月は情報収集を開始する。ダムを破壊しようとする敵がどこを狙うかは、ダムで働く人間の方がよくわかるだろうとの考えだ。こちらの素性と目的を明かせば、職員も協力してくれるだろう。
「このダムが、デウスエクスに狙われているって……本当ですか?!」
「はい。ですので貴方達の協力が必要なのです」
黒部ダムが破壊された時にどれだけの被害が生じるのか、それを一番わかっているのも職員たちだ。だからこそ彼らは惜しみなくケルベロスの要請に応える。一般公開されていないエリアの図面や、日頃の業務経験に基いた知見は、他では得られぬ貴重な情報だった。
(敵を逃がさず素早く殲滅できるよう、構造などを把握しておきたいですね)
新月は職員からの情報を元に、敵と戦闘になりそうな場所の下見に向かう。侵入経路付近にある開けたスペースや、破壊目標になるだろう重要区域。いざという時の立ち回りに遅れを取らないよう、入念に構造を頭に叩き込んでいく。
「敵は破壊工作に特化しているそうですから、ダムを破壊されないよう念を入れましょう」
拠点防衛の技術に関しては新月も素人ではない。彼女はオルトロス――人ならざる原獣の一種だが、地球人と生活を共にし、現在の暮らしを楽しんでいる。だからこそ、彼女の"家族"にも被害が及びかねないインフラ破壊を看過することはできず、今回の依頼にも積極的だった。
「あとは情報を味方と共有しておきましょう」
職員から聞いた話や下見で分かったことを他の猟兵に伝えれば、後は敵が来るのを待つだけだ。どこから攻めて来ようと即座に迎え撃てるだけの用意は整った。耳をそばだて、静かに闘気を漲らせながら待機する新月の佇まいは、まさに"|地獄の番犬《ケルベロス》"の如しであった――。
大成功
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第2章 集団戦
『螺心衆』
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POW : 集団行動
レベル×1体の【螺心衆】を召喚する。[螺心衆]は【陰】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : 薬剤投与
【催眠剤】を視界内の対象1体に飲み込ませる。吐き出されるまで、対象の身体と思考をある程度操作できる。
WIZ : 諜報活動
技能名「【情報収集】」の技能レベルを「自分のレベル×10」に変更して使用する。
イラスト:ももはなだ
👑11
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
十二剣神『聖賢者トリスメギストス』の策謀を阻止すべく、黒部ダムに集結した猟兵達。
近隣市民の避難も無事に済んでから程なくして、ダム周辺に不穏な気配が漂い始めたことを、彼らは察知していた。
「……ケルベロス。すでに我らの策を読んでいたか」
暗がりから忽然と姿を現したのは、闇を纏うが如き黒装束の集団。
螺旋忍軍『螺心衆』。諜報を得意とする一派から、さらに破壊工作に特化した者を選りすぐった部隊だ。
「待ち構えられていたとあらば、我らに戦って勝機はあるまい」
「だが、我らの忍務はお主らを倒すことではない」
彼我の実力差と、自分達の勝利条件を、彼らは冷静に把握していた。
聖賢者トリスメギストスが彼らに命じたのは「黒部ダムの破壊」。地球文明を維持するインフラの寸断だ。
その達成の為には、彼ら自身の生死さえ問題にはされない。
「死力を尽くして血道を開け。この巨大なる堤防を崩しさえすれば我らの勝利よ!」
その一言と共に螺心衆の忍び達は、一個の群体が如く一斉に行動を開始する。
一部が猟兵と戦って足止めし、その間に残る者がダムを破壊するつもりだろう。
無論、彼らの思惑通りに行かせる義理はない。
迅速かつ、ひとり残らず敵を殲滅すべく、猟兵達は戦闘態勢に入った。
ファルコ・アロー
ふふーん!てめぇらのやっすい作戦なんざ、このボクがまるっとお見通しなんですよ!
ほんとはグリモア猟兵の予知のお陰ですけど、こいつらの作戦は腹立つからこの場で全部見抜いたような事言って悔しがらせてやるです!
カレーも食べたしエネルギー充填もばっちり!
全速力でぶっ飛ばしてやるですよ!
ROCKET DIVE!スタートです!
まずは足止め要員の連中にまっすぐ激突、邪魔できねーように吹き飛ばしてやるです。
その時の推力移動の勢いでダムまで行って、破壊要員に体当たりしてやっつけてやるですよ!
吹き飛ばすなら地面が良いですね。
ダムや建物にはぶつけないように気を付けるです。
またカレー食べに来なきゃなんねーですからね!
「ふふーん! てめぇらのやっすい作戦なんざ、このボクがまるっとお見通しなんですよ!」
黒部ダムに現れた『螺心衆』の前で、ファルコは得意満面に胸を張る。背には機械の翼を広げ、完全武装で迎撃準備は万全。たまたま居合わせたのではなく、最初から相手が来ると分かっていなければ、こんなハッタリはかませまい。
(ほんとはグリモア猟兵の予知のお陰ですけど、こいつらの作戦は腹立つからこの場で全部見抜いたような事言って悔しがらせてやるです!)
そんなことまでデウスエクスの下っ端に分かるはずがないし、精神的優位に立つのも戦いにおいては重要だ。実際、待ち伏せを受けた螺心衆側には少なからず動揺が見られる。それでも作戦を継続するあたり、十二剣神直々の命を受けただけのことはあるか。
「カレーも食べたしエネルギー充填もばっちり! 全速力でぶっ飛ばしてやるですよ!」
「そうはいかんぞ、ケルベロス……行け、ここは任せろ」「承知!」
螺心衆は邪魔者の足止めと時間稼ぎに徹する者、その間にダム破壊を実行する者に分かれ、作戦を遂行せんとする。
対するファルコは背部パルスプラズマ・スラスターを起動。ロケット噴射で空に飛び立つと、まずは足止め要員の連中にまっすぐ突っ込んでいく。
「ROCKET DIVE! スタートです!」
自身のスピードと装備重量を武器にして目標に激突する、ロケットナイトの基本とも言える単純なユーベルコード。
だが、シンプルであるが故にダメージは侮れない。ジェット機のような勢いで飛んできた少女から逃げる暇もなく、螺心衆は一瞬で吹き飛ばされた。
「邪魔すんじゃねーですよ!」
「「ぐおッ!?!」」
まさに鎧袖一触。時間稼ぎに残った奴等を一蹴したファルコは、そのまま推力を緩めず破壊要員の後を追いかける。
あちらも忍者として足の速さには自信があろうが、飛行型レプリカントのスピードを舐めてもらっては困る。ダム内部への侵入を果たす前に、もうジェットの音が聞こえてきた。
「はッ、速い?!」「味方は何をして……ごはぁっ!!」
振り返ればもう目の前にいて、悪態を吐く間もなく衝撃を受ける。もともと直接戦闘力では劣る彼らが、ファルコの本気の体当たりを食らって無事で済むはずがなかった。超音速の衝撃波が吹き抜けていった後に、立っていられる者は一人もいない。
(吹き飛ばすなら地面が良いですね。ダムや建物にはぶつけないように気を付けるです)
闇雲に突撃しているように見えても、ファルコはきちんと周辺被害にも気を遣っていた。インフラ破壊を防ぐための戦いなのに、自分達で施設を壊してしまっては世話がない。ダム自体はもちろん、レストハウス等の観光施設だって、守るべき大切な場所だ。
「またカレー食べに来なきゃなんねーですからね!」
「なにを言って……がはぁっ!!!」
グラビティ・チェインしか必要としないデウスエクスには分かるまい。定命の者たちが生命を繋ぐものの大切さは。
気合いもやる気もエネルギーも万全のファルコは、それを思い知らせるようにフルスロットルで空を翔ける。ここでお前らにくれてやるものなんて、何一つありはしないと――。
大成功
🔵🔵🔵
鎬木・一郎
奴さんの狙いはわかってる。だったら到達地点も自ずと絞られるってもンだァ。適度に間引きながらベストポジションを探すとすっかァ。
へェ、お宅、忍?でもさァ、影に忍ぶのが専売特許だと思わない方が良いぞォ?忍ぶだけならガキでも出来るしねェ。
フッフ、良いねェこの緊張感。昔を思い出すよォ。
見つかった所で問題ないねェ。相手より速く正確にタマを当てりゃいい。ホラ、単純明快だろォ?
ふゥー!やっぱ銃って言ったら炸薬式だよねェ。ンーいい香りだァ、心が落ち着くねェ。
お宅は任務を遂行した。俺も任務を遂行する。それでいいじゃない。
基本行動は、気配を殺し、敵を間引きながら、ダムが見渡せる位置に陣取る。そして出てきた敵を射つ。
「奴さんの狙いはわかってる。だったら到達地点も自ずと絞られるってもンだァ」
ダムの破壊と簡単に言っても、これほど巨大な人工物を壊すのは、超常の力を持つデウスエクスでも容易ではない。
爆弾などを用いるにしてもピンポイントで全体に影響が及ぶような要所に仕掛ける必要がある。なら迎撃する側は、その手前で待ち構えればよい。
「適度に間引きながらベストポジションを探すとすっかァ」
そう言って一郎は気配を殺すと、足音を潜めて移動を始める。片手はリボルバー銃を収めたホルスターの傍に置き、獲物を見つければいつでも抜ける状態に。妙にさまになった動きだが、彼が過去に何をしていたのか知る者はいない。
(フッフ、良いねェこの緊張感。昔を思い出すよォ)
ひりつくような戦場の空気を感じながらも、一郎の顔には飄々とした笑みがある。ほどなくして彼が遭遇したのは、螺旋忍軍の『螺心衆』。目元や手元を除き、全身をくまなく黒装束で包んだ装いは、いかにも地球人がイメージする忍者のそれだ。
「へェ、お宅、忍? でもさァ、影に忍ぶのが専売特許だと思わない方が良いぞォ? 忍ぶだけならガキでも出来るしねェ」
「貴様……ケルベロスか」
両者が互いの存在を察知したのはほぼ同時。ここで作戦を邪魔される訳にはいかないと、螺心衆がクナイを構える。
だが彼がそれを振るうよりも速く、パンッと乾いた発砲音が響く――いつの間にか一郎の手には、硝煙たなびく拳銃が握られていた。
「見つかった所で問題ないねェ。相手より速く正確にタマを当てりゃいい。ホラ、単純明快だろォ?」
「グ、ガハッ……」
【バレットタイム】による超反応の抜き撃ちで、心臓に風穴を開けられた螺心衆は、驚愕の形相のまま倒れ伏した。
一郎はそいつの亡骸をまたいで通ると、途中見つけた連中を同じように"間引いて"いき。やがてダムを見渡せる高所に到着する。
「うん、いい見晴らしだァ。ここなら奴さんの動きも丸分かりだねェ」
ベストポジションに陣取った後の、彼の行動はシンプルだ。すなわち、出てきた敵は片っ端から射つ。待ち伏せに気付いていようがいまいが、奴らは任務を果たすために彼の射程に入ってこざるを得ないのだ。そして単純な撃ち合いに持ち込めば、彼に敵う者はここにはいない。
「ふゥー! やっぱ銃って言ったら炸薬式だよねェ。ンーいい香りだァ、心が落ち着くねェ」
何の変哲もないリボルバー銃を練達の技で操り、硝煙の匂いを楽しむ余裕さえ見せながら、敵を仕留めていく一郎。
螺心衆もただではやられまいとするが、元々武闘派ではない彼らの動きなど【バレットタイム】の最中では止まっているも同然だ。
「お、おのれ、よくも……」
「お宅は任務を遂行した。俺も任務を遂行する。それでいいじゃない」
恨み言を吐く螺心衆に淡々と告げて、トドメの一発を撃ち込む。その笑みは普段と何も変わらず、だからこそ不気味だった。彼にとってはのんびりと日常を過ごすのも、観光でスイーツを食べるのも、そして敵を殺すのも、全て同列の楽しみなのだ――。
大成功
🔵🔵🔵
家綿・衣更着
「遅刻でカレー食べ損ねたっす!」
ダムに迫る螺心衆にUC『朧車“家伊賀”突撃攻撃』でキャバリア用推進装置での【推力移動】飛行突撃によるひき逃げで奇襲
「どーも|猟兵《ケルベロス》の衣更着でっす!インフラ破壊とか的確な行動しやがってっす!……即座に二手に分かれるのも本当に的確っすね」
UC『妖怪忍法葉っぱ乱舞』で目晦まししつつ、UC『あやかしメダル「打綿狸の衣更着」』用メダルを【化術】ではっぱに変化させダムに【投擲】し【結界術】で保護
ストールで薬剤防御しつつ、結界が破られる前にはっぱが変形した投擲武器で倒していく
「ダムに薬剤投入されて一般人操作で破壊されたくないっすからね。念のため防御重視っす」
「遅刻でカレー食べ損ねたっす!」
デウスエクスの魔の手が黒部ダムに迫らんとする時、新たな猟兵――家綿・衣更着(綿狸忍者・f28451)が息せき切って駆け付けてくる。事前調査に間に合わなかった遅れを取り戻すかのように、キャバリア用大型推進装置を搭載した「朧車"家伊賀"」に乗って。
「なッ、なんだあの妖怪は……ぐはぁッ!?」
ダム攻めを企てる『螺心衆』も、空から突然大型キャンピングカーの付喪神が飛んできたら、驚くのは当然だろう。
衣更着の【朧車"家伊賀"突撃攻撃】は絶好のタイミングでの奇襲となり、運の悪い連中を轢き倒しながら止まった。
「どーも|猟兵《ケルベロス》の衣更着でっす! インフラ破壊とか的確な行動しやがってっす!」
「……新手か」「構うな。行け」
朧車の運転席からひょこりと顔を出し、敵に挨拶する衣更着。それ以上に出会い頭の"ご挨拶"は強烈だったが、仲間をひき逃げされても螺心衆の行動に変化はなかった。任務遂行を第一とする彼らにとって、個人の生死は気にすることではない。
「……即座に二手に分かれるのも本当に的確っすね」
敵の一部がこちらに向かってきて、残りはそのままダムに向かうのを見て、衣更着も気を引き締める。ここで足止めを食らっている暇はないし、黒部ダムに手出しもさせない。遅参のぶん、こちらも準備は万端に整えて来ているのだ。
「ぽん! 狸忍法奥義、どろんはっぱ乱舞っす!」
「ヌゥッ……目眩ましか?!」
衣更着は【妖怪忍法葉っぱ乱舞】で変形性能が上昇した「どろんはっぱ」をばら撒き、濛々たる白煙で視界を遮る。
螺心衆がこちらの姿を見失えば、その隙に懐から【あやかしメダル「打綿狸の衣更着」】を取り出し、化術で葉っぱに変化させ。そびえ立つダムに向かって勢いよく投擲する。
「守るぜトモダチ……じゃないっすけど! おいらのあやかしメダル、ペタリっす!」
貼り付いた葉っぱはメダルに戻り、悪意ある者を退ける結界をダム自体に付与する。まさに黒部ダムに突入しようとしていた螺心衆は、見えない壁に弾かれて「?!」と驚愕する羽目になった。これでもう、メダルを剥がすか衣更着を倒すまで、奴らはダムに手を出せない。
「ダムに薬剤投入されて一般人操作で破壊されたくないっすからね。念のため防御重視っす」
「ええい、おのれッ」「ならば先ずは貴様からよ!」
衣更着を任務の障害とみなした螺心衆は、催眠剤の【薬剤投与】で彼の体と思考を操り、結界を解かせようとする。
だが、始めから警戒していたものを彼自身が対策していないはずもない。口元に巻いた「打綿狸の綿ストール」で、薬剤の吸引はしっかり防いでいる。
「あとは結界が破られる前に始末するだけっす!」
「ぐぁッ!?」「がはっ!!」
反撃とばかりに構えるは、どろんはっぱが変形した手裏剣。抜く手も見せぬ瞬速で放てば、敵は次々に斃れていく。
直接戦闘に持ち込めば、工作員である螺心衆の実力は大したことはない。ダムにも一般人にも危害を及ぼす隙を与えず、順調に事を進める衣更着であった――。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
さて、このまま螺旋忍軍を撃破しましょうか
指を鳴らすと同時、螺旋忍軍の身体が黄疸等の重度の疾病症状を発症し始める
それは末期症状の生活習慣病
もはや肉体が腐っていくレベルの『生命維持が不可能な域の末期生活習慣病併発』によって螺旋忍軍は動く事すら出来ないだろう
更に言えば、これは敵対者に対しての作用
わたくしの味方、ケルベロスや猟兵には治癒効果を齎すジャンクフードを提供する事になりますからね
爽快なサワーを飲んで喉を潤した後、武器を構えて身動きの取れなくなったデウスエクスに止めを刺していく
さて、次は何を以てダム決壊を成すでしょうか……
そう言ってグラビティ・チェインの流れを見据える――
「さて、このまま螺旋忍軍を撃破しましょうか」
デウスエクスの襲撃を待ち構えていたアンジェリカは、敵影を捉えるなりパチンと指を鳴らす。それは【偏りし壊れた糧なる兵站の津波】を発動する合図――人気の絶えた観光地に、ドドドドと地響きを立てて、ジャンクフードの津波が押し寄せてきた。
「な、なんだッ……もががッ!!?」
螺旋忍軍『螺心衆』の目的は黒部ダムの破壊。だからといって、まさか水ではなく食品の津波を見ることになるとは思いもしなかっただろう。困惑している間にも押し寄せてきたジャンクフードは、彼らの口内に飛び込んでいく――。
「う、うげぇ……気持ち悪い……」「身体が重い……目がかすむ……」
摂食を強制された螺心衆の身体に、異常が出始めるのはすぐだった。見れば、黄疸等の重度の疾病症状が出ている。
それは末期症状の生活習慣病。アンジェリカが召喚したのは最高の素材で作られたジャンクフードだが、食べ過ぎればどんな美食とて毒となる。
「その津波は多くの偏りし豊穣を宿し、味方に味わいを、敵に病理を与える。壊れた糧の波濤は海嘯となり、やがて全てを飲み込むだろう」
デウスエクスは一般的な病理とは無縁の存在であり、この症状がアンジェリカのユーベルコードの作用であることは言うまでもない。生命維持が不可能な域の末期生活習慣病を併発した螺心衆は、動くことすら出来ない有り様だった。
「更に言えば、これは敵対者に対しての作用。わたくしの味方、ケルベロスや猟兵には治癒効果を齎すジャンクフードを提供する事になりますからね」
疾病に苦しむ螺心衆を見下ろしながら、アンジェリカ自身は爽快なサワーを飲んで喉を潤す。やや品目に偏りがあるとはいえ、今も黒部ダムを守っている猟兵達にとって、彼女の存在は生きた兵站拠点と言っても良かった。疲れた時はここに来て、いつでも間食を挟むといい。
「う、うごごご……苦じい……」
「それが因果応報と言うものです」
地球のインフラを破壊しようと企んだデウスエクスが、インフラの一つである"食"によって斃れるのも皮肉な話だ。
もはや肉体が腐っていくレベルの苦痛で身動きの取れなくなった螺心衆を、アンジェリカは「オラシオン・バスター・ライフル」でとどめを刺していく。音響魔法の発砲音が響くたびに、敵のうめき声は聞こえなくなっていった。
「さて、次は何を以てダム決壊を成すでしょうか……」
敵の始末をつけたアンジェリカは油断なく武器を構えたまま、そう言ってグラビティ・チェインの流れを見据える。
第一陣が退けられたからといって、この程度で作戦を諦める連中ではないだろう。次なる一手を予測し、備える――戦いはこれからが本番だと、ケルベロスの本能が告げていた。
大成功
🔵🔵🔵
月隠・新月
己を顧みないものは厄介だな。不滅の存在であるデウスエクスにとっては、一度消滅することなどさしたる問題ではないのかもしれないが。
決戦配備・ジャマーを要請します。破壊目標となりそうな重要区域への人員の配置をお願いできますか? 【ゲートオベリスク】のテレポート先になってもらいたいのです。テレポートで移動すれば、奴らに足止めをされずに破壊工作を阻止しに動けるでしょうから。
可能であれば奇襲をかけ、敵を爪で【引き裂き】倒したいですね。
問題は敵の薬剤投与……現場の人員が攻撃されるのは拙いですね。
『視界内』のものが対象になるなら、白銀の闘気を放出することで光で敵の目を眩ませて、攻撃を妨害できないでしょうか。
「己を顧みないものは厄介だな。不滅の存在であるデウスエクスにとっては、一度消滅することなどさしたる問題ではないのかもしれないが」
たとえ任務の途中で斃れても、グラビティ・チェインがある限り、奴らはいずれまた復活し、地球侵略を繰り返す。
それ故に犠牲を恐れず攻めてくる螺旋忍軍『螺心衆』の部隊を見やりながら、新月は通信機に向かって呼びかけた。
「決戦配備・ジャマーを要請します。破壊目標となりそうな重要区域への人員の配置をお願いできますか? 【ゲートオベリスク】のテレポート先になってもらいたいのです」
『了解です』
特務機関DIVIDEに要請した|決戦配備《ポジション》は直ちに実行され、黒部ダムの要所に部隊が送り込まれる。この者達の戦闘能力はケルベロスやデウスエクスには劣るが、重要なのは「味方がそこにいる」という事実だ。配備完了の報せが届くと、新月はすぐさまユーベルコードを発動した。
「定め、現れ、繋ぐ。座標記載、此方から其方へ」
魔力結晶「ブランクオベリスク」が詠唱に呼応して白銀の輝きを放ち、空間を繋ぐゲートとなる。そこに飛び込んだ新月は一瞬にしてDIVIDEのジャマー部隊がいる座標へとテレポート。そこにはダムの破壊工作を担当する螺心衆の別働隊もいる。
「なッ、ケルベロス?!」「あいつらは何をして……ぐあッ!!」
この方法であれば足止め役がいたところで、移動を妨害されることはない。テレポートによる予期せぬ奇襲を受けた螺心衆は、またたく間にオルトロスの爪で引き裂かれた。工作員たる彼らは直接戦闘には長けておらず、不意を突かれれば脆い。
「ここはもう大丈夫ですね。次の座標に向かいます」
「ご武運を!」「ま、待てッ……!」
ある程度敵を蹴散らすと、新月は残党の始末をジャマー部隊に任せて【ゲートオベリスク】を再起動。追いすがろうとする連中には目もくれず、別の区域にテレポートする。複数の重要区域に同時攻撃を受けた場合でも、遊撃的に対処できるのが彼女の強みだ。
(問題は敵の薬剤投与……現場の人員が攻撃されるのは拙いですね)
座標の指定を味方に頼っている【ゲートオベリスク】の弱点がそれだ。いくら戦闘力の低いデウスエクスとは言え、一般人に催眠剤を【薬剤投与】するくらいは難しくなかろう。戦いに協力してもらっている以上、ダムだけではなく味方も守らなければならない。
「『視界内』のものが対象になるなら……これでどうでしょうか」
次の座標にテレポートした新月は、今まさに薬剤を投げつけようとしている螺心衆の前で、白銀の闘気を放出する。
地に降りた満月の如く、その輝きは戦場をあまねく照らし、敵の目を眩ませる。標的が見えなければ【薬剤投与】も不発だ。
「ッ、目が……ぎゃぁぁッ!!」
「残念だったな。出直して来い」
視力を回復される前に、おのが爪牙を以って迅速に敵を葬り去っていく残月。断末魔の絶叫がダムの峡谷に木霊す。
此方側の損害及び、黒部ダムへの被害はいまだゼロ。やり直しのきく命で死力を尽くした程度で、猟兵達の防衛線は破れない――。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
戦闘に特化した忍びじゃないといえど、
抵抗されたら時間もかかるし……良い手はないかな?
攻撃を[見切り][なぎ払い・急所突き]で応戦しつつ[情報収集]。
薬剤を[見切]ったら、こちらから薬を飲み込んであげる。
ありがとう、良い|薬《もの》をくれたね?
ボクの【常魔眼の法・改】は、状態異常や行動制限を
敵意と判断して視界内の敵に反射する。
たとえ異常の原因、薬がボクの体内にあったとしても、反射方向は視界内。
ボクに敵意を向けたのは、薬じゃない。キミたちだもんね。
さぁ、反射した効果は……催眠だね?
視界に納めた敵は抵抗をやめさせ、可能なら自害か同士討ちを命令。
死にきれないなら[居合]で介錯。
自害・同士討ちを拒むなら、無抵抗を命じ[なぎ払い・急所突き]で殲滅。
螺心衆のご協力……薬のおかげで、スムーズに事が運んだね。
敵がいなくなったことを確認したら、飲まされた薬を懐紙に吐き出して。
さぁ、早く止めにいかないとね!
(戦闘に特化した忍びじゃないといえど、抵抗されたら時間もかかるし……良い手はないかな?)
足止めに留まる敵と、ダムの破壊に向かう敵。二手に分かれた『螺心衆』の忍達を見ながら、サツキは高速で思考を回転させる。一対一なら――いや、多対一でもこの程度の差なら負ける気はしない。向こうも実力差を把握した上で、はなから捨て駒になるつもりなのが問題だ。
「我らの命で、聖賢者様の命を果たせるならば本望なり」
一分でも一秒でも時間を稼ぎ、別働隊による作戦を成功させる。割り切った考え方をする敵は弱くとも厄介である。
螺心衆はサツキを取り囲むようにして襲い掛かってくるが、その動きは殺害よりも「戦いを長引かせる」ことを目的にしたものだ。
「付き合ってもらうぞ、ケルベロス」
「嫌だと言ってもダメそうだね……しょうがないか」
サツキは敵の攻撃を見切り、愛刀「月牙」で応戦する。水面の月をも断つと謳われた白刃が、押し寄せる漆黒の波を薙ぎ払い、的確に急所を突き穿つ。数々の強敵との実践経験を積んできた彼女と、本来は諜報を専門とする連中では、やはり戦闘力の差は圧倒的だ。
「強いッ……だが!」
武器術や体術では敵わぬと悟った螺心衆の奥の手は、催眠薬の【薬剤投与】。起死回生の一手にはならずとも、一時的に心身の自由を奪えれば僥倖である。何人もの同胞が討たれていく中で、彼らは冷静に機を窺い――サツキが僅かに隙を見せた瞬間、丸薬状にした薬剤を投げつけた。
「そう、それだよ」
「……?!」
ところが、サツキは丸薬が飛んできたのを見ると、口を開けてぱくり、と自分から薬剤を飲み込んだ。それが何の薬なのか分かった上での行動である――機を窺っていたのは螺心衆のみに非ず、彼女も戦いながら敵の情報収集を進めていたのだ。
「ありがとう、良い|薬《もの》をくれたね?」
「いったい何のマネだ……ッ!?」「バカな、なぜ我らの側に……!」
にこりと微笑むサツキの瞳に、皐月の花模様が浮かぶ。直後、螺心衆の忍達は金縛りにあったように動きを止めた。
それが催眠薬を飲んだ者と同じ症状だと、分からぬ彼らではあるまい。仮にもプロの忍が誤飲などするはずがない。ならば原因が誰なのかは明白だ。
「ボクの【常魔眼の法・改】は、状態異常や行動制限を敵意と判断して視界内の敵に反射する」
たとえ異常の原因が体内にあったとしても、反射方向は視界内。サツキに敵意を向けたのは、薬ではなく螺心衆だ。
したがって【薬剤投与】の効果は全て本人の心身に還る。切り札を逆手に取られた彼らは悔しがる事さえできない。
「さぁ、反射した効果は……催眠だね? 抵抗をやめて、仲間同士で斬り合ってもらおうかな」
「や、やめろ……ッ」「くっ、身体が勝手に……!」
敵を視界に収めたままサツキが命令を下すと、たちまち螺心衆は同士討ちを始める。中には拒絶の意思を見せる者もいるが、それなら無抵抗を命じた上でサツキ自身が手にかけるだけだ。皮肉にも投与した薬剤の効能の強さが、彼らの首を締める結果となった。
「螺心衆のご協力……薬のおかげで、スムーズに事が運んだね」
「お……の、れ……」
同胞に刺されて死にきれない者。心を操られ無抵抗に立ち尽くす者。もはや脅威とは呼べなくなった敵を、サツキは迅速に殲滅する。抜く手も見せぬ居合の太刀が、月光の如き煌めきを見せるたび、螺心衆の首が落ちていく――それは介錯を行う処刑人のようでもあった。
「さぁ、早く止めにいかないとね!」
足止め要員の敵がいなくなったことを確認すると、サツキは飲まされた薬を懐紙に吐き出して、すぐさま走りだす。
連中が二手に分かれてから然程の時間は経っていないし、スピード勝負でも負ける気はない。都市国家で鍛えられた俊足でダムを駆け上がると、彼女はあっという間に敵の背中に追いついた。
「この爆薬を仕掛ければ……ぐわぁッ!?」
「やらせないよ!」
出会い頭の白刃一閃。黒部ダムの破壊工作を進めようとしていた螺心衆は、背後からの一撃により瞬時に絶命した。
どうやら他の所でも防衛戦は順調らしい。近辺に散っていた敵の気配が消えていくのを、サツキは察していた――。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『機巧忍カラクリエイター』
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POW : 螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・甲式』
自身の【運用可能な資源や電力等】を代償に、1〜12体の【対ケルベロス戦用大型絡繰兵器】を召喚する。戦闘力は高いが、召喚数に応じた量の代償が必要。
SPD : 螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・乙式』
攻撃力に優れた【対ケルベロス戦用中型絡繰兵器】、レベル×2体出現する【強化合体機能搭載の小型絡繰兵器】、治癒力を持つ【医療用絡繰兵器】のいずれかを召喚し、使役する。
WIZ : 螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・丙式』
【口寄せ空間に繋がるゲート】から1体の強力な【決戦都市襲撃用超大型絡繰兵器】を召喚する。[決戦都市襲撃用超大型絡繰兵器]はレベル秒間戦場に留まり、【躯体による打撃やミサイル、レーザー兵器等】で攻撃し続ける。
イラスト:i-mixs
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「クローネ・マックローネ」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「作戦がケルベロスに漏れていた上、部隊は壊滅。まったく、指揮官として不甲斐ない限りね」
黒部ダム防衛のために集まった猟兵達の尽力により、螺旋忍軍『螺心衆』による破壊工作はことごとく阻止された。
この事態に顔をしかめながら姿を現したのは、忍び装束の上から白衣を纏った一人の女忍者。
彼女も螺旋忍軍のようだが、他とは異なる雰囲気を感じる。
「こうなればダムの破壊だけは達成しないと、トリスメギストス様に釈明のしようもないわ」
螺旋忍軍『機巧忍カラクリエイター』は、そう言って両手で印を組む。
彼女の得意便やは絡繰兵器の開発・改造であり、個人戦闘能力に乏しい代わり、異空間に格納した兵器を「口寄せ」して戦う独自のスタイルを取る。その実力は螺心衆の下忍どもより遥かに格上である。
「ついでにケルベロスを一人でも道連れにできれば御の字かしらね……さあ、死にたいヤツからかかって来なさい! 螺旋忍軍の意地を見せてあげるわ!」
主命遂行のために全てを擲つ覚悟をもって、カラクリエイターは殺気を放つ。
ここで万が一にもダムを破壊されれば、人類のインフラに受ける被害は甚大。退けないのは猟兵達も同じことだ。
果たして猟兵達は聖賢者の託宣を阻止できるのか。
黒部ダムを巡る攻防は、いよいよ正念場の時を迎えようとしていた――。
家綿・衣更着
アドリブ歓迎
「どーも、衣更着っす。ダムなら【結界術】で護ってるっすよ!」
妖怪煙を大量放出しつつ化術で巨大狸に変身しながらUC『必殺武装召喚』
(っぽい【残像】を【化術】で演出しつつUC『収納鏡』からキャバリアを出してUC『キャバリア憑依の術』で操作、自身は銅像に【化術】し【変わり身】)
ごとん(某カレー屋店主の銅像が落ちる)…ぽいっ(捨てた)
「はずれか…武器とか無くてもやってやんよウユーン!(狸の威嚇声)」
【結界術】で健闘するも追い込まれる…瞬間に巨大狸の姿がどろんとキャバリアに変化し【おどろかす】
そして衣更着本体が【忍び足】で敵本体を背後から【だまし討ち】
「口寄せなら憑依もしとかないとっす」
「どーも、衣更着っす。ダムなら結界術で護ってるっすよ!」
いよいよ出てきた敵指揮官の前に、堂々と立ちはだかるのは衣更着。ダムに貼ったあやかしメダルによる結界はまだ有効で、高位のデウスエクスでも力押しで破壊するのは容易ではあるまい。ましてや他の猟兵からも妨害がかかる状況では尚更だ。
「だったら、あんたを始末して結界を解くしか無いわよね」
対する『機巧忍カラクリエイター』が至ったのは当然の結論。直後、【螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・乙式』】により召喚された小型絡繰兵器群が合体し、一機の巨大な絡繰兵器が現れる。自らの手で開発した様々な絡繰を、状況に応じて口寄せ空間から呼び出すのが、彼女の戦闘スタイルだ。
「だったらこっちもデカくなって、デカい装備でお前を倒すっす!」
そう言って衣更着が印を組むと、どろんどろんと大量の妖怪煙が放出され、その中から巨大な狸が姿を現す。その傍には【必殺武装召喚】で取り寄せたと思しき武器が――某カレー屋の店主をデザインした銅像がゴトンと立っていた。
「へぇ、それであたしを倒すって?」
「………」
効果がランダムなユーベルコードには、時たまこのような事故が起きる。鈍器にするにしても扱いづらそうなそれを敵にからかわれた衣更着は、無言でぽいっと銅像を捨てた。当てが外れたと言わんばかりに、やや肩を落としながら。
「はずれか……武器とか無くてもやってやんよウユーン!」
「やれるもんならね!」『ガオオーーッ!』
狸の威嚇声を発して突っ込む大狸衣更着を、カラクリエイターの合体絡繰兵器が迎え撃つ。両者のサイズはほぼ互角であり、さながら特撮番組のような巨大バトルが幕を開けた。攻撃力では絡繰兵器が、防御力では結界術のある衣更着が有利か。
「デカくなっただけであたしの絡繰に勝てると思うな!」
「むむむ……っす!」
健闘するものの次第に追い込まれていく衣更着。まともな武器があれば戦況は変わっていたかもしれないが、決定力の不足は明らかだ。カラクリエイターもそれを見抜いているらしく、ここぞとばかりに攻勢を強め、勝負を決めにかかる――。
「これでトドメ……えッ?!」
だがその瞬間、どろんと煙を上げて巨大狸が人型ロボットに姿を変える。変化したのではない、元に戻ったのだ――妖怪煙で姿を隠したあの時、衣更着は【収納鏡】から取り出したクロムキャバリア「テングリーフ・ホワイト」を狸に化けさせ、あたかも自分が巨大化変身したように見せかけていたのである。
「こいつ……生体反応がない! 遠隔操縦?! だったら本体は……!」
【キャバリア憑依の術】で操作されたテングリーフのコックピットは無人。では本物の衣更着はどこへ行ったのか。
答えは、巨大化直後に狸が投げ捨てた銅像。あれこそ変わり身の術で変化した衣更着本人であり、その姿が戦闘のどさくさに紛れて消えていることに、敵はようやく気がついた。
「口寄せなら憑依もしとかないとっす」
「不覚ッ……ぐうっ!!」
忍び足で背後に迫った衣更着の、完璧な奇襲が敵に突き刺さる。同じ忍者に忍術と化術でだまし討ちを食らわされるのは、さぞかし敗北感の大きいことだろう。傷口を押さえてよろめきながら、カラクリエイターは苦虫を噛み潰したような顔をしていた――。
大成功
🔵🔵🔵
ファルコ・アロー
まーたバカデカいモンを幾つも出して来やがりましたね、こいつは!
ボク一人で全部ぶっ壊してやる自信はあるですけど、万が一にもダムを傷付けられたら困るです。
と言う事で決戦配備、ジャマー!
やろーども!ちょっとの間でいいから敵をダムに近付けさせんじゃねーですよ!
その間にボクがあいつら全部、片付けるです!
ウィングアップして戦闘機に変身、片っ端から絡繰兵器にぶつかってやるですよ!
多分こいつら操ってる本人はダムぶっ壊せるような感じじゃねぇんですけど、そいつを叩かねーとキリがねーですね。
戦いながら気配感知、そいつを見付けてビームを一発お見舞いしてやるです!
お望みならくれてやるですよ、戦場に散る栄誉ってヤツを!
「なかなかやるじゃないの、ケルベロス……だったら本気で行くわよ!」
猟兵達の実力を再認識した『機巧忍カラクリエイター』は、今度は【螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・甲式』】を発動。
相当の資源や電力をコストに費やした、対ケルベロス戦用大型絡繰兵器が12体、口寄せ空間から戦場に投入される。
「まーたバカデカいモンを幾つも出して来やがりましたね、こいつは!」
こうやって自作の兵器をどんどん召喚して制圧するのが敵のやり方なのだろう。ちょっとだけ故郷クロムキャバリアの戦場を連想しつつ、ファルコは目の前のデカブツどもとカラクリエイターを睨みつける。敵機体に比べれば遥かに小型な彼女だが、負けるつもりは微塵もない。
「ボク一人で全部ぶっ壊してやる自信はあるですけど、万が一にもダムを傷付けられたら困るです。と言う事で決戦配備、ジャマー!」
この戦いの要点はあくまで黒部ダムを防衛できるか否か。それをよく理解しているファルコは、特務機関DIVIDEから投入された部隊にダムの防衛と敵の足止めを指示する。妨害と奇襲支援に長けた|決戦配備《ポジション》なら、十分に彼女の要求を満たせるはずだ。
「やろーども! ちょっとの間でいいから敵をダムに近付けさせんじゃねーですよ! その間にボクがあいつら全部、片付けるです!」
「「了解!」」
ファルコの檄に応えてジャマー部隊は弾幕、手榴弾、煙幕等あらゆる手段を尽くして防衛任務に専念する。直接戦闘に比べればリスクは少ないとは言え、彼らも命懸けだ。これまでにもデウスエクスの侵略を退けてきた猟兵への信頼と期待なくして、このような役目についてはくれまい――だったら、自分達にはその期待に応える義務がある。
「ウィングアップ! チェェェェンジ! ファルコン!」
高らかに叫びながら空に飛び上がったファルコは、全長10mの戦闘機形態に【チェンジ・ファルコン】する。自身の空戦能力をもっとも活かせる姿に変身した彼女は、ジェットエンジンを唸らせて、まっすぐ絡繰兵器に向かっていく。
「ぶっ壊れるですよ!」
『グオオーーー!!?』
超音速に到達したスピードを武器とした突撃が、巨大絡繰兵器を真っ二つにする。ソニックブームを纏ったそれは、もはや全体が一振りの剣だ。最初の一機を撃破しても彼女はそこで満足せず、戦場をビュンビュン飛び回って、片っ端から敵兵器にぶつかっていく。
(多分こいつら操ってる本人はダムぶっ壊せるような感じじゃねぇんですけど、そいつを叩かねーとキリがねーですね)
圧倒的なスペックの差を見せつけるファルコだが、敵の召喚コストが尽きるまで付き合うのは、流石にこちらも限界がある。そこで戦いながら目視やレーダーによる索敵も同時に行い、絡繰兵器を操っているカラクリエイターを探す。
「……見つけたです!」
「ちぃッ!」
絡繰とは違った生物の気配を彼女が感知するまで、さほどの時間はかからなかった。巨大兵器の影に隠れて息を潜めていたカラクリエイターが、舌打ちしながら踵を返す。もう一度身を隠して仕切り直すつもりのようだが、そうは問屋が卸さない。
「お望みならくれてやるですよ、戦場に散る栄誉ってヤツを!」
「ちっくしょ……ぐぁッ!!」
鋼鉄の翼に搭載されたビーム砲の閃光が、狙い過たず敵を射抜く。元より直接戦闘力は低いカラクリエイターには、一発だけでも痛手となる威力だ。防衛ラインを突破できた絡繰兵器もまだいない――想定を覆し続ける猟兵と地球人の抵抗を前に、デウスエクスの脳裏に「任務失敗」の四文字がちらつき始めた。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
対象の未来その物に向け放たれる光の槍…励起完了
UC螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・乙式』が『発動する未来そのもの』に向かって光の槍が瞬き、全ての召喚した兵器が貫かれる
これが未来属性ディアブロホワイト…未来そのものへ干渉する力ですわ
靡く髪を払い、優雅かつ高慢にポーズを決めて螺旋忍軍を挑発
螺旋忍軍は我が恋人の螺旋忍者の敵でもありますからね
ここはしっかりとトドメを刺しましょうか
指を鳴らすと同時、鳴らした音響と共に音を置き去りにして光の槍が光速で飛翔
そのまま螺旋忍軍を槍襖にしていくーー
「対象の未来その物に向け放たれる光の槍……励起完了」
デウスエクス指揮官『機巧忍カラクリエイター』との交戦が開始されて以降、アンジェリカは後方にてユーベルコードを準備していた。その身からあふれ出した純白の光が、手元に収束され一振りの槍となる。彼女がそれを狙い定める先は、現在の敵のいる座標ではなかった。
「まだまだ――ッ、なに!?」
カラクリエイターが【螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・乙式』】を発動する寸前、光の槍が瞬く。次の瞬間、召喚された絡繰兵器は全て――コンマ一秒の狂いもなく同時に貫かれていた。アンジェリカのユーベルコードが対象としたのは、敵がユーベルコードを「発動する未来そのもの」だったのだ。
「これが未来属性ディアブロホワイト……未来そのものへ干渉する力ですわ」
靡く髪を払い、優雅かつ高慢にポーズを決めて敵を挑発するアンジェリカ。【白を示す光の槍は悠久なる未来へと】の効果は今見せた通り、この先どんな絡繰兵器を召喚しようとしても、全て破壊してみせるという自信に満ちていた。
「調子に乗るんじゃないわよッ!」
いきり立ったカラクリエイターは、今しがた破壊された小型絡繰兵器群に代わって、攻撃力に優れた対ケルベロス戦用中型絡繰兵器を召喚しようとする。だが、せっかくの性能もそもそも攻撃する機会が巡ってこなければ意味はない。未来に向けて放たれる光の槍は、攻撃体勢に入るよりも速く目標を瞬殺した。
「絶空を示す未来を穿つ為、その光の槍は我が四肢に宿る。未来その物を切っ先で貫く悪魔の槍よ、想像する世界で運命を超克せよ」
なおもカラクリエイターがどんな絡繰兵器を呼び出そうとしても、アンジェリカはことごとく光の槍で貫いていく。
相手も「くっ……!」と必死の形相で口寄せを繰り返すものの、やはり未来を狙って先手を取り続ける攻撃とは相性が悪い。
(螺旋忍軍は我が恋人の螺旋忍者の敵でもありますからね。ここはしっかりとトドメを刺しましょうか)
もともと異世界のケルベロスであるアンジェリカにも、螺旋忍軍は馴染み深い、そして因縁もあるデウスエクスだ。
パチンと指を鳴らすと同時、鳴らした音響と共に音を置き去りにして、143に分裂した光の槍が光速で飛翔する――。
「終わりです」
「ま、待ッ……きゃぁぁぁっ!!?!」
分裂した槍はそのままカラクリエイターの全身に突き刺さり、見るも無惨な槍衾にしていく。己の力を誇示するかのような戦いぶりは、相手により敗北感を与えるためのものか。不滅のデウスエクスに"死"は存在しないが、記憶までも失われる訳ではない――任務失敗の屈辱は、この先彼女の"未来"に深く刻まれるだろう。
大成功
🔵🔵🔵
月隠・新月
被害の大きさを考えれば、このダムは絶対に守らなければならない。
退けないのは敵と同じだが、相容れることは無いな。
ダムを防衛する以上、あまり多くの絡繰兵器を口寄せされたくはありませんね。
決戦配備・ジャマーを要請します。奴が運用可能な資源や電力量を抑えてもらえますか? 使える代償の量が減れば召喚数も減るはずです。
敵の絡繰兵器でダムを攻撃されるのは拙いですね。【無防備を装う】ことで、敵がこちらを狙うよう誘導できないでしょうか。敵はケルベロスを道連れにしたいようですから。
【降魔真拳】で自動反撃を行えば、俺を攻撃した対象にダメージを与えることもできるでしょう。
あとは隙を見て絡繰兵器と敵を攻撃したいですね。
「被害の大きさを考えれば、このダムは絶対に守らなければならない。退けないのは敵と同じだが、相容れることは無いな」
デウスエクスにはデウスエクスの、ケルベロスにはケルベロスの使命がある。どちらも背負うものがある以上、激突は必然と再認識した上で、新月は闘志を研ぎ澄ませる。黒部ダム襲撃部隊も残すところあと一人――『機巧忍カラクリエイター』だけだ。
「当然よ。聖賢者トリスメギストス様のために、最後まで足掻いてやるわ!」
不退転の覚悟をもって、カラクリエイターが発動するのは【螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・甲式』】。口寄せ空間より強力な対ケルベロス戦用大型絡繰兵器を召喚するユーベルコードだ。ダムを防衛する以上、あまり多くの絡繰兵器を口寄せされるのは不味い――そこで新月は先手を打っていた。
『決戦配備・ジャマーを要請します。奴が運用可能な資源や電力量を抑えてもらえますか?』
通常のデウスエクスとは異なり、大型絡繰兵器の口寄せには物理的な資源やエネルギーを必要とする。それも一機ごとに相当の量を。そこに目をつけた新月は|決戦配備《ポジション》で要請した部隊の力を借りて、敵のリソースを削る作戦に出たのだ。
『使える代償の量が減れば召喚数も減るはずです』
『了解。できる限りやってみます!』
妨害と奇襲支援に長けたジャマー部隊は、カラクリエイターが密かに現地に資材を運び込んでいたこと、そしてダムの発電所から盗電を行っていたことを突き止め、速やかにその供給を断っていく。地球人のインフラを狙っていたデウスエクスが、逆にそれを脅かされる側になったのである。
「ちっ……やってくれたわね!」
口寄せのリソース源を押さえられたことで、カラクリエイターが召喚できた大型絡繰兵器は僅か一機のみに留まる。
これでは黒部ダムの破壊には力不足。彼女はすぐに方針を切り替え、現状の戦力で達成できる可能性があること――すなわちケルベロスの排除を優先した。
(こちらに来るか。好都合だ)
ジャマー部隊が働いている間、新月はあえて無防備な体勢を装って、敵の様子を窺っていた。あの螺旋忍軍の使命はダムの破壊だが、次善目標としてケルベロスを道連れにしたがっている。なのでダムとケルベロスのどちらかしか攻撃できない時、わざと隙を見せればこちらを狙ってくるよう誘導できないかと考えたのだ。
『ガオオォォォーーー!!』
そして、彼女の策は成った。剛腕を振り上げ襲い掛かってくる巨大絡繰兵器を前に、新月は微動だにせぬまま【降魔真拳】を発動。かつて喰らった降魔鬼の魂を纏い、相手の攻撃に合わせて鬼爪のオーラによる自動反撃を喰らわせる。
「喰らい、鹵獲し、爪牙を成せ。仇敵からこそ学ぶべし……だ」
『ガオッ?!』
反撃を受けた絡繰兵器がバランスを崩す。その隙に立ち上がった新月は逆襲に転じると、兵器の巨体を駆け上がりながら爪でズタズタに切り裂いていく。一撃の威力も、攻撃の手数も、ユーベルコードの効果で増している――鬼の力を得た地獄の番犬を、もはや止められる者はいない。
「俺には守るべきものがある。退かないなら、力で退けるまでだ」
「ぐ……あッ!!?」
そのまま大型絡繰兵器の頂点で跳躍した新月は、落下の勢いを乗せた爪牙の二連撃を、カラクリエイターに見舞う。
精緻な技に獣の荒々しさを交えた猛撃は、非道なる侵略者に深手を刻みつけ――白衣と黒装束をともに朱に染めながら、カラクリエイターはがくりと膝をついた。
大成功
🔵🔵🔵
鎬木・一郎
ふゥー、いくらお友達がやられちゃったからって、こんな玩具持ち出すなんてさァ、大人げないよねェ。少しはオジサンを労って欲しいもんだよねェ(首と手首をぽきぽき鳴らしながら)
機械には機械故の長所があれば短所もある。動く際には一瞬だろうと、どうしても内部構造が露出するのさァ。銃口然り、間接部然り、視覚センサー然り………ね。機動力を奪われ、武器を破壊され、視界を奪われれば只の鉄屑、だねェ。
ミサイルは弾頭や推進部を狙えば、レーザー等は射線に入らなければ、行けるかねェ。
出来る限り四方八方から狙われるのは避けたいねェ、遮蔽物がある所が良いかねェ。
ハッハァ!さァ楽しい楽しいガン・パレードの始まりだァ!お互いに楽しんで行こうぜェ、俺らの命を賭けた最高のパレードだァ、途中退場だなんて白ける事はしないでくれよォ!
良いねェ、死と隣合わせのこの感覚、これぞ生きてるって事だ、全力で楽しむって事だ。だから今日死んだとしても俺は後悔も心残りもねェのよォ!
最後まで楽しみ尽くす事が出来たかァ。また次も楽しめるってもんだなァ。
「ふゥー、いくらお友達がやられちゃったからって、こんな玩具持ち出すなんてさァ、大人げないよねェ」
首と手首をぽきぽきと鳴らしながら、飄々とした調子で語る一郎。その視線の先には、多数の機械仕掛けの兵器が隊列を組んでいた。『機巧忍カラクリエイター』の【螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・乙式』】によって召喚された、戦闘用小型絡繰兵器群である。
「少しはオジサンを労って欲しいもんだよねェ」
「フンッ。食えないヤツね、ケルベロスってのは」
まるで心の籠もらない嘆きを口にする一郎に、カラクリエイターは皮肉げに口元を歪める。お互い敵に対する"労りの気持ち"など欠片もないことは分かりきった話だ。譲れないものがある以上、どちらかが斃れるまで戦うしかない――まあ、一郎の場合は少々事情が違うのかもしれないが。
「さぁ行きなさい!」
カラクリエイターの号令一下、絡繰兵器群は一斉に動きだす。一見すると小型で非力そうだが、このタイプの絡繰には合体機能が搭載されており、複数機が一つになることでスペックを強化する。そんな奴らの標的になった一郎は――相変わらず、不敵に笑っていた。
「機械には機械故の長所があれば短所もある。動く際には一瞬だろうと、どうしても内部構造が露出するのさァ。銃口然り、間接部然り、視覚センサー然り………ね」
拳銃弾では撃ち抜けないような硬い装甲でも、完璧に隙間なく全身を覆うのは不可能だ。そして彼には、そうした弱点に狙いを外さない腕前があった。機動力を奪われ、武器を破壊され、視界を奪われればどんな兵器とて只の鉄屑だ。
「ハッハァ! さァ楽しい楽しいガン・パレードの始まりだァ!」
意気揚々とテンションを上げ、巧みなガンプレイでリボルバー銃を連射する一郎。放たれた弾丸は正確無比に敵の関節部やセンサーを破壊し、機能を停止させる。動くことはできても実質的に戦闘力を喪失した、無力な機械の完成だ。
「チッ。だったら合体よ!」
カラクリエイターは無力化された絡繰兵器を無事な絡繰兵器と合体させ、少しでも戦力を維持するように指揮する。
合体絡繰兵器は相手の射撃に対抗すべく、ミサイルやレーザー等の長距離兵器で応戦。ならばと一郎もミサイルの弾頭や推進部を狙って撃ち落とし、レーザーの射線を見切って逃れるなど、両者一歩も譲らない。
(出来る限り四方八方から狙われるのは避けたいねェ、遮蔽物がある所が良いかねェ)
一郎からすれば合体で敵の個体数が減るのは好都合であり、黒部ダムとその周辺には行動や攻撃を制限できる地形が幾らでもあった。彼は腕前だけでなく状況を巧みに利用することで有利なポジションを占め、兵器群を撃退している。
「お互いに楽しんで行こうぜェ、俺らの命を賭けた最高のパレードだァ、途中退場だなんて白ける事はしないでくれよォ!」
「このッ、調子に乗って……! すぐに黙らせてやるわよ!」
嬉々として鉄火場で踊る一郎に対して、カラクリエイターにそんな余裕はない。だが今更撤退できる状況でもなく、否が応でもパレードに付き合わざるを得なかった。口寄せを繰り返し、保有するありったけの絡繰兵器を総動員する。事ここに至って出し惜しみはなしだ。
「良いねェ、死と隣合わせのこの感覚、これぞ生きてるって事だ、全力で楽しむって事だ。だから今日死んだとしても俺は後悔も心残りもねェのよォ!」
それは悠久の時を生きる不滅のデウスエクスには、理解しがたい境地だろう。生と死の境目に立ち、生命のやり取りを心から楽しむ。混じり気のない純粋な思いのままに撃って、撃って、撃ちまくり、一郎は心なき絡繰どもを駆逐しつつあった。
「このイカれ野郎……ッ!!」
「さァて、褒め言葉として受け取っておこうかァ」
手勢の底が尽きはじめたカラクリエイターに、陽気な笑みで撃ち込まれる一撃。魔法でも異能でもない、練達の技術によって必中の魔弾と化した鉛玉が、絡繰使いの胸を射貫く。直接戦闘能力が低い彼女に、それは十分な深手だった。
「最後まで楽しみ尽くす事が出来たかァ。また次も楽しめるってもんだなァ」
絡繰兵器群の動きが止まったのを見て、一郎はリボルバー銃をホルスターに収める。その表情は死闘の後とは思えないほど明るく、満たされながらも満ち足りてはいない。彼の生き様はヒトとしては変わり者だろうが、彼の行いが地球の危機を救ったことは、紛れもない事実であった――。
大成功
🔵🔵🔵
サツキ・ウカガミ
指揮官のご登場か。作戦は失敗したってこと、教えてあげるよ!
口寄せの使い手だって話だったね。
ボクの相手とダム破壊を平行するするために
小物を沢山呼び出されて、対処しきれなくなるのは厄介だし……
相手の立ち回りを[見切り]、心理を[情報収集・気配感知]して
ダム攻撃を優先して狙えそうな隙を見せる程度に
[無防備を装う・演技]を交えた戦い方で、大物の召喚を釣ろうかな。
狙いどおり超大型絡繰兵器が召喚されたら、
即座に絡繰兵器だけを対象に【瞳術『金眼』】。
どうやら多数相手だと時間がかかる螺旋忍法らしいけど、
1体相手なら掛かりが良いね。黄金の置物が完成だ!
さぁ、とっておきだろう口寄せを
防がれた動揺はどれくらいかな、カラクリエイター?
超大型絡繰兵器の無力化したら、即
カラクリエイターに[ダッシュ]で近づき
[不意打ち・居合]からの[2回攻撃・急所突き]。
キミたちの目論見も、これでおしまいだよ!
「指揮官のご登場か。作戦は失敗したってこと、教えてあげるよ!」
黒部ダム破壊作戦を実行するデウスエクスも、残すところあと一人。威勢よく啖呵を切って、サツキは『機巧忍カラクリエイター』に刃を向けた。大勢はすでに決しつつあり、この状況から敵が猟兵を全滅させて当初の計画通りダムを破壊でる可能性はゼロに近い。
「フン……もう勝った気でいるのは早いんじゃないかしら?」
教えられるまでもなく、カラクリエイターも戦況は理解しているだろう。それでも退かないのは螺旋忍軍の矜持か、十二剣神より与えられた使命感か。最後の最後まで足掻き切り、地球人どもに一矢報いんとする、手負いの獣特有の気迫が感じられた。
(口寄せの使い手だって話だったね。ボクの相手とダム破壊を平行するするために、小物を沢山呼び出されて、対処しきれなくなるのは厄介だし……)
ここで逆転のチャンスを与えるほどサツキも甘くはない。相手の立ち回りを見切り、心理を予想して作戦を立てる。
使命を最も重視する忍者なら、ギリギリまでダムへの攻撃を優先するだろう。その思惑を逆手に取れば、行動を誘導できる。
「さあ、終わりにしようか!」
「来なさい、ケルベロス!」
愛刀『月牙』の鯉口を切り、居合の構えにて正面より斬りかかるサツキ。白衣を翻して応戦するカラクリエイター。
一気に決着を付けにきたように見えるが、その瞬間だけはダムの防衛が疎かになる。これは絶体絶命の危機にして、おそらくは最期の好機。敵の視点であれば、そう判断するだろう。
「これがあたしの切り札よ!」
果たして、カラクリエイターが発動したのは【 螺旋忍法『口寄せ絡繰兵器・丙式』】。口寄せ空間に繋がるゲートの向こうから、決戦都市襲撃用の超大型絡繰兵器が出現する。召喚時間に制限があるものの、その躯体による打撃やミサイル・レーザー等の搭載兵器には、黒部ダムを破壊するだけの十分な火力があった。
「あたしが死んでも、ダムさえ破壊できれば……!」
カラクリエイターはその最終兵器を、自身の身を守るためではなくダムの攻撃に向かわせた。直後にサツキの攻撃で死亡するとしても、あくまで任務遂行を選んだのだ。不滅の存在たるデウスエクスとて、並大抵の覚悟では出来ない。相打ちになれれば実質勝利だと、彼女の口元には笑みさえ浮かんでいた。
「こんな感じの術だったかな?」
だが。超大型絡繰兵器が召喚されたのを見るなり、サツキは即座に【瞳術『金眼』】を発動。瞳に浮かぶ皐月模様が金色に染まり、兵器を凝視する――すると、標的の躯体までもが金色に、正真正銘の黄金に変わっていくではないか。
「どうやら多数相手だと時間がかかる螺旋忍法らしいけど、1体相手なら掛かりが良いね」
「な、そんなッ……!!!?」
このユーベルコードは、かつてサツキが魔眼使いレッドクロスから鹵獲した忍法だ。物質組成を改竄して黄金化するこの術は、対象を絞るほど即効性が高まる。いかに強大な兵器でも、巨大なひとつの個体として認識できるなら問題はない。かくしてカラクリエイターの切り札は、ダムの傍らにそびえ立つ黄金の置物と化した。
「さぁ、とっておきだろう口寄せを防がれた動揺はどれくらいかな、カラクリエイター?」
「く、くそッ……!!」
正真正銘、今のが最後の力を振り絞った口寄せだったのだろう。超大型絡繰兵器を無力化されたカラクリエイターは奥歯を砕けそうなほど噛み締め、無念を露わにする。もし彼女が呼び出したのが群体型の絡繰兵器であれば、結果は違っていたかもしれない。だがこれは彼女の心理を読み切って大物の召喚を釣った、サツキの勝利だ。
「ま、まだッ……」
「ううん」
カラクリエイターが次の手を考える前に、サツキは刀の間合いまで走り込んでいた。意表を突かれるほどの俊足から繰り出されるのは最速の居合斬り。印を組まんとする手を初太刀で切り落とし、すかさず返す刀で心の臓を突く――。
「キミたちの目論見も、これでおしまいだよ!」
その二連撃は、満身創痍であった機巧忍にトドメを刺す、最後のひと押しとなった。しっかりと"捻り"を入れて刀を引き抜けば、胸に穿たれた傷口からぱっと血の花が咲く。地球人よりも頑強なデウスエクスでも、明らかな致命傷だ。
「無念、だわ……申し訳ありません、トリスメギストス様……」
今際の際に主君への詫びの言葉を口にして、カラクリエイターは消滅する。彼女が召喚した絡繰兵器の残骸と共に。
それを見届けたサツキはふうと詰めていた息を吐き、刀を鞘に納める。後ろを振り返れば、そこにはキズひとつないダムが、変わらぬ威容を示していた――。
かくして猟兵達は黒部ダムの防衛に成功し、聖賢者トリスメギストスの狙いであるインフラの破壊を阻止した。
新たに現れた十二剣神、多彩さを増すデウスエクスの侵略。地球とグラビティ・チェインを巡る戦いに終わりは見えないが、猟兵とケルベロスは恐れることなく、これからも立ち向かっていくだろう――。
大成功
🔵🔵🔵