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ヰラ

#サクラミラージュ #皇族 #セヴン・デッドリヰ・シンズ

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#サクラミラージュ
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#皇族
#セヴン・デッドリヰ・シンズ


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 ――嗚呼、苛々する。

「何故、貴方は傷付けるのです」
 声が響く。
 苛々する。
「彼等は癒しを得られぬ者。傷付き苦しみ抜き、疲れ果てて尚、救いを与えられぬ者」
 目が眩む。
 苛々する。
「貴方達のしている事は、彼等を追い詰める行為。絶望へと堕とす行為。――なれば、」
 影が迫る。
 苛々する。
「私は、貴方を赦しはしない。今此処に、」
「うるせえな」

 苛々する。
 ――嗚呼、苛々する!

「気に入らねえっつってんだよ!!」


「ずっとね、苛まれているんですって」
 花神・玉恵(花竜の乙女・f41618)が、しゅんとした顔をする。
「お年はね、百きっかりだそうよ。と言っても、これは皇族の中では年若い方」
 サクラミラージュの、皇族。
 老いも若きも、その齢は百を下りはしない。それは彼等が不死の存在である故に。
 だがその一人が、影朧によって儚くなる。そんな予知を、玉恵は視たのだと。
「|丹桜《あきお》様と言うのだそうよ。憤怒の悪魔。ずっとずっと、怒りの衝動に苛まれている」
 頭痛の様に、或いは洗脳の様に。
 消えない怒りが、彼を何時も駆り立てる。
「それでも、悪魔って『良い子』達でしょう?」
 悪を気取っても、汚れ役を買って出ても、その性根は何処までも善良だ。悪魔とは、少なくとも猟兵達の知る範囲では、そのような生物だ。
 彼は――丹桜は、ごく少数のユーベルコヲド使いの仲間達と共に、帝都の影で幻朧戦線のテロル活動の阻止に奔走している。
 理由は単純明快。『気に入らないから』だ。
「自分の目の届く範囲で、やりたい放題やってやがるのが癪に触る……って、本人は言ってるらしいわ。要は見過ごせないのよね、帝都が危険に曝されるのが」
 其処で漸く少しだけ、玉恵が平素の柔らかな微笑を見せた。
 しかしそれも一瞬で、すぐにまた哀しげに眉を落とす。
「彼等はね、影朧兵器を事前に回収したり、影朧兵器の影響で現れた影朧の対応に当たったりしていたの。彼はね、皇族の中でも強い方みたい。と言っても勿論、超弩級戦力と呼ばれている皆が出なければ手に負えないような問題は、流石に解決出来ないわ。今までは、其処までの事件には当たってこなかったの」
 と言うより、幸いにしてグリモアの予知と猟兵達の活躍で、彼等が嗅ぎつける前に事を収束出来ていたのだろう。
 それが今回、最悪の形で彼等と接触する事になってしまった訳だ。彼等より強く、皇族すら害せる程の、そして何より、丹桜へと恨みを抱いている、影朧が。
「どうもね、影朧は癒しを得られていない影朧を傷付けようとする存在が、許せないみたい。影朧と戦い続ける内に、影朧達を傷付けようとする集団だって、目を付けられてしまったみたいね」
 ただ、その正体は解らず、丹桜の側近くに潜んでいると言う。
 そして、御多分に漏れず今回の事件の舞台もまた、動く密室――弾丸列車だ。
「籠絡ラムプの回収の為に、遠出していたそうよ。その件はもう解決してるから、安心して今回の事件に集中して欲しいわ」
 ともあれ、その帰りの列車。
 丹桜とその仲間達は、影朧の襲撃を受けると言う。
「ごめんなさい、具体的に何を仕掛けて来るのかは……視えなかったの。ただ、皆が何時までも丹桜様と同じ車両にいると、仕掛けて来ないみたいなのね」
 それはそれで、襲撃は防いだと言えるだろうが。
 丹桜に恨みを抱いたままの影朧を、再び世に解き放ってしまう事にもなる。出来れば此処で、蹴りを着けたい。
「さっきも言ったけど、彼は結構強いから。多少の事は耐えてくれるし、彼の事は本人を信じて任せて、皆は敵やその仕掛けの対応に専念して良いと思うわ」
 ただ、鍛えているとは言っても猟兵ではない為、放っておいても一人で全てを解決出来る、という事ではない。余り時間は掛け過ぎない方が良いだろう。
 更に言うなら、喧嘩っ早い性質の彼の事。黒幕の影朧さえ見つければ、彼も加勢してくれる……と言うより、自分から戦いに加わってくれるだろうと。
 理由はやはり単純明快。『気に入らないから』だ。
「気難しい子だけれど、協力して影朧の襲撃を阻止してね。皆なら出来るって、信じてるわ」


絵琥れあ
 お世話になっております、絵琥れあです。
 某憤怒の悪魔を推しています。

 流れと詳細は以下の通りになります。

 第1章:日常『容疑者を探せ』
 第2章:冒険『容疑者最後の罠』
 第3章:ボス戦『???』

 第1章では、丹桜とその仲間が乗る車両で調査を行っていただきます。
 出来ることは【丹桜に話を聞く(難易度:高)】【丹桜の仲間に話を聞く(難易度:中)】【車両内を調査する(難易度:小)】となります。
 丹桜とその仲間との対話については聞き取り調査ではなく交流でも問題ありません(難易度に変化はありません)。
 ここでの調査が終われば、一度前後どちらかの接続車両に移動していただきます。
 余談ですが、丹桜の活動はお忍びである為、敢えて一般車両に乗っているようです(その車両には彼等の他に乗客はいませんが、これに関しては偶然です)。

 第2章、第3章については現時点では詳細不明です。
 シナリオの進行と共に情報が開示されます。

 丹桜について、もう少し。
 短気でせっかち、喧嘩っ早い憤怒の悪魔。
 ただ、常に怒りの衝動に苛まれている故の気性の荒さであり、根は善良で面倒見のいい青年(?)です。
 外見年齢は10代後半〜20代前半辺り。色素薄めで整った顔立ちの、しかし精悍な体躯の持ち主です。
 戦闘となるとスクワッド・パレヱドに似た攻撃手段と、デビルズ・ディールに似た強化手段を用います。
 但し後者を(取り分け支援目的では)使うことはかなり稀です。
 もし彼と対話するのであれば、騒がしくすること、怒りの感情を刺激するような言動はNGです。
 彼の怒りを買うと判定された場合、ルールや世界観、公共良俗的に問題のないプレイングでも不採用ないし苦戦判定になる可能性があります。
 彼の仲間については断章にて情報開示予定です。

 第1章開始前に、断章を執筆予定です。
 戦闘パートの地形などの追加情報も、断章での描写という形で公開させていただきます。
 断章公開後、プレイング受付開始日をタグにて告知させていただきますので、ご縁がありましたらどうぞよろしくお願いいたします。
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第1章 日常 『容疑者を探せ』

POW   :    乗り物内をくまなく歩き回り、怪しい人物を探す

SPD   :    目星をつけた人物の持ち物を掠め取り、証拠品を探す

WIZ   :    人々の会話に耳を澄まし、違和感のある部分を探す

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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 弾丸列車、件の車両へと足を踏み入れれば。
 丹桜のものと思しき頭が一瞬、ぴくりと動いた。
 車両は自由席。それでも丹桜は、仲間達に囲まれて座っているように見えた。
 車両の中央付近、通路側の席に沈んでいる彼は、猟兵達がその様子を窺ったならば、丁度寝直しているところだ。
 腕を組み、眉間に皺を寄せて目を瞑る彼は、本気で寝入ろうと言うよりは、社交を拒絶しているようであった。聞いた話では悪魔であるとの事だが、角などは見当たらない。矢張り彼が人と異なるのは見目ではなく、その内面なのだろう。
 その傍ら、窓際の席に物言わぬ女の姿があった。猟兵達と目が合うと、無表情ながら会釈してくる。その角膜には星空、いや宇宙が広がっていた。瞳孔も存在せず、吸い込まれそうな闇と煌めきが広がっている。怪奇人間、だろうか。
 また、反対側の座席にも男女が腰を下ろしている。
 通路側にいる男には、丹桜にはない角があった。しかし悪魔とは少々違うようだ。男は此方と目が合うと、ニッと口角を上げて人の好さそうな笑みを向けてくる。猟兵以外でこの車両にいる人間の中では一番、対話が容易そうではある。
 その奥、窓側にいる女は小柄な少女のようだったが、耳が長く尖っていた。彼女も笑顔こそなかったが、表情も険しくなく、ひとつ会釈をして見せる。隣の男ほど気さくな空気はないが、こちらも問題なく対話が出来そうだ。
 更に、丹桜と怪奇人間の少女の後ろの座席。年の頃、十になるかならないかの少年――と、同程度の身の丈の白兎が、探偵のような形をして新聞を読んでいた。彼もまた、丹桜の仲間の一人であるらしい。
 猟兵達を除く乗客五人。彼等が丹桜と、その仲間達だ。
 彼らを守るべく、猟兵達は行動を開始する。
源・絹子
【車両内を調査する】
車両に入る前から、転身式神『マユ』を妾と同じ姿へ。
ま、仲の良い双子の乗客ということじゃな。
マユ「あの…主」
今は「姉さま」と呼ぶが良い。
マユ「はい、姉さま」

世界が違うと『皇族』は種族ではなくなるのじゃな…。
まあ、それはこちらの感想じゃてな。暗殺は見逃せぬ。
軽く会釈をするに留めて、車両をそれとなく…マユと手分けして調査。
こういうのはのう…自然と視線がゆかぬ上の方に何らかの塊とか、膝よりも下に爆発物?があったりするからの。
マユ「姉さま、爆発物とは?」
何かそういうのがあると聞いただけじゃが、殺傷能力が高いとか。
マユ「困りますね…」
じゃな。化神の蛇『ウカノ』も這って探しておる。


神楽崎・栗栖
たとえ気は短くとも、高い志をもって戦ってくださる方です
何としてもお守りしたいですね

【丹桜に話を聞く(難易度:高)】
UCを併用しつつ、[礼儀作法]と[優しさ]をもって穏やかに接する
「いつも帝都のためにご尽力くださっていると伺いました。ぜひとも、お礼を申し上げたく」
「気に入らないとおっしゃる……悪を許さないそのお志が、何より頼もしく思えるのです」
「だからこそ、御身が気がかりで……最近、身近なところやご友人に、変わったところはありませんでしたか?」
丹桜の反応と、周囲の友人たちとの反応を比べて、違和感を探す


ジゼル・サンドル
そうだよな、この世界の悪魔というものは優しいのだよな…わたしが知ってる悪魔も。
歌姫探偵とはいえ今は歌はやめておこう、騒がしくするとまずそうだ。

ヒアノイズで周囲の隠密行動を探りつつ丹桜先輩のお仲間とお話してみよう。

探偵っぽい兎くんが気になるが…
新聞読んでるところすまない、今お話いいだろうか?
簡単に自己紹介し事情を説明。
よければ君の名前と他のお仲間の名前を聞いてもよいだろうか?
仲間になったきっかけやこれまでで印象深い事件なんかについて聞いてみたいな。
雑談程度だが手掛りがあるかもしれないし、純粋に彼のお仲間がどういう人なのか興味がある。

もしも話が聞けなければ他の人に聞くかヒアノイズでの情報収集に集中


幸徳井・保春
お騒がせする。此度、丹桜様の警護任務を受けて桜學府から参った幸徳井と申します。一旅の付き合いとなりますが、何卒よろしくお願い致します。

勉強不足で申し訳ないのですが、丹桜様の護衛の皆様の得手不得手を教えてはいただけぬか。わかっていれば万が一戦闘に陥った時に、適した援護が出来ます故。

……こんな感じで護衛達と話を交わしていくとしよう。もし護衛が偽物とすり替えられている場合なら、気づいた瞬間に間違いなく丹桜御一行は目の色を変えて臨戦態勢に入るはずだ。
だがこちらが怪しんでいるように気取られてはならない。あくまで「確認のため」を装って会話を続けるとしよう。




(「そうだよな、この世界の悪魔というものは優しいのだよな」)
 ジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)は嘗て邂逅した悪魔の事を思い出しながらも思案する。
 この世界で生まれ育った丹桜には、デビルキングワールド由来の|悪《ワル》への憧憬こそ生じていないものの、その在り方は一見すると心優しいとは言い難い。それでも、種族由来の善の心が残されていることは、間違いないらしい。
 それを思えば、助けないという選択肢はなかった。
「お騒がせする」
 ジゼルの少し前を歩いていた幸徳井・保春(栄光の残り香・f22921)が、丹桜達の座る座席の前で足を止める。
 彼は丹桜と、その仲間達へと向けて語り掛けた。
「此度、丹桜様の警護任務を受けて桜學府から参った幸徳井と申します。一旅の付き合いとなりますが、何卒よろしくお願い致します」
「……何だって? 護衛任務? こいつの?」
 反応したのは角の男だった。その隣に座る長耳の少女も目を瞬かせている。
 保春は手短に、事情を説明してから。
「勉強不足で申し訳ないのですが、皆様の得手不得手を教えてはいただけぬか。わかっていれば万が一戦闘に陥った時に、適した援護が出来ます故」
「はあ、成程ねえ……」
 保春達が、超弩級戦力である猟兵であると知れれば彼らも疑いはしなかった。角の男の方から、保春の質問に答えてくれる。
 それでも猶、話す事等何もないと言わんばかりに目を瞑ったままの丹桜の前に、神楽崎・栗栖(銀朱の魔剣士・f42945)が進み出た。
「丹桜様」
 呼び掛けたが、丹桜は応えない。
 だが、今のところは邪険に追い払われるような様子もない。
(「たとえ気は短くとも、高い志をもって戦ってくださる方です」)
 何としてでも守りたいと、そう思うから。
 栗栖は諦めず、言葉を続けた。
「いつも帝都のためにご尽力くださっていると伺いました。ぜひとも、お礼を申し上げたく」
「………………」
「気に入らないとおっしゃる……悪を許さないそのお志が、何より頼もしく思えるのです」
 ユーベルコヲドの力も交えつつ、礼を失することのないよう、穏やかに、柔らかく。
「だからこそ、御身が気がかりで……最近、身近なところやご友人に、変わったところはありませんでしたか?」
 どうか話して頂けませんかと。
 辛抱強く言葉を重ねれば。
「………………チッ」
 丹桜が、正面を向いたままではあったが、目を開いた。


 一方、ジゼルは更に進んで、探偵のような身なりの白兎の元へ。
「新聞読んでるところすまない、今お話いいだろうか?」
 ジゼル自身も歌姫探偵を名乗る身として、何となく気になる物があった。尤も、騒がしくすると色々な意味で拙そうだと判断して、今は歌は封印しているが。
「おや、僕に何か御用かな? お嬢さん」
 紳士然として応じる白兎に、ジゼルは簡単な自己紹介を済ませ。
「よければ君の名前と他のお仲間の名前を聞いてもよいだろうか? 仲間になったきっかけやこれまでで印象深い事件なんかについて聞いてみたいな」
「ふむ……」
 白兎は少し考え込む素振りを見せてから、徐ろに話し始めた。

 三人が得た情報は、このような物だった。
 まずは護衛対象でもある、リーダーの丹桜。種族は角の悪魔から派生する悪魔種族。気が短く口も悪いが、何だかんだ義に篤く面倒見も良い。習得ユーベルコヲドはスクワッド・パレヱドと、デビルズ・ディールに相当する物だ。
 次に、支援担当である|輝峯《かがみね》。種族はエルフであり、丹桜を除けば最年長であると言う。シニカルな面も見せるが大らかで冷静。習得ユーベルコヲドはヘリオンサインに相当する。
 更に、丹桜と共に前線に立つ|玖世《くぜ》。種族は羅刹、豪放で楽天的。丹桜とは喧嘩の末に何か通じ合ったようで、以来行動を共にしているとか。習得ユーベルコヲドは宿星天剣戟に相当、但し武器は持たず徒手である。
 そして頭脳担当の|或羽《あるば》。種族はウサギで倫敦出身のあると言う。気障で気取った言動が目立つが、明晰な頭脳は仲間や人々の為に惜しみなく使う。習得ユーベルコヲドは探偵儀式に相当する。
 最後に治療担当の|涼星《すずほ》。種族は矢張り怪奇人間で、変貌するに至った事件のトラウマで声を出せないのだとか。故に寡黙で物静か、それでいて影朧にも『攻撃』出来ない程に争いが苦手。習得ユーベルコードはシンフォニック・キュア相当で、この時だけ声が出せるようだ。
 ただ、今のところ特段、誰かに変わった様子等は見られないと言う。

 そんな中、源・絹子(狂斎女王・f42825)はまた別の観点から調査を進めていた。
「あの……主」
「今は『姉さま』と呼ぶが良い」
「はい、姉さま」
 妹として連れ立っているのは、転身式神の『マユ』だ。絹子自身と同じ姿を取り、仲の良い双子の乗客として車両へと足を踏み入れる。
(「しかし、世界が違うと『皇族』は種族ではなくなるのじゃな……まあ、それはこちらの感想じゃてな」)
 アヤカシエンパイアの『皇族』である彼女からしてみれば、些か不思議な感覚だ。この世界で同じように呼ばれる者達には、まだまだ謎が多い。
 それに、どんな存在であれ暗殺を見過ごせるわけもなく。
 絹子自身は丹桜達には軽く会釈するのみに留め、それとなく車両内の様子を探る。
 車両は所謂『自由席』であるようで、見た目通りのクロスシイト式、即ち横座席だ。この時代によくあるボックス式ではないらしい。
 ともあれ、この狭い通路で影朧と戦う、或いは避難することになれば、横に広がるのは難しそうだ。
(「有事の際はその辺りも考慮せねばならぬじゃろうな。後は……」)
 車両の特徴だけでなく、危険物ないしそれらしき不審な物が仕掛けられていないかも、マユと手分けし念入りに調査していく。
「こういうのはのう……自然と視線がゆかぬ上の方に何らかの塊とか、膝よりも下に爆発物? があったりするからの」
「姉さま、爆発物とは?」
「何かそういうのがあると聞いただけじゃが、殺傷能力が高いとか」
「困りますね……」
「じゃな」
 化神の蛇『ウカノ』も床を這って探してくれていたが。
 それらしい物は、遂に何処にも見つからなかった。
(「となると……霊的ないし呪術的な罠を張っておるのかの」)
 それこそ、ユーベルコヲドによる物である可能性もある。
 絹子は情報を共有すべく、聞き込みを行っていた仲間達へと声を掛け、丹桜達から離れた席に腰掛けた。


「それは……あの中に、偽物が混じっている、と?」
 ジゼルが声を潜めてそう問い掛ければ、保春が頷く。
 栗栖も同じように考えていたようで、矢張りそう思いますかと続けた。
 猟兵達が車両内にいる間は、敵は襲撃を行わないとグリモア猟兵は言った。
 ……車両内に猟兵達がいない事を、何処からなら確認出来るのか。勿論、車両内しかない。猟兵達を除けば、丹桜一行の他には誰もいない、あの車両内しか。
「もし護衛が偽物とすり替えられている場合なら、気づいた瞬間に間違いなく丹桜御一行は目の色を変えて臨戦態勢に入るはずだと踏んだ」
 だからこそ、こちらが怪しんでいるように気取られないよう、あくまで『確認のため』を装って会話を続けていたのだ。
「私もそれとなく、彼らの反応を比べて違和感を探ってみましたが……」
 だが、保春も栗栖も、丹桜の仲間達から特別気になるような動きは察知出来なかった。密かに限界まで高めた聴覚で聞き耳を立てていたジゼルも、怪しげな呟きや物音等は聞こえなかった。
「ふむ。彼等からもそれらしい話はなかったのかえ?」
 絹子が確認した通り、仲間達からも互いに変わったところはないと。
 しかし、犯人は彼らの中の誰か以外に考えられないのだ。けれど、特定するには余りに情報が少な過ぎる。
 猟兵達はそれぞれに思索を巡らせつつ、已む無く車両を出る。
 ある者は前方の車両に。またある者は後方に。


 情報が少な過ぎる。
 情報が、出て来ない。
 ……犯人が、情報を出さない為にはどうすれば良いのか。
 余計なことを喋らない事、しない事。
 誰かが、或いは全員が、ある可能性へと至った。

 ――犯人は『喋っていない』のではないか。

 その時だった。
 丹桜達の乗る車両に、異変が生じたのは。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『容疑者最後の罠』

POW   :    狙われた皇族を身を挺して守る

SPD   :    仕掛けられた罠を発見し、解除する

WIZ   :    焦った敵の残した痕跡から、正体を推理する

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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 ブン、と。
 奇妙な音が聞こえたと同時だった。
 丹桜の乗る車両、前後の連結部。其処が、通れなくなっていた。
 扉、ではない。見えない壁が、何者の出入りをも阻んでいるらしかった。
 其処から、閉鎖された車両内部に向かって、低級の影朧が湧き出ていた。際限なく現れ犇めく様子は宛ら、百鬼夜行。
 前後を挟まれた丹桜達に、逃げ場はない。一行は前後に分かれて背中合わせとなり、この影朧の集団に対抗するつもりのようだ。
 幸いにして、影朧一体一体の力はそう高くはなさそうで、猟兵達であれば一撃、丹桜達でも多くて二発入れれば倒せそうな見込みではある。
 問題は数だ。加えて、真に『あの人物』が犯人である場合、やがて物量で押し切られてしまうだろう。その上、この見えない壁がある内は外部にいる猟兵達の声も届かないらしい。
 矢張り、猟兵達がこの壁を破壊するより他にないだろう。高火力のユーベルコードを叩き込む事によって、可及的速やかに壁を破壊するのだ。
 壁さえ破壊出来れば声も届き、影朧の出現も止められる筈だ。急ぎ、救援を阻む壁を打ち破るのだ!

 【MSより補足】
 猟兵はスタート地点を前方車両、後方車両から選ぶことが可能です。偏ったら達成不可能になるということはございませんので、安心してお選びください。
 但し、実は『この章の開始時から』丹桜達のいる車両に潜んでいたよ、といったプレイングは不可能です。その点を踏まえてプレイングをお願いいたします。
神楽崎・栗栖
(可能であれば)POW
連携・アドリブ歓迎

前方車両から行動開始
UCで「見えない壁」の破壊に挑む
追い詰められている丹桜たちの様子を見て一瞬焦るが、あえて心を鎮めてUCに集中
(今、助けに向かいますから……しばしのご辛抱を!)


源・絹子
妾は【後方車両】に移動しておった。
いかんな、犯人が予想通りの者だとすれば、保たぬ!
力の集中のため、転身式神『マユ』は一時的に紙へと戻す。すまぬな。
マユ「いえ、お気をつけて」

では、この壁を壊すために…使役鬼『オンラ』の出番じゃ!
UCによるこの一撃は、地形を破壊するものでな。なれば、壁の粉砕も成ろう。
そうして突入したら、餓血短刀でこの影朧らを薙ぐ。『オンラ』も攻撃しておるな。

さて、誰に化けているのかは明白よ。
この状態で、前線で攻撃しなくとも不審ではなく、かつ声を出さずともそれを『当たり前』と思われる者。

(真剣モード)
我の眼は誤魔化せません。『本物の涼星』様を、どこへやりました?


ジゼル・サンドル
スタート:後方車両から

あまり丹桜先輩の仲間を疑いたくはなかったのだが…しかし丹桜先輩のいる車両に何者かが潜んでいる気配がなかったことを考えるとやはり一言も発していない『あの人』がもっとも怪しいのだよなぁ…もともと声が出せないなら入れ替わったとて仲間から怪しまれることもないだろうし…

ともあれ全てはこの見えない壁を突破してからだな。
すまないが仲間の猟兵には私が攻撃する間は少し離れていてもらって手回しオルガンでUC『共鳴奏鳴曲』を範囲を縮小した上でなるべく至近距離から奏でよう。
無機物には10倍のダメージを与えられるからそれなりにダメージはいくだろう…この壁が実は見えない生き物だったりしない限りは。


幸徳井・保春
前方車輌にて。

ちっ、完全に封じ込められたか。連結を外してこの前方の車輌を逃すことは出来るが……車掌以外乗ってないのだ今回は不要だろう。

問題は|影朧《あちら》側が連結を外しにくる時だ、そうされる前にさっさと飛び移るとしよう。

車内に持ち込んでいたダルマ自転車にまたがり【緊急出動】、車輌の中にいる護衛達に照準を絞って炎と共に突貫だ。

そうだな、日頃声を発してない者ならば別に突然黙りこくっても不審がられることはない。いつから入れ替わったのか、それとも初めから敵で機が熟すのを辛抱強く待っていたのか知らんが……残念ながら尻尾を出すのが早すぎたな。

涼星氏、大人しく投降を。そして桜學府に同行していただこうか。




 前方車両へと移動していた神楽崎・栗栖(銀朱の魔剣士・f42945)と幸徳井・保春(栄光の残り香・f22921)は、異変を感じ取るや否や、迷いなく動き出していた。
「ちっ、完全に封じ込められたか」
 何かが起きるのは解り切っていた。それを未然に防げなかった、と言うより防ごうと思えば防げたが、敢えて野放しにせざるを得なかった事実に保春は苦々しげに眉を顰める。
「抗戦しているようですが、このままでは……」
 ちらと見えた、影朧の集団に挟撃される丹桜達の姿に、栗栖の声にもほんの僅か、焦燥の色が乗る。だが、ひとつ息を吐いて心を鎮め、冷静に対応せねばと己を諌める。
「連結を外してこの前方の車輌を逃すことは出来るが……」
 己の愛車であるダルマ自転車へと跨りつつ、ちらと背後に視線を遣る保春。
 丹桜達の乗る車両、その前後の車両は猟兵達で確保しており、他の乗客はいない。あって精々車掌が来る位だろう。幸いにしてその更に前の車両に居るであろう乗客達が野次馬に来る様子も無い。今回は不要だろうと判断した。
「問題は|影朧《あちら》側が連結を外しにくる時だ、そうされる前にさっさと飛び移るとしよう」
 尻尾を掴ませないよう慎重に動いていた犯人だ。あり得ないとは言い切れない。ダルマ自転車のタイヤが回り始めると、ごうと音を立て炎が上がった。それが自転車や保春自身を焼く事は無い。
 栗栖もまた、剣を構えて。眼差しは鋭く、闘志は熱く。真っ直ぐに敵の群れと、護るべき人々を見据えて。
(「今、助けに向かいますから……しばしのご辛抱を!」)
 剣を、振るう。
 渾身の一撃が、虚空に罅割れを描いた。
 其処へ、隕石の如く巨大な炎の球が――否、緊急出動した保春のダルマ自転車が、丹桜とその仲間達を目指す形で、突撃した。


「いかんな、犯人が予想通りの者だとすれば、保たぬ!」
 後方車両に移動していた源・絹子(狂斎女王・f42825)も、素早く状況を理解し動いた。
 同じくジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)も行動を開始しつつ、ふと『犯人』――その言葉に足元へと視線を落とした。
(「あまり丹桜先輩の仲間を疑いたくはなかったのだが……」)
 けれど、と。
 顔を上げて絹子の横顔へと目を向けたのは、恐らく彼女も同じ結論に達しているのだろうと、容易に想像出来てしまったから。
(「丹桜先輩のいる車両に何者かが潜んでいる気配がなかったことを考えると、やはり一言も発していない『あの人』がもっとも怪しいのだよなぁ……」)
 元々、酷く限られた特定条件下でしか声を出せない、と思われている人物であれば。言葉を発さず、対話にも応じない、その挙動を不審な物と捉えられる事は、まず無い。
「ともあれ全てはこの見えない壁を突破してからだな。……申し訳ないが、私が攻撃している間は少し離れていてもらうことはできるだろうか?」
「ふむ、ならば妾はその間に準備をしておこう。頃合いを見計らって、妾も助力しよう」
 絹子はジゼルにそう返すと、自身と同じ姿を取らせ控えさせていた、転身式神の『マユ』へと声を掛けた。
「マユ、一時的に元の姿に戻ってもらうぞ。力の集中のためじゃ、すまぬな」
「いえ、お気をつけて」
 そう、マユが短く告げると、その姿は紙へと戻る。それを手中に収めてから、絹子は今度は召喚の準備を始めていた。
「さて。それではお聴きいただこう、共鳴し響き合う旋律を」
 その間にも見えない壁の前へと、ジゼルは進み出ていた。そして、壁にぶつかるかぶつからないかの至近距離に押し出したのは、手回しオルガン。
 ハンドルを回せば世界を揺るがす程の奏鳴曲を歌い上げ、その振動で震撼させる。それは心持たぬ筈の壁すらも。否、壁でしかないからこそ。
 ぴしり、ぴしりと見る見る内に、虚空に白い罅が広がっていく。その演奏が止む頃には、丁度あとひとつ、強い衝撃を与えられれば瓦解する事は目に見えている。そんな状態までに追い込まれていた。
「では……使役鬼『オンラ』、出番じゃ!」
 名を呼ばれたその存在は、ひとつ咆哮した。心優しくも頼もしい彼の鬼は、主の為、その救わんとする者の為に、その力を振るう。
 単純明快にして、強力な力を秘めたその一撃が、罅の中心へと突き刺さる。そして、ぱりんと大きな音を立てて、遂に壁は壊された。


「!?」
 ほぼ同時に前後の壁が決壊した。
 すると影朧の増援も止まり、後は残敵を掃討するのみとなる。
 前からは保春が敵を燃やしながら轢き潰して、丹桜達への道を開いた。其処から逃れた敵は、栗栖による剣の閃きにより斬り捨てられる。
「ご無事ですか」
「ああ、問題ねぇよ。俺達も、|丹桜《こいつ》もな」
 保春が問えば、玖世が拳で影朧の一体を打ち抜きながらも、ニッと笑って仲間達を、そして最後に丹桜を視線で示した。彼等もまた、それぞれに敵に対応している。
(「……よかった」)
 救援が間に合った事に、栗栖は密かに胸を撫で下ろした。
「あの壁自体が召喚の媒介としての役割も担っていたようじゃな。ならば、片付けも捗るというもの――」
 分析しつつ、絹子もまた餓血短刀で道を阻む敵を裂く。オンラもその怪力で群がる敵を薙ぎ倒していた。
 ジゼルも今度は車両の中に踏み入り、オルガンを歌わせた。生命ある者にはその響きも伝わりにくいが、それでもか弱き影朧の群れはそれだけでぱちんぱちんと弾けて消えていく。
(「彼らもまた、きっと被害者なんだ」)
 傷付き救いを求めながらも、傷付ける為に呼び出された。
 次は、きっと救われて欲しいと願いを込めて奏でる。
 そして遂に、湧き出た影朧の掃討が成った。
「ありがとう。助かった」
「この恩はいずれ返さねばなるまいな!」
 輝宮と或羽も、絹子とジゼルに微笑んだ。相変わらず丹桜は憮然としていたが、輝宮に肘で腕を突かれ一瞬苦い顔をした。
 和やかな雰囲気が漂う――だが、大団円にはまだ早い。
「さて、誰に化けているのかは明白よ」
 絹子がそう切り出せば、再び空気が貼り詰める。
「化けている……って」
「まさか」
 此処まで来れば、丹桜達もその言葉の意図に気付かぬ訳も無い。
「この状態で、前線で攻撃しなくとも不審ではなく、かつ声を出さずともそれを『当たり前』と思われる者……」
「そうだな、日頃声を発してない者ならば別に突然黙りこくっても不審がられることはない。いつから入れ替わったのか、それとも初めから敵で機が熟すのを辛抱強く待っていたのか知らんが……残念ながら尻尾を出すのが早すぎたな」
 保春も同意するように頷き、進み出た。絹子も真っ直ぐに、真剣な面持ちで、徐に視線を向ける。
 ただ一人、『犯人』たり得る人物へと。
「涼星氏、大人しく投降を。そして桜學府に同行していただこうか」
「我の眼は誤魔化せません。『本物の涼星』様を、どこへやりました?」
 彼女こそ――涼星こそ。
 否、『涼星|の姿をした《・・・・・》何者か』こそ。
 この襲撃事件を引き起こした、犯人だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『ホシガネ』

POW   :    再誕
自身の【取り込んだ影朧数体】を代償に、【抱く天体より産み落とした合成影朧一体】を戦わせる。それは代償に比例した戦闘力を持ち、【元となった影朧と同じ攻撃手段】で戦う。
SPD   :    再来
自身が戦闘で瀕死になると【抱く天体より取り込まれていた影朧全て】が召喚される。それは高い戦闘力を持ち、自身と同じ攻撃手段で戦う。
WIZ   :    再生
【抱く天体】で受け止めたユーベルコードをコピーし、レベル秒後まで、抱く天体から何度でも発動できる。

イラスト:あも井

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠ミザール・クローヴンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「――彼女は、」
 口を、開いた。
 歌でしか物言えぬ筈の、涼星が。
 玖世は驚愕の表情を浮かべ、輝宮は神妙な面持ちを浮かべ、或羽は引き止めるように丹桜の肩によじ登る。
 当の丹桜は、ぎらついた眼で涼星|の《・》、|姿をした何者か《・・・・・・・》を睨みつけている。その左の目からは風で細く伸びたような炎が揺らいでいた。
「貴方達に与して、癒しを得られぬ哀れな影朧を傷付け苦しめる、極悪非道の者です」
「……なら、どうしたってんだよ」
 丹桜の声は、震えていた。
 眼に宿る炎と、拳と共に。
 憤怒に。
「到底、赦される事では御座いません。ですから」
 その身体が、眩く輝いた。
 恰も星が瞬くように。
 現れたのは、星の子。
 白かった。
 まだ年若い、星のように。
 清く正しく美しく、その体現のように。

「贖いを。その命を以て」

 涼星を、殺したと言った。
 それが当然であるかのように。
 罪に相応しい罰だとでも言うように。
「……な……!」
「そんな、涼星……!?」
「何て事だ、この僕が気付けていれば!」
 玖世が、輝宮が、或羽が、頭を強く殴られたような顔をした。
 仲間の喪失は、余りにも大きかった。
 だが、丹桜は違った。
「……そうかよ」
 彼もまた、変わらず覚えた筈の喪失の感情は。
 全て、余す事なく怒りへと、変換される。
 拳を握り締め、射殺す如き眼光で。
「なら、」
 その姿は、表情は、紛う事もない。
 憤怒の、悪魔だ。

「人を殺した罪ってヤツを、|手前《テメエ》も償えってんだ!!」

 その言葉が一喝になった。
 彼の仲間達もまた、抗戦の意志を以て身構える。
 溢れんばかりの星空にも似て湧き出す影朧の群れに、彼等が踏み躙られる未来は防がれた。
 仲間の弔い合戦と、彼等の士気は高い。それだけで影朧の優位は崩れ去る。
 そして、此処には猟兵がいる――さあ、今こそ覆せ。
 憤怒の悪魔の、死の運命を!
神楽崎・栗栖
POW 連携・アドリブ歓迎

丹桜様はお守りできましたが、涼星様……
いえ、悲しみに囚われてはいられません
ここで、影朧との決着をつけましょう

生み出される敵を攻撃しながら、UCで敵の【抱く天体】の破壊を試みる
「丹桜様、今だけでも……私たちを『志を同じくする仲間』と認めていただけますか?」
スクワッド・パレヱド相当UCの威力を上げて、一撃でも加えてほしい




 涼星の――否、涼星に扮していた、影朧。
 その口から放たれた衝撃の事実に、神楽崎・栗栖(銀朱の魔剣士・f42945)はそっと密かに目を伏せる。
(「丹桜様はお守りできましたが、涼星様……」)
 栗栖にとっては話した事も――いや、今となっては会った事もない存在になってしまった涼星。そんな栗栖でさえ、その生命の喪失に、こんなにも心が痛むのだ。丹桜達にとっての怒りは、哀しみは如何ばかりか、察するに余りある。
(「いえ、悲しみに囚われてはいられません」)
 動揺は敵を利する。
 それに、丹桜は戦う意志を示した。きっと誰よりも辛い筈の、丹桜自身が。
 ならば、彼等を護ると決めた己が、沈んではいられない。
「ここで、影朧との決着をつけましょう」
 刃を向ける。
 真白く清き、故に苛烈なる星の子へ。
 愛おしむ如く丸めた細い腕は天体を抱く。光が漏れれば暗雲の如き影朧が産まれ落ちた。
(「あの天体を無力化出来れば」)
 立ちはだかる暗雲の獣を断ち、あの輝きを目指す。
 同時、仲間達の後押しで駆け出した丹桜へと、栗栖は。
「丹桜様、今だけでも……私たちを『志を同じくする仲間』と認めていただけますか?」
 目指すものが同じであるならば。
 きっと、力になれる筈だ。
「………………チッ」
 また、舌打ちひとつ。
 けれど、それは。
 確信する。
 許容である。
 栗栖は、丹桜の背に手を添えた。
 そして、そっと押し出した。
「嗚呼、嗚呼! 手前のやり方も、掲げる正義も! 何もかも気に入らねえ!!」
 怒れる悪魔は苛々と。
 勢いのままに打ち出した拳が、輝きへとめり込んだ。
「! 何て事を……!!」
 星の子が、唇を戦慄かせる。
 輝ける星に、亀裂が走る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シェーラ・ミレディ(サポート)
※OK:シリアス
※NG:エロ、ネタ、コメディ、心情系
※傭兵的なスポット参戦

称号通り、僕の身体を維持するための金儲けと、弱者をいたぶる醜い行いが許せぬ義侠心が行動指針だ。
美しいものは愛でるべきだが、恋愛には結びつかないなぁ。
性格ブスは醜い。見るに堪えん。

複数の精霊銃をジャグリングのように駆使する、彩色銃技という技(UC)を使って、敵を攻撃しようか。
敵からの攻撃は基本的に回避する。が、護衛対象がいるならかばうのも検討しよう。
……嗚呼、僕を傷付けたなら、代償は高くつくぞ!




「状況は理解した」
 シェーラ・ミレディ(金と正義と・f00296)の四の銃口は宝石の如く煌めいて。
 狙うはただ一人。救われぬ影朧の為にと、その存在に仇為す者へと制裁を加えんとする者。
 影朧がどういう存在なのかは、シェーラもよく理解しているが。
(「それはそれ、これはこれだ」)
 影朧は無念を晴らす為、そして抗う術を持つ者は生きる為、ぶつかり合った。それだけの事だ。
 そも、報復を正当化するのみならまだしも、その為に恐らくは丹桜達の中で一番非力であった者を狙ったと言う事実が気に入らない。
 手を貸す理由はそれだけで十分だった。――ああ勿論、報酬はちゃんと頂くけれど。この美しい身体を維持するのも只ではないのだ。
「なに、簡単な話だ。死に瀕すれば発動する力なら……『生かさす殺さず』だろう?」
 あの天体が、星の生命に呼応して、輝く間。
 踏み込んではいけない一線を、見極めて。その寸前まで削ればいい。
 ――彩色銃技・一目鐘情。
 宛ら恋に落ちるように、刹那の件である如く。
 目にも留まらぬ超絶技巧、繰り出す弾丸は光彩纏って流星にも似て。
「く……!」
 全てがシェーラの思いの儘、星を穿つ。
 影を産まぬようにして。

成功 🔵​🔵​🔴​

源・絹子
丹桜さんの言うとおりじゃな。
それは、紛うことなき罪である。ゆえに、妾も全力で行くとしよう。

しかし、通路が狭いときたら…ふむ、妾は『敵が見えてさえおればいい』攻撃手段をとることとしよう。
それこそ、この【鬼道矢蹂躙】である。
よいか、妾とて…許せぬのよ。大切な者を殺された者の悲しみを、怒りを。全てを理解しつくすことはできぬであろうが、それでも、寄り添うことはできるからな!
全ての影朧が出てこようが…この矢は視認しておる対象に向かうでな、わりとそのままなのよ。

さらに、敵は転身式神『マユ』が紙に戻ったことを知らぬはず。
マユよ。行くが良い!紙のまま、破邪攻撃であれ!


ジゼル・サンドル
…嘘、だろう?既に涼星先輩が殺されているなんて…丹桜先輩達を動揺させるための嘘じゃないのか、そうであってくれ…!
話に聞いただけとはいえ歌姫探偵の自分とどこか重なる部分もあって親近感もわいていただけにこの結末はなかなかに辛い…
丹桜先輩達なら尚更だろうに。

『想い響く詠唱』にてやりきれない想いを歌う。すまないが手加減はなしだ。
…癒やしを得られない影朧を傷つけるのが許せないと言ったな。ならその影朧が誰かを傷つけるのはいいのか?誰かを傷つけることでさらに苦しむことにならないか?
わたしには君が喚びだした影朧も苦しんでいるように見える…

正解なんて分からない、でも罪を重ねることは救いにはならないと思うんだ。




「……嘘、だろう?」
 告げられた真実は、余りに残酷。
 結論として、此処に居た涼星は偽物だった。ならば、何処かに本物が居る筈だ。……居る筈、だった。
 それが最早、この世に居ない。その事実はジゼル・サンドル(歌うサンドリヨン・f34967)にもまた、絶望を齎すに足りて。
「丹桜先輩達を動揺させるための嘘じゃないのか、そうであってくれ……!」
「………………っ、」
 哀願するにも似たジゼルの吐露に、影朧は答える事も、応える事も無い。
 ただ、僅かに丹桜が息を呑む気配がした。
「丹桜さんの言うとおりじゃな」
 その様な中に在って。
 源・絹子(狂斎女王・f42825)は、今は唯静かに進み出た。
「それは、紛うことなき罪である。ゆえに――」
 今、出来る事を。為すべき事を。
「妾も全力で行くとしよう」
 それこそが、せめてもの弔いだ。
「哀れな影朧達への弔いを。傷付け虐げる者へと鉄槌を」
 星の子にとって、そうである様に。
 現れた影朧には、丹桜の仲間達が応じた。或羽が撹乱し、輝宮が削り、玖世が抑える。
 星の子へと至る、その道筋が見えてきた。自身の前に立ち、それを睨めつける青年の背をジゼルは見つめた。
(「話に聞いただけとはいえ、歌姫探偵の自分とどこか重なる部分もあって親近感もわいていただけに……この結末はなかなかに辛い……」)
 ならば、今尚威風堂々と在るその背中は、その主は。
(「丹桜先輩達なら尚更だろうに」)
 負の感情は全て怒りへと変換される。
 今の彼の憤怒は総べて、哀しみにも等しい。
 ああ、嗚呼。こんなにも、遣り切れない。
「すまないが手加減はなしだ」
 心に蟠る想いを、余す事無く歌い上げるジゼル。
 慟哭にも似た|哀歌《ヱレジヰ》、或いは|挽歌《ラメント》。
「っこれ、は」
「……癒やしを得られない影朧を傷つけるのが許せないと言ったな」
「何、を」
 余りの強い哀しみに、星の子は戸惑いを見せている。
 誰かの受けた傷を、哀しみを、憐れと思う心が在るのなら。この想いも響く筈と信じて。
「なら、その影朧が誰かを傷つけるのはいいのか? 誰かを傷つけることでさらに苦しむことにならないか?」
「っ!!」
「わたしには、君が喚びだした影朧も苦しんでいるように見える……」
 解っている。
 それは、ジゼルから観た印象、感覚に過ぎず。
 影朧達が望んで星の子とひとつに成ったのか、それとも意思を汲み取られる事は無かったのか。どちらと断じる事も不可能だ。
 しかし、星の子の慈悲はあくまでも報復の機会を与えるのみに過ぎず、それが真に彼らを傷付けた者に向かうのかも定かではなく。
 何よりも、星の子が癒しを与えられている訳では、ないのだろうから。
「正解なんて分からない、でも罪を重ねることは救いにはならないと思うんだ」
 星の子の唇が、微かに戦慄いた。
「だって、」
 困惑と、恐怖と、疑問。
「私には、そうする事しか――」
 ならば、どうすれば良かった?
 その答えを模索するには、少しばかり遅過ぎたのだろう。
 もう、後には退けない処まで、星の子は至ってしまった。
 今は、贖いの時を齎すより他に、無いのだろう。
 既に、その為の道筋は示された。
 後は辿り着くのみ。
(「しかし、通路が狭いときたら……む?」)
 絹子がふと、その面を上げた時。
「くっ!? な……!!」
「此処に居る全員が、そいつと同じ様なやり方だと思うなよ」
 丹桜にも、これしかないのだ。
 手荒だが、動きの鈍った星の子を押さえつけた。元より星の子自身の力では、丹桜の筋力に抗う術はなく。
(「ふむ、ならば妾は『敵が見えてさえおればいい』攻撃手段をとることとしよう」)
 星の子の眼前には、丹桜の背中が在る。
 けれど絹子にとっては、然したる問題でなく。
 その視界に、その姿を捉えられてさえいれば。
 この矢が、鬼道の霊力を以て生成する鬼道矢が在れば。
 狙いを定め、絹子は眦を決した。其処には、猟兵として、皇族として、鬼道衆として――それ等以前に、絹子と云う一個人としての、意志の光が宿っていた。
「よいか、妾とて……許せぬのよ。大切な者を殺された者の悲しみを、怒りを」
 それは確かに、影朧も等しく持ち合わせている物に違いは無いだろう。
 だが、その想いが蔑ろにされて良い事の無い様に、この世界の|現在《いま》を生きる人々のそれもまた、等しい事。
 丹桜の、その仲間達の想いを切り捨てて良い理由には、ならない!
「全てを理解しつくすことはできぬであろうが、それでも、寄り添うことはできるからな!」
 絹子のその、真っ直ぐな想いを表すかの如く。
 彼女の瞳、青の中に揺らめいた、星の子へと矢は飛んだ。
 猟兵達にも、丹桜達にも、ましてや出現した影朧にも当たる事は無く――加えて、仲間の猟兵が天体へと走らせた亀裂は、影朧の出現を抑えている様だった――星の子を貫く。
「終いじゃ、マユよ。行くが良い!」
 涼星に変じていた星の子は、増援を予期してその身体を強張らせる。
 だが――その意識の外でマユは既に、紙の姿に戻っているのだ。
「紙のまま、破邪攻撃であれ!」
 不意の追撃に、遂に星の子が崩れ始める。
 その身体は、爆発するかの如き光を放ち、全ての目を眩ませ、そして。
 何事も無かったと、錯覚させるかの様に。
 跡形も無く、過去に溶けて消え失せた。


 帝都にて、列車は停まる。
「じゃあよ」
 丹桜は別れを惜しむ様子も無く、前だけを見て短く、それだけ告げて列車を降りると歩き出す。
 だが、後に続く仲間達が、まだ少し痛みを伴いながらも緩く微笑み。
「……あいつが挨拶して帰るなんてなあ」
「ああ、珍しい事もあるものだね。……彼に変わってお礼を言うよ。今回は本当に有難う」
 玖世が、輝宮がそう言うのに続けて、或羽もぴょこんと姿を見せて。
「何かあったら僕を通して連絡しておくれよ! 君達は御存知の様だから言ってしまうが、彼はああ見えて皇族だからね。影朧に対しては君達の方がスペシャリストでも、他にも役に立てる事はある筈さ」
 君達の為なら普段は嫌いなコネも使ってくれるだろうと。
 そして勿論、彼等自身も役に立てる事なら力になると。
 憤怒の悪魔とその仲間達が、そう約束してくれた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月14日


挿絵イラスト