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桜散るらむ

#アヤカシエンパイア

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#アヤカシエンパイア


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●桜散るらむ
 それは布を裂いたが如き「妖の裂け目」。
 その裂け目より現れ出でるは破れ式神――妖に汚染され暴走した存在。
 黒き符を舞い踊らせながら破れ式神たちが溢れてくる。
 破れ式神たちの後ろに控えるは、女御――いや、妖「土蜘蛛」と化してしまった、元はやんごとなき身の上の女御。
「ああ……あなた……どうしてきてくれませんの……約束でしてでしょう、桜のころにと……」
 どこにいるの、と探すのは恋した者。だがその相手はもちろんここにはいない。
「どうして……どうして……きっと理由があるのでしょう。これぬ理由が。きてくれぬから……わたくしから参りましてよ……ああ、あの桜の木の下ね……はやく、はやくお会いしたい……!」
 わたくしと一緒になってくれるならそれでよろしいのです。でもそうでなければ、わたくしは――と、女御はほろほろ涙を流す。
 恋に破れた女の願いが、慟哭が零れ落ち、破れ式神たちがそれに引きずられるように騒ぎ出す。
 しかしその周辺に、戦う力の無い者達はいない。すでに陰陽師たちが、「方忌み」で立ち入りを禁じているからだ。
 抑え込んでいられる間に、討伐を――ある貴族の屋敷に恋する女の未練が形為す。
 それは約束した桜の木ではない。けれど、桜の木の下に愛しい男がいるにちがいないと――女の足はそちらへと向かっていた。

●予知
「やぁやぁ、君は僕の世界、アヤカシエンパイアにもう訪れたかい?」
 穏やかに、やわらかな微笑浮かべた青年が声をかけてくる。しかしそれは、託したいことがあるからだ。
 アヤカシエンパイアのとある貴族の屋敷にて、妖の裂け目が生じる。そこから現れる者達を討伐してほしいのだと、青年は――白矢羽・尭暁(金烏・f42890)は告げる。
「恋に破れ土蜘蛛となってしまった女御がとある屋敷に現れるのだよ。破れ式神たちを引き連れて」
 女御が恋した男が誰かはわからない。きっともうそれは過去のこと。会えぬ男を探してさまよっているのだろう。
 桜の季節に会うと約束した――しかし約束は守られず、女は死したのだろう。ふたりにどのようなことがあったのかはわからないが、このままでは彼女も救われない。しかし存在を許せば人々が傷つけられてしまうと尭暁は困ったように眉を八の字にして、猟兵たちへと願う。
 だから、倒してほしいのだと。
「戦いの場となる屋敷では、ひとが来ぬようにすでに手配してある。だから戦いだけに集中することができるよ」
 屋敷にある立派な桜の木へと、女御は向かう。しかしその前に破れ式神たちがやってくる。
 先ずはそれを排し女御を迎え撃っておくれと尭暁は言う。
「それから、破れ式神を倒し、女御を倒すことができたなら……しばしその場にとどまってほしいのだよ」
 もしかしたらまたすぐ妖の裂け目が生まれるかもしれないと、屋敷のものたちが不安がっているようなのだ。
 だからしばし滞在し、何かあってもすぐに助けるという姿を見せて欲しい。
「何、きっと何も起こらないよ。だから、宴を用意するので楽しんでいってほしい」
 丁度桜も見頃――広い庭園のある屋敷だ。庭園の一角には桜ばかりがたくさんある場所がある。
 花弁舞い散る中茶を飲んだりとゆっくりするのも良いだろう。
 そして屋敷には広い池もある。そこに船を浮かべて花見をするのもまた一興と尭暁は紡ぐ。
「船は漕ぎ手もちゃぁんといる、池の中心の島にも見事な桜があるからね、それを見に行ってみるのもよいだろうさ」
 何か、自分たちで持ち込みたいものなどれば食べ物や飲み物、酒なども好きにしてくれて大丈夫だよと尭暁は言う。
「僕もね、皆を送る仕事が終わればそちらに参ろうかな」
 よろしく頼むよと、託して――尭暁はグリモアを輝かせ猟兵達を送るのだった。


志羽
 お目通しありがとうございます、志羽です。
 詳細な受付期間については【マスターページ】【シナリオ上部のタグ】で案内しますのでお手数ですが確認お願いいたします。
 オーバーロードでプレイングをいただける場合、いつ送っていただいてもOKです。

●シナリオについて
 第1章:👾『破れ式神』
 第2章:👿『土蜘蛛女御』
 第3章:🏠『貴族の宴』
 以上の流れとなっております。

 裂け目からでてきた破れ式神を倒し、それを率いてた土蜘蛛の女御を倒す。
 その後、戦後のケアや見回りもかねて、しばらく滞在することになります。
 貴族の屋敷での戦いでした。こちら、とてもお金持ちの貴族の別荘とのこと。
 桜が沢山咲き誇る一角でゆるりと過ごしたり。池に船を浮かべて過ごす遊びができます。
 できそうな事ならなんでもOK。お好きにお過ごしくださいませ。

 公序良俗に反しない。また他の方に迷惑のかからない内容でしたら問題ありません。
 当然の事ながら、未成年の飲酒喫煙については絶対禁止です。(なお見た目年齢で判断致します)

 グループ参加などの場合は、ご一緒する方がわかるように【グループ名】や【ID】を記入していただけると助かります。また、失効日が同じになるように調整していただけると非常に助かります。

 お声がけあれば志羽のグリモア猟兵も遊びに参ります!

 以上です。
 ご参加お待ちしております!
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第1章 集団戦 『破れ式神』

POW   :    不動禁縛符
【不動禁縛符】をレベルm半径内の対象1体に飛ばす。ダメージを与え、【符が付着】した部位の使用をレベル秒間封じる。
SPD   :    群影鶴鬼符
レベルm半径内に【影でできた鶴の群れ】を放ち、命中した敵から【生命力】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ   :    月影の式神
自身の【翼】に【月影】属性を付与し、レベルkm/hの飛翔能力・五感共有・捕縛能力「【鶴翼影縛り】」を与える。

イラスト:柿坂八鹿

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 広大な庭園もつ屋敷にて、空間が裂ける――それは「妖の裂け目」。
 それより出でしは破れ式神たち。そしてその後ろに――土蜘蛛女御。
「ああ、あの桜の木の下へ……あそこにいるはず……わたくしのいとしき方……」
 土蜘蛛女御の声に従う様に破れ式神たちが桜の木の方へと向かう。
 そちらに人はいない。すでにそうなるように手配されていたからだ。
 何の憂いもなく、猟兵たちは破れ式神、そして土蜘蛛女御を迎える。
 土蜘蛛女御は、愛しい男を求めているが――その男はここには、いない。
武富・昇永
正直なところ恋に破れたなら新しい恋に走った方が建設的だと思うんだが
世の中は思った以上に未練に捕らわれることが多いんだな

まぁ背景はともかく俺にとって重要なのは貴族の屋敷に裂け目ができたということだ!
可能な限り被害を抑えることができれば、その分、俺の名が貴族の間で知れ渡るというもの!
無論、人里離れた場所でも全力を尽くすが今回は見栄えも気にしなくてはいかんな!

({思業式神・出世魚ハマチ}を召喚しUC【臘月陰陽符】を発動する)

人気はないとはいえ人様の屋敷だ!【黄金護符嵐】で捕縛しつつ妖だけを食らいつくせ!
頼んだぞ!ハマチ!

(『欲望解放』で溢れた出世欲をハマチに注いで速度と攻撃力を増強させる)




 破れ式神たちの群れがやってくる――その一群の前に立つ武富・昇永(回遊魚・f42970)はやる気に満ち溢れていた。
 戦いに赴くから、ではない。
 この件を聞いた時、正直なところ恋に破れたなら新しい恋に走った方が建設的だと思うんだが……と思ったのだ。
 しかし、世の中は思った以上に未練に捕らわれることが多いんだなと。そのような女御もいたのだろうなと納得もした。
 しかしそんな背景よりも、もっとも重要なのは――ここが貴族の屋敷であること。
「可能な限り被害を抑えることができれば、その分、俺の名が貴族の間で知れ渡るというもの!」
 このような好機、見過ごすことはできない。
 もちろん、ちゃんと託された仕事もするつもりだ。しかし、感じる――この、遠くからの視線。
「無論、人里離れた場所でも全力を尽くすが今回は見栄えも気にしなくてはいかんな!」
 大丈夫だろうかと遠くから伺う貴族の視線かもしれない。
 であれば、しっかりと見てもらうことも必要。
 魚型の式神――思業式神・出世魚ハマチを召喚した昇永は、臘月属性を付与した。
「人気はないとはいえ人様の屋敷だ! 【黄金護符嵐】で捕縛しつつ妖だけを食らいつくせ!」
 ハマチに与えられし力。黄金の護符を纏いながら空を泳ぐハマチが破れ式神たちの中へと突っ込んでいく。
「頼んだぞ! ハマチ!」
 ここで大活躍し目に留まれば今後の出世も――そんな欲望がハマチに注がれ速度と攻撃力を増していく。
 黄金護符が舞い、破れ式神を捉えたならハマチが食いつく。破れ式神の一部を食い破れば、はらとほどけてすぐ朽ちていく。
 きらきらと輝くその光景は、遠くからも目についたそうな。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゴズ・ノウズ
※連携、アドリブ可

ヒトから妖に化けたか。まったく…難儀な輩だ
望みも叶わず、世に仇なすモノに成り下がろうとは

貴様の恋した男が何者であろうと
少なくとも、貴様が平安を乱すことなど望むまいよ
成敗してくれる。それが、私の正義だ!

まずは破れ式神どもを片付けんとな
…汚染され、暴走するなどと
此奴らを創った術者の顔が見てみたいものだ

【古の神風】発動

私と味方に対して加速を
敵と、敵の飛ばした符に対しては減速を適応

速度の落ちた符での攻撃を掻い潜り
敵と肉薄し
一匹一匹、円匙にて
『怪力』任せに叩き潰してくれる!

一匹たりとも逃しはせんぞ
貴様らは存在するだけで世を乱す

土蜘蛛よ、貴様も同じだ
化けてしまった以上は
骸の海に沈めてやる




 妖の裂け目から現れる敵。
 その姿にゴズ・ノウズ(神のみぞ知る・f42841)は落ちくぼんだ頭蓋骨の中、赤い瞳に剣呑な光を宿らせる。
「ヒトから妖に化けたか。まったく……難儀な輩だ」
 望みも叶わず、世に仇なすモノに成り下がろうとは――そう紡ぎ、視線向けるは破れ式神たちを従える土蜘蛛。
 その姿を見つめ、ゴズは言い放つ。
「貴様の恋した男が何者であろうと――少なくとも、貴様が平安を乱すことなど望むまいよ」
 女の恋した相手が誰であるかはわからない。けれど、ゴズは己がやるべきことはわかっている。
「成敗してくれる。それが、私の正義だ!」
 大きく一歩を踏み出し、先ずは破れ式神どもを片付けんとなと飛び込む。
 式神――ゴズもまた、式神だ。
「……汚染され、暴走するなどと。此奴らを創った術者の顔が見てみたいものだ」
 それらは、自分とは違うものだ。
 ゴズは兵器としての運用を前提に創造された悪行罰示――であったが、術者の器を見限って離反、逃亡した身。今は自由な身の主を持たぬ野良式神。
 だが自由であれども、妖討伐や結界守護と聞けばきっちりと。
 それは護符の身体に宿りし神格が影響しているのかもしれない。
 同じ式神でありながら境遇は全く違う。
 不動禁縛符をばらまく破れ式神たち――しかし、それに対する術はある。
「風よ吹け、私の為に!」
 不動禁縛符が激しく舞散らされた。
 ゴズが呼んだのは吹きすさぶ神風。突風が、逆風が不動禁縛符の勢いを散らしていく。
 この中にいる味方には加速を。そして敵とその符に原則を――ふわふわとゆっくり動く符を掻い潜り、ゴズは破れ意識が身へと肉薄する。
 ゴズはその手の退魔円匙をぐっと握りこむ。そして破れ式神へと振り抜いた。
 持てる限りの力を乗せて――
「叩き潰してくれる!」
 一匹たりとも逃しはせんぞとゴズは振り抜いた。破れ式神がその衝撃を受けたなら散っていく。
 貴様らは存在するだけで世を乱すと、ゴズは手心加える気などもちろんない。
 そして。
「土蜘蛛よ、貴様も同じだ」
 化けてしまった以上は骸の海に沈めてやると、ゴズは再び円匙を振り抜いた。
 破れ式神が吹き飛んだ先より土蜘蛛は男を求めてゆるりと歩んでくる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
ああ、また遭遇しましたね。陰陽師は最も妖に近い分、ふと間違えれば容易に堕ちる可能性があります。外見やメインの式神から音律の陰陽師たる私に近しい存在ですね。

ある意味後輩として責任を取る意味でも、偉大なる先達、これ以上罪を犯す前に。

白鷺に乗り、【空中機動】でなるべく半径に入らないよう。いざという時は【残像】を使います。口を封じられれば全ての術が封じられますので、そこを封じられるのは避けたい。

攻撃される前に【一斉発射】で導きの狛犬、護りの狼、導きの八咫烏、金鵄を【式神使い】で飛ばします。【高速詠唱】で音律の秘術を発動。最高の位置に調節した上で痛打を。

偉大なる先達。後は私達にお任せを。




「ああ、また遭遇しましたね」
 神城・星羅(黎明の希望・f42858)はその眼を瞬かせてその先にいる者達を見詰める。
 陰陽師は最も妖に近い分、ふと間違えれば容易に堕ちる可能性がある。
 連れた破れ式神たちの姿を見て、星羅が私に近しい存在と思う。
 音律の陰陽師たる星羅はその姿に僅かに心を痛める。けれど、倒すべき存在というのはわかっているから。
「ある意味後輩として責任を取る意味でも、偉大なる先達、これ以上罪を犯す前に」
 とんと地を蹴り白鷺の背に。ふわと空を舞い、破れ式神たちを見下ろす。
 破れ式神たちが放つ不動禁縛符に触れぬようにするために。
 最悪、それが口に触れなければいい。口を封じられたなら、全ての術が封じられることを一番理解しているのは星羅だ。
 それだけは絶対に避けたいこと。
 口元を守りつつ、その符に捕らわれる前に――星羅は導きの狛犬、護りの狼、導きの八咫烏、金鵄を飛ばす。
 その間に音律の秘術を発動――そして。
「必殺の一撃……当たれ~!!」
 増幅する音波を宿した誘導弾を射出する星羅。
「偉大なる先達。後は私達にお任せを」
 破れ式神たちが倒れていく。その様を見詰めつつ土蜘蛛へも星羅は視線向ける。
 あとは、あなたと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冷泉・辰乃丞
【糸冷】
主が予知された案件、そして久方ぶりの先生との妖狩り
油断など勿論せず、完璧に成してみせよう(気合

色恋…には、正直興味は薄いが
私はただ主の意のままに、妖を祓うのみ

先生の式神が妖どもを捕縛するべく放たれると同時に、
一投で八方に飛ぶ霊符を投じ、敵の群れを包囲
素早く詠唱し、霊符内の妖を一網打尽にしてみせよう

接近する敵あらば、青龍の気を込めた強烈な拳を見舞ってやる
陰陽師だからと言って、後衛とは限らない
むしろ殴り合い上等、当然遠距離もお手の物、優秀な私に隙はない

油断せず敵を蹴散らしつつも、先生をちらり
褒められれば、表情は一見変わらないが内心誇らしげ
楽しい、と心湧きつつも、確りと残らず妖を祓っていこう


弓弦葉・晴周
【糸冷】
…御子様が予知された妖、ですか
教え子の成長も見たいですし、妖狩りといきましょう

私は今回は、辰之丞の支援をいたしましょうか
…さぁいっておいで、月の子たち
朧月陰陽符で式神に朧月の力を付与、飛行させ妖どもを捕縛させましょう
桜咲く美しい春の空を、妖に飛び回られるというのも無粋
早々に撃ち落としてくださいね、辰之丞
ええ、目障りですから(微笑み
妖の攻撃も、私の愛しい月の子たちが難なく対処してくれましょう

弟子の視線感じれば、にこにこ
ふふ、やはり私の教え子はとても優秀で、実に誇らしい
さらに腕をあげましたね、と告げつつ
辰之丞が立ち回りやすいように引き続き支援に徹しましょうか

有象無象には、用は有りませんから




「……御子様が予知された妖、ですか」
 弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)はその細められた瞳を開ける事なく、淡々と零す。
 群がる破れ式神たち――それらを前に冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)の心は、その表情には出ぬけれど逸っていた。
 それはこの件が、彼の主が予知した案件であり、そして久方ぶりに先生――晴周と共の妖狩りであるからだ。
 油断など勿論せず、完璧に成してみせようと、気合の入る教え子の姿に晴周はふふと笑い零した。
「教え子の成長も見たいですし、妖狩りといきましょう」
 そして、晴周は辰乃丞へと告げる。
「今回は辰乃丞の支援をいたしましょうか」
 それはまるで、今の貴方を見せてみなさいというように。
「……さぁいっておいで、月の子たち」
 式神に朧月の力を付与させ、晴周は飛ばす。妖どもを捕縛させてきなさいと空へ。
 桜咲く美しい春の空を、妖に飛び回られるというのも無粋――僅かにその瞳開いたなら、傍らの辰乃丞へとにこと微笑む。
「早々に撃ち落としてくださいね、辰之丞。ええ、目障りですから」
 その笑みに、はいと辰之丞は返し。
「色恋……には、正直興味は薄いが私はただ主の意のままに、妖を祓うのみ」
 己の拳は主のためにと、辰之丞は駆ける。
 晴周の式神たちが舞い踊り破れ式神たちを囲い込む。破れ式神たちの攻撃は式神たちが弾いてそれすらさせなくなる。
 私の愛しい月の子たちと難なく処するその様に微笑みを。
 そしてこの準備された状態で辰之丞がしくじることは無い。
 一投すれば八方に霊符が散り包囲する。その間に詠唱を。
「天ノ辰星、青龍破邪、急々如律令」
 詠唱が終わると同時に、青龍の力宿る数多の破邪の水刃が放たれる。水の刃は破れ式神たちを斬り裂き祓いつくす。
 破れ式神たちは何をすることも許されずその身を崩して――しかし、その隙に近づき飛び掛かるものも。
 けれど、青龍の気を込めた強烈な拳を見舞えばその敵も果てるのみ。
 陰陽師だからと言って、後衛とは限らない。むしろ殴り合い上等、遠距離も近距離もお手の物だ。
 優秀な私に隙はないとすんとした顔。
 しかし、ちらり。辰之丞は晴周の方を見る。私の戦いぶりはいかがでしょうかと――師の言葉を待っているのだ。
 その視線感じれば、にこにこと晴周は微笑んで。
「ふふ、やはり私の教え子はとても優秀で、実に誇らしい」
 さらに腕をあげましたねと晴周が告げると辰之丞は再び敵へ向かう。
 その表情は一件、いつもと変わらないが内心誇らしげだ。
 先生と一緒の戦いは楽しいと心湧きつつ、辰之丞は敵を祓っていく。
 それを察しながら弟子が立ち回りやすいようにと晴周は式神を操る。
「有象無象には、用は有りませんから」
 私が用があるのは――晴周は目の前にいる破れ式神たちを見てはいない。その後ろからゆるりと歩いてくる土蜘蛛も。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●SPD

春はなほ
来ぬ人待たじ
花をのみ
心のどかに
見てを暮らさむ

とはならず、恋破れた情念の炎で妖に付け入られたようだね
傷心したやんごとなき御方の心を恋多き君たるボクが慰めてあげたいところ だけど、まずは破れた平安結界の裂け目をこれ以上広げない事と妖気に誘われた破れ式神をどうにかしないとだ

|阿近《あこん》、|吽近《うこん》にはその霊力をもって結界の裂け目の拡大を防がせよう
そうなると破れ式神にはボク一人で立ち向かわないといけないんだけど、とっておきのコレを使わせて貰うよ
オン、【倶利伽羅の黒龍】!
吐き出される炎は、この場に漂う恋破れた未練で燻る情念をも焼き清める浄炎
桜の木は燃やさず、妖のみを焼き清めるよ




 ひらりとまう、桜の花弁をその手に招いて八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)はひとつ、歌をおもう。
「春はなほ来ぬ人待たじ花をのみ心のどかに見てを暮らさむ――とはならず、恋破れた情念の炎で妖に付け入られたようだね」
 その瞳は破れ式神たちの向こう側にいる土蜘蛛へと向けられる。
 傷心したやんごとなき御方の心を恋多き君たるボクが慰めてあげたいところと、頼典は思う。
 破れ式神たちの向こうにいる土蜘蛛女御――妖であってもその美しさはそうなる前と変わらないのだろう。
 恋する女の熱っぽい視線を、此処に居ない誰かに向けているようだ。
「だけど、まずは破れた平安結界の裂け目をこれ以上広げない事と妖気に誘われた破れ式神をどうにかしないとだ」
 女好きの頼典としては、今すぐにでもあの女御の話を聞いてあげたいというところ。
 しかしその前に、破れ式神たちが立ち塞がる。
「|阿近《あこん》、|吽近《うこん》」
 頼典がその名を呼ぶ式神たち。荒々しく燃え盛る炎の如き毛並みと気性を持つ獅子と犬に似た霊獣と、静かなる激流の渦が如き毛並みと気性を持つ獅子と犬に似た霊獣と。
 目配せひとつすれば、結界の裂け目の拡大を防ぐようその霊力を注ぐ二体。
「そうなると――」
 破れ式神にはボク一人で立ち向かわないといけないんだけど、と頼典は紡ぐ。
 しかしそこに焦りもなにもなく、ただ口端をあげて笑ってみせる。
「とっておきのコレを使わせて貰うよ」
 そう言って、不動明王が描かれた剣型の形を頼典は手にして。
「オン、【倶利伽羅の黒龍】!」
 智剣の化身たる黒龍『倶利伽羅龍王』を放つ頼典。
 吐き出される炎はあらゆる不浄を焼き清める迦楼羅炎。ダメージを与えるとともに、この場に漂う恋破れた未練で燻る情念をも焼き清める浄炎なのだ。
 浄炎は破れ式神たちが放った影でできた鶴の群れをも共に燃やす。その炎は何処までも広がるかに見えて――桜の木は燃やさず、妖の身を焼き清めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

誘名・櫻宵
🌸神櫻

現世は夢、とはよく謳ったものね
故郷に似てされど何処か哀しい世界

懐かしい話ね
私が初めて咲いた日かしら
カムイと共にいる桜姫竜神…私の前世イザナが
恋うた厄神との約束を果たした日だったかしら
あの別れの日も桜の木の下で
カムイとの出逢いの日も桜の木の下

散れども咲いて朽ちはしない
桜はそんな花
カムイ、同情してはいけない
彼女の約束は厄災になった
腐った花は散らさねば…再び咲くこともできない

艷華
カムイと息を合わせ
影斬り式神に宿る生命力を喰らい桜と咲かせる神罰を与える
攻撃は桜吹雪のオーラでいなし
衝撃波放ち薙ぎ払い飛ぶかう鳥も斬り落とす
月影の式神も美しいけど
宵の桜ほど美しいものもない

破れた戀を弔うにはぴったりよ


朱赫七・カムイ
⛩神櫻

滅びて尚、厄災を夢幻に隠した世か

桜の下で愛しい者を待つ…平安の世にあっても変わらないのだな
嘗て影朧だった『私』はそうして愛しい者を求め駆けていたか……懐かしいね、神斬
そう声をかけるのは、我が巫女たるサヨの後ろで少しバツの悪そうにしている厄神の神霊だ

縋るように歩む土蜘蛛女御の姿に嘗てを重ねるも、サヨの言葉に前を見据える
守られぬ約束は、既に厄災と化した
結ばれぬ約を断ち切ろう
もう傷つき苦しまぬように

疾く駆けて、薙ぎ払うように神刀にて斬撃を放つ
破れ式神を斬り裂いて、サヨと太刀筋を合わせ放つは【春暁ノ朱華】
どんな影の攻撃も暗闇にも決して負けず立ち向かう

厄を調伏し降す──それも禍津の神の役割だろう?




 アヤカシエンパイア――この世界の空気を睫震わせながら瞳閉じて感じる誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)。
「現世は夢、とはよく謳ったものね」
 桜霞の瞳をゆるりと開いて、故郷に似てされど何処か哀しい世界と櫻宵は紡ぐ。
 そして朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)もこの世の在り方に触れて。
「滅びて尚、厄災を夢幻に隠した世か」
 そして思うのは――どこでだって、似た話はあるのだと。
「桜の下で愛しい者を待つ……平安の世にあっても変わらないのだな」
 それはカムイにとっても覚えのある――小さく、笑い零して。けれどそこには様々な想いが詰まっているのだろう。
「嘗て影朧だった『私』はそうして愛しい者を求め駆けていたか……懐かしいね、神斬」
 そう、声をかけた相手はは櫻宵の後ろで少しバツの悪そうにしている。厄神の神霊はふいと、視線を逸らした。
 それはもう過ぎ去った過去の話――けれど昨日のことのようにまだ鮮やかにあるのだろう。
「懐かしい話ね、私が初めて咲いた日かしら」
 その様子を目に小さく声零し櫻宵が見るのは、カムイと共にいる桜姫竜神――つまり前世のイザナだ。
「それとも、恋うた厄神との約束を果たした日だったかしら」
 あの別れの日も桜の木の下で、カムイとの出逢いの日も桜の木の下――どちらも桜の木が傍らにあった。
 桜の木は、ふたりにとって切っても切り離せぬ存在。
 散れども咲いて朽ちはしない――桜はそんな花と、知っている。
 でもそれは無事、咲き誇り散ることができたならだ。
「カムイ、同情してはいけない」
 櫻宵は紡ぐ。目線で示した先には、桜の下での再会を望み願い、探す土蜘蛛女御。
「彼女の約束は厄災になった」
「サヨ……」
「腐った花は散らさねば……再び咲くこともできない」
 縋る様に歩む土蜘蛛女御の姿は、カムイに嘗ての自身を重ねていた。
 まるで自分の事でもあるように思えて――けれど、櫻宵の凛とした声に現実を見据える。
「守られぬ約束は、既に厄災と化した……」
「そう」
「なら――結ばれぬ約を断ち切ろう」
 もう傷つき苦しまぬように――と、カムイは朱砂の彩宿す桜の龍瞳を敵へと向け、一呼吸。
 喰桜を手に疾く駆け、破れ式神たちの前で足を止めたなら薙ぎ払うように放たれる斬撃見舞うカムイ。
 その次の攻撃は――傍らに櫻宵の気配。櫻宵が振るうは屠桜。
 重なる二つの太刀筋が咬みあって破れ式神たちを捉える。
 飛び立とうと翼広げた破れ式神の上に桜が咲く。それは櫻宵の与えた神罰。
 そして陰でできた鶴の群れが放たれたなら、その前にただ静かにカムイがたたずむ。
「――世の中に たえて桜の なかりせば 春の心は のどけからまし」
 赫の一閃は断ち切る鋭さをかわして桜の花弁がひらりはらり。
「厄を調伏し降す──それも禍津の神の役割だろう?」
 破れ式神たちが消えていく。その向こうに土蜘蛛女御の姿だ。
 己と重なる者に抱える想いはあるが、それは最初に見えたときと今は違う。
 そしてその変化を櫻宵もわかっている。まだ残る破れ式神が飛翔を持って飛び掛かる――けれど、来るのもわかっているのだから。
「月影の式神も美しいけど、宵の桜ほど美しいものもない」
 櫻宵は屠桜を手に舞うかのように斬り伏せて。
「破れた戀を弔うにはぴったりよ」
 カムイと視線の先を同じにする。
 戀を、知っているから。彼女がこの世に留まる事を許すわけにはいかないから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎬木・一郎
ンー、人生時には諦める事も大切だぜェ?過去をみるのは悪い事じゃねェ、未来に進むも大いに結構。だが、留まったまんまは戴けねェ。ここは一つ俺が来世に向けてブッ飛ばしてやんぜェ。てェ訳で、手始めにコイツら処理するとすっかァ。

俺は死んでも未練を残さねェように、できる限り楽しむ事にしてんだァ。てェ訳でお前ら、俺の楽しみの為に的にでもなってくれやァ。

なァンかコイツら嫌な予感すンだよなァ。迂闊に近寄らん方がいいかァ?

どっこいしょっと。さァて、どっかに良い狙撃ポイントは無いかねェ。おじさん歳だから疲れやすいのよォ。

いやァ、俺の訓練になるだけじゃなくて、楽しみにもなってくれるなんて、お前らは何て良い奴らなんだァ。お前らの気持ちを無駄にしない様にぜェんぶ俺の糧にしてやるから安心しなァ。

お前らは楽しんでるかィ?俺は楽しいぞォ?人生楽しんでなんぼだと思うんだよなァ。そう思わんかァ?

敵の頭部の赤色の部分、腹部の星のマーク。的として狙いやすそうな所を射ち抜く。

お前らも、次があったなら人生を楽しみ尽くすこったなァ。



 男を思って、そして妖となりはてた――そんな女御の姿に鎬木・一郎(人間のガンスリンガー・f42982)は肩を竦めて。
「ンー、人生時には諦める事も大切だぜェ?」
 過去をみるのは悪い事じゃねェ、未来に進むも大いに結構と、一郎は紡ぐ。
 否定なんてない。ただ女御の在り方を受け止めているのだ。けれど、このままにしておくことはできないこともわかっている。
「だが、留まったまんまは戴けねェ。ここは一つ俺が来世に向けてブッ飛ばしてやんぜェ」
 それが女御のためにも良いだろう。
 けれど、そうするためには――まず目の前の敵。
「てェ訳で、手始めにコイツら処理するとすっかァ」
 破れ式神たちへと一郎は目を向ける。鶴のような、しかしそうではない式神たちは女御のを進みゆく。
 その数もだいぶ減っており、あと少しというところ。
「俺は死んでも未練を残さねェように、できる限り楽しむ事にしてんだァ。てェ訳でお前ら、俺の楽しみの為に的にでもなってくれやァ」
 そう紡いで、破れ式神のもとへ――と思ったが、一郎の足は止まった。
「なァンかコイツら嫌な予感すンだよなァ。迂闊に近寄らん方がいいかァ?」
 それは直感。しかし足を止めたのは正解だったのだ。
 影でできた鶴の群れが、破れ式神の周囲から飛び立った。破れ式神の周囲を舞う鶴の群れ。
 あれに当たれば、何かしら弊害があると思うのは自然な事。
 口笛一つ、一郎はやっぱり近づかなくて正解だったなァと零し周囲を見回す。
「どっこいしょっと。さァて、どっかに良い狙撃ポイントは無いかねェ。おじさん歳だから疲れやすいのよォ」
 だから距離を取り、戦える場所を。
 丁度いい場所があると木の陰に。ここは貴族の屋敷の庭。
 美しく整えられた木々は影となる場所も多い。少し離れた、隠れるのにおあつらえ向きの場所に入れば。
「いやァ、俺の訓練になるだけじゃなくて、楽しみにもなってくれるなんて、お前らは何て良い奴らなんだァ」
 まさに狙い放題。
 一郎は笑って、リボルバー銃を構える。
「お前らの気持ちを無駄にしない様にぜェんぶ俺の糧にしてやるから安心しなァ」
 さて、始めるかと一郎は撃つ。まだ自分に気づいてない破れ式神を狙いなら――その一点。
「お前らは楽しんでるかィ? 俺は楽しいぞォ? 人生楽しんでなんぼだと思うんだよなァ。そう思わんかァ?」
 頭部の赤い色、腹部の星。どちらも的として狙いやすそうだと一郎は狙い定めた。
「お前らも、次があったなら人生を楽しみ尽くすこったなァ」
 次々と打ち落としていく一郎。
 破れ式神はどこと探すが、其れより早く一郎の弾丸が貫く。発砲の音と共に最後に残っていた破れ式神が倒れていく。
 そして残るは――土蜘蛛女御のみ。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『土蜘蛛女御』

POW   :    赤糸くくり
レベルm半径内を【蜘蛛の巣の糸】で覆い、[蜘蛛の巣の糸]に触れた敵から【抵抗心】を吸収する。
SPD   :    土蜘蛛八刃脚
【妖力の糸】が命中した敵を【鋭い蜘蛛脚】で追撃する。また、敵のあらゆる攻撃を[鋭い蜘蛛脚]で受け止め[妖力の糸]で反撃する。
WIZ   :    朽ちぬ恋文
自身が愛する【相手に手紙を出すための筆】を止まる事なく使役もしくは使用し続けている限り、決して死ぬ事はない。

イラスト:みよ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 破れ式神たちが倒れても、土蜘蛛女御は気にせず歩む。
 桜の木まであともう少しと、ゆるゆるとした歩みだ。
 けれど――その木の下には誰もいないのを目にし、足が止まる。
 いない。愛しい男がいない――その事実に女御は首を傾げた。
「ああ……どうして、いないのかしら……」
 どうして……その理由を、どこにいるかあなたたちはご存じかしらと女御は猟兵たちへ問う。
「まだ、ここにきていないだけなのかしら?」
 恋をする女は愛しい男の姿を求める。男はここにはこないし、おそらくもうこの世にはいないのだ。
 だから彼女に終わりを。
武富・昇永
待つだけ無駄だ
ここにはお前の愛しい人は来ない
この世にはいないということだ
想いが成就しない悲しみは理解できるが
ここに留まられたら困るゆえ
結界の外におかえり願いたいところなんだが

言われて従う性根でもなさそだし
戦闘になるだろう
{護廷式神・出世魚ブリ}を盾に
{転身式神・多忙冠者}を囮にして
妖の攻撃を回避しつつ
俺は{妖切太刀・御首級頂戴丸}を抜刀して
【陰陽道・煩悩滅殺の輝き】で
妖の想い人に対する未練を消し飛ばした後
とどめに一刀両断してやろう

それにしても今にも消えてしまいそうなほどの儚さを纏った妖だな
未練というものはここまで心を弱くするものなのか?



 どうしていないのと――土蜘蛛女御が零す。
 その言葉に最初に答えを与えたのは武富・昇永(回遊魚・f42970)だった。
「待つだけ無駄だ。ここにはお前の愛しい人は来ない」
「こない? どこにいらっしゃるのか……あなたは。ご存じ?」
 昇永は知っていると静かに返す。
 まぁ、と土蜘蛛女御が嬉しそうな表情で。どちらにいらっしゃるのか教えてくださいましと彼女はそわりとする。
 しかし、彼女が望む言葉を昇永が与える事はない。ゆるりと首を横に振って。
「この世にはいないということだ」
 告げたその言葉。しかし彼女は理解ができぬようでぱちりと瞬いた。
「想いが成就しない悲しみは理解できるがここに留まられたら困るゆえ、結界の外におかえり願いたいところなんだが」
「うそ! うそでしょう!!」
 けれど、やはりと昇永は思う。
 やはり――この土蜘蛛女御に言葉での説得は通じない。
 言われて従う性根でもなさそだしと昇永はその姿を目にした時から思っていた。
 戦いになるだろうというのも、予想済み。
 昇永は護廷式神・出世魚ブリを盾に。そして転身式神・多忙冠者――昇永そっくりの姿をした式神を囮に。
「ああ……あの方はいらっしゃるわ。だって文を、文を……!」
 土蜘蛛女御は筆を取り出し、文を書く。この文だって届くのだと――ひらりはらり、文が舞う。
 その様を目に、やはり戦いになると妖切太刀・御首級頂戴丸を抜刀する昇永。
 それは出世欲が高まるほどに切れ味が増し、竹刀のように軽く振れるというもの。
 昇永はそれを軽いと振るう。舞う文と共に土蜘蛛女御を斬りつけるが、文を書き続ける彼女は死ぬことはない。
 けれど、昇永の一閃はそれを揺らがせる。
「お前たち如きには不相応な感情だ! 失くした方が清々するぞ!」
 全ての穢れを清めるような眩い光を御首級頂戴丸の刀身から放つ。
 それは欲望・執着・未練の消失を促す光。
 その光に照らされた土蜘蛛女御の手が止まり――
「本当に……いらっしゃらないの?」
 そんな呟きが落とされた。
 あなた、と本当にと昇永を見るけれどそれは、式神。
 本当の昇永は土蜘蛛女御へと刃を、一刀両断すべく走らせる。
 今にも消えてしまいそうなほどの儚さを纏っている――そう、土蜘蛛女御の姿を見て、昇永は思う。
「未練というものはここまで心を弱くするものなのか?」
 刀を受け、きゃあとか弱い声を零し土蜘蛛女御は倒れる。
 けれど彼女の心が落ち着いたのはわずかばかり。やはりあの方はどこと、想う男を探し求める。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ゴズ・ノウズ
さあな、理由は知らぬが
此処には来られぬのだろうよ

そして、二度と会うことは叶わん
貴様が妖である以上はな!

蜘蛛の巣の糸か、厄介だな
だが、抵抗心を吸われようとも問題ない
私はただ、私の正義に従い
為すべきことを為すのみだ

今為すべきは
“敵への抵抗”でなく
“一人の女が世を乱さぬよう努めること”だ!

円匙で片腕の肘から先を切り落とし
【微塵厄災符】発動

爆破で蜘蛛の糸を吹き飛ばして
自由を取り戻し
かつ厄災の具現をけしかけて
妖にダメージを与えるぞ

…赤い糸、か
愛する者と結ばれたいという
女の念の具現だろうか

女と男の間に何があったはわからぬが
死に別れたのだと考えれば
少しばかり、憐れではあるな
此奴も、元はヒトだったのだから



「どこに、どこにいらっしゃるの……桜の木のもとに行かなければ……」
 攻撃を受け倒れながらも求めている。ゴズ・ノウズ(神のみぞ知る・f42841)が土蜘蛛女御の前に立てば、同じように問うのだ。
 あの人を知らないか、どうしてここにいないのかと。
「さあな、理由は知らぬが此処には来られぬのだろうよ」
 たんたんとゴズは告げる。ここにいないのは事実だと。
「そして、二度と会うことは叶わん」
 二度と? と土蜘蛛女御は問う。それはどうしてというように。ゴズはその明確なる答えを、持っていた。
「貴様が妖である以上はな!」
 それを告げれば敵意を感じたか、土蜘蛛女御は距離を取る。
 そして近づかないで、足を止めなければと蜘蛛の巣を広げた。それは触れたなら、抵抗心を吸収し糧とするもの。
「蜘蛛の巣の糸か、厄介だな」
 だが、抵抗心を吸われようとも問題ないとゴズはその中に踏み込む。
 この程度でゴズが止まることはないのだ。
「私はただ、私の正義に従い為すべきことを為すのみだ」
 明確に、何をすべきか――ゴズはそれを得ている。
 今為すべきは、とそれをすでに定められているのは護符の身体に宿りし神格の影響だろうか。
「“敵への抵抗”でなく“一人の女が世を乱さぬよう努めること”だ!」
 その為には、己の身を使うことも厭わず。
 円匙で片腕の肘から先を切り落とし護符爆弾として放つ。
「きゃああ!!」
 腕、腕がと声を上げる土蜘蛛女御。その本質はやはりまだ、女御の頃のものが濃いのだろうか。
 だがそれも気にせずゴズは護符爆弾としたそれを投げ蜘蛛の糸を吹き飛ばした。
 絡め取られていたその身は自由を取り戻し、厄災の具現たる蠅の群れをけしかける。
 土蜘蛛女御はいやいやとその袖で顔を隠す様にその蠅から逃げようとする。
 確実にダメージは募っているようだ。
 はらはらと、蜘蛛糸が――赤い蜘蛛糸がはらりと空を舞った。それをゴズは視線で追いかける。
「……赤い糸、か」
 愛する者と結ばれたいという女の念の具現だろうか、とゴズは思う。
 想いが強いからこそ、ここに妖としているのもまた明らか。
 この土蜘蛛女御と、彼女が言う男の間に何があったかは、ゴズにはわからぬ事。
 死に別れたのだと考えれば少しばかり、憐れではあるな――ゴズはそう思う。
 何故なら、と土蜘蛛女御をゴズは見詰める。
「此奴も、元はヒトだったのだから」
 そう思う。今、攻撃を受け騒ぐ姿は宮中に居る女御がとりそうな姿なのだから。
 想い募ってどうしてこうなったか――しかし、妖で在る限りは倒さねばならぬ存在。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君の朔兎様(f43270)と参加

困りましたね、正直私一人では手が余る妖です・・・って朔兎様!?

まさか来てくださるとは。やはり心配させてしまってのですね。

女御様。愛しい方が今傍にいる私ですから、お気持ちは良くわかるのですが、もう叶えられない願いゆえ、被害が広がる前に祓わせていただきます。

朔兎様が糸の対応をしてくださるので筆の対応をしましょう。音律陰陽符の効果を金鵄と導きの八咫烏に付与した上で【式神使い】で飛ばし、朔兎様様の攻撃に【援護射撃】する感じで【誘導弾】を飛ばします。更に【音響弾】も追加で飛ばせば、筆を使用する為の集中を逸らせるでしょうか。

【残像】【幻影使い】などの備えもしておく。


源・朔兎
愛しの姫の星羅(f42858)と参加

とても嫌な予感がきたので来た!!

(咄嗟に星羅を後ろに庇って)なるほどな、俺が来てよかったな。女御殿、気持ちは良くわかるんだが、愛しの方はもうこの世にいないんだ。無駄な血が流れる前に祓わせてもらうぜ。

妖力の糸は当たりたくないんで【残像】【心眼】【幻影使い】で回避させてもらう!!当たって攻撃に追撃が確定しても全力で【怪力】と【気合い】を込めて双月の秘技で蜘蛛脚を【切断】してやればいい!!

愛しい星羅の前でくたばってたまるかよ!!一度見れば【カウンター】できるしな!!ああ、【武器受け】の準備もするし、【オーラ防御】【回復力】で耐久戦の準備も。

悪いな、眠ってくれ。



 土蜘蛛女御は男への想いを吐露しながら、どこと探す。
 攻撃を受け、どうしてわたくしがこのようなと嘆きながら。
 その様子を見ていた神城・星羅(黎明の希望・f42858)はひやりとしたものを感じていた。
 土蜘蛛女御が星羅の方へと視線を向ける。
「困りましたね、正直私一人では手が余る妖です……って朔兎様!?」
 けれどさっと自分の前に出た者の姿にぱちりと瞬く。
 それは愛しの君――源・朔兎(既望の彩光・f43270)だったから。
「なるほどな、俺が来てよかったな。女御殿、気持ちは良くわかるんだが、愛しの方はもうこの世にいないんだ。無駄な血が流れる前に祓わせてもらうぜ」
 背中に星羅を庇う朔兎。
 なんだか嫌な予感がしてやってきたのだが、正解だったようだ。
 そして星羅はまさか来てくださるとは、と彼を見つめる。やはり心配させてしまっているのですねと思いながら。
 彼の背の後ろから、星羅は告げる。
「女御様。愛しい方が今傍にいる私ですから、お気持ちは良くわかるのですが、もう叶えられない願いゆえ、被害が広がる前に祓わせていただきます」
「……あなた方は……好きあっているのです? ああ、共にいるなんて……なんて、羨ましいこと!」
 妖力で編み出した糸が放たれる。朔兎はそれにはあたりたくないなと回避する。しかし、からみついても。
 月読の技――朔兎の独自の技をもってその糸を。そしてその蜘蛛の足を切断する。
「ひいぃっ!」
「愛しい星羅の前でくたばってたまるかよ!!」
 糸への対処を朔兎が行う。その間に星羅は、筆の対応を。
 彼女が文を書き始めればいくら攻撃しても倒せなくなる。
 なら、と音律陰陽符の効果を金鵄と導きの八咫烏に付与し飛ばす。
 朔兎が仕掛ける攻撃に合わせ、星羅は援護射撃のように誘導弾を飛ばす。
 そこへ音響弾も放ち、土蜘蛛女御に筆をとらせぬよう星羅は戦う。
「悪いな、眠ってくれ」
 双月の剣を朔兎は振るう。土蜘蛛女御の、蜘蛛の脚を切り落とせば土蜘蛛女御の悲鳴があがる。
 そして二人をみて、彼女は怨嗟の声を落とす。
「ともにいて、幸せそうなあなた方には、わたくしの気持ちなどわからぬのです……! 共におれぬわたくしの、この気持ちなど……!」
 そう云い捨て、逃げるように背を向ける土蜘蛛女御。
 傷を負っても、男と会うまでは果てられぬというように。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

勧禅寺・宗大
アドリブ連携可
とりあえず慌ててはせ参じてみたが少し出遅れたか、
ただ見るにかつての思いに囚われて彷徨う者のようだ。

ならばと手持ちの式神を解き放って使うは【式神酒池肉林の陣】、
飲食には興味はないだろうが土蜘蛛の思う相手の幻影は効果覿面だろう。

流石に本人の幻影に会って文も長くは書かないだろうし、
そのまま式神の陣による結界に封じて【浄化】して行こう。

個人的に妖に恨みはあるし、
この世界の我々にとっては不倶戴天の敵だが妄念を断ち切るのは悪いこっちゃない。
幸せな思い出を一時でも取り戻して死ぬのも結果論としては世の為よ。

なーんて、この姿になっちまったクセにカッコつけすぎたか?



 戦いはもう始まっていて――勧禅寺・宗大(平安貴族(従五位上)の幻惑の陰陽師・f43235)は少し出遅れたかと駆ける。
 すでに破れ式神たちはおらず、土蜘蛛女御のみ。それも攻撃を受け逃げ惑うようなそぶりを見せているその姿を目にし、宗大は僅かに瞳細める。
 ただ見るにかつての思いに囚われて彷徨う者のようだ――それが、宗大が土蜘蛛女御から感じた印象だ。
 ならば、と宗大は手持ちの式神をすべて解き放つ。そうして紡ぐのは式神酒池肉林の陣。
 幻惑の陰陽師として己が持つ術を全て注ぎ込んだ。
「飲食には興味はないだろうが」
 土蜘蛛女御の思う相手の幻影は効果覿面だろう――幻影の中にその姿を見れば良いと宗大は思うのだ。
 そのまま封じて、浄化すればいいと。
 そして土蜘蛛女御の前に酒池肉林の幻影が広がる。
「ああ、あなた様……! どちらへ、どちらへ行かれるのですか」
 その中に愛しい男を見つけたのだろう。ふらふらと土蜘蛛女御は歩む。
 筆を持つ余裕も無さそうで、男を追いかけいつの間にか魅了され、痛手を負っていることにも気づかない。
 幻惑の中にそのまま捕らわれて幸せなままに倒れてくれたならそれでいい。
 個人的に妖に恨みはあるし、この世界の我々にとっては不倶戴天の敵だが妄念を断ち切るのは悪いこっちゃない。
 宗大は土蜘蛛女御を改めてみる。その表情は恋する女そのものだ。
「幸せな思い出を一時でも取り戻して死ぬのも結果論としては世の為よ」
 そう紡いで――けれど宗大は、はっと息をはく。
「なーんて、この姿になっちまったクセにカッコつけすぎたか?」
 本来ならば45歳という年齢相応の姿をしている。しかし、妖にハメられ紆余曲折。今は十代中盤くらいにしか見えないのだ。
 だからなんとなく、見た目と紡いだ言葉がなんだかかみあっていないようがして、苦笑が零れた。
 あの時の妖のようなことは、この土蜘蛛女御はしないだろうがしかし油断は禁物。早く祓ってやろうと一層幻惑は濃くなる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冷泉・辰乃丞
【糸冷】

敵を確認すれば、いち早く動いて
術の詠唱をし、水の渦で捕縛

先程は先生にご支援いただきましたので
今回は私が敵を抑えます
そう師へ告げつつ、表情は変わらないが心の中で密かにわくわく
尊敬する先生が妖を祓うお姿を是非見たいと思うから

色恋に関しての興味は、やはり私には薄い
だからか、文芸や和歌の才に富む家系に生まれながらも
正直そういった類の才は我ながら皆無
教養として作法通り無難には歌を詠めるが
私の歌は風情がないらしい

だから私は、陰陽師と武芸の才を磨き、妖を祓う
己の職務を全うする為に

妖の糸も命中しなければいい(脳筋
そうですね、尭暁様のお世話に早く戻らなねば
やはり先生はお強い、と尊敬の眼差し向け頷きながら


弓弦葉・晴周
【糸冷】

…違いますね、やはり
そう密かに零し

辰之丞がお膳立てしてくれたのですから
師として良い格好を見せねばですな(微笑み
神器解放にて、三種の神器のうち、天叢雲剣を無限複製し

愛しき御方を探し彷徨う
ええ、そのお気持ちはよくわかりますとも
されど、貴女も相手様も、現し世の存在では既にございませぬ
そこが私達との違い…この晴周は、いまだ人の世に在りますゆえ

妖力の糸も剣の刃で届かせはしませぬ
貴方様の糸は、何処にも結ばれる事は叶いません
ですからせめて、苦しむ間もなく終わらせましょうね

御子様もお待ちです、手早く祓いましょう
数え切れぬ程の刃を無慈悲に女御へと、派手に突き立てましょうか

またいずれ…次の機を待ちましょう



「……違いますね、やはり」
 その姿を前に瞳は細められたまま。弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)は密やかに零し、わかっていたことですけれどと誰にも気取られずに嘆息する。
 その視線の先にいるのは土蜘蛛女御。
 ふらりと、土蜘蛛女御は歩んで――ああ、これは幻惑と突然に気付く。
 こうしてはいられない、早くあの方のもとへと再び動き始めたその時。
「――天ノ辰星、水渦烈烈、急々如律令」
 術の詠唱が終わる。それと同時に冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)の放った猛る青龍が放つ水の渦が、土蜘蛛女御を捉えた。
「先程は先生にご支援いただきましたので」
 今回は私が敵を抑えますと、弟子たる辰乃丞は師へと紡ぐ。
 その表情はいつもと変わらずすんとしたものだが心ので密かにわくわくとしていた。
 それは尊敬する先生が妖を祓うお姿が見られる――またとない機会なのだ。
 弟子のお膳立てに晴周は微笑みを浮かべ。
「師として良い格好を見せねばですな」
 それでは、と三種の神器のうち、天叢雲剣を無限複製し晴周は並べたてる。
「愛しき御方を探し彷徨う。ええ、そのお気持ちはよくわかりますとも」
 晴周は土蜘蛛女御へ言葉向ける。
「されど、貴女も相手様も、現し世の存在では既にございませぬ」
 たんたんと、ただ事実を伝えていく晴周。
「そこが私達との違い……この晴周は、いまだ人の世に在りますゆえ」
 どうしようもなく隔てられた誰にもどうすることのできない事実。それを告げるが土蜘蛛女御には、理解できぬのだろう。
「わたくしの心はわたくしにしかわかりませぬ。けれど、あなた様も恋焦がれる方がいらっしゃるならわたくしを行かせてくださいませ」
 その言葉にやんわりと晴周は微笑むだけだ。
 土蜘蛛女御と晴周のやり取りを見つつ、やはりと辰乃丞は思う。
 やはり――色恋に関しての興味は、やはり薄いと。土蜘蛛女御が焦がれているのはわかるが、それに感情を揺さぶられる事はない。
 だからか、文芸や和歌の才に富む家系に生まれながらも正直そういった類の才は我ながら皆無と辰乃丞は自身を冷静にみる。
 教養として作法通り無難には歌を詠めるが私の歌は風情がないらしい――と、人からの言葉を思い出す。
 けれど、だからこそなのだ。
 だからこそ、辰乃丞陰陽師と武芸の才を磨き、妖を祓う。
 己の職務を全うするために。だから今も、師と土蜘蛛女御の動きを見逃さぬように見つめていた。
 だから、行かせることはさせてくれぬと察した土蜘蛛女御は妖力の糸を放つのにもすぐ対処しさっと避けた。妖の糸も命中しなければいいだけのことと体をさっと動かす。
 晴周も天叢雲剣の刃で軽く防いでその糸が届くことはなく。はらりと落ちていくそれを晴周は見やる。
「貴方様の糸は、何処にも結ばれる事は叶いません。ですからせめて、苦しむ間もなく終わらせましょうね」
 そう、言い放つと同時に晴周は辰乃丞へと視線向け。
「御子様もお待ちです、手早く祓いましょう」
「そうですね、尭暁様のお世話に早く戻らなねば」
 こくと、やはり先生はお強いと尊敬の眼差しを向けながら辰乃丞が頷くと同時に、同時に数え切れぬ程の刃が無慈悲に降り注ぐ。
 それに貫かれた土蜘蛛女御は悲鳴を上げてひぃひぃと逃げた。
 追いかけますと視線で告げた辰乃丞に、追わなくて良いと晴周は止める。他の方もいらっしゃいますし、それにもう――とその先が長くないことを見越し、お任せしましょうと晴周は踵返し辰乃丞もついていく。
 確かにもう、あの妖の終わりは見えている。それに主を迎える準備も早くできるというもの。
 辰乃丞は晴周に、迎えの準備をしに行ってまいりますと告げて先に往く。
 ええ、おいきなさいと晴周はその姿を見送り、視線をゆるりと流し咲き誇る桜を目にとめて。
「またいずれ……次の機を待ちましょう」
 ほとりと晴周は零す。いつか己が願いを叶えることができる時がくると迷いなく信じて。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎬木・一郎
ふゥ、やれやれだねェ。お前さんが現世でウダウダやってる間に、大事な男はさっさと来世に行っちまったぜェ。来世に行けば会えるなんて安請け合いはしねェが、現世にいれば永遠に会えねェだろうなァ。

俺はキューピッドにゃなれねェが、0%を1%にする手助けなら出来るかもしれねェな。持ってるのも弓矢じゃなくて銃だしな、ククッ。

脚でガードしてくんなら、それを捥ぎとっちまえばいい。知ってるかァ?蜘蛛脚の関節は思う程頑丈じゃねェんだぜェ。

相手の側面から銃を構え、一発撃ち込み、脚でガードした瞬間バレットタイムを発動。その脚の関節部に銃弾を撃ち込む。

ククッ、死なねェってかァ!だったらその力を扱える部位を潰しちまえば良いだろォ?

オジサン、疲れるの嫌いだし、あんまり痛め付けるのも趣味じゃねェから、あんまし抵抗しねェでくれなァ。

口で言ってもわからねェだろうし、わからせる自信もねェ、だから取り敢えず輪廻の輪に叩き込んで、後は愛する男とやらに丸投げだァ!カカッ。

俺に出来ンのはここまでだァ。後は精々自力で頑張んなァ。じゃあな。



 傷を負って、束の間の幸せな時間も得て――土蜘蛛女御は未だ、淡い期待を持っていた。
 あの人がいないと。あの人が来ないと。あの人が、あの人はどこに――そんな焦りを抱えた彼女の前にまたひとり。
「ふゥ、やれやれだねェ。お前さんが現世でウダウダやってる間に、大事な男はさっさと来世に行っちまったぜェ」
 どこ、と探す土蜘蛛女御へと鎬木・一郎(人間のガンスリンガー・f42982)は男のいる場所を告げる。
 すると土蜘蛛女御は、顔隠す袖を少し下げ一郎を見つめた。
「来世……?」
 来世で会えるのでしょうか、あの人と……愛するあの人と、と零す言葉にいいやと首を振る一郎。
「来世に行けば会えるなんて安請け合いはしねェが、現世にいれば永遠に会えねェだろうなァ」
 必ず来世で会える、と言い切ることは出来ない。けれどこの現世にいれば会えない事は間違いない。
 それは誰でもわかることだとう。けれどいま、それが土蜘蛛女御にはわからぬのだ。
 だから、一郎はその背中を押すように紡ぐ。
「俺はキューピッドにゃなれねェが、0%を1%にする手助けなら出来るかもしれねェな。持ってるのも弓矢じゃなくて銃だしな、ククッ」
 リボルバー銃をくるりと回して遊ばせて。その銃口を一郎は土蜘蛛女御へと向けた。
 土蜘蛛女御もこれまで攻撃を受けてきたこともあり、なにかを感じ取ったのか――後ずさりしてその脚で身を包むように隠す。
 すでに満身創痍ではあるが、まだ求める心は尽きぬのだ。
 その様を見つつ、その脚でガードしてくるなら、それを捥ぎとっっちまえばいい、と一郎は思う。
「知ってるかァ? 蜘蛛脚の関節は思う程頑丈じゃねェんだぜェ」
 土蜘蛛女御は傷つけられてなるものかというように妖力の糸を張り巡らせ、鋭い蜘蛛足を一郎へと振り下ろす。
 けれどそれをかわして側面へと回り込み銃へ構え一発。それをガードされたならその瞬間、時間の知覚を125分の1にして、流す。
 ゆるやかに流れる世界。しかし思考はいつも通り――その脚の関節部へと一郎は銃弾を叩き込んだ。
「ククッ、死なねェってかァ! だったらその力を扱える部位を潰しちまえば良いだろォ?」
 蜘蛛足の関節は破壊され、だらりと垂れさがる。女は正面から戦えば己の命が危ういことも察して逃げの一手だ。
「ああ、脚が、脚が!」
 慌てて土蜘蛛女御は下がり、一郎へと背を向ける。
「オジサン、疲れるの嫌いだし、あんまり痛め付けるのも趣味じゃねェから、あんまし抵抗しねェでくれなァ」
 逃げる女を撃つのは、あまりいい気はしない。しかし目の前の相手は妖――倒さねばならぬ相手だ。
「口で言ってもわからねェだろうし、わからせる自信もねェ、だから取り敢えず輪廻の輪に叩き込んで、後は愛する男とやらに丸投げだァ! カカッ」
 理解はできないだろうと言葉を交わして感じた。そしてそれを理解させられるかというえば、そうは思えない。
 なら、己の出来ることを成し、それによってこの土蜘蛛女御にとっての救いになればいいと。
「俺に出来ンのはここまでだァ。後は精々自力で頑張んなァ。じゃあな」
 リボルバー銃から放たれる弾丸は土蜘蛛女御を来世へと送るべく撃ち放たれる。
 その痛みを受けながら、土蜘蛛女御は逃げる。
 来世へ行けば会えるのだろうか――いいえ、いいえ、やはりあの場所で待たなくてはと。

大成功 🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●WIZ

これはこれはやんごとなき御方
このような形となりましたが、お目通りが叶いまして恐悦至極であります
ですが、貴方様はこの世の住人ではありませぬ
どうか未練を断ち切り、在るべき世界へお帰りに…ならないよね
ここまで愛憎未練を拗らせれば白矢羽様が申された通りに倒すしかない…が、ただ倒すだけではまた骸なる海で未練を募らせ妖の裂け目から染み出るかも知れない

なら、彼女の未練…桜の木の下での逢瀬を【目殺師の君】で果たしてみせようか
彼女に魅せるはこの世におられぬ思い人の姿
ボクが彼となり、嘘も方便な果たせなかった約束をここで果たそう
まぁ当然無事で済まないだろうけど、これがボクなりの戦い方でね?
さぁ、お祓い奉ろう



 傷を負ってふらつく土蜘蛛女御――その前に八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は立つ。
 蜘蛛の脚は生えているが、顔立ちは美しく。
「これはこれはやんごとなき御方」
 頼典は柔らかに、土蜘蛛女御を貴人として扱う。
「このような形となりましたが、お目通りが叶いまして恐悦至極であります」
 礼を一つ。頼典が微笑んで言の葉を紡ぐ。うっとりと幻惑に捕らわれていた土蜘蛛女御は僅かに現実に引き戻される心地。
「ですが、貴方様はこの世の住人ではありませぬ」
「わたくしは……あの方のところにいかなければ、なりません……! そこを通してくださいませ」
「どうか未練を断ち切り、在るべき世界へお帰りに……ならないよね」
 土蜘蛛女御の言葉に、まぁそうなるかと頼典は苦笑する。
 ここまで愛憎未練を拗らせれば白矢羽様が申された通りに倒すしかない――もうどうにもできないのだなと改めて感じ、頼典は瞳細めた。
 もう言葉でどうこうできるところは、過ぎている。
「ここまで……が、ただ倒すだけではまた骸なる海で未練を募らせ妖の裂け目から染み出るかも知れない」
 それは避けなければならない。この平安の世を守るためにもと。
 では、今自分ができることはと頼典は考えて。
「なら、彼女の未練……桜の木の下での逢瀬を【目殺師の君】で果たしてみせようか」
 彼女に魅せるはこの世におられぬ思い人の姿――頼典は金の瞳を土蜘蛛女御へと向ける。
 ボクが彼となり、嘘も方便な果たせなかった約束をここで果たそうと、向ける魅惑の視線。
 こちらを見てと土蜘蛛女御の顎を掬い上げその視線を捉えた。
「……ああ、あなたさま……!」
 その視線に捕らわれて土蜘蛛女御は頼典へとしなだれかかる。
 こんなに傷を負ってと、土蜘蛛女御をいたわり彼女の思う男を頼典は演じる。
 しかしそれも束の間の夢ではある。
 まぁ、当然無事では済まないだろう。けれど――
「これがボクなりの戦い方でね?」
「何か、おっしゃいまして?」
 なんでもないよと頼典は笑む。幸せそうな笑みを浮かべる土蜘蛛女御。これはつかの間の事だと頼典は知っている。
 さぁ、お祓い奉ろう――幸せのあとには現実がくるのだから。
 しかししばしの後に土蜘蛛女御も我にかえる。頼典の元から離れて――幸せな時間をありがとうと告げ何もせず彼女は桜の木へとふらふらと、向かっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

本当は分かっていたのではないか?
待ち人は居らぬということを

愛しきを待つ千年は永遠のようで身を蝕む孤独は軈て身も心も魂さえも歪め壊すものだとしっている
私は直ぐにサヨに逢えた…倖にね
もしかしたら、あの女御は私の姿であったのやもしれない

厄と化した戀におわりを告げよう
哀となった愛に、すくいを

そなたの戀がこれ以上世に禍を振りまかぬように
仕留めるのも禍津神の役目

送桜ノ厄神

澱み歪んだ御魂を斬り清め
サヨの太刀筋と斬撃を重ね赤い糸を共に斬る

桜は出会いと共に別れを告げて
されども共に寄り添ってくれる花
花弔いと成そう
そなたの心の裡、愛しく哀しい愛と共に厄災と化した戀を斬る
桜の樹の下には醜くも美しい心が睡っている


誘名・櫻宵
🌸神櫻

待ち人は待てども来ず…その戀は叶わない
信じたくないでしょうね
きっと、愛しき者との再会だけが彼女に残った唯一なのだと
自らで止まることも諦めることもできないでしょう
──あいしているから
果たしてあなたは愛した人の声を姿を
今も思い出せるのかしら?

近しいと感じるからこそ見ていられない思いがある
ええ、カムイ
私も幸運だった
あなたにまた逢えたから


駆けて、衝撃波と共に絶華を放つ
あいすることの歓びと苦しみをしっている
だから、抵抗せずにあなたの苦しみ事受け止めて──そのまま
紡いだ赤い糸ごとアイを断つ

潰えた戀の哀しみと共に桜の元にお眠り
例え此処で終わろうと
桜は巡り咲き誇る花

きっとあえるわ
黄泉桜の下で愛しい人と



 土蜘蛛女御が、桜の木の元へ向かう。傷ついた体であっても、のろのろと。
 その姿を、誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)と朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)は目にして――それぞれ胸に想い抱える。
「待ち人は待てども来ず……その戀は叶わない」
 溜息のように櫻宵は零す。
 信じたくないでしょうねと櫻宵はその睫毛震わせ瞳閉じる。
 きっと、愛しき者との再会だけが彼女に残った唯一なのだと、手に取るようにわかる。
 自らで止まることも諦めることもできないということも、わかる。
 それは──あいしているから。
「果たしてあなたは愛した人の声を姿を今も思い出せるのかしら?」
 言葉を投げかければ土蜘蛛女御は振り向いて。
「お願いです、お願いです……せめて、せめて桜のもとへ……あの人のところへ……」
 そう告げて歩みはとめない。ふらりよろり、おぼつかぬ足で、倒れる前に約束の場所へと――その桜の木は約束の場所でないのだけれど――向かっているのだろう。
「本当は分かっていたのではないか? 待ち人は居らぬということを」
 その言葉に彼女の歩みは止まった。けれど振り切る様に再び歩み始める。
 カムイはしっている。
 愛しきを待つ千年は永遠のようで身を蝕む孤独は軈て身も心も魂さえも歪め壊すものだと――しっている。
 そして傍らの、櫻宵へと淡く微笑んだ。
「私は直ぐにサヨに逢えた……倖にね」
 もしかしたら、あの女御は私の姿であったのやもしれない――その想いはカムイの中で燻っていた。
「ええ、カムイ」
 私も幸運だった、と櫻宵もカムイを見詰め微笑む。
 何かが少しでも違っていたら、あの土蜘蛛女御のように出会えぬまま彷徨っていた可能性だってある。
 今こうして、共にあれることは奇跡にも似たことなのかもしれない。
「あなたにまた逢えたから」
 そうだねとカムイも微笑んで――けれど、意識は土蜘蛛女御へと向く。
 もしかしたらの未来の体現。
「厄と化した戀におわりを告げよう」
 哀となった愛に、すくいをと、カムイは喰桜に手を置く。
 それと同時に土蜘蛛女御は蜘蛛の巣の糸を広げて身を守ろうとする。
 赤い糸が巡る。恋するものが紡ぐ赤い糸――しかし土蜘蛛女御のそれは、断ち切らねばならぬもの。
「そなたの戀がこれ以上世に禍を振りまかぬように、仕留めるのも禍津神の役目」
 カムイの心が何を為すべきか定まったとともに櫻宵は屠桜を持って駆ける。
「── 君、死にたまふことなかれ。そなたの禍は赦された」
 それは禍津神の慰めと厄された御魂を掬う祈りを籠めた齎された厄を喰らい倖を約する朱砂の太刀による一撃。
 澱み歪んだ御魂を斬り清めてあげようと。そしてそれに重なるのは――
「黄泉桜を咲かせてあげる。潔く、散りなさい」
 櫻宵の不可視の剣戟による一撃。
 あいすることの歓びと苦しみをしっている、と櫻宵は紡ぐ。
「だから、抵抗せずにあなたの苦しみ事受け止めて──そのまま」
 紡いだ赤い糸を重なる斬撃が斬って。そして、そのまま土蜘蛛女御の身の上を走った。
 ひらりはらり、桜の花弁も舞い落ちる。
 倒れていく土蜘蛛女御は、淡い吐息を零し、ああ、何処にいらっしゃるのと――その瞼を閉じた。
「潰えた戀の哀しみと共に桜の元にお眠り」
 そんな彼女へと、櫻宵は先程までとは違った柔らかな表情を向ける。
「例え此処で終わろうと桜は巡り咲き誇る花」
 そうでしょう、とカムイへと櫻宵が問えばひとつ頷いて。
「桜は出会いと共に別れを告げてされども共に寄り添ってくれる花」
 これは花弔いとカムイは笑む。
「そなたの心の裡、愛しく哀しい愛と共に厄災と化した戀を斬った」
 だから今は散り、そしてまた咲くが良いと、カムイは告げる。
 歪んで捕らわれた想いは解き放たれて――妖となった女御は、細く紡ぐ。
「……会えます、でしょうか……」
「きっとあえるわ。黄泉桜の下で愛しい人と」
 櫻宵は女御へと、だから大丈夫と微笑んだ。それに安心したか土蜘蛛女御はそっと目を閉じ、消えていく。
 ひらりはらり、舞い落ちてきた花弁を櫻宵は掌に受け止めて。そして会えるといいわねとまた空へと遊ばせた。
 その花弁をカムイは地へと降りていく。カムイはその様を見詰めながら、想う。
 桜の樹の下には醜くも美しい心が睡っていると。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『貴族の宴』

POW   :    大いに飲み食いし、主催者のもてなしを褒め称える

SPD   :    他の参加者と共に遊戯や歌に興じる

WIZ   :    花や月を愛で、その美しさを語らう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 破れ式神、そして恋した男を探していた土蜘蛛女御も倒され平穏が戻ってくる。
 妖の裂け目は閉じられた――けれど、また生まれるではと不安を持っているものもいる。
 そのような者達を安心させるためにも、できるなら猟兵の皆様にはしばしとどまっていただきたいと館の主は言う。
 広い庭園は散策するのにもよいだろう。
 庭園の一角には桜ばかりが咲き誇る場所がある。風に舞う花弁の中、歩むのもまた風情がある。
 それにこの屋敷には池もあり舟遊びもできる。池の中心にある島にも見事な桜があるのでそこへ行ってみるのもいいだろう。
 どうぞ、花見の時間としてくださいませと酒や茶、軽食に甘味も取り揃えておりますので必要でしたらお持ちくださいと貴族は言う。
 今が丁度満開。
 咲き誇ったあとは、散っていくのみ――その、散り往くまでの僅かな美しき時間がきっとあるのだろう。
武富・昇永
裂け目を閉じてもこの屋敷に住まう方々の心の翳りを残したままではいかんな
立つ鳥跡を濁さず、という言葉もあるし
ここは俺のとっておきの秘儀で心を和ませるとしよう

この屋敷の主人たちは皆、部屋にいるかな?
この技は室内で映えるのでお招きしなくては

(貴族を室内に集めると{座敷式神・出世魚モジャコ}を召喚し『欲望解放』で{昇鯉紋}を輝かせながら、溢れた出世欲を式神に注いで鱗を艶やかに輝かせるとUC【臘月陰陽符】を発動して室内を回遊させる)

いかがでしょう?これぞ私が編み出した技と雅の融合!
屋敷に居ながらまるで海の中を散策しているような夢の中の如きこの風景!
これを愛でながら宴を催すのも一興かと!



 妖の裂け目はとじられ、平穏が戻ってくる。
 けれど、それだけで簡単に人々の心がすぐさま穏やかになるかといえば――そうではないことを武富・昇永(昇鯉・f42970)は知っていた。
「裂け目を閉じてもこの屋敷に住まう方々の心の翳りを残したままではいかんな」
 なんとなく、屋敷の中の人々の浮ついた気配。それを感じながら昇永はゆるりと歩む。
「立つ鳥跡を濁さず、という言葉もあるし」
 ここは俺のとっておきの秘儀で心を和ませるとしよう――それに、それで貴族からの覚えも良くなるかもしれないと思う心もそうっと持ちつつ。
「この屋敷の主人たちは皆、部屋にいるかな?」
 昇永はふと目に着いた使用人たちへ尋ねる。すると、あちらにいらっしゃいますよと答える。
 彼らがまだ、不安げな顔をしていることにも気づいて、昇永は大丈夫だと告げる。もし、また開いたとしてもすぐに閉じようと安心させるように語れば彼らにも笑顔が戻る。
「そうだ、ひとつ部屋を用意してくれないか」
 この技は室内で映えるのでお招きしなくては、と貴族たちを部屋へと誘う。
 貴族たちも、まだ不安を滲ませている様子。
 そんな彼らの心を和ませるべく――座敷式神・出世魚モジャコを昇永は召喚する。
 モジャコがゆるりと空を泳ぐ。それと同時に欲望解放すれば鱗の艶やかさは一層増すばかり。きらきらと、鱗の輝きは反射して室内にも光が交差する不思議な空間となる。
 室内をゆるりと回遊すればきらめきは万華鏡のように変わり、貴族たちはこれは美しいと見惚れていた。
「いかがでしょう? これぞ私が編み出した技と雅の融合!」
 部屋の中をゆっくりと泳ぎその鱗は輝かんばかり。昇永は彼らの心にそそるように紡ぐ。
「屋敷に居ながらまるで海の中を散策しているような夢の中の如きこの風景!」
 いかがでしょうと紡ぐ昇永へ貴族たちは、改めて見事なものだと笑顔で頷き見惚れる。
 そして今が、売り込み時というもの。
「これを愛でながら宴を催すのも一興かと!」
「おお、なるほど……! 実は近々、宴があるのだが君、空いているかね?」
「いや、うちの宴の方が先だ」
「おお、何時でございましょう? はは、どちらにももちろん参りましょう」
 このような宴が、いつ、どこで――そんな話を持ちかけられ昇永は笑顔で答える。
 貴族たちとの新たな人脈が作られていく。それは昇永にとって意味あることで、心の内でも満面の笑みを浮かべるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

神城・星羅
愛しの君である朔兎様(f43270)と参加

土蜘蛛女御なる妖、狂ってしまいましたが、その愛の心は真実でした。だからこそ愛しい君である朔兎様とは離れてはいけないと思いますね。

私と朔兎様の年齢では宴を楽しむのは無理がありますし・・舟遊びですか?そうですね、今宵は月も綺麗です。ゆっくり楽しみましょう。

舟を漕ぐのは朔兎様にお任せしますが、歌を紡いで拍子を取るにはお任せを。桜の鮮やかさは大切な母様や姉様に重なりますし、鮮やかな月はいつも輝く存在であり、瞬兄様と朔兎様に繋がります。

自覚はなさそうですが、瞬兄様と朔兎様は似ているのですよ。違うようで似ている対の存在。

その心を胸に秘めながらこの時間を過ごします。


源・朔兎
愛しの姫である星羅(f42858)と参加

そうだな、あの土蜘蛛女御、狂い方が尋常じゃなかったが愛の心は本物だった。だからこそ星羅と再び巡り会えた事に感謝しないとな。もう離れる気はないぜ?

宴は俺たちの年齢ではいるだけで迷惑だな。舟遊びするか?桜も月も綺麗だ。

正直星羅の歌で舟を漕ぐなんて夢のようだ。そうだな、咲き誇る桜の華やかさは響さんと奏さんを感じられるし、月の輝きは俺の道筋の光である師匠と瞬さんを感じさせる。

こうして月を見てると感じるんだ。早く師匠と瞬さんに追いつく男になりたいと。瞬さんは俺と似た空気を感じるんだ。月の関連の深さ、戦う理由の根源。

今の目の前の星羅にふさわしい男になることを誓うぜ。



 愛しい人と共に居られることはなんて幸せなのだろうか。
 改めて、その事実を神城・星羅(黎明の希望・f42858)は感じて、源・朔兎(既望の彩光・f43270)へと己の心に宿った言葉を告げる。
「土蜘蛛女御なる妖、狂ってしまいましたが、その愛の心は真実でした」
 だからこそ、とまっすぐ星羅は、愛しの君である朔兎を見詰め。
「愛しい君である朔兎様とは離れてはいけないと思いますね」
「そうだな、あの土蜘蛛女御、狂い方が尋常じゃなかったが愛の心は本物だった。だからこそ星羅と再び巡り会えた事に感謝しないとな。もう離れる気はないぜ?」
 その言葉に朔兎もはにかみ、笑って返す。
 お互いに抱いた気持ちが重なっているのがわかってそれだけでも幸せなこと。
 と――賑やかな声も聞こえてくる。それは宴の声だろう。
「宴は俺たちの年齢ではいるだけで迷惑だな。舟遊びするか? 桜も月も綺麗だ」
「舟遊びですか?」
 私と朔兎様の年齢では宴を楽しむのは無理がありますし、と思っていた星羅は示された方を見る。
 この屋敷には池があり、舟を出してくれるという。
「そうですね、今宵は月も綺麗です。ゆっくり楽しみましょう」
 漕ぎ手もいたけれど、小さめの舟を借り朔兎自身の手で舟をこぐ。
 星羅は舟を漕ぐことは朔兎に任せていたけれど、歌を紡いで拍子をとった。
 星羅の歌で舟を漕ぐなんて夢のようだと朔兎もすいすいと舟をすすめていく。
「桜の鮮やかさは大切な母様や姉様に重なりますし、鮮やかな月はいつも輝く存在であり、瞬兄様と朔兎様に繋がります」
 ふと、歌の合間に星羅が零せば朔兎も同じように思っていたことがあるようだ。
「そうだな、咲き誇る桜の華やかさは響さんと奏さんを感じられるし、月の輝きは俺の道筋の光である師匠と瞬さんを感じさせる」
 月の光に照らされ、ひらりと桜の花弁が舞い降りてくる舟の上にたつ。そんな朔兎を見詰めていると、ふと視線が合う。
「こうして月を見てると感じるんだ。早く師匠と瞬さんに追いつく男になりたいと」
 朔兎はもうすでに、どうなりたいのかが自分の中にしっかりとあった。
「瞬さんは俺と似た空気を感じるんだ」
 月の関連の深さ、戦う理由の根源――朔兎がそう感じる理由はそれだ。
 そして星羅はぱちりと瞬いて小さく笑み零す。
(「自覚はなさそうですが、瞬兄様と朔兎様は似ているのですよ」)
 違うようで似ている対の存在のように星羅には見えている。
 その心を胸に秘めながら、星羅は朔兎と友に居られるこの時間を大事に過ごしていた。
 そんな、月明りを受けながら笑み零す星羅。今、目の前にいる星羅にふさわしい男になる――それを朔兎は心の中で誓う。まだまだ、研鑽は必要だけれども隣に立つにふさわしくあると。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

鎬木・一郎
桜、甘味、穏やかに流れる時間……ンンー、風流だねェ。

絶景も然ることながら、町の風景、人の活気。こんな俺でも、この風景を守る一助になれたかと思うと感慨深いねェ。

桜も素晴らしい、甘味も素晴らしい、だがこれ等が合わさって。何倍も素晴らしいモノにしている。(ジュースを飲んで)かァー!これだから花見はやめらンねェなァー。絶景かな絶景かなってなァ!カッカッカ!

一通り花見をした後、今度は歩きながら風景や活気を満喫する。

変装をして、一般人として町の人と談話とかしてみる。

いやぁ、俺はあまりこう言う所に来た事ねェけど、桜も綺麗だし、食いもンもうまいし、人も良い奴が多い。ここは良い所だねェー。(守れて良かったぜェ)



 ふわと桜の花弁が舞い踊る様を眺めつつ、鎬木・一郎(人間のガンスリンガー・f42982)は屋敷の貴族が準備していた甘味を口に運ぶ。
「桜、甘味、穏やかに流れる時間……ンンー、風流だねェ」
 妖の裂け目を閉じたからこそ訪れた時間。
 あれを防ぐことができていなければ、きっといまこの屋敷も――いや、周辺全てがこんな穏やかな空気でいられなかっただろう。
「絶景も然ることながら、町の風景、人の活気。こんな俺でも、この風景を守る一助になれたかと思うと感慨深いねェ」
 それを思いながら一郎は甘味を口へ運ぶ。
 ひらりはらり、舞い踊る桜の花弁。咲き誇るそれは、今が一番あでやかな時期なのだろう。この後は散って、その葉は緑へと変わってゆくだけ。
 だから一番の見頃にこの時間を過ごせるのはとても贅沢なことだ。
「桜も素晴らしい、甘味も素晴らしい、だがこれ等が合わさって。何倍も素晴らしいモノにしている」
 と、ジュースをキュッと喉へと落して。
「かァー! これだから花見はやめらンねェなァー。絶景かな絶景かなってなァ! カッカッカ!」
 最後の一口を口に運んだなら、さてと一郎は立ち上がる。
 一通り花見をしたのだ。今度は歩きながら、周辺の風景や活気を満喫するのも、また良い時間になるだろう。
 しかし、戦い終わったその姿で回るのではなく一郎は変装をする。
 一般的な、町民のような格好をして、気さくにひとびとに話しかけていく。
「いやぁ、俺はあまりこう言う所に来た事ねェけど、桜も綺麗だし、食いもンもうまいし、人も良い奴が多い。ここは良い所だねェー」
「やぁ、そりゃあよかった。桜ももうすぐ終わりそうだからねぇ」
 なんて、話好きの町人と出会ったなら、あそこにいったかい、あっちはどうだいとおすすめの場所を教えてくれる。
 その声はとても弾んでいて、楽しいのだと――平穏の中にある人々の活気を感じることができた。
 一郎は、じゃあそっちへ行ってみるかぁと礼を言ってゆるりと歩む。
 人の活気をその身に感じながら思うのは。
(「守れて良かったぜェ」)
 ここで生きている人々の日々が変わらず続いていく。それを守った事実に心は満たされていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

勧禅寺・宗大
アドリブ可
まあ一度澱むと疑心暗鬼になるわな、
折角なので【清浄の君】で浄化しながら舟に乗り、
水上で桜を愛でながら茶を入れた竹筒と水菓子を味わうとしよう。
こうすれば漕ぎ手が浄化をしているのを伝えるだろうさ。

漕ぎ手にも竹筒と水菓子を渡し、しばしぼうと桜を見つめる。
異世界には不思議な力を持って咲き続ける桜があるらしい…
私もそのような物になってしまったのかもしれん。
おそらく姿を奪った仇敵を倒しても元の姿に戻れる事もほぼ無いだろう。
そろそろ童の姿で一生過ごす事も考えるべきか…

現実を見ようとしてるのか悲観してるのか
分からん事を考えながらそのまま舟上で横になる。
花散ってただの桜に戻れば先に進めるのかねぇ…。



 それもまたひとの心だろうと、勧禅寺・宗大(平安貴族(正五位下)の幻惑の陰陽師・f43235)は苦笑する。
「まあ一度澱むと疑心暗鬼になるわな」
 折角だと宗大は舟に乗る。広い池から見える桜たち――花弁もひらひらと、水面を揺蕩うている。
 そんな様を愛でながら、茶を入れた竹筒と水菓子を味わう。
「かつては清浄、老いて幻惑……経験を得て若返った今ならよりどちらも使えるだろうよ」
 けれど、ただゆったりと過ごしているだけではなく、宗大は浄化の力を振るっていた。
 それは宗大の独自の技能、清浄の君――浄化と誘惑を組み合わせたそれで周囲に清冽な気を満たしていく。
 ただ過ごしているだけではなく、浄化をしている。それは漕ぎ手にも伝わっているのだろう。
 これはと周囲を見渡しそれをなにかしら、感じているようだ。
「あんたも、どうだ?」
 と、漕ぎ手にも竹筒と水菓子を渡す宗大。漕ぎ手は、ありがたいと礼をいい、静かに舟を漕ぐ。ここが一等、見栄えのする場所と穴場に導いて舟は速度を落としゆっくりと。
 しばしぼうと桜を見詰めながら、宗大はそういえばと思い出す。
(「異世界には不思議な力を持って咲き続ける桜があるらしい……」) その話を聞いてから、宗大の中に一つの仮説のようなものが生まれたのだ。
「私もそのような物になってしまったのかもしれん」
 それを今ぽつりと言葉にして落す。
 おそらく、姿を奪った仇敵を倒しても元の姿に戻れる事もほぼ無いだろう――となるととその藍の瞳を宗大は閉じて。
「そろそろ童の姿で一生過ごす事も考えるべきか……」
 ため息交じりに、まだ決めきれない己の行く末を思う。
 なんとなく、このままなのだろうなぁというのは感じている。けれどそうと決めてしまうにはまだ早いような気もするのだ。
 現実を見ようとしてるのか悲観してるのか――どちらだろうかとそれはまだ宗大にも分からない。
 分からない事を考えながら、宗大はそのまま舟上で横になった。
 すると頭上に、枝葉大きく伸ばした桜の天蓋がある。
「花散ってただの桜に戻れば先に進めるのかねぇ……」
 深く考えれば考える程、行き詰ってしまうような心地もありつつ。
 簡単に答えはでないかと、宗大は再び、少しばかり瞳を閉じる。
 舟に揺られるこの僅かに時間は何も考える事なく気持ちよく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冷泉・辰乃丞
【糸冷】

只今戻りました、尭暁様
主に確り報告後

当然の様に、主の従者として宴に…
私のしたい事、ですか?

思い返すは先日の事
あの時は妖の幻影の桜でしたので
では、花見を
先生は如何されますか
私は尭暁様と共に

結局何だかんだ普段通り主の世話を焼き
一等見事な場所で花見を
尭暁様、酒とつまみを(お酌
酒…は余り得意ではないが主に勧められれば少しだけ
甘味にほわっと幸せに
少々ふわほわした心地になるも主にしかわからぬ機微

色恋はわかりませんし、芸術面の才はありませんが
桜咲くこの美しい景色を楽しむ風情くらいはあります
たまにはと桜の風景を絵にしたため(画伯

主の髪に降るひとひらをそっと取って差し上げつつ
尭暁様が楽しそうで何より、と


弓弦葉・晴周
【糸冷】

御子様、妖を滅して参りました
辰之丞の成長も見れましたし、何も問題ございません
念の為、暫し留まっておきましょうか

では私は、周囲の様子見も兼ねて庭の散策をいたしましょう
御子様と教え子とは別行動に

春の庭を巡りつつ思い返すは、月の君と過ごした日々
舟遊び…あの御方は歌が下手でございましたから
従者であった頃は、それなりに厳しく指導いたしましたね
晴周、と微笑む姿は無垢で
花を静かに愛でる月は、儚くも美しゅうございました

御子様をお見かけすれば、一瞬そっと微か瞳を開く
…月の君
陰陽や微笑みは全くお父上とは違いますが
しかし、やはり似ていらっしゃる、と遠目から

そして
御子様の元に、いつしかきっと…
そう心の内だけで



 その姿を見つけたなら、冷泉・辰乃丞(青の鎮魂歌・f42891)の表情はきりと一層引き締まる。
「只今戻りました、尭暁様」
 主たる白矢羽・尭暁の前にたてば従者として、すっと報告をする。
 そんな弟子の姿に弓弦葉・晴周(月に焦がれる・f43172)はふと笑い零した。
「御子様、妖を滅して参りました」
「うん、ありがとう。ふふ、れーくんは……楽しかったようだね」
 辰乃丞の表情がいつもより楽し気で。きっと先生と一緒の時間がよかったのだろうなぁと尭暁は思う。
 そして尭暁は晴周へと笑いかけ。
「久しぶりにれーくんを連れての実戦はどうでしたか?」
「辰之丞の成長も見れましたし、何も問題ございません」
 念の為、暫し留まっておきましょうかと晴周はいつもと変わらぬ笑みで返した。
「だって。よかったね、れーくん」
 主が向ける言葉をスンとした顔で受け止めて。けれど僅かに滲む彼の機微に尭暁も笑む。やはり嬉しいのだなと。
 そして、おいでになったのだから宴にと誘いもうけていたのだけれど。
「れーくん、何か……したいことはあるかい?」
「私のしたい事、ですか?」
「そう。ちゃぁんと僕からの頼みを達してくれたからね」
 これはご褒美と尭暁が言う。辰乃丞はふと、先日の事を思い返す。
 あの時は、妖の幻影の桜だった――だから今日は。
「では、花見を。先生は如何されますか」
「では私は、周囲の様子見も兼ねて庭の散策をいたしましょう」
「私は尭暁様と共に」
 ではまた後程、と晴周は二人から離れて春の庭を巡りに。
 その背を見つつ――さて、と尭暁は辰乃丞を見て笑む。
「花見に行こうか。一等良い場所があるらしいよ」
 春の庭を歩み、立派な桜のもとへ。その大樹の下には席が設けられ、甘味につまみ、酒や茶ももうあった。
「尭暁様、これは」
「準備させておいた」
 ほら、楽しもうと尭暁は先に腰を下ろすと隣をぽんと叩く。辰乃丞はその場所へ腰を下ろしたものの、用意されたものを手に取りなんだかんだで普段通り、世話を焼く。
「尭暁様、酒とつまみを」
「ん」
 とくと注がれた杯を見て、れーくんも飲まない? と尭暁からの視線。
 酒は、余り得意ではないけれど主からの勧め。では少しだけと杯をもち注ごうとすれば尭暁はそれを奪って注ぐ。
「桜の花弁も遊びにきてくれたよ」
 ひらりと辰乃丞の杯の上にひとひら。それにこれもと、尭暁は辰乃丞の好きそうな甘味を渡す。
 にこにこと見詰められているのは、お食べということで。口にすればほわっと幸せ。それに酒を含めば少しほわほわとした心地。
 その様に尭暁は微笑んで、嬉しそうにする。
 ひらひらと舞い落ちる桜の花弁。辰乃丞はそれを見詰め、懐から紙と筆を取り出した。
「うん? 歌でも詠む? 珍しいね」
「色恋はわかりませんし、芸術面の才はありませんが桜咲くこの美しい景色を楽しむ風情くらいはあります」
 たまにはと桜の風景を絵にしたためていく辰乃丞。その絵は――嵐の夜のよう。 
 ちらとそれを見た尭暁はそっと瞳を閉じた。
 そしてふと、ひらりひらりと舞い遊ぶ花弁が尭暁の髪に落ちて。辰乃丞は手を伸ばしそっとそれを取る。
「なぁに、くすぐったいよ」
「花弁が遊びにきていましたので」
 そうか、と楽し気に笑む。主が笑みを浮かべている。楽しそうで何よりと、辰乃丞の口端も僅かに緩んだ。

 ゆるりと春の庭を巡りながら晴周が思い返すは、今は亡き尭暁の父――月の君と過ごした日々の事。
 池のほとりを歩けば遠くに舟が見えて。
「舟遊び……」
 めぐるのは過日。舟の上で歌をとなるが彼は歌が下手で。
 従者であった頃は、それなりに厳しく指導いたしましたねとふと笑い零す。
『晴周』
 自分の名を呼び、微笑む姿は無垢で。
 その真白き指で花を優しく撫で、静かに愛でる晴周の月。
 その姿は儚くも美しくあったと記憶の中の彼が笑む。
「……おや」
 と、道の続く先の大樹の下で花見をする弟子とかの君の御子の姿を見かければ一瞬そっと――微かに瞳を開く。
「……月の君」
 当代の白矢羽の君に満ちる陰陽。それに彼が浮かべる微笑みは、晴周の月の君とは違うものだ。
 しかし、やはり似ていらっしゃると遠目から見て思う。
 きっといつかその日はくるだろう。
 御子様の元に、いつしかきっと……現れるだろうと晴周は心の内でそっと落とした。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

八秦・頼典
●WIZ

すべては終わり、後は結界を修復するのみ…おや、白矢羽様
女子がもう居ないのにボクが残っているのが不思議であると…?
はは、これは耳が痛い
確かに『恋多き御方』と貴族や市井の民草に呼ばれていますが、そんなボクでも一人になりたい時があります

今はそう…愛故に恋に破れ、愛故に妖に果ててしまったあの御方が、無事に来世で思い人と巡り会える事を月を眺めて願っていた所でございます
…やはり女子の事しか考えておらぬと?
ええ、それでこその八秦・頼典でありますので

白矢羽様と別れてもなお、ボクは桜と月夜を眺めよう
そしてどの歌を詠おうか悩んでいたけど、この歌を詠ってここから去ろう

此世には
忘れぬ春の
面影よ
朧月夜の
花の光に



 花弁が舞う光景に八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は瞳細める。
「すべては終わり、後は結界を修復するのみ……」
 と、頼典は歩みつつ他にも綻びがないか、と庭園を巡っていれば。
「おや、白矢羽様」
 この場に頼典を送った白矢羽・尭暁を見つければ礼を一つ。尭暁も、今日はありがとうと笑み浮かべて――周囲を見回し首を傾げた。
「ん? あれ、珍しいね。君の周りに女の子が……いない?」
「女子がもう居ないのにボクが残っているのが不思議であると……?」
 そうと頷いて、尭暁は君の傍にはいつも女人という印象なのだけれどと紡いで。
「はは、これは耳が痛い」
 ひらりと檜扇開いて、頼典は顔隠し苦笑する。
「確かに『恋多き御方』と貴族や市井の民草に呼ばれていますが、そんなボクでも一人になりたい時があります」
「ああ、そういうときは確かにあるね。僕も一人になりたいときはよく抜け出す」
 と、笑って尭暁が言えばその後ろ、従者の表情が僅かにきゅっとなる。
 そんな様子に頼典は笑って――ふと桜を見上げる。
「今はそう……愛故に恋に破れ、愛故に妖に果ててしまったあの御方が、無事に来世で思い人と巡り会える事を月を眺めて願っていた所でございます」
 その想いは本物でしたからと頼典は彼女を思い出す。
 浮かべた表情に、やはり君は君だねと尭暁は紡いで。
「……やはり女子の事しか考えておらぬと?」
「うん。そうだね、でもそれでこそ」
「ええ、それでこその八秦・頼典でありますので」
 その通りだと笑って尭暁はゆるりと、想い馳せておくれと残し離れていく。
 彼を見送って――そして再び、頼典は桜と月を見上げた。
 ひらりはらり、花弁が舞い落ちるのを、檜扇で受け止める。
 どの歌を詠もうか悩んで、それがやっと心に定まる。
 ゆるりと、頼典はその口開いて。
「此世には」
 忘れぬ春の 面影よ 朧月夜の 花の光に――それは決して忘れませんと、ある内親王が詠んだ歌。
 ボクも忘れないよと頼典はその歌を送り、この場を去る。

大成功 🔵​🔵​🔵​

朱赫七・カムイ
⛩神櫻

そうだね、サヨ
貴族の屋敷とは立派なものなのだな
アッ、サヨの館ももちろん絢爛であるが!
ころころ咲う巫女の姿に安堵しつつ散策を楽しもう
こういう庭も、良く似合うなと…隣の『花』見を楽しんでしまうのは仕方の無いこと

池の真ん中に島がある
行ってみようか
水嫌いのサヨが進んで船へ興味を示す…良い傾向だ!
なんて島の桜に感謝
サヨ、花筏に気を取られ池に落ちないようにね

傍らで見るとなお美しさが際立つな
花見なら、やはり甘味だろうと
菓子を貰っておいたんだ
…酒?ホムラ!
酒癖がよろしくないサヨから、酒を遠ざける
2人きりの場なら良いのだが
今は抹茶を楽しもう
これも風流だろう?

巫女の声が心地いい
私の桜は今日も美しく咲いている


誘名・櫻宵
🌸神櫻

わぁ〜!みてみてカムイ!
立派な屋敷ねぇ!寝殿造りっていうの?憧れがあるのよね
…うふふ!大丈夫よう
それは私もわかっているわ!
私の神様は今日もかぁいらしいこと
桜並木をぐるりとお散歩して、妖しの世の春を楽しんで……カムイ!
お舟で遊びましょう
真ん中の島にひときわ立派な桜があるの!私、あそこに行きたいわ

どんぶらこと風流で花筏も見事
島についたら、一休み
お花見しましょ!
甘味を楽しみ花を楽しみ…こんな日は花見酒も──あ!ホムラがどこかへ持っていってる!
わ、わかってるわよ…禁酒でしょ!
代わりに抹茶を頂くわ
春と祝い乾杯しましょ、カムイ

さくらさくら、散れども咲いて
朽ちはしないのだと
晴れやかな心を唄ってみたり



 すれ違う人がいれば、ぺこりと頭を下げていく。それはきっと、ふたりを貴人とみたからだろう。
 それに猟兵であると聞いているようで、いてくれるだけでありがたいと思っているのがその対応からわかるのだ。
 宴もあるのでどうぞこちらへ。庭の散策がよければ、酒や甘味、茶もお持ちくださいともてなしも十分なほどだ。
 朱赫七・カムイ(禍福ノ禍津・f30062)はきらきら表情輝かせて、楽しそうな誘名・櫻宵(咲樂咲麗・f02768)へと微笑み向ける、そのもてなしをひとつうけとる。
「わぁ~! みてみてカムイ! 立派な屋敷ねぇ! 寝殿造りっていうの? 憧れがあるのよね」
「そうだね、サヨ。貴族の屋敷とは立派なものなのだな」
 荘厳なつくり。渡殿で繋がる屋敷は立派なもので、宴の賑やかさも響いてくる。
 それを感じながら楽しそうにする櫻宵に――カムイははっとする。
 この屋敷も確かに、素晴らしいものだけれど。
「アッ、サヨの館ももちろん絢爛であるが!」
「……うふふ! 大丈夫よう、それは私もわかっているわ!」
 ころころと咲う櫻宵の姿にほっと安堵するカムイ。その姿を、櫻宵はまた楽しんでいるのだ。
 私の神様は今日もかぁいらしいこと――と笑んで、いきましょう! とその手を引く。
 ひらりはらり、舞う桜の花弁。桜の天蓋がどこまでも続いていくようで、その下を歩む時間は永遠にも続きそうな。
 淡い色が落ちてきて、櫻宵に重なって。
 こういう庭も、良く似合うなと……隣の『花』見を楽しんでしまうのはしかたないこととカムイの眦は緩む。
「……カムイ! お舟で遊びましょう」
 ほら、とその白いゆびさきが示すのは池。舟を浮かべて遊んでいるのがわかる。
「真ん中の島にひときわ立派な桜があるの! 私、あそこに行きたいわ」
 池の真ん中に島があるとカムイもぱちと瞬いて、行ってみようかと笑み浮かべる。
 水嫌いのサヨが進んで船へ興味を示す……良い傾向だ! とカムイの心も弾む。
 島の桜に感謝、とその木を眺めつつ、舟を借りてそちらへ。
 すいっと、桜の花弁満ちる水面を割って進んでいく。
 花筏も見事、と櫻宵はゆびさきで水面を撫でればすぅと花弁がまた違う絵を描く。
「サヨ、花筏に気を取られ池に落ちないようにね」
 さすがにそんなことはないわよ、とちょっと頬を膨らませて。そんな様子見いとおしくかわいらしい。
 島につけば先にカムイが降りて、櫻宵に手を差し出す。
 中央にある桜の樹は枝葉を自由に伸ばして、今が己の最高の姿というように花を見せる。
 傍らで見るとなお美しさが際立つなとカムイはその桜を見上げる。
 ひらりはらり、花弁を舞い踊らせて歓迎してくれているようだ。
「お花見しましょ!」
「花見なら、やはり甘味だろうと菓子を貰っておいたんだ」
「甘味を楽しみ花を楽しみ……こんな日は花見酒も──」
「……酒? ホムラ!」
 ぴぃ! と不死烏の雛はないて、酒をしゅばっと奪いぴちぱたと距離をとる。鶴の一声ならぬカムイの一声だ。
「あ! ホムラがどこかへ持っていってる!」
「サヨ」
「わ、わかってるわよ……禁酒でしょ!」
 名を呼んで、ぴしゃりとめっ、とするカムイ。酒癖がよろしくないのだからと酒を遠ざける。
 ふたりきりの場なら良いのだけれど今日はそうではないから。
 代わりに抹茶を頂くわ、とため息交じりの吐息と共に櫻宵は残念そうな表情しつつ。
「今は抹茶を楽しもう。これも風流だろう?」
「そうね。春と祝い乾杯しましょ、カムイ」
 共に茶碗を掲げて、抹茶を飲みながら甘味を口に運ぶ。
 苦さは甘味と調和して程よく。
 ふわ、と踊る花弁を視線で追いかけながら櫻宵の唇はうたうように、紡ぐ。
「さくらさくら、散れども咲いて」
 朽ちはしないのだと――その晴れやかな心を唄う。
 その声が心地いいとカムイは瞳細めその光景を心に捉える。
 私の桜は、今日も美しく咲いている――心に灯るそれは倖せなのだろう。
 咲いて散り、散ってまた咲き、咲いて散る。
 その繰り返し――現世で終わるなら来世で。来世でも終わりを迎えたならきっとその次でも。
 そうして紡いでいくのだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月06日


挿絵イラスト