0
西恩寺家の闇と新たな家族との出会い

#アヤカシエンパイア #ノベル #物理陰陽師フォフォ

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#アヤカシエンパイア
🔒
#ノベル
#物理陰陽師フォフォ


0



西恩寺・久恩




 わしの名は西恩寺宏伸。
 平安貴族の一人であり、妖から世界を守る陰陽師じゃ。

 じゃが、わしは不出来な人間じゃった。
 妖退治は貴族の責務。だのにわしは雑魚妖を倒せればいい方、所謂落ちこぼれじゃった。

 特に実家である西恩寺家は優秀な陰陽師が多く、わしは腫れ物扱いじゃった。
 ――ただ、その実家にも黒い噂があったことを、わしは知らんかった。

 ある日の事、久々に実家に帰って来た時、わしは両親が何者かと話しているのを見た。
 いや、見てしまった、と言うべきか……その話し相手はヒトではなかったのじゃから。
 最初は妖かと思ったが、違う。明らかに異質じゃった。

(これは流石に不味い……)

 そう思ったわしは音を立てずにその場を去った。自分では敵わぬと悟っておったからな。
 じゃが、事情を説明して他の陰陽師達を連れて来た時には、両親は……いやわし以外の一族は皆、変わり果てた姿になっておった。

「あなや!?」
「これは……!」

 屋敷におったのは、全身が触手に包まれた異形の化け物。
 幸いわしが連れてきた陰陽師達は腕が立つゆえ、それを難なく祓ったが……。

「やはりか……」
「やはり? 何がやはりなのじゃ?」

 一人の陰陽師が呟いたのを聞いてしまったわしは、思わず質問したのだが。
 返ってきた答えに、一生後悔する羽目になった。

「君の一族には噂があった。西恩寺家は妖の力を借りているのでは? という噂がのう」

 今祓ったのは、妖の力に溺れた人間の成れの果てだと。
 西恩寺家の一族はその力を使って、これまで陰陽師のふりをしてきたのだと。
 信じられん、いや信じたくない話じゃった。

「では何故わしは、異形の化け物になっていない?!」

 わしがそう聞くと、陰陽師はこう答えた。

「君が西恩寺家で初めて生まれた霊力を持った人間だから」

 そう聞いた時、両親や兄弟が何故冷たい態度をとっていたのか分かった。
 わしは落ちこぼれじゃが、それでも「本物の」陰陽師だった。
 皮肉としか言いようのない真実に、わしは呆然とするしかなかった。



 この事件はわしの名誉の為に揉み消され、公には「妖に襲われて全員が異形の化け物に変えられた」と上の人達から布告された。
 じゃが、正直辛かった。家族は偽物の陰陽師、わしは唯一まともな陰陽師だったが落ちこぼれ。一体何の価値があるというのか。

 この時のわしの年齢は29。
 認めてほしかった家族は異形と化し、もはや生きる意味などない。
 自らの命を断とうと思ったわしは都を離れ、とある森を訪れた。

「……うん? なんじゃ?」

 そこで聞こえた赤ん坊の泣き声。
 それが久恩じゃったのじゃ。

「まさか……妖の赤子、か?」

 妖を退治するのが陰陽師の使命。
 じゃが、そこにいたのはただ無力に泣いておる赤ん坊。
 気がつけば、わしはその子を拾い上げておった。

 流石に黙って育てる訳にはいかんかったが、皇族の人達に通したらあっさり許しを貰った時には驚いた。
 久恩には最低限の生命維持に必要な分を除き、ほとんど妖力が無かったそうじゃ。

(皮肉にも、この子が妖力が無かったおかげで殺されずにすんだ……)

 それを聞いた時、この子はわしに似ていると思った。
 わしは家に居場所が無かったように、この子も妖達の世界では居場所は無い。
 だから誓ったのじゃ。

(例え全てがこの子の敵になっても、わしが親としてこの子を守る)

 と……。

「父様、どうかしました?」
「いいや? なんでもないぞ、久恩」

 まあ、この子妖だから成長遅いので、わし今、65なんじゃけどね!
 すっかり老いたわしに比べて、赤子だったあの子はまだ16程度の姿。
 この分では、まだまだ長生きせんといかんのう――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年03月30日


挿絵イラスト