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桜にゃんこin電子領域

#ゴッドゲームオンライン

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#ゴッドゲームオンライン


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●奪われたお花見イベント
 にゃぁ、にゃぁと、白い毛並みのどこかに桜色が入っている猫たちに向けて少女が手を伸ばす。
 すると猫の柄から桜色が奪われ、周囲に咲き乱れていた桜の花弁がすべて巻き上がって空へと消えていく。
 少女が消えたあと、『春のお花見・桜にゃんこもふりイベント』を楽しもうとやって来たゲームプレイヤーたちは、ただの白猫が枝だけになった桜木の元で震えていく姿に愕然とすることになる。
「……またバグか?」
「まぁ……、花見がなくなるくらいなら……」
 |遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼却されることになるような、強力なバグプロコトルが居ないなら。
 そう肩を落として踵を返したゲームプレイヤーの方に、細い指が添えられた。
「消えるのは、きみもだよ。……にゃーん」
「えっ?! あッ……?!」
「おい?!」
 今までなにも存在しなかった場所に突如現れた少女──バグプロコトル・イマジネイラの指先から流れ込む『0』でも『1』でもない虚数『i』によって、ゲームプレイヤーを構成するデータが破壊されていく。
 フードの先の猫耳を揺らし、両の手で鉤爪を模して彼女はにっこり微笑んだ。
「隠しちゃえば、生きてるかどうかすら明確にならないの。きみは生きてるって言える──にゃん?」

●桜にゃんことティータイム
「にゃんこさんは、好きです、か」
 至って真面目な顔で、リコ・ノーシェ(幸福至上・f39030)はグリモアベースで唐突に言った。
「おれは、大好き、です」
 でしょうね、という感想を耳にして、ほんの少し照れたように少年は眦を下げた。
「ん……、じゃあ、同じく猫好きなひと、良ければ聞いてくれると嬉しい、よ」

 舞台はゴッドゲームオンライン。
 春が近付くそこでは、『季節イベント』と呼ばれる期間限定のクエストが発生する。
「おれ、ゲームのことよく判んないんだけど、さ。今回おれが案内するのは、白い毛並みのどこかに桜色が入ってて、桜猫って呼ばれてる、にゃんこさんが、いっぱいいるイベントなんだって。その子たち、満開の桜の下に、居て。近くの町のお菓子屋さんが、テーブルと椅子を用意して、桜見の場所を仕立ててくれるらしい、よ」
 ただ『おためし装備』を手に入れ、めいっぱいもふもふしつつ美味しいものを食べるだけのシナリオだった。だが、もちろんバグプロコトルが放置するわけはなく。
「今回の『おためし装備』は、ゲノムスライムを倒して手に入れるんだ、けど。それが、猫耳、とか、猫の手袋とか。そういうの、なんだって。で、バグプロコトル──オブリビオンの所為で、ボスと戦うときには、『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』っていうのが働くらしくって。……今回は、『猫っぽい言動じゃないと、勝手に、大きいダメージを喰らう』……だ、って」
 なんて阿呆らしい、と猟兵たちの呆れた視線が向けられるかもしれない。リコはちいさく肩を竦める。
「敵のバグプロコトルにも、そのギミックは適応されるらしい、から。邪魔してみるのもひとつかも、な」
 そんな大切なんだかくだらないんだか判らない助言をしつつ、少年は左右色違いの双眸で集まった猟兵たちへと瞬きをゆるり。
「敵を倒したら。奪われた“桜”が返ってくる、から。良かったら、ゆっくり、しよ。おれものんびりさせてもらえたらと、思う。……だから、どうか。幸せなエンディングを」


朱凪
 目に留めていただき、ありがとうございます。
 桜にゃんこ再び、朱凪です。

 まずはマスターページをご一読ください。

▼OP補足
 募集期間は幕間の追加とタグにてお知らせします。ゆっくりペースです。
 プレイングボーナス……1幕で手に入れた『猫グッズ』を装備していると、2幕で有利になります。

▼その他
 2章のみ、お誘いを受けた場合に限り、リコも同行できます。

 では、桜見ともふに向けてのプレイング、お待ちしてます。
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第1章 集団戦 『ゲノムスライム』

POW   :    でかでか
自身の身長の2倍の【スライム】を召喚する。それは自身の動きをトレースし、自身の装備武器の巨大版で戦う。
SPD   :    ふにふに
自身の肉体を【ゴム状】に変え、レベルmまで伸びる強い伸縮性と、任意の速度で戻る弾力性を付与する。
WIZ   :    ぽよぽよ
攻撃が命中した対象に【移動速度ダウン】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【飛び跳ねて急接近体当たり】による追加攻撃を与え続ける。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


⚫︎猫グッズをドロップせよ
「ぽよ?」
 黄金色のスライムが跳ねる。
「ふにふにっ」
 虹色のスライムが伸びる。
「ぷるるっ……ぷるっ」
 銀色のスライムが増える。
 この世界では実によく遭遇する、アイテムドロップのためのモンスターだ。その性質はバグプロトコルと化しても、なんら変わらない。
 倒せばこの『季節イベント』限定の──猫耳カチューシャやら、猫鈴付き首輪やら、喋る言葉が全部猫語になる飴やら、そういうものが手に入る。
 狙うものが出るまでスライムを倒し続けてもいい。
 あるいは、運に任せてもいい。
 問題はその装備をしていれば次のバグプロトコルとの戦闘が有利になるということだが、大丈夫だ。装備しなくたって猫っぽい言動を意識すれば同じ効果は得られるのだから。
「ぷるぽよっ?」
 限定品なのにいいの? ──と、スライムのつぶらな瞳が訴えているように見えるかどうかは、きみ次第だ。
 
ノーチェ・ハーベスティア
私もにゃんこさんは好きです。可愛いですよね〜。
でも本物は飼ったことも触ったこともありません。それが私の人生設計図にはないことですから。
…なのでにゃんこさんのアイテムには興味があります。いっぱいゲット出来るといいなぁ。

UC【クラフトトレジャー】で幸運上げて。
あとは…運に任せます!!

アドリブ歓迎



⚫︎手の届くもふ
 花弁の全てが奪われて、けれど緑の葉も芽吹いていない桜の幹をそっと撫で、ノーチェ・ハーベスティア(ものづくり・f41986)は軽く瞼を伏せた。
「必ず、取り返しますからね」
 それから視線を巡らせれば少し離れた場所の木々の根元に、白い姿が寄り集まってもこもこしているのが見える。
 常磐の色した瞳が輝く。
──可愛い……!
 グリモア猟兵の問いに答えるなら、ノーチェも『にゃんこさんは好きです』となる。
 けれど本物は飼ったことはおろか、触ったことすらない。それは|湖月《ノーチェ》の人生設計図にはないことだから。
 だからこそ。
「にゃんこさんのアイテムには興味があります」
 ノーチェの瞳が次に捉えるのは青々とした草原で自由に伸び縮みする、メタリックカラーのゲノムスライム。
 このモンスターは倒さなくてはならないバグプロコトルである上に、限定アイテムをドロップするというとても都合のいい存在だ。
「……ぽよっ……?」
「いっぱいゲット出来るといいなぁ」
「ぷよぽよ……っ!」
 彼女のゲームプレイヤーとしてごくごく自然な|狩意《ヽヽ》を感じ取り、ゲノムスライムは己の二倍の大きさの仲間を喚んだ──だが、ノーチェにとってそんなものは見慣れた景色だ。
 リュックから瓶詰めの素材と使い慣れた解体用ナイフを取り出す。
「「ぽよ?」」
 二体のスライムがノーチェの傍に寄って来ては手許を覗き込む。彼女はちいさく笑って見せた。
「これは火焔龍の涙に鱗を砕いて混ぜたものです。希少なんですよ」
 言いながら、惜しげもなく瓶を開けてナイフの上に中身を落とす。赤と金に煌めく流動体はナイフの刃を覆い、鋭く厚い刃へと変貌した。クラフトトレジャー。此度の効果は、ラッキーアップ。
「頂戴します」
「ぽ、」
 一閃。切れ味は握る柄に手応えを残さないほど。
 裂かれたスライムはぼふんと煙になって消え、後に残ったのは大きなにゃんこの手型手袋。白地に桜色の柄は桜猫らしい。
「これだと製作するのに不便ですね。次は……なんでしょうか」
「ぽよ〜っ!」
 ぼふん。
 手許に残ったのは、ふっかふかのまんまるにゃんこぬいぐるみ。やはり模様は白地に桜色。触ってみれば、長い毛足が柔らかくて。
「……」
 ほわぁ、とノーチェは吐息をこぼした。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルシエラ・アクアリンド
【風雪】

どんな世界でも花と愛らしいもふもふは無くしてはならないと思うの
でも正直未だこの世界には慣れておらず考える
万国共通人は支え合う物だよね

ほぅら伝わる
偶(?)の可愛い悪戯めいた事だったけど赦してね
桃華獣と共に在る人は限られて
セラの水浴び好きを知るとなれば猶更と思った

解った上で律義に付き合ってくれる彼にお礼延べ
本来の目的を楽しむべく先にきっちりすべき事は成そうね


…どうしようお団子可愛い
心の中で謝りつつ魔力纏わせた魔導書の羽根で対応
空色のベルトに金の鈴の首輪と猫耳狙い
尚猫耳は彼の分
リヴィは首元見えないから

何故かほんのりお疲れ気味の彼にやり切った笑顔で渡す

ライの視線が何時もより少し痛い気もしれない


リヴィ・ローランザルツ
【風雪】

外での読書時
ふと目を上げればセラが小さな『桜と猫』という
これまた小さい文字が記された襷を掛けていて

思い至るは
自分なりにこの世界について調査してる事

行動範囲とはいえ少し離れた所で水浴び満喫中であれ
無警戒にセラが近づく存在なんて限られている

姉の悪戯に付き合わされ…いや本人も楽しんでいるだろうシエラの共同作業
それなりに接近されたのに気が付かなった自分が不甲斐ない
今回はルシエラさんと二匹を好きにさせ
ライと共に見守りつつ主な攻撃をこなすのが最良かなあ

六華を舞わせつつレイピア使用
悩んでいる内お試し装備は姉のお任せとなった

こういう姉もある意味彼女らしく
まあ謎の疲労も感じるが笑みが浮かぶ

ライもご苦労様



⚫︎いざ行かん『桜と猫』
「これは……話には聞いていたが」
 酷いものだ、と。傷付いてはいないものの花弁を全て失くした桜の樹を見上げ、リヴィ・ローランザルツ(煌颯・f39603)は呟いた。
 興味を懐いてこの世界について調べた限りでは、ここはどうやらゲームの中なのだという。だからこそ失われた花弁も、バグプロトコルを倒せばすぐに修復されるらしい。
「お前のお望みの景色には少し掛かりそうだ、──セラ?」
 傍ら──足許──に居るはずの家族へと視線を遣るが、白いもこもこの姿は忽然と消えており。急ぎ周囲を見渡すと、
「!」
「ほぅら、伝わった」
 リヴィの家族たる毛玉雛を掌に掬い上げて微笑むのは、ルシエラ・アクアリンド(蒼穹・f38959)。その肩に留まったセラと同じ桃華獣のシエラが、大きな翼でセラの嘴の先をくすぐってやる姿に、リヴィはようやく理解した。
 この世界のこの場所に行こうと思ったきっかけ。
 顔見知りのグリモア猟兵が依頼を案内した時期。
 今朝リヴィが読書している間水浴びしていたセラが戻って来たとき、あんまりに小さなたすきを掛けていた理由。そしてたすきに『桜と猫』と更にちいさな文字で書かれていたわけ。
「そうか……あなただったんですね」
「どんな世界でも花と愛らしいもふもふは無くしてはならないと思うの」
 ぐっと両の手を握って見せるルシエラ。エンドブレイカーとしての活動が長い彼女は、まだ他世界の文化に疎い自覚があった。
 だから考えたのだ。自分よりも詳しいひとと一緒に行けばいいと。
「万国共通、ひとは支え合うものだよね」
 もこもこの毛玉とは言え、セラも桃華獣。元は桃源郷に住まう霊獣だ。普段の活動範囲であり大好きな水浴びのさ中であろうとも、たすきを掛けられる程に気を許す存在など限られている。
 例えば、同じ桃華獣。その家族がセラの水浴び好きを知っていれば、尚のこと。
「偶の可愛い悪戯めいた事だったけど赦してね。来てくれてありがとう」
 リヴィが謎を解き明かしてみれば、ルシエラは素直に肯きながらもどこか満足気。
 その笑顔に呆れ、接近されながらも気付かなかった己へ不甲斐なさも覚えつつ──けれどリヴィの胸の奥にも確かにあたたかい想いが宿る。
 桜木の間を進み、空からは蒼いファルコンスピリットが先行して確認し、その視界をルシエラも共有する。見つけたのは聞いていたとおりのスライム。ぺかぺかと金色や銀色に輝いているが、
「ぷにーん」
「ぷるぷるっ」
「……どうしようお団子みたいで可愛い」
 気の抜ける鳴き声と共に暢気に伸び縮みしている姿に、思わずルシエラが口許を押さえ、シエラとセラが肩で彼女の真似をする。
「……欲しいものがあるんでしょう?」
「う、うん、そうだね。先に成すべきことはきっちり成さなくちゃ」
 淡く笑ってリヴィが言って魔法陣を展開させれば、はっと我に返ったルシエラが魔導書を取り出す。
 リヴィの魔力によって花のない樹に氷雪の華が舞い降りて戦場を包み込む。敵味方を判別するその力はスライムたちだけを凍結させていく。
「ぷるっ?!」
「ぽよっ──」
 伸び縮みの最中に凍り付いたスライムたちは自らの張力によってばきんとその身体を破壊し、ぼふんと煙になって消えた。
 残ったのは、謎の飴。これが噂の猫語しか話せなくなる飴だろうか。姉の望んでいるものとは違うな。心の裡でリヴィが次のスライムへと目を遣る途中、きらきらした翠の瞳を見つけた。──見なかったことにした。
 そんなきらきらの瞳の背後でみょんと伸びたスライムを、蒼が一閃し鋭い蹴爪が掻き裂いた。
「、ライ」
 危機を救ってくれた相棒にありがとうと視線を送れば、なんだか心なしか呆れられているような一瞥が返った気がする。ううん、これはいけない。
 ごめんねと内心謝りつつ、ルシエラは素早く開いた魔導書の頁を撫でた。ぽわと浮かんだあおい光は羽根となり、更に伸びてきたスライムの攻撃を弾くだけでなく、スライムの身体そのものをも吹き飛ばした。
 木の幹に叩きつけられたスライムはぼふんと消えて、転がり落ちたのは白地に桜模様の猫耳カチューシャ。ふわふわしている。
──これはリヴィの分。
 彼は首元が見えないから、|お揃い《ヽヽヽ》にはできない。
「うん。どんどん探そう!」
 目指すは空色のベルトに金の鈴の首輪。目的がしっかりしている分、ドロップに時間が掛かることはゲームにあまり触れないルシエラでもなんとなく判る。
 レイピアを振るってぼふんとスライムが消えた後を確認しながら、リヴィは急下降を繰り返し同じくスライム狩りに助力する蒼い鷹へと肩を下げて笑い掛ける。
「ライもご苦労様」
 彼と同じ表情のスピリットは翼を軽く持ち上げながらも、再び迷うことなく蒼穹へと舞い上がった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

リィンティア・アシャンティ
イベント限定アイテムはフルコンプしたい
そういうものです?
詳しいですね、りすさん
やる気満々のどんぐりりすさんと一緒に初めてのゲーム世界へ!

銀色、金色、虹色……色々なスライムがいますが
虹色スライムがレアな予感!という、りすさんの意見を信じて狙ってみましょう
ところでりすさん、限定のアイテムって何種類あるのでしょう?
知らない??
……がんばりましょう!

ふにふにとよく伸びる体をしているようですが
りすさんの撃つどんぐりも、なかなかの威力とスピードがあるのです
落ち着いて狙いを定めて攻撃?していきましょう

アイテムドロップって不思議なものですね
気に入ったものはありましたか、りすさん?
(入手アイテムおまかせで!)



⚫︎ゲーマー? りすさん
 なるほど、とリィンティア・アシャンティ(眠る光の歌声・f39564)は傍らでいろんな色のどんぐりでぱんぱんのメッセンジャーバッグをぽふぽふ叩く銀色の栗鼠へと真剣な面持ちで肯く。
「イベント限定アイテムはフルコンプしたい。そういうものです?」
 こくんと肯く栗鼠。更にふむふむと肯くリィンティア。
「そうなのですね。詳しいですね、りすさん」
 ちいさな足で跳ねるようにずいずい歩く栗鼠の姿に歩幅を合わせ、彼女は周囲を見回した。
 初めての世界。花も葉もない桜の木には確かに触れられて、そこに在ると感じられるのに、ここはゲームの中なのだと言う。
──まだまだ不思議なことがたくさんあります……!
「ぽよっ?」
「! りすさん、スライムです」
 銀に金、虹色、とりどりの敵が、なんだか長閑に草原でふにふに伸び縮みしている。
 どれを狙いましょう、とリィンティアが栗鼠を振り返れば、栗鼠はバッグからさッと虹色のどんぐりを取り出した。
「えっ? なんですかそのどんぐり?!」
 目をまんまるにする彼女の前で栗鼠はぎゅっと虹色どんぐりを抱き締め、ささッと鞄に仕舞う。
「ええと……虹色がレアなのですね! 判りました、狙ってみましょう」
「ぷよよっ!」
 リィンティアが決めると同時、彼女のスカートを肩まで素早くよじ登った栗鼠が狙いを定めて撃ち出す、ツヤツヤのどんぐり。|怒りのどんぐり栗鼠さん《リス、オコル》。
「ぷよっ! ぷるっ!」
 どどどどどどどどッ! と絶え間なく降り注ぐどんぐりの『銃弾』。頑張って伸びようにも動けば貫かれ、あまりの質量に後退していくほどの速度と威力が無慈悲にスライムを襲い続け、僅かの時間でぼふんと敵は煙になって掻き消えた。
 後に残されたのは、白い毛並みに桜柄のつけ猫しっぽ。先の方にちりんと鳴る鈴と若菜色のリボンが巻かれている。
 リィンティアはそれを拾い上げて、まじまじと眺める。
「……アイテムドロップって不思議なものですね」
 しっぽがあるならお耳も探してるみたいところですが。そう考えて、ふとリィンティアは辿り着く。目指すは、『フルコンプ』……?
「ところでりすさん、限定のアイテムって何種類あるのでしょう?」
 こてり、リィンティアは肩の栗鼠に首を傾げる。
 肩を竦める、銀色の栗鼠。
「……知らない??」
 だから楽しいのだと言わんばかりに瞳を輝かせる、銀色の栗鼠。
「……。……がんばりましょう!」
 リィンティアはぐっと両の拳を握って視線を巡らせた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

ルッツ・ハーミット
勿論、僕もにゃんこは大好きです

ゲームの事も此処がその中の世界ということも
まだ良く分かってないんだけど
にゃんこと戯れる素晴らしいイベントを邪魔するなんて許せないね

ボスには猫っぽい言動か猫装備が有効なんだっけ


…うん、装備を探した方が無難かな
僕でも自然に付けられそうな物が出ると良いけれど
※ドロップ何でもお任せ

でかでかスライムもちょっと可愛い
でも桜とにゃんこと皆の為だから、ごめんね
まずは敵の行動パターンを読み攻撃を受けないように見切り、注意し
フレイムソードの炎で薙ぎ払い攻撃

猫装備も可愛いから全部集めてみたいところだけど
我慢してある程度で切り上げ
さあ、桜を取り戻しに行こう――にゃん

…おっと口が滑った



⚫︎まよいみち
 勿論、僕もにゃんこは大好きです。
 花も葉もない寒々しい桜の樹を見渡し、そしてその根元に白く何匹かで固まって居るもふもふを見留めて、ルッツ・ハーミット(朱燈・f40630)はつい眦を和らげた。
──いけないいけない、集中しなくちゃ。
 ふるり赤いメッシュの入った髪を振って、彼は顔を上げる。
 足許の柔らかい草も、鼻先をくすぐるほんの微かな桜の香りも。これがゲームの中だと言うことも、そもそもゲームそのものについても、ルッツにとって実感がないのは事実だけれど。
「にゃんこと戯れる素晴らしいイベントを邪魔するなんて許せないからね」
 すらと抜く細身の刀身。
「ぷよよっ?」
「ぷるーっ」
 気付いたらしいスライムがまんまるの目を見開き、──ぼよんっっ、と更に大きな仲間を召喚した。
 おおと思わず見上げるルッツの喉から感嘆の声がこぼれ落ちた。
「……ちょっと可愛いな……」
 “これ”のことを気に入りそうなひと達の顔がいくつも思い浮かぶけれど。ふるりかぶりを振る。
「桜とにゃんこと皆の為だから、ごめんね」
 なにせこのモンスターを倒すことで、後の戦いが有利になるアイテムが手に入るのだ。
 だけどまぁそのアイテムが無くても、猫っぽい言動をすればこのぷにぷにさんは倒さなくてもいいらしい。
「……」
「ぷにー」
「……」
「ぷるるっ」
「……うん、装備を探した方が無難かな」
「ぷにっ?!」
 しっかと金の柄を握り直したルッツの頭上に驚いた様子の巨大なスライムがぼよんと跳ね上がった。ルッツはひたと据えた視線を外さぬままそのプレスを掻い潜る。
 しかし行く先にもう一匹のスライムが立ち塞がるった。なるほどなかなか連携が取れている。
 もちろん、ルッツの敵ではないが。
「よっ、」
 軽く薙ぐだけで弾力を掌に感じるより先に剣先は振り抜かれ、奔る焔。軌跡は半円を描き、背後に着地した大きなスライムにまで焔は及び──ぽふぽふんと煙になった後には、アイテムが落ちた。
「さて、僕でも自然に付けられそうなものが出ると良いけれど……」
 拾い上げたのはまんまるのキャンディ。
「……」
 これは、食べたら猫語になるとかいう、……?
 もうひとつは、白と桜色のもふもふの生地に猫耳がドンとついたフライトキャップ。
 自然と撫でる手が止まらない。桜色の比率が多めだから白い髪の子に似合いそうだな。どうしようかな。他のも見てみたいな。
「……。……うん。さあ、桜を取り戻しに行こう──にゃん」
 おっと。
 口許緩ませ、ルッツはやっと帽子から撫でる手を離した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・ハクト
猫に桜見か、どちらも惹かれるものはあるな。
ただ、こういうイベントの猫アイテムと言うと、可愛らしい物が相場と聞く。
あまり自分に似合いそうな気はしない。
が、後のボス戦を思えば、どれが出た所で自分で意識的に猫っぽい言動をするよりはマシな筈だ……おそらく。

UCで攻撃。
巨大化には巨大化で応戦。なるべく1体撃破に留める。
巻き込みや一度に相手をするなどで複数撃破・ドロップあった場合、律儀に装備予定。

アドリブ・絡みOK



⚫︎にゃんてことだ
 未だはっきりとはしない記憶の中、それでも惹かれる白い花。
 それを抜きにしても、己は花が好きなのかもしれない。生真面目に思案しつつ、クロム・ハクト(黒と白・f16294)はそこにあるべき花を失っている淋しげな枝を見上げて微かに眉を寄せた。
 猫に花見。どちらも惹かれるものがある。
 猟兵として覚醒してしばらく、|罪人《オブリビオン》を狩るばかりの日々からは考え難いほどの長閑なシチュエーション。
 記憶を喪う前から己はそういうものを好んでいたのだろうか。それとも。
「……いや。考えるのは後だな」
 雑念を振り払い、ぽよんぽよんと遠くで動くメタリックなスライムを見遣る。春の日差しの中、緊張感のないその顔つきから姿からなにからなにまで、やはり長閑だが──あれを倒せばイベント限定のアイテムが手に入る。意志は揺らがない。
 だがひとつだけ、クロムには懸念事項があった。それはやはり、これに尽きる。
──こういうイベントの猫アイテムと言うと、可愛らしい物が相場と聞くが……。
 齢十九の男。他種族に較べれば、百七十後半の身長は『大きい』とは言われないかもしれないが。
「……あまり自分に似合いそうな気はしないな」
 ただでさえ、人狼である彼には自前の狼の耳と尾がある。猫耳カチューシャなんて手に入れたらどうやって装着したものか。
 しかし装備しなければ後の戦いで不利になることを思えば。
──意識的に猫っぽい言動をするよりはマシな筈だ……おそらく。
 ひとつ首肯し、できるだけ一体に狙いを定めたクロムは自らの指先を鋭い爪で裂いた。紅き月の昏き夜を裂くもの。捧げた血液は帳と化して彼を包み込み、その質量は帳の蔭で膨らんでいく。
「ぷよよっ?!」
 対抗するかのように察知したスライムは倍の大きさの仲間を召喚するが、身の丈の三倍の大きさの狼と化したクロムにとっては手毬のようなものだ。
 じりと踏み締め、繰り出す爪は半獣型の時とは比にならないほど強固かつ鋭利で、叩きつけられる腕そのものが圧倒的な『武器』だ。ぷにっとした触感を知覚するかしないかのレベルで、ぽふんとスライムたちは煙と消えた。
 うまく一体のみを倒せたことに安堵しつつ、人型に戻ってアイテムを確認すると──それはブーツだった。
 あからさまに猫足を模したもふもふのブーツで、イベント限定らしく白い毛並みに桜色の柄が散っている。柔らかく細い毛は、狼のそれではありえない。靴底には律儀にピンクの肉球も備わっており、機能だけを見るなら衝撃を和らげてくれそうではある。
 ……己が履くということに目を瞑れば、良いアイテムだ。
「……仕方ない、か」

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 ボス戦 『『0』と『1』の狭間『イマジネイラ』』

POW   :    イマジナリー・ルール
【物理法則を無視した】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【データ侵蝕】の状態異常を与える。
SPD   :    コピー・キャット
自身と武装を【シュレディンガーパーカー】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[シュレディンガーパーカー]に触れた敵からは【真の姿】を奪う。
WIZ   :    ダブルエッジ・コード
【敵のユーベルコード】に【反属性・反作用化させる虚数コード】を注ぎ込み変形させる。変形後の[敵のユーベルコード]による攻撃は、【使用者にその効果を及ぼす『自傷』】の状態異常を追加で与える。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠幻武・極です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


⚫︎二乗してマイナス
 ゲノムスライムたちが散り散りに逃げて行った草原に、猫耳フードの少女がひとり降り立った。
 少女──イマジネイラは周囲を見渡し、猟兵たちを見て微笑む。
「桜を取り返しに来たの、……にゃん? そんなにイベントって大事? ……かにゃ?」
 つたない語尾は『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』による『猫っぽい言動じゃないと勝手に大ダメージを喰らう』という舞台装置を防ぐためのもの。彼女の猫耳フードはこのイベントで手に入れた『おためし装備』ではないから、だろう。
「隠しちゃえば、生きてるかどうかすら判らないのに、にゃん。『1』を『0』にしても、『0』はまた『1』に戻れるなら、それは、隠しただとどう違うにゃ? |遺伝子番号《ジーンアカウント》を『0』にしたって……いつか『1』に戻るかもしれないなら──殺したって死んでないかもしれない、にゃ」
 彼女の言い分は、このゴッドゲームオンラインの世界では逃れられない命題なのかもしれない。
 真剣に考えてみてもいい。
 だが。

「|細けぇこたぁいいんだよ《うるせえ》」

 誰かが言った。
 
ルシエラ・アクアリンド
【風雪】

何となく彼女の問いの本質が心に響く様な心地
正直、場合によっては「かもしれない」に賭けても良いと思う
けれど今はそうじゃない

シエラもセラも少し隠れていてね
この子達とライを見ていると猶更強く思う

元より視聴嗅覚よりは経験に基づく感で動く事が多い
精霊の力を借りている今は猶更
加え其れを利用し相手の対処を行う
リヴィに思い切り動いて欲しいから護りは確りと
勿論攻撃にも魔導書で回るけど彼の援護メインで


こんな時だけど
手に入れた鈴は思った以上に綺麗な音色で耳に心地良く
慣れていないだろうと思われる口調を一生懸命操る彼女と
そして私に付き合って律義な猫耳な彼が幼く見えて
ほんの少し頬が緩むけど直ぐに集中しなくちゃね


リヴィ・ローランザルツ
【風雪】

前持って軽く説明したこの世界の理の一部だけど
彼女は多分頭より深い所で飲み込んでいるだろうと思う昔からそういう人だったから
大切なのはイベントを行おうと取り組んでくれる人がいて
それを楽しみにしている人がいるという事に思える

一生懸命セラを守ろうとしてくれているシエラや
何時もの様に見守ってくれるライにだって理解出来ているのでは

言葉に甘え六華の舞を使用した後は
重きは分身体とルシエラさんとの連携
彼女に成るべく近づかせるのを阻止し仕留める

自分に併せてくれる援護のお陰で
頭の上に違和感と顔があった時に見える微笑みに頬を掻く位は余裕がある
まあ承諾した以上は、うん。

分身と囲み隙を作るので一気に行きましょうか



⚫︎今、確かな『1』
 ゴッドゲームオンラインは、名の通りゲームの中に広がっている世界であること。
 誰かによって作られた世界。敵を倒したら奪われた“桜”だって返ってくる世界。
 『0』にしたって、いつか『1』に戻るかもしれないなら。
「……正直。……場合によっては、『かもしれない』に賭けても良いと思う」
 イマジネイラの言葉が、その本質が、ルシエラ・アクアリンドの胸の奥に落ちる心地がした。
 その横顔を「……」リヴィ・ローランザルツはそっと盗み見る。彼が説明したこの世界の理と重ね合わせて、彼女が頭より深いところで飲み込んでいるだろうことは想像できる。……昔から、そういうひとだったから。
 だけど。
 ルシエラの視界の端には、大きな翼の内側にセラを包み込み、黒い瞳に力を篭めているシエラの姿。
 ふたりとも、少し隠れていてね。と軽く告げてすいとルシエラは顔を上げた。ちりん。首に巻いた空色のチョーカーに鈴が揺れた。その音色にルシエラの眦が和らぐ。
「……今はそうじゃない」
「ええ。大切なのはイベントを行おうと取り組んでくれる人がいて、それを楽しみにしている人がいるという事に思えます」
 論点をすり替えたイマジネイラへぴしゃりと言い切りレイピアを構えるリヴィに、ルシエラの唇が緩む。
「つまり、楽しみにしてるきみ達が居るから、……にゃん? 傲慢だね。……にゃ」
「そう思ってもらっても構わないよ」
 少女が猫耳パーカー──シュレディンガーパーカーを羽織り直すと、イマジネイラの姿が掻き消える。
 だがルシエラは動揺することもなく小さく笑み返す。足許から湧き上がり躍り上がる、蒼い光。それは戦場を包み込む檻となり、同時に凶悪な嵐を喚んだ。蒼の天蓋──ウィンディテイル。
 姿も。音も。匂いも。元よりそれらに強く頼る戦い方はしていないけれど、それらが絶たれたのなら。
「どうか力を貸して頂戴ね」
 ルシエラの呟きに、味方には癒しを与える涼やかな風が優しく応じた気がする。
 その風の中、リヴィは剣を立てる。四重双撃──カルテット。彼の姿が、ふたつに分かれる。
 頭に添えた、猫耳も一緒に。
「……ふふ、」
「……」
「ううん、なにも」
 忍びやかな笑い声に氷雪の華を喚んだリヴィが振り返れば、しゅっと表情を改める姿がほんのちょっぴり癪ではあるけれど。頭の違和感は『イベント』なのだ。それを否定するほど彼は無粋ではない。
 気配感知に索敵技能、あるいは備わった第六感。持つ|能力《ちから》を余さず用いて、生命力を奪う魔法を展開してはその源の辺りへとすかさず剣を射抜く。
 そうでなくても、嵐と雪花によってイマジネイラの体力は徐々に削られていっているのも判っている。
「きみのそれは、『1』? それとも『0』? ……にゃ?」
 どこからともなく聴こえる声。すいと手を伸ばす気配。
「ルシエラさん、」
「うん、──大丈夫!」
 音も姿もなく忍び寄ったイマジネイラの指先を、ルシエラはふわと風に乗るような軽いステップで跳び退って避けた。ちりん。入れ違いに踏み込む、リヴィの剣の切先が、「うッ!!」確かな質量を捕らえてしなった。少女の短い悲鳴。引くと同時に散った赤は、すぐにパーカーの効力によって視えなくなる。
 ふわとスカートに弧を描かせ振り向きざまに聖なる書物から風の斬撃を放ったルシエラは、ふわふわの耳を揺らすリヴィへとはっきりと咲った。
 やっぱり付き合ってくれたのだから。お礼も篭めて言っておきたくなった。
「ねえそれ。可愛いよ、リヴィ」
「……」
 一瞬呆気に取られた彼は、彼女と揃いの翠をまんまるにして。けれどそうして彼の前で笑ってくれることが、その笑顔を見られることが、なんだかどうしようもなくあたたかくて。
「……まあ承諾した以上は、うん」
 照れ隠しのように軽く頬を掻いて、再び分身と共に同時に駆け出した。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

響納・リズ(サポート)
「ごきげんよう、皆様。どうぞ、よろしくお願いいたしますわ」
おしとやかな雰囲気で、敵であろうとも相手を想い、寄り添うような考えを持っています(ただし、相手が極悪人であれば、問答無用で倒します)。
基本、判定や戦いにおいてはWIZを使用し、その時の状況によって、スキルを使用します。
戦いでは、主に白薔薇の嵐を使い、救援がメインの時は回復系のUCを使用します。
自分よりも年下の子や可愛らしい動物には、保護したい意欲が高く、綺麗なモノやぬいぐるみを見ると、ついつい、そっちに向かってしまうことも。
どちらかというと、そっと陰で皆さんを支える立場を取ろうとします。
アドリブ、絡みは大歓迎で、エッチなのはNGです


赤星・緋色(サポート)
なんやかんやで事件を解決に導こうとします
フリーダムかつアグレッシブなアドリブも可

合わせ等も自由にどうぞ



⚫︎『0』とか『1』とか
「むぅ……また増えた、にゃん。そんなに『0』になった『1』を取り返したいの、……かにゃ」
 敵のオブリビオンが告げるのを聞けば、歴戦の猟兵であるふたりはなんとなく知る。転送されたこの世界がゴッドゲームオンラインであること、つまりゲームの中であること。
 それは判るけれど。
「……にゃん?」
 純粋な疑問と共に響納・リズ(オルテンシアの貴婦人・f13175)が首を傾げた。
 敵である少女──イマジネイラがたどたどしく語尾につける言葉は、ただ助太刀として|招《よ》ばれたリズたちにとっては違和感しかなく。
 共に降り立った赤星・緋色(サンプルキャラクター・f03675)も真紅の双眸を丸くしながら、魔導蒸気駆動の銃器を構えた。
「ふざけてる……みたいには見えないね。なにかあるのか──ぅぐッ?!」
 慎重に見定めるべくじりと距離を測った途端、突如走り抜けた激痛。思わず緋色は膝を折った。「?!」リズも咄嗟に彼を見て、素早くイマジネイラへと視線を戻し攻撃に備える。
 しかし、猫耳フードの少女がなにかをした様子はなく。
 激痛以外なら種々の耐性を持つ緋色は知る。このダメージは|世界から受けている《ヽヽヽヽヽヽヽヽヽ》と。「……」ゆらり、立ち上がった緋色は、きっ、と瞳に力を篭めた。

「にゃーん!!」

「えっ?!」
「やっぱり! にゃん! この場所は、『にゃん』をつけないと強制的に体力が削られるんだね、にゃん」
 だから敵も語尾を追加せざるを得なくなっているというわけだ。その機構には『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』という名がついているが、そんなことは今、どうでもいい。
「大変な場所に来てしまったようですわ、……にゃん。それならば速やかに、骸の海にお帰りいただきましょう、にゃん」
 適応力を存分に発揮してリズも応じれば、緋色も軽く肩を竦めて鮮やかに笑って見せた。
「そうだね。にゃん。別に不便というほどではないけど、ちょっと面倒だし、にゃん」
 得られた『同意』。リズはしかと肯いた。背の美しく純白の翼を広げれば、天から降り注ぐ光のオーラが緋色を包み込んだ。戦神のご加護を──ゴッド・ブレス・ユー。
 なにかを察したイマジネイラがとんと地を蹴り、翼もないのに飛んだ。
 リズのユーベルコードによって湧き上がる力を確かに感じながら、緋色はもう一度銃器を抱え直して跳んだ。そのまま彼自身も空へと駆け上がる。
「さあ召し上がれ、にゃんっ!」
 差し向ける、複数の銃口。フルオートバースト。無数の銃声と共に数え切れぬほどの薬莢が弾け飛び、自らのガトリングの激しい反動を見事に受け流してイマジネイラへと弾丸を叩き込んでいく。
「……ッ!」
 声も出せずに墜落するイマジネイラへ隙なく視線を据えながらも、リズはこの場所に親しい仲間たちが来たら。
──皆様がこんなふうにお話しするのも、たまには……たまにだけなら……?
 ほんのちょっぴり緩む口許を、彼女はそっと指先で隠すのだった。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

ルッツ・ハーミット
自分より誰かに被って欲しい願望は仕舞いこんで猫耳フライトキャップを装備

『0』が『1』に、『1』が『0』に
ゲームではそういう事もあるのか
でも誰かが覚えている限り、完全な『0』とは違う気もするけど

まあともかく
にゃんこがいないと悲しいし
誰かががいなくなったら寂しい
花は咲いていた方が綺麗だ
それだけだよ

なるほど速いし動きも読みにくい
でも落ち着いて良く見て
向かってきたところをフレイムソードの炎で迎撃

ところで君、あまり猫語に慣れていないね?
猫力が足りないのでは
焦らせたり余裕を無くせば語尾や防御が崩れるかな
そもそも喋らせなければ?
隙を見つつ追い詰めるよう攻撃を重ねていく

君も、一緒に花見が出来れば良かったのにね



⚫︎ただそれだけのこと
 そっと白に桜まだらの猫耳フライトキャップから手を離し、うん、とルッツ・ハーミットは一抹の名残惜しさとそこそこ大きな躊躇いをかなぐり捨ててそれをかぶった。温かい。
 彼がフレイムソードをしなやかに抜いたと同時、墜落してきた少女──イマジネイラが傷だらけの身を捻り、猫のように足から着地した。
 少女の金色の瞳が、キッとルッツを睨む。確かに猟兵たちの戦いの中で学習したのだろう。隙なく再び空へと跳び上がり、そのまま舞う。
「もう怒ったんだから。……にゃっ。きみのことも、『0』にしてあげる。にゃん」
 宵闇を駆け抜ける猫のような俊敏さで飛び回り彼の隙を狙うイマジネイラの姿を、ルッツは茜色の瞳だけで追う。なるほど確かに速いし、動きも読みにくい。けれど。
── 『0』が『1』に、『1』が『0』に。……ゲームの世界ではそういう事もあるのか。
 波立たぬ心で、異なる世界の理を呑み込む。そうだ、だからこそ奪われたはずの桜を取り返せる。
 例えばそれが、イマジネイラの言うように『生きんているかどうか』であったとしても。
「……誰かが覚えている限り、完全な『0』とは違う気もするけどね、僕は」
 抜いた刀身が焔を纏い、金の火の粉が煌めいた。
「そうだよ。……にゃ。じゃあ、『0』になったって構わないじゃない。……にゃん……!」
 鋭い踏み込み。瞬きよりも疾く肉薄する手。
「ッ!」
 鉤爪のような形の指先をすんでのところで躱せば、掠めた髪の先がジジッと分解されて消えた。あまりにか細くもぞっとしない消失の光景。
 この力を放置してはいけない。そう自然と胸に懐く思いのまま、ルッツは膝を折って軽く身を沈めた。馳せ違ったイマジネイラが踏み留まり身体を翻す、その一瞬。
「ところで君、あまり猫語に慣れていないね?」
「は?」
「猫力が足りないのでは」
「んなッ?! そんな力要らな──ッぐぅ……ッ!!」
 あくまで穏やかな表情のルッツの科白に動揺したイマジネイラが、不可視の痛みに大きく体勢を崩した。容赦なく開いた焔の|咢《あぎと》。あかい龍が喰らいつくかの如き猛炎。
 まあとにかく、と。
 ルッツは噛んだ龍が昇るみたいに、刃の軌跡を空へと斬り上げた。
「にゃんこがいないと悲しいし、誰かががいなくなったら寂しい。花は咲いていた方が綺麗だ。……それだけだよ」
「……っっ」
 少女の細い身体が重い斬撃を受け止め切れず、じじっ、とデータの欠片をいくつも散らして吹き飛ぶ。
「君も、一緒に花見が出来れば良かったのにね」
 ほんの微かな茜の翳りは、少女の瞳に映ることはなく、けれど確かに終りが近付いて。
 ただ彼の望みを反映するかのように、花の消えた枝の先に、じじじと桜色のデータがちらついた。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

リィンティア・アシャンティ
つけ猫しっぽと同じ、若菜色のリボンが付いたつけ猫耳
やっと見つけました!
りすさんに声を掛けると「にゃあ」と返事が
いつの間に飴を食べて?
つやつやなまるまるが落ちてたから、どんぐりだと思ったと?
なんで……
脱力していたら
0とか1とか難しいお話がされていて

生死不明とも違う、ゲーム世界の生死
イベントアイテム集めはとても楽しいですし
桜にゃんこさん達との時間も夢のように楽しいはず
それを奪うのは良くないことだと思います

殺しても死んでいない
だからといって、その行いを見過ごすことはできません
架空のものでも人が消えるのは悲しくて
嫌だと思うから

ルノにとっておきの妖精の矢をお願いしましょう
そして、桜を返してもらうのです!



⚫︎桜、奪還
「やっと見つけました!」
 どんぐりりすさんの純粋な物欲……もとい、コンプ欲に当てられてしまったような気もしなくはないけれど。
 顔を輝かせるリィンティア・アシャンティの手には、白と桜の毛並みに若菜色のリボンがついた猫耳。
「これでコンプ……でしょうか?」
 軽く息が弾むくらいにはたくさんのスライムを狩って、抱え切れないばかりのドロップアイテムは──「これがダブりというものなのですね、りすさん」「……」「す、拗ねないでください、次に行きましょう!」──まんまるボンボニエールに仕舞い込んで。
 既に装着したしなやかな猫しっぽに合わせて、いそいそとリィンティアは手に入れたばかりの猫耳をつけてみる。ふかふかしている。なんだか不思議な力でぴこぴこ動くような気もする。
 ちょっぴり恥ずかしさはあるけれど、それよりも満ち満ちた達成感で誇らしげに彼女は傍らの銀色の栗鼠を窺った。
「どうですか、りすさん?」
「にゃあ」
 目の前の小動物の口から飛び出した声に、思わずリィンティアは目を丸くすることしか出来なかった。なにが起きたか判らなかった、という方が正しい。
「──えっ? え?! あっ、いつの間に?」
 確かに手に入れたのだ。『喋る言葉が全部猫語になる飴』を。
 栗鼠はなぜかドヤ顔で。
「にゃっ、にゃぁん、にゃー」
「つやつやなまるまるが落ちてたから、どんぐりだと思ったと? ……なんで……」
 がっくりと崩れ落ち項垂れるリィンティアに、誰の所為だか判っているのかいないのか、ぽふぽふと栗鼠が小さな手で膝を叩いて慰める。
 「いえ!」こうしている場合ではない。長い髪を跳ね上げ、がばっと顔を上げた彼女は戦闘の気配に気を取り直した。
 栗鼠を拾い上げ、「ルノ」手を差し伸べる。碧い妖精が彼女の傍に寄って微笑む。視線の先には猫耳フードの少女がリィンティアを睨む。
「きみも、『0』になりたいの? ……にゃん?」
「『0』……」
 生死不明とも違う、|ゲーム《この》世界の生死。それは、難しいお話。でも。
「あなたの言う通りなのだとして。……殺しても死んでいない、だからと言って、その行いを見過ごすことはできません」
 難しいからと放り出さない。彼女なりに真摯に向き合う。例え架空のものでも、『人』が消えるのは悲しくて嫌だと思う、その気持ちは本物だ。
「なんにせよ。イベントアイテム集めはとても楽しいですし、桜にゃんこさん達との時間も、夢のように楽しいはずです」
 きゅっと眦に力を篭める。ちりんとしっぽの鈴が鳴った。
「それを奪うのは良くないことだと思います。だから──桜を返してもらうのです!」
 彼女の指が指すが速いか、一閃した碧。構えた槍はそれごとが強力な一本の矢と化す妖精の|一撃《とっておき》。
 彼女の信頼に応えるかのようにその一撃は過たずに敵を穿った。
 

成功 🔵​🔵​🔴​

クロム・ハクト
与奪の糸での範囲攻撃と人狼咆哮を交互に。
攻撃命中を感知できたなら、それを目安に絞り込みつつ、拷問具での拘束も狙いたい。
厄介だな、人狼咆哮で常に叫び続ける、というわけにもいかないからな。
今奪われたとしても、ここで倒して取り戻すだけだ。

この世界の理屈ではそうなのかもな。
絶対に戻らないものと、戻るかもしれないもの、
そういう意味では確かにそうなのかもしれない。
(取り戻せるかもしれない、その違いは大きい―自分の記憶がそうであるように)
だが、殺した事実は0から1に戻った所で消えるわけじゃないだろ。
第一、どっちにしろお前の都合でどうこうしていいものじゃない。
俺の都合で倒すまでだ。



⚫︎足跡
 雷鳴が如き彷徨が迸る。
 けほ、と軽く痛む喉をさすり、クロム・ハクトは戦場を見渡した。そこには誰も居ない。彼の狼の聴力をもってしても、敵の音は、姿は、捉えられない。
「……厄介だな」
 激しい咆哮で高威力無差別な攻撃を半径百m以上に渡って轟かせることはできる。だからと言って、常に叫び続けるわけにはいかないことはクロムとて承知している。
 だが同時に、視聴嗅覚での感知ができないだけで、クロムと対峙した途端に急ぎシュレディンガーパーカーをかぶったイマジネイラの動きから、最早限界であることは火を見るよりも明らかだった。
 そして、クロムの咆哮が確実に彼女の体力も気力も削り取っていることも。
「戻るかもしれないなら、殺したって──か。この世界の理屈ではそうなのかもな」
 絶対に戻らないものと、戻るかもしれないもの、
そういう意味では確かに|そう《ヽヽ》なのかもしれない。
──取り戻せるかもしれない、その違いは大きい……俺の記憶が、そうであるように。
 「だが」ぐ、と彼が手を握り締める。キュ、と聞こえるかどうかの音。それは一見しただけでは見えないほどの極細の糸。
 蜘蛛の巣のように張り巡らせたそれは、広範囲へ対するトラップだ。
「、」
 確かな手応えが返り、クロムはなにも見えない虚空へ向けて軽く首を傾げて見せた。
「見つけた」
 姿は相変わらず見えない。声も聴こえない。ただただ、指に伝わる糸の振動がイマジネイラの焦りをも如実に伝えていた。
「殺した事実は『0』から『1』に戻ったところで消えるわけじゃないだろ。どっちにしろ、お前の都合でどうこうしていいものじゃない」
 もふ。一歩踏み出せば白い猫足。気恥ずかしい気持ちがほんの少しだけ蘇るけれど、気にしている場合ではない。
 でも、汚してしまうのは忍びない。それだけ思った。
「俺の都合で倒すまでだ」
 クロムにとってそれは──オブリビオンを屠ることは、仕事であり、役目であり、使命だ。完全な『0』は無いかもしれなくても。
 殺す事実を懐いて進む。
 響き渡った狼の咆哮が、敵の気配を戦場から掻き消した。
 

成功 🔵​🔵​🔴​




第3章 日常 『猫を撫でているだけ』

POW   :    兎に角街(村)中駆け回って探す! ついでに探検!

SPD   :    猫がいそうなところに目星をつけて探してみよう

WIZ   :    おやつ的なアイテムで呼び寄せてみよう

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


⚫︎桜にゃんことティータイム
 バグプロコトルが消滅したことで、世界に“桜”が返って来た。
 柔らかな緑の下草と木の幹の茶色、あとは空の青だけであった景色に、文字通り咲き乱れる桜色が戻ってきた。
 近隣のお菓子屋さんたちがその変化に気付き、こぞって木陰に草原にテーブルと椅子を据えていく。真っ白なテーブルクロスを広げて、桜の枝を一輪挿しにして、大忙し。
 甘くてふわふわな桜のシフォンケーキ、桜の塩漬けを潜ませた大人味のクッキー、もっと渋めに桜羊羹。道明寺粉の桜餅に、桜なんてむしろ関係ない三色団子。紅茶に煎茶、コーヒー。
 あっという間に開放的なカフェテリアに変身したそのテーブルの足許に抜け目なくやってくるのが、白い毛並みに桜色のまだらが入った桜猫たち。
 性格も当然それぞれであるが、猫でも食べられるお魚クッキーをあげればどんな子でも撫でさせてくれるのだとか。
 満足したなら緑の絨毯に寝転がったっていい。
 お話したって、ひたすらに桜猫を愛でたっていい。
 敵の消失と共に『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』も掻き消えている。気付かないうっかりさんも居るかもしれないけれど、ご愛嬌。
 すべて春の陽気の下で、心のままに。
 
ルッツ・ハーミット
うん、良い景色

折角なのでカフェテリアへ
桜のシフォンケーキにコーヒー
魚クッキーも忘れずに

リコもいるかな
今日はお疲れ様、と声を掛けに
君も皆も楽しめているなら、やっぱり桜を取り戻せて良かった

そうだリコ、これあげる
猫耳フライトキャップを渡し
被ってくれたらきっと可愛い
期待の目線

御礼にケーキも一口どうぞ
可愛い子には沢山食べさせたくなる性分
あ、飴もいる?
猫語になっちゃうけど、と笑い

寄ってきた桜猫を膝上に誘って
クッキーをあげながら桜模様の背を撫で
うーん、なんて幸せなイベントなんだ

これはリコのとおさまにも自慢しにいかないとね
羨ましがるかな
嗚呼でも、彼ならきっと

思い浮かべた顔は一緒かな
にゃんこを撫でながら笑って



⚫︎馳せる想いと桜色
 じじっと世界がブレたかと思うと、波が渡っていくように木々に桜が戻って来た。ルッツ・ハーミットはそれらを確認して、
「……うん、良い景色」
 猫耳フライトキャップをさりげなく脱ぎ去りながら呟いた。春の風に向日葵色の髪をなびかせ、用意された真っ白なテーブルクロスを指先で撫でる。既に話を聞き付けたらしいこの世界のお客さんたちが、めいめいにテーブルについてはメニューに瞳を輝かせている。
 いくつかテーブルが並ぶ中、見つけた後ろ姿にいつかのように声を掛けた。
「リコ」
「、ルッツ。お疲れ、さま」
 振り返ったのは、左右色違いの双眸持つ少年。リコ・ノーシェ(幸福至上・f39030)。
「リコもお疲れ様。良かったらご一緒してくれない?」
「ん……おれで、いい、の?」
「リコが、いいんだよ」
 ルッツの友人の“息子”である彼は、ルッツの友人そのひとよりもまだまだ自信がない様子だ。はっきりと声にして、空いたテーブルにふたりで着いた。
 メニューに悩む姿を見遣りつつ、なんとか注文を終えたなら、ルッツは「そうだ」と期待を込めてリコを見た。
「リコ、これあげる」
 手渡したのは、猫耳つきのふわふわなフライトキャップ。白い毛並みに桜色のまだら。
「……いい、の? これ、一応、イベントアイテム……」
「うん」
 惜しいと思うなら初めから勧めない。力強く肯くルッツへ「……へへ、」口角を緩めたリコは、もらったそれをぽふりとかぶった。
「ふかふか、にゃー。ありがと、ルッツ」
「うん、ニヤけてないよ!」
「……? 言ってない、よ……?」
 そうこうしている内に、ふたりの前には桜色したシフォンケーキとコーヒー、そして小さな袋に入ったお魚クッキーが運ばれて来た。
 誤魔化すみたいに揃っていただきます。口へ運べばふんわり食感に塩漬け桜の香りが抜けて、優しい甘さが舌を撫でる。
 受け取ってくれたお礼にケーキをひと口、と思っていたけれど、選べないリコが「おんなじの」と言ったから、ふたりで同じようにふわふわを楽しんで。
 同じくらい、でももっとあたたかなふわふわが足に触れたのを感じてテーブルの下を覗き込めば、白い毛並みに桜色のまだらな模様のにゃんこがルッツを黒い瞳で見上げていた。
 にゃあんと懐っこい声で鳴くその子へ、「おいで」膝を軽く叩きつつお魚クッキーを嗅がせてやれば、桜猫は警戒心なくぴょいと彼の膝へと飛び乗った。
 あたたかさと重みを感じながらお礼のクッキーをあげて、撫でる。ごろごろと鳴る猫の喉。
「うーん、なんて幸せなイベントなんだ」
 すっかり相合を崩すルッツ。おれも、おれもと了承を得たリコが同じように猫に手を伸ばす。
「あ、飴もいる? 猫語になっちゃうけど」
 ルッツが悪戯混じりにそんな提案をしてみれば、案外真剣な表情でリコは悩んだ。
「それ。食べたら、にゃんこさんと、話せる……?」
「ん、うーん、猫語って言うくらいだから、話せるんじゃないかな」
「……。……でも、ルッツとは、喋れなくなる、よな」
「……」
「それは、やだ、な」
「うん、お土産にあげるね!」
 そんなふたりの話を聞いているのかいないのか。桜猫はくぁりと落ち着いた様子であくびをひとつ。
 ルッツは同じように眦を和らげるリコや周囲のテーブルの人々を軽く見回した。
「……やっぱり“桜”を取り戻せて良かった」
──君も皆も楽しめているなら。
「ん、そうだ、な。ルッツたちの、お蔭、だよ」
 そう返す同席者の振る舞いにやはり友の姿が重なる。重なるけど、違う。
「これはリコのとおさまにも自慢しにいかないとね」
「とおさま」
 輝く色違いの双眸に、ルッツは微笑む。
「羨ましがるかな。……嗚呼でも、彼ならきっと」
 思い浮かべた顔は、一緒かな。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リィンティア・アシャンティ
まんまるボンボニエールに次々とアイテムを入れ続けた結果
主(正確には違う)の猫王さまが驚いて出てきました
にゃあと鳴く謎の小動物と化したどんぐりりすさんを見て
猫王さまがボワッ!となったのがすごかったです

ふわふわな桜のシフォンケーキにふわふわな桜猫のラテアート
にゃんこもお花も風も光も
世界の全てがふわふわしているように感じます
私の猫耳と猫しっぽもぴこぴこ、ゆらゆら
達成感と癒しがすごいのです

こんなに人を楽しませようと作られていて
皆が大切に楽しんで
たしかに人は生きていて
大切な世界のひとつです

ひたすら撫でる
お魚クッキーを狙っている自称猫のどんぐりねこりすさんの事は
ルノと猫王さまが見張っているので
にゃんこさん達をむやみに驚かせたりはしないでしょう

りすさんのすごく可愛いおねだりポーズ
むむむ。独り占めはダメですからね。分けてくださいね

せめてダブったアイテムだけでもどうにかしないと
買い取ってくれるお店もありそうですが
プレイヤーさんと交換するのも楽しそう?
お探しの品、りすさんお気に入りの飴とならば交換しますよ!



⚫︎ひとりだけでは勿体無い場所
 |私だけの秘密のお庭《まんまるボンボニエール》には、めいっぱいのドロップアイテム。
 どんどん降り注ぐそれにふさふさのしっぽをびっくり立てたのは、我がもの顔でそこへ入り浸る猫王さま。
 ふんと鼻を鳴らして当たり前のようにするりと“庭”を出た猫王さまの明るい緑色の瞳いっぱいに映ったのは、満開の桜。
「あ、猫王さま」
 そして見慣れたリィンティア・アシャンティと、最近やたらとうろうろちょこちょこしている銀色の小動ぶ──、
「にゃっ、にゃー!」
「ッ?!!」
 ボワッ! と膨らむ猫しっぽ。思わずリィンティアもくすりと笑ってしまう。
──せめてダブったアイテムだけでもどうにかしないと、猫王さまが困ってしまいますね……。
 テーブルの上に届けられた桜色のシフォンケーキには真っ白な生クリームがたっぷり添えられていて、思案しつつもぱふりと口に運べば優しい甘さとふわふわの口どけ、ちょっぴりの桜葉の塩の味。
 傍らのカップには立体ラテアートの猫がぷるぷる揺れながらにっこり微笑んでいた。
 花陰からこぼれる光はやわらかく、花弁を乗せた春風もあたたかい。テーブルの上に用意してもらえた小さなテーブルセットに、碧い妖精がおすましして腰掛け、翅をそよがせる。
 これが全部、|ゲームの中《つくりもの》なのだという。信じられない気持ちと、ただありのままを受け入れる心が混ざり合う。
──例え、つくりものでも。
 こんなに人を楽しませようと作られていて、皆が大切に楽しんで、確かに人は生きていて。リィンティアにとって間違いなくここは、
「……大切な世界のひとつです」
 自然と和らぐ口許に、ぴこぴこと猫耳としっぽがご機嫌に動いた。
「まるで世界の全てがふわふわしているように感じます」
 足許に寄り添う、白と桜色の柄の猫の毛並みは言うまでもない。
 撫でてもいいですか? と確認してから触れた背中から、手が離せない。ゴロゴロと喉を鳴らす音さえ耳に心地好い。
 時折手ずからお魚クッキーをあげれば、釣られたみたいに他の桜猫たちも集まって来て、なんとも幸せ空間だ。
「……達成感と癒しがすごいのです……」
「にゃ、にゃんにゃー、にゃあー」
「……た、達成感と、癒しが……」
「にゃっにゃー」
 銀色のふさふさのしっぽをゆらゆらさせて、でも明らかに猫のものではないそれは、桜猫たちの細長いしっぽの中では異質で。
 りすもくっきー、もらっていいはず! りす、ねこだから〜。そんな副音声が聞こえて来そうな、きらきらのおめめ。小気味良い音を立ててクッキーを噛み砕く桜猫たちへとじりじり距離を詰める栗鼠。
 けれど。
「にゃっ」
 自称猫のお顔にぽふんとふさふさのしっぽが掛けられた。猫王さまだ。テーブルの上のテーブルセットからも、微笑み浮かべたルノの視線がどんぐりりすさんへと隙なく落とされている。
「んなぅ……」
「ふふ、」
 お魚クッキーへ近付くこともできず、しゅんと耳を下げた栗鼠。だが、こんなことでへこたれる栗鼠ではない。
 作戦変更! りすさんは素早くリィンティアの膝へと駆け上がって両手を揃え、きゅるんと目を潤ませた。
「にゃあん、にゃあ〜」
「む、むむむ……!」
 素直にかわいいおねだり攻撃に、リィンティアのクッキーの袋を持つ手が震えた。い、いけません、これは桜にゃんこさんたちの……いえ、でもりすさんもこんなに欲しがっていますし……!
「にゃ、にゃぁん〜」
「う、うう……っ、独り占めはダメですからね。みんなで分けてくださいね」
 遂にリィンティアはその袋を栗鼠へと渡し、栗鼠は喜び勇んでクッキーを頬張って、猫王さまとルノのちょっぴり呆れているみたいな視線に「だ、だって……!」リィンティアは肩を縮めた。
 そんな彼女の傍で忍びやかな笑い声が聞こえて振り返れば、同じくイベントを楽しみに来たらしい淑女が「あら、ごめんなさい」と悪びれなく言った。
「あんなにかわいいんだもの、仕方ないわよねぇ」
「そ、そうですよね……っ」
「声掛けついでにもうひとつ、伺ってもいいかしら。あなたのそのしっぽ、とってもお似合いでかわいいわ。ひとつ余分にドロップしたりしていない?」
「えっ、」
 思いがけない申し出に、リィンティアの白い猫耳がぴょこっと立ち上がる。
 淑女は恥ずかしそうに鞄から袋を出した。リィンティアも見覚えのあるそれには、どんぐりのような飴が入っていた。
「私も頑張ったんだけど、どうしてもこの飴しか出なくって。あなたのかわいい栗鼠さんも食べたみたいだし、良ければ交換してくれないかしら」
 買い取ってくれるお店はきっとどこかにあるだろう。そうは思っていたけれど。ドロップアイテムの交換というのは、この世界では特にありふれたことらしい。
「はい、喜んで!」
 こんなやりとりができるのも、この世界が守られたという確かな証だ。
 答えるリィンティアの頬にも、桜色が浮かび上がった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

クロム・ハクト
リコと。

猫足はそのまま。
本来はそういう催しなんだろ?合っているかはわからないが。

見事なものだな。
(木々も膝の上or足元も器の中も)桜でいっぱいだ。

桜のシフォンケーキとコーヒー(ミルク有・砂糖無)を、と思っていたが(祭りの誘惑への弱さに加え)コーヒーに合うと聞くとクッキーにも揺さぶられつつ。
お魚クッキーも忘れずに。

そちらも案内お疲れ様、だ。

リコは猫のどんな所が好きなんだ?
(リコの言葉になるほどとなるか、熱のこもった言葉に圧されつつ)
俺は……そうだな、そのしなやかな身のこなしや、興味の赴くまま生きる様子は惹かれるものがある。
(クッキーをあげていた猫の食べ終えての反応―寝るか、次に移るか、更にせがむか―を見て、ふっと笑い)
言ってる傍からこれだ。
(眺め和む)

アドリブ・絡みOK



⚫︎桜色ブレンド
「見事なものだな」
 緑の絨毯に足を伸ばして座ったクロム・ハクトは頭上の枝を見上げた。
 それから傍らの銀盆に乗せたコーヒーカップと桜のシフォンケーキの皿を見下ろす。皿の端には丁度舞い降りた花弁がそっと寄り添ったところだった。
「桜でいっぱいだ」
「ん……、へへ」
 隣でゆるゆるに緩んだ顔で笑うのはリコ・ノーシェ。けれどその視線は、クロムの足許へ。
 そこにはふかふかの白と桜色の猫足ブーツ。その視線に気付いたクロムも頬を指先で掻いた。
「本来はそういう催しなんだろ? ……合っているかは判らないが」
「いいと思う、よ。限定アイテムを、手に入れるための、イベントだ、から」
 そう告げるリコの頭にも、フライトキャップの猫耳が揺れているからおあいこだ。リコの科白に肯きクロムもミルク入りのコーヒーを口に運んだ。まろやかな苦味が舌に広がる。
 これに合うらしいクッキーも気になる──と思ったところで、彼の前に想像したばかりのそれが差し出される。ぴこっとクロムの狼の耳が思わず立った。
 さっきケーキは食べたから、と少年は左右色違いの双眸を和らげた。
「良かったら、これ。合う、よ」
「、……ああ、ありがとう。実は気になってた」
「へへ。そうかなって、思った」
 バレていたか、とほんの少しの気恥ずかしさを誤魔化すみたいに渡されたクッキーを齧れば、甘さと微かな塩気が舌に優しい。ふわと本当に僅か、桜の香り。
 ゆるり揺れた尾に、リコも満足気。
「おいしい、でしょ」
「ああ。……不思議と懐かしい感じがする」
 和むふたりの傍に、それはねこのクッキーではないですか、それはねこのためのクッキーではないのですか、とふんふん小さく鼻を鳴らしながら白い毛並みに桜色模様の猫たちが集まって来る。
 クロムは|黄金《こがね》の瞳を丸くし、リコから渡されたお魚クッキーを桜猫たちへと差し出した。猫たちは慣れているのか、がっつくことはなくクロムの指からそっとクッキーを拾っていく。
 ふわ、と指先に触れる、狼とは異なる柔らかい毛並みに、なんだか胸の奥が揺れる気がした。ふふ、と隣で小さく笑う声。
「にゃんこさん、好き?」
「そう、だな。しなやかな身のこなしや、興味の赴くまま生きる様子は惹かれるものがある」
 クッキーがなくなって空いた手で、その背を撫でる。ゴロゴロと喉を鳴らし目を細める猫に、自然と口許が緩んだ。
 食べ終えた猫はごろんとおなかを見せて転がり、クッキーにありつけなかった猫たちは、こちらのねこはまだいただいてませんよ、こちらのねこにもあたえるべきです、とばかりにクロムの手に頭を擦り寄せて来る。ふ、と彼はちいさく笑う。
「言ってる傍からこれだ。……リコは、猫のどんなところが好きなんだ?」
 同じようにお魚クッキーをあげている少年の横顔へ問う。
「ん……おれも同じ、かな。自由なとこに、憧れる」
 おいでおいでと膝を叩いてみれば、狙った猫ではない猫がぐいと腕を押しのけ乗って来て、ね、とクロムへ同意を求めて見せるけれど、その表情は明らかに嬉しそうだ。
 クロムとしては思った方向の熱量ではなくて少し瞬いた。
「『憧れる』、か」
「ん。……まあ」
 リコは語調を改め、膝の上の猫を抱き上げて、ぎゅうと抱き締めてゆるゆるに緩み切った頬を寄せた。
「あったかくて、ふわふわで、かわいいこと、が。なにより一番だ、けど」
「一番がたくさんあるんだな」
 その姿の方がなんだか馴染みやすい気がして、クロムは肩の力を抜いた。
 そんな彼へ、はい、と押し付けられる桜猫。たらんと野生味なく長く伸び切った足の猫を、戸惑いながらもクロムは受け取り、リコがしていたように──それよりは遥かに恐る恐るではあるけれど──抱き締める。
「……確かに」
 あったかくて、ふわふわで、かわいい、と思える。
「あと、あと、ね、とおさまが好きだったこと、も。なによりも、一番」
「とおさま?」
「とおさま!」
 聞き慣れない発音に聞き返しただけのつもりが、なんだか少年の中のスイッチを押してしまったらしい。嬉々として語り出すリコの傍で、くぁりと桜猫があくびをした。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

リヴィ・ローランザルツ
【風雪】

この切欠を作ってくれた本人が居ないのは勿体ない
それに『また』と別れた夏だったからリコとまた過ごせたら嬉しい


俺は水辺に近くて大き目のテーブルを探そう

注文はルシエラさんと被らない様な甘い物に
彼女もリコがもし決めきれない様なら保険になる
和洋あるのも良いだろう
桜のクッキーや珈琲…蜂蜜を入れようか砂糖より味が深くなる

お魚クッキーを貰いリコと呼ぼうか?
可愛らしい子猫達に此方の二匹も興味深々そうで
撫でさせて貰えると良いけれど
模様が良く似合う

空色の中の桃色は現実と遜色なく彼女の言葉通りだと思う
常々思ってたけど―彼女の方は幼い頃からだけど―
リコの左目と彼女の蒼い髪は違いはあれど空の様だと思う
素直に思った事を口にするけど不快に思わせたなら謝ろう
ただ、綺麗だと思っただけなんだ
加えて俺にとっては自由の象徴みたいな物で
二人がそれを持っている様に見えて嬉しいといえば良いのかな


問が耳に入れば
先程の戦闘中の様子を思い出し
「ルシエラさんも可愛いですよ」と少しの意趣返しは赦して貰いたい
こうして思い出が増えるとよいな


ルシエラ・アクアリンド
【風雪】

リコに声をかけさせて貰おうかな
この仔達もリコと一緒だと嬉しいだろうし
みんなで楽しもう?

探して貰ったテーブルならこの仔達も好きに動けそう
リヴィとリコが、シエラ達や仔猫が仲良く過ごしているのを見ていると自然と微笑みが出る
口にはしないけれどまるで弟が二人いるような心持で
「とても贅沢な時間だなあ」と此方は思わず口が滑る位には

桜餅と抹茶を頂こうかなあ
あぁ、迷っていたのは見破られちゃったか


見上げれば空
ふわふわでじゃれるシエラ達と子猫達
作られたとかそういうのは関係なく心に響く

聞こえた言葉に「そういえば」と、なる
加えて同じ色でも少し違う事だってその人らしさ
リコにとっては思う所があるかもだけどそれは彼が自由に思う事だから
ただ、|それ《瞳》を綺麗だと。
好ましく思う人がいる事は覚えてくれると嬉しい


子猫というのはどうしてこうも無条件で可愛らしいのかな
何気なく口にした感想に不意打ちの答え
年上をからかうものじゃありません
ライも珍しい態度を取るのが少し悔しい気もするけれど
それすらも愛しい思い出となるのだろう



⚫白と桜と空色と
 また今度、と夏に手を振り合ったから。
 リヴィ・ローランザルツは改めて水辺に近いテーブルについて、桃華獣を放した。毛玉雛がころころと転がるように川辺に向かうのに、シエラが寄り添う。
 あの御転婆さんも、セラと一緒なら“お姉さん”になれるらしい。不思議なものだなあとルシエラ・アクアリンドは眦を和らげた。
 四つの椅子。ひとつにはルシエラ、ひとつにはリヴィ、もうひとつの背もたれにはライが羽を休め、そして残りひとつには。
「……い、いいの、かな、おれ」
 せっかくふたりで遊びに来たのに。自信無さげに問うリコ・ノーシェに、ルシエラは当然とばかりにあたたかな視線を据えた。
「うん。むしろリコさえ良かったら。この仔達もリコと一緒だと嬉しいだろうし、みんなで楽しもう?」
 こくりとリヴィも肯いて、ルシエラとリコへと簡素なメニューを差し出した。桜のシフォンケーキにクッキー、桜の羊羹に桜餅、それから三色団子。
「リコ、なににする?」
「ルシエラ、は?」
 想定通りメニューに穴が開くほど見つめ続けるふたりの姿に、リヴィは袖で歪む唇を隠す。
「……桜餅と抹茶を頂こうかなあ」
「リヴィ、は?」
「そうだな。……桜のクッキーにしようか。珈琲と。和洋あるのも良いだろうし」
 そうして注文をして、待つことしばし。その間、せせらぎに遊ぶセラの姿をついついみんなで注視して、セラが遊べと怒ってリヴィにぴぴぴと羽の水滴を飛ばしたりして。
 届いた甘味に竹のナイフを入れて、口に運べばこしあんのなめらかな舌触りと甘みが広がる。包んだ桜葉の塩漬けがアクセントになって、いくらでも食べ進められてしまいそう。あっという間に完食してしまいそうになって、ルシエラは抹茶の苦味で口の中をリセットする。けれどリセットされたらまた、甘みが欲しくなって。
「……うぅん。さすがは職人の技……」
 自分でここまで求心力のある餡を作れるだろうか。そんな風に思案する彼女の前に、皿盛りの桜のクッキーが差し出された。リヴィの翠の双眸が悪戯っぽく輝く。
「こちらも美味しいですよ。いかがですか?」
「……、迷ってたの、見破られちゃってた?」
「さぁ。俺が食べたいと思っただけですが。リコは?」
「ありがとう。おれは、だいじょうぶ。こっちも、おいしい、よ」
 切り分けた桜餡の羊羹を差し出せば、ふたりはそれぞれにそれを口に運ぶ。更にクッキーも一枚齧ったルシエラは、さっくりほろほろの食感と、香る桜に再び唸るのだった。

 すっかり堪能してから、リヴィは砂糖の代わりに蜂蜜を入れた珈琲のカップを干し、代わりに魚型のクッキーを手にして立ち上がる。いつしかテーブルの下に集まってきていた桜猫たちが待ってましたとばかりに顔や耳を持ち上げた。
「リコはもう充分、か?」
「にゃんこさんとは、どれだけ遊んでも、いい」
 他の猟兵との時間もあっただろうと伺ったリヴィに、いつも通りの眠そうな目がちょっぴり強い光を帯びて、リコも草の上に腰を下ろし直した。
 しなやかな肢体がすぐに寄り添ってクッキーを噛み砕く。手を伸ばせば白地に桜色の模様が斑に入った毛並みはふわふわと指をくすぐる。「模様が良く似合うな」横腹に桜の花弁のような模様が入った子の額をくしくしとリヴィが撫でれば、桜猫は目を細めて喉を鳴らす。
 リコの腿に顎を預けている桜猫の尻尾に、セラがちょこちょこと近付いては、その尻尾が揺れる度にぴょっと跳ね上がってシエラの後ろに飛んでいく。シエラはセラよりは落ち着いて、けれど興味を隠さずにリヴィに撫でられている猫の顔を覗き込んでは、繰り出される猫ぱんちを軽やかに避けた。
 テーブルでライと共にそんな姿を見下ろすルシエラの口許にも自然と微笑みが浮かぶ。まるで、──弟がふたりいるみたいな。
「……とても贅沢な時間だなあ」
 つい零れた言葉に、同意なのか、ライが少し首を傾げる。シエラのちょっかいにやる気になった桜猫の子猫が、じゃれあって駆け出す。水辺のせせらぎの音に、青々とした緑、高く太く伸びる桜の樹。青い空。
「作られたとか、そういうのは関係ないね」
 心に響く。しみじみと告げる彼女の言葉にリヴィも振り仰いでテーブルの彼女を、そしてその背後に広がる空を見上げた。ゲームの中なのだというが、見目にも匂いにも味にも、気配にも。まったく現実と遜色ない。
 視線を戻せば、ふと目に留まった|霄《そら》の色。
「常々思ってたけど──リコの左目とルシエラさんの蒼い髪は、空の様だな。もちろん、違いはあれど」
──彼女の方は、幼い頃からだけど。
 出さぬ想いも確かにあれど、素直な気持ちが口を衝いた。きょとりと色違いの双眸と、己と同じ翠の双眸が瞬いた。
「いや、不快に思わせたなら謝る。ただ、綺麗だと思っただけなんだ。俺にとっては空と言えば自由の象徴みたいなもので……ふたりがそれを持っている様に見えて嬉しい、と言えば良いのかな」
 言い訳、ではない。きちんと伝えたいと思ったリヴィの真摯な言葉に、うん、とリコは肯く。その横顔をルシエラも見つめる。どうやら彼にも思うところがあるようだけれど、それは彼自身が自由に思っていて良いことだ。
 少し困ったみたいに、けれどどこか嬉しそうに、リコはちいさく微笑んだ。
「ん……、ありがと。……左は。……一族、みんな同じ色、なんだ。だから、おれも、好き。右目も、……嫌いじゃ、ないんだけど、な」
 |揃わない《ヽヽヽヽ》。そこに根があるのだと、ルシエラはもちろん、リヴィも聡く感じ取る。
 そっか、と告げて。ルシエラも椅子から降りて、リコの傍へと膝をついた。ちりんとチョーカーの鈴が鳴った。この贅沢な時間を澱ませることは、彼も望んでいないのはよく判るから。
「同じ色でも、少し違う事だって、その人らしさだと私は思うよ。だからただ、|瞳《それ》を綺麗だと。好ましく思う人がいる事は、覚えていてくれると嬉しいな」
 以前から伝えたかったこと。「ん。……うん」リコが肯くのを見て、ルシエラがすっかり満足して餅みたいになっている桜猫の喉をくすぐってやれば、うるうると指先にあたたかい震動が届く。
「それにしても、子猫というのはどうしてこうも無条件で可愛らしいのかな」
 すっかり眦を下げる彼女をそっと窺って、リヴィはついと視線を逸らした。
「ルシエラさんも可愛いですよ」
「っ、」
「うん」
 ほんの少しの意趣返し。不意打ちの褒め言葉に、ぱぱっとルシエラの頬に朱が昇った。ついでにリコも肯くから、
「年上をからかうものじゃありません」
 顎を上げて憤然──を装って──言ったところで、相棒のライは全く援護射撃してくれる様子もなく、それどころかリヴィの傍に一歩二歩、跳んで寄って、なにか言いたげにこちらを見るものだからルシエラは孤軍だ。
「──もう、みんなして」
 せっせと猫を撫でるふりして視線を外せば、なんだか可笑しくなってきて、ルシエラの口許も緩んでしまう。
 こんな春の思い出も、たまには良いだろう。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月18日


挿絵イラスト