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それは春クエですか? ▷いいえ、メリィ苦🐿鱒

#ゴッドゲームオンライン

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#ゴッドゲームオンライン


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「春の期間限定イベント、始まりそうだね!」
「ジルエッタ・フィールドの季節イベントは、初心者にもオススメみたいだ」
 季節は春。
 ゴッドゲームオンラインの世界でも春が訪れるフィールドがあるようだ。ゲームプレイヤーたちが各地の予告イベントをチェックしていく。
 中でも初心者にオススメとされるジルエッタ・フィールドでの季節イベントは『さくら集め』。
 フィールドに舞う桜花びらをキャッチしたり、敵を倒して期間限定アイテムの花びらをまとめてゲットしたり。
 集めたそのアイテムは枚数に応じて、期間限定装備を作ることができる。
「ええと、限定装備が一時獲得されるから、これを装備して花びらを集めればいいのか」
 配布される限定装備は桜モチーフのバングルだ。銀に桜装飾が施されている。
「この時点で強化はできないけど、イベントエリアを突破してイベントボスを倒せば、いろいろ解禁されるんだね」
 一度イベントボスを倒してしまえば、集めた花びら枚数に応じて期間限定アイテムが色々と作れるらしい。
 桜モチーフの武器、防具、アクセサリー。回復量の多い桜餅などのアイテムも。
「まあ、まずはバングルを装備して、その辺の敵を倒してからボスを目指しに行こうか」
 チームを組めばボスの撃破も容易いだろう。
 ゴッドゲームオンラインをまだやってない友達に声を掛けてみるのも良いかもしれない――。

 さくっとレベルを上げ、イベントボスを倒してからじっくりとアイテム作りを進めていく初心者向けの期間限定イベント。
 だが、多くのプレイヤーが集まる『季節イベント』は、バグプロトコルもまた目を付けるのだ。


「芽吹き、花咲く季節となってきましたが、ゴッドゲームオンラインでも春クエストの時期みたいですね」
 皆さん、お花見などのご予定はありますか?
 集まった猟兵たちにそう尋ねるのはグラース・アムレット(ルーイヒ・ファルベ・f30082)だ。
「今回はゴッドゲームオンラインでのお花見はいかがでしょう?
 まずはジルエッタ・フィールドのクエストエリアを破壊しているバグプロトコルを撃破してからとなるのですが――」
 季節イベントに連動したクエストひとつを丸ごと支配し、挑戦しに来たプレイヤーたちをバグの嵐で一網打尽にしようとしているバグプロトコルを倒してほしいとグラースは猟兵たちに告げる。
「ええと、今、そのクエストエリアはクリスマスに侵食されてまして……『クリスマス台無し男』たちが蔓延っています」
「……うん」
 ちょっと何て言っていいか分かんないな。という顔になる猟兵たち。
 グラースは続けた。
「浸食してクリスマスにしたいのか、クリスマスを台無しにしたいのか、クリスマス台無し男たちの動機はちょっと不明ですね。あまり深く考えないで下さい」
 クリスマス台無し男は『幸せそうな子供やカップルに嫉妬して、本物のサンタからプレゼントを盗んだ』という設定の敵キャラとなっている。バグプロトコル化したことで接触したアイテムがバグ化するようになったらしい。
「倒そうとすれば、こちらの装備する武器などのアイテムがバグ化してしまうんですよね。敵性能は悪辣ですが、なんと、ジルエッタ・フィールドの春クエストを受注して『おためし装備』である桜モチーフのバングルを装備すれば、そのバグは無効化されます。この期間限定装備やアイテムにはすべて破魔の属性が付与されているんですよね。そのおかげなのでしょう」
 バングルを装備してクリスマス台無し男を倒していけば、浸食したクリスマスエリアは徐々に元のクエストエリアに戻っていくようだ。

「クリスマス野郎を倒した後は、クエストボスの座を奪い取り、理不尽なバグでクエストエリアを破壊していたバグプロトコルとの決戦ですね! こちらは『シェフ・ナカジマ』が相手となります」
 シェフが使うユーベルコードはすべて、【手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する】ものとなっている。
「季節の宴会に備え、彼の食糧庫は無限となっていますので、出されたものは食べても大丈夫ですよ。ただ、ボスであるシェフのエリアには大規模な『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』が仕掛けられています」
 『範囲内極大ダメージ』や『範囲内状態異常強制付与』、『一定時間操作不能』とシリアスなクエストならば致命的ともなろうものだ。
「シェフのいるエリアは【酔い】強制付与となっていますね。滞在すれば滞在するほど、泥酔となっていくのです」
 そしてシェフのユーベルコードを食らえば、状態異常は治療されるものの、強制付与の力が働き、とんでもない二日酔い状態になるであろうことが予想される。
「未成年の子は知らなくていい大人の階段になるかと思いますが…………そこは気を付けていきましょうね」
 ……いろいろね。
「ともあれ、シェフ・ナカジマをなんやかんやで撃破してくださいね。|終末機構群《エンドコンテンツギミック》はシェフにも効きますので、そこを上手く利用すればおもしろ……ああいえ、大ダメージを与えることができるかもしれませんね」
 皆さん、尊厳は大事になさってくださいね。と、グラースは言った。
「バグプロトコルを撃破し、クエストもクリアして一件落着となれば、あとは桜満開のジルエッタ・フィールドでの桜を楽しんできてくださいね!」
 花見や宴会、花びらを集めて、桜モチーフの装備作りなどいろいろとやれることはあるだろう。
「それでは、気楽に頑張ってきてください」
 そう言って猟兵たちを送り出すグラースだった。


ねこあじ
 ねこあじです。
 GGO依頼! やりたかったのです~。

 第1章集団戦『クリスマス台無し男』
 第2章ボス戦『シェフ・ナカジマ』
 第3章は日常で、お花見やら宴会やら、装備作りやらと遊ぶ予定です!

 のんびり運営なので、再送が発生するかもしれませんが、なるべく無いように頑張ります。
 受付開始日が発生することがあるかもしれません。

 第3章では、お声がけあればグラースが伺います。
 それでは、プレイングお待ちしています! よろしくお願いいたします。
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第1章 集団戦 『クリスマス台無し男』

POW   :    そんなにプレゼントが欲しいならくれてやるよ!
着弾点からレベルm半径内を爆破する【バグ化プレゼント爆弾】を放つ。着弾後、範囲内に【様々な状態異常を与えるバグ化した炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD   :    なんだ?オマエもプレゼントが欲しいのか?
対象への質問と共に、【背負った袋の中】から【バグ化プレゼントを持った悪人面のサンタ】を召喚する。満足な答えを得るまで、バグ化プレゼントを持った悪人面のサンタは対象を【バグ化プレゼントやダイナマイト】で攻撃する。
WIZ   :    おい、プレゼント用にオマエの大事なものを寄越せ!
対象にひとつ要求する。対象が要求を否定しなければ【|遺伝子番号《ジーンアカウント》を奪い】、否定したら【必中のバグ化プレゼント爆弾攻撃を受け】、理解不能なら【プレゼント用に全ての装備】を奪う。

イラスト:聖マサル

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ジルエッタ・フィールドで、期間限定春クエストを受ける猟兵たち。
 イベントは先程開始されたばかりで、一般のゲームプレイヤーたちの姿は少ない。
 一時獲得となるバングルをアイテム欄から取り出し、装備していると――シャンシャンシャン♪――と、スレイベルの爽やかなBGMがやってくる。
 桜の花びら舞っていたフィールドは雪が降り、クリスマスツリーが乱立していった。
 穏やかな春の景色が、キラキラ、むしろツリーのオーナメントがギラギラしているクリスマスの景色へと変わっていく。

『ようこそ! 苦🐿鱒の世界へ!!!』

 受けたはずの春クエストの名前が書き換えられており、明らかにバグプロトコルのしわざだと分かるバグり具合。
「クリスマスの破壊が足りない!」
「まだまだ冬だ!!!」
「ここはッ2023/12/24~の世界線……!」
 季節感ぶち壊しのクリスマス台無し男たちが次々と現れる。
「貴様たちにくれてやるプレゼントは! これだ!!」
 バグ化プレゼントやダイナマイト、バグ化プレゼントを持った|悪人面のサンタ《変なおじさん》が投げつけてくる男たちにイラリとくるのは仕様だろう。しょうがない。
 装備してる武器でしばきたいところではあるが、触れたら武器がバグに侵されるかもしれない――否、まてよ、バングルを装備している限り、バグに侵されることはない! ……と、猟兵たちはハッとした。
 よし。いてこましたれ。
ガーネット・グレイローズ
ここがジルエッタフィールドか…
本来なら、もう春のイベントが始まっているはずなんだけど。なんか雪がばんばん降ってるぞ!?しかもクエストのタイトルがバグってるし。

配布された桜のバングルを身につけて参加。それと、にわとり型ドローンのメカたまこEXも連れていこう。

バグプロトコルはサンタの格好をしてるからすぐに判るな。早くあいつらを倒して、このフィールドを正常に戻さないと。
なんだ、私に何か用か?…何?このメカたまこをよこせだと?ダメだ!これは私の大事なサポートメカだ。渡せない!(大事に抱き抱えながら)
投げつけられるプレゼント爆弾を【サマーソルトブレイク】で蹴り返し、自爆を誘う。人の持ち物を狙う悪い奴め!


島江・なが
わぁい、バングルもらったです!
ながにはちょっとおっきいかなあと思いましたが、頑張って良い感じにつけました!

メリークリスマスです!
サンタさん、プレゼントくださいです!
……む?『クリスマス台無し男』さん……?
……あのぉ、もしかしてサンタさんじゃないですか?
わ゛ーーーん!騙されましたです、夢ぶち壊しですゆるさねーです!!

クリスマス爆発とはながも聞いたことありますです!
だから爆発物を投げてくるのは何となくまだわかるです。
しかぁし!甘い、甘いですよお!!
バグ化爆弾も今はバングルのおかげでただの爆弾に過ぎません!
ほんとーの爆撃ってもんを見せてやるです!
なが達のかんわいい爆撃でぶっ飛ばしてやるです!



 ゴッドゲームオンラインの世界に降り立てば、景色はすっかり春の装いだ。
 暖かそうな陽射し、草原にはちらほらと色とりどりの花々が咲いている。
「ここがジルエッタ・フィールドか……少し弄っているようだが|Girouette《風見鶏》から来ているのかな?」
 メカたまこにぴったりのフィールドだね、とガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)が言うと足元のメカたまこEXが『コケッ』と鳴く。
 ガーネットが早速フィールドのクエストを受注しようとマップ画面を開けば、「あー!」と天真爛漫な声が彼女の耳に飛び込んできた。
 白い翼を広げて空から飛来してきたのは、島江・なが(超弾丸シマエナガ・f42700)だ。
「猟兵さんですかぁ? ながですー! ながもクエストを受けに来たんですよぉ!」
『コケケ』
 メカたまこEXが同じ鳥類(自身はメカだが)であるながの出現に反応する。
「私はガーネットだ。なが、これも何かの縁だ。一緒に受注してみるかい?」
「はい! よろしくお願いしますう」
 ジルエッタ・フィールドの周辺マップを出して、横に並ぶクエスト一覧から季節限定のものを選ぶ。
 虚空をタップするガーネットと嘴で虚空をつつくなが。

 【季節イベントを受注しました】
 『さくら集め』

 配布される期間限定アイテム、桜モチーフのバングルに「わぁい」と喜ぶなが。
「バングルもらったです! ながにはちょっとおっきいです?? 大丈夫です???」
「なが、付けてあげよう」
「ありがとうございますですよ!」
 頑張れば付けられそうではあったが、ガーネットに装着してもらうなが。
 ちょっちょっと跳びながらその場でくるりと回った。「お揃いですねぇ!」と満足そう。
「桜の花びらが舞っている。綺麗だね……。ふむ、ボスを倒してから得られるアイテムは色々と用意されてるんだな。後でゆっくり見……うわっ」
 桜花弁舞うエフェクトが起こったかと思えば次の瞬間には地吹雪に襲われる二人とメカ。
 刹那の吹雪にながは宙を舞い、ガーネットの美しい髪は乱れに乱れた。メカたまこEXは自重を利用し座り込んで地吹雪を凌いでいる。
 イベント名は『ようこそ! 苦🐿鱒の世界へ!!!』とバグったものとなっており、ガーネットは無言で被った雪を払った。
「……なるほど。上等だな」
 雪で一瞬阻害された視界――周囲はクリスマスツリーが乱立した雪原と化していた。
「ほわぁぁ、雪景色になっちゃいました」
 虚空で華麗に体勢を整えたながはそのまま空を飛ぶ。
 そして何かを見つけたのか「あっ!」と声を上げた。
「サンタさんがいます! メリークリスマスです! サンタさーーん、プレゼントくぅーださいっ!」
「待つんだ、なが! あいつはバグプロトコルだ!」
 ガーネットの呼びかけに、サンタ(?)に向かっていたながはぴえっとなって方向転換。ガーネットの近くに寄ってくる。
『一家の幸せなクリスマスの夜を、不幸せにするべく生まれた!』
『不幸せなクリマスプレゼントを配るサンタクロース!』
『不幸は永遠に尽きることなく! そのためのプレゼントがまだまだ足りん』
「早くあいつらを倒して、このフィールドを正常に戻さないと」
 たまこ、おいで。とメカたまこEXを抱えるガーネット。
「……あのぉ、もしかしてサンタさんじゃないですか?」
 ながの問いにシリアスに頷くガーネット。
「あれは『クリスマス台無し男』だ」
 ががーんとなるなが。そしてメカたまこ――登録処理をキャンセルする駆動音が鳴っている。
「わ゛ーーーん! 騙されましたです、夢ぶち壊しですゆるさねーです!! よく見ればスーツのシャチクみてーなサンタコスプレ野郎です!」
 怒りで身体を震わせて、空へと飛び立つなが。
 クリスマス台無し男は、おい! と乱暴に呼びかけ、ガーネットに迫らんとしている。
「なんだ、私に何か用か?」
『オマエの大事なものを寄越せ! オレ達がプレゼントとして配りに行ってやろう!』
『爆弾に改造するのにぴったりのメカ鶏だな』
 ククク。グフフ。と迫ってくるクリスマス台無し男の様子は何というか……カツアゲというか変質者というか。
「メカたまこを、寄越せ……? しかも今、改造すると言ったか?」
 メカたまこEXを大事そうにぎゅっと抱きしめてクリスマス台無し男を睨みつけるガーネット。
「ダメだ! これは私の大事なサポートメカだ。渡せない!」
 シリアスな、決死に満ちた表情であった。メカたまこを隠すようにして抱く。
『……コケケ……』
『ならば奪うまでよ!』
 クリスマス台無し男がバグ化プレゼント爆弾を投げつけ――しかし、ガーネットは瞬時に身を屈めた。
 跳躍兼ねて伸びあがった脚は弧を描き身体は宙返りとなる見事なサマーソルト。
『|コッ!《⬇️ため⬆️》|ケッ《+弱K》』
 ――ちなみにメカたまこEXの鳴き声はコマンド(?)解説である。
 蹴り返した爆弾はクリスマス台無し男にHitし爆発する。
「クリスマス爆発とはながも聞いたことありますです! だから爆発物を投げてくるのは何となくまだわかるです」
 舞い上がる火の粉と黒煙のさらに上をゆく、なが。七歳。まだ教育は始まったばかりの年頃だ。誰か、そんな物騒なクリスマスが無い世界を教えてあげて欲しい。
 高速で降下するも、ながめがけて投げられるバグ化爆弾――無数のプレゼントの爆弾が虚空に散った。
 例え当たらなくても、バグ化爆弾が雪原で爆発すればさらなるバグを呼び込むことだろう。
「しかぁし! 甘い、甘いですよお!! そんなことはさせねーです! バグ化爆弾も今はバングルのおかげでただの爆弾に過ぎません! ほんとーの爆撃ってもんを見せてやるです!」
 宣言したなががより翼を広げればその後ろに現れる、メカシマエナガ小隊。
 広がる魚鱗の陣はまるで戦闘機のような影を雪原に映す。
「なが達のかんわいい爆撃でぶっ飛ばしてやるです!」
 ながとメカシマエナガ小隊が爆発物を投下すれば、虚空は火の海と化した。
 さらには火海を抜けて落ちてゆく爆発物。
「視界不良! メカシマエナガ小隊離脱ですよお! ――ガーネットさーん! 特別おっきいのお任せしますぅ!」
 旋回離脱しながら大きな爆弾をパスするようにガーネットへ放つなが。
「任されよう」
 遠心が掛かり勢いよく飛来する爆弾を脚で受け、そのまま蹴り放つガーネット。
『|コッ!《⬇️ため⬆️》|ケッ《+強K》』
 鋭角を描いた爆弾は火の海を逃げ回るクリスマス台無し男たちにHitし、大炎上したのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

青梅・仁
クリスマスみたいな定番のイベントでなくても、きちんと春のイベントもあるのか。
いいねえ、風流だ。
桜モチーフのバングルも装飾が綺麗だな……
――って思ってたのに何でそうやって季節感台無しなのが出てくるんだよ。
アレか、季節感からバグらせようって魂胆か?
……ある意味こう、プレイヤーの心を萎えさせるには良いバグかもしれんけどよ……。

見りゃわかるだろ、プレゼント欲しがるような歳じゃねえよ。
いらん、って言ってもどうせ攻撃がてら押し付けてくるんだろうから、プレゼントも追加サンタもお前さんも叩き斬らせて貰おうか。
どうしてもプレゼントを渡したいって?
そうかそうか、じゃあお前さんらが消えることがプレゼントだ、消えな。


榊・ポポ
春だと思ったらクッソ寒い日が続くのはお前のせいかッ☆(ブランケットおくるみ状態で天むすフォームになっているポポちゃん)
ん?バングル?つけてるよ?ホラ!首に!
首が大変な事になってるって?
鳥は見た目に反して首がほっそいの!

季節感バグ野郎にはバグをぶつけんだよ!
おっと!花見をしようとエリア確保したと思しきデコアイテムのレジャーシートが!
ちょっと借りますよ~
★ダッシュしながらデコアイテムを設置したら、確かスゥーって挙動するバグが...
バグにバグぶつけたら、マイナスとマイナスが合さってプラスになる様な奇跡が...起きるワケないよネ!しってたァ!!
レジャーシート超加速バグの★捨て身の一撃に巻き込めー!


古戸・琴子
※アドリブ連携OK
わらわは春クエストを受けた筈じゃが……なにやら寒いところに出たのう。
これは……雪じゃな。いつの間にかクエスト名も書き換わっておるし。
他の一般プレイヤーが吸い寄せられる前に、なんとかせねばならんの。

ひとまずバングルを装備してみるのじゃ。
ふむ、悪く無いのう。サイズもぴったりじゃし、コスメとの相性も良いのじゃ。

バグプロトコルにしても旬は過ぎたと思うんじゃよな。
とはいえ話の通じる相手でもなさそうじゃ。
爆発の衝撃は【結界術】なり舞踊傘なりで受けて、炎はUCで吸収……符もバングルの力が無ければバグに耐え切れなかったじゃろうて。
まあ良い。代わりに生み出した桜吹雪でご退場願おうかの。



 季節イベントに連動するクエスト丸ごと支配するバグプロトコル。
 何もクエストを受けていない状態でジルエッタ・フィールドに訪れれば、そこは春の陽射しに包まれる平穏なフィールドだった。
 桜ある風景が見え、空からはどこからともなく桜花弁が降ってくる春限定の景色。
「クリスマスみたいな定番のイベントでなくても、きちんと春のイベントもあるんだな。――いいねえ、風流だ」
 ゴッドゲームオンラインの世界にて会得した、ゲーム操作。マップ画面を開いた青梅・仁(鎮魂の龍・f31913)はのんびりとした調子で言った。
 そうじゃの、と応じ頷くは古戸・琴子(桜雲・f10805)。
 たまたま行き会った猟兵二人は春景色なフィールドに和む。
「ゲームの世界とはいえ、季節感は大事じゃ。皆が楽しみにしている春のイベントを邪魔する輩にはご退場願わねばの」
 琴子の視線の先には遺跡物が残る草原。そこは春らしいフィールドアイテムで飾られていた。休憩に最適なレジャーシートや桜餅型のクッション(?)、展望に最適な野点、行商人らしき者が現れそうな露店――こちらは春クエストを受けたら出現しそうだ。
「どんな風に開催されてるのか楽しみだな」
「早速受けてみるのじゃ」
 和に親しみを持つ二人なので、バグプロトコルのさっくり撃破を目指すことにする。
 周辺マップ横に並ぶクエスト一覧からジルエッタ・フィールドのものを選択すれば、

 【季節イベントを受注しました】
 『さくら集め』

 そして桜モチーフのバングルが自身のアイテム一覧に入ったことを告知される。
「――ほう、これが。ふむ、悪く無いのう。サイズもぴったりじゃし、コスメとの相性も良いのじゃ」
 最近お気に入りである帝都の桜コスメとバングルの組み合わせをついつい考えてしまう琴子。
「装飾が綺麗だな」
 同じく装備した仁もまんざらではない様子で頷いた。クエストが開始されると、あらかじめ交換アイテムの一覧も見れる仕様だ。
「花弁を集めれば桜装飾のある武器防具……刀や羽織、扇、和風のものもあるんだな」
 仁の言葉に「なんと!」と目を輝かせる琴子。
 話している最中に周囲を舞っていた花びらは白く冷たくなり、青々とした草原は見る間に雪景色となった。
 バグプロトコルに支配されたクエストの始まりだ。
 その時。
「ア゛ーーーッッ!!! クッソ寒いィィィィ!!!!! こなゆきィィィ!!!」
 今にも凍えそうで、叫びにより暖を取ってそうな必死の声が二人の耳を劈いた。
「なっ、なんじゃ!?」
「バグプロトコルか……? 声はあっちの方から聞こえてきたな」
 仁が見遣ればそこには桜餅が転がっていた。そう、桜餅型のクッション……。
「いや、桜色のが外に……ある……?」
 ん??? と思った仁はジイッとその桜餅型のクッションを見た。
「桜餅って、桜の葉で桜色の餅菓子を包んだものだよな? 琴子ちゃん、俺の認識合ってる?」
「合っておるよ」
 よくよく見ればぷるぷると動いている。
 ――それは桜餅型クッション(?)ですか?
 ――いいえ、カカポです。
「擬態成功!! ヤッタネ、ポポちゃん! ……あっムリ寒い」
 クッションだと思っていたものは、ブランケット(ピンク)おくるみ状態で天むすフォームになっている榊・ポポ(|ごく普通の一般事務員《トンチキカカポ》・f29942)だった。勢いよく声を上げて頭を突き出したかと思えば、首を引っ込める。首部分には羽毛に埋もれたバングルが一瞬見えた。
「猟兵だった。ポポちゃん大丈夫?」
「おぬし、ずっとここで凍え、て……?」
 尋ねる仁と琴子を突き刺すは冬の寒さ。
 さすがバグったクエスト。一気に極寒地帯。ポポが天むすフォームになるだけある。
「いつの間にかクエスト名も書き換わっておるし。他の一般プレイヤーが吸い寄せられる前に、なんとかせねばならんの」
 琴子が示した先には『ようこそ! 苦🐿鱒の世界へ!!!』という狂ったクエスト名。
 彼女の言葉が機となったのかは分からないが、シャンシャンシャン♪ とスレイベルが響き始める。
『幸せな人へ届けよう~♪ クリスマスプレゼント』
『不幸に突き落とすクリスマスプレゼント~♪』
 低音のビブラートを渡らせて現れるクリスマス台無し男たち。そして猟兵たちを指差した。
『あっ、見ろ! 春クエにきゃっきゃうふふしにきたクエスト参加者だ!』
『残念だったな!!! ここはクリスマスシーズン真っ盛りの真冬だ!』
「春だと思ったらクッソ寒い日が続くのはお前らのせいかッ☆」
 天むすフォームのままポポが頭を上下させ、クリスマス台無し男にガンを飛ばす。
「桜の開花もそろそろとはいえ、アース系世界もまだ寒いもんなあ。この世界のアイツらはアレか、季節感からバグらせようって魂胆かね?」
 仁が見据えるのはキラキラギラギラと輝くクリスマスツリーと雪景色、クリスマス台無し男。
「バグプロトコルにしても旬は過ぎたと思うんじゃよな」
「……ある意味こう、プレイヤーの心を萎えさせるには良いバグかもしれんけどよ……」
 クリスマスを台無しにするために季節をバグったクリスマスにする、ある意味パラドックスな要素はバグらしいもの。
『ええい! 何をごちゃごちゃと夢のないことを!! クリスマスを賛美しろよ!』
『とりあえずは夢を見せ、そして壊してやる!』
『そんなにプレゼントが欲しいならくれてやるよ!』
「いらぬ」
「いらんて」
 バグ化プレゼント爆弾を取り出し投擲の構えとなる男たちと、声が被る琴子と仁。
 可愛らしくラッピング包装された物体を一斉に投げつけてくるエセサンタたち――仁が佩いた太刀を抜くのと尾がしなやかに宙を打ったのは同時だった。
 バグ化プレゼント爆弾を斬る銀ノ波。
「見りゃわかるだろ、プレゼントを欲しがるような歳じゃねえよ」
 纏う妖刀の怨念がクリスマスバグの空気を喰らうように衝撃波として渡ってゆく。
 ざん、と虚空は重くざらついた波音を立てた。
「どうしてもプレゼントを渡したいってなら……そうだな、お前さんらが消えることがプレゼントだ」
「話の通じる相手でもなさそうじゃの」
 プレゼント爆弾を斬り払い、男たちに肉薄する仁。
 一方、フィールド上で着弾に至り爆発したプレゼント爆弾の衝撃波を舞踊傘で受ける琴子。くるり、ひとたび傘を回せば、描かれた連なり咲く桜から花弁が放たれる。
「神火清明、神水清明。祓い給え、清め給え」
 傘に貼られた鎮火桜火符は広がらんとするバグ化した炎を吸収し、その力を反転させた。
「符もバングルの力が無ければ、バグに耐え切れなかったじゃろうて」
 炎の力を昇華させた桜吹雪は――あたたかなもの。
「春キタ!?」
 しゅぽんっとブランケットから飛び出して、ポポはやる気満々アピールをしてみせる。そこにザワッとなるクリスマス台無し男たち。
『桜餅型クッションが動いた……!』
『プレイヤーだったのか!?』
「えっ喧嘩売られてる!? やんのか!?」
 憤ったポポが翼をばたつかせ跳躍した先にはフィールドのデコアイテム・レジャーシート。
「お借りします~。季節感バグ野郎にはバグをぶつけてやんよ!」
 レジャーシートを持ち発動するは『ポポちゃんデバッガー』
 バグに満ちた世界、琴子の反転と昇華の術、怨嗟の海を刃に映し骸の海へと還す仁の斬撃――目まぐるしくバグと正さんとする力が流転するなか★ダッシュをキメるポポ。
「★ダッシュしながらデコアイテムを設置したら、確かスゥーって挙動するバグがある、ハズ!!!!!」
 デバッガーの目はごまかせない!
 華麗なる★ダッシュをしながら、レジャーシートをぶわさぁと広げ、優雅にスマートに設置体勢へと移行するポポ。
 ポポの華麗なる跳躍はきっと攻撃態勢に見えたことだろう。
「援護は任せると良い!」
 琴子の風ともなう桜吹雪がポポの背……というか全身を押した。春風が羽毛をあたためてふわふわにした。それはともかく。
「あ」
 と、声を上げたのは仁だ。
 吹雪く桜花弁…………それはレジャーシートと地面に発生する摩擦抵抗を減らし、推進力を得ていたポポはそのまま滑りに滑った。
 加速の一撃は鎌鼬の如き鋭さ。
 敵陣を撃ち倒す勢いは――、
「見事なストライクぶりだな」
 仁がクリスマス台無し男たちの断末魔を聞きながら言う程のもの。
「……ッッ!! レジャーシート超加速バグの★捨て身の一撃……ッ! これがッ、ポポちゃん豪速スライディング桜吹雪Ver!!」
「――なのじゃ!」
「一見落着、一見落着」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アメリ・ハーベスティア
【なめろう茸】
クリスマス台無しおじさ……おじいちゃん?なのですか?折角春のイベントをバグで台無しなんて

悪い子な事は言語道断っ!(バングル装備しつつ)

●WlZ
ビスちゃんと『集団戦術&団体行動』で連携しつつ【アンチファル】と言う『武器に乗って空を飛ぶ&サーフィン&操縦』で『空中戦』駆け

大切なモノは沢山ありますが
何一つ貴方にはあげませんっ!

爆風とバグ炎を『第六感』で『見切り』回避と必中バグ爆弾は『オーラ防御&結界術』で『鉄壁&受け流し』

バグの炎ごと悪い人に『高速詠唱』UCを『属性攻撃(桜)&全力魔法』込め桜混じりの抹茶キノコ爆弾『弾幕&範囲攻撃』爆破し塗り替え

ビスちゃんにお膳立て

※アドリブ絡み大歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう茸】
背負っている袋に誰か居ますが……アメリさん、今はそこを気にしてる場合では
兎も角、折角の春のイベント

楽しみにしてる人達の為にも、看過は出来ませんね(バングル装備し)

●POW
アメリさんと『集団戦術&団体行動』連携し『空中戦』駆け『残像』で撹乱
『第六感』で『見切り&空中機動』で攻撃回避

『オーラ防御&結界術』で爆風やバグ炎を『受け流し』

バグ炎を状態異常無効の結界で塗り潰しを兼ねた攻撃、桜も混ぜるのは抹茶にも良い趣ですね

アメリさんの抹茶結界の上で攻撃力アップの恩恵を受け『早業』UC発動

春から旬の飛び魚のなめろうの大地の力の光学『誘導弾&弾幕』で『範囲攻撃&一斉発射』です

※アドリブ絡み大歓迎


駒鳥・了
お仲間認識の釣り易さを狙ってオレちゃんことアキが、
ミニスカサンタ姿で登場!
カラータイツにショーパン履いてるからパンチラはないよーん残念でした!
バングルはちゃんと貰ってる!

大事なモノったら相棒(バタフライナイフ)かなっ
うんうん頑張って受け取ってねーコレ無尽蔵に沸くケドっていう乱れ撃ち!
荷物も含めて的多いから当たりやすいなー
ってナニコレあっつ!
ちゃっちゃと逃げるが勝ちだよねって柳葉で距離取ろーっと

っとそうだ!拗らせきっちゃってるおっちゃん……おじいちゃん?たちの原因しーりたーいなっ♪
ってコトで距離を取りつつUC発動!
あの袋の中も届くかなー?


エリシャ・パルティエル
GGOの世界に一度来てみたかったのよね
実はゲーム好きなの
アイテム集めとかハマるタイプ
桜のアイテムとか絶対可愛いものね
あ、このバングルも可愛い!
さあ、早速…あら? 春も近いのにサンタさん?
最近ゲームを始めたばかりの初心者は
クリスマスイベントは楽しめなかったから
イベント再び…じゃないみたいね
だってクリスマスを楽しませようって気がないもの!

これがバグプロトコル
ゲームのバグは排除しなきゃね
電脳ゴーグルで呼び出した猫ちゃんに時間を稼いでもらいましょう
あ、猫ちゃんはあげないからね!
UCで不届きなサンタに制裁を
プレゼントは皆を笑顔にするもの
あなたのはプレゼントとは呼べないわ
冬にまた出直してきなさい!



「すごいわね! ここ、本当にゲームの世界なの?」
 ゴッドゲームオンライン世界のジルエッタ・フィールドに降り立てば、そこは春の風景が広がっていた。
 風吹けば波打つ草原のあちらこちらには春らしい色の花が咲き、仕様なのか空からは桜の花びらがちらほらと降ってくる。
 エリシャ・パルティエル(暁の星・f03249)は、「ゴッドゲームオンラインの世界に一度来てみたかったのよね♪」と楽しげだ。
「花びらも摘まめるけれど、少し経つと消えちゃうのね」
 降る花びらを見事キャッチしたエリシャであったが、ゲーム世界ならではの仕様を目の当たりにして少し残念そう。
「パルちゃん、パルちゃん。花びらは、たぶん春クエストを受けると消えずに残るんじゃないかな?」
 駒鳥・了(I, said the Rook・f17343)ことアキが、皆にも見えるように自身の前にステータスやアイテム一覧、マップ画面などを出しながら、ホラこれ! と指差した。
「あ。なるほど~、春クエストはこうやって受けるのですね。ええと、ここをこうやって……」
 アキを見てビスマス・テルマール(通りすがりのなめろう猟兵・f02021)も手際よくマップ画面を開いた。その横にはこのフィールドで受けられるクエスト一覧が載っている。
 現代っ子アキと、南国コロニー船出身のビスマスは適応も操作も早い。
「えっ、ええ?? どうやるの?」
「……皆さん簡単に操作しているのです」
 エリシャが戸惑えば、右に同じくという風にアメリ・ハーベスティア(キノコ好きの「よいこ」な地竜の末裔・f38550)は真剣な表情で言った。
「あっ、こうかしら? ――あたしにもできたわ! アメリ、見て見て」
「エリシャちゃんも呑み込みが早いのです! アメリもがんばります……!」
 と、楽しくわちゃわちゃ。ゲーム世界の初心者プレイヤーらしくアイテム一覧やステータスを確認したのち、いざ! 春クエストを受注だ。

 【季節イベントを受注しました】
 『さくら集め』

 クエストの開始。
 さっきは消えてしまった花びらを改めて新たにキャッチすれば数字として溜まっていくようだ。
「花びら、早速3枚ゲットね。あたし、アイテム集めとかハマるタイプなのよね。敵を倒していくとまとめて貰えたりするのかしら?」
 実はゲームも好きなエリシャだったり。
「おっ、バングルもちゃんとアイテム一覧に追加されてるね~♪ みんな、装備忘れずにねー!」
 オレちゃんも! とアキがバングルを装備する。
 桜モチーフのバングルは可愛らしく、「キュンだわね」「はい、キュンですね!」と言うエリシャとアメリ。
「そういえば。今日のアキさんはサンタさんの格好なのですね。タイツが凄く可愛いです」
「デショー! お気に入り! テルちゃん、分かってるぅ~」
 ビスマスに満面の笑顔を向けて、アキはバングルを翳しつつポーズを取った。ミニスカなサンタワンピース服に、星を散らしたビタミンカラーのタイツはアキに良く似合っている。
 ――と、その時。
「? 花びらが雪になりました……」
 手のひらに落ちた花弁を眺めていたアメリの不思議そうな声。
 訪れた小さな違和感は直ぐに大きくなって猟兵たちを襲う。
 空から降ってくる花弁は雪に。春の風景は雪積もる冬の景色――雪だるまやクリスマスツリーがあちこちに――バグに浸食された景色。
『『『ようこそ! 苦🐿鱒の世界へ!!!』』』
 男たちの声が響き渡り、四人は一斉にその方向を見た。
 スーツみたいなサンタ服を着こんだ集団がそこにいる。
『我々はクリスマスを狩る者! クリスマスを台無しにする男!!』
『幸せな日に届けるは不幸のプレゼント!』
 怪しい集団を見たエリシャは「あら?」と呟く。
「春も近いのにサンタさん? 最近ゲームを始めたばかりの初心者だと、クリスマスイベントを楽しめなかったからイベント再びとか……じゃないみたいね」
「再放送とかリバイバル上映みたいなヤツ~。ソシャゲも復刻版あるじゃんね」
 ま、復刻されんのは一年後のイベント時期だけどね! とアキはからりと笑った。
『誰かのクリスマスを台無しにするために、今日も今日とてクリスマス破壊にいそしむべし!』
「あのおっちゃん? おじいちゃん? たちがクリスマス破壊するために、このバグクエストは|クリスマス《バグ環境》を整えてんの? なんかアレだね、ニワトリが先か、卵が先かみたいな!」
 アキがそう言えば『何をごちゃごちゃと!』と明らかにプレゼントらしきものを手にする男たち。
『サンタ服なんぞ着て浮かれおって! まずはクリスマスを楽しんでそうな奴に不幸のプレゼント投擲だ!』
「えっナニ。すっごい人のコト言えないコト言われてんだけど! ――って、ナニコレあっつ!」
 投げられた爆弾をサッと避けるアキ。地面に着弾し爆発したプレゼントはバグ化した炎となり、世界を喰らっていく。
「ちゃっちゃと逃げるが勝ちじゃん」
 アイテム欄から取り出し出現するは、小回りとスピードに特化したタンデム用飛空艇・柳葉。それに跨ってアキが飛び立つ。スカートは翻るが、タイツがきちんと厚くカバーしてるので無問題だ。
「クリスマス台無しおじさ……おじいちゃん? なのですか? 折角春のイベントをバグで台無しなんて」
「アメリも気になっているのね」
 おじさんなのか、おじいさんなのか。
 はっきりして欲しいわね、という風にエリシャはシリアスに頷いた。
「背負っている袋に誰か居ますが……アメリさんもエリシャさんも、今はそこを気にしてる場合では……」
 ビスマスの控えめなツッコミ。
「そういえばアキさんも気にされてましたね。兎も角、折角の春のイベント――楽しみにしてる人達の為にも、看過は出来ませんね」
 全身鎧装、ディメイション・なめろうブレイカー改の裾を駆動になびかせてビスマスの駆けは空中のものとなる。
「ビスちゃんの言う通りですね。悪い子な事は言語道断っ!」
 アメリも、先祖代々地竜のドラゴニアンの一族に伝わる闇の竜の牙で出来た大剣――アンチファルを振りかぶって大きな投擲。跳躍し、初手の勢いへ物理的に乗るアメリ。
「ゲームのバグは排除しなきゃね。援護は任せて!」
 エリシャが電脳ゴーグルを起動すれば、次々と出現する猫たち。黒猫、白猫、三毛猫、マンチカンなどなど。色んな猫たちが雪原を駆け、そして跳躍すればそのまま空を翔けていく。
 三人の仲間のお供となる猫たちはバグの炎をじゃれつき払い、三人が肉薄する男へと飛び掛かった。
 一方、クリスマス台無し男たちのところに駆ける猫を男たちは捕まえようとしている。
『大事な大事なネコチャンを奪ってやる!』
『新しい飼い主の元へ送ってやろう!』
「あたしの猫ちゃんをあげるわけないでしょ!」
 背負った大きな袋に猫を投げ入れる男たちであったが「フギャー!」と袋のなかで猫は大暴れ。
 これには中の……破れた部分から垣間見える悪人面のサンタもたまったものではない。
 袋はびりびりに破かれ、悪人面のサンタが零れ落ちてゆく。
「猫ちゃんやるぅー! オレちゃんも援護援護! あっオレちゃんの大事なモノはこの相棒だよっ。よっろしく~」
 受け取ってね♪ とばかりにバタフライナイフを撒いていくアキ。もちろん投擲なので勢いは良い。雪のかわりに、軽やかに踊る鋼の蝶が無限の如く降る。
「っとそうだ! 拗らせきっちゃってるおっちゃん? おじいちゃん? たちの原因しーりたーいなっ♪」
 相も変わらず年齢不詳な男たちは、すっかりアキの中で揶揄う対象となっている。敢えての呼びかけ。
 アキが渡らせる雷。
 黒ノ衝撃が当たったクリスマス台無し男は途端に苦しげにのたうち回っている。
『ウォォッ! 魔法使いになりはや20年……! 彼女いない歴も更新中の我が身を思い出せばもう終いだ…………』
 一人の男は絶望に震え闇堕ちし骸の海へと還っていった。
『カップルが憎い憎い!!!!』
『イブに何故残業しなきゃならんのだ! 職場の窓から眺める夜景――フハハ! 人がゴミのよ……いやゴミは俺だ……ッ。光が目に突き刺さる……ッ』
『ブラッククリスマス万歳!』
 そして袋の中の悪人面のサンタからも厨二的黒歴史が語られる。
 社畜の人生、カップルの間に割って入る迷惑行為、ゲームのクリスマスデートをセーブし延々と楽しんだ。
「迷惑行為はギルティっしょ。でもゲームでデートはイイと思うよー楽しみじゃん」
 ねえ? というアキの言葉に救われたのか、サンタの一人は涙を流し浄化の炎に包み込まれて消えていった。
 バグ化プレゼントからバグ化炎が広がっていくジルエッタ・フィールド。
 爆風やバグ化炎のなかをビスマスが翔ければ、彼女から生み出される風がバグプロトコルの力を払っていった。
「これがバングルの力でしょうか……!」
 ビスマスの軌道に散るはバグと桜花弁。
 アメリと風を切るアンチファルもまた、バグに侵食された世界を物理的に斬り、正常のものへと導いていく。
『あのプレイヤーたちのアイテムは不味いな!』
『俺たちが引き取ってやろう!』
 大切なものやらアイテムやら諸々寄越せと山賊顔負けの業突く張りなことを告げる男たち。
「大切なモノはたくさんありますが、何一つ、貴方たちにはあげませんっ!」
 アメリが高速詠唱で放つはユーベルコード。
(「シルバーレイン世界の京都の宇治抹茶の大地の力とスーパーよいこの力を合わせた結晶――」)
「今ここで役立てる時なのですっ!」
 宇治抹茶キノコの山の大地の力で出来た爆弾が、クリスマス台無し男やバグに汚染されたフィールドに向けて放たれた。
 大地の力へさらに乗るは、春。
 バングルの力が添えるは桜――桜混じりの抹茶キノコ爆弾が男たちを爆破し、拡がるバグ化炎を春の景色が塗りつぶしていく。
「バグの炎を状態異常無効の結界で塗り潰しを兼ねた攻撃ですか――桜も混ぜるのは抹茶にも良い趣ですね」
 ビスマスの言葉に、アメリは嬉しそうに微笑んだ。
 アメリが構築する浄化結界。
 春に満ちたそこへビスマスが飛び込めば、食の旬がさらに加わる。
「春からは、旬の飛び魚のなめろうがオススメですよ」
 冬には冬の良さが。
 春には春の良さがある。
 プレイヤーたちもそれを楽しみながら、このゲーム世界で『生き』ている。それは息吹だ。
「ディメンション・なめろうブレイカー改……ターゲットマルチロックッ!」
 浄化結界に包み込まれた場はまさに春の海。
 ビスマスもまた、この世界に息吹を吹き込むのだ。旬を食材、そして美味なる料理へと昇華させるかのように。
「全砲門なめろう光学誘導弾、一斉発射ですっ!」
 春から旬の飛び魚のなめろうの大地の力の光学誘導弾が一斉に発射され、周囲に蔓延るクリスマス台無し男を、そしてバグに浸食された景色を攻撃していく。
 猟兵たちと、バグプロトコルと。
 常に、分け隔てなく戦場に注ぐは春のような光だった――エリシャが祈り捧げる――聖ヨハネの審判。
「不届きなサンタに制裁を……プレゼントは皆を笑顔にするもの。あなたのはプレゼントとは呼べないわ。冬にまた出直してきなさい!」
 自分ではない誰かを不幸にしたい。
 それはクリスマスには相応しくない行為。
「次のクリスマスに向けてという動機だっていい。自身が優しく在ろうとすれば、きっと幸せだってついてくるのよ」
 エリシャがそう告げるなか、クリスマス台無し男たちはさらなる仲間の攻撃によって骸の海の時中へと還っていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

木元・杏
まつりん(祭莉・f16554)と

春くえ…(バングルはめつつ
ね、まつりん
クエ鍋って暖かくて美味しいと聞く
食してみたいね、そう思うホワイトクリスマス
はふ、と吐く息は白くて
ん、雪に花びらも混じってる

いた、サンタさん
まだまだクリスマス、Yes,Xmas
ぎぶみープレゼント
サンタさんとはプレゼントを寄越す生物(なまもの)
干上がるまでプレゼントを貰い尽くそう
【誘い水】発動
誘惑効果でわたしから目を逸らさせない
そして手には桜色のフライパン
ダイナマイトは打ち返し、プレゼントはゲットしていこう

ん、ケーキは王道、げっと
Xmasターキー、多少バグってても無問題
クッキー、あったか手袋、ウサ耳…

プレゼント沢山美味しい、満足


木元・祭莉
アンちゃん(f16565)とー。

春のお花見クエスト受注ー♪
え、このバングルが変態避け?
ありがと!
サンタさん、いてこましてくるね!

わー、春のクリスマス。
面白いイベントだね♪
そういえば、花びらと雪片って似てるかも。
すぐダメになっちゃうトコとか、ね!
(ワーイして遊ぶ)

あ、おぃちゃん やほー♪
右拳にはいつもの琥珀、左拳にはゲストの桜っと。
さあ、お花見クリパのはじまりだーい!
(雪んこ乱舞開始)

え、プレゼントが欲しい?
しかたないなあ、じゃあおいらの一番✕✕(伏せ字)なモノ返すね!
うん、木元村最凶をぷれぜんとふぉーゆー♪

よっしゃー、いけープレゼントたまこー!(鶏型爆弾)
アンちゃん、満腹した?
じゃ、次行こ!



 ゴッドゲームオンラインのジルエッタ・フィールド。
 町や草原、山と自然豊かな牧歌的な風景の季節は春爛漫。
 風吹けば波を作る草原の煌めき、春らしい明るい色の花が咲き、青空の下に映えるは桜の木々。
「まつりん、見て。花びらが舞ってる」
 雪のように空から舞い落ちてくるピンク色の花弁を、両掌でそうっとキャッチした木元・杏(ほんのり漏れ出る食欲系殺気・f16565)の笑顔はほわりとしたもの。
「すごいねー! 上に桜の木がないのに降ってくるー♪」
 木元・祭莉(これはきっとぷち反抗期・f16554)はひらり飛ぶ桜を追ってくるくると回っていた。
 ゲームの世界とはいえ、猟兵たちには本物に映る世界。
「まっぷ画面だす」
「クエスト一覧! 春のお花見クエストじゅちゅー♪」
 自身の前に拡がるステータス画面やマップ画面。最初は戸惑うこともあるが、メカなニワトリも扱う木元兄妹の吞み込みは早い。

 【季節イベントを受注しました】
 『さくら集め』

「ん。無事に受注♪ いまから春クエ」
 ふんすと拳を作って意気込みを見せる杏。しかし彼女は自身の言葉にふと気付く。
「春クエ……春くえ……ね、まつりん、クエ鍋って暖かくて美味しいと聞く」
 旨味成分が多い白身魚、クエ。脂の乗りも豊富で冬の鍋や、相撲界ではちゃんこ鍋の具材として定番だ。
「食してみたいね。シェフのクエ鍋」
 じゅるり。
 とまではいかないが、そんな表情に一瞬なる杏。
「じゃあシェフに会いに行かなきゃ~。その前にサンタさんにも会わなきゃだね」
 ぱぱぱぱっと面白げに手当たり次第に装備欄やアイテム欄を開いていた祭莉が応え、そして「あ」と声を上げた。
「アンちゃん、装備してねって言われたの、これじゃない? 変態避けのバングル!」
 ぽちっとなー。
 虚空をタップすれば祭莉の腕に顕現する桜モチーフのバングル。
「はっ、そうだった。装備、完了」
「しゃきーん!」
 腕を掲げる杏と、指先にまで神経を渡らせ腕を伸ばす祭莉の戦隊ポーズ。
「んむ? まつりん。寒くなってきた……」
 はふ、と杏の吐く息は白い。
「ん、雪に花びらも混じってる……」
 花弁と雪が降り始めたジルエッタ・フィールド。可愛らしい色は少しずつ白の割合が増えていく。
「そういえば、花びらと雪片って似てるかも。すぐダメになっちゃうトコとか、ね!」
 キャッチした花弁は祭莉のアイテム欄に数字として足されていった。
 雪が積もる場所、桜の木はクリスマスツリーへと変換されていく、世界を浸食するバグ。
「期間限定の春のクリスマス! 面白そうなイベントだねっ♪」
 にぱっと笑顔になった祭莉が「ワーイ」とわんこよろしく楽しく駆け回る。
 と、そこへ。
『おっ、早速クリスマスを楽しむプレイヤーを発見!』
『子供だ! クリスマスなんてものは無いと教えてやれ!』
 サンタクロースの格好をしたクリスマス台無し男たちがわらわらとやってきた。
『いてこましたれ!』
「いてこましたれ~♪ おぃちゃん、やほー♪ クリスマスダンパしよー!」
 右拳には琥珀製のナックルリング、そして左拳には今回のゲスト、桜のバングルをナックルみたいに握った祭莉は跳ねながら怪しいサンタ集団へと飛び込む。
「さあ、お花見クリパのはじまりだーい!」
 勢いに任せて拳を突き出したり、サンタのあごひげ目掛けてアッパーカット!
 ぴょんと跳ねれば一回転、腕を伸ばしてぐるんと回る。
「サンタさん、まだまだクリスマス、Yes,Xmas、ぎぶみープレゼント、サンタさんisプレゼントを寄越す|生物《なまもの》」
 リズム的に告げる杏は、うっとりキラキラな瞳になって、ほうっと息を零した。
 恋する乙女のように誘い水は万全。もっとも――、
(「干上がるまでプレゼントを貰い尽くす」)
 ほんのり漏れ出る食欲系殺気たる少女の思惑は食い気に振り切っている。
『なんだ? オマエもプレゼントが欲しいのか?』
 袋から飛び出す悪人面のサンタがとっとこプレゼントを持ってくる。
「ん、ケーキは王道、げっと」
 箱の中身はクリスマスケーキ(ホール)。こういうのにはスプーンもついているのでありがたい。
 柔らか滑らかな生クリームの甘さとイチゴの酸味のコラボレーション。もふりとしたスポンジが口の中でそれらすべてを包み込む。
 次のプレゼントは、
「Xmasターキー、多少バグってても無問題」
 香ばしい焼き上がり。パリパリ皮なのだから、そこに混じるバグなど可愛いものだ。むしろバングルが無効化してくれる。
『バグが大丈夫そうならこれも食べなァ!』
「!」
 投げられたダイナマイトは桜色☆フライパンで打ち返す。左手にはターキー、右手には桜色☆フライパン。アスリートアースの宮本武蔵らしい姿勢となった。
 これが究極の|大格闘流《クリパ》。
 投げられたプレゼントはフライパンで一度空高く舞わせての見極め。『クッキー』や『あったか手袋』、『うさ耳』はゲットである。
『ちょ、おい! プレゼントが足りなくなってきたぞ!』
『お前……兄か!? 妹の始末をお前がつけろよ! 大事なものを寄越せ!」
「えー、プレゼント、欲しいの~?」
 祭莉は渋る。
 しかたないなあ、と渋り渋り。コケコッコーメダルを何枚かチラ見せて期待感を煽っていく。
「じゃあおいらの一番……(✕✕)……なモノ返すね!」
 途中ぽそっと小声以下のもはや吐息並みの呟きで、元気にコケコッコーメダルを投擲した。
 ……かのように見えた。
「木元村最凶をぷれぜんとふぉーゆー♪」
 プレゼントよろしく飛んだのはニワトリ型爆弾。
「よっしゃー、いけープレゼントたまこー!」
 思わず受け取り態勢となっていたクリスマス台無し男たちを爆炎で包み込み、爆風で時の彼方まで吹き飛ばす。

「アンちゃん、おなかいっぱい? 満足した?」
「ほくほく」
 祭莉の問いへ満足そうに頷く杏。
「じゃ、次行こ!」
「わくわく」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

小雉子・吉備
この人らの洒落の内容は面白い(※苦🐿️鱒の、吉備の寒いギャグセンス的に)けど……色々洒落にならないね

……洒落だけに

現世でこの世界に似たアニメを見たけど、面白かったし……鳥の人に習い
バングル装備して開幕オバロで真の姿(九頭雉鶏精メダル併用)でお相手を

[POW]
バグ化プレゼント爆弾とか
如何にもって感じだよね
【属性攻撃(水)&火炎耐性】纏わせた【オーラ防御】で備えて攻撃に対して、爆発タイミングや広がる炎も計算に入れて【第六感&瞬間思考力】にも頼って【見切り】

【空中戦&推理移動】で臨機応変に
移動し【残像】で回避っ!

変なサンタちゃん達には
【動物使い】指示で《ひいろ&なまり》ちゃん達に専用武装マジックカードも併用して撹乱から

【高速詠唱&全力魔法】で《フェサンドファミリア》の皆を【範囲攻撃】で差し向け【武器巨大化&ダイカタナ】を込め【早業】UC発動

巨大化した起備団合の斬馬装を【怪力】で振りかぶり【2回攻撃&範囲攻撃&重量攻撃】の流れを【連続コンボ&アクセルコンボ】でやってみるよう!

[アドリブ歓迎]



「この寒さは……|雉始雊《きじはじめてなく》ころの寒さに戻ってるね」
 春の野原が広がるジルエッタ・フィールド。
 町、自然に呑み込まれた遺跡群と冒険心をくすぐるフィールドであり、そして今は桜狩りのイベントが始まったばかりだ。
 ゴッドゲームオンライン世界は誰もが憧れの自分を作り出せる場所。それはヒーローでもあるし、ディランでもあるし――|統制機構《コントロール》に住む人々の大切な心の一部を作りあげていく世界。
 そんな夢ある地に降り立ったのは小雉子・吉備(名も無き雉鶏精・f28322)。
 早速、春クエストである『さくら集め』を受注すれば、途端に吉備の視界は冬のものとなっていた。
 吉備の肌を突き刺すは冬の凍えであった。
 雉鶏の翼を震わせて、積もる雪を払う。
 受注したクエスト一覧を見てみれば、『さくら集め』のクエスト名は『ようこそ! 苦🐿鱒の世界へ!!!』と明らかにバグったものになっているし、クリスマスツリーのある雪原の彼方には何やら赤い集団……。
 吉備が翼耳を澄ませてみれば、
『クリスマスを楽しむプレイヤーはいないかー!?』
『楽しんでないなら楽しませてやろうホトトギス!』
『そして失意の底へと沈めるのだ!』
『リア充爆破!!』
 一方的な悪意を撒き散らし声を上げているクリスマス台無し男たち。
 クリスマスと、苦🐿鱒。なるほど。苦しめたい気持ちなんだね、と吉備は一人合点がいき、うんうんと頷いた。
「あの人らの洒落の内容は面白いけど……色々洒落にならないね」
 ちなみに吉備のギャグセンスはちょっとズレている。
「……洒落だけに」
 ぽそっと呟いてから、ここは先手必勝かな? と吉備は自身のアイテム一覧を開いた。
 配布される桜モチーフのバングルを選択してみれば、彼女の腕にそれは顕現した。
「うん、装備完了! 現世でこの世界に似たアニメを見たけど、面白かったし――ここは鳥の人に習おうかなっ」
 吉備はにっこりと笑顔になった。
 主人公は読み手のヒーローだ。作品に触れれば吉備は面白く感じる。その面白さや楽しさを、時には勇気を与え、作品の世界観に連れていってくれる、読者や視聴者のヒーロー。
(「皆に、この春クエストを思いっきり楽しんで、季節イベントを満喫してもらいたいし」)
 人知れず誰かのヒーローになる。それは猟兵仕事の領域だ。
 九頭雉鶏精メダルを媒介に召喚顕現させた雉鶏精型テクターを纏う吉備。
 換装を終える吉備の色は雉の戦闘色。美しい青緑色の髪、赤き装備は戦いへ挑む気迫を高じさせる。
 真の姿となった正義の味方――吉備にようやく気付くクリスマス台無し男たち。
『あそこにプレイヤーらしき個体を発見!』
『えっクリスマス楽しんでなくね……?』
『ならぱプレゼントを贈り、アゲアゲさせねば!』
 そう言ってバグ化プレゼント爆弾を放り投げる男たち。
「ん??? もう十分アゲアゲだけどね。――さあ、サンタちゃんたち、お相手願うね!」
 ひいろちゃん、なまりちゃん、よろしくね!
 赤猿拳舞「猿竜転生舞」のカードを手にすれば、ひいろは焔を纏い、四肢の駆けを加速した。
 次いで虹色狛犬「虹色息吹きのファイアーフラワー」のカードを手にすれば、なまりは虹色のビームを放ち、男たちの足元、そしてひいろの動線を確保支援する。
「ちょっとの間よろしくね。キビはまずこっちを対処するよ」
 駆けの線上にバグ化プレゼント爆弾が着弾することを予測した吉備は、回避専念だ。
 しっかりと見切って右に左にと避ける。
 黒蜜かけキビダンゴアイスバーに霊気を流し込めば冷気が放たれる――自身が纏う水のオーラと併用すれば爆発に飛散する焔や熱風を相殺した。
「――ここっ!」
 勢いある爆風は吉備の羽搏きの土台ともなる。母衣うちの如き音を立て空に飛び立ち、一気に彼我の距離をつめんとする吉備。
 刹那の滞空にて冬に満ちる寒さを更に凍えさせる鶏精の霊魂、「フェザンドファミリア」を突撃させればその地は雪原ではなく氷原となってゆく。
『えっ、もはや北極南極型フィールドでは!?』
『やりすぎでは!?!?』
『ちょっとおさるさん抱かせてくれる!?』
 クリスマス台無し男たちが寒さに凍え騒ぎ始めた。
 言われたひいろはもちろんお断りだ。発火している拳を叩きつけている。
「北海道の駄菓子の起備団合の由来の如く、この一撃は数多団合に価するっ!」
 吉備は持ち替えた武器――偽御神刀・桃乃花吉備男を振りかぶった。
「数多の大地の力にて砕けよ、起備団合の……胡桃砕きっ!」
 刀を通じ巨大化の力を注ぎこまれたユーベルコードが放たれれば起備団合の斬馬装が地上に向けて突撃していく。
 高度からの降下加速も乗った重量級の攻撃だ。
 巨大化した起備団合の斬馬装が突っ込めば、散ろうとしているエセサンタ集団もひとたまりではない。
 出来上がった氷原をも胡桃のように砕き、そこには大きなクレーターが生じた。
 蔓延っていたサンタ型バグプロトコルが消失していくなか、吉備は駆け寄ってきたひいろとなまりを抱き上げる。
「季節は移ろうもの。みんな、春を待ち遠しく思ってるんだよう」

 ジルエッタ・フィールドから一掃されたクリスマス台無し男たち。
 吉備はクエストボスがいるであろう、彼方に在る大きなクリスマスツリーに向かい駆けてゆくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『シェフ・ナカジマ』

POW   :    今日のメニューだよぉ
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
SPD   :    デザートもあるよぉ
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。
WIZ   :    いつもありがとうねぇ
手持ちの食材を用い、10秒でレベル×1品の料理を作る。料理毎に別々の状態異常・負傷・呪詛を治療する。

イラスト:気儘狼工房

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠バルタン・ノーヴェです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 開花した大きな桜の木にクリスマス用の飾りが付けられた、クリスマスツリー。
 その木を中心に自然に呑み込まれた遺跡群が広がっているジルエッタ・フィールド。
 ツリーの様子や、雪が残っていることから苦🐿鱒バグはまだ健在――それもそのはず、まだクエストを乗っ取ったバグのボスがいるのだから。
 ボスであるシェフ・ナカジマはグランピング施設のようなモノを設置し、調理に勤しんでいる。
『あ、いらっしゃいプレイヤーさん。ランチかなぁ? こっちは今日のメニューだよぉ』
 デザートもあるよぉとナカジマが示す場所には、クリスマスらしいお食事があった。
『春のお重もあるよぉ。料理はお持ち帰りも出来るよぉ』
 春らしい彩のお弁当もある。
 クリスマスっぽいものや、春を食べるみたいな可愛らしいデザートもある。
『鍋もあるよぉ』
 和っぽい鍋やチーズフォンデュ鍋などなど。
『何が食べたい? 結構なんでも作れるよぉ』
 とナカジマが言う。
 周囲は一貫性のない季節の料理がたくさん…………見ているだけで目まぐるしい。
 ここら一帯に発生している|終末機構群《エンドコンテンツギミック》の効果だろうか?
 若干、気持ち悪くなってきたような、ふわふわしているような、熱くなってきたような。
 アルコールを嗜んだものは自身の『酔い』の症状であることを自覚した。
 うわばみの人は「え? 何それ」状態である。
 未成年者は、察してはいけない違和感に襲われているようだ。
『あ。なんでも作れるけど、お酒はないよぉ。ジュースはお茶はあるねぇ』
 ナカジマの口調あいまって、場はふわふわ。生クリームを作る泡だて器の「カチャカチャ」とした音がなんだか心地よい。
『いいかい、みんな。いくら酔っても自分を見失っちゃぁいけないよ。|遺伝子番号《ジーンアカウント》を焼かれちゃうからねぇ』
 それに自分を見失えば社会的にしぬ。

『さあ、バグの世界を楽死ん出……これは最後の晩餐、旅は道連れ……おっとぉ』
 若干更にバグったナカジマはひょいとつまみ食い。
 食べること狂気がおさまったようだ。
『クエストクリアの条件はボクを倒すこと。
 それは料理対決でもいいし、大食い勝負でもいいし、なんなら酔いに任せてボクを社会的に消してもいい』
 ボスの倒し方はお任せするよ、とナカジマ。
『だってボスは、クリアを目指すプレイヤーたちのためにいるんだからね』
 正気と|狂気《酔い》に挟まれた時間が、いま、はじまる。



(マスターより。
 シェフのユーベルコードを食らえば、状態異常は治療されるものの、|終末機構群《エンドコンテンツギミック》の強制付与の力が働き二日酔い状態になるかもしれませんが、実際に飲酒するわけではないので安心してください。
 シリアス、ギャグ、どちらもOKです)
小雉子・吉備
【蛟】
ちょっとフラフラするけど、霓虹ちゃんだいじょーぶ?

にしても、料理人がボスとは思わなかったけど……嫉妬サンタちゃんと結び付かないね

気休めに《ひいろ》ちゃんに【動物使い】指示のUCで酔いの耐性を少しでも付ける為に皆に【肉体改造】する?


料理対決はキビ達は【グルメ知識&情報収集】して桜餅の天ぷら……揚げ桜餅かな?

それを【料理】する為に道明寺粉で生地を三色作って、霓虹ちゃんの料理してきた桜餡、抹茶餡……味噌餡まで作って来たのはらしいけど

味噌も餡も天ぷらには相性良いよね
衣に付けて揚げちゃおうっ!
生地も、桜の塩漬け、抹茶、のも用意し……揚げ饅頭も実際してるし

桜餅のも以外にも美味しいよ?

[アドリブ歓迎]


蒼・霓虹
【蛟】
これが、話に聞いていた酔いのフィールド効果でしょうか

将来的にそなえなければならない事も踏まえ……慣れたい所、吉備ちゃん宜しくお願いを

わたしは吉備ちゃんが【グルメ知識&情報収集】で揚げ饅頭ならぬ桜餅を料理すると聞いて

【料理】して持ってきたんですよ
白餡に味噌を混ぜた味噌餡を……あたたっ!なまりさんツッコミしないで下さい
味噌餡は実際してますし、一部の地方の桜餅は味噌餡で、けっして某郷土料理布教的な思惑では……ひでぶっ!?

一応、抹茶や桜餡とか色々と餡は
作って来たんですよ、春の三色の由来の三色団子のピンク、白、緑を桜餅の中身に反映する為に

吉備ちゃんの作った生地に
餡を包んで、どうぞ。

[アドリブ歓迎]



 シェフ・ナカジマが拓くフィールドに入ると、だんだんと身体はぽかぽかしてきて、歩みがふわふわになってしまっているような気がする――「ひゃ……」と小さく戸惑いの声をあげたのは蒼・霓虹(彩虹駆る日陰者の虹龍・f29441)だ。
「き、吉備ちゃん……これが、話に聞いていた酔いのフィールド効果でしょうか?」
「そうかも~。キビはちょっとフラフラするけど、霓虹ちゃんはだいじょーぶ?」
 どこかふわふわしている霓虹の様子に、小雉子・吉備は心配そうに尋ねる。
 霓虹はうんともいいえとも言えない曖昧な表情だ。少しばかり覚悟を決めたような雰囲気を醸し出している。くっと拳を作っていた。
「将来的にそなえなければならない事も踏まえ……慣れたいところです」
 お酒は大人になってから。
 なので、今の感覚はちょっぴり新境地だ。
 雪はちらりほらりと降っていて、同時に冬の桜の花弁もちらりほらりと視界で踊っている。普段ならばその佳景に感嘆し心癒されたいところではあったが――舞い踊る小さなものに、霓虹はくらり目が回りそうだ。
「これが大人への階段……試練でしょうか」
 顔を伏せて、くぅと真顔になる霓虹。
「気休めだけど、ひいろちゃんに酔いを和らげてもらう?」
「はい。吉備ちゃん、宜しくお願い、します」
 と、いうわけでひいろが金色の気を練り上げて放つ、金丹拳舞『練功金石拳』。
 キキッ! と鳴いて繰り出す武闘。まるで酔拳のように柔らかな軌道を描いて霓虹と吉備に着弾した練気は、二人を金色の気で覆い、酔いを覚ましていく。
『あっ酔い覚ましを用意してきたんだねぇ! えらいねぇ。酔ってると手元も狂っちゃうヒト多いからねぇ』
 と、ナカジマが調理しながら二人を褒める。
『ボス攻略法をいろいろ考えてからやる準備って、大事だよねぇ。いまからボスに挑む意気込みにもなるっていうか――さて、キミたちはどうやってボクを攻略する~?』
 喋っている間にブッシュ・ド・ノエルを作り上げたナカジマが問う。
「キビは、正直ボスが料理人だと思わなかったんだよね……嫉妬サンタちゃんと結び付かないね」
『あのサンタさんたち、めちゃくちゃ飲み食いしてったよぉ』
 それはヤケ食いヤケ酒というものではなかろうか。ちゃっかりクリスマス料理を楽しんでいたっぽい。
『根こそぎ食べってったから、作るのがたいへんたいへん』
 あまり大変そうではない調子でナカジマが言い、そっか……と吉備は頷いた。
「それじゃあ、料理対決しながら、料理増やしちゃおう!」
『お題は何にする~?』
「ここは和スイーツでいきましょう」
 わたし、仕込んできたものがあるんですよ。と、霓虹。
 調理台に出したのは味噌餡だ。
「この白餡に味噌を混ぜた味噌餡を……――あたたっ! なまりさんツッコミしないで下さい……!」
 利発な青色の狛犬が体当たりしてきて、霓虹は片脚をひらり上げて移動する。
「いいですか? 味噌餡は実在してますし、一部の地方の桜餅は味噌餡で、けっして某郷土料理布教的な思惑では――ひでぶっ!?」
 しかし霓虹の言葉は続かなかった。跳び上がったなまりの頭突きを喰らったのだ。
「なまりちゃん、邪魔しちゃだめだよ~。霓虹ちゃんは他の餡も作ってきてくれたんだから♪」
 と、餡を包んでいく吉備。桜餡、抹茶餡
 その生地は道明寺粉を練ったものだ。ほのかなピンク色や、抹茶の色と。
『わ、桜餅? 風流だねぇ』
 負けないぞぉとナカジマも調理を進めていく。
 その言葉を聞いて吉備はにっこり。
「ふっふっふ~。実はもう一工夫、あるんだよ」

 いざ、実食!

「「『いただきまーす』」」
 ナカジマが作った和スイーツは抹茶ティラミス。
 和風をモチーフに、クリスマスらしい盛り付けをしたティラミスだ。
 抹茶ティラミスのどこかほろろと渋みある大人の味。ホイップクリームとイチゴと共に食べれば口の中では甘やかに彩るハーモニー。
「ふわ、美味しいです……!」
「紅茶に合うね♪」
 霓虹も吉備もほんわか笑顔になって食べている。
「キビたちはね、ナカジマちゃんが言ってた通り、桜餅! から色々発想したんだよね。揚げ桜餅だよ~」
 米粉である道明寺粉に衣をつけて揚げれば、サクッとした食感に。
『味噌餡、揚げ物に合うねぇ!』
 食べ始めたナカジマは二人のアイディアに表情を輝かせていた。米粉は揚げると結構さっくりするのだ。
 味噌は香ばしく、餡は甘く。
 吉備の包んだ生地は、芽吹き花咲く、柔らかな春の色。
 どの餡が出てくるかは食べてからのお楽しみだ。
「抹茶や桜餡とか、色々と餡は作って来たんですよ。春の三色の由来の三色団子のピンク、白、緑を桜餅の中身に反映してるんです」
『ふわぁ~、粋なはからいだねぇ』
 霓虹の説明にナカジマは感心の声。桜餡と抹茶餡、そして白餡もあったのかぁ~と言った。
 桜の塩漬けをより効かせたもの。揚げ餅たちを食べていく中、餡は三色揃うかな? という楽しみ。
 食感も、味も、次を食べる楽しみも湧いてくる揚げ饅頭たち。
 ひいろもなまりも美味しく食べて、他の猟兵たちにも振る舞って。
『わくわくするスイーツだねぇ。とってもパーティっぽいや……! お見事だよぉ!』
 感服したナカジマに、
「やったね!」
「やりましたね」
 吉備と霓虹はハイタッチで健闘を称え合うのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榊・ポポ
(場所取りしてレジャーシートの上でゴロ寝しながら、業務用アイヒョーン内アプリゲーをポチポチする一般事務員カカポ)

宴会対決?呑兵衛的な?え?違う?似た様なもんっしょ!
確か底なし集金袋に宴会御用達なサムシングが...
あった!銀の某!アーンド大人のお菓子!(エイ鰭やら鮭とばやら)
ボスのごはんも食べたら酔うの?それも二日酔いデバフ!
ゲーミングドリンクの糖分で二日酔い中和(元気・気合い)で何とか...ならないよね!
頭痛いのは取れても千鳥足は取れないかもねェ~うぇへぇ
花見と宴会と来ればアレだよね
カラオケ!
ほらここにさつりくメガホンがあるからさぁ~
ポポちゃんの歌聞いてけやオラァン!
銀の某たんねーぞ!!



 みんなー! 職場のお花見ってぇー! 場所取りするじゃん??
 場所取りするひとって暇つぶしに何持ち込むゥ?
「って、今はアイヒョーンなる現代っ子のお供があるから、ばっちコイだよね」
 むしろ花を愛でながらお一人様を満喫できる時間! アイヒョーンがあれば最強の|現代鳥《カカポ》。
 そんな榊・ポポの視線の先には、雪にまぶされた満開の桜。
 舞い落ちてくるのは花弁だったり雪だったり。空のパレットに広がる真白と仄かなピンクの佳景にポポは思わずウットリ。
 構えた業務用アイヒョーンの画面には、風景を映すべくカメラのアプリが起動していて……あっ違う! めちゃくちゃゲーム中だ!
 場所取りさながら敷いたレジャーシート上で仰向けに転がっていたポポは、ゲームをしながら対趾足を上げては下げ、左右に開きとついでの運動。まるで家のようなくつろぎ方だ。
『すごい。クリスマス台無し男さんたちより、ぐうたらな過ごし方してる……』
 フライドポテトを差し出しながらシェフ・ナカジマが言った。
「ゲームに挑戦して、ヨガして、場所取りして! これは一石三鳥な時間の過ごし方なのぉ!」
 ポポ的に無駄な時間など一秒たりともない、充実華麗な時間である。
「フライドポテト、うまっ! 桜餅の揚げ餅!? うまっ!」
 ナカジマや猟兵の料理を貰ったポポはゲームを一旦中止して、食事を満喫する。
「料理対決したんだ!? 楽しかった!?!?」
『楽しかったよぉ。クリスマス台無しサンタさんに食いつくされた料理も補充できたし~』
 おもてなしの準備は再度万端だ。
『他のプレイヤーさんたちの手で宴会準備もいま進められてるんだよぉ』
 ほら、とナカジマが示す先には宴会準備中の猟兵たちの姿。
 ほうほうほう! とポポは時計回りに頭を動かして興味津々の表現ダンス。
「花見と宴会と来ればアレもいるんじゃない? そう、カラオケ!!!!」
 なんとこの場には劇伴担当の猟兵や舞担当の猟兵もいる。食べて歌って踊って、賑やかなお花見宴会の始まり時となるだろう。
「宴会対決もやってこ?」
 メガホンを掴み立つ、ポポ。しかしその足取りは千鳥足である。鳥だけに。
「おっとっとぉ……? ヨッシャァ、これは――みな呑兵衛から始まる物語――合ってる?」
『合ってるぅ』
 ここは状態異常として酔いが蔓延するフィールド。足元ふらつきポポちゃん、ちょっぴり頭痛も来ている。完全にこれは……飲みのやつ……とポポはシリアス顔になった。
 だが、皆で酔えばコワクナイ。ナカジマも地味に酔っている組である。
「不思議と欲しくなる、呑兵衛のオトモがここに……確か、この底なし集金袋に宴会御用達なサムシングが……」
 底なし肩掛け集金袋を漁るポポ。紙束、次の感触はこれはミニポポちゃん。底無き袋へ趾を潜らせてしばらく、ポポはぱあっとした表情になった。
「あった! 銀の某! アーンド大人のお菓子!」
 それはエイ鰭やら鮭とば……完全に飲みの相棒でもある|大人のお菓子《おつまみ》。
「ウコンのかわりにゲーミングドリンクも飲めば、麗らかなる歌担当の呑兵衛物語のはじまりはじまり――★」
 うぇっほぃ!
 と、胸いっぱいの酔った空気を排出したポポは新鮮な空気を求めて深呼吸。
 するも、酒の香りにも似たフィールドの空気が肺いっぱいに入ってきて、ポポは再びむせた。
「むぎぎ。でも頭痛いのは取れたかも~」
 ヨカッタヨカッタ。ゲーミングドリンクの効果はあったようだ。
「ポポちゃんの歌聞いてけやオラァン!」
 ナイフ飛び交う劇伴と、さつりくメガホンで披露されるポポの歌唱。
「「「GAOOOOO~♪♪ YEAH~」」」
 音量調整がイカれているメガホンは耳を劈く音となり鯨波みたいな多重音声となり、ポポの歌はまるで狂気のスクリーム状態である。
 宴会よろしく、食べて&気持ちよく歌っていると無くなっていく食べ物たち。
「GYAON! NE~ZOOOO!!」
 ――訳:「銀の某たんねーぞ!!」
『出来上がったばかりの揚げなめろうあるよぉ。こちらの御方からですぅ~』
 バーのマスターよろしくナカジマがスッと差し出す揚げなめろう。猟兵仲間が作ったそれはお酒にぴったりの一品である。
 蒸した道明寺粉で上げた一品は外側サックリ、中身は色んな味。
 猟兵たちが作る春にぴったりの品々、リクエストされて作るナカジマの品々。
 美味しい料理、気持ちよく歌える環境。
 舞う猟兵にも刺激され、よちよちよろよろ千鳥足となりながらポポちゃんリサイタルが続く。
 ある猟兵は冬と春の陽気が、ポポの素晴らしい歌声により虚空でたわむのを目撃していた。
 ポポの衝撃波と地響きを起こす程の歌声はナカジマを酔わせ、確実に仕留める一手となっていた。
『……なんか、クエスト報酬にたくさんの桜花弁プレゼント予定なんだけど。ボク、たぬき鍋にもなれる気がしてきたよ……』
 ナカジマはそう呟くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

木元・祭莉
【かんにき】だゼ!

たまたま来てたみんなと合流。
やほー、ジルエッタ春クエへようこそー♪
お花見は大勢の方が楽しいよね!

お花見バイキング時々クリスマス。
わー、ホントに何でも作れるんだ。
すごいや、おいらもやってみていい?
屋台展開、パティシエ見習い発動!(ゲームっぽく)

春は桜。
薄紅の餅色 微かに小豆が透け、
塩漬けの葉が 舌に優しく 腹を充たす、っと♪(鼻歌)

ハイ、これはサムエン西部風♪
え、真似できちゃうの?
スゴいけどなんかズルくない?(ぶー)

花見といえば泥酔。
おいらは毒耐性持ち(感覚鈍い)だからアレだケド。
マナー違反は退場! てやー!!(鉄拳制裁)

え、春クエ鍋?
クエの在庫あったかなあ……(食材を探す)


ガーネット・グレイローズ
【かんにき】

いつものメンバーと合流!
料理対決といえば杏とまつりんの出番だから、私は後方で観戦モードかな。
メカたまこEXを《撮影》モードに切り替えて、映え写真を撮っていこう。

シェフのランチにお重の弁当、鍋料理。春クエストでクエ鍋か、一本取られたな。
つくしに山菜、それから桜餅。春の味覚がいっぱいだ。クエ鍋もいいダシの味。
こう食べ物が美味しいとやっぱりお酒が欲しく……いや待て、これは敵の罠だ!
「杏、まつりん。お酒は二十歳になってからだ。アキ、大丈夫か?」
ローズタクトをひと振りし、【虹かけるアーク】を発動。フィールドの効果に負けない癒しの空間を作り出すよ。
これで少しでも酔いの影響を和らげていこう。


木元・杏
【かんにき】
桜のクリスマスツリー
すごいね、おどろきだね、ふわふわだね

まつりん、ゆらゆらしてる?
何だかほわ~として美味しいの匂いがする
ふらふら寄ってくと見慣れた姿
ガーネットとアキ(手を振る
春はクエ、わかる(こく
一緒にしぇふどうにかしよう

しぇふ、香りでわかる、貴方はスゴ腕
貴方の全て(の料理)をわたしに見せて?
どうぞ料理を彩って>UC

春くえ、クエ鍋
魚ながらこの肉厚…
香りを楽しみお箸でつまみ、はふ、と一口
……しあわせの味
白菜もへなっと味が染みて旨し
まつりんもはい、一口

春のお重はえびふりゃも入ってる
つくしの天ぷらに山菜ご飯
ん…後のお花見でも食せるかな?

作り尽くし食べ尽くしの大勝負
さあ、もっと持ってきて?


駒鳥・了
【かんにき】
謎に集まってるぅ(けらけら
知ってる顔にも手ぇ振って
えーこのタヌちゃん心中でもしたいん?(引
シングルベルそんなに辛かった?(手下と同じと思ってる

今んトコはダイジョブだけど度を越したら
遺伝子番号より前にリョウちゃんに
抹消される未来しか見えないからそっちのがコワいんでサクっと倒したいんだケド

杏ちゃんヤル気漲ってるし観戦!
グレちゃんが撮影ならオレちゃんはBGM担当ね(UC発動
これで正気の時間を稼ぎつつタヌちゃんの酔いをゴンゴン回してこ
ところでそのお料理、タヌちゃん倒したら普通の料理になりそ?
あっ祭莉くんの桜餅たべたーい!

ご退場の時間になったら遠慮なくナイフ乱舞をたんまりご馳走しちゃうぞ!



 満開な桜の花や枝には雪が降り積もっている。
 青空をパレットに咲くは、真白な冬の色と淡く可愛らしい春色のハーモニー。
 刹那の時であろうその佳景を眺め、ほうっと木元・杏は感嘆の息を零した。
「桜のクリスマスツリー。すごいね、おどろきだね」
 ほら、と手を伸ばした先には鞠みたいに咲き誇る桜花の雪化粧。
「ふわふわだね」
 ふわふわ。
 杏の言うそれは雪に向けて、桜花に向けて、感動しほのかに高揚する自分自身に向けて。
「まつりんのお耳もふわふわ……雪、あ、花びら……」
 ふふ。と杏は穏やかに笑う。
 指摘を受けてピピッと耳をはためかせる木元・祭莉。
「アンちゃんだいじょぶー?」
「大丈夫。でも、まつりんが、ゆらゆらしてる?」
「してないよ~」
 行くよ~。
 歌うようにそう告げた祭莉は妹の手を引いて、彼女が呟く「美味しいの匂い……」の方向へ。
 美味しい匂い漂う、大きな桜の木の下。そこにはよく知る友人たちがいた。
 先にぱっと笑顔になったのは駒鳥・了だ。
「あっれー? グレちゃんがいたかと思えば、杏ちゃんと祭莉くんもいるんじゃーん!?」
 謎に集まってるぅ! と、手を振ってけらけら笑うアキ。隣にはガーネット・グレイローズの姿もある。
「アキ、ガーネット」
「やほー、ジルエッタ春クエへようこそー♪ お花見クリスマスは大勢の方が楽しいよね!」
 繋いでいない方の手を振る杏と祭莉。
「まつりんも杏も、ジルエッタ・フィールドの春クエへようこそ! だね」
 出迎えの言葉を返したガーネットは「ゲームの世界でも偶然出会うなんて。不思議だな」と、いつメンを見る。
『ふふふ。好きなものがある場所には、不思議と見知った人が集まるものなんだよ~』
 ほら、桜とか、クリスマスツリーとかね。
 と、言うのはシェフ・ナカジマだ。
 クリスマスやお花見は、家族や友達、仲間と過ごすにはもってこいのイベントだ。
『さあ、みんな一緒にバグの世界を楽死ん出いこう~』
「えー……このタヌちゃん心中でもしたいん?」
 時々バグったような声色になるナカジマに、アキは引いた。

「サンタコスプレのおっちゃんたちもだケドさ、シングルベルそんなに辛かった?」
 辛かったー? たー……? ター……――。

 何故か、アキの声にエコーがかかり、ナカジマは劇画調のシリアス顔になった。タヌの毛がガビガビになるそんな表情表現である。
「めっちゃくちゃバグってんし、なんかハックされてない????」
 これがゲームの世界……とアキは呟いた。たぶん知らず知らずのうちに、ナカジマへ|抉るようなボディブロー《精神的ダメージ》を放っていた。
「アキ……それ以上触れてはいけないよ」
 緩く頭を振り、ガーネットがそっと呟いた。
 少しの沈黙の後、バタービール(ノンアル)をぐいっと飲んだナカジマは正気を取り戻したのか、元のpx……可愛らしいシェフタヌキ姿に戻った。
(なんとゆーか、絵面が、だな)
(完全に呑兵衛が過ぎたタイプのヤツじゃん?)
 ガーネットとアキがひそこそと言い合っている。
 一方未成年組の双子は、ナカジマの作ったクリスマス料理をあれこれ見ていた。
「ぶっしゅ・ドン・ナントカ! 切株のチョコケーキもあるよ!」
「はぅ……ターキー、お野菜で作ったサラダツリー、グラタン」
 すごいねー! と、色んな香りを楽しむ祭莉と、よりどりみどりな食事をまずは目で楽しむ杏。
『リクエストあれば作るよー。ここら一帯は酔い状態になっちゃうけど、だいじょうぶ、ボクの料理を食べれば治っちゃうよ』
「えー?」
 ホントー? と、ナカジマを胡乱げにジトッとアキは見る。
 杏はこくりと頷いた。頷いた拍子に、少し頭がクラッとする。
「しぇふ、香りでわかる、貴方はスゴ腕。貴方の全て(の料理)をわたしに見せて? ――どうぞ料理を彩って」
 杏の貯蔵する肉が代償になるユーベルコード『お肉のチカラ』。……自身のお肉(将来的におなかにつくかもなモノ)(カロリー)も入ってるのだろうか? それだけ、杏はたくさん食べる。
「んんん! 杏ちゃんヤル気漲ってるし、オレちゃんは観戦しよっと!
 ……今んトコはダイジョブだけど。度を越したら、|遺伝子番号《ジーンアカウント》より前にリョウちゃんに抹消される未来しか見えないんだよねぇ。そっちのがコワいんで、サクっと倒す準備はしとこっかなー」
「じゃー、おいら、『あんしんあんぜんおいらが作りました桜餅』作るー♪ GGO、らくらくクッキングできるんデショ? おいらもやってみたーい♪」
 虚空に画面……アイテム一覧をを開いた祭莉は、屋台風荷車『木元村』をぽちっとな!
「屋台展開、パティシエ見習い発動!」
 ぱぱーん! とゲームらしく荷車を改造したいつもの屋台が現れて、木元村の旗もちゃんとはためいている。
「料理対決にもなるね。よし、ならばメカたまこEXを撮影モードに切り替えて、映え写真を撮っていこう」
 先程、ガーネットと共に爆炎の死線を潜り抜けたメカたまこEXは撮影モードに。地面に放てばベストアングルを探っていくメカたまこEX。
「たまこ……ガーネット姉ちゃんの、た、まこ、なら……ダイジョウブ」
「まつりん、えがお、笑顔。カメラが回っているよ」
「……。……ニコ……」
「祭莉くん、ぎこちな!!!」
 ガーネットと祭莉のやり取りに笑うアキ。
「緊張ほぐそ! グレちゃんが撮影ならオレちゃんはBGM担当ね♪ ――ミュージック、スタート!」
 ノリの良いクッキングミュージックがこの一帯に流れ、さらには猟兵仲間のカラオケボイスも響き始めたジルエッタ・フィールド。一気にとっても賑やかに。
「~♪ 春は桜。薄紅の餅色 微かに小豆が透け」
 歌いながら祭莉が集めた桜花弁をクリエイト。まだ少ない小さな花弁たちは食材に変化した。
 蒸した薄紅の餅米で、餡子をふんわり包み込む祭莉。
「塩漬けの葉が 舌に優しく 腹を充たす、っと♪ わーすごい! あっという間!」
 ハイ、これはサムエン西部風♪
 と、道明寺なるサムライエンパイアの桜餅の出来上がり。
 カウンター寿司よろしく屋台から桜餅を並べていく。
「祭莉くんの桜餅たべたーい!」
 わっくわくと屋台前に駆けてきたアキは「いただきます」と桜餅をいただく。
 祭莉は熱い緑茶も出してくれた。
『桜餅! いいねいいねぇ! こんな感じ?』
 とナカジマが作りだしたのは、サムライエンパイア東部風桜餅だ。
「え~、真似できちゃうの? スゴいけどなんかズルくない?」
 桜餅。
 そして既にナカジマが作りだしていたのは、春の重箱弁当だ。
「えびふりゃも入ってる――つくしの天ぷらに、山菜おこわ――これは、たけのこの土佐煮」
 ぱくり、ぱくりと食べていく杏。
 アキのBGMがゴンゴンと杏の耐性を高めていく。何の耐性かって? そりゃあアルk……ごにょごにょだ。
 桜餅を美味しく食べていたアキはナカジマの方をチラッと見遣る。
「おべんと、後で持ち帰れるようにお願いしたいナー?」
『春のおべんと。あとで楽しめるように、プレゼントBOXに送っとくねぇ~』
「すっっごい、ゲーム感……!!」

【アキは『春の美味しい重箱弁当』『淹れたて春茶』を手に入れた】

 アイテム一覧を確認すれば、ちゃんと、ある……。
「つくしに山菜、それから桜餅。春の味覚がいっぱいだね」
「んふふ。ガーネット、だいじなもの、忘れてる。それは春クエ」
 ふわり微笑んで杏はガーネットに告げる。そして親指と中指を擦った。音は鳴らない。
「……、しぇふ」
 指音が鳴らなかったので、呼ぶ杏。
『はいよ~』
「春くえ、クエ鍋を」
『あいよ~』
 ナカジマがぱぱぱぱっと調理し、杏たちの前に広げたのは春のクエ鍋セットである。
「なるほど。春クエストでクエ鍋か、これは一本取られたな」
 笑う声は出さずとも、ガーネットは肩を震わせていた。それが杏が知る笑みよりも少し長い。
 さすがだね。そんな称賛を感じた。
 お椀よそった、白身。ふわふわとした湯気は清涼な葉物の香りも含まれていた。
「魚ながらこの肉厚――」
 香りを楽しみながら、お箸でつまみ、はふ、と一口。
「――しあわせの味」
 ぷりぷりの白身は噛めばふわふわほくほく。
「白菜もへなっと味が染みて旨し……春菊の香味もまた良き……」
 まつりんもはい、一口。
 と、桜餅作りから春の料理対決のための手まり寿司作成に励む祭莉にもおすそわけ。
「ダシが凄い……これは良いな。シメは是非雑炊でといったところか――」
 はふり。と食べるガーネット。
「こう食べ物が美味しいとやっぱりお酒が欲しく……いや待て、これは敵の罠だ!」
 なんてことだ……!
 我に返り(?)、キリリとした表情になったガーネットは「杏、まつりん」と双子を呼ぶ。
「お酒は二十歳になってからだぞ。これは、いけない」
 桜花弁を集める春クエストの報酬一覧には、『春のさくら酒』なるものがある。思わず、うっかり、今持っている花弁をソレに変換したいと思ってしまったガーネット。
 取り出したバラ色のタクトを振れば花の香りと清廉な風が場に渡った。
「なんて恐ろしい|終末機構群《エンドコンテンツギミック》なんだ……!」
 発動するは虹かけるアーク。
 一帯は虹のかかる、優しい癒しに満ちた空間となってゆく。
「アキは大丈夫か?」
「問題ナシナシ! あんしんあんぜん祭莉くんが作りました手まり寿司を食べてるよ。でもそろそろタヌちゃん削ってこっかなって思ってる~」
 一方ナカジマは調理に集中してしばし食べていなかったせいか、酔いも回ってテーブルに突っ伏している。
「花見といえば泥酔? おいらは|毒耐性持ち《感覚鈍い》だからアレだケド~、マナー違反は退場って聞いた!」
 誰に聞いたかというと、たぶん両親だろう。祭莉が言った。
「てやー!!」
 と、祭莉の鉄拳制裁! アキの精神ボディブローとは違った物理お仕置きボディブローがナカジマに叩き込まれた。
「ところで、オレちゃんの魂の|劇伴駒鳥《サウンドトラック》、いまめちゃロックでスクリームな気分なんだよね~」
 ――そう。アキが言葉で示すのは、響き渡りはじめたデスボイス。
 仲間の猟兵の衝撃波ところによりアキのバタフライナイフが舞えば、それは、ボスを叩いて刻む調理法となった。
『……ボク、たぬき鍋に成るべく新狂地をひら苦ね……』


「まつりん、あんしんあんぜんまつりんのクエ鍋も食べたい……な……」
「え。屋台にクエの在庫あったかなあ……?」

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

アメリ・ハーベスティア
【なめろう茸】
ふぇ~ビスちゃん、大丈夫なのですか?アメリは目の前がぐーるぐるぅ、このままでは料理まで、はわ?UCで『肉体改造』で酔い止めなのですか?

一か八かぁ……っ!

と言う訳で、お題はお惣菜で
……桜餅なのですか?道明寺蒸し
お惣菜の歴史が長いと

なめろう入れるのは予想してたですが、ならビスちゃんが作った道明寺粉生地に、春も旬の椎茸と白葱、白身魚を調味料で味付けしたのを包んで蒸し器へゴー

序でにアメリはビスちゃんのなめろうを椎茸に積めて、衣も道明寺粉付けてカラリと揚げて『料理』するです

あっ、ビスちゃんも桜の葉でなめろう巻いてカラリですか?折角なので『アート&グルメ知識』で見映え良く配置と

※アドリブ歓迎


ビスマス・テルマール
【なめろう茸】
あぁ、アメリさんが酷い事に……わたしは兎も角アメリさんの料理に差し支えそうで

アメリさん、ブレスのUCで
一か八か酔い止めをっ!

道明寺蒸しはスイーツより惣菜の歴史の方が長いんですよ、スイーツのイメージ強いですが

惣菜勝負として下拵えに『早業&料理』UCで、道明寺蒸生地と飛び魚のなめろうを初めとする惣菜桜餅の具を作って

わたしは生地になめろうを包んで、アメリさんは椎茸をメインにですか、椎茸をなめろうに?良いですよ

蒸してる間に桜の葉で、アメリさんに対抗で飛び魚のなめろうを巻いて衣に付け天ぷらに

アメリさんが綺麗に盛り付けてくれましたが、ナカジマさんに可能性の一端を見て貰いましょう

※アドリブ歓迎



「お料理対決と聞いて!」
 満開の大きな桜にクリスマスツリー用のオーナメントが飾られている。
 桜花に積もる真白の雪。
 同じく地面に積もった雪には、春色の花弁が散る佳景。
 シェフ・ナカジマのいる場所へとやってきたアメリ・ハーベスティアとビスマス・テルマール。
 踏み込んだとある位置からずっと感じる何か――特定できない『それ』にアメリは「ふぇ~」と声を零した。
「ビスちゃん。ビスちゃんは大丈夫なのですか? アメリは目の前がぐーるぐるぅ、してますよぉ」
 ふぇぇ。はわ~。
 ふわっふわとした声や足取りとなっているアメリを、慌てて支えるビスマス。
「あぁ、アメリさんが酷い事に……料理対決と聞いてやってきましたが、わたしは兎も角、このままではアメリさんの料理に差し支えそうですね……」
 何か対策はないでしょうか――。
 このまま放っておくと、ビスマスの思考にも霧がかかっていきそうである。
「そうだ。アメリさん、ダークブレスエフェクトは使えそうですか? 酔いを一時的に治療し、さらには強い耐性として備えましょう……! 一か八かで酔い止めをっ!」
 アメリに助言し励ますビスマス。
「??? はわ? 酔い止め、ですか? アメリ、薬剤師さんになるです……?」
 成功すれば自分がやれることの幅が広がるだろう。それはきっと、いつかどこかで誰かの助けとなれる。
 善意的なアメリの思考はスーパーよいこランドの者らしさがある。
「むむん。よしです、アメリのブレスの力を信じて、一か八かぁ……っ!」
 闇属性のブレスが周囲に漂うように放てば、状態異常【酔い】に侵された二人の身体が治療され、一時的に酔いに強い肉体へと変化する。
「あっ。ビスちゃん! ふわふわ、ふらふら、ぐるぐるがなくなりましたよっ!」
「良かったです……! やりましたね、アメリさん!」
 アメリとビスマスが笑顔でハイタッチ!
 これで憂いなく料理対決に挑めそうだ。

『いらっしゃい~。料理対決? ふふふ! プレイヤーさんの新しい料理、楽しみだねぇ!』
 シェフとして腕が鳴るよ~と歓迎の姿勢で出迎えるナカジマ。
 仲間の猟兵たちが作ってきた、正統派な西の桜餅、中の餡も彩豊かな揚げ饅頭ならぬ揚げ桜餅。
 桜餅といっても、調理方法でこんなにも食感や味の違うスイーツが出来上がる。
 ならば! と二人が作るのは――、
「道明寺蒸し、ですよ!」
 ビスマスが笑顔で宣言する。
「……道明寺蒸し? それも桜餅なのですか?」
『人気だねぇ道明寺。でも蒸すの?』
 きょとんタヌキとなったナカジマもアメリと共にビスマスに教えを乞う。
「ええ。道明寺蒸しはスイーツより惣菜の歴史の方が長いんですよ。スイーツのイメージが強いですが」
「お惣菜の歴史が長いのですね」
「説明も大事ですが、香りも味も楽しむためにまずは作ってみましょう。実演、実食ですよ♪」
『蒸し料理なら、クリスマスプティングを作ろうかなぁ♪』
 と、ナカジマも合わせて蒸し料理に挑戦するようだ。
「ビスちゃん、餡は何にするの?」
「私はもちろん、なめろうですよ。なめろうの可能性は無限大です、それを今――この場で振る舞いますね」
 ビスマスがユーベルコード『世界的沖膾全席』を披露すれば、次々と作られていく飛び魚のなめろうを初めとする惣菜桜餅の具。
 さらには道明寺蒸しの生地も用意されていく。
「ビスちゃんがなめろう入れるのは予想してたです。なら、アメリはビスちゃんが作った道明寺粉生地に……ビスちゃん、生地をいただきますね」
 作ってくれてありがとうなのです。
 きちんとお礼を言って、アメリは道明寺粉の蒸し生地を貰う。
 アメリが作る餡。それは春も旬の椎茸と白葱、白身魚を調味料で味付けしたものだ。
「包んで蒸し器へゴーなのですよ」
 蒸し器に綺麗に並べていく。
「ビスちゃん、なめろうも貰っていいですか? アメリ、作りたい物があるのです」
「いいですよ」
 柄を落として、傘の裏側になめろうを詰めていくアメリ。
 道明寺粉の衣をつけてカラリと揚げる予定だ。
「ふふ。アメリさんの料理の意欲には刺激を受けますね。私も一品、足してみましょう♪」
 ビスマスは飛魚のなめろうを桜の葉で巻いて、アメリと同じく衣づけ。
「あっ、ビスちゃんも桜の葉でなめろう巻いてカラリですか? ぜひぜひ、アメリに盛り付けさせてください!」
「はいっ! ――実は、ちょっぴりそのつもりでいたりしました。アメリさんの盛り付けを楽しみにしてますね」
 和やかなやり取りのなか、二人の表情は常に笑顔。
 仲が良いビスマスとアメリの様子にナカジマも自然と笑顔になり、鼻歌を歌いながらプティングを蒸す工程へ。

 道明寺粉と包んだ餡を蒸した道明寺蒸しはもっちりつるりの食感。お餅ならではではあるが、さらにはつぶつぶとした食感も楽しめる。
『なめろうの餡も、旬の食材の餡も美味しい!』
 ボクもこのあと作ってみたい! とナカジマは歓喜の声。料理人として刺激を受けている様子。
 揚げた方は肉厚な椎茸の旨み、そしてなめろうの旨みが調和している。
『天ぷらみたいに衣に使うのも美味しいなぁ。桜の葉で包んだ方も、なめろうと葉の塩気との相性が絶妙だし』
 道明寺粉の可能性をふんだんに発揮した春の彩が並ぶ。
『ビスマスさん、アメリさん、ボクのプティングも是非是非食べてねぇ』
 持ち帰り用にと包んでくれてもいるプティングは、砂糖でコーティングしたナッツや干した果実がざくざくと入っている。
「ナカジマさんは楽しい料理時間をありがとうございました」
「アメリたち、これから春も楽しんできます!」
 バグったクエストの終焉へと向かっていくナカジマに、ビスマスとアメリが告げる。
 クリスマス、冬が終わって、雪解けた春へと。
 少しずつ時は進んでいく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

古戸・琴子
※アドリブ連携OK
これは色々と混ぜ過ぎじゃな。
盆と正月が本当に一緒に来たらこんな感じなのかのう。
……おっと、いかん。
これ以上酔わないように、さらしはきつめに巻いておくとするか。

料理対決?わらわ、普段料理はせぬぞ。
代わりと言ってはなんじゃが、
余興と労いに舞を馳走するとしようか。
そうじゃな。岩戸神楽など如何かのう。
めでたい席には相応しいじゃろうて。

基本は舞を続ける役じゃ。
桜のオーラで高揚させたり、
フィールドの桜に命じて花びらを集中的に落とさせたりして、
ナカジマを良い気分にさせた所で食べさせよう。

場合によっては味方を高揚させても良いぞ。
桜の恩恵は万人に降り注ぐからのう。


エリシャ・パルティエル
桜の木にクリスマスの飾りつけって斬新ね
なんだかお料理も季節感がバグってるみたい
それになんだかふわふわしてきて…
あたし二日酔いになるほど飲んだりしないけど
これが続くとしんどいわね
他の皆が少しでも楽になるようにUCで癒しておくわ
嫌なことを忘れたくて酔っぱらう人もいるけど
逃げても現実は変わらないわ
お酒を楽しく飲むのも大人の嗜みよね

この可愛いシェフさんがボスね
じゃああたしは正しく春を感じるために
手毬寿司を作るわ!
食べやすくてお花見にももってこいよね
サーモンに、きゅうりに、ホタテに…
あら、なんだかクリスマスカラー
酔いのせいかしら?
ともかく彩りよく仕上げてお弁当に詰めて…
出来たわ!
さあ、春を取り戻すわよ!


島江・なが
なが、知ってますです。
酔い……それはかっこいい大人の階段!(?)

しかしそれは罠でもあります……!
『いんしゅうんてん』ってヤツになっちまいます。
スターライダーには大ピンチな状態です……!
でもでも、この美味しそうな料理を食べたら『ふつかよい』ってヤツになるんですよねぇ……。
……ほぇ。どちらにせよ酔ってしまいますね……?!
こーなったら戦いを放棄して貰うしかありません!

なんかいつもよりぽかぽかふらふらする気がしますがー……
いざ、たいあたりです!どーん!もーふもーふ!(UC)
無力化は出来ても倒せはしませんが……トドメは他の猟兵さんにお任せするです……。


ふぁぁ……なんか眠くなってきましたあ……

…(スヤァ)


青梅・仁
想像してたより全然ゆるいシェフだった……。

ところで俺はぶっちゃけ酒に酔えたことがない。
ないから、酔いってのをちと楽しみにしてたんだが――
……なんか思ったよりよくわかんねぇな?

料理対決も大食い勝負も俺には向いてない。真正面から挑ませて貰うぜ。
とは思いつつ、平和そうなシェフに手荒な真似をするのもな……。
シェフが落ち着いて料理出来るように龍神の清めでも使おうと思ったんだが――うわっと手が滑った(【妖剣解放】)
あっこれが酔いか!?なるほどな!?(※多分違う)
はーん、こりゃ確かに酔いやすい人は大変だな……。

シェフの料理も気にはなるが、二日酔いはやべえのは知ってる。
うっかり食わんように回避していこう。


アミリア・ウィスタリア
春なのに極寒とお聞きしまして……!
……本当に真冬になっていますね。なんてことでしょう。
折角の季節のイベントがこれでは、皆さん楽しめないですよね。

まあ、可愛らしいシェフさん!
お料理も素敵ですね。でも、こちらを頂いたら二日酔いに……でしたね。
気にはなりますが二日酔いはみっともないとあの人も言ってましたから、ここはぐっと我慢……。

皆さんが暖を取れるよう、キャンプファイヤーを作ります!
燃やしすぎないように火力はきちんと調整します。

……うふふ、なんだかいつもより楽しい気持ちになってきました!
どんどん燃やしましょう!うふふふふ!(※酔った)
シェフも寒くありませんか?暖まりながらお料理作ってくださいね!




 満開の桜に雪が積もっている。
 ひらり空から舞い落ちてくる桜花弁と雪。
「本格的な雪景色は名残雪とも呼べないものですが――真白に散る花弁は可憐で、そしてより儚く見えますね」
 ゴッドゲームオンライン世界、ジルエッタ・フィールドにやってきたアミリア・ウィスタリア(綻び夜藤・f38380)は到底春とは呼べない景色を楽しんでいる。
「桜の木にクリスマスの飾りつけって斬新ね???」
 見て、とエリシャ・パルティエルが示した先にはクリスマスの飾りつけがされた大きな桜の木。
 金や赤のリンゴやBOXと、クリスマスらしいオーナメントの数々が飾られている。
「これは色々と混ぜ過ぎじゃな。盆と正月が本当に一緒に来たらこんな感じなのかのう」
 古戸・琴子の言葉は少々感心の声――呆れも含んだ其れはきっと褒めてはいない。
「盆と正月……うれしいことや楽しいことが重なることの例えだったかしら? 忙しさも表していたわよね」
「この場合はクリスマスとお花見でしょうか……? オーナメントのボールは、鞠飾りにするとバランスが良いかもしれませんね。少々、クリスマスの色が強い気がします」
 琴子に続くエリシャとアミリアの声。
 駄目だしという方向性は一緒でもてんでばらばら好き好きな女子陣の弾む会話を聞きながら、青梅・仁は心の中で(「そうだな」)とか(「そうじゃねぇ」)とか頷いたりツッコミしたりとしている。
『こういう時って、下手に口出すと被弾したりするから黙っておくのが懸命だよねぇ』
「…………そうだな」
 もくもくと調理していたシェフ・ナカジマの言葉には応えておく。
「ところで皆は猟兵……カカポを見ておらぬかのう? 寒さを苦手としておったようなので、ちと心配しておるのじゃが……」
 と、琴子が辺りを見回し、先程まで一緒にいた猟兵仲間を探す。
「カカポじゃないけど鳥ならあそこにいるわね。――なが!」
 エリシャが桜のクリスマスツリーを見上げて呼びかければ、縞模様のついた白銀のオーナメントが「ほぇ?」と声を放つ。いや、あれは島江・なが。
「あれぇ。みなさんおそろいでー!」
 ちょっちょっと枝上で方向転換したながは皆を見下ろしたのち、翼を広げて飛び降りてくる。
 シマエナガの丸い胴体が虚空でよろめいた。
「……おっと、いかん。こんな幼子にまで酔いが回ってしまうのか。この|終末機構群《エンドコンテンツギミック》は大人限定にすべきであろう」
「それはそうだよなぁ。正常なゲーム状態での状態異常【酔い】は成人限定みたいだが」
 カカポやシマエナガといった鳥類たちの現状に憂う琴子へ、仁が言う。
 これだけリアルなゲーム世界だ。お酒も飲める。酔い状態は成人向けコンテンツに含まれているのだろう。
 琴子が対策としてきつめに巻いた桜さらしは、気が引き締まるし浄化作用もある。
「あたしもふわふわしてるわねー。二日酔いになるほど飲んだりはしないけど、これが続くとしんどいわね」
「ミラはこれくらいなら大丈夫ですね。少ぅし、気分は高揚気味ではありますが」
 エリシャとアミリアの自己分析に、仁は「へぇ」と興味を示した。
「俺はぶっちゃけ酒に酔えたことがないんだよな。――ないから、酔いってのをちと楽しみにしてたんだが――……なんか思ったよりよくわかんねぇな?」
 仁は海の信仰により生まれた龍神だ。
 ふわふわ? 気分の高揚? 字面でなら理解できるが、今まで酒の酔いが自身へ作用したことはない。
「場の雰囲気によるか……?」
 などと永き生を思い返しながら余裕ヅラをキメて言う仁を見て、エリシャとアミリアは顔を寄せた。
「龍神サマを酔わせるって結構なお酒の量が要ると思わない?」
「龍神サマに酔っていただくなら、そうですね、場の雰囲気はお好きなようですから……そこから畳みかければ……もしかして?」 
 ひそこそ。
 なんにしても人間の姿では酔いに相当する酒量が物理的に入らないだろう。
「……」
『被弾しちゃったねぇ』
「煩ぇよ」
『そうこうしているうちに、はい、クリスマスパエリアの出来上がり~』
 ナカジマが作ったチキンのパエリアは、緑のエンドウと赤いトマトも使われたクリスマスカラー。
「まあ、素敵なお料理! 飾りつけも可愛らしくて……シェフの可愛らしさからもそれが表れているんすね」
 テーブル上に並ぶ他のチキン料理やミニスイーツも美味しそうなものばかり。目を楽しませる美しい彩にアミリアは目を輝かせている。
「ええ! すごく美味しそう。クリスマスのパーティにぴったりね!」
 クリスマスの雰囲気にワイワイとし始めた周囲を見て、エリシャはにっこり笑顔になる。
 そんな彼女とアミリアの表情は直ぐに憂いあるものに変化した。
「ですが、折角の春の季節のイベントがクリスマス推しでは、皆さん楽しめないですよね……」
 景色の見た目も、フィールド効果も、残念なものだとアミリアは結論付ける。
「嫌なことを忘れたくて酔っぱらう人もいるけど、逃げても現実は変わらないわ。お酒を楽しく飲むのも大人の嗜みよね」
 酔うと辛くなる人もいる。エリシャは聖なる光を放ち、皆の【酔い】を癒していった。
「はっ、大人のたしなみ! なが、知ってますです。酔い……それはかっこいい大人の階段! つまり、ながは、これをたしなめばおとなです!!!?」
「うん? なが、ここはステイじゃぞ」
「そうそう。これ以上は教育と倫理の機関に響く」
 翼を広げてぽんぽん弾むながを琴子が言いながら手で止め、仁も言葉で止める。琴子の手のひらはもふもふに覆われた。
「わかってますよーぅ! これは罠でもあるのです……!」
 罠。
 場にいた一同はながの言葉に首を傾げた。ながはその間にも「これは、これは……」と身体を震わせている。
「『いんしゅうんてん』ってヤツになっちまいます。スターライダーには大ピンチな状態です……!」
 故に、今は飛べない鳥・島江なが。
「……ながは冷静に状況判断できるんじゃな」
「今なががれーせーなのは、エリシャさんの光のおかげですよー!」
 抱えつつ褒める琴子の手の間でながは飲酒運転撲滅の声を上げている。
「偉いわ、なが! かっこいい大人の階段の誘惑に抗って、あたしたちは春を取り戻しましょ!」

 ――そのためにも料理対決よ!

 意気揚々とナカジマに告げたエリシャは、自身のアイテム一覧から桜花弁を選ぶ。
 増えた枚数ぶんはクリスマス台無し男たちの撃破報酬だ。
 アイテムを変換させれば、エリシャの前には春の食材の数々。
「あたしは正しく春を感じるために、これから手まり寿司を作るわ。皆はどうするのかしら?」
「料理対決か。わらわ、普段料理はせぬのじゃ……代わりと言ってはなんじゃが」
 五色の紐が揺れる扇『宵桜』を開いて琴子は微笑んだ。
「余興と労いに舞を馳走するとしようかの」
「舞か。いいねぇ。俺も、料理対決は向いてないからな……エリシャちゃんに料理は任せるぜ」
 仁はゆるゆると言いながら場を一瞥する。
(「平和そうなシェフに手荒な真似をするのもな……」)
 それに何だか皆楽しそうでもある。今はやめておこうと決める仁。
「俺はシェフが落ち着いて料理出来るように色々しとくかな」
「仁さんは応援なんですね! 素敵です」
「……お、おぉ。……応援、うん、それな。――で、ミラちゃんは、今、ソレ、何してんの」
 アミリアの勢いに若干呑み込まれつつ、センテンス多めで仁は問う。
 アミリアは満面の笑顔で「はいっ!」と元気に応えた。薪を組んでいる。
「ミラは、皆さんが暖を取れるよう、キャンプファイヤーを作ります! ……あっ、燃やしすぎないように火力はきちんと調整しますよ。先日のキャンプでちゃんと火加減の調整を、見て、学んだんですよ」
「そうね。調理用の火加減は大事だものね」
 アミリアの言葉に、エリシャは頷いた。
「こんなに寒いと手がかじかむし、暖がとれると嬉しいわ」
「舞の動きも寒さは大敵じゃからの。ありがたいぞ」
 エリシャと琴子に期待もされ、アミリアは張り切って再び元気で良いお返事。
 まずは一メートル四方ほどを使って薪を組んでいくアミリア。
 そんな猟兵たちの会話を、動きを、ながはつぶらな瞳でずっと追っていた。

 ぱちぱちと爆ぜる火の音。焔の熱や色が周囲の雪をあたたかなものへと染め変えていく。
 輝ける焔は、アミリアにとって楽しい思い出が詰まっているものだ。
 昔は貴重だった火。|暖炉《囲い》などの制限された中で使ってきた火。
 自身の手で薪をくべる今の火は、なんだか自由を象徴しているようにも思える。
「……うふふ、なんだかいつもより楽しい気持ちになってきました!」
 にこやかな気持ちで調理場の方を向けば、料理対決中のエリシャとナカジマの姿。
 クリスマスお重を作るナカジマ。
 エリシャが作るのは、先の宣言通り、食べやすくてお花見にももってこいの手まり寿司だ。
「サーモンに♪ きゅうりに♪ ホタテに……♪」
 歌うように呟いて手際よく作り上げていくエリシャ。またまたほろ酔いモード。出来上がっていく最中に改めて見てみれば、
「……あら、なんだかクリスマスカラーになったわね。酔いのせいかしら?」
 元々クリスマスの彩りは明るいものが揃えられているのだろう。
 不思議な共通点を見つけたエリシャは何だか嬉しそう。
 彩りよく仕上げた手まり寿司をお弁当に詰めていった。

 仲間の劇伴を行うユーベルコードが囃し方を。
 舞い方となる琴子が選んだのは岩戸神楽だ。
 ――真心に太祝詞ごと宣らざれば 天の岩戸は開けざらまし。
 闇に舞う桜が描かれた扇がひらり舞う。たなびくように垂れ踊るは魔除けの五色紐。
 闇に覆われた世界に光を取り戻す、舞の物語。
 ながが初めて見る神楽の話や、舞い方の動き示すものを分かりやすく教えていくのは仁だ。
 桜舞い散る神楽舞が、降る雪も桜花弁に変えていく。
「琴子さんが舞うと春をとりもどすお話にみえますねぇ!」
 無邪気なながの囀りに仁は微笑んだ。


『ふふふふ。料理がたっくさん出来たねぇ!』
 どれも美味しそう! とナカジマ。
 そこには自身の作った料理、そして猟兵たちが作った手まり寿司や桜餅、春色の揚げ物は天ぷらと、総菜スイーツ感覚の彩り。
「シェフはまだ作るんですか?」
『だねェ! プレイヤーさんたちはまだまだ来るからねぇ。おもてなしを死なきゃねぇ!』
「少し手を休めてもいいんじゃないか? ほら、舞い方の琴子ちゃんも次の神楽へ移るようだし、おっと次は和弓を使うみたいだぜ」
 アミリアと仁がナカジマに近寄って声を掛け始めた。なんというか絡み酒を装ってる感。
「神楽には刀を使うのもあるんだが――」
 と、説明しようとした仁。
 ――|うわっと手が滑った≪うっかり太刀に手をやって抜刀して妖剣解放≫。
 読みづらいのでnotルビで放たれるユーベルコード。
「あっこれが酔いか!? なるほどな!?」
 斬撃による衝撃波を喰らったナカジマは、見た目通りにか弱いタヌキシェフなので吹っ飛んだ。
「良かった! これでシェフさんも手を休めて、お花見パーティを楽しめますね!」
 仁の物理的な調理場離脱、アミリアの言葉に、ナカジマはハッとした。
 確かに。
『すごく働きすぎた気がする……』
 ナカジマは二人に促されるまま(?)用意されたレジャーシートに座って琴子の神楽を楽しむ。
(「桜の恩恵は万人に降り注ぐからのう」)
 みる者に高揚する気持ちを。琴子の舞いとともに桜の花弁は皆を春へと誘っていく。
 広げられたクリスマスお重や手まり寿司弁当。
 ナカジマの膝上にはながが体当たりしてきて、居座っている。
「それっ、極上のもーふもーふですよぉ!」
 |調理《戦い》を放棄してなが|と遊びたい《をもふりたい》という気持ちすら湧きおこってくる。
 もふりもふり。シェフの繊細な指は絶妙なマッサージ効果をもたらす。
「ふぁぁ……なんか眠くなってきましたあ……」
『ボクも。こんなにゆっくり、何もせずに過ごすのはいつぶりだろう……』
 ナカジマもこっくりこっくり。
 二人のもふもふな毛はたまにふるりと震える。ちょっと寒そう。
「お二人とも、お疲れなのですね。ミラ、第二のキャンプファイヤーを作りますから、暖まりながらおくつろぎくださいね!」
 うふふ、とアミリアは優しく笑って。
 ナカジマの近くで薪を組み始めた。
 ハッとしたエリシャがながを回収して、ナカジマと距離を取る――。


 ぱちぱち。
 ばちばち。
 焔の爆ぜる音が立つまでそう時間はかからない。
 燃えていくタヌキ……いや、シェフ・ナカジマの姿。
「……ここは山じゃねーですが、カチカチしたです???」
 うたたねから覚めたながの無邪気な発言に、アミリア以外の猟兵たちはそっと目を逸らすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 日常 『GGOをロケーション!』

POW   :    高台や山からの景色を見に行く

SPD   :    直ぐ近くの名所等を見に行く

WIZ   :    歴史等を感じられる場所を見に行く

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「春の期間限定イベントか~! どれにする?」
「初心者にも優しいジルエッタ地方のやつに行ってみようか」
 ゴッドゲームオンラインのプレイヤーたちの会話は、期間限定イベントやクエストで賑わっている。
 ジルエッタ・フィールドは一定期間桜の花びらが降り続ける華やかなフィールドとなっていた。
 普段ならばすり抜けていく花びらも、限定イベント『さくら集め』を選べば、触れることで出来、それはプレイヤーのアイテム欄へと収納される。
 この地で過ごすだけでも桜の花びらは集まっていくけれども、ギルドのクエストをこなしたり敵を倒したりしいくと報酬として纏まった数の花びらがゲットできる仕様だ。

「どれどれ……集めた花びらは、どんな風にアイテムと交換できるんだろう」
 イベント概要欄を見ていくプレイヤー。

・集めた花びらは街のNPC鍛冶職人に武器防具を作ってもらったり、遺跡に佇むNPCとアイテム交換してみよう!
・クリエイト系の技能があれば、自分で作ったり、手持ちのアイテムを改造することも出来るぞ!

 桜の花びらを使ったアイテムは破魔や浄化といった属性も付与されるみたいだ。
 アイテムは武器防具、補助アイテム、回復アイテムと様々なものがある。

 春を取り戻した猟兵たちがジルエッタ・フィールドの街へと入る。
 花びらが舞う街には石畳が敷かれ、中世ファンタジーの風景を楽しめそうだ。
 桜咲く街で散策したり、買い物をしたりできそうだ。
 街の外に赴いて、お花見をするのも良いだろう。
 先程、春のお弁当や桜餅、揚げた桜餅や、道明寺粉を蒸したものや衣にした天ぷら、手まり寿司、あとはシェフ・ナカジマが作ってくれたものと、お花見用食べ物も豊富。

 |統制機構《コントロール》とは違って、行く場所も、過ごし方も、オンラインゲームでは自由。
 すべてプレイヤー任せで、心赴くままに。
 ジルエッタ・フィールドの中心の何処かにある|風見鶏《ジルエット》が、自由の風を受けてくるくると回っている。
 風見鶏の眼下に広がるは、息吹の景色をパレットに散る、星の数よりも多い花びら。


 さて、どんな風に春のひとときを過ごそうか。
 春の景色に心躍らせて、取り戻した本当のイベントに猟兵たちも参加していく。


========
(マスターより。
 アイテム配布などはありませんが、アイテム作りはご自由にどうぞ!
 街の名物の食べ物やNPCとのやり取りはアドリブで行っていくので、「おまかせで!!!」で構いません。お任せ下さい。
 心赴くままに、自由にお過ごしください。)
========
エリシャ・パルティエル
ようやく春を取り戻せたわね!
お花見も楽しみたいけど…
その前に作りたいものがあるの
もうすぐお友達の誕生日だから桜モチーフのものを…
GGOっぽいもの…あ、マントなんかどうかしら?
たくさん集めた花びらで職人さんにオーダーできないかな?
桜モチーフの可愛いのがいいわ
あと風見鶏のブローチも
ふふ、素敵な贈り物が出来たわ♪

グラースも一緒にお弁当食べながらお花見しない?
手まり寿司と…シェフの料理も美味しそうだったものね
もう食べても大丈夫でしょ
街の名物も食べてみたいわ
やっぱり春はお花見よね
どこの世界に行っても桜ってほんと綺麗
大好きな花なの
グラースも桜好き?
他に好きな花とかあるかしら
のんびりとお花見を楽しむわ



「ようやく春を取り戻せたわね」
 雪景色やクリスマスツリーが消えたジルエッタ・フィールドに本当の春がやってくる。
 フィールド内に降る花弁――上向けた手のひらに落ちてきたそれを優しく包みこみながら、エリシャ・パルティエルは周囲を見回した。
(「お花見も楽しみたいけど……まずは!」)
 自身のアイテム一覧を確認すれば、クエストをバグらせたボスの撃破報酬がたんまり。
「ほくほくね!」
 集まった桜の花弁の数を見て、エリシャは街を目指すことにした。
 クリスマスツリーになっていた大きな桜の木を横切る煉瓦道を辿っていけば、そこにはフィールドいち大きな遺跡街。
「風見遺跡の街にようこそ!」
 出入口のアーチを潜り抜ければNPCらしい定番の台詞。彼の意識はしっかりとエリシャに向けられている。
「現在フィールド内では期間限定イベント『さくら集め』が開催中です! 迷ったことがあれば何でもお尋ねください」
「それはありがたいわ。ね、この辺りで買い物できる場所ってあるかしら? 桜の花弁、いっぱい集めたの」
 そう尋ねたエリシャにNPCが案内してくれたのは春の市だ。
 噴水を中心にした大きな広場にはいくつもの天幕があり、プレイヤーたちで賑わっている。
「こうやって見ていると……色々と迷ってしまうわね」
 天幕で売られている回復アイテムに注目してみる。
 特効性のあるものなのか、その回復アイテムは「1000トリリオン」で販売されている。けれども集めた桜花弁で交換すれば「250🌸」、さらには属性が付与される。
「お得なのね!」
 にっこりしたエリシャは市場を巡っていく。
 目当てのものは――友達への誕生日プレゼントだ。
(「何か、ゴッドゲームオンラインっぽいものがいいわよね……マテリアルフルーツ、こっちはギルドペン」)
「ゴーレムも買えちゃうの!?」
 色とりどりの小さな人形――ミニゴーレムが売られている。きっと戦闘では大きくなって頼もしい相棒となるのだろう。
「ここは防具のお店……あ、マントなんかどうかしら?」
 見本で飾られている白銀のマント。裾にはピンク色の桜たち――上部に向かって銀の花弁へと変化していくグラデーション。
「素敵な仕立てね」
「あっ、お褒め下さりありがとうございます!」
 三つ編みの可愛らしい女の子が天幕の奥から出てきて、エリシャにぺこりとお辞儀をした。
 装備はしっかり冒険者のもの――「今回はクリエイターとして参加してるんです!」と、プレイヤーの女の子が言った。
「クエストってそういう風に参加もできるのね。すごいわ!」
 クリエイト系技能が長けているプレイヤーなのだろう。女の子はえへへとはにかんでいる。
「自分でデザインして、それを気に入ってくれる人がいるっていうのが嬉しくて……お姉さんも何か仕立てていきますか?」
 ゴッドゲームオンラインだと叶えられる、夢。
 女の子を見ているとエリシャも当然応援したい気持ちが湧いてくる。
「それじゃ、頼んじゃおうかな? もうすぐお友達の誕生日なの」
 友達の姿や印象を伝えて、集まった花弁を渡せばオーダー開始だ。
「桜モチーフの可愛いので、あと、風見鶏のブローチもお願いできる?」
「お任せを! 十分後に取りに来ていただければ完成品を渡せます。それとも見ていきます?」
 デザインの力に特化したプレイヤーが作る装備品。完全なるオーダーメイドなので時間も必要なのだろう。
「見ててもいいの? 是非そうしたいわ」
 受け取った桜花弁の一部を、女の子は世界知識を以て布地と鉱石に変え、顕現させた。
 世界がオーロラに覆われるイベントのクエストで手に入れた布地の復元、風竜を倒した時に手に入れた鉱石の復元。
 この子はたくさんの冒険をこなし、自身の糧としてきたのだろう。
 魔法のように仕立てていく彼女の仕事ぶりを眺めるエリシャ。
 きっと素敵な贈り物が出来上がる――。

「本当にありがとう! 頑張ってね」
 贈り物となるアイテムを受け取って、女の子にお礼と応援と、そして別れを告げるエリシャ。
 広場を出て歩いていくと、出会うのはグラースだ。
「グラース!」
「あっ、エリシャさん。バグプロトコルとの戦い、お疲れさまでした」
「戦い……そうね、戦いだった、かも?」
 色んな意味で。
 皆、色んな意味で戦っていた気がする。
 折角だからお花見しない? というエリシャの誘いに、グラースは「ぜひ!」と答えた。

 プレイヤーたちの憩いとなる場があちこち設置されている、ゲームフィールド。
 一つのレジャーシートに座って広げるのはお花見用の料理たち。
「色々と話は聞いてはいましたが、エリシャさんはお料理が本当にお上手なのですね」
「あら、友達自慢でもしてもらえたのかしら? 嬉しいわね」
 某ケットシーのことを思い出す二人。茶飲み友達であるグラースはケットシーの友達自慢でも聞いているのだろう。
 輪切りのきゅうりを花弁に見立て花のように並べたり、薄切りにしたイカを輪っかのようにして組み、花型にしたり。
 サーモンやマグロの彩。飾り切りしたゆでたまご。
 エリシャお手製の可愛らしい手まり寿司たちの並びに、グラースはいただきますと告げて。
「今日の事を話したら、ヤキモチを焼かれてしまうような……」
「まあ」
 シェフ・ナカジマの春のお弁当も並べるエリシャ。
 グラースが共に並べるのはこの街の名物料理の一つ、チェバプチチ。
 ラムと豚のひき肉をスパイスで和えて、固めて串焼きにしたものだ。
「こってり系が欲しかったところなの!」
「ゲームといえば、こういう豪快なお肉のイメージなのです」
 美味しい物を食べては感想を言う二人。
 その間にも桜の花弁は舞っていて、周囲を可憐に彩っていく。
 ゲームの世界で、けれど本物と同等の桜景色。
 ふと眺める、ゆったりとした時間がひと時訪れた。
「やっぱり春はお花見よね。どこの世界に行っても、桜ってほんと綺麗」
 大好きな花なのとエリシャは微笑んだ。
 本物の桜も、プロジェクションマッピングの桜も、その世界での風情を感じる。
「グラースも桜は好き? 他に好きな花とかあるかしら」
「桜、好きですよ。他だと、アーモンドの花とかが好きですね」
「桜に似てるのよね。あたしも好き」
 ネモフィラ、乙女椿、芝桜。違った春のお花見を楽しむのも良いものだ。
 お弁当の後の甘味には、アイシングされた風見鶏の形のクッキーを。
 のんびりと、穏やかにお花見を楽しんでいく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アミリア・ウィスタリア
ごきげんよう、グラースさん!
神社でお見掛けしたことはあっても、しっかり話す機会はなかなかなくて……思い切って声をかけさせていただきました。

雪景色に咲く桜も繊細で美しかったですが、やはり桜はこの春を感じる景色が一番ぴったりです。
ゲームの世界とは思えないくらいの景色……写真に残せるかしら?

食べ物は軽食を頂いてきました。
桜はお守りに変えたいですね。
大きな武具に比べれば、ひとつあたりの必要枚数もそこまで多くないかしら。
やっぱり和を感じられる物が良いですね。
桜色に金色の糸で模様が入っているのが素敵です!
はいっ、グラースさん。今日の思い出におひとつどうぞ。
素敵なもの、綺麗なものは共有したいですからね!



 雪が降っていたフィールドは見事な桜景色――どこからともなく降ってくる桜の花びらを見て、アミリア・ウィスタリアは感嘆の息を零した。
「素敵……」
 フリルたっぷり、大きなリボンが魅力的な真白の日傘を遊ぶようにくるりくるりと回す。
 ピンクの花びらが日傘に触れればしばしの間、真白のそれを可憐に彩り――消えていった。
「あら、これだと効率的に集められそうな気がしますね」
 くすくすと笑ったアミリアはゆるり歩みながら時折傘をゆるく回して、舞う花びらを誘いこむ。
 フィールド上の街道を外れ心赴くまま、気になった方角へと歩くアミリア。彼女が目指す先には薄紅色。大きな枝垂れ桜の並木があった。
 下から見上げれば空をも覆う桜の絶景。
 滝のように咲く桜は圧巻だ。
 言葉失くして眺め続けるアミリア。ふと耳を澄ませば風に揺れる花枝の音色。
 その時、
「桜のシャワーみたいで凄いですね」
 密やかな声で話しかけられてゆっくりと振り返る。日傘に当たる枝垂れ桜は玉のれんのように少し重みを感じた。
「こんにちは、アミリアさん」
「ごきげんよう、グラースさん! お久し振り、でしょうか。波咲神社でお見掛けしたことはあっても、しっかり話す機会はなかなか巡ってこないままだったので……」
 グラースに向き合ってぱっと笑顔を浮かべたアミリアは、言葉後半、思案の表情となった。
 それもそうですね。とグラースは頷いた。
「では、今日からは、顔見知りから知人辺りに昇格でしょうか?」
「折角ですので茶飲み友達を目指しましょう」
 探るような、悪戯めかしたグラースの口振りにアミリアは受けて立つ。交わした微笑みは交渉成立のような雰囲気があった。
「もうしばらくこの桜並木を眺めていたいですね。どこか落ち着いてお花見できる場所があるといいのですが……」
「それなら、プレイヤーたちが休憩できるような床几台は見かけましたね」
 しばらく散策していたらしいグラースが方角を示した。
 枝垂れ桜の並木を抜ければ、少し離れた位置に毛氈が敷かれた床几台がある。枝垂れ桜との距離感も丁度いい。
 時折風吹かれ、しゃらしゃらと揺れる音色を聴きながら春の景色に魅入る二人。
 先程の……と、少し経つ頃に呟くようなアミリアの声。
「雪景色に咲く桜も繊細で美しかったですが、やはり桜はこの春を感じる景色が一番ぴったりですね」
 晴天に暖かな陽射し、草木の若葉は眩く、可憐に華やかにと花が咲く。
「ここは特に絶景ポイントみたいですよ」
 虚空にマップを開いたグラースが「ここです」と、現在地をアミリアに見せる。
「……グラースさん、随分と散策を楽しんでいるようですね?」
 空白の位置を埋めていってるのだろう。グラースのマップはそこそこ埋まっている。
「こちらの、横にある欄は何ですか? 写真のようですけど……」
「当たりです。スマートフォンで撮ってたらいつの間にか増えてて。他にも自動のカメラ機能があるようですよ」
 自然とベストショットを撮ってくれるのだという。グラースの説明を聞いてアミリアも目を輝かせた。
「写真に残していけるのは素敵ですね。ミラも、この絶景を撮りたいです!」
 と、すっかり気に入った枝垂れ桜の並木を撮って。
 まだまだ良い場所はあるだろうと、少しだけ散策を続けていくことにした。

 枝垂れ桜の並木エリアを離れた先には小さな集落。
「ようこそ! ここは風見遺跡の村。お嬢さん方、さくら集めのイベント中かい? うちの村でも良い物を作ってるよ!」
 気風のよいNPCのおばさんがアミリアたちを出迎えてくれた。
 村にある家の庭はよく手入れがされているようで、洋風の可愛らしい雰囲気であったり、和の渋い雰囲気であったり。まるで庭の展覧会だ。
 アミリアは素敵だと思った景観を撮り、華やかになっていく画像一覧を改めて眺めれば何やら妙なアイコンがあることに気付く。
「――あら? 撮った写真、投稿ができるみたいですね」
「え。あ、ほんとですね」
「ふふ、皆さんのベストショットが投稿されるのでしょうか? ミラもお気に入りの一枚を皆さんにシェアしてみましょう」
 プレイヤーやAIキャラが投稿し共有される春限定のコンテスト。アミリアが良く撮れた一枚を投稿すると、運営からの報酬なのか、『さくら集め』イベント用の桜花弁を入手する。
「花びら、いっぱい集まりました」
「色々と交換できそうですね。アミリアさんは何か気になるアイテムってありましたか?」
 どんなアイテムがあるかしら? と、店の方を見ながら問うグラースに、「そうですね……」と悩ましげに呟くアミリア。
 羽衣、扇子、時計、回復アイテム、魔法の書……桜のモチーフでどれも可愛らしいけれど、ピンとこない。
「桜のイベントですし、和を感じられるものが良いでしょうか」
 刀、槍、鎧――と武具から次に和雑貨を見て回る。
「ここは旅のアイテムを扱うお店みたいですね」
「お守りもあるんですね」
 どちらからともなく続く会話。
 一瞬で前に立ち寄った場所へ飛ぶアイテムや、敵と遭遇しやすくなったり、遭遇しなくなるアイテム。
 春イベント用のお守りは和柄のものが多く、華やかだ。
 御衣黄桜や鬱金桜の薄緑、寒緋桜の紅、晴天のような色のお守りに咲く桜守りもある。そのなかでアミリアの目を惹いたのは、
「あっ。グラースさん、こちら! 桜色のお守りが素敵です。見てください、金色の糸で模様が入っていますよ。春らしくて可愛らしいです」
 桜と同じく可憐に薄く染まった色だ。
 言って決断したアミリアの行動は早い。花弁を使ってアイテムに変換した彼女の手のひらには桜守り。
 同じものが二つある。
「はいっ、グラースさんにも! 今日の思い出におひとつどうぞ」
 桜守りを一つ、グラースに差し出すアミリア。
 えっ、と一瞬目を丸くしたグラースに、アミリアは微笑みを向ける。
「いいんですか?」
「ええ。素敵なもの、綺麗なものは共有したいですからね!」
「――ありがとうございます。手触りも良いですね」
 柔らかく優しい手触りだ。
「お守りはいくつあっても良いと思うのです」
 そっと言い添えるアミリア。
 それがその人の助力となるのであれば、身代わりとなるのであれば。
 アミリアの言葉にグラースは頷いた。
 では私も何か……、とグラースはお揃いで持てるものを交換した様子。
 アミリアへと差し出されたのは指の長さ程の、細い銀の筒だった。
「これは……?」
「ライトみたいですね。このゲームの世界ではあまり必要ないでしょうけれど」
 スイッチを押せば桜の形の光が地に映る。
 夜を明るく照らす花の姿だ。
「綺麗……グラースさん、ありがとうございます」
 『お守り』は――心身を守る手段はいくつあってもいい。
(「きっと同じことを思っているのでしょうね」)
 アミリアはそう感じた。
 今に在る二人だけれども、交わす微笑みは少し遠いところに。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ビスマス・テルマール
【なめろう茸】
この世界の此処も無事に春になり、イベントも正常になりましたね、折角ですし花びらも集まっていますから、花見の前に武器を改造しましょう

アメリさんのオルハリンクに浄化を付ければ毒に対して便利そうですし、出来るなら、わたしが『武器改造』したい所ですが、技能に乏しいので無理そうなら、プレイヤーさんにお願いしましょう

わたしからは【ルイ】さん(すいMS依頼参照)のブーメラン刃に破魔を付けようと思いますが

『ワシなら改造の余地はありそうじゃからのう、最近出番少ないし破魔でも付ければ違うかのう?』

改造が終わったらグラースさん誘って、作った『料理』も摘みつつ花見をしましょう

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎


アメリ・ハーベスティア
【なめろう茸】
ゴッドゲームオンラインにも春が戻ったのですね、酔いに悩まされずに済みますし、お花見に料理も

ふえ?折角なのでアメリの【オルハリンク】を花びらで改造なのですか?

あぁ、確かに浄化機能を付けれれば、毒のある魔獣も食材に出来たり、美味しいけど猛毒なベニテングダケの毒性だけ除去して……残った旨味で

それはとても良いのですが、ビスちゃんの技能で改造出来るのですか?無理なら、他のクリエイト嗜んだプレイヤーさんに依頼ですね?

ビスちゃんはルイちゃんにですか

改造が終わったら、グラースおねーさん誘って、労いながら花見なのです、オルハリンクもルイちゃんのブーメラン刃も光ってるです

※アドリブ絡み掛け合い大歓迎



「この世界の此処も無事に春になり、イベントも正常のものとなったようですね」
 クエスト内の寒さや雪景色は消え、暖かな春の陽射しに覆われるジルエッタ・フィールド。
 風吹けば青く若々しい草原の香りや桜の香りがビスマス・テルマールたちの元へと届く。
 上空から降ってくる桜の花びらを、思わずといったように手のひらで迎えてみた。
 ビスマスの澄んだ青空のような手のひらにピンクの花弁が一枚、二枚と重なって――ゲーム内のアイテムボックスにて数値化されていく。
「はっ。アメリ、もうふらふらしてません……!」
 アメリ・ハーベスティアは自身の手のひらで、ほっぺの温かさを計った。ぽかぽかしててもこれは春の陽気のぽかぽかだ。
「他のプレイヤーさんに『|終末機構群《エンドコンテンツギミック》』の危害がいかなくてよかったです」
 これでもう酔いに悩まされずに済みます、と、アメリは安堵の笑みを浮かべた。
「ビスちゃん、これからどうしましよう? いろんな場所でお花見ができるみたいですー」
 ほら、とアメリが示した方向に、早速『さくら集め』を楽しむプレイヤーたちの姿がある。桜の木の下、花咲く草原、枝垂桜の並木道。集合場所を掲示する彼らの声に、綺麗な景観がたくさんあることを知る。
「そうですねぇ……クリスマス台無し男さんたちやナカジマさんを倒した、花びらの報酬もいっぱいありますので――花見の前に武器を改造しましょう」
 折角ですし。とビスマスが言えば、アメリは「ふえ? 折角なので?」ときょとんした表情。
「ビスちゃん、改造ってどうやるのでしょう?」
「ふふふ。アメリさん、ここはまず、お勉強に行きますよ! 社会見学です!」

「風見遺跡の街へようこそ!」
 出入り口に佇むNPCに明るく迎えられたビスマスとアメリは、街の石畳上を軽快に歩く。
 広場には市場、路上には露店、アイテムを売ったり加工を請け負うNPCやプレイヤーたちがそこにはいた。
 過去の冒険で手に入れたアイテムを複製するプレイヤーは、強度やレア度は落ちるが、新人プレイヤーに安くで提供していたりするようだ。
 露店を構えているこの辺りのプレイヤーたちは、新人に対して優しい人たちが集まっている様子。
「初めまして。少しお尋ねしてもいいでしょうか? わたしたち、新人のプレイヤーなのですが、武器防具の改造ってどうやるんでしょうか」
 情報収集も兼ねて、思い切って尋ねてみるビスマス。
「あっ新人さん? ようこそ、ゴッドゲームオンラインに!」
「今回のイベントって新人さんのおすすめだよね~」
 どういう改造をしたいの?
 ゲーム内のクリエイトって意外と経験も活きてくるんだよ。
「……経験。今まで学習したことや、知識も活かせそうですね」
 色んな助言を受けては、ビスマスはふむふむと頷く。
 プレイヤーは自身のステータス画面を開いてみせて、丁寧に説明をしていった。
「アイテムのステータスに加算したい属性を増やしていけば、きっと色んなひらめきが起こるんじゃないかな?」
「ありがとうございます。やってみます!」
 ちょっとしたやり取りだが何となく雰囲気は分かった。
 「楽しいゲームライフを送ってね!」と見送られて、街の開いた場所へと向かいがてらアメリはビスマスに尋ねる。
「ビスちゃんは何を改造するのです?」
「わたしはルイさんのブーメラン刃に、破魔属性を付けようと思っています。あとは、アメリさんのオルハリンクに浄化を付与してみるのはどうでしょう?」
「浄化、ですか?」
「はい。毒に対して便利……利便性も増すと思いませんか?」
 ビスマスの言葉を受け、はっ、とした表情になるアメリ。
 オリハリンクは、狩猟や解体、調理と全てに使用可の、頑丈で錆びぬ調理器具型詠唱兵器だ。もちろん戦闘向けでもある。
 あぁ、と柔らかな声を零し納得するアメリ。
「確かに浄化機能を付けれれば、毒のある魔獣も食材に出来たり、美味しいけど猛毒なベニテングダケの毒性だけ除去して……残った旨味で――すごく、いいです……!!!」
 金の瞳をキラキラッとさせてアメリは喜ぶ。毒持ち食材を美味しく食べられる……!
「決まりですね♪ それでは、ルイさんから――」
 と、自身のアイテム一覧からルイを呼び出すビスマス。ルイは以前、帝竜戦役の時に出会った魔導兵器だ。
 知能持っていて白い針鼠なトゲトゲブーメランの形をしている。
 ビスマスの説明を聞いていたルイは既に、心得た的な雰囲気を醸し出している。
『ワシなら改造の余地はありそうじゃからのう。最近は……出番も少ないし、破魔でも付ければ出番どころも違ってくるかのう?』
「ルイさん……ちくっとしましたね……??」
 出番は大事ですねハイ。と、シリアスかつ神妙にビスマスは頷いた。
「それでは――始めますね」
 ステータス一覧を虚空に広げてルイに触れたビスマスは、自身の持つデータ化している桜花弁をルイに合わせるようにスライドさせた。
 花びら色の光が刹那に輝き、破魔の力がルイに宿る。
『また飛ぶ日を楽しみにしておるぞい!』
 やる気満々なルイの姿が何だか可愛い。よろしくお願いしますね、とビスマスは笑顔で応えた。
「要領を得ましたよ♪」
 そう言ったビスマスはスムーズに、アメリから渡された桜の花弁を使って、オルハリンクへ浄化の機能を付与する。
「キラキラが増した気がします……!」
 刃に映りこむ陽の輝き。
 それは陽射しを透いた桜の美しい色のようにも見えて。
 ビスちゃん、ありがとうございます。
 そう言って、アメリはニコッと笑ったのだった。

「ビスマスさん、アメリさん、お疲れさまでした!」
「グラースおねーさんも、案内ありがとうございます!」
 街で見かけたグラースを誘い、早速お花見を始める三人。
 バグプロトコルの撃破の祝杯に掲げたのはピンクレモネードだ。
「ビスマスさんは夏ぶりでしょうか? 銀誓館での水着コンテストでお見掛けしていたので」
「去年も盛況でしたからゆっくりお話できませんでしたが、今こうやって一緒にお花見が出来て嬉しいです」
 そんな会話をしながら食べるものは、道明寺粉を使った料理。
「色付けも春らしくっていいですね♪」
 二人が作った料理を摘まみながら、グラースはにっこり。
 道明寺蒸しと天ぷら。猟兵たちの作った桜餅や手まり寿司。シェフのお弁当。
「グラースおねーさん、見てください。アメリたちの武器、ばっちり加工したのですよ!」
 そう言ってアメリがオルハリンクを見て見てする。
 ビスマスにくっついてたルイも、お披露目飛行だ。ブーメランなので見事なターンを空に描いて戻ってくる。
「わ。良い感じに改造されてます! 次からの冒険が楽しみですね」
 本当のお披露目はきっと明日以降の冒険から、となるだろう。
 輝くオルハリンクの刃にひらり桜花弁が乗る。
 見上げれば、空の青を背景に可憐でありながら華やかな満開の桜。
「ルイちゃん、嬉しそうに飛んでますね」
 アメリの声を聞きながら、ビスマスはルイの軌道を眺める。ルイは舞う花弁と遊んでいるかのよう――。

 バグプロトコルに乗っ取られたジルエッタ・フィールドの春のクエストは、無事、穏やかな時を刻み始め、そしてゲームを楽しむたくさんの人々のかけがえのない思い出となっていくだろう。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ガーネット・グレイローズ
【かんにき】
雪が消えていく…やっとフィールドが元に戻ったようだね。
これで本来の季節イベントを楽しめそうだ。
これはすごい、桜の花が雨のように降り注いでくるよ。
【グラビティマスター】を使って、花弁を集めながら優雅に空中遊泳を楽しもう。
メカたまこEXを《宝探し》モードに切り替え。
こうすればメカたまこが地面をつついて、桜の花弁を回収してくれるだろう。

私のアイテムは桜の花が彫られた懐中時計。
まつりんのブーツは、空が飛べそうなデザインだね。
アキはサトのためのネイルか。優しいね。
杏の置物は…もしかしてたまこかい?

お花見には、お重のお弁当を持っていこう!
私は街でパンを買ってきたんだけど、食べるかい?


木元・祭莉
【かんにき】の春クエ、はっじまるよー♪

ギルドとかいうトコに行って、クエスト探そうー♪
えっと、街のシンボルを探せ?
ヨシ。なんか楽しそうだし、これ受けます!

クエスト開始、街を練り歩こう。
聞き込みー。
へえ、ジルエッタって、風見鶏って意味だったんだ?
ウチにもいるよ、かざみどり!
何かお土産にしよっかな♪

クエスト報告したら、花弁がどっさり増えてた。
わーい、みんなはどこにいるかな?

探しに行った遺跡で翼ブーツ(桜)をゲット。
お店のベルトポーチとバンダナもいいなあ。
え、物々交換? 藁しべイベント?
よし、受注!(ぽち)

イベントコンプリート、合流。
桜絨毯をオートで拡げて、お花見開始。
ハイ、桜酒。
おいらたちは桜水ね!


木元・杏
【かんにき】

…雪、少し名残惜しい感
でもバグだから仕方無し
うん、今は春!ふふ、春イベ楽しもう~
桜集めを受注ポチッ
そしたら一面に広がる桜吹雪

うわぁ、うわぁ…!
花びらを集めつつ空のガーネットの後を走って追いかけよう
そのまま街のざわめきにも目を配せ、そそっとお目当てのアイテム探し

アキはサトへお土産
サトが付けた姿、アキは見れないのかな?わたしがサトに会えたらお写真撮るのに…(未だ会ったことがない)

わたしはこれ
シンプルな白い陶器は大きな花びらに座るニワトリ型
んふ、魔除け効果あり。まつりんの部屋に飾ろう
まつりんはどんなのかな?(ちらちら)
ん、も一つゲットしよう
こちらはプレゼント交換用のアイテム
ふふ、「たぬきのぽんぽこ桜マシーン」
このたぬがお腹をポンと叩くと桜の花弁が出る
効果は……楽しくなる!
誰に当たるかな…(そわそわ)

ほくほく交換ゲット品と陶器を手に、念願のお花見タイム!
背負ってたしぇふのお弁当を広げ皆で頂こう

ふと桜吹雪を見上げると、雪も一欠片発見
そっと掌に掬ってみよう
ふふ、また冬に会おうね


駒鳥・了
【かんにき】
同行できそなイベントに混じってさくっとこなして遺跡へGO!
祭莉くんのブーツも可愛くていいね
オレちゃんはそーだなー
バフかデバフの効果をランダムで付けられる香水とかない?
さくらのチャームもいいな
何とかタグ的にケータイで追跡できると便利かも
交換用にしよっと

街ではさくら色のネイルをゲット
お出かけ損ねてるサトちゃんへのお土産!
鴬餅と抹茶カヌレもちょーだい
って杏ちゃんソレ、祭莉くんが悪夢に魘されそじゃない?
グレちゃんはどんなパン買ったのー?

そしてお待ちかねのお弁当タイム!
アイテム一覧オープン!とかゆえばイイ?
シェフご自慢のおべんと、倒した後だしダイジョブだよね?
出した途端に消えないといいなー




「……雪が消えていく――やっとフィールドが元の春へと戻ったようだね」
 クエストを乗っ取っていたバグプロトコルを倒すと、ジルエッタ・フィールドには春の訪れ。
 雪は消え、雪解け水で潤ったかのようにフィールド内の草木は青々として眩いばかり。
 一気に彩りが豊かになった景色を見て、ガーネット・グレイローズは「これで本来の季節イベントを楽しめそうだ」と言葉を続けた。
「【かんにき】の春クエ、はっじまるよー♪」
 どこいこ? あっち? そっち!?
 と、木元・祭莉が飛び跳ねて「ふふ、春イベ楽しもう~」と行李を背負っている木元・杏はにこにことしている。
「そして春クエを受ける……!」
「そうだね。ボスを撃破? したから、もう一度受けることにしよう」
 自身のステータス、この一帯で受注可能クエスト一覧を開いた杏に倣うガーネット。
「あれ? なんか似た名前で『もっとすごい』クエストがあるみたいだよ~」
 駒鳥・了ことアキも改めてクエスト名『ボス撃破プレイヤーさん限定・もっとすごいさくら集め!』をポチッとすれば、一面に広がる桜吹雪。
 クエストの始まりは刹那に視界が覆われるほどで、すべすべとした花弁が杏の頬に触れる。
「うわぁ、うわぁ……! 桜、いっぱい」
 上空から降ってくる花弁は枝垂桜の如くだ。桜のシャワーに頬を染めて喜ぶ杏。
「これはすごい、桜の花が雨のように降り注いでくるね。ボスを撃破して、一旦クリアとなったプレイヤーのためのまとまった花弁配布なのかな?」
「たぶんグレちゃんの予想通りっぽいよね~。ほら、ボス倒したぶんの花弁は直ぐにアイテムに変換しちゃってるだろうし。こっからはのんびり集めていけそう」
 ガーネットとアキの会話。
 なるほど? と分かってそうで分かってないような、首を傾げた祭莉のふわふわ髪にも花弁がいっぱい付いている。
「ねねね。ギルドとかいうトコに行って、クエスト探したいー!」
「なら、近くの『風見遺跡の街』って場所に行ってみよっかー」
 祭莉のやりたいことを聞き、マップを開いたアキが方向を指し示した。
「お~! じゃあ街までかけっこ! 街でやりたいこと解散! お花見集合! ――で、いい?」
「おっけ」
「花弁集めも忘れずにするんだよ。メカたまこEXは《宝探し》モードに切り替えておこうかな」
「マジですごい自由じゃん!」
 祭莉の号令と問いかけへの応えは、杏、ガーネットと続き、何かを代弁するかのように。アキがけらけらと笑った。
「ま、オープンフィールドなゲームならではだよね。みんな、旅してこっ。またあとでね~」
『コッ、コッ』
 《宝探し》モードとなったメカたまこEXは、皆の後を追いつつのんびり行くようだ。


 封神武侠界で修行をした成果――ガーネットは自身の体に働く重力を意識の制御下に置き、ふわり空へと飛び立った。
 風吹く箇所があれば乗ることができるし、雲を蹴って飛ぶこともできる。
「どこまでも続く花弁の舞――あの鮮やかな桜の並木は枝垂桜かな」
 鮮やかな赤い髪をなびかせて優雅に空中遊泳をしながら街を目指すガーネット。空を飛べば目的地までひとっ飛びだろうが、そのぶんできた時間の余裕を楽しむ。
 こうして空高い場所から眺めるジルエッタ・フィールド。散見する遺跡は地上絵のようにも見えた。
 そんなガーネットを追いかけてゆくのは杏だ。
 駆ければ、起きた微かな風で絨毯のようになっていた桜花弁が舞う。
 うさみみメイド・うさみん☆がふわリボンをなびかせて桜集めのお手伝い。
 街へと着けば、出入口にいたNPCがかんにきの面々にご挨拶。
「ようこそ風見遺跡の街へ! ただいま春イベ開催中ですよ! あっ、もう参加されてるんですね」
 楽しんでくださいね!
 明るいNPCの声に「ん、楽しむ」とニコニコしながら応える杏。
 石畳を軽快に歩み、風見遺跡の街広場へ。
 市場が開かれているのか、噴水を中心にした大きな広場にはいくつもの天幕があり、物を売ったり作ったりしているNPCやプレイヤーたちで賑わっている。
「花弁、いっぱい集まってる。何を買おう……」
 杏が心惹かれるのは雑貨屋だ。
 桜と風見鶏モチーフのアクセサリー、魔法の絵本、良い匂いがするお化粧品――美味しそうな焼きたてパンの匂いもする――無意識にそちらを見れば、ガーネットの姿があった。
(「おいしいパンはガーネットにおまかせ……!」)
「むふん♪ ――む?」
 わくわくと弾む気持ちのままに市を見て回ると、一際目立つシンプルな白い陶器の群。
「焼き物のお店? かわいい」
 小さな動物たち、花。真白の美しい陶器が陳列していた。
 そして大きな花びらに座るニワトリ型の陶器を見つけて、杏は目を輝かせた。
「お店のお姉さん、これ、ください」
 即決めである。
「はーい、850🌸です」
 手に持てば自動的にアイテム鑑定が入り、陶器には魔除け効果があることが分かった。
「んふ、まつりんの部屋に飾ろう」
 …………恐らく祭莉にとっての『|「魔」《たまこ》除け』とはならないだろうが、嗚呼、兄想う妹の心は純粋だった。

 一方その頃、祭莉。
 プレイヤーたちが集まるギルドでクエストを受けて、さっそくクリアを目指して街を散策中であった。
『――【街のシンボルを探してみよう】』
 ジルエッタフィールドのことを知り、一帯を探索する初心者向けの依頼だ。
「へーほー。街のシンボルってなんだろ? おいちゃん、知ってる??」
 ギルドを出て、大工仕事をしていたおじさんに尋ねる祭莉。
「街のシンボルといやぁ風見鶏さね! ジルエッタフィールド……ジルエットの名は風見鶏から来ているのさ!」
「へえ~、ジルエッタって、風見鶏って意味だったんだ? ウチにもいるよ、かざみどり! カラフルなやつ!」
 続いて自動的にクエストが開始される。
『――【街のシンボルを探してみよう~行方不明編~風見鶏捜索依頼】
 ――ランダム依頼です。風見遺跡の街のシンボルを探して来てください。時々飛んでいっちゃうの!』
「えっ。かざみどり飛んでっちゃうの!? ウチのと違う……」
 すごいね! と祭莉。
 となれば、ここからの聞き込みは飛んでいった方角の情報収集である。
 シティアドベンチャーを祭莉は順調にこなしていく。

「アキ」
「あっ、杏ちゃん、さっきぶりー♪」
 露店巡りをしていたアキの元へ、とととっと杏が駆け寄ってくる。出迎えにアキはひらりと軽く手を振った。
「何を見てるの?」
「ん。ネイルだよー。お出かけ損ねてるサトちゃんへのお土産!」
 お化粧品の良い香りがする店先でどれがいいかなぁとアキは悩み選んでいた。御衣黄桜や鬱金桜のような薄緑色、寒緋桜の紅色、桜の形のラメが入る空色のネイルも可愛い。
「でもやっぱりコレかな。最初にピンときたんだよね」
 と、アキが選んだのはさくら色のネイルだ。
 杏はネイルとアキとを交互に見た。
「サトが付けた姿、アキは見れないのかな? ……わたしがサトに会えたらお写真撮るのに……」
「優しいね、杏ちゃん。ダイジョーブだよ、サトちゃんがネイルした姿、オレちゃんもちゃんと見ることができるし――」
 姿見、自撮り、見る方法は考えればいくつか思いつく。
「アキが見たことのない、新鮮なサトのお写真をいつか撮るね」
 ふわっとした目標を掲げる杏にアキは微笑んだ。
 ……で、だ。
 アキは杏が抱える陶器をちろりと見た。
「って杏ちゃんソレ、祭莉くんが悪夢に魘されそじゃない?」
「大丈夫。魔除けの効果、アリ……! 悪夢もバイバイ」
「いやいや、バイバイというか……。……『|「魔」《たまこ》除け』になるかなぁ……???」
 とやり取りしながら鴬餅と抹茶カヌレも見つけたアキはお買い上げ。
 みんな、喜んでくれるかなぁとそう想いながら――。

 心地よい風が吹く街――フィールドだった。
 空を流れる雲は様々な形をとり、一瞬とて同じ時間がないことを表現している。
「ふむ。たまこ(メカのほう)は頑張っているようだね」
 街の観光名所のひとつ、時計台の上部に降り立ったガーネットは、集めていた桜花弁がすごく増えていることに気付いた。
 ここ掘れワンワンならぬ、ここ掘るメカたまこEXだ。
 一方その頃なメカたまこEXは現在、街の隅で吹き溜まり場を見つけ、そこに出来ていた桜花弁の巣でしばしの休憩。
『コッ、コッ……』

「名を言ってはいけない……の声が聞こえる……」
 聴覚の良い祭莉はしっかりとメカたまこEXの声を拾っていたりするなか。
 ――どうやら街のシンボル、風見鶏は遺跡の方に向かって飛んでいったらしいことを掴んでいた。
 同時に並行するは【藁しべイベント】。情報収集兼ねて、NPCやプレイヤーと話す先々で物々交換をし【称号・わらしべ】を狙うイベントだ。
「祭莉くん、さっきから色々ゲットしてない? すごいね!」
 色んな種類へと変わっていくせいか、フィールド内アイテムコンプリートも容易そう。
「アキちゃん! クエスト受けて、花弁もたくさんたまってるよー♪」
「わあ、お金持ち……この場合は桜持ち??」
「おいら桜餅がいいなぁ!」
 と、ややすれ違った会話をやりつつ、これから祭莉が遺跡に向かうということを聞いたアキは同行することを決めた。
「でも遠そー!」
「わらしべでもらった、遺跡と街と、びょんと飛べるアイテムあるよー」
 わらしべで手に入れた、テレポートできる翼形のアイテムを使う祭莉。
 到着した遺跡は大きな桜の木の根が張る場所。
「おや、プレイヤーさんがここまで来たのね。いらっしゃい。今は春の品が揃っているの」
 遺跡前に座っているNPCのエルフが祭莉とアキに話しかけてくる。エルフの前にあるシートの上にはアイテムが並んでいる。
「オススメの一つは、これ。遺跡で生まれるブーツ。時期によって違うんだよ」
「ほーほー。どれどれ?」
 キリリとした表情で祭莉が手に取った翼ブーツ【桜】。
「へえ、ブーツ、可愛くていいね。祭莉くん、どう?」
「うん! ブーツゲットするよ~! ベルトポーチとバンダナもいいなぁ……」
「こっちは里のエルフの手作り。桜の模様が入ってて素敵でしょ。
 そちらのお嬢さんは何か気になる物。ある?」
 そう言われたアキが品々を注視すれば、ぱぱぱっとアイテムウィンドウが開かれていった。
「オレちゃんは……そーだなー……あ、このバフかデバフの効果をランダムで付けられる香水いいかも! あとは……こっち! さくらのチャームもいい感じ」
 さくらのチャームには【追跡】機能らしきものが付いている。
「何とかタグみたいにケータイで追跡できるの、いいね!」
 遺跡までやってきたプレイヤーたちのための、ちょっとレアなアイテムたち――自動ゲットとなったアグレッシブな動く風見鶏を含む――を手に入れた二人はほくほくとした気持ちで帰路に着いた。


「皆、アイテムはゲットできたかい?」
 再び風見遺跡の街。お花見にぴったりな、景色の良い場所に祭莉の桜絨毯を広げて座ったくつろぎのかんにきたち。
 ガーネットの呼びかけに「「「できたー!」」」という元気な声が返ってくる。
「それではお楽しみのアイテム交換会をしていこう」
「でもどーやって交換決めてく? くじ作る?」
 くじできるアプリもあるけど、と言うアキに、ガーネットはにっこりして「大丈夫」と告げた。
「実は散策中、枝垂桜みくじというのを見つけてね、お店の人に作り方を教えてもらったんだ」
 一本の糸に、テトラポット型折り紙が四つ付いている。
「さあ、皆。自身のアイテム欄から交換用アイテムを、この『テトラポット型おみくじ』に向けて指先で『スライド』させてみよう」
「めためたゲーム的……!!」
 途中途中、メタい発言になりがちなゴッドゲームオンライン世界にアキが笑う。
 各自が自身のステータスシート内にある交換用アイテムをスライドさせれば、枝垂桜みくじの中にアイテムが収納された。それをガーネットが『シャッフル』する。
 それを各自が引いていった。
 結果は――。
「あっ! さっきの翼ブーツ【桜】! えっ、祭莉くんいいの? 結構気に入ってたよね……!」
「みんななら楽しく作ってくれるからダイジョーブ! おいらは……あれっ、アキちゃんのチャームだ~♪」
 追跡機能付き。
「祭莉くん、たまこにケータイ持たせないようにね」
 ひそこそと声掛けるアキ。一応、持てるとは思わないけど……追跡されちゃう……そんな心配。
 そこでちらっとガーネット、否、メカたまこEXを見る祭莉とアキ。
「t……m……こ、はメカじゃないからダイジョーブ。たぶん、きっと」
 仮にだが、メカたまこEXにタグ登録が成された場合、恐らくはたまことメカたまこEXの会話(鳴き声)で祭莉の居場所は割れることだろう。注意が必要だ。
「アキちゃん、ありがとー。たまこに繋がらない、活用法を生み出すね!」
「祭莉くんもアリガト! 翼ブーツ、可愛いなぁって思ってたんだよねぇ」
 一方。
「このたぬきは……見覚えが……!」
 ハッとしてシリアスな表情になっているガーネット。視界に映るはさっきまで見ていたたぬ。
 ガーネットが手にしたのは、シェフ・ナカジマ……ではないたぬきだった。
「ふふ、こちらは『たぬきのぽんぽこ桜マシーン』! このたぬがお腹をポンと叩くと桜の花弁が出る」
 ポン! と杏が言えば、ぽん! とたぬきマシンがお腹を叩いた。
 ふわっと漂う桜の花弁。
「効果は……楽しくなる!」
 杏の力説にガーネットは微笑んだ。
「確かに。軽快な音と可憐な花弁の舞で楽しくなるね。癒されそうだ。
 となると、私の選んだアイテムは杏のところにあるのかな?」
「ん。綺麗な懐中時計。ガーネット、ありがとう」
 銀の懐中時計には桜の花が彫られていて華やかだ。心地よい秒針の音が聴こえる。
 春のような陽射しの輝きが、この懐中時計には籠められていた。
 対のような交換会となったがこれも運。枝垂桜みくじのお導き。

「そんじゃお花見開始だね! アイテム一覧オープン!」
 とアキが言えば、開示された一覧から、先程シェフ・ナカジマに送られたお弁当たちが並べられていく。
 杏が背負っていた行李からもシェフのお弁当。
「私からはお重のお弁当だよ」
 と、ガーネットが重箱弁当を広げていく。
 桜絨毯の上には、冬の食材や春の食材をふんだんに使った美味しそうな料理たち。
「そして街でパンを買ってきたんだけど、食べるかい?」
「食べる食べる! グレちゃん、どんなパン買ってきたの?」
 抹茶の蒸しパン、黒糖蒸しパン、うぐいすパン、春色・色とりどりでボリューミーなサンドイッチ。
 ルビーチョコレートが入ったピンク色の可愛い、さくらちぎりパン。
「桜餅が入ったパンもあるよ」
「つまり、食感がもちもちなあんぱん……!」
 目についた色々なパンも並んでいく。
「オトナは桜酒? おいらたちは桜水ね!」
 と、飲み物を用意していく祭莉。

 バグプロトコルの戦い(?)で様々な場面を撮り続けていたメカたまこEXが虚空に画像を開いていく。
 そこにはシェフ・ナカジマと、楽しそうな四人の姿。
 さらには宝探ししているメカたまこEX視線の画像もあって、視点新たなデジタルの春景色を見ることが出来た。

 ちぎりパンをちぎる杏の瞳は輝いている。
「綺麗なピンク……」
 すっかり春一色だ。
 ――本当は、少し名残惜しいと思った、雪景色。
 移り変わりゆく季節。一緒に変化していく、季節の食べ物。
 桜吹雪に誘われるように、ふと、見上げれば……ひとかけらの雪。
 は、とした杏は思わずといったように手を差し伸べた。
「シェフのところから着いてきた……?」
(「行李を開いた時かな? アイテムがオープンされた時かな?」)
 ひと時の名残が、今は杏の手のひらに在る。
 それは直ぐに杏の体温に馴染み、そして溶けてしまったけれども。
「ふふ、また冬に会おうね」
 そう呟いて。
 【かんにき】の皆とともに、お花見を楽しむのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

蒼・霓虹
【蛟】
揚げ桜餅と聞いて、味噌餡作って
この案件に関わりましたが、ゴッドゲームオンラインは、いゆわるゲームの世界なのですよね?

春のイベントに武器改造、保険アイテム勝って限界まで改造なんて、良くありそうな光景ですけれど、ここでも改造要素はあるのですよね?

桜の花びらを使って……メカニックの血が騒ぐので、わたしからは《虹色金平糖クラスター砲》に破魔を

吉備ちゃんは《黒蜜かけ吉備団子アイスバー》に浄化をですか?

ふふふ、食べ物が混ざって(駄菓子兵器的な意味で)いますが【メカニック&料理&武器改造】で……腕がなりますよ

改造後はグラースさん呼んで
改造した駄菓子兵器の試食と花見を

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]


小雉子・吉備
【蛟】
吉備はオンラインゲームの存在を鳥の頭した人が主人公のアニメで知ったけど、霓虹ちゃんゲーマーなんだっけ?

もしかして、保険アイテムが無くなっても、成功率僅かにちょーせんして乙るタイプの?まぁ……今回そー言うのが無くて良かったかも

あっ、霓虹ちゃんが駄菓子兵器を選ぶんだったら、折角だしキビは《黒蜜かけ吉備団子アイスバー》に浄化をかな?味的にも桜の風味があっても違和感なさそーだし

霓虹ちゃんのメカニックの腕は信頼してるけど、駄菓子兵器的な意味で食べ物混じってるけど、いける?

プレイヤーちゃん呼ぶ?

改造後は、駄菓子兵器嵩じゃなく
料理対決での品々も、グラースちゃん呼んでかな?

[アドリブ絡み掛け合い大歓迎]



「風見遺跡の街へようこそ! 今は春のイベントが開催されているよ!」
「ぜひご参加を~!」
 街の出入り口にいたNPCが宣伝も兼ねた挨拶を、新たにやってきた蒼・霓虹たちにしている。
 彼らの言葉を聞いて、あ、と霓虹は何となく我に返ったような心地になった。
「揚げ桜餅と聞いて、味噌餡を作ってこの案件に関わりましたが、そういえばこの世界……ゴッドゲームオンラインは、いゆわるゲームの世界なのですよね?」
 猟兵としてここに訪れると、まるで本物の……どこかの世界のような錯覚。
 けれども統制機構に住むプレイヤーたちにとってはゲームの世界だ。
「吉備はオンラインゲームの存在を、鳥の頭した人が主人公のアニメで知ったけど、霓虹ちゃんは元々ゲーマーなんだっけ?」
 小雉子・吉備のにこやかな声に霓虹は柔らかく頷いた。
「クエストを乗っ取っていたシェフも撃破できましたし、わたしたちが獲得した花弁の報酬も『たんまり』ですね」
「花弁、何に使おっかー」
「そうですねぇ……レア装備が入っているルートボックスなども気になりますが、ここは手持ちの武器の強化でしょうか。お気に入りですから。――メカニックの血が騒ぎます♪」
「どの武器を改造するのかな? ――あっ、そうだ、霓虹ちゃん、ひとまず場所を確保しようよ。ほら、街の広場の向こう。桜の並木道があるよ」
 吉備が指差した先には、桜の並木道。可憐な花を楽しめる道の横には休めるベンチや、街の風景として置かれているレジャーシートなどがある。
 ぽかぽかな陽射し、時折吹く風は程よい心地で、くるくるひらりひらりと桜の花弁を遊ばせた。
「絶景かな、絶景かな~♪」
 心弾ませた吉備が歌うように言った。
 はい♪ と、霓虹も吉備と共ににこやかに満開の桜を見上げる。
 空の青が彩られているような、眩い桜花。樹齢も様々のようで鞠のように咲いていたり、若い桜木は元気に枝全体を彩っていたり。
「はっ、どの武器を改造するかというお話ですが、わたしは《虹色金平糖クラスター砲》を改造しようと思っています。――ふふ、春のイベントに武器改造、保険アイテム勝って限界まで改造なんて、良くありそうな光景ですよね」
「えーと……霓虹ちゃん? それはもしかして、保険アイテムが無くなっても、成功率僅かにちょーせんして乙るタイプの?」
 吉備の言葉に、霓虹はにこにこ笑顔を向けてくるだけ。それだけで答えは察せるようなものである。
「まぁ……今回そー言うのが無くて良かったかも」
 思わず苦笑してしまう吉備である。
「あっ、霓虹ちゃんが駄菓子兵器を選ぶんだったら、折角だしキビは《黒蜜かけ吉備団子アイスバー》にしようかなー? 桜に関する属性は何を付けよう……浄化を、かな? 味的にも桜の風味があっても違和感なさそーだし」
 黒蜜かけ吉備団子アイスバーを手にする吉備。
「わたしは破魔の属性にしましょうか。ええと、改造費用……改造花弁は『1000🌸』ほど。うん、足りますね」
 虹色金平糖がポップに可愛く弾けてしまうように可愛らしくいきましょう、と霓虹は言った。
 自身のステータスシートを虚空に広げ、武器の欄を。
 改造を選べば、春のイベント中にだけ表示される🌸マークがあった。
「ふふふ、食べ物が混ざっていますが、ここは【メカニック】【料理】【武器改造】でいきますよ。腕がなりますね」
 自身から使う技能を選び、
 【武器を強化しますか?】
 の選択肢に、はい、と答えた。
「霓虹ちゃんのメカニックの腕は信頼してるし、駄菓子兵器的な意味で食べ物混じってるけど、いけそう?」
「大丈夫です! ほら、できましたっ」
 《虹色金平糖クラスター砲【🌸破魔】》の仕上がりに霓虹はにこにこにーっこり。
「わ、すごい! 霓虹ちゃん、吉備のもお願い!」
「お任せを!」
 吉備が集めた花弁を渡し、早速改造する霓虹。
 《黒蜜かけ吉備団子アイスバー【🌸浄化】》の仕上がり。キンと冷え冴え渡った感じがより増している。
「えへへ、ありがとー霓虹ちゃん!」
「どういたしまして。無事、花弁を使った武器の強化も終わりましたし、あとはお花見と洒落混みましょうか♪」

 バグプロトコルとの戦い、お疲れ様です!
 と、途中声を掛けに来たグラースも誘ってのお花見だ。
 春らしい華やかなレジャーシートに並ぶは、先程作った揚げ桜餅たち。中身の餡は種類豊富仕様のもの!
「和菓子類にはお茶系が合うよねぇ」
 吉備が赤い猿のひいろと、青色の狛犬のなまりを遊ばせながらちょっと濃いだしのお茶を飲む。
「ほら、ゆきちゃんもなまりさんと遊んできてね」
 グラースも青い狛犬のゆきちゃんを遊ばせている。
「駄菓子武器って食べられるんですね! 気になっていたのですが、なかなか食べる機会がなく……」
 あまりカクリヨファンタズムの駄菓子武器に触れたことがないのだろう。グラースは嬉しそうに告げる。
「もっちろん!」
「だって駄菓子ですから。カクリヨの電撃わたあめもチョコレー刀も食べることができますよ」
「すごい……!」
 虹色金平糖クラスター砲【🌸破魔】は、ぱちぱちっと楽しいものとなり。
 黒蜜かけ吉備団子アイスバー【🌸浄化】は、濃い目の味に清涼感が増している。
「なんだか一度口に含むと、二度、三度と新しいものを食べているような感じがしますね」
 美味しいです。と頬染めてグラースが言う。
「グラースちゃん、料理対決で吉備たちが作ったものもオススメだよ~。色んな餡をこしらえたのー」
「お花見にぴったりな和のものです」
 ね、と霓虹と吉備はお互いを見て笑顔。
「ふふ。お二人とも仲が良いんですね」
 今回の依頼も、お二人の素敵な思い出になれるかしら――そうグラースは呟いた。
「なるなる~」
「だってお花見ですよ? 今年の桜はまだまだ楽しむつもりなんです」
 ゴッドゲームオンラインの桜、グリードオーシャンの桜、様々な場所で育っている桜は今年も各世界に癒しを届けている。
「また来年、再来年と、楽しんでいきたいですね」
 未来へと想い馳せて言う霓虹に、吉備はうんうんと頷くのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

榊・ポポ
花びらを底なし肩掛け集金袋から溢れさせている一般通過カカポ

花びらトレード広場にイクゾー!
廃人もとい、廃神級プレイヤーならレア確定ルートボックスを持て余している筈ッ!
ちまちま合成アイテムなんか集めてられっか!この機会にレア確定ガチャかき集めて真っ先に割るのだー!

おっ、早速なんか物凄い圧を放っている第一ゴールデンゲーミング装備プレイヤー発見!
あれは廃課金と見た!
イベントで花びらかっぱらって来たからレア確定ルートボックスおくれー!
ゑ?交換してやってもいいけど花びらだけじゃなく同一レア帯の完成済み装備品を寄越せだって?
やだ!!!!(即答)



「風見遺跡の街へようこそ! プレイヤーさん、春のイベントを楽しんでいってね」
「お疲れ様!!!!」
 バグプロトコルのボスが発生していたクリスマス現場からひとっ飛び。喉も慣らし済みでより発声がよろしくなった榊・ポポは、街の前にいたNPCへと元気に労いの声を返した。
 尾羽をふりふり、チャッチャッと石畳の上を歩いて行くポポ。街は取り戻した春クエストに参加し始めたプレイヤーたちで賑わっている。
「よーし、花弁いっぱい集めるぞぉ!」
「フィールドに出て集めながらボスに挑戦してみよう」
 若々しいプレイヤーの声。
「あっ、あの鳥のプレイヤーさん、もうあんなに花弁を持ってる……!」
 という言葉も聞こえてくる――そう、ポポの肩掛け集金袋からは集めた桜の花弁がパンパンに詰まっており、何なら溢れている。ポポが歩けば花弁落ちる。である。
 その時、
「はっ! 風の吹き溜まりの気配……ッ!」
 チャチャチャチャッと駆け足になるポポ。
 スライディングするように路地へと入ればそこには風の吹き溜まり。すなわち、風に乗って運ばれてきた桜花弁の集まり。否。これは。
「ひょっほー!」
 本能か何かが働いたのか、ポポは溜まっていた花弁へと飛び込んだ。
 一旦腰を落ち着けたその姿は桜花の巣でくつろぐカカポの姿。
「ここで待てば……花びら無限大……ッてコト!?」
 若草色の翼で掬い上げればたくさんの花弁。
 うひょほ、ふへへと、脳汁を溢れさせたような声を発しながら、花弁を肩掛け集金袋へさらにぎゅぎゅっと押し込んだ。
 底なしなので無問題だ。
「ヨシ! 花びらトレード広場にイクゾー!」
 デッデッデデデデ! と業務用アイヒョーンからBGMを鳴らしての意気込み。
(「廃人もとい、廃神級プレイヤーならレア確定ルートボックスを持て余している筈ッ!」)
 そう。春クエストのボスをソッコーで撃破し、いつもの(?)レアなルートを確率させているものがいるはずである。
 ポポは既に察していた。それは自身のステータスシートから飛べるイベント概要のリンク集から明らかになった。
 このクエストイベント、ゲームのカメラ機能で撮ったチルな画像を投稿するコンテストが開かれており、投稿すれば報酬として花弁もも配布される。
 常連らしきプレイヤーが投稿した画像数のなんと多いことか――しかも適当に撮ったものではなく、レアな景色、構図、映りこむNPCはレアNPCや有名なプレイヤー。
「これは遣り手……幸い、廃神のツラは割れている」
 先程投稿された画像から察するに、廃神は今、この街にいる。かもしれない。
「ちまちま合成アイテムなんか集めてられっか! この機会にレア確定ガチャかき集めて真っ先に割るのだー!」
 日々の業務を忙しくこなす事務員。イレギュラーな出来事も発生し、ポポのタスクは常に溢れ返っている。ゲームすら効率を目指している。
 街の広場に着けば、一目で分かるのが廃課金勢力だ。面構えが違う……もとい装備が違う。
 そして一人のプレイヤーがポポの横を通り過ぎる。ぶわっさぁぁぁと翻ったマントからは花吹雪が起こり、通っただけなのに残滓がなんとも華々しい。
 その者の全身鎧はまるで春の陽射しのように光り輝いている。
 ――ちなみにポポはカカポなので、見上げる形となっており、花吹雪をもろに喰らった。もちろんイベントの花弁なのでそのまま獲得される。
「第一ゴールデンゲーミング装備だけでなく、下々なるプレイヤーに花弁まで……! 神……!」
「イェ~★ 『マント【🌸吹雪】』作っちった~! 皆の者、あーしを崇めよー★」
 と、ばっさばっさとマントを振り、知人プレイヤーに花弁を撒く廃神。
 カカポは飛び込むようにして声を掛ける。
「もしそこな神!!!」
「えっカカポじゃん? 花弁纏っててかわゆ~! そゆスキンもあるんだぁ★」
「イベントで花びらかっぱらって来たんで、レア確定ルートボックスおくれやす!!!」
「ルートボックス……装備は初心者なのに知識は中堅プレイヤーじゃん! え~今べつに花弁に困ってないしなぁ★」
 きゃるんとした感じで廃神が言う。
「30k🌸と素材を集めれば、このマントに交換できるし~? 同一レア帯の完成済み装備品も付けてくれたら考える~★」
「ゑ? やだ!!!! 初心者にッ、や゛ざじぐじでェ!!!!」
「いやいや初心者じゃないっしょ。あっはは。カカポちゃんおもしろ~。でもこの短時間でそんなに花弁集めてるの、なかなかやるね★」
 廃神の言葉にポポは対趾足をもじもじさせた。ちょっぴり、クエストで集めた経緯を話したい気持ち。
「もしかしてバグに出会っちゃった? カカポちゃんが見た情報くれたら、あーしの情報も分けたげるよ~」
「廃神……!」
「あ、テトロって呼んでね。んじゃちょっとお茶しよー」
 ゲームの廃神、もといテトロとしばし一緒に過ごすこととなったポポ。
 破天荒(?)者同士、その出会いは楽しさの掛け算となってゆくのかもしれない。

大成功 🔵​🔵​🔵​

古戸・琴子
※アドリブ連携OK
※すべておまかせ
ナカジマ、悪辣極まりない敵じゃったのう。
ともあれ、平和な空気の中を歩いてようやく
春を取り戻した実感を持てるというものじゃ。
体も温まってきた事じゃし、ジルエッタ・フィールドで神楽舞の練習をしていこうかの。
一人街外れで練習しても良いし、宴会に呼びたければ呼ぶが良い。余興位にはなろうて。
演目(UC)はどれでも良いが、同じ舞は続けて舞いたくないのじゃ。

踊っている間に集めた桜の花びらをNPC鍛治職人に渡して
武器でも防具でも自由に作ってもらおうか。
浄化や破魔の手段など幾らあっても良いからのう。
GGOで東方世界は未実装だそうじゃが、
大将軍もおるらしいし、大丈夫じゃろ。多分。



「シェフ・ナカジマ、悪辣極まりない敵じゃったのう」
 ジルエッタ・フィールドのクエストを乗っ取ったバグプロトコルを倒し|終末機構群《エンドコンテンツギミック》を消滅させると、辺り一帯にようやく訪れるは春。
 シェフの近くに在りクリスマスツリーの装飾から解放された、大きな桜の木を見上げた古戸・琴子は「もう大丈夫そうじゃな」と声を掛けた。
 樹齢は長いのだろう。鞠のように固まって咲き誇る桜の枝先は、風を受けやや重そうに揺れている。
 遠方に見える薄紅色の桜並木の地平を眺めながら、琴子は見つけた街道に沿ってこのフィールドいち大きな街を目指す。
「プレイヤーさん、風見遺跡の街へようこそ!」
「しばし世話になるぞ」
 街の前にいるNPCに声を掛けられ、風見遺跡の街へと入っていく琴子。
 街の出入り口付近の道では冒険仲間を集うプレイヤーたちがたむろしており、露店で回復アイテムを買い求めていたりした。
「それじゃこのフィールドのさくら集め、頑張ろうなっ」
「まずは周辺の敵から狩っていこう」
「わたしたちはボスを探しにいくね。いち早く場所を突き止めて、攻略班に情報を売るの!」
 などなど、初心者やベテランたちの様々な会話が琴子の耳に届いた。
 初心者向けのクエストは、それなりに安全性が保障されてこそだ。
(「被害が出る前に、バグプロトコルを倒すことができてよかったのぅ」)
 街から出発するプレイヤーたち――すれ違いざまに琴子は少しだけ振り返って、彼らのことを見送った。

「なかなかの賑わいじゃ」
 遺跡の街の広場では春のイベントに対応した市場が開かれており、プレイヤーやNPCがたくさんいる。
 桜の花弁が舞う中で見る光景は、春を取り戻した実感を琴子にもたらした。
 そんな広場でポップな看板を掲げる者たちがいる。
 【春の芸術イベント開催中!】
「芸術、とな?」
 興味を持った琴子が近くに行けば、ギルド所属のNPCが「まずはこちらを!」と虚空に概要欄を開いた。
 ・カメラアイテムやカメラ機能で春を撮って、あなたのお気に入りの一枚を投稿しよう!
 ・歌、踊り、楽器。春らしいBGMを作曲したり、歌詞を投稿したり、振付をしたり、クリエイターマッチングを開催中!
 ・あなたの知る文化をゴッドゲームオンラインに残してみませんか?
「投稿はいつでもどこからでもできますし、文化の録画は様々なものをセッティングできる遺跡舞台で行えますよー」
 リュートやハーディガーディを扱う吟遊詩人、古き良き踊りを知る踊り子などが参加予定となっているらしい。
「ふむ。ではわらわは神楽舞を披露しようかの」
 観客はいてもいなくてもいい。
 琴子にとっての舞は、自身や取り巻く環境の声であり言葉であり表現だ。
 風見遺跡には大昔のように感じる石群もあれば何処か新しい、ゲーム性を感じる石群もある。
 遺跡の舞台は、コロッセオを感じさせる造りであった。だが前半分は崩れ、観客席に向けて開かれている。
 空へ開かれた天井からは滝のような枝垂れ桜。段差ある壁面のあちこちには芝桜。
 呼吸するだけで桜の精力を取り込めるようなそんな気すらしてくる。
「…………いや、実際に取り込んでおるな。これは」
 集めている花弁の数が緩やかに増えている。
 扇を持ち最初に演るのは浦安の一人舞。
 座した姿勢から指先にまで心を渡らせる、ゆっくりとした丁寧な舞。
 ひらり、はらりと舞い落ちてくる花弁や桜の気を誘う――横に開いた宵桜に花弁が積もった。
 舞の後半は神楽鈴を使った鈴舞となる。
 鈴鳴れば、音の波に触れた花弁が揺らぎ虚空で方向を変えた。
 風や音、囁きや気配。周囲の環境に琴子の舞は呼応し、そして呼応させる舞。
 神楽舞が始まる前は観客席でくつろいでいたプレイヤーたちも、いざ琴子が舞い始めればその視線は釘付けとなっていた。
「綺麗ねぇ……」
「一つ一つの動作が分かりやすくて、丁寧だね」
「これさあ、もし桜の神様がいたら喜ぶんじゃない?」
 そういう会話も、集中して舞う琴子の耳には入ってこない――。
(「もっとゆっくり――神経を渡らせ――体幹をしっかり――」)
 浦安奉安舞を終え、数拍の間の後、響き渡らせる神楽鈴。
 寿の舞へと演目を変えてゆく。

「もし、そこな鍛治の。アイテムを一つ、作って貰うて良いじゃろうか?」
「はい! お客さん、どんなアイテムをご所望でしょうか?」
 職人街らしき場所へとやってきた琴子は装飾ものも扱う店へと入った。この通りに連なる店構えは別々だが奥の鍛治工房は大きな庭や道のようになっており他店と繋がっているようだ。
(「作業場は共同らしいの」)
「浄化や破魔の属性は最低限欲しいところじゃの。……東方物……この店に置かれている和の物を頼りにここへ入った。何か見繕うてくれると助かるのじゃが」
 将軍鎧、ダイカタナという巨大刀もある。東方由来の品も大丈夫だろうと、琴子はその方面でアイテムを女鍛治師に発注する。
「そうですねぇ……お客さんの衣装に似合う桜のネックレスはどうでしょうか?」
 設計用の紙を顕現させて、鍛治師はペンを走らせた。
「ロザリオや数珠のようなもので、要となる桜の数は15です」
「15……神楽鈴――七五三鈴由来かのう?」
「はい。藁を七束、五束、三束と垂らす型の注連縄も掛けていますね」
 邪なるものを祓う意味もあり、結界術のように囲う意味もある。
「きっと冒険にも、戦いにも役立ちますよ」
「さもあらん。こちらこそ、是非と願いたい気持ちじゃ」
 琴子のために作られる桜モチーフのアイテム。
 無事アイテムが完成し、購入の際には気持ちのいい取引をありがとう、という意の礼を述べた。
 桜のネックレスは珠の音が心地よく、摘まめば一粒はまるで祈りを積むような。
 等間隔に編まれた桜は、枝垂れ桜のように琴子の胸元で揺れるのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

島江・なが
グラースさぁーん!(ぴゅーん)
こんにちはです!先日はお世話になりましたぁ!
改めまして、島江・ながです!よろしくおねがいしまぁす!

グラースさんはゴッドペインターさんでしたよねぇ。
それなら景色がいいところに行くです!
なんかビビッと来て描きたい絵とか思いつくかもですし……
そこで一緒にお弁当たべましょー!
シェフの料理もちょっと分けて貰いましたが……
なが、今日はおうちからお弁当持ってきたです!
ながは今、しまふらいっていうお店にいそーろーしておりましてぇ……
エビフライ、とーっても美味しいんですよお!
いっぱい詰めてもらいましたから、分けっこしましょう!

ほぇ。なんかいつの間にか桜がすっごーく集まってました!
グラースさんもバングル作りませんか?みんなでお揃いです!
他のが気になるならそちらでも!
折角ですから色々作るですよぉ!
あっ!回復アイテムに三色団子があるです!
いいですねえ!これも交換するです!

綺麗な景色に美味しいごはん、ほっこりしますねえ……
グラースさんもほっこりできたです?
またながと遊んでくださぁい!



 冬景色が消えて春が訪れる。
 ゴッドゲームオンラインのデータ化されたような季節の切り替わりは少々味気のないものであったが、シマエナガである島江・ながは刹那の風を捉えていた。
 桜花に被る雪を雪解風がさらっていったのだ。
 一陣の風から二陣目に吹くは穏やかで心地よい春風。雪から一転して春景色。真白は消え、残されたのは雪の妖精とも呼ばれるシマエナガ。
 だがながは気にすることなく、気ままに春の空へと飛翔する。
 クリスマスツリーになっていた桜の木に着けば枝から枝へと跳ねてオーナメントが残ってないかの確認。枝垂れ桜に着けばその揺れで遊んでみる。
「はーるがきーてっ、ながが鳴くぅ~♪」
 じゅりりりり。
「はっ。落ちている桜がありますねぇ!」
 地面に落下していた桜を啄んではゲーム内のアイテムポケットにないないしていく。
「!! ひとつ拾えば🌸5枚……これはオトクというものです」
 この世紀の大発見を誰か聞いてくれる人はいないだろうか。
 木の根と根の間に佇み、じ、と考え込むなが。
「こんにちは、ながさん。精が出ますね」
 その時、聞いたことのある声がながの耳に届いて、ながの体と思考はくるんと方向転換した。
「あーっ! グラースさぁーん!」
 翼を動かしてぴゅーんと声の主――グラースの元へ飛んでいく。
「こんにちはです! 先日はお世話になりましたぁ! 改めまして、島江・ながです! よろしくおねがいしまぁす!」
 飛び回りながら挨拶と自己紹介をやるなが。元気な様子は微笑ましく、グラースは笑った。
「ふふ。改めてよろしくお願いしますね。グラース・アムレットです。こちらはゆきちゃんといいます」
 グラースの足元にいた青い狛犬もわふんと挨拶をした。
 わふわふわふわふ……。
「ゆきさん! グラースさんをけーび? してるです? きぐーですねぇ! ながもいそーろーしてるしまふらいをけーび(?)してるんですよぉ」
 地面に降りて狛犬と会話をするなが。グラースは野原に腰を落ち着けてそんな二人(?)の会話を不思議そうに聞いていた。
「グラースさんたちは今、景色がいいところを探してマッピング中なんですかぁ」
「はい。写真に撮っておけば後で絵におこせますしね」
 出来ればスケッチはしておきたいかも、と言ったグラースに「それなら!」とながは元気に提案。
「景色がいいところに行くです! なんかビビッと来るものもあるかもです! ちなみにながはあっちの方にビビッと来てますですよぉ」
 と、ながが示した方向は朽ちた遺跡がある場所だ。遠目からでもピラミッドのような建物だということが分かる。
「景色がいいところだったら、そこで一緒にお弁当たべましょー!」
「いいですね! ちょっと歩きますが、どこか途中に露天商もいると思いますし買い物もできるかしら?」
 そんな会話をしながら早速出発だ。ながは飛んだり、歩くゆきちゃんの背で翼を休ませてもらったり。
「おやつもあるといいですねぇ! シェフの料理もちょっと分けて貰いましたが、なが、今日はおうちからお弁当持ってきたです!」
「さっき言ってましたね。しまふらいさん」
「です! お料理のお店で、エビフライ、とーっても美味しいんですよお! いっぱい詰めてもらいましたから、分けっこしましょう!」
「それは楽しみですねぇ」
 のんびりとした会話をしながら、ジルエッタ・フィールドの街道を行く。

「はっ。ふわふわの桜があります……!」
 他と違う桜の木に気付いたながが飛んでいく。落ちている桜花を摘まめば、花弁はフリルのようにひらひらふわふわ。
 アイテムとしてないないしてみれば、一気に🌸が8枚増えた。
「こっこれはさっきのよりもオトクな🌸ですよ……!」
「八重桜ですね」
「やえですか! 桜にもたくさんお名前があるんですねぇ」
 UDCアースの字では、こう、と拾った木の枝で地面に書くグラース。
「はち、かさなる、さくら……なるほどですー! 桜おくぶかきですよぉ」
「私はまだ見たことがないのですが、薄緑色の桜もあるのだとか」
「うすみどりですか! このくさの色……いえ、こっちのくさの色でしょうかぁ……???」
 薄緑といっても色んな色がある。どんな色なんだろう、と考えるながとグラース。
 途中出会った露天商では買い物を。
「ほぇ。なんかいつの間にか🌸がすっごーく集まってますねぇ! なが、🌸持ちです!
 はっ。グラースさんは🌸持ちしてるです? バングル作りました?」
 言葉後半はちょっぴり心配そうに尋ねるなが。
「ふふ。バングル、ちゃんと作って装備してますよ。ほら」
 グラースはそう言ってながとお揃いのバングルを見せた。
「みんなお揃いですねぇ! やったです! ではでは、ほかにもなにか買ったり作ったりしましょうー」
 なががご機嫌に囀って露天商に品物を見せてもらえば、虚空にアイテムウィンドウが広がっていく。
「村や街の品物を仕入れて、街道で売ってるんですよ。こっちはプレイヤーさんから買い取ったものですが、新品ですよ」
 とNPCが言う。
「あ。すごい。絵の具がある」
「あっ! 回復アイテムに三色団子があるです! グラースさん一緒に食べましょぉ!」
「お土産にもなりそうですね。じゃあ食後用でこの千歳飴も買っていこうかしら」
 お菓子や春茶葉のお茶などなど。
 集めた花弁をアイテムに交換して、ほくほくな気持ちになったながはふくふくと羽毛をふくらませた。

 道草しながら辿り着いた遺跡は地上部が半分以上が崩れており、どうやら本命となるダンジョンは地下にある模様。
 地上部の崩れたピラミッドは容易に登って行けそうだ。
「きれーな色のお花があるですねぇ」
「これは芝桜ですね」
「これも桜なんですかぁー! しばのさくら……!」
 紅色、紫色や青、白。よくよく見れば縞模様だったりもする。
 芝桜の咲くピラミッドを登って、頂上でお弁当を広げる。
 ながが持ってきたお弁当にはアピールポイントのエビフライ。シマエナガ型のおにぎり、ナポリタン、春らしいピックで刺したミートボールと洋食風のお弁当。
 いただきますをして早速食べていく。
 グラースが最初に食べるのはもちろん、ながオススメのエビフライ。
「ながさんの仰った通り、美味しいですねぇ! エビの身が厚くてすごい――」
 食べ応えばっちりなぷりぷり食感のエビ。衣はサクサクめ。
 でしょぉ! とながは言って喜びの囀り。
 ながはしばらくおにぎりをじっと見たあとに、丁寧に食べていく。味海苔と塩気が効いていてとても美味しい。
 ゆきちゃんもおにぎりが気に入った様子。
 見晴らしの良い高台なるピラミッドの上は、風をよく感じることができた。
「綺麗な景色に美味しいごはん、ほっこりしますねえ……」
 やわらかな風光る。
 名前は分からずとも風を捉え飛ぶながは風の違いを感じている。
 遠く見える、草原の波のような煌めきは風の視覚化。
 ながはグラースを見上げた。
 きっとグラースもながとは違う感覚でこの景色を見ていることだろう。
「グラースさんもほっこりできてるです?」
「もちろんですよ。ながさんとここに来ることが出来て良かったです」
 顔を見合わせて、にっこり。
「またながと遊んでくださぁい!」
「はい。また一緒にお出かけしましょうね」
 食後のデザートの三食団子も千歳飴ものんびりと美味しく頂いて。
 故郷の世界を同じくする二人は、未来に向けた、ちょっとした約束を結ぶのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

青梅・仁
グラースちゃん、お疲れさん。
任務は無事に……いやアレ無事だったんか……?
前ほどじゃないがなんかやべーもんは見た気がするが……
いや、うん。まあ多分無事に終わったぜ。
気を取り直して街で料理をいくつか買って、ピクニックでもしよう。
手まり寿司も少し分けて貰えるといいが……数に限りがありそうなら、シェフの料理を貰っていこう。
……ところで、もうこれは食っても二日酔いにならないんだよな?大丈夫だよな?
酔うのは興味あっても二日酔いはお断りしたいからなー……。
グラースちゃんに妙な物食べさせたくもないしな。

前一緒に行った任務でも思ったが……やっぱりいい景色だな。
覚えてるかい?
本当この世界、ゲームとは思えない作り込みだよな。リアルー。

ああ、そうだ。
それなりに桜が集まったようだが……グラースちゃんは桜のアイテム、何か興味あるかい?
いっぱいあるしデザインも洒落た物が多くておじさん迷っちまうんだよな……。
だからグラースちゃんが気になるもん作ってみるなり、交換するなりしてみようかと思ってな。決めてくれるか?



 ジルエッタ・フィールドの乗っ取られた春のクエストは無事、本来の姿を取り戻したようだ。
 余所からここへとフィールド移動してきて、春クエストを受けていくプレイヤーたちの姿を青梅・仁はのんびりと眺めていた。
「よーし、花弁をいっぱい集めて、限定アイテムゲットしてこー!」
「モンスターを倒してレベル上げも兼ねつつ、さくらの報酬もいただけるなんて、なんて一石二鳥」
 欲しいアイテムがあるんだよねぇ。
 と、目標や夢を掲げた、キラキラ眩くも思える会話は若葉そのものだ。
「いち早く超お得なエリアボスを見つけて、攻略班に情報を売るのだー!」
「おー!」
「あたしは手持ちの素材を掛け合わせて高額商品を作るね」
 ……こっちは何だかギラギラとしている。
「…………ベテランさんは遊ぶ幅が広いねぇ」
 レア確定ルートガチャなどよく分からない言葉も聞こえてきて、勉強になるなぁと思いつつ、プレイヤーたちの様子を眺める仁。
「あら? 仁さん、お疲れさまです」
「お。グラースちゃん、お疲れさん」
 フィールドの出発地点――風見遺跡の街から出ていくプレイヤーたちとすれ違うように、外の方からグラースと狛犬が歩いてくる。
「しばらく歩いてたんですが、クエスト内にはもう冬の気配は微塵も残っていないようですね」
 何となく自身で確かめたかったのだろう。
 グラースの言葉に仁は頷きを返す。
「そうか、よかった。任務は無事に――……いやアレ無事だったんか……?」
 頷きつつ頭を捻っている言葉だ。
「前ほどじゃないがなんかやべーもんは見た気がするが……。いや、うん。まあ多分無事に終わったぜ」
 直火炙りと共に漂った、焼かれる強烈なかほりは割と忘れられないやつだ。何が焼かれたとは言わないが。
 仁の様子に、グラースはにっこり笑顔になった。やや例の彼女に被るような笑顔なのは気のせいだろうか。
「まあ、多少の炎上沙汰は致し方ないかと!」
「炎上……」
 スマートフォンを持って以降、インターネット用語としてよく聞く言葉を、まさか物理的な方面に当てはめてくるとは思わなんだ。然しながら仁は諸々を呑み込んだ。
 龍神は大枠で捉えれば雨を司る。その加護が効くか効かないか、そういう話だ。
 うっかり沈思に陥るテーマである。
 仁はキリリとした表情で、よし、と呟いた。
「グラースちゃん、気を取り直して街で料理をいくつか買って、ピクニックでもしようか」
「そうですね!」
 深淵をのぞく時、深淵もまた~というアレだ。ソレを振り払うような仁の提案にグラースも全力で乗っかった。

「風見鶏がモチーフのフィールドや街だけあって、チキン料理が豊富そうだな」
「周辺の敵も鳥類が多いみたいですよ」
 それに合わせて草原には哺乳類の動物、卵が採取できる森の方には大型爬虫類などのエネミーが配置されているようだ。
「へぇ生態系辺りが取り入れられてるのか」
「ゲームも意外と勉強になりますよね」
 街の広場の入り口では大きな桜の木がはらはらと花弁を零し舞わせていた。中心には噴水。
 流れる水は和やかに音色をたて、触れてみればしっかりと冷たい。
「本当にこの世界、ゲームとは思えない作り込みだよな。リアルー」
 水面を流れていく花弁を眺めて仁は言う。そこには空も、覗き込んだ自身の影も映っている。
「以前一緒に行った任務でも思ったが……やっぱりいい景色だな」
 あの時は長閑な平原で、今は街の中。石畳を打つ誰かが歩む音も、喧騒も、そこを吹き抜けていく涼しい風も。どれもリアルで、だからこそ現実と同じく愛おしさを感じるものであった。
「覚えてるかい?」
 何となく問う仁に、もちろんですよと和やかにグラースは返した。
「二人とも、楽しくゲームを続けているかしら?」
 今はそれなりにレベルも上がったことだろう。依頼で関わった、きっともう初心者ではない二人のプレイヤーへ思いを馳せた。
 照り焼きチキンとタマゴのサンドイッチやお茶を購入しつつ、街の中を散策していく二人。
「エリシャちゃんに分けて貰った手まり寿司もあるし、シェフの料理もあるし、こんなもんか?」
 同居人がよく食べるので若干常人の食事量が心許なく感じたりはした。
「……ところで、シェフの料理はもう食っても二日酔いにならないんだよな? 大丈夫だよな?」
「シェフが燃えたと同時にフィールドの|終末機構群《エンドコンテンツギミック》も消失しましたからね。大丈夫です!」
 案内人のお墨付きに仁は安堵した。
「酔うのは興味あっても二日酔いはお断りしたいからなー……。グラースちゃんに妙な物食べさせたくもないしな」
「ほろ酔いくらいなら楽しいですけど、二日酔いは、まあ勘弁ですよね……」
 散策中の広場では春のイベントに合わせた市場が開かれており、露店ではNPCが桜モチーフのアイテムを売っていたり、自身のクリエイト技能を披露し販売するプレイヤーがいた。
 露店の品々を注視してみれば薄らと、オンオフ機能のあるアイテムウィンドウが開かれて、こういう部分はとてもゲームっぽい。
 値段はトリリオンのものと、🌸マークが付いたものがある。春の市なのでもちろんマーク付きの方がお買い得価格だ。
「――ああ、そうだ。それなりに桜が集まったようだが……グラースちゃんは桜のアイテム、何か興味あるかい?」
「そうですねぇ。興味があるといえば桜吹雪の出るマントが面白そうですけど落ち着かなさそうですね」
「そんなアイテムあんの」
 レアアイテムらしいですよ。と真顔でグラースが言った。
「クエストボスのバグプロトコルを倒しましたからね。仁さんも🌸持ちになってますよねぇ」
「そーそー。🌸持ち」
 お金持ち的なニュアンスだろうが、何となく桜餅に聞こえなくもない。
「交換アイテムの種類もいっぱいあるし、デザインも洒落た物が多くておじさん迷っちまうんだよな……」
 気持ちは分かるという風に頷いているグラースに、だから、と仁は言葉を続けた。
「グラースちゃんが気になるもん作ってみるなり、交換するなりしてみようかと思ってな。決めてくれるか?」
 一瞬ぽかんとしたグラースは、じっと仁を見た後、若干視線を仁の着物へと向けた。ちょっと嫌な予感に襲われる。
「あ。例のレアアイテムのマントは却下で」
 落ち着かないし、多方面から揶揄われそうだ。
「……残念です。ですが心得ました! プロデュースさせていただきますね」
 視点新たに街中を散策してグラースが選んだのは懐中時計だ。
 帯に差し込みやすい蓋無し。時計の裏には花形にカットされた青貝の螺鈿で、桜花が咲いている。
「時計も気になってたんですよね。集中すると時間を忘れがちでして……」
 グラース自身も風見鶏モチーフを購入して鞄に付けながら言った。
「そうだなぁ……時間、確かに忘れがちではある」
 永く生きていると特に、だ。
「ありがとう、グラースちゃん」
 そう礼を述べて、時計に目を落とし針が時を刻むのを見た。
 一秒、一分。
 どの世界も等しく、時が進む。

 ゴッドゲームオンラインの盤は春。
 この世界も、他の世界も緩やかに、だが容赦なく次の時へと進められていく――。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月30日


挿絵イラスト