●儀式場の眠り姫
「うーん、うーん……」
銀誓館のとあるキャンパス、その保健室にて。一人の少女が眠っていた。
「うーん、うーん……」
酷い悪夢を見ているようで、少女はずっとうなされている。
「うーん、うーん……」
脂汗が浮かぶ少女の周囲で風が吹きすさび、モノがガタガタと音を立てる。
暴走した少女の能力が周囲の物体をポルターガイストの如く動かしているのだ。
●グリモアベース
「先日は五條市に現れたフェンリルのお相手、ありがとうございました」
そう言って、挨拶するのはグリモア猟兵のムゲン・ワールド(愛に生きたナイトメア適合者・f36307)だ。
五條市には土蜘蛛の檻と呼ばれる猟兵と同盟を結んでいる土蜘蛛オブリビオンの住処が存在している。
そしてそこに土蜘蛛の檻への道中の市民をも巻き込んでフェンリルと呼ばれるエネルギー体のオブリビオンがけしかけられたのだ。
「フェンリルを五條市の土蜘蛛の檻に派遣した敵の謎はまだ判明していませんが、同時に保護した能力者の少女については情報が入ってきています」
猟兵たちはこのオブリビオンを撃退したのだが、その時、儀式場に眠らされた能力者の少女を保護したのだった。
「少女の名前は|湊《みなと》 |優香《ゆうか》。行方不明届が出ているのを銀誓館が確認しました」
ともすれば彼女は早く親元に返してあげるべきなのだが、二つ、問題がある。
「まず一つは彼女が能力者である可能性が高い、という事です」
彼女はフェンリル事件の時、悪夢に苦しめられながら儀式上でポルターガイストのような現象を引き起こしていた。
おそらく、シルフィードと呼ばれる能力者の一種と思われる。
だとすれば、銀誓館で能力について指導を受けるのが望ましい。
「二つ目に、こちらの方が問題なのですが、彼女が一向に悪夢から目覚める気配がない事です」
しかも、無自覚に能力を使っている状況。迂闊に親元へ返せば、そこで永遠に目覚めないばかりか眠ったまま何かしらのトラブルを引き起こしかねない。
「そこで、銀誓館からメガリス「ティンカーベル」の使用許可が下りました」
メガリス「ティンカーベル」は、銀誓館が保有しているメガリス――要は不思議なマジックアイテムだ――の一つで、「夢の中に入れる不思議な砂」を生み出す30cm程度の妖精像である。
これを使って優香の悪夢の中に入り、悪夢の原因を直接取り除いてしまおう、というわけだ。
「そうすれば、能力の暴走も収まり、目覚めてもらうこともでき、話をすることが可能になるでしょう。全ての問題が解決です」
目覚めてさえ貰えば、銀誓館学園や能力について説明することも、親元に返すかの判断をすることも、また、可能ならば黒幕についての情報さえ得られるかもしれない。
猟兵達にとっても良いことが多い。
「というわけで、まずは夢の中に入り、元凶を探してください」
夢の中まではムゲンの予知も詳しくは見通せなかったようだが。
「ボールが必要以上に飛び交うソフトボール大会が行われているようです。夢の中の優香嬢は飛び交うボールに怯えているようですね」
ソフトボール大会である以上、ソフトボールを終わらせればボールが飛び交うのは終わるはずだ。つまりは。
「ソフトボール大会に飛び入り参加し、勝っちゃってください。ただし、気をつけるべき点が二つ」
と、ムゲン。
「一つ目は、ボールは必要以上に飛び交っているという点です。空中を縦横無尽にボールが飛び交っている状況で、命中すれば我々猟兵と言えど失神してしまうかもしれません」
これを回避するのは勿論の事、うっかり試合のボールと間違えないようにしなければならないようだ。
「あくまで有効なボールはピッチャーが投げたボールです。そこを間違えないようにお願いします」
では二つ目は?
「二つ目は、ピッチャーもその他の守備もとんでもない豪速球を投げる、という点です」
恐らくシルフィードとしての優香のイメージが乗っているようで、とんでもない速さだとのことだ。
「まぁ、こちらは猟兵の皆さんなら打ってしまえると思いますが、何か工夫するに越したことはないでしょうね」
「ソフトボール大会を終わらせようとすれば、悪夢の元凶たる何者か、恐らくオブリビオンだと思いますが、とにかく元凶が皆さんの前に姿を現すはずです。それを仕留めてください」
これは普通の戦闘だが、やはり気をつけることがあるらしい。
「元凶は案外我慢弱いようで、ソフトボール大会が終わるより先に出てくるようです。つまり、周囲をボールが飛び交っている状況は変わりません」
うまく周囲のボールを回避しながら戦う、あるいはうまく利用して戦うことが出来れば、戦いを有利に進められるだろう。
「説明は以上となります。皆さん、優香嬢をお願いします。どうか、お気をつけて」
そう言うと、ムゲンはグリモアの光を纏った仕込み杖をスラリと抜き放つ。
その切先に合わせて空間が裂けるように転送ゲートが出現した。
●全てが飛び交う夢の中で
「ゲームスタート!」
試合が始まる。
ピシッと音を立ててボールがピッチャーの手から飛び立ち、パシンと音を立てて、ボールがキャッチャーのミットに突き刺さる。
「ストラーイク!」
「うう……」
体格のいい男達に囲まれて、身長145cm程度の優香は震えながらバットを持つ。
彼女のチームにいるのは皆、同じ顔の優香達。
皆一様に怯えていた。
彼女達を救えるのは猟兵しかいない。
メリーさんのアモル
銀の雨降る世界からこんばんは。
なんかアスリートアースみたいなシナリオだな?
久しぶりのシルバーレイン・キャンペーンシナリオ再開となります。
キャンペーンのこれまでの流れを理解していなくてもオープニングの情報だけでシナリオに参加頂くことが可能かと思いますが、どうしても知りたい方はタグの「シルバーレイン・アナザー」をご参照下さい。
各章について解説させて頂きます。
●第一章
日常。ソフトボール大会です。
要はソフトボールに参加して勝っていただければ構いません。基本的に攻撃側でバッターとして活躍していただくことを想定しておりますが、望むなら守備側で活躍して頂いても構いません。
あるいは、優香を応援するという手も……?
注意点として、周囲をボールが無数に飛び交っております。ぶつかれば気絶は免れませんのでうまく対処して下さい。また、有効なボールはピッチャーの投げる一つだけですので、そちらも混乱してしまわないようにご注意下さいませ。
まとめると、「周囲を飛び交うボールへの対策」と「敵選手の豪速球への対策」を取っているとプレイングボーナスが得られます。
●第二章
ボス戦。元凶たるオブリビオンとの戦闘です。
詳細は実際のフラグメントをご覧頂くとして、環境と致しまして、第一章から引き続き、豪速球ボールが周囲を飛び交っております。
やはりこちらも、「周囲を飛び交うボールへの対策」を取っているとプレイングボーナスが得られます。
それでは、皆さんの参加をお待ちしております。
第1章 日常
『青春ソフトボール』
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POW : 豪腕からの超スピードボールや超飛距離のホームランで決める
SPD : テクニカルな変化球や盗塁を繰り出す
WIZ : 応援や差し入れで仲間の士気を上げる
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
荒谷・つかさ
……うーん、このトンチキながら笑えない状況。
高熱出した時に見る悪夢、ってこんな感じなのかしらね。知らないけど。
ま、こういう時にはいっそ振り切った方が良いわね。多分。
【頒布版・超★筋肉黙示録】発動
怯える優香さんを一旦下がらせ、私の|筋肉書籍《魂の結晶》を読ませてパワーアップ&|脳筋精神を植え付ける《洗脳》
説得が必要であれば私自ら代打として打席に立ち、真っ向から全身にボールを受け止めつつピッチャーの球だけ狙って打ち返すわ
私の「怪力」を生み出す筋肉の鎧にかかれば、多少痛くても耐えきれないものではない筈よ(いつも通りの脳筋精神)
これが、筋肉の力よ!
ソフトボール如き、恐るるに足らず!
貴女にも出来るわ!
「……うーん、このトンチキながら笑えない状況。高熱出した時に見る悪夢、ってこんな感じなのかしらね。知らないけど」
メガリス「ティンカーベル」の力で悪夢の世界に入った荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)は目の前の光景にそう呟いた。
飛び交うボール! 豪速球の前に怯える優香! そして、頭にネジの生えた敵ソフトボール選手達。
(頭にネジ? ま、こういう時にはいっそ振り切った方が良いわね。多分)
敵ソフトボール選手達の奇妙な見た目に首を傾げつつ、つかさはユーベルコード『|頒布版・超★筋肉黙示録《ハイパー・マッスル・アポカリプス・マイルド》』を発動した。取り出したるは|つかさの魂の結晶《筋肉書籍》。
それを持ってつかさは優香のベンチに入る。
メガリス「ティンカーベル」の効果か、夢がそういう性質を持っているのか、敵味方を含めるチームの全員がその様子に違和感を持たなかった。
「いい? よく聞いて。鍛錬の結果は……筋肉は裏切らない。筋肉こそはあらゆる困難を打ち砕く。故に、筋肉は絶対! 無敵! 最強!」
ベンチに入ったつかさはそうやって演説を行いながら、なんかすごい圧を放つ|つかさの魂の結晶《筋肉書籍》を配っていく。
それは恐ろしい圧を放ち、優香達に脳筋精神を与えていく。
「で、でも、あんな豪速球……」
しかし、完全には染まり切らない。このユーベルコードは同意した相手にしか充分な効果を発さないからだ。
「筋肉さえあれば大丈夫! まずは私が見せてあげるわ」
そう言って、つかさはスリーストライクバッターアウトを宣言され、すごすごベンチに戻る優香と入れ替わりにバッターボックスに立った。
周囲を飛び交うボールが一際激しくなった気がする。
夢が優香以外がバッターボックスに立つのを歓迎しないのかもしれない。
だが、そうやってつかさにぶつかってくるボールを、つかさは回避せずに真っ向から受け止める。
(この程度、私の「怪力」を生み出す筋肉の鎧にかかれば、多少痛くても耐えきれないものではないわね)
その強さは千五百を越える怪力という形で表される。
彼女の筋肉の鎧を前に、幾百のボールがぶつかろうと、効果はないに等しい。
そして、ついにピッチャーがボールを投げる。
つかさはそのボールを見逃さず、的確にピッチャーの球だけを狙って打ち返した。
結果は見事ホームラン。彼女の怪力の前では当然だった。
「これが、筋肉の力よ! ソフトボール如き、恐るるに足らず! 貴女にも出来るわ!」
のんびりとグラウンドを一周しながら、彼女はそう言って優香達をさらに説得する。
「私でも……出来る……」
優香達がその言葉を反芻する。
そして、バッターボックスに立った次の優香は。
「私でも、出来る!」
見事ヒットを取ることに成功したのだった。
猟兵が勝利に導くだけでなく、優香達自身を有効な戦力へと変えてみせた。
つかさは見事に自分の仕事を果たしたのだった。
この変化は、もしかすると現実世界の彼女にも多少の影響を残すかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
酒井森・興和
◎
五條の山で見付けた娘さんだね
優香さん、か
僕の姉も「ゆうか」と言った
木綿香と書くので字は違うのだけどね
と言う雑談は娘さんが落ち着いたら話そう
さて
ソフトボールとは懐かしいね
バットを取り
優香さん、おじさんも助っ人して構わないかな?
【第六感と集中力】でハズレの球を避けよう
袖に鉄扇仕込み躱しきれない球を【受け流し】
敵投手の投げる気配を【狩猟】で獲物に勘付くように【気配感知】し
これだ!と【カウンター】的に反応
【重量攻撃】で打って【吹き飛ばし】
優香さんが打つ番ならタイミングをアドバイス
【落ち着き、急所突き】を狙える一瞬を。
先のお方が彼女に自身をもたらした
機を掴めば出来るとも
危ない球は払い流し【かばう】よ
(五條の山で見付けた娘さんだね。優香さん、か)
とそう考えながら夢の中を訪れるのは、酒井森・興和(朱纏・f37018)。まさしく優香を発見し、救出した人物である。
(僕の姉も「ゆうか」と言った。木綿香と書くので字は違うのだけどね)
という雑談はきっと状況が落ち着いたら優香さんに話そう、と心に決めつつ、興和はソフトボールが行われている場所へと向かう。
「さて、ソフトボールとは懐かしいね」
そう呟き、興和が思い出すのはかつて|銀の雨降る時代《シルバーレイン》と言われた時分に経験した、死と隣り合わせの青春の日々、その中には、毎年行われていたソフトボール大会の記憶もあった。
「優香さん、おじさんも助っ人して構わないかな?」
ベンチに入り、興和は優香に声をかける。
優香は興和の柔和な表情に安心したように僅かな微笑みを返しながら、小さく頷く。
興和はそれに頷き返し、バットを手に取る。
そうして、興和がバッターボックスに立つと、やはり周囲を飛び交うボールの勢いが増す。
興和は持ち前の第六感と集中力でハズレに当たるボールを回避していく。
だが、飛び交うボールの勢いは鋭く、数も多く、その全てを回避し切ることは難しい。
そこで興和は事前に仕込みをしていた。
興和が躱しきれないボールを袖で受け流す。勿論、ただ袖にボールを添える程度では、ボールを受け流す事などできない。飛び交う豪速球は容易く興和の腕を破壊するだろう。
チラリと揺れる袖の内側に見えるのは、赤い房の付いた渡り一尺五寸程の何か、彼の愛用する鉄扇『鉄扇【火嶺】』だ。
そう、鉄扇を袖に仕込むことで、袖でボールを受け流すことに成功したのだった。
直後、興和は鋭くピッチャーの投げる気配を感じる。
それはまるで狩猟の際に獲物に勘づくような感覚。
刹那、豪速球が放たれる。
「これだ!」
まるでボールに対してカウンターを放つかのように、ボールをバットで撃ち抜いた。
綺麗な音が鳴り、ボールが空高く飛び上がり、ホームランラインを越えていく。
バットの重量を使った攻撃もそれによる吹き飛ばし攻撃も、興和にとっては慣れたものだ。かつてのソフトボール大会のようにイグニッション無しでの試合ならともかく、猟兵としての全力を出して良い試合なら、この程度の結果は当然と言えた。
興和は悠々と、グラウンドを一周し、次にバッターボックスに立つ優香に声をかける。
「先のお方が君に自信をもたらした。機を掴めば出来るとも」
ベンチからタイミングをアドバイスし、優香は無事にヒットを取る。
試合は着実に優香側チームに傾いていく。
そして、だからこそ、その流れを快く思わないものが姿を表す。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 ボス戦
『螺旋の怪・『黒糸』のヒイロ』
|
POW : 暗殺糸術・『一糸静殺』
【暗がり等の死角から放つ黒糸】が命中した対象に対し、高威力高命中の【首に括りつけての吊し上げ】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD : 結界糸術・『蜘蛛ノ巣』
自身と武装を【蜘蛛の巣の様に展開した黒糸】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[蜘蛛の巣の様に展開した黒糸]に触れた敵からは【猜疑心を増幅させ、正常な理性】を奪う。
WIZ : 共生糸術・『一蓮托生』
自身と対象1体を、最大でレベルmまで伸びる【と同時に繋いだ対象を操る、黒い糸】で繋ぐ。繋がれた両者は、同時に死なない限り死なない。
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
大成功 | 🔵🔵🔵 |
成功 | 🔵🔵🔴 |
苦戦 | 🔵🔴🔴 |
失敗 | 🔴🔴🔴 |
大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠高坂・茜」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「おのれ、邪魔立てするか、猟兵」
どこからか声が響く。
猟兵達が声の主人を探して周囲を見渡すと、声の方向にいたのは、ピッチャー。
だが、ピッチャーは口を開いてはいない。
「ここだ」
直後、ピッチャーの頭に生えていたネジが外れ、ピッチャーが粉塵の如く消え、ネジだけが空中に浮かび上がる。
周囲のソフトボール選手の頭からもネジが外れ、周囲のソフトボール選手が粉塵の如く消え、ネジだけがピッチャーから外れたネジへと合流して、巨大なネジへと姿を変えていく。
そして、そのネジから、新たな人型が生えてくる。
「この少女にはまだ利用価値がある。故に、ここでその体を譲るわけにはいかない」
周囲に黒い糸を張り巡らせ、頭にネジを生やしたオブリビオンが攻撃態勢をとる。
頭に生える謎のネジの正体は分からないが、ともかくこいつが元凶である可能性は高い。
優香を悪夢から救うため、オブリビオンを倒そう。
酒井森・興和
◎
人間の娘を利用ね
不埒な奴だ
頭のネジ?洗脳がお得意の連中の使いかねえ
まずは邪魔な球を排除しよう
三砂で球を撃ち返しUC発動
飛び交う球、敵とその仕掛けに火を奔らせる
ふむ…
隠形の術の類いかねえ
火纏は敵を追うし僕も狩りの勘は悪くないつもりだ
【第六感と気配感知、集中力】で距離を詰めよう
鉄扇で敵の糸を【切断】し進むが
幾らか感情が影響される
…
なれば理性など構わん
優香を救う事に意味があるか?あれは味方か?そんな疑いより
蜘蛛糸を模した技で僕を挑発するお前を狩る方が楽しかろう
敵を覆うUCを切断し姿をあぶり出す
至近から三砂【怪力で2回攻撃】胴と足を撃ちぬき【逃亡阻止、追撃】に牙で体を食い破り我に返る
夢より去れ糸使い
「この少女にはまだ利用価値がある。故に、ここでその体を譲るわけにはいかない」
臨戦体制を取る『螺旋の怪・『黒糸』のヒイロ』。対するは。
「人間の娘を利用ね。不埒な奴だ」
先程ソフトボール大会で優香に優しくアドバイスを飛ばし戦いを勝利に導いた功労者の一人、酒井森・興和(朱纏・f37018)だ。
そして同時に考える。
(頭のネジ? 洗脳がお得意の連中の使いかねえ)
|銀の雨降る時代《シルバーレイン》を生き抜いた彼にとって、夢の中のネジというと、連想されるものがあるのだ。
「まずは邪魔な球を排除しよう」
封印前から手に馴染むツルハシ状の愛用武器『三砂』を手に、周囲のボールを撃ち返しつつ、発動するはユーベルコード『火纏』。
武器を地面に振り下ろす衝撃が、周囲のボールを吹き飛ばし、奔り抜ける高熱の炎が『『黒糸』のヒイロ』へと迫る。
「なんの、 結界糸術・『蜘蛛ノ巣』」
展開した蜘蛛の巣の様に展開した黒糸を自身と武装を覆って視覚や嗅覚での探知を不可能にし、事実上、興和の視界から消える。
「ふむ……。隠形の術の類いかねえ」
視界から消えた『『黒糸』のヒイロ』の行方に興和は一瞬考える。
(火纏は敵を追うし僕も狩りの勘は悪くないつもりだ)
そう、先程の衝撃で放たれた奔り抜ける高熱の炎は未だに『『黒糸』のヒイロ』を追い続けている。
そして、相手を探知する方法は決して視覚と嗅覚だけには限られない。
興和は目を瞑り、自身の集中力を研ぎ澄ます。
相手は隠密に長けたオブリビオンらしく足音は消しているようだが、動くことによって微妙に生じる空気の流れまでは隠せない。
目を見開き、構えるは『鉄扇【火嶺】』。
見えないように張り巡らされた黒糸を第六感で感じとり、切断し、一気に『『黒糸』のヒイロ』へ向けて肉薄する。
直後、黒糸に仕込まれた敵のユーベルコードの効果が発動する。
それは毒だ。それも命や身体を蝕む毒ではなく、猜疑心を増幅させ、正常な理性を奪ってしまう、精神を蝕む毒。
――優香を救う事に意味があるか?
脳裏で猜疑心が呟く。
――あれは本当に味方か?
芽生えた猜疑心は留まるところを知らず、みるみるうちに脳内で優香の認識が怪しくなっていく。
「なれば理性など構わん」
対する興和の答えは、ただ一つであった。
理性があるから人を疑い、理性があるからそれが正常でなくなってしまうなら、そんなものははなからなければいいだけのこと。
そして理性を捨て去った興和の脳裏に浮かぶ野生のアイデアはただ一つ。
――そんな疑いより蜘蛛糸を模した技で僕を挑発するお前を狩る方が楽しかろう。
鋏角衆たる興和の前で、蜘蛛糸を模して弄ぶなど、到底許せるものではない、と興和の野生が言う。
興和は一気に不可視の敵へと肉薄し、『鉄扇【火嶺】』で切断、その姿を露わにする。
「くっ、こいつ、理性を捨て去ったのか!」
驚愕する『『黒糸』のヒイロ』に対し、続いて振り上げられるは興和の『三砂』。
野生の恐るべし怪力が胴体と、そして続け様に足を撃ち抜く。
足を奪われ逃げ損ねる『『黒糸』のヒイロ』に迫るは興和の牙。
それが体を食い破らんと『『黒糸』のヒイロ』に突き立てられる。
そこで、血の味を受けてか、あるいはたまたまか、不意に我に返った。
我に返り、僅かに隙を晒した瞬間を逃す『『黒糸』のヒイロ』ではない。『『黒糸』のヒイロ』は速やかに黒糸を振るって、興和を攻撃する。
興和はこれを『鉄扇【火嶺】』で切断しつつ、後方に飛び下がって距離を取った。
「夢より去れ糸使い」
両者が再び武器を構える。
戦いはまだ続く。
大成功
🔵🔵🔵
荒谷・つかさ
譲るも何もお前のものじゃないでしょうに。
まあいいわ、何であれ追い出すことに変わりはないのだし。
【超★筋肉黙示録】発動
自身に脳筋自己暗示をかけ、そのまま正面から歩いて接近
放たれる糸は躱さないし、首に巻き付いても気にしない
何故ならば
鍛え抜いた私の首筋は死神の鎌さえも受け止める
その程度の糸で勝てるわけないでしょうが、たわけ
巻き付いた糸を素手で引きちぎって脱出
何なら逆に手繰り寄せてこっちに引き寄せる
そのまま「怪力」任せにぶん殴ってやるわ
可能であればそのまま力尽くで拘束して、さっき|説得《洗脳》した優香ちゃん達にも仕返しを兼ねて殴らせてあげたいわ
(トラウマ寸前な夢の克服のきっかけを与える目的)
「ぐぅ、おのれ……、だが……、まだだ。まだ体を譲るわけには……」
先の猟兵に手痛い負傷を与えられつつも、『螺旋の怪・『黒糸』のヒイロ』は諦め悪く、そんな言葉を呟く。
「譲るも何もお前のものじゃないでしょうに」
その言葉に思わず呆れたような言葉を返すのは先程ソフトボール大会で彼女に筋肉の偉大さを教え、戦いを勝利に導いた功労者の一人、荒谷・つかさ(|逸鬼闘閃《Irregular》・f02032)だ。
ゆっくりと『『黒糸』のヒイロ』に向けて近づきながら、つかさはユーベルコードを発動する。
発動するユーベルコードは『|超★筋肉黙示録《ハイパー・マッスル・アポカリプス》』。
筋肉最強理論を想像から創造し、戦闘に利用するもの。すごく極端な言い方をしてしまえば、超強力な自己暗示である。それも超絶脳筋な考え方の。
だが、自己暗示と侮るなかれ、究極まで思い込んでいれば、そしてそこに実力も見合っているとなれば、それは恐ろしい武器となるのだ。
「まっすぐ直進とは、迂闊でござるな」
暗闇に紛れた死角から、黒糸が放たれ、無防備に直進するつかさに向けて接近する。
しかし、つかさはこれを躱さない。
「ヒット! もらったぞ、 『暗殺糸術・『一糸静殺』』!」
直後、黒糸をガイドに、首に向けてさらなる黒糸が伸びる。
だが、つかさはこれを躱さないし、首に巻きついても気にせずまっすぐ歩き続けるのみ。
「ふっ、ただの愚物か」
そう言って、『『黒糸』のヒイロ』が糸を手繰り、吊し上げようとした、その時。
巻きついた黒糸を無造作に素手で掴み、そのままブチりと引きちぎって見せた。
「なっ」
「鍛え抜いた私の首筋は死神の鎌さえも受け止める。その程度の糸で勝てるわけないでしょうが、たわけ」
そう何一つ痩せ我慢ではない。シンプルにつかさには効いていないのだ。
そのままつかさは引きちぎった黒糸をグッと手繰り寄せる。
「しまっ!?」
「さぁ、お前に教えてあげるわ。鍛え上げた肉体……筋肉さえあれば、大体どうにかなるということを!」
思いっきり黒糸を引っ張られ、バランスを崩し、そのままつかさの元へ手繰り寄せられた『『黒糸』のヒイロ』はその無防備な胴体に向けて、つかさの怪力の全て、拳による一撃を受ける。
「がはっ」
思わず大ダメージに糸の切れた人形のように『『黒糸』のヒイロ』がぐったりとする。
当然、つかさがそれをそのまま見逃す理由はない。
だが、つかさが取ったのは追撃ではなかった。
つかさが行ったのは動けないように力尽くで拘束することだった。
「な、何を……」
困惑する『『黒糸』のヒイロ』を他所に、つかさはベンチに視線を向ける。
「優香ちゃん達、こっちにいらっしゃい。仕返しに殴ってあげるのよ。方法は今見せてあげたでしょ?」
その視線の先、言葉の先にいたのは、ベンチで隠れていた優香達。つかさが脳筋思想を教え込んだ彼女達である。
「うん、筋肉で、解決!」
優香はその言葉に頷き、バットを手に、一斉に『『黒糸』のヒイロ』に襲いかかった。
「な、何をする、や、やめろ……。私に抑圧されていた無意識のくせに、歯向かうつもりか!!」
もがけども、つかさの怪力を打ち破るには至らない。
結果、『『黒糸』のヒイロ』はバットでひたすらに殴られるしかなかったのであった。
(これでトラウマな夢を克服するきっかけになればいいけど)
そう独白しながら、つかさは優香達のバットによる攻撃を見守るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ステラ・スターライト
◎
人の心に勝手に入り込むだなんて、まったく恥知らずなオブリビオンがいたものですね
汚いさすが忍者きたないといったところでしょうか
この心から、いえ、この世界から追い払ってみせます
まずは周囲を飛び交うボールへの対処
UCで幾多の剣を召喚し、それらにボールを斬り払わせます
星彩の精霊に周囲を監視してもらいながら敵に接近
敵が放ってきた黒糸は星光の剣で斬り、また、星光の盾で受け止めます
黒糸が身体に絡みつくようなら、召喚した剣の2~3本を防御に回し、すぐに斬らせましょう
近接したら星光の剣で攻撃
召喚した剣が周囲のボールをあらかた斬り払ったなら、剣を集約
敵に向かって一気に放ちます
貴方の企み、ここで幕を閉じさせます
『螺旋の怪・『黒糸』のヒイロ』が拘束をなんとか振り払い、優香達のバットによる攻撃が終了したところで、その目前に姿を晒す猟兵が一人。
「人の心に勝手に入り込むだなんて、まったく恥知らずなオブリビオンがいたものですね」
そう声をかけるのは、スタイルの良いポニーテールの勇者アバターを見に纏うゲームプレイヤーの猟兵、ステラ・スターライト(星光・f43055)だ。
「汚いさすが忍者きたないといったところでしょうか。この心から、いえ、この世界から追い払ってみせます」
「汚いとは心外な。裏工作は忍者の本懐というもの」
と『『黒糸』のヒイロ』が言い返すが、ステラはそれには反応せず、黙ってユーベルコードを発動する。
発動するユーベルコードは『武具召喚』。周囲に幾多もの剣が出現し、自身に向かって飛んでくる豪速球ボールを斬って払う。
そのまま、『GGO』で手に入れたレア武器『星光の剣』を抜き、一気に『『黒糸』のヒイロ』へ向けて肉薄する。
「ふん、馬鹿正直に突進か、ならば」
『『黒糸』のヒイロ』はその様子を嗤い、ステラの死角から黒い糸を放つ。
それは完全にステラの視界外からの出来事で、ステラはその攻撃を受け止めることは叶わない。
……ここにいたのがステラ一人だったならば。
ステラに宿り、周囲を監視していた光の精霊、『星彩の精霊』がステラに警告を飛ばす。
信頼関係のなせる技か、ステラはその言葉を一瞬も疑わず、即座に『星彩の精霊』が警告を飛ばした方向へ星の光を宿すというその純白の剣を振るい、黒糸を斬り払う。
「何っ!?」
必殺だったはずの自身のユーベルコードを破られ、驚愕する『『黒糸』のヒイロ』。
その完全に虚を突かれた様子の『『黒糸』のヒイロ』に向けて、ステラはさらに距離を詰める。
「ま、まずい」
『『黒糸』のヒイロ』はこのままでは向こうの間合いに入ると気付き、咄嗟に後方へ飛び下がろうとするが、ステラの動きの方が早い。
一気に『『黒糸』のヒイロ』の元まで肉薄したステラはそのまま『星光の剣』で『『黒糸』のヒイロ』を切断する。
「ぐっ」
『GGO』のレア武器による一撃、それ自体が強力な一撃ではある。が、これもまだ、攻撃の一環でしかない。
ステラの一撃を受けて、怯んだところを、周囲のボールを斬り払っていた122本もの剣達が一斉に『『黒糸』のヒイロ』へと飛びかかる。
「ガハッ」
『『黒糸』のヒイロ』は無数の剣に突き刺され、針山の如く変化した。
これでもまだ生きているというのだから、オブリビオンというのはつくづく丈夫なものだ。
「貴方の企み、ここで幕を閉じさせます」
ステラが『星光の剣』を納刀すると、『『黒糸』のヒイロ』に突き刺さっていた剣達も消失し、『『黒糸』のヒイロ』はばたりと倒れた。
大成功
🔵🔵🔵
真波・祭
◎
表の世界に出られない奴が何かこそこそとやっているみたいね。
貴方のやっていること全部照らし出し、そして全部燃やしてあげる!
UCで敵のみを焼き尽くす炎を生成。
《炎壁》として具現化して周囲を取り囲み、飛び交うボールは通過する際に焼き尽くす。
なお壁を突き抜けて入ってくるボールがあるなら《炎弾》で撃ち落としていくわ。
身体に《炎衣》を纏い、手に《炎剣》を携え、足から《炎翼》を生やす。
敵が放ってきた黒糸の動きを心眼で見切り、《炎剣》で払い、《炎衣》で燃やしつつ、一気に接近。
《炎剣》で敵をネジごと斬り捨て、炎に包む!
貴方が齎そうとした悪しき未来はここでお終い。
そのネジごと、消し炭一つ残さず燃やしてあげる!
ばたりと倒れた『螺旋の怪・『黒糸』のヒイロ』。その元へ新たな猟兵が訪れる。
「表の世界に出られない奴が何かこそこそとやっているみたいね。貴方のやっていること全部照らし出し、そして全部燃やしてあげる!」
そう言って、ユーベルコード発動の光を輝かせるのは、悪しき未来を見通す眼を代々受け継いできた「知られざる一族」の末裔、真波・祭(白炎のエアライダー・f42349)だ。
「くっ、猟兵……」
『『黒糸』のヒイロ』はボロボロの体でなんとか起きあがろうとするが、それより早く、祭のユーベルコードが発動する。
それにより、指定のものだけを燃やし尽くす炎が生み出される。
まずその炎が形成するのは、『サンオーラ《炎壁》』。太陽の光と熱を司るオーラが、その名の通り、炎の壁として具現化する。
それは即座に祭の周囲を取り囲み、飛んでくるボールを次々と焼いていく。
それでもボールは豪速球。中には一瞬の炎などものともせず、突っ込んでくるボールも存在する。
そう言ったボールは、炎で形成した『サンオーラ《炎弾》』。太陽の光と熱を司るオーラが、その名の通り、炎の弾として具現化させ、そのボールを撃ち落とす。
その間に、祭は自身の装備を整える。
体には炎の衣として具現化する『サンオーラ《炎衣》』。手には炎の剣として具現化する『サンオーラ《炎剣》』、足には炎の翼として具現化する『サンオーラ《炎翼》』をそれぞれ具現化させ、装備する。
その間になんとか立ち上がることに成功した『『黒糸』のヒイロ』は今度こそとばかりに、死角から黒糸を放つ。
完全な死角から放たれるそれを、祭は回避出来ない。
祭がただの人間であれば、だが。
成り立ての猟兵が用いるユーベルコードには確実に勝る程度に鍛えられた祭の心眼が、飛んでくる黒糸を一つ残らず捕捉する。
『炎剣』が振るわれ、黒糸が斬り払われる。残った黒糸が僅かに祭に迫るが、『炎衣』が体にとりつくことを許さない。
「くっ……猟兵め、あの手この手で、こっちの技を……」
再び技を破られ、思わず呟く『『黒糸』のヒイロ』に向けて、祭は一気に肉薄する。
「貴方が齎そうとした悪しき未来はここでお終い。そのネジごと、消し炭一つ残さず燃やしてあげる!」
振り上げられた『炎剣』が煌めく。
敵だけを焼き尽くす炎が、『『黒糸』のヒイロ』を飲み込む。
先の猟兵の攻撃でボロボロになって体勢を崩していた『『黒糸』のヒイロ』に対しては、その炎がより効果的に作用する。
「おのれ! おのれ、猟兵め。覚えていろ。必ず我らの主人がお前達を倒す……!」
炎に飲まれ、『『黒糸』のヒイロ』が消失する。
飛び交うボールは地面に落ち、周囲の優香達も怯えた顔から安堵したような表情に変わっていく。
悪夢は、終わりの時を迎えたのだ。
あとは今度こそ、優香が目覚めるのを待つのみだ。
大成功
🔵🔵🔵