思いがけないサプライズデー
●当選は発送を持って返させていただきます
なんのことかわからない。
戦いを終えて馬県・義透（死天山彷徨う四悪霊・f28057）と共に屋敷に戻ってきた巨大クラゲ『陰海月』は段ボールを『夏夢』から手渡されて首を傾げた。
「お荷物だそうですよ。受取印をしておきました」
「助かりました。変わったことはございませんでしたか？」
そんなやりとりをしているおじーちゃんたちを他所に『陰海月』はどうにもおかしいと首を傾げる。
何かをネット注文した覚えはない。
おじーちゃん達が内緒で、というのならばこの段階でサプライズ失敗である。
逆に何を買ったんですか？ と訪ねてくるから、この線はない。
なら、一体これはなんのダンボールなんだろう？
「わ、これはなんですか？」
ぷきゅ、と『夏夢』にケルベロスディバイド世界へと戦いに言った帰りの手土産を渡す。
いつも屋敷を留守にしている間守ってくれているお礼である。
「ああ、これはどうやらウィングキャットがオススメしている猫じゃらしセットのようですよ」
「と、いうことは、これでお猫様をいつでも……！？」
「まあ、ほどほどに」
なんてやり取りをしている二人を他所に『陰海月』は首を右に左にとかしげる。
『霹靂』がどうしたのーと覗き込んでくる。
おかしいんだよ、と『陰海月』はとりあえず段ボールを持って二階へと上がっていく。
『霹靂』も後をついてくる。
部屋に入って段ボールを置く。
見覚えのない段ボール。
サイズもなんていうか、自分の購入した商品のそれではない。
なんでだろ？
いや、よくよく確認してみると段ボールの横にロゴが入っている。
「きゅ！？」
あ！ と気がつく。
それは自分が良く購入しているおもちゃ会社のロゴマークだったのだ。
これ知ってる！ と『霹靂』が鳴いた。
やっぱりそうだ！
「きゅきゅきゅ！」
逸る気持ちのせいか、段ボールを封しているテープをうまく剥がせない。
「クエ！」
任せて！ と言わんばかりに『霹靂』の爪が段ボールのテープをピーってカッターみたいに裂く。
「ぷきゅ！」
段ボールの蓋開けると、そこには緩衝材と共に一枚の紙があった。
『ご愛好者様アンケートプレゼント当選のお知らせ』
あ！ と思い至る。
そうだ、プラモデルを作る時についているはがき！ それを『陰海月』は応募していたのを思い出したのだ。
いや、それでも大分前である。
もう当選していないだろうな、と思っていただけに、これは嬉しいサプライズである。
『霹靂』は友達が喜んでいるので、自分もつられて喜ぶ。
なんかよくわかんないけど。
でも喜んでるってことは嬉しいことなんだな、と理解するのだ。
「クエ♪クエ♪」
「ぷきゅ♪ぷきゅ♪」
どったんどったんと二階から音がするので義透たちも何事かとやってくる。
「どうしましたか？ 何か……」
見て見て！ と『陰海月』は当選したプレゼント……『幻想騎馬隊 鎧ヒポグリフ＆鎧グリフォン』の箱を掲げて見せる。
当然、非売品なのだ。
もう手に入らないとおもっていたものが、思いがけず手に入った喜びで『陰海月』は小躍りしている。
「なるほど。応募していたものに当選した、と。よかったですねぇ」
これも『陰海月』が日頃よい行いをしていたからであろうと義透たちは言う。
そうなのかもしれない。
こんなことがあっていいのかなぁ、と『陰海月』は今もなんとも言えない気持ちになりながら、ほわほわとしている。
夢心地と言って良いかも知れない。
「ぷきゅ！」
これからも良い子でいよう、と思いながら『陰海月』はウキウキと組み立て準備を始めるのだった――。
成功
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