メイデン・ギフト
●期間限定という、ある意味での罠
タマキ・カンナ(清澄玉虫・f42299)は、なるほどなぁと感心していた。
何に、と言われたのならば彼女は眼の前のポップを示すだろう。
ハート型に切り抜かれたポップ。
そこに記されていたのは『期間限定ホットショコラ』という文字である。
季節はバレンタインの頃。
確かにこのゲーム、ゴッドゲームオンラインでもバレンタインデーというイベントは催されている。
「でも、期間限定にしては長くない?」
尤もである。
しかし、これは商法として大変に戦略的である。
確かに一日限り! というのは人の心を大いに惹きつけるもの。
けれど、あまりにも期間が短いとそれだけ売上は見込めない。ならば、いっそのこと! というやつである。
「つまりバレンタインデーが始まって終わるのはホワイトデーまで、と」
考えたなぁと思わないでもない。
でもまあ、タマキにとって、それは些細なことだった。
そう、チョコにバレンタインデーと言えば、己が奉じる『虹色スライム』様である。
自分だってチョコを贈りたい!
でも、固形物NGなのである。
どうしたものかなぁ、と思っていた所に『期間限定ホットショコラ』である。
もう迷うことなんてなかった。
限定商法に踊らされている? のんのん、違う。踊ってやっているのだ。
そんなこんなでタマキは『虹色スライム』へと己がお使いを頼まれていたコーヒーの他に『期間限定ホットショコラ』を献上するのだ。
「こちらは、そのぉ」
えっとぉ、となんとも歯切れの悪い言葉になってしまう。
いざ渡そうとすると尻込みしてしまう。
けれど、タマキは、えいや、と『虹色スライム』に『ホットショコラ』を献上するのだ。
得体のしれぬ飲み物。というか、液体に『虹色スライム』は僅かに怯んだようだったが、巫女であるタマキの手前、そんな素振りなど見せられようはずがない。
恐る恐る含めば、ぺっかー! と虹色に輝く。
「こ、これは……! お口に合いましたか!」
ぶるぶる震える。
虹色の輝きがSSR演出のように洞窟の中にて明滅する。
「えっ、また買ってきて欲しい、と? ええ、お任せください!」
タマキは嬉しくなってしまって早速飛び出していく。
期間限定。
されど、期間内ならば幾らでも手に入るということ!
タマキは己が巫女としての春が来た、と言わんばかりにショップと洞窟の間を何往復もするのだった――。
成功
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