●罠
「あ、妖め! ここから先へは……う、うわぁぁぁーッ!?」
坂東武者の一人が炎に包まれ、その場に倒れる。
彼らの頭上には、妖である『鬼面の群れ』が我が物顔で飛び回っていた。
「く、また一人やられたか! よもや部隊を分けたのが裏目に出ようとは……!」
戦況の不利を悟って苦い表情を浮かべる坂東武者。
敵の数はそう多くないと踏んで部隊をいくつかに分け、攻め入ってきた妖の群れの迎撃に出た彼らであったが、それが敵の狡猾な罠である事に気付いたのが遅すぎた。
彼らは戦力を分断され、数に物を言わせた敵を前に苦戦を強いられている真っ最中だ。
「……だが、我らがここで退く訳にもいくまい!」
「分かっている! 我々の敗走は祖国の最後も同然、死ぬまで戦うぞ!」
仲間の言葉に奮起し、武器を構える坂東武者達。
例え圧倒的不利な状況でも、祖国を守るために彼らは戦わねばならないのだ。
(しかし、このままでは全滅も時間の問題か……かくなる上は)
頭上を飛び回る数多の鬼面の群れを前に、坂東武者は死を覚悟する。
せめて死ぬまでに一匹でも多く、妖を道連れにせねば、と。
●東国へ
「新しく観測された世界、『アヤカシエンパイア』で事件が起きるわ」
アヤカ・ホワイトケープ(ロストイノセント・f00740)がグリモアベースに集まった猟兵達を前に、ブリーフィングを始める。
かつて発生した『|禍津妖大戦《まがつあやかしのおおいくさ》』により世界は妖蠢く死の大地と化したが、陰陽師達は日本全土を『平安結界』で覆い、滅びた大地と妖を人々から隠蔽しつつ、妖の殲滅を目指して今日も人知れず戦い続けている世界……それがアヤカシエンパイアだ。
「かつて『禍津妖大戦』で最大の激戦地となった東国には、しばしば『過去の激戦の記憶』に引き寄せられるようにして強大な妖が出現するんだけど、討伐に向かった坂東武者の人達が敵の罠にかかって、返り討ちに遭ってしまう予知を見たの」
彼らが全滅してしまえば、侵略を受けている東国が滅んでしまうのは時間の問題だ。
東国を拠点とする坂東武者達を助け、現れた妖を倒すのが今回の任務である。
「みんなにはまずは、妖の尖兵である『鬼面の群れ』と戦っている坂東武者の助太刀に入ってもらう形になるわ」
戦場は広範囲に広がっているらしく、戦力を分断された事から数に物を言わせた妖の猛攻を前に、坂東武者達は苦戦を強いられているそうだ。
今から急いで行けば彼らの犠牲は最小限に抑えられるそうなので現地に飛び次第、直ちに助けに入って欲しいとの事である。
「鬼面の群れを倒した後は東国へ攻め込んだ妖のボスの元に向かう事になるんだけど、そいつは何かしらの罠を仕掛け、進軍を阻んでくる物と思われるわ。十分に気を付けてね」
当の罠の内容は予知で確認する事が出来なかったそうなので、何があっても対応出来るよう注意が必要だ。
そして、どうにかしてボスの元に辿り着けば、後は奴を倒すだけである。
ボスを倒す事が出来れば頭を失った妖は瓦解し、いずこかへと去って行く事だろう。
「こうしている間にも、坂東武者の人達は妖と戦っているはずよ。急いで彼らを助けて、東国を救ってあげて。それじゃ、よろしくね!」
説明を終えたアヤカがグリモアを展開すると、ゲートを開く。
さあ、東国を救うために妖退治へ出発だ!
NS
はいどうも、|NS《えぬえす》でございます。
アヤカシエンパイア、なかなかブッ飛んだ世界のようで。
早速やっていきましょう。今回もよろしくお願いします。
●目的
東国へ飛び、現地で妖と戦っている坂東武者達を助け、妖のボスを討ち取る。
本シナリオは三章構成です。
第一章は集団戦。坂東武者を助けつつ、鬼面の群れとの戦闘。
第二章は冒険。ボスの元に向かう際、敵の張った罠を潜り抜ける。
第三章はボス戦。罠を切り抜けた先に待つ、妖のボスとの決戦。
……以上の構成となっております。
章の状況や詳細などは導入部に書きますので、内容をよくご確認の上でプレイングをどうぞ。
●ご注意
プレイング受付開始日はタグに日時を入れます。
プレイングをお送りする際にはその日時以降でお願いします。
リプレイはプレイングが届き次第、早めにお返し出来ればと思います。
第二章はクリアに必要な青丸が少ないため、この章のみリプレイを少数お返しした後で少しだけプレイングを貯め込んでからリプレイお返しと言う形になります。
その際、プレイング受付締め切り日をタグで制定しておきます。
もしプレイングの数がキャパを超えそうな場合、早めに受付を締め切ります。
その場合はタグに『プレイング受付〆切』と入れるので、ご確認下さい。
また締め切り後にプレイングが来た場合、申し訳ありませんが不採用とさせていただきます事を予めご了承下さい。
それでは坂東武者と東国を救うため、妖に立ち向かいましょう。
第1章 集団戦
『鬼面の群れ』
|
POW : 爆裂鬼火
着弾点からレベルm半径内を爆破する【鬼火】を放つ。着弾後、範囲内に【恨みの炎】が現れ継続ダメージを与える。
SPD : 鬼火翔け
【鬼面状の体】から【鬼火】を噴出しながら、レベル×5km/hで直進突撃する。2回まで方向転換可能。
WIZ : 鬼火雨
レベル×5km/hで飛翔しながら、【降り注ぐ鬼火】で「🔵取得数+2回」攻撃する。
イラスト:佐々木なの
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●巻ノ壱・坂東武者ノ危機
時を同じくして、東国の領内では坂東武者達が攻め込んできた妖……『鬼面の群れ』と激しい戦いを繰り広げている真っ最中であった。
だが敵の数は圧倒的に多く、妖側の策略により隊を分断された事で彼らは早くも苦戦を強いられていた。
「……ええい、妖め! 生意気にも我らを罠にかけようとは!」
「向こうは数が多すぎる! ここは真っ先に隊を合流すべきではないか!?」
「妖がそれを許してくれるなら、とっくにそうしている!」
現状、分断された少数戦力で敵陣を突っ切ろうものならば、数で勝る鬼面の群れに狙い撃ちされるのがオチと自殺行為もいいところだ。
もし援軍さえ来てくれれば、この状況を打破する事は出来なくもないだろうが……そんな戦力など、こちらにはあるはずもない事は彼らが一番理解していた。
「とにかく今は戦うしかない! 皆の者、死力を尽くす時だ!」
「くっ、やるしかないと言うのか……!」
「ここは出来るだけ固まって戦うのだぞ! かかれ、かかれーッ!」
それでも、今出来る事は国を守るために戦う事のみ。
坂東武者達は絶望的な状況下であっても、そうするしかなかった。
(せめて助けが来てくれさえすれば……術力を使える者達がこの場にいれば……!)
そう考えた直後、よもや待ち望んでいた援軍がやってくる事になろうとは、その時の彼らが知る由などなかった。
暁星・輝凛
大丈夫。みすみす死なせたりしない。
散っていった坂東武者さんたちの覚悟も、無駄にはしない。
「助けに来たよ、今のうちに体勢整えて!」
到着次第武者たちに端的に伝えて、敵の殲滅にかかるよ。
UCを発動。
全方位に殲剣黎明刃を射出し、各個に敵を攻撃させる。
そうやって武者たちから引き離し、注意を僕に引き付けるんだ。
方向転換するといっても、敵の攻撃は直進突撃しかない。
おまけに狙いは僕だ。最後は必ず飛び込んでくる。
攻撃軌道を【心眼】で見極めれば、対処はそう難しくない。
それに合わせてUCを再発動、攻撃軌道に殲剣黎明刃を配置してやる。
狙い通りに突き刺されば、怯んだ隙に叩き斬る!
「どうしたの? ほら、かかっておいで!」
●悪霊ヲ斬レ
「僕、参上! っと、状況は思わしくないようだね……急がないと」
グリモアベースから猟兵達がアヤカシエンパイアの地へと足を踏み入れる。
駆け付けた猟兵の一人である暁星・輝凛(|獅輝剣星《レディアント・レオ》・f40817)は、苦戦を強いられている坂東武者の一団へ向け、颯爽と走り出す。
「いかん、押されているぞ! このままでは……ッ、来る!」
「助けに来たよ、今のうちに体勢整えて!」
坂東武者へ突進してきた鬼面の群れの間に輝凛が割って入り、そのまま切り払うと急ぎ後ろを振り返って呼びかける。
来るはずがないと思っていた助けが……来たのだ!
「お、おお……まさか助けが来るとは!」
「すまぬ、少しだけこの場を頼む!」
「……急げ、この間に体勢を立て直すのだ!」
坂東武者達は駆け付けた輝凛が猛者である事を即座に見抜き、彼に一時的ではあるがこの場を任せると、直ちに体勢を立て直さんとする。
やられてしまった者も少数出てはいるが、まだまだ坂東武者達は戦えるようだ。
(大丈夫。みすみす死なせたりしない。散っていった坂東武者さんたちの覚悟も、無駄にはしない)
横目で周囲を確認しつつ、輝凛は一人思う。
既に倒れてしまった者はどうする事も出来ないが、自分達が駆け付けたからにはこれ以上の犠牲は出させない。
輝凛だけでなく、他の猟兵達もそう思っている事だろう。
「……さあ、ここからは僕が相手だ。百匹でも千匹でも、まとめて相手してあげるよ!」
鬼面の群れに対し力強く宣言すると、輝凛は『|殲剣黎明刃・人《フォトンビット・クラウン》』を発動し、輝きを放つ光エネルギーの小剣を召喚。
そのまま全方位に射出すると、こちらを取り囲んでいた鬼面の群れを容赦なく貫き、消滅させる。
「!!!」
現れた援軍がかなりの強さを持った敵である事を認識した鬼面の群れが、輝凛を油断ならぬ相手と認識すると、坂東武者から狙いを切り替えて鬼火翔けで突進する。
「そら、僕はこっちだ! 追い付けるものなら追い付いてごらんよ!」
そのまま坂東武者達から引き離すように、相手の注意をこちらへと向ける輝凛。
それが彼の狙い通りである事に向こうは気付かないまま、鬼面の群れはまるで炎の塊となり、全力で追いかける。
「……よーし、来た来た。結構な数だね」
そうして輝凛が鬼火翔けから逃げ回りつつ後ろを振り返ると、そこには何十もの鬼面の群れの姿があった。
鬼火を噴出しながらこちらに迫る数多の鬼面の群れは、ちょっとした恐怖めいた存在とも言えよう。
「よっと!」
背後から迫る鬼面の群れを輝凛が素早く躱すと相手は二度方向転換し、180度ターンで再度こちらへ向けて直進的に迫ってくる。
(狙いは僕、そして向こうは必ずこちらへ飛び込んでくる……ならば)
あとはこっちの物だと、輝凛が内心ほくそ笑む。
鬼面の群れの軌道を心眼で見切り、殲剣黎明刃を向こうの動きに合わせ、タイミングよく配置した直後、何もない空間に突如出現した光エネルギーの小剣が突き刺さる!
「……!?」
これは……罠か!?
鬼面の群れが思わず怯み、突進が止まってしまう。
「どうしたの? ほら、かかっておいで!」
そしてその隙を見逃すことなく輝凛が飛び込み、鬼面の群れをバッサリと斬り捨てる。
……殲剣黎明刃と輝凛の刃が悪霊を次々と葬り去る姿は、離れた場所にいる坂東武者達も目にしていた。
その様子を見て、彼らは思った事だろう。
この戦い、勝てるかもしれない……と。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
何とも危険な状況ですねぇ。
急ぎましょう。
『FAS』により飛行、『FPS』で敵味方の配置を把握し、武者さん達の戦局がより悪化している箇所に『FMS』を先行、武者さん達をバリアでガードしまして。
自身は周囲に『FLS』の空間歪曲障壁を展開、【鬼火】の直撃を防ぎますねぇ。
そして【乳壓覃】発動、『超重力』による広域への[範囲攻撃]を行えば、通常の[重量攻撃]に加え『ユーベルコード解除』の作用で、到着前に放たれていた『恨みの炎』も消去可能ですぅ。
そのまま『FES』の魔力矢と『FBS』による斬撃で[追撃]し、順に仕留めて参りましょう。
救助後は、分断された他部隊の救助に向かいますねぇ。
●危機ヲ救ウ者
「何とも危険な状況ですねぇ。急ぎましょう」
現地へとやってきた夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は『FAS』で飛行しつつ、空中から『FPS』で敵味方の配置を確認する。
ブリーフィングで聞いた通り戦場は広範囲に広がっており、およそ十人弱の坂東武者達がそれぞれ分断され、多くの鬼面の群れと戦っているようだ。
あの様子を見るに、敵側が戦力を小出しにしてから坂東武者を釣り出し、戦力を分散させてから本命の大部隊を一気に投入して分断した、と見るべきだろうか。
「どこも危ない状況ですが、特に危険な場所を優先して救助に向かうべきですねぇ」
空中から戦場を一通り把握したるこるが、一つの戦地に目を向ける。
鬼面の群れに押され、戦線が支えきれないと言った状況のエリアだ。
「もう少しの辛抱ですよぉ」
早速、るこるは該当のエリアへ『FMS』を先行して飛ばすと、その場へと展開されたバリアが鬼面の群れの放った爆裂鬼火をガードする。
「な、なんだ!? これは一体……」
「助かったのか、俺達……?」
このまま死をも覚悟した坂東武者達は、一体何が起きたのかと目を白黒させる。
突然、目の前に何かが落ちてきたかと思えば、それは光の盾となって鬼面の群れの放った鬼火をシャットアウトしたのだ。
もしや夢でも見ているのか、そうも思った事だろう。
「……!?」
一方で、このまま坂東武者達を消し炭にしてくれようと思っていた鬼面の群れは、攻撃が突然防がれた事に少なからず驚きを見せているようである。
……いや、今のはただの偶然か何かだ。
そう思い、鬼面の群れは再び鬼火を放たんとする。
「……いかん、また来るぞ!」
「くそ、こっちは体勢をまだ立て直していないと言うに……!」
先程の事で一瞬でも呆けていた自分達を恥じつつ、坂東武者達が慌てて体勢を立て直さんとする。
忘れかけていたが、現在の戦況は圧倒的不利なのだ。
「!?」
その時、鬼火を放たんとした鬼面の群れが突然降り注いだ乳白色の光を浴びた直後、超重力による広域への範囲攻撃でその身がグシャリと潰れ、塵と消える。
それと同時に、先程シャットアウトされた爆裂鬼火の着弾した周囲で燃え盛っていた、恨みの炎も消えていく。
るこるの放った『|豊乳女神の加護・乳壓覃《チチガミサマノカゴ・シロキギョウシュクノナラク》』である。
「お、おお!? 今度は何だ!?」
「どこからか光が!? も、もしや……援軍か!?」
再びやってきた助けに、坂東武者達はようやくそれが援軍である事に気付くと、沈んでいた心に希望の火が灯るのを感じた。
「まだいくつか残っていますねぇ。順に仕留めますよぉ」
乳壓覃で鬼面の群れを減らした後、るこるは『FES』の魔力矢と『FBS』による斬撃で追撃、更にその数を減らしていく。
先程までおよそ数十匹はいたであろう鬼面の群れが、超重力で潰れ、魔力矢に貫かれ、斬撃で両断され、数的不利が一気に覆る。
「……敵の数が一気に減ったぞ! 今ならば!」
「うむ、ここを突破して仲間と合流出来る!」
そして今が好機とばかりに坂東武者達は急ぎ体勢を立て直し、残り僅かとなった鬼面の群れを強行突破。
仲間の元へと向かっていった。
「ひとまず、あの方々は大丈夫そうですねぇ。さて、次へと急ぎましょう」
その様子を見届けると、るこるはすぐに次の分断された他部隊の救助に向かう。
先程助ける事が出来た部隊はほんの一部であり、猟兵の手助けを求めているところはまだまだあるのだ。
邪悪なる妖から東国を救うため、るこるは戦場を駆け抜ける……。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
やってきました、アヤカシエンパイア。
こちらに来て早速、お侍さんが大ピンチですか。
それだけアヤカシの数が多いんですかね。
随分押されているようですから、来て早々にUC効かせていきましょう。
魔法剣『緋月絢爛』を使って、UC『乱舞雷花』を発動。
敵の数を減らしていきます。
生き残った鬼面は坂東武者と協力、死角を埋めるようにしながら、
ヨーヨー『エクリプス』で撃墜していきます。
突進してくる鬼面は【念動力】も使って、追加の方向転換をして、地面に激突させます。
●坂東武者トノ共同戦線
「ここがアヤカシエンパイアですね。そして早速お侍さんが大ピンチですか」
戦地へと足を踏み入れた黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は、早々に坂東武者達が危機に陥っている状況を目にする。
鬼面の群れはその数の多さもあるが、そもそもにして空を飛んでいる相手と言う事もあり、地上で戦っている彼らからすれば分が悪いと言わざるを得ないようだ。
「やはりあの手の相手に近接武器主体は厳しいようですね。ならば私達の出番、と言う訳です。……いざ!」
魔法剣『緋月絢爛』を抜いて、摩那が走る。
向かうべき先は坂東武者達の一団が戦っている戦場。
今も彼らは防戦一方と言った状態で、思うように反撃が行かないようだ。
「……くっ、素早い奴らめ!」
「ええい、こちらの攻撃を当てるどころの話ではないぞ、これは!」
「こんな事ならば、伏竹弓の使い手をもう少し呼ぶべきであったか……!」
その一方でじりじりと押され、追い詰められていく坂東武者達。
彼らがいよいよ死を覚悟すると、突然七色の花びらが風に乗って流れてくる。
これは一体?
「な、なんだこれは……?」
「……ふ、我々もどうやらあの世が見えたらしいな」
「だが死ぬ前に美しい物を見られたのだ。幸運と思うべきかもしれぬな」
きっとこれは国のために戦った我々を御仏が極楽浄土へと連れて行ってくれるのだ。
坂東武者達がそう考える……だが、次の瞬間。
その七色の花びらが強烈な高圧電流を放ち、その激しい高圧電流は坂東武者達に浴びせられる事なく空を飛び回っていた鬼面の群れのみを焼き払い、黒焦げに変えていくと塵となって消えた。
「……なんだ!? 一体何が起きた!?」
「皆さん、ご無事ですか!」
何が何だか分からない状態で狼狽える坂東武者達の元へ、摩那が到着する。
先程の七色の花びらは摩那が『|乱舞雷花《フルール・イリゼ》』で放った物だ。
「き、貴殿は!?」
「援軍として駆け付けた者です。私の他にも仲間が来ていますよ」
「援軍!? おお、地獄に仏とはまさにこの事……感謝する!」
まさか助けが来るとは思わず、坂東武者が安堵する。
まだ生き残る事が出来ると、彼らは喜んでいる事だろう。
「敵の数は先程大きく減りました。ここからは協力して戦いましょう」
「うむ、それが賢明だ。頼りにしているぞ!」
先の乱舞雷花で敵の数を半数近く減らす事が出来た事もあり、いよいよ反撃に転じる坂東武者達。
それぞれが背を預けて死角を作らないように陣形を組み直すと、生き残った鬼面の群れが攻撃を仕掛けてくる。
「直線的に飛んでくるのなら、エクリプスで落とすのみです!」
鬼火翔けで突進してくる鬼面の群れに、摩那は愛用のヨーヨー『エクリプス』を飛ばす。
唸りを上げて射出されたエクリプスは相手の本体である面部分を易々と叩き割り、難なく撃墜していく。
「来るぞ、敵が来るぞーッ!」
「まだ数は多い……捌ききれるのか!?」
その一方で、坂東武者達にも襲い掛かる鬼面の群れ。
……自分達も援軍として駆け付けた猛者のように戦えるのか?
そんな不安が頭を過る。
「……!?」
だが、坂東武者達に向けて突進してきた鬼面の群れは突然あらぬ方向を向き、方向転換もままならず、地面に墜落する。
こんな事もあろうかと、摩那が念動力で軌道をコントロールしたおかげだ。
「地面に落ちた!? 隙ありぃ!」
「我らの力を思い知れーッ!」
そこへ容赦ない追撃を入れ、トドメを刺す坂東武者達。
これなら彼らもどうにか戦えそうだ。
「さあ皆さん、ここが踏ん張りどころですよ!」
「「「おぉぉーッ!」」」
仲間を鼓舞する摩那に坂東武者達が雄叫びで応える。
士気も高まり、心強い援軍がいる以上、彼らが敗死する事は最早あるまい。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
妖刀『薄墨爛漫桜』を手に援軍に駆けつけましょう。
「おまたせ、援軍の登場よ」
妖刀に設定した韋駄天走りで戦場をかけつつ、|剣戟結界《多重詠唱結界術》の暴力で鬼面達を蹂躙いたしましょう。
「秘剣、裏桜花・|裂乱《さきみだれ》」
鬼火翔け?これ妖刀だからエネルギー体だろうと切断できるわよ?
ま、範囲攻撃だと討ち漏らしもでるでしょうけども、ここまでやればトドメは坂東武者さん達に任せて大丈夫でしょう。
念のため切りつけた時に傷口から禁呪封印術のマヒ攻撃を流し込んでおけば万全かしら?
●疾キ事、風ノ如シ
「あらあら、これは大変そうね。だからこそ、助け甲斐があると言うものだけど」
ゲートを抜けて現地へと駆け付けたアリス・セカンドカラー(不可思議な腐敗の|混沌魔術師《ケイオト》艶魔少女・f05202)は、苦戦を強いられている坂東武者達の光景を目にするや、小悪魔めいた笑みを浮かべる。
アリスは早速『|妖刀『薄墨爛漫桜』《ウスズミランマンザクラ》』でユーベルコードの名を冠する妖刀『薄墨爛漫桜』を具現化すると、それを手にして手近な戦地へと韋駄天走りで向かっていった。
「くぅっ、奴らめ……見かけによらず力強い……!」
「鬼火には決して触れぬように立ち回れ! 身を焼かれたらおしまいだぞ!」
……その頃、坂東武者達は鬼面の群れを前に防戦一方と旗色は悪いと言わざるを得ない状況下にあった。
敵は数を生かした戦法で彼らを惑わせ、反撃もままならない状態からじわじわと追い詰めていくと言う悪辣な戦い方で優位に立っているようだ。
「マズいぞ、このままでは……!」
「く、ここで我々が倒れては祖国の命運が……」
そうして窮地に追い込まれる坂東武者達。
まさに万事休す……彼らの命運もいよいよ尽きてしまうのかと思われたその時、救世主が疾風の如き勢いで駆け付けてきた。
「!?」
「おまたせ、援軍の登場よ」
登場と同時に空中にいた鬼面の群れの一団を瞬時に斬り捨てると、アリスが坂東武者達の盾になるように立ちはだかり、振り返る事なく彼らに告げる。
「お、おお……まさか助けが来てくれるとは!」
「あれだけの数を一瞬で、しかも一人で!? なんて腕前だ……!」
まさか自分達よりも遥かに若い少女が助けに来るなどとは思いもしなかったであろうが、願ってもみなかった救いの手が現れた事に坂東武者達が沸く。
「……!!」
先程まで数で優位に立っていた鬼面の群れであったが、ここに来て油断ならぬ強敵が現れた事を把握すると狙いを坂東武者からアリスに切り替え、鬼火翔けで突進する。
厄介な相手は先に潰そうと言うつもりのようだ。
「ふーん、揃いも揃ってわたしと遊んでくれるの? なら、少しは楽しませてよ?」
相変わらずの小悪魔スマイルを浮かべると、アリスは突進してくる数多の鬼面の群れに薄墨爛漫桜の切っ先を向ける。
「秘剣、裏桜花・|裂乱《さきみだれ》」
そこから技の名を口にすると同時に、アリスの|剣戟結界《多重詠唱結界術》が炸裂。
妖殺しとも言える妖刀が鬼火もろとも、鬼面の群れをまとめて両断した。
「……あら、討ち漏らしがあったようね? ま、ここまでやればトドメは坂東武者さん達に任せて大丈夫でしょう」
だが先の一撃で全てを殺しきった訳ではなかったらしく、鬼面の群れの一部にはアリスに斬られた傷が深く残り、辛うじて生き延びた個体もいくつか出たようだ。
……とは言え、この時点で敵側は大損害とも言うべき被害ではあるのだが。
「それじゃ、わたしはこのまま他の坂東武者さん達を助けに向かうけど、あとはあなた達でもどうにか出来るわよね?」
「う、うむ! 助太刀に感謝する!」
「はいはーい、お礼は後で請求するからよろしくね♪」
これだけやれば大丈夫だろうと踏んだアリスは、後は任せる事を坂東武者達に告げると韋駄天走りでその場を後にする。
(……ま、わたしがこれだけお膳立てしたんだから大丈夫、よね?)
そこから移動する最中、アリスがちらりと後ろを振り返る。
視線の先にはまともに動けない鬼面の群れに、トドメを刺す坂東武者達の姿が。
念のためにと、先程切りつけた際に傷口から禁呪封印術のマヒ攻撃を流し込んでおいたのが効いたようだ。
「ん、大丈夫そうね。次に行くわよ」
そしてその様子を軽く見届けると、アリスは助けを求めている他の坂東武者達の元へ向けて移動するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
臺破・櫻丸
連携・アドリブ歓迎
AEの事は猟兵としての情報・状況は理解
詳しい事はわからねえけどなあ、要はいつも通りに
やりゃあいいってこったな!!
妖相手に情けも容赦もいらねえんだからよ!
恨みの炎、に鬼火……つまりは妖気や邪気の塊ってこったな!
腹一杯とはいかなそうだが精々喰らわせてもらうぜ!
【恨みの炎】を「破魔」を込めた雷迅の爪で斬り開き吸収及び
消火、坂東武者達に退路と活路の確保
「戦えねえ奴はとっとと逃げな!戦える奴も引き際を見極めろ!
残されるモンの方が辛えんだ!」
鬼面と対峙したらUC発動し攻撃
「教えてやるよ、面ってのは被る奴がいてこそ生きるモンさ。
面だけで舞も踊りも出来はしねえ!大人しく俺に喰われてな!!」
●妖ヲ喰ラウ者
「詳しい事はわからねえけどなあ、要はいつも通りにやりゃあいいってこったな!! 妖相手に情けも容赦もいらねえんだからよ!」
戦地へと降り立った臺破・櫻丸(善悪超|越《悦》・f42878)が勇ましく吠える。
一見すれば彼は虎獣人に見えるが、その実態ははぐれ式神だ。
かつての主を弑した妖をほぼ相討ちの形で討ち取るも、己の非力さ妖という存在を赦せず、妖の殲滅を誓った彼はこの世界で妖の血肉と邪気を喰らい、己の力とすべく戦い続けていると言う。
今回は妖に襲われている東国の話を聞き付けた事で、こうして参戦してきたようだ。
「……おっと、こいつぁ大した数だ! さぞ喰らい甲斐があるってもんだぜ!!」
早速、鬼面の群れに襲われ苦戦を強いられている坂東武者の一団を見つけると、櫻丸がその場へ向けて走り出す。
「……どうやらここが我らの死に場所になりそうだな」
時を同じくして、坂東武者達は鬼面の群れの爆裂鬼火による炎で防戦一方となり、じわじわと戦力を削られつつあった。
彼らの中には既に戦闘不能者も少数出ており、全滅も時間の問題と言ったところか。
「……!!」
そこから鬼面の群れが爆裂鬼火を放つと、鬼火が雨のごとく降り注ぐ。
この攻撃で坂東武者達を消し炭にしてしまおうと言うつもりなのだろう。
……だが放たれた鬼火は爆発する事無く、文字通り両断された。
一体何が起きたと言うのか?
「恨みの炎、に鬼火……つまりは妖気や邪気の塊ってこったな!」
鬼火を両断した張本人――櫻丸が坂東武者達の前に立ち、鬼面の群れを見上げる。
彼は乱入すると同時に破魔を込めた雷迅の爪で放たれた鬼火を斬り開き、その邪悪な力を吸収したのだ。
「腹一杯とはいかなそうだが精々喰らわせてもらうぜ!」
櫻丸は雷迅の爪を振るい、鬼火の着弾した地点に立ち上っていた恨みの炎を消火。
炎によって追い詰められていた坂東武者達の退路を切り開いていく。
相手は個々の力が弱い空を飛ぶ悪霊の大群と言う事もあって、己の力とするにはまるで足りないだろうが前菜くらいにはなろう。
「き、貴殿は!? 我々を助けてくれるのか!?」
「話は後だ、戦えねえ奴はとっとと逃げな! 戦える奴も引き際を見極めろ! 残されるモンの方が辛えんだ!」
「……! すまぬ!」
櫻丸は未だ混乱状態にある坂東武者達を一喝すると我に返ったか、まだ辛うじて生きている負傷者に肩を貸し、急いでその場から撤退する。
今ここで死ぬ訳にはいかないと、彼らも悟ったのだろう。
「何とか逃げおおせてくれたようだな。さあて、こっからは俺が相手だ!」
「……!」
櫻丸がその様子を見届けると、空に浮かぶ鬼面の群れと相対する。
……例え敵が一人になったとは言え、容赦は一切しない。
そう言わんばかりに、鬼面の群れが爆裂鬼火を放つ。
「教えてやるよ、面ってのは被る奴がいてこそ生きるモンさ。面だけで舞も踊りも出来はしねえ! 大人しく俺に喰われてな!!」
その言葉と共に櫻丸がニヤリと笑うと『|轟雷ニテ屠ラン《ゴウライニテホフラン》』を発動。
降り注ぐ鬼火の雨を潜り抜け、鬼面の群れに……肉薄!
「|雷鳴よ! 雷光よ! 雷神よ! 我が拳に宿りて業成せ!!《ノウマク・サンマンタ・ボダナン! インダラヤ・ソワカ》」
真言詠唱にて生じる荷電粒子及び電磁場で爆発的に加速する櫻丸が雷迅の爪を振るうと、鬼面の群れが次々と真っ二つにされ地へと落ちていく。
その速さはまさに雷光の如しである。
鬼面の群れは櫻丸の機動力に追従しきれず、攻撃も当てられないままただ落とされていくのみだ。
「……なんだぁ、もう終わりか? 俺は全然喰い足りねえぜ!」
そして櫻丸が数で勝っていた鬼面の群れを倒しきると、まだ満足していないと言った様子で吠える。
彼の狩りはまだまだ始まったばかりだ。
大成功
🔵🔵🔵
鳳獣寺・棗子
東国の過酷ぶり、聞き及んでいた以上のものと感じます。
かの地を安堵すべく日々戦に挑まれている坂東武者の皆様、無為に命散らす訳には参りませぬ。
確とお助け致しましょう。
「六獣武威」に乗りて戦場へ参りましょう。担ぐ式神達に【ダッシュ】して頂けばそれなりの速さにて移動叶います。
坂東武者の皆様へ、助勢に参った旨を伝えると共に、秘術・胡我羅赤瀑布を発動。
鬼面群を溶岩雨にて攻撃すると共に、武者の皆様へ溶岩鎧を纏わせ戦闘力の底上げを図ります。
負傷深き方には下がって頂き、未だ戦える武者の皆様と共に残敵の掃討へ。
「剣王牙狼」を先頭に立て、空の敵への【斬撃波】も交え攻めたてて貰いましょう。
●平安貴族ノ妖退治
「東国の過酷ぶり、聞き及んでいた以上のものと感じます。かの地を安堵すべく日々戦に挑まれている坂東武者の皆様、無為に命散らす訳には参りませぬ。確とお助け致しましょう」
鳳獣寺・棗子(獣鬼御遣の陰陽師・f42827)はその幼い外見とは裏腹に、とても落ち着いた様子で坂東武者達を救う事を誓う。
平安貴族である彼女は己が使命……即ち、人知れず妖を退治し人々を守るため、今回の東国で起きた妖の進攻を阻止すべく駆け付けてきた次第だ。
まだ6歳である彼女だが、家伝の式神使役術の卓抜した才を持つ事から既に一人前として扱われており、アヤカシエンパイアで発生した事件にも既に何件か出動しているとの事である。
「ですが、既に戦況は思わしくないと聞いています。ここは急がねばなりませんね」
棗子は『風雅戦輿「六獣武威」』に乗ると、控えていた六体の獣型式神がそれを担ぎ、戦場を進む。
おおよそこの場には似つかわしくない優雅な意匠の輿ではあるが、その機動力は意外にも高く、それほど時間もかからず坂東武者達が戦闘を繰り広げている場へと辿り着く。
「皆様、ご無事ですか!」
到着と同時に、棗子は六獣武威の上から凛とした声で呼びかける。
後方より聞こえてきた声を受け、一斉に振り返る坂東武者達。
まさか援軍が輿に乗ってやってきたとは彼らも思うまい。
「今よりこの鳳獣寺・棗子が皆様をお助けします! 我ら鳳獣寺の秘術、とくとご覧あれ!」
その言葉と共に棗子は『|秘術・胡我羅赤瀑布《ヒジュツ・コガラシャクバクフ》』で戦場全体に溶岩の雨を発生させる。
それはまるで局地的に火山が噴火したかのごとく、赤い雨が空より降り注ぐ。
「なんだ!? これは……炎の雨か!?」
「や、奴らの攻撃とは違うのか!?」
秘術・胡我羅赤瀑布を目にして、鬼面の群れが放った攻撃である鬼火雨を想起したか、坂東武者達が混乱する。
あの鬼火雨を前に彼らは苦戦を強いられたのだから、仕方ないと言えば仕方ないが。
「ご安心を、この雨は皆様の力となります」
その言葉の通り、溶岩の雨を浴びた鬼面の群れはその身を焼かれ、逆に坂東武者達は大鎧が赤く輝く溶岩の鎧へと変化する。
この鎧があれば、鬼火雨など物ともすまい。
「さあ、今が好機です! 傷の深き方を急ぎ下がらせ、未だ戦える方々は私と共に残敵の掃討を!」
胡我羅赤瀑布により敵の数は半分近くにまで減った事を受け、棗子が号令をかけると坂東武者達が『おぉーッ!』と応え、反撃が始まった。
刀を携えた狼獣人の式神『思業式神「剣王牙狼」』を先頭に立てて攻撃の要とすると、頭上を飛ぶ鬼面の群れに斬撃波を放ち、両断した。
「あの式神、なんたる強さだ……!」
「だが、我らも負けられぬ! 今こそ意地と誇りを見せる時だ!」
剣王牙狼の活躍に刺激を受け、坂東武者達も士気が高まる。
鬼面の群れが降らせた鬼火雨も棗子が来る前までは驚異的な攻撃ではあったが、溶岩の鎧を纏った今ならば、全く恐れる事はない。
刀を持った者達が前に出て囮となり、その隙に伏竹弓を装備した者が鬼面の群れを射抜き、撃ち落とす。
「戦況はこちらに傾きつつあるようですね。ですが、最後まで油断はなりません」
この時点で既に勝機を掴みつつあったが、棗子は慢心する事なく鬼面の群れへ向け、引き続き胡我羅赤瀑布を放ち、徹底的に数を減らしていく。
溶岩の鎧で鬼火雨が効かなくなったともなれば、鬼面の群れに勝てる見込みなど最早万に一つもなかった。
「これで終いです」
「や、やったのか……? 我々は勝てた、のか……」
……そして、棗子が最後の一匹を倒した事で鬼面の群れは全滅。
これにより坂東武者達は危機を切り抜け、どうにか生き延びる事が出来た。
一時は全滅も覚悟していた彼らであったが、勝てた事に安堵しているようだ。
「まずは最初の危機を乗り越えましたね。ですが……」
棗子は鬼面の群れがやってきたであろう方角を向く。
おそらくは、あの向こうに妖の親玉が待ち受けているに違いない。
戦いはこれからである。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『瘴気の野分』
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POW : 気合や体力で消耗に耐える
SPD : 地形や装備を利用して風の影響を軽減する
WIZ : 結界や呪術で大風に対抗する
イラスト:anじぇら
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●巻ノ弐・瘴気ノ大風
「貴殿らが助けに来てくれたおかげで我々は助かった。改めて、心より感謝する」
鬼面の群れの戦いの後、分断されていた坂東武者達は合流を済ませて部隊を再結集すると、猟兵達に礼を述べる。
戦いで倒れてしまった者は少数出てしまったが、その犠牲はごく僅かで済んだのは不幸中の幸いと言うべきだろう。
負傷者は既に後退し、今ここにいる者達はまだまだ戦う事が出来ると言った様子だ。
「あの妖を操っていた親玉は、この戦場の先にいる事だろう。奴を討たねば、この戦いは終わらぬ。急ぎ、奴の元へ向かい……うおッ!?」
坂東武者の一人が言い終える直前、突如として凄まじい大風が吹き荒れる。
これがただの自然現象ではない事は誰の目から見ても明らかだ。
おそらくは妖の親玉が、これ以上は進ませまいと妨害工作をしてきたと見るべきか。
「くっ、なんだ、この暴風は……体に、力が、は、入らん……ッ!」
大人でさえ吹き飛ばされそうな暴風を前に、一行はその場で釘付けにされる。
どうやらこの大風には瘴気が混じっているらしく、こちらの心身を蝕んで消耗させようと言うつもりのようだ。
敵はこのような妖術を使う辺り、なかなか頭が切れるようだが、だからと言ってこのまま屈する訳にもいかない。
猟兵達はこの強烈な瘴気を含んだ大風を何としてでも切り抜け、坂東武者達と共に妖の親玉の元へ向かうのが次の目標だ。
さて、いかにしてこの瘴気の大風に耐え、先へと進むのか……?
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、なかなか厄介ですねぇ。
それでは、この様に。
『FVS』で『FMS』を複製、両者のバリアに『FES』の聖属性結界を重ね、正面を錘状に、後方は武者さん達共々くまなく覆った『涙滴状の多重防壁』を展開しまして。
【衞盫】を発動、『FVS』『FMS』の「防御力」と『FES』の抵抗力を強化しますねぇ。
物理的な『風』はバリアの形状と硬度で抵抗を大幅に減らして進み、入り込みうる瘴気は聖属性結界で浄化すれば対処可能ですぅ。
影響を受け易い方がいた場合や、単純な疲労回復に備えて『FQS』『FXS』の回復力を強化、治癒結界も重ねておきましょう。
後は『FPS』で先の情報を探りつつ進みますねぇ。
●大風ニ挑メ
「成程、なかなか厄介ですねぇ」
突如として戦場に吹き荒れた瘴気の大風を前に、るこるも吹き飛ばされまいと耐える。
出撃前のブリーフィングでは『何かしらの罠を仕掛け、進軍を阻んでくる』とは聞いたが、まさかこれ程の物とはさすがに予想外であったようだ。
この強烈な瘴気を含んだ大風ともなれば、屈強な猟兵とて例外なく心身を蝕んでくるのは確かに厄介と言う他ないだろう。
「く、これでは飛ばされないように耐えるのが精一杯だ……!」
「だが、このままでは我々も長くは持たんぞ!」
「おのれ、妖の親玉め……味な真似をしてくれる!」
一方で、るこるの周囲にいる坂東武者達も険しい表情で大風に必死で抗っていた。
あの様子を見るに、彼らも瘴気で体力を削られているようである。
「ここで消耗していては、後に響くのは間違いありませんねぇ。それでは、この様に」
すぐさまるこるは祭器『FVS』で『FMS』を複製。
両者のバリアに『FES』の聖属性結界を重ね、正面を錘状に、後方には坂東武者達共々くまなく覆った『涙滴状の多重防壁』を展開する。
そこへ更に『|豊乳女神の加護・衞盫《チチガミサマノカゴ・ボウアツノツイガサネ》』を発動する事で、展開した祭器を強化する。
多重防壁で大風の影響を大幅にカットし、まずは吹き飛ばされないようにしようと言うのが狙いだ。
「お……? 風の勢いが一気に弱まったぞ?」
「一体どのような妖術かは知らぬが、これは楽になるな」
「瘴気の影響も今は感じられぬ。これなら先へ進めそうだな」
先程まで吹き飛ばされないよう必死に耐え続けていた坂東武者達も、多重防壁で微風レベルにまで収まった大風を前に、ようやく進軍を再開する。
風が弱まっても瘴気が流れ込んでくる状況は変わらないが、そこは聖属性結界が瘴気そのものを浄化する事で、受ける悪影響はほぼシャットアウトすると言う徹底ぶりだ。
「ま、待ってくれ……少し、休ませては、くれんか……!」
そんな中、坂東武者の一人が進軍する仲間達に遅れる形で付いてくる。
瘴気の影響を受けやすい者なのか、或いは先程まで心身を蝕まれて疲労したのか。
その足取りは重く、進軍する戦列より少しずつ距離が離れていく。
「……大丈夫です?」
それを見たるこるは、消耗したであろう坂東武者の元へ直ちに向かい、声をかけると祭器『FQS』『FXS』を用いて治癒結界を重ね、疲労を回復する。
こう言った者へのケアも重要な仕事の一つだ。
「お、おお……体が軽い! かたじけない、これでまだまだ戦える!」
すっかり調子を取り戻した坂東武者は足早に戦列へと復帰する。
あの様子なら彼も大丈夫だろう。
「さて、この先の様子を今の内に……」
進軍を再開しつつ、るこるは祭器『FPS』で地形や周辺の情報を探知する。
探知した結果、この古戦場は非常に広大らしく、妖の親玉はかなり先にいるようだ。
「ふむ、これはまだまだかかりそうですねぇ。ですが、焦らずに進みましょう」
既に瘴気の大風への対策は万全と言う事もあり、今は着実に進むのみ。
るこるは引き続き坂東武者達に気をかけつつ、共に進軍するのであった。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
ふむ、瘴気は薄墨爛漫桜に設定した|『妖の息吹、玖の型、鵺鳴く夜』《魔力供給して鞘と刀身を共鳴させた破魔の音色を響かせる》で祓うとして、暴風は……まぁ、結界術の天候操作で相殺するとしましょうか。あ、せっかく鵺鳴く夜使ってるのだし、コレも音色の効果として設定しましょう。
リーンと澄んだ音色が響くと周囲の暴風が凪いで瘴気が晴れる、と。よし、これでいきましょう。できるだけ|中二病設定《青春、欲望開放》盛った方が薄墨爛漫桜の能力も強まるしね。
●大風ヲ祓エ
「わわっ、と……いきなりこんな暴風をやってくるとか、ちょっと空気読めてないんじゃないの?」
なんとか吹き飛ばされないよう、姿勢を低くした状態のアリスが思わず愚痴る。
大の大人である坂東武者達も舌を巻く大風ともなれば、彼女もまた例外ではない。
例え猟兵であっても、これだけの大風は実際厳しいと言う他ないのだ。
「く、風に、瘴気が……これでは、進むに進めぬ……!」
「でも、進まなきゃいけないでしょう?」
「それは分かっている! だが、いかんせんこれでは……ッ」
なんとか吹き飛ばされないよう耐えるアリスと坂東武者達。
この大風の中では会話も困難だ。
(ま、確かにこの暴風は厄介ね。わたし達を進ませないようにするどころか、瘴気で体力まで削るとかやる事が結構悪辣じゃない)
妖の親玉の狡猾さを改めて評価するアリス。
仮に坂東武者達が先に戦った鬼面の群れを何とか出来たとしても、この瘴気の大風に吹かれて吹き飛ばされてしまうか、瘴気で心身を蝕まれ力尽きてしまうかのどちらかだろう。
今、この窮地を乗り越える事が出来るのは猟兵しかいないのだ。
「……それじゃ、今からわたしがこの暴風を何とかしてみるわ」
「で、出来るのか……?」
「まあ見ててちょうだい」
アリスは先の戦いでも活躍した妖刀『薄墨爛漫桜』を手にすると、意識を集中する。
彼女の横にいる坂東武者は、一体どうやって瘴気の大風を何とかするのだろうかと言った様子で固唾を飲んで見守っているようだ。
「妖の息吹、玖の型、鵺鳴く夜」
アリスがそう口にすると、暴風が吹き荒れる中でリーンと澄んだ音色が響く。
本来ならば激しい風の音で、絶対に聞こえるはずのない音色だ。
「なんだ? 今、何か音が……」
「お前も聞こえたのか? 一体何が……」
坂東武者達もその音を確かに耳にしたのか、辺りを見渡す。
すると次の瞬間、周囲の暴風が凪いで瘴気が少しずつ晴れていく。
「風が……風が止んでいくぞ!」
「見ろ、瘴気も薄らいでいく! す……凄い、凄いぞ!」
あらゆる物を吹き飛ばさんとしていた大風はその勢いを削がれ、風に含まれていた強烈な瘴気も嘘のように消えていくのを感じる。
これには坂東武者達も信じられないと言った表情だ。
「ふぅ、とりあえずこんなところかしら? これで進めるわよね?」
上手く出来たと得意げな表情でアリスが微笑む。
実際のところ、瘴気は『魔力供給で鞘と刀身を共鳴させた破魔の音色を響かせる』事で祓い、大風は『結界術の天候操作で相殺』して収めたのが真相だ。
「い、一体何をどうしたら……あの大風を収める事が出来たと言うのだ!?」
「あら、聞きたい? これ、話すと長くなるけどいいかしら?」
食い気味に尋ねてくる坂東武者に対し、アリスがくすくすと笑って返す。
「今なら話を聞く余裕もあろう。是非とも聞かせてくれぬか!」
「ま、それもそうね。じゃあ道すがら、この妖刀の力について少しだけ、ね?」
そう言い、アリスは歩きながら薄墨爛漫桜の封印された力や、その能力を|中二病設定を《青春と欲望開放で》盛りに盛って語る。
……実際には自身のオリキャラを具現化したのが当の薄墨爛漫桜なのだが、そこは敢えて語るまでもないだろう。
大成功
🔵🔵🔵
臺破・櫻丸
アドリブ・連携歓迎
WIZにて対応(UC自体は使わず)
全く、妖ってえのは抜け目ねえな。もっともそれだけ俺達が
怖えんだろうさ!
「天候操作」とまではいかないが風を集めるぐらいなら試せそうだ
魂砕伐折羅を装備し天へ翳して真言を唱えよう
「|風鳴よ!風吹よ!風神よ《ノウマク・サンマンタ・ボダナン》!|我が杵に宿りて業成せ《ヴァヤベイ・ソワカ》!!」
ついでに集まってくる瘴気もひきうけよう
「魔喰」と「魔力吸収」を活かして喰らわせてもらうか。
まあ腹の足しぐらいにはなるだろうさ
風の出所を探れば親玉もそこにいるだろう。さあてカチコミと
いきますか!
●大風ヲ喰ラエ
強烈な瘴気を含んだ大風が行く手を阻む。
それはまるで妖の親玉が、これ以上の進軍はさせまいと抵抗しているようにも思えた。
「……うおっと!? こいつぁドデカい暴風だな!」
櫻丸は足を地に食い込ませるようにしながら大風に抗う。
周囲の坂東武者達も、どうにか吹き飛ばされないように耐えるのが精一杯のようだ。
「く、こ、これ以上は……吹き飛ばされ……!」
「よっ、と……大丈夫か?」
大風に耐え切れず戦列より脱落しそうになる坂東武者の手を取り、救助する櫻丸。
ここに彼がいなければ、大きく吹き飛ばされていたに違いない。
「す、すまない……また助けられてしまったな……」
「ハハッ、気にするな! 俺達は妖と戦う仲間なんだ、困った時は頼ってくれよ!」
暴風状態の中でも、櫻丸は余裕の笑みを浮かべて返す。
この程度ではへこたれない、と言ったところであろうか。
「全く、妖ってえのは抜け目ねえな。もっともそれだけ俺達が怖えんだろうさ!」
妖の親玉が一体何を考えてこの手に出たのかは直接問い質さない限り分からないが、そう簡単に来られてしまっては困るのではないか?
櫻丸はそう考える。
「それでも、この大風の中を進むのは困難だ。どうすれば……」
「確かにそれはそうだ。だがな、そこで俺達がいるって訳よ!」
破魔の威力を以て魂ごと粉砕する金剛杵『魂砕伐折羅』を手にし、天へ翳す櫻丸。
大風をどうにか出来る手段が彼にはあるようだ。
「|風鳴よ! 風吹よ! 風神よ! 我が杵に宿りて業成せ!!《ノウマク・サンマンタ・ボダナン ヴァヤベイ・ソワカ》」
魂砕伐折羅を翳すと真言を唱え、吹き荒れる大風に対抗する。
向こうが妖術の類で進軍を妨害するのなら、こちらも結界や呪術で迎え撃つまで。
……するとどうだろうか?
大風が真言に反応するかのように櫻丸の元へと吸い寄せられ、勢いが集中する。
「ぬ、うぅぅッ……そうだ、もっと俺の元に集まってこいッ……!」
先程よりも倍以上の暴風を受け、今度こそ吹き飛ばされそうになる櫻丸。
そこへ瘴気も集中し、より彼の心身を蝕み体力を削っていく。
これが常人であれば、吹き飛ばされつつ力尽きてしまうのがオチだろう。
「……む、無茶だ! それ以上は貴殿の体が持たぬぞ!!」
「心配無用ッ! ……どォれ、瘴気の味でも確かめるとするか!」
櫻丸は大口を開け、大風に混じる瘴気を直接吸い込むと言う荒業を敢行する。
本来、瘴気を吸い込むなど普通に考えれば自殺行為もいいところではあるが、魔喰と魔力吸収を活かして妖の邪気を喰らい、己の力とする式神である彼だからこそ出来る”奥の手”だ。
「瘴気も多少は腹の足しになるな。そして風の流れで分かるぞ、親玉は向こうだ!」
そう言い、妖の親玉がいるであろう方向を指を差す櫻丸。
どうやら瘴気を吸い込みつつ、大風の出所……即ち親玉の居場所を掴んだらしい。
「さあ、俺を風よけにしつつ進むぞ! こんな大風なぞ、恐れるに足りんわ!」
そして櫻丸が豪快に笑い、坂東武者達を先導する。
こんな無茶な事も出来るのが猟兵の強みだ。
「なんて凄い人なんだ……もし敵だったらと思うとゾッとするな」
「ああ、味方である事を仏に感謝せねばな……」
改めて、途轍もない援軍が来てくれた事に坂東武者達が安堵しつつ、櫻丸に着いていくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
風が強いと、髪が大変なことになるんですよね。
まずは暴れる髪を後ろにまとめて、縛るとして。
こんな暴風のときに役に立つのはUC【矢印過流】ですね。
これで矢印を風に向かって、ペタペタ貼れば、さすがの暴風でも爽風に。
瘴気はまだ残りますが、これは口鼻を服で覆って、
素早くここを抜けるのが一番でしょう。
お侍さん達にも声をかけて、こちらに集まってもらって、
一団になって、いざ親玉のもとに向かいましょう。
●大風ヲ操レ
「うわ、わわわ……髪が暴れて……!」
瘴気を含んだ大風が突然吹き始めた事で、各々が吹き飛ばされないようにする中、摩那は長い黒髪が乱れ、大変な事になりつつあった。
幸い彼女はスマートグラスを装備している事から、髪が目に入って視界が完全に塞がれるよう事態はギリギリで避けられたからいいが、まずは暴風の中で暴れ回る髪をどうにかしなければならない。
「ああもう、今回の親玉はホントにロクでもない事をやってくるのね……!」
思わず本音が漏れそうになりつつも、摩那は髪を後ろにまとめて縛る事で応急処置を済ませる。
これならば当面は安心だろう。
「……これでよし、と。それにしても、この暴風の中を進むのは大変ですね」
摩那は姿勢を低くしながら、風を受ける面積を減らす事で吹き飛ばされないように耐えつつ、周囲の状況を確認する。
思わぬ事態が起きたら、まずやるべきは状況の把握だ。
「うぬぅ、これでは先へ進めぬ……!」
「しかも瘴気混じりと来たか……長くここに留まるのは危険だぞ」
「ど、どうすればいいんだ……!?」
坂東武者達も吹き飛ばされないよう必死に耐えているのは変わらず、進む事もままならないと言った様子だ。
(今は何とか耐えているようですが、このままでは長くは持たないようですね。先程と似たような状況ではありますが、今度は自然現象と戦うような物……と、なれば)
この状況に適したユーベルコードで大風に対抗する以外に道はない。
思考をフル回転し、数秒で考えをまとめた摩那は坂東武者達の元に向かう。
「皆さん、大丈夫ですか?」
「どうにか耐えている……と言ったところだが、正直厳しいと言わざるを得ないな」
早速声をかけると、坂東武者達はその場に釘付けにされた状態で返答する。
見たところ、下手に動けない状況のようだ。
「やはりこの暴風は厄介極まりないですが、ご安心を。私が何とかしましょう」
「……出来るのか? もしや、貴殿も妖術が使えると?」
「似たような物とでも言っておきましょう。励起。昇圧。空間イメージ展開。操作開始」
吹き荒れる暴風の中、摩那は『|矢印過流《ベクトル・ボーテックス》』で空間に多数の矢印を浮かべると、念動力で矢印の向きを風とは逆の方向に転換させる。
その直後、暴風状態であった風は嘘のように収まっていくではないか。
矢印過流は『範囲内のあらゆる物質を矢印の向きが逆方向であれば減速出来る』ユーベルコード……それは風も例外ではないのだ。
「お、おお……風が収まったぞ! これならば……」
「ですが、瘴気まみれなのは変わらないようです。皆さん、口鼻を何かしらで覆って下さい。その間に素早く進軍しましょう」
摩那の言うよう、風こそ収まったが強烈な瘴気まではどうにもならなかったらしい。
ならば、出来る限り瘴気を吸い込まないようにしつつ進むのが最適解だ。
坂東武者達は彼女の言葉に従い、直ちに口鼻を覆うと進軍を再開する。
「それから出来る限りこちらに集まってもらって、一団になって……いざ、親玉のもとに向かいましょう!」
「「「おぉぉーッ!」」」
未だ瘴気はあれど、行く手を阻む大風がなければ進む事は出来る。
摩那と坂東武者達は士気も高いまま、足早に戦場を突き進んでゆくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鳳獣寺・棗子
これは何とも禍々しき風。
なれど、此を抜けねば妖の首魁へは辿り着けますまい。
でしたらば、如何にかして踏破しませねば。
皆様、参りましょう。
輿より降り、胡我羅摩曽彦が分霊を呼び寄せます。
「我ら鳳獣寺が守神、胡我羅摩曽彦命が分御霊よ、此に来たり我らに御力貸借願い給う」
分霊に先頭へ立って頂き、封魔浄結縄を手に握って頂き【怪力】にて此を支え。
坂東武者の皆様には、この縄を持って頂くか、お互いに手を繋ぎ合うかで互いに支え合って頂き、暴風への対処と致します。
縄の【浄化】の霊力にて、瘴気を凌げればと。
私は分霊の後からついて参りつつ、適宜UCにて回復を試みます。
今暫しの辛抱です、着実に参りましょう。
●大風ヲ進メ
「これは何とも禍々しき風。なれど、此を抜けねば妖の首魁へは辿り着けますまい。でしたらば、如何にかして踏破しませねば」
輿の上で大風を受ける棗子は、これが敵の親玉の仕組んだ妖術である事を察する。
このような暴風に加え、強烈な瘴気が混じっているともなれば、おそらくは禁術とも呼ばれる妖術の類に違いあるまい。
こうして瘴気も発生させると言う事は、周囲の環境に悪影響を及ぼすも同然。
真っ当な陰陽師であれば、決して手出ししてはならない危険な物だ。
(おそらく妖の首魁は私と同じ陰陽師……なれば、悪しき者を討つのが鳳獣寺の使命。何としても、この場を切り抜けて首魁の元へと辿り着かねば)
とにかく今は急がなければならない。
棗子は飛ばされないようにしつつ、すぐさま大風への対策を講じる。
あまり時間をかけていては、瘴気にやられてしまうのは避けられまい。
「皆の者、まだ、生きているか……!」
「ど、どうにかな……だが、こんな凄まじい暴風は初めてだ……!」
その一方で周囲の坂東武者達も、暴風に吹き飛ばされないよう必死の様子であった。
今はどうにか耐えているが、力尽きるのも時間の問題である。
「……皆様、参りましょう」
棗子が輿から降りると、彼女に付き従う獣神分霊「胡我羅摩曽彦」が分霊を呼び寄せる。
「我ら鳳獣寺が守神、胡我羅摩曽彦命が分御霊よ、此に来たり我らに御力貸借願い給う」
その言葉の後で分霊が先頭へ立つと、術で延伸可能な注連縄『封魔浄結縄』を手にし、怪力を以て支える。
「坂東武者の皆様には、この縄を持って頂くか、お互いに手を繋ぎ合うかで互いに支え合って頂き、暴風への対処と致します」
「この縄をか? 吹き飛ばされはしないのか……?」
「分御霊の力は大岩を軽々と持ち上げる程です。皆様を支えるに不足はありませぬ」
本当にこの縄を手にするだけで何とかなるのかと半信半疑な坂東武者に、棗子は自信をもって答える。
「周囲に瘴気が漂っているが、そこは大丈夫なのか?」
「縄には浄化の霊力が込められています。この場を耐えるには十分かと」
それに、もしもの事があれば私が皆様の助けになりましょう。
そう全面的なサポートを約束する事で坂東武者達を安心させると、彼らはこぞって封魔浄結縄を手にする。
「……皆、縄は持ったな! いざ、進軍、進軍ー!」
そして坂東武者達は先頭の分霊の後を進み始める。
本当にこの暴風の中を進めるのかと不安な彼らであったが、封魔浄結縄の効果は抜群だったらしく、意外と前進は出来ているようだ。
「風こそ強いが、これならば進めそうだ。まったく、大した怪力よな」
「それに瘴気の影響も少ないな。この縄がなければどうなっていたか……」
封魔浄結縄の予想以上の効果に驚きを隠せない坂東武者達。
進むのは骨だが、風に吹き飛ばされなければ進軍は出来る。
彼らは少しずつではあるが、歩を進めていく。
「今暫しの辛抱です、着実に参りましょう」
更には彼らの後方を行く棗子が、『|精命与活符《セイミョウヨカツフ》』で坂東武者達を適時回復しつつサポートする。
まさに万全の体勢だ。
この調子ならば、瘴気の大風であっても恐れる事なく踏破出来る事だろう。
大成功
🔵🔵🔵
八秦・頼典
●WIZ
連携・アドリブ可
流石の坂東武者等もこの瘴気を含んだ大風には、か
例えこのまま進めたとしても、それでは妖の親玉の元に辿り着く頃には消耗しきっているだろう
本来であれば男衆相手の依頼は受け付けないが、彼らの祖国を思う勇ましき覚悟がボクの心を大いに震わせた
ここはひとつ、助け舟を出そうではないか
|阿近《あこん》、|吽近《うこん》
頼んだよ
二頭の霊獣に『臘月陰陽符』を貼り付け、阿近の【結界術】と吽近の【浄化】の力を含んだ黄金護符嵐をもって、この瘴気の大嵐に抗おう
明るく澄み渡った月の如き光球となった両頭はボクらが移動すれば付いてくるが、効果は何時までも続く訳でもない
坂東武者らよ
一気呵成に駆けて急ぐぞ
●大風ニ抗エ
「少し出遅れてしまったようだけど、どうにか間に合った……と、言ったところかな? それにしても、これ程の大風とは厄介だね。さて……」
少し遅れる形で戦場へとやってきた八秦・頼典(平安探偵陰陽師ライデン・f42896)は、吹き荒れる暴風の中でも冷静沈着な様子で辺りを見渡すと、視線の先には坂東武者達が全力で大風に立ち向かっている様子が見えた。
「くぅっ、飛ばされないように耐えるだけで、精一杯だ……!」
「何とか耐え凌げ! 今ここで我々が屈する訳には……いかぬぞ!」
「おうともよ! 生まれ育った祖国を守れるのは、俺達しかいないからな!」
覚悟を決めた表情で大風に立ち向かう坂東武者達。
彼らには国を守るために出陣し、命懸けで妖と戦っているのだ。
「例えこのまま進めたとしても、それでは妖の親玉の元に辿り着く頃には消耗しきっているだろう。それでも彼らは突き進む、か……気に入った」
本来なら男衆相手の依頼は受け付けず、市井の評判は女癖が悪い事で知られている好色家貴族の頼典だが、坂東武者達の祖国を思う勇ましき覚悟に心を打たれたか、一人頷く。
「ここはひとつ、助け舟を出そうではないか」
このまま妖の好きにさせてしまえば、東国の一つが滅びてしまう。
アヤカシエンパイアの平和を人知れず守っている平安貴族の彼からすれば、それは避けねばならない事の一つだ。
頼典は大風に立ち向かう坂東武者達を手助けすべく、動き出すのであった。
「|阿近《あこん》、|吽近《うこん》、頼んだよ」
頼典に従う霊獣『阿近』と『吽近』に『臘月陰陽符』を貼り付けると、阿近には結界術を、吽近には浄化の力を含んだ黄金護符嵐を付与する。
この二頭の霊獣と共に、大風を切り抜けるつもりのようだ。
「……よし、結界術の方は問題なし。浄化の力で瘴気も大きく薄まっているね」
明るく澄み渡った月の如き光球となった両頭の黄金護符嵐が問題なく機能している事を確認すると、頼典は両頭を伴い前進を始める。
周囲は猛烈な暴風が吹き荒れているが、阿近の結界術のおかげで微風も同然。
難なく進む事が出来るだろう。
「思うように、進めぬ……このままでは……!」
「坂東武者らよ、貴殿らの国を想う覚悟と心はとくと見せてもらった。ここはこの陰陽師探偵『ライデン』が手助けしよう」
時を同じく、大風を前に苦しんでいる坂東武者達の元へ頼典が颯爽と現れ、スマートに名乗り出る。
「な、貴殿は? 我らを……助けてくれるのか?」
「その通り、この阿近と吽近が進軍の手助けとなろう。さあ、一気呵成に駆けて急ぐぞ」
「あい分かった! ……皆の者、ライデン殿に続いて駆けるぞ!」
今は彼に従うのが得策だと判断した坂東武者達は、迷わず頼典の後に続く。
先程まで吹き飛ばされそうになっていた彼らだったが、阿近と吽近の力もあって大風の中をスイスイと駆け抜けていく。
「おお、あの暴風がまるで嘘のように……! 瘴気の影響もまるでないぞ!」
「しかし効果は何時までも続く訳でもない。この場を急ぎ、駆け抜けるのだ」
「分かり申した! すわ、走れ、走れーッ!」
坂東武者の一人が呼び掛けると、周囲の者達も『おぉーッ!』と応える。
そして大風に抗いつつ、頼典達は古戦場を突き進んでいくのであった。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
暴風に瘴気……広範囲攻撃としては理に適ってる。
だけど、もしも風が一方向だけに流れてしまえば?
瘴気もまた一方向に押し流されるはずだ。そこを避けて進めばいい。
坂東武者たちから離れた場所にUCを発動。
虚空を斬り付けることで空間裂創を作り出し、吹き荒れる風をそこに引き寄せるんだ。
あとはさっき言った通り、さ。
その場を離れるまでは【毒耐性】で耐えて、坂東武者たちと合流するよ。
これで一つ貸し……ってのは違うか。
彼らは無力じゃない。
もてる力を他人を守るために使おうとする人たちだ。
僕もまた守り手だし、気にしないで貰えるといいね。
「ま、女の子だった方がやる気出たかもしんないけど、ね?」
●大風ヲ斬レ
「おっと、これはまた……猛烈な強風ってところだね」
激しい暴風が吹き荒れると輝凛もまた、吹き飛ばされないよう姿勢を低くする。
いかなる妨害工作が起きても対処出来るようにしていたつもりだが……なるほど、こう来たかとも思った事だろう。
(暴風に瘴気……広範囲攻撃としては理に適ってる)
この状況をどうした物かと輝凛は考える。
早くなんとかしなければ、坂東武者達が危ないのは言うまでもない事だ。
(……だけど、もしも風が一方向だけに流れてしまえば? 瘴気もまた一方向に押し流されるはずだ。そこを避けて進めばいい)
結論は早い内に出た。
風を一方向だけに流す……そんな事が出来るのは、この世界では妖術を使える者くらいしかいないだろうが、猟兵ならば話は別だ。
「さて、そうなるとどこへ風を流すかって話になるね。適切な場所は……っと」
やるべき事が決まり、輝凛は暴風の中を見渡す。
狙うは坂東武者達から離れた場所……そこへ風を集中して流してしまえば、この場を突破する事は出来るはずだ。
「……よし、あの辺りにしよう。もう少しだけ耐えてよね」
そうしておおよそのアタリを付けると、輝凛は人造妖刀『AL015RD ムラマサエッジ・ハイカスタム』を抜いた。
「――輝き、閃き、塵と為せ!」
叫びと共に『|獅輝斬滅閃《レディアント・ディバイド》』の斬撃が放たれると、ちょうど坂東武者達から離れた場所を斬り付け、全てを消し去る異次元空間へ繋がる空間裂創を発生させる。
吹き荒れる暴風はそのまま空間裂創へと吸い込まれ、その場所へと風が流れていく。
「これで上手く行ったかな。後はこのまま……」
瘴気に耐えつつ、輝凛は空間裂創を遠回りするかのように進む。
獅輝斬滅閃により流れが変わった事で、大風の勢いに変化が現れた事に坂東武者達も気付きつつあるようだ。
「む……? 風の勢いが変わり出した……?」
「……見ろ、あの場所に風が集中しているようだぞ!」
「どうやら瘴気も向こうへ押し流されているようだ……一体何が起きたのだ?」
低くしていた姿勢をゆっくり戻しつつ、坂東武者達は空間裂創を見る。
彼らが知る限り、あのような事が出来る者はおそらく……
「や、みんな大丈夫?」
そこへ輝凛が陽気に声をかけてくる。
何事もないと言った様子ではあるが、あの空間裂創を作り出したのは間違いなく彼だと確信する。
「おお、貴殿は……どうやらまた助けられたようだな」
「いいのいいの、これが僕らの仕事みたいな物だからね」
その後で『ま、女の子だった方がやる気出たかもしんないけど、ね?』と冗談めかして口にする輝凛。
「それはともかく、進むなら今だよ。早い内に親玉の元へ向かおう」
「うむ、急ぐとしようぞ! 皆の者、進軍だ!」
そして、すぐさまこの場を後にして一行が進み始める。
大風の影響も、今なら特に気にはなるまい。
(これで一つ貸し……ってのは違うか。彼らは無力じゃない。もてる力を他人を守るために使おうとする人たちだ)
移動中、輝凛は改めて坂東武者達の強さと言う物を知る。
術力を持たぬ無能力者でも、守るべき物のために妖と戦う強い心が彼らにはあるのだ。
(必ずこの人達を生きて帰さないと……だね)
輝凛は妖の親玉との決戦を前に、決意を新たにするのであった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『悪霊陰陽師』
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POW : 赤鬼剛力薙
【赤鬼型式神の太い腕】の横薙ぎで、近接範囲内の全員を攻撃する。近接攻撃を仕掛けてきた敵には先制攻撃可能。
SPD : 青鬼乱撃陣
【青鬼型式神の鋭い爪や角】で近接攻撃する。低威力だが、対象が近接範囲から離脱するまで何度でも連続攻撃できる。
WIZ : 陰陽爆砕撃
【青鬼の鋭い爪や角】で装甲を破り、【赤鬼の怪力】でダウンさせ、【陰陽爆砕符】でとどめを刺す連続攻撃を行う。
イラスト:黒丹
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●巻ノ参・悪霊陰陽師、現ル
猟兵達は強烈な瘴気を含む大風の罠を突破し、多くの坂東武者と共に妖の親玉が待ち受けているであろう場所へと辿り着いた。
おそらく、ここに奴がいるはずだ。
「むう、暴風吹き荒れる戦地を突破したが……誰もおらぬな?」
「まだ親玉の元に辿り着いた訳ではないのか?」
「またどこかに敵は罠を仕掛けているかもしれぬ。皆の者、油断するな!」
そう言うや、各々が武器を取り周囲を警戒する。
……その時であった。
「ホホホ……まさか我が二重の策を切り抜け、ここまで来ようとはな。どうやらこの国は凡愚の集まりではないと見える」
どこからか聞こえてくる声に、一行は辺りを見渡す。
声の主は一体どこに?
「……さて、よくぞここまで来た物だ。そこは褒めてやろうではないか」
その言葉と共に、妖の親玉――悪霊陰陽師が虚空よりその姿を現した!
かつて、強い恨みを抱えて死んだ平安貴族が死後に大悪霊となった者で、この世界の平安貴族は全員が陰陽師のため、その力は絶大だ。
奴ほどの実力者であれば力の弱い妖を大量に召喚したり、瘴気を含む暴風を起こす事が出来るのにも納得が行く。
「そんなお前達に敬意を払い、ここは私自らが地獄へ送って進ぜよう」
直後、悪霊陰陽師が指で妖術陣を描くと周囲に鬼面の群れが大量に現れ、周りを包囲されてしまう。
これは厳しい戦いになりそうだ。
「貴殿らは親玉を討ってくれ! ……あの妖は、我々が引き受ける!」
「分断されていない今ならば、奴らとは戦える! ここは我らに任せてくれ!」
「悔しいが、あの親玉を倒せるのはアンタ達しかいない……頼んだぜ!」
猟兵達にそう告げると、坂東武者達が武器を構え、鬼面の群れに狙いを向ける。
最初に分断されていた時は苦戦を強いられていた彼らであったが、部隊が揃っている今であれば互角以上に戦える事だろう。
「ほう? 凡愚共が身を挺して足止めとは健気よのう……まあ、あのような雑魚などいつでも始末は出来る。であれば、まずはお前達と行こうではないか」
赤鬼と青鬼の式神を召喚し、悪霊陰陽師が戦闘体勢に入る。
奴が召喚した鬼面の群れは周囲の坂東武者達が抑え込んでくれるため、戦闘中に妨害を受ける事はあるまい。
ならばやるべき事は一つ……今こそ妖の親玉である、悪霊陰陽師……討つべし!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
成程、確かに優秀では有りますねぇ。
【銀翼袍】を発動し飛行、『崩壊の波動』を放射しますぅ。
【赤鬼】の力は接敵前提、飛行と速度、『FIS』の転移を併せて接近自体を防ぎ、遠距離攻撃等は『FLS』の空間歪曲障壁で逸らすか、『波動』に巻込んで崩壊させれば良いでしょう。
式神と陰陽師さんも『波動』の対象範囲、これ自体によるダメージに加え、防御面の能力も『波動』で崩壊し脆くなりますので、『FRS』『FSS』の[砲撃]と『FMS』のレーザー、『FGS』の重力弾を集中させ[範囲攻撃]で式神と陰陽師さんを纏めてて叩きますねぇ。
一応『波動』の範囲には『鬼面』達も含まれますから、彼らの援護にも?
●祭器対妖術
「成程、確かに優秀では有りますねぇ」
遂に現れた妖の親玉を前に、るこるは相手の力を評する。
少数に分けた戦力で坂東武者達をおびき寄せ、部隊を分断したところへ本命の大部隊をぶつけて数で押し潰し、もしそれが失敗したとしても強烈な瘴気を含む大風で進軍を阻みつつ近付けさせないと言う二つの策……猟兵の助けなしでは今頃彼らは全滅していた事だろう。
加えて数多の鬼面の群れを再び召喚し、自身も力の強い式神で戦おうとする辺りからして、戦力も一級品に違いない。
まさに知略と戦闘力、二つに長けた優秀な敵とでも言うべきか。
「ですが、東国への侵攻もここまでですよぉ」
「ホホホ……面白い、止められる物ならば止めてみせよ。……やれい!」
悪霊陰陽師が赤鬼型式神を操り、早速攻撃を仕掛ける。
るこるに向けて丸太よりも太い剛腕が横薙ぎに振り回されるが、寸前で回避した。
間一髪だ。
「これは……凄い力のようですねぇ」
「まだまだ!」
そこへ更に容赦ない追撃を向けられ、るこるはすぐさま回避に集中。
振り下ろされた剛腕が大地に叩き付けられると、着弾点を中心に衝撃波が走る程のパワーを前に、るこるは改めてこの悪霊陰陽師の力が相当な物である事を知る。
(この式神は恐らく近接パワー型……離れられると弱い、と見ていいでしょうか)
赤鬼型式神の攻撃を躱しつつ、るこるはどうするべきかを考える。
向こうは近接攻撃を主体にしてくるようだが速度もあるらしく、距離を取っても追い付かんとするだろう。
上手く距離を取りつつ、式神にもダメージを与える手と来れば……
「やってみましょう。大いなる豊饒の女神の使徒の名に於いて、その御印たる裳を此処に」
ここで策を思い付いたか、るこるは『|豊乳女神の加護・銀翼袍《チチガミサマノカゴ・ギンヨクノショウゾク》』を発動し、女神の衣を纏った姿に変身・飛行する。
「距離を取るつもりか? それは有効だろうが、私の式神からは逃れ……むッ!?」
飛行し距離を取ろうとしたるこるへ悪霊陰陽師が式神を仕向けるが……次の瞬間、何かの異常に気付く。
るこるへ向かう式神の体が、崩壊している?
……いや、それだけではない。
坂東武者達と交戦中の鬼面の群れの一部も同様に崩壊しているではないか。
「ええい、これは一体何の妖術だ!? おのれ!」
すぐさま爆砕符を投げる悪霊陰陽師であったが、符も同じく崩壊し塵と消えた。
るこるが銀翼袍を発動した時点で認識阻害を伴う、強力な『崩壊の波動』を放ち続けているのがその理由だが、その事に向こうは気付いていもいない。
「さあ、今度はこっちの番ですよぉ」
そしてこの隙を逃さないとばかりに、『FRS』『FSS』で砲撃、『FMS』でレーザー、『FGS』の重力弾を集中させ、強力な火力による範囲攻撃を叩き込む。
「フン、こんな物など我が防御結界陣で……な、脆くなって……ぬおぉッ!?」
瞬時にこの攻撃を防御しようとした悪霊陰陽師の表情が焦りの色に変わる。
既に崩壊の波動を浴び、防御結界すらまともに機能しない状態にあった事に気付いた直後、式神もろとも範囲攻撃に巻き込まれた。
「ホホホ……やりおるわ。その力で凡愚をここまで導いたのにも頷けるものよ」
……その直後、身代わりの|人形《ヒトガタ》で直撃を寸前で避けた悪霊陰陽師が再び姿を現す。
まだ戦いは始まったばかりだが、奴は早々に肝を冷やす事となったのは間違いあるまい。
大成功
🔵🔵🔵
黒木・摩那
坂東武者が身を挺して、鬼面を押さえてくれているのですから、
ボスは任せてください。
サクっと倒してあげますよ。
ヨーヨー『エクリプス』で戦います。
相手は3体で連携を取ってくるだけに面倒です。
ここはヨーヨーの軌道を曲げていくことで、3対同時攻撃を狙います。
まずは相手の攻撃を誘導するために、攻撃を【受け流し】して、こちらのピンチを演出します。
これでこちらに殺到してきたところをUC【七星八極】で背後からヨーヨーで攻撃します。
ついでに【電撃】もつけてあげます。
●騙シ討チ
「ボスは任せてください。サクっと倒してあげますよ」
坂東武者達にそう告げると、悪霊陰陽師に向き直る摩那。
命懸けで戦う彼らのためにも、ここであまり時間はかけられない。
「フン、大した自信よ。しかしこちらの方が数の上では勝っているぞ?」
奴が言うように、向こうは式神を二体連れている事から実質一対三の戦いだ。
加えて、相当な手練れともなれば簡単に倒せるような相手ではないだろう。
「確かに数的不利なのは認めます、ですが実際に戦ってみない事には……ですよ」
摩那は愛用のヨーヨー『エクリプス』を構え、怯む事なく返す。
「面白い、その強がりがいつまで続くか見物よ……さあ、参るぞ!」
見下したような笑みを浮かべつつ、戦闘が始まった。
まずは小手調べとばかりに悪霊陰陽師が爆砕符を連続して投擲するも、摩那が念動力を用いて軌道を逸らす。
そのまま明後日の方向に飛び、地に落ちた爆砕符が爆発・消滅する。
「当たったら危ない攻撃ですが、当たらなければ意味はありません」
「ほう? どのような術かは知らぬが、少しは出来るようだ……だが!」
「……なんの!」
続いて悪霊陰陽師は赤鬼型式神と青鬼型式神の連携攻撃を仕掛けるが、この攻撃も上手く躱し事無きを得るも、パワーとスピードを織り交ぜた式神の攻撃は熾烈だ。
この連携を掻い潜り、反撃に移らねばならないのはなかなかに厄介である。
(個々の攻撃よりも、同時に攻め込まれると面倒ですね。さて……)
おそらく次は三体で連携を取ってくるだろうが、そこからどうにか反撃の糸口が掴めないかと摩那は考える。
上手く相手の油断を誘えば、付け入る隙はあるかもしれない。
狙うならばそこだろう。
(ここは一か八か、賭けてみますか)
覚悟を決めて摩那が次の攻撃に備えると、次の攻撃がやってきた。
「多少は出来るようだが、これは耐えられるか!」
放たれた青鬼の鋭い爪や角による連続攻撃が牙を剥く。
スピードに特化した式神のラッシュを前に、摩那はひたすら攻撃を受け流す事で対処するが、どうにか捌くのがやっとと言った様子だ。
「ッ、早い……!」
相手に押されている事を自覚し、思わず冷や汗を流す摩那。
その様を悪霊陰陽師は見逃さない。
「まだまだ、やれい!」
今が好機とばかりに赤鬼の追撃を放つ。
怪力でダウンさせれば、後は陰陽爆砕符でトドメを刺すのみだ。
「くっ……!」
せめてもの抵抗とばかりにエクリプスを射出する摩那。
だが、苦し紛れの反撃は易々と回避されてしまう。
「その命、もらっ……がッ!?」
そのまま赤鬼の追撃が振り下ろされる直前、射出されたエクリプスが不可解な軌道で戻ってきて、悪霊陰陽師の背後に直撃・妨害される。
摩那が密かに放った『|七星八極《グラン・シャリオ》』だ。
「なんだ!? どこから……ぬぅぅぅッ!?」
更に軌道を変化させたエクリプスが青鬼と赤鬼にも直撃、変幻自在の軌道が読めず悪霊陰陽師が翻弄される。
わざとピンチを演出しつつ、相手を誘い出した上で七星八極で反撃すると言う摩那の狙いが的中した形だ。
「おのれ、小癪な真似を……!」
「これはおまけです、返品は受け付けませんよ」
「ぬ、おおおぉぉぉッ!?」
仕上げに赤鬼と青鬼を巻き込むようにエクリプスのワイヤーを絡ませると、そこへ強烈な電撃を流し込む。
追い詰めたつもりが逆に追い詰められる事になるとは思わず、悪霊陰陽師は悶絶の叫びを上げるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
鳳獣寺・棗子
ええ、後ろはお任せ致します、皆様。
そのご信頼にお応えするべく、彼の妖は確と討ち果たしてみせましょう…!
敵は偉大なる先達。妖となりて更なる強大な存在とはなっておりますが。
世を真に平安と成す、その一歩を出す為にも。いざ、乗り越えさせて頂きます。
剣王牙狼を呼び出し、敵の式神と交戦を。
敵の符による妨害を躱す為、式神を盾にできる位置を保たせましょう。
そのままでは質も量も彼方が上、抗しきるは困難。
なれば今こそ、真の力を引き出す時!
式神転臨・剣神牙狼。
牙狼を剣神へと進化させると共に、天地無双剣での攻防一体の戦いを行わせて参ります。
隙を突く式神の攻撃は符を投げての【爆破】で攻撃しつつ妨害を。
●善ト悪ノ陰陽師対決
「ええ、後ろはお任せ致します、皆様。そのご信頼にお応えするべく、彼の妖は確と討ち果たしてみせましょう……!」
この状況においても、坂東武者達は猟兵達を信じて盾となってくれる。
彼らの勇気に応えるためにも、棗子は妖の親玉の討伐を誓う。
(そして……やはり相手は私と同じ陰陽師……)
出来れば親玉は強力な妖術を使う妖であって欲しかったが、棗子の予想は的中した。
彼女からすれば相手は偉大なる先達……やりにくい敵だ。
だが、ここで奴を討たねば東国の命運は尽きてしまう。
それが死して悪に堕ちた陰陽師ならば尚更だ。
「……ほう、私と同じ陰陽師とな。しかし、子供ごときが私を倒せるか?」
「世を真に平安と成す、その一歩を出す為にも。いざ、乗り越えさせて頂きます」
「よかろう。やってみせるがいい……出来るものならばな」
悪霊陰陽師が鬼の式神を前に出すと、それに呼応するかのように棗子は思業式神「剣王牙狼」を呼び出し、同じく前に出す。
「それがお前の式神か。どれ程の力か、精々見せてもらおうぞ」
「……参ります」
それ以上は語らぬとばかりに棗子が命ずると、双方の式神が激突する。
相手はパワーとスピードに長ける二体の式神と言う事もあり、剣王牙狼を圧倒。
早々に防戦が続く。
「さすがに強い……これが先達の実力……!」
戦闘が始まってすぐ、悪霊陰陽師が使役する式神の力が相当な物である事を早々に思い知る棗子。
そのままでは質も量も彼方が上、抗しきるは困難と、長期戦は明らかに不利だ。
「ホホホ、我が式神を前によく持つ……なるほど、戦い方も理解しているか」
一方の悪霊陰陽師は爆砕符による妨害を棗子へ仕掛けようとするも、彼女は式神を盾に出来る位置を保たせると言う立ち回りに感心する。
これでは爆砕符を放ったとしても剣王牙狼に防がれるだけだ。
「どうやら半人前の子供と言う訳ではないようだが、守ってばかりでは勝てぬぞ?」
「確かにそうです……なれば今こそ、真の力を引き出す時!」
この状況を打破するには、これしかないと踏んだ棗子が勝負に出ると同時に叫ぶ。
「剣王よ、今此処に剣神へと至りて、汝が真の力を示すべし!」
棗子の『|式神転臨・剣神牙狼《シキガミテンリン・ケンシンガロウ》』が発動すると、剣王牙狼が獣神形態「剣神牙狼」に変身。
真の力を解放する。
「それがお前の言う真の力か、ならば試してくれよう……やれい!」
まずは小手調べと言った感じで悪霊陰陽師が命じると、青鬼のスピードによる連続攻撃を仕掛ける……が、一発一発に対し、剣神牙狼は返し刀で受け止め、神速の突きで反撃する天地無双剣で迎え撃つ。
スピードにはスピードで対抗、と言う訳か。
「ぬぅ、先程よりも動きがまるで違う!? だがこちらの方が数では……くッ!?」
「させませぬ!」
そこへ赤鬼をねじ込んで死角から攻撃を試みる悪霊陰陽師であったが、棗子の放った符が爆発・妨害される。
その間にも剣神牙狼の天地無双剣による攻防一体の戦い方で青鬼を圧倒し、形勢が逆転されていく。
赤鬼を割り込ませる事も出来ず、かと言ってこちらの爆砕符による妨害もままならず、次第に押し込まれる悪霊陰陽師。
「剣神の刃にて、その悪しき心を祓い、成仏なされよ!」
「お、おのれ……子供ごときに……!!」
剣神牙狼の猛攻を前に、二体の式神を慌てて呼び戻し、防御結界を重ねて耐え凌ぐ。
悪霊陰陽師は棗子を子供だと侮った結果、手痛いしっぺ返しを食らうと言う屈辱を味わうのであった。
大成功
🔵🔵🔵
八秦・頼典
●WIZ
これはまた随分と醜く膨れ上がった自尊心そのものな元ご同輩、いや先輩かな?
後輩なら先輩を敬えとは言うが、生憎ながら軽口を叩くのがボクなりの社交辞令なのでね
しかし、相手は腐っても陰陽師
ここは古き仕来りに従った式神比べと相見えよう
なるほど、俊敏な青鬼に剛力な赤鬼による息の合った連携か
これは中々骨が折れそうだけど…ボクの式と比べればだね
オン!
【形代招来】…随分貧相な式とは耳が痛い
しかし、貴殿にはこれで十分と判断したまで
確かにか弱い形代であるが、鬼の目に張り付いたり口の中に入り込んだり、雲霞の如く纏わり付いたりと便利なものさ
勿論、貴殿の符も落とさせて貰うよ
さ、阿近に吽近
思う存分と食らいつけ!
●式神ノ対決
「これはまた随分と醜く膨れ上がった自尊心そのものな元ご同輩、いや先輩かな?」
変わり果てたかつての先達を前に頼典が軽口を叩く。
相手は自分と同じ平安貴族であった者だが、死して悪に堕ちたともなれば遠慮は一切いらない。
「……ほう、お前もまた私と同じ陰陽師か。しかし最近の若造は礼儀すらも知らぬと見える。後輩なら先輩を敬う物であろう?」
そんな頼典の態度が気に入らなかったか、悪霊陰陽師が苦言(?)を呈す。
まさしく醜く膨れ上がった自尊心の塊のような存在だ。
「生憎ながら軽口を叩くのがボクなりの社交辞令なのでね」
よもや敵から礼儀がどうこうなど言われるとは思わなかったが、あのような輩には礼儀は不要だ。
「しかし、相手は腐っても陰陽師。ここは古き仕来りに従った式神比べと相見えよう」
「私の式神と力比べをしようとは面白い。ならば力の差を存分に見せてくれよう」
直後、頼典は霊獣・阿近と吽近を。
悪霊陰陽師は赤鬼と青鬼の式神を召喚し、双方が睨み合う。
「ふむ、霊獣を使うとはな。しかし、我が式神に勝てるかどうか見物よのう」
「それはやってみなければ分からないよ? さあ、やろうか」
「……では、行くぞッ!」
その言葉と共に、悪霊陰陽師が早速攻撃を仕掛けてくる。
青鬼のスピードを生かした攻撃と赤鬼の力任せによる攻撃は一見すれば連携とも思えない物だが、それは意外にも噛み合い、猛烈なラッシュとなって牙を剥く。
「なるほど、俊敏な青鬼に剛力な赤鬼による息の合った連携か」
さすがに並の相手ではないようだね。
頼典はそう呟きつつも、使役している阿近と吽近が相手の連携攻撃を上手く捌き、被弾を防ぐ。
少しでも油断すれば、防御を破られてトドメの一撃をもらってしまう事だろう。
「これは中々骨が折れそうだけど……ボクの式と比べればだね」
「ホホホ、生意気を言う。今は私の攻撃を防ぐので精一杯であろうに!」
「まだまだ、ここからだよ。……オン!」
叫びと共に、頼典が『|形代招来《カタシロショウライ》』で無数の戦闘用小型形代を召喚する。
ここは数で攻めようと言うつもりなのだろうか?
「……ン、ンン? なんだ、その貧相な式は? そんな物で私とやり合うのか?」
「これは耳が痛いね。しかし、貴殿にはこれで十分と判断したまで」
「そんな物で私とやり合うとは見くびられた物よ。捻り潰せい!」
悪霊陰陽師が命令を下すと、赤鬼の剛腕が形代をまとめて叩き潰す。
どうやらそのサイズ故に一撃で消滅してしまうようだ。
「脆い、脆いわ! いくら数が多くとも、所詮は有象無象よ!」
「確かにか弱い形代であるが……」
次の瞬間、形代の群れは赤鬼と青鬼の目に貼り付き、視界を塞ぐ。
これにより、盲目状態となった悪霊陰陽師の式神は右往左往する。
いくら式神とて、目が見えなければ攻撃を行うどころの話ではない。
「な、莫迦な……!?」
「鬼の目に張り付いたり口の中に入り込んだり、雲霞の如く纏わり付いたりと便利なものさ。勿論、貴殿の符も落とさせて貰うよ」
頼典がそう口にした直後、形代の群れが悪霊陰陽師に纏わり付き、奴の周囲を漂う陰陽爆砕符を破り捨てて攻撃手段を封印する。
数とサイズを生かせば、このようにも戦えると言う訳か。
「え、ええい! 近寄るな、散れ、散れぇい!」
よもや形代など戦力にもならないと思っていたら、こんな事になろうとは。
悪霊陰陽師は周囲を漂う形代の群れを追い払おうと必死の様子だ。
「さ、阿近に吽近、思う存分と食らいつけ!」
現時点で赤鬼と青鬼はまともに戦えず、主を守る式神はいない。
この隙を突いて、頼典が阿近と吽近をけしかける。
「ぬ、ぬおぉぉぉッ!? こ、この私が、追い詰められるなど……!」
飛び交う阿近と吽近の猛攻を前に、悪霊陰陽師が苦戦を強いられる。
いよいよ決着の時は近付きつつあった……。
大成功
🔵🔵🔵
アリス・セカンドカラー
お任せプレ、汝が為したいように為すがよい。
まずは|体感時間を引き伸ばす深い集中で己のパフォーマンスを最大限に引きだすゾーンに入る。《早業先制攻撃、集中力、降霊、応用力、瞬間思考力、戦闘演算、心眼、気配察知、第六感、高性能を駆使する》
「狂い裂け、薄墨爛漫桜……|卍かゲフンゲフンオーバーロード!!《封印を解く、リミッター解除、限界突破、武器変形》」
青鬼乱撃陣ね、設定した妖の息吹の弐の型|鎌鼬《斬撃波》と参の型|天狗舞《空中機動、空中戦》で対処できないこともないけど……薄墨爛漫桜の|中二病《青春、欲望開放》をくすぐった方が効果は高まるからここは捌の型|八岐大蛇《暴力、蹂躙、連続コンボ、ぶん回し》でいきましょうか。
「神仏降霊神憑り、妖の息吹、捌の型、八岐大蛇」
駆け抜けながらの|剣戟結界《多重詠唱切断結界術》で進路上のモノを洪水の如く蹂躙する剣技よ。青鬼赤鬼も術者の陰陽師もまとめて押し流しましょう。
●東国ヲ守リシ者達
「や、奴らめ……この私をことごとく追い詰めるとは、一体何者なのだ……!?」
強さには絶対的な自信があった悪霊陰陽師であったが、ここまで何度となく見せ付けられた猟兵達の圧倒的な強さを前に、忘れかけていた恐怖を思い出す。
あれだけの強さを持った者達であれば、取るに足らぬ雑魚である坂東武者達をここまで導いてきたのにも頷ける。
今回は自分一人の力で東国の一つを攻め滅ぼしてくれようと思っていたが、まさかこのような事になるとは……
「しかし、ここで敵に背を向ける訳にもいかぬ。せめて一人でも道連れに……ンン?」
ふと、悪霊陰陽師が何かに気付く。
視線の先には薄墨爛漫桜を手にした状態のアリスが立った状態で瞑想に入っていた。
完全に隙だらけだ。
(こやつ、一体何を……? もしや意図して隙を見せ、私を誘い出すつもりか?)
アリスの狙いが分からず、警戒する悪霊陰陽師。
迂闊に攻め込むのは危険だと、これまでの戦いで学んだのだろう。
(さすがに向こうも警戒してるようね。……ま、その方が好都合なんだけど)
一方で、アリスは相手の気配がこちらに寄ってこない事を察して心の中で笑う。
今、彼女は体感時間を引き伸ばす深い集中で、己のパフォーマンスを最大限に引き出すゾーンに入ろうとしている真っ最中であった。
早い話が、精神集中のような物とでも言えばいいだろう。
仮に、今すぐにでも攻めればゾーンに入ろうとするアリスを妨害出来たやもしれないが、手痛い反撃を警戒し、何もしてこないのは悪霊陰陽師にとって最大の失敗であった。
「ぬう、いつまでこの状態でいるつもりなのだ……? こうなれば仕方ない」
スピードに長ける青鬼型式神をけしかけ、アリスに攻撃を仕掛けようとした瞬間。
「狂い裂け、薄墨爛漫桜……卍かゲフンゲフンオーバーロード!!」
口にしてはマズいであろうワードを直前で止め、アリスが開眼する。
集中タイムを終え、ゾーンに入ったのだ。
こうして、いよいよ最後の激突が始まる……!
「何のつもりかは知らぬが、覚悟せい!」
悪霊陰陽師の操る青鬼型式神がスピードを生かし、鋭い爪や角でアリスに襲い掛かる。
低威力の攻撃ではあるが、範囲内に捉えていれば離脱されない限り、何度でも連続攻撃が可能と厄介な物だ。
「へぇ、なかなか早いじゃない。楽しませてくれそうね?」
嵐のような連続攻撃をアリスは冷静に、何度となく捌いていく。
今の彼女はゾーンに入っている事もあり、向こうの攻撃を見切る事など容易い物だ。
(さて、妖の息吹の弐の型鎌鼬と参の型天狗舞で対処できないこともないけど……)
そのまま青鬼の連続攻撃を受け流しつつ、アリスは考える。
このまま全力で反撃に移れば、悪霊陰陽師を討つ事は出来るだろう。
……だが、それでは面白くない。
何せ向こうは国の一つを滅ぼさんとする大悪霊……ここは派手に、華々しく倒した方が『らしい』と言う物だ。
(薄墨爛漫桜の中二病をくすぐった方が効果は高まるからここは捌の型八岐大蛇でいきましょうか)
いかにしてトドメを決めるかを頭の中で描き終えたアリスは構えを変える。
「少しは楽しませてもらったけど、そろそろ飽きてきたから終わりにさせてもらうわ」
「ええい、減らず口を!」
余裕の笑みを浮かべるアリスとは対照的に、青鬼が繰り出す連続攻撃をことごとく捌かれ続けて苛立つ悪霊陰陽師。
「神仏降霊神憑り、妖の息吹、捌の型、八岐大蛇」
そこから型の名を口にし、アリスが駆け出しつつ剣戟結界を展開。
悪霊陰陽師に向けて突撃する。
「赤鬼、食い止めよ!」
向こうはこれを大きな攻撃だと読み、赤鬼型式神を前に出す。
パワーでせき止めるつもりのようだ。
……だが!
「お、押されているだと!? 莫迦な!!」
前に出した赤鬼が剣戟結界に……押し流される!
八岐大蛇は剣戟結界で進路上のモノを洪水の如く蹂躙する剣技であり、アリスは自身の中二病をフルに生かしている事から、その威力はより強烈な物になっていた。
慌てて攻撃に用いていた青鬼もアシストとして向かわせるが、結果は同じだった。
多大な妄想力が燃料となった今、彼女を止める事など出来はしないのだ。
「ぬうぅぅッ、例え近寄ろうとも我が防御結界を破れる物か!」
「なら、試してみなさい?」
そう口にし、こちらへ向けてやってくるアリス。
先程の剣戟結界に押し流されてきた赤鬼と青鬼がこちらに来る。
迫りくる剣戟結界を前に悪霊陰陽師は全力の防御結界を張るが……
「なッ、結界が、次々と……う、うおおぉぉぉ……ッ!?」
そう易々と破られるはずのなかった防御結界が、あっさりと切断されていく様を信じられないと言った様子で目を見開く悪霊陰陽師。
そのまま赤鬼と青鬼もろとも剣戟結界に蹂躙され、邪悪な陰陽師は断末魔の悲鳴を上げる間もなく消滅していった。
「我が薄墨爛漫桜に、斬れぬ物なし。……なーんて、ね」
そして最後に決めのセリフを呟くアリス。
我ながら華々しく決められたな、と満足げな様子であった。
「……おお、見ろ! 妖の群れが散っていくぞ!」
「と、言う事はもしや……彼らが親玉を討ってくれたのか!」
「や、やったぞ……俺達は国を、祖国を守り切ったんだ!」
悪霊陰陽師が倒れた事で、頭を失った鬼面の群れが方々へと飛び去っていく様子を目にした坂東武者達が歓喜する。
彼らは生き延び、勝ったのだ。
「貴殿らのおかげで、我々と祖国は生き延びる事が出来た。心より感謝する!」
坂東武者が一斉に猟兵達へ向け、頭を下げる。
もし猟兵の助けがなければ、彼らは今頃全滅していた事だろう。
「そうね、とりあえずはみんな無事でよかったわ。……と・こ・ろ・で、お礼の方は忘れてないわよね?」
「それはもちろん、国の長にも掛け合おうとも!」
「ふーん、それは楽しみね。……この国にも可愛い男の娘はいるのかしら?」
最後の方だけは聞こえないように笑みを浮かべて呟くアリス。
彼女にとってのお楽しみの時間はこれからのようだが、それはまた別の話である。
かくして妖の東国侵略は猟兵達の活躍によって阻止され、滅亡の危機は去った。
人知れず、平安の世を守り抜く猟兵達の戦いはこれからも続くのだ。
大成功
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