あったか冬色、飾る思い出
冬を迎えた森は吹く風も冷たくて、ちらちらと雪も降り始めたけれど。
でも、雪をかぶる木はまるで天然のクリスマスツリーのようだし。
おうちだってばっちり、ぬくぬくあったかくしているから。
ココ・ロロ(ひだまり・f40324)はいつもよりも一層もふもふの尻尾をふりふりと揺らしながらも。
「葉っぱに~木の実に~……ふふー、たくさん! おやつ用のクリスマスお菓子もー……ばっちりですねっ」
もうこれで何度目かわからない確認を改めてしておく。
そんな、ココがわくわくと待ちきれない様子なのも無理はない。
だって、何て言ったって。
「おじいさん、今日はココのお友達が遊びに来るのですよ!」
そう、お友達が遊びにくるのだから。
「おお、今日だったか。それは楽しみじゃな」
「秋の思い出お土産でリースを作るのです!」
一緒に住んでいる祖父に大きく頷きつつ、ココは尻尾をゆらゆら。
(「ココのお家にお友達を呼んで、おやつ食べてお話しして~。思い出たくさん冬リース作りです!」)
……ふふー、今日もとっても楽しい日になりそうなのですよ。
これからのことを考えただけで、楽しくて嬉しくなっちゃうのだ。
そして、色黒の肌に映える白いふわふわとした耳と尻尾をそっと揺らしながらも。
角の生えたキマイラのお爺さん……ココの祖父も、そっと柔く瞳を細める。
大切なかわいい孫がうきうき嬉しそうな姿が微笑ましいし、それに、そんな孫がヒトの友達を連れてくるということが、とても嬉しくて。
でも、わくわくうきうきと楽しみにしているのは、ココやおじいさんだけではない。
冷たい冬の風だって、なんのその。
(「ココの家に遊びに行って、秋の思い出も沢山詰め込んだ冬用リースを作ろう。美味しいオヤツやカクリヨ話などもいっぱい話すぞぅ」)
アックス&ウィザーズの世界に遊びに訪れた夏彦・星彩(アルベード・f38088)の足取りは逸るように軽やかで。
冬の森の中を進みながらも、森は森でも、思い出すのは少し前の秋の森のこと。
(「秋の森での冒険もとても楽しかったが。思い出と共に沢山お土産にした、木の実や葉っぱで冬に飾れるリース作ろ〜」)
そして改めて背中の荷物を背負い直しつつ、視線の先に灯る明かりを見つければ、さらにその足を早める。
だって、星彩はとっても楽しみにしているのだから。
(「初めてだからワクワクがいっぱいだな〜」)
友だちの家へ遊びに行くというのも――って。
それから、辿り着いた森のおうちの扉の前でそわりと尾を揺らした後、こんこんとノックすれば。
「えへへー。サイさん、いらっしゃい!」
迎えてくれたのは、いつも通りの友達の笑顔と声。
いや、いつもよりもうきうきわくわくしているココの姿。
それから……こっちです! と。
手を引かれれば、お家の中へごあんなーい!
「おじいさん、サイさんが来てくれましたよっ」
「ココのおじいさんとも初めましてだなぁ。夏彦星の星彩というものだぞ!」
「そうかそうか、お前さんがココがよう話しとる……サイか」
ココからいっぱい聞いていた通り、そう笑んで迎えてくれるのは、優しく大らかでカッコイイおじいさんで。
星彩はきちんと挨拶した後、がさごそ。
「そうそう他所の家へ訪問する時には手土産というのも必要らしく……」
此処で冒険仲間だった梟型リュックも再登場!
その中から出てきた手土産はというと、やはりこれです。
「手土産ー……? あ、だがしです!」
きょとりとリュックの梟さんを見つめていたココも、お耳もぴこり。
そう、折角だから、このアックス&ウィザーズにはないもの。
「今日もカクリヨで買ってきた駄菓子が色々入ってるぞ〜」
「ほう、見たことがない、珍しい菓子ばかりじゃな」
「おじいさん、だがしはあたりがでたら、もうひとつ同じものがもらえるのですよ!」
ね、サイさん! とちょっぴり得意げに笑むココに、おじいさんも楽しそうに微笑み返して。
「今回もあたり出るでしょうか……」
「今回は星彩もアタリが出ると尚うれしいだよなぁ」
「サイさんも出たらココもうれしー」
駄菓子の当たりがでるかどうかも、どきどき楽しみだし。
星彩は秋の森で交わした約束を思い返しつつも紡ぐ。
「そういえば交換期限とか特になかったような気もするので。あったかくなった春頃にでも、お花見がてらで駄菓子パーティーも良さそうだ〜」
そしてゆらり揺れる星彩の尾と一緒に、尻尾をゆらゆらさせながら。
「わわわ……お花見だがしパーティー? ココ、お花見というのしたことないです。たしかお花を見るピクニック……でしたか?」
また新しい「初めて」の予感に、瞳をキラキラ。
自分の知らないことをたくさん知っている友達のことをやっぱり、すごい! って思うし。
「えへへ、春が来るの待ち遠しいのですよ」
一緒に迎える春が、今からとっても楽しみ。
それから星彩はリュックから手土産の駄菓子を出し終えてから、こうぼそり。
「またヨーグルトみたいな駄菓子もあるのだが……色々確認してると味見もしたくなってくるような?」
「わ、味見、してみたいです」
「……ひとつだけなら、いいだろうか?」
「ひとつだけ、しちゃいます?」
そう顔を見合わせて、こくりと頷きあってから。
ふたりでこっそり、ひとつだけ。
「アタリは出なかったなぁ、残念だ~」
「むぅ、あたりを出すのはむずかしいんですね……」
味見してみたヨーグルトっぽい駄菓子は当たりではなかったけれど。
でも、摘まみ食いはわくわく、とっても美味しい。
それから改めて、星彩は気を取り直して。
「それではリース作りも始めるとしよ〜」
始めるのは、当初からの目的のひとつ、冬リース作り!
「ココはどんなリースを作るのだー?」
「むむむ……どんなのにするか、悩んじゃいますね……」
「作ったあと何処に置こうかも考えないとだなぁ」
「置き場所……ですか?」
星彩の言葉に、ココはそうふと顔を上げてから。
そっと彼を見つめつつ、こう言ってみる。
「ココのお家にふたつ飾ったらー……また遊びに来てくれますか?」
……なんて、なんて、って。
だって、また何度だって、こうやって遊びに来て欲しいって、そう思うから。
そしてそんなココの声に、星彩は小さく首を傾けて考えてみつつ。
「星彩の居候先が水場の近くで濡れやすいというのもあるが」
「サイさんのところは飾る場所ないのでしょうか?」
「ココのお家にふたつ置かせて貰っても楽しそうではあるけれど、それは後でも考えられそー」
とりあえずまずは、リースを作ってから。
そうテーブルに並べた、一緒に集めた材料を見回しながらも。
「森の木の実には甘いも酸っぱいもあったなぁ」
「他にもカッコイイ棒を拾ったりしましたね」
「落ち葉のオフトンもふかふかだったなぁ、一瞬寝てしまったくらいだぞぅ」
ひとつひとつ、ふたりで採った材料を摘まんで見ては、楽しかった秋の冒険の話に花が咲いて。
星彩が次に思い返すのは、迷子になっていた子のこと。
「……そういえば最後の方で鳥達にもあったような」
「鳥さんとお家探し冒険もしてー……いっしょに見た空もキレイで……」
あの時に見た真っ赤な森と夕焼けのいろは、今でも鮮明に浮かぶくらい圧倒的ないろで。
とても楽しかった時間と冒険のおわりの寂しさが混ざるような感覚は、何だか不思議で。
何より、それをふたりで一緒に見られたことが、嬉しくて。
だからココと星彩は再びひとつ、一緒にこくりと頷いてから。
「秋の色に鳥さんに、ふふ……よくばりリースにしちゃいましょう」
「秋の思い出……鳥の巣だったり、羽っぽいのも~」
「どんぐりと、落ち葉と……あとは、サイさんのはっぱのお顔!」
作り始めるのは、秋の思い出いっぱいの冬リース。
秋も冬も、欲張ってぎゅぎゅっといっぱい詰め込んで。
「それならサイが、ココのはっぱの顔を作るというのもいいだろうかー?」
「ふふ、サイさんとココと、ふたりのお顔をならべるのもいいかも?」
悩んでいたリース作りも盛り盛りと捗って。
「むむ……まるいリースの形にするのが、むずかしいですね……」
「枝を短めにカットして重ねていくと、形が作りやすくてふんわりするんじゃなかろうか」
「こうだろうか? なかなか良さそうだ〜」
おじいさんにもアドバイスや手伝って貰いつつ、作業を進めていきながら。
作業の合間に、摘まむのにちょうどいい駄菓子もぱくり。
「このきなこ棒も星彩は好きだぞぅ。ココもひとつ摘まんで……」
そこまで言った後、何故かぴたりと一瞬動きを止める星彩。
「? サイさん……?」
そしてその様子に気付いたココが、不思議そうに視線を向ければ。
星彩が差し出して見せたのは――そう。
「! あっ、あたり……!」
「星彩にもアタリが出たぞぅ、これはうれしいなぁ」
「わぁ、ココもうれしー!」
食べた後の棒にばっちり書かれた、当たりの文字。
それから、嬉し楽しく作業を続け、リースも仕上げの段階に差し掛かれば。
ふと、じいとリースを見つめてこう呟きを落とす星彩。
「……時に、星彩は常々思っていたことがあるのだが」
それから、いい感じにまんまるに出来上がっているリースを見つめて続ける。
「リースの形ってアレに似ている気がするよな、お菓子のバウムクーヘンだったりドーナツだったり」
「……はっ。言われてみれば似ているようなー?」
ココも、自分のリースをじっと見つめてみれば。
「お前さんたち、そろそろ休憩にしてはどうじゃ?」
おじいさんがそう提案してくれたから。
「ふふ、おやつタイムにしましょうか」
「おやつタイムもあるならドーナツが良いと思うぞ……!」
この辺でひといき、おやつタイムに。
それからココは、星彩の言葉を聞いて尻尾をゆらり、ちょっぴりえっへん。
「今日は今日は~クリスマスっぽいの用意したのです! ふふー、なんとドーナツもありますよ!」
「おぉ、ココの用意してくれたドーナツ、本物のリースみたいだなぁ」
リボンのお菓子細工が飾られ、ナッツやアーモンドが散りばめられたクリスマスおやつはまさに、甘いリースみたいで。
このままでも勿論、すごく美味しいだろうけれど。
星彩はココに、また別のドーナツの美味しい食べ方を教えてあげる。
「ココに喋った事あったかは忘れたが、牛乳に浸して食べるというのがあってだな〜」
「ミルクにひたすー……のですか?」
そしてドーナツと一緒に並べられるのは、色違いの星空マグカップ。
星彩のには夜色の空に金の星が、ココのは白色の空に銀の星が煌めいていて。
そんな、ほわりと温かなマグカップの飲み物と一緒に。
「むむ……どんなでしょう……ココもやってみます!」
ココは早速ミルクも用意してみて、ドーナツをひたしてみることに。
そしてまたひとつ、初めてを経験しながらも、その美味しさを星彩と一緒に楽しんで。
星彩もほっこり、嬉しい気持ちになる。
(「外には冷たい風が吹く季節であっても」)
……友だちと一緒にあったかい冬を過ごした思い出になるなぁ、って。
それから、ふたりで尻尾を揺らしながら交わし合う。
「えへへ、サイさん、次は何して遊びましょうね?」
「うんうん、次の季節も楽しいこと出来たら嬉しいぞぅ」
なんて――そんな、次の季節の約束ひとつ。
だって、考えるだけでもわくわくしてしまうし。
それに……密かに星彩はこうも思っているのだった。
そのうち呼び捨てにされたい、って……もうすぐ、一緒に過ごす季節も一周するから。
そして仲良しなお友達を見つめつつ、ココは確信する。
(「一緒に過ごす初めての春も、きっと楽しいはずです!」)
夏も秋も冬も、こんなにいっぱい楽しかったんだから――ふたりで迎える春も、絶対に楽しいって。
成功
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