クリスマス・サンタクロースワーク!
キラキラと輝く眩いツリーに、ずらりと並ぶ甘やかなケーキたち。
ジングルベルの曲が何処からともなく流れてくる今日は、そう――クリスマス。
そして沢山あるケーキを人々へと手渡しているのは、サンタクロース……の格好をした、ラピーヌ・シュドウエスト(叛逆未遂続きの闇執事ウサギ・f31917)である。
そして時にはその手には、『クリスマスケーキ売ってます』のプラカード看板が。
一見すると彼女は表向き丁寧な言葉使いの御屋敷の執事であるが。
だが実は、元「プレデトリー・ラビット」と呼ばれていた凶悪なヴィランで。
ムショ送りにされて以来、現在は保護観察人のもとで働いている時計うさぎなのだ。
ということで、今回も模範囚よろしく。点数稼ぎをするべく、クリスマスの社会奉仕活動に勤しんでいるというわけなのだが。
にこにこ営業スマイルなサンタに扮し、客の呼び込みやケーキの受け渡しをしつつも。
正直言えば……ぶっちゃけ、内心かったるい。
何せこれはヴィラン刑務所のチャリティ、つまりは当然タダ働きなわけで。
こんな寒い日にも関わらずサンタなコスプレ姿でにこにこしなければいけないなんて、面倒な限りである。
だから、出来るだけ自分の労力を少なくして、楽してうまいこと点数を稼げないかと。
密かに考えてみたラピーヌは、こんな案を思いついたのである!
「気を付けて持って帰るんだべ、せっかくのケーキだからなぁ♪」
知り合いの手を借りて、自分のノルマ分を手伝って貰おうと。
ということで、そんな悪知恵を働かせ……いえ、一緒に楽しく仕事をしようと。
手伝って貰うべく連絡を取ったのが、友人の笹乃葉・きなこ(キマイラの戦巫女・f03265)である。
そんなきなこは、ちょうどクリスマスの午前から夜にかけて、時間があいていたので。
ラピーヌと共にケーキの売り子をすることになったわけだが。
いつもなら露出度の高い服装も、今回はお酒の通販サイトやアイドルの仕事ではなく、クリスマスケーキ配りのお手伝いということで。
化粧はいつも通りリップで済ませつつ、ケモ状態のサンタガールのコスプレでお手伝いします!
もふもふだから、寒さだって全く問題なしなのです。
そして、ラピーヌの思惑通り……誘った甲斐あって。
――奇術を見せてやるべ。
笹乃葉式気功術を展開し、見えない未知の生体エネルギーでケーキを掴んでは手渡し、実質手を四本とか三本にして、次々とさばいていくきなこ。
この調子であれば、彼女に任せて自分は楽にノルマを達成できる……そう、この時のラピーヌは思っていたのだけれど。
「あれー? ラピーヌ、どこ行くんだべぇ?」
「え? いやぁ、ケーキを補充しに行こうかと思ってね」
「それならもう、おらが持ってきてるから大丈夫だべ! ほら!」
「そ、そう……じゃあ、ひとまずタバコ休憩に……」
「あっ、ラピーヌ! 客!」
「えっ、あ、そうだね……」
何かと理由を付けてはサボろうかと画策するも。
「ふぅ、やっと一服……このままもうしばらく、ここでしらばっくれて……」
「ラピーヌ! 客だべ! てか、タバコ休憩多すぎ!」
「そ、そうかな? いや、でもまだ5分くらいしか……」
「あれー? おら時間見てたけど、15分以上は経ってるべー?」
「え? あれ、そうだったかな? もうそんなに経ってたなんて、いやぁ、ボクとしたことがうっかり勘違いしていたよ」
お目付け役となったきなこに尽く見透かされては失敗に終わって。
(「うるせえ、さっさと働けやぁ! さぼりすぎなんだべ!」)
目を光らせ、仕事を割り振りながらも、笑顔でラピーヌのさぼりを阻止しつつ。
担当の刑務官に、彼女のタバコ休憩の時間もしっかり伝えているという有能ぶりを発揮するきなこ。
だって、ヤニ中の心情はわからないんだゴメンね!
というわけで、むしろ楽をするどころか。
「ラピーヌ! あの客にケーキを10個渡してー、それが終わったらケーキを補充してー、そのあと呼び込みしてー、それからー……」
主導権を半ばきなこに握られてしまって、あっちへこっちへと忙しく、指示を受けては奔走するラピーヌ。
ええ、当初の目論見なぞ、脆くも崩れてしまっている状態である。
とはいえ、さすがにヤニ切れしてきてラピーヌの限界が近くなれば。
「30分ぐらい時間をあげるから、吸えるだけ吸ってくるんだべぇ!」
そうタバコタイムを沢山取ってあげるきなこだけれど。
「きちんと時間計ってるべ!」
「はァァ!? 30分だけとかふざけんなよオイ!」
「んー? ラピーヌ、今なんか言ったー? んじゃ、担当の刑務官に……」
「!? い、いや、ボクは模範囚だからね、ちゃんと30分で戻ってくるよ……」
「あ、これ、臭い消しだべ!」
臭い消しもきっちり渡して、ストップウォッチをカチリ、早速スタート!
自分もテキパキとフルバーストで仕事しつつ、勿論戻ってきたラピーヌにも指示を飛ばして同じくフルバーストで仕事させます!
いや……当初の目論見はあっさりと崩れ去ったのだけれど。
まぁその甲斐あって、当初の予定よりも早くノルマを達成しそうだから、早上がりが出来そう。
ということで、目一杯働いたところで、時間になったから。
「おら次の約束あるから、またなー。ケーキ、ありがたくいただいてくべ♪」
別の子と予定があるきなこは、ラピーヌとはここで、さくっとサヨナラ!
仕事も終わったことだし、待ち合わせしている子との楽しいひと時を楽しみにしながらも家へと帰宅していく。
そんな、帰っていくきなこの後姿を見送るラピーヌであったが。
「あの……ケーキ、まだありますか?」
そう遠慮気味に声を掛けて来たのは、ひとりの男の子。
その子に最後に残っていたケーキを手渡せば……おつとめも終わりです!
そんなわけで、ちょうどきなこが手伝えるまでの時間に何とか終わる事も出来たし。
彼女と別れた後、ヘトヘトな身体でお屋敷までの帰路につくラピーヌ。
「……ヴィランで好き勝手してた頃は貰う奪う側だったのに、なんでこんな……」
そしてそう、ぶつくさと悪態をつくのだけれど。
「………」
ふと思い出すのは、最後にケーキを渡した時の男の子の笑顔。
いや、あの子だけではなくて、受け取るときの子ども達は皆、嬉しそうで。
「……これはこれで悪くなかった、かも」
クリスマスムードで賑やかな繁華街を後にしつつも、ぽつりと零すラピーヌであった。
――でも子ども達が喜んでいる姿を見れたのは良かったかな、なんて。
成功
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