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絶氷ノ山脈ニテ欲ヲ捧グ

#UDCアース

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#UDCアース


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「皆さん、オブリビオンの反応を予知しました。」

 今回も、いつもと変わらない静かな声で予知について話し始める。

「といっても、今回の予知はいつもとは少し異なります。」

「少し前に南極の遺跡から発見された、【封印された邪竜神】の情報。それについての予知です。」

 これについて、何人かの猟兵は「あぁ、アレか」と頷きを返す。


 しばらく前に、EDUアース世界の南極で発見された遺跡。そこにあったのはオブリビオンと見られる【封印された邪竜神】についての壁画だ。

 そこには壁画と、そばに記された一文のみがあった。

 壁画については経年劣化により見にくくなっており、氷に閉ざされた山脈の中にある暗い洞窟の中に邪竜神が封印されている、という情報しか得ることはできなかった。

 そして書かれた文章には、こう記してあった。

 [かの邪竜神は眠りについた。再び目覚めた時、封印は解け、世界は惨禍に見舞われるだろう。]と。

 もしオブリビオンならば、何かの兆候を予知するだろうとのことで、情報だけが保管されていたものだ。


 前置きを話した後、早速、と本題に入る。

「予知の内容について説明します。」

 静かに目を閉じ、語り始める。
 目を閉じてから語り始めるまでの静寂が、いつもより長く感じた。

「今回の事件はUDCアースの山脈…具体的な場所で言うとヒマラヤ山脈、に当たりますかね。そこで発生します。」

 希雪が脳内で視た風景は──、

 黒く、大きな竜。その威容は誰よりも、どんなものと比べても圧倒的で、我より優れた生命など存在しない。まるでそういっているように大きく咆哮する黒。

 人の欲望を操り、増幅させ、欲望に染まる人を見て、もしくは欲望を克服して向かってくる人を見て、それに悦び、戦う竜──、
 ある一定のシステムの中に居続けることを選んだ竜は、その性質から畏怖と崇拝の対象となりて、その爪はより鋭く、その翼はより大きくなっていく。
 UDCアースの摂理─崇拝と信仰のルールの下で、神と認められるほどまでに大きく膨れ上がった力。

 しかしそれは長くは続かない。
 幾度となく移り変わりゆく季節の中で、その信仰は薄れ、翳り、いつしか完全に忘れ去られてしまう。
 かつて覇を築いた竜の姿は傷つき壊れていく──。

 ならば─と竜は自身を封じた。信仰などに頼らず生きていけるまで、封印の中で力を蓄えるために。


 希雪の目がゆっくりと開く。僅かな静寂の後、その静寂を切り裂いて言葉を紡ぐ。

「今回の敵は、自らを封じた竜【邪竜神グリーディーア】そのものです。ですが、そこに辿り着くまでに、かの竜の欲望に触れたモノ達を退けなければならないでしょう。」

 今回は、連戦になる──それも、最後に戦うことになるのは神と呼ばれた竜。
 だが──、

「恐ろしいまでに強大な敵…でも、あなた達なら、私は信じて待つことができる。」

 猟兵達への、大きな信頼。

 少し恥ずかしそうに微笑んで、そして猟兵達に背を向ける。
 いつものように腕を大きく開き、濃い霧を立ち籠ませながら。

「信じて、待っていますから。…行き先はUDCアースの雪山。どうか、ご武運を。」

 霧の先にうっすらと見える風景は、黒と白。
 猟兵達は力強い歩みを以て、希雪の信頼に応える──。


カスミ
 5作目です!初めてのUDCアースシナリオ!

●第一章
「邪竜神の欲望に当てられた敵を倒せ!」です。
 プレイングボーナス:特になし。

 事件との直接的な関連が薄いので、面倒ならスルーしても良いかも?

●第二章
「邪竜神の封印を見守る門番を倒せ!」です。
 プレイングボーナス:特になし。

 倒せなかったら普通に封印を解くし、倒せたら滅ぶ直前に自分の命を引き換えに封印を解く。
 倒せたら第三章にボーナス有り。

●第三章
「封印されていた邪竜神グリーディーアを倒せ!」です。
 プレイングボーナス:特になし。

 全身全霊をぶつけて神殺しと洒落込みましょう!
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第1章 集団戦 『混ざり物の猟犬』

POW   :    いぬのきおく
戦場内の味方の、10秒以内の【ダメージ】を無効化する。ただし、自身の幸福な記憶ひとつを心的外傷に改竄する。
SPD   :    いぬのあそび
【あらゆる直線と90度以下の角度から仲間達】を放ち、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。
WIZ   :    いぬのきもち
【|清浄《正常》な生命への憎悪から鏖殺形態】に変化し、超攻撃力と超耐久力を得る。ただし理性を失い、速く動く物を無差別攻撃し続ける。

イラスト:いぬひろ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

葉月・静夏
最近別の世界でも封印されていたものと戦ったのだけれど、この世界にもそういうものがいるのね。どんな世界にもそういう存在っているものなのかな?
封印されたままでも他者に影響を与えるほどの相手だから、楽しみだけれど油断はしないようにしないと。

短期戦にはできそうもないから、まずは【重力夏の祝福】を防御力重視で発動しておくよ。
集団戦なのでできるだけ囲まれないようにしつつ、積極的に近づき攻撃を仕掛けて一体ずつ倒していくよ。
敵がユーベルコードでダメージ無効状態になったら【鉄壁】の守りで耐えて、効果が切れたら一気に反撃といきたいね。

本命の敵はまだまだ先だから、こんなところで苦戦はしていられないね。



UDCアースの雪山。
激しい吹雪が右へ左へと向きを不規則に変えながら、そこにいるものの体力、精神力を削ぐ、人を拒む山。

そんな場所にて考え事をしながら一歩ずつ歩みを進める葉月・静夏(せい夏・f40839)は、吹雪にかき消されそうな小さな声で、素朴な疑問を呟きに変える。

「最近別の世界でも封印されていたものと戦ったのだけれど、この世界にもそういうものがいるのね。どんな世界にもそういう存在っているものなのかな?」

UDCアースは、ケルベロスディバイドやアックス&ウィザーズといった世界と比べて、激しい戦闘が起こることが少ない。
多少の交戦は広く見ればそこそこあるのだが、命を賭ける戦いという文化が広まっていない。
だからだろうか、封印されるべき強大な存在は少ない。
そんなUDCアースでも、居る。

「封印されたままでも他者に影響を与えるほどの相手だから、楽しみだけれど油断はしないようにしないと。」

雪山を歩く。

ふと、気配を感じる。これは、獣…?
囲まれている──

『グルルルル……』

若干くぐもった唸り声と共に、吹雪の奥から何体もの狼の形をした“何か“が近づいてくる。
情報にあった。これが──

『ガルルゥ!』

静夏に考える時間を与えず、一斉に飛びかかってくる。
その鋭い爪、切り裂く牙、柔軟な体と、拙いもののタイミングを揃える程度にはある集団行動。
油断をすれば、狩られるのはこちら側。

短期決戦には出来そうもないな──

襲い掛かる狼を前にして、接近までの僅かな時間に、大きく息を吸う。
その動作には静寂を感じるものの、攻撃を行われる際の行動ではないように見える。

(私に宿る力達……うまく使ってやりたいことをやってみせるよ。)

狼の攻撃が迫り、腕を交差させて身を守る。
鋭い爪による攻撃。見た目通りならば鮮血が舞い、腕すらも切断してしまいそうな強靭な攻撃。
だが──その攻撃は薄皮一枚を裂くだけに終わった。

「へぇ、これでダメージが通るんだ。でも、この程度なら──」

囲まれなければ、問題はない!

端の敵から狙っていけば、囲まれることはない。
敵の数を減らせば、対処は段々と楽になっていく。

一匹、また一匹と数が減っていく。
殴って、蹴って、弾いて、避けて。
できるだけ消耗しないように、丁寧に戦闘を運ぶ。

その手に残る、微妙な感覚。
弾かれたような、それとも蜃気楼に触れたような?

情報にあった、敵の使用するユーベルコード。
敵も追い詰められている証。

なら、ここからは一気に殲滅といこうか!
攻撃が、疾くなる。
それに伴って、狼の倒れるペースもぐんと、早くなる。

「これで、最後!」

力を思いっきり込めた渾身のパンチで最後の狼を吹き飛ばした。

狼の群れを退け、未だ険しい道が続く雪山を進む。

「本命の敵はまだまだ先だから、こんなところで苦戦はしていられないからね。」

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
これは…猟犬のなれの果て…なのか?
攻撃力と耐久力が大幅に増強されているようだし、まともに戦ったら結構難儀する相手だな

相手が猟犬だというなら、こちらは鷹を召喚だ!
召喚した鷹へUCを纏わせ高速移動で敵の周囲を飛び回り、相手の注意を惹く

こちらの護符の投擲速度よりも鷹の飛行速度の方が明確に速いはずだから、
そちらに注意は向くはずだけど…
鷹には回避行動を取らせ、敵の一撃を喰らわないように警戒させる
俺は護符に浄化の力を施しつつ乱れ撃ちで投擲
聖なる力を継続的に叩き込み敵の体力を削っていこう

鷹がピンチの場合には【獣王束縛陣】で敵を束縛
敵の動きが封じたら、鷹にも攻撃支援を指示
敵の憎悪を感情さえ解消出来れば…もしや



吹雪が吹き荒ぶ険しい雪山を一歩ずつ確実に進んでいる鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、周囲の警戒を怠らずに先へ進んでいく。

この程度の吹雪など、猟兵の命を奪うものにはなり得ない──だが、身体の硬直、視界の減少、嗅覚、聴覚、触覚の麻痺など、少なからずデメリットがはあるものだ。

ひりょは結界系の護符でその影響を遮断しているが、それでも寒いものは寒いし、視界は悪くなる一方だ。
だが、そんなことも言ってられない。

『グルルルル……』

いつの間にか、囲まれている。その数は10前後といったところ。
これは猟犬…?いや、猟犬の成れの果て。猟犬の形をした“何か“だろう。

その動きは最低限の統率と、猟兵を傷つけるに足る確固たる戦闘力に裏打ちされたもの。じわじわと円を狭めていくように、接近していく。

ひりょは接近されているというのに、冷静な思考を絶やすことなく、思案を続ける。

──攻撃力と耐久力が大幅に増大されているようだし、まともに戦ったら結構難儀する相手だな。

──相手をするにしても、多対1はまずい。せめて半分は請け負ってくれるものがいなければ…

──必要なのは…生存力。俺が対処するまで引きつけてくれればそれでいい。

ならば──

相手が猟犬だというなら…こちらは鷹を召喚だ!

「ビーストマスターとして命ずる!俺の声を聞き、俺の力となれ!」

『ピュイイィィ!』

呼び出した鷹は、猟犬の隙間を縫うように飛び、ちょうど半分ほどの注意を引くことができた。
あとは、鷹には回避重視で立ち回ってもらう。

「よし──」

この数なら──余裕を持って捌ける。

浄化の力を護符に施し、猟犬達に向かって乱れ撃つ。
幾つかは外れ、幾つかは躱されてしまったものの、半分ほどが命中した。

『グルルアァ!』

猟犬は苦しむように呻く。
それは自らの存在を歪められる攻撃によるもの。
浄化の力とは、必ずしも属性的なものだけではない。
闇を晴らし、傷を癒やし、毒を治すのも浄化の力。
精神を正し、安らぎを与え、狂気を正気に戻すのもまた、浄化の力。

この猟犬は本質として、“憎悪に呻く猟犬のオブリビオン”であり、その存在には形としての“憎悪”が必要だ。
故に浄化の力は心を抉り、内面だけでなく外面までもに深刻なダメージを与える。

「よし!呼び出した鷹も上手く立ち回ってくれているようだし──」

ちらと鷹を見る。被弾した様子は見られない。

「もう半分、さっさと片付けるぞ!」

続けて放たれた護符は猟犬の体を次々と貫いていく──

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・スターライト
蘇った太古の竜を退治する――

GGOではよくあるイベントだ
そう、それは私達が楽しむための“イベント”
クリアができなくても報酬を得られないだけ
何かを失うなんてことは殆どない

でも、この世界ではそうじゃない
本当に竜が放たれたらどれだけの被害が出るのか想像もつかない

私にそれを止める手助けができるなら
やらない理由はない

敵の位置や動きは珠が教えてくれる
盾で敵の爪や牙を防ぎつつ、剣で切り裂いていく

って、再生した?

削るような戦い方じゃ駄目だ
一撃で確実に倒していく必要がある

珠とリンクし、改めて敵の位置を確認
剣を掲げ、幾多の武具を召喚

倒すのに3撃必要なら3本を、4撃必要なら4本を
それぞれの敵に一気に放つ!



吹雪が吹き荒ぶ雪山の中、小高い岩の上で周囲を見渡しながらステラ・スターライト(星光・f43055)は思案を続けている。

蘇った太古の竜を退治する──

|GGO《ゴッドゲームオンライン》ではよくあるイベントだ。
そう、それは私たちが楽しむための“イベント”
クリアできなくても報酬を得られないだけ。
何かを失うなんてことは殆どない。

GGO内の、類似イベント──
例えば、古くにこの星を滅ぼしかけた巨大竜の討伐。
例えば、世界を破壊するため作られ、封印された星壊竜の討伐。
どれもが、失敗してもプレイヤーが何かを失うことはない。
ただ、フレーバーとしての一つの世界が滅びるだけ。そういう“設定”だ。

でも、この世界ではそうじゃない。
本当に竜が放たれたらどれだけの被害が出るのか想像もつかない。

脳裏にチカチカと浮かび上がっては消える悪い妄想──
逃げ惑う民、破壊される建物、遮る物は何もないと言わんばかりに店を仰ぎ吼える竜──

もし──私にそれを止める手助けができるなら。

「やらない理由はない。」

周囲から何かが集まってくる。
敵──事前の情報からそう断定して動く。

『グルルルル……』

猟犬の姿をした──何か。

これまた危険な存在だ。ここで全部、倒し切る。
周囲に浮かぶ一つの光球。
それはまるで三人称視点のゲームをプレイするように──自身の動き、敵の動き、戦場を俯瞰して見ることができる。
囲まれたとしても、これがあればどうとでもなる。

『ガルルアァ!』

猟犬の持つ強大な爪の攻撃を盾で受け、流す。
体勢が崩れたところを、雪よりさらに白く輝く勇者の剣で斬り付ける。

「って、再生した?」

バックステップで距離をとりつつ、敵を観察する。
深く傷をつけたはず。なのに、今の一瞬で全回復か。
GGOなら「クソモンスター」の烙印を押されてしまうかもしれない非常に強力な再生能力。

でも、対処はできる。

「削るような戦い方じゃ駄目だ。」

そう。一撃でその|命《HP》を|奪う《0にする》──!

球とリンクし、改めて敵の位置を確認する。
正面2体、右3体、左1体、後方1体。
大丈夫。この数なら、足りる。

剣を掲げる。
白き勇者の剣はさらに輝いて──
途端、その空間に、目に見える“圧”が、圧倒的な“武威”が現れる。

「|武具召喚《サモンウェポン》!!」

倒すのに3撃必要なら3本を、4撃必要なら4本を──!

それぞれの敵に、一気に放つ!!

「───っ!!」

猛吹雪の中、剣の嵐が過ぎ去ったかのように、静かな時間が流れ始める。

「全部、ちゃんと倒し切った。なら、先へ進もう。」

球とリンクして、敵がちゃんと倒れたか確認してから、先へ進む。

「まだまだ、序盤だからね。こんなところで詰まるわけにはいかないよ。」

一際、強い風が吹いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ルキフェル・ドレンテ
退け、犬ども
端から理性も持たぬ犬畜生が今更何の欲に狂うと?
笑わせる

さて、獣の匂いなぞM'ladyに嗅がせる訳に行くまい
近寄るなよ、けだものども——どうして俺が自ら貴様らごときの相手をすると?
|実験台《カタツムリ》どもの群に蹂躙させつ、機を見て心臓を串刺しにしてやるか
生憎と俺は生真面目なそこらの猟兵どものように、律儀に戦場を駆けたりなどはしないのだ
M'ladyをマントとオーラ防御の中に護りながら悠然と佇むのみ
犬どもの追いかけっこの相手には亡者どもで十分だ

大丈夫だよ、M'lady、あんな駄犬の牙など貴女に届かせぬ
だが、そうだ、少し冷えるか?
もっと近くへおいで
これが終わったら貴女に暖かな毛皮を贈ろう



激しく吹き荒ぶ吹雪の中、ルキフェル・ドレンテ(嘆きの明星・f41304)は、歩くでもなく遠くを見つめながら佇んでいた。
その側にはM’ladyが、その身を寄せるようにしてマントの内側に居る。

遠くを見る視線の先──
そこに居るのはかつて猟犬だったオブリビオンの群れ。
従うべき主も、狩るべき獣すらも見失った、空虚な獣。
ただ、自らの憎悪のままに、その爪は、牙は、|清浄《正常》な生命に振るわれる。

尤も、この場には正常なモノなど存在しない。
だからと言って、分かり合えるはずもない。互いが互いへ対する得も知れぬ嫌悪に、無自覚のままに包まれる。

故に──ルキフェルは吐き捨てるように言った。

「退け、犬ども。」

仮面の下にある目が、細く、鋭く。

「端から理性も持たぬ犬畜生が今更何の欲に狂うと?笑わせる。」

さて──獣の匂いなぞM’ladyに嗅がせる訳にいくまい。
近寄ってくれるなよ、けだものども──どうして俺が自ら、貴様ら如きの相手をすると?

その手に握られるのは、鳥籠のような、そして牢獄のような、刺々しい魂の檻。

「行け、|実験台《カタツムリ》ども。矮小なるあのけだものどもを蹂躙しろ──」

未だ始まらぬ戦場に、異形が現れた。
複数の人間のパーツを歪に繋ぎ合わせたような。
目はある。口もある。脳もある。しかしどれひとつをとっても正常に作用しているものなど存在しない。

生憎と俺は生真面目なそこらの猟兵どものように、律儀に戦場を駆けたりなどはしないのだ。

少し遠い戦場に響く、岩が砕ける激しい音、獣が唸る低い音、獣のあげる甲高い|音《悲鳴》、肉が潰れる|甘美《不愉快》な音。
それらは激しい吹雪によって掻き消され、ルキフェル達の元へは届かない。
ただ、M’ladyをマントとオーラの中に護り、悠然と佇むのみ。

M’ladyの手が、震えているのに気づく。
そこに込められた想いは、恐怖か、単なる冷気の震えか、それともルキフェルへの──

「大丈夫だよ、M’lady、あんな駄犬の牙など貴方に届かせぬ。」

マントの上から、優しく背中を撫でる。
暖かいとは言えない感触。

「だが、そうだ、少し冷えるか?」

その答えは、わからない。
鈴は、鳴らなかった。

未だ止まる事の無い震えから、そういうことだと解釈した。
それしか、できなかった。

なら、出来るだけ優しく──

「もっと近くへおいで。」

ルキフェルに抱きつくようにして、さらに密着する。
ゆったりとした、暖かな時間。
永遠に続けばいいと願いつつ、ルキフェルも仮面の下で目を閉じる。

「そうだな、これが終わったら貴方に暖かな毛皮を贈ろう。」

魂の檻には、音もなく魂が蒐集される。
遠くで起きた虐殺の終わりを告げる──

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『写しの幻華』

POW   :    「これは僕」「これらも僕だ!」
【あらゆる世界の異形集合体】に変身する。変身の度に自身の【増殖し、呼び出した異形】の数と身長が2倍になり、負傷が回復する。
SPD   :    僕は何にでもなれる
自分の体を【形状変化】させる攻撃で、近接範囲内の全員にダメージと【神経毒】の状態異常を与える。
WIZ   :    君の過去は、なァに?
対象への質問と共に、【対象の過去】から【最も嫌う情念のもの】を召喚する。満足な答えを得るまで、最も嫌う情念のものは対象を【過去を再現し顕現させる事】で攻撃する。

イラスト:鹿野カエデ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠笹塚・彦星です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ルキフェル・ドレンテ
何だ、貴様は?
気に食わないな、痴れ者め
そんな小汚い、ふざけたナリをして、誰の御前に居ると心得る……

だが、そうだな、好都合だ
こうまで不快な無礼者には、さぞや刃が注ぐであろう
増殖しようが、回復しようが、俺の機嫌を一層逆撫でるだけのこと
存分に憎悪と刃を向けてやろう、より一層の呪詛を添えて
貴様の様な異形など、俺の前に立つだけで僭越である
疾く罷るが良い、愚か者めが
嗚呼、串刺しと言うにはこれは刺した剣の数が多すぎたか

…どうしたんだい、M'lady
何も怖いことなど起きては居ない、俺は今、わるい魔物を退治しているのだ──本当だとも
万事順調だ、問題はない
退屈させてすまないね
帰ったら貴女の好きなワルツを聴こう



雪と氷が閉ざす険しい雪山の最奥にある開けた空間に、一人の男──ルキフェル・ドレンテ(嘆きの明星・f41304)と、そのそばでマントに隠れるようにして佇むM’ladyの姿がある。

ただ、この場を包む空気は柔らかいものではなく、雪山の空気よりもさらに冷たいモノで──

ルキフェルの目前に立つ、不快な男。
何を巫山戯ているのか、植物が巻き付いたかのような奇妙な格好に、体の至る所から白く粘性のある液体がとめどなく溢れ出している。

「何だ、貴様は?」

「僕は、僕だ。何者でもないし、何者でもあるんだ。」

ルキフェルの問いに、間を置く事なく答える。
しかしその答えは、果たして答えと言えるのかどうか、という曖昧なものだった。

気に食わない──ただ純粋に心に浮かんだ感情を言葉に表すなら、この言葉になるだろう。
吹雪が荒れるこの場所には似つかない格好なのも、その口調が見た目に反して、と言うべきか、違和感のある軽いモノだった事も、この寒さの中でも顔に咲いた花の赤さに翳りがない事も…全て、全てがルキフェルの心を逆撫でする。

「そんな小汚い、ふざけたナリをして、誰の御前に居ると心得る……」

「僕は全てだし、僕は全てになりたいんだ! 全てになって、僕は僕になるんだよ。」

もはや支離滅裂とも言える言葉。
意味を見出すことのほうが難しい不快な文字列。
だが、そうだな、好都合だ。
こうまで不快な無礼者には──さぞや刃が注ぐであろう。

男の体の一部が膨張し、分裂し、新たな人間の特徴を宿して、完成する。
僕は膨張する。膨張する僕は。分裂する僕は。僕は分裂する。
新しい僕は、今までの僕。
僕は、僕で、僕なんだ。

これは僕。これらも僕だ!

──貴様がいくら増殖しようが、回復しようが、俺の機嫌を一層逆撫でるだけのこと。

存分に、心ゆくままに、憎悪と刃を向けてやろう。より一層の呪詛を添えて──

白い地上が、落ちる影で暗く。
空を見上げれば、降り注ぐ数多の黒剣。強い恨みに反応し、その対象へと向かう。
ただ黒く、重厚感と光沢のある綺麗な刀身。
100──いや、500──いや、それよりも多く、黒き絶望は降り注ぐ。

夜が降りてくる──あるいは、そう形容できる程に。

「貴様の様な異形など、俺の前に立つだけで僭越である。」

言の葉を吐き捨て、直後、僅かと言えるほどに小さい音が響いた。
足を、腕を、体を、目を、無数の黒剣が上から貫き通す。

「疾く罷るが良い、愚か者めが」

嗚呼、串刺しというにはこれは刺した剣の数が多すぎたか。

そこには、原型を保つ人型など存在しない。
深く濃い憎悪によって断裂された肉塊が、転がっているだけ。

満足したルキフェルの、汚れ一つない手に、弱々しい震える手が触れる。

「…どうしたんだい、M’lady」

M’ladyは、目など存在しないというのに目を合わせるように顔を動かして、何かを伝えようとしている。
それも震えでうまくいかない。

「嗚呼、M‘lady、何も怖いことなど起きてはいない。俺は今、わるい魔物を退治しているのだ───本当だとも。」

M’ladyの震えは、ほんの少し、収まったようだ。
しかし、ルキフェルの酷く血に汚れた手を握るその手は、まだ弱々しく震えている。

「万事順調だ、問題はないさ。」

精一杯の優しさを込めてそう言い、先へ進んでいく。
面倒なことに、まだ依頼は終わっていないから。
ルキフェルにとっては些事に過ぎない為、すぐに帰っても良いのだが──

「退屈させてすまないね。帰ったら貴女の好きなワルツを聴こう。」



ルキフェルが去った後の戦場にて。

完全に、バラバラになった。
脳も、心臓も、何もかもが刺し貫かれ断裂を繰り返した。
だが、それでも──まだ蠢いている。
肉の一つ一つが、飛び出た内蔵が、ボコボコと膨張し、合成し、分裂し、徐々に人の形を成してゆく。

やっぱり、僕は、僕だ!
何者でもない、何者にもなれる僕。

でも、君は、僕じゃない。
君は、嫌だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉月・静夏
この敵が門番なのかな?確実に倒して勢いをつけて、本命の邪竜神へ挑みたいね。

今回の戦い方は非常に単純に、【重力夏の左利き】を発動して、狙いを定めた敵に接近戦を挑んで一体ずつ倒していくこと。
敵はどんどん増えて大きくなるとのことだけれど、それはリーチが伸びるということでもあるよね。
私は拳の射程外からの攻撃はほぼダメージにならないから、狙っていない敵は無視してもいいし、囲まれても問題はないよね。
それに、敵は大きくなればなるほど、懐にはいられた時に戦いにくくなるのでは?
そういったこともあって、強気に攻めていきたいね。



激しい冷気の降りる雪山の奥地、円形にくり抜かれた多少広くなっている空間。
ここには何かがあると思えるようなほどに、険しい斜面の中で水平が保たれた広い空間。

そんな場所に、男が一人。いや、男と形容するには、人と形容するには、少し難しい。
植物のようなものを纏い、年星のある白い液体を湛える“オブリビオン”。
ソレは膨張し、増殖し、自らの存在を、自分として受け入れる事に笑みを浮かべる。
理由や価値といったよくあるモノではなく、また虚数存在や存在証明といった哲学的なモノでもなく…

僕は、僕だ。
僕だけど、僕だけが僕じゃない。
これは僕。これらも僕だ。


それを、いつでも戦闘を開始できるくらいの位置で葉月・静夏(せい夏・f40839)は観察を続ける。

「この敵が門番なのかな?確実に倒して勢いをつけて、本命の邪竜神へ挑みたいね。」

僕は、僕。
君は、だぁれ?
君は、僕じゃない。
僕は、君が嫌いだ。

「話を聞くのに意味はなさそう、ねっ!」

初手から、全開で行くわ!

静夏の体が淡い|光《夏》に包まれる。
|光《夏》は徐々にまとまりを持ち、左手に集まってゆく。
また、不可視の力場が形成される。
これは、ケルベロスディバイド世界の力。
迸る|エネルギー《グラビティ・チェイン》は薄く体に纏われ、攻撃を防ぐ鎧となる。

「私には、この左拳と打たれ強さがあれば大丈夫。どんな敵だって、殴り飛ばせるわ!」

ステップで距離を詰め、|光《夏》を纏った左拳で気持ち悪い敵の顔面に渾身の一撃を叩き込む──

「厄介ね…衝撃が吸収でもされているのかしら?それとも殴った側から回復させている…?」

バックステップで素早く距離を取る。
今の手応えは、確かなものだった。だが、大袈裟すぎる手応えでもあった。
普通の人間や獣ならまだしも、オブリビオンが、あの威力の拳で顔面を弾け飛ばせるなどと…
さらにその手を引いた後、見てしまった。
ボコボコと首から頭が生え出して生きていることに。
今では与えた傷はどこにもない。それどころか──

痛い、痛いよ。ねぇ、君。
やっぱり、僕は君が嫌いだ。
でも僕だけじゃあ、痛いから。
おいで、僕たち。

ボトリと剥がれ落ちた肉塊が脈動し、膨張し、ボコボコと肥大化していく。
時を待つことなく、それは人の形となる。

どう?すごいでしょ。

上からの声。
増えるだけならまだしも、2倍ほどに巨大化しているのだ。

普通なら、絶望的かもしれない。
攻撃は意味をなさないように見えた。
相手の声質は変わっていない。
相手が増え、さらに巨大化した。

それでも、諦める理由になりはしない。
何故って?

まだ、勝てるから。


再び、ステップを踏んで肉薄する。
攻撃を通す方策は、ある。

一撃、二撃、三撃と、左拳の攻撃を当ててゆく。
それら一つごとに、派手に敵の体が弾け吹き飛ぶものの、すぐさま再生が始まり、さらに呼応するように敵の数が増えてゆく。

でも、ソレがどうしたの?

思い起こされるのは、今現在も纏っている「グラビティ・チェイン」。
ケルベロスディバイドという世界の、生命が生存するために必要なエネルギーこそが、コレだ。
その世界では、デウスエクスと呼ばれる化物が、人類からグラビティチェインを奪うために侵略を繰り返している。

何が言いたいかというと──エネルギーは、“有限”だということ。
如何なる力にも限界や制約が存在し、それに縛られる。
無限の力?永久機関?そんなものはそれに限りなく近いだけの偽物だ。
使い続ければ、いつかは尽きる。

さて、オブリビオンが体の再生、増殖、巨大化に使っているエネルギーは、どこから来るのかな?
私は、殴り続けるだけでいいの──あなたが終わるまで。

腕が弾ける
再生する
腹が弾ける
再生する
足が弾ける
再生する
頭が弾ける
再生する
・・・
・・・

終わりがないかに思えるその行動は、彼を滅ぼす最適解とまではいかないものの一種の答えだ。
十分に、力を、エネルギーを、削ぎ落とした。

さあ、まだこんなところでへばっているわけにはいかないわ。
まだまだ行くわよ──!

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
過去の最も嫌う情念といえば…
幼少期の頃の『呪われた存在』と周りに忌み嫌われていた頃の情念だろうか?
人は自分にない力を持つ者を異分子として排除しようとする
その力が、たとえ人や動物を癒す力であったとしても
特に一人対集団となればひどいものだ

心身を切り刻まれるかのような日々だったが…それだって終わりは来た
義父に引き取られてからは、そんな生活から抜け出せたんだ
だから、たとえ心身を切り刻まれるような事になろうとも耐えてやる
雑草根性を舐めるなよ!

相手の攻撃に耐えている間に練り上げまくった精霊力でUCを発動
精霊竜の攻撃で全て薙ぎ払ってやる!
永遠はないんだ
全てには始まりがあれば終わりがある
だから、俺は負けない!



荒れる吹雪の中、深い雪山の奥に、先へ先へと足を踏み出す男が一人。
鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)は、前も見えない雪の中に、ぼんやりと人影を発見する。
近づけば近づくほどその姿は鮮明になり、やがてその正体が判明する。

今回、倒すべき「門番」のオブリビオン。
こんな吹雪だというのにほぼ裸同然の服装に、体全体に巻き付く植物と溢れ出る粘性が高く白い液体。
頭部に咲いた花はその特徴的な“赤”を周囲に示している。

君は、だァれ?
君も、猟兵だね?

その言葉に、ひりょは言葉を返さない。
UDCアースのオブリビオンは、ある一定のルールに従ってその力を振るうことが多い。
意思、心情、言葉、心傷──心を蝕み我が物とするオブリビオン。
別の世界ならば、その力は輝ける竜となりて純粋な暴力と化したかもしれない。
また別の世界ならば、悪逆な吸血鬼となりて凄惨な戦場を生み出したかもしれない。
だが、ここでは…

ねェ、僕に教えてよ。
君の過去は、なァに?

その肉体は、端から再構築される。
形作るのは、ひりょの抱える、最も嫌う情念。

敵が最初に変じたのは、中年の男。
唾を飛ばしながら、怒鳴り立ててくる。
「こいつは、悪魔の子だ!『呪われた存在』だ!」

次に変じたのは、やや高齢の女。
耳に響く甲高い声で捲し立ててくる。
「悪魔の子なんて、ここに置いてはいけないわよ!出ていきなさいよ!」

これは──幼少期の頃の記憶か。
人間は愚かなものだ。
自分にない力を持つものを異分子として排除しようとする。
その力が、たとえ人や動物を癒す力であったとしても。

大量の視線が注がれる感覚。肌がぞわりと震える。
罵詈雑言の嵐と共に、指を刺され物を投げつけられる。

深く、暗く、沈んだ心。
集団は、力ある個人を許さない。
その力が如何なるものであってさえ。


でも──それは、もう乗り越えた過去。
心身を切り刻まれるかのような日々は、終わりを迎えた。
義父に引き取られてからは…自らの境遇を脱し、救いを得てからは…
脳裏に浮かぶのは、楽しい日々の光景。
多少、力について恐れられることがあったとしても、その力で人を助け、感謝されることもある。
集団に排されたモノではなく、集団に必要とされるモノへと、変わったんだ。

もう、心身を切り刻まれる経験はした。
なら、次も、その次も、耐えてやる。
いつか、その日常に終わりが来ると知っているから。

「雑草根性を舐めるなよ!」

敵の攻撃は、精神への攻撃。
乗り越えられると知っているから生まれた少しの余裕。
攻撃は、ひりょには通じない。
それでも動かなかったのは──準備。
ひりょの手には、練りに練られた極大の精霊力。

「俺のありったけの精霊力を捧げる!力を貸してくれ、偉大なる竜よ!」

精霊力は護符に注がれ、一体の巨大な、偉大な竜が現れる。
水晶のように輝く肉体は見る物を魅了し、その鋭い眼光、強靭な顎門は対峙する者を威圧する。


永遠なんて、ないんだ。
全てには、始まりがあれば終わりがある。
だから──

「俺は、負けない!!!くらえええええええ!!!!」

クリスタルドラゴンのブレスが、オブリビオンに注がれる。
圧倒的な破壊の力。
雪は融け、岩は砕け、余波で衝撃波が走る。

そんな衝撃の中心は、想像を絶する破壊力が襲いかかる──


立ち上った土煙が晴れる。
その中央には、白い肉片。
人型すら保てず、バラバラになったオブリビオン。
だが──動いている。
その肉が、脈動する。
膨張する。
肥大する。
分裂する。
融合する。

徐々に、人の姿を取り戻していく。

あぁ、痛い。痛いよ、君。
僕?
僕は、僕だから。
でも、ちょっと疲れたな。
やっぱり、君たちは、嫌いだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・スターライト
あれが封印の守護者

さっきの黒犬以上の異形
男性か女性かもわからない
幾つもの花、身体から滴り落ちる粘液、ヴェール

攻略されるために存在する|理解しやすい敵《エネミー》なんかじゃない
あれがこの世界の、|猟兵《私達》が倒すべき|世界の敵《オブリビオン》

装備を全交換
剣を掲げ、まずは遠間から雷撃の魔法を放つ

こいつも再生能力があるのね
って、今度は増殖、それに巨大化?
しかも負傷に関係なく自分の意志で?
さっき以上のクソモンス――違う、これが“敵”

近くの敵を剣で斬る
遠間の敵に雷撃を放つ
こんなことでは終わらない
全てを一撃で屠る必要がある

距離を取り、敵の全てを視界に収める
UCを発動。集めた力を込め、剣を振り切る!



吹き荒ぶ強風の中、ステラ・スターライト(星光の剣・f43055)が険しい雪山を進むと、見えてくるのは平坦な広い空間。
遠くからぼんやりと見える、あれが「封印の守護者」──
戦っている猟兵もいる。

近づくと、その姿がはっきりと目に映る。
さっきの黒犬以上の異形。
男性か女性かすらも、わからない。
人型ではあるのだが、身体に咲いた幾つもの花、体から滴り落ちる白い粘液、その身に纏われるヴェール。

その悍ましい存在を見て、理解する。
あれは、あれは──

「攻略されるために存在する|理解しやすい敵《エネミー》なんかじゃない…」

あれがこの世界の|猟兵《私達》が倒すべき|世界の敵《オブリビオン》。

必ず、ここで倒さなくてはならない。
これはゲームではなく現実で、作戦の失敗が意味するところは、数多の「命の灯火が掻き消える」こと。

全霊を以て、ここで撃退する──!

軽くウィンドウを操作して、装備を全て交換する。
多少冷えるが、この程度なら問題ない。
短い準備期間が終わった。

まずは、慎重にいかないと──

無闇な突撃が良い結果を齎すことはほとんどない。
GGOでも初心者プレイヤーが実力に見合ってないダンジョンやボスに挑んで惨敗した、なんて話はわざわざ取り上げられもしない、よくあること。

──それでも現実じゃあ笑い話にもなりやしない。
敵の攻撃を知り、特性を知り、弱点を知る──安全に戦いを組み立てるための必要な工程だ。

光り輝く剣を掲げ、雷撃を放つ。
命中した箇所が弾けるように吹き飛び、肉が抉れる。
よし、攻撃は通る──!

オブリビオンの様子がおかしい。
見た目では、明らかな大打撃。それなのに、怯んだ様子もない。
いや、本当に大打撃を与えたのか…?目を凝らすと、傷跡すらも残っていない。
それどころか、飛び散った肉片と液体がボコボコと盛り上がり、肥大化し、新しい体が生まれる。

「こいつも、再生能力があるのね……って、今度は増殖?それに巨大化?
しかも負傷に関係なく自分の意思で?」

馬鹿馬鹿しいような再生能力。
これがGGOなら間違いなくさっき以上のクソモンス──いや、違う。
これが、敵なんだ。

ゲームと現実は、違う。

僕は、僕。
君は、僕じゃない。
僕は、何にでもなれる。
君は、僕になれない。

おいで、僕たち。


大体敵のことは把握した。
特筆すべきは強力な再生能力と、それに伴う増殖、巨大化。
技量はそこまでない。
対応を間違えれば、逃げ場を失い、「詰み」になる。

近くの敵を剣で斬る。
遠間の敵に雷撃を放つ。
その全ては敵に大ダメージを与え、その全ては即時と言ってもいいような速度で回復される。
それでも、連撃を続ける。
円を描く様に──敵をひとまとまりにするように。

こんなことでは、終わらない。終われない。
全てを一撃で、回復させる暇もなく──屠る!!

素早いバックステップで距離を取る。
この位置なら──見える。
一箇所に固めた全ての敵。

握りしめる剣は太陽のような光を放つ。
それはステラの視界域全体に降り注ぐ、破滅の光。

その一撃は、閃光は、音もなく。
視界の全てを埋め尽くす光は、全ての肉片を食い潰さんと暴れ狂う──

「これで……終わりね。」

油断の出来ぬ激しい戦いに、大きい息を吐く。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『邪竜神グリーディーア』

POW   :    お前の欲望を見せてみろ
【打撃攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【持っている欲望を解き放たせる衝撃波】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
SPD   :    縛りなど捨ててしまえ
【口から放つブレス】が命中した対象にダメージを与えるが、外れても地形【を倫理感を弱めるフィールドに染め上げ】、その上に立つ自身の戦闘力を高める。
WIZ   :    死なれてはつまらんからな?生きて欲を見せてみろ
【寄生した相手の欲望を増幅する触手の眷族】が命中した対象を治療し、肉体改造によって一時的に戦闘力を増強する。

イラスト:滄。

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠神薙・佑紀です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


やっぱり…君たちは嫌いだ。
でも、僕じゃ、勝てないから。
僕は、眠るよ。
けどね、君たちは許さない。
だから、出てきてよ。
僕の、僕たちの──神よ 


肉片が消え、大地は揺れる。
山の一角が崩れ、そこに封印された巨大な邪竜神が、現れた。

我の力。
かつてと比べると、比べるべくもない。
だが、信仰に依らない力。
我だけが我に依って持つ力。
眼前にいるのは、六番目の猟兵達。

面白い。軽く、体を動かすとしよう。

邪竜神。
それはまだ、封印から目覚めたばかり。
体は錆びつき、氷に閉ざされ、力は未だに満ち足りていない。
それでも感じる。圧倒的な威圧感。

だが──この程度、猟兵ならば、乗り越えられる壁だろう?

《邪竜神「グリーディーア」》、討伐開始──!
ルキフェル・ドレンテ
貴様、馬の骨にも満たぬ爬虫類風情が誰に口を利いている?
誰の御前にいると心得る…?

欲だと?
実に単純明快なこと
全ての命どもを串刺しにして焼却して、奴らの富も名誉も絆も平穏も誇りも貞操も何もかもを奪い尽くして殺し尽くしたい、
以上でも以下でもなしにそれだけだ
欲がお望みならば模範解答ではないか?感謝したまえよ
おっと、興味本位で尋ねて傍観を決め込めると思うなよ蜥蜴、無論貴様も俺の欲望の対象だ
焼却してやろう、火勢が足りぬとほざくなら幾らでも呪詛を焚べてやる

M'lady、どうした
あの蜥蜴になにか|幻聴《・・》でも聴かされたのか、可哀想に
家に帰ろう
…俺の欲?
ただ貴女が心穏やかに過ごせるならばそれだけで――



圧倒的な威圧感の中、ルキフェル・ドレンテ(嘆きの明星・f41304)は、そんなものは痛痒にすらならぬと言わんばかりに気品を纏い佇んでいる。
その仮面の奥に隠された瞳には増幅された欲と、それでも尚、欲を埋め尽くす圧倒的な憎悪を宿す。

「貴様、馬の骨にも満たぬ爬虫類風情が誰に口を利いている?」

「面白いことを言うのだな、矮小なる者よ。今の我にすら及ばぬ分際で、良くほざくものよ。」

穏やかではない会話。
憎悪の炎をより強く、より暗く燃え上がらせながら会話を続けていく。

「貴様は…誰の御前にいると心得る…?」

「ふむ…我の目には、ただの|我ら《オブリビオン》の成り損い…そして忌まわしき猟兵の気配…珍しいが、それだけだ、と見える。それともなんだ?貴様は珍しい欲でも内に抱いているのか?」

ならば、見せてみよ──

ルキフェルは返答にすらなっていない邪竜神の様子に舌打ちしつつ、燃やし尽くそうとして、気づく。
いつの間に、囲まれていた──?

やたら禍々しい気配を纏う触手の軍勢が、一斉に襲いかかる──

避け、燃やし、切り刻み、串刺しにする。しかし、手数が足りず、少しずつ推されていく。

「そう抵抗するな、我は貴様の欲が見たいのだ。それに、死なれてもつまらん。さぁ、見せてみろ──」

触手の一本が、ルキフェルの身体を穿つ──が、痛みは走らない。
その触手は、物理的に影響を及ぼすものではない。触手が蝕み喰らうのは、その精神──
ルキフェルの心に取り憑き、その欲望を増大させる──

なんだこの、沸々と湧き上がる感覚…厄介な。
だが──もうそんなことは関係ない。
全てを、破壊して奪い尽くすのみ──

「欲、だと?」

ルキフェルの口が開かれる。

「実に単純明快なことだ。」

ルキフェルに纏わり付いていた触手が全て、焼き消える。

「すべての命どもを串刺しにして焼却して、奴らの富も名誉も絆も平穏も誇りも貞操も何もかもを──奪い尽くして殺し尽くしたい。以上でも以下でもなしにそれだけだ。」

静かな声。いつもとあまり変わらない落ち着いた声。
しかしその奥には増幅された渦巻く欲と、ルキフェルの根幹とも言える燃え盛る憎悪が宿っている。

「欲がお望みならば模範解答ではないか?感謝したまえよ、蜥蜴。」

「忌まわしき猟兵にしては随分と、狂気的ではないか。クハハ……面白い。あぁ、貴様が猟兵などでなければ眷属にしてやったものを…」

どこまでも上から目線で物事を語るものよ。
忌々しい。

「おっと、興味本位で尋ねて傍観を決め込めると思うなよ蜥蜴、無論貴様も俺の欲望の対象だ。」

「来てみろ、混ざり物風情が。貴様の欲望に宿る力は如何程か、我に示してみろ!!」

ルキフェルの周りに、無数の炎弾が浮かぶ。
それは取り囲むように、逃げ場を塞ぐように邪竜神の周囲を包み込み、全方位からの圧倒的な熱量により燃やし尽くす。
地獄の炎。
それは、生きとし生けるものを憎み、永遠に消えることのない呪詛の炎。

「焼却してやろう、火勢が足りぬとほざくなら幾らでも呪詛を焚べてやる。」

ゴウ、と燃え上がる邪竜神の肉体。
それは抵抗を許さずに、そして死ぬまで消えることはない。

ふと、後ろからルキフェルの片手が握り締められる。
その弱々しい力は敵のものではなく──

「M’lady、どうした」

まさか、M’ladyもあの邪竜神の力に当てられて──
少し思案し、言葉を綴る。

「あの蜥蜴に何か|幻《・》|聴《・》でも聞かされたのか、可哀想に。」

少し、握りしめられた手が、M’ladyの体が、ぴくりと震える。

「家に帰ろう。」

それでも、まだその手は離されることはない。
瞳のない顔がルキフェルを弱々しく見上げている。
声は出せないはずなのに、分かる。

「…俺の欲?」

握りしめられる力が少し、強くなる。
尤も、痛みを感じるほどではないが。

「ただ貴女が心穏やかに過ごせるならばそれだけで──」

大成功 🔵​🔵​🔵​

葉月・静夏
寝起きで本調子でないとはいえ、強い力を感じるね。なんとしてでもここで倒さないとね。

相手が大きくて強いね。だからこそ、私ももっとも得意な戦い方をするよ。
【鉄壁】の守りで攻撃を受け止めながら敵の動きを観察し、隙があったら反撃。動きが見えて来たら【ジャストガード】で大きめの隙を作ってゆっくり【緩夏静拳】で反撃。

私の欲望は楽しく生きること。
その中には命をかけたスリルを求めて戦うこともあるよ。
この戦いに臨んだ理由の一つでもあるね。
回避をしないでガードを選ぶのも、味方を守るディフェンダーの意地だけでなく、よりスリルがありそうだからでもあるね。
この欲望を解き放たれたところで戦況に何か影響はあるのかな?



ただでさえ厳しい雪山の空気感が、変わる。
空気が震えるような、ピリピリとする「圧」。
眼前に見えるは、邪竜神──確固たる力を持つものとしての威圧感が、その存在をより大きく、より恐怖感をそそらせる。

でも──

葉月・静夏(せい夏・f40839)は危機感を感じながら、それと同時に少しづつ増大する自身の欲望を聞く。

「寝起きで本調子でないとはいえ、強い力を感じるね。なんとしてでも、ここで倒さないとね。」

心臓が躍るように跳ねる。
これほどまでに、楽しめそうなことはあっただろうか。
相手は封印から目覚めたばかりとはいえ、邪神という存在に名を連ねる存在。
その体は巨大で、その外鱗は堅牢で、その戦法は純粋で、その思考は害悪だ。

だからこそ──楽しい。
静夏の欲望は、楽しく生きること。
ただ本人の気質も相まって、その中には戦いに身を委ね、命をかけたスリルを求めることも含まれる。

「ふむ…貴様は……そうか。それが貴様の願い、貴様の欲望なのだな。いいだろう、貴様は眷属などではなく我の手で殺してやろう。」

襲いかかる巨大な拳。軌道はわかりやすい。予備動作もある。でも、速い──!

避けられはする。でも、避けない
「──ッ!」

なんて、重い拳だろうか。
両腕をクロスさせ、完璧な姿勢で拳を受け止め、衝撃を流した。なのに、たったの一撃で腕が痺れる。
無意識に口角が歪む。
自分の命がすり減っていく感覚。
ディフェンダーとしての意地や誇りから、ガードを選んだのもあるけれど。
死と隣り合わせに歩む、快感。
その感覚はより鋭敏になり、集中は際限なく深まっていく──

開き切った瞳孔がその一挙手一投足を見逃さまいと動きを追っていく。
この相手ならできる。私がもっとも得意な戦い方──

速い、速い乱打。
高度な武術とは比べるべくもない、身体性能に強く依存した戦法。
何度も拳を叩きつけられれば、何度もその動きを見れば、何度もその脅威を体験すれば。自ずと“見えてくる”。

(そろそろ、かな。いいね、見えてきた。)

単純な右腕の拳。邪竜神の重心は右へと流れ、体の動きは不安定になる。
今までと同じ、両腕を交差させたガードの構え。

(まだ、ギリギリまで引きつけて…タイミングを見て……ここ!)

拳が腕に当たる瞬間、渾身の力で両腕を押し返す。
加えた力は拮抗せずとも、力は流れ、不安定な姿勢は崩れ落ちる。
初めて露呈する、邪竜神の致命的な隙。

「何…!?」

「あなたとの戦いは楽しかったよ。でも、少し単純だったかな。」

パチパチと、小さく輝く左腕が、ゆったりと、邪竜神に当たる。
体制を崩しているが故避けることはできないが、避ける必要もない。
その拳はまるで線香花火のような弱々しいもので、それ自体にダメージはないから。

だが、パチパチと、小さな炎が広がっていき、邪竜神の体を包む大きな炎となる。
UC由来の消えない炎による継続ダメージが、じわじわと邪竜神の生命を蝕んでいく──

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳳凰院・ひりょ
くっ、ここまで巨大な相手とは…
でも、目覚めたばかりの本調子ではない今なら、つけ入る隙もあるというものか!
相手がでかいなら、こっちもそれ相応の体格があれば戦いやすいかもしれないな
…今こそこの|UC《力》を振るう時か!いくぞ!
キャバリアと同化し、邪竜神と向き合う
今の俺はキャバリアのダメージが俺自身へダイレクトに伝わって来る状態
相手の攻撃は回避しつつ飛行しながら攻撃を仕掛ける
拡散誘導型のマヒ攻撃を付与したビーム砲で多段ヒットを狙う
拡散するビームでついでに相手の触手の眷属を部位破壊出来れば御の字だ
相手の動きを鈍らせた所を、破魔の力を全開で乗せた巨大な太刀で上空から強襲
唐竹割りの要領で一太刀浴びせる!



「くっ、ここまで巨大な相手とは…」

鳳凰院・ひりょ(天然系精霊術使いの腹ぺこ聖者・f27864)の眼前には、雪山の一角に封じられていた、巨大な邪竜神の姿。
その姿はそこに存在しているだけで心に恐怖を植え付け、迸る強大なオーラは悍ましいまでの圧力で触れるものの動きを止める。
何もされていないのに、この感覚。

でも…邪竜神はまだ目覚めたばかり。本調子とは程遠い。
なら、付け入る隙もあるというものか!

ひりょは冷静に、対応策を練っていく。
この図体の相手では、精霊の力を借りた攻撃も、剣の攻撃も、護符の攻撃も、効きが悪いだろう。
攻撃は、通るかもしれない。
攻撃により、部位を破壊できるかもしれない。

だが──いくら攻撃したところで、それは致命傷になり得ない。
点ではなく“面”での制圧が必要、か。

なら──

相手がでかいなら、こっちもそれ相応の体格があれば、戦いやすいかもしれないな。

一つの答えを出す。
あとは、余計なことを考える暇は無い。

「…今こそこの|UC《力》を振るう時か!いくぞ!」

現れるは、光と闇のオーラを纏いし天魔機神、愛機たるキャバリア【ルクス・テネブラエ】。

「ルクス・テネブラエよ、光と闇の擬似精霊よ…。今こそ、俺の体を媒体にその力を示せ!」

天魔機神の巨大な姿と、ひりょの姿が、重なっていく──

それは、キャバリアとの同化。
今のひりょは、文字通り自分の手足を動かすかのように巨大なキャバリアを操ることができる。
しかし、欠点もある。
キャバリアへのダメージがひりょ自身にダイレクトに伝わること。
いかに鉄壁の防御力を誇る機械の巨体であろうとも、相手も巨大なオブリビオン。
そう何発も喰らっていては機械の体も持たないかもしれない。
極力、攻撃は回避するよう意識に留め、敵と向き合う。
この力を使った以上は、負けるわけにはいかない──いや、違う。

負けるわけにはいかないからこそ、この力を使う!

吹き荒ぶ風と豪雪を吹き飛ばし、空を舞う。
周囲には、禍々しい力を秘めた黒い触手。

──薙ぎ払う!!

拡散するビームで触手の一掃する。望んだ通りの、面としての圧倒的な制圧力。
邪竜神が何か嬉しそうに口を開いているが、聞こえない。聞く必要もない。
そのままの勢いで、邪竜神を狙う!

ビームの拡散は、回避を許さない。
一つ一つの威力は多少犠牲にしているが、その代わりにビームにある力を付与してある。
被弾した相手を痺れさせ、その動きを封じる力を──

邪竜神はオーラを固め、そのビームに対処しようとするが…

命中、命中、…あとは対処されたか。
十分だ!

邪竜神の動きは鈍り、攻撃に移る準備は完了済み。
一太刀、浴びせてやる!

スラスターをふかし、空中を滑るように急接近する。
キャバリアのサイズに相応しい巨大な太刀を携え、大上段から、破魔の力を全開で乗せた最高の一撃を──!!

狙うは、一刀両断。

邪竜神の眼が驚愕に開かれる。
その体が僅か一歩、後ろに下がり。

ズン!!!

邪竜神の頭から爪先にかけて、体の中心を通る綺麗な一本線が刻まれる。
だが、最後の一瞬、後ろに下がったことで致命傷には、一刀両断には、及ばなかった。

それでも、この攻撃は邪竜神にとって大打撃も大打撃。
命の危機を感じさせる攻撃であった故に、邪竜神は自らの欲をさらに強く解き放つ。
まだ、まだ、もっと、もっとだ。


強く望めば、その心は渇くもの。
何かを手に入れようとすれば、犠牲は不可欠だ。
攻撃は激化する。しかし、だからこそ付け入る隙が生まれる。
邪竜神との決着まで、あと僅か。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ステラ・スターライト
私がしたいこと

人を助けたい
人を助けることが嬉しい
人を助けられることが嬉しい
自分が人の役に立てることが嬉しい

今はただそれだけ

貴方が世界に惨禍をもたらすというのなら
私はこの|勇者のアバター《世界を救う力》で貴方を倒す!

って、危ない危ない
ボス戦こそ落ち着かなきゃ

希雪さんは、あいつは人の欲望を操るって言ってた
この高揚が敵の干渉によるものなら――強化した《耳飾り》で状態異常を無効化
敵の爪を、尾の動きを――大丈夫、見えている

《帯革》で飛行
攻撃を躱し、受け流し、間合いに入る
《剣》を突き刺せたなら、その身体に全力の《雷撃》を!
足りないなら《雫》を使ってもう1回!

今度は眠りや封印なんかじゃない
その身に滅びを!



激化する戦場。
大気を震わせ咆哮する邪竜神。
その体はボロボロだ。
封印の影響ではなく、猟兵たちの手によって、削った結果のこと。

そしてまた一人──

ステラ・スターライト(星光の剣・f43055)はその流麗な金髪を靡かせながら佇む。
その瞳は真剣そのもの。なんせ、ボス戦なのだから。

自分の胸に手を当て、目を閉じる。
決意を固めるために。


私がしたいこと───

心の中にポツポツと浮かび上がる、さまざまな情念。
自分の信念や、過去の経験、私という人物を形作ってきたものは──

──人を助けたい。

一つ、願いが生まれる。
それは、私の根幹。


──人を助けることが嬉しい。

また一つ。
淡く儚いが秘める力を持つ願い。


──人を助けられることが嬉しい。

また一つ。
それはただの理想かもしれない。完全に成し遂げることなんて不可能かもしれないけれど。


──自分が人の役に立てることが嬉しい。

それでも、目の前に足す助けを必要としている人がいるのなら。
目の前に打ち倒すべき邪悪が聳えているのなら。
私は、身を砕いてでも成し遂げる。

今は、ただ、それだけ。

「貴方が世界に惨禍をもたらすというのなら──」

手に持つ大剣を強く、握り締める。
閉ざされた目は開かれ、強く邪竜神を睨みつける。

「私はこの|勇者のアバター《世界を救う力》で貴方を倒す!!」

ステラの体に柔らかな光が満ちてゆく。
これはいわば、祝福。
自らの持つ力のどれかを4回まで大幅に強化することができる。
その迸る感情のまま、邪竜神に駆け出そうとして──


小さな違和感。
私の気持ちは──どうしてこんなにも高揚しているの?
倒すべき敵。強大な敵。それはわかってる。
でも、一旦冷静に考えることすら忘れる程ではないはず。
この気持ちの高揚は、自然なものなのか──
もしそれが否なら……

ふと、依頼の説明を受けた時のことを思い出す。
希雪さんは、あいつは人の欲望を操るって言ってた。
この高揚が敵の干渉によるものなら──対策を打たないと、致命傷になりかねない。
一つ、ここで使うか。

《双星の耳飾り》に纏った光が集まっていく。
これは、即死と状態異常を無効化するための耳飾り。
でも、バグさえ無ければ絶対の信頼を置ける装備だったとしても、それはゲーム内での話。
現実なら、こんな小さな耳飾りに自分の命をかけるには、不安しかない。
自分は猟兵で、相手はオブリビオン。力の差は同格で、互いが互いに運命の敵。
現に、先ほどまで干渉を受けていた可能性が高い。

でも、もう大丈夫。
敵の爪を、尾の動きを──大丈夫、見えている。

ステラの体がふわりと浮き上がる。
巨大な剣を両手で支え、邪竜神に近づこうと──

もちろんそれをただで許す敵ではない。
爪の振り下ろし、尾の薙ぎ払い、鋭い打撃、広範囲のブレス。
どれ一つとっても極大の破壊力を秘め、被弾は避けるべきだろう。

でも、見えている。
今の私なら──躱せる!

ふわり、ひらりと最小の動きで躱していく。
上下左右前後、周囲の全てを掌握して最短最良の無駄のない回避を。
時に躱し、時に受け流し、気づけば私の間合いの内側。

狙うは|心臓《コア》、ただ一つ。

「貴方にあげるのは、眠りや封印なんかじゃない!」

光に満ちた大剣が深く、深く突き刺さる。
剣は発光し、バチィ、という爆音と共に雷撃が邪竜神の体を焼き焦がす。
全MPを消費した渾身の雷撃。


だが、それでも───

あと少し、足りない。

邪竜神は咆哮をしている。
この位置、MPは枯渇中……次の攻撃は避けられない──

「まだ、終わらない!!」

素早い動作で星光の雫を飲む。
最速の回復は、GGOプレイヤーの嗜みの一つ。

次の攻撃が避けられないなら、それよりも早く倒し切ればいいだけよ!
剣はまだ刺さっている。
2回目は、耐えられるかな?

「その身に滅びを───!!!」

最大MPからの継戦を気にしない|最大火力《全ブッパ》の2連打。
それは度重なる戦闘でボロボロだった邪竜神の体を貫き蹂躙し──

轟音を響かせながら、その巨体が倒れる。

猟兵たちの、勝利だ。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月29日


挿絵イラスト