封印されし偽神
「事件発生です。リムは猟兵に出撃を要請します」
グリモアベースに招かれた猟兵達の前で、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(勿忘草の魔女・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「ケルベロスディバイドにて、黄道神ゾディアック配下のデウスエクス達が、かつて封印されたデウスエクスを復活させようとしています」
それは今から十数年前の話だ。とある強大なデウスエクスによる地球侵略に対して、地球人類は大きな犠牲を払いながらも、決死の戦いの末にそれを封印することに成功した。もしゾディアックの配下にこのデウスエクスを復活・回収されてしまうと、再び地球を脅かす大きな脅威となる。
「この計画のために動いているのは『アイスエルフ』というデウスエクス種族です。彼女達は地球人類の殺戮によって得た大量のグラビティ・チェインを、封印デウスエクスの復活に利用しようとしています」
強大なデウスエクスを完全復活させるためには、それだけ多くのグラビティ・チェインが必要になるらしい。氷と制圧を司るアイスエルフのシャーマン達は、手近な都市で殺戮を行うことでそれを賄うつもりだ。幸い、今回はグリモアの予知によって敵が襲来する場所は判明している。
「皆様は至急こちらの都市に向かって、アイスエルフによる市民の殺戮を阻止してください」
敵を撃退してグラビティ・チェインの回収を阻止できれば、封印デウスエクスの復活はかなり弱体化した状態で行われることになる。逆にこれは、こちらにとってもチャンスかもしれない。これまで強大すぎるあまり手を出せなかったデウスエクスを、撃破できる可能性が生まれるのだ。
「デウスエクスが封印されているのは、現在は廃村となっている村の地下室です。この村は、当時の地球人類の魔法使い達が張った、強固な魔術結界に守られています」
封印を補強する目的で張られた結界は、現代でもその役割を果たし続けている。しかしデウスエクスが復活してしまえば、遅かれ早かれこの結界も破られてしまうだろう。付近に被害が及ばない場所で決戦に挑むためのは、こちらから結界を突破して敵の元に向かう必要がある。
「過去の人類が苦心して張った結界を破ってしまうのは心苦しい気もしますが、致し方ありません」
流石に十数年前の結界となれば綻びもあるだろう、そこを見つけだして突破するもよし、魔術に自信のある猟兵ならこちらから結界に干渉して突破口を作ることもできるだろう。また、村の周辺には結界を維持するための魔法陣や魔導設備が隠されており、それを破壊することでも結界は弱まるはずだ。
「地下室に封印されているデウスエクスの名は『魔術司書ライブラリアン』。魔術に関する書物の収集家として知られており、かつての戦いでも世界各地の図書館や博物館、学院などに大きな被害をもたらしたと記録には残っています」
収集した魔術書の呪文を自在に使いこなすライブラリアンの魔力は強大で、以前は封印するのが精一杯だった。
しかしアイスエルフ達による復活儀式が不完全なまま頓挫すれば、彼女は本来の力を発揮できない状態で目覚めることになる。そこを猟兵達の全力で正面決戦を挑むのだ。
「強大な封印デウスエクスの討伐。十数年前には果たせなかった事を、皆様の手で成し遂げてください」
説明を終えたリミティアは手のひらにグリモアを浮かべ、ケルベロスディバイドの都市へと猟兵達を送り出す。
デウスエクスによる虐殺を阻止し、封印された過去の強敵を倒す。数多の生命が息づく、この地球を守るために。
「転送準備完了です。リムは武運を祈っています」
戌
こんにちは、戌です。
今回のシナリオはケルベロスディバイドにて、過去に封印された強大なデウスエクスの復活計画を阻止し、これを撃破する依頼となります。
1章は封印デウスエクスの復活儀式を進める『アイスエルフシャーマン』との集団戦です。
彼女達の目的は都市で地球人を殺戮し、封印デウスエクスを復活させるのに必要なグラビティ・チェインを集めることです。
ここで殺戮を阻止できれば、封印デウスエクスは不完全な状態で復活することになります。
2章は封印の地を守る魔術結界を攻略します。
もともとは封印を守るために十数年前の人類が張ったものですが、すでに封印から目覚めかけているデウスエクスの元に向かうには、これを突破するしかありません。
結界の綻びを突く、魔術には魔術で干渉する、結界を維持する魔導装置を破壊するなど、攻略手段については各自にお任せします。
3章は封印されしデウスエクス『魔術司書ライブラリアン』との決戦です。
十数年前は封印することしかできなかったほどの非常に強力なデウスエクスですが、1章で敵の計画を妨害できていれば、復活は不完全なものとなり、かなり弱体化しています。
この状態なら今の猟兵の実力で、正面から撃破することも可能でしょう。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 集団戦
『アイスエルフシャーマン』
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POW : スノウスピリット
レベル×1体の【雪ダルマに似た「氷の精」】を召喚する。[雪ダルマに似た「氷の精」]は【氷】属性の戦闘能力を持ち、十分な時間があれば城や街を築く。
SPD : クリスタライズシュート
【触れたものを凍らせる氷の魔法】を宿した【氷結輪】を射出する。[氷結輪]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
WIZ : 氷の吐息
【口】から【全てを凍てつかせる冷たき吐息】を放ち、【状態異常:氷】と【状態異常:足止め】により対象の動きを一時的に封じる。
イラスト:田村田楽
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
ディッセンバー・クレイ
アイスエルフが敵というのは不思議な感じですね
人々に害を為すなら、故郷の友人達の同族であろうと容赦はしませんよ
【POW】連携・アドリブ歓迎
氷の精でこちらを足止めしている間に儀式を進められても困ります
UC【タイムザッパー】で時間ごとまとめて停めてしまいましょうか
加速ブレスでの攻撃と併用して、ブレス範囲外の敵は【セブンアームズ】による直接攻撃で狩ります
世界が違えどデウスエクスの行動は似たようなものですね
実に直接的で安直…そして残虐です
その辺り、改善しようとは思いませんか?
…おや、もう聞こえていませんか
「アイスエルフが敵というのは不思議な感じですね」
平行世界とでも言うべき異次元からやって来たケルベロスの1人、ディッセンバー・クレイ(自由気ままな戦闘執事・f36957)にとって、アイスエルフはともに地球を守るために戦う同胞だった。それがこちらの世界では封印デウスエクス復活のために殺戮を行おうとしているのだから、世界の違いを実感せずにはおれまい。
「人々に害を為すなら、故郷の友人達の同族であろうと容赦はしませんよ」
「貴方は……ケルベロスですか」「丁度いい。貴方の命も頂きます」
しかし事実として彼女達が地球の敵として立ちはだかるのなら、為すべきことは一つだ。殺戮が行われんとしていた都市に現れた彼に、『アイスエルフメイジ』達も殺意を向ける。その理由がケルベロスの持つ豊富なグラビティ・チェインにあることは明白だった。
「いでよ、スノウスピリット!」
氷と制圧を司るアイスエルフの魔術師達は、ユーベルコードで雪ダルマに似た「氷の精」を呼び出し、攻撃させる。
カチカチに凍ったつららや雪玉が飛んでくると、クレイはさっと身を躱しつつ、視線は召喚主であるアイスエルフ達から逸らさない。
「氷の精でこちらを足止めしている間に儀式を進められても困ります」
向こうの目的はここでケルベロスを倒すことではなく、復活儀式に必要なグラビティ・チェインを集めることだ。
手をこまねいている隙に民間人を虐殺されるのが、こちらにとっては最悪のパターン。事実、敵方にはすでに戦線を離脱しようとしている者もいた。
「時間ごとまとめて停めてしまいましょうか。クロック、略奪領域を展開なさい……この空間限定ではありますが、時間竜の権能を解き放ちます!」
そこでクレイは【時流転嫁の竜撃】を発動。ディッセンバー家が守護する国宝「クロックマネージャー」が、本来の姿である時間竜クロックへと変形・巨大化し、戦場の時間を吸収する。これにより、限りなく停止に近い超減速状態に陥った敵は、ピタリと凍りつくように動きを止めた。
「な……に……これ……は……!」
減速したアイスエルフ達に放たれるのは、吸収した時間をまとめて放つドラゴンブレス。瞬時に肉体の時間を超加速させられた彼女達は、またたく間に朽ちて力尽きてゆく。その光景は夏の日差しを浴びて溶ける氷像のようであった。
「世界が違えどデウスエクスの行動は似たようなものですね。実に直接的で安直……そして残虐です」
クレイはそう呟きながら、ブレスの範囲外にいた敵を自らの手で狩っていく。片手剣・斧・双短剣・棍・盾の5つの武具で構成された千万変化『セブンアームズ』を自在に操り、減速中のアイスエルフや雪の精の命を刈り取る。残酷な殺戮に手を染めようとした者達に、かける情けはなかった。
「その辺り、改善しようとは思いませんか? ……おや、もう聞こえていませんか」
ほどなくして略奪領域が解けた後も、その場は死の静寂に満たされていた。不滅存在である彼女らと次に相まみえる時は、すこしは考えが変わっていると良いのだが――ほどほどに期待することとして、彼は次の現場へ赴くのだった。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
アイスエルフ…わたくしの世界では仲間になったのですが…
まだ、時間と手間が必要…という事でしょうか
UCで事象の二点間を入れ替えーー今回は『凍結した事象・物体』と『敵デウスエクスの状態』を『入れ替える』事で『氷結輪が着弾すると同時、アイスエルフシャーマンの肉体が凍結する』という事象を具現化
さらにUC『位相幾何学型現象法則』で『異常位相幾何学的空間数学現象型UDC』を呼び出してアイスエルフシャーマンを投げ飛ばしていく
…神殺しの力を失ったのも、悪い事ばかりではありませんね
こうして、今度は笑い合いながら轡を並べる可能性を手にしたのだから
「アイスエルフ……わたくしの世界では仲間になったのですが……」
ケルベロスブレイドとケルベロスディバイドでは、地球と宇宙の歴史も勢力図も異なる。アンジェリカ・ディマンシュ(ケルベロスブレイド命名者・f40793)のいた世界では種族ごと定命化を果たしたアイスエルフも、こちらの世界では他種族連合デウスエクスの一員として、氷と制圧の力を振るっていた。
「まだ、時間と手間が必要……という事でしょうか」
今後の活動次第ではデウスエクスから新たな仲間が増えることもあるかもしれないが、今現在行われようとしている殺戮を放置するわけにもいかない。決意を固めた彼女は予知にあった都市へと赴き、アイスエルフの軍団と対峙した。
「ケルベロス、貴女達のグラビティ・チェインもいただきます」
地球人の豊富なグラビティ・チェインを儀式に利用せんとする『アイスエルフシャーマン』から見れば、ケルベロスは優先して狩るべき獲物でもあった。触れたものを凍らせる氷の魔法を宿した、雪の結晶を模した武器――「氷結輪」を取り出すと、一斉に【クリスタライズシュート】を放ってきた。
「過去に起きた事を巻き戻す事は出来ない。けれども、今を変える事は生命の義務。故に遡行に対する反定立として逆転を成せ」
これに対してアンジェリカは【逆転するはしかし、巻き戻しに対する反定立】を発動。『凍結した事象・物体』と『敵デウスエクスの状態』という事象の二点間を入れ替える。氷結輪が着弾すると同時、凍結したのは彼女ではなくアイスエルフシャーマンの肉体であった。
「なっ……なにが?!」
元よりアイスエルフは氷の妖精種族。凍結したところでダメージは小さいが、未知の現象に対する動揺は大きい。この隙にアンジェリカは連続して【位相幾何学型現象法則】を発動。『異常位相幾何学的空間数学現象型UDCを呼び出して、動きの鈍った連中に掴みかかる。
「コードタイプ・トポロジー。これより異常位相幾何学的空間数学現象を以て現象操作を行う」
「「きゃああああっ!?」」
何が起きているか分からぬまま、投げ飛ばされたアイスエルフの悲鳴がこだまする。建物の壁やアスファルトに叩きつけられ、ダメージが限界に達した彼女達の肉体は氷像のように砕け散る。もっともそれは本当の死を意味しない――不滅の存在であるデウスエクスは、一時的に地球を退去させられてもまた舞い戻ってくる可能性がある。
「……神殺しの力を失ったのも、悪い事ばかりではありませんね。こうして、今度は笑い合いながら轡を並べる可能性を手にしたのだから」
元いた世界のアイスエルフ達のように、こちらの世界でも仲間になれる可能性に期待しつつ、容赦なく敵を蹴散らすアンジェリカ。その望みが叶う日は来るのだろうか――それは誰にも分からないが、未来には無限の可能性が満ちているのは事実だった。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
決戦配備:メディックを申請
民間人を安全な場所へ避難させて貰う
「DIVIDEの人たちに付いて行ってね。あの怖い人たち、やっつけとくからさ」
敵陣の真ん中に飛び込むよ。
……別に無策無謀ってわけでもないんだ。
氷結輪とやらが触れたらアウトなら、触れなければいい。
それに『触れたものを凍らせる』ってのは、味方殺しの特性だ。
いくら自在に軌道変更できたって、敵陣の中では攻撃軌道が限られる。
【心眼】と【見切り】をもってすれば、避け切るのは不可能じゃない。
「そんなに殺したいなら相手をしてあげるよ。今度は僕と――踊ろうか」
UCを発動。殲剣黎明刃140振りと、僕のひと振り。
その刃全てで、全ての敵を斬り伏せる!
「DIVIDEの人たちに付いて行ってね。あの怖い人たち、やっつけとくからさ」
「は、はいっ!」「ありがとうございます!」
デウスエクス『アイスエルフシャーマン』の襲撃を受けた都市で、暁星・輝凛(|獅輝剣星《レディアント・レオ》・f40817)はメディックの|決戦配備《ポジション》を申請し、民間人を安全な場所へと避難させていた。敵の目的が地球人の殺戮そのものにある以上、彼らの安全確保は最優先事項だった。
「これで安心して戦えるね。よし、行こう」
戦闘区域から市民をあらかた避難させ終えると、彼もまた前線へと向かう。その手に携えしは気高き獅子座の煌星剣「レグルス・レガリア」。異世界にて騎士として戦い抜いた彼の剣はいつだって、力なき者たちを守るためにあった。
「ケルベロスの増援か……っ!」
新たな敵を捉えたアイスエルフシャーマン達は、氷結輪に氷の魔法をこめて身構える。彼女らからすればケルベロスが持つ豊富なグラビティ・チェインは、封印デウスエクスの復活儀式に最適な獲物だ。突き刺さるような敵意の雨に、しかして輝凛はまっすぐ敵陣ど真ん中に飛び込んだ。
(……別に無策無謀ってわけでもないんだ。氷結輪とやらが触れたらアウトなら、触れなければいい)
飛来する巨大な氷結晶のリング。それを輝凛は刹那の見切りで回避する。肌をかすめる冷気からして、当たれば無事では済まないだろうが、それでも当たらない自信が彼にはあった。これは決して驕りではなく、確かな経験と推測に基づいたものだ。
(『触れたものを凍らせる』ってのは、味方殺しの特性だ。いくら自在に軌道変更できたって、敵陣の中では攻撃軌道が限られる)
いくら不滅のデウスエクスとて、あまりにも殺傷力の高い攻撃を無闇に振り回す訳にはいくまい。同士討ちを避けるように制限された攻撃であれば、輝凛の心眼と見切りをもってすれば避け切るのも不可能ではない。そう、事実として彼は何十という氷結輪の標的にされながら掠り傷さえ負っていなかった。
「くっ、なぜ当たらない……?!」
彼のことを知らないアイスエルフ達は、その実力に驚嘆するほかない。豊富な戦歴に裏打ちされた技術は、不死なるデウスエクスと定命の人間の差を凌駕する。ここにいるのは狩られるだけの無力な獲物でなく、敵を狩る獅子なのだ。
「そんなに殺したいなら相手をしてあげるよ。今度は僕と――踊ろうか」
【クリスタライズシュート】の乱舞を躱しきり、輝凛は【殲剣黎明刃・人】を発動。光のエネルギーで構築された140振りの小剣と、自らの手にあるひと振り。その刃全てをもって眼前の敵全てを斬り伏せるべく、一転攻勢を仕掛けた。
「つ、強いッ……?!」「きゃぁぁぁぁぁっ!!」
飛翔する刺突と斬撃の輪舞。その剣捌きはまさに閃光。剣聖の技を目に焼き付け、散っていくアイスエルフのシャーマン達。彼女らは結局誰一人としてこの都市の人々を殺せないまま、地球より退去させられる事となった。それは即ち、封印されたデウスエクスの復活が、一歩遠のいたことを意味している――。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
大量殺戮なんてさせる訳にはいかないから
邪魔させて貰うよ
ガトリングガンで攻撃しつつ
相手の注意を引くよ
一般人の方に向かうなら
背後から射撃して攻撃しよう
氷結輪はほどほどに回避しつつ
避け損ねたふりをして攻撃に当たろう
もちろん神気の防御で
ダメージは減らしておくよ
氷結耐性と寒冷適応があるから
段々動けなくなっているよう見せつつ
最終的に完全に凍って
戦闘不能になったふりをしよう
敵の注意が逸れたら
静寂領域をで攻撃
石の彫像に変えていこうか
僕が攻撃してるとわかりにくいUCだからね
彫像のように凍り付いた相手が
攻撃しているとはわからないんじゃないかな
周囲の敵を石像に変えたら動こうか
悲しいかな凍ったまま動くのにも慣れてるし
「大量殺戮なんてさせる訳にはいかないから、邪魔させて貰うよ」
都市に襲来した『アイスエルフシャーマン』達の前に、佐伯・晶(邪神(仮)・f19507)は携行型ガトリングガンを構えて立ちはだかる。封印されたデウスエクス1体を復活させるために、いったい何百人、何千人の地球人を犠牲にするつもりなのか知らないが、見過ごされると思ったら大間違いだ。
「邪魔はさせません」「貴女のグラビティ・チェインも頂きましょう」
威圧的な砲を携えた相手を無視して民間人の虐殺に向かうほど、アイスエルフ達も愚かではない。それにケルベロスや猟兵のような強者が持つグラビティ・チェインは、復活儀式のエネルギー源としても最適で、見逃す手はなかった。
(一般人の方に向かうなら、背後から射撃するつもりだったけど)
あちらから向かってきてくれるなら都合が良いと、晶はガトリングガンを連射する。彼女と融合している邪神の物質創造力の恩恵で、この大砲には弾切れという概念がない。虚空から生成される弾丸による無尽蔵の弾幕が展開される。
「凍りつきなさい!」
対するアイスエルフシャーマンも負けじと【クリスタライズシュート】を発動。触れたものを凍らせる氷の魔法を宿した氷結輪が、空中で加速・減速・軌道変更しながら標的を襲う。晶はトリガーを引き絞ったまま回避を試みるが、避けきれなかった氷の刃が肌をかすめた。
「なるほど、当たるとこうなるんだね」
アイスエルフの放った氷結輪は晶のドレスを切り裂き、その下の肌を凍結させていた。邪神の神気でガードしていてもこれなら、直撃を受ければたちまち全身凍りつくだろう。氷と制圧を司るデウスエクス種族、という肩書きに偽りはなさそうだ。
「避けきれると思わないことです!」
さらに連続で【クリスタライズシュート】を射出するアイスエルフ達。晶はガトリングガンの乱射で氷結輪を撃ち落とし、回避しようとするが、避け損ねるたびに段々と動きが鈍くなっていく。まずは脚が、次に腕が、そして胴体から全身へと凍結が広がっていき――。
「他愛無いですね」
ほどなくしてアイスエルフ達の目の前には、ガトリングを構えた姿勢のまま凍りついた、少女の氷像が立っていた。
少しばかり手こずらされはしたものの、所詮は定命の者ならこの程度。新たに1人の生贄を手に入れた彼女らは、次の獲物を探し始める。
「完全復活のためには、まだまだグラビティ・チェインを集めないと……んっ?」「どうしました?」
だが、そこでアイスエルフ達は違和感を抱く。戦いが終わった直後から妙に体が重く、手足が思うように動かない。
まるで石になったような――いいや、"ような"ではない。四肢の末端から少しずつ、体が石化していくではないか。
「こっ、これは?!」「いったい何が起こって……!」
突然の異変に混乱するアイスエルフ達。彼女達はこの石化現象の原因が晶の発動した【静寂領域】にあると気付いていない。それは戦場を神域に似た環境に変化させ、森羅万象に停滞をもたらす邪神の神気をもって、敵対者を永久に停止させるユーベルコードだ。
(僕が攻撃してるとわかりにくいユーベルコードだからね。彫像のように凍り付いた相手が攻撃しているとはわからないんじゃないかな)
完全に凍結させられたはずなのに、まだ晶には意識があった。彼女は敵の注意から外れるためにわざと氷結輪を避け損ねるふりをして、戦闘不能になったように見せかけたのだ。人間離れした氷結耐性と寒冷適応を持つ彼女は、この程度の冷気で死にはしない。
「た、助け……」
謎の石化現象の原因を突き止める前に、アイスエルフ達は完全に物言わぬ石像と化し、恐怖と困惑の表情で固まる。
周囲の敵がみな石像になったのを確認すると、晶はのそりと歩きだす。凍結が解除されたわけではないので、氷像がそのまま動きだしたような格好だ。
(悲しいかな凍ったまま動くのにも慣れてるし)
静謐と停滞を司る邪神を宿していれば、この程度の寒さや不自由も珍しくないのか。彼女の表情は平然としていると言うよりは、ある種の諦観に満ちていた。もっとも、それが今回のデウスエクスと相性が良かったのは、紛れもない事実なのだが――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
オブリビオンでなかろうと、無辜の民の殺戮を見過ごすわけにはいかない!
紅い踊り子の衣装を身に纏い、立ちはだかる
凍てつく氷を司るアイスエルフと対照的に、燃え盛る炎の加護を受けた姿
四肢に燃え盛る炎の魔力を纏い(属性攻撃)、吶喊!(ダッシュ)
【怪力】による拳打や蹴撃、当たるを幸い氷の精を【なぎ払う】
灼熱の炎は氷属性に効果覿面
我が身には|獅子女神《セクメト》の加護ぞあり、悪しき氷魔は不滅の太陽が融かし尽くす!
氷の精を粉砕し、アイスエルフを射程内に捉えれば、大きく息を吸い……
【全力魔法】の【灼滅の吐息】で一気に【焼却】殲滅する
「オブリビオンでなかろうと、無辜の民の殺戮を見過ごすわけにはいかない!」
普段は別の世界で邪悪な過去と戦っているオリヴィア・ローゼンタール(聖槍のクルースニク・f04296)も、これほどの一大事を聞いては黙っていられず、直ちに虐殺が予知された都市へと向かっていた。その身に纏うのは紅を基調とした、情熱的な踊り子の衣装である。
「邪魔をするなら容赦はしません」「"あの御方"の復活の贄となりなさい」
ひときわ人目に付くその格好を、もちろん『アイスエルフシャーマン』達も見逃さない。この都市にいる全地球人の生命とグラビティ・チェインを奪い、封印されたデウスエクスを復活させる。その目的のためには、立ちはだかる猟兵でさえ獲物に過ぎなかった。
「吶喊!」
オリヴィアは四肢に炎の魔力を纏い、敵陣めがけて真っ直ぐに駆ける。燃え盛る炎の加護を受けたその姿は、凍てつく氷を司るアイスエルフとは対照的。まだ冬の寒さが残る時期だというのに、彼女の周りだけが真夏のような熱気だ。
「炎使いなど、私達の氷にかかれば……行きなさい!」
対するアイスエルフシャーマンは雪ダルマ型の【スノウスピリット】を大量召喚し、オリヴィアを包囲せんとする。
総勢で100体をゆうに超える数の暴力と、それらが発する冷気をもって、相手を凍りつかせるつもりか。ただの人間であれば、この寒さには耐えられまい。
「我が身には|獅子女神《セクメト》の加護ぞあり、悪しき氷魔は不滅の太陽が融かし尽くす!」
しかしてオリヴィアは凍てつく冷気を意にも介さず拳打や蹴撃を放ち、当たるを幸いとばかりに氷の精を薙ぎ払う。
四肢の如き怪力に灼熱の炎が加わった打撃は、氷属性の相手には効果覿面であり。触れた傍から雪ダルマが溶ける、いや蒸発していく。
「甘く見るな!」
「なッ……?!」
アイスエルフ達は慌てて増援を追加しようとするが、何匹来ようが同じこと。砂漠の神話に伝わりし獅子の女神は、王の守護神にして荒ぶる戦いの女神として知られる。その加護を受けたオリヴィアは、まさに神話の再来が如く昂り、敵を蹴散らしていった。
「我が吐息を以って、邪悪を焼き尽くす――!」
氷の精を粉砕し、アイスエルフを射程内に捉えれば、オリヴィアは大きく息を吸い。内に溜め込んだ獅子女神の神威を、全力の【灼滅の吐息】として解き放つ。それは眼前の敵勢を一気に焼却殲滅するのに、十分な火力を有していた。
「「ひっ……いやあぁぁぁぁぁーーーっ!!!?!」」
逃げる間もなく炎の吐息に呑み込まれたアイスエルフ達は、灼滅の劫火に包まれ断末魔の悲鳴を上げる。氷の妖精がこれだけの熱量を浴びれば、もはや亡骸さえ残らないのは自明の理――目的を達することのないまま、彼女らは蒸発したのだった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
人々の殺戮など、この私が許しません!
《神力発現》にてヒーローらしく颯爽と登場。
市民の皆様には急ぎ退避するよう指示し、結界術・高速詠唱で構築した防御結界で市民への攻撃を防ぎます。
決戦配備はメディックを要請します。
敵攻撃は第六感・心眼で予測して、冷たき吐息等を武器巨大化した天耀鏡で盾受けしたり、衝撃波・範囲攻撃・カウンターで吹き飛ばしたりで対応。
炎のオーラ防御も纏いますよ。
近距離の敵はUC効果&神罰・炎の属性攻撃を宿した煌月によるなぎ払い・範囲攻撃・鎧無視攻撃で纏めて焼き斬っていきます!
遠距離の敵は神罰・雷の属性攻撃・全力魔法・高速詠唱・範囲攻撃・貫通攻撃で打ち据えます。
侵略者よ、立ち去りなさい!
「人々の殺戮など、この私が許しません!」
【神力発現】にて戦巫女の姿に変身し、デウスエクスの襲撃を受けた都市にヒーローらしく颯爽と登場したのは大町・詩乃(|阿斯訶備媛《アシカビヒメ》・f17458)。女神にして猟兵、そしてヒーローとして世界平和のために日々活動する彼女が、か弱き人々を守るために戦うのは当然の事だった。
「皆様は急いで避難してください!」
「わ、わかりました!」「助かった……!」
まだ残っていた市民に指示を飛ばし、侵攻してくる『アイスエルフシャーマン』の前に立ちはだかる。市民への攻撃を防ぐための防御結界の構築や、メディックの|決戦配備《ポジション》も申請を済ませており、安全確保には万全を期した構えだ。
「邪魔をするな……ッ!!」
封印されたデウスエクスを完全復活させるためには、もっと多くのグラビティ・チェインが必要。度重なる妨害のせいで作戦に支障をきたし始めているアイスエルフ達は、焦りを隠しきれずに攻撃を仕掛けてくる。氷と制圧を司る彼女らの【氷の吐息】は、触れたもの全てを凍てつかせる妖術だ。
「ここは通しません!」
その攻撃を第六感と心眼で予測していた詩乃は、神具の一つ「天耀鏡」を巨大化させ、盾として自分の前にかざす。
【神力発現】の効果により威力を増した神具と神気は、氷の吐息を受け流して衝撃波で吹き飛ばし、凍結や足止めといった悪影響をまるで寄せ付けなかった。
「世の為、人の為、これより祓い清め致します!」
さらに詩乃は炎のオーラを纏って冷気を対策しつつ、薙刀「煌月」を手に敵陣へと切り込んでいく。烈火の神力を宿したオリハルコンの刃は真紅に輝き、氷の妖精であるアイスエルフ達の防具をバターのように溶かして、焼き斬った。
「くっ……あの刀は危険です!」「離脱を……!」
「させません!」
脅威を実感したアイスエルフは、接近戦は不利とみて距離を取ろうとする。その判断自体は間違いでもなかったが、簡単に上手くいくはずもない。神力による飛翔能力も得た詩乃は、高速で戦場を飛び回って相手を追い詰め、炎の薙刀で薙ぎ払っていく。その身のこなしは神楽を舞うが如しだ。
「侵略者よ、立ち去りなさい!」
近距離の敵を一掃すると、詩乃は遠距離に逃げた敵へと追い打ちをかける。抜き放たれた懐剣「雷月」の刀身に籠もった神罰の雷が、詠唱によって増幅され、解き放たれる――それは神の怒りを体現する一矢となり、アイスエルフ達を貫いた。
「「―――ッ!!!!」」
大いなる神が全力をこめた一撃が、偽りの神ごときに耐えられるはずもなく、声に鳴らぬ断末魔が戦場に響き渡る。
作戦目的を果たせぬまま散る無念を抱えながら、氷と制圧のデウスエクスは地球より退去させられるのだった――。
大成功
🔵🔵🔵
日下部・香
強力なデウスエクスの復活計画!? それは絶対に阻止しないとな。
目的のために街の人を殺すなんてますます許せん。
敵は複数いる上にこちらの動きを封じてくるようだな。一気に制圧しないと、その間に街の人が狙われたら大変だ。
【螺旋弓術・黒雨】で範囲内の敵を一度に攻撃しよう。スピード勝負だ、敵より先に攻撃したいな(【先制攻撃】)。最悪でも動きを封じられる前に矢を放ちたい。
敵は氷で攻撃してくるから、火で攻撃を弱められないだろうか?
とはいえ、私はあんまり魔法は使えないから……
決戦配備・キャスター要請! 私の矢に炎の属性を付与してくれ! 延焼とかはしない感じで頼む! 敵以外には当てないようにするが、それでもな。
「強力なデウスエクスの復活計画!? それは絶対に阻止しないとな」
十数年前に先達が死力を尽くして封印したデウスエクス。それが現代に復活しようとしているなら、立ち向かうのは現代のケルベロスの使命だ。日下部・香(断裂の番犬・f40865)にとって、地球を守るために戦うのはこの力を得た時からの義務であった。
「目的のために街の人を殺すなんてますます許せん」
襲来が予知された都市に急行すると、すでに『アイスエルフシャーマン』による侵攻は始まっていた。奴らの目的は復活儀式に必要なグラビティ・チェインの確保。そのために失われる地球人の生命など数えもしない、紛れもない地球の敵であった。
「敵は複数いる上にこちらの動きを封じてくるようだな。一気に制圧しないと、その間に街の人が狙われたら大変だ」
ここはスピード勝負だと、香は敵を捕捉すると即座に弓矢を構える。螺旋の力を内包した「螺旋弓・穿」より放つのは、より速く、より鋭く射ることを追求した【螺旋弓術・黒雨】。目にも止まらぬ早業で撃ち出された幾百もの矢が、複雑な幾何学模様を描いて飛翔する。
「射ち、写し、穿つ。天を衝き、地に降る」
「なッ、これは……!!」「きゃぁっ!?」
黒き矢の雨の先制攻撃に打たれたアイスエルフ達は、痛手を負って進撃を停止する。不滅存在たるデウスエクスにも螺旋の力とユーベルコード、そして鍛え上げた人の技は有効なのだ。これ以上人々の元には近付けさせないと、香は新たな矢を番えて彼女らを睨みつける。
「ここで仕留める」
「ケロベロス……! だったら、まずは貴女から!」
目標を市民の命からケルベロスのグラビティ・チェインに変更したアイスエルフシャーマンは、一斉に【氷の吐息】を吹きかけてくる。氷結と足止めの状態異常によって、目標の動きを封じるのに特化したユーベルコードだ。俊敏さを売りとする螺旋忍者が、機動力を殺されるのは痛い。
(敵は氷で攻撃してくるから、火で攻撃を弱められないだろうか?)
香が考えたのは熱で冷気に対抗する、シンプルだが効果はありそうな発想だった。とはいえ彼女は刀剣や弓の扱いに長ける一方で、魔術の類はあまり得意ではない。しかし、ここもまた人類が築いた防衛拠点・決戦都市の一つ。特務機関DIVIDEからのサポートは十全に受けられる。
「決戦配備・キャスター要請! 私の矢に炎の属性を付与してくれ! 延焼とかはしない感じで頼む!」
『承認しました』
最前線のケルベロスの要請を受けて、後方待機していた魔術部隊が術式支援を実行。螺旋弓の矢に赤々と炎が灯る。
これならばアイスエルフの冷気にも対抗できる――香は笑みを浮かべて弦を引き絞ると、再び【螺旋弓術・黒雨】を敵に浴びせた。
「っ、今度は火矢を?!」「かっ、回避……!!」
氷の吐息をかき消して飛翔する炎の矢から、アイスエルフは慌てて逃れようとするが。変幻自在なる矢の軌道はたちまち彼女らを包囲し焼き焦がす。普通なら市街地でこのような攻撃を行えば火災になりかねないが、魔術的な炎はそれ以上燃え広がりはしなかった。
「敵以外には当てないようにするが、それでもな」
リクエスト通りの術式支援に満足しつつ、香はなおも矢継ぎ早に追撃を仕掛ける。視界から動いている敵の姿が見えなくなるまで、彼女が攻撃の手を緩めることはない。使命に燃える若きケルベロスは、それゆえに地球を脅かすデウスエクスには一切の情けをかけなかった――。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
事前に決戦配備「ディフェンダー」を申請しといて、これからやろうとしてることに民間人が巻き込まれないようにガードを固めてもらおう。
アイスクリームの天ぷらって美味しいよねー、なんてことを言いながらアイスエルフシャーマンや氷の精達を次々とカタリナの車輪で拘束。そして熱々の油に突っ込んで揚げ焼きにしていきましょう。
当然デウスエクス達は抵抗してくるでしょう。でもその攻撃方法は「氷」。
氷は溶ければ水になる。高温の油に触れた水は一気に沸騰して水蒸気となり、油を引き連れる格好で火を伴って爆発する! さぁ、頭から被ってさらに悶え苦しむがいい!
「『ディフェンダー』をお願いできるかな。試してみたい作戦があるんだ」
これから自分がやろうとしていることに民間人が巻き込まれないよう、カーバンクル・スカルン(クリスタリアンの懲罰騎士・f12355)は|決戦配備《ポジション》を事前に申請していた。敵の攻撃に備えるためなら分かるが、ここまでガードを固めさせる必要とは――疑問に感じたDIVIDE職員もいたかもしれないが、要請自体は直ちに受理される。
「地球人達も守りを固めてきましたか」「構いません。突破するまで」
都市の一角を封鎖するように展開される隔壁とバリケード、その手前に立つカーバンクルの元に、やって来たのは【スノウスピリット】を引き連れた『アイスエルフシャーマン』の部隊だ。氷と制圧を司る彼女達は、封印デウスエクスの復活に必要なグラビティ・チェインを求め、さらなる侵攻を続けようとする。
「アイスクリームの天ぷらって美味しいよねー」
なんてことを言いながら、敵影を確認したカーバンクルが出したのは巨大な車輪。それは彼女がパチンと指を鳴らすと自律走行を始め、氷の精とアイスエルフの集団に突っ込んでいく。間近で見ればその車輪には多数の針があちこちに付いており、ぶつかったらただでは済まないと分かる。
「?! 回避を……ぎゃっ!!」「こ、来ないで、ひいっ!?」
敵は慌てて散開するが、逃げ遅れた数名のアイスエルフと氷の精が「カタリナの車輪」の餌食となる。針で串刺しにされた哀れな犠牲者は、そのまま回転する車輪に拘束されゴロゴロと引きずり回される。デウスエクスは不滅とは言え痛覚はある以上、耐え難い拷問には違いあるまい。
「こんがり狐色になるまで揚げましょう」
しかしカーバンクルの拷問はこれで終わりではなく、むしろここからが本番だった。アイスエルフ達を拘束した車輪が転がっていく先は、180℃まで熱せられたアツアツの油の中。なんと生きたまま敵を【油煎】して、揚げ焼きにするつもりなのだ。
「なッ、なにを考えて……やめてっ、やめなさ、ひぎゃぁぁぁ!!!?」
車輪ごと熱した油に突っ込まされたアイスエルフの、恐怖と苦痛は筆舌に尽くしがたい。いっそ即死できたほうが楽だったろうに、なまじ人間よりも頑丈なせいで苦しみが長引く。灼熱と激痛の中で完全なパニックに陥った彼女らは、必死にこの地獄から脱しようと抵抗するが――。
「でもその攻撃方法は『氷』」
氷は溶ければ水になる。高温の油に触れた水は一気に沸騰して水蒸気となり、油を引き連れる格好で火を伴って爆発する。油を使う料理では絶対にやってはいけない初歩の初歩だが、こんがり揚げられかけているアイスエルフ達から、そんな理性的な判断力は吹き飛んでいた。
「さぁ、頭から被ってさらに悶え苦しむがいい!」
「「ひっ……あ、熱ッ、熱いいぃぃぃぃっ!?!!?!」」
その結果、煮え滾る油の雨は周辺一帯にまで飛び散り、元々の犠牲者はもちろん、車輪刑を逃れた者にまで二次被害をもたらした。カーバンクルがディフェンダーを申請したのは、この被害が拡大するのを防ぐためだったのだと今なら分かるだろう――油鍋の底と化した戦場で、調理されるアイスエルフたちの悲鳴は、まだ止まなかった。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・紗綾
アイスエルフですか。
ここじゃない別の世界では定命化して人類の仲間になったと聞きますが、こっちじゃ関係無いようですね。
それなら容赦はしません、全員撃ち抜いてやります。
決戦配備としてメディックを要請、都市の人達の避難誘導をお願いします。
そこに襲い掛かろうとする敵は「雀蜂」で【スナイパー】してやります。
敵がこっちに向かってきたら「月蝕・参式」と「争覇」を構え、UCを発動。
【瞬間思考力】も併せて周囲の状況を迅速に把握。
後は二丁の銃で、敵の氷結輪も敵自身も片っ端から撃ち落とし撃ち抜いていきます。
何を企もうと私達の在る限り成就なんてさせません。
とっとと尻尾巻いて逃げ帰りやがれです。
「アイスエルフですか。ここじゃない別の世界では定命化して人類の仲間になったと聞きますが、こっちじゃ関係無いようですね」
今、叢雲・紗綾(嘲り詰る兇弾・f40836)の眼の前にいるのは、封印デウスエクスの復活のため、無関係な一般人の生命を奪わんとする、邪悪なデウスエクスだ。そいつらが異世界では地球に友好的な種族だったとしても、この世界で歩む歴史が同じとは限らない。
「それなら容赦はしません、全員撃ち抜いてやります」
「それはこちらの台詞です。一人も生かしませんよ」
背中に担いだ狙撃銃を構えると、相手も彼女に殺意を返す。『アイスエルフシャーマン』から見れば、ケルベロスが持つグラビティ・チェインも儀式の贄として有用なものだ。同胞の完全復活のため、一人でも多くの犠牲を彼女らは欲していた。
「都市の人達の避難誘導をお願いします」
『了解。こちらはお任せください』
|決戦配備《ポジション》としてメディックを要請すれば、市民の安全確保は特務機関DIVIDEが担ってくれる。誘導に従い避難していく人々の、背後を襲わせないのが紗綾の仕事だ。この弐拾参式光線狙撃銃「雀蜂」の射程から、逃れられると思うな。
「やらせないですよ」
「ぐっ!?」「なかなか、やりますね……」
身の丈ほどもある長大な銃を体の一部のように取り回し、大出力のレーザーを敵に浴びせる紗綾。このスナイパーに狙われたままではグラビティ・チェインの回収もままならぬと、アイスエルフも瞬時に理解させられただろう。必然、彼女達の目標は障害の排除に集中することとなる。
「まずは貴女から……」「凍りつきなさい!」
巨大な結晶の形をした氷結輪に、氷の魔法を宿して放つ【クリスタライズシュート】。触れたものを凍らせる必殺の投擲がスナイパーの元に迫る。それを見た紗綾は狙撃銃を下ろすと、ホルスターから二丁の銃を――弐拾壱式電光小銃「月蝕・参式」及び、拾伍式拳銃「争覇」改を構えた。
「片っ端から撃ち落としてやります」
瞬間思考力も併せて集中力を高めると、まるで時間の流れが遅くなったかのように、周囲の状況を把握できる。より正確に言えば、彼女の思考のほうが加速しているのだ。幾ら複雑に変化する氷結輪の軌道も、この【バレットタイム】の最中であればスローモーションに見えた。
「何を企もうと私達の在る限り成就なんてさせません」
「――……ッ?!」
修繕と改良を繰り返した馴染みのリボルバー銃と、高威力の単射モードに設定したプラズマライフルを巧みに操り、紗綾は飛来する氷結輪とアイスエルフを次々に撃ち抜いていく。幼い頃より戦いに身を投じてきた歴戦のケルベロスは、悪しき偽神相手には決して引き金を緩めない。
「とっとと尻尾巻いて逃げ帰りやがれです」
「がは、ッ!?」「よくも……ッ!!」
ひとたび彼女の銃口に狙われれば避けること能わず、心臓を射抜かれたアイスエルフは無念の言葉を遺し力尽きる。
この戦線で被害にあった市民の死者はゼロ――奴らはまったく目的を達成できないまま地球より退去させられる羽目になったのだった。
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【WIZ判定】
|こっち《ディバイド》でも|あちら《ブレイド》と同じようにデウスエクスの封印が行われていたんだね
…そしてそれが今、破られようとしている
完全復活は阻止しないとね
最初から真剣口調だよ
アイスエルフの能力や彼女等が使う氷結輪についての知識を話したりするよ
貴女達の基本的な戦い方や武器については|ずっと以前から《・・・・・・・》知っているからね
氷の|吐息《ブレス》には、炎のブレスで対応させてもらうよ
UCは『ワタシの最強ドラゴンちゃん』
「デウスエクス・ドラゴニア」ことドラゴンちゃんを召喚するね
ドラゴンブレス(炎)主体で攻めるよ
こちらの攻撃は【集団戦術/カウンター/切断/弾幕/範囲攻撃/怪力/2回攻撃/鎧無視攻撃/属性攻撃/ドラゴン使い】で行うよ
敵の攻撃は【野生の勘/第六感/気配感知/幸運/オーラ防御/霊的防護/鉄壁/硬化/激痛耐性/回復力/氷結耐性/寒冷適応】で対応するね
ドラゴンちゃんは霊体だから物理攻撃は効かないけど、ワタシには効くから注意しないとね
「|こっち《ディバイド》でも|あちら《ブレイド》と同じようにデウスエクスの封印が行われていたんだね」
定命の者とは隔絶した力と不滅の生命を持つ神の如きもの、デウスエクス。決して殺せない存在なら封印してしまおう、という考えはどちらの世界でも一緒だったのだろうと、クローネ・マックローネ(快楽至上主義な死霊術士・f05148)は考える。
「……そしてそれが今、破られようとしている。完全復活は阻止しないとね」
当時の地球人が死力を尽くしてまで封じたデウスエクスだ、復活すれば現代でも深刻な脅威になるのは間違いない。
普段は笑顔で陽気な彼女も今は真剣な様子で、襲撃を予知された都市に向かう。復活儀式を企てるデウスエクスによる殺戮を、まずは防がなければならない。
「貴女達の基本的な戦い方や武器については|ずっと以前から《・・・・・・・》知っているからね。氷の魔法が得意だけど、それに特化しすぎているのが弱点かな」
「なにを言っている……!」「凍てつきなさい!」
まるで旧知の存在のように、アイスエルフの能力や彼女達が扱う氷結輪についての知識を語るクローネ。初対面のはずの『アイスエルフシャーマン』達は困惑しながらも、口から一斉に【氷の吐息】を吹きかける。浴びたものに凍結と足止めの状態異常をもたらす、彼女らの代表的なユーベルコードのひとつだ。
「さあ来て、ワタシの最強ドラゴンちゃん!」
対してクローネが発動したのは【ワタシの最強ドラゴンちゃん】。コードネーム「デウスエクス・ドラゴニア」――ドラゴンと通称されるデウスエクスを召喚するユーベルコードだ。荒ぶる炎が渦を巻き、巨大な竜が戦場に降臨する。
「氷の|吐息《ブレス》には、炎のブレスで対応させてもらうよ」
『オオオォォォォ―――!!!!』
クローネの命令に応じてドラゴンは炎のブレスを吐き、氷の吐息を相殺する。数あるデウスエクス種族の中でも究極の戦闘種族と称された実力は伊達ではなく、轟く咆哮と熱気にアイスエルフ達もたじろいだ。力の差もさる事ながら、相性の悪さを一目で察したろう。
「くっ……あの炎はまずいですね……!」
熱量と冷気の差で負けている上に、霊体のドラゴンには凍結攻撃も効きづらい。ブレスを避けて接近戦を挑んでも、そこには竜の爪と牙が待ち構えていた。巨体に相応しい怪力から繰り出される攻撃は、アイスエルフの柔肌など簡単に引き裂ける切れ味だ。
「こうなれば、召喚者を倒すしか!」
窮地に陥ったアイスエルフ達の標的は、必然的にクローネに向かうこととなる。ドラゴン使いである彼女を倒せば、召喚されたドラゴンも消えるだろうと、一縷の勝機に賭けた者たちによる決死の総攻撃が、猛吹雪の如く襲い掛かる。
「ドラゴンちゃんは霊体だから物理攻撃は効かないけど、ワタシには効くから注意しないとね」
オーラで霊的防護力を高め、ナノマシンアーマーで身体を硬化させ、氷結耐性や寒冷適応力を強化するなど、持てる技能の数々を駆使して対抗するクローネ。飛来する氷結輪を第六感と野生の勘で避け、少々のダメージならすぐに回復するなど、彼女も彼女で鉄壁と呼べる防御力を有していた。
「強い……!!」
ただ強いだけではなく、相手の所作から余裕めいたものをアイスエルフ達は感じ取る。最初に言っていた通り、こちらの手口を全て把握しているような態度だ。15歳より以前の記憶を失っているクローネだが、現在の彼女はその頃の記憶を思い出しているのか、歴戦の戦士の如く落ち着き払っていた。
「反撃だよ、ドラゴンちゃん」
相手の攻勢を凌ぎきったところで、クローネは再度ドラゴンに号令。解き放たれた灼熱の吐息が戦場を舐めるように蹂躙していく。凍てつく吐息も氷結輪も一瞬にして蒸発させられ、決して溶けないとされるアイスエルフ達の氷すら、原型を失っていく。
「退避っ、退避を……」「きゃぁぁぁぁっ!!?」
炎に呑まれたアイスエルフシャーマンの悲鳴が聞こえ――ブレスが収まった後には、彼女らの姿は跡形もなかった。
残存部隊の存在は確認できず、他の地区からも勝利の報告が続々と届けられている。戦闘終了を確認したクローネは「お疲れさま」とドラゴンを退去させると、ようやく口元に笑顔を見せたのだった。
大成功
🔵🔵🔵
第2章 冒険
『防御魔術を破れ』
|
POW : 魔術を維持する魔法陣や魔導設備を破壊する
SPD : 僅かな隙を見つけ出し、突破口を作る
WIZ : 敵の魔術に魔力で干渉を仕掛ける
イラスト:純志
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
グラビティ・チェインを求めて都市に襲来した『アイスエルフシャーマン』部隊は、猟兵の手によって撃退された。
これでひとまず市民が殺戮される危機は去ったが、まだ事件は終わっていない。封印デウスエクスの復活儀式はすでに進められており、不完全な状態でも復活が予測されていたからだ。
たとえ不完全な復活でも、時間が経てばグラビティ・チェインを集め、完全に力を取り戻していく可能性はある。
逆に、力を取り戻していない今ならば、本来なら難敵となる強大なデウスエクスを討伐するチャンスでもある。
かくして猟兵達は、十数年前にデウスエクスが封印された地へと赴くこととなる。
そこは当時の激戦で廃墟となり、今は誰一人として住民もいない、人里離れた廃村だった。
デウスエクスが封印されているのは、村の中央付近にある地下室だ。
ただ、そこに辿り着くためには、村の周辺に張られた結界を突破しなければならない。
これもまた、当時の人類がデウスエクスの脅威を封じるために、苦心して張り巡らせたものである。
かなり精密で高度な術式だが、年月の経過による綻びもあり、決して壊せないものではない。
言い換えれば、封印されていたデウスエクスが今復活すれば、内側から結界を破るのも可能だろうということだ。
ここで悠長にしていれば、強敵を撃破する好機を逃してしまう。
村に張られた結界を突破すべく、猟兵達は直ちに行動を開始した――。
日下部・香
せっかく張られてる結界を壊すのは悪い気もするけど、この状況じゃ仕方ないか。その代わりってわけでもないが、復活するデウスエクスはちゃんと倒さないとな。
ここは【絶空斬】で結界をスパッと……斬れはしても、突破するのは難しいかな。瞬間的に結界のほんの一部を斬るだけだし。
大元の結界維持用の魔導装置を壊そうか。結界の張られた年代とかから、装置の位置に目星をつけよう。
魔術を使うのはあんまり得意じゃないけど、結界について何にも知らないわけじゃない。ケルベロスやってると、こういう結界を見ることもあるしな(【世界知識】)
あとは、【絶空斬】で結界を一時的に壊して、修復具合とかから魔導装置の位置を絞り込もうか。
「せっかく張られてる結界を壊すのは悪い気もするけど、この状況じゃ仕方ないか」
元々はデウスエクスの封印をより強固にするために、地球人の手で張られた結界、しかし大元の封印が解けかけている今となっては、それも役目を果たせているとは言い難かった。先人達への申し訳なさを感じつつも、香は結界の攻略を図る。
「その代わりってわけでもないが、復活するデウスエクスはちゃんと倒さないとな」
不滅のデウスエクスを死力を尽くして封じ込めた、十数年前の人々の奮闘を無駄にはしない。廃村の前までやって来た彼女は、静かに「斬霊刀・常切」の鯉口を切る。結界の向こう側からはすでに、禍々しくも強大な魔力を感じることができた。
「ここは【絶空斬】で結界をスパッと……斬れはしても、突破するのは難しいかな」
香のユーベルコードでは瞬間的に結界のほんの一部を斬るだけで、通り抜けるほどの隙間をこじ開けるのは難しい。
そこで彼女は大元の結界維持用の魔導装置を壊し、結界に穴を開ける方針を取った。勿論その装置も巧妙に隠されてはいるが、見つけられない訳ではない。
「当時の村の状況からして、装置を設置するなら……」
結界の張られた年代などから推測を重ね、装置の位置に目星をつけて付近を探索。十数年前とは地形も多少変わっているだろうが、これだけ規模のある結界を張ろうとすれば、霊脈の観点などからも装置を置ける場所は限られてくる。
「魔術を使うのはあんまり得意じゃないけど、結界について何にも知らないわけじゃない。ケルベロスやってると、こういう結界を見ることもあるしな」
凡その見当が付いたところで、香はおもむろに斬霊刀で【絶空斬】を放ち、結界に一時的な切れ目を作る。破損が修復される具合を実際に見ることで、魔導装置の位置を絞り込むためだ。これも実戦を通じて得た知識のひとつだろう。
「……あった。これだ」
ほどなくして彼女は、林の中に隠されていた古びた魔導装置を発見する。それは複雑な呪文や魔法陣を刻んだ石碑のような形状で、大地の魔力を自動的に結界に送り込む働きをしているようだ。最近手入れされた様子はないので、ほぼメンテナンスなしで十数年稼働し続けたことになる。
「今までご苦労様」
役目を終えた装置に一礼したのち、香は斬霊刀を一閃。たちまち魔導装置は真っ二つとなり、結界に綻びが生じる。
別の装置によってそれが修復される前に、彼女は急いで結界の内側へと飛び込んだ。内部は魔術に疎い者でも分かるほど濃密な魔力が溜まっており――強敵との対峙が、この先に控えていることを予感させた。
大成功
🔵🔵🔵
ディッセンバー・クレイ
私はあくまで執事ですので、術の解除はこちらの専門外の仕事ですね
その為に作業が力業になりますが…そこはご容赦いただきたいものです
【POW】連携・アドリブ歓迎
結界の外周を散策しながらあちこち観察するとしましょうか
もちろんUC【執事の閻魔帳】を発動して、結界に関する情報が記載されないかチェックしつつですが
おそらくは石像や社などの建造物、巨石や大木といったものを結界の基点としているのでしょう
基点を発見しましたら【ダモクレス・アーム】を召喚して破壊します
さてさて、ここまでして封印されている相手とは、どれほどのものでしょうね?
掃除のしがいがありそうでワクワクしてきますよ(と言いつつ首を振り、溜息をつく)
「私はあくまで執事ですので、術の解除はこちらの専門外の仕事ですね」
仕える相手の要望に応えるため、執事として様々な教育を受けてきたクレイも、何もかもできる完璧超人ではない。
デウスエクス封印用に構築された高度な魔術結界を解除するとなれば、それこそ専門家の知識と技術が必要となり、彼のカバーできる範疇を超えていた。
「その為に作業が力業になりますが…そこはご容赦いただきたいものです」
ただしそれは彼が結界に無力だという事ではなく、どんな難しい案件にも「ノー」とは言わないのが執事の矜持だ。
どんな時でも穏やかな物腰と微笑は崩さずに、ディッセンバー家の戦闘執事は結界の外周を散策し、観察を始めた。
「夢の鍵をアーカイブに第一種制限接続……検索開始」
クレイが持っている【執事の閻魔帳】には、視認した対象の情報が自動的に記載され、知りたい情報をさらに詳しく検索する機能が付いている。これを使用して結界に関する情報が記載されないかチェックしつつ、攻略の糸口を探る。
「おそらくは石像や社などの建造物、巨石や大木といったものを結界の基点としているのでしょう」
結界を建物に例えれば、建てるための基礎が必要になる。それを壊せばどんな頑丈な結界にも綻びが生じるだろう。
時空の果ての情報書庫に接続された執事の閻魔帳は、その膨大なデータベースの中から必要な手掛かりを探り当て、情報を空間に映し出した。
「なるほど。ここですね」
結界の基点を発見すると、クレイは笑みを深めて黒手帳をぱたんと閉じる。それは、もはや参拝する者もいなくなって久しいと見られる、古びた社だった。これだけ規模の大きい結界なら基点もひとつきりではないだろうが、ひとまずはこのひとつで十分だ。
「では失礼して」
虚空より召喚された機械の腕「ダモクレス・アーム」が、建設重機のように社を破壊する。宣言通りの力技の成果は直ちに現れ、これまで不朽であった結界に人ひとりが十分通れそうな穴が開く。その向こうにある廃村からは、淀んだ空気と濃密な魔力が漂ってきていた。
「さてさて、ここまでして封印されている相手とは、どれほどのものでしょうね?」
結界の内側に足を踏み入れながら、そんなことを呟くクレイ。人類側、デウスエクス側双方の行動を鑑みても、余程凶悪なデウスエクスが封じられているとみて間違いあるまい。それこそ、外に出せば地球が危機に陥るほどの存在が。
「掃除のしがいがありそうでワクワクしてきますよ」
と言いつつ首を振り、溜息をつく。極めて面倒なことではあるが、今を逃せば討伐の好機はない。完全復活を遂げられる前に「掃除」を終えるため、彼は少しだけ急ぎ足になる――敵の封じられた場所は、すでに手帳に記されていた。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
僕が対処するとしたら……結界の綻びを見出して斬るのが一番かな。
結界って言っても、閉じ込めるのが目的なら、要はただの見えない壁だ。
……真っ向から断ち割ってもいいんだけど、ま、力は本命に取っておこう。
実際にやることは単純だ。
まずは結界近辺で意識を集中、結界の場所を見つける。
そうしたら後は魔力の流れを見極めながら、淀みのある場所を探して、そこを空間ごと【切断】する。
この剣――このUCは、『空間そのものを切断する技』なんでね。
「空間を断つくらい、お手のものってね……!」
結界を斬り割ったら、そのまま中へ進むよ。
さあ、ゾディアックとやらの配下がどのくらいの相手なのか。
ご尊顔を拝みにいくとしようか。
「僕が対処するとしたら……結界の綻びを見出して斬るのが一番かな」
剣術を研鑽し、剣聖と謳われるまでになった輝凛が、封印の結界を攻略する方法はいたってシンプルなことだった。
結界と言っても、閉じ込めるのが目的なら、要はただの見えない壁だ。物理的手段で破壊するのは不可能ではない。
「……真っ向から断ち割ってもいいんだけど、ま、力は本命に取っておこう」
愛剣の柄をとんとんと叩きつつ、口元に浮かべるのは余裕の笑み。破るだけならいつでもできると言わんばかりだ。
その態度は決して自信過剰ではないだろう。故郷でも彼はケルベロスとして、数々の神殺しを成し遂げたのだから。
(実際にやることは単純だ)
まずは近辺で意識を集中し、結界の場所を見つける。廃村ひとつをすっぽりと覆うそれを捕捉するのは容易だった。
そうしたら次は魔力の流れを見極めながら、淀みのある場所を探し出す。どんなに高度な魔術の産物でも完璧な術式など存在せず、淀みは歪みとなって綻びを生む。十数年分の蓄積となれば尚更だ。
「この剣――このユーベルコードは、『空間そのものを切断する技』なんでね」
【獅輝斬滅閃】の構えを取り、斬るべき空間の一点を見据える。肉眼では何もないように視えるが、そびえ立つ結界の壁がそこにはある。よほど腕利きの術者が複数人で織り上げたのだろう、本職でなくとも分かる強固な代物だが――斬れる、との確信は揺らがない。
「空間を断つくらい、お手のものってね……!」
輝き、閃き、塵と為す――獅子黎明流の大技、空間そのものを断ち切る超次元の斬撃が、結界の綻びを切り裂いた。
まるで布地にハサミを入れるように、輝凛の剣が通った軌跡には空間の裂創が生じ、周囲の塵や空気がひゅうと音を立てて吸い込まれていく。
「こんなところかな」
旋風が収まると、そこには人が通るには十分な大きさの裂け目が開いていた。見事に結界を斬り割った剣聖は、そのまま飄々とした様子で中へ進む。そこはまるで時間の流れが止まっているかのように、十数年前の廃村の様子が残されていた。
「さあ、ゾディアックとやらの配下がどのくらいの相手なのか」
結界の内側に一歩入った瞬間、空気が変わるのが分かる。まるで災害にでもあったような破壊痕は、かつての戦いの爪痕か。わざわざデウスエクスが大掛かりな作戦を立ててまで封印から解き放とうとした存在だ、並大抵のものではあるまい。
「ご尊顔を拝みにいくとしようか」
強敵との邂逅にある種の昂揚を感じながら、輝凛は封印の中心地へと向かう。手にはしかと愛剣を握り締めたまま。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
さて、時間の操作で加速しますか
音響魔法陣を展開して結界を攻略
結界そのものの時間を加速させて風化
または脆くなった所をわたくしの時間を加速させてすり抜けていく
そして…ケルベロスに寿命は存在しません
エロヒム陛下との対談で『寿命で死したケルベロスはいない』という事に気が付き、そしていつかマキナクロスに乗った同胞は百年後の地球に戻れると予知しました
ならば、寿命を対価としたUCをケルベロスは事実上無対価で使用できるのです
そう言いながら時間操作の音響魔法陣を使い、結界を突破していく
「さて、時間の操作で加速しますか」
デウスエクスを封印した地に張られた結界を攻略するために、アンジェリカは音響魔法陣を展開して【逆行因果・旋律はやがて約束された破滅を超克する】を発動する。これは周辺の時間を制御下に置き、自在に加速・減速させるユーベルコードである。
「想像する運命は超克を示し、黙示録の如き破滅を破却する。私は絶空獣に非ず、全ての神と人を救う一人の人にして一振りの剣である」
どんな形であれ人の作りしものに永遠はない。時の流れとともに全ては朽ちゆくもの。魔術結界とて例外ではなく、急激に過ぎ去った時間の重みで朽ちていく。奇妙な音色が響き渡る中、術者であるアンジェリカだけが不変であった。
「ケルベロスに寿命は存在しません。エロヒム陛下との対談で『寿命で死したケルベロスはいない』という事に気が付き、そしていつかマキナクロスに乗った同胞は百年後の地球に戻れると予知しました」
それはアンジェリカの故郷、ケルベロスブレイド世界で起こった事実に、彼女の個人的な推論を加えたものである。
本来、これだけ大規模に時間を制御するユーベルコードの使用は、術者にも寿命を削るリスクがあるはずだった。しかし彼女の予想が正しいのであれば、ケルベロスに寿命はないか、もしくは普通の地球人より遥かに長寿である。
「ならば、寿命を対価としたユーベルコードをケルベロスは事実上無対価で使用できるのです」
そう言ってアンジェリカは遠慮なく時間操作の音響魔法陣を使い、結界を風化させていく。実際に彼女がそれで何かしらの不調を感じている様子はなく、あったとしても間違いなく結界が壊れるほうが早いだろう。十数年で綻び始めるような代物なら、もう数十年も過ぎれば限界のはずだ。
「ここは百年程度で十分でしょう」
結界が脆くなってきたところで、アンジェリカは音響魔法陣の効果を自身にも作用させ、自らの時間を加速させる。
一気に数十倍までスピードアップした身体能力をもって、綻びをすり抜け結界の内部へ。現地到着からここまでに要したのは、正常な時間軸にして僅か1分ほどだ。
「さ、行きましょう」
そのまま彼女は余裕の足取りで廃村内を進み、デウスエクスが封じられているという地下室に向かうのであった。
大成功
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カーバンクル・スカルン
劣化した術式ということは、多分あちこちに綻びが出来てるんだと思うんだ。魔術師ではない私は視認できないが。
ならその綻びの近くにある術式の媒体が手っ取り早く壊せる鍵になると思うのさ。
ということでキャスター隊に術式の綻びを探してもらう。で、見つかったら【五馬分屍】で媒体を引きずって術式を崩壊させていきましょう。A地点が壊れたらそれに引っ張られる形でB、Cと綻びが出るだろうし。
村に突入出来るようになったらDIVIDEの皆様はお役御免でお帰りいただこう。化け物同士の激突に、一般人がいるのは危険なんでね? こっから先は任せときなー。
「劣化した術式ということは、多分あちこちに綻びが出来てるんだと思うんだ。魔術師ではない私は視認できないが」
どんなものであれ時間の流れは平等に訪れる。それは結界であっても変わりはないと、カーバンクルは考えていた。
デウスエクスの封印を補強するために築かれた、堅固な結界――これを突破するなら劣化による綻びを突くのが最も効率的である。
「ならその綻びの近くにある術式の媒体が手っ取り早く壊せる鍵になると思うのさ」
そう言って彼女はキャスターの|決戦配備《ポジション》を要請。術式サポートに長けた魔術師部隊を引き連れて、件の封印された廃村へと向かう。餅は餅屋というし、この結界は昔の地球人が張ったもの。門外漢が首を捻るより本職に任せるのは合理的な解決法だった。
「ということで術式の綻びを探してもらえるかな」
『お任せあれ!』
キャスター隊はカーバンクルの要請に従って結界の解析を始め、綻びの発見に全力を費やす。彼らもその道のプロであり、先人より受け継いだ叡智に基づく調査はそれほど長くはかからず、程なくして期待通りの報告が上がってきた。
『ここと、ここと……この辺りに小さいですが、魔術的な綻びが集中しています。媒体らしき物も発見しました』
「ありがとう。じゃあ後は任せてもらおうか」
調査が完了すれば、そこから先はカーバンクルの仕事だ。彼女はおもむろに「カタリナの車輪」から鎖を伸ばすと、術式の媒体に絡みつけ、引きずり倒す。そして先刻のアイスエルフシャーマンに対してやったように、ずりずりと地べたを引き回していく――。
「次は~、八つ裂き~、八つ裂き~です」
容赦のない【五馬分屍】により、ズタズタに破壊される術式の媒体。結界とは複数の要素が複合的に絡み合ったもので、例えばA地点が壊れたらそれに引っ張られる形でB、Cと連鎖的に綻びが生じる。一つ二つなら補完も効くだろうが、経年劣化もあるとなれば話が違ってくる。
「よし、上手くいったね」
カーバンクルの予想通り、大きくなった綻びは結界の裂け目となり、人間が通り抜けられるほどになる。その向こう側からは結界によって閉じ込められていた淀んだ空気と、濃密な魔力が溢れてくる。内部に封印された存在の強大さを物語っているようだ。
「化け物同士の激突に、一般人がいるのは危険なんでね? こっから先は任せときなー」
『……分かりました。どうかご武運を』
村に突入出来るようになったら、DIVIDEの支援部隊にはお役御免でお帰り頂く。戦闘面ではケルベロスや猟兵ほどの実力はないことを彼らも痛感しているだろう。悔しさを滲ませながらも、足手纏いにならぬよう素直に引き下がった。
かくも自信満々なことを言い放ったからには、カーバンクルにもきっちりと依頼を果たす責任がある。期待の視線を背中に受けながら、彼女はいざ結界の内側へと足を踏み入れた――。
大成功
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大町・詩乃
過去の人々が決死の想いで張り巡らせた結界。
それを破壊するのは忍びないですね。
可能な限り壊さずに結界を突破いたしましょう。
まずは結界術・心眼にて村に張られた結界の構造を見切ります。
一番壊さずに突破できそうなルートの目星をつけられたら、《慈眼乃光》を使用。
「結界さん、私はこの世界や人々を護り、デウスエクスを討伐したいのです。ですから、どうか通して下さいね♪」
と結界に語り掛け、結界そのものや村の施設を好意的にして進みます。
それで生じた綻びは結界術を使って修復しておきますよ。
次はいよいよライブラリアンとの対決ですね。
過去にやらかした罪咎の精算にきっちりお仕置きしてあげますよ!
「過去の人々が決死の想いで張り巡らせた結界。それを破壊するのは忍びないですね」
今、詩乃の目の前にあるのは、ケルベロスディバイドの地球人がこの星を守るために作った叡智の結晶とも言えた。
十数年に渡りデウスエクスの封印に貢献してきた事実からも、それは明らか。突破するしかないとしても、踏み躙るようなことはしたくなかった。
「可能な限り壊さずに結界を突破いたしましょう」
彼女も結界術に関しては心得がある。その技能と心眼を活かして、まずは村に張られた結界の構造を見切るところから始める。時間経過による綻びや、構造的に脆い箇所などを見つけ出すことができれば、力ずくで破壊するより容易に突破できるだろう。
「この辺りから抜けるのが良さそうですね」
一番結界を壊さずに突破できそうなルートの目星を付けられたら、詩乃はおもむろに【慈眼乃光】を発動。暖かく慈しむ視線で結界をそっと見つめ、命じるのではなく優しく「お願い」をする。大いなる女神の慈愛はあまねく万物に及び、心を持たぬ無機物や現象にさえ作用するのだ。
「結界さん、私はこの世界や人々を護り、デウスエクスを討伐したいのです。ですから、どうか通して下さいね♪」
この結界が張られた目的と、自分たち猟兵の目的は一致しているはず――真摯な気持ちで語りかければ、結界は詩乃に友好の意を示すように、ひとりでに道を開いた。ちょうど人ひとりが通れそうな裂け目が、彼女の目の前に生じる。
「ありがとうございます♪」
詩乃は感謝の意を告げて村の内部に侵入すると、それで生じた綻びを自らの結界術で修復してから先に進む。村内はかつてデウスエクスを封印した時の戦いの爪痕がそのまま残っており、破壊された家屋や瓦礫などで通行の便が良いとはお世辞にも言い難い状況だ。
「道を開けてもらえますか? そうです、助かります♪」
が、それらも詩乃の道行きを阻む障害にはなり得ない。視線を向けて呼びかけるだけで、結界と同じように村の施設も全て好意的となる。あるいは、この土地自体が待ち望んでいたのかもしれない――地球を蝕む宇宙からの侵略者を、倒してくれる者の到来を。
「次はいよいよライブラリアンとの対決ですね。過去にやらかした罪咎の精算にきっちりお仕置きしてあげますよ!」
ヒーローとして猟兵として、自分の肩に世界の平和がかかっていると強く自覚した上で、意気込みを口にする詩乃。
迷いのない足取りで向かう先は、件のデウスエクスが封印された地下室。すでに復活を遂げつつあるのか、内部からは禍々しい魔力が溢れ出しており――それでも、かの者に真の神罰を下さんとする、女神の意志は揺るぎなかった。
大成功
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佐伯・晶
結界の突破かぁ
魔術の類はあまり得意じゃないから
どうしようか
UDCアースとは技術体系も違いそうだし
あまりスマートじゃないけど力押しが確実かな
UCで使い魔に手伝って貰おう
人海戦術で魔導装置を探して壊そうか
まかされたのですよー
もちろん自分も探すよ
能力的に保冷はできても解凍には向かないからね
表面からわかりにくい程度には融けたけど
まだ内側は融け切ってないし
終わったらゆっくり風呂に浸かりたいな
魔導装置が見つかったら使い魔達に壊して貰い
デウスエクスの元へ向かうよ
使い魔達には念のため周囲で待機して貰おう
他の猟兵達もいるし
万が一も起きないとは思うけど
備えがあって困る事はないからね
だれもとおさないようにするのです
「結界の突破かぁ。魔術の類はあまり得意じゃないから、どうしようか」
故あって邪神と融合し、その力を行使することで様々な超常現象を操る晶だが、それらはあくまで神の権能――異能と呼ぶべきもので、体系化された魔術とは趣が異なる。実際、現場に赴いて結界を確認してみても、彼女にその原理を解くことはできなかった。
「UDCアースとは技術体系も違いそうだし」
デウスエクスの襲来が結果的に技術発展を促したケルベロスディバイドでは、体系的にも他世界とは差異が大きい。
加えてこれは十数年前の代物とはいえ、当時の地球の魔術師が総力を結集して作り上げたものだ。容易に解析できないのも当然ではある。
「あまりスマートじゃないけど力押しが確実かな」
手段の美しさよりも目的の達成を優先することにした晶は、ユーベルコードで使い魔を召喚。希少金属で構成された【式神白金竜複製模造群体】を呼び出し、人海戦術で廃村周辺の探索を行わせる。狙いは結界を維持している魔導装置の発見、及び破壊だ。
「さあ、みんな。よろしく頼むよ」
『まかされたのですよー』
141体の使い魔は少女の声音で答え、わらわらと四方八方に散っていく。魔導装置の在り処も隠されているとはいえ、これだけの人数が総掛かりになって探せば、発見は時間の問題でしかない。もちろん、晶自身もこの探索に参加する。
(能力的に保冷はできても解凍には向かないからね)
先刻の戦闘で氷漬けになった晶の肉体は、表面からわかりにくい程度には融けたものの、まだ内側は融け切っていなかった。装置探しに加わったのには、少しでも身体を動かして解凍を促す意味合いもあったのかもしれない。死なないとはいえ動きづらいし、なにより寒さや不快感はちゃんと感じるのだ。
「終わったらゆっくり風呂に浸かりたいな」
そんなことを呟きながら歩き回っていると、彼方から『あったのですよー』と叫ぶ声が。向かってみれば、そこには発光する魔法陣が刻まれた小さな石碑が、苔むして草むらに佇んでいた。これこそ十数年前の魔術師たちが遺した魔導装置の一つだろう。
「これだね。じゃあ壊して」
『壊すのです』
使い魔達が軽く殴れば魔導装置はあっけなく壊れ、その付近の結界に綻びが生じる。完全に消し去るのではなく通り抜けるだけなら、一つ壊すだけでも十分そうだ。それを確認すると晶は戦闘準備を整え、念のため使い魔達には周辺で待機して貰う。
「他の猟兵達もいるし、万が一も起きないとは思うけど、備えがあって困る事はないからね」
『だれもとおさないようにするのです』
自分達がデウスエクスに敗北したか、あるいは突破された時、最後の防波堤となるのが彼女達だ。気合十分の使い魔に見送られ、晶は結界内に足を踏み入れる。大気に満ちる濃密な魔力が、この先の激闘をひしひしと予感させた――。
大成功
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叢雲・紗綾
昔の人が頑張って張った結界。
これを破れないならこの先のデウスエクスに勝ち目は無い、とも言えそうですね。
やってみるとしましょう。
結界の弱いところを探り出し、そこに集中射撃を撃ち込んで破壊、という手段でもって破壊できないか試してみます。
零式照準器「鷹目」で以て結界を形成する魔力の流れを解析、流れの収束している部分が無いか【見切り】を試みます。
発見次第、此処を狙って「月蝕・参式」で千なる一の銃声を発動。
収束点に集中射撃を撃ち込んで破壊、一気に結界の崩壊を狙います。
ダメでも全体的な強度は落ちると思いますので、これを「村雨」で【切断】していきましょう。
「昔の人が頑張って張った結界。これを破れないならこの先のデウスエクスに勝ち目は無い、とも言えそうですね」
十数年前は死力を尽くしてなお封印するのがやっとだった強敵を、自分達はこれから倒そうとしている。であれば、先人の遺産を超える力の証明が必要だという考えは、決して間違っていないだろう。今、紗綾の前には長きに渡り封印を護り続けてきた、堅牢なる魔術結界がある。
「やってみるとしましょう」
腕試しも兼ねて攻略に挑む、彼女の作戦は明快だ。結界の弱いところを探り出し、そこに集中射撃を撃ち込んで破壊する。母から受け継いだ射撃の腕前と、愛銃がひとつ「月蝕・参式」の突破力があれば、決して無謀な挑戦ではない。
「こんな時に役立つのがこれです」
紗綾は銃の上部に零式照準器「鷹目」を取り付け、そのスコープ越しに結界を観察する。この装備は魔導式を採用しており、肉眼では観測できない魔力の流れも狙撃必須情報として表示される。この機能を利用して、撃ち抜きやすそうなポイントを探すのだ。
「流れの収束している部分がありますね。あそこが狙い目ですか」
結界を構築する魔力の流れは一定ではなく、常に流動的に変化している。それが収束する箇所は、言うなれば結界全体のウィークポイントだ。それを見切った彼女は即座に「月蝕・参式」の照準を合わせ、ユーベルコードを起動した。
「遠慮は要りません、全弾纏めて持っていきやがりませ!」
構えた銃器の引鉄を素早く何度も引き、大量の弾丸をほぼ同時に一点集中させる【千なる一の銃声】。プラズマ弾の閃光が辺りを眩く照らし、連なった銃声は雷鳴の如く轟く。その狙いは数ミリの狂いすらなく、結界の収束点に叩き込まれた。
「さあ、これでどうですか?」
130発の集中射撃を弱点に受けた結界は、紗綾が見守る前でピシリと音を立て――直後、全体に大きな亀裂が走った。
一気に結界の崩壊を狙ったのだが、まだ原型を留めているあたり見事なものだ。だが、その状態は素人目にも分かるほど脆くなっていた。
「昔の人達もやりますね。でも、これならもうひと押しです」
超連射により過熱したプラズマライフルを下げ、弐拾壱式高周波震動短剣「村雨」を抜く。高周波振動を発する刃は青白く発光しながら目前の壁に突き立てられ――全体的な強度の落ちていた結界は、その一撃をもって切り開かれる。
「通してもらいます。十数年前のケリはきっちり付けて来るので」
見事に先人超えを果たした紗綾は口元に自信の笑みを浮かべ、結界の中に足を踏み入れる。この先がいよいよ作戦の本番――次は封印されしデウスエクスの心臓に弾丸を撃ち込む番だ。どんな強敵が待ち受けていようが、彼女のやることは変わらない。
大成功
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オリヴィア・ローゼンタール
なるほど、たしかに堅固な結界だったようですね
しかし時の流れには抗えませんでしたか
装いを改め、大鎌を携えたバニーガールの姿に
黄金に輝く【死睨の魔眼】は、対象の死に易いを観測する(情報収集・急所突き)
村を覆う巨大で堅固な結界、その死を見極めるのにはかなりの【集中力】を要しますが……見えた
告死の大鎌に【呪詛】を纏う
尋常の生物であれば近付くだけで命を吸われる禍々しい力だが、|月の死天使《サリエル》の加護を受けたこの姿ならば問題なし
冴え渡る月光が如き斬撃が、寸分の狂いなく結界の綻びを【切断】
潜り抜けるに充分な穴を穿つ
「なるほど、たしかに堅固な結界だったようですね。しかし時の流れには抗えませんでしたか」
踊り子の衣装からバニーガールの姿に装いを改めたオリヴィアは、デウスエクス封印の結界をじっと見つめていた。
これが十数年前に当時の地球人の手で張られた、世界屈指の防御魔術だったのは間違いないだろう。だが年月の経過は不壊の結界に綻びを生じさせつつあった。
「これなら破る事もできそうです」
バニーに変身した彼女の黄金の瞳は、対象の死に易い箇所を観測する【死睨の魔眼】だ。これは何も生命体に限った能力ではなく、物体の死――すなわち破壊しやすい急所を捉えることもできる。張られた当時の万全な結界ならまだしも、現状の結界なら構造的弱点を見出せるはずだ。
「村を覆う巨大で堅固な結界、その死を見極めるのにはかなりの集中力を要しますが……」
オリヴィアは結界のすぐ傍まで近寄って、対象の「死に易い」箇所を探る。どんなに小さな裂け目も、ほんの些細な綻びも、彼女の魔眼から逃れられはしない。射竦めるような鋭い目つきは兎というより、獲物を狙う猛禽類の如しだ。
「……見えた」
巨大な結界における最も脆弱な一点。それを捕捉した彼女は、携えていた「告死の大鎌」に呪詛を纏う。この武器は神秘の金属アダマスで出来ており、斬られた者に死の運命を刻み付ける。彼女がこれを振るうのは通常、バニーガールの姿になった時だけだ。
(尋常の生物であれば近付くだけで命を吸われる禍々しい力だが、|月の死天使《サリエル》の加護を受けたこの姿ならば問題なし)
死を視る魔眼と死を刻む大鎌。この二つが揃った時、オリヴィアの攻撃は100%の死を約束する致命的な一撃となる。
危険な力を完全に制し、呪詛纏う大鎌を振り上げたかと思えば――冴え渡る月光が如き斬撃が、寸分の狂いなく結界の綻びを切断する。
「我が魔眼に魅入られし者、万象等しく滅ぶのみ――!」
抵抗などまるでない、美しささえ感じさせる。その一振りだけで結界には、潜り抜けるに充分な穴が穿たれていた。
穴の向こう側からは淀んだ空気が漂い、濃密な魔力が溢れ出してくる。結界内にて密封されていたそれは、結界自体を構成する魔力よりも遥かに禍々しい気を帯びていた。
「どうやら、敵はすでに目覚めつつあるようですね」
障害は取り除かれ、ここからが本番だと、オリヴィアは大鎌を握り締めたまま結界の中に入る。かつての戦いの跡地であり、デウスエクス封印の地ともなった廃村――その道を一歩一歩踏みしめる彼女の目には、研ぎ澄まされた闘志が宿っていた。
大成功
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クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【SPD判定】
…ここだね
あまり時間も無いようだし、手早くいこうか
引き続き真剣口調だよ
アイスエルフ戦時に思い出していた過去の記憶は、(それを思い出した事も含めて)殆ど忘れているね
結界術系にはあまり精通していない為、結界の精密さについてはわからないけれど、それがかなり高度なものである事位は見ただけで理解しているよ
…どんな人達が、どんな想いでこれを張ったのかは知らないけれど
|託された想い《渡されたバトン》には、ちゃんと答えないとね
UCは『ワタシのエインヘリアルちゃん』
「デウスエクス・アスガルド」ことエインヘリアルちゃんを召喚し、結界を突破するね
結界の破壊は【切断/範囲攻撃/怪力/2回攻撃/鎧無視攻撃/属性攻撃/貫通攻撃】で行うよ
術式の綻びや隙を探るのは【第六感/幸運/野生の勘/集中力】で行うね
「……ここだね」
アイスエルフとの戦いから変わらず真剣な様子で、クローネは目の前に張られた結界を見る。デウスエクスの封印を補強するために、当時の魔術師達が築いた防御術式は、現在もこの地を外界から遮断している。それが復活しつつあるデウスエクスを倒すための障害になるのは、皮肉としか言いようがないが。
「あまり時間も無いようだし、手早くいこうか」
戦いの最中に思い出していた過去の記憶は、ほとんど――それを思い出した事実も含めて、再び忘却の彼方にある。
もしも覚えていれば何か違ったのかもしれないが、現在の彼女は結界術系にはあまり精通していない。なので結界の緻密さについては分からないが、それがかなり高度なものである事くらいは、見ただけで理解していた。
「……どんな人達が、どんな想いでこれを張ったのかは知らないけれど。|託された想い《渡されたバトン》には、ちゃんと答えないとね」
過去の人々が封印によって地球を守り、長い月日を経て自分達がここに到達した。その事実が持つ重みを理解できないクローネではない。先送りにせざるを得なかった脅威に決着を付け、このバトンは未来というゴールに連れて行く。
「おいで、ワタシのエインヘリアルちゃん」
彼女がネクロオーブを掲げると、地面にルーン文字を刻んだ魔法陣が現れ、冥府の海より一体の戦士が召喚される。
コードネーム「デウスエクス・アスガルド」。ここではない宇宙において、創造主たるアスガルドの神々に反逆し、神も巨人も妖精も、全ての種族を滅ぼして星の覇権を握った戦闘種族、それがエインヘリアルである。
「このコの力なら結界だって突破できるはず」
すでに臨戦態勢のエインヘリアルを傍に控えさせつつ、クローネは結界をじいっと観察する。長年に渡り放置状態にあった結界は、盤石なれども万全とは言えない。第六感と野生の勘を研ぎ澄ませれば、経年劣化による術式の綻びを捉えられるはずだ。
「……ここを狙って、エインヘリアルちゃん」
結界術は専門外とはいえ彼女も魔術士の一派だ。しばらく集中して目を凝らしたのち、結界の一点をすっと指差す。
すると、待機していたエインヘリアルが無言のまま剣を抜く。全身を黒鎧で覆った彼女(クローネ曰く女性らしい)の思考や感情は読み取れないが、召喚主の命令には忠実であった。
『…………』
疾風の如き早業でニ度、剣を振るう黒鎧のエインヘリアル。精妙な技巧と剛力を以て、結界に封印のルーンを刻む。
アスガルドに伝わりし魔術文字の輝きが、結界を真っ二つに引き裂き――人が通るに十分な規模の亀裂が生まれた。
「流石だね」
綻びを突いたとはいえ、強固な術式を易々と切断する貫通力。そしてルーンによる回復阻害の結果を見たクローネは満足げに笑う。見事命令を果たしたエインヘリアルは一礼すると、最後まで一言も発しないまま静かに消えていった。
「それじゃ、行こうか」
結界の亀裂が塞がってしまわぬ前に、その内部へと足を踏み入れるクローネ。荒れ果てた廃村、淀んだ空気、そして濃密な魔力――この先に強大なデウスエクスが待っていることを直感した彼女は、気を引き締めて前に進むのだった。
大成功
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第3章 ボス戦
『魔術司書ライブラリアン』
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POW : 赤の書
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【炎の魔術書】が出現し、指定の敵だけを【火柱魔術】と【爆発魔術】で攻撃する。
SPD : 青の書
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【水と氷の魔術書】が出現し、指定の敵だけを【水刃魔術】と【氷嵐魔術】で攻撃する。
WIZ : 緑の書
敵1体を指定する。レベル秒後にレベル×1体の【風と雷の魔術書】が出現し、指定の敵だけを【竜巻魔術】と【落雷魔術】で攻撃する。
イラスト:ナミハナノ
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「エミリィ・ジゼル」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
かつての魔術士たちが張った結界を攻略し、封印の地に足を踏み入れた猟兵達。
そこは時の流れに取り残されたように、十数年前の戦いの模様をそのままに留めている。
村内の建物の多くは破壊され、災害にでも見舞われたような痕跡がある。当時のデウスエクスと人類による死闘が、いかに激しいものかを物語っていた。
――そして、村の中央にあった建物の中で、猟兵達は地下に続く階段を発見する。
降りてみると、その先は想像よりも遥かに広大な地下室となっており。むせ返るような濃密な魔力と、一人の女性が待っていた。
「……随分長く封じられていたようですね。地球の魔術士達もなかなかやるようです」
司書の格好をしたその女性の周りには、何冊もの書物が浮かんでいる。
地下室を満たす魔力は、その書物と女性自身から放たれているようだ。
彼女こそ『魔術司書ライブラリアン』。かつての戦いにて封印されたデウスエクスである。
「やはり、この星は面白い。彼らの叡智を収集し尽くせなかったことは残念でなりません」
十数年前、ライブラリアンは世界各地の図書館や博物館、学院等を主な標的とし、魔術に関連する書物を強奪した。
彼女の興味はあくまで魔術書とそこに収められた知識にあるらしく、収集に伴う破壊行為や殺戮には一切の罪悪感を抱いていない。それ故に、地球上に甚大な被害をもたらしたのだ。
「私が眠っていた間にも、新たな魔術が生まれ、記録されたことでしょう。こうしている暇はありません」
人類の決死の抵抗により封印されたライブラリアンは、アイスエルフの介入によって眠りから目覚めた。
彼女の目的は以前から変わらず、魔導書の収集。放置すれば十数年前の惨劇の再来となることは間違いない。
「まずは貴方達を始末して、凝り固まった身体をほぐすとしましょう」
そう言ってライブラリアンは魔導書を携え、猟兵達を見やる。
記録通りであれば、彼女の力は極めて強大だが――復活儀式が不完全なまま終わったため、万全な状態ではない。
予想外の事態はなにも無い。ここまで来ればあとは全力をもって、眼前のデウスエクスを撃破するのみだ。
先人達の意志を受け継ぎ、長きに渡る戦いに終止符を打つべく、猟兵達は決戦体制に入った。
西恩寺・久恩
無意識にUC超越者の肉体を発動
何か出てきたと言いながらも戦闘態勢をとる
よっと…
相手のUCは水刃魔術は心眼と気配感知で素早く回避する
ホイホイホイホイホイホイ
氷嵐魔術は霊力を放出して空中で足をばたつかせながら(推力移動)竜巻を回避する
本は好きですが…破壊させて貰います 少し残念そうにしながらも心眼で魔導書の動きを見てお祓い棒で力任せに横薙ぎで破壊する(怪力)
まあ、とりあえず殴りますね
敵に接近してから殴り飛ばしたが後ろに下がられていた
…手応えが無い、仕方が無いですね
敵に距離をとられて魔術を使われると不味いので拳を構える
無限天理陰陽術式…至大至剛
拳から殴り飛ばした衝撃波を放ち遠距離から攻撃
「何か出てきた……」
封印された地下室の中に入ってみれば、待ち構えていたのは人間によく似て――されど、人間とは根本的に相容れぬデウスエクス。それを見た西恩寺・久恩(妖怪陰陽師(物理)ここに見参!・f42881)は無意識に【超越者の肉体】を発動しながら戦闘態勢を取った。
「どれから試してみましょう……まずはこれにしましょうか」
対する『魔術司書ライブラリアン』は実験でも始めるような物言いで魔術書のページを開き、記された術を唱える。
今回選択されたのは水と氷を司る【青の書】。辺りに満ちた魔力が冷たさを増し、鋭い水刃が久恩に襲い掛かった。
「よっと……」
攻撃の気配を察知した久恩は心眼にてそれを見極め、素早く回避する。彼女の元をかすめていった水刃は、地下室の壁を深々と抉った。原理は工業用のウォーターカッターと同じだが、威力は桁違いだ――背筋が冷たくなる暇もなく、次は氷の嵐が迫ってくる。
「ホイホイホイホイホイホイ」
呑み込まれればただでは済まない氷と冷気の竜巻を前に、久恩は霊力を放出して飛び上がり、空中で足をばたつかせながら回避する。それは物理法則の限界を踏み越え、超常現象の領域に達した身体能力にものを言わせた動きである。
「本は好きですが……破壊させて貰います」
「あっ!」
少し残念そうにしながらも、次の魔術書のページをめくられる前に久恩は攻撃に転じる。上空から急接近し、持っていた「お祓い棒」を力任せに振るえば、ライブラリアンのそばに浮かんでいた魔術書が吹き飛ばされた。それまで平然としていた敵の表情が変わる。
「まあ、とりあえず殴りますね」
「よくも……!」
そのまま更に接近してライブラリアンも殴り飛ばそうとするが、その時にはもう相手は後ろに下がられている。棒の一撃は空振り、敵はすでに次の魔術書を召喚する準備に入っている。次はお試しではなく本気の攻撃が来るだろうか。
「……手応えが無い、仕方が無いですね」
このまま距離を取られて魔術を使われると拙いため、久恩は拳を構えて【無限天理陰陽術式『至大至剛』】を発動。
超越者の肉体による渾身の力で、空間そのものを殴り飛ばし、次元を揺るがす衝撃波をライブラリアンに飛ばした。
「無限天理陰陽術式……至大至剛」
「がッ?!! こ、この……!」
物理耐性や無敵さえ貫通する遠距離からの一撃は、シンプル・イズ・ベストな破壊力を誇り。直撃を食らったライブラリアンは驚愕の表情で吹き飛ばされる。手応えは十分――彼女がまだ本来の実力を発揮できていないのは、確かなようだ。
大成功
🔵🔵🔵
ディッセンバー・クレイ
知識を集めるだけならPCでも出来ます
つまり貴女は機械以下の欠陥品というわけです
【POW】連携・アドリブ歓迎
とまぁ挑発しつつ【ムーンラダー】と【仕官制帽】の決戦仕様と【セブンアームズ】で武装します
敵の魔術書の攻撃を召喚した【ダモクレスアーム】で防御しつつ回避
距離を詰め、魔術書が全て射程距離に入ったらUC【銀光一閃】で破壊
無防備になった敵をセブンアームズの一撃で刺し貫きます
貴女の致命的な弱点は、魔術書に頼りすぎなところです
本来なら圧倒的な物量でゴリ押しも出来たのでしょうが、弱体化した現状では後れを取る
それが判断できないから、機械以下だというのですよ
「知識を集めるだけならPCでも出来ます。つまり貴女は機械以下の欠陥品というわけです」
封印より目覚めたデウスエクス『魔術司書ライブラリアン』に、辛辣な言葉を浴びせるのはクレイ。魔術書と知識の収集を至上目的とし、地球に被害をもたらそうと構わないと言うなら、そんな輩は百害あって一利なし。粗大ゴミとして早々に処分すべきものだ。
「これは手厳しい。では、機械との違いをお見せしなければなりませんね」
対するライブラリアンは気を損ねたふうもなく、微笑みながら魔術書のページを捲る。新たに出現したのは炎の術を記した【赤の書】。ただ知識を蓄えるだけでなく、優れた術士である彼女は蒐集した術を自ら行使することもできた。
「骨の髄まで燃え尽きなさい」
「お断りします」
赤表紙の魔術書より放たれる巨大な火球。それを見たクレイは「ダモクレス・アーム」を召喚して防御態勢を取る。
着弾した瞬間火球は大爆発を起こし、受け止めた機械腕が損傷する――だが本人は無事だ。次弾を唱えられる前に、距離を詰める。
「……やりますね」
「ディッセンバー家の執事たるもの、この程度は余裕です」
今回のクレイの装備はカレンデュラ公国の士官制帽に「決戦外装ムーンラダー」の決戦仕様。公国の暗部を司る一族の当主である彼が、これを身に着けることの意味は重い。家紋と執事の誇りに賭けて、この任務の成功は確約される。
「でしたら、これはどうですか!」
ライブラリアンが次の魔術書のページを開くと、クレイの足元から高熱反応。咄嗟に身を翻した直後、巨大な火柱が地面から天井を突き破り、地上へと突き抜けていった。これで弱体化しているとは思えないほどの火力――それでも、彼の身にはまだ火傷一つない。
「これが私の全力奥義……地獄の番犬が放つ重力の輝きを受けなさい!」
そのまま魔術書が全て射程に入るまで距離を詰めた彼は【銀光一閃】を発動。オーラを後方へ噴出しながら突進し、「セブンアームズ」による高速刺突を放つ。まさしく銀の流星が如き一撃によって、ライブラリアンの周囲に浮かんでいた書物は悉く破壊された。
「貴女の致命的な弱点は、魔術書に頼りすぎなところです」
「ッ、よくも私の本を……!!」
自身の宝であり、攻撃魔術を発生させる砲台でもある魔術書を潰されたライブラリアンは、怒りの形相に豹変する。
だが、新たな魔術書を召喚するには一定のタイムラグがあり、それ以外に戦闘用のユーベルコードを持っていない。つまり今、彼女に身を守る術はないのだ。
「本来なら圧倒的な物量でゴリ押しも出来たのでしょうが、弱体化した現状では後れを取る。それが判断できないから、機械以下だというのですよ」
「しまっ……ぐぅッ!!?」
無防備になったライブラリアンの胸を、刺し貫く銀の斧槍。その柄を握るクレイの眼差しは冷たく、そして辛辣で。
いかに本来は強大なデウスエクスと言えども、万全ではない状態でこの男と戦ったのは悪手だった。この反省を活かす機会が、はたして彼女に訪れるだろうか――。
大成功
🔵🔵🔵
暁星・輝凛
黄道神ゾディアックの配下か。怖いお姉さんもいたもんだ。
知識を集めることは悪いことじゃない。
世の中の科学者、魔術師……全ては知識の探究だ。
だけど。知識のために命を踏み躙る、なんて。
「やっぱりね。分かり合えるタイプじゃないや、あんたは」
対魔術師戦の基本戦術は、魔術の発動前を狙うこと。
でも発動前を狙われるなんて、敵も予想の範囲内だろう。
だから最初の攻撃は囮、その後の本命、殲剣黎明刃・地で叩く。
魔術の性質上、一度僕を狙ってしまったら、光の小剣群までは止められない。
僕自身は【心眼】で攻撃箇所を見破り、回避に徹すればいい。
「覚えておくといい、ライブラリアン。連綿と紡がれた人の意地は、ときに神をも凌駕する」
「黄道神ゾディアックの配下か。怖いお姉さんもいたもんだ」
デウスエクスを統率する十二剣神の中でも、積極的かつ直接的な地球侵攻を企てる黄道神ゾディアック。その配下にいるデウスエクスはピンキリだが、この『魔術司書ライブラリアン』は間違いなく上位に位置する者だろうと、諸々の事実から輝凛は予想していた。
「知識を集めることは悪いことじゃない。世の中の科学者、魔術師……全ては知識の探究だ。だけど。知識のために命を踏み躙る、なんて」
「それの何が問題なのですか?」
とぼけていたり挑発するような声のトーンではない。不滅の生命体であり、地球を収奪の対象としか認識していないライブラリアンには、心の底から彼の言っていることが理解できないのだ。定命の者とは隔絶した意識の差異――デウスエクスの中でも、彼女は典型的なそれだ。
「やっぱりね。分かり合えるタイプじゃないや、あんたは」
「ええ。あなた達に分かってもらおうとも思っていません」
はなから期待していた訳では無いが、このデウスエクスとは相容れないことを改めて確信し、煌星剣を構える輝凛。
対するライブラリアンの傍にも、新たな魔術書が召喚される。ここに到達した時点で、どちらか一方が倒れる運命は決まっていた。
(対魔術師戦の基本戦術は、魔術の発動前を狙うこと。でも発動前を狙われるなんて、敵も予想の範囲内だろう)
魔術を得意とするデウスエクスとの戦闘経験も豊富な輝凛は、この場合のセオリーも心得ている。ただ、今回の相手は十数年のブランクがあるとはいえ歴戦の強者。セオリー通りの単純な戦法は、全て対策されていると考えるべきだ。
(だから最初の攻撃は囮、その後の本命で叩く)
召喚された【赤の書】から魔術が放たれる前に、輝凛は全速力で敵の元まで駆ける。無駄のない運足と瞬発力を以て間合いを詰める、剣士の基礎にして真髄とも言える動き――そこから繰り出される斬撃は、並のデウスエクス相手なら一刀両断にできただろう。
「残念でしたね」
だが、やはりライブラリアンはその動きを読んでいた様子で、わずかな姿勢の変化で攻撃を躱す。紙一重ではあったが、絶好の機会を逃した剣士に待っているのは魔術士からの反撃。開かれた【赤の書】のページから炎があふれ出す。
「舞い集え!」
その刹那、輝凛は【殲剣黎明刃・地】を発動し、光り輝くエネルギーの小剣群を召喚した。炎の魔術が彼に襲い掛かる一方で、小剣は彼の意思とは独立してライブラリアンを狙う。あちらの魔術の性質上、一度狙いを定めてしまったら他の対象は止められないはずだ。
「ッ、そういうことですか……!」
こちらが彼の本命だったとライブラリアンも気付くが、変幻自在の軌道で飛び回る光の刀身から逃れるのは、容易なことではない。あるいは万全な状態であればなんとかなったかもしれないが、封印が解けたばかりで魔力も身体能力も衰えている、今の状態では不可能だ。
「覚えておくといい、ライブラリアン。連綿と紡がれた人の意地は、ときに神をも凌駕する」
輝凛自身は心眼を凝らして魔術書の攻撃箇所を見破り、爆発や火柱の回避に徹しながら敵を睨みつける。その視線を追うように飛翔する光輝の小剣群は、猟犬の如くライブラリアンをただ一人を取り囲み、ダメージを刻み込んでいく。
「こ、これが、人の力ですって……ッ?!」
十数年前の地球には、自分をここまで苦しませる者など存在しなかった。一刻たりとも歩みを止めることのなかった人類の研鑽と意思は、書に記された知識にしか興味のないライブラリアンには理解できないもので。ゆえに輝凛の攻撃に込められた、受け継がれし意思の鋭さに圧倒されてゆく――。
大成功
🔵🔵🔵
日下部・香
すごい魔力だが、これで万全じゃないとは。
相対すると改めて実感するな……奴は今のうちに倒さないとまずい。
敵の技は出現させた魔術書で対象を攻撃するものか。
敵は強い分、魔術書の出現に時間がかかる(レベル秒)はずだ。それまでにできるだけ叩く!
決戦配備・クラッシャー要請! 最大火力で奴を攻撃してくれ! 奴の注意はなるべく私が逸らす!
【螺旋弓術・黒雨】で敵を攻撃しよう。特に魔導書を狙いたい。紙を朽ちさせる毒を矢じりに込めておこう(【毒使い】)
奴は書物の収集家、本の破壊は無視できないんじゃないか?
敵の風と雷の魔導書が現れたら、【螺旋弓術・黒雨】で射貫こう。放てる矢は1370本、これで足りると思いたいな。
「すごい魔力だが、これで万全じゃないとは」
過去の経験と照らし合わせても、今目の前にいるデウスエクスは油断ならない強敵だと、香の直感が告げる。十数年前、世界中に甚大な被害をもたらし、当時の人類による決死の作戦にて封印されていた『魔術司書ライブラリアン』。その情報に誇張は含まれていなかったようだ。
「相対すると改めて実感するな……奴は今のうちに倒さないとまずい」
「倒されるわけにはいきませんね。まだまだ知識を深め足りないので」
螺旋弓に矢をつがえる香に対し、ライブラリアンは魔術書のページを広げる。現状でさえ彼女は強大な力を持つが、恐るべきはまだ本調子ではないということだ。ここで逃がせば同胞の元に帰還した彼女は、再び地球にとって大いなる脅威と化すだろう。
「決戦配備・クラッシャー要請! 最大火力で奴を攻撃してくれ! 奴の注意はなるべく私が逸らす!」
『了解!』
ライブラリアンの数少ない弱点は、強大な分魔術書の出現に時間がかかることだ。それまでにできるだけ叩こうと、香は特務機関DIVIDEに|決戦配備《ポジション》を要請。随行していた戦闘部隊が直ちに支援攻撃を開始し、ありったけの装備と弾薬をターゲットに叩き込む。
「これが現代の人間の武器ですか。以前よりアップデートされていますね」
ユーベルコードを使えない一般人の攻撃力では、デウスエクスに致命傷を負わせるのは難しい。現に過去の戦いでは封印という選択肢を取るしかできなかったように。それでも人類の兵器と魔法の粋を尽くした攻撃に一切のダメージがないかと言えば、それも否であった。
「射ち、写し、穿つ。天を衝き、地に降る」
クラッシャーの攻撃力支援に合わせて、香は【螺旋弓術・黒雨】を発動。狙いはもちろんライブラリアンと、周囲に浮いている魔術書だ。特に後者の破壊を目論んで、鏃には紙を朽ちさせる毒を仕込んで放つ。忍者たるもの毒薬の扱いだってお手の物だ。
「なッ……やめなさい!」
香の毒矢が突き刺さると、魔術書は黒く変色してぐずぐずに腐蝕する。それを見たライブラリアンは、自分が攻撃された時よりも狼狽えた。彼女にとってそれは自分の生命よりも大事なもの。もはや世に二つとないものまで含まれた、貴重な蒐集品なのだ。
(奴は書物の収集家、本の破壊は無視できないんじゃないか?)
という香の予想はどうやら当たっていたようで、立て続けに矢を放てば敵の狼狽はますます激しくなる。それは即ち自身への攻撃の対処が疎かになることで、黒雨の矢やクラッシャー部隊によるダメージがジャブのように積み重なっていく。
「やめなさいと言っているでしょう!」
ここでユーベルコードの待機時間が終了し、風と稲妻を纏った【緑の書】が出現する。この書に記された魔術は竜巻と落雷――どちらも戦場を一掃するには十分な破壊力。すかさず香は狙いを切り替え、もう一度【螺旋弓術・黒雨】を射ち放った。
「放てる矢は1370本、これで足りると思いたいな」
瞬速で撃ち出された無数の矢は、複雑な幾何学模様を描きながら緑の書を包囲し、竜巻と落雷に叩き落されながらも標的を射貫く。魔術書とはいえ構成素材が紙とインクであることに変わりなく、毒矢によってたちまち朽ちていった。
「あぁぁーーーッ!!!!」
また一冊、大事な書が失われ絶叫するライブラリアン。あるいは肉体より精神的なダメージが大きいかもしれない。
だが、それ以上に大事なものを、ヤツは地球から奪い続けてきたのだ。慈悲を与えるつもりはないと、香は容赦なく矢を射掛け続ける――。
大成功
🔵🔵🔵
オリヴィア・ローゼンタール
知と、それを見つけた者と、それを護ってきた者、等しく敬意を抱くべき
それを解さぬようでは司書を名乗るにはまだ早い
身に纏うのはシスター服
術の打ち合いが得手なのだろう? そちらの土俵で戦ってやる
詠唱は何分だ? 好きなだけ唱えるがいい
【挑発】しながら掌に魔力を集中、圧縮
自らを魔術司書と号するならば、真っ向勝負に応じざるを得ない筈
聖なるかな聖なるかな聖なるかな――
唱えるたびに魔力が練り上げられ、純白の光輝となって溢れ出る
砲身たる肉体が軋みを上げるが、【気合い】と【根性】で捻じ伏せ、無限に威力を強化する(限界突破)
――輝かしきかな極光よ! 無窮の神威を纏い、万象滅尽の一撃となれ!
【至高天極星砲】ッ!!!
「知と、それを見つけた者と、それを護ってきた者、等しく敬意を抱くべき。それを解さぬようでは司書を名乗るにはまだ早い」
ただの古本一冊をとっても、それが執筆され現代に伝えられるまでに、どれだけ多くの人の手が関わってきたのか。
あの『魔術司書ライブラリアン』は書に記された知識に価値を認める一方、書の背景にある重みを理解していない。そんな愚かな|蔵書狂《ビブリオマニア》の好き勝手をこれ以上許すつもりは、オリヴィアにはなかった。
「書物とは、その知を解する者が持ってこそ価値があるのです。この星の住人には勿体無い代物ですね」
対するライブラリアンは自身の所業をまるで悪びれない。地球人を含めた定命の者を下に見た、デウスエクスらしい傲慢さが現れていた。彼女を野放しにすれば、蒐集の名を借りた強奪もしくは破壊行為が再開されるのは必至だろう。
「術の打ち合いが得手なのだろう? そちらの土俵で戦ってやる」
その傲慢な鼻柱をへし折ってくれようと、オリヴィアは居丈高に挑発する。身に纏うのは着慣れたシスター服、武器は持たず、掌に魔力を集中・圧縮する。彼女は聖槍をはじめ様々な武器の扱いを得意とするが、それらを用いずに敢えて魔術対決を挑もうというのだ。
「詠唱は何分だ? 好きなだけ唱えるがいい」
「ずいぶんと威勢が良いですね。後悔する事になりますよ」
自らを魔術司書と号するならば、ここはライブラリアンも真っ向勝負に応じざるを得まい。たかが定命の人間の魔術と知識が自分に及ぶものか――こちらこそ思い上がりを正してやろうと、彼女もユーベルコードの発動準備に入った。
「聖なるかな聖なるかな聖なるかな――」
ライブラリアンが魔術書を召喚するまでの間、オリヴィアもユーベルコードの詠唱を行う。聖句を唱えるたびに魔力が練り上げられ、純白の光輝となって溢れ出る。それは現世に具現化された神威の片鱗であり、純粋なる光と熱のエネルギーだ。
「ぐっ……聖なるかな、聖なるかな聖なるかな聖なるかな――!」
あまりに膨大なエネルギーを溜め込まれ、砲身たる肉体が軋みを上げるが、彼女は気合いと根性で苦痛をねじ伏せ、術の威力を無限に強化していく。幾度も繰り返される詠唱時間が続く限り、このユーベルコードに理論上限界はない。
「我が嵐と稲妻に打たれ、消え去りなさい!」
そしてライブラリアンの準備も完了し、【緑の書】が召喚される。開かれたページから飛び出すのは荒れ狂う竜巻と眩き雷。彼女が奪い取った叡智の真髄が標的を討たんと迫る――その瞬間、オリヴィアも詠唱の最後の一節を紡いだ。
「――輝かしきかな極光よ! 無窮の神威を纏い、万象滅尽の一撃となれ! 【至高天極星砲】ッ!!!」
突き出した両掌より解き放たれる超極大の破壊光線。目を開けていることさえできない、純白の光が地下を満たす。
最初に宣言した通り、同じ土俵、同じ準備時間での真っ向勝負。だが自らの限界を超えて詠唱したオリヴィアの秘術は、相手の術を大きく上回っていた。
「そ、そんな馬鹿な……―――ッ!!!!!?!」
竜巻と落雷をあっけなく吹き飛ばされ、緑の書と共に極光に呑み込まれるライブラリアン。これほど強大な魔術を、定命の人間が扱えるなど、彼女の知識にはない事例だった。衝撃、驚愕、そして敗北の屈辱。それらの感情さえ塗りつぶすほどの光熱が、不滅なるその身を焼き焦がしていく――。
大成功
🔵🔵🔵
アンジェリカ・ディマンシュ
水と氷の魔導書であれど、刻の頸木からは囚われているでしょう
クロックワーク・メルカバ―
時間を掌握しなさい
瞬間、機械天使の翼を生やしてUCを起動
万象を機械化し、そのまま時間を操作――ダモクレスとオラトリオのハイブリッドデウスエクスとなる『暴走』を完全制御して発動
わたくしの時間を加速させてそのまま機械天使の翼から超沸点のレーザーを放ち水刃魔術と氷嵐魔術を蒸発
そのまま隙を突いて13秒間だけ時間を停止
超沸点レーザーを時間が止まっている間にデウスエクスにありったけの数を叩き込み、そのまま離脱しヒット&ウェイを繰り返しますわ
「思いの外、手こずらせてくれますね……本調子でさえあれば、こんな事には」
復活直後だということを差し引いても、猟兵達の実力は『魔術司書ライブラリアン』の想像を遥かに上回っていた。
思いもよらぬ苦戦に歯噛みしながら、彼女は新たな魔術書を喚ぶ。強大な冷気を帯びた【青の書】の魔力をもって、戦況を打開するつもりだ。
「水と氷の魔導書であれど、刻の頸木からは囚われているでしょう。クロックワーク・メルカバー、時間を掌握しなさい」
その瞬間を見計らっていたように、アンジェリカが機械天使の翼を生やして【翼は歯車仕掛けとなり戦車となる】を起動。万象を機械化する「ダモクレス」と時間を操作する「オラトリオ」、二つの種族の力を発現させたハイブリッドデウスエクスとなる「暴走」を、自らの意思で完全制御するユーベルコードだ。
「歯車は翼を広げ、時空の調律者にして存在しない魂を駆動させる進化の剣となる。つまりは、我は神の戦車として進撃する番犬である」
一時的にデウスエクス化を遂げたアンジェリカの時間は加速し、機械天使の翼からは超沸点のレーザーが放たれる。
青の書から放たれる水刃魔術と氷嵐魔術は、それにより一瞬で蒸発させられる。こちらも決して威力は低くないはずなのに、レーザーの熱が途轍もないのだ。
「くっ……!?」
「今です」
地下に立ち込めた蒸気の霧が、ライブラリアンの視界を遮る。その隙にアンジェリカは時間操作の範囲を広げ、体感にして13秒間だけ、周囲の時間を停止させる。万全の状態ならばいざ知らず、現在のライブラリアンの魔力では、この現象に抵抗できない。
「全エネルギーをレーザーに。一斉照射開始」
限られた時間を有効に使うべく、アンジェリカはありったけの数の超沸点レーザーをライブラリアンに叩き込んだ。
ピクリとも動かないデウスエクスに突き刺さる光熱の嵐。そのダメージは時が動き出した瞬間、一気に襲ってくる。
「ッ、がはっ……!! ま、まさか今のは、時間停止……」
流石は魔術司書を名乗るだけあって、自分の身に起きた現象を彼女は即座に看破したようだ。だが、分かったところで対策を取るのは難しい。攻撃を終えた時点でアンジェリカはもう、敵の攻撃が届かない所まで離脱しているからだ。
「まだ終わりではありませんわ」
そのままアンジェリカは時間操作を用いたヒット&アウェイを繰り返し、堅実にライブラリアンを追い詰めていく。
クロックワーク・メルカバー――戦場を翔ける歯車仕掛けの神の戦車は、地球を脅かす偽りの神に容赦しなかった。
大成功
🔵🔵🔵
佐伯・晶
オブビリオン相手に道徳を説いてもどうしようもないし
さっさと戦う事にしようか
相手は色んな属性の魔術を使うみたいだけど
その全てに耐性を持つ訳でも無さそうだね
最初から邪神の涙を使いつつ
ガトリングガンで攻撃
砲身の冷却に丁度良いしね
敵が攻撃してくるのなら神気で防ごう
魔術書が出て来る頃にはそれなりに冷えているから
水刃の魔術もすぐ凍るかな
ガトリングガンで迎撃しよう
氷嵐の魔術は耐性があるし
自分のUCで凍るから
実質無効化できると思うよ
後は敵と魔術書を凍らせつつ
射撃で砕いていこうか
ドレスは耐性があるから固まらないけど
体はマネキンみたいにガチガチだよ
胸元叩くといい音がするよ
無事終わったら風呂でゆっくり暖まりたいなぁ
「デウスエクス相手に道徳を説いてもどうしようもないし、さっさと戦う事にしようか」
地球人とは文化も生態も異なる侵略者が、話し合いでどうにかなるとは思っていない。『魔術司書ライブラリアン』と対峙した晶は、迷わず携帯型ガトリングガンの銃口を向けた。完全復活される前に敵を倒す、今自分がやるべきことはそれだけだ。
「賛成です。あなたは魔術書も持っていないようですし」
ライブラリアンのほうも、ここで邪魔者に情けをかける理由はなく、魔導書を召喚すべくユーベルコードを唱える。
この戦闘で数々の魔術書を使用・破壊されているが、まだ彼女の蔵書は尽きる気配がない。魔力と共に冷気を感じるので、出そうとしているのは【青の書】か。
(相手は色んな属性の魔術を使うみたいだけど、その全てに耐性を持つ訳でも無さそうだね)
ならばと晶は初手から【邪神の涙】を使いつつ、ガトリングガンで攻撃を仕掛ける。邪神の力で生成された弾丸と、極低温物質による弾幕だ。避けられても命中した箇所を凍結させ、地下室の気温を下げていく。反動で本人まで凍っていくが、それはお構いなしだ。
「砲身の冷却に丁度良いしね」
「ッ、見境なしですか……」
連射で過熱した砲身と邪神の冷気が反応して、晶の元からは白い霧が立ち上る。そんな状態で無差別攻撃を行う彼女から、ライブラリアンは舌打ちしつつ距離を取った。魔術書を召喚するまでは防御を優先したのだろうが、それならそれで晶には好都合だった。
「お返しです!」
準備時間が終了し、ライブラリアンの傍に【青の書】が出現する。開かれたページより飛び出すのは水刃と氷嵐――しかし、その頃には地下室の気温は氷室の如く冷えきっていた。唱えられた水の魔術も、すぐに凍ってしまうほどに。
「水より氷のほうが迎撃しやすいからね」
晶はガトリングの弾幕で凍った水刃を撃ち落とし、砕けた氷片も神気でガードする。もう一つの氷嵐の魔術に至っては、そもそも自分のユーベルコードで凍っているので、実質無効化しているのと同じだ。アイスエルフの術よりも強烈な冷気だが、それでも彼女の耐性を上回るものではない。
「人間にはできない無茶だよなぁ」
自分もろとも全てを凍らせながら戦う、我ながら邪神らしい戦い方に嘆息しつつ、晶は攻撃の手を緩めない。ばら撒かれた弾幕は敵の魔術を超え、魔術書や敵自身にも影響を及ぼしつつあった。万物に停滞をもたらす【邪神の涙】が、不滅のデウスエクスさえも凍らせる。
「やっぱり、凍結耐性は大したことなさそうだね」
「な、何なのですか、この力は……ぐあッ!?!」
魔術とは異なる深淵の権能によって、四肢の末端から凍りつくライブラリアン。ご自慢の魔導書も凍結してしまい、ページを捲ることさえできない。すかさず晶はガトリングの掃射を浴びせ、凍って脆くなった敵を撃ち砕いていった。
(無事終わったら風呂でゆっくり暖まりたいなぁ)
徐々に敵を追い詰めながら、晶は内心そんなことを考える。着ているドレスは耐性があるので固まらないが、依頼中に何度も凍結攻撃を受けた身体はマネキンのようにガチガチで、胸元を叩くといい音がする。そんな状態で生きてはいても、不快感は極まりなく――今の彼女にとっては、温かいお湯と休息こそが、なによりの報酬であった。
大成功
🔵🔵🔵
大町・詩乃
(煌月を壁に立てかけ)
「貴女に武器は使いません。術でお相手いたしましょう。」
と宣言して、《神威発出》発動。
相手が魔”術”合戦に乗り出せば、残像を元の位置に置きつつ八極拳の箭疾歩(功夫・ダッシュ・ジャンプ・軽業)で一気に相手の懐に飛び込みます。
そのままUC効果・功夫・神罰・雷の属性攻撃・衝撃波・鎧無視攻撃・貫通攻撃・2回攻撃による、八極拳の発勁を利用した寸勁と鉄山靠のコンボに繋げます。
相手のクレームは「これは武”術”です。文句があるなら魔”術”で返してみなさい。」と言い返す。
相手の攻撃はUC効果&心眼・見切りで回避したり、天耀鏡の盾受けで対応。
オーラ防御も纏う。
その後も八極拳の連撃を重ねますよ!
「貴女に武器は使いません。術でお相手いたしましょう」
薙刀「煌月」を地下室の壁に立てかけると、詩乃は『魔術司書ライブラリアン』に宣言した。相手が魔術を得意とするデウスエクスなら、同じ土俵で戦うということだろうか。少なくともライブラリアンのほうはそう解釈し、薄く笑みを浮かべた。
「この私に魔術対決を? それで勝てるおつもりですか?」
彼女は地球を含む様々な星で魔術書を集め、膨大な叡智を我がものとしてきた。一度は封印という不覚を取ったとはいえ、一対一の魔術対決で負ける気はまるでない。地球に与する輩の低級な魔術など、正面から打ち破ってみせよう。
「良いでしょう。では我が魔術の真髄を……」
「遅い!」
だが、ライブラリアンが魔"術"合戦に乗り出した瞬間、詩乃は【神威発出】を発動。残像を元の位置に置きながら、予備動作もなく一気に相手の懐に飛び込んだ。これは箭疾歩――熟達者ともなれば数メートルの距離を一瞬で詰める、八極拳の一派に伝わる歩法である。
「なッ……ごはっ?!」
あまりの速さにライブラリアンが反応できない間に、寸勁と鉄山靠のコンボが繋がる。ユーベルコードで強化された神威、鍛錬で得た功夫、そして八極拳の発勁を利用した連続攻撃は、一撃ごとに雷光を閃かせながら、衝撃を体内へと直接伝えた。
「げほっ、ごほっ……だ、騙したのですか……!」
「これは武"術"です。文句があるなら魔"術"で返してみなさい」
不意打ち同然に痛手を被ったライブラリアンからのクレームに、詩乃は涼しい顔で言い返す。ヒトの知恵が生んだ力は、なにも魔術だけではない。理合に基き研鑽と伝承を続け、磨き上げられた武術もまた、立派な「術」のひとつだ。
「屁理屈をッ!」
とはいえライブラリアンがそれで納得するはずもなく、激昂した彼女は【緑の書】を召喚。そこに記された風と雷の魔術を同時に唱え、竜巻と落雷を戦場に解き放った。彼女の感情を現すかのように、風の音と雷鳴がごうごうと唸る。
「あなたがそう言うのなら、こちらも全力の『魔術』で叩き潰すまで!」
「やってみなさい。できるのなら」
豪語するだけあって、高位のデウスエクスであるライブラリアンの魔力は強大だ。しかし復活したばかりの今なら、神性の"格"では詩乃が勝る。【神威発出】の効果で回避力も強化されている彼女は、心眼をもって敵の攻撃を見切り、天耀鏡の盾で受けるか、オーラの鎧で逸らす。
「神の威を此処に知らしめましょう」
「ご、ぐはぁッ!!!?」
その直後、カウンターで重ねられる八極拳の連撃。神威と功夫を組み合わせた神秘的武術の真髄が、偽りの神を打ちのめす。この"術"対決、どちらに軍配が上がるかはもはや問うまでもあるまい――壁際まで吹き飛ばされたライブラリアンの無様な姿が、その答えだ。
大成功
🔵🔵🔵
叢雲・紗綾
準備運動のつもりでいるなら、お前の目的は叶いませんよ。
何も知らない、分からないまま、くたばりやがれです。
敵のユーベルコードは発動まで時間がかかりますから、その間に速攻を仕掛けていきましょう。
自律式浮遊兵器転送、高機動型浮遊砲台を呼んで、包囲攻撃をかけさせます。
私も「月蝕・参式」を速射モードにして攻撃。ほぼ全方位からの【制圧射撃】をかけます。敵がバリアを張るなら、浮遊砲台の射撃の集束や単射モードにした月蝕・参式で【エネルギー充填】からの射撃でブチ抜いてやります。
敵のUCが発動したら、私は戦場を【ダッシュ】しての回避に専念。
砲台に魔術書の撃墜をしてもらって、敵の攻勢は緩んだら反撃です。
「準備運動のつもりでいるなら、お前の目的は叶いませんよ」
不滅のデウスエクスが、定命の人間を侮るのはいつもの事だ。そして多くの場合、侮りこそが奴らの命取りとなる。
歴戦のケルベロスである紗綾は知っている。奴らが人間の力も、意地も、可能性も、何一つ理解していないことを。
「何も知らない、分からないまま、くたばりやがれです」
「なにを馬鹿な。ほんの十数年前の事を忘れたのですか?」
容赦なき啖呵を切る紗綾に、眉をひそめるは『魔術司書ライブラリアン』。封印という不覚を取りこそしたものの、かつての戦いでは人類を圧倒していたのだ。多少手こずることがあっても、自分が負けるとは微塵も思っていない――今一度力の差を思い知らせてやろうと、魔術書の召喚準備に入る。
(敵のユーベルコードは発動まで時間がかかりますから、その間に速攻を仕掛けていきましょう)
魔術書が出てくるまでにどれだけダメージを与えられるかが勝負だ。紗綾は【自律式浮遊兵器転送】を発動し、召喚した高機動型浮遊砲台に包囲攻撃をかけさせる。ロケット砲搭載の大型機に比べれば攻撃力では劣るが、こちらは一度に数を揃えられるのが強みだ。
「ここはこの子達がお相手しますよ!」
「ただの兵器に興味は無いのですが……」
数百機の浮遊砲台による機銃掃射と、紗綾本人による「月蝕・参式」の速射。この物量でほぼ全方位から制圧射撃をかけられては、流石にライブラリアンも防御に徹さざるを得ない。膨大な魔力を利用して、全周囲にドーム状の結界を張り、弾幕を防ぐ。
「そんなバリア、ブチ抜いてやります」
紗綾は即座に「月蝕・参式」を速射モードから単射モードに変更。砲台群の射撃を集束させて強度を削った一点に、エネルギー充填した高威力の一発を叩き込む。これまでよりも激しいプラズマの閃光が地下室を照らした直後、ガラスの膜を砕くように結界が突き破られた。
「がはッ?! や、やりますね、ですが……!」
これには堪らず血を吐いたライブラリアンだが、同時にユーベルコードの準備時間も終わる。召喚された【青の書】を片手に、彼女が発動するのは水刃と氷嵐の魔術。ターゲットは浮遊砲台群のコントロールを司る紗綾ただひとりだ。
「あなたさえ始末すれば、この機械も止まるでしょう」
「できるものならやってみやがれです」
鉄板を紙の如く切断する水刃に、呑まれれば臓腑まで凍りつく氷嵐。魔術司書の名に恥じぬ猛攻から、紗綾は回避に専念する。敵のユーベルコードの標的は同時に一体のみ、それなら自分が戦場をダッシュしている間も、砲台は攻撃を続けられる。
「やりなさい」
「ッ、私の本を……!」
いくら貴重な魔術書と言っても紙の本だ、機銃の弾幕を浴びせれば容易に撃墜できる。冊数が減ればそれだけ魔術の威力も弱まるが、それ以上に大きかったのは敵の動揺かもしれない。生粋の|蔵書狂《ビブリオマニア》であるライブラリアンは、どんな時も自分の本が傷つけられるのは我慢ならないらしい。
「隙だらけですね。反撃ですよ」
「よくも……がぁッ!?」
魔術の攻勢が緩んだところで、紗綾は再びプラズマライフルの照準を敵に合わせ、容赦のない銃撃をお見舞いする。
直撃を食らったライブラリアンは悲鳴を上げ、着弾部位に焦げた風穴が開く。地球に対する無知ゆえに、その地球人の手によって、彼女は追い詰められつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
カーバンクル・スカルン
魔術書を集めるために、それを研究している人達———0から1を作る人も1を10に発展させる人もそれを記録する人もそれを模写して多くの人に届ける人もぜーんぶ皆殺しにしたんだってね? あんた、勉強が出来るバカか、本を見てればいいだけで魔術に興味がないんでしょ。
【輪火風変形】で装備したグリーブから発せられた火の渦で、出現してくる魔術書から暴風と落雷が襲いかかってくる前に全部焼き払って、無防備になったライブラリアンを思いっきり蹴飛ばしてやりましょう。
「魔術書を集めるために、それを研究している人達———0から1を作る人も1を10に発展させる人もそれを記録する人もそれを模写して多くの人に届ける人もぜーんぶ皆殺しにしたんだってね?」
紅玉の眼差しで相手を睨みつけながら、カーバンクルは静かな調子で問い詰める。書物とは、ただ一冊を完成させるためにも執筆者をはじめ多くの人の手が携わっている。魔術書のような専門知識を記録したものであれば尚の事。かつて『魔術司書ライブラリアン』が殺した人間の中には、そうした関係者も含まれていたはずだ。
「あんた、勉強が出来るバカか、本を見てればいいだけで魔術に興味がないんでしょ」
「なッ……私を愚弄するのですか?」
その指摘は敵を怒らせたようだが、カーバンクルに訂正する気はない。魔術書の蒐集に異常な執着をみせる一方で、魔術書の現物以外に価値を感じないデウスエクス。歪んだ|蔵書狂《ビブリオマニア》の性癖にこれ以上、地球が付き合わされるのは御免だ。
「私がバカかどうか、その身で確かめてみなさい」
憤慨したライブラリアンは【緑の書】を召喚し、風と雷の魔術を唱える。地球を含む星々で研究・記録された叡智は、デウスエクスの膨大な魔力で具現化され、仇なす者を滅ぼさんとする――だが、それよりも早くカーバンクルはユーベルコードを発動していた。
『Code:Nata’s Leg Flight Unit,approved』
機械的な音声と共に「カタリナの車輪」がグリーブへと変形し、カーバンクルの脚部に装備される。その車輪からは炎が発せられ、まるで中国伝承に登場する神仙、哪吒の宝貝のようだ。これが彼女の隠し玉、【輪火風変形】である。
「全部焼き払ってやるわ」
「……ッ!?」
カーバンクルが車輪を回転させ戦場を疾走すると、生じた炎の渦が魔術書を焼く。どんな呪文が記されていようが紙は紙、耐火性も限界はあるだろう。たちまち燃え上がった自分の蔵書を見て、ライブラリアンは驚愕の悲鳴を上げた。
「や、やめなさいッ!」
そう言われてやめるカーバンクルではない。暴風と雷が襲ってくる前に、召喚された魔術書を片っ端から焼却する。
地下室を焦がすほどの熱気が渦巻いたあとに、燃え尽きた書物の灰が舞う。こいつらさえ焼いてしまえば、残された本人は無防備だ。
「本集めは終わりよ、おバカさん」
「がは……ッ!!」
そのままカーバンクルはライブラリアンの元まで駆け寄ると、その顔面を思いっきり蹴り飛ばした。カタリナの車輪の速度と熱量を上乗せしたキックの威力は、高位のデウスエクスにも耐えがたく。血反吐を吐いて壁に打ち付けられた無様な姿を見ると、魔術司書の肩書きもまるで陳腐なものだ――。
大成功
🔵🔵🔵
ゼーレ・ユスティーツ
ここで仕留めておかないと面倒な事になりそうね…
と視力で敵の動きを見たり周りを確認して情報収集を行いながら推力移動で距離を詰める
まずは速度を落とすわ…
水刃の魔法はガンナイフから呪殺弾を早撃ちして相殺するも相手はUCなので一瞬だけ水刃の速度が落ちるので回避する
今よ!無限量子空間!
氷嵐魔術はUCの効果でUC無限量子空間を発動して量子空間に氷嵐を消す
蝶のように散れ!スタールイーファントム!
一定距離まで来たら時空属性の斬撃波を放ち躱させて体勢を崩した後に残像を出しながら指定UCを発動して距離を詰める
少しでもダメージを与えられるといいのだけど…!
UCで攻撃した後にヘルジェーベト・カルテンシアで傷口を抉った
「ここで仕留めておかないと面倒な事になりそうね……」
地下室で遭遇したデウスエクスと、その周囲を浮遊する魔術書を確認して、情報収集を行いながら警戒を強めるのはゼーレ・ユスティーツ(彷徨う『黒蝶の死神』・f41108)。完全復活する前に間に合ったが、あれの危険性は肌でわかる。万が一にも取り逃せば、多くの地球の生命が失われるだろう。
「こんな所でこれ以上、足止めを食らっている暇はないのです!」
一方の『魔術司書ライブラリアン』は、グラビティ・チェイン不足で本来の力を発揮できず、苦戦を強いられている現状に焦りを抱いていた。折角封印が解けたというのに、よもや倒されてしまっては意味がない。もはやなりふり構わぬ様子で蔵書から【青の書】を取り出し、猟兵の排除に全魔力を注ぐ。
「まずは速度を落とすわ…」
敵の魔術書から水刃の魔術が放たれると、ゼーレは「黒蝶刃銃」から呪殺弾を早撃ちして相殺する。向こうはユーベルコードなので完全に打ち消すことはできないが、呪いで一瞬だけ速度が落ちる。その隙に彼女は攻撃を回避すると、推力移動で敵との距離を詰めていく。
「ッ、小癪な……!」
「今よ! 無限量子空間!」
続けて放たれる氷嵐魔術は、ユーベルコードで空間に穴を開け、風と氷を【無限量子空間】に呑み込んで消し去る。
なかなか強大な魔術だが、ゼーレは異世界で魔力至上主義者の組織と戦い、魔術戦に対抗するノウハウを身につけている。敵対者達からは『黒蝶の死神』と恐れられた、その実力は伊達ではない。
「そこよ!」
「くっ!」
一定距離まで来たところで、ゼーレは呪神鎌『エーリュシオン』から時空の斬撃波を放つ。ライブラリアンは身を躱すが、咄嗟のことで体勢が崩れてしまい――すかさずユーベルコードを発動した死神が、量子化による残像を発生させながら、超神速で距離を詰める。
「蝶のように散れ! スタールイーファントム!」
「しまっ……がはァッ!!」
空間や概念をも破壊する、必滅の斬撃が敵を断つ。不滅の生命を持つデウスエクスと言えど、このダメージは無視できまい。噴き出した血飛沫が地下室に花を咲かせ、絶叫が反響する。握りしめた鎌の柄から、ゼーレは確かな手応えを感じていた。
「少しでもダメージを与えられるといいのだけど……!」
休む間もなく、ゼーレはローブの下から処刑道具「ヘルジェーベト・カルテンシア」を抜き放ち、敵の傷口を抉る。
容赦のない死神の追撃を受け、ライブラリアンは「ぐっ!?」と悶絶。流された出血量と蓄積したダメージは、復活したばかりの彼女を窮地に追いやりつつあった――。
大成功
🔵🔵🔵
クローネ・マックローネ
NGなし、絡みOK、アドリブ歓迎
【POW判定】
周囲の惨状の原因を前にして、不機嫌さが極まって口調が大分きつくなるよ
…始末されるのはお前の方だよ、ライブラリアン
お前の"下らない"興味心のせいで、地球の民が大勢死んだ
次はお前が、お前にとっての"下らない"理由で始末される番だよ
UCは「ワタシのドリームイーターちゃん」
ドリームイーターにはドリームイーターを
「デウスエクス・ジュエルジグラット」ことドリームイーターちゃんの集団を召喚し、攻撃してもらうよ
この子達の「記憶を破壊する能力」で、その無駄に溜め込んだ知識を頭の中から削ぎ落としてあげるね
攻撃は【集団戦術/団体行動/連携攻撃/範囲攻撃/弾幕/切断/怪力/生命力吸収/魔力吸収/2回攻撃/鎧無視攻撃/属性攻撃/精神攻撃】で行うよ
敵のUCは【野生の勘/第六感/気配感知/オーラ防御/霊的防護/鉄壁/硬化/火炎耐性/激痛耐性/回復力】で対応するね
回避優先でいくよ
「まったく手こずらせてくれる……力が万全であれば、あなた達なんてすぐに始末して……!」
「……始末されるのはお前の方だよ、ライブラリアン」
怒りと焦りを含んだ『魔術司書ライブラリアン』の発言を、遮ったのはクローネだった。周囲の惨状の原因を前にして不機嫌さが極まったか、その表情は険しく、口調にも棘がある。あのデウスエクスは、この期に及んでまだ好き勝手が許される立場とでも思っているのか。
「お前の"下らない"興味心のせいで、地球の民が大勢死んだ。次はお前が、お前にとっての"下らない"理由で始末される番だよ」
「くっ……下らないですって? 定命の者が、この私を倒せるとでも思って……!」
過去からの因縁に決着を付けるため、クローネが一歩踏み出せば、たじろぐようにライブラリアンが一歩後ずさる。
十数年前の戦いにおいても、これほど追い詰められた事はなかった。この星に降り立って初めての"必死"の思いで、司書は魔術書を召喚しようとするが――。
「……さあ行って、ドリームイーターちゃん」
敵のユーベルコードが発動する前に、クローネは【ワタシのドリームイーターちゃん】を召喚。術者の快楽の記憶や夢を代償に現れたのは、黒い肌の女性型デウスエクス集団――コードネーム「デウスエクス・ジュエルジグラット」。モザイク化した自らの欠落を埋めるために、他者の心を抉り取る危険な種族だ。
「デウスエクスが、なぜ地球の味方を……ッ?!」
この者達は正確には"此方の世界"のデウスエクスとは違う。対価さえ頂けば異界の同胞に牙を剥くのも躊躇しない。
ドリームイーターの女達は一斉にライブラリアンに襲い掛かると、身体から出現させた鍵型の武器を突き刺す。それは彼女達の種族に共通する「心を抉る鍵」だった。
「なッ……今、なにをした……?! 私の中から、何かが消えて……!」
心を抉る鍵に物理的なダメージはほとんど無い。ただ標的のドリームエナジーを奪い取り、記憶を破壊するだけだ。
どんな記憶を失ったのか、当のライブラリアンには思い出すことさえできない。ただ、大事な何かを失った喪失感が胸の奥にあるだけだ。
「この子達の能力で、その無駄に溜め込んだ知識を頭の中から削ぎ落としてあげるね」
クローネが狙ったのはライブラリアンが魔術書から学んだ叡智。奴が蔵書の次に大事にしてきたそれを根こそぎ削除するつもりだ。デウスエクスは不滅であり、完全に滅ぼす手段はいまだ見つかっていない――だが蘇生したところで、記憶の欠損までは話が別だ。
「やめなさい! やめろ……これ以上、私の記憶を奪うなぁッ!」
自分が何を失いつつあるかを知ったライブラリアンは半狂乱になって叫ぶが、ドリームイーター達は攻撃の手を緩めない。同種族ゆえの連携の取れた集団戦法と、物理防御を無視する「心を抉る鍵」の弾幕で標的の記憶を切り刻む。この地球で、あるいは別の星で、長きに渡って蒐集してきた知識が、ページを破り捨てるように消えていく。
「少しは奪われる側の気持ちが分かった?」
「黙れぇッ!!」
残された記憶の中から彼女が召喚したのは【赤の書】。記録された炎の術式が、戦場に巨大な火柱と爆発を起こす。
だが、誰の目から見ても明らかなくらい、それは「最後の悪あがき」というやつだった。今更この程度の抵抗で、戦いの趨勢は覆らない。
「ドリームイーターちゃん、回避優先でいくよ」
反撃の気配を察知した時点で、クローネは仲間に後退の指示を出す。同時に自らの身体をオーラで包み、ナノマシンアーマーを硬化させることで、物理・霊的防御に加えて炎熱耐性を向上させた。熱気渦巻く戦場を潜り抜ける中でも、彼女の肌に火傷はほとんど無く、それも持ち前の回復力ですぐに再生する。
「悪あがきはこれで終わり? だったら、さよならだね」
「ま、待っ……――!!」
炎の勢いが弱まったところで、クローネ達は攻撃を再開。煙の中から放たれる魔鍵の嵐が、ライブラリアンの全身に突き刺さる。物理的な痛みよりもなお強烈な、心を抉られる衝撃――それが彼女に引導を渡す最後の一押しとなった。
「私の書が……叡智が……まだ、まだ、足りない、のに……」
最期まで無念を訴えながら『魔術司書ライブラリアン』は蔵書と共に消滅する。今度は封印ではない、討伐完了だ。
地下室に、そして廃村全体に満ちていた魔力が霧散していくのを感じ、猟兵達は十数年に渡る因縁が決着したことを確信した――。
――かくして猟兵達は封印デウスエクスの復活計画を阻止し、かつては成し遂げられなかった討伐すらも果たした。
宇宙からの侵略はいまだ激しさを増しているが、地球人類も立ち止まってなどいない。傷つきながらも戦力を整え、敵に対抗する術を身につけていると、この事件から改めて証明されたのだった。
大成功
🔵🔵🔵