アルカディーテ島でレッツ・冬リゾラバ!
●常夏だろうが寒いものは寒い季節
波が若干いつもよりしけている、アルカディーテ島。常夏の地帯に有する島ではあるが、流石の冬は寒さもやってくる。世間が真冬なら尚更だ。
だが、常夏なのでそこまで寒くない――ああやっぱりちょっと風が冷たい! そんなぐらいの時期に行われるのが冬リゾラバ。リゾラバと言えばリゾート地で恋人を作る事を指すのだが、オーシャンフロンティアに置いてはリゾート気分に浸って島ライフを満喫する事である!
「いやあ、この時期は流木も多いなあ! これで何か作れるんじゃねえかな」
晴空は開拓者の優茂と共に海沿いを見て回っていた。リゾラバと言えば漂着物。漂着物と言えば、瓶の中に怪しい液体が入っていて臭いを嗅ぐ順番をじゃんけんや釣果勝負で決める大会が開かれたり、水着が流れ着いたり、それもじゃんけんで着るという罰ゲームがあったり……今回流れ着いたのは、ブイとロープ。どこか遠くの島で漁業が行われていたのだろうか。
「クリスマスなんだから、クリスマスツリー作ろうぜ!」
「おっ、ええやんそれ!」
優茂も軽く承諾した。
「でも今開拓者は僕しかおらんし、人手が足らんなぁ」
「人手ガ、足リナイ? ナラ、腕ヲ貸シテヤル」
ミーグは《バイオミック・マルチアーム》の力で物理的に腕の数を増やし、流木や石を集めていく。
「助かるでホンマ!」
優茂は海の生物、ヒトデを取り出そうとしていた。ボケようとしていたのだろうか、『ひとで』だけに。
「え……クリスマスツリー?」
静かなさざ波の音を聞いていたゼノヴィアは、晴空達が何かしている事に気付いて飾りを共に探す事に。
「貝殻とか、可愛くなるんじゃないでしょうか……」
貝殻ならどんな形状でも、リースの材料になったり机の上に置く装飾として使えたり、万能である。
「何だか面白い事が始まってんじゃねぇか!」
美虎は創作意欲を求めにアルカディーテ島にやってきたつもりだったが、ツリーを作るのもやぶさかではないどころか、楽しそうなのでブイをペイントする事にした。
「白地に赤い水玉っていうのもアリだよな!」
もしかしたら、アルカディーテ島にも皇・美虎・彌生画伯が誕生するのかもしれない。
「貝殻……これ位じゃあまだ足りないでしょうか」
「どんどんペイントしていくから沢山持ってきてくれよっ」
ゼノヴィアが持って来た貝殻も赤い水玉にペイントしていく美虎。いよいよ本格的である。
「ほうら! モミの木はねえけど、でっかい流木持って来たぞ!」
晴空が浜辺にドスンと刺した流木を、あと2つほど追加で持って来て、組み合わせれば三角錐……ではなくクリスマスツリーの出来上がりだ。キャンプファイアも出来そうな形状である。
「大キイ、石、持ッテ来タゾ」
ミーグが持って来たそれは人間の目で見ると、大きい石というよりむしろ岩サイズだった。ツリーの土台として充分優秀に役目を果たしてくれる事だろう。ミーグは大きい石を運び終えると、晩ご飯、いやクリスマスディナーと言った方が格好いいだろうか。それら海産物を獲りに海へと潜った。
「あ、フジツボ……」
軟体を活かしてゼノヴィアが貝殻を探していると、小さな群れと出会った。食事にもなるし生きた飾りとして流木にくっつけるという事も出来なくはない。まとめて持ち帰ると、美虎が赤く染まった筆を持って待機していた。
「フジツボも赤く塗れねぇ事は――」
「いえ、この子達は半分食用にしようかと……」
「じゃあこっちの半分は赤く塗ってやるよ!」
「(どうしたのでしょうか、何故赤色に拘りが……?)」
それも赤い水玉である。やはり、|何者か《KUSAMA》の意志が宿ったのだろうか。
そして、ゼノヴィアは先程優茂がチラリと見せていたという物にヒントを得た。そう、『ヒトデが足りない』のである。
「潜りましょう」
ヒトデがてっぺんにくっつけば、クリスマスツリーとしては完璧なのではと思い立ち、ミーグが既に居る海域へと入っていく。
「オ、一緒ニ晩飯、探スカ?」
「そうですね、|晩ご飯《ディナー》の分も確保しておかないと」
二人で仕留めると効率も上がる。漁獲量も上がる。勿論ゼノヴィアはヒトデも忘れずにそっと捕まえていった。
●リゾラバ職人の夜は早い
そして、櫓めいたクリスマスツリーも完成した夜。
「見てみろっ!」
ゼノヴィアが捕まえて来たヒトデが、何とピカピカと光っている。ブイも光っていて、本物のクリスマスツリーのようだ。
「もしかして、あの白色の塗料って……蛍光塗料だったのか!?」
晴空が問うと、美虎はふふんと鼻をならした。白色に塗ってから赤い水玉をただ塗っていただけではなかった。
「いや――塗料全部が蛍光塗料だぜぃ!」
フジツボも光る。まるでホタルがツリーに群れているかのようだった。なお、この蛍光塗料は生き物に塗っても安全で食べられる素材である。
「素敵やん……漂着したステッキでも拾っておけば良かったわ」
優茂の洒落は全員がスルーしつつ。
「いやそこはスルーせんでもええやん!?」
「ジャア、敢エテ言ウガ、今日ステッキハ、漂着シテナカッタ」
「冷静に返さんでもええやん!?」
皆の笑い声と共に、焚いた焚き火の揺らめきが大きくなる。
「さて、焼こうか! おいらもそこら辺の岩場から色々調達してきたぜ!」
「私はカニを一匹……一杯でしょうか?」
「オレ、タコ、大漁ダッタ」
「いいねぇいいねぇ! どんどん湯がいたり焼いたりして食べちまうか!」
鉄網の上で踊る海産物達。
「タコ……赤くなってきましたね」
ゼノヴィアはタコをじーっと見つめていた。
「晴空くんが採って来た貝類はな、醤油が合うねん」
と言って調味料セットを持ってくる優茂。
「……調味料、普通にあるんだな?」
「そら開拓者の数も多いし、全部手作りは無理やわ」
例えるならキャストとADが本家の数倍――いや、これ以上はよしておこう。貝がジュクジュク言い始めた所で、醤油を垂らす。ジュワァと広がる香ばしい匂いと音のハーモニー。
「いいねぇ、芸術だねぇ……!」
これもまた芸術。草間・皇・美虎先生は、踊る赤いタコでまた一つ作品が思い浮かびそうだ。
「それじゃあ、乾杯するか! かんぱーいっ!」
「カンパイ!」
「乾杯……!」
「おうっ! 乾杯っ!」
※ピンポン♪(注意の効果音) 優茂とミーグ以外はこどもビールリンゴ味を飲んでいます。未成年の飲酒ダメ、絶対――。
「いやあ、冬の星空なだけあって綺麗だな!」
晴空が空を見上げる。
「見た事の無い星座が沢山ありますね……待って下さい本当に見た事が無い星座だらけなんですけど……」
「ココ、アース系列ジャ、無イノカ?」
「あたいてっきりずっとそうだと思ってたけど、ここってグリードオーシャンの一部じゃないのかい?」
「ふっ、正解はやな……どっちも違うで!」
優茂の顔に集中線が入った。
「答えになってねぇよ! 教えてくれよぉ!」
「オレ、凄ク、気ニナル」
「そうですね……秘匿情報にしておくっていうのも、勿体ない気がします……」
「どうなんだ優茂さん! 教えてくれるのかくれないのか!?」
押される優茂は、分かった分かったと手で押し返した。
「せやったら言うわ。ここはな、オーシャンフロンティア系列やで――」
「ア、コノ貝モウ焼ケテル、食ウカ」
「そうですね……頂きます」
何故かしれっと無視された優茂であった。
「何やの折角教えてあげたのに……フリなんか? もしかして押すなよみたいなフリなんか!?」
そして、冬の流れ星がキラリと流れている事には誰も気付かずに、皆でホットなメリークリスマスを楽しんだのであった。
●〆に入る頃
「あ、飛行機!」
美虎が空を指差す。動く星のような物が一体。
「え? オーシャンフロンティアの世界に飛行機なんて飛んどらんで?」
「……え?」
「流れ星やろ~きっと」
「横ニ、動イテイル、気ガスルゾ?」
明るい浜辺のアルカディーテ島を観察している未知の飛行物体が一機、紛れ込んでいた事を優茂達が知る事になったかは、神のみぞ知る――。
「横に動いているって、飛行機やなかったらUFOやないかそれ!」
「め、メリークリスマース!!」
「……まあ、メリークリスマスっちゅう事で!」
母星に帰った飛行物体は、後に『リゾ・ラバ・イイ・ナ』と言ったとか言わないとか――まあ、リゾラバとは一切関係ないのでこの話はここまでである。
「このツリー、どうするんだ? 優茂さん」
「せやな~、記念に残しとこか! せっかくの草間・美虎・彌生先生の作品やしな」
「誰の事だぁそりゃ?」
「残スノ、オレ、賛成」
「そうですね……記念に残しておいてもいいと思います」
こうして、アルカディーテ島にまた一つ名所が増えたのであった。
★流木クリスマスツリーが完成しました!
★UFOに関しては一切不明です。……何だったんでしょうね?
成功
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