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夜闇、狂乱、転じて呪詛となる

#ダークセイヴァー #戦後

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#ダークセイヴァー
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#戦後


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「皆さん、聞いてください。」

 希雪(呪いの克服者・f41587)は集まった猟兵の前で、いつもの調子を崩すことなく話し始める。
 しかし、その内容は、小柄な少女から発せられたものとは思い難い内容で…尤も、それはいつものことではあるのだが。

「事件を予知しました。場所は、ダークセイヴァーの小さな村です。」
 予知した光景を、鮮明に脳内で思い起こそうと目を閉じて、続きを話し始める。

「暗い、暗い風景。暗闇の荒野の中にある寂れた村…、そこで、叫び声と破壊音が響き、血の匂いが漂うのです。」

「その犯人は、オブリビオン・フォーミュラが討伐された後も、その場で支配者然としながら生き延びた残党の1人。その手先の獣達です。」
 希雪の表情に変化はない。あるいは、人の感情を読み取ることに長けた者なら、心が多少揺れ動いているのに気づける程度か。

「助けて 痛い どうして …そう何度も何度も叫び声を上げながら、その度に血の匂いはどんどん強くなっていく…獣達には、自我はあっても理性はない。ただ上位存在の命令を聞き、それ以外だと本能のままに生きる。」

「現場を見ると、すでに事切れた村人の死体が極端に少なかった。そして、屍肉を貪る獣達の姿がありました。」
 彼らは、拷問を受け、死体となった後にも、解放を許されなかった。

 希雪の声に少し震えが混じり始めた。

「予知内容を思い起こし、それを口にすることも…とても大切なことだとわかっています。わかっていますが…」

 希雪は絞り出すように、言った。それは、普段の希雪を見ていても、初めて見せたようなとても弱々しい声で……、
「見てしまったからには、私自身の手で救ってあげたい。そう考えてしまうことは…いけないことなのでしょうか…!」

 希雪はわかっている。このことはどれだけ乞い願ったとしても実現する可能性は0%であるということを。

「…っ、すみません。忘れてください。」
「続きを話します。」

 一見すると、表情や声質は最初から変わっていない。しかし…その心にかかる負荷は大きい。
「獣達は、ただの雑魚という訳ではありません。単純な戦闘能力だけを見れば、猟兵にも引けを取らない力を持ちます…。」

「ですが、彼らの知能は低い。それに、最初の接敵では彼らは猟兵の存在に気づかない。油断の隙をつくことができるなら、いくらでもやりようはあるはずです。可能ならば、できるだけ多くの生存者を救ってあげてください。」

 希雪が大きく深呼吸する。先ほどのような直接事件とは関係ない話を挟むのではなく、1段落ついて、その続きを話し始めるための間。

「獣達を全員倒すことができたら、1人のヴァンパイアが現れます。事の顛末を全て見ていたのでしょう。不意打ちなどは無いものの、すぐに戦闘になります。」

「彼女の名前は、イナンナ・アスタルテ。剣、弓、魔法、呪詛を状況に応じて使い分けてくる、まさしく強敵です。」

 希雪の声のトーンが一段落ちる。

「彼女は息を殺し隠れて住まうダークセイヴァーの住民方を殺す、この行為を娯楽として楽しんでいる…時には苦痛の中で殺し、時には希望を見せて同族殺しを唆す。そんな存在です。」

「そんな冒涜的とまでも言える所業を行う彼女ですが、先ほども話した通り、戦闘能力が非常に高い。討伐は困難を極めるでしょう…」

 希雪の目がうっすらと開かれる。ここで予知は終了のようだ。

「私が参加できないのが非常に残念でなりませんが…、仕事は仕事。案内も、後方支援も、怠る事なく行いますので安心してください。」

「その代わり…、託します、私の想いを。」

 最後に希雪が見せた表情は、若干の微笑みだった。
「敵を倒し、ダークセイヴァーの住民方を救い、絶対に、生きて帰ってきてくださいね。」

 希雪が皆に背を向けて、両腕を開く。そこには真っ白な霧にが発生し、その中に黒が見える。

「門を開きました。行き先はダークセイヴァー。では、ご武運を…」


カスミ
 シナリオ一作目です!
 マスター試験に合格したばかりで、過去作の経験もないのでどうか温かい目で見てやってください。

 このシナリオは、短くまとめると「ダークセイヴァーの小村を襲う怪物を倒し、その親玉のオブリビオンも倒そう!」といったシナリオとなっております。

●第一章
 村を襲う怪物を倒してください!幸いにも向こうは猟兵の存在に気づいていません。奇襲なり不意打ちなりお好きにどうぞ!
 村人を助けるとプレイングにボーナスがあります。

●第二章
 怪物の親玉であるヴァンパイアを倒してください!多彩な攻撃を繰り出してきますが、それはこちらも同じこと。邪悪な敵を倒して気分よくクリアといきましょう!

●期間限定ルール
 戦後シナリオと並行して、闇の救済者戦争の⑱『ケルベロス・フェノメノン』で入手した小剣グラディウスの研究が進められています。この研究の進行度は、ダークセイヴァー戦後シナリオの成功本数に比例します。
 お持ちの方はぜひご参加を!
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第1章 集団戦 『暗闇の獣』

POW   :    魔獣の一撃
単純で重い【血塗られた爪】の一撃を叩きつける。直撃地点の周辺地形は破壊される。
SPD   :    暗闇の咆哮
【血に餓えた叫び】を放ち、自身からレベルm半径内の全員を高威力で無差別攻撃する。
WIZ   :    見えざる狩猟者
自身と自身の装備、【自身と接触している】対象1体が透明になる。ただし解除するまで毎秒疲労する。物音や体温は消せない。

イラスト:飴屋

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

ブラミエ・トゥカーズ
逃げた吸血鬼が行く先で暴威を振るう。
それを否定する気はないが、人が減っては余の腹が空くのでな。
人間たちよ、余が助けてやろう。

襲われる村人達と獣の前に堂々と現れる
吸血鬼であることは隠さない
盾になってバラバラになる

ばら撒かれる体からの血液を媒介にUC使用
村人に感染
村人をUDCアースの御伽噺由来の吸血鬼にする
日光はない
獣に御伽噺の吸血鬼を退治するために必要な人の知恵はない

短い間であるが貴公等は余と同じ不死身となった。
今のうちに逃げるがよい。
霧化による物理無効、野犬由来の超聴覚、蝙蝠由来の音波による暗視
ついでに感染した獣がいたら同士討ちをさせておく

病も薬も使い様とは言ったものであるな。



夜闇に支配された世界の中で、悲鳴と肉が潰れる音が響く小村の前で、トゥカーズは少し不満げな表情をしながら堂々と村の中へ歩みを進める。

逃げた吸血鬼が行く先で暴威を振るう…それを否定する気はないが、人が減っては腹が空く。
ゆえに…人間たちよ、余が助けてやろう。

ちょうど、近くにいた村人の集団に声をかける。
「貴公等に滅亡されるのは少し気に食わないのでな。余が助けてやろう。」

「あ、あなたは…」
そういって、かすかな希望に振り向いた村人達。しかしその顔が見る見るうちに恐怖に歪んでいく。

「き、吸血鬼…!だめだ、俺…死…?」
「うわあああ、おしまいだああ!」
やがてその感情は絶望に染まり…、しかし予想される結末に至ることはなかった。

グルアアアア!!
暗闇の獣の一体が、村人の一人にその強大で凶悪な爪を振り下ろした。

散る血飛沫、舞う肉片。しかしそれは村人のものではなく____
村人を庇い攻撃を喰らったトゥカーズは、ニヤリと嗤う。それは暗闇の獣に気づかれることはなかった。
血の雨は村人全員に降り掛かり、暗闇の獣は次の標的に狙いを定める。

だが___

そこには肉片となったはずのトゥカーズが立っていた。
トゥカーズは、村人たちへ向かって、凛としたよく通る声で語りかける
「短い間であるが貴公等は余と同じ不死身となった。今のうちに逃げるがよい。」

目の前には、村人が霧と化し、再生し、暗闇の獣が咆哮を上げかつての同胞に攻撃を繰り返す。
この暗闇に染まる世界に日光はない。御伽噺の吸血鬼を制する人の知恵は獣が持つはずもなく…
狂乱の舞台と化した小村を眺め、満足げに目を閉じる。

「病も薬も使い様、とはよく言ったものであるな。」

大成功 🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
アドリブ歓迎

ダークセイヴァーにおいて死は近く、そして安寧ではない……
事件を知ってしまったから放ってはおけません……!
ラクスくん、ブリキザメさん、行きましょう!

UCの渦巻く風を纏い、悲鳴のあった方へ飛んでいきます
加速の勢いで戦斧を振るい、目的の暗闇の獣を起点に、村人さんとの彼我の距離が出来るように、他の敵を薙ぎ払うが如くの衝撃波を放ちます

大丈夫ですか!? 動けますでしょうか……!
と、村人さんに声を掛けますね
動けなさそうだったらブリキザメさんに救助活動してもらいます
私はラクスくんに騎乗して機動力を確保
戦斧の斬撃とともに風圧を広範に渡らせ、
咆哮をあげそうな獣を阻害・攻撃していきますね



ダークセイヴァーの寂れた村の前で、1人のケットシーはその決意を固める。

「ダークセイヴァーにおいて死は近く、そして安寧ではない……」

そう。ここではたとえ死んだとしても、輪廻に帰る事は出来ない。
その魂は再び肉体を得て魂人へと成るだけ。

「事件を知ってしまったからには放ってはおけません……!」

その傍には|白き幻獣《ラスク》と|機械の鮫《ブリキザメ》。主人の呼びかけによって行動を開始する。


──村の中から大きな悲鳴が聞こえた。

「行きましょう!のんびりしている暇は無いようです…!」

ケットシーのイロハはその身に渦巻く風を纏い、悲鳴があった場所へ1秒でも早く到達するようにと大地を蹴る。
それに追従するように白き幻獣と機械の鮫が続く。
その3名は小村を駆け抜ける風となって──、発見する。

村人1人が、数体の‘暗闇の獣‘に襲われている。
体からは既に相当量の血が溢れ出しており、意識を保つのもやっと、という状態だった。

「村人さんから、離れてください!!」
渦巻く風の勢いが乗った戦斧を一閃、ヒュンという空気を切り裂く音と共に、発生する衝撃波と、何より完全な不意打ちによって、何も無い空間が生まれる。

暗闇の獣は、まだ動けない。
自我が薄く知恵が弱いため、突発的な緊急事態に弱いから。そして、目の前の可愛らしいケットシーの危険度の片鱗を本能で理解して。

一方、イロハは間一髪で救った村人に声をかける。

「村人さん!、大丈夫ですか!? 動けますでしょうか……!」

「助かった…のか? はっ、すまねぇが、俺は動けない。足をやられているからな。」
「悪いが、死ぬまでに少し猶予ができただけだ。俺なんてどうでもいい、その辺に…捨てといてくれ。」

「良い訳ないでしょう!…まだ、諦めないでくださいよ…!私が必ず、救いきって見せますから。」
「ブリキザメさん、この方を守ってください。余裕がありそうなら他の型の救助も!」
「ラスクくんは私と!…全部倒して、全員守ります!」

イロハはラスクに騎乗し、冷静な眼で戦場を把握する。

「村人さんのためにも、あの厄介な咆哮は出させないようにしましょう!」

大振りで戦斧を薙ぎ、発生する斬撃のような風圧で咆哮を上げる隙すら与えない。
ラスクが立ち位置を調整し、攻撃も相まって獣は近づくことすらできない。
当たれば甚大な被害を出すその爪も、当たる範囲に近づけないのなら意味がない。

一方的な狩り。近くにいた最後の暗闇の獣が断末魔を上げる。

「これで…見える範囲は助けられたでしょうか…他の場所にも村人さんがいるかもしれませんね。急がないと。」

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・イングラム
村人の保護は他の方々にお任せいたします。
私はあの残虐な魔獣達を骸の海へと還しましょう。

剣を構え、《光還》の力を籠めます。
敵の集団に対し、UCによる【斬撃波】を放ち、先制します。
続いて《光翼》を展開。
敵が混乱しているうちに距離を詰め、近距離からの【斬撃波】で確実に斬り払っていきます。

敵の攻撃の主体は、あの爪と咆哮。
爪の間合いに入らないように飛翔し、【斬撃波】で攻撃します。
咆哮は《光還》の力を籠めた剣で切り裂き、余波は《光界》で防ぎます。

希雪さんが予知した未来、貴方達が齎す惨劇。
そのようなものは私達が覆してみせます。

一匹たりとも逃しはしません。
元凶たる吸血鬼が現れる前に全てを片付けましょう。



イングリット(教団の使徒・f35779)は猟兵によって半ば救われつつある小村を見渡して、あることに気づく。

「他の方は村人達の救助に重きを置いていますね…そのせいか、敵があまり減っていない。」

そう。村人の救助を優先するために、大規模な攻撃や防衛を無視した戦いをしている猟兵がいないのだ。
それは魔獣の撃破を遅れさせ、戦闘が長引く原因となっている。

「ならば…いっそのこと村人の保護は他の方達にお任せしましょう。」

剣を構え、《光還》の力を籠める。
淡い光のようなものが刀身を覆っていき、神々しくも思える輝きを放つ。

「私は、あの残虐な魔獣達を一匹残さず骸の海へと還します。」

小さく息を吐き、同時に敵の集団に向けて剣を振り払う。
その軌跡は光の線となって目に焼き付ける。
直後、運悪く剣を振った直線上にいた1体の獣が両断され、崩壊した。

獣たちはその奇襲に対し、何処だ?誰だ?と周囲を見回している。
だが、攻撃方向の見当もつけず、ましてや見ることに集中し隙を晒してしまっているようでは──

最速で距離を詰める。
状況に混乱している今なら、安全かつ効率的に何体かは斬れるだろう。
残光を輝かせ、光を纏う剣を振る。

また1体、崩れ落ちた。
そこで初めて獣たちは自分たちの敵を認識した。
確実に両断するために接近していたところを目撃できたからだ。

だが、連携などあったものではない獣達の無謀にも思える攻撃は空を裂き、咆哮は斬り払われ、体に纏う光のオーラに打ち消される。
自慢の攻撃手段が通じない。

イングリットの攻撃は彼らにとって『天敵』だ。
オブリビオンとしての力を持つ獣達には、その光は触れるだけでもダメージを受ける。
ましてや、斬られようものなら──

獣が崩れ落ちるペースが上がる。
戦場を舞うイングリットはあまりにも素早く、獣達には残光の帯を追うことしかできない。

──戦場に、凛とした声が響く。

「希雪さんが予知した未来、貴方達が齎す惨劇。
そのようなものは、私たちが覆してみせます。」

一匹たりとも逃しはしない。そう決意を強めて1体、また1体と斬り裂いていく。
もう既に、残りの獣は数が少ない。死体すらも残さず崩壊させている以上、イレギュラーが起こる確率も少ない。
取り合えず、今の自分たちに、そして村人達に差し迫った脅威を取り除くことはできそうだ。

だが、イングリットはこれが前座に過ぎないと知っている。
この惨劇の元凶たるオブリビオン…吸血鬼が現れる前に全てを片付けなければ、次の戦いはより厳しいものになる。

「貴方で、最後です。」

獣の群れの、最後の1体が消滅した。

その時、村の中から強い気配を感じる──

大成功 🔵​🔵​🔵​

七瀬・夏希
確かにこの世界の戦争からまだ1年経っていないものね
自分の立場もわきまえず、好き勝手に暴れているヴァンパイアがいるのも仕方がないわね
まぁ、陰に隠れてやられるよりはまし
きっちり骸の海に還してあげるわ

吸血鬼が見ているって話だったわね
なら、全てを見せるわけにはいかないか

強化された知覚をもって、戦場の状況を把握し、敵と村人の位置を把握
敵がこちらに気付く前に、光子拳銃でその頭蓋を撃ち抜いていく

さぁ、派手に光らせているんだから、こっちに向かって来なさい
もっとも、その爪が私に届く前に全部撃ち抜くけど

そのまま村人に突進するような奴がいたら……仕方がない
銃で撃ち抜いた後、念動力でその図体を吹き飛ばすわ



ボロボロな小村を眺めながら、七瀬(SWAT隊員・f29827)は静かに呟く。

「確かに、この世界の戦争からまだ1年経っていないものね。」

村を蹂躙する獣を眺めるその眼光は深く、冷たく。

「自分の立場もわきまえず、好き勝手に暴れているヴァンパイアがいるのも仕方がないわね。」

懐から、この世界に似つかわしくない、近代的な拳銃を取り出して、構える。

「まぁ、影に隠れてやられるよりはまし。きっちり骸の海に還してあげるわ。」

希雪の予知ではこの小村を見ている吸血鬼がいるらしい。
しかし、強化された知覚を以て気配を探ってみても、一向に見当たらない。

グリモア猟兵の予知は、“猟兵の介入無しではほぼ確定した未来”だ。
未来を切り開く力を持つ猟兵にしか、変える事は出来ない
猟兵の介入によって逃げたか…それとも、探しても見当たらないくらい巧妙に隠れているのか──

「吸血鬼が見ているって話だったわね…なら、全てを見せるわけにはいかないか。」

先ほどの探知により戦場の情報は粗方脳に入っている。
危険度の高い獣、村人を襲っている獣を狙い、拳銃から放たれる光り輝く光子の銃弾で撃ち抜いていく。

|闇に染まったこの世界《ダークセイヴァー》で光を放つ事は、普通はあまり推奨されるものではない。
光が届く場所にいる者全てに場所が筒抜けになるからだ。

しかし、それを利用することもできる──

「さぁ、派手に光らせているんだから、こっちに向かって来なさい。」

光を見た獣は、新たな獲物を発見したと言わんばかりに群がってくる。|この世界の強者《ヴァンパイア》は光など使わない。光を使うのは貧弱な人間共だけだから。

だから、あからさまな誘導にも引っかかる。

「もっとも…その爪が私に届く前に全部撃ち抜くけど。」

終始冷静に、寸分狂わぬ銃撃。
戦場を舞うような派手さはないが、効率的に、次々と敵を屠っていく。

しばらくすると、獣が群がってこなくなった。
小村には未だに生存を続ける獣など存在しないということの証明だ。


狩り残しがいないか、探知に集中して精度を上げる。

──1つ、異質な反応を発見する。それは先ほどまでは無かったモノ。

「この反応が、予知にあった吸血鬼ね。」

最大限の警戒をしつつ、急いでその場所へ向かう。
見つからないように最大限の隠密行動と、強化された知覚能力を以て。

見上げる視線の先。

「へぇ、アレが──」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『呪氷の災姫』イナンナ・アスタルテ』

POW   :    荒れ狂う忘却の大蛇(リスィ・ウロボロス)
【魔煌弓で射た、呪詛刻む黒き吹雪纏う呪氷剣】を巨大化し、自身からレベルm半径内の敵全員を攻撃する。敵味方の区別をしないなら3回攻撃できる。
SPD   :    甘い誘惑と呪詛痕(スウィート・カース)
【一瞬でもときめき】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【禍々しい形状のハート】から、高命中力の【下僕化を促す呪詛痕】を飛ばす。
WIZ   :    愛しき下僕達(ディア・マイ・サーヴァント)
召喚したレベル×1体の【呪詛痕刻まれた人型オブリビオン】に【黒き翼と魔導蒸気銃剣】を生やす事で、あらゆる環境での飛翔能力と戦闘能力を与える。

イラスト:山本 流

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は薙沢・歌織です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


小村の中にあるボロボロの家。雨風を凌げたらそれでいいと言わんばかりのその屋根の上に、ソレは優雅に立っていた。

「あぁ、私の可愛い下僕達がみんな殺されちゃったわね。」

言葉とは裏腹に、その口調からは悲しんでいるそぶりなど感じられない。

「六番目の猟兵達…面倒だわ。」

その言葉にも、心はこもっていない。

「でも、面倒はここで終わらせてしまいたいわね。」

少しだけ、その言葉が鋭く、冷たくなった気がした。
イナンナの体がふわりと舞い、ボロボロの屋根から降りてくる。
トン、と降り立った場所がパキパキと音を立てて凍っていく。

「私はイナンナ・アスタルテ。ここの支配者よ。」

なんてことないただの自己紹介。しかしその場の雰囲気は氷のように冷たく、動かない。

「構えなさい、猟兵。」

静寂が訪れる。
嵐の前の静けさ、そう形容するのが相応しいだろうか。

その静寂を破ったのはイナンナだった。

「来ないのかしら?では、こちらから行くわ!」

戦闘が、始まった。
ブラミエ・トゥカーズ
ヒトでない分際でせっかちであるな。
吸血鬼であるならもう少し余裕を持たぬか。
そのようなボロ小屋の支配者であれば仕方ないかもしれぬがな。
腹が減っておるならこれでも飲むか?

自分が飲んでいる輸血パックを渡しながら
矢を特に回避はしない
無意味な攻撃をする敵にときめくかもしれない
吸血鬼同士なので人に対する物と比較するとかなり薄い
呪詛痕ができたらその部分を自身の剣でえぐり捨てる
えぐり捨てた部分を蝙蝠か狼に変身させ自身で殺して血霧とし敵を包囲する
相手を挑発しつつ自身の体を蝙蝠、狼、霧に分散させ相手の内部に浸透、血液を汚染する

貴公の矢は余を貫けるかな?

高命中を逆手取り体内に侵入した自身《病原菌》を狙わせる



堂々と現れた|吸血鬼《イナンナ》に、トゥカーズも堂々と歩み出る。
「ヒトでない分際でせっかちであるな。」

それを見て、若干不快そうな表情を浮かべて言葉を返す。
「何?それは私に言っているのかしら?」

「あぁ。吸血鬼であるならもう少し余裕を持たぬか。」

「貴方は…吸血鬼のようで…知らない匂いがするわ。それに、猟兵特有の不快な匂い。もう勘付かれてしまったのね、不快だわ」

敵を煽り、冷静な観察眼を曇らせ、情報であった多彩な戦闘スタイルを狭めることができたら上々と、さらに言葉を重ねていく。
「そのようなボロ小屋の支配者であれば仕方ないかも知れぬがな。」

相手を煽り、冷静さを欠かせるための一言。そんなことはわかっている。
しかしそれは支配者としての位とプライドを持つイナンナにとっては許せない発言で。
「それは本気で言ってるのかしら?こんなボロボロの小屋ですらない何かに、私が?」

ピリピリとした不穏な気配が漂っている。

「私が自分の館からわざわざこんな辺鄙な村までやって来てあげたんだから、甘美な叫び声を響かせるのは必然。それがここでの弱者の務め。それをお前たちは邪魔をしたの。命を持って償ってもらうわよ!」

ついに、声を抑えることもできなくなった。対してトゥカーズは余裕そうな表情で、飲みかけの輸血パックを投げ渡す。

「フッ…腹が減っておるならこれでも飲むか?」

とうとう、限界が来たようだ。

「お前は絶対に、楽には殺さない!!」
「残念だが、それは不可能だ。」

投げられた輸血パックを踏み潰すイナンナと、終始冷静に煽り続けるトゥカーズ。
一触即発、なんて形容するにも生易しい。

放たれる矢が奏でる風切音が、戦闘の火蓋を切る合図となった。

トゥカーズは矢を回避しない。物理的なダメージをいくら喰らっても、その存在には影響しない。
この世界の吸血鬼とは、また別の摂理で生きる吸血鬼。

だが、冷静さを欠いたイナンナには自分の攻撃が無意味であると気づかない。回避できなかったのではなく回避しなかったのだということを。

「ははははは!!痛いでしょう?辛いでしょう?私の矢に反応もできないなんてねぇ!さっきまでの余裕はどうしたのかしら?ははははは!!」


自分の攻撃が無意味であることにすら気づかずに攻撃を繰り返すイナンナを見て、トゥカーズはまた別のことを考えていた。
ボールを投げたら取って戻ってくる犬のように、無意味なことを全力で繰り返すイナンナを、少し愛おしく思えるようになった。

笑えてくるな。
そもそも吸血鬼同士なのだから、人に対する物と比較してかなり薄い思いであるのだが。
それでも、一瞬だけそのように思ったのは事実だ。

トゥカーズが痛そうな顔をしないことに、全くダメージを負った様子がないことに、疑問を覚え始めたイナンナは、トゥカーズの心に僅かなときめきの心が芽生えたことに気づけた。
「気でも触れたのかしら?苦しんで殺すには、ちょうどいいけど。」

禍々しい形状のハートから自動で相手を追尾する呪詛が飛んでくる。
回避はしない。右手の甲に呪詛痕が刻まれる。

そして、呪詛痕が刻まれた右手を迷いなく斬り落とした。

「これがここの支配者の力か?やはり、たいしたことはないな。」

イナンナはもうその挑発に言葉を返すことはない。

「では、そろそろ余からいくとしよう。」

周囲に散ったトゥカーズの血と肉片。
それらが急速に形を為してイナンナに襲いかかる。
それは蝙蝠の姿で、イナンナに群がり噛み付く。
それは狼の姿で、イナンナの血肉を食い破る。
それは霧の姿で、イナンナに纏わりつき体内に侵入する。

足りない場所は自分で自分を殺しながら補う。
イナンナの体内に急速に|トゥカーズ《病原菌》が根を張っていく。

「貴公の矢は余を貫けるかな?」

もうそこには人の姿をしているトゥカーズはおらず、本質たる病原菌が蔓延しているだけ。
もはや何をしようが、この状況を捲ることは不可能。

「何これ、苦しい…痛い…身体中がどうしようもなく…!」

イナンナは血を吐き、よろめく。
実際のところ、この世界に住む吸血鬼の生命力を削りきり、撃破するにはまだ足りない。
しかしダメージとそれに付随する危機の実感はイナンナの動きを狂わせる。

ようやく自身の勘違いに気づいたようだ。
だが、もう遅い。
全てはトゥカーズの思惑通りに進む。
攻撃を放ってもトゥカーズには効果がない。
追尾弾に至っては自分の中に蔓延る病原菌を追尾し自傷の可能性すらある。
勝ちの可能性はもうすでに閉じつつある。

「さて、貴公はここからどうするのか?」

霧の中から声だけが響く──

大成功 🔵​🔵​🔵​

七瀬・夏希
あれがイナンナ・アスタルテ――

少し見くびっていたわ
魔獣を全滅させた私達のことを「面倒」としか思わない
それだけの実力は持っているってわけね

と思っていたけど、こっちにも凄い|猟兵《人》がいたようね
追撃のチャンス、逃しはしないわ

右手に光子拳銃を、左手に光子剣を構える
敵の一挙手一投足を見極め、拳銃で攻撃
光子剣で呪氷剣の攻撃を逸らす

これはもちろん囮
念動力で力場拳銃と力場剣を操り、光拳銃の攻撃に合わせて死角から見えない攻撃を行う

どうやらあの人みたいに武器が効かないなんてことはないようね
なら、圧倒的火力をぶつけてあげるわ

二丁の拳銃と二振りの剣を操りつつ、ライフルを準備
さぁ、吹き飛びなさい



「あれがイナンナ・アスタルテ──」

情報にあった、多様な武器を扱い、呪術と氷を意のままに操るヴァンパイア。
知っていた。知ってはいたのだが、実際に見て、言葉を聞くとその脅威度が肌で感じられる。

少し、見くびっていたわ。
アレは、魔獣を全滅させた私達のことを、「面倒」としか思っていない──
それが君主として長く君臨した驕りからくるものならばいいのだけれど…そうでないなら…

その身に纏う冷たい雰囲気、暗く深い悍ましき気配。

それだけの実力を持っているってわけね。

だが、七瀬がイナンナのところに辿り着いた頃には既に、一つの戦いが始まっていた。
驚くべきことに、強力無比なイナンナを手玉に取り、戦闘を有利に進めている。
決定的な一撃こそ与えることができていないものの、おそらく何らかの毒によって少しづつイナンナを蝕んでいる。

「こっちにも、凄い|猟兵《人》がいたようね。」

イナンナに発生する致命的な隙。現状を正しく理解してしまう前に、対処されてしまう前に──

「追撃のチャンス、逃しはしないわ。」

この戦場には、安全な場所などない。
敵の攻撃を正確に見切らなければ、この状態ですら死者が出かねない。
ならば──戦闘スタイルを変える。
今まで隠していた、本来の戦闘スタイルへ。

右手に光子拳銃を。
左手に光子剣を。

少々歪にすら思える選択だが、これが最適化された独自のスタイルなのだ──
異なる二の武器種を構えるその姿は、息を呑むほど美しい。

集中──

敵の動きを見極める。どんな細かな動きでも、どんなに短い隙だとしても、見逃さないように。

ほんの僅かな隙に撃ち込まれた光子の弾丸は的確に命中する。それは一度だけに留まることはなく、2発目、3発目、と音もなく撃ち込まれる弾丸は、それでも何発か対処されてしまう。

放たれる威力の高い呪氷剣の連撃は、左手に持つ剣と、体捌きのみで対処する。
剣を横に薙ぎ、ステップを踏み、身を屈めて、跳躍し──
その動きはまるで演舞のように美しく、しかして攻撃を阻害することはない。


しかし、この一連の攻防すら囮なのだ。
本来の狙いは、視覚外からの力場拳銃と力場剣によるさらなる牽制。そして、その後につながる超火力のライフル──

念動力で操る力場の拳銃、力場の剣は死角からの攻撃でイナンナに対処を迫らせる。
光子拳銃、光子剣の攻撃も継続しつつ、合間を縫い隙を埋める攻撃。
複数のマリオネットを同時に操るような、ワンマンアーミーとも言える包囲射撃。

この攻撃は何?攻撃の出どころは?一体誰が、どうやったら対処できる?

イナンナは対処を、思考を、優先した。優先してしまった。
それは大抵の場合で正しい選択と言えるだろうが…
この戦場に於いては、敵に準備の余裕を与える。

その手に握られるは黒塗りのライフル。
それは、重力制御により圧倒的な質量攻撃を可能にする、手持ちの中では単発火力が最も高いモノ。
流麗な動作で照準を定め──

「さぁ、吹き飛びなさい。」

イナンナはそれを見る。しかし、回避は間に合わない。

戦場の喧騒を引き裂く銃声が轟き響く──


イナンナの左腕が宙を舞う。
咄嗟に身を捩ったことにより致命傷は避けられた。
だが、片腕がなければ攻撃の多彩さはある程度失われることになる。

まだ、油断はできないが──戦闘を大きく動かす一撃を叩き込んだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

冬原・イロハ
面倒と言われちゃいました……
懸命に生きる人にとっては、あなたの方がそういう存在となるのですよ
ですがそう言えるだけの実力者ということ
ラクスくん、油断なく行きましょう!

ラクスくんに騎乗して高く高く翔けます!
イナンナさんの真上を目指して
そこから急降下
真正面から勝負しましょう
吹雪纏う呪氷剣が放たれたらラクスくんの動きに合わせて戦斧を振るいます
呪氷剣を叩く瞬間にUCを
流星の如き、重力の属性のドラゴンを放ちます
吹雪を散らし、巨大化したぶんの呪氷剣を砕き
ドラゴンがそのまま真っ直ぐイナンナさんへと追撃できるように



ラクスと呼ばれた白い幻獣に乗り、現れたヴァンパイアの元に飛翔する。
その蒼い瞳は油断なく戦場に向けられており、ヴァンパイアの動きを見逃さない。

「面倒と言われちゃいました……」

イナンナの言い放った一言。
極めて傲慢で、それでいて聞くものを納得させる気迫が感じられる一言。
でも──

「懸命に生きる人にとっては、あなたの方がそう言う存在となるのですよ。」

猟兵として、そんな言葉をただ言わせておくわけにはいかない。
尤も、今は飛翔中で相応に距離があり、聞こえているかは定かではないが。

「ですが、そう言えるだけの実力者ということ。ラクスくん、油断なくいきましょう!」

イロハの声かけに、ラクスも一鳴きして応える。
一際力強く翼をはためかせて、高く、高く、空を駆ける。

ダークセイヴァーの夜風は冷たく、重い夜闇がのしかかる。

けれどもそれくらいのことで未来へと歩む猟兵が止まることはありはしない。
もうすでに敵の真上。吹雪舞う戦場は激化を続け、補足をされていなかったとしても安全な場所とは言い難い。

ならば、取るべき行動は真上からの強襲。
夜闇にただ輝く白き一番星が、イナンナを目掛けて落ちていく──

「真正面から、勝負しましょう。受けて立ってくれますか?」

対してイナンナは、すでに把握している真上からの強襲に対して、忌々しげに言葉を漏らす。

「本当に、面倒だわ…!」

そして、選ぶ行動は──迎撃。
自身の呪氷剣を巨大化させ、真上に放つ。
それは氷の力を強く纏い、辺りに強力な吹雪を発生させる。

「流星なら流星らしく、墜ちなさい。」

見たことはないけれど、と他の猟兵への対処に戻る。
そこには自身の攻撃への信頼があり、多少気にかけているものの、僅かな隙が生まれる。

「ラクスくん!」

ラクスに少し身を捩らせ、自身と呪氷剣、そしてイナンナが一直線になるように調整させる。

「これを待ってました。一撃、叩き込みます!」

直撃する呪氷剣に対して、力強く戦斧を振るう。
その眼には恐怖の色などない。自信に満ちる眼は、敵を確実に屠ることにのみ向けられている。
片手間での対処など…打ち砕けるに決まっている──!

戦斧が呪氷剣に衝突し、衝撃波が広がる。
吹雪は散り、戦場に一陣の風が吹き抜ける。

その直後、全てを圧し潰す重力の竜が、流星となりて、イナンナに降り注ぐ──!!

届け、届けと全霊の意思を乗せた竜は、イナンナを食い荒らし、ダークセイヴァーの地に膝をつかせるに至る。

「グ、キャァアアアアア!!!」

予想外の一撃は、戦闘のペースを変える。
だんだんとこちらが優勢になるように。

押し切るには、あと、少し。

大成功 🔵​🔵​🔵​

イングリット・イングラム
この地の支配者、イナンナ・アスタルテ。
この村を辺鄙と言い切る貴方はさぞ広大な領地を有しているのでしょう。
そしてその中で、己が快楽を満たすためにどれだけの屍を築いてきたのでしょうか。

ですが、それも終わりです。
この世界の未来のため、貴方という存在に終焉を齎します。

剣を構え、見据える。
先程までの戦いを見られていたかもしれない。
しかし、あれは対吸血鬼の力ではない。

UCを発動。
全身を法力で包み、飛翔。
呪氷剣は剣で逸らし、弾き、吹雪は《光界》で防ぎ、接敵する。

例え貴方が戦後も生き残った強大な吸血鬼であろうと、
身体を蝕まれ、砕かれた今なら私の力も通じる筈。

四肢を斬り裂き、心臓に《光還》の力を突き刺します。



激化する戦場にて、支配者たる吸血鬼を手玉に取りその身を蝕む者がいる。
針に糸を通すような繊細さで、僅かな隙に体を穿つ一撃を与える者がいる。
流星を宿したように、遥か空高くから迎撃を打ち破り攻撃を叩きつける者がいる

そして、そんな戦場を俯瞰し、冷静に機を伺う者がいる。

イングリットは黄金色の髪を衝撃波に靡かせながら、自らの決意を固めていく。

「この地の支配者、イナンナ・アスタルテ。
この村を辺鄙と言い切る貴方はさぞ広大な領地を有しているのでしょう。」

この世界の支配者としての格は、ただ領土の広さのみで決まるものではない。
しかし、その力が強ければ、自然と領土は広く、より多くの人間を抱えることになっていく。

「そしてその中で、己が快楽を満たすためにどれだけの屍を築いてきたのでしょうか。」

今回、この小村に差し向けられた獣たち…猟兵であっても油断はできない強さのソレらは、命じられた通りに人を苦しめ、恐怖に染め上げていた。
しかしそれは、獣たち自身には、「命令を遂行する」「腹を満たす」以上の意味はない。

この行動を命じたイナンナの意思──人が苦しみ、恐怖し、泣き叫びながら逃げ惑うところを愉しむといった、加虐的な欲望のみにより為された事だ。

「ですが、それも終わりです。」

ただ自分勝手に、いたずらに命の灯火を吹き消すようなことは、許されてはならない。
人類の味方として、そんな存在を打ち破ってこその“猟兵”──

「この世界の未来のため、貴方という存在に終焉を齎します。」

剣を構え、見据える。
狙うは一撃。そしてそれを確実に叩き込む牽制と崩し。

イナンナは、先ほどまでの戦いをずっと見ていた。
だからこそ、分からない。分かるはずがない。
この力は違う。先ほどの戦いで見せた、斬撃波を主とした堅実的な立ち回りを為すためのモノでは無い。

吸血鬼を確実に骸の海へと還すためのモノ──

イングリットを纏う光のオーラが膨れ上がる。
圧倒的なまでの速度、圧倒的なまでの力、先程までとは全く違う、ステータスでの正面衝突。

光に包まれて、飛翔する。
そこには残光だけ残り、その長さが壊滅的なまでの速さを物語っている。

呪氷剣が吹雪を纏い飛来する。
高速飛翔下においても正確に自身の命を狙うそれを、横から叩くようにして弾き飛ばす。吹雪など、意識せずとも纏う光のオーラが掻き消し喰らい尽くしている。

イナンナへの接近を阻むモノなどありはしない

例えイナンナが、戦後をその力で生き残った強大な吸血鬼であろうとも。
身体を蝕まれ、砕かれた今なら──

一薙ぎで両足を斬り払う
右腕を斬り上げ、左腕を斬り下ろし──

イナンナの表情が僅かな苦しみと、怒りと、そして遥かな絶望に染まる

舞う鮮血の中、光に満ちた一突きがイナンナの心臓に深く、深く突き刺さる。
紅い大華と光の奔流が空間に美しい絵を描くように、そしてそれは儚く消えていく──

「これが、貴方の暴虐に対する私の回答です。」

呟くように発された小さな一言が、この戦闘の終わりを告げる合図となった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年03月10日


挿絵イラスト