COOLでHOTな雪山戦線
●燃え尽きて冷たくなるか
「俺としたことが、ちっと読み違えちまったかな……」
極寒の雪山、雪に閉ざされた洞穴に身を潜める虎獣人の男。その体はあちこち負傷しておりすぐに適切な処置をしなければ命も危ないほどだ。
そして男は傍らに雪を集め、なぜかそこに体の一部を埋め込んでいた。
「まさかあんなのがいるなんて思わなかったな……幸い冷やすモンには事欠かないが、ただ冷やしてどうなるってレベルのもんじゃねぇ……」
男は雪に埋めていた片腕を引き抜く。その腕は体毛は剥げ、皮は爛れ、肉は炭のようになるという見るも無残な有様であった。
それだけではない。他の雪に埋めている部位や、あるいはそうでない部分も、彼の体についた傷のほとんどは『火傷』であった。
「雪山で焼け死ぬってのもレアな体験だが、生憎まだ予定が詰まってて……」
極寒の雪山で命に係わるほどの火傷を負った男の耳に、ざくざくという音が聞こえてくる。それと同時に、男は自分を鼓舞するための軽口を紡いでいた口を閉じた。
「かっくぞ、かっくぞ、ゆきのやま」
「おっこせ、おっこせ、おおなだれ」
「うっめろ、うっめろ、しんにゅーしゃ!」
無邪気な子供たちの明るい歌声。男は真剣に耳を澄まし、その動向に意識を集中させる。やがて音と声が自分の潜む洞穴の上を通り過ぎていくのを確認すると、男は大きく息をついた。
「焦るな俺、考えろ……頭冷やして、根性燃やせ……!」
男は消えそうになる命の火を燃やし、死の迫る意識を怜悧に研ぎ澄まさんとするのであった。
●クールに燃え上がるか
「こんにちは、今日は、獣人戦線での依頼です……」
アレクサンドラ・ヒュンディン(狗孤鈍狼・f25572)が集まった猟兵たちに一礼する。
「場所はヨーロッパのアルプス山脈にある雪山。ヨーロッパは超大国ゾルダートグラードの勢力圏なのですが、この山の中にその隠し財宝があります。これを奪いに行ってください」
機械帝国ゾルダートグラード、|機械兵士《ゾルダート》やキャバリアを要する鋼の帝国だ。
たとえ超大国だろうと資源や金銭は有限。ましてや科学技術頼みの機械帝国であれば、それへの依存度は高かろう。それを奪うことができれば、超大国に少なからぬ打撃を与えることもできるだろう。
「ただ場所についてなのですが、アルプスのどこか、ということしか分かりませんでした。その代わり具体的な場所を知っている獣人の男性の存在を予知することができたのですが……」
案内人がいるならば心強いことだが、歯切れの悪い言い方からしてそう簡単にはいかないようだ。
「その方は死にかけています。財宝を守るオブリビオンと戦い瀕死の重傷を負ってしまい、今はどうにか逃げ延びて身を隠している状況なのですが……ここまま放っておいたら間もなく死んでしまうでしょう」
財宝への唯一の手掛かりであり、超大国に立ち向かう同志とも言える存在でもある。死なせるわけにはいかないだろう。
「まずはその人が隠れている洞窟へ皆さんを転送します。そこで急いでその人を手当てしてください。急を要しますので、場合によっては心肺蘇生も必要となるかもしれません」
彼の命の火は今にも消えようとしている。だが、獣人の強い生命力と猟兵による適切な治療があればそれを再び燃え上がらせることも可能だろう。
「うまく彼の命を繋ぎ留めることが出来たら、その案内で財宝の元へ向かってください。ただ道中には、彼を追撃のため捜索しているオブリビオンの『雪かき部隊』がいます。ウサギ耳の少年少女たちですが、雪を使っての攻撃や雪に紛れた移動の他雪製の塹壕まで作れます」
性質は外見相応に無邪気だが、無邪気に戦争し無邪気に敵を殺す戦場が遊び場の子供たちだという。
「そして雪かき部隊を倒したら、財宝へとたどり着くことができます……ですがその前には獣人に重傷を負わせたオブリビオン、『犬山・道殺』が待ち構えています。犬耳の女性で、火遁の術を攻撃用に改良した技を使います。彼女は機械化されているわけではなく、雇われて番人をしているようです。その炎は凄まじく雪の中でも消えることはありませんし、場合によっては雪崩や地形変化まで起こして来るかもしれません……」
アルプスの豪雪にも負けない炎。油断すれば猟兵でさえ軽く焚き付けとなりかねない。
「首尾よく彼女を倒せれば、財宝を手にすることができます。その中身は分かりませんが……奪うことで多少なりと超大国に損害を与えることができるのは間違いありません」
100年続く世界大戦、一朝一夕に戦況は変えられない。だがこうした活動を重ねていけば、大きな国もいつかは揺らがせるはずだ。
「寒いのと熱いの両方味わう依頼になりますが、どうぞ皆様よろしくお願いします……」
アレクサンドラはそう言って頭を下げ、グリモアを起動し獣の世界に猟兵を送り出した。
鳴声海矢
こんにちは、鳴声海矢です。今回は獣人戦線でのシナリオです。
第一章では死にかけの獣人を手当てしていただきます。負傷は火傷がメインで、度合いは深刻で命の危険もあります。通常の治療の他獣人は本質的に心身が強いので、生きる気力を呼び起こす精神的なアプローチも効果的です。
第二章では『雪かき部隊』との集団戦。10代前半くらいの少年少女たちで明るく無邪気な性格ですが、何の疑問もなく超大国の命令に従い敵を殺します。
第三章では『犬山・道殺』とのボス戦。雪山という環境をものともせず、様々な形で炎を操ります。ゾルダートグラートには雇われているだけですが、戦闘と殺戮自体が好きなので超大国を裏切ることはありません。
財宝の場所や内容は開始時点では具体的には分かりません。第一章で助けた獣人が詳しく教えてくれます。またその獣人についても、本人を治療し聞き出すまで以下の情報しか分かりません。治療や精神面でのケアを行う際の参考などにしてください。
トラの獣人、男性、20代後半、第4階梯。ジョブは不明。
クールな頭とホットなハートを信条に、ヨーロッパ戦線で反ゾルダートグラート活動をしている。
実力は決して弱くはないが、ボス級オブリビオンに適う程ではない。
金目当てではなく、財宝を奪うこと自体が目的。
一匹狼ではなく仲間はいる。ただしこの雪山には一人で来ている。
それでは、プレイングをお待ちしています。
第1章 冒険
『『奴が死ぬ時は戦争が終わる時だけ』』
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POW : 力の限り心臓マッサージを続け、獣人の生命力を呼び覚ます。
SPD : 蘇生に必要な医学的処置を素早く施していく。
WIZ : 戦友との絆を信じ、枕元で呼びかけさせる。
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雪に埋もれた洞窟の中、倒れる虎の獣人。夥しいほどの火傷を負ったその体は、生きているとは思えないほどの凄惨さだ。
実際、その命の火は今まさに燃え尽きようとしていた。
「あ、やべ……そろそろかも……」
冷静に考えて打てる手はないことが分かっても、意地や根性で無理矢理繋いできた意識。だがそれもついに朦朧としてきた。
「覚悟なんざしねぇぜ……最後まで夢見てた方がクールだろ……」
自分一人しか聞くもののいない軽口を虚空に向けて吐く男。
既に死に侵されつつある彼は気づかない。その声を聞くものがもうすぐそばにいることを。そしてそれは死神などではなく、彼をこの|地獄《現世》に呼び戻す|同朋《戦士》だということを。
さあ猟兵よ、いままさに消えようとしているこの灯火を、再び強く燃え上がらせるのだ!
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
そこまでの重傷となりますと、急がないといけませんねぇ。
最初は怪我の負担を鑑み、話しかけずに到着後即座に『FPS』を展開、負傷の状態をスキャンしますねぇ。
同時に【撫療】を発動し『乳白色の波動』を放射、即時の負傷治療と共に『再生付与』を行いましょう。
症状のスキャンが終わりましたら、傷の深い部分を重点的に、治癒用の『祭器』である『FQS』で、精神的な負担を『FXS』の結界で、其々治療しますぅ。
問題無く会話が可能な程度に回復しましたら、治療と並行して「同じ目的で来た援軍」であることを伝えて情報交換を。
後は、彼の状況に応じて『FTS』から食料や各種装備類を取出し、提供しますねぇ。
アルプスの山中にある雪に閉ざされた洞窟。そこで今一つの命が燃え尽きようとしていた。
全身に大火傷を負い、動くこともままならない獣人の男。意識も消えていき、自らを鼓舞していた言葉も今はもう出てこない。
「そこまでの重傷となりますと、急がないといけませんねぇ」
それは傍らにいる夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の声も聞こえないほどであった。
るこるは話に聞いた通りの彼の状況に負担を鑑みて声をかけることはせず、急いで処置に取り掛かる。
涙滴型水晶『FPS』を男の周りに配置、体の情報を集めるとともにユーベルコードによる治療に取り掛かる。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『癒しの加護』をお与え下さいませ」
【豊乳女神の加護・撫療】による乳白色の波動がるこるの体から湧きだし、男の体を包みこんだ。それは先進の傷に取り付き、そこについた傷を癒そうとしていく。
しかし、見た目にはさしたる変化は現れない。恐らく負傷が深すぎて表層まで効果が現れる程の治療にはまだ至らないのだろう。事実FPSによるスキャンの情報では見ただけで酷さがわかる手足だけでなく、内臓まで焼けるほどの負傷を追っているという情報が見えてきた。
それならばと十輪の花の形をした祭器『FQS』を特にひどそうな場所に当てる。肉まで炭化し一部は骨すら見えている四肢や、毛皮の色も判別できないほどの胴部。さらには口から入りこませることで内側からの治療と、十輪全てをフル稼働させてやっと通常では復元不可能に見える部分を何とか覆えるほど。それで覆いきれない所には波動を『加護』として突き刺し、そこを回復の起点とする。
ここまでしてようやく男の体に変化が見え始め、炭となった部位が落ちて新しい組織へと変わり始めていた。本当にあと少しで男の命はなかったのだと、るこるはその姿を見て思う。
また男は予知では軽口をたたいて自分を奮い立たせていたが、これほどまでの負傷とあれば実際はその心中は相当に乱れていただろう。彼が少しでも心穏やかでいられるよう、るこるは『FXS』を使い精神遮断の結界を張りそちらの方の保護も試みた。意思の力で何とか命を繋いでいたこの男だ。そこを守れば回復も早まるだろうというのは、決して無根拠な精神論というわけでもあるまい。
そのまま待つことしばし、男の体からある程度負傷が消えたところで、ずっと閉じていたその目が僅かに開く。
「……なんだ、死神ってのは思ったより肉がついてるもんなんだな」
自分の前にせり出す豊かな体を見ての第一声。まだ虚ろな表情からどこまでが本気か分からない言葉だが、あるいは彼自身本当に自分が生きているのかどうかも分からないのかもしれない。
「お褒め頂いたところ恐縮ですが、あなたと同じ目的で来た援軍でございますぅ」
意識が戻っただけで完治には程遠い男。敵ではない、という意思を示す為にも治療を続けつつ、彼の情報をある程度知っている者であること、そして何より彼がまだ生きていることをはっきりと理解させるためにるこるは告げる。
「……なるほど、遭難者じゃないなら一安心だ。こっちも帰るに帰れなくなってるもんでな」
男はやや自虐を交えた感じで言う。恐らくは自分の調子を整えつつこちらが何者か量っているのだろうと感じ、るこるはさらに男に情報交換を呼びかける。
「猟兵という存在はご存知でしょうか? 私もその一人でして」
超大国に立ち向かう戦力となるなら誰でも歓迎されるのがこの世界。そこに置いて突如現れ少なからぬ打撃を6つの国に与え続ける存在は彼も耳にしたことがあった。
「へぇ……こんな僻地にも来るんだな、猟兵ってのは」
「ええ。ですが、情報についてはあなたの方がお詳しいと思います。そのためにも、あなたには元気になっていただかねばなりませんので……ですので、こちらを」
相手が厳しい戦場にいる存在であることも考え、自分の実利の為に利用する側面もあるということを見せつつるこるは『FTS』より食料を装備類を取り出す。
「助かるぜ、装備も食い物も財布も全部燃やされちまってね……後払いでもいいかい? 当てはあるんだ」
能力や趣味嗜好が分からない故に種類を多めに用意してきたものの中から、銃器と刃物類を手に取る男。その『当て』に再び向かう意識と命が再び燃え始めたことを、その姿にるこるは見るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ウィリアム・バークリー
超大国の隠し財産となるとどれくらいのものになるんでしょうね。ぼくは財宝には興味ありませんが、超大国への打撃になるならやってみましょう。
雪山登山の装備を調えて現地へ。
洞窟の入口を閉ざす雪を炎の「属性攻撃」で溶かし、重傷を負った獣人の方のところへ。
大丈夫ですか、すぐに癒します。生まれながらの光で傷を塞いでいきましょう。
「コミュ力」「優しさ」で会話します。
安心してください、ぼくらはあなたの味方です。共に財宝を強奪して、超大国に一泡吹かせてやりましょう。
傷が癒えたら、「お茶を淹れる」としましょう。お茶菓子も用意してあります。お茶を飲みながら、あなたが知っている詳しい話をゆっくり聞かせてください。
冬のアルプスに入りオブリビオンと交戦までした獣人の男。その目的は、超大国ゾルダートグラードの秘す隠し財産の奪取だという。
「超大国の隠し財産となるとどれくらいのものになるんでしょうね。ぼくは財宝には興味ありませんが、超大国への打撃になるならやってみましょう」
聞くに件の獣人も金が欲しいとかではなく、その財宝を奪取すること自体が目的だという。ウィリアム・バークリー(“|聖願《ホーリーウィッシュ》”/氷聖・f01788)は恐らく目的を同じくするだろうその男を救うべく、雪山登山の装備を調えて現地へと赴いていた。
そして予知で聞いていた場所へとたどり着くも、その場にそれらしい場所は見当たらない。だがウィリアムがためらいなく一か所の雪に炎属性の魔法を放つと、そこの雪だけが溶け消えて洞穴の入口が姿を現した。
知らなければ気づかないだろうその入口を入っていくと、壁にもたれかかる獣人の男がいた。
「大丈夫ですか、すぐに癒します」
男が何か言う前に、ウィリアムは【生まれながらの光】を放ち彼を治療する。既に先に来た猟兵によって一度の治療は受けたようだが、それでも彼の負傷はなおひどい。
光が当たった場所に新たな皮が張り、そこに暗い橙色と黒の体毛が生えてくる。ほとんど焼け落ちるか残っていたものも焦げていたため分かりにくかったが、これが彼本来の体の色なのだろう。
男の体が目に見える速度で回復していくが、それに伴いウィリアムの体は疲労していく。洞穴の中とは言え極寒の雪山でありながら彼の額には汗が噴き出し、息が荒くなっていく。
回復量に伴い疲労していく光をこれだけ当てねば治っていかない体。自身の疲労はそれだけ相手の傷の深さを表しているのだとして、ウィリアムは光を当てるのをやめない。
「大丈夫か? 治してくれるのは嬉しいが、それでぶっ倒れられたら今度は俺があんたを担いで山を下りることになっちまうぜ」
その様子に男が声をかける。まだ完治には至っていないだろうにそう言う男に対し、ウィリアムは笑って答えた。
「安心してください、ぼくらはあなたの味方です。共に財宝を強奪して、超大国に一泡吹かせてやりましょう」
山を下りるつもりも必要もないし、彼を死の淵に追いやった強敵にもう一人で挑まなくてもいい。そしてこちらは彼の目的を知り、それを同じくする者としてやってきた。相手に胸襟を開かせるように優しくそう言うウィリアムの言葉に、男は体を起こしながら笑みを浮かべる。
「なるほど、全部お見通しってことか」
「いえ、全部ではありません。あなたしか知らないことも数多くあります。ですから……」
男が動けるくらいに回復したことを確認したところで、ようやくウィリアムは光を止める。そしてその代わりに出したのは。
「お茶を飲みながら、あなたが知っている詳しい話をゆっくり聞かせてください」
暖かいお茶と、お茶菓子。極寒の雪山で暖かい一杯のお茶がどれほど心身に染みるかは想像に難くないだろう。
笑顔で勧められたそれに、男はようやくまともに動くようになったばかりの手を伸ばす。
「ありがてぇ、いただくぜ……あぁ……」
一口すすり、まさに腹の底からという表現が相応しいほどに深く息をつく男。『生き返る』という表現がこれほど相応しい姿もそうはないだろうと、ウィリアムも自分の出したものが間違いでないという核心とともにそう思う。
「そうだな……俺たち生き物に取っちゃ体が財産だ。それがなきゃ何もできねぇ。じゃ、機械野郎どもにそれは何か……燃料? それはどっちかっつーとこれさ」
男はそう言ってたった今ウィリアムが治したばかりの自分の体を指さし、またお茶の入ったカップを持ち上げる。
「答えは資材。マイナーメタル……地域によっちゃレアメタルとも言うか。そいつをたんまりここに溜め込んで基礎部品に加工してやがるんだ。奴らに取っちゃ肉と骨と脳味噌の倉庫も同じだ」
機械化するためにはその機械の原料が必要。それを奪えば戦わずに未来の万の兵を倒すにも同じということ。それはまさに敵方にとっては財宝と呼んで差し支えないものだろう。確かに、この世界では命を懸けるに値するものかもしれない。
「ま、今の俺にとっちゃこっちのほうがずっと価値があるけどな」
そう言って男はウィリアムより受けた生身を繋ぐ『財宝』を身体に入れ、その命を燃え上がらせるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
政木・朱鞠
行動【WIZ】
うーん…命に係わる状況だけに超速解決推奨ってことか…戦闘に偏った生業をしている私にはこういう時は出来ることが少なくてもどかしいね…。
洞窟内に『忍法・繰り飯綱』を放って、保護対象をいち早く発見と気力を呼び起こす行動が軸になるかな…。
獣人さんの元にたどる付けたら、あとは傷の具合を確認しながら【言いくるめ】や【演技】でのハッタリみたいになっちゃうけど希望を途切れないように励ますことしかできないね。
不安要素はもしかしたら火傷を負わせた相手に保護対象の位置が把握されている可能性かな…?
追っ手有無の可能性も考えて飯綱達に引き続き周囲の警戒をさせておいた方が良いのかも…。
アドリブも連携もOK
今回の依頼は最終的に戦うべき敵はいるが、まずその前に救護しなければならない人物がいる。
「うーん……命に係わる状況だけに超速解決推奨ってことか……戦闘に偏った生業をしている私にはこういう時は出来ることが少なくてもどかしいね……」
政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)は普段と真逆の任務に困惑気味ではあるものの、それでもこの任に向かう。
「我が魂魄の欠片よ目覚め……力を行使し見聞きせよ……急急如律令」
洞穴内に【忍法・繰り飯綱】を放ち、負傷者の発見と保護を命じる朱鞠。そこまで大きな洞穴でもなく対象の獣人はすぐに見つかった。
すぐに駆け寄りその傷の具合を確認すると、その体は既に他の猟兵から手当てを受けていたこともあって身を起こせる程度には回復はしていた。
とはいえ元が酷すぎた故にましに見えるだけで、傷の度合いはまだまだ重傷と言えるレベル。すぐに立って動くなどは難しいだろう。
「大丈夫よ、もう心配はいらないから」
しかし、朱鞠はあえてそれをもう治りかけているように言った。
「元々が強いのね。今までの治療の効果が十分以上に出ている。今は少し疲れているかもしれないけれど、ゆっくり休めばその内傷は塞がるから」
じっと検分するように相手の体を見てから男に告げる朱鞠。確かにそれは決して嘘ではないが体が強いのは獣人共通の特徴だし、その内というのも数日程度で済む時間ではない。
「ああ、まぁ多分人生最高の大怪我だったろうな。それに比べりゃ軽くなったもんさ」
男もこの戦乱の世界に生きる者、自分の体の状態を判断するだけの感覚と知識はある。まだ言う程楽観できる容体でないのは自分でもわかっているのだろう。
それでも、朱鞠は彼を安心させるよう言葉を紡ぎ続ける。その際には無暗に笑うのではなく真剣な表情で彼の体を見たり、何かを考えるようにしばし言葉を止めたりもする。
(ハッタリみたいになっちゃうけど希望を途切れないように励ますことしかできないね)
相手を治療する術を持たない朱鞠は傷を直接癒すことは出来ない。しかし心を奮い立たせ希望を燃え上がらせることで、彼がもう一度立ち上がるまでの時間を少しでも短くできれば。
如何に強靭な心身を持っていようと、たった今までそこにあった死の恐怖や苦痛を微塵も感じていないなどあるはずもない。彼が心を燃やすことで死に抗い続けていたの対を成すように、体がそこから離れても一度掠めた死は心に影を落とし続けるのだ。
その影を取り払っておけば、他の誰かがさらなる治癒を彼に齎した時本当に彼の傷は完治することになるだろう。そうなれば、朱鞠の方便も結果的に真実となるのだ。
自分が彼に対してできることはやった。しかし、もう一つ自分ができること、自分だから分かることがある。
「不安要素はもしかしたら火傷を負わせた相手に保護対象の位置が把握されている可能性かな……?」
あの者ならそれくらいのことは出来る。朱鞠はよく分かっていた。
番人の役目を負っている以上本人が直接出向いてくることはまだないかもしれない。だが、彼を追討するための部隊が派遣されているのは予知の段階でもわかっている。それらは一度この付近を通り過ぎているが、指示を出されれば真っ直ぐこちらに戻ってきてもおかしくはない。
「追っ手有無の可能性も考えて飯綱達に引き続き周囲の警戒をさせておいた方が良いのかも……」
まだあと少し、ここに留まる時間が欲しい。その為に、分霊たちを洞穴付近へと散らせ見張りに当たらせる。
グリモア猟兵は言った、この男は財宝に繋がる大事な手掛かりであると。朱鞠にとってそれは字面通りの、そしてそれ以上の意味を持つ言葉。
何としてもその|財宝《宿縁》を|奪う《断つ》べし。その為に、今は熟しつつある時を待つのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
あら、なかなかワイルドでイイ男ね。
|オブリビオン《こっち》側じゃないのが残念だわ
その言葉に警戒するだろうけど
【脱衣】からの『ベルベットパフューム』と添い寝による【誘惑】
治癒魔法【祈り・医術】を纏った手で身も心も【慰め】懐柔。
【環境耐性】で少しも寒くないわ
ふふっ、死にかけの男ほど
下は元気になるって本当なのね♥
巨乳で雄の証を挟み
舐め回すも【第六感・見切り】で
彼の達する直前に寸止め
私はオブリビオンとの混血児。
続きがしたければ、生き残って、まともな相手を見つけるといいわ
お預けという名の【鼓舞】で
彼の生と性への執着を滾らせて立ち去る……
あ、あら、私を押し倒せるくらい回復したの?
ちょっ、待っ……んぅぅっ♥
傷は少しずつ癒えてきた男だが、未だ自力で立ち上がるには至らない。その男の顔を、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)がのぞき込んだ。
「あら、なかなかワイルドでイイ男ね。|オブリビオン《こっち》側じゃないのが残念だわ」
傷が癒えたこともあり、虎らしい獣人の容貌が分かるようになった男の様相は確かに野性的といえるもの。だがドゥルールの言葉に男はその風貌を厳しく引き締める。
「生憎と、たった今そっち側から引き戻されたばっかりでね……」
そう言って先に猟兵からもらい受けた大型ナイフを握り締める男。だがそれに構わず、ドゥルールは自らの服に手をかけた。
「ありのままの私を見せてあげる……なんてね」
それは彼女の持つユーベルコードの詠唱であるが、その効果で出る花びらで隠されるはずの部位は露になったまま。その代わりにその体からはかぐわしい香りが放出され男の鼻孔をくすぐる。
そのままドゥルールは男の体に手を伸ばし、まだ治り切らない傷を優しく撫でた。その手からは回復の魔力が溢れ、男の傷を消していく。
「そんな格好で寒くないのかい?」
「ええ、少しも寒くないわ」
軽く聞いてくる男の様子に最初の警戒はもう感じられない。それはドゥルールが実際に使ったユーベルコード【ベルベットパフューム】の力。他者の生気を糧に生きるリリスの基本とも言える力は、それをしやすくするための好印象を相手に与えるもの。
そして、もう一つの効果も。
「ふふっ、死にかけの男ほど下は元気になるって本当なのね♥」
そのまま手を男の下半身へ持っていき相手の雄の証を露にし、それを自身の大きな胸で挟み込む。
生存本能としてそうなった状態に、ベルベットパフュームのもう一つの効果である興奮を付与。さらに突き出した先端に舌を這わせていけば、それによって男は瞬く間に最後を迎えそうになる。
が、それが来ると察した瞬間ドゥルールは体を起こし、男から離れてしまった。
「私はオブリビオンとの混血児。続きがしたければ、生き残って、まともな相手を見つけるといいわ」
そう言って立ち去ろうとするドゥルール。死に瀕していた男にそれと対極にある行為をすることと、お預けという名の鼓舞で彼の生と性への執着を滾らせて立ち去る。それがドゥルールが彼を生かすために取った手段であった。
そのまま洞穴から出ようとするドゥルール。だが、その手が後ろから荒々しくつかまれた。振り向けば男が力強く腕を掴み、ドゥルールを引っ張っている。
男はそのまま掴んだ腕を支えにするように立ち上がると、その野性的な身体を乱暴にドゥルールに押し付けた。
「あ、あら、私を押し倒せるくらい回復したの?」
そこまで回復しているとは予想外であったドゥルールは珍しく慌てた様子になるが、それに構わず男はドゥルールを抱き寄せ唇を重ねた。
「ちょっ、待っ……んぅぅっ♥」
まさに獣が貪るのような口付け。そしてそれを一度離して男はにやりと笑い。
「この通り、お陰様で『立てる』まで回復したぜ」
そう言って男はドゥルールを解放した。
「あんたみたいないい女相手じゃせっかく戻った体力がまた全部なくなっちまいそうだからな。先約が全部終わってからじっくりお願いするぜ」
男はそう言って洞穴の入口の方を見る。その向こうに待ち構える冷たく熱い地獄に戻る意思は、彼の心臓の奥からすでに湧き上がっていた。
大成功
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第2章 集団戦
『雪かき部隊』
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POW : 特攻そりドーザー
【そりをブルドーザーに見立てて前方に構えた】姿勢のまま、レベルkm/hで移動できる。移動中は、攻擊が命中した敵に【移動中に巻き込んだ雪をぶつけ、雪だるま化】の状態異常を与える。
SPD : 雪隠れステルスアタック
対象を【雪隠れマント】で包む。[雪隠れマント]は装甲と隠密力を増加し、敵を攻撃する【ための雪かきスコップ】と、傷を癒やす【と同時に身を隠す雪】を生やす。
WIZ : 雪兎塹壕線
【|大砲穴《トーチカ》と降雪放射器】【雪壁生成機、自動追尾式雪兎型氷結爆弾】【もしもの時の自爆スイッチ】を備え、内部の味方は睡眠不要になる塹壕を、1日にレベルm掘ることができる。
イラスト:あさぎあきら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴
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種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
回復した獣人の男を連れ、猟兵は洞穴を出る。彼の足取りはまだ弱弱しくも感じられるが、しかし前に進む力と協力の意思は確かにそこにあると見えるものだった。
「ありがとうよ。生きてまた外に出られるとは思わなかったぜ。さて、何から言ったもんかね……」
男はしばし考える。
「……とりあえずこれは教えとかないとな。俺はバハラム。バハラム・ザレだ。よろしくな」
まだ名乗っていなかった自らの名前を教え、虎獣人バハラムは本題に入る。
「どうやらあんたたちはブツの具体的な場所は知らないらしいな。なら任せな。死ぬ気で行って帰ってきた道だ、二度と忘れやしねぇよ」
バハラムは先に立ち、雪をかき分けるようにしながら山中を進んでいく。一見すればどこも変わらない雪景色だが、彼の通るその場所はごく僅かに雪が低く踏み固められており、そこが『道』となっていることが察せられた。
「ただな、一つ問題があってよ」
猟兵を先導し進んでいくバハラムの声音が真剣さを帯びる。
「もしかしたらこれは知ってんのかもしれないが、俺は追われててな。で、その追手ってのが……」
バハラムがそう言った瞬間、明るい歌声が雪山に響いた。
「すっすめ、すっすめ、ゆきのやま」
「つっくれ、つっくれ、ゆきのしろ」
「こっろせ、こっろせ、みなごろし!」
明らかに『道』ではない側方から、手にしたスコップで雪をかき分けやってくるウサギ耳の子供たち。
「ぜんたーい、とまれ!」
先頭にいた者がわざとらしい号令をかけ、一団が止まる。
「目標、はっけん!」
「はっけん!」
次にバハラムを指さし一人が言うと、全員が声を揃えて復唱する。
「任務、確認!」
「任務、侵入者の抹殺!」
そして自らに課された役目を大声で宣言する子供たち。あげる声こそ遊びの軍隊ごっこのようだが、その動きは精密で足取りも軽く、雪も寒さも全く苦にしない鍛え上げられた本物の『軍隊』そのものであった。
「……ガキだからって舐めんじゃねぇぜ。こいつらは人殺すのも虫潰すのも変わんねぇ。戦争以外の何にも知らねぇ肉でできた機械みたいな連中だ。こういうのはクールじゃねぇ……クレイジーっつぅんだ」
苦々しい表情で子供たちを見るバハラム。決意と覚悟があって戦いに身を投じる彼だが、善も悪もなく殺し合いが日常という子供たちには何か思うところがあるのかもしれない。
「たいちょー、敵に援軍がいます!」
「うむ、敵の味方は敵! 我々のやることは一つ!」
隊長役の子供が猟兵に向けてスコップを構える。
「みんなまとめて、みなごろしだ!」
号令一下、鋭い動きで戦闘態勢に入る子供たち。
たとえ見た目や年齢がどうあれ、彼らはゾルダートグラードの精鋭『雪かき部隊』である。たった今死の淵から戻ってきたばかりのバハラムでは相手取るには荷が重いだろう。
先に進むため、この幼き兵士たちを切り抜けろ!
ウィリアム・バークリー
さすがに超大国の追っ手は目端が鋭い。敵の拠点に報告される前に殲滅しましょう。
「寒冷適応」「氷結耐性」があるぼくには、雪山はホームも同じです。氷遣いとして後れを取るつもりはありません。
「全力魔法」八属性の「属性攻撃」「範囲攻撃」でChaostic World。
敵は氷雪系の攻撃の対処は慣れてそうですしね。他の属性も混ぜて、敵が雪に隠れる前に属性魔法の砲弾を当てていきます。
雪かきスコップで攻撃されたらルーンソードで「武器受け」し、「カウンター」で「凍結攻撃」の「魔法を武器にまとう」ルーンソードを突き込みます。身体の内側から凍ってください。
これ以上敵の捜索隊に見つかる前に、早く目的地へ向かいましょう。
猟兵の治療によって死の危機から脱し、その案内人となって再び財宝への道を進みだした虎獣人バハラム。その道行に回り込んできたのは年若い少年少女達で構成された部隊であった。
「さすがに超大国の追っ手は目端が鋭い。敵の拠点に報告される前に殲滅しましょう」
こちらが動き出したのを察し即座にその道を阻む場所に現れたその相手を、ウィリアム・バークリー(“|聖願《ホーリーウィッシュ》”/氷聖・f01788)はそう評する。相手は子供であっても訓練された軍隊、戦闘力はもちろん、状況を上役に報告し情報を共有すると言った集団行動も正確に行ってくるだろう。見た目に騙されるなというバハラムの忠告は決して間違っていないと、ウィリアムは敵をそう見た。
そして雪山という極限状況をものともせず行動できる彼らは、まさに雪山のプロだとも。
「「寒冷適応」「氷結耐性」があるぼくには、雪山はホームも同じです。氷遣いとして後れを取るつもりはありません」
しかしそれは己も同じ。相手に妥当な行動をさせず即時殲滅のために、ウィリアムは先んじて行動をとった。
「堅き大地よ、移り行く水よ、爆ぜる火よ、駆け抜ける風よ、留める氷よ、迅き雷よ、万物照らす光よ、遍く喰らう闇よ。我が敵を虚無に還せ!」
巻き起こすは【Chaostic World】。地水火風氷雷光闇の八属性が雪山に吹き荒れあたりを色とりどりに染める。
「たいちょー! 敵は嘘つきであります! 氷以外もいっぱい使ってるであります!」
「とりあえず氷のある方に逃げるぞ!」
氷遣いといいつつ八属性を使ったウィリアムに子供じみたいちゃもんをつけつつも、自らの得意とする属性ならば容易に対処可能と冷静に見極め即座に被害を最小限に抑える方法を弾きだす雪かき部隊。
敵は氷雪系の属性には慣れていそう、というウィリアムの予想通りに雪かき部隊は氷の属性は上手くいなして避けていく。それ故、氷を前面に押し出しつつ他の属性を混ぜることでそれが少しずつ当たっていくよう仕向けるウィリアム。
「あ、熱い熱い熱い!」
「ぐえっ!?」
炎に焼かれ、土塊に押し潰される子供たち。それに紛れながら何かを羽織るような動作を摂るものがいれば、そちらへ属性の砲弾を滅多打ちにする。
この技は回避されても中止できない。ならばいっそ怒涛の攻撃で、相手のユーベルコードである雪隠れマントを纏う暇さえ与えさせない。
炎が雪を溶かし、その水が風に押され濁流となりぶち当たる。輝く雷光が体を貫き、伏せれば土饅頭に埋められ闇に潰される。八つの属性の超高速連撃はユーベルコードとして放たれた力が出しきられるまで続いた。
そして、怒涛の攻撃が一度止む。
「ふぅ……」
自らの起こした破壊の後、そこに小さな骸がいくつも転がり、雪に解けるように消えていくのをウィリアムはみた。息をついて手を下げるウィリアム。
「仕留めた!」
その胸に向かい、スコップが突き出された。攻撃に紛れ何とかマントを羽織ることに成功した者が、味方の犠牲に隠れながらウィリアムまで近づいていたのだ。
凶器として十分な重量を持つそれがウィリアムの心臓を抉る。その瞬間。
「やはり、そう来ましたか」
下げられた手に取られたルーンソード『スプラッシュ』が、そのスコップをがっちりと受け止めていた。
ユーベルコードの一射で容易く殲滅できるような簡単な相手ではない。そう想定し、相手が抜けてきた時の守りとして携えていた剣。戦いに置いて冷静、冷徹に状況を見極められるは敵のみに非ず。
「くっ……」
「身体の内側から凍ってください」
そこからさらに切り返そうとする雪かき部隊の武器に刀身を滑らせ、そのまま相手の体に剣を突き刺した。
そして宿る水の精霊の力を氷として武器に纏わせることで、ルーンソードを凍てつく氷剣と化す。いかに外に雪の外套を羽織っていようと、内側から来る凍結には抗えない。そのまま雪かき部隊の体は内部から凍り付き、砕けて消えた。
「これ以上敵の捜索隊に見つかる前に、早く目的地へ向かいましょう」
雪かき部隊がここにいる一隊のみとは限らないし、時間がかかれば異常を察した増援が来るかもしれない。急ぎ敵を蹴散らし進むべしと、ウィリアムは下がっていたバハラムに言うのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
油断は出来ませんが、日常的な荒事に慣れているのは、猟兵も同じですので。
バハラムさんが巻込まれない様、ガードしましょう。
【炳輦】を発動し私とバハラムさんを包む『防御結界』を形成、『FLS』の空間歪曲と『FMS』のバリアも重ね、結界ごと上空へ退避しますねぇ。
そして『FPS』で敵方の動向を察知、【ドーザー】に飛行能力は無く、遠距離攻撃や跳躍等の手段を用いるなら、結界ごと転移し躱せば良いですぅ。
後は『時空切断の嵐』に『FDS』の[爆撃]と『FES』の『火属性矢』、『FRS』『FSS』の[砲撃]を重ねた[範囲攻撃]で叩きますねぇ。
仮に雪崩が有っても、上空の此方には無影響ですので。
「たいちょー、被害が……あれ? たいちょー君死んじゃった?」
「じゃあ次は僕がたいちょーやるー!」
仲間たちが死んだことを気にも留めず、即座に一人が次のリーダーに立候補する雪かき部隊。戦うことはもちろん死ぬまでが遊びの内という狂気と、誰がリーダーをやっても変わらない、あるいは誰もがリーダーの役割を負えるよう並列化された情報と統制。これも彼らがこの戦場を遊び場に生きる子供たちである証だろう。
「よーし、それじゃ命令、侵入者を抹殺せよ!」
新リーダーが命令を出すと、雪かき部隊は持っていたそりを横にして前に出す。
遊んでいるように見えてもこれは彼らのユーベルコード。そしてこの状況でもバハラムの抹殺が任務でありその優先順位を履き違えないのは、やはり彼らが任を帯びた軍隊であることの証左か。
だが、戦場に身を置くのは彼らだけではない。
「油断は出来ませんが、日常的な荒事に慣れているのは、猟兵も同じですので」
夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の言う通り、猟兵もまた生まれた時から戦い、殺し合いを日常としている者は多い。あるいはそれ以外を知った上で多数の戦いの経験を積んでいる以上、総合的な経験値は猟兵の方が上と言えるかもしれない。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
【豊乳女神の加護・炳輦】を発動、防御結界を布いて自身とバハラムをその中へと入れた。そしてそのままバハラムを連れ上空へと退避するるこる。
その足元ぎりぎりを、ドーザー部隊が雪をかき分けながら高速で通り過ぎていった。そのまま後方の木にぶちあたるが、それなりの太さのあるはずのその木が細木のように簡単にへし折られる。さらに撒き散らされた大量の雪が側方を埋めて逃げ場をなくしており、これが彼らの必殺陣形であることも見て取れた。
「敵は空中に逃げたぞ!」
その声に雪かき部隊たちが上を向くが、その瞬間に張るこるも攻撃に入る。
時空切断の嵐を上から撃ちかけそりごとドーザー部隊を両断。小さな体がさらに別れ雪に転がり消える。
「雪を浴びせろ!」
雪かき部隊はそれに怯まず、そりからスコップに持ち替えて足元の雪を救ってるこるに投げつけだした。一見すれば雪合戦で反則技を使うようなそれだが、大人数で、かつ雪の扱いに慣れた彼らがやればそれは十分な射撃武器ともなる威力。
だがそれに対しても、るこるは瞬間移動することで回避した。
「それでは、お返ししますねぇ」
そこから撃ちかけるのは砲撃に火矢、爆撃と言った火属性攻撃をもつ兵装たち。上空から幾度となく繰り出されるそれが雪かき部隊たちの体を焼き、砕いていく。
「うわわわわ、熱いってば!」
生き残った者はそりを構えそれを防ぐ。さらに雪に潜って消火を試みるものもいたが、それらが慌てた様子で雪から飛び出してきた。
「たいちょー、まずいです!」
「え、何が……」
そう言った瞬間、大量の雪が雪崩となって地を滑っていき、雪かき部隊を押し潰した。
事前に装備を使った情報収集を用いたことで、この辺りは雪崩を起こせる雪があることを確認していたるこる。その上での大量の火と爆破がそれは周囲の雪を揺らしたのだ。
るこるはそれを想定して空中へ退避していたが、あくまで地上戦主体の雪かき部隊は起こってしまった雪崩からは逃れられない。
属性としての雪や氷には強い耐性があっても、単純な重量は小さな体を容易く押し潰す。るこるの足元には、下に全てを埋めた平らな雪原だけが残るのであった。
大成功
🔵🔵🔵
政木・朱鞠
まあ!物騒な事を言う生意気な子達だな~…。
美味しそ…じゃなくって…可愛い見た目だけど、恨みを晴らすためでなく黒幕の言いなりになって邪魔者を消す作戦なんて私達が邪魔して骨折り損にさせて貰うよ。
さあ、可愛いウサギさん達…お痛をした咎の責任はキッチリと取って骸の海に帰ってもらうよ。
戦闘【WIZ】
気を抜けない多勢との戦闘だし、イニシアチブ取れないにしても『忍法・鋳薔薇姫』でほんの数秒でも動きを封じて隙を作りたいね。
得物は【貫通攻撃】を狙って刑場槍『葬栴檀』をチョイスして【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の技能を使いつつ【傷口をえぐる】【生命力吸収】の合わせで間を置かないダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
「我ら雪かき部隊、与えられた任務は成功させる!」
「今日の任務は侵入者の抹殺!」
未だ雪かき部隊の戦意は絶えない。元々役目を放棄して逃げるという発想がないのかもしれないが、遊びのようなテンションに全く陰りも見えないのはやはり彼らの特異な精神性故か。
「まあ! 物騒な事を言う生意気な子達だな~……」
政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)はそんな雪かき部隊をじと目で見る。
「美味しそ……じゃなくって……可愛い見た目だけど、恨みを晴らすためでなく黒幕の言いなりになって邪魔者を消す作戦なんて私達が邪魔して骨折り損にさせて貰うよ」
外見は可愛らしい少年少女という好ましいものながら、任務遂行を最優先とする子供たち。他者から与えられた目的に盲従しての妨害など、その支持者の思惑諸共潰してくれると朱鞠は思う。
「さあ、可愛いウサギさん達…お痛をした咎の責任はキッチリと取って骸の海に帰ってもらうよ」
朱鞠が戦う構えを見せる前で、雪かき部隊もまた行動を開始した。
「雪は我らの城である! 雪兎塹壕線展開!」
新たな隊長の号令の元、一斉に雪を掘りだす雪かき部隊。掘られた雪は強い力で押し固められ煉瓦のようになり、それを積み上げて瞬く間に建造物が作られていく。
「撃ち方、始め!」
雪かき部隊は作られたその|大砲穴《トーチカ》と降雪放射器に入り込み、攻撃を開始した。雪でできた放射器が巨大な雪玉を弾丸のように撃ちだし、朱鞠を攻撃する。それを慌てて身をかがめて避け、朱鞠は一旦近くの木の陰に隠れる。
「気を抜けない多勢との戦闘だし、イニシアチブ取れないにしてもほんの数秒でも動きを封じて隙を作りたいね」
此処は相手のホームグラウンドだし、人数差もある。不利な状況での戦いは避けられない以上、少しでも自分のペースをものにしたい。
「おっかけろ、氷爆弾!」
さらに自動追尾式雪兎型氷結爆弾が放たれ、隠れる朱鞠に迫る。これ以上の隠密は不可能と、朱鞠は武器を手に木の陰から飛び出した。それを雪の砲台が捉え、再度雪玉を打ちかける。
「それっ!」
伏せるようにしてその射撃をかわしながら、朱鞠は武器を突き出した。
「うぐっ……!」
それは雪大砲に突き刺さり、そのまま内部を貫いて砲撃手役の兵士までも貫いた。雪製でありながら本物同様に動く兵器だが、動かし手が必要なのも本物同様。故に貫通性能に優れる刑場槍『葬栴檀』で兵器ごと敵を貫きながら、朱鞠は敵の塹壕内へ踏み込んだ。
「ちょっとの間だけ、大人しくしていてくれるかな……なるべく痛くしないから……」
そのまま塹壕に身をかがめ、【忍法・鋳薔薇姫】を発動する。足元の影から鎖が伸び、それは雪かき部隊や雪兵器に一斉に絡みついた。
「なんだこれ!?」
「あ、あれ? 砲台が動かない!?」
「動け、氷爆弾、動いてよ!」
雪かき部隊たちはそれを引き剥がそうとするが上手くいかない。さらに氷雪兵器たちもそれに囚われ、攻撃行動をとれなくなっていた。
鎖に絡まれれば攻撃的行動は全て無力化される。その隙に、朱鞠は次々と槍で間を置かないダメージを与え、そこから生命力を吸い取って一人一人雪に返していった。
好調に相手の数を減らすが、それでも余裕はない。
(急がないと……)
雪壁生成機は防御兵器のため、動きを阻害されていない。次々反り立ち続ける雪の壁は次の相手を狙う邪魔になり、また大量の雪が間近にある冷え込みで体力の消耗も早くなる。そして鋳薔薇姫の効果時間は148秒、それを過ぎれば戦況に関係なく朱鞠の命はなくなる。
敵から奪った生命力さえすり減らしながら、急いで敵を殲滅していく朱鞠。そして、塹壕穴内に最後に残った一人についに槍の穂先が向く。
「お前をやっつければ……僕たちの勝ちだ!」
槍を突き出すその瞬間、ついに鋳薔薇姫の時間制限が来てそれを解除せざるを得なくなる。そしてその一瞬は、親指を1cm動かすには十分な時間であった。
最後の自爆スイッチが押され、雪煙を上げて塹壕穴が吹き飛んだ。
爆音の後の静寂。そしてそのしばし後。
「理由もないのにここまでするとはね……」
大量の雪をかき分け、朱鞠が這い出してきた。生命力を吸っていたことと最後以外は攻撃を封じていたこともあり、何とか致命傷は免れた形だ。
道連れを狙った彼らに自分への宿縁はない。だが、もしそれのある相手が己の前に現れれば、あるいは彼らの行動も理解できるか。
朱鞠はその時が近く迫っていることを、雪に塗れ冷えた体の奥で感じるのであった。
成功
🔵🔵🔴
ドゥルール・ブラッドティアーズ
私の方がドキドキさせられるなんて……
バハラム、貴方やっぱりイイ男だわ。
あの子達を見て心を痛める所も含めて、ね
引き続き【環境耐性】で【脱衣】状態。
あのお姉さん変態だ?
お風呂では裸になるのが普通でしょ♥
【高速詠唱】で『色褪せぬ想い出の地へ』発動。
封神武侠界の仙湯(魅了の湯)に
戦場を移す事で、雪兎塹壕線を台無しに。
湯の温もりと魅了効果に加え
私の完璧なボディと【誘惑・催眠術】のフェロモンで
男子は元気いっぱい♥
呆れる女子達も私を見る目が羨望→憧れ→愛欲と変化
キスや授乳で媚毒【呪詛】体液を飲ませながら
成長途中の胸や純潔の雄蕊・雌蕊を【慰め・生命力吸収・大食い】
母に抱かれて眠るように幸福な表情で、私と一つに
超大国の財宝への案内人、バハラム。ついさっきまで死にかけていた彼は戦いに加わる力はおよそなく、標的にされぬよう戦いを猟兵に任せ後ろに下がるのみであった。
「私の方がドキドキさせられるなんて……バハラム、貴方やっぱりイイ男だわ」
しかし、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は好意的な視線を彼に送る。
確かに表面的な傷はほとんどなくなった彼の風貌は野性味あるものだし、彼の属する第4階梯はどの階梯からも魅力的にみられるという。
それに何より。
「あの子達を見て心を痛める所も含めて、ね」
戦場を遊び場に生きるしかない子供たちに見せた彼の表情。彼とて大戦の世界の中生まれ育った者、相応に覚悟も経験もあるだろう。しかし、それとは別に割り切れぬ感情を見せられることが、ドゥルールにとっては好ましいものであった。
そんな男の前に立つドゥルール。その姿は、この雪山においてはある意味最もあり得ないものであった。
「あのお姉さん変態だー!」
珍しく軍隊らしさを忘れ叫ぶ雪かき部隊たち。彼らに相対するドゥルールは、全裸であった。
「お風呂では裸になるのが普通でしょ♥」
「き、きっとあれだ、矛盾脱衣というやつだ! 幻覚も見てるみたいだし! 恐れるな、敵は既に瀕死である!」
寒さが極限に達すると起こる感覚異常。それを知っているあたりはやはり寒冷地のプロとも言えるのかもしれないが、どちらかと言えば謎過ぎる状況を知っている言葉で無理矢理説明しようとしているだけかもしれない。
なれど、戦争の中で生きて来た彼らは捕るべき行動は誤らない。
「雪兎塹壕線を敷け!」
雪を掘り出し、塹壕穴や雪製兵器を作り出す雪かき部隊たち。相手がその準備を始めた瞬間、ドゥルールもまた動いた。
「世界×異世界×楽園への扉」
後出しでありながら相手の準備より早く詠唱を終え、ユーベルコード【色褪せぬ想い出の地へ】を発動する。純白の雪原に赤・青・緑の宝石が降り注ぎ、周囲の景色を塗り替えていった。
そこは山の中であることこそ変わらないが、湯気立つ泉があちこちに点在する温暖な地。ドゥルールの想起した世界を呼び込む宝石によって書き換えられたこの場所は、封神武侠界にある仙湯という不思議の湯であった。
「あああ、雪が、雪が溶けちゃう!」
温泉に投げ込まれた雪の砲台や装置、自爆スイッチさえも瞬く間に溶け、湯と混ざって消えていく。力の源を一気に奪い去られた雪かき部隊は、玩具を取り上げられた子供の如く泣き叫ぶしかなかった。
そんな彼らにドゥルールは体を寄せる。そのまま男と思われる子供を捕まえると相手の服を脱がし、自分の体を見せつけた。
「ななな、何を……」
彼らも軍属、あるいはそういった教育や訓練を受けているかもしれない。だが、その表情は困惑と興奮に満ちた『背伸びした子供』のよう。
他の少年たちも同じような状態になっているが、少女隊員たちはそれを軽蔑の目で見ていた。それで殴りつけるつもりかスコップを握り締め、湯をかき分けて迫る。
しかし、その目もやがて色を変え、羨望や憧れ、やがて少年たちと同じ目に。振り上げたスコップも力なく落とし、湯に沈んでしまう。
呼び寄せた魅了の湯の効果と自身の魅了術で、寒冷地特化の雪かき部隊を成す術ない『熱』の世界に取り込んだドゥルール。
しかし、これにも時間制限はある。149分の間に勝負を決めねばならぬと、少年少女を纏めて抱き寄せた。
唇を合わせ胸を吸わせ、媚毒を含ませた自身の体液を飲ませる。そして成長途中の胸や純潔の雄蕊・雌蕊から彼らの精力と生命力を吸い上げる。
母に抱かれて眠るような幸福を。生まれてから知らずに育ったそれを感じられるよう抱き寄せ、一人一人を湯と己の中に溶かしていく。
やがて時が過ぎ、世界が白一色の雪山に戻った。そこに現れたのは裸体のドゥルールと、その胸に抱かれた雪かき部隊最後の一人。
それは戻った雪山から力を取り戻す間もなく、眠るような表情で淡雪のように溶け消滅していった。
残ったドゥルールにバハラムが声をかける。
「あんたもいい女だな」
|書き換えられた世界《戦場》の外にいたバハラムに何が起こっていたかは分からない。だがその消えゆく表情を見た彼は、子供たちが戦争だけの生から解放されたことを察したのかもしれなかった。
大成功
🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『犬山・道殺』
|
POW : 忍法・紅蓮曼殊沙華
【口寄せした煮えたぎる溶岩】を纏い、攻撃力が8倍になる。ただし防御力は0となり、全ての攻撃が致命傷になる。
SPD : 忍法・獄炎滅旋
【炎を纏った指先】から、レベル×5mの直線上に【火炎の渦】を放出する。【血液】を消費し続ければ、放出を持続可能。
WIZ : 忍法・炎翔鳳仙嵐
【自らの体が触れている影】から、物質を透過し敵に【火傷】の状態異常を与える【黒い熱風】を放つ。
イラスト:えんご
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「政木・朱鞠」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
雪かき部隊を退けた猟兵は、バハラムの先導のもと再び雪山を行く。やがて山頂近くまでたどり着いた時、バハラムは脚を止めた。
「ついたぜ」
そう言って彼が差す方にあるもの。それは隠すように建てられた工廠であった。
「俺とあんたらの目指すゴールはあの中にある。だが、残念だが俺が行き方を知ってるのはここまでだ」
行き方も何も後は入口をくぐるだけだろう。事情を知らねばそう言えるかもしれない。あるいはバハラム自身も数時間前までは。
その目の前で、積もっていた雪が一瞬で蒸発した。
「こんな続けてお客さんが来てくれるなんて、今日はラッキーデイって奴かな?」
雪がなくなり露になった地面に、一人の女が立つ。一見すれば人間のようだが犬の耳が頭部についており、第5階梯の獣人であることが察せられる。
「あれ? 見覚えあると思ったら……生きてたんだ、こりゃびっくり!」
女はバハラムを見て嘲笑うように声を上げた。それに対し、バハラムは苦々し気に女を見る。
「そうだな、俺もびっくりだよ。あんたと二度もツラ合わせることになるなんてな」
「経験上あれくらい燃やせば大体10時間あれば死ぬはずなんだけどなー……やっぱ弱くてもちゃんと最後まで殺しきっとくべきだったか。まあ、何があったかは何となく予想つくよ」
女はそう言って、猟兵の方へと目を移した。
「うん、君たちはなかなか強そうだね。案内させるためにわざわざ拾って治したんだ。それに|あの子《雪かき部隊》達を殺ったのも君たちかな? 急に連絡よこさなくなったから躱してきたわけじゃなさそうだし」
軽い調子でいう女だが、猟兵の実力を察しここまでの行動をざっくりと予想して見せる眼力は彼女の実力の一端を表しているものだろう。
「じゃ、建前から言っとこうか。我が名は『犬山・道殺』。偉大なるゾルダートグラードがため、希少なる鋼を不埒な侵略者には触れさせぬ!」
仰々しく名乗った後、道殺はすぐに笑う。
「ま、本音としてはー……せっかく力と宝があるんだ、殺さなきゃ損ってやつだろ! さあ、君たちはどんな風に燃えてくれるかな!?」
道殺の周りに炎が巻き起こり、景色が揺らぐほどの熱が雪山に満たされる。
極寒を灼熱へと変えるこの女こそ、宝に至る最後の山であり、案内人バハラムに致命傷を負わせた炎遣い『犬山・道殺』。彼女を退け、超大国の財宝へとたどり着くのだ!
ウィリアム・バークリー
獣人でありながら|超大国《ゾルダートグラード》へ降るとは、見下げ果てた輩ですね。いえ、これは獣人のオブリビオン?
とにかく、邪魔をするならあなたから討滅します。
「全力魔法」「範囲攻撃」氷の「属性攻撃」で「盾受け」用のActive Ice Wallを展開。彼女の視線から炎の軌跡を読んで、その方向に氷塊を密集させます。ぼくの氷塊は、そう簡単には溶かせませんよ。
氷塊を盾にしながら近づき、「剣に魔法を纏う」で氷属性にしたルーンソードで「凍結攻撃」で「串刺し」です。
それでぼくに意識を向けてくれたらしめたもの。彼女の意識から氷塊が消えた瞬間を「見切り」、氷塊を砲弾として「砲撃」を加えます。
一気に叩き潰す!
財宝である資材を保存、加工する工廠へたどり着いた猟兵の前に立ちはだかったのは、犬の耳を持った女。ほとんど人と言えるその姿は、だがこの世界では戦火の中産まれた第5階梯の獣人の姿でもある。
「獣人でありながら|超大国《ゾルダートグラード》へ降るとは、見下げ果てた輩ですね。いえ、これは獣人のオブリビオン?」
ウィリアム・バークリー(“|聖願《ホーリーウィッシュ》”/氷聖・f01788)はその相手に対し、故郷を戦火に飲み込んだ者へ与した恥知らずとして切り捨てることを厭わなかった。
その言葉に、女『犬山・道殺』は笑って答える。
「雇われてれば戦って殺す場を作ってくれるからね、獣人側にいるよりよっぽどやりやすいってもんさ!」
戦前に建前と言った通り、彼女自身ゾルダートグラードへの忠誠はさほど高くない。だが己の嗜好を満たすには|超大国《こちら》側にいた方が都合がいいというのが、彼女が超大国側につく理由であった。
「とにかく、邪魔をするならあなたから討滅します」
相手の理由は分かったが、それで何かを変えることはない。宝に至る最後の障害を排すべしと、ウィリアムは己の魔力を周囲に展開させた。
「Active Ice Wall!」
ウィリアムの短い|掛け声《詠唱》と共に、その魔力が形をとる。【Active Ice Wall】が周囲の広範囲を包み、道殺が雪を消し飛ばした地を再び超低温に飲み込んだ。
「いくら氷を足したって無駄だよ! 忍法・獄炎滅旋!」
それに震える様子もなく、道殺はウィリアムに向かって炎を纏った指をさす。その指から火炎の渦が巻き起こり、一直線にウィリアムへと向かった。
それはウィリアムの前にある氷塊とぶつかり、押しとめられる。
「ふぅん、なかなかやるじゃない」
氷遣いたるウィリアムが全力を注いだ氷。道殺の炎とも十分に渡り合う強さを持っている。だが道殺が燃やしたいのはウィリアム自身。相手との力比べをずっと続けていたいわけではない。
あたりに浮く氷塊は多い。だが、全く隙間がないわけではなく相手の姿は見えている。そして己の技量なら、その隙間を抜く程度容易い。
自惚れでない確かな自信と共にそう確信した道殺は、相手を確かに射抜けるその隙を見極める。そしてそこに向け、指先が僅かに動いた。
燃え盛る指先から炎が放たれる。それがウィリアムに向けて伸びるのと、辺りに散っていた氷塊がそこに集結するのはほとんど同時だった。
相手の様子を見極めていたのはウィリアムも同じ。彼は道殺の視線に注目し、次弾をどこに放ってくるかを慎重に見極めていたのだ。
「なるほど……やっぱりぶち抜くしかないわけだ」
氷が自在に動かせるなら、不本意ながら力比べに競り勝つしかない。道殺の血液が炎を出す指先に集まり、それが燃料となってさらに強力な業火が氷の壁に叩きつけられた。
「ぼくの氷塊は、そう簡単には溶かせませんよ」
ウィリアムの意思を汲むように、ありったけの氷塊がそこに集まり分厚い壁となる。獄炎と極冷のせめぎ合いに、辺りは大量の水蒸気に包まれ溺れそうなほどの湿気が満ちる。
それを極めた者同士の力のぶつけ合い。果たしてそれは如何な形で決着がつくか。
それはこれだと言うのか、氷塊の陰から鋭い刃が飛び出した。氷気を纏ったウィリアムのルーンソード。雪かき部隊を内から凍らせ砕いたそれが、道殺に向けて突き出された。
「来ると思ったよ!」
しかし、それは道殺の手によって掴み取られた。炎を噴き出す指とは逆の手が、刃となった部分の氷を溶かしてしっかりと掴み刃がその身に届くのを阻んでいた。
「上手くやったつもりだろうけど、君がぼーっと突っ立ってるとは思えなかったからね!」
道殺は自分の力に自信はあれど、相手を過小評価しない。氷の守りに隠れて何かはしてくるだろうという予想は立てていた。
氷塊に隠れての一撃を防がれ、これで勝負あり。姿を見せた相手にとどめを刺すべく、道殺は氷塊に当てていた炎をウィリアムに向けようと指を負った。
そしてそれはつまり、彼女の意識から氷塊の存在が消えたということ。
「一気に叩き潰す!」
それまで守りに徹していた氷塊が、砲弾の如くその場から吹き飛び道殺の体を直撃した。
相手を侮らなかったのはウィリアムも同じ。一度の奇襲程度は防がれると見て、氷の剣による串刺し攻撃を二つ目の囮とした。それで自身に意識を向けてくれたらしめたもの。真の本命は、炎との押し合いから解放された氷塊を砲弾と化した一撃だ。
一つに固まり氷山の如くなった氷が、道殺を押し潰す。
「う、ぐあっ……!」
氷の下、くぐもった声を上げる道殺。
力の押し付け合いと緻密な札の切り合い。二人の達人の戦いは、|氷遣い《クールガイ》の勝利に終わったのであった。
大成功
🔵🔵🔵
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎
■行動
どうやら『縁』のある方が居る様で。
露払いと参りましょう。
『FAS』による飛行で足場に対処、『FMS』のバリアでバハラムさんを、『FES』の耐火結界で自身を覆いまして。
【懸禧】を発動、『祭礼の女神紋』により全『祭器』共々『靈』を宿しますねぇ。
【忍法】は火力を強化する分防御面は『纏った熔岩』以外無防備、『無敵化』を施した『FBS』の斬撃や『FRS』の[砲撃]なら問題無く貫通可能ですぅ。
強化した火力も『解除時の反動』が途轍もない代わりに交戦中の影響は無効化可能、バリアに守られているバハラムさんも同様に。
雪崩等は『FPS』で探知、『FIS』の転移でバハラムさんごと上空に退避を。
オブリビオン『犬山・道殺』。その姿を見た時夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)が思い浮かべたのはともにこの雪山を上って来たある猟兵であった。
「どうやら『縁』のある方が居る様で。露払いと参りましょう」
ここに一つの宿縁の決着がつけられようとしている。ならばその為に場を整えようと、るこるは道殺へと向かう。
「露? 払う必要なんてないよ。私が乾かしてあげる……君ごとね!」
周囲の雪全てを蒸発させんばかりの炎が道殺より巻き起こる。その余波から逃れるべく、るこるは自身に結界、バハラムにバリアを敷き熱を遮断した。
その上で『FAS』を用いて宙に浮きあがるるこる。
「炎相手に上に行くなんて、炙り焼きにされたいのかな!」
浮き上がったるこるの真下を道殺が指さす。するとそこから湧き水の如く溶岩が湧き出して、その場を地獄の如き様相に変えた。
結界すらも揺らがせ溶かすほどの熱がそこから立ち上る。道殺の言う通り、このままではすぐにでも結界は崩され、溶岩の熱に炙られてその身も焼き尽くされてしまうことだろう。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『憑代の加護』をお与え下さいませ」
薄れていく結界の中、るこるは【豊乳女神の加護・懸禧】を発動した。結界が燃え落ちる中、『祭礼の女神紋』の効果によりるこるは祭器共々『靈』と合体していく。
「ふぅん、で、それが何の意味があるのかな?」
それを見て、道殺は自ら溶岩だまりを殴りつけるように勢いよくその中へ手を突っ込んだ。その手を伝い溶岩が道殺の体を上って纏わりつくとともに、溶岩自体もさらに沸騰、間欠泉の如くるこるに向けて噴き上がった。
赤い奔流がるこるを包み込む。遠くから見ているバハラムは、自身の体を焼いた熱さを思い出しながら焦りと絶望のないまぜになった表情だ。
そしてその噴火が引いた時。そこには焦げ跡一つないるこるの姿があった。
「へぇ……どういうカラクリかな。動けないならそのままじっくり焼き上げるだけだよ。それとも……」
その姿を見て、面白いと言いたげに道殺は笑う。そうして今度は大きく腕を振りかぶると、さらに勢いをつけて地面を殴りつけた。
「忍法・紅蓮曼殊沙華!」
地面の溶岩がさらに広がり、より大きな火柱となって噴き上がる。それはまるでそこに小さな火山ができ、それが噴火したかのようだ。
地面にあった意思も噴石となって巻き上がり、辺りに降り注ぐ。上下からの灼熱の攻撃がるこるを飲み込み、さらにはバハラムの方まで飛び火した。
あたりを赤に染める炎地獄。これに飲まれれば今度こそ無事では済むまい。そう確信する道殺の前で、赤い壁が一文字に切り裂かれた。
「なっ!?」
耐えるどころかまさかの反撃。それは道殺の纏った溶岩さえ切り裂き、その肌へと触れんとする。その刹那、道殺は転がってそれをすんでで避けるが、その表情にはもう余裕はない。
「思ったよりやるね……!」
切られた炎の壁の向こうのるこるはやはり無傷。無敵を得るユーベルコードは現状いくつかあるが、るこるが用いたのはダメージを先送りする形のものだ。
そしてそれを体系への反動へと置換するのはるこるの得意手段。とはいえ、結局のところ達人の強化の乗った大技をまともに受けてはいるのだ。それは冗談では済まない、命に係わるほどの反動となって襲い来るだろう。
それでも、交戦中の影響をバハラム諸共無効化できるなら躊躇いはない。戦い続けている間は、実質守りを一切考えず攻め倒すことが可能となるのだ。
兵装にも同じ無敵が付与されている以上、相手は攻撃を焼き落とすこともできない。そしてリスクを負って力を増しているのは道殺も同じ。彼女の纏う溶岩は火力を八倍に増すが、己の守りさえ焼き全ての傷を致命に至らせる死の炎。
命を盾にする無限の守りと、命を捨てた怒涛の攻め。その刺し合いの結末は一瞬。
「燃え尽きろ……この雪ごと!」
道殺の声と共に溶岩が一気に広がる。それは周囲の雪を根こそぎ消し飛ばしながら、るこるさえも飲みこもうとする。
その溶岩の中、るこるは砲台『FRS』に一斉射撃を命じた。守りなど考えずともよい。ただ、この溶岩を貫けと。
広がる炎の中、砲が紅蓮の道を突き抜ける。そして。
「うぐ……あっ……!」
道殺の腹部の溶岩が消し飛び、そこから炎と違う赤が大量に吹きだした。
そして道殺が倒れ込むと同時に、激しい地響きが起きる。それに伴うものを『FPS』で察知したるこるは、『FIS』を用いバハラムと共に空中へ転移した。その一瞬後、白い奔流が足元を平らげていく。
「……これで、場は整ったでしょうかぁ」
雪崩によってこの場は再度元の雪原に戻った。その上で本懐遂げる者あることを願いつつ、るこるは間もなく来る反動に備え覚悟を決めるのであった。
大成功
🔵🔵🔵
ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
グロ×
WIZ
引き続き【環境耐性】で【脱衣】状態。
オーバーロードで背中に黒炎の翼
【念動力・マヒ攻撃】で金縛りにして
悲愴の剣の【早業】で道殺の衣服だけを【解体】
【怪力・捕縛】の抱擁と共に幾度も濃厚なキスを交わし
治癒魔法【祈り・医術】を纏った手で彼女の全身を【慰め】る
鋼になんか興味ないわ。
私は貴女を盗みに来たの♥
彼女の忍法はトリックではなく
明らかに魔法の類【戦闘知識・見切り】
私の影で彼女の影を【影縛り・ハッキング・魔力吸収】する事で
黒い熱風を封じるわ
傷は癒えても【誘惑・催眠術】のフェロモンと
度重なるキスで飲ませた媚毒【呪詛】唾液と
『救済の黒朱雀』の黒炎で、道殺の心身は蕩けていく
守護霊の憑依【ドーピング】で戦闘力と魅了効果を更に高めつつ
先程の雪かき部隊の姿を見せ、バハラムに私の在り方を示すわ
私はオブリビオンの救済者。
貴女を永遠の楽園に招待するわ。
どこまでも情熱的に愛し合いましょう♥
【化術】で肉棒を生やして【串刺し】
情欲のマグマ(媚毒体液)を
道殺の中に【乱れ撃ち】ながら【生命力吸収・大食い】
激戦の結果の大雪崩により再び白銀の世界へと戻った戦場。だがそんな場所でも、ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は全裸であった。
その背にはオーバーロードによって生じた黒炎の翼があったが、それでもこの極寒の地においては頼りなくさえ見える。
雪を吹き飛ばし這い出て来た道殺は、その姿を値踏みするように見た。
「ふーん、こけおどし……っていうか挑発? やせ我慢もほどほどにしないとほんとに凍えちゃうよ?」
炎遣いである自分に対し同種の力を見せつけ何かを誘っているのか。そう感じた道殺は、自身の周囲にまた新たな熱を纏い始めた。
「ま、奇遇だね。私も似たようなの持ってるんだよ。そっちよりずっと、凄いのをね!」
道殺の周囲の雪が煙を立てて消えていく。そしてその影が伸びる部分からは、それ自体が蒸発しているかのような黒い煙が立ち始めた。
それはそのまま風となって、ドゥルールに向かって吹きつける。それはあらゆる物質を透過し触れた生物を火傷に侵す黒き風。
「忍法・炎翔鳳仙嵐!」
それがその身に触れる瞬間、ドゥルールは黒炎の翼を一度はためかせた。
「ぐっ……!?」
それは黒い風の動きを鈍らせ、道殺の体にさえ異常をもたらした。
鍛え上げた|火遁の術《ユーベルコード》さえ止める術とは如何なるものか。道殺がそれを訝る間さえ与えずに、ドゥルールは剣を構えて彼女に迫っていた。
黒き風を回り込んで振るった『悲愴の剣』が、道殺の着衣だけを切り裂いた。
そして露になった体を抱きしめてそこに口づけし、そして手で彼女の体を撫でまわす。
その手に込められた力は先にバハラムに付したものとおなじ、体を癒すもの。いかに強靭な炎遣いといえ肌を直に雪原に晒せば寒かろうと、その影響を軽減するかの如く道殺の体を慰撫する。
「嬲り殺しにでもするつもり? それとも、懐柔して|宝《資材》だけ貰いたい? 舐められたもんだね……こう見えても忍びだよ?」
それを自身に対する脅迫、あるいは調略とでも取ったのだろう。話に応じる気はないと道殺はその行為をつっぱねる。
「鋼になんか興味ないわ。私は貴女を盗みに来たの♥」
それに対し、こうすること自体が目的だったと答えるドゥルール。
もちろんその言葉も道殺は信じない。相手の力の種を暴き、隙あらば切り返してくれようと神経を張り詰めさせている。
それに対し、ドゥルールも拘束を逃れられぬようにすべく、相手の力に対する予測を立てていく。
影を目くらましや陽動として用いてそこに薬や暗器を仕込むのではなく、そこから物体透過まで行う相手の忍法。それ科学的なトリックでなく、非物理、魔法的な力を利用した秘術の類とドゥルールは見た。
体を重ねることで影自体が重なるようにし、影を持って影を制す。相手の力の元が影なら自身の影に魔力を込めれば封じ能うとしてそこから黒い風が立ち上るのを防ごうとするが、重なった影はどちらのものでもありどちらのものでもない。道殺も鍛えた忍びの秘技を用い、影の主導権を奪い返そうとしてくる。
黒き熱風はユーベルコード、影はそれを放つ媒体。いかにオーバーロードとはいえ楽に抑え続けていられるものではない。ましてや相手に回復までかけてしまったのだ。これで反撃を許してしまっては、単なる敗北よりもずっと悪い結果を生んでしまう。
それ故、それ以上に相手の内部に誘惑をかけていた。催眠術で精神を攻め、口を重ねて呪詛の媚毒を飲ませる。
もちろん元忍びである道殺にとってそれらは当然のように想定し、耐える鍛錬を積んだものだろう。故に、|埒外の一手《ユーベルコード》の投入を解禁した。
「共に恋焦がれ、身も心も蕩け合い、永遠となりましょう?」
背に負った黒い翼が相手を包むように畳まれる。炎でできたそれは、しかし相手を焼く様子はない。炎遣い故の炎への耐性か。
否、それが焼くのは体に非ず。心を焼く【救済の黒朱雀】の炎は相手の心を溶かすためのもの。それは相手の心を魅了していくとともに、自身の戦闘力と、生命力吸収能力を高める。
その高まった力の元は己の宿した死霊達。その身から溢れ出すほどに強まったその姿は、先に雪に消えたウサギ耳の少年少女たちの姿をしていた。
跳ねまわり、周囲の雪をただの玩具として掘り出し、組み上げるその姿は雪遊びをするただの子供たち。
「私はオブリビオンの救済者。貴女を永遠の楽園に招待するわ。どこまでも情熱的に愛し合いましょう♥」
そうなった部下の姿を見せることで道殺への誘いとし、そしてもう一つ、後ろで見ているバハラムに己の在り方と、彼が複雑な感情を見せた子供たちの行く末を見せる。
そのまま道殺を『串刺し』にし、情欲のマグマを注いで治癒した分以上の生命力を吸い上げる。
バハラムがオブリビオンに対してどこまでの知識があるかは分からない。だが少なくとも話し合いや、金や権利などの普通の手段で手打ちし共存できる相手でないことは分かっているだろう。
そんな存在に対する自身の『やり方』を男に見せつつ、ドゥルールは焦がれた相手を己の中に包み込むのであった。
大成功
🔵🔵🔵
政木・朱鞠
ゾルダートグラードにお宝を奪われないように奮闘したら、私にとって極上のターゲットが舞い込んでくるなんてね。
貴方が編み出した火遁の数々は里のお伽話で語られるほど凄い偉業だとは思うけど、この場では短慮の果てに里の宝と共に抜けた宿敵として『犬山・道殺』…里の後輩として全力で貴方の咎をここで幕引きとさせて貰うよ…。
戦闘【POW】
生意気な大口叩いておいてなんだけど…不謹慎ながら同門の達人と術を交える戦いのスリルを楽しみたいなんて思ってしまうよ…。
一気に相手を討つために『忍法・禍神合身』で能力の底上げして全力でぶつかって行くよ。
得物は近接重視で『風狸ノ脛当』をチョイス、【スライディング】技能を使いバランスを崩して、攻防偏った四肢を思いっきり【鎧砕き】や【鎧無視攻撃】の打撃でダメージを与えたいね。
アドリブ連帯歓迎
超大国を支配するのはオブリビオンである。このヨーロッパに置いて覇権を取るゾルダートグラードもそれは変わらない。そしてオブリビオン退治は猟兵の最たる任務の一つである。
「ゾルダートグラードにお宝を奪われないように奮闘したら、私にとって極上のターゲットが舞い込んでくるなんてね」
猟兵としての任をこなしつつ己の役目をこなす日々を送る政木・朱鞠(狐龍の姫忍・f00521)。今回猟兵たちに依頼された討伐対象『犬山・道殺』は、彼女にとってまさに宿命の相手と呼べる存在であった。
その任を猟兵として、そして忍びとして遂行しにきた朱鞠。その到達点として出会った相手に、己が如何な志を持ってここに来たかを告げる。
「貴方が編み出した火遁の数々は里のお伽話で語られるほど凄い偉業だとは思うけど、この場では短慮の果てに里の宝と共に抜けた宿敵として『犬山・道殺』……里の後輩として全力で貴方の咎をここで幕引きとさせて貰うよ……」
本来はその字の通り逃走の術の一つである火遁を、火炎を自在に操る攻撃術にまで昇華させた道殺。それは忍としてはるか高みにある存在として憧憬を集める存在であると同時に、咎人以外は不殺という禁を破り宝刀を手に姿をくらました忌むべき咎忍。
「はー、なるほど。いつの話だったか覚えてもいないけど、よくやるよねほんと。そーゆー所も嫌だったんだよ」
道殺もまた、朱鞠が如何なる者かを察したのだろう。その体から陽炎を立ち上らせ、一瞬で戦うための体制を整える。ここまで数戦してきたとは思えぬほどのその覇気は、やはり彼女もまた己の宿命にその身を滾らせているということだろう。
その足元から雪が消えていき、下に埋もれていた地表さえ焼けていくのを見て朱鞠は思う。
「生意気な大口叩いておいてなんだけど……不謹慎ながら同門の達人と術を交える戦いのスリルを楽しみたいなんて思ってしまうよ……」
相手はまさに伝説の存在。それと一戦交えるとは、武芸者としてはこの上ない悦び。
高い技量を見せつけるかのように、ただ立っているだけでも地表はなおも変化していく。焦げた土がさらに溶け、溶岩となって流れ出し辺りの雪や土を喰らい始めた。
「忍法・紅蓮曼殊沙華……その体で死ぬまで味わってくといいよ!」
溶岩は道殺の体を上り、その体に纏わりついた。それと同時に弾かれるように広がった溶岩の上を駆け、道殺は一瞬にして朱鞠に迫った。
油断したつもりなど微塵もないのに、既に相手は必殺の距離に入っている。元々高い力を術でさらに強化したその動きは、猟兵さえも凌駕するほど。
「命を削るスリルを楽しむ訳じゃないけど……ここが使い時だからしょうがないよね……」
なれば、己もまた別の力を宿すよりほかない。【忍法・禍神合身】にて朱鞠がその身に宿したは『危険な存在』。あるいは直接名を言うのも憚られるほどの、抽象的にしか表現しようのないその力を宿した朱鞠の首に、溶岩を纏った道殺の手刀が付き込まれた。
灼熱を帯びた剛槍とすら呼べるそれは、しかし朱鞠の首の皮一枚すら切り裂けず当たった瞬間に止められた。
(まずは命、一つか……)
その恐るべき技の冴えをその身で感じつつ、朱鞠は溶岩纏う道殺の腕を取り、そのまま振り回して投げ飛ばした。道殺は空中で体を捻り、溶岩の敷かれた地表にそこが普通の地面であるかのように着地する。
その瞬間、一瞬前の意趣返しをするかのように朱鞠はそこに踏み込んでいた。
「なっ……!?」
そのまま体を倒し、足元を刺すようなスライディング。溶岩を水のように飛沫を上げて飛び散らせながら、朱鞠が道殺の足を刈り取る。
道殺はとっさに跳躍しそれを避ける。そのまま上空で逆さになり、拳を突き出し地面を殴った。
「火を持って己を狙う敵全てを焼き尽くさば追う者なし、これぞ火遁の極意!」
その拳に呼び覚まされるように、溶岩が溢れ噴き上がった。それは朱鞠が滑り込んだ真下から巻き上がり、その身を全てのみ込んでいく。
同じ溶岩を纏う己ならば焼かれることなしとそのまま離れようとするが、殴りつけた腕が地に縫い留められたかのようにそこから動かなかった。
「ようやく捕まえたよ……!」
巻き上がる溶岩に濡れながら、朱鞠が道殺の腕をしっかりとつかんでいた。
「馬鹿な……なぜ!」
これは水や雪ではない。常人ならば近づくだけで骨まで焦げる溶岩だ。いかに猟兵といえ全身にまともに浴びて無傷で済むわけがない。
その通り、ここまでのダメージをまともに受けれいれば朱鞠もとうに力尽きていただろう。だが、そのダメージは全て【禍神合身】の力で先において置ける。
忍びにとって、任務遂行は命より重い。その『先』が来る前に役目を完遂すれば、それは己の勝利に他ならぬのだ。その時に来る命を幾度となく焼き尽くす炎は、オーバーロードでもって立ち向かうべしと朱鞠は己を超克していた。
掴んだ腕を引き寄せ、道殺を溶岩の池に叩きつける。
「覚悟!」
跳びあがって上を取り、倒れる道殺の四肢を朱鞠が踏みつけた。その足に纏うは『風狸ノ脛当』。跳躍力を補助するはずが威力が強すぎたため武器に転用された忍具。跳躍とは盤石の大地を踏み、蹴るもの。その大地ですら耐えきれぬほどの力を人体に与えられればどうなるか。
「ぐ、あぁぁっ!!」
纏っていた溶岩がはがれ、その奥にある四肢が折れ、砕ける。纏った溶岩はその威力を八倍にする代わりに、その奥にある体を淡雪の如く脆くする。
四度、朱鞠の足が道殺に叩きつけられた。辺りに飛び散った溶岩が雪を消し木を焼き倒し、その威力のすさまじさを知らしめる。
「は、はははっ……殺されるってのは……こんな気分なのか……」
殺戮に走り里を捨て|超大国《ゾルダートグラード》に身を売った犬山・道殺。今、その最期の時が来た。
「犬山・道殺……討ち取ったり!」
最後にその場にあった溶岩全てが空に舞い上がるほどの衝撃と共に、その胸が踏み抜かれた。
散った溶岩は空に舞い、地に降り注ぐ前に術者の命に釣られるように虚空に消える。それは一つの宿縁が終わったことを示す花火の用ですらあった。
戦いの余波で雪の消えた地を進み、バハラムと猟兵は工廠へと入る。果たしてそこにあったのは大量の鉱石と、それらを抽出、加工する設備であった。
掘り出されたままの形の石や、それ自体が一種の美術品にさえ見える結晶体。そして様々な形に加工された機械部品。様々な状態のレアメタルが蓄積され、そして加工されている。
「こいつがあれば本当は何がどれだけ作れるんだろうな。俺には想像もつかねぇ。だが、ここで何にされるかは分かってる……それにさえされなきゃ、何だっていい」
バハラムは積まれていた資材の一つを手に取り、猟兵たちに向き直った。
「好きに持っていってくれ。あんたたちなら悪いようにはしないだろう。俺の取り分はあんたたちが持ちきれなかった分だ。だが出来れば……抱えて持って帰れるくらいにして欲しいな」
彼の目的はこの財宝をゾルダートグラードの手から奪うことそのもの。恐らく本来は何かしら自分でも持ち帰る手段はあったのだろうが、道殺によってその辺りも失ってしまったのだろう。
ここが落ちたことは早晩敵方にも知られよう。これは超大国への打撃であると同時に、大いなる宣戦布告なのだ。
冷静をもって任じるこの男がそこに頭が回っていないはずがない。そして熱い心を持つこの男がその程度で委縮するわけもない。
ここにまた一つ、超大国との戦端が開かれたのだ。
戦火はまだ、世界を包み続けている。
大成功
🔵🔵🔵
最終結果:成功
完成日:2024年03月11日
宿敵
『犬山・道殺』
を撃破!
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