ホワイトデー爆破録~愛とお菓子と悔し涙~
●クエスト:ホワイトデーの準備をせよ
バレンタインは過ぎた。
過ぎるとどうなる?
バレンタインのお返しを探す旅が始まるんだ。
ホワイトデー。それはバレンタインのお返しであったり、男性が女性にお菓子を贈る日だという。
美味しいチョコやお菓子を貰ったからには素敵なお返しが必要だ。そんな男プレイヤー達は意気揚々ととあるクエストを受注していた。
【クエスト名】伝説のお菓子を求めて……
【依頼人】陽気なパティシエ グバ・ルコトロプ
【難易度】普通
【クエスト報酬】縁結びの焼き菓子×1、4000|T《トリリオン》
【内容】
相手に渡すと想いが伝わると言われる『縁結びの焼き菓子』。そんな伝説のお菓子を作るため、材料を集めて欲しいと頼まれた。
お菓子の妖精からドロップする【星砂糖】、チョコラータ森林に住む鶏から貰える【雪玉卵】、その奥にそびえ立つ城の主人から貰える【リッチバター】を集めてこよう!
気になるあの子とホワイトデーを過ごすため! 男プレイヤー達は武器を片手に戦場へ赴く。
そのクエストが『初見殺しの即死バグ』にまみれたものだと知らずに。
●シヴァの情報
「バレンタインのお返しだァ? こちとらそもそも貰ってねーわ!」
柴犬の獣人、咲桜羽・シヴァ(明朗快活犬・f30920)がグリモアベースで虚しく吠える。
「全く、何でリアルでもゲームでもイチャイチャイベントってのはあるんだよ! 怒りを通り越して見ているこっちが恥ずかしくなるわ!」
悲しいかな、孤高を貫こうとする犬が一匹。それはさておき猟兵達を呼んだのは決して暇だからではない。
「ンでも、笑えない被害が出るのは仕方ねェ……って事でお前らには『ゴッドゲームオンライン』に行ってもらうぞ!」
やや渋々とした態度でシヴァは説明を始める。
「まずお前らを『チョコラータ森林』って場所の近くまで転送してやる。近くに『グバ・ルコトロプ』っていうNPCがいるからクエストを受注しろ。そしたらクエスト通りに進んでくれ」
NPCの近くにはターゲットの一つである『お菓子の妖精』というモンスターがいる。いわゆる雑魚モンスターであるが、今回に限っては雑魚とは言えないだろう。
「実はこのクエスト、バグプロトコルってヤツの影響を受けて絶賛バグり中なんだってよ。モンスターから道中のトラップまで『当たったら爆発して一発で|アウト《死ぬ》』ってバグが蔓延してるってワケだな!」
ちょっとでも触れれば自分が爆発する。そんなの普通の難易度じゃない。至難である。約束された死である。
「オレ達猟兵は死なないけど……何処かに飛ばされてクエスト受注し直しってのは嫌だろ? それにこの世界のプレイヤーだと死=人権剥奪だ。流石にそれはまぁ、最小限に抑えたい所だ」
モヤモヤする気持ちが漏れるように、後半の言葉は声が小さかった。
「あーそうそう。クエストアイテムは全部で三つ。集めないと次に進めないっぽいンで、ちゃんと拾うといいみたいだぞ」
流石にクエストアイテムは触れても即死にならないらしい。クエストを進めていけば、恐らくバグプロトコルの根源も分かるだろう。
ホワイトデーのお菓子を求める|男プレイヤー《リア充》達を救う。その目標に猟兵達はどんな気持ちを抱いたのだろう。
「爆発しろって思う気持ちは分かる。でもリアルで爆発四散されても、それはそれで困るからなぁ……」
複雑だな。でも仕方ないんだ。猟兵にだってそういう人はたくさんいるし。それに大真面目にクエスト受注したプレイヤーだっているだろうし。
「はぁ、とりあえず。当たれば即死だが、まー上手いこと避けてやり過ごしてくれよ。お前らなら初見でも大丈夫だろ!」
気合いで気持ちを切り替えたシヴァはふんぞり返り笑う。グリモアの準備はバッチリだ。
猟兵達は準備を終えると、バグまみれの難関クエストへと挑むのだった。
ののん
お世話になります、ののんです。
●状況
ゴッドゲームオンラインが舞台となります。
3章で完結します。
●戦場について
クエストを受注した直後からスタートします。
1章は森林の近くの草原での戦闘、2章は森林の中の探索、3章は城での戦闘となります。
それぞれの攻撃やトラップすべて、当たれば『爆発して即死(クエスト失敗)』となります。これらを回避して対応する必要があります。
また、クエストアイテムの回収をするとクエストが進むようです。
2章以降の詳細は断章にて公開する予定です。
●1章について
敵の攻撃すべてに『即死』効果が付与されてます。触れただけでもアウトのようです。
倒してドロップしたアイテムはその場に落ちてます。小瓶に砂糖が詰まってます。
●3章先行ネタバレ
3章のみプレイングボーナスがあるようです。
●補足
所詮ノリと勢いで書いたシナリオです。リプレイもそうなる可能性がございます。
ホワイトデーには完結が間に合っていない可能性があります。
●プレイングについて
受付はいつでも。『#プレイング受付中』のタグがある間だと採用率は高めです。
キャラ口調ですとリプレイに反映しやすいです。
お友達とご一緒する方はIDを含めた名前の記載、または【(グループ名)】をお願い致します。
同時に投稿して頂けると大変助かります。
以上、皆様のご参加お待ちしております。
第1章 集団戦
『お菓子の妖精』
|
POW : お菓子を配る
【お菓子】を給仕している間、戦場にいるお菓子を楽しんでいない対象全ての行動速度を5分の1にする。
SPD : お菓子の魔法
【お菓子の甘い香り】を纏ってレベル×5km/hで跳び回り、触れた物品や対象の装備を破壊、あるいは使用不能にする。
WIZ : 夢のお菓子
レベル個の【巨大お菓子】を召喚する。戦闘力は無いが極めて柔らかく、飛翔・クッション・ジャンプ台に使用できる。
イラスト:笹にゃ うらら
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
クエストを受注したプレイヤー達は雑魚狩りに勤しんでいた。【星砂糖】のドロップ率は約1/5。決して低い訳ではないが、運の悪い者は何故かひたすら出ない。
だが、苦戦している理由はそれだけではないようだ。
「また出ねぇ! 早く出てくれ! じゃないと俺も……!」
「おかしをどうぞ」
狩りの対象であるお菓子の妖精が彼の肩を軽く叩く。その瞬間。
「アバーッ!!?」
ドオォォォン!! と、彼の体が爆発四散した。妖精はきょとんとしている。悪びれた様子はない。
「や、やだぁ! 僕は生きて帰ってあの子に告白するんだ!」
「そっか、がんばってね」
ドオォォォン!!
なんという無慈悲。悲鳴、爆発、死亡フラグのオンパレード!
序盤の段階で夢と死の両方を抱くプレイヤー達。そんな中、はたして猟兵達はノーダメージで【星砂糖】を手に入れられるのだろうか――。
ミノア・ラビリンスドラゴン
一撃死の罠は緊張感を高めますが、全部が全部それではマンネリというもの!
【罠使い】としての力量の差を教えてさしあげますわー!!
ぽよぽよと跳ねてくる巨大なお菓子!
トラップカードをばら撒き、草原の草を【ハッキング】して急成長!
格子状に変化(拠点構築)させて受け止め、【侵入阻止】!
地形データなので爆破対象になりませんわー!(地形の利用)
妖精の元へ跳ね返し……爆破ですわー!!!!
ほほほほ、持ち主なら爆破されないと思いまして?
【ハッキング】して【爆裂地雷】を仕込んでおきましてよー!!
【素材採取】に【宝探し】!
【幸運】でがっぽがぽですわー!!
一度でも敵に当たれば即終了。プレイヤーの緊張感を高めるものとして、一部では人気のあるギミックだ。死が関与している部分を除けば、そこまで珍しくはない。
だけどダンジョンを作ってる側からすれば今回のクエストは……面白みがない!
「全部が全部それではマンネリというもの!」
なんてワンパターンな設定付け! もしやクエスト作り初心者か?
「でもわたくしのクエストより人が多い……解せませんわ……! こうなれば罠使いとしての力量の差を教えてさしあげますわー!!」
わたくしの方がもっと面白いクエスト作れますわよ! と言わんばかりの高笑い。そんな声の主はミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)。
「さぁ、バトルを開始いたしましょう! モンスターの方々、是非とも退屈させないでくださいまし!」
カードの準備はバッチリ。即死効果を持つお菓子の妖精達を目の前にしても、ミノアは堂々とした姿勢を見せ付けてやった。
ぽい、と妖精がカラフルなお菓子を空中へ投げると、それは突然巨大化し地上へ降り注いだ! 巨大化したぽよんぽよんなグミの上で、妖精がトランポリンのように跳ねて遊ぶ。グミそのものに攻撃判定はなさそうだが、即死しないとも言い切れない。
「クエストに合わせてお菓子の敵を配置したのは褒めてあげますわー!」
ミノアはカードを数枚|引く《ドローする》と、人差し指と中指で挟んだそれらを地面に向かって投げ付けた。セットされたカードが効果を発動させると、ぐにゃりと地面が歪み始めた。
「わたくしのカードデッキを舐めないことですわー! 行きなさいトラップカード! なーに、ちょっと管理権限をお借りするだけですわよ!」
バグのように歪んだ地面は蔓のように伸びて交差し、ミノアを囲むように格子状に変化する。グミや妖精が突っ込んできたところで爆破など起こらない。何故ならそれは武器でも攻撃でもなく、|ただの地面《・・・・・》なのだから!
「地形データなので爆破無効ですわー! 残念でしたわね!」
ぽよんと跳ね返ったグミが妖精の元へと戻っていく。妖精がグミの弾力で跳ぼうと飛び込んだ、その瞬間。ミノアが手のひらをひっくり返す動作を見せる。
「今ですわ! トラップカード発動!」
ドオォォォン!!
派手な爆発が妖精達を飲み込んだ。おかしい、プレイヤーはそこにはいなかったはず。いや、確かにプレイヤーはいなかった。妖精だけがそこにいたのだ。
「ほほほほ! 本命のトラップカードは伏せておりましたの! 持ち主なら爆破されないと思いまして?」
目には目を、爆破には爆破を! これには妖精達もビックリ。自ら撒いた巨大グミ爆弾から慌てて逃げ惑う!
「さぁさぁ、爆裂地雷ですわよー!!! あ、ちなみにわたくし【幸運】スキル持ちですの」
撃破した敵の数が多ければドロップ率もグンと跳ね上がり。数多の爆発の中で残ったのはクエストアイテム【星砂糖】だけであった。
「おほほ! ドロップが多いのって見てるだけで心躍りますわー!!」
爆発の数だけミノアは笑う。爆風に髪を靡かせる姿はまさに美しき迷宮の令嬢。……そう、見た目だけは。
「ところでこれ、どうにかして換金できませんこと?」
成功
🔵🔵🔴
バロン・ゴウト
縁結びの焼き菓子、伝説と呼ばれるからにはきっととびきり美味しいんだろうにゃぁ。(うっとり)
完成したお菓子を分けていただけるなら、張り切るのにゃ!
しかし攻撃にもトラップにも当たれば即死となると、なるべく色んなものに触れないよう気を付けなきゃなのにゃ。
トリニティ・エンハンスの風の魔力を纏って【空中浮遊】で移動するのにゃ。
【視力】を活かしてお菓子の妖精の動きを観察し、【先制攻撃】できそうな隙があれば風の魔力で空中を【ダッシュ】するように敵に一直線、風を纏ったレイピアで【串刺し】にゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
「伝説と呼ばれるからには、きっととびきり美味しいんだろうにゃぁ」
素材に一苦労掛けてまで作るものなのだから期待を裏切るものではないはず。だって『伝説』だもの。
まだ実物すら見ていないのに黒猫バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は語感だけでうっとり。プレイヤー達が張り切る気持ちもよく分かる。だからこそ自分も頑張らねば!
とはいえ今回は少しでも当たれば即死になってしまう戦闘。スピードで挑むにしても慎重に行かないと相打ちになってしまうかもしれない。
「音速で貫くにしても『当たった』ことになっちゃうかもにゃ。うーん……」
「だいじょうぶ? おかしたべる?」
「あ、これはどうも――って危ないにゃあ!!?」
危ない、お菓子の妖精が持ってたクッキーをうっかり手に取るところだった! びっくりした拍子に跳び上がったバロン。細い尻尾もぶわっと大きく膨れてしまった。
「もう! いつもの調子だと駄目なのにゃ! お菓子に釣られちゃ駄目にゃ!」
距離を取り、自分に言い聞かせているように声に出す。尻尾は暫く戻りそうにない。
お菓子を受け取って貰えなかった妖精は少し残念そうにしている。悪意は感じられないので純粋に渡したかったのかもしれない。
「ボクが気になってるのは『縁結びの焼き菓子』にゃ。だからここでは我慢するのにゃ!」
ぐ、と脚に力を籠めると、風の魔法を纏いバロンは地面を蹴った。先ほどびっくりした時よりも高い高い跳躍だ。
バロンは空中から戦場を見下ろすと、妖精達の動きに注目した。レベルの低い、いわゆる『雑魚モンスター』であるからか、それほど動きが素早そうには見えない。お菓子を渡したり遊んだりしているだけだ。であれば隙も多いことが分かる。
こちらに背を向けた妖精に目を向ければ、レイピアを構え、疾風の如く真っ直ぐに突っ込む。
「やっぱりボクには、スピードが欠かせないのにゃ」
地上に降り立ったバロン。妖精は驚いた顔でお菓子をばら撒き、ポシュウ、とやられた時のエフェクトとドロップしたアイテムを残して消え去る。
確かにレイピアは妖精を貫いていた。それなのにバロンは爆発しなかった。
「そうにゃ。|当たってなければ《・・・・・・・・》いいのにゃ」
風を纏ったレイピアはさしずめ『風の刃』といったところか。物理的に触れることのない武器は、この戦場において最も強力だろう。
「このレイピアに貫けないものはないのにゃ!」
バロンが振るうたび、レイピアはより一層きらきらと輝いた。
成功
🔵🔵🔴
不破・静武
フェリチェ・リーリエ(f39205)くんと参加。
えーこれ助けなきゃダメ?悪(=オブリビオンとリア充)と戦い正義(独り身的な意味での)を示す嫉妬戦士のボクが?ちっ。
んで今回の相手は?お菓子を受け取ると死。さりとて受け取らないと速度1/5にされて死。ハメ技じゃねえか。こんなハメ技使う奴はリア充に違いねえたぶん。消毒だ消毒。しかしどうすれば……
そうか!お菓子を楽しんでいない対象だから別に配られたお菓子でなくてもいいのか!ムリヤリすぎるわそれ?イーヤッ自然じゃッッ
ということでフェリチェくんがお菓子を持ち込んでくれるらしいのでそれを楽しみ、のち汚物を消毒。通じなかったら……フェリチェくんフォロー頼んだ!
フェリチェ・リーリエ
静武(f37639)と。
いやリア充どもを爆破してくれるのはおおいに歓迎なんだども!ガチでの爆破は洒落にならんでなあ…
爆発する菓子とかなるほどリア充にはぴったりのトラップ…ゲフンゲフン、受け取ったらマズいやつ!
そんな危ない菓子よりおらの菓子を食らえ!
指定UCを使い持ち込んだ大量のあんこで和菓子を作る。和菓子なら妖精のお菓子と区別もつきやすいでな、春らしいいちご大福や桜餅、ぼた餅などなどなんでもござれ!UC効果で速度低下も回復できて一石二鳥!
自分も和菓子食べつつ隙を見てリア充爆破スイッチをポチッと、【爆破】攻撃!爆破は嫉妬戦士の十八番だべ!
…うっかりリア充巻き込んでも事故ってことで☆(駄目だろ)
「これどーしても助けなきゃダメ?」
「ダメだろなあ今回は」
「えー」
どっちも敵なのに? リア充もオブリビオンも等しい悪なのに? そりゃないよ。
「悪と戦い正義をを示す嫉妬戦士のボクが?」
「リア充どもを爆破してくれるのはおおいに歓迎なんだども! ガチでの爆破は洒落にならんでなあ……」
「ちっ」
リア充が減る分にはおおいに結構なんだけど! でも依頼だから本音は涙と一緒に飲み込んどく。
「お菓子受け取ったら爆発って、そりゃもう清々しい光景……おっと失言」
結局本音を飲み込めない不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)。フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)と現場へ来てみたものの、そこは良くも悪くも大地雷原。
「リア充にはぴったりのトラップ……ゲフンゲフン、受け取ったらマズいやつ! こんなの用意できるのはリア充を分かってるやつ……つまりリア充だべ!」
「そうだな。受け取っても死、受け取らなくても速度1/5にされて死。こんなハメ技使う奴はリア充に違いねえたぶん」
そうだ全部リア充のせいだ。ってかここにはリア充しかいないのか。そう思ったら無性に腹が立ってきた。そしてその勢いで小腹も空いてきた。余計に|腹が立つ《むなしい》。
「人間こんな時でも腹は減るんだなぁ……でも妖精から貰ったら即死だしな、うーむ」
「仕方ないな静武、とりあえずこれでも食うべ」
よいしょ、とフェリチェが取り出したのは大福。静武に渡して二人で食べ始める。
うーん、心が落ち着く優しいお味。
「――ってそうか! 別に|配られたお菓子《・・・・・・・》でなくてもいいのか!」
彼は気付く。別に『妖精が配っているお菓子を楽しむ』必要はないのだと。何でもいいからお菓子を楽しめれば妖精のユーベルコードを受けずに済むんじゃないのかと!
「はー確かに! それだったらおらの出番だべさ!」
お菓子の量産なら任せろ、と意気込むフェリチェ。いざという時に持ち込んでいた大量のあんこが早速役に立ちそうだ。
「あっちは洋菓子、おらのは和菓子。これで見分けもつきやすいでな! ほーれ食らえ!」
職人の顔付きとなった彼女は突如、1秒につき約14個の大福を大量精製し始めた! 素人には見えないその手捌き、まさに神業。いや、見事なユーベルコード。
あんこを丁寧に包み込み、美しい楕円形に形作られた色とりどりの大福が山積みになっていく。ちゃんと包装までされているので衛生面も問題ない。
「春らしいいちご大福、桜餅、ぼた餅などなどなんでもござれ! もってけ泥棒!」
「さすがフェリチェくん! ボクたちにできない事を平然とやってのけるッ」
作られた大福たちは妖精だけでなくプレイヤー達にまで手に渡り、『爆発しないお菓子』として美味しく広まった。妖精も大福に夢中のためプレイヤーに手を出さない。一時の平和が訪れたのだ。
「な~~~にが一時の平和じゃ!! |汚物《リア充》は消毒だ~~~~!!!!」
静武は忘れていなかった。これはリア充によるリア充のためのリア充イベントなのだと。
「ヒャッハ~~消毒じゃ~~!! これが漁夫の利って奴ねきっと!」
リア充のその笑顔! 一つたりとも許さん! 妖精と一緒に燃えるべし! 静武は怒りの炎をぶっ放した。もはや敵もプレイヤーも関係ない。マグマの如き炎が津波のようにすべてを飲み込む。
「勿論おらも忘れてないべ。ほら、爆破は嫉妬戦士の十八番だから! ってことでポチっとな」
フェリチェも謎のスイッチをポチっと押せば、何処からともなく爆発音が鳴り響く。これは妖精の仕業ではない。何故か敵(リア充含む)が爆発するスイッチなのだ。集団戦だし無駄にポチポチしちゃう。
せっかく作られた平穏の地は一瞬にして戦場へと戻った。嫉妬の力があれば平和も破滅も意のままなのである。
オブリビオンという汚物もリア充という汚物も、清々しく爆破してやった。目標の妖精も粗方消えてドロップ品もいっぱい。
あースッキリした! ――と思いきや。
「――な、何ィ!!?」
静武とフェリチェは驚愕した。炎と爆破の中でプレイヤー達が無傷で立っている!
「フレンドリーファイアが……効かない、だと……」
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
陽環・柳火(サポート)
東方妖怪のグールドライバー×戦巫女です。
悪い奴らはぶっ潰す。そんな感じにシンプルに考えています。
戦闘では炎系の属性攻撃を交えた武器や護符による攻撃が多い。
正面からのぶつかり合いを好みますが、護符を化け術で変化させて操作したりなどの小技も使えます。
全力魔法使用後の魔力枯渇はにゃんジュール等の補給で補います
名刀『マタタビ丸』は量産品なので、もしも壊れても予備があります。
ユーベルコードは指定した物を使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動し他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
あとはおまかせ。よろしくおねがいします!
伝説のお菓子とやらはにゃんジュールよりも美味いものなのか。一手間掛かるらしいがこれだけの男達が命を懸けて求めているのだ。気にならないこともない。
「にしても爆発かぁ」
物騒だぜ、と陽環・柳火(突撃爆砕火の玉キャット・f28629)が腕を組む。目の前は爆発の嵐。だけど火薬の匂いなんて何処にもなくて、むしろ香ばしい焼き菓子の匂いが漂っている。
「あの敵に触れないようにするんだっけ? 直接ぶっ飛ばせないのが煩わしいな」
そうじゃなければもっと簡単だったのに。まぁ仕方がない。
「んじゃ爆破には爆破だ! とりあえず喰らっとけ!」
近距離が無理ならまずは遠距離。柳火が護符を数枚投げ付けると、波打つように飛ぶ護符がお菓子の妖精の元へと接近する。
なにかしら、と妖精が気を取られればそれが最後。ドォン!! と反応したかのように護符は大爆発を起こした。その爆発に連鎖するように、他の護符や妖精も派手に爆発していく。
「へっ、なんだ。あっちに遠距離がないなら先手打ちゃアいいだけか!」
お菓子なんて支給させない。その前に爆破に巻き込む。爆裂弾と化す護符を弾幕の如く撒けば、もはや相手のユーベルコードなんて届かない!
「昼間から派手な花火だぜ。……ん?」
ふと地面に光る何か。近付いて拾ってみれば、それは白い粉の入った小ビンであった。
「あー、これがどろっぷあいてむ、か? これを集めりゃいいんだな」
キラキラと陽の光を反射する硝子と砂糖。角度を変えて輝きを眺める柳火。
すると、爆風の中からゆらりと人影が現れた。それは柳火の背へ触れようとし――。
「邪魔すんな」
だが彼女は許さない。振り向きながら投げ付けたのは名刀『マタタビ丸』。ギラリと光った金色の眼が捉えた獲物を逃がさない。刀に貫かれた妖精は、柳火に触れることも声を発することもなく爆発した。
「ちっ、すまねぇ……ありがとな、マタタビ丸」
つい手が出てしまった。
代わりはたくさんあるとはいえ、言葉を送ることは決して忘れない。柳火はそういう|妖怪《チンピラ》だ。
成功
🔵🔵🔴
第2章 冒険
『森林エリアの大冒険!』
|
POW : 木々を薙ぎ倒して道を切り拓く!
SPD : 足跡などの痕跡からルートを考える!
WIZ : 獣除けの香を焚いて危険を回避!
👑7
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
お菓子の妖精の集団は粗方いなくなり、お目当てのクエストアイテム【星砂糖】も手に入った。無事だったプレイヤーに紛れて次のエリアへと進む猟兵達。
ここは『チョコラータ森林』。この場所に住む真っ白な鶏を探し出し、【雪玉卵】を貰うことが目的だ。
鶏の数は多いので難易度は特別高くない。そっと声を掛けたり調べたりすれば簡単に落とすらしい。
一見平和そうな森だが、忘れてはならない。この場所もバグってるのだと。
突然、木から落ちてくるリンゴ。
脚のように根っこを動かし歩く大木。
何故か人懐っこい小鳥。
これらも全部当たれば『即死』。つまり爆発する。
「ぎゃあ! 木が! 木が襲ってくるうぅぅ!!」
「チュピピ」
「あっ」
ドオォォォン!!
察する間もなく次の瞬間には爆発四散。ここもまた地雷原のような爆発オンパレードであった。
そう、最大の難関はクエストアイテムの採取よりも、森を無傷で突破することだ。
【雪玉卵】を手に入れ、森の奥にそびえ立つ城へと向かうため、猟兵達はバグの森へと立ち向かう。
★|攻略サイト抜粋《補足》★
・木の下にいると、狙ったかのように頭上からリンゴが落ちてくる。
・普通の木に触れても爆発はしない。根が剥き出しになり歩き回っている木のみ|即死《爆発》判定がある。
・小鳥に悪意はない。
・鶏はトラップに巻き込まれない。
バロン・ゴウト
さっきはうっかりクッキーを貰って爆発する所だったのにゃ。
森はさっき以上に爆発トラップが多いみたいだし、今度は気を抜かないように挑むのにゃ!
再び【トリニティ・エンハンス】の風の魔力を使うのにゃ。
降ってくるリンゴや寄ってくる小鳥は風を操って【吹き飛ばし】、歩く大木からはボク自身を風で【吹き飛ばし】て避けるのにゃ!
【聞き耳】を立てながら森を進み、鶏の鳴き声がしたらそちらへ進み、真っ白な鶏を見つけたら声を掛けるのにゃ。
白い鶏さん、卵を分けてくださいにゃ!
雪玉卵を手に入れたら来た時と同じく風の魔力を使って森を出るのにゃ。
もちろん卵を割らないように気を付けるのにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
危ない危ない、やっぱりこのクエストは危険だ。
「クッキーの罠……危なかったのにゃ」
うっかりが命取りになるのはいつものことだけど、それ以上に気を引き締めなければ! バロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)は改めて自身へそう言い聞かせるのだった。
「とはいえここはお菓子の罠はなさそうにゃ。なんか……変な森なのにゃ」
さっきもヤバかったのに次の場所もヤバそう。のしのしと歩く大木はバグってるというよりもはやモンスターの部類だ。今のところ草原の茂みに身を潜めてやり過ごせているが……。
(「前後左右いつ接近しててもおかしくないのにゃ。こうやって隠れてるのだって、実は意味がないのかもしれないにゃ」)
大木だけでなく小鳥やリンゴだって対象だ。上下にも注意しないといけない。もしかしたら危険なマタタビだってあるかもしれない!
だが、そんな状況に置かれても慌てないのが紳士というもの。前回の反省を振り返り、それを活かすのもまた紳士。
レイピアを構えながら歩く大木たちを観察し、森の音を聞き、ただじっと待つ。
じっと待ち、じっと待ち、――木々の隙間が見えた瞬間。
「そこにゃ!」
バロンが動く。レイピアと全身に風を纏い、飛ぶように真っ直ぐと走り出した。
突き出したレイピアを先頭に、バロンが木々の間をすり抜けていく。猫が突然飛び出してきた、という域を超えた俊足。風の魔力に押し出される木々は、まるで道を譲っているようにも見えてしまう。
「ピピッ!?」
勿論、小鳥やリンゴも彼には近付けない。突然の突風に巻き込まれたかのように、何も分からず吹き飛ばされる。
さて、歩く大木の群れの横断に成功したバロン。一旦足を止めてすぐに隠れる。安心するにはまだ早い。三角の耳を動かし、向かう方向を再び探す。
「次はこっちにゃ!」
微かな音も聞き逃さない。すかさずバロンは左を向き飛んでいく。小鳥やリンゴを風で跳ね除け、辿り着いた先は――目的の鶏さん。
「ココッ?」
ガサッ、と茂みから飛び出してきた黒猫に驚く白い鶏。驚いたものの、すぐに気にせず草を啄ばみ始めた。……騒がしい環境に慣れてしまったのかもしれない。
「お食事中にごめんなさいにゃ。あなたが【雪玉卵】を産む鶏さんですかにゃ?」
普通の鶏よりも眩しい白色、そして立派な尾羽。きっと間違いないだろう。
「よかったら、卵を分けてくださいにゃ!」
「コケッ」
バロンの言葉に返事をした鶏は、もちもちした丸い身体を持ち上げその場を去る。そこに残されていたのは真っ白な卵。
「わ、立派な卵にゃ! ありがとうなのにゃ!」
まだ温かい卵を大事にしまうと、バロンは風を纏い、森の奥へと向かうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
卵は使い道が多くて便利で需要の高いアイテムですわね!
ちょっと多めに集めて、持ち帰ってプリンでもメイドに作りたいですわー!
優しく鶏をつんつん、【素材採取】!
そんな無防備な背中(おびき寄せ)に襲ってくる大木――しかしそんな奇襲は読み切っていましてよー!!
あらかじめ伏せて置いたトラップカード発動!(罠使い)
無数の鎖を【召喚】して拘束! 【侵入阻止】&【逃亡阻止】!
か~ら~の~! ドラゴン偃月刀で幹を【切断】! ずばー!
【龍の叡智】による【戦闘演算】でわたくしに不意打ちは通用しませんわー!!
爆弾リンゴも【斬撃波】で吹っ飛ばして、別の動く大木にぶつけて爆破ですわー!!
「まぁまぁ! 持ち帰ってプリンでもメイドに作りたいですわー!」
卵といえば使い道は色々! 美味しい卵であるなら尚のことたくさん持ち帰りたい!
「ということで早速! 鶏さんどこですのー!?」
比較的トラップの少なそうな森の入り口付近で、ミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)は鶏を呼ぶ。すると見事や見事、鶏はあっさりと見つかった。もちもちした丸い身体を持つ白い鶏だ。
「あなたが噂の鶏ですわね! ええと調べるのはこうかしら……つんつん」
「ココッ」
とりあえずつんつんしてみた。お尻をつつかれた鶏はちょっと移動した。するとそこにあったのは真っ白で綺麗な卵。これがクエストアイテム【雪玉卵】だ。
「まぁありがとう! もう少しいただけるかしら? わたくしの名人テクニック見せてあげましてよ! ほらっ!」
ツンツンツンツンツンツンツンツン。
「ココココkkkkkk」
名人もびっくりな1秒16連打の如きつんつん連打。コマンドの連打により鶏は何度も振動している。振動する度にドロップするのは勿論【雪玉卵】!
「いいですわね~これで良いお土産ができましてよ!」
帰りの楽しみもできて上機嫌なミノア。しかしその背後に忍び寄る巨大な影。動く大木withリンゴだ!
そう、ここはバグった森。今は決して平和ではない森。鶏に気を取られて彼女はトラップを忘れてしまったのだろうか?
答えは勿論、NOである。
「あらー? もうそんなお時間でしたの?」
わざとらしい呟き。振り返ってもいないのにまるで|分かっていたか《・・・・・・・》のような口ぶり。ここで鶏を相手をして、その隙に敵が襲ってくることも、すべてが計算通りだとしたら?
「既にバトルは開始していましてよー! トラップカード発動!」
ミノアの合図とともに地面が光る。バトル場に|仕掛けて《伏せて》おいたカードが発動し、無数の鎖が大木を襲う!
接触した大木はその場で爆発を起こした。それにより何が分かるのか。そう、『爆発する大木』と『爆発しない大木』である。
「こちらですわね!」
ここでやっとミノアが動き出した。ドラゴン偃月刀を構え、すぐさま『爆発しない大木』を横へ一刀両断。大木が倒れた先には他の大木。連打する爆発。これもすべて膨大なリソースを割いた彼女の戦闘演算である。
「わたくしに不意討ちなど通用しませんわー! ここのトラップなど百手先まで読み切りましてよー!」
高笑いは伊達じゃない。偃月刀をくるくる回しながら飛ばす斬撃波だって適当ではないのだ。これもまた、斬撃波でふっ飛ばしたリンゴで爆発の連鎖を起こし、背中で爆風を浴びるためのものである。
「う~ん、爆発をバックに映す演出……とっても|清々しい《カッコいい》ですわー!!」
大成功
🔵🔵🔵
不破・静武
フェリチェ・リーリエ(f39205)くんと参加。
即死リンゴが飛んでくる……こ、これは突破した暁には一人前の男になれそうなそんな感じのトラップ群だ。ボクは男になりたい!あいわなびーざがい!
とりあえずだ。こんなわけのわからないものを作ったやつは間違いなくリア充に違いねえ。本当にねえ、リア充だけ狙ってくれたらこっち側の人間だったんだけど、ボクたちまで狙うならリア充と言うしかない。
で、どうするか。リア充は消毒あるのみ。ならばそう、目にする全てを消毒するのが答えなのだ。早速リア充ころし(焼却)を構え、全てを焼き払うのみ。リア充は消毒だ~!!
第1章でPKできなかったのと同様に鶏は焼け残るだろう。たぶんね。
フェリチェ・リーリエ
静武(f37639)と参加
リア充だけ狙って爆破してくれたらいいのに…非リアのおら達に爆破されるいわれはねえべ?たしかに男女ペアだども!ただのしっ友だから!それ以上でもそれ以下でもねえから!
つーわけでうっかり爆破されんように気をつけて行くべ!
木の下にいると爆発するリンゴ落ちてくるみたいなんでおらはヴァルキリーの翼で空飛んでいくわ。おう静武も頑張って男になってこい!
オラオラそこのけ嫉妬戦士が通るべ!とリア充への怒りを【殺気】として放ち、人懐っこい小鳥を回避。動き回る木を見つけたら接近される前にパンプキンボムを投げつけ爆破!爆破される前に爆破だべ!
爆発するリア充は見捨てて進もう…ってのはやっぱ駄目?
「気を付けろフェリチェくん! ボクはこれを知っている!」
「え! え、知ってる!? ってなんだべ?」
森のトラップに気付いた不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)が咄嗟に腕を突き出し、フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)の足を止める。
「これはあれだ……一瞬でも油断したら死ぬタイプのあれだ。万有引力の概念は捨てろ。リンゴが垂直に落ちてくるとは限らない。トゲにも注意しろ!」
「トゲ!?」
「つまりこれは即死ゲーかつ覚えゲー。それをノーミスで突破した暁には一人前の男になれそうな……そんな感じのトラップ群だ。ボクは男になりたい!」
クリアして立派なガイになるんだ。そういった熱意を溢れさせる。
「お、おぉ……言葉の意味はよく分からんけど、とにかくすごい自信だべ!」
とりあえず攻略法を知っているのなら大変心強い。フェリチェは早速奥にある大木を指差す。
「んじゃ例えばあのリンゴ。近付かなきゃいい、って訳じゃないんだべか?」
「そうだ油断するな。きっとあのリンゴは……」
そっと静武が一歩踏み出す。リンゴは動かない。再び一歩踏み出す。するとリンゴは、
「来たッ!!」
獲物を狙うかのように斜めに落ちてきた! 静武は咄嗟に下がり避ける。地面に着地したリンゴは爆発した。アブナイ!
「ひえっ本当だったべ! さすが静武だべ!」
見事に避けた静武に驚きと感心を覚えるフェリチェ。これがまだ|序の口《基本》トラップであることを彼女は知らない。
「くそっ、こんな訳の分からないものを作ったやつは間違いなくリア充に違いねえ。リア充だけ狙うトラップとかだったらワンチャンこっち側の人間かもしれねえのに」
「……ハッ」
静武のボヤキから突然何かに気付いた様子のフェリチェ。
(「いやいや、おら達は非リアだべ! 確かに男女ペアだども! ただのしっ友だから! それ以上でもそれ以下でもねえから!」)
もしかして一緒にいるからリア充判定されてるのか? まさか、嫉妬戦士の自分が!
「そ、そうだ、おら空飛べるんだったべ! 空から鶏を探しつつ、トラップはリア充もろとも爆破してやるべ!」
「確かに空なら危険はまぁ……少ないだろうたぶん。よし、地上は任せろ!」
「おう、静武も頑張って男になってこい!」
激励の言葉を残しフェリチェは空へと飛び立つ。木々を超えて空から見下ろせば、確かに動く大木やリンゴは容易に確認できた。とりあえずあれに気を付ければいいだろう。
そうなると最も意識すべきトラップは一つ。小鳥だ。
「ピピッ」
早速やって来た小鳥。何気なくフェリチェへと近付くが。
「あ゛ァ?」
「ピュッ……」
今までに感じたことのない殺気。目と目が合った小鳥はすぐさまUターンをした。怖い。あんなのに近付いたらヤバいと、本能的に体が動いたようだ。
「オラオラそこのけ嫉妬戦士が通るべ! このスーパーパンプキンボムを喰らえ!」
自由農夫の代名詞の一つ、パンプキンボムを空中からぶん投げるように落とす。その効果はバグったクエストと同じく『触れると爆発する』。嫉妬の籠った爆発は並ならぬ破壊力。木々もリンゴも小鳥もみーんな爆発四散!
「いい爆発だフェリチェくん! 空中からならボクは地上から消毒だ~!!」
そうだ、本家と違うところは『当たり判定』があることだ。ならばリア充ごと燃やせばよい。静武も思う存分両腕を突き出し汚物の消毒に勤しむ。
「(悲しいけど)どうせ燃やせないもんな~~リア充は~~くそっ!! リア充め!!」
本当に燃やしたいのは木でもリンゴでもトゲでもない。こんなに嫉妬を籠めた炎で燃やそうとしてるのにリア充たちは「おっやってんなサンキュー」みたいな顔して通り過ぎていく。その感謝の眼差しが余計に腹立つ!
「なんだべあの態度! やっぱリア充ってサイテーだべな! ……ん?」
ぷりぷり憤怒するフェリチェ。そんな彼女の視界に何やら気になる影が映る。
「なんかいい匂い……あっ」
爆発と炎上の跡地に残されていたのはいい具合に焼けた鶏。その傍らに転がる白い卵。どちらも焼けてるが普通に活動してるっぽい。
「もしかしてこれが鶏と【雪玉卵】だべか? ……使えんの?」
こうして森林は炎上と爆破跡でいっぱいになったとさ。さぁ残るはお城のボスただ一人。
その正体はさておき果たしてヤツは|リア充《敵》なのか、|非リア充《仲間》なのか。そこだけが問題だ。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第3章 ボス戦
『バグ・ノーブル』
|
POW : ノーブル・レイピア
【細剣型トリリオンソード】に【貴族の資金力】を注ぎ込み変形させる。変形後の[細剣型トリリオンソード]による攻撃は、【服従】の状態異常を追加で与える。
SPD : ノーブル・ドミナント
【貴族社会】に密着した「己が武器とみなしたもの」全てを【口頭の命令】で操作し、同時一斉攻撃及び防御に利用できる。
WIZ : 貴族私兵団
【配下の傭兵団の中】から1体の強力な【バグプロトコル化した伝説的な傭兵NPC】を召喚する。[バグプロトコル化した伝説的な傭兵NPC]はレベル秒間戦場に留まり、【設定された武器とスキル】で攻撃し続ける。
イラスト:落葉
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
森林に佇む謎の城。そこへ突入した猟兵達と男プレイヤー達の目の前に、城の主が登場する。
「あれ!? あいつ……グバ・ルコトロプ!」
プレイヤーの一人が叫んだ。そう、クエストを頼んできたNPCだ。しかし陽気な雰囲気は全く感じられない。
「フン、『縁結び』と言えば釣れると思ったが、まさかこうも馬鹿共が多いとはな」
縁結びと言えば、クエストクリアの報酬『縁結びの焼き菓子』。
「つまり……女からチョコを貰った野郎がこれだけ多かったということだ。片っ端から消し去るつもりだったが、ここまで来る奴もいるとは……腹立たしい」
「……まさかお前、それって」
「うるせぇッッッッ!!!!!」
プレイヤー達に怒鳴り付ける城の主『バグ・ノーブル』。それは紛れもなく憎しみを籠めた叫び!
「ンなお菓子あってたまるか!!!! リア充どもめ!!!! ばーーーーか!!!!!」
なんという子供めいた罵倒! 突然の告白に猟兵達は驚愕した。それに付け足しプレイヤー達は酷く落胆した。
「嘘、だろ……命賭けてここまで来たのに……」
「残念だったな。貴様らリア充など爆破して消えればいいのだ。精々『リアルの世界』に戻り絶望しろ!」
哀れ。憎しみに囚われ己自身をバグらせてしまったのか。バグ・ノーブルは自身に『即死効果100%』を設定し、猟兵達に剣を向ける。
「俺は一度も!! 青春なんてしたことなかった!! 貴様ら全員爆ぜて死にやがれ!!!」
バロン・ゴウト
ガーン!楽しみにしてた焼き菓子が無いなんてあんまりなのにゃ……(ショボーン)
そういえば依頼人の名はグバ・ルコトロプ、バグプロトコルのアナグラムだったのにゃ。
他人への嫉妬で嘘ついた上に爆発バグまみれにするなんて最低なのにゃ!
食べ物の恨みの怖さを思い知るといいのにゃ!(ぷんすか)
三度のトリニティ・エンハンスの活躍にゃ!
まず水の魔力で水球を作り、【先制攻撃】でソードの変形中の敵にぶつけて攪乱するのにゃ。
敵が怯んでる隙に【ダッシュ】で近づき、レイピアに纏わせた炎の魔力で攻撃、直接的に触れないようレイピアを振るって敵をこんがりにゃ!
絡み、アドリブ大歓迎にゃ。
「ええっ? ほ、本当に焼き菓子ってないのにゃ!?」
「ああ何度でも言ってやる! そんなもの作ってやる筋合いはない!」
「ガーン!!」
衝撃の事実に動揺を隠せないバロン・ゴウト(夢見る子猫剣士・f03085)。どんな相手だろうとバグ・ノーブルは容赦なく冷たい言葉を吐き続ける。
「料理人が作ってくれるって信じてたのに! 身分も名前も嘘だったのにゃ!」
そう、すべてはリア充を陥れるためだけに。これは許すことのできない『身勝手』である。
「他人への嫉妬で嘘ついた上に、爆発バグまみれにするなんて最低なのにゃ! 食べ物の恨みの怖さを思い知るといいのにゃ!」
「フン、馬鹿言え! 俺の恨みより勝るものはない! 秒で終わらせてやる!」
バグ・ノーブルは己の強さに絶対的な自信があった。何故なら『即死』という効果は最強の防御であり最強の武器でもあるから。
だがここまで数々の即死トラップを潜り抜けてきたバロンにとって、それはもう最強のものではなくなっていた。
「即死効果は強いけど、決して万能じゃないのにゃ!」
レイピアで素早く円を描き作り出したのは水球。それをバグ・ノーブルに向けて放つと、相手は腕を振るって水球を弾き飛ばした。
「そんなもの! くっ……!」
彼は一つ余計なことをしていた。『即死=爆発』にしたことだ。つまり水球が腕に当たると、水球が爆発するのだ。パァンと弾けた水がバグ・ノーブルに直撃する。冷たい水を浴びて怯んだその隙をバロンは逃さない。
「ふざけた小細工を! どこいった!」
「ここだにゃ!」
バロンが駆けた場所は相手の背後。懐をめがけて炎を纏ったレイピアを構える。その気配に気付いたところでバグ・ノーブルに避ける隙はない。だが彼には余裕があった。
「攻撃してみろ。死ぬのは貴様だ」
体に触れた瞬間、目の前で爆発する黒猫を想像したのだろう。だから彼はあえて何もしなかった。その油断が仇とは知らずに。
「ボクが教えてあげるにゃ。魔法が弱点だってことをにゃ!」
炎のレイピアを大きく薙ぐ。バグ・ノーブルを引き裂いたのはレイピアそのものではなく炎の刀身のみ。
「ぐぁ……っ!! 馬鹿な何故!?」
「おりゃー! 焼き菓子の代わりにこんがりにゃ! いや、真っ黒に焦がしてやるにゃ!」
もはや防ぐ術を持たないバグ・ノーブル。バロンはありったけの悔しさを籠めた連続突きを放つ。こうなったら早く帰って自分で作るにゃ! という思いも籠っていたかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵
ミノア・ラビリンスドラゴン
天啓的な騙して悪いが案件ですわね
依頼人の名前の時点で察していましたので、特に動揺はありませんわー!
青春したことないと憤られてますが、わたくしたちはAIですのよ?
「そういう設定」で生まれただけのことですわ
意志を持ったのなら未来は変えられるというのに勿体ない、バグならば打ち倒しましてよー!!
迷宮の宝物庫と空間接続!
【龍の財宝】を【一斉発射】! 着弾すれば【爆破】しますわ!
わたくしも没落したとはいえ貴族は貴族! そしてドラゴンプロトコルでしてよ!
そちらも貴族のようですが、はたして細剣一本でどこまで凌げるかしら?
【弾幕】で処理落ちさせてさしあげますわー!!!
「まぁまぁ、このクエストってそういうオチですの?」
改めて城の主の正体を聞いたミノア・ラビリンスドラゴン(ポンコツ素寒貧ドラゴン令嬢・f41838)。しかし彼女に驚きはない。あぁそう、とつまらなさそうな態度を見せていた。
「依頼人の名前に捻りがないので察していましたけれど、思ってたより典型的でしたわね」
「フン、所詮はリア充を呼び寄せる為のクエストだ」
あくまでバグ・ノーブルの狙いは、クエスト受注したプレイヤーを爆発させること。ここまで辿り着きクリアさせることなど想定していないのだ。
「難易度の高いクエストは良しといたしますけれど、クリアさせる気のないクエストなんてGM失格でしてよ!」
「黙れ! 俺はこの世界で『|ルール《クエスト》を作れる』! それを利用してリア充を消し去る! それだけだ!」
駄目だ、ただひたすらにリア充を恨んでいる。そんな彼をミノアは哀れな目で見つめる。
「はぁ、せっかく『意志』を持ったのなら未来は変えられるというのに……勿体ないですわね」
彼と自分の共通点はAIであること。この世界に生み出されてからは『そういうキャラクター設定』として行動してきたはずだ。
だがひょんなことからAIというシステムを凌駕して『自らの意志』というものが芽生えた。それを手に入れたからには『キャラクター設定』などというものも変えられたはずなのに。
「猟兵として目覚めてなければ、わたくしもこうなっていたのかしら? まぁ仕方ないですわね、バグならば打ち倒しましてよー!!」
ともあれバグとは見過ごせないもの。この危険なクエストを強制排除するためにも彼を倒さねば。
「ところでこちら、立派なお城ですわね! あなたも貴族でしたら立派な財産をお持ちでして?」
「なんだ金目当てか? これだから女ってのは……」
「そういう所が非リアなのですわー!!」
人の話を最後まで聞かない男なんてモテませんわ!
「わたくしも没落したとはいえ貴族は貴族! そしてドラゴンプロトコルでしてよ! つまりわたくしがやりたいのは、そう! 財宝バトルですわー!!」
突然ミノアの前に異空間が開く。その奥に広がっていたのは敷き詰められた眩しい黄金の山。彼女自慢の宝物庫である。
「ごらんあそばせ、わたくしが貯め込んだ財宝の数々! 大盤振舞いでしてよー!!!」
腕を広げれば、異空間から大量の【龍の財宝】が勢いよく雪崩れ込んできた! 真正面から数多の財宝を|見せ付け《押し付け》られるバグ・ノーブル。勿論その量を細剣型トリリオンソード一つで防ぐことなど不可能!
「なんだこれは! なっ、潰されッ……!!」
財宝の波に飲まれるバグ・ノーブル。体の自由を奪われていくが、どこか違和感を感じる。これは|物量の重さ《・・・・・》だけではない。
――まさか、そんな馬鹿な。
「|空間が《・・・》、|重い《・・》、だ、と……ッ!!?」
「あら、もう容量不足でして? あと130秒くらいは頑張って欲しいですわ~~!!」
バグ・ノーブルと雪崩れ込む財宝の動きがガクガクし始め、徐々に画質も悪くなっていく。即死効果による爆発も遅延し、ゆっくりと、長い長い爆発エフェクトが続くのであった。
戦場ではミノアの笑う姿だけが美しく、そして滑らかであった。
大成功
🔵🔵🔵
フェリチェ・リーリエ
静武(f37639)と参加
うぉぉぉ分かる、分かるべ同志よ!菓子贈りあってイチャつくリア充共めっっちゃ腹立つべな!
けど菓子には罪ねえだ、せっかく集めた材料ももったねえし菓子作るべ!
指定UCでこれまで集めてきた材料を使いクッキーやフィナンシェ等の焼き菓子を作り状態異常に対抗しつつボスにもお裾分け。うまくいけばあるいはボスの即死バグも消えんかな?
縁結びの菓子はリア充を釣る餌だったかもしれんけども、志を同じくする同志と世界を超えて会えたって意味ではこれも縁結びなんでねえかな?おらは男嫌いだどもしっ友には優しいだよ。
でもどうもならんかったら仕方ないんで泣く泣く爆破スイッチで【爆破】する。すまんっ同志よ!
不破・静武
なんということだ。実はきみは同志だったというのか。その気持ちわかる、わかるぞッッッ。リア充を憎む者同士でなぜ戦わねばならぬというのか。きみとは戦いたくないッッッ
ほらせっかくフェリチェくんがうまい菓子を作ってくれるというのだ。同じ嫉妬戦士がこうして出会ったのも何かの縁、一緒に食べようではないか。それが終わったらどこへなりとも去るがいいッッッ
それでも戦闘になったらなんとか理由つけて相手を無理やりリア充と決めつけてリア充ころし(焼却)で消毒を図る。リーチの差で一方的に殺し切れば即死も大丈夫だろう。生まれ変わった時には正しい白の嫉妬に目覚めている事を願っている。その時はシン・嫉妬旅団でまた会おうぞ。
「うぉぉぉ分かる、分かるべ同志よ! 菓子贈りあってイチャつくリア充共めっっちゃ腹立つべな!」
なんてこった、ボスは仲間だった! フェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうきゅうさい・f39205)は悲しきバグ・ノーブルに同意せざるを得なかった。
「なんということだ。実はきみは同志だったというのか」
彼のやったことは(世間一般では)悪いこと。だが彼の行いには不破・静武(人間の非モテの味方・f37639)も頭がもげるほど頷くしかなかった。
勿論、この二人の反応にはバグ・ノーブルも困惑している。
「どういうことだ……俺を否定しないのか?」
「しないしない! リア充は憎むべき相手。煮るなり焼くなり爆ぜるなり、どうなってもいいヤツらだ!」
「我々シン・嫉妬旅団は応援するべ!」
想定外、想定以上の肯定。驚いて固まっていたバグ・ノーブルは――やがて崩れるように膝を着いた。
「うっうっ……俺は……」
彼は地面に拳を叩き付けながら泣いていた。情けない姿に見えたかもしれない。だがそれを責める者は周りに誰もいなかった。
「他人がさ、イチャイチャしてるの見るとさ……なんかこう、ギュッて胸の奥が痛くなるしむず痒くなるし、それがすごく嫌でさ……」
「そうか、辛くてイライラしてたんだなあ」
うっかり肩をぽんぽんしかけたが触れると死んでしまう。静武はぐっと我慢した。
「悪いのは全部リア充だべ! けど、菓子に罪ねえからよ。せっかく集めたんだ、ちょっと作らせてもらうべ!」
今まで拾ってきた【星砂糖】と【雪玉卵】。それらを取り出しフェリチェはユーベルコードを披露する。見事な早業で次々と焼き菓子が出来上がっていき、いい匂いが漂い始める。
そのいい匂いが部屋に充満するとどうなるのか。そう、腹が減る。
「どうだ美味そうだべ? よかったら食べるべさ!」
フェリチェに勧められ焼き菓子の入った包みを手に取る。爆発はしない。作り立ての焼き菓子の山を三人で囲んで食べてみる。
「うん美味い! さすがフェリチェくんだ! さぁ同志よ、よかったらきみの愚痴を聞かせてくれないか」
「い、いいのか?」
「嫌なことは皆で共有だ! 仲間とはそういうものだろう!」
もしかしたら、バグ・ノーブルに必要だったのはこういった仲間だったのかもしれない。初めての感覚だった。彼らの優しい提案を、彼は否定することができなかった。
バグ・ノーブルはぼそぼそと語り始めた。リア充に対して感じたこと、悲しかったこと、ムカついたこと。お菓子を食べながら静武とフェリチェは聞き入った。時には一緒に悲しみ、憤り、彼の気持ちに強く共感した。
異を唱えることなくただただ共感してくれる二人に、バグ・ノーブルは無意識に表情を和らげていた。
「ふぅ、なんだかスッキリした。こんなの初めてだ。お前らは優しいな」
「別に特別優しくしてる訳じゃない。何度も言うけど、嫉妬戦士に猟兵もそうでない奴も関係ないということだ」
「そうだべそうだべ。縁結びの菓子はリア充を釣る餌だったかもしれんけども、志を同じくする同志と世界を超えて会えたって意味では……これも縁結びなんでねえかな?」
「そうか、なるほどな」
とんだ縁結びだ、とバグ・ノーブルは微笑んだ。
即死も爆破も起こらない、ボス戦らしくない平穏な時間が流れた。しかしそれも永遠に続くことはない。ありったけの愚痴を吐き終えたバグ・ノーブルは清々しい気分になっていたのだ。最後の焼き菓子を食べ終えると、彼は言った。
「ありがとう、嫉妬戦士たち」
「どうした急に」
突然の礼に静武が冷静に突っ込む。
「俺は満足した。話しながら心の整理ができて……決めたよ」
「な、何をだべ?」
「何って……やられる決意だ」
「!!?」
静武とフェリチェは唖然とする。忘れてはならない。どれだけ志は同じでも、決して相容れぬ者同士であることを。
「リア充を恨む気持ちは変わらない……と思っているが、恐らく俺は嫉妬戦士にはなれない」
「な、なんで!? おらは男嫌いだどもしっ友には優しいだよ!」
「菓子を食べながら誰かと喋りまくる……俺はこれがしたかっただけなのだと気付いたんだ。今の俺は『リア充』なのかもしれない」
「ナ、ナンダッテー!!?」
なんと、嫉妬の話に花を咲かせてしまったせいで『リア充』を感じてしまったらしい。
「ま、待て待て! イチャイチャのリア充を恨んでいたのだろう! そうだろう!?」
「うるさい黙れ! 俺はリア充だ!!」
突如立ち上がるバグ・ノーブル! 二人を見下ろし睨み付ける。その姿はまるで悪役のようだ!
豹変したバグ・ノーブルに驚く二人だったが、そこは先まで語り合った者同士。すぐさま彼の心に気付く。
「さぁ俺こそがバグ・プロトコル! そしてリア充だ! 嫉妬戦士よ、俺が殺れるか!?」
「いやそんな……どうするべきだべ静武?」
困ったフェリチェが静武に顔を向ける。腕を組み長考した後、静武は重々しく立ち上がり、言葉を返した。
「……リア充は消毒するべきだ」
仁王立ちをするバグ・ノーブルに向け、静武は怒りの炎を放った。相手はプレイヤーではなく敵シンボル。今までとは違い、攻撃が当たるのだ。
「くっそ~~~リア充は燃えろ~~~!!! 今だやれフェリチェくん!!」
炎に包まれるバグ・ノーブル。静武の合図に、フェリチェは指を震わせながらも意を決する。
「……すまんっ同志よ! 今度は普通に会おうな!!」
彼女によって爆破スイッチが押される。バグ・ノーブルは最後に穏やかな表情を見せ、親指を立てながら大爆発を起こしたのだった。
クエスト主が消滅したことでバグまみれのクエストは強制終了し、プレイヤーたちはクエストから解放された。報酬であるホワイトデー用のお菓子を諦めたプレイヤーたちは解散していく。
静かになった城の中、最後まで残ったのは嫉妬戦士の二人だけ。
世間一般的には悪い行いをしたかもしれない。だが、話せば分かる相手なのかもしれない。そういう奴だっているのだと、今回知ったのだ。
「生まれ変わった時には正しい白の嫉妬に目覚めている事を願っている。その時は――シン・嫉妬旅団でまた会おうぞ」
今度は共に手を取り合えることを祈って。嫉妬戦士たちも帰路につくのだった。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵