Dia dos Namorados
ウィリアム・バークリー
妻のオリビア・ドースティン=バークリー(f28150)とデート
オリビアからバレンタインデートに誘われて、灰色のコートを羽織って会場のお店へ。
その服、よく似合ってるよ、オリビア。
さすが、St.バレンタイン・デイ・フェアの会場だね。ペアの食器が色々ある。オリビアは何かお目当てがあるの?
うん? そのマグカップが気になる? へえ、朝と夜だね。もうチョコレートが入ってるのか。
じゃあ、まずはそれを買おう。他に気になるものがあれば買っていこうか。
荷物を持って帰宅。早速ティータイムにするの? それは楽しみだね。
手作りのガトーショコラか。それは楽しみ。今日買ったティーセットからはベルガモットの香りが立ち上っていて。
うん、美味しいよ。ところで、あのマグカップはまた後で出てくるのかな?
オリビア・ドースティン
ウィリアム・バークリー(f01788)との合わせでバレンタインノベルです
バレンタインデートをするために今回はメイド服ではなくブラウス&カーディガン+マーメイドスカート(色合いは春らしいパステルピンクとブラウン)
「どうやらバレンタインフェアでペアの食器を取り扱ってるようなので見に行きませんか?」
そして二人で目的のお店へ
お店では多様な食器を取り扱ってますが今回は華やかな物が多いですね
「これはペアのマグカップのようですね」
綺麗な風景画が描かれたマグカップで朝と夜の光景という珍しいタイプのマグカップです
「そして中身はチョコレートが既に入っているようです、このままホットチョコにできるのがバレンタインらしい企画なのでしょうか」
色々吟味しつつウィリアム様と春らしいティーセットとホットチョコのマグカップを購入してから帰ります
帰宅したら先ほど購入したティーセットでティータイムです
「今日はバレンタインなのでチョコケーキを用意してあります」
昨日手作りしたガトーショコラとアールグレイの紅茶と合わせていただきます
「今回もお口に合うと良いのですがいかがでしょうか?」
●灰色のコート
妻であるオリビア・ドースティン(ウィリアム様専属メイド・f28150)が珍しく自分に言ったのだ。
いや、これではあまりにも色気のない言い方になるな、とウィリアム・バークリー(“聖願”/氷聖・f01788)は思い直した。
なので、もう一度妻であるオリビアの言葉を胸の内で反芻する。
「バレンタインフェアでペアの食器を取り扱っているようなので見に行きませんか」
簡潔な言葉だった。
けれど、ウィリアムにとっては、それが魅力的な誘いに思えたのだ。
つまる所、これはデートの誘いだ。
それも今日はバレンタインデー。
彼女から何か、という甘い期待がなかったのかと言われたら嘘である。あるに決まっている。
だから、彼女から誘われた時ウィリアムは喜色に満ちる表情を浮かべたのだ。
「勿論。他ならぬオリビアからのデートのお誘いだからね」
自分でも浮足立っているのがわかる。
季節は冬。
寒さが厳しい季節柄である。出かけるのならば、少し用意をしようと思ったがウィリアムはオリビアがすでに灰色のコートを手にしていることを見やり微笑む。
己の妻はソツのないメイドである。
自分がこうしたい、と思ったときには、すでに行動しているのだ。
なんとも気が利く。いや、行き届いていると言ったほうがいいだろう。
「でも、何処に出かけるんだい?」
「バレンタインフェアは大通りの先にある催事場にて行われております。散歩がてら、というのならば程よい距離かと思われますが」
「ん、そうだね。他に何か必要なものはあるかい?」
「マフラーと帽子でございましょう」
「それはそうだ。確かに今日は寒いからね。オリビアもしっかり着込んでね。風邪を退いたら大変だ」
「努めておりますので。それでは、しばしお待ちいただけますか?」
勿論、とウィリアムは首肯する。
女性の身支度というのは時間がかかるものである。
「1階で待っているよ。慌てないで良いからね」
そう告げてウィリアムはオリビアが部屋を辞するのを見送る。
いつものメイド服もウィリアムにとっては好ましいものである。
けれど、彼女がバレンタインデーにデートをしようと誘ってくれたのだから、当然彼女も着替えてくるだろう。いや、そうであってほしい。
ウィリアムは、やっぱり浮かれすぎているとな、と自分を見つめ直して鏡に映る己の頬のあかさを自覚するのだった――。
●バステルピンクとブラウン
「お待たせいたしました」
己がそう言って夫であるウィリアムの前に立つ。
彼の目が大きく開かれていた。驚いている。おかしな格好ではないだろうと思っていたが、いつもの服装ではないから彼も驚いているのかも知れない。
もしかしたら、似合っていないのか、とも思った。
けれど、それはウィリアムの言葉で遮られ、否定される。
「その服、良く似合っているよ、オリビア」
「ありがとうございます」
この日のためにオリビアはブラウスとカーディガン、マーメイドスカートを組み合わせた明るいコーディネイトでもってウィリアムの前に立っていた。
デートだから、と言うのならば当然であろう。
どうせならば夫に喜んでほしいと思ったのだ。
「少し惜しいと思ってしまうな」
「どうしてでしょう」
「君の素敵な姿を衆目に晒すのが、さ。でも外に出なければデートにならない。悩ましいと思う以上に独り占めできない口惜しさを感じてね」
「お上手ですね」
いや、僕は本気さ、と言う夫の言葉に知らず自分も頬が熱くなるような気がした。
こんな些細なやり取りでも嬉しいと思ってしまう。
とは言え、目的はデートだ。
外出しなければ始まらない。ウィリアムの手に導かれるようにしてオリビアは外に足を踏み出す。
冬の外気は冷たくも茹だった頬に心地よいと思えた。
バレンタインフェアが行われている会場は、よい散歩道になった。
ただ隣を歩むだけだというのに幸せが溢れてくるようだった。
もっと長く、とも思ったが会場にたどりつてしまう。
「ペアの食器が色々あるね。さっきも言ったけれど、他に必要なものがあれば遠慮なくいってね」
ウィリアムの瞳に映るのは色とりどりの食器の数々。
多く揃っているから、どうにも目移りしてしまう。こういう時に直感で素早く行動できればいいのだが。
「それ、気になる?」
「ペアのマグカップのようですね」
自分の瞳が、視線が注がれていたものを夫はすぐに見つけてくれる。
手に取ると、マグマカップの壁面に美しい風景画が描かれている。
朝と夜の光景。
珍しんな、と思ったのだ。
そして、バレンタインフェアというだけあって、カップの内側にはチョコレートが入っているようだった。
なるほど、と思った。
「このままホットチョコにできるようですね。らしいと言えます」
そういう企画なのかもしれない。
気が利いている。
「じゃあ、まずはそれを買おう。他に気になるものがあれば、それも」
「よいのですか」
「勿論さ。ダメだという理由がないからね。さあ、行こう」
夫はそう言って自分の手を引いてバレンタインフェアの会場を練り歩く。二人の揃いの食器を欲していたのは確かだ。
けれど、それ以上にオリビアの胸を満たしていたのは夫の優しさだった――。
●チョコレート
つかの間のデートを終えて、帰宅するとウィリアムは微笑んで、早速ティータイムにする? と尋ねる。
「はい。少々お待ちを」
「?」
オリビアがいそいそと厨房に消える。
どうしたのかな、とコートを畳んでウィリアムが応接室のソファに腰掛ける。
すると彼女がチョコレートケーキと茶器を盆に乗せてやってくるのだ。ああ、とウィリアムは己の頬が綻ぶのを感じた。
忘れていたわけじゃあなかったんだな、と。
「今日はバレンタインなので、チョコケーキを用意してあります」
先日から手作りで用意していたガトーショコラ。
茶器は今日購入したティーセット。早速使ってくれたんだな、と微笑む。
「ありがとう。いただこうかな。オリビアも、さあ、こっちに座って」
「はい、失礼します」
「良い香りがしているね」
「アールグレイの紅茶が合うかと思いまして」
おそろいのティーカップに注がれる琥珀の湯気立つお茶。
その香りが二人を包み込む。
「それでは、お召し上がり下さい」
そう言ってオリビアがチョコケーキを切り分けてウィリアムの口元に運ぶ。
お口に合えば、と彼女は言うだろう。
ウィリアムにとって、それはとても甘やかな味わいだった。濃厚な香り。紅茶の香りと混ざり合うようにして彼の鼻腔を、味覚を刺激する。
だが、それ以上に刺激的だったのは、手ずから食べさせてくれたオリビアの愛情。
「うん、美味しいよ」
「ありがとうございます。ホッとしました」
彼女の言葉にウィリアムは微笑む。何も心配しなくっていいのに、と。
「ところで、あのマグカップはまた後ででてくるのかな?」
「ご所望とあらば」
「そっか。でも、それよりも先にオリビア」
君を、とウィリアムはチョコレートよりも甘やかで、紅茶の香りよりも芳しい妻であるオリビアを味わう。
バレンタインデーなのだ。
これくらいは、と思う。
ウィリアムはオリビアを抱き寄せお返しの甘い囁きを届けるのだった――。
成功
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