11
『ネコ/邪神』を崇めよ

#UDCアース #邪神教団のインフルエンサー #猫

タグの編集

 現在は作者のみ編集可能です。
 🔒公式タグは編集できません。

🔒
#UDCアース
🔒
#邪神教団のインフルエンサー
#猫


0




 にゃーん。
 ねこの声がする。
 ただ無邪気に、気ままに彼らはいる。
 その姿に人間は憧れるのだ、心奪われるのだ。
 己がすっかり振り回されていると知らず。

 猫を崇めよ。
 その首の鈴がチリンと鳴る。
 崇めよ、さぁ、心より崇めよ。
 ――崇めよ、|ネコ《邪神》を、崇めよ。
 獣の苗床に魂を埋めよ。


「――君達は、ネコが好きかねぇ?」
 早乙女・翼(彼岸の柘榴・f15830)は集まった猟兵達に問いかける。珍しく整ったスーツ姿で現れた彼は、UDC組織に籍を置くエージェントの一人として、厄介な邪神案件の情報を得たので頼みたいと告げた。
「とある都市に存在するNPO団体なんだけど、どうも邪神教団の息が掛かってるらしいんさよ」
 その団体は動物保護活動団体。野良猫や多頭飼育崩壊に陥った家のネコを保護し、人に慣れさせてから里親を探す活動をしているのだと言う。これだけを聞けば良くある団体なのだが。
「ネコを通じて邪神を崇める様に洗脳して、信仰心を集めようってしてるなんて……まぁ誰が思うかと」
 翼は淡々と告げるものの、その声には怒りの様な熱が籠もっていた。

 その保護猫団体職員の大多数は実は邪神教団とは元々関係ない、善意からネコを愛し保護する活動を行っている一般人であるのだが。どうも代表かその近辺の者が密かにネコを利用して布教洗脳を行っているらしい。
 里子に出されるネコ達には、必ず鈴の付いた首輪が施されている。それは力持たぬ者には外してやろうという気を起こさせないと言う特殊な呪いの様な術が掛かっている。
 その鈴の音が鳴り、ネコの鳴き声を聞くと。人々のネコへの好意は徐々に邪神への崇敬へとすり替わって行く。
「解呪はUDC組織所属の術士にかかれば難しくない事が解ったんで。君達にはこの団体が主催するネコの譲渡会に潜入して来て欲しい」
 普通に欲しいネコが居ればお迎えする分には構わない。猟兵ならば厄介な首輪と鈴を外してやる事は可能だ。
 もしネコを引き取った一般人がいたとしても。組織の別働隊によって確保し、ネコの首輪だけ外して記憶処理した上で解放する予定だから、無理に引き留めたりはしないで良い。

「つまり、存分にネコと遊ぶなり選ぶなりして来て良いさよ。それで最初に聞いたんだ、ネコが好きかって」
 そこでネコと交流しながら、その団体の者とも会話して情報を集めると良いだろう。特に黒幕――ネコを利用しての邪神崇敬を集めようとする者が誰か、何処をアジトにしているのか――と言う事でも。
「情報を統合した上で黒幕の居場所に向かって欲しい。そいつは恐らくオブリビオンそのものだ」
 邪神への信仰心を集め、その力を以て更なる高みへ――高位の邪神へと進化せんとする存在を放っておく訳には行かない。見つけ出し、倒し、骸の海へと送り返す。それが今回の任務。
「ああ、|彼女《・・》がいなくなった後のNPO団体やネコ達の事は大丈夫。UDC組織でちゃんとカバーストーリーも仕立てて、邪神が絡む前の元通りの運営に戻る様に事後処理はするからさ」

 ――彼女?
 誰かが問うた。
 黒幕が『女』だと言う事を翼は把握しているのかと。

 手首抑え、首元抑えながら翼は苦笑い浮かべて告げた。
「譲渡会に現れたとしても――変化の術で別の姿に成り済ましているだろうから、俺の知ってる姿を伝えても意味は無いさよ。ただ、女なのは間違いない」
 予知で得たのは断片的な情報のみであったと詫びる様に告げて、翼は転移の光を手元に描く。
「ネコを貰いに行くだけでも構わないからさ。それだけでも充分な仕事だ。君達に――頼みたい」


天宮朱那
 天宮です。ネコを崇めよ。
 ネコのグッズを見るとホイホイされてしまうのは、多分私だけでは無い。
 メインクーンが好きですにゃ。

 ネコを利用して邪神への信仰心を集めようと言うNPO団体の代表、もしくは幹部。
 譲渡会に潜入してネコを愛でつつ情報を集めて敵の目星を付けて撃破、まで。

 一章は日常。ネコの譲渡会です。とある都市の保護団体が経営する保護猫カフェが会場。ケージに入った子から、接客しつつ人慣れの練習をしている子まで、ネコの種類も色々ですが割と雑種多め。
 ただ遊ぶだけも良し。ネコの下僕になるも良し。お迎えする子を選ぶも良し。会場にいる内は邪神崇敬の洗脳は発生しませんので一般人の方々の事は気にせずどうぞ。外でUDC職員がスタンバってるので連れ帰りも安心。里子に貰ったネコちゃん達をアイテムとして作る分にはご自由に。
 ネコと戯れながら、団体職員さんや店員さんと会話して黒幕のヒントを引き出して頂ければ。
 この章だけ参加予定の方はプレの何処かに🐈を記載頂けると助かります(二章以降の見込み人数把握)。

 二章は冒険。ヒントを元に黒幕とそのアジトの目星を付け、追跡となります。
 断章などを参考にしつつ、アジトに潜入した後の行動などをプレイングで指定頂ければ。

 三章は純戦。オブリビオンの姿を現した黒幕との対峙。

 複数合わせは迷子防止に相手の名前(ID)かグループ名記載を。
 技能の『』【】等のカッコ書きは不要。技能名のみ羅列は描写がシンプルになります。
 オーバーロードはご自由に。採用不採用に変化は無いのでご了承を。

 各章、断章追記予定。ゆっくり進行。
 また、一章は👑5と少ないので参加状況次第では再送お願いする可能性が高い事をご了承頂けますと幸いです。
 マスターページやTwitter(@Amamiya_syuna)、タグなどでも随時告知をします。
 適度に人数集まったら〆切目安の告知予定。宜しくお願いします。
94




第1章 日常 『ねこねこねこ』

POW   :    不動。俺はキャットタワーださぁ上っておいで!

SPD   :    猫じゃらしをふりふりと、捕まえられないギリギリを狙う!

WIZ   :    猫の好い場所をくすぐり撫でくりツボをつくならおまかせ!

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


「にゃーん!」
「ふにゃぁぁ……」
「シャーッ!!」

 店の中に入れば、右も左もネコだらけ。
 元気一杯だったり警戒してたり欠伸してたりとマイペース極まりない。
 だって、ネコだもの。

「『にゃんこの里』へお帰りなさいませ!!」
 否、メイドカフェ。ここは保護猫カフェである。
 今日は譲渡会も開催されているとの事で、隣のイベントスペースも一時的に借りてケージを並べているのが遠くからでも良く見える。保護猫団体の職員と思しき人間が忙しなく動いているのも見受けられるだろう。
 新たな家族を求めに来るカップルや家族でいつも以上の賑わいを見せる様子に、お店で接客を勤めるニャンコ達もどこかソワソワ落ち着かなかったり興奮してたりいつも通りヘソ天で転がっていたり。
 譲渡対象のネコは店内の接客バイト中ネコでも、ケージの中の仔猫や老猫でも。実際に触れ合ってみて相性をみながら選んでくれて良いとの事。無論、職員や店員も相性を見極めた上での譲渡となる。

「ただ見て遊んでくださるだけでも構いませんよ。私達の活動を、もっと広く知って頂きたいですし」
 その内、お迎えに来て頂けると嬉しいですが、と代表らしき女性は告げる。他にもスポンサーらしき人物や管理者のような人物も見受けられる。
 この内の誰かが――邪神教団の者であり、ネコ達やこの団体を利用する黒幕なのだろう。

「にゃあ?」
 ちりん。どのネコ達も、等しく同じ様な鈴付きの首輪を身に着けている。
 何も知らず、ネコ達は無邪気なまま我が儘に生きるのだ。

 ――ネコに仕えよ。
 ――ネコを崇めよ。
 ――人間は|ネコ《邪神》の下僕なり。

===============

 保護猫カフェでの譲渡会です。
 ネコと遊び戯れ、または情報収集。
 プレイングで指定頂ければある程度の猫種は選べますが、ほぼ雑種ですので珍しい種類の子はおりません。
 ちなみに接客バイトネコさんの日給はチューブ状のネコおやつ。
樹・怜惺
猫、ねェ
猫は好きだけどさ、なんで俺がアイツのお使いだよ
子分が欲しいのじゃ、とか言ってたけどさァ
周りにいるカラスとかモモンガとかじゃダメなんか

一通り見て歩いて
長毛の雑種がいれば…子猫の方が良いのかね
人懐っこさそうなのを手に乗せられ、ちょっと困惑
ちっちぇーしやわけーし何これめっちゃ怖ェ
お前一緒に来るか? 遊び相手には不自由しねーぞ多分

連れてく子が決まったら近くにいるスタッフに話しかけ
こーゆー譲渡会って、自分達のホームとかでやってる方が楽だったりしねェ?
設備とか揃ってんだろうしさァ

よく行く先に猫カフェあんだよ
提携とかできねーかなァ、代表の人に聞いてみたいんだけど
適当な話を並べつつ、様子を窺う



「猫……ねェ」
 ニャーニャーミャアミャア。鳴き声の大合唱が聞こえるその保護猫カフェに向かって歩みながら、樹・怜惺(Guardiano della Dea Verde・f31737)は金糸の髪を掻き上げてポツリと呟いた。
 猫は好きだ。それは否定しない。だが。
(「なんで俺が|アイツ《サーラ》のお使いだよ……」)
 流石に本人(猫?)が来る訳には行かない理由は納得する。幾ら猟兵で違和感を与えないとは言っても、猫が猫を里子に欲しいとか言う絵面はシュール以外の何者でも無いというか、うっかり彼女が迷子猫として保護されてしまう。

『子分が欲しいのじゃ!』
『周りにいるカラスとかモモンガとかじゃダメなんか』

 そんなやりとりを経て、怜惺は今この場にいる。カフェの隣にあるレンタルスペースは仔猫や老猫の入ったケージが幾つも置かれており、近所や遠方から譲渡会の話を聞いてやってきた家族連れやカップルらしき姿が多数。無論独り身らしき若者も多数いて、一緒に暮らす家族を探している模様。
 一通りぐるりと見て歩き、気になった一匹の所に再び足を止めた。長毛の雑種と見受けられる仔猫。怜惺の方を円らな瞳で見つめてしばし。とことこ近くに寄ってきて、ケージの隙間から手を伸ばしつつミャアと一鳴き。
(「やっぱ子分って言うからには、仔猫の方が良いのかね……」)
 伸ばされた小さな手の下に指先を置いて受け止める。ふにっと柔らかく温かい感触。
「その子可愛いですよね。抱いてみます?」
「え、抱く、えッ……??」
 そんな怜惺の様子を見ていたスタッフは、親切にもケージを開けてその仔猫を両手でそっと抱き上げるとそのまま彼の大きな両手の上に載せたのだ。あまりに唐突で困惑気味な怜惺はおっかなびっくりでその仔猫を落とさぬ様にそっと抱きかかえ。
「え、え、ちっちぇーし、やわけーし……何これめっちゃ怖ェ……!?」
 そんな怜惺のビビる様子にも動じず、仔猫は掌の上で大の男を弄ぶ様にするりと脱走しそうな勢いで動くのだ。
 下手に強く掴むと壊れてしまわないだろうか。持ち方を何とか変えて人間の赤子の様に背中から抱っこしてやれば、居心地が良かったのかミャウと一声鳴いて収まった。
「……元気いっぱい見たいだな。お前一緒に来るか?
「ミュ-」
「遊び相手には不自由しねーぞ多分」
「ミャア」
 言葉通じているかは知れぬが、怜惺の手の中でスリスリと自分の匂いを付けようとしている辺り、この人間は安心出来ると思ってくれたのだろう。
「あら、その子気に入ってくれました?」
「うちにも長毛種の猫がいてさー。妹分欲しそうにしてたんで」
 嘘は言っていない、多分。茶トラのハチワレに黄色い瞳をしたその子は大人しくなったと思ったら怜惺の腕の中でスヨスヨと寝息立てて夢の中。
「先住猫さんいるなら大丈夫ですね。では、書類を幾つか書いて頂きますのでそちらのテーブルにどうぞ」
 案内された先はイベントスペースの隅っこ。小さな事務机にパイプ椅子添え。猫を一旦スタッフに返してケージに戻されるのを見ながら、怜惺は独り言でも言うかの様に対面のスタッフに問う。
「こーゆー譲渡会って、自分達のホームとかでやってる方が楽だったりしねェ? 設備とか揃ってんだろうしさァ」
「沢山の方々に見て貰うには此方の方が案外良いんですよ。本部だとまだ人慣れしてない子も沢山いますし。そこの猫カフェの従業猫も見て欲しいですしねぇ」
 成る程と怜惺は頷きながら、向こうの保護猫カフェを見つめ――ああ、と思い出しながら告げる。
「そーいえばさ、俺がよく行く先に猫カフェあんだよ。提携とかできねーかなァ、代表の人に聞いてみたいんだけど」
「提携、ですか。そうですねぇ……代表や出資者の皆さんの意見も聞かないと決められないとは思いますが――」
「あら、私を呼びました?」
 そう言って近付いてきたのはスーツ姿の女性であった。黒猫の様な印象を与えるその女性にスタッフが怜惺の申し出を告げると、嬉しそうに大きく頷いて。
「私としては是非ともお願いしたい所です。が、何せ人手が足りなくてですね。最近新しいパトロンに来て頂いたお陰でどうにかやり繰りしている現状なものでして……」
 止まらない経済的な苦労話を聞かされながら、怜惺は仔猫譲渡の手続きを滞りなく進めていくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
譲渡会や保護猫カフェってはじめてで、どんな感じなのかを知りたくて
そういう理由での利用でも良いですかとスタッフに問いかけ
そうしたら、この団体のことや団体のトップの方の話も聞けるだろうか
活動に興味があるのは本当だし、頷きながら色んな話を聞いてみよう

そうしていたら膝にとんと乗る重み
おや、オレと遊んでくれるの?
気まぐれな猫に柔く笑んで、喉を擽って
あなたはどうしてあげたら心地いいのかな
猫の望むまま撫でたり抱いたり遊んだり
スタッフさんのおすすめの関わり方があったら、それも聞いてやってみようかな

首輪に触れ、目を細める
あとで違うものをつけてもらおうね、こんな呪われたものではなく
微か、猫にだけ聞こえる声で呟いた



「ニャア」
 多分いらっしゃいませ、とでも言ってくれてるのか。奥にいるニャンコがじっと不思議そうに見つめてきた。
 隣のイベントスペースで行われている保護猫の譲渡会は家族連れ等で賑わいを見せており、此方の猫カフェもいつも以上の賑わいを見せているらしい。
「こう言った譲渡会や保護猫カフェに来るのは全く初めてなもので――」
 ディフ・クライン(雪月夜・f05200)は軽く緊張した面持ちで『にゃんこの里』の受付にいた女性スタッフと言葉を交わしていた。
「どんな感じなのかを知りたくて。あの……そういう理由での利用でも良いですか?」
「ええ、勿論歓迎ですよ。初めてさんは皆さん大体そんな感じですし」
 まず興味を持って貰えたらそれだけで嬉しいのだと女性は笑みを見せた。そこから動物保護活動について知って貰う事で、少しでも寄付や協力者が増えれば――不幸なネコが幸せになる助けになるのだから、と。
 ディフ自体もこの団体の活動に興味があるのは事実な訳で、色々と話を聞かせて欲しいと告げたのだが――。カフェの利用方法と共に告げられたのは、このネコ達がどんな経緯で此処にいるのか。それはディフの胸にギュッと締め付ける感覚を与えるのに充分な話であった。
(「この世界では、そんなに不幸なネコがいるのか……」)
 予期せぬ妊娠で産まれてしまい、飼えぬからと託された仔猫はまだ幸せな方らしい。産まれてすぐに捨てられた仔猫。飼い主と死に別れ、独りぼっちになった老猫。野良として危険で過酷な環境の中に生き抜いてきたもの。そして無計画な多頭飼いから限度を超えて繁殖し、劣悪な環境で育ち、助けが来るまで辛うじて生き残った猫達。様々な状況から保護を受け、彼らは今、此処にいるのだと言う。
「人間の身勝手から不幸な猫達が出るのが一番最悪。だから、人間の手で幸せにしなきゃなの」
 そこに口を挟みながら現れたのは可憐なドレスワンピースに身を包んだ若い女性であった。
「影戸のお嬢さん、お見えになってたんですね」
「ええ。ネコ達の様子、気になって仕方無くて」
 スタッフの女性と軽く挨拶を交わした後、お嬢さんと呼ばれた女はディフの事を一瞬ジッと見つめ、そして静かに微笑むと。ごめんあそばせ、などと小さく会釈して譲渡会会場に向かっていった。
「今の方も此方の関係者ですか?」
「まぁそうですね。地元のお金持ちの娘さんで、最近うちの団体にパトロンとして出資して下さって……彼女自身も活動に積極的に携わってくれて」
 お陰で経済面で助かっている、とスタッフの女性はディフを奥の部屋に案内しながら告げる。
「みんなで言ってるんですよ。あの家にあんな綺麗なお嬢さんいたの知らなかったわー、なんて」
 そして飲み物をメニューから選び手渡されると。ネコ達が気ままに戯れる接客部屋へと通されたディフ。
「みゃあ」
「にゃー」
 興味深そうに此方を見つめるもの。関係ないねとキャットタワーの上で午睡を続行するもの。実に自由である。
 ゆったりとしたソファーに腰を下ろし、部屋の中を興味津々にぐるりと見回していたところ。何やら膝の上にトンと重みがやってきた。
「にゃあ」
 ロシアンブルーと何かの雑種の様な不思議な毛並みのネコがディフの膝に両手を着いて、見上げながら小さく鳴いた。
「おや、オレと遊んでくれるの?」
「にゃん」
 むしろ遊んでくれ構ってくれと言ってるかの様で。柔らかな笑みが零れるのを自覚しながら、彼はその指先をネコの喉元に差し伸べ軽くくすぐってやる。
「あなたはどうしてあげたら心地いいのかな」
「(ゴロゴロゴロ……)」
 両手どころかその身体ごとディフの膝の上を占拠したネコは目をすっかり細めてはっきり聞こえる程に喉を鳴らし。その四肢も力を抜いてリラックスしているのが良く解る。
「あら、お客さん動けなくなっちゃいましたね」
 様子見に来たスタッフが思わず微笑む程の光景。今は撫でられたいターンなのだろうと彼女は告げ。
「ネコちゃん達は気まぐれですからね。動き始めたら猫じゃらしで一緒に運動するのも楽しいですよ」
 他のネコ達も遊んだり駆け回ったり寝てたりと気ままだ。だが、どのネコにも共通点が一つ。
 ――チリン。
 首輪、そして鈴。撫でていた指先が触れ、ディフは目を細めてそっとそれをなぞった。
「あとで違うものをつけてもらおうね、こんな呪われたものではなく――」
 その囁く様な言葉は、そのネコとディフだけの秘密。

大成功 🔵​🔵​🔵​

フール・アルアリア
🐈

猫を崇めよ、もふを崇めよ、もふに仕え平伏し振り回されることこそ、人類の幸せ!救済への道、すなわち世界平和!!人類みな猫を愛せもふを愛せ、崇め奉れ!(早口)

僕は正気です、ちょっともふに飢えすぎてあれなだけで、宗教は猫教とか言うくらい限界猫好きなだけで!!!

というわけで猫ちゃんの同居人を求めにきました、普通に!猫を選ぶなど烏滸がましい、運命の猫ちゃんは猫ちゃんより訪れる!僕はじゃらしたりして一番懐いてくれた子を譲渡契約するよ。

譲渡契約中に職員さんから普段どんな活動してるんですかーとか会話してなんか聞けないかな。あとね、鈴つき首輪は不快になる子もいるからおすすめしないなーて言いながら外すよ。猫!



 猫を崇めよ、もふを崇めよ。
 もふに仕え平伏し振り回されることこそ、人類の幸せ!
 救済への道、すなわち世界平和!!
 人類みな猫を愛せもふを愛せ、崇め奉れ!!!

 ――NOT邪教。
 早口で捲し立てるのはフール・アルアリア(No.0・f35766)でありれっきとした猟兵で銀誓館OBである。
「僕は正気です、ちょっともふに飢えすぎてあれなだけで、宗教は猫教とか言うくらい限界猫好きなだけで!!」
「頼むからくれぐれもその愛を現地で炸裂させんなよ解ったか」
 過度のもふ飢えと重症なネコ好きにイエローカードが切られる。大丈夫かと心配されながら送り出されたが、あれだけ叫び散らしたら大分発散されたし大丈夫だろう、多分、恐らく、きっと。

「ぬこぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉ!!!!!!」

 大丈夫じゃなかった。
 譲渡会の会場であるイベントスペースに到着した途端、フールは思わず魂の叫びを発した。
 だってあちらにもこちらにもそちらにも|老若男女《ろうにゃくにゃんにょ》のネコさんがたくさん。
「ね、ネコがお好きなんですね……」
「ええ! ネコちゃんの同居人を求めにきました、普通に!」
 普通とは。ハイテンションに保護団体の職員さんも思わず引いている気もするが、向こうもまぁ慣れたものなのか。猫カフェとはまた別のふれあいスペースに案内されるフール。実際に接してみて相性の良い子を探すと言う趣旨らしい。
 逃げださない様に柵で囲まれた一角。飛び越える事が出来ない仔猫たちがあっちへウロウロこっちへウロウロしながら、沢山訪れる人間達を興味深く観察して下さっているの図。
「ネコを選ぶなど烏滸がましい――運命のネコちゃんはネコちゃんより訪れる!」
 畳三畳程の柵内スペースに入れて頂き、猫じゃらしを装備したフールは慣れた手つきでネコさん達を接待開始。
「にゃんっ!」
「にゃっ!!」
 たたたっ、すたっ! 元気と好奇心いっぱいな仔猫達はまっしぐらにやってくると、我先にと飛びつきじゃれて大暴れ。しかしちょっと遊んだらすぐに飽きるのもネコさん達のお約束。てしてし遊んでは離れ、また遊び、を繰り返す。
 そんな中。一匹の白猫だけは飽きた後もフールの近くに寄ってきて、くんかくんかと匂いを嗅ぎ、スリスリと頭を擦り付ける様な仕草を見せてくれたのだ。即ち――ネコが己の匂いを付けると言う事は、フールを己の所有物だと認めたが証し以外の何ものでも無い……!!
「君に!! 決めた!!!」
「にゃうん??」
 その仔を両手で高く抱き掲げながら、フールはゲット宣言をしたのであった。

「じゃあ、此方の書類にお名前と連絡先と――」
 譲渡契約の為の書類を端っこのテーブルスペースで書きながらも、フールの腕の中には先程の仔猫がしっかり収まっていた。すっかり彼の事が気に入ったのか安心したのか、スヨスヨと寝息を立てておられるのだから下手にケージに戻さない方が良いだろうと彼が激しく主張した結果。いや違います手元で天使の寝顔を見続けていたいだけです。
「そういえば普段はどんな活動してるんですかー?」
「譲渡会の他に、多頭飼育崩壊現場のレスキューですとか、野良猫情報で保護に向かったり……」
 結構色々と活動しているらしく。へぇーと頷きながら白猫を撫でていたフールの指先に何かが触れた。
 ちりん。涼しく鳴る鈴の音。
「そう言えばここのネコちゃん、みんなこれしてるねー。鈴つき首輪は不快になる子もいるからおすすめしないなー」
 外すよ、とフールが首輪に指をかけた時。目の前の職員が青白い顔で彼を制止した。
「その……っ、出来れば今は……おうちに連れて帰ってからお願い出来ませんか?」
 小声で周囲を窺いながら声を潜めて話す職員の尋常ならざる様子にフールも察し、小声で問うた。
「なんで? 何かマズい事でも……?」
「あそこにいる綺麗なワンピースの方いるでしょう」
 ちらと視線で指し示す先。如何にもセレブで高そうなドレスワンピースに身を包む、若い女性の姿が見えた。
「うちの団体に寄付下さってるお嬢さんなんですけど、その首輪はあの人の提案なんですよ……。機嫌損ねるとマズいからダメとも言えなくて」
 彼女の視界に入る内は着けてて欲しいとそっとお願いされる。幸い不思議な事にそれを嫌がるネコもいないのだとも職員は小声で話す。
(「なるほどねー……」)
 色々と見えてきた情報はこの後も活動を続ける猟兵に伝え託すとして。
 この面倒な首輪は帰り道で外して差し上げるとして。
「今後ともよろしくね、こねこちゃん」
「にゃーん♪」

大成功 🔵​🔵​🔵​

夜鳥・藍
POW

保護猫さんであれば様々な毛色の方がいらっしゃるのでしょうね。
ミックスにはミックスの良さがありますからすごく楽しみです。
ほら長毛種のふわふわの毛並みも、短毛種のすっきりもこもことした毛並みも、ミックスのいいとこどりなふわもこな毛並みも甲乙つけがたく。

譲渡会なのに書物多めの一人暮らしゆえに飼えないのが本当に残念で悲しくて申し訳ないですが、出来る事はしておきたいです。
人に慣れてない猫さんたちが慣れるようにおとなしく座っておきます。
何もしなければ何もない。理不尽に怒られることも傷つけられることもないのだと。
触れたいなでたい気持ちはありますが、無理強いは酷な物。
過ごしたいように過ごす様子を見るだけでもほんわかします。
近寄ってくれる猫さんには可能な限り鈴や首輪を外すようにしておきます。

頃合いを見てスタッフさんに聞いてみましょう。
人手の事とか寄付の事など、その流れで事務所(運営責任者、拠点なども)聞いてみます。



 あちらからミューミュー、こちらからはニャーニャーと。
 産まれて一ヶ月ほどの仔猫から、毛並みに白いものが混じり始めている老猫まで、様々なネコ達が一堂に会する空間に、夜鳥・藍(宙の瞳・f32891)は思わず目を見張り足を止めたまま少しの間動けずにいた。
「本当に色んなネコさん達がいるんですね……」
「ええ、保護されてくるネコちゃん達は雑種から所謂人気品種の子まで様々なんですよ」
 譲渡会の会場でスタッフは苦笑いを浮かべて藍と話をしていた。このネコ達の出自もまた多種多様だ。管理のなっていないブリーダーの所に生まれた子は本来ならばペットショップで高値で取引されているのだろう。やむを得ず飼い主が病気や歳で飼い続けられなくなった子もいるらしい。
 だが、その大半はやはり雑種。今はミックスと言われる品種の掛け合わせも人気があるが、恐らく殆どは特にこれと言う品種名も解らない子ばかりなのだ。
「様々な毛色の方がいらっしゃるのですね」
 ミックスにはミックスの良さがある。だからこうして色々なネコを眺められるだけで藍は幸せに思えていた。
 ふわふわの長毛種は毛並みも柔らかく、縫いぐるみを抱いているかの如き感触。短毛種のネコ達もすっきりとした毛並みながら、もこもこしな流れるような毛足が美しい。そしてその中間と思しきネコの良いとこ取りな毛並みもまた甲乙つけがたく。
「如何ですか、気に入った子がいましたら遠慮無く」
「あ、はい……」
 スタッフの声掛けに藍は一瞬言葉詰まりながらも頷いたものの。本当は一匹でも二匹でも連れて帰りたくて仕方無いのだけれど。何せ一人暮らしな上に自室には書物が山の様にある事を思うと――残念ながらこの子達をお迎えする事は出来ない訳で。それが悲しく申し訳ないと苦笑いを浮かべるしかなかった。
「にゃーん」
 不思議そうに見上げるネコの声。そうだ、出来る限りの事をしなくては――と藍は思う。
 譲渡会が行われているイベントスペースの隣には同じNPO団体が運営する猫カフェ。そこでは保護猫達が接客を勤めながら、人に慣れる練習と未来の里親探しに励んでいるのだと言う。
 零れない様な蓋付きのカップ入りのジュースを注文し、お店の中に入ればまた違うネコさん達のお出迎え。藍の方をチラリと見た視線は、そのまま凝視するものやすぐに興味を失ってそっぽを向くものなど気まぐれそのもの。
 そんなネコ達の仕草すらも愛おしいと感じながら、藍はゆったりしたソファに腰を下ろす。そして大人しく空気の様にネコ達の空間に馴染んでいく。
「にゃ……?」
 とことことこ……数匹が藍の側に近付く。好奇心と警戒心を天秤にかけながら距離を計っているのが察せられる。
「………」
 藍は何もしない。本当は触れたいし撫でたい。けどもネコ達自身がそれを望まないのならば無理強いは禁物だと言う事は良く解っているのだから。過ごしたい様に、やりたい様に――全ては彼ら彼女らが決める事。何もしなければ何も無い、理不尽に怒られる事も傷つけられる事も無いのだと学ぶ為にも。
「(くんくん)――みゅうぅぅ」
 好奇心が華麗なる勝利を収めたらしい。ネコ達が藍の近くに寄り、その匂いを嗅いで確かめてから、自分の匂いを付ける様に頭をコシコシとすり寄せる。警戒心はどうにも見当たらない。
 そっと間近に来たネコに手を伸ばす。最初こそビクッとした様子を見せるも、すぐに撫でてくれと自分から頭をすり寄せてゴロゴロと喉を鳴らし出す。なにこれ尊い――と大体の重度ネコ好きは此処で悶絶する所である。
 ……チリン。
「鈴……?」
 指先に触れたそれは涼しい音を立てた。そっと抱き上げてまじまじと見る。ぱっと見は普通の首輪と鈴に見えるが……藍には何となく感じられる。その鈴に、音色に籠められた魔力に。
「これ、苦しくないんでしょうか」
「ああ、首輪ですか? それが不思議な事にみんな嫌がらないんですよ」
 近くに来たスタッフに問いかければ、優しい笑顔でその女性は答えた。
「うちの団体で保護してる子達は皆、この首輪してるんですよ。パトロンになってくれてるお嬢様のアイデアで、調達もして下さって……」
 迷子になった時の目印、だとか。可愛いからお揃いにしてあげたい、とか。何やら様々な理由が付けられた上で全部のネコ達に件の邪教洗脳の鈴がついているらしい。スタッフはその事実も知らぬ様だ。
「パトロンって事は、寄付をしてくれてるんですね、そのお嬢さんって」
「ええ、何せ人でも資金もいつでも足りてないですからね、うちは。影戸さんってこの町で一番の地主さんがいらっしゃるんですけど、そこのお嬢さんが最近留学から戻って来たとかでお越しになって。資金援助の他にも、それこそ先程までこちらにお手伝いにいらしてて」
 もう帰ったみたいですけど、とスタッフの女性は告げる。
「私も何かお手伝い出来る事あれば力になりたいです。ボランティアとか募集してませんか?」
「あら、歓迎ですよ。全くの無給と言う訳には行きませんので交通費と昼食代くらいは出させていただきますし」
 そこにやってきたのは団体の代表を名乗る黒猫を連想させるスーツ姿の女性であった。
「スタッフ募集のチラシを差し上げておきますね。お友達などにもお声かけ頂けますと有り難いです」
 渡されたチラシには団体の事務所への地図。多くのネコがそこに保護されているとの事だが。その上で世間話的にスタッフはこう話したのだ。
「影戸のお嬢さんでもどこだかの倉庫を借りて一時保護シェルターを自前で用意してるそうなんですよね。元気になった子からうちに連れてきて頂いてるんですが」
 その場所までは解らないと語るのを聞き。藍は仲間に伝えるべき情報をしかと頭に叩き込んで行くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『教団員を探せ』

POW   :    自分が怪しいと思った相手に力を見せつける

SPD   :    容疑者の情報や証拠から教団員を特定する

WIZ   :    会話して得られた情報から教団員を推理する

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 夕暮れになればネコ達はより活発に動き出すが、人間の営みは終わりを迎える。
 譲渡会に並べられたケージが少しずつ外に搬送され、今回生憎と縁が結ばれなかったネコ達はNPO法人の事務所兼保護シェルターに戻っていく。
「残念ながら閉店のお時間でして……また遊びに来てあげて下さいねぇ」
「みゃーん」
 保護猫カフェも営業時間を終え、頑張って働いてたネコ達は帰って行く人間達を見送ったり素知らぬ顔で早速ご飯の元に向かったりと最後まで気ままであった。

 店を出て少し行った所の路地裏。
 そこでは一般人が里子に貰ったネコ達の首輪を外し、記憶処理を済ませたと言うUDC職員達が猟兵達を待っていた。
「ネコを貰い受けた方がいるなら終わるまで預かっておきますよ」
「それと、皆様が得た情報から此方で出来る限りの事を調べておきました」
 短時間で調査可能な事は限られる。ましてや警察組織や探偵でもないと事を思えば、なおの事。

 猟兵達が得た情報としては、最近件の保護団体にパトロンとして寄付などの協力をしている女性の存在が何よりも目に付いた。
 邪神への帰依を促すと言う例の鈴と首輪もその女性の発案によってネコ達に装着され、忖度もあって誰もそれに否は言えず……と言う訳である。
 猟兵達の中には女の姿を実際に見かけた者もいるだろうが、夕方を待たずして彼女は帰宅した……との事だった。
 ただし、街で名だたる富豪である影戸家に娘も孫娘もいないと言う事は近所の住民からの聞き込みで既に判明していた。無論答えてくれた近所のお喋りなご婦人方には記憶処理済みである。

 猟兵達に印のついた地図データが提供される。
 現在地に近い保護猫カフェ、動物保護団体の本部があるオフィスビル、町外れにある影戸家の邸宅――他に、アジトになりうる廃ビルや倉庫の場所など。
「我々に出来るのは此処までです。お気をつけて」
 捜索となると件のオブリビオンと遭遇しかねないが故。一般人に毛が生えた程度の彼らでは夜の捜査協力を願うには危険過ぎる。この先は猟兵達で全てを行う事となろう。

 さて、女を――影戸・亜希子を名乗る彼女を探し出さねば。

 ※※※

 探索パートです。
 それぞれ思う様に捜索を進めて頂ければと。どんな形であれ、最終的には黒幕のアジトに辿り着く事となります。……余程ぶっ飛んだ行動取らない限りは。
 途中、見付からないようにだけご注意を。
夜鳥・藍
ボランティアでも先立つものは金銭。
出資してくださる方の意見をむげにできないのは世知辛い所ではありますね。

影戸邸に娘さんも孫娘さんもいないという話があるという事はそちらへの出入りはあまりないんじゃないかしら?出入りしてるのならば事実であれ嘘であれ周辺の方に女性の話が出るでしょうし。
本部もまたオフィスビルとのことから団体以外の方の目もあるでしょう。
保護シェルターを自前で用意しているとの話でしたし、倉庫の場所の目星もいただきました。その場所を探してみましょう。
なるべく見つからないようにしますが、チラシもいただいた時に世間話として自前のシェルターの話もあった事ですし多少は言い訳がきくんじゃないかしら。



「ボランティアでも先立つものは金銭……という事ですか」
 夜鳥・藍はUDC職員達と別れ、夜も更けた町を歩き始めながら肩を竦めて呟いた。
 何とも世知辛い――と言うのが感想だ。善意だけでは運営そのものが成り立たない。猫達の命を支える為には食事・衛生・医療とケアが必要。その為には資金はどうしても不可欠なのだ。
 そうなれば、出資してくれる者の存在は大きくなる。その意見も余程おかしなもので無い限りは無下に出来る筈もない。お揃いの首輪くらいなら駄目とも言えぬだろう。
 それが、人に邪神への帰依を促す呪物であるなど。そんな事、普通は誰も考えやしないから。

 藍は地図を手元に広げ、町の全容を確認する。
 町外れにある影戸邸は除外して考える。娘も孫娘もいないと近所の住民は把握している……と言う事は、そちらへの出入りは殆ど無いか、有っても相当人目に付かない様にしているか、だ。
(「事実であれ噂であれ、周辺の方に女性の話は出るでしょうし」)
 もっとも、相手は首輪に暗示の呪いを仕込む程の術士でもある。影戸家の者に暗示をかけて娘になり済ますくらいはしかねないが……。
「どのみち屋敷では無理、ですよね」
 恐らく相手とは戦闘になる。派手に室内でやりあう事は避けたい所だ。
 保護団体の本部に足を運んでみた藍は、普通のオフィスビルであるその建物と周辺を眺め……ここも違うと息を吐いた。
 力を得る為の儀式を行うにしては人の出入りが多い。この手合いは人目を避けるのがセオリーだ。
 そう言えば――保護シェルターを自前で用意しているらしい、との話を先程聞いたのを思い出す。
 地図を確かめれば、町の外れには使われていない倉庫や廃ビルがある地域が点在しており、大まかな場所だけは示されていた。
「町の……北東と西寄りと南の端、ですか」
 ――点在しすぎて思った以上に離れすぎている。こればかりは仕方ない。
「ひとまず、虱潰しに向かうしか無いでしょうか」
 現在地から一番近い倉庫群目指し、藍は早足で進み出した。一箇所目を探したら、次の所へは町の外周沿いを銀狼に乗って駆けて行く事も考えながら。
「見つかった時は……チラシを頂いた時にシェルターの話も聞いた、と多少は言い訳が効くと良いんですけど」
 いきなり攻撃されない事を願いたい、と思いつつ。藍は夜道を急ぐのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ディフ・クライン
スタッフに別れを告げ、人目に付きにくい路地裏で一思案
虱潰しは現実的じゃないな、時間もかかりすぎる
まずは情報の精査が必要か

影戸家の本当の娘ではないのなら、家を拠点にしているとは考えづらいな
廃ビルや倉庫は可能性は高いが、多少候補は絞りたい
自分でも猫を一時保護しているというし、信仰心を多数集めたいなら他の団体にも出資しているだろう

……となれば、まずは手近な保護猫カフェに行って話を聞いてみようか

先程と同じ理由を使って、それとなく彼女や猫の保護場所の情報を聞けないか試してみよう
あとは……おいで、フォルティ

召喚せしは風の白鷹
空からこの倉庫や廃ビルを見てきてくれるかい
もし猫が複数いる場所を見つけたら、教えて


樹・怜惺
俺は探索とか隠れるとか苦手なんだよ
この見た目だし光るしさァ、絶対無理だろ

なんだかんだで引き取る事にした猫は預ける
ついでにバイクかなんか借りられねェか確認、バイクならメットで髪隠せるし
向こうが車とかだと移動手段無かったら積むわ

…保護猫カフェとオフィスビルならまあ、夜に周辺うろうろしててもまだましな気がするんだよな
元々人通りがある場所だろ
家には居ねーと思うんだ、存在が近所から怪しまれてるみてェだし

その場にいたら追跡
さて、何処に行くかねェ…人気の無い場所なら侵入できるか
建物なら適当に壁とか上って上階から入り込む
クロ確定なら足止めに入るか

…これ以上誰かの良心をにつけ込むような真似はさせねェよ



 UDC職員達が去った後も、ディフ・クラインは路地裏に留まったまま思案を続けていた。人目も着かない此処であれば受け取った資料の確認もしやすく考えも纏まりやすい。
「虱潰しは現実的じゃないな、時間もかかりすぎる。まずは……情報の精査が必要か」
 この町全体の地図を眺め、指先でなぞりながら一つずつ可能性を吟味していた。
 まず、件の女性が影戸家の本当の娘では無いと言うのであれば、邸宅を拠点にしているとは考えにくい。洗脳魔術を用いる力持つ者ならば暗示をかけて存在しない娘であるとして潜り込むくらいはしていそうな所ではあるが――流石にネコ達を用いた儀式の拠点にするには向いて無さそうな屋敷だ。精々住処として利用しているくらいだろう。
 と、なると廃ビルや倉庫の方が可能性は格段に増すのだが。何せ数がある。せめて候補を絞りたい所だ。
(「自分でも猫を一時保護しているというし……」)
 やはりヒントになると考えればネコだ。そして地図を見つめていたディフはある一点に視線を止めた。

「信仰心を多数集めたいなら他の団体にも出資しているだろうし……」
 ディフが見つけたのは別のNPO団体が運営している保護猫カフェであった。この様な施設が複数ある事は、それだけの数のネコが身寄りを探さねばならないと言う事実であり、胸が痛くなる思いに襲われるが。今はそれ以上に胸を痛める事案を解決する方が先決である。
 そちらの店もまた営業時間の終わりを迎えており――閉店作業をしている様子をそっと外から窺ってみる。外には店のチラシと団体の活動を紹介したリーフレットが『ご自由にお持ち下さい』の一文と共に置かれており、ディフはそれを一枚ずつ引き抜いて軽く目を通してみる。ふと、顔を上げれば奇遇にも外看板を片付けに来た店スタッフと目が合った。
「あ……もう閉店ですか」
「ええ、そうなの。ごめんなさいね。夜遅くまでニャンコちゃんに接客させちゃダメって法律なのよー」
 中年女性店員はディフを見て『モデルさん?』とか首を傾げたが、それはさておき。
「保護猫カフェって興味があって……オレなりに色々調べたりはしてるんですけど」
「あらあら、興味持ってくれてるなら嬉しいわ。うちの団体ではね――」
 どんな活動をしているのか、と一つ問えば十五は返ってくる勢いでその女性店員は饒舌であった。要点を絞ると、先程の団体よりは規模は小さくスタッフの数も少ないらしく。ネコの保護や譲渡もそこまで多くは手を広げられていないとの事で。
「でも最近ね、出資するからもっと沢山のニャンコちゃんレスキューしてあげませんかってお話頂いてるみたい」
 そう、今も代表を訪ねて来ている――と言う話に至り。
「え?」
 ディフが僅かに身を竦ませるのと、店の扉が中から開いたのはほぼ同時。
「――あら」
 ドレスワンピースに身を包んだ女が――影戸・亜希子は店の中から出てきたのだ。彼女はディフを見止めると軽く小首傾げて口角を上げて笑みを見せた。
「お兄さん、先程もあっちのお店で見かけた気がするわ。ネコ、好きなのね」
「ええ、まぁ……」
 ディフは愛想笑いで返す。そういえばさっき明確に彼女と言葉を交わしたのは自分だけであったか。間違い無く亜希子の顔を覚えていた半面、向こうもまた彼を覚えていたとは。
「ふぅん……」
 値踏みするような視線。その瞳の形が一瞬だけ、爬虫類の様な輝きを帯びた気がした。
「それでは失礼。あ、代表さんは考えておいてくれると嬉しいわ」
 見送りに来た団体代表の男に一声かけてから亜希子は近くに止めてあった高級車のドアを開け。
「――――アイツの匂い」
 ポツリと亜希子は呟きながら乗り込むと、自らハンドルを握って走り出す。もしかしなくてもアレを追えばアジトに辿り着けるだろうが。だが咄嗟にあれを追う手段を己は持ち得ない。
「おいで、フォルティ……!」
 召喚されたのは風の力持つ白き鷹。夜闇に紛れる様に空に舞ったフォルティに告げたのは、彼女を追う事。そして、その先――倉庫や廃ビルがあれば見て欲しいと。きっとネコが沢山いる場所だから、と。
 放った所で、一台の|単車《バイク》がディフの前に急ブレーキで止まる。
「あの車を追えば良いんだなッ!?」
「怜惺……!!」
 メットで顔が隠れて見えなかったが、零れる金糸とその声は間違い無く樹・怜惺のものだとディフは確信した、
「オレもすぐに追いかけるから……頼んだ」
「任せろ!!」
 再び二輪が夜の道路を走り出すのを見送り、ディフもまたフォルティの気配を頼りに駆け出した。

 ――時は少し遡る。
「俺は探索とか隠れるとか苦手なんだよ……」
 何だかんだで引き取る事になったネコをUDC職員に預けながらも怜惺はぼやいていた。サクラミラージュ生まれのハイカラさんは感情の高ぶりで後光が光る。そりゃあもうピカピカと。
「この見た目だし光るしさァ、絶対無理だろ」
 ひとまず髪を一つに纏めながら怜惺は溜息一つ。出来るだけ感情の高ぶり抑える様にと肝に命じながらも、彼は職員に問いかける。
「ついでにさァ……バイクかなんか借りられねェ?」
「バイク、ですか」
「ほら、メットで髪隠せるし。それに向こうが車とかだと移動手段無かったら詰むわ」
 ……と用意されたバイクは誰かさんの私物らしい。絶対壊すなと釘を刺すメモが添えられていた。つまり派手に壊せと言う事か、と冗談言いつつ。怜惺はフルフェイスメット被って夜の町を走り出す。
 町中にある保護猫団体本部があると言うオフィスビルの前に行ってみると、まだ明かりが煌々と灯され、中からはネコ達の鳴き声が僅かに漏れ出ていた。周辺は人通りも多い。上階も違うテナントが入居している様だし此処を拠点としているとは考えにくかった。
 影戸邸に向かう事も一瞬考えたが、そこもパス。存在が近所から怪しまれているらしい事を思えば、住みつくだけならともかく儀式まで行うには向かないだろう。
「さて、次は何処に行くかねェ……」
 別の保護猫カフェにでも向かってみようか、と車道を走っていた時だった。夜の街灯並ぶ向こう……歩道から白い鷹が浮かび上がるのが、黒衣の青年が見えたのは。
 あれはディフだ。そして彼が視線を向ける先には如何にも高級そうな車。白鷹はそれを追う様に空を駆けていく。即時に理解した。どうやら|対象《ターゲット》そのものを見つけたのだと。
 黒き青年の前にて思い切りブレーキをかければタイヤがキキィィッと磨り減る音が響き。
「あの車を追えば良いんだなッ!?」
 一言問えば充分だった。相手の返事を聞き遂げるのと再びアクセルを全開に走り出したのは同時。
 車の流れに紛れる様に、向こうに気取られない距離を保ちながら、怜惺は追跡を開始したのだった。

「――流石に見失ったか」
 人気の無い倉庫街に怜惺はバイクを止めた。周囲の建物も少ない郊外に近付くにつれ、亜希子の乗る車との距離を離さざるを得なかった。何せ紛れるべき車も少しずつ台数を減らしていったのだから。
 メット被ったまま周囲を見回す。あの女はネコを自ら集めて私的なシェルターに保護している――のだとしたら、耳を澄ませばネコ達の鳴き声くらい聞こえてくるのではなかろうか。
 すると上空にいたフォルティが怜惺に示す様に一つの倉庫の屋根に降り立った。どうやらあそこらしい。
 外階段は鉄で出来ており、登れば確実に音を立てそうであった。やむなく怜惺は壁の突起に指を掛けて上に登り、中を探ってみる。
「――いいこよ。あなたもおなかが空いたのね」
 亜希子の声が聞こえる。足音立てぬ様に侵入し、物陰に隠れながら近付いてその様子窺うと――どうやら多くのケージが並んだ空間で餌やりをしているらしい。
(「あれだけ見ると、フツーに慈善活動に勤しむお嬢様――なんだけどなァ」)
 ニャーニャー聞こえる鳴き声。放し飼いにしているネコ達が彼女に擦り寄り、その頭を撫でてから……亜希子はゆっくりと奥の部屋に向かい、怜惺も気付かれぬ様に追って移動する。

「――猫を崇めよ」
 チリンチリンと部屋中の鈴が鳴る。
 床に描かれた魔方陣の前で、女は手を広げながら呟けば。陣描く線が闇の中で薄らと禍々しい光放ち出す。
「崇めよ、ネコを、邪神を、そしてこの私を」
 愛情を奉仕を忠誠を、この自分へと。
 この子達の親はこの私なのだから。ネコへの帰依は即ち母たる己へ帰依すると等しいのだから。
「|猫《私》を敬え。地と人は|猫《私》のもの。終わりの日に人は|猫《私》の前に立つ」
 亜希子は姿を変えていく。そのドレスワンピースより、トカゲの尻尾がぬるりと滑り出、ペロリと唇を舐めた舌先は二つに割れ、金色を増した虹彩には縦に走る瞳孔がギラリと光った。
『獣の苗床に魂を埋めよ――』
「……これ以上誰かの良心をにつけ込むような真似はさせねェよ」
 儀式を妨げる様に怜惺の声が室内に響き渡る。女はゆっくり振り返ると鱗を浮かび上がらせた顔で、ニタリと笑みを作り上げた。爬虫類そのものの不気味な笑み。
『うっわサイテー。見られちゃった。ねぇ、何でジャマすんの』
 ドレスワンピースは解ける様に形を変え、ショートパンツ姿になった女の風貌は先程から一変してコギャルめいたものと化していた。変化の術で別の姿に成り済ましているだろう――と言われていたのはこの事か。
 地面の影が血溜まりの色を成し、そこより伸びたのは女の背丈と同じくらいある大鎌。それを手に取り、蜥蜴の魔性は吐き捨てるように告げた。
『アンタも――……の匂いがする。どーせUDC組織の連中でしょ? ニンゲンゴトキがさ、私を止められると思ってんの?』
 本性を隠す事なく曝け出したその気配はまさしくオブリビオン。
 殺してあげる――女は囁く様に一言告げ、殺気をその身に纏った。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『金眼の蜥蜴ラケルタ』

POW   :    私は、幸せそうなヤツが超嫌いなの
【血錆に濡れた大鎌を軽々と振り回した上】で敵の間合いに踏み込み、【相手の幸福度に比例して動き封じる赫い闇】を放ちながら4回攻撃する。全て命中すると敵は死ぬ。
SPD   :    お前たち、この私に勝てると思ってるワケ?
敵より【自分の方が強いと絶対的自信を持っている】場合、敵に対する命中率・回避率・ダメージが3倍になる。
WIZ   :    ばーか、ドコ見てんのよ
自身と武装を【邪悪な闇の魔力】で覆い、視聴嗅覚での感知を不可能にする。また、[邪悪な闇の魔力]を飛ばして遠距離攻撃も可能。
👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠早乙女・翼です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 影戸・亜希子と名乗っていた女は猟兵達の前でその姿を本来のものに変じた。
 金色の虹彩に縦に割れた瞳孔、唇をペロリと舐めた舌は細長く先が二つに分かれ、色白であった肌には見る間に鱗が浮かび上がって行く。

『折角上手く行くと思ったのに。もぉーサイテー』

 最早名家のお嬢様を気取る事は止めたらしい。服装もその口調もお淑やかとは程遠く真逆にあるコギャルの様で。金色の緩くウェーブがかった髪掻き毟り、見るからに人在らざる女はボヤく様に言葉吐く。
『Underground Defense Corp.っつったわよね。アイツの――アイツらの匂いを感じた時点で私は慎重になるべきだったわ。うん、反省』
 血溜まりの色成した地面の影より伸びてきた長柄を握ると女の背丈と同じ程ある大鎌が鈍い光を放つ。
 同時にネコ達が収まったケージに一斉にブルーシートがかかる。ちら、と其方を見た女の目はニンゲンに向ける目と比べて優しい視線にも見えるやも知れないが……。
『――アンタ達返り討ちにして、別んとこでやり直せば良い訳よね。このラケルタ様が直々に殺してあげるわ。さぁ、歓喜に震えなさい』
 殺気を身に纏い、ラケルタは狂喜じみた笑みをその口元に浮かべて告げるのだ。
『ああ、でも一人は残しておかなきゃ。私の邪魔すんのにアンタ達寄越したヤツの居場所吐かせて首を狩ってあげないといけないものね!!』

※※※

 町外れの倉庫内での戦闘です。
 ネコ達はラケルタが施した術により守られてますので其方への飛び火は気にしなくて大丈夫。
 前章ラストの時点で他の猟兵達も追い付いている体でプレイングをかけて頂いてOKです。
夜鳥・藍
猫さんを利用していても本当に道具として思っているわけではないようですね。
どこか気遣いを感じさせるのに、それでも猫さんを使ったのは…よっぽど人に対して思う所があるような気がいたします。
それが何なのかは私にはわかりません。
ですが引き取られる猫さんへの愛情を邪神への信仰へと変えさせるわけにはいきませんね。

姿が見えないのならずベて吹き飛ばすまで。
青月をかかげ雷光天絶陣。その雷の光りで闇の魔力ごと照らし吹き飛ばします。
これなら魔力とやらが真っ黒でも迷彩のようなものでも問題ありませんもの。
……この方法が出来るのも彼女が猫さんを守ってるからなのですが。
少し心苦しくはありますが利用させていただきます。



 儀式場と化した倉庫。駆けつけた夜鳥・藍(f32891)の目に映ったのはネコ達の視界を塞ぐ様に青いビニル布がケージに覆い被さる様子。そしてラケルタと名乗った蜥蜴の魔性のその視線。
「――ネコさんを利用していても、本当に道具として思っている訳では無いようですね」
 どこか気遣いを感じさせるその様子。藍の疑問に対し、女は形だけの笑みを作って答える。
『当たり前よ……身勝手な人間に対しての思い知らせてやるため。哀れなこの子達と私と一緒……同志なのよ』
(「――余程、ニンゲンに対して思う所があるのですね」)
 ネコを哀れむ心を持ちながら、この女はニンゲンを憎みニンゲンの世を支配する力を求めている。その為に協力と言う体でネコ達を集め、信仰を集めんとしたのか。
(「この方の人に対する感情――それが何なのか、推測しか出来ませんし私には分かりません。ですが――」)
 両刃の刀を抜き、藍は睨み付ける。幾らこの魔性がネコの為だと御託を並べた所で、成そうとした事は結局ネコ達を利用していて、この世界を滅ぼす為の儀式である事は間違い無いのだ。
「引き取られる猫さんへの愛情を邪神への信仰へと変えさせるわけにはいきませんね」
『私はこの子達の母たる女神であるのよ! 愚かなニンゲンはネコに尽くすべき、即ち私に尽くすと同義!』
 女の足元よりドス黒い闇が湧き上がるとその身を覆う。薄暗い倉庫の闇に更に紛れるかの様に、ラケルタの姿が藍の視界から掻き消える。
「――っ、どこに消えたの……!」
 表情を険しくし、藍が周囲を見回せば。嘲笑う声だけが場に響く。
『うふふ、あははっ……!!』
 どこから聞こえているのか、その方向が見当もつかない。気配すら感じないが――藍は至って冷静に手にした青月の名を持つ剣を掲げた。
(「姿が見えないのなら――」)
『どこ見てんのよぉ!!』
「すべて、吹き飛ばすまで」
 切っ先より放たれるは降り注ぐ雷――雷光天絶陣!
『っがあああぁぁっ!!?』
 稲光が飛んで来た闇の魔力を照らし、雷撃がその攻撃ごとラケルタの身を吹き飛ばす!
「これなら魔力とやらが真っ黒でも迷彩のようなものでも問題ありませんもの」
 そう、纏めて吹き飛ばしてしまえば皆同じなのだと藍は真剣な表情を変えずに告げる。
 敵に標的が限られるとは言え、どこから来るか分からぬとあらば……周囲を巻き込むかの様なこの範囲攻撃は使うのは難しかったであろう――ここにはネコ達が収まるケージが幾つも積み重なっていたのだから。
 しかしそのネコ達はラケルタ自身が守るかの様にブルーシートを覆い被せた。恐らく何らかの魔法結界も施されているのは感じ取っていたから。
『う、ぐ……私を、私を舐めるんじゃないわよ……!』
「少し心苦しくはありますが利用させていただきます」
 再び身を闇に包もうとしたラケルタであったが。それと同時に再び青月から轟雷が撃ち放たれる。
 その轟音に怯えるネコ達の鳴き声は一切聞こえない。響くのはただ、悪しき蜥蜴の悲鳴だけ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ナルニア・ネーネリア
猫です。猫は猫なので猫らしくあればお任せアドリブ大歓迎。
猫は猫なので他の猫につられてきました。
猫は賢いので此処では美味しいご飯が貰えることを知っています。
でも猫は敏いので今はなんかそれどころじゃない空気を察します。
猫は猫ですが一応、猟兵です。
猫は人間のために働くことをしませんが、同志(猫)のためならば話は別です。
猫は猫のためにキジ猫(グリム:UC)に戦闘をお願いし、黒猫は他猫に事情を聞きます。女のこととか。
女に他猫たちは任せろ的な感じで鳴きますが、通じることはないと察してします。
後は他猫たちをみんなつれて保護団体に行きます。

NG:人語を話す、()付で思考
OK:返事はにゃーだけど会話は通じます



「にゃー」
「みゃー」
 とっとことっとこ。夜も更ければネコのお時間。ナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)――二匹の尻尾はゆらゆらと揺れ、他のネコ達の気配に導かれる様にUDCアースの地を歩む。
 途中ですれ違い、自分達を見て奇声を上げた|人間《フール》の相手をしてやったが。余りにしつこいので早々に肉球パンチを浴びせて逃げ出してきた所である。
 だが彼が連れていた白猫が興味深い話を聞かせてくれたのだ。何でも自分を保護と称して捕獲し、暖かい寝床と美味しいご飯を食べさせた挙げ句、変な首輪を付けさせてから身売りに出した――蜥蜴みたいな女の事。
 幸い変な首輪は取れたし、新しい召使いも出来たので現状満足はしている……らしいから良いとして。妙な事をする女は気になったし、美味しいご飯が貰えるならば行かない訳にはいくまい、と。
「にゃーん」
「みゃーん」
 来た所は町外れの倉庫。どうやって来たかなんてどうだって良い。猫は不思議な生き物だから。
 黒猫のナルニアが先に、後ろをキジ猫のネーネリアがくっついて中に侵入する。同朋の匂いがたくさん。濡れた鼻をすんすんと鳴らして確かめながら進んで行くと。
『ったくもう、何なのムカつく……! 私のジャマしに来るだなんて……!』
 蜥蜴の様な肌を見せた女が吼えているのが視界に入り、二匹はそそっと音を立てずに真っ青なシートの裏に身を潜めた。険呑な空気に敏い猫達はご飯を貰うどころじゃないと察したのだ。
 女が戦っている相手は猟兵。そしてナルニア達だって猟兵。蜥蜴の女はオブリビオンで世界の敵と言う事だ。
「…………にゃあん」
 ブルーシートの中にはケージが重なって置かれ、中には不安そうな声で二匹に声をかける|同志《ネコ》の姿。
 ナルニアはニャアンと問う。あの女は何なのか、と。
 ネコ達は答える。人間の敵みたいだ、と。
 別に人間の為に働く理由などは無い。しかしそのネコ達は、あの女をどうにかして欲しいと告げる。
 二匹は顔を見合わせ、ネーネリアはミャッと小さく鳴いて駆け出した。行く先は女の視界の前。
『お前……どこから? 逃げちゃ駄目よ、そっちに下がってて』
 大鎌を手にした女は空いた手でキジ猫に下がる様に告げる。ぬらっとした瞳。チロリと見える二枚舌。その口振りと視線に二匹は感じる。この女――心の底からネコを愛している訳では無いのだ、と。
「みゃんっ!」
 ネーネリアの性質や思考は猫のそれだが本性は|霊鬼《グリム》。尻尾を大きく振りながら飛び上がれば、|霊妖術《グリムロア》の炎が生み出され、ラケルタ目掛けて放たれる。
『――えっ』
 飼い猫に手を噛まれるとはこの事か。異能である以上に――攻撃された事に女は驚きまともに炎を身に受けた。無論、彼はこの女の飼い猫でも何でも無いのだが、保護したネコとそうじゃない猫の区別がつかぬ時点でネコに対する情などその程度なのだろう。
 ナルニアもその間に他のネコ達の話や事情を聞く。保護された事には感謝しているが、妙な儀式に自分達が使われていると言う事は感じ取ってはいるらしい。今の所、自分達に害が無いし寝床とご飯を与えてくれるからいてやってるだけなのだと。
 ならば。さっきの白猫が下僕を得た保護団体とやらに行くのが良いとナルニアはネコ達のケージの鍵をひょいひょいと外から開ける。間違い無く自分達を愛してくれる人間達に出会える筈だから。
 ゾロゾロとネコ達がケージの外に脱出し、外を目指す。それに気付いたラケルタは縦瞳孔を丸くして叫んだ。
『うそ、どうして? お前達、どうやって……いや、どこに行こうっていうの!?』
「にゃー」
「みゃー」 
 ナルニアとネーネリアは女に告げる。このネコ達は任せろと。その邪悪な目的に使われなくとも、ネコの同朋達は生きる術があるのだと。
『待ちなさい……! お前達を保護してやったのは誰だと思っているのよ……!?』
 その言葉が通じる事は無いのだろう。元より偽善のおしつけなぞ無用なのだ。
「みゃっ!!」
 再びネーネリアが火花を弾けさせ、その衝撃で追ってこようとする女を弾き飛ばす。ネコの主を気取った魔物など願い下げだと言うかの様に。
 その隙に。倉庫中にあったケージ内のネコ達は一匹残らず解放され――ナルニアを先頭にその場から脱出した。
 きっとあのオブリビオンは他の猟兵が退治してくれる事だろう。ネコを利用した罰である。

『一体ニャンだ? 複数の保護団体に多くのネコが集団訪問!!』
 ――と。翌朝、地域のニュースを賑わせる事態になったのは、また余談。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ディフ・クライン
迂闊に近付き過ぎたかな
反省点だが、それ自体は後でいい
何にせよ、ここに辿り着けたんだから

猫を思いやる気持ちが欠片もないわけでもなさそうだけれど
結局人々を洗脳する道具として猫を使ってしまうのなら、やっぱりここで止めるよ

彼女が自身を闇で覆って不可視となったって問題はない
倉庫に辿り着いた時から密かに編み上げていた冬の魔力
手にするのは常の魔杖ではなく、腰に佩いた白鞘のアイスレイピア

自分の為とはいえ、猫を保護したり各種団体へと積極的に自ら赴く行動力は、素直に感服する
今日、譲渡が決まった猫たちや里親の喜びにだって嘘はなかった
だからこそ、彼らの喜びが嘆きに変わらぬよう
敵と認識した君へ青冴えの月を

――寒月、閃け



 ケージの中にいたネコ達が集団脱走するのを見届けながら。ディフ・クライン(f05200)は途方に暮れた表情を晒す蜥蜴の魔性の前に立つ。
「猫を思いやる気持ちが欠片もないわけでもなさそうだけれど」
 ただ利用するだけにしてはその扱いは悪くないのは見て取れた。しかし全くの善意だけでは無いのは行いからして明らかなのだ。
 自分の思惑をジャマされた不機嫌を隠さぬ女――ラケルタは唇を噛み締め、目の前の猟兵を睨み付けていた。
『――アンタ、さっきから私の前に現れてたヤツね』
「すっかり顔を覚えられたみたいだね」
 迂闊に近付きすぎたかな、とディフは苦笑いを浮かべた。そこは反省点だとしても、今すべき事で無い。
 それに――後で知った話だが。最初の譲渡会で令嬢の姿に変化したラケルタの姿を目撃し、その後の探索に加わったのはディフだけであった。彼女を見つけ、仲間に知らせて追わせた結果を思えば、そこまで近付いた事には大きな価値があった。――何にせよ、ここに辿り着いた。その成果が今なのだ。

「人間の身勝手から不幸な猫達が出るのが一番最悪。だから、人間の手で幸せにしなきゃなの」

 先程、最初に出会った時に女が告げていた言葉を思い返す。どこまでが本心かは解らないが――人間への嫌悪感だけは間違い無いのだろう。オブリビオンとは、骸の海から現れた存在は邪悪な思考有する存在なのだ。
「結局人々を洗脳する道具として猫を使ってしまうのなら、やっぱりここで止めるよ」
 腰に佩いた白鞘よりすらりと抜かれたは雪夜の星を思わせる刀身備えたアイスレイピア。
『そんな|鈍《なまくら》で私を斬れるとでも思ってんの……!』
 ラケルタは手にした大鎌を振るう。血錆が付着した刃はディフの持つ刃と正反対の赤黒。それは闇そのものの様で、地面よりずぷりと浮き上がった邪悪な黒が女の全身を呑み込み、薄暗かった倉庫の更に闇に紛れて消える。
 青い瞳が周囲を見回すも見えるものは薄暗い倉庫の光景のみ。聞こえるのはどこかで稼働する空調の音のみで足音も気配も感じない。
「……!?」
 つとに。後ろから突き飛ばされるかの様な衝撃を受け、ディフは前にのめるも辛うじて足を踏みしめる。
『へぇ……今ので立ってられんの。凄い、やるじゃん』
 その声の出所はいずこか。耳澄ませど反響が重なるかの様な、布を重ねたかの様な音に聞こえるのは闇の魔力による阻害だろう。再度襲い来る闇の魔力による衝撃は、横合いに飛ぶ事で直撃を避ける。脇腹に走った痛覚。黙って立っていてはただ標的にされるだけだと直感的に動けたお陰だった。
 そしてディフは握りしめたレイピアの柄を己に引き寄せる様に構える。彼女が、ラケルタがその身を闇で覆い不可視になった所で問題は無い。この倉庫に辿り着いた時からずっと密かに編み上げていたのだ、契りし冬の魔力を。

 ――寒月、閃け。

 詠唱は簡潔にその一言のみ。
 青く冴えし三日月が如く、氷の魔力は鋭利なる刃として彼の周囲150mの範囲に広がり放たれる。
『……ギャアアァァッッ……!?』
 響き渡るはラケルタの悲鳴。顔を合わせた時より敵として認識した。姿見えずともこの場にいる敵全て、青冴えの三日月から逃れる事は許されぬ。
 覆う闇の魔力すら凍り付き、衣を剥がされるかの様にディフの背後で大鎌振り上げんとしていた女の姿が露見する。爬虫類の鱗が凍気により裂ける様に血を噴き出し、黄金の瞳が怒りを込めて人形を睨み付けていた。
「――自分の為とはいえ、猫を保護したり各種団体へと積極的に自ら赴く行動力は、素直に感服するよ」
 ディフは率直な感想を口にする。冷静に、しかしその表情に笑みは無い。
「今日、譲渡が決まった猫たちや里親の喜びにだって嘘はなかった」
 だから――彼らの喜びが嘆きに変わらぬよう。この蜥蜴の魔性を野放しにする訳には行かぬのだ。
『気に入らないわ、アンタ。甘い事ほざいて――虫唾が走る』
 大鎌を強く握りしめ、吐き捨てる様にラケルタは告げ、そしてディフに向けて大きく叩き付けんとするも。
「元より邪悪な君にはきっと解りかねるのだろうけど」
 ああ、骸の海に沈むその前より、この女は邪悪であったのだろう――幾多ものオブリビオンと出会ってきた青年は何故か強くそれを感じ取っていた。
 故に。黒き刃が届く前に、その氷の刃を容赦無く突き立てる事が出来たのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

樹・怜惺
うっわお嬢かと思ったらトカゲ系ギャルとかネタ盛り過ぎじゃね?
……鎌使いは知り合いにいるが、ソイツは汚しすぎてて見た目もよくねェな
自分の得物位大事にしろや

そもそも自分に様つけるとか、ちょい痛いし古いわー
ってか俺ら相手に勝てると思ってンのがアウトだろ
猫を守ろうとする姿勢だけは評価してやる
グダグダ喋っても仕方ねェ、さァ終わらせようぜ

Guanto di luce solareを拳に
鎌ってのは正面から喰らわなきゃ、只のでけェ的なんだよなァ
軽業で攻撃を躱し、鎌を横から大きな面を殴って払う
体勢を崩したところを狙って一撃必殺

女殴ンのは正直好きじゃねェが、そうでもしなきゃ止まらねェだろ
これで終わりだァ!!



「お嬢かと思ったらトカゲ系ギャルとかさァ……」
 ネタ盛り過ぎじゃね?と肩を竦める樹・怜惺(f31737)に対し、その視線の先――ラケルタは他の猟兵達の容赦無き攻撃を受け、大鎌の石突きを床にその身を支えつつ彼を睨み付けていた。
『どいつもこいつも、私のジャマばっかりさぁ……ムカつく、チョームカつく』
 先の割れた舌をちろりと覗かせながら女は両手で大鎌の柄を掴み、大きく振り回して構えた。
『ああ、アンタからもアイツの匂いがするわ……どこまでこのラケルタ様をコケに――』
「そもそも自分に様つけるとか、ちょい痛いし古いわー」
 恨み辛みを呪詛の様に吐く女に向け、怜惺は実に軽い口調で……しかし辛辣なる言葉を投げかけた。ぴくっと女の眉が吊り上がり、その顔引き攣るのを見るも彼は動じない。
「ってか俺ら相手に勝てると思ってンのがアウトだろ」
『アンタこそ、私に勝てると思ってるなんて大した自信ね……!』
 この蜥蜴女が実に高慢で、人間を見下している事は明らか。この僅かな会話を通してもはっきり感じる。陽光の名を冠する籠手を拳に携え、彼はスッと足を開き戦う姿勢をそこで取った。
「猫を守ろうとする姿勢だけは評価してやる。さて――グダグダ喋っても仕方ねェ。さァ、終わらせようぜ」
『……そこだけは同意してやるわ』
 先に足を踏み込んだのは魔性の方であった。身の丈程ある大鎌を軽々と振り回しながら怜惺の間合いの内に刃を繰り出してきた。が、彼は恐れず怯まず冷静にその刀身の動きを見極めていた。
「鎌ってのは……正面から喰らわなきゃ、只のでけェ的なんだよなァ」
 一歩身を退き、袈裟懸けに飛んで来た刃を回避すると、その大きな面目掛けて力一杯拳を放つ。
『ぐっ……!?』
 鎌を突き殴られ、その力に女の身がよじれる。体勢を崩し、無防備になった左脇腹部目掛けて怜惺はそのまま一撃必殺の拳を突き込んだ。
「っしゃああァッ!!」
『ガァッッ!!?』
 破壊の力籠められた一打は鈍い音と共にラケルタの身を吹き飛ばし。大鎌も手から離れて硬質な音を立てながら床を滑った。
「……鎌使いは知り合いにいるが、ソイツは汚しすぎてて見た目もよくねェな。自分の得物位大事にしろや」
 大鎌使いの動きはある程度熟知しているつもりであった。大振りな得物が故に、その軌道は酷く限られてくるであろう事も。余程の奥の手が無い限り、振りかぶった時点で刃の行き先は充分読めたのだ。
『クッソ……人間如きが……!』
 蹌踉めきながら立ち上がったラケルタ。得物を拾うべく足を動かした女の前に怜惺が立ち塞がる。
「女殴ンのは正直好きじゃねェが……そうでもしなきゃ止まらねェだろ」
『――――』
 その言葉にラケルタの表情が固まる。刹那、声を震わせながら女は言葉を吐き出した。
『アンタもアイツと一緒っ――私を女だと見くびって、舐めくさってバカにして……!!』
 赫き闇を滲ませながら金瞳の瞳孔を大きく広げ、蜥蜴の女はその指先の爪を鋭く光らせて怜惺目掛けて飛びかかった。
『ニンゲンのクセに……!!!』
 しかし魔性とは言えど徒手で怜惺を上回る筈も無く。
 呪詛の如き女の叫び声に彼が惑わされる事も無く。
 男はその拳に金色の光を、正の力を籠めて全力にて突き放つ!
「これで、終わりだァ!!」
『グアアァッッ!!?』
 腹部を確実に捉えたその一撃は内蔵を一瞬で破壊せしめ、少女の姿した蜥蜴の魔性を空のケージに思い切り叩き付けた。ガラガラと崩れ落ちるケージの上で、ラケルタは数度ビクッと痙攣した後動かなくなった。
 最大の一撃を決めた怜惺は敵の生死を確認すべく。大きく深呼吸して息整えてから崩れたケージに埋もれる女を覗きこむ、と。虫の息にある女が恨み言連ねる声聞こえる。
『死んでも……許さない。アンタも、そしてアイツも……現世で、首洗って待ってると、良いわ……』
「――まだンな事言う余裕あんのか」
『骸の海から蘇ってやるもの……何度も、何度も……』
 息絶え絶えに怜惺に視線を向け、そして狂った様に高笑い一つ。
『はは、あはははっっ……!! ご、ふっ』
 その不気味な笑い声が途絶えるのと、女が事切れて消滅したのは同時であった。

「人間見くびってる魔物がどの口で言うかねェ」
 儀式場の魔法陣を爪先で掻き消しながら、怜惺は肩竦めた。これで妙な術式は全て解除されただろう。
 此処にいたネコ達は無事に救出出来たと敵の排除を確認してやってきたUDC職員から聞く。件の保護団体も多少の混乱は生じるやも知れないが、組織のネコ好き職員達による寄付も見込めるとの事で運営に支障を与えずに済みそうである。
 預けていたネコを受け取った怜惺は、その小さな命が幸せそうに寝息を立てているのを見つめて顔を綻ばせ。
「さて、コイツに新しい家族を紹介しなきゃ、な」
 願わくば、今回の事件に携わった全てのネコが幸せでありますよう。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月22日


挿絵イラスト