死と殺戮の彼方に在る悲願
「生に戦いにと賭した命が報われるとしたら、どんな方法があるかしら?」
ポノ・エトランゼ(ウルのリコ・f00385)は集まった猟兵たちにそう問いかけた。
その者の命が失われてしまえば、勝利も果たした願いも本人に還っていくことはない。
「皆さんは闇の救済者戦争で現れた五卿六眼『紋章つかい』のことを覚えてる? オブリビオンを強化する寄生虫「紋章」の生みの親である彼の玄室が発見されたことは、既に報告書がいくつか上がっているし知っている人もいるわよね」
発見されたいくつかの玄室は五卿六眼『紋章つかい』の研究施設のようなものだ。
そこには無数の『紋章』(寄生虫型オブリビオン)と、その研究文書が数多く残されている。
「紋章を作るには材料が要るらしいけれど、紋章つかいは「オブリビオン10体、魂人500人」とも言っていたわね。紋章を一つ作るのに多くの尊い命が必要だったみたい。紋章作成の再現は当然無しだけれども、既に作成され現在放置されている無数の紋章はそのままにしておけないと思うの」
言うなれば、徒死だ。
誰もが志半ばに捕らわれ殺された。
「皆さんが手にした紋章はそのまま持ち帰って使ってもいいと思うし、思うところあれば破壊という形で骸の海に還すのもいいと思うわ」
紋章つかいが言ったような「正しき意志を持つ者に、相応しき力を与える為」に活用しても、良いのかもしれない。それは悪ではないだろう。オブリビオンを操る死霊術士のような存在もいる。
実際に紋章を手に取り、構造を調べたり、改造を施したり、性能をテストしたり、噛みつかれて無理やり装着させられそうになりながら、紋章をひとつ研究することをポノは依頼する。
「玄室へは私がグリモアで送るから行きは問題ないのだけれど、問題が発生するのはその帰りね」
紋章つかいの玄室は血管で作られた大地の地下にある。
「実はこの玄室には『死合わせの紋章』の化身・モルテという敵が迫っているの。
モルテは「死が二人を分かつまで」……つまり死して契約が切れた魂人を新たな主である闇の種族へと導く存在なの」
猟兵たちが研究するのは魂人数百人分が籠められた紋章だ。
「モルテは、紋章に使われた命を魂人の死として考えていないのかもね。だから寄ってくる」
闇の種族へと紋章を導かせるわけにはいかないとポノは言った。
第二層の血管の中では、モルテたちが群れとなり襲撃してくる。
「皆さんは紋章で装着し変身することで、装甲に覆われた異形の如き姿になることができるの。その力を使ってモルテを撃破するか、……紋章の力に頼らずに戦うこともできるけど、紋章の装甲がないと血の海の如き血管の地中では十分な動きが出来ないかもしれないわ」
戦場での判断は皆さんに任せるわね。ポノはそう言って、猟兵を送り出す準備をする。
「誰かの命が誰かの救いになるかもしれないもの。じゃ、『皆』をよろしくね」
ねこあじ
ねこあじです。
今回はよろしくお願いします。
第1章『紋章つかいの玄室』
玄室に残された「紋章」を手に取り、研究をしてみましょう。
マスター側からは紋章のリストアップを行っていませんので、キャラクターさんの方で考えてもらう形になります。
「研究する紋章の名前・外観・性能」などを基本に、自由に紋章を考えてください。
研究を終えた「紋章」は、猟兵が持って帰っても大丈夫です。
紋章を称した武器や鎧を作るのも、ぜんぜん問題なしです。
第2章『『死合わせのクローバー』モルテ』
血管で作られた大地の地下、血の海のような血管の地中のような場所での戦闘となります。
第1章 日常
『紋章つかいの玄室』
|
POW : 自ら紋章を装着し、性能を確かめる
SPD : 紋章を分解し、構造を調べる
WIZ : 紋章に魔法的な改造を施す
|
種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
祝・成豊
ほうほう、過去に大変なことがあったようじゃの。
儂は参加しておらなんだから、どういった悲劇だったかは知らぬが、便利な物ならば貰って帰るとしようかのう。
力自体に意志はないようじゃし、な。
この紋章は……ふむ?(杖でつついたり眺めたりして)おお、なるほど。
「あらゆる物をエネルギーに変えて取り込み、使用者のスペックを強化する」効果があるようじゃの。
見た目が「放射状の円形」であるし、「太陽の紋章」とでも呼ぼうか。
ふふ、この世界からは、太陽は見えなさそうじゃが。
有効に使わせてもらおうぞ。中に宿った魂も……まあ、何とかしてみるかのう。
森林浴しながら寝ていれば、そのうち成仏できるのではないかな。
ダークセイヴァーの第二層。
莫大な量の「紋章」が貯蔵されているという『紋章つかいの玄室』は、血管で作られた不気味な大地の地下にある。
「ほうほう、過去に大変なことがあったようじゃの」
――祝・成豊(豊穣・鎮守・盛衰・f42643)は、説明されるままに件の紋章つかいの話、そして現状の紋章の放置状況についてそう認識したように見せた。
「どういった悲劇だったかは知らぬが、便利な物ならば貰って帰るとしようかのう」
然して、さらり告げた言の葉の真意は決して覗かせぬものだ。
成豊の知る|玄室《くらきや》というものは土の匂いがする。大地の気に包まれている。静かな、静かな場所だ。
この玄室は外からのものだろうか――血の匂いがする。安寧とは言い難い滅びと歪んだ再生の気に包まれている。
ぐるりと玄室を見回した成豊は、数多の紋章を目にする。
紋章は巨大な玄室に丁寧に安置されているというわけではない。
寄生虫型の紋章は虫らしい形をしているものもあれば、心臓の形、月の形、刺青のような形と、様々な紋章が床や壁に埋め込まれている。まるで勝手に好きな位置へと移動したみたいに。
「おや……この紋章は……」
壁の上の方にある紋章が気になり、持つ杖の先でつつく成豊。すると一瞬にして生えた木の根が紋章を壁から剥がし、ころんと成豊の元に落とす。
「ふむ?」
成豊は霊力を水盤のように虚空に浮かし受けとめる。放射状の円形となっている紋章を乗せ、矯めつ眇めつ眺めた。
杖でつつき軽く霊力を送り、力の反発や|反響《こだま》の具合を感じ取る。
「おお? ――なるほど」
何度か霊力を送ることを試しては、木の杖を伝い自身へ届く力を分析していく。
じわじわと霊力の水盤に浸すようにして、改めて紋章を受け止める。
何だか光合成のようじゃの。と成豊は呟いた。
「この紋章には、あらゆる物をエネルギーに変えて取り込み、使用者のスペックを強化する効果があるようじゃの」
まるで陽光や水を取り入れ活かし世界を潤す植物の如く。
「名付けてやらねばな。そうじゃな――この見た目に倣って「太陽の紋章」とでも呼ぼうか」
転移の最中に垣間見たダークセイヴァーの世界は果てまで闇深く、一縷の光もない場所のようにも見えた。
「ふふ、この世界からは、太陽は見えなさそうじゃが」
月の眼の紋章があるのだ。
きっと太陽の紋章もあっておかしくはない。と成豊は柔く微笑んだ。
水盤の霊力を解き、掌に持った太陽の紋章は不思議とあたたかくも感じる。名付けられ、成豊に触れた紋章の放射部分は、彼に馴染もうと見目は変わらずとも波長を変えていく。
「有効に使わせてもらおうぞ。中に宿るとされる魂も――……まあ、何とかしてみるかのう」
自身に向けていた声は、言葉後半、ほんの少し紋章に向けられる。
「森林浴しながら寝ていれば、そのうち成仏できるのではないかな」
のう?
誰にともなく力と共に玄室にこだまさせた成豊の声はどこまでも穏やかだ。
安寧は誰かの願いであり、誰もが経験なき時間がこれから育み紡ぐのは、海へ還る、いつか。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
製造過程に思うところはあるが、出来た物を問答無用で壊すのも躊躇うな
とりあえずこういうのはつけてみるのが一番早い。
羽の描かれた手袋を装着したら魔力供給ついでにカウンターハック、情報検索といこう
機能やらの情報がわかるといいが
名はNOWHERE…どこにもない?
コンセプトは転移だったがそこまで至らず、攻撃範囲の拡張にとどまった、と
ん?転移と攻撃拡張に関連はないような…?
あぁ…大事な場面でそこにいられなかった、そこにいても救えなかった
救う為に伸ばした手が届かなかったから、届かせる為の力を求めたんだな
だから『今(NOW)ここ(HERE)にいる』か
良いな、そういうの好きだぜ?
紋章つかいの玄室の床、壁、天井には嵌め込まれた紋章が数多に無造作に在った。
並べられているわけではない。
放置され、けれども寄生虫型である故か、それぞれがしばらく動き静止に至ったかのような有様である。
「紋章一つに、存在値多数……。……製造過程に思うところはあるが、出来た物を問答無用で壊すのも躊躇うな」
玄室内を見回した護堂・結城(|雪見九尾《外道狩り》・f00944)。彼の存在に惹かれたのだろう――ひとつの紋章が動き出したのを結城は見つける。
その紋章は羽の形をしていた。
「とりあえずこういうのはつけてみるのが一番早い、か」
おいで、というように掌を差し出せば紋章は結城の元へと落ちてきた。羽の形をした紋章は、結城の手に触れた瞬間、彼の手を包み込むような手袋型となる。
ぎゅっと拳を作ったりひらいたり。動きを数度繰り返せばすぐに馴染む、謎のフィット感だ。
装着した『紋章』の魔力を探る結城。
直ぐに波長は合わせられ、紋章に溜められた魔力が結城に供給されていく。自身の力を反発させて紋章の手袋に響かせる。
「名はNOWHERE……どこにもない?」
響かせた力はさらりと平坦だ――否、少しの『掛かり』を感じ取った結城はそこを起点に、力を巡らせていった。矯めつ眇めつの如く手袋を装着した自身の手をくるり。
元々こういったアイテムの扱いは慣れている遣い手なのだろう。
「コンセプトは転移だったがそこまで至らず、攻撃範囲の拡張にとどまった、と」
紋章に既存するデータを探り、今や打てば響かせるように紋章を扱っている。
「ん? 転移と攻撃拡張に関連はないような……?」
言語として、戦闘手段として、整えられた羅列は何処か分断している。
(「これは」)
ベースにあるのは、機能としては説明のつかないモノ――者――、心、だろうか?
分断した部分へと検索の手を伸ばす。
そうして「あぁ……」と結城は息を零した。
何か――複数が一つにまとめられた、軋む心。
「……大事な場面でそこにいられなかった、そこにいても救えなかった。救う為に伸ばした手が届かなかったから、届かせる為の力を求めたんだな」
【 NOWHERE 】
【 NOW HERE 】
「だから『|今《NOW》|ここ《HERE》にいる』か」
ここ――結城の在るこの時間に――。
彼らが伸ばした手は、確かに結城の手に触れていた。
く、と結城は笑む。
自身の手を包むモノは、巡ったチャンスを確実に捉えている。
「良いな、そういうの好きだぜ?」
これから、救う為に――確実に、力を届かせる為に――翼を得るのだ。
大成功
🔵🔵🔵
アミリア・ウィスタリア
【小夜の藤筏】
紋章……たった一つのそれを作るのに、犠牲が多すぎるように感じて。
いっそ紋章一つに込めない方が強いんじゃないかしら? なんて思ったのですよね。
紋章は、思っていたよりも見た目だけは美しくて。
宝石で出来た蜘蛛の様にも見えます。
噛みついてこようとするのも、もしかしたら使われた誰かの強い嘆きの所為だったりするのかしら。
――大丈夫ですよ。ミラ達はあなたがたに怖い事はしません。
『少しお話しましょう?』(UC)
魂人の無数の命が詰まっているのなら、もしかしたら意志を少しは感じられるかもしれません。
あなたたちをまだ利用しようとする者が迫っています。
どうか、力を貸してください。
共に撃退しましょう。
リコ・リスカード
【小夜の藤筏】
紋章つかい……正しき意志って何か分かった上で言ってたのかな。
絶対分かってないと思うけど。
作ることも、他者の命も魂も愚弄したような存在――反吐が出る。
主はそれを美しいと言うけれど、俺にはそれが檻にしか見えない。
多くの命を無理に納めて、利用しようとして。
……そうだね、誰かの怒りや嘆き、それ以外の思いも、力の根源と見なされてるのかもしれない。
本当はすぐにでも壊して骸の海へ還したいけれど、この後の戦闘のこともある。
主が紋章に訴えかけている間に、『武器に魔法を纏う』でより力を発揮できるように強化。
……利用するような形になって、ごめんね。
せめて、闇の種族にキミ達が利用されないよう守るから。
血管で作られた大地の下にある、紋章つかいの玄室に猟兵たちが訪れた。
玄室室内は広く、床や壁、天井と様々な紋章が嵌めこまれている。
「寄生虫型ということは自ら動いて今の場所に鎮座したのでしょうか?」
「そうかもねェ……」
辺境伯の紋章を始め、番犬の紋章、紋章の祭壇と、このダークセイヴァーにて人々を苦しめ続けてきた一端がこの玄室に集っている。
アミリア・ウィスタリア(綻び夜藤・f38380)の疑問に確かな答えはない。
「虫の紋章――獅子や、こちらは花の形をしていますね」
いろいろあるんですね。
アミリアはあちらこちらと興味深そうに眺めていく。その視線の先のひとつへ、リコ・リスカード(異星の死神・f39357)も倣うように顔を向けた。表情はどこか怫然を思わせる。
馳せるのはかつてのダークセイヴァーでの戦いの日々。
(「紋章つかいは……正しき意志って何か分かった上で言ってたのかな」)
「……絶対分かってないと思うけど」
ぽそりと声を零した。
オブリビオン10体、魂人500人――存在を材料と言ってのけた紋章つかいの「正しき」とはきっと相容れない。
(「作ることも、他者の命も魂も愚弄したような存在――反吐が出る」)
研究者気質の類も様々に在る。
その愚弄に値する結果がここには溢れていた。
「あら、あの子達。宝石で出来た蜘蛛の様にも見えますね。美しいと思いませんか?」
関心が含まれるアミリアの声は静かな水面にたつ波紋のようだ。
リコの様子に気付いているのか、いないのか。それとも敢えてか。気に掛けることもなく、アミリアは「おいで」と紋章を呼ぶ。
壁から剥がれ跳んでくる二つの蜘蛛の紋章は、アミリアの掌に降り立った。放射状となっている肢らしきものと先端の鋏角が動き、アミリアの指先に噛みつこうとする。
滑らかに編むように指先を動かして避け、蜘蛛型の紋章を手の甲へと導くアミリア。吐息に微笑が混ざっている。
「噛みついてこようとするのも、もしかしたら、使われた誰かの強い嘆きの所為だったりするのかしら」
アミリアは言いながら、はい、とリコに紋章のひとつを渡してくる。
「……そうだね、誰かの怒りや嘆き、それ以外の思いも、力の根源と見なされてるのかもしれない」
彼の刹那の躊躇は感知できるものではなかった。
(「主はこれを美しいと言うけれど、俺にはこれが檻にしか見えない。多くの命を無理に納めて、利用しようとして」)
紋章を美しいと言うアミリア。
紋章が檻にしか見えないリコ。
通常、玄室にあるのは棺。視点や考えが違うのだから、二人の差異も顕著だろう。
尤も。
たった一つの紋章を作るのに、犠牲が多すぎるように感じているアミリアの真意は定かではないが。
(「いっそ紋章一つに込めない方が強いんじゃないかしら?」)
これはこの世界の同胞たちの結晶体のようなものだ。
アミリアは紋章に慈愛めいた視線を送る。
「――大丈夫ですよ。ミラ達はあなたがたに怖い事はしません。『少しお話しましょう?』」
魅惑の視線と優しき声、言の葉が届いた紋章は噛みつき行為をぴたりと止めた。
「『あなたたち』をまだ利用しようとする者が迫っています。どうか、力を貸してください」
蜘蛛の紋章が微かに震える。同胞の|声《ユーベルコード》に反応しているのだろうか。
「共に撃退しましょう」
紋章に鯨波を起こす声は与えられていない。けれども不思議とアミリアは感じ取るのだ。魂の熱き血潮、同意や従順を。
アミリアが力を行使し訴えかけている間に、リコは手元の紋章をハッキングし自身の魔力を馴染ませ纏わせた。
震えていた紋章の蜘蛛はどちらも無眼だった。感覚が研ぎ澄まされゆく作りなのだろう。
「……利用するような形になって、ごめんね」
紋章にそっと声掛けるリコ。
「せめて、闇の種族にキミ達が利用されないよう守るから」
本当は。
すぐにでも壊して骸の海へ還したいけれど。
そう思うリコであったが、宝石のような紋章が今だけはとさんざめく。
迫る戦いの気配――アナンシの雨のように、紋章たちは力を発露させていくことだろう。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
【方針】実際に紋章を手にして制御を試みる
こんなものの為に、多くの魂人の命が……
忌まわしい兵器だが、これを戦力として取り入れれば、
強力なオブリビオンを滅ぼせるかもしれない。
目を引いたのは銀色の蜘蛛の形をした紋章。
邪悪な気配を放つ紋章を身に着けるのは抵抗があるが…
紋章を手の上で這わせ、蜘蛛の脚が私の体に食い込んできた瞬間
【血統覚醒】を発動。
《限界突破》で長らく眠っていたヴァンパイアの力を解放する!
「ぐっ……アアアアアッ!」
常人ならば耐えられない紋章の負荷にも、吸血鬼の力を以てすればあるいは…!
紋章の効果
・武器「スラッシュストリング」の性能強化
・技能《捕縛、切断》を利用した攻撃の威力アップ
ダークセイヴァー第二層。
血管で出来た大地の地下に眠る玄室――紋章つかいの作った紋章たちが放置され眠っている場所。
床に壁に天井にと収まった紋章の形は様々だ。
虫の形、鳥の形、眼の形、そのひとつひとつの息吹が、玄室に入った瞬間によみがえったようにガーネット・グレイローズ(灰色の薔薇の血族・f01964)は感じた。
「寄生虫型の紋章たちと猟兵との邂逅は、確か辺境伯の紋章から始まったのだったか――」
番犬の紋章、紋章作りの祭壇と。ダークセイヴァーで数々の悲劇をもたらしていた一端。
「こんなものの為に、多くの魂人の命が……」
第三層に辿り着いて、初めて訪れ交流した魂人の集落のことを思い出すガーネット。
彼らは元気にしているだろうか。
猟兵たちの存在を知った魂人の一部は、第四層を目指した者がいるとも聞く。
安寧の死がない世界……紋章の犠牲となるも絞られ続ける魂の末路。
「忌まわしい兵器だが、これを戦力として取り入れれば――……強力なオブリビオンを滅ぼせるかもしれない」
ヴァンパア、オブリビオンや闇の種族。ダークセイヴァーを苦しめ続けてきた存在への報復、否、活路を見出した反旗の群。
強い敵は他世界にも多数。勝率を、生存本能を高める一手がここには在った。
「おいで」
と、目を惹いた銀色の蜘蛛の形をした紋章に、ガーネットは呼びかけた。
一際邪悪な気配を放つ紋章だった。だからこそガーネットは気付いたのだろう。
蜘蛛の紋章が肢を動かしガーネットに近づいてくる。
手を差し出す躊躇が一瞬あったものの掌を上向け、蜘蛛を迎えるガーネット。針のような八本の突起が掌に這う。
掌から甲へと導きがてら紋章を観察する。同じ銀色の大きな二つの眼がある蜘蛛型。
触肢がガーネットの柔肌を捉え、次の瞬間、残る八肢が彼女の体に食いこんだ。
「……っ!」
ちくり。
と、した痛覚は一瞬。続くのはずぶりと異物が入ってくる激痛だ。
オブリビオンですら狂わせる力。数百もの殺意と死と怨恨に取り憑かれるようなもの。ガーネットの瞳が爛と刹那に輝いた。瞳は赤から真紅へと変化して、ブラッドエーテルが苛烈な反応を示す。
「ぐっ……アアアアアッ!」
ガーネットの、長らく眠っていたヴァンパイアとしての力が発露し、まずは激痛を抑え込む。
怨恨、殺意、死をひとつひとつ、調伏していくヴァンパイアの力。権威者の力は歯向かうモノをゆるさない。
紋章の掛けた負荷が少しずつガーネットに同調されゆく――蜘蛛の二つの単眼は紅く染まった。
切断に血の雫をしたたらせ、伝う敵の血にすら粘着性をもたらし、返す刃のように捕縛の才を発揮する蜘蛛の糸。
敵へ届かせる必中の活路とガーネットを繋ぐ牽引糸の力がガーネットの魂に刻み込まれていく。
彼女の寿命を喰らう血統覚醒。
紋章との鍔迫り合いに打ち勝ち、強力なオブリビオンを屠るためのひとつの手段がガーネットに宿るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
和泉・サエコ
アドリブ/連携可
UCで召喚した火天と水城が周囲を警戒する中、玄室を捜索するサエコ。
(火天と水城はテレパスのような形でサエコに話しかけています)
<何奴!>
いきなり飛びかかってきた紋章を弾き返す火天。追撃を加えようとする2体を制し、玄室に残された記録から『双頭の蛇』が描かれた紋章を調べる。
「『業病反転』。病や呪詛を自身の力に変換し、強化する能力」
<となると、これはお嬢様の病に惹かれてきたと?>
「かもしれませんわね。どうでしょう、私達と共に行きませんか?」
返事するかの如く、サエコが手にした日記帳の表紙に宿る紋章。
「いつか、この中の方ともお話しできればいいですね」
玄室内へ入った猟兵――和泉・サエコ(怪奇人間の死霊術士・f41232)は、周囲を見回す前にユーベルコード『リザレクト・オブリビオン』を発動させた。
「火天、水城、お願い」
小さな声に応じるは死霊騎士の火天、死霊蛇竜の水城だ。
火天はサエコの傍から離れずに、水城はその体躯を活かし、警戒にぐるりと周囲を泳ぐ。
そこでようやくサエコは自らも動き出した。火天と水城に周囲の警戒を任せ、玄室を捜索する。
血管の大地でできた地下にあるこの玄室は、その地の特性上、密室であっても血臭があった。『蛇の影』に取り込まれたあの日――あの襲撃のことを想起させる匂いだ。
ロングコヲトで身を包んでいれば寒くないはずなのに、ふるりと僅かに身を震わせ、日記帳を抱く力は増した。
けれども目前のことに集中しようと努める。
「あら……こちらは……」
玄室の奥、隅の方に書見台が据えられていた。載せられた書は一冊。
サエコが手を伸ばしたその時、
<何奴!>
と、火天の声がサエコの脳裏に響いた。
騎士の剣が素早く振られたのだろう、サエコが振り向いた瞬間には何かを弾き返していた。
水城の頭がするりと『何か』の方を向き、その体躯が伸びていく。
「火天、水城、お待ちなさい」
二体の声が届くのと一緒で、サエコの小さな声も瞬時に死霊たちに届く。
<ならば>
そう言った火天は鎖帷子の要領で鎖の檻を作った。飛び掛かってきた紋章が容易に動けぬよう、捕まえる。
その紋章は双頭の蛇の姿。
書見台に置かれた書をぱらりと捲り、サエコは『双頭の蛇』が描かれた紋章を探した。紋章つかいのメモと思わしき書で、該当のページを見つける。そこに書かれていたのは、
「『業病反転』。病や呪詛を自身の力に変換し、強化する能力」
<となると、これはお嬢様の病に惹かれてきたと?>
水城の言葉に「かもしれませんわね」とサエコは緩やかな頷きを返した。
「火天」
告げれば、死霊騎士は鎖の檻を払った。そして紋章が危険を及ぼすのならいつでも斬れる体勢となる。
サエコは双頭の蛇の紋章へと近付き、ことりと首を傾けた。優しく問うように。
「どうでしょう、私達と共に行きませんか?」
返事するかの如く、双頭の蛇の紋章はその身を伸ばし、同じく手を差し伸べていたサエコに触れた。
小さな二つの頭。ひんやりと冷たい紋章は、光無き世界で一瞬だけ輝き、サエコの日記帳に飛ぶ。
は、としたサエコは日記帳へと視線を落とせば、表紙には新しい紋章が。
「……いつか、この中の方々ともお話しできればいいですね」
日記帳の表紙に宿った双頭の蛇の紋章を撫で、穏やかに呟いた。
大成功
🔵🔵🔵
文月・統哉
【海猫】
※アドリブ歓迎
この紋章一つ一つを作る為にどれだけの命が失われたのだろう。
想像するだけでも嫌になるけれど、それでも、
残されたこの紋章は、彼らの生きた証でもあるから。
彼らの事を知りたくて、知る必要があるように感じていて、
勿論全てを理解する事は出来ないだろうけど、その欠片だけでも。
だから小太刀、お願いするよ。
『黒猫の紋章』を手に取って、先ずはその構造を確認し
一通り調べた後に改めて小太刀に託す
俺もまた『どこでもキャンプ』を使用
来てくれた霊達に敵意が無い事を示しつつ
穏やかに彼らの話を聞き、思いを聞き、願いを聞きたい
もし思い残した事や、やり残した事があるのなら
いつか俺達で叶えられる事もあるだろうか
鈍・小太刀
【海猫】
※アドリブ歓迎
珍しく統哉に呼ばれたと思ったら、成程そういう事ね
貸しにしといてあげるから、帰りにアイスでも奢りなさいよ
なんて言いつつ、気になっていたのは私も同じ
過去に幾つもの命が奪われて
残されたこの紋章だけが、今触れられる彼らの痕跡
でも彼らにもまた、残したい何かが在ったのだとしたら
聞いてみたいと思ったから
統哉から受け取った『猫の紋章』と
荒波のあしらわれた『海の紋章』を手に
『勿忘草の幻影』を使用
贄となった人々の霊を呼ぶ
彼らはどんな人物で
どんな人生を過ごしたのだろう
いい事ばかりじゃなくとも
悪い事ばかりでもなかった?
彼らの話を聞いてみたい
もし思い残した事があるのなら
いつか叶えられたらとも思うよ
血管で作られた大地はどこにいても血臭が付きまとう。
ダークセイヴァー第二層。
その地下の玄室に入った文月・統哉(着ぐるみ探偵・f08510)は周囲を見回した。
しん、と耳を打つ静けさで、いま微かに動いた空気は自身と鈍・小太刀(ある雨の日の猟兵・f12224)の呼吸によるものだ。
「静か……」
本当に誰かが安置される玄室みたいな、畏れ多いものを感じる――。小太刀はそう思いながらも言葉にすることはない。目を瞑り、少しの黙祷を捧げた。
「この紋章一つ一つを作る為にどれだけの命が失われたのだろう」
小太刀に続き虚空を震わせたのは統哉の声だ。
オブリビオン10体、魂人500人――紋章を作る研究にあたって、少なくとも一回の研究に集められた命。出来上がる紋章は一つだろうか、二つだろうか。
「想像するだけでも嫌になるね」
「……そうね……」
この玄室内にある紋章の数は、複数。床に壁に天井にと寄生虫型の紋章はまるで座する場所を自身で決めたようにばらばらに鎮座している。翼の形、虫の形、動物の形、花の形、人の部位の形。本当に様々な形の紋章がある。
辺境伯の紋章、番犬の紋章と、猟兵たちが紋章の存在を知ったのはいつだったか。ダークセイヴァーで数多の悲劇を生み出してきた。
ただでさえ強敵なる存在を強化する紋章には苦しめられてきた。忌々しいもの。
けれども、と統哉は言葉を続けながら、見つけた黒猫の紋章を手にした。ダークセイヴァーの闇に溶けるような、黒曜石みたいな漆黒だ。
指先で撫でれば見かけそのままのつるりとした感触。だが大人しいものではないようだ。即座に魔力的な波長が統哉へと焦点をあてていた。
「残されたこの紋章は、彼らの生きた証でもあるから。彼らの事を知りたくて、知る必要があるように感じていて……勿論全てを理解する事は出来ないだろうけど」
その欠片だけでも、と思うんだ。統哉の声は穏やかだ。――かつての友のように。
「……だから小太刀、お願いするよ」
「ふぅん。珍しく統哉に呼ばれたと思ったら、成程『そういう事』ね。いいわ、貸しにしといてあげるから、帰りにアイスでも奢りなさいよ?」
ツンとそう言った小太刀は、統哉から差し出された紋章たちを手に取った。
言いながらも、気になっていたのは小太刀も同じだ。
(「過去に幾つもの命が奪われて、残されたこの紋章だけが、今触れられる彼らの痕跡。でも彼らにもまた、残したい何かが在ったのだとしたら」)
「私も、聞いてみたいな……」
黒猫の紋章と海の紋章。凹凸のある黒猫の紋章、凪のように滑らかな海の紋章を指先で撫でながら小太刀は念じる。
そして寄り添いの想いを紋章に囁く。
「忘られぬ想いよ、ここに」
小太刀のユーベルコード『勿忘草の幻影』が発動すれば、青い小さな小花が紋章から零れて、ひとつひとつが人の形を取っていく。
そこには本来の透き通った身体よりも、透き通った魂人の姿がたくさん――たくさん在った。
家族単位で立つ霊もいれば、孤児院からさらわれたのだろうか、年齢様々な子供の集団もいる。老若男女の魂人たちの姿。オブリビオンの姿はなく、恐らく、命尽きた瞬間に力だけ残して骸の海へと還っているのだろう。
「こんにちは。ごめんね、急に起こしちゃって。私たち、どうしてもあなたたちのことが知りたかったの」
「うん。思い残した事や、やり残した事があるのなら是非聞かせて欲しいんだ」
小太刀と共に、彼らに敵意が無いことを示すため、安心して欲しいことを伝えるために統哉もユーベルコードを発動した。
――ダークセイヴァーのどこで生まれたの?
――故郷はどんなところ?
彼らはどんな人物で、どんな人生を過ごしたのだろう。そう思った小太刀が目が合った魂人の夫婦に声を掛けた。夫らしき男が、周囲の霊たちに目配せをする。
『私たちはこの身体になってから家族となったんです』
『けれども、ある日、集落ごとさらわれてしまったの』
その集落では下層で過ごした記録を、石や木板に削って文字として残していた。
新たに訪れた者が誰かを探していたり、誰かの子孫だったり、『誰かの僥倖』とも思える標を保存していた。
『何せ、皆さん、ばらばらでこの地に着くでしょう?』
下層で命尽きれば、この地に魂人として転生してくる。故に離れ離れが当然となる地だ。それを下層の者に伝える術は、あの時はなかった。
『まだあの集落が残っているのなら、誰かに託して欲しいの』
私たちが刻んだ記録を。刻むだけで通り過ぎていった魂人の記録を。
ある者は闇の種族の手足となり働いていたことを告白した。悔恨と懺悔に塗れている。
魂人たちの願いや懺悔を統哉は聞いていく。
『おねえちゃん。わたしがいるのはうみなの?』
『うみってどんなところ』
「えっ、海っていうのはね」
海水……水がいっぱいなところなんだよ。魚がいっぱいいるよ。と、興味津々な子供の霊に答えていく小太刀。
それは荒野よりも? 迷子にならない?
海の紋章にいた孤児院の子たちに海の話をする小太刀。
『うみ、みたいねぇ!』
『もっとおはなしきかせてよ』
「うん……もっとお話きかせるね。私の知らない話も、世界にはいっぱいあるんだよ」
本来ならば未来ある子供の人生だったはず。
いいことばかりの人生ではなく、けれども悪いことばかりの人生でもなかった。
いいことを知らないまま終えた人生だった。
魂人がそれぞれ紡いだ生の物語たち。
彼らの願い、想い、足跡を掬っていくのは容易ではない。
それでも。
「いつか俺達で叶えられる事もあるだろうか……」
ふと呟いた統哉の声は未来に想い馳せているのか、どこかぼんやりとしていた。
そうだね、と小太刀は言葉を添えた。
「いつか叶えられたらとも思うよ」
穏やかな時間を、嬉しい言葉を、明るいその景色を。
彼らに見せていけたなら。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
第2章 集団戦
『『死合わせのクローバー』モルテ』
|
POW : 死が導く紋章
【紋章形態】になる。肉体は脆弱だが透明になり、任意の対象に憑依して【死合わせの紋章】を生やし、操作あるいは強化できる。
SPD : 死合わせの群生地
レベルm半径内に【クロツメグサの群生地】を放ち、命中した敵から【寿命】を奪う。範囲内が暗闇なら威力3倍。
WIZ : 死によって解放されるもの
【対象の記憶の中】から【闇色の四葉のクローバー】を召喚する。[闇色の四葉のクローバー]に触れた対象は、過去の【対象が交わした約束の重さ】をレベル倍に増幅される。
イラスト:灰色月夜
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
「迷子の魂を新しいご主人様につながないと……」
樹海のような血管の地に集まってくるオブリビオンがいる。
『死合わせのクローバー』モルテ――オブリビオンたちは玄室から出た猟兵たちを取り囲むように寄ってきた。
「その紋章をお渡しなさい」
「ソレはもっと強きもの、闇の種族へと渡るべき魂たち」
「正しき意志、それは世界の滅びを臨む者」
猟兵とモルテたちの視点は相容れることはないだろう。立ち位置が違えば、己が持つ正しき意志も真逆となる。
それに、たくさんの紋章がこのオブリビオンの手に渡れば、将来、より強い闇の種族の配下が増えていくことだろう。
いま、玄室の場所を知られたままにしておくわけにはいかない。
樹海のような、血の海のような動きにくい戦場で行うべきはモルテの殲滅。
しかし少しの動きで血管の樹海は傷付き、その鮮血は猟兵の動きを阻害する。この血は、ダークセイヴァーで流れた血が集まったものだ――。
紋章の犠牲となった魂人の血も含まれる、そんな場所。
猟兵が紋章を装着すれば、装甲のようなものに覆われた姿となる。
絡みつく血樹海にて、猟兵たちはモルテを撃破すべく動き出した。
祝・成豊
ふむ、ふむ。
おぬしの思想に興味は無いが……世界なぞ、放っておいてもいずれ枯れるものじゃよ。
それを待つ訳にはいかんのかのう?
駄目か……ならば仕方が無いのう。
もとより、儂は『枯れ葉剤』は好かんのじゃ。
何も考えず、ただ世界を枯らすのならば……排除するしかないようじゃ。
『|眼《ブツゲン》』を凝らしてよぅく見るとしよう。
ぬしの事は、グリモア猟兵からも聞いておる。故によく見えるぞ……力の流し方も、防護の弱い部位もな。
そこを杖で突き、UCの発動を邪魔しつつ、生やした根で貫こうぞ。
なぜこうも動けるか、じゃと?
『紋章』じゃよ。触れる血液を全て取り込み、儂の力に変えておる。故に阻害されず動けもするのじゃよ。
血管の樹海のような場所で、濃厚な闇――カラカラに乾いた荒野に渡っている静寂、冷たさ――そんな気配を持ち近付いてくるモルテたち。
「その紋章をお渡しなさい」
「ソレはもっと強きもの、闇の種族へと渡るべき魂たち」
「正しき意志、それは世界の滅びを臨む者」
そう言った敵群に、ふむ、と祝・成豊は思考する。
「おぬしの思想に興味は無いが……世界なぞ、放っておいてもいずれ枯れるものじゃよ」
永く、その瞳で見て来た世界。その営み。一本の草木が森となることもあれば切り開かれ、国が建てば国が滅び、成豊は、永劫に続くものなど無いに等しいと知る。
「それを待つ訳にはいかんのかのう?」
モルテに問えど、返ってくるのは否だ。
「今よ」
「さあ、紋章を」
「――駄目か……ならば仕方が無いのう」
成豊が|眼《ブツゲン》を凝らすのと同時、モルテたちがクロツメグサを放とうとする。
血管樹に仕込まれゆくクロツメグサの種――力はモルテたちが根源である。
蔓延ろうとして伸びゆくクロツメグサの根の大元近くを木の杖で突く成豊。一度ではない、数度。
そこを起点にし、クロツメグサの根を払い、かわりに血管樹の流れに添い拡がっていくのは成豊の力だ。
「ぬしの事は、グリモア猟兵からも聞いておる。故によく見えるぞ……力の流し方も、防護の弱い部位もな」
顕現する周囲の|闇の根《クロツメグサ》を剥がしていくのは成豊の枝葉のような力だ。
「!」
「クロツメグサが……!」
完全な発動に至らず、モルテたちはようやく空振りとなったことに気付いた。
次の瞬間。
緑ある草木の気配に囲まれたモルテたちは、突如として生えた根に貫かれる。
真っ直ぐな根はモルテを貫くと更に分岐し別方向へとその身を伸ばしていった。まるでサイカチの棘のように。
「あ……ぐ……!」
百舌鳥のはやにえのように虚空に留められたモルテから、内包している力も貫く根に吸収されていくようだ。次々と力尽き、消えていく。
「な、何故……」
「死の気配を……繋げられない」
「猟兵の動きではない……
モルテたちを屈服させる根の森。先端には葉が生えていた――まるで敵を糧にしたあかしであるかのように。
「なぜこうも動けるのか、じゃと? 『紋章』じゃよ。触れる血液を全て取り込み、儂の力に変えておる」
故に阻害されず動けもするのじゃよ。
と、成豊は言う。
太陽の紋章があらゆるものをエネルギーと変え、成豊の身を満たしていた。
|紋章《彼ら》の、かつての自身あるいは同胞の力。
「もとより、儂は『枯れ葉剤』は好かんのじゃ。何も考えず、ただ世界を枯らすのならば……排除するまでじゃよ」
骸の海へ還るモルテたちに成豊は静かに告げる。
穏やかなその声は、けれども憐れ憂うものではない。
成豊にとって盛衰は憂うものではなかった――粛々と時の進みに在る星の樹。
この時もまた、この『時』に似つかわしくない過去の時間を粛々と在るべき場所へと還していく。
大成功
🔵🔵🔵
ガーネット・グレイローズ
※アドリブ・連携歓迎
む、オブリビオンに気付かれたか……
死合わせのクローバー……私は奴らを知っている。
「またお前たちか。今度は紋章集めか?」
相変わらず、「主」の為に動き回っているのか。ご苦労なことだが…
「この紋章は、既に私の制御下にある」
紋章の力を解き放ち、蜘蛛の外骨格のような銀色の装甲を纏い戦場に立つ。
【裁断領域】を発動。赤い血管の樹を中心に、蜘蛛の巣を張り巡らすように
鋼糸の結界を構築していく!
「さあ来い。紋章が欲しいのなら、力づくで私から奪ってみろ」
紋章の力は、既に制御している!《念動力》で結界を変形させて
モルテを《捕縛》、仲間が近くにいれば連携も行い、
確実に仕留めていこう。
血管樹海へと出たガーネット・グレイローズが察知したのは、覚えのある気配だった。
「縁、繋いであげましょう」
「正しき意志の元へ行きましょう?」
くすくすと闇の呼気を吐き出し嗤うモルテたちにガーネットは冷淡な眼差しを向けた。冷たく、そして熱く赤い。
「またお前たちか。今度は紋章集めか?」
以前会ったのは、魂人を捕らえて魂人を食材にする晩餐会の準備期間――囚われの魂人を連れ出し逃げる際の追手としてモルテたちが出現した。
死線を前に交わし続けてきた約束をガーネットは今だ持ち続けている。否、あの時よりも増えている。
「……相変わらず、「主」の為に動き回っているのか」
ご苦労なことだな……。
いつもの声色ながら、やや吐き捨てる口調のガーネット。
苛烈な戦いの後も晴れることなき闇の世界。かろうじて、今。訪れる救いはほんの一握りで、その一握りをいとも容易く踏み潰すのがオブリビオンたちだ。
「猟兵、その紋章を渡しなさい」
「魂人が数百と。縁としてはじゅうぶん……」
そしてその一握りを潰さんとするモルテたち。
「断る。この紋章は、既に私の制御下にある」
銀色の蜘蛛の紋章はガーネットの下で『在り方』を示した。刹那、紋章の銀が映ったのか、凛と紅に染まったガーネットの瞳にさらに呼応し、紋章から銀の糸のようなものが排出された。
ざん! と虚空を裂く銀糸は繭のようにガーネットを瞬時に覆い、次の瞬間、彼女は蜘蛛の外骨格のような銀色の装甲を纏い戦場に立っていた。赤い髪がバット・ケープであるかのようにさらり流れる。
「さあ来い。紋章が欲しいのなら、力づくで私から奪ってみろ」
そう告げてユーベルコード『裁断領域』を発動すれば、銀糸は赤い血管の樹を中心に、蜘蛛の巣が如く張り巡らせていく。
幹に触れれば赤が染まってゆくグラデーション。
構築された鋼糸の結界は巨大な蜘蛛の巣。
「けっかい……!」
「潜り抜ければいいはなし――……っ?」
モルテが小さな手を伸ばし、ガーネットの思考を読み取ろうとするも黒いクローバーの『種』は動かない。力が届く前に装甲が弾いていた。
鋼糸の巣の、そして血管樹の向こうに見えるガーネットの姿がモルテの視界から掻き消える――否。
「糸が、織られている……?」
戦場の彩に同化したのだろうか、紅を反映する鋼糸が壁を作り上げ、|繰り手《ガーネット》を隠していた。
水龍のように束となり蠢く鋼糸が上空から――モルテを叩きつけ、または縛り上げて裂いていく。
銀光が迸ったかと思えば、放射状の鋼糸が堅牢な檻を構築していた。その尖端には動かぬモルテ。
敵から噴出するのは赤ではなく闇の色だ。黒き飛沫を、うねり弾く鋼糸。
闇の匂いが、世界の、かつては生きていた血の匂いに沈められていく。
「お前たちはもう、私から逃れられないよ」
モルテ一体を貫いた鋼糸で織られたそれを解けば、モルテは実のように弾け飛ぶ。
『裁断領域』、それは|術者《ガーネット》が念動力で操る、何でも切れる鋼糸で出来た領域。
敵にとっては逃げ場無き処刑場のようなものだった。
大成功
🔵🔵🔵
アミリア・ウィスタリア
【小夜の藤筏】
まあ、思っていたより可愛らしい方々。
ミラも紋章つかいが言っていた正しき意志は違うように感じます。
勘違いを正そうにも聞いてくれそうにありませんし、終わらせてあげましょう。
紋章を装着し装甲を纏います。
人々の声が聞こえる気がします。
負けられませんね。
相手は装甲がないのであれば鮮血に絡み取られやすいはず。
――沈めてしまいましょう。
UCを使い、相手の動きを鈍らせます。
更にリコさんの魔術があればきっと彼女達は逃げられません。
どうぞ、“しあわせ”な夢に溺れてくださいな。
紋章……どうしましょうか。確かに壊して解放してあげた方が良いのかも知れません。
……けど、ミラ、すぐには判断できそうにないです。
リコ・リスカード
【小夜の藤筏】
世界の滅びを望む者が正しき意志の持ち主、ね。
ダークセイヴァーらしいけど……何となく紋章つかいの言う人物像には当たらない気もするのは気のせいかな?
紋章に力を貸して貰う。
声が聞こえる気がする。
大丈夫だよ、守るって約束したでしょ。
主の降らせた雨で敵が思考力を鈍らせたタイミングでUC発動。
沈むか凍り付くか。それ以外にないよ。
俺は死神。キミ達と魂を運ぶ者という点は似てるかもね。
けど――更なる苦痛を与える場になんか連れて行かせないから。
……紋章は壊すべきと思っていたけど。
紋章の魂達は皆が皆、終わりを望んでいないような気もして。
確かに判断に迷う。
キミ達はどうして欲しい?
その願いを叶えたいな。
「さあ、新しい縁を結びに行きましょう?」
「正しき意志、それは世界の滅びをのぞむもの」
紋章つかいの玄室から樹海の如き血管樹が蔓延る場所へと出れば、死合わせのクローバー・モルテたちが寄ってくる。
まあ、と目を瞬かせたアミリア・ウィスタリアはたおやかに微笑んでみせた。
「思っていたより可愛らしい方々ですね。お人形さんみたいです」
無邪気な様子で、決して対等ではない敵対者として線引きをする。
「世界の滅びを望む者が正しき意志の持ち主、ね。ダークセイヴァーらしいけど……何となく紋章つかいの言う人物像には当たらない気もするのは、気のせいかな?」
モルテ、そして復唱したリコ・リスカードの言葉に、アミリアは頷いた。
「ミラも、紋章つかいが言っていた正しき意志とは違うように感じますね」
アミリアの言葉にぴくりと反応したのはモルテたちだ。
「あのものは……弱きものにも紋章を与えようとしていた」
「おまえたちのようなものが、持つものではないの」
モルテたちが主と仰ぐ闇の種族たちは、紋章つかいとは目的も違うのだろう。
「あら、あら……所詮は烏合のそれですよね。どちらにせよ、相容れることはありませんので」
終わらせてあげましょうね?
やんわりとモルテに言い聞かせるようにアミリアは告げ、蜘蛛の紋章を起動させる。白銀の繭が刹那に彼女を覆ったかと思えば、次の瞬間にはレースのような銀鎧とバット・ケープを纏うアミリアの姿が在った。
血管樹に触れようとも銀糸で織られた装甲は柔らかく血の幹をいなし、傷つけない。
血管樹に流れるものはかつてこの地で流された血。アミリアの血もあるかもしれない、もちろん彼女が手に掛けた血もこの大地に集められているのだろう。
(「籠められた魂人……彼らの声が聞こえる気がします」)
「負けられませんね」
耳をすませば樹の中を流れる血潮の音が聴こえる気がした。
周囲に種が撒かれ群生しゆくクロツメグサはモルテ自身が動きやすいように少しずつ広がっていく。
「さあ、その紋章を渡しなさい!」
迫るモルテの声に、リコの持つ紋章が魂の音をたてた――そんな気配。
「大丈夫だよ、守るって約束したでしょ」
リコの言葉と同時、まるで応じたかのようにアミリアは『藤花の祈り』を発動する。
「――沈めてしまいましょう」
血と闇の匂いが満ちた血管樹海にソーダ水の雨降らば、花の香りがたちこめた。
「紋しょう……も、ん」
雨を浴びたモルテたちは途端に飛行能力を失い、または失速し、意志を鈍らせていく。さらにこの場に乗じるはリコが呼ぶ夜と吹雪だ。
ダークセイヴァー世界の常夜よりも冷たく、だが生死を判じるもの。
「夜を呼ぼうか。試練の夜だ。沈むか凍り付くか、それ以外にはないよ」
『雪花舞う夜』は一瞬にしてモルテの生を奪い取っていく。
オブリビオンとしての命を刈り取られようとも、凍る雨夜はその抜け殻が容易に骸の海へ戻ることをゆるさない。
「俺は死神。キミ達と魂を運ぶ者という点は似てるかもね。……けど――更なる苦痛を与える場になんか、彼らを連れて行かせないから」
「どうぞ、“しあわせ”な夢に溺れてくださいな」
周囲には凍ったモルテたちの抜け殻。凍った彼女たちを溶かしていくのは、皮肉にも触れた血管樹の血潮であった。
じわりとモルテを赤く染めて、骸の海へと還していく。それはまるで死者の手が引きずり落としていくかのようにも見えた。
血管樹を抜けて第二層の赤き大地の上へ。
「ええと、紋章……どうしましょうか。確かに壊して解放してあげた方が良いのかも知れませんが……。……けど、ミラ、すぐには判断できそうにないです」
困ったわ、という風に頬に手をあててアミリアが呟く。
「俺も……紋章は壊すべきと思っていたけど」
紋章の魂たちは皆が皆、終わりを望んでいないような気がしたのだろう。リコの歯切れも悪い。
「確かに判断に迷うよね。――キミ達はどうして欲しい?」
蜘蛛の紋章は明確な意思を示さない。たぶん彼らも途方に暮れている。
二人して悩むも、きっと答えがでない。
「そうですね……あとで知り合いの皆さんにお聞きしてみるのはどうでしょうか。決まるまではミラ達の家で、そうですね、日向ぼっこでもいかがです? 気持ちが良いんですよ」
初めて体験した日のことを思い出し、アミリアは提案する。
「……まぁ、それがいいかもねェ」
ひとまずは。と、リコも頷いた。
永劫の苦しみの果てから、ほんの少し延長して、あたたかな日常を。
そこから送り出すのも良いかもしれない。
大成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵
和泉・サエコ
※アドリブ可
「ごめんなさい、この方は渡せません」
日記帳(と融合した紋章)を抱きしめる。
黒地にところどころ黄色のラインが入ったラバースーツ状の、よく見ると蛇の鱗が浮かぶ装甲に下半身が蛇と化した、UCと紋章の力が混ざった姿に変身。
透明化した敵をピット器官で検知(暗視)。
「そこです!」
ネクロオーブから呪殺弾を撃ち、尻尾に合わせて変形した(武器を隠す)レッグギロチンで近づいてくる敵を切断。
憑依した敵は蛇が獲物を飲み込むように、魔力吸収で逆に取り込む。
「この装甲、ぴっちりなせいで体のあちこちが擦れて…それに胸も少し大きくなったような」
<取り込んだ魔力の分だけ一時的に肉体を成長させた>
紋章の声が聞こえた。
「その紋章は闇の一族へと縁結ぶべきもの」
「さあ、渡しなさい。猟兵」
血管樹海のなか、死合わせのクローバー・モルテたちが迫ってくる。
玄室を出て、モルテたちに遭遇した和泉・サエコは日記帳をぎゅと抱きしめた。いつものように手に馴染む表紙には双頭の蛇の紋章。
「ごめんなさい、この方は渡せません――お願い、力を貸して……」
モルテたちに告げたサエコの声に、戸惑いはなかった。言葉後半は紋章に向けたもの。日記帳を抱きしめれば紋章の力が発露する。
蛇腹の如き黒鎖が日記帳から渦巻いた次の瞬間には、サエコの姿は変化していた。
黒地にところどころ黄のラインが入ったラバースーツ状――ここに陽光があれば、反射する鱗が見えたことだろう。蛇の鱗が浮かぶ装甲。
そして今、サエコに駆けるための脚はない。
ざ、と刹那のうねりは柔らかな挙動で、血管樹海を傷つけない。
サエコの下半身は蛇と化していた。伸びやかに優雅に、艶やかな肢体を思わせるような蛇の動き。
「紋章を使った……」
「渡さないというのなら……」
「渡すように操るまで」
モルテたちはそれぞれが黒いクローバーの形、クロツメグサの形の紋章となり、変化した姿は一瞬にして消えた。
けれども、迫る気配はそのままに。
とくん、とくん、と血管樹の蠢きは熱を持ち、赤く、サエコの視覚に届く。
ひゅんと動く影――暗色は紋章と化したモルテだ。蛇の感覚を手に入れたサエコはピット器官を駆使し、モルテたちとの彼我の距離を計る。
「そこです!」
「……ぇ!?」
一番近く――接敵したモルテへ繰り出すは蛇の尾だ。斬り上げるように鋭く尾を振れば紋章のモルテは真っ二つとなる。そのまま薙いでさらに二体の紋章を斬り払った尾先は刃の形状。一部は鱗が立ち、まるで蛇腹剣のようになっている。
下半身の斬撃、その間、手にしたネクロオーブから呪殺弾を放ち、まだ距離のあるモルテを撃つ。
一体のモルテは回り込みサエコのスーツから憑依しようとしたが、向けた力は溶け、サエコの鱗へと吸収された。
遭遇したモルテたちを一掃したサエコは、ほ、と安堵の息を吐いた。
そうして改めて自身を見下ろし眺める。
前、振り向くように後ろ、少し腕を上げて。
「すごいです……この装甲。けれど、ぴっちりなせいで体のあちこちが擦れて……それに胸も少し大きくなったような……?」
サエコのちょっとした疑問。とくに答えは望んでいなかったのだけれど。
<取り込んだ魔力の分だけ一時的に肉体を成長させた>
「ひゃ……お、驚かさないでください……」
火天と水城と同じように、伝わってくる声。紋章の声だ。
「――少々、賑やかになりそうですね」
紋章の力を借りて、装甲姿のままサエコはダイクセーヴァーの地上を目指す。
大成功
🔵🔵🔵
護堂・結城
こいつは助ける為に手を伸ばしてたんだ、俺がその手を取って助けるのも悪かないだろ
他の誰も悪意に利用されないように、一緒にあいつらやっちまおう
今ここに俺達がいるんだからな
「お前らに渡すのが正しい行いなら俺は喜んで間違うさ」
「さぁ響け歌声どこまでも!この手が、声が、届く場所に超常の陰はなし!」
UC発動、お供竜の吹雪と一緒に大声の歌唱に衝撃波をのせて範囲攻撃、透明化を阻害
緑月の尾で炎の誘導弾、紅月の尾で焔鳳を乱れ打ち
しぶとい奴は怪力のカウンターで殴って黙らせてやる
「この右手は外道を砕き、この左手は救いを求める手を取る…」
「誰もが泣く世界でもう涙を見たくないから。俺はこの世界にいる間は無敵を誓ったんだ」
紋章つかいの玄室を出た護堂・結城に迫ってくる闇――オブリビオンの気配。
「いたわ。紋章を持っている」
「ソレは闇の種族が利用し、使役するべきもの……!」
魂人を新しい主の元へ導く。
自身が紋章の姿ともなる死合わせのクローバー・モルテたちが口々に呟くものは不思議と血管樹海にこだました。
闇の種族、その配下となるオブリビオン、または悪意ある者に紋章が渡れば百、千と不幸が積もる。
結城が拳を作れば、装着した紋章はその動きに呼応する手袋。
(「こいつは助ける為に手を伸ばしてたんだ、俺がその手を取って助けるのも悪かないだろ」)
「NOW HERE……他の誰も悪意に利用されないように、一緒にあいつらをやっちまおう。そのために、今、ここに俺達がいるんだからな」
――今、そしてこれから。手を伸ばして、助けを求める者を救いたい。
「ソレはもっと強きもの、闇の種族から賜らせる魂たち」
「正しき意志、それは世界の滅びを臨む者」
モルテたちが囀る。
敵群は次々と死が導く紋章の姿を一瞬見せ、そして結城の視界から消えていった。
「お前らに渡すのが正しい行いなら、俺は喜んで間違うさ」
相容れぬ未来だ。
結城は朗々と声を渡らせ、周囲に響かせ告げる。
「さぁ響け歌声どこまでも! 此よりは我が領域。超常を焼く焔滅の獄!」
お供の白竜、吹雪と共に歌う結城。鯨波の如き大音声が血管樹海に満ちて、それは周囲の血潮流れる幹と枝葉を震わせた。
「この手が、声が、届く場所に超常の陰はなし!」
焔鳳の翼は赫灼として樹海を輝かせる。それは生命賛歌の輝きであった。誰もが持った一瞬の輝き。
子を成した時、誰かを助けた時、命を護った時、護れない悔恨のなか命賭した時。
覚悟した時。
死合わせる歪な縁の糸を断ち切るが如く駆け抜けていく衝撃波は雪見九尾の陽炎鳳奏。
敵の透明化を剥がし、闇のクローバーの紋章が再び露わになればモルテの姿。
すかさず大罪の尾・緑月から炎の弾丸が四方八方へと放たれた。誘導弾であるそれはモルテへと確実に着弾する軌道となり、焔の花が血管樹海にいくつも咲いた。
「この右手は外道を砕き、この左手は救いを求める手を取る……」
樹海を傷つける爆風を歌唱の衝撃波で散らす結城。
尻尾であり紅刀からは130を超える焔鳳が召喚され、モルテの闇を灼き払っていく。
「誰もが泣く世界で、もう涙を見たくないから。俺はこの世界にいる間は無敵を誓ったんだ」
自身が立つ場所で、「誰も助けてくれなかった」なんて言わせない――それは結城が魂に刻んだもの。
そしてこれからこの紋章と共に成してゆくもの。
『|今《NOW》|ここ《HERE》にいる』
なんと、力強い言葉であろうか。
死合わせの紋章を撃破した数ぶん、想定された死合わせの縁が消える。
救われたいくつもの今を生きる者が、新たな縁の道を結ぶ瞬間でもあった。
大成功
🔵🔵🔵
鈍・小太刀
【海猫】
※アドリブ歓迎
また厄介なのが来たものね
でも紋章は渡さないわよ
正しき意志なんて知らないけど
決めたの、彼らに海を見せに行くって
こんな血の海なんかじゃない、本物の海を
でもその前に紹介したい仲間がいるんだ
勿論皆の力も貸して貰うわよ!
海の紋章を装着すれば腕を覆う魚の鱗
可愛くてカッコいい海の仲間達を、UCで沢山召喚するわ
タイに、ヒラメに、タコに、カニ、クラゲに、ウミガメ、クジラまで!
ウサミミも生やしたら、戦闘準備も万端よ♪
波で四葉も押し流して
皆、任せた!
日に照らされた温かな海を
星降る夜の静かな海を
嵐の中の荒波を
吹雪の中の流氷を
色んな世界の色んな海を見に行こう
世界はきっと、沢山の驚きに満ちているから
文月・統哉
【海猫】
※アドリブ歓迎
そうだね、紋章は渡せない。
彼らの生きた証を、託された願いと想いを、
今を生きる人々へ、そして未来へと繋げていきたいから。
それが俺自身の願いでもあるから。
黒猫の紋章を装着すれば
全身を包むふわふわの毛皮
温かくて柔らかくてふかふかで
それはもう黒猫の着ぐるみみたい
何というか、めっちゃ落ち着く感じ?
紋章の力に後押しされるように
『ガジェットショータイム』のUC使用
猫の手の形の火炎放射器を召喚して
煌々と輝く炎で、クロツメグサの群生地を焼き払う
にゃふふ、そうだね、皆で世界中を旅して回ろうか。
上層も下層も、皆の故郷を巡り歩いてみたいな。
その道標としても、どうぞ宜しくだよ。(紋章に優しく笑んで
「紋章、みつけた」
「縁を失った魂人が、たくさん」
「新しい縁を見つけてあげなければ」
「そう、死合わせが似合う縁を」
紋章つかいの玄室を出た鈍・小太刀と文月・統哉に遠くから声が掛けられる。
死合わせのクローバー・モルテたちが地下に広がる血管樹を右に左にと避けながら迫っていた。
「ソレは闇の種族へと渡らせて、活用されるべきモノ」
「正しき意志へつながなければ……!」
好き勝手なモルテたちの言葉に、小太刀は目を眇めた。
「うえぇ……また厄介そうなのが来たものね。でも! 紋章は渡さないわよ」
小太刀が柔らかく握りこむのは荒波のあしらわれた海の紋章だ。
「正しき意志なんて知らないけど、決めたの、彼らに海を見せに行くって」
――こんな血の海なんかじゃない、本物の海を――。
波乱万丈な生だっただろう。
乾ききった荒野で歩んできた命たち。
悔しさに爪が剥がれるまで大地を削った者もいただろう。
荒波のような、誰かの人生。
小太刀の言葉に、統哉も重く頷いた。
「そうだね、紋章は渡せない」
一瞬だけ目を閉じ、先刻に繋いだ縁たちを想う。
「彼らの生きた証を、託された願いと想いを、今を生きる人々へ、そして未来へと繋げていきたいから――それが俺自身の願いでもあるから」
繋ぐために紡ぐことを決めたのだ。
「渡さないというのなら……」
「お前たちを倒し、手に入れる」
モルテが力を振るえば、血管樹の幹にクロツメグサが生えていく。
そこから闇色のクローバーが剥がれ花弁のように舞い始めた刹那、統哉と小太刀はそれぞれが持つ紋章を装着する。
統哉が装着した黒猫の紋章は、彼の全身をふわふわの毛皮で覆った。
「ぅゎ……」
その感触に思わず息を呑む統哉――零れた声は歓喜の色だった。ごろごろと喉を鳴らす猫の震えが直に伝わってくるほどの、柔らかな毛皮。
温かくて柔らかくてふかふかで、まるで大きな黒猫に包まれた感触。
「……黒猫の着ぐるみみたいだ」
ほわっとした統哉の言葉に、小太刀が「いつもの感じ???」と問う。
「いやいやそれよりも、もっと何というか、めっちゃ落ち着く感じ?」
そして感覚が研ぎ澄まされている。舞う闇色のクローバーが視界に映ると『うずうず』するのだ。黒猫の尾がぶんと振られた。
統哉が『うずうず』に身を任せてみれば、猫の手の形の火炎放射器が召喚された。ピンクな肉球の部分がカッと輝いたかと思えば、次の瞬間には煌々と輝く炎がクロツメグサの群生地を焼き払っていた。
駆ける炎は猫の手がじゃれるような不規則なもの。それがモルテたちを薙ぎ払う。
「やるじゃない、統哉」
「小太刀の方はどう?」
統哉の声に、小太刀はにんまりとした笑みになる。
装着した海の紋章は、小太刀の腕を覆う魚の鱗の形状となっていた。
「行くよ、みんな!」
と、ウサミミが生えた海の仲間達を呼べば、小太刀の腕は不思議と水圧を感じ取る。
魚鱗の一部は側線鱗となっているようで、戦場の気配をより詳細に伝えてきた。
鱗を掲げて犠牲となった魂人たちに魅せるように、小太刀は血管樹海で明るい海のショー。
「これは海の仲間達! タイに、ヒラメに、あのうねっとしたのがタコで、ハサミを持ってるのがカニ! ゆるやかに漂うのはクラゲで、こっちはウミガメ、あの大きなのはクジラ!」
(「子供達も大人達も、楽しんでくれるかな?」)
その時、喜びの気配――感情がそのまま躍動ある波となってモルテたちを呑み込み、重い闇色のクローバーも遠ざけていく。
現在から過去の彼方へ。骸の海へと還す波。
それは、天気が良くて、風で白波を咲かせる、賑やかな海の景色。
小太刀は、小太刀の知る海を彼らに見せてあげたいと願う。
(「日に照らされた温かな海を、星降る夜の静かな海を……」)
嵐の中の荒波を。
吹雪の中の流氷を。
「色んな世界の色んな海を見に行こう。世界はきっと、たくさんの驚きに満ちているよ」
モルテたちを骸の海へと還していく波は、凪のものとなってゆく。
「にゃふふ、そうだね、皆で世界中を旅して回ろうか。……上層も下層も……皆の故郷を巡り歩いてみたいな」
そう言って統哉は黒猫の紋章へ優しく笑む。
「その道標としても、どうぞ宜しくだよ」
縁とともに結んだ約束や願い事を追いかければ、そこは未来に続く道だ。
それは夜空に輝く星のように、猟兵たちの心を綾なした。
大成功
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