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Re:Triangle

#シルバーレイン #アリストライアングル #決戦

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#アリストライアングル
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#決戦


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「――皆様は『聖女アリス』という方をご存じですか?」
 アッサムをティーカップに注ぎながら青年、ディル・ウェッジウイッター(人間のティーソムリエ・f37834)が集まった猟兵達に問いかける。
『確かシルバーレインの世界で「人狼騎士団」の指導的な立場の人だったかな?』
「そうです。では彼女がどういった経歴を辿ったのかもご存じでしょう」
 猟兵の答えにディルは微笑みかけると、紅茶を配りながら説明を続ける。
「彼女は昔、伯爵という吸血鬼――昨年の『第二次聖杯戦争』の時に見かけた人もいるでしょう――に、操られていました。ですがそれも昔の話、|能力者《先輩方》との戦いの後に洗脳が解けた彼女は『人狼騎士団』に所属し、現在も精力的に活動をされております」
 そこで一部の猟兵が首をかしげる。話を聞けば敵対している様ではないが、なぜこの話が必要なのか?と。
「二つで一つのメガリス『夢魔随筆』。その力は世界の脅威になりうる者の情報を記します。そして敵の手に渡っているメガリス『夢魔随筆・下巻』によって過去の『聖女アリス』が複製されました。
 そして複製された彼女は多数のオブリビオンの軍団を3か所の都市に配置し、殺戮を行おうとしています」
 殺戮の言葉が出た途端に空気が張り詰める。その空気を感じながらもディルはお茶を勧め、言葉を紡ぐ。
「彼女は殺戮した命をリソースに『何らかの魔術儀式』を展開するようです」
『魔術儀式の詳しい内容は?』
「申し訳ございません、今回見た予知では分かりませんでした。ですが、恐らく『ハビタント・フォーミュラに何らかの力を与えるもの』である――それは感じ取りました」
 なぜ過去の敵である『聖女アリス』が『ハビタント・フォーミュラ』に与する行動を行うのか……それは不明ではあるが、だからと言って見逃す猟兵はここにはいない。

 猟兵達が離席する様子がない事に、ディルは内心安堵の息を零すと一枚の地図を取り出した。
「目的は聖女アリスの撃破ではありますが、先にアリスの差し向けたオブリビオンの撃破を優先してください。
 今回オブリビオン、暴力衝動に狂った従属主ヴァンパイア達は北海道の函館市、神奈川県の鎌倉市、大分県別府市の三か所を襲撃するようです」
『随分離れているな』
「そこはご安心を。今回はマヨイガが利用できます。マヨイガを使えばグリモアベースを介さなくても一瞬で移動できますので、戦況を見ながら戦場を変えることも可能です」
 従属種ヴァンパイア達を退ければ次こそアリスを撃破に迎えるかと言えばそうでは無い。
「アリスの拠点は「大逆門」という封印が施されており、このままでは侵攻できません。封印を解除するには先の3都市に潜伏している封印の維持儀式を施している除霊建築士のオブリビオンを見つけ出し、撃破する必要があります」
 場所は3都市とも工事現場にあるらしいが、正確な場所は現時点では不明だという。とはいえ儀式の場所を探しながらヴァンパイア達を撃破するより、まずは撃破に専念してほしいとディルは言葉を添える。
「大逆門を解除すれば聖女アリスとの決戦になります。彼女は詠唱ライフルを使った遠距離攻撃、噛みつき攻撃による近接攻撃を仕掛けてきます。また、複製体ではありますがその力は当時の力をはるかに凌駕しております。ご油断なさらぬよう」
 そこで説明を終えるとディルは冷めてしまった紅茶に口を付けた。
「……なぜ過去の彼女が伯爵ではなく、当時いなかった『ハビタント・フォーミュラ』に与するのか全く不明です。ですが彼女の成すことを見逃すわけには参りません。
 皆様ならばこの事件にも対処いただけると信じております……御武運を」
 そう言葉を紡ぎ終えると、グリモアは紅茶の香りと共に猟兵達を戦場へと誘うのであった。


遭去

 遭去です。シルバーレインの決戦シナリオをお届けします。

●1章
 従属主ヴァンパイア達が北海道の函館市、神奈川県の鎌倉市、大分県別府市の三か所に出現しますので、猟兵達はこの中で好きな場所を選びオブリビオンを撃破してください。なお、複数の場所を選択しても描写するのは基本一か所だけになりますのでご了承ください。
 また選択されなかった場所があっても👑が達成されればその場所も防衛が成功した物として扱いとします。

●2章
 3都市の中で行われている工事現場で執り行われている儀式を止めるべく工事現場に突入してください。詳細は2章公開時に案内します。

●3章
 『聖女アリス』との戦闘になります。彼女は噛みつき攻撃や詠唱ライフルを使った遠距離攻撃を行ってきます。
 なお、彼女は戦闘が終了すると同時に消えてしまいます。
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第1章 集団戦 『狂気の従属種ヴァンパイア達』

POW   :    吸血噛み付き
噛み付きが命中した部位を捕食し、【生命力やエネルギー】を得る。
SPD   :    ローリングバッシュ
【目にも止まらぬ速さで回転しながら突撃し】【チェーンソー剣や】【鎖付き棘鉄球】を対象に放ち、命中した対象の攻撃力を減らす。全て命中するとユーベルコードを封じる。
WIZ   :    ジャンクトラップ
自身からレベルm半径内の無機物を【鋭く尖った刃の飛び出す殺人トラップ】に変換し、操作する。解除すると無機物は元に戻る。

イラスト:安子

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

儀水・芽亜
今を生きるものの過去をほじくり返すような歴史再現は、私の「審美眼」に反します。この歴史再現、ぶち壊してあげましょう。

私が戦うのは、自宅も職場もある鎌倉市。銀誓館学園のお膝元に決まっています。
始めますよ、オブリビオン。
「全力魔法」眠りの「属性攻撃」「範囲攻撃」「呪詛」で、生命力吸収能力を持った胡蝶の盾を展開。
私の黒揚羽達、オブリビオンにたかって、生命力を吸い上げ「呪詛」を流し込んであげなさいな。
同時に、黒揚羽を凝集させて眼前に傘状の盾を構築します。攻撃は全てこれで受け止めます。
黒揚羽も順調に増えているようですね。結構結構。
すぐにも沈めて差し上げますから首を洗って待っていなさい。

さて次の戦場です。




 神奈川県鎌倉市、鎌倉海浜公園。
 海浜というように由比ヶ浜と稲村ヶ崎の海岸線を有する公園であり、併設される広場には多くの人が行き交い、また市民の憩いの場所である。
『が、があああ……』
 若い子供たちの声が響く公園から少し離れた所――従属種ヴァンパイア達が凶器に満ち溢れた赤い瞳を輝かせ、得物を構えると目の前の命を喰らうべく――
「行かせませんよ」
不意に聞こえた声に振り向けば、そこには儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)が金の瞳を真っ直ぐに吸血鬼に向ける。
「鎌倉は私にとって大事な場所です。彼らを襲うのなら、まず私を倒してからになさい」
 邪魔された事にか、それとも自ら獲物が来たと喜んだのか――吸血鬼たちは体の向きを変え、狙いを彼女へ向ける。
「さあ、可愛い私の分身たち。私を否むその感情を喰らってしまいなさい」
 芽亜が槍の穂先で地面をたたく。それを合図に周囲から黒揚羽が現れ、吸血鬼たちへと纏わりつき、その肌に管のような口を突きさしていく。
 それは雨上がりの苔むした岩から水を得るように、一羽だけでは僅かな量を得る行為であるが数が無数となれば話は別。吸血鬼を覆い尽くす無数の蝶たちはあっという間にの生命力を吸い取っていった。
『がああああ!!』
「――!」
 突如、死角に隠れていた吸血鬼から、剛速球が鉄球が芽亜を後頭部めがけて放たれる。
 当たれば重傷は逃れられない一撃に芽亜は反応できず――
「……いい攻撃でしたが、残念でしたね」
 しかし鉄球は彼女の後頭部を捉える事はなく、傘状の盾に阻まれて終わった。お返しにとばかりに吸血鬼には再び黒い揚羽が差し向けられた。
 吸血鬼が振り向いた芽亜の微笑みが見えたのと、彼の視界が黒く染まるのはほぼ同時であった。

「黒揚羽も順調に増えているようですね。結構結構」
 十分後。黒揚羽の数と動きからこの場にいた吸血鬼たちを制圧できたことを確認すると、目の前の惨状を確認する。
「今を生きるものの過去をほじくり返すような歴史再現は、私の『審美眼』に反します。
 ――この歴史再現、ぶち壊してあげましょう」

 首を洗って待っていなさい。

 決意を胸に、彼女は芽亜は踵を返しマヨイガへと向かう。次に赴くはもちろん、新たな戦場だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

山吹・慧
これもまた運命の糸がなす業のでしょうか?
彼女の複製が現れて、このような殺戮を企てるとは……。
現在の人狼騎士団の一員として、彼女に代わって
なんとしても阻止さねばなりません。

第二の故郷とも呼べる鎌倉市に向かいましょう。
この地を汚す事は許しません。

従属種ヴァンパイアの群れですか。
今日、僕に出会った己の不運を呪ってください。

【功夫】と【グラップル】による接近戦を仕掛けていきます。
敵の攻撃は【残像】を伴う動きで攪乱して回避。
敵の群れが弱ってきたならば【気功法】で高めた
【転玄脚・嵐】を放ち、まとめて薙ぎ払いましょう。
残った敵は烈風を足場にした追撃で片付けていきます。

アドリブ等歓迎です。




「……これもまた運命の糸が成す業なのでしょうか?」
 鎌倉市の閑静な住宅街。どこか懐かしい空気を感じながらも山吹・慧(人間の玄武拳士・f35371)は静かな怒りに燃えていた。
 欧州人狼騎士団に所属する慧は、聖女アリスが今も精力的に活動しているのを知っている。
 いや、今ではない。銀誓館学園の生徒であったあの時からの聖女アリスを知っている。彼女が今の居場所を得るためどれほどの献身をこなしてきたかを。
 だからこそ許せないのだ。彼女の一部分を都合の良い様に使うこの行為が。

――じゃり。
「……」
 聞こえてきた音に目線を向ければ不安定な動きをしながら自身に向かってくる影。
 ボロボロの服に身を包んだ姿と手に握られる得物、そして命を喰らわんという殺意に満ちた瞳を見れば一般人ない事は明らかだ。
「……従属種ヴァンパイアの群れですか」
 その声に応えるように、嗤う様に吸血鬼たちが奇声を上げ、目にも止まらぬ速さで慧に襲い掛かる。
「――ふっ」
 慧が小さく息を吐くとその場から姿が消え、チェーンソーの刃は空を切るに終わる。
「こっちですよ」
 チェーンソー剣が慧を捉えるよりも速く彼は移動しチェーンソー剣を持って突撃してくる吸血鬼たちをいなし、ある時は残影を伴う程に素早い動きで敵を攪乱していく。
『があああ……!』
 なかなか捕まらない事に苛立っていく吸血鬼たち。
 だが彼らは気付いていなかった。何度も力を発動したため疲労が溜まっている事に、自分たちが徐々に一か所に纏められている事に。
 ――そして、一か所に纏められた事実に、意図に気づいた時にはもう全てが遅かった。
「ただの蹴りではありませんよ?」
 瞬間、闘気の嵐を巻き起こす回し蹴りが放たれた。
 ごうっという音が後からついて来る程の速さの蹴りは瞬間風速は嵐をも超え、一撃だけで吸血鬼たちを瞬く間に吹き飛ばし、骸の海へと帰していく。
 慧が放った一撃を見て逃げ出す吸血鬼たち。その姿を青年は足場にした烈風の上から見認めると、
「今日、僕に出会った己の不運を呪ってください」
 再び黒い影が降り立った。

成功 🔵​🔵​🔴​

龍巳・咲花
ナイトメアビーストの次は聖女アリス殿(の複製)でござるか
恐らく新たなフォーミュラでも仕立て上げようとしてるのでござろうが……
ハビタントも懲りないでござるなぁ
鎌倉市は銀誓館学園のおひざ元でござるし、きっと大丈夫でござろう
拙者は南、別府市に向かうでござる
任務で無ければ寒い冬に温泉になんていうものも乙でござろうが

工事現場であれば、周りに鋼糸と龍脈鎖で作った簡易結界で相手の動きを阻害しつつ、立体的な軌道で動きながらクナイや手裏剣の投擲でダメージを蓄積していくでござる
相手が痺れを切らして噛付こうと近付いてくるならば好機、拙者もそこにカウンターを合わせて一撃を加えるでござるよ!




「ニンニン……! ハビタントも懲りないでござるなぁ」
 軽やかな音共に解体工事現場に降り立った忍者、龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)が周囲を見渡す。
 鎌倉はお膝元であろうから大丈夫だろうと、彼女が来たのは大分県別府市。
 温泉が有名な地であり、咲花が今いる施設の解体工事現場からもあちこちから湯気が立っている様子が伺えた。
「任務で無ければ寒い冬に温泉になんていうものも乙でござろうが」
 ――ずるり。
 うめき声と共に柱の影から現れたのは従属種吸血鬼。初対面にもかかわらず血走った赤い瞳を咲花に向けている事からも、彼らの殺意が伺える。
「随分な数でござる。気を付けていくでござるよ」
『があああ!!』
 鉄球が咲花に向けて飛んでくる。それを咲花はサイドステップで回避すると横で鉄球が床を砕く音を聞きながら咲花は手身近な敵へ苦無を投擲。苦無は彼の眉間に吸い込まれるように突き刺さる。
『がっ!』『あああ!!』
 それを皮切りに後ろの吸血鬼たちが苦無が突き刺さった吸血鬼を押しのけ、次々と咲花へと襲い掛かる。いくら戦い慣れていても手数が多ければ苦戦は必須。
 ――が、先頭の吸血鬼が『何か』に足を取られて転倒。転倒したことに気付かず、もしくは気付いても反応できずに後続たちは彼らに覆いかぶさるように倒れていく。
「もっと周りを見た方がいいでござるよ」
 呆れを含んだ声が上から降ってくる。
 吸血鬼たちが見上げれば、天井近くに展開されていた龍脈鎖の上に飛び乗った咲花が吸血鬼たちを見下ろしていた。
 そう、彼女はこの現場に来た時、鋼糸と龍脈鎖を張り詰めここ一帯に罠を仕掛けていたのだ。接敵する前から既に彼女の戦いは始まっており、そしてその成果は目下に証明された。
 ここまでくれば後は簡単だ。転倒した吸血鬼達へクナイと手裏剣を投擲し、何もさせずに沈黙させる。
 転倒に巻き込まれたなかった個体が再び鉄球が天井めがけて投てきたので難なく着地。降りてくるのを狙っていた吸血鬼が咲花へと襲い掛かる!
「龍陣忍者の力の一端、見せるでござるよ!」
 だが狙っていたのは吸血鬼だけでない。
 咲花は襲い掛かる吸血鬼の懐に潜り込み、鳩尾を打ち、力を流し込む。
 それはただの力ではなく、龍脈から流れ込む破壊的な力の奔流。
『がっ、……あっ……ガっ……』
 その力を受け止める事も出来ず、吸血鬼は内部から体を破壊され、膝から崩れ落ちていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
アリストライアングル、随分と懐かしく、それでいて厄介な『再現』が来たな
『ハビタント・フォーミュラ』、うーちゃんも関わってるって言うなら、絶対に止めてやるぜ!

【戦闘】
大分県別府市にて

従属主ヴァンパイアが直接オブリビオンに変じた口か?
こいつらの能力と数に真っ当に付き合ってたら、時間がどれだけあっても足りねえな

太陽のエアライダーらしくやらせてもらうぜ!

「斬撃波」を「フェイント」にして、従属主ヴァンパイアと距離を取り、噛みつきをけん制
「捨て身の一撃」によるUCの「範囲攻撃」を放って、吸血鬼を焼き払う

こっちが片付いたなら鎌倉の母校へ増援に……とも思うが、後輩たちを信頼した方が良いかな?




「アリストライアングル。随分と懐かしくて、それでいて厄介な『再現』が来たな」
 別府タワー周辺。既に従属種ヴァンパイアと相対する暗都・魎夜(全てを壊し全てを繋ぐ・f35256)がそう独り言ちた。
 『ヨーロッパ人狼戦線2』から繋がる『アリストライアングル』。端的に言えば原初の吸血鬼『伯爵』に洗脳された人狼十騎士『聖女アリス』が、彼の目的を達成するために引き起こした大規模作戦である。
「いにしえの地縛霊とかは出てないのが幸いか……しかし『ハビタント・フォーミュラ』、うーちゃんも関わってるって言うなら、絶対に止めてやるぜ!」
 過去の再現ではなく、過去が捻じ曲げられ、当時いなかったはずの『ハビタント・フォーミュラ』への強化が目的となっている。不明点は多いが、この過去の再現は止めて見せると魎夜は心の中で決意を固めた。

 睨み合いにしびれを切らしたヴァンパイア達が。魎夜の瑞々しいその肉体に宿る生命力を奪わんと、瞳と牙をギラつかさせる!
「がっつくなって……らぁっ!」
『がぁっ!』
 炎を模した魔剣を振るえば放たれた斬撃波が吸血鬼たちを真っ二つに割る。その様を見た後ろにいた吸血鬼たちはいっせいに足を止めると、今度は魎夜を囲むように散開しはじめると、一定の距離を保ちながら隙を伺うようになる。
「多少は理性的な行動もとるんだな……」
 隙を見て近寄って来たものは斬り捨てつつ、狂気に飲まれていても統率がとれてるもんだと感心する。しかし、彼ら吸血鬼の能力と数を見ればひとりひとり丁寧に倒していくのは埒が明かない。
「……なら!」
 にぃっと笑うと魎夜が拳を天高く突き上げた。それを皮切りに周囲の空気がひやりとしたものに変わっていく――否、ガスコンロ、ライター、地熱活動……周囲に存在する炎属性の魔力を吸収したのだ。
 吸収した炎は力となり拳が、腕が、そして体全体が大きな熱を帯びていく!
『がっ、タいひ……!』
 こいつは危険だ。僅かな理性が残っていた吸血鬼が撤退指示を出すも全てが遅かった。
「全力で行くぜ、耐えられるかどうか試してみやがれ!」
 魎夜が掲げていた拳を思い切り地面に叩きつければ、拳を起点にマグマが吹きあがる!
 周囲にいた吸血鬼たちに回避する術はなく、瞬く間に炎の海へと飲み込れていったーー。

大成功 🔵​🔵​🔵​

鳥羽・白夜
地元の鎌倉市希望

また|ウサ公《ハビタントフォーミュラ》絡みか…
てかあいつ今どこにいんだよ、禁軍猟書家とやらは去年倒したってのに…

ともかく今は殺戮阻止しねーとな。|起動《イグニッション》!
紅い刃の大鎌を手に。
…学生時代は従属種ジョブだったこともあるし今現在貴種だしなんだかなぁ。やりづれえ…
けど手の内は分かってるからな。
可能な限り壁等を背にし死角を無くした上で指定UC展開、突撃してくる従属種や武器の運動エネルギーの低下により威力減少させ【見切り】、回避。
ファインダー越しに大鎌でエネルギー3倍の【斬撃波】を放ち【範囲攻撃】。
…俺もヴァンパイアだけどさ、狩るべき相手間違えんなよ 。




 時刻は深夜に差し掛かる、鎌倉市の住宅街。鳥羽・白夜(夜に生きる紅い三日月・f37728)が独り言ちながら懐かしい道を歩いていた。
「また|ウサ公《ハビタント・フォーミュラ》絡みか……てかあいつ今どこにいんだよ、禁軍猟書家とやらは去年倒したってのに」
 去年のバレンタインでハビタント・フォーミュラ率いる禁軍猟書家を、その後韓信を最後に猟書家は壊滅したはずなのだが……彼女自身はいまだ姿を現さずこうして暗躍するのみ。
 なぜ今の時期か、彼女がシルバーレインで動くのは人狼戦線に関係する事件だけなのか……全て不明。
 考えている内に後ろから剥き出しの殺気に触れられたので、白夜はゆっくり振り向いた。
『がっ、ギュ……があっ……!』
 振り向いた先、そこには言葉にならないうめき声を発する吸血鬼の群れがあった。僅かに設置された街灯にうすぼんやりと照らされ、全体の姿がぼんやりとしか見えないにも関わらず、赤い瞳だけは爛々と輝いてるた。
「……ともかく今は殺戮阻止しねーとな」
 ――|起動《イグニッション》
 白夜は赤い刃が鈍く輝く大鎌を自分の手中に収めると、そのまま後方から奇襲してきた吸血鬼に振り向きざまに一撃を見舞いする。
「と、こっちだ」
 倒れ伏した吸血鬼の横を通り抜け駆けていけば、他の吸血鬼たちも彼を追尾していく。
 右に左に、細い道を駆けて行った先に待っていたのは袋小路。灰色のコンクリート壁がこの道の終点を突きつけていた。
「……変わってないな」
 後ろから聞こえる吸血鬼たちが追いかける声を背景に、白夜は学生時代によく歩いていた道がまだ残っていたことに一抹の懐かしさを感じると、彼はレンズをとりだす。やや白みがかったレンズは白く輝くと辺りが霧に包まれていく。
『がああああああああああ!!』
 袋小路に辿り着いた瞬間、吸血鬼たちが鉄球を、チェーンソー剣を振り回しながら白夜の元へ食らいつく。目にも止まらぬ速さを伴った一撃は退路がない白夜の体を瞬く間に赤く染め上げ、その血は従属種たちに回復能力を付与した事だろう。
 だが、霧に触れた瞬間、吸血鬼たちの動きが瞬く間に緩慢になっていく。
 狙いすまされた一撃を白夜は次々と回避、全ての攻撃を避け切ると大鎌を振りかぶる。
「……俺もヴァンパイアだけどさ、狩るべき相手間違えんなよ」
 ブラッディサイズが赤い軌跡を描いた。一拍おいて、目の前にいた吸血鬼たちの首は刎ね落ち、どうと音を立てて倒れていった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

闇薙・灯子
敵が何を企んでいるかは分からないが止めねばなるまい。
|起動《イグニッション》。
イグニッションカードを起動させて装備を纏ったら大分県別府市に向かおう。

早速、従属主ヴァンパイア達のお出迎えか…!
悪鬼切を抜き放ち敵の攻撃を見切りながら攻撃だ。
更に【粘水刃手裏剣無影術】。召喚した水刃手裏剣を投擲してダメージと共に行動力を下げ、動きが鈍った所を悪鬼切で斬り捨てる。

敵がローリングバッシュを仕掛けてきたら、水刃手裏剣の一つを私の立体映像に変形させて囮にする。回転しながらの突撃だ。瞬時には見分けがつくまい。
更に立体映像の周囲に仕込んた水刃手裏剣を時限爆弾にして、突っ込んで来た所を諸共爆破する。


【アドリブ歓迎】




 大分県別府市の湯けむり展望台。
 街中の至る所から湯煙が立ち上るの景色を横目に、闇薙・灯子(闇を駆ける水練忍者・f42551)は 懐からイグニッションカードを取り出して力を起動《イグニッション》。一瞬にして『忍衣・薄闇』を纏い、『悪鬼切』を手にし臨戦態勢へと移行すると、その時を待つ。
(「敵が何を企んでいるかは分からないが止めねばなるまい」)
 シルバーレインの歴史ある小さな街を密かに守護する水練忍者の家系の生まれの灯子にとって、この世界の危機は見過ごせるはずはなく。
――じゃり。
 背中側から発せられた音の方へ向き直る。
 そこには武器を引き摺る音を引き連れ、向こう側から現れたのは十を超える従属種ヴァンパイア達。
「早速、従属種ヴァンパイア達のお出迎えか……!」
『があああああ亜ああアあ!!』『死ネぇ!』
 獲物を見つけたと喜ぶヴァンパイア達が一斉にそれぞれの得物を振りかざし襲い掛かる。灯子は冷静に業物『悪鬼切』を抜きうち、一番近いヴァンパイアを横薙ぎに斬り捨てる。
「数が多いな……粘……水刃手裏剣無影術」
 片手で印を切ると同時に灯子の周囲に水が凝縮した100を超える手裏剣が現れヴァンパイア達へと襲い掛かっていく。
『がっ!?』『ぬめっ……!?』
 被弾したヴァンパイア達が驚きの声を上げた。
 威力もさることながら一番驚いたのは被弾した時に周囲に飛び散ったぬめり。粘性の液体で生成された粘水刃手裏剣は明らかに動きを阻害していたのだ。
『ナニ、ぬめりが!』
 そんなぬめぬめ被害に合わなかった後方にいた吸血鬼が無謀にも目にも止まらぬ速さで一気に灯子との距離を詰めていく。
 床に落ちた粘液に触れれば足が滑ってしまいうまくスピードが出せない。それでも彼は最大限の速度を出して距離をつめると、チェーンソー剣を灯子の胸を貫いた!
 灯子は驚愕の顔をしたまま赤い血を吐き――さず、その透明な粘液をまき散らし四散していった。
「囮だ。気づかなかったろう?」
 粘水刃手裏剣を自身を写しださせて作った囮の出来に満足気に頷くと灯子が両手で印を切る。
「爆」
 その言葉と同時に、囮がいた周囲に展開してた爆弾が爆発、煙が立ち上がった。

成功 🔵​🔵​🔴​

レンフィート・ディアレスト
なぜ、今アリストライアングルを再現するのか。
疑問はあるけど、先ずは目の前の事件を解決しようか。

北海道の札幌に向かおう。
かつて『伯爵戦争』があった土地だけど……いや、考えるのは後だ。
敵は狂気の従属種。貴種として、オブリビオンであれ同族が罪を犯すのは見過ごせない。

[不意討ち]気味に先手を取って、集団に【蒼の魔弾秘儀】を纏めて撃ち込む。
感電効果で足止めして、囲まれないように立ち回ろう。
撃ち漏らしや耐えた相手はガンナイフで個別に対処する。

敵の攻撃は[罠使い]の[窮地での閃き]で[弾道計算]してかわす。
多少のダメージは[覚悟]で、[オーラ防御]も活用しながら確実に仕留めていこう。




 北海道函館市。本州と北海道を結ぶこの都市は赤レンガ倉庫をはじめ異国情緒に溢れる都市である。
 ここをかつての『伯爵戦争』にはしまいと心に誓うと、レンフィート・ディアレスト(探究の貴・f38958)は八幡坂を下っていく。
「なぜ、今アリストライアングルを再現するのか……」
 ハビタント・フォーミュラの襲撃から約一年。なぜ続けて襲撃してこなかったのかなど疑問が浮き上がったが――それは目下にいた従属種ヴァンパイア達の群れを見つけたことで止める事に。
「まずは目の前の事だな……敵は狂気の従属種。貴種として、オブリビオンであれ同族が罪を犯すのは見過ごせない」
 ガンナイフを構え、狙いは敵軍の頭上へ向ける。発砲音が響くのと、従属種ヴァンパイア達がレンフィートの存在に気付いたのはほぼ同時だった。
 銃弾はヴァンパイアの頭上ではじけ飛び、青黒い時空を歪める雷弾の雨がヴァンパイア達の頭上に降り注げば、たちまちに彼らの体に電気が流れ込んで動かなくなった。
 放っておいても大丈夫だろうが念には念を入れてとレンフィートは攻撃を耐えた敵にガンナイフで仕留めていく。
『ギ、ガアあああ!!!』
 突如後方から聞こえた音に振り向くと、そこには一体のヴァンパイアの姿。どうやらこの一体は先の群れから少し距離を取っていたようだ。
 運よく魔弾が逃れた一体のヴァンパイアが地面を蹴り上げた瞬間、街中がトラップフィールドへと変貌していく!
「これは――」
 レンフィートが一歩歩を進めた、それを合図に前方から跳ね上がった赤煉瓦が青年の眉間へ真っ直ぐに飛来する!
 寸でのところで躱すと今度は街灯から電球が落下し、ポストが倒れ――町のあるゆる無機物が次々と襲い掛かる。
 一息もつかせない罠の群れ。先の一体以外にも術を発動する者が居たらどうなっていたか。
 しかしこのまま相手の良い様にしていたらじり貧なのは変わりない。
「多少の傷は覚悟の、上で!」
 状況を打開すべくレンフィートは地を蹴り上げた。罠の設置場所に目安を付け回避、飛来した煉瓦片はその軌道を読み回避し、消火栓から噴き出た火炎放射はオーラで耐え……傷を受けながらもレンフィートは敵の眼前に躍り出る!
『があああ!!』
 チェーンソー剣を振りかぶり薙ぎ払おうとするヴァンパイア目掛け、レンフィートはそのまま距離を詰めていく。
 チェーンソー剣の射程に入った、次の瞬間地面を大きく蹴り上げて前方に高く跳躍。そのまま先のヴァンパイアの背後を回り込み、ガンナイフの銃口を後頭部へ。
「終わりです」
 パンッ。
 乾いた破裂音が市街に響き渡った。

成功 🔵​🔵​🔴​




第2章 冒険 『鉄骨の降るばしょ』

POW   :    力任せに鉄骨をはじき散らして先に

SPD   :    すんなり鉄骨を躱して先を急ぐ

WIZ   :    鉄骨が落ちてこない場所を見極めて通り抜ける

👑7
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「くそっ、もう見つかった!」
 三都市で従属種ヴァンパイアを撃破した後、猟兵達はまた別のオブリビオンを追いかけていた。追いかけられている別のオブリビオンーー除霊建築士のオブリビオンが時折振り返りながら忌々しげに吐き捨てると、とある工事現場に逃げ込んでいく。
 7、8階はあろうビルの周りにはガードが貼られ、中には様々な重機が置かれている。
 グリモア猟兵が言っていた「大逆門」の封印を施されている工事現場とは恐らくここだろう。工事
現場



入った猟兵はオブリビオンを追いかけるが、それは頭上に沸いた影によって阻まれた。
 けたたましい音を立てて目の前に落ちてきたのはひしゃげた鉄筋、古びた足場ーー。たまたまだろうか。
 いや、頭上を見上げれば先のオブリビオンがにぃと笑いっている事からこれは敵のトラップであることは間違いないようだ。
 オブリビオンの撃破をすべく、猟兵は降り注ぐ鉄骨を潜り抜け工事現場の中へと足を踏み入れるのであった。


※マスターより
 解体工事現場のどこかに仕掛けられた封印とオブリビオンを撃破しましょう。封印とオブリビオンは一現場につき複数あるようです。

 中にはいる鉄骨やらなんやらが降り注いだり突然足元が崩れたりします。
 また、函館市の工事現場は雪と路面凍結による足場不良、別府市は湯煙による視界不良のギミックが追加されます。(鎌倉市の現場はギミック追加はありません)。

1章から参加した人は1章とは別の都市の工事現場も選択可能です(マヨイガで移動できるので)。

 なお選択されなかった箇所があっても1章と同じく👑が達成された時点で誰かが攻略し、全ての封印が解かれた物と扱います。
儀水・芽亜
鎌倉で戦いを続けます。

何かの理由で工事が中断した物件でしょうか。よくあると言えばよくあるもの。街中で目立つものでもありません。
それだけに、闇に跳梁する輩の拠点になりやすいのでしょう。

では、罠が満載の工事現場に入りますか。
竪琴を「楽器演奏」し、「範囲攻撃」で主に向かいて新しき歌をうたえを「歌唱」。
オブリビオンにどの程度効くかまでは分かりませんが、ブービートラップの類なら、私が通る前に勝手に発動したり避けてくれたりするはずです。
「落ち着き」をもって、奥へと進みましょう。
『封印』と一言で言われても、どんなものだか。まずは未完成の建物の中心部から順に調べてみましょう。
もちろん、歌声は絶やさずに。




「何かしらの理由で工事が中断した物件でしょうか。よくあると言えばよくあるもの。街中で目立つものでもありません」
 儀水・芽亜は目の前の解体工事現場をガード外から見上げる。工事現場を見れば経年劣化した様子は見られないが、人がいない事から何かしら理由があって中断しているのだろう。
 どこでも、よくある光景。しかし、
「それだけに闇に跳梁する輩の拠点になりやすいものです」
 擬態しやすく、かつ魔術儀式が成立するまで持てばいいという考えならば中々の選択なのだろう。
 参りましょうと、芽亜が工事現場に足を踏み入れると鉄筋コンクリートが芽亜の頭上より熱烈に出迎えて。
「随分熱烈な歓迎ですこと」
 |ラブコール《鉄筋の雨》を回避し、改めて現場内を見やる。外からよりも濃く感じる埃っぽさと非日常の空気そして、殺意。
 とはいえこれくらいの殺意は昔から慣れたもの。芽亜は必要以上に警戒することなく竪琴を取り出し、息を吸い込む。
「――Cantate Domino canticum novum.Cantate omnis terra. Alleluja.」
 ソプラノの聖歌と竪琴の旋律が工場現場に響く。友好的になる効果があるその|歌《力》は建物内に染み入る様に響き渡ると、先ほどまで漂っていた殺意がいくらか緩和された様で。
「ああ、『封印』と一言で言われても、どんなものだか確認するのか忘れていました」
 さてどうしよう、一目で分かるものなのかと考えながら部屋に入る前に発動した爆弾の熱でほんのり熱くなったその部屋に入ると、瓦礫だらけになった部屋に芽亜は違和感を覚えた。なんだか、空間が歪んで見えるのだ。
「もしかしてこれ、でしょうか」
 ぐにゃりとテニスボール大の空間が歪んだその場所に手を触れるとパンッとカワイ音を立てて霧散していく。どうやらこれが封印のひとつらしい。
「なるほど。ではこれを基準に探していきましょうか」
 芽亜は踵を返すと工事現場の奥へと向かっていく。
 旋律は、響かせたままに。

成功 🔵​🔵​🔴​

闇薙・灯子
(引き続き大分県別府市)

罠とは小癪な…。
だが、この程度で私を止められると思うな。

先ずは【黒影剣】を発動し闇のオーラを纏い、オブリビオンが視聴嗅覚で私を感知する事を不可能にする。
これで敵が任意で発動させるタイプの罠の発動を封じる。私が何処にいるか分からなければ意味がないだろう?
あとは自動発動の罠を注意して進むだけだ。

湯煙により視界も狭い工事現場の不安定な足場だが、私の軽業技術をもってすれば危なげなく進む事など造作もない。
自動発動の罠のタイミングを見切り、『悪鬼切』で罠を切断したりジャンプやダッシュ、スライディング等を駆使して回避しつつオブリビオンを追い込んで行くぞ。


【アドリブ歓迎】




「罠とは小癪な……」
 濛々と湯煙が湧く別府市の工事現場。闇薙・灯子は空から上階にいるオブリビオンを睨みつける。
 だが睨みつけている間にも、彼女の上空から鉄筋が降り注ぐ!
『はっはぁ~! やったぜ!』
 オブリビオンは土煙が上がったその場で猟兵を殺した事に、大いに喜んでいたーー。

「……気付いていないのか。あのオブリビオンは戦闘は得意ではないようだ」
 土煙あがる鉄筋コンクリートの山から少し離れた建築物の入り口で、闇のオーラを纏う灯子は溜息を吐く。
 通常ならばその行為はいかにオブリビオンが戦いに慣れず、目が届きにくい真下の行動だとしてもバレてしまいそうなものであるが、件の敵は気付く様子もない。
 彼女の闇のオーラは視覚聴覚による認識を阻害する。これで目を欺くと同時にオブリビオンによって操作できる罠の発動率は格段に下がると判断したのだが、結果は大成功。そんなことなぞ知らずオブリビオンは高笑いをしている始末だ。

「さて……」
 敵に笑い声を尻目に灯子は解体途中の工事現場に剥き出しの鉄筋へと足を乗せる。
 不安定な足場が広がりかつ、湯煙が立ち上る現場は常人ならば簡単には踏破できるはずも無いが、忍者である灯子は難なく、むしろこちらの方が普通だとばかりに細く脆い鉄筋の上を器用に足場にして上に駆けていく。
「むっ……」
 ぴたりと足を止めた。目の前には途中足場に細いワイヤーが張り詰められていたのだ。
「糸の先には……何もない。単純な足止めか」
 ならばと悪鬼切でワイヤーを一刀の元に斬り捨て、さらに上へ、上へ。
 そうして登った先、灯子を見下ろしていたオブリビオンと思しき男が何もない空間に向けて手を突き出していた。
「なるほど、それが儀式の封印箇所か」
 至近距離での声にも気づかないオブリビオンに対し、灯子の悪鬼切による一閃が振るわれた。

成功 🔵​🔵​🔴​

酒井森・興和
別府市

上からの落下物が特に厄介か
鉄骨の上や狭い足場は【悪路走破】で乗り切る
視界の悪いのは【暗視と気配感知】、それに聞き耳を立て敵の動きを察知する
【目立たない】様に動き【狩猟】の要領で追い詰めよう
落下物は出来れば回避、難しければ【咄嗟の一撃と怪力】で受け流す
間近に敵の気配があればそれを投げ付けてやる手も有るね
離れていればUCで飛斬帽を繰り動けない程度に負傷させる
上から鉄骨を落としておいて
わざわざ姿を晒してまでこちらを嗤うような輩だ
封印の場所を見付けるか言わすまで倒さないよ
善人でなくて悪いねえ
すまない気持ちはあるのだけどね
蜘蛛族の尖兵は目的達成が至上なのだよ
可能な限りの数の敵・封印撃破をしたい




 別府市。湯煙漂うこの工事現場では視界の悪さと不安定で足場と、そして訪れた者を排除する殺意に満ちていた。
「……上からの落下物が特に厄介か」
 地面に落ちた鉄筋に冷たい視線を送ると酒井森・興和(朱纏・f37018)は溜息をつく。
「それじゃあ……いこうかな」
 周囲に組まれれていた足場に飛び乗ると上へ向かっていく。
 建物の周囲に組まれた足場は細く狭いうえに湯煙という障害もあるにも関わらず興和のの足取りは軽く、難なく上に上に登っていく。
『死ねっ、能力者どもぉぉ!』
 その声と共に砂礫、そして鉄筋コンクリートが興和の頭上へと降り注ぐ!
「やれやれ。そんな掛け声なんてしたら位置がバレてしまうだろうに……わざわざ姿を晒してまでこちらを嗤うような輩だから大丈夫か」
 こういった場所で姿を晒すことがどれ程リスクがあるのかわかっていないオブリビオンに対しため息一つつくと、興和は降り注いできた大きなコンクリートをひょいと手に取りそのまま先の声が聞こえた方へ投擲する!
 土煙が上がるのとぎゃあ!という絶叫が聞こえたのはほぼ同時だった。 

『うっ……くそっ! 反撃してくるなんて……!』
 想定外の反撃を受けたオブリビオンは慌てて逃げ出そうとするが、
「やぁ。忙しいところ悪いけれど、ここの儀式の封印がどうなっているのか教えてくれるかい?」
『!?』
 背後からかけられた穏やかな声にオブリビオンは驚きながら振り向く――前に音もなく飛んできた飛斬帽がその肩を抉った。
『ひ、ひぃぃ……!?』
「善人でなくて悪いねえ」
 地面に這いつくばるオブリビオンに対して言葉を投げかける。
「でも、蜘蛛族の尖兵は目的達成が至上なのだよ」
 先ほどと変わらない穏やかな、しかし底冷えする声を投げれば。
『いう、言うから助けて……!』
 オブリビオンは情けない声で命乞いを行うだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

山吹・慧
これは工事会社もいい迷惑でしょうに。
ご近所の方々にも迷惑がかかりそうですし
早急に片付けましょう。

引き続き鎌倉市の現場で行動。
【集中力】による【気功法】で気の流れを感じ取り
敵と封印を探します。
降り注ぐ鉄骨は【衝撃波】で加減して【吹き飛ばし】ます。
足場が崩れた場合はエンジェリックウイングで飛行して対応。
敵に遭遇したならば【セカンド・イグニッション】を発動。
ドリルガントレットの【乱れ撃ち】で片付けていきます。
生憎あなた方と遊んでいる暇はありませんので。
封印を見つけたならば【エネルギー充填】した一撃で破壊しましょう。
しかし、これは後片づけが大変そうですね……。

アドリブ等歓迎です。




「これは工事会社もいい迷惑でしょうに」
 山吹・慧は降り注ぐ鉄骨の雨に苦笑する。
 鎌倉市の、幸運な事に周囲にあまり住宅がない工事現場とはいえ、こんな簡単に物が落ちていけば工事会社はもちろん近隣に迷惑がかかる事は間違いないだろう。
 速めに片付けましょうとふぅと呼吸を整え、自身の気を巡らせて敵と封印の位置を探り出す事に。
 張り巡らされた気は建物の構造はもちろんの事生命反応の位置とそしてどこか歪んだ空間の位置までも感じ取り、しっかりと慧の脳裏へと送り届けた。
「――そこ、ですね」
 黒い衣の上から聖なる力が秘められた白い翼を羽ばたかせると、慧は真っ直ぐに空を駆けていく!
『なっ、空を飛ぶなんて!』
 慌てた声を上げながらもオブリビオンは多くの鉄骨を慧目掛けて落としていくが、
「ああ、だからそんな風に落とすと迷惑が……仕方ないですね」
 普通に弾いてしまっても問題は無いがそうすれば近隣の迷惑は避けられないことを危惧した慧は衝撃波を発生させると降り注ぐ鉄骨の雨を吹き飛ばした!
『なっ、』
 吹き飛ばした鉄骨の間を潜り抜けオブリビオンの元へ降り立てば当のオブリビオンはあんぐりと口を開けたままで。
 何も言わせることなくイグニッションカードから出たガントレットを嵌めると付属していたドリルが急速回転。
「生憎あなた方と遊んでいる暇はありませんので」
 駆動音と青年の有無を言わさない声が、オブリビオンが最期に聞いた音だった。
 
「――やぁっ!」
 ドリルガントレットの一撃が何もない空間に『当たり』、ぱきっという音と共にこの場の最後の封印が解かれると慧は辺りをぐるりと見渡した。
 さきのオブリビオンとの戦闘、そして封印を解く際に発したドリルガントレットによる攻撃によって滅茶苦茶になった周りを見て再び苦笑する。
「……しかし、これは後片付けが大変そうですね……」
 解体工事現場だし多少は大丈夫だろうと思い直すと、慧はその場を後にするのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

暗都・魎夜
【心情】
聖女アリスと言えば、当時『伯爵』に洗脳されていたわけだ
とは言え、裏にいるのはハビタント・フォーミュラことうーちゃんだろうな

アイツが何考えているのかは今一つ分からねえが、ろくなことにならなそうなのはたしかだ

何を考えていようが、全部ぶっ潰してやるぜ

【行動】
北海道函館市にて
「そろそろ春も近いが、そう都合よくは行かねえか」

「足場習熟」で路面に警戒しつつ、「ジャンプ」「ダッシュ」で軽快に移動
「索敵」で軽快しつつ、「戦闘知識」「勝負勘」で儀式の場所に当たりをつける

UCで「闇に紛れる」
上からの落下物は「心眼」「見切り」で先読みして先を急ぐ

ことが終わったら、別府の温泉寄ってもいいのかもな




「聖女アリスといえば、当時『伯爵』に洗脳されていたわけだ……とは言え、裏にいるのはハビタント・フォーミュラことうーちゃんだろうな」
 函館市の某工事現場。未だ氷点下の気温が当たり前の中、白い息を吐きながら暗都・魎夜は目の前の雪と鉄筋の嵐を眺めながらふと思う。
「アイツが何考えているのかは今一つ分からねえが、ろくなことにならなそうなのはたしかだ」
 うーちゃんが『これでパワーアップう!』と目を輝かせてそうな彼女のイメージを脳裏に現れたので振り払うように被りをふると、彼女の目的を防がないといけないと魎夜は改めて決意を固めるのだった。
 そうして闇のオーラで自身と武装を包むとひらりと建物の周囲に組まれた足場に足を翔る。
「と、とと……そろそろ春も近いが、そう都合よくは行かねえか」
 雪で滑るのに戸惑いつつも、魎夜は狭い足場を、時には振り注ぐ瓦礫を利用しながら器用に歩を進めていく。先の闇のオーラのおかげで敵に認識がされにくくなっているのでコンクリートを始めとした瓦礫の雨は少なくなっているがそれでもランダムで落としたであろうそれらは見切りながら器用に登っていく。
 封印の場所がどこにあるかは分からないが、長年能力者として活動してきた彼の勘に従って突き進んでいった。

「と、これで3個目、か?」
 魎夜の探索の結果南西の小部屋、南南東の大部屋、そして中心部の神棚があったであろう箇所に敷かれた封印が設置されていた。
 手をかざせば何もない小さな歪な空間が音を立てて崩れる。それと工事現場に漂っていた暗澹な空気がふっと和らぐ。
 おそらく今解いたのがこの現場の最後の封印だったのだろうと確信を得る。
「……終わったら別府の温泉によってもいいかもなぁ」
 吹き込んだ風の冷たさに思わず体を縮め、先ほどまでいた別府の温泉を思い出す。
 温泉に入ったら、きっとこれまでのそしてこれからの疲れを溶かしてくれるだろうから。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『人狼十騎士『聖女アリス』』

POW   :    鮮血聖女
【鋭く伸びた犬歯による噛みつき】で攻撃する。また、攻撃が命中した敵の【血の味】を覚え、同じ敵に攻撃する際の命中力と威力を増強する。
SPD   :    聖女の弾丸
【詠唱ライフル】から発射した【鮮血の弾丸】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
WIZ   :    群狼機動戦術
戦場の地形や壁、元から置かれた物品や建造物を利用して戦うと、【詠唱ライフル】の威力と攻撃回数が3倍になる。

イラスト:ぎん太

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 長野県某所。日本アルプスが連なる山、その一つの山の頂上にその女はいた。
「……まさか、あなた方がマヨイガをここまで制御していたとは……」
 この場に似つかわしくない、シスター服に身を包んだ女は振り向くとここまで来た猟兵の力と機動力に素直な感嘆の声を零す。
 簡単にいくとは思っていなかった。互いの戦場に干渉できないようわざわざ距離を離して吸血鬼を撒いたのに連携はもちろん、瞬間移動できるマヨイガを使ったうえでの連携を取られれば計画の失敗を認めざるを得ない。
 ではここは撤退をして次の儀式完遂の機を待つか?――否。もしここで尻尾を巻いて逃げれば次回も同じ手が通用するといった甘い考えなど女――『聖女アリス』の中には毛頭もなかった。
「……『生命賛歌』の力がないあなた方相手ならば私にも勝ち目があります。
 ここであなた方を退けた上で逃走できればあなた方も、運命予報士に似た力を持つ存在も今後簡単には手出しはできないと思いませんか?」
 アリスは変わらぬ穏やかな言葉の中に殺意を滲ませるとライフルを構える。
「私が勝つか、あなた方が勝つか。全ては神のみぞ知る、ですね」
 |理性《ネジ》が溶けたような瞳を爛々と輝かせ、アリスは笑う。
 この行動は全て主たる原初の吸血鬼たる――――――
 ――――否、ハビタント・フォーミュラ様のために。
儀水・芽亜
ようやくお会い出来ました。偽りの“聖女”アリス。複製体が本人への風評被害をまき散らすような真似は、そろそろ止めていただきます。

『生命賛歌』が無かろうと、今の私たちにはこういう力があるのですよ。
学生時代を再現した真の姿になって、蝶霊跋蠱。「全力魔法」「範囲攻撃」「呪詛」「マヒ攻撃」に生命力吸収も付けましょう。
黒揚羽の濁流を乗り切って私のところまで来られますか? その前に、黒揚羽に集られて届かないと思いますよ。

とはいえ、相手は『人狼十騎士』の座にあるもの。本当に突破しかねません。「オーラ防御」を張って、裁断鋏で噛みつき攻撃を「武器受け」「受け流し」するつもりで相対しましょう。

所詮は紛い物ですね。


酒井森・興和
あなたの起こした戦いに関わっても対面は初めてだ

殺意に溢れながらも理知的
これで洗脳されてるとはね
流石ハビタントうーちゃん
捨て駒使いとネジ洗脳の名手だな

ハビタントの為に奔走するあなたを全力で狩るのみだ
【集中力と気配感知】でアリスの動き読み、銃狙撃を避けるためにも接近戦挑む

飛斬帽を盾とし敵の腕・上半身に押し付け銃を逸らす
鉄扇を武器に敵の牙を【早業で受け流し】直に噛まれて流血するのを防ぎたい
鉄扇で【怪力】込め殴打、【追撃】開いて斬り裂き上げ【切断】
【足払い】で体勢崩しUC獲牙に【毒使い】も活用
少々痛む痺れる程度でも効けば

牙や銃に被弾しても【落ち着き】離脱せず鉄扇で即【カウンター】撃ち叩き【逃亡阻止】を




 詠唱ライフルから放たれた赤黒い弾丸を酒井森・興和は鉄線を振るい、儀水・芽亜はシザークロスで弾いていく。
「あなたの起こした戦いに関わっても対面は初めてだけど――」
 興和が次弾装填するアリスを見やる。彼女の動きは先の従属種ヴァンパイア達たちとは違い攻撃と行動一つ一つが洗練されていた。このままではいい方向に動かない、ならば近接戦に持ち込もうと距離を縮めようとするも、
『近づかせませんよ?』
 明後日の方向から飛んできた跳弾の妨害により距離を取らざるを得なくなる。
「――うーん殺意に溢れながらも理知的。これで洗脳されてるとはね、流石ハビタントうーちゃん」
 ーー捨て駒使いとネジ洗脳の名手だ。
 心の中で吐き捨てるもアリスは待ってくれない。
「流石偽りの“聖女”アリス。複製体が本人への風評被害をまき散らすような真似は、そろそろ止めていただきます」
『私が偽物だろうと本物だろうとやる事は変わりませんよ。
 ――しかし、「生命賛歌」がないあなた達はこの程度でしょうか?』
 縦横無尽に動く彼女から放たれる銃弾の嵐は猟兵を近づけさせようとしない。
 ーー持続時間は有限なれど、時間内であれば無尽蔵の回復能力を齎す生命賛歌。その効果がなければ猟兵達は中々手出しができない。つまり、ワンサイドゲームを維持できれば勝てる――そう結論づけかけたした時、芽亜の足元に黒い風が渦巻いた。
「『生命賛歌』が無かろうと、今の私たちにはこういう力があるのですよ」
 芽亜を包み込んだ風が弾けた。そこにいたのは成人した女の姿はなく、代わりにいたのは背中に大きな黒揚羽の翅を背に生やした、黒のゴスロリフリルワンピースに身を包んだ少女。
 少女――15歳、かつて死と共に青春を駆け抜けた姿へと変わった芽亜が姿を現すと同時に、先ほどはじけた風は黒揚羽となりアリスの元へ舞い踊る。
『これは……!』
 警戒して蝶に向けて弾丸を放つも無数に舞う蝶を落とすことはできず、瞬く間に集られたアリスの意識は混濁し始める。
「黒揚羽の濁流を乗り切って私のところまで来られますか? その前に、黒揚羽に集られて届かないと思いますよ」
『……っ、甘く見ないでい頂きたいですね!』
 口の端を噛みきり、集られた蝶を振り払い、アリスが地を蹴る。一気に距離を縮めたの目指すは蝶の主の首元!
 芽亜もオーラを展開しそれを防ごうとするも――オーラ防御はガラスが割れるような音をたて崩れ去る!
 そしてアリスの歯牙が少女の細い首元に――
 ギィン!柔肌を噛みちぎる音ではなく固い物同士がぶつかる音が響く。
「こりゃあいい、近づいて来てくれて助かった!」
 二人の間に割り込むように鉄扇でアリスの攻撃を受け止めた興和は、そのまま鉄扇を振るい、アリスの牙を振り払うと鉄扇で殴打。その流れで開いた扇で振るえば赤の房と女の血が舞う。
『近づきすぎましたか』
 バックステップで距離を取ろうするアリス。瞬間、興和が素早く足を払い、アリスを転倒させる!
「鋏角衆、と呼ばれる我らの牙はダテではないよ」
 体勢を崩したアリスの首根っこを押さえつけ、興和の牙がアリスの首元を噛みついた!
『――このっ!』
 アリスは痛みで顔を歪めるもすぐさま銃身で興和の顔を殴打し、牙が離れたタイミングですぐさま距離を取った。
『っ、さすがですね、能力者。いえ、猟兵たち。ですがまだ私は倒れません』
 称賛の声を向けるアリス。首元を赤く濡らすも穏やかな表情は変わらず再びライフルを構える。
 しかし、二人は見逃さなかった。アリスの動きが僅かながら、先ほどよりも覚束ないのを。
 

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

レンフィート・ディアレスト
聖女アリスの複製……対面するとどうしても好奇心が湧くね。
アリストライアングルは『伯爵』の召喚儀式だったはず、なら再現ではハビタントを喚ぶのか?
第二次聖杯戦争でも『伯爵』が支配していた異形が現れた。
『伯爵』とハビタントには関係があるのか?

問うても答えはないかな、戦おう。

人狼騎士の聖女アリスならともかく、吸血鬼なら僕にも勝算がある。
【血鬼の柩】のルールを宣言
ダメージ[覚悟]で噛みつきを受け、血の味を覚えた罰として棺に閉じ込める。
吸血鬼の罪は、吸血鬼が濯ぐとも。
動きが止まったところに、ガンナイフで杭打ちのように刺し貫き[零距離射撃]。

牙を剥き出しにして、はしたないですよ? 聖女さん。

※アドリブ等歓迎


龍巳・咲花
雪深い山々を見ると少し遊び心も芽生えるでござるが……
未だハビタントの計画の全容は見えぬでござる故、いずれ尻尾を掴む為にもここは阻止させていただくでござるよ!
それに自分の複製体が悪い事をしていたら、アリス殿本人も良い気はしないでござろうしな!

雪に足を取られぬよう、拙者は呼び出したムシュマフの首に乗って戦うでござる!
それに空中戦を仕掛ければ跳弾で狙い辛いでござろう?
拙者は上空からクナイと手裏剣による空対地戦闘を行いつつ、残りのムシュマフの首には火炎放射による目くらまし兼攻撃と突撃攻撃を仕掛けるでござろう
一体は雪に潜って雪下から突き出る様に攻撃等を加えられれば、戦場を有利に使えるでござろうか




 跳弾が龍巳・咲花の頬を掠める。
「雪深い山々を見ると少し遊び心も芽生えるでござるが……そうもいってられないでござるな」
 頬を伝う血を雑に拭いながら咲花は聖女アリスへと苦無を投擲。それと同時にレンフィート・ディアレストがガンナイフを構えアリスとの距離を縮める。
「未だハビタントの計画の全容は見えぬでござる故、いずれ尻尾を掴む為にもここは阻止させていただくでござるよ!」
「ええ……それにアリストライアングルは『伯爵』の召喚儀式だったはず、なら再現ではハビタントを喚ぶのか?」
 アリストライアングル、第二次聖杯戦争。この二つの事件には伯爵が関係している。伯爵とハビタント・フォーミュラに関係があるのかと問うも、女は笑うのみ。
『ふふっ、秘密です』
 軽やかに笑いながらアリスは再装填が終わった詠唱ライフルで苦無を弾き、近づいてきたレンフィートへ威嚇射撃を行う。
「問うても答えは無いか……なら言葉はいらないよね……咲花さん用意はいいかい?」
「勿論でござる! 自分の複製体が悪い事をしていたら、アリス殿本人も良い気はしないでござろうしな!――出でよ、ムシュマフ!」
 咲花が呼ぶ声に龍脈が吼えて応える。ただのエネルギー体である龍脈は肉体を持ち黄金の龍、ムシュマフとなって姿を現す。
「拙者達の力、見せつけるでござるよ!」
 咲花は首の一つに音もなく乗ると同時に苦無と手裏剣を投擲。そしてすぐさま別の首に乗り写り投擲を繰り返し――文字通り苦無と手裏剣の雨を展開していく!
「これぞ龍陣忍法『バビロニアン・ムシュマフ・ウォーズ』! お主に破る事ができるか!?」
『あら、良いんですか? こんなに障害物が多くって』
「ござっ!?」
 アリスがライフルから弾を射出。手裏剣、苦無、ムシュマフの鱗を跳ね咲花の顔の横を再び通り過ぎていく。
『案外破るのは早いかもしれませんね?』
「ならばその弾が当たらない様に動くでござる!」
 ちょっとだけ焦った表情をしながら動きを加速する。咲花に向けてアリスは余裕を持って銃で応戦していくが、
(『弾道計算がしにくい……!』)
 アリスの先程の跳弾が成功したのはまぐれだ。
 動きがあまりない障害物に当てるとなればやりやすいが、ムシュマフや手裏剣といった動きが読めない物に跳弾させ咲花に当てるとなると、今まで培ってきた群狼機動戦術をもってしても予測がしにくい。
 さらに咲花が召喚したムシュマフの放つ炎に突撃と攻撃手段が増えたことに、アリスの焦りと疲弊は蓄積していく。
『距離があった方が有利だと思っていたのですが――その認識を改めなくてはいけませんね』
 ライフルを捨て去りアリスはムシュマフを足場にして咲花への距離を一気に縮めていく。
「ムシュマフ、応戦するでござるよ!」
 龍が突撃、炎を浴びせるも聖女の動きを止めることはできず。アリスは咲花を組み伏せると少女の首元へ鋭く伸びた犬歯を突き立て、
「――かかったでござるな」
「牙を剥き出しにして、はしたないですよ? 聖女さん」
 咲花がにぃと笑うのと、アリスの体が棺桶に収められるのはほぼ一緒だった。
『――な』
 レンフィートは咲花に手を貸して起き上がらせ、棺桶と共に地面へと落ちていったアリスを見下ろす。
「人狼騎士の聖女アリスならともかく吸血鬼なら勝算がある……『汝、血肉を喰らうことなかれ』
 咲花とアリスが交戦中にレンフィートが戦場に課したのは血肉を喰らう事を禁じる掟。それは血を喰らう吸血鬼にとって大きな足かせとなり、実際に吸血鬼は禁忌を破り|棺桶《寝床》へと戻された。
 ここに誇り高い人狼騎士に所属する聖女はいない。いるのは吸血鬼に洗脳された哀れな吸血鬼のみ。
「吸血鬼の罪は、吸血鬼が濯ぐとも」
 それが貴種吸血鬼たる、自分の役目なのだから。
 動けない女へと近づき、レンフィートはガンナイフを杭打ちを行う様に突き立てる。
 ガンナイフは容易く彼女の柔肌を抉り、放たれた銃弾は体内ではじけ飛び暴れまわった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

鳥羽・白夜
あのアリスの中で伯爵とウサ公が入れ替わってんのか?ややこしいなもう…
どうせ伯爵やウサ公のことは聞けそうにねーし今は戦うだけだな。

昔のアリストライアングルには参加してたけどアリス本人とは戦ってねえんだよな、けど相当な強敵なのは分かる…あのライフルが厄介そうか。なら武器を封じる!
魔蝕の霧発動、霧で相手の視界を塞ぎ【気配感知】【第六感】【武器受け】駆使して弾丸を避けながら【足場習熟】【ダッシュ】で戦場を駆け撹乱。【時間稼ぎ】しつつ霧の効果範囲を広げる。
避けきれない分は纏った闇のオーラで【オーラ防御】【衝撃吸収】でダメージ軽減。
武器封じが効いてきた頃を見計らい【死角攻撃】、大鎌の【斬撃波】を放ち攻撃。




 雪が舞い、弾丸が踊る。
「――っ、伯爵が洗脳してまで引き込んだ理由が分かるきがしてきたな」
『伯爵の名がなぜ出てくるのですか? 弊社とは全く関係のない人物ですが』
 弾丸をレッドサイズの刃で弾きながら鳥羽・白夜が呟けば、聖女アリスは訝し気な表情を浮かべる。
『私がお仕えするのはハビタント・フォーミュラ様、ただ一人ですよ?』
「あのアリスの中で伯爵とウサ公が入れ替わってんのか? ややこしいなもう……伯爵やウサ公のこと質問してもどうせ応える気は無いんだろ?」
『ふふっ、どうでしょうか?』
 笑顔で銃弾を心臓へ向けて撃ってくるアリスに白夜は心の中で小さくため息をつく。
 十数年前のアリストライアングルには白夜も同じ戦場にいたが、直接対峙するのは今回が初めてであった。
 ゆえに彼女がどういった戦法を取ってくるかは報告書内でしか分からなかったが……こうして実際に戦って脅威に感じたのは俊敏にして隙がない立ち回りと、ライフルによる銃撃である。
 地の利も活かした正確無比な弾は今ははじけても致命傷になりかねない。
(「だったらあの技なら……」)
 この状況を打開できる技があるが……白夜の中で逡巡する事一瞬。
「はずかしい、恥ずかしいが……あー、やるしかないか!」
 腕スレスレを掠った弾丸の風圧に意を決し、白夜はブラッディサイズを構えると、それを合図にブラッディサイズの鎌と棒の接合部に設置された回転動力炉の回転が早まっていく!
「唸れ回転動力炉、広がれ魔蝕の霧―!」
 詠唱と共に赤黒い霧が展開され、同時に白夜の姿は霧の中に消えていく。
『これは――!』
 察知したアリスが白夜がいた方向へすぐさまライフルを放つが、その弾は空振りに終わる。
 ――魔蝕の霧。詠唱と共に展開される霧は戦場を展開されていく埒外の力である。
 かすかに聞こえてくる詠唱の声と、長年の勘で白夜の居場所を察知したアリスがすぐさまライフルを放つが――弾は霧に触れた瞬間に勢いをなくし、輝く弾丸の表面も瞬く間に錆びて地面へと落ちていく。
『やはりただの霧ではありませんね……!』
「せーかい!」
 アリスの背後から声が響くと同時に、霧を割いて紅き一閃が閃く。声に反応し、アリスは回避を試みるも――一拍遅れて彼女の背中に赤い血が飛び散ったのだった。
 

大成功 🔵​🔵​🔵​

暗都・魎夜
【心情】
『伯爵』に洗脳されていた当時の聖女アリスは元々持っていた防衛線の技術に加えて、文字通りネジの外れた残虐性を持つ強敵だった

生命賛歌抜きで戦うのはたしかに骨だが、生命賛歌だけ破りに来た奴ならあの後いくらでも戦ってきたぜ?
生命賛歌だけに頼ってると思ってもらっちゃ困るな

「全力で行くぜ、イグニッション!」

【戦闘】
※「真の姿」は学生の頃のような少年の姿

マヨイガは学生の頃から遊び場に、デートコースにと使ってた身でね
何ならマヨイガの中には俺が経営してるバーもある位さ

「何なら寄ってくか? サービスするぜ?」

「天候操作」で風を吹かせ、足場を不安定にしたり、石や木の場所を変え群狼機動戦術を妨害

UCを発動して真っ向勝負
「心眼」「見切り」「武器受け」で射撃を凌ぎ「ダッシュ」で距離を詰めて「カウンター」「武器落とし」
「リミッター解除」「限界突破」した「斬撃波」を放つ

鎌倉まで攻めてくれた借り返すぜ

「俺は生きたいと願う魂を守るために戦う、通りすがりの能力者さ。覚えておきな!」

うーちゃんにこの世界、やらせはしねえ




「……『伯爵』に洗脳されていた当時の聖女アリスは元々持っていた防衛線の技術に加えて、文字通りネジの外れた残虐性を持つ強敵だった」
 暗都・魎夜は跳弾を避けてアリスの懐に入り込み横薙ぎに剣を振ったが、その一撃は彼女が剣の腹に銃底を叩き込むことで軌道を逸らされる。お返しにとばかりに眼前に放たれた近射を寸でのところで身を捻り、距離を取った。
 数多くの命のやり取りが続き、血を流れる。だがそんな中でも片手でライフルの銃爪を連続で引きながら聖女は笑う。
『お褒めに預かり、光栄です。
 そう、それゆえに|生命賛歌《超常なる力》がなければ、私にもまだ勝機があります……!』
 彼女は勝算があると踏んでいた。能力者は瞬間的な火力は目を見張るものがあるが、それを継続していく能力はないと。
 ゆえにアリスはほぼ一貫してヒット&ウェイを繰り返し、戦闘を続けていく。
 猟兵たちが疲弊し、攻撃の手が緩むその時まで。

「……生命賛歌抜きで戦うのは確かに骨だが、生命賛歌だけ破りに来た奴ならあの後いくらでも戦ってきたぜ?」
 魅夜が強敵に出会えた高揚感に身を焦がし、にっと笑った。
 能力者にとって|生命賛歌《メガリス》の恩恵は大きな力であることは間違いない。
 だが、銀の雨が降るあの時代をそれだけで潜り抜けてきたわけではない。

「全力で行くぜ、|起動せよ、詠唱兵器!《イグニッション》!」
 魔剣を天高く掲げると同時に炎が魎夜を包み込んだ。同時に周囲を風が吹きすさび、雪を巻き上げれば戦場内はたちまちに白に染まっていく。
「マヨイガは学生の頃から遊び場に、デートコースにと使ってた身でね。何ならマヨイガの中には俺が経営してるバーもある位さ」
『この程度の目くらましで攻撃を防げるとでも?』
 どこからか聞こえてくる男の声に向け銃弾を撃つも、発砲音すらも風に飲まれ当たったかどうかも分からない。
「――何なら寄ってくか? サービスするぜ?」
 吹き荒れる雪を切り裂いて現れた男はそのままアリスへと肉薄する!
『その姿は一体……!?』
 蒼く煌めく斬撃を寸でのところで回避し距離を取ったアリスの顔には驚きの表情が貼りついていた。
 なぜなら声こそ魎夜の物だが、姿は先の時とは異なり、まだ成人を迎えていない青年の姿になっていたからだ。
 それは炎。かつての銀の雨が降る世界で死と隣り合わせの青春を駆けてきた、彼の赤々とたぎるその炎は銀色の光を纏い、神聖さも感じる輝きを抱いてた。
「俺らも変わってるのさ、銀の雨が降りそそいでいたあの時からな!」
 銀の光を纏いながら魎夜は雪が溶けた地面をぐっと踏み込み、再びアリスとの距離を詰める。
『くっ……!』
 閃く銀閃を吹き荒れる風雪により先ほどまで把握していた地の利が崩されたアリスは焦り――
 ――すぐに笑みを浮かべた。
『っ……そんな真っ直ぐに向かって、打ってくださいと言わんばかりですね!』
 真っ向から向かってくる魎夜に対してライフル銃の銃身を向け、引き金を引く!
 その距離僅か1m足らず。真っ直ぐに眉間へと向けられた銃弾はそのまま――。

(「……うーちゃんが何をしようとしているのか、俺には分からねぇ」)
 ハビタント・フォーミュラによるアリストライアングルの改竄。メガリスを使ってまでこの儀式を敢行するのには自身の強化、世界崩壊の一手。目的はいくつかに分かれているだろう。
 だが罪の意識を抱きながらも今を懸命に生きる聖女の過去を再現することを見逃すなど、彼にはできない。
(「うーちゃんにこの世界、やらせはしねえ!」)
 銀の雨が降るこの世界は、過去に世界を守った自分たちが、そして今を生きる世界の人の物なのだから。
 
「おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」
 眉間を穿つはずのその弾丸は彼が差し出した手甲によって阻まれ、何処かへと飛んでいく。
 そのまま肉薄、アリスの懐に潜り込みライフル銃に向けて魔剣を振り上げれば、上空にライフル銃が舞う!
『っ、しまっ……』
 銃を失うと同時に体勢が崩され驚愕の顔を浮かべる聖女アリス。その隙を見逃さず魎夜は炎を纏う魔剣が、夜空の輝きを纏う刀を構える!
「俺は生きたいと願う魂を守るために戦う、通りすがりの能力者さ。覚えておきな!」
 咆哮と共に、真っ直ぐな炎と銀の斬撃が聖女の体をしかと捉えた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

山吹・慧
生憎、負けるわけにはいかないのですよ。
あなたは彼女の忌まわしき過去であり、
彼女を曇らせる存在でしかありません。
彼女が歩む道の為に……彼女の笑顔の為に
この場で抹消させてもらいますよ。

複製の噛み付き攻撃は敢えて受けましょう。
それが哀しき複製へのせめてもの情けであり、
手向けです。
満足していただけましたか?
では、ここからが本当の戦いです。

真の姿を解放。
【オーラ防御】を展開した上で、
複製の攻撃を【グラップル】の技術と
【受け流し】を駆使して凌ぎながら
【エネルギー充填】を行います。
充填が完了したならば【残像】とエンジェリックウィングの
光の【羽を飛ばす】【目潰し】で攪乱してから、
【リミッター解除】した【砕甲掌・浄刻】を放ちます。

本物のあなたは、僕にとって一番大切な人……。
この魂が燃え尽きるまで僕が支えます。
ですから安心して眠りについてください。




 聖女アリスは罪を犯した。贖罪の道は険しく、命尽きるまで終わりはない。
 死しても贖罪が果たされる事はない。

『――慧っ!』
 その場にいた猟兵が悲鳴とも取れる声色で山吹・慧の名を呼んだ。
「――大丈夫、生憎負ける訳にも、死ぬわけにもいきませんから」
 呼ばれた慧は腕に食らいつく聖女アリスを引き離した。無理矢理引き離した代償に赤い血が雪面に絵を描く。
『ふふっ、覚えましたよ。あなたの血の味を』
 シスター服を自身の血で、口元を慧の血で汚した聖女アリスはライフル銃を構える。
『次は、ありません』
 正確に向けられた銃口の先は慧の心の臓。銃爪を引くだけで彼の命は呆気なく終わる。
 しかし、銃口を向けられてなお慧の目はただ真っ直ぐにアリスを見据えていた。
 彼の目に宿るのは憐憫。
 慧の目の前にいるのは未来で贖罪も果たすこともできずに、ただ与えられた| 過去《役割》を繰り返すだけの女。
 それがどうしても、哀れに思えて仕方がない。
 だから、ここで終わりにしなければ。
「――ここからが本当の戦いです」
 言葉を合図に慧が力を解放した。黒で統一された服は瞬く間に白へと変わり、白い翼とステンドグラスめいた後光を背負う姿は天使と称されるだろう。
「あなたの罪を終わらせましょう」
『――私が成す事はハビタント・フォーミュラ様への献身。なぜあなたが罪とするのです?』
 聖女の体が空に舞うのと銃声が響き渡った。連なって発砲された弾丸は多方向に飛んでいきある物は小石に、雪に、木の枝にぶつかり方向を変えながら慧の元へと襲い掛かる!
「――」
 弾丸の嵐に囲まれた慧は体の周囲へオーラを展開。柔らかくも強固なるオーラの前に大半の銃弾は弾かれ地面に落下していく。
 運よくオーラの防壁を潜り抜けた銃弾も体術を持って少ない動作で回避。
 ――瞬間、見えざる一発の銃弾が慧の脚を貫いた!
「っ……」
『その体の動きどこかで見たことがあります。が――その程度の動作で私の動きを封じられるとでも?』
 先の吸血で獲物の血の味を、心臓の鼓動すら把握した聖女の攻撃はすさまじい。オーラと体術の僅かな隙を見抜いて銃弾を放てば僅かなりとも慧の真白い服が赤く細い線で彩られていく。
 僅かに、ほんの少しだけ自分が優位に傾いた――アリスが勝ちの道筋を立てるのと同時に、慧の体が輝いた。
『――なにっ!?』
 そのまま慧の体が宙に舞い翼を羽ばたかせると、光り輝く羽が戦場一帯へ舞い踊る!
 先程とは比べべ物にならない突然の光量を持つ光に、アリスは目がくらんだ。その一瞬。
「お疲れでしょう? もう眠ってください……」
 とんっ
 清浄なる闘気誓いをのせた掌底が、聖女アリスの胸を抉った。

 掌底が決まったアリスは時が止まったかのように動きを止める。
 一瞬、もしくは数分の静寂の後。聖女が血を零しながらゆっくりと口を開いた。
『貴方は、なぜそんな目で私を見るのですか……?』
 多くの死地、戦場にて自分は敵対者畏怖、敵意が向けられていた。それはいつまでも、この戦いでも変わらない。
 だが、慧が向けていたのはただひたすらに純真で真っ直ぐで。あまりにもかけ離れた感情に聖女は純粋な疑問を口にした。
 問う彼女の顔を見つめ、慧は僅かに口角をあげる。

 聖女アリスは罪を犯した。
 吸血鬼に洗脳されていた時の物とはいえ、成した事はあまりにも血に塗れていた。
 彼女自身が課した生涯を賭した贖罪の道は険しい。命尽きるまで終わりはなく、死しても贖罪が果たされる事はないだろう。少なくとも、彼女の中では。

 気高い貴女。そんな貴女に出会って僕の人生は大きく変わった。
 僕は誓った。彼女の傍に寄り添い共に生きると。これから背負う苦しみ嘆き悲しみ――全ての困難を分かち合うと。
「本物のあなたは、僕にとって一番大切な人……。
 この魂が燃え尽きるまで僕が支えます」
 だからあの時に誓った。


 僕は、彼女の剣なのだと。


――ですから安心して眠りについてください。

 その言葉を聞いた聖女アリスは数拍置いて口を開いたが――終ぞ言葉を発することはなく、そのまま光の粒となって空へと還っていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年04月18日


挿絵イラスト