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オールラスト・コールは鳴り止まない

#アスリートアース #ノベル #国民的スタア #バトル・オブ・オリンピア #後夜祭

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李・玉明




●バトル・オブ・オリンピア
 古代バトリンピア遺跡を中心に行われた究極のスポーツの祭典、バトル・オブ・オリンピア。
 猟兵とダークリーガーたちとの激突は凄まじいものだった。
 だが、戦いが終われば勝者は一頭高い場所へと駆け上がり、声援に応える。称賛に応え、その勝利に酔いしれるだろう。そして、敗者に手を伸ばす。
 互いの健闘を称え合うのだ。
 そこには確かに勝敗が決せられども、確かな繋がりが紡がれるものであったことだろう。
 これがスポーツである。
 競い、争う間柄でしかないのだとしても、その先を示すことができる。

 どんなに喜ばしいことか言うまでもないだろう。
 真の平和がある、というのならば、きっとアスリートアースには偽りなく存在していたのだ。
「お、次は妾の番じゃな?」
「そういうことだ。大いに盛り上げて欲しい」
 李・玉明(豪華絢爛西欧天女・f32791)はバトル・オブ・オリンピアの後夜祭にて猟兵たちの勝利のステージ立つことが決まっていた。
 国民的スタァとしての側面を持つ彼女。
 なら、ライブなんてお手のものであろう。そんな彼女と入れ替わるように舞台袖に捌けてきた『新生フィールド・オブ・ナイン』の一人、トライアスロン・フォーミュラ『時宮・朱鷺子』が玉明と手を打ち鳴らす。
 バトンタッチ、と言わんばかりであった。
「まっかせるのじゃ!」
 玉明は舞台袖から飛び出す。
 
 駆け出すと同時に音楽が音響から響き渡る。
 盛大な音の洪水。
 そして、舞うは紙吹雪。
 照明が乱舞するようにしてステージ上を照らす。スポットライトが色とりどりに輝き、ステージの玉名を追いかけ、一点に集約される。
 数多の光は合わされば、白に近づいていく。
 その白色の光の下に玉明は立ち、とびっきりの笑顔をステージより放つのだ。
「見た目は麗人! 中身は少女! その名はユイミン!」
 真紀子起こる大歓声。
 大地割れんばかりの押しかけた人々。
 それはアスリートアースの超人アスリートだけではなく、ダークリーガーも、『新生フィールド・オブ・ナイン』たちさえも集まって応える。

 プロレス・フォーミュラ『デスリング総統』は四本腕の全てにサイリウムを手にして振っている。なんだか、可愛らしく思えてきてしまう。
 さらに超人アスリートとダークリーガーたちが入り乱れるようにして玉明のバックダンサーを駆って出てくれる。
 音楽と共に踊る。互いに笑顔を向け合う。
 そこにはこれまでの闘いを忘れさせるものであった。猟兵であっても、ダークリーガーであっても、バトル・オブ・オリンピアの閉幕が無事相成ったことを悦んでいる。
 ノーサイドだ。
「そうなのじゃ! みんな此度はよくがんばったのじゃ!」
「グロロロロ! 祭の最後はこうでなくてはな!」
「然り。しかし、このサイリウム……絢爛なるテニスを思い起こさせてくれる。此処で見せるか、我が秘剣・二天一流サイリウム冴えわたる様を!」
「なーにいってんだい。御主人様たちの打たを邪魔すんじゃないよ!」
 テニス・フォーミュラ『宮本・武蔵』とサッカー・フォーミュラ『エル・ティグレ』がやいのやいのと騒ぎ立てている。
 その後方ではレース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』が後方理解者面をしている。いや、といっても彼の顔は髑髏のようであったから、表情はわからない。

 けれど、玉明は指差して笑うのだ。
 見えておるぞ、と。
「みんな、踊るのじゃ!」
 玉明は囃し立てるようにして声を張り上げる。その言葉にベースボール・フォーミュラ『Mr.ホームラン』は壇上へと飛び上がる。
「ならば、遠慮なく! さあ、見せてやろう。この足さばきを。ベースボールで鍛えに鍛え上げた足腰を! 猟兵、ついてこれるか!」
「無論!」
「ふっ、時間遡行能力を喪ったとは言え、私もまだまだやれるさ。さあ、やろうじゃないか!」
『時宮・朱鷺子』また飛び込んでくる。
 もうステージの上は滅茶苦茶だった。

 だが、誰もが笑っていた。笑わぬ者などいない。
 そう、戦いは終わったのだ。
 誰もが世界のために戦った。確かに試合に勝利することは我欲に満ちた執念が必要であろう。それなくば勝利を得ることはできない。
「踊らぬのは損じゃ! ほれ、ほれ、みんなもステージに上がるのじゃ! 勝利者だけしか踊れぬなど、歌えぬなど、そんな通りなどないのじゃ! 此度のバトル・オブ・オリンピアは皆の勝利なのじゃ!」
 だから、と玉明はステージに猟兵もダークリーガーも引き込む。
 敵味方の区別なんてない。
 誰もが踊っている。
 踊れない者などいない。踊ってはならぬ者もいない。

 ただひたすらにみんなで踊る後夜祭。
 その大盛りあがりは夜を徹するように続くだろう。
「ふ~それにしても、みんな元気なもんだね~」
 そんな猟兵とダークリーガーたちの壇上での踊りや歌を見やりながら『勇者リリリリ』は、一人笑む。
 彼女は『魔王ガチデビル』から開放されたのだ。
 彼女は唯一人の被害者とも言えるだろう。
『魔王ガチデビル』の世界を破滅させるという願望、悪魔契約書でもってダークリーガーたちを利用して、アスリートたちをダーク化させて他世界を侵略を実現させようとしていたのだ。
 しかし、その企みはバトル・オブ・オリンピアにて阻まれた。
 そういう意味では彼女は身を持て余していたことだろう。

「これからなにしよっかな~……おっと、これ美味しそ」
 もらっていいのかな? と『勇者リリリリ』は後夜祭の会場に並べられた栄養たっぷりのアスリート飯を口に運ぶ。
「なにこれ! え~……美味しい~!」
「お、『勇者リリリリ』ではないか! お主もこっちに来やれ!」
 玉明が目ざとく『勇者リリリリ』を見つけて、彼女の手を引いて壇上へと引き上げる。
「まってまって。私、まだご飯食べてる途中」
「なに、そんなのは踊りながら食べればいいのじゃ!」
 玉明は彼女の言葉を遮るようにして、軽快な音楽と共に身を打つサウンドに笑う。『勇者リリリリ』は仕方ないなぁ、という顔をして、アスリート飯を頬張りながら共に踊る。

 そこには猟兵も、ダークリーガーも。
 フォーミュラも、勇者も、堕天使も関係ない。
 ただ一つ、スポーツの祭典を共に成功させたという達成感だけが心同じくするものであったことだろう。
「みんなー! よくがんばったのじゃ! イェーイ♪」
 玉明は壇上から飛び出す。
 彼女の道を阻まぬようにと、アスリートとダークリーガーたちが花道にように居並ぶ。
 ぱん、ぱん、ぱん!
 軽快な音が響く。
 それは手を打ち鳴らす音だった。拍手ではない。

 そう、玉明とアスリート、ダークリーガーたちのハイタッチの音だった。
「また試合しようぜ!」
「ああ、約束じゃ!」
「今度は負けないよ!」
「挑戦待ってるのじゃー! もっと練習してびっくりさせてやるのじゃ!」
 そんなふうにして玉明たちは大勢とハイタッチして駆け抜けていく。
 ビクトリーロードではない。

 続くのは平和な明日への道。
 勝利は、きっと今日という日を齎すためにあったのだ。
 なら、玉明は願ったのだ。
「みんなと一緒に過ごす明日が欲しいのじゃ! だから」
 オールラスト・コールは鳴り止まない――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年02月07日


挿絵イラスト