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【SecretTale】旅行者と大穴の謎

#シークレット・テイル

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#シークレット・テイル


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●危機直面(キャンプで)
 信じて貰えないかもしれないが、エルグランデは只今危機に直面している。
 とある首魁の手によりこの地でキャンプをしようよ~と提案され、キャンプをした。
 そこまでは良い。キャンプは楽しかったから。

 だが問題はそこからだった。

「エル、エルー!! 空に穴がーー!!」
「うわぁーー!? ベルトアに連絡いれなきゃ!!」

 謎の旅行者――もとい、レティシエル・ベル・ウォールとアマベル・オル・トライドールの2人の来襲。
 そして、エルグランデの空に開いた黒い大穴。

 この2つが同時に発生したおかげで、キャンプで色々緩み切っていたセクレト機関側も大忙しな状態となった……。

●大穴
「よりによってレティシエルとアマベルが来た瞬間かぁ……」

 セクレト機関の司令官室にて。
 とんでもない2つの状況に頭を抱えていた司令官エルドレット・アーベントロート。
 どうしたもんかと悩み悩んで、どう動くかを考えていた。

 まず端的に言うと、空に開いた大穴はゲートとほぼ相違ないことがわかった。
 ただし世界と世界を繋ぐものとは少し違い、物体を通したりすることは出来ないらしい。
 らしい、というのは目視と司令官システムの計算によって弾き出された答えであり、確たる証拠ではない。
 また普段とは違い、ゲートの作成者などの情報が一切無く、ただただ世界に穴を開けただけという形に収まっているそうだ。

 そのため大穴自体の調査よりも、大穴が開いてしまったことによる影響が何かしら起きている可能性が高いそうで、周辺の調査から始まるとのこと。

「ああいう穴が開いた時は、|必ず《・・》コントラ・ソールによる暴走事故が起こるんでね。それの対処にも行かなきゃならなくって」

 やれやれ、と肩を竦めたエルドレット。
 これまで世界に穴が空くことは数あれど、世界を見下ろすほどの大きな穴は久しぶりなのだそうで、現在司令官システムに現存する脳が前例を確認し、対処方法を各|調査人《エージェント》に伝えていた。

●旅行者
「で……もう1つの問題が、アレか」

 ヴォルフが指差す先、旅行者です! と言わんばかりの笑顔を向けているレティシエルとアマベル。
 既に予知されていたことではあるのだが、こんな時に来ないでくれよ……とエルドレットは頭を抱えた。

 レティシエル・ベル・ウォールとアマベル・オル・トライドール。
 彼らは元々はこのエルグランデに住んでいた研究者達。
 けれど30年前に起きた『箱庭研究』の事故により、彼らはこの世界から箱庭世界へ移転。
 2人はエルグランデでの記憶を失ったままに、自分達の手で作り出した箱庭世界の神として君臨して今を生きている。

 そんな2人がなんの理由でこの世界に来たのかと言うと、ただの旅行だという。
 普段から異世界を旅するのが趣味のレティシエルと、ちょっと本業の方が滞り気味なので気分転換に旅しにきたというアマベル。
 タイミングがタイミングだったが故に、調査人や研究者の間では彼らが犯人ではないか、という話で持ち切りになってしまっていた。

「お前らがやったんじゃねェだろうなァ?」
「やってないやってない! ベルトアが空を見てみろって言うから、僕らも空を見ただけで!」
「っていうか、ベルトアに連絡しなきゃ!! おじさん、通信魔石持ってない!?」
「おじっ……いや、俺とお前らはほとんど年齢変わらな……」

 反論しようとするヴォルフだったが、エルドレットに窘められてそのまま口を噤む。
 彼らは何も知らないのだから、真実を突きつけるのはよしておけ、ということらしい。アマベル辺りが凹むだろうから、とも。

 そうして彼らに対する処遇をどうするか、司令官システムが計算した結果が伝えられる。
 と言っても彼らを自由にする訳にはいかないため、同行させて大穴周辺の対処に当たる形に収まった。
 コントラ・ソールによる事故は既に少しずつ起き始めているようで、急がなければならないが。

「流石に犯人じゃないとは言い切れないんで、同行してもらう形になる。一応戦闘経験はあるんだろ?」
「うーん、そちらさんが考えてるほどじゃないと思うけど……まあ僕とアマベルなら大丈夫かも」
「そうだねぇ。あ、おじさん、地図ちょーだい、地図」
「だから俺ァお前らと年齢変わんねェって……」

 今一度ため息をついたヴォルフは配布用マップをレティシエルとアマベルに渡して、猟兵達と合流するように告げる。
 今回の彼らは旅行者というよりも容疑者。故に、猟兵達に同行させて本当に彼らがやっていないのかどうか、彼らも協力してくれるのかどうかを確認するのが目的だ。

 現時点で確認されている異常事態は【マリネロ平原の野ウサギ暴走】【アルミュール海域の竜巻】【ファムの村の作物異常】【神殿近郊の野生動物暴走】が上がっている。
 他、細かな異常事態も確認されているがそちらは他の|調査人《エージェント》が調査と対応に当たってくれるそうだ。

「っつーわけで、今回はいくつかに分かれてもらう。移動に関してはこっちで短距離ゲートを作っておくから、その対処を頼んだよ」
「はーい。……僕とアマベル、別れたほうが良さそうだねぇ」
「だねぇ。どっち行くー?」
「じゃんけんしよ、じゃんけん」
「いいよー」

 じゃーんけーんぽん! と2人でじゃんけんをし始めたアマベルとレティシエル。
 こんな旅行者と言えども、何を考えているのかわからない。油断しないように、彼らと共に異常事態の対処に当たろう。


御影イズミ
 閲覧ありがとうございます、御影イズミです。
 自作PBW「シークレット・テイル」のシナリオ、第八章。
 やってきた旅行者のレティシエルとアマベルと会話しつつ、大穴開通によって起きた事故の対処を行うシナリオになります。
 ちなみにキャンプに関しましては「バトル・オブ・オリンピア⑱〜秘密の物語へようこそ」にて実際に起こりました事実となります。

 シークレットテイルHP:https://www.secret-tale.com/

 今回行ける場所は『マリネロの街』『ヴィル・アルミュール』『ファムの村』『神殿』となります。
 この4つのうち、1箇所だけに出向くことが可能となります。
 対応した場所の異常事態については断章にて。
 なお、基本的に1プレイング1箇所のつもりで執筆しますが、場所が被った場合でも追加情報は出ます。
 出ない場合はそのままプレイングのお返しとなります。

 同行NPCは「レティシエル・ベル・ウォール」「アマベル・オル・トライドール」。
 レティシエルはマリネロ、神殿近郊。アマベルはヴィル・アルミュール、ファムの村に向かいます。
 他、対応場所によって登場するNPCが変わりますので、断章をご参照ください。

 今回は場所によっては戦闘も起こります。
 レティシエルとアマベルは全てが謎に包まれていますので、今回のプレイング次第では能力なども明らかになるでしょう。
 なお、異常事態の対処が終わればあとは自由。観光なり、情報収集なりが可能です。ご自由にどうぞ。

 皆様の素敵なプレイング、お待ち致しております。
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第1章 日常 『プレイング』

POW   :    肉体や気合で挑戦できる行動

SPD   :    速さや技量で挑戦できる行動

WIZ   :    魔力や賢さで挑戦できる行動

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


●Mission-08
 シナリオのクリア条件
 大穴周辺の異変を鎮める。

 異変調査 フラグメント内容
 POW:やはり力こそパワー。力で食い止める。
 SPD:迅速に異常事態に対処し、即座に食い止める。
 WIZ:異常事態発生原因を調べ、最低限の動作で食い止める。


 ****


◆マリネロ平原の異常事態

「うーわぁ」

 家に戻ろうとしていたのか、エレティック・リュゼ・ルナールが頭を抱えている。
 マリネロの街から平原に出れば、普段は穏やかな風が平原を漂っているのだが……今回は違う。

 空の大穴が開いたことでストレスが上昇したのか、マリネロコエリオと呼ばれる品種のウサギが大量に平原を走っている。
 しかもマリネロコエリオは元々温厚で人に懐きやすい性格なのだが、今回に限ってはコントラ・ソール《|突風《ラファール》》で攻撃してくる始末。
 それはルナールに対しても例外ではなく、彼らはルナールを見つけると走って近づいてきて、《|突風《ラファール》》の一撃を喰らわせる。

 何が起こっているのかを観察すべく、《|観察眼《ディサーニング》》でマリネロコエリオを見たルナール。
 コントラ・ソールの所持や他の異常がないかを調べた結果、彼はあることを呟く。

「……おかしいな……この子たちは|ソールを持っていなかった《・・・・・・・・・・・・》はずだが……?」

 自分自身で結果を出しておきながら、意味の分からない事態になって首を傾げるルナール。
 ひとまず、ここはマリネロコエリオへの対処を行わなければ調査に踏み切れないようだ。 

・対処項目:マリネロコエリオ(50体ぐらい)との戦闘
・同行者:レティシエル、ルナール



◆アルミュール海域の異常事態

「なんだアレは」

 ヴィル・アルミュールではスヴェン・ロウ・ヴェレットが久方ぶりに自身の邸宅に戻ろうとしていた。
 アルムの話を聞いて己の著書ももしかしたらと思ったようで、それを取りに帰ってきていた。

 だが、彼がヴィル・アルミュールから機関へと戻ろうとしていた時、南の山を隔てた先、海の上に巨大な竜巻が発生しているのが見えた。
 今はまだ街に対する被害は何もなく、山に阻まれて消える可能性は大いにある。
 このまま放っておいても山に阻まれるが……。

「なんだ、あの竜巻……意志を持っている?」

 竜巻をじっと見つめていたところ、竜巻の動きが自然現象ではありえない動きなっていると気づいたスヴェン。
 山に阻まれていれば乗り越えるか、雲散霧消するかのどちらかになるはずだが……件の竜巻は山を迂回するように動き始めていた。
 『そこに山があるから迂回して陸地に上がる』。そんな動きにも見える。

「……まさか……海上生物のソール発現か?!」

 小さく呟いて、持っていた書籍を全て移動用ゲートに乱雑に放り込んだスヴェン。エルドレットの「ぐえっ!?」という声が聞こえたが、気にしない。
 急いで竜巻の対処に当たらなければマズいと判断したようだ。

・対処項目:意思を持つ竜巻を消す
・同行者:アマベル、スヴェン


◆ファムの村の異常作物

「わぁ~」

 ヴィル・アルミュールより北上したところに、農業の村『ファムの村』はある。
 農作物や畜産業をメインとしたこの村では至るところから食材を買い付けに来る人がいる。
 マルクス・ウル・トイフェルもそのうちの1人。
 しかし彼が来た時にはもう、村の中は大騒ぎになっていた。

 すくすくと伸び、森のような大きさになるブロッコリー。
 大きく伸びた長ネギは木のように登れるようになっていて。
 土に埋もれた大根とカブは今にもはみ出しそうなほどの大きさで。
 何枚の葉っぱで構成されたのかわからない白菜まである。

「……あれ、そういえば|畜産は無事《・・・・・》なんですね」

 ふとマルクスはこの異常事態が作物にしか作用していないことに気づく。
 村全体で農作物と畜産業を行っているのならば、畜産物に関しても異常が起きていてもおかしくないはずだが……。

 とはいえ、この異常事態は放っておけばファムの村に大損害を与えかねない。
 次の作物を作るための畑が台無しになってしまう前に、引っこ抜いて食すしかないだろう。

・対処項目:肥大になった農作物を使って料理作成&食事
・同行者:アマベル、マルクス


◆神殿近郊の異常事態

「…………」

 鬱蒼と生い茂る草木の合間から、空に開いた大穴をじっと見つめる男が1人。
 神殿付近も大量発生した毒蛇の対処が必要なのだが、男はそれをナイフで仕留めていく。
 だが、毒蛇達は新たな力を得ているのか、毒以外の力――コントラ・ソール《|火炎《フラム》》を使って男に襲いかかる。

「……ああ、これは本当に異常事態だ。兄さんが黙っちゃいない」

 炎に焼かれながらも、男は――エーミールは毒蛇の首と身体を切り離す。
 世界の敵『リベリオン・エネミー』となった今、彼が何故神殿と呼ばれる場所にいるのか。

 ……今は、何もわからない。
 毒蛇の対処を終えた後、彼から聞き出したほうが良さそうだ。

・対処項目:毒蛇(100体)との戦闘
・同行者:レティシエル、エーミール
黒木・摩那
イカと戯れている間に空に大穴が開いて、『世界の敵』まで出現するとは。
動物たちも新しい能力の目覚めも報告されているようですし。
まさに世界の危機ですね。

ここは神殿に対応。
神殿に「出る」ってことは暗示っぽいですしね。

蛇はUC【乱舞雷花】で懴滅します。
毒蛇危ないですね。

同行のレティシエルにもこの影響について、お尋ねしましょう。
箱庭世界を研究しているということですから、思うところがあるのではないでしょうか?

それと例の本。
素性の分からない本一冊で「世界の敵」が決まるのも違和感があります。
指定された側にも言い分があるのではないでしょうか?
それとも身に覚えがあります?>エーミール

話さないとわからないですよ。



●Case.1 大穴の正体

「イカと戯れている間に空に大穴が開いて、『世界の敵』まで出現するとは……」
 大空に開いた黒い穴を見上げて、黒木・摩那(冥界の迷い子・f06233)は色々と考え込む。動物達も新たな力を芽生えさせているあたり、本格的に世界の危機が訪れているのが示されている。
 最も危険だと言われている神殿――と名称が与えられているが、実際の名称は不明の場所――に訪れた摩那はこの世界へやってきた旅行者レティシエル・ベル・ウォールと共にまずは毒蛇の排除から始める。
「うーん、僕、あんまり戦闘得意じゃないんだけどなぁ」
「ついてきたからには手伝ってもらいますよ。ほら、来た」
「仕方ないなぁ……」
 襲い来る毒蛇の群れは毒のみならず、コントラ・ソール《|火炎《フラム》》を使い2人の逃げ場をなくすように辺りの草木を燃やしていく。
 獲物を毒で仕留め、周りの炎で焼いて食べる。蛇の考えとは思えぬ合理的な動きで2人は瞬く間に炎の檻に閉じ込められた。

「……キミ、毒蛇をどうにか出来る?」
「どうしたんですか、急に。この数ぐらいならなんとかなりますが」
「じゃあ今から打ち上げるからさ。落ちてきたのをなんとかしてほしいな」
 そういうと、レティシエルは間髪入れず手袋をしている右手を前に出し、風を生み出して周囲にいた毒蛇と炎を一気に空に巻き上げていく。どうやら毒蛇達を使い、大穴の調査を行うつもりのようだ。
 空に打ち上げられた毒蛇達はそのまま一斉に空の大穴まで近づいたが……|1匹も穴に吸い込まれない《・・・・・・・・・・・・》。それどころか、拒否されるような動きが見えていた。
「うーん。やっぱりあれ、ゲートっぽく見えるけど、ゲートじゃないみたいだ」
「つまり……?」
「ゲートに見せかけた何かだね。僕は便宜上、ゴミ箱と呼ばせてもらうけど……」
 少しだけ口を濁らせていくレティシエル。ゴミ箱と呼ぶことにした空の大穴だが、1つ、引っかかることがあるという。
 ただそれを言ってもいいのかどうか。悩んでいる様子の彼に対して、摩那は1つでも情報を獲得するため一押ししていった。
「元々箱庭世界を研究しているのなら、何か、思うことがあるのでは?」
「……そうだね、あるよ。あるけど、これに関しては正直僕の憶測でしかない。それでもいいなら」
 レティシエルの念押しに対し、摩那は小さく頷いて……空から落ちてくる毒蛇をまずは処理していく。ユーベルコード『|乱舞雷花《フルール・イリゼ》』によって変化した七色の花びらを空に向け、落ちてくる毒蛇達に高圧電流を流して動けなくしておいた。
 炎は風に巻き上げられた影響か、あるいは術者となる毒蛇が死亡した影響か、既に周囲から消え去っている。ホッとした様子のレティシエルはキョロキョロと辺りを見渡して、毒蛇の生き残りがいないことを探る。

「さて、じゃああの大穴についてだけど」
 手頃な大岩に背を預けると、彼は手袋をしている右手でくるりと円を描く。
 すると、何処からともなく黒板のような板が現れ、摩那が聞き取りやすいようにと椅子も出してくれていた。
「これは……」
「これもゲートで運んできた僕の私物。ゲートっていうのは、こうやって物品や肉体を運ぶために使うんだけど」
「あの大穴はその役割を果たしてない、と」
 摩那の言葉に軽く首を縦に振ったレティシエルはチョークで簡単なゲートの仕組みを書き出す。
 ゲートとは世界と世界をつなぐ通路。人によっては『物質をコピーして書き出している』やら『物質構成を再び組み替えている』やら色々な説があるらしいが、レティシエルはただ単に『歩いて渡れる通路』と告げる。場合によってはゲートの先の世界を見ることも出来るから、と。
「だけどあの大穴は吸い込む様子もなければ、吐き出す様子もない。どの世界にも繋がってない、ただの穴。だからゴミ箱みたいなものだね」
「じゃあなぜあんな大穴が……」
「うーん……これはさっきの毒蛇と戦って、僕が感じたことからの推測だけど……」
 レティシエルは毒蛇達が使っていたコントラ・ソールが『大穴と雰囲気が似ている』と感じたそうだ。だから、便宜上と言えどゴミ箱と呼ぶには少々違う気がしている、とも。
 それが何を意味するのかは、記憶喪失な彼にはよくわかっていないが……大穴が開いたことで動物達に異変が訪れているのならば、必ず何か意味があるはずだ、と断言している。
 現にセクレト機関からの情報だと、毒蛇達がコントラ・ソール《|火炎《フラム》》を使うようになったのは大穴が開いてからのこと。
 ――もし何者かが大穴を開いたことでこの事件が引き起こされたとしたら……。
「……アレ、想像以上に不味いことを引き起こしてません?」
「うーん、ありそうだなあ」
 眉根を寄せて空を見上げるレティシエルと、小さくため息をついた摩那。
 大穴の予測に関しては、一旦はここまでとなった。



●Case.2 赤い本の正体

「それと、もう1人。話を聞かなきゃいけない人がいますね」
「んえ?」
 そう言うと、視線を神殿方面に向けた摩那。
 彼女の視線の先には……リベリオン・エネミーとなったエーミール・アーベントロートの姿があった。
 エーミールはどうやら毒蛇を殺して回っていたようだが、摩那とレティシエルに気づいて姿を隠そうとしていたようだ。けれど彼の鮮やかな髪は、空から降り注ぐ陽光を目一杯吸い取って輝いている。
「世界の敵、なんて言われてますけど……エーミールさん、あなたはそれでいいんです?」
「……どういう意味でしょうか?」
 摩那は疑問に思っていた。たかが普通の家であるアビスリンク家に置いてあった赤い本、たったそれだけで世界の敵と認定されるのはどうなのか、と。
 誰が書いたのかもわからない、得体の知れない本。それに名前が記されている側にも言い分はあるのではないか。摩那はエーミールにそれらを問いかけた。
「そう……ですね。ええ、言いたいことは色々ありますよ?」
「例えば?」
「あの本、いつの間にベルトアの家にあったんだ、とかね。アレは元々エルドレットが持っていたと言うのに……」
 ぶつぶつと、エーミールの呟きが早くなっていく。最初は赤い本に対する怒りを顕にしていたが、段々とエルドレットに対する怒りへスライドしていく様子が伺える。
 彼が世界の敵として認定された理由も、彼自身の呟きからはっきりとわかる。『兄を捨てたエルドレットへの怒り』『世界の護り手を自称するエルドレットへの報復として世界を壊す』……それらが認定された理由のようだ。
 しかし、言うだけ言ってスッキリした様子のエーミールは落ち着いたのか、再び摩那に向き直って赤い本に対する様々な情報を明け渡した。

「アレはもともとセクレト機関にあった警告の書……私はフェルゼンからそう聞いています。|世界《エルグランデ》が直接干渉してくるものだ、と」
「直接……それじゃあ世界に意志があるみたいな言い方ですが?」
 突然明らかになった情報に戸惑いを見せる摩那。人や動物同様に世界にも意志があるなんて言われても、それらを証明する方法は難しく、この場ではどうしたって信じることは難しい。
 けれど、エーミールは頑なに『世界に意志はある』と断言する。そうでなければ……。


「そうでなければ、コントラ・ソールが生まれていませんからね」


 ……その一言を最後に、エーミールは再び神殿の周囲へ移動する。
 まだ、毒蛇の駆除が終わっていないからと。





***************************************


 ・大空に開いた穴は『ゲートではない』と判明しました。
 →何処にも繋がっていない穴のようです。
 →なお、この大穴と毒蛇が使っていたコントラ・ソール《|火炎《フラム》》が何やら雰囲気が近い様子?

 ・赤い本は『世界からの警告の書』だと判明しました。
 →エルグランデという世界そのものの意志が、世界の敵となる人物を書き出すようです。
 →エーミールは世界の意志に関し、コントラ・ソールと繋がりがあることを示唆しています。


***************************************

大成功 🔵​🔵​🔵​

唯嗣・たから
行先→神殿

セクレト機関のひとたち、過労で倒れないかな。
大丈夫、かな。エルドレットさん、とか。
あ、だから機械の身体に、したのかな?胃に穴、あかないあように。

あ、エーミールさん、みっけた。
敵になっちゃった理由、くらいは、教えてほしい。
たから、ちゃんとサンタさんに、なるために…
エーミールさん、連れ戻すって、決めたんだから。
とりあえず落ち着いて、話すために、まずは蛇さん、倒さなきゃ!

ええっと、ええっと…蛇さん、ごめんね!
たくさんの手を呼び出して、蛇さんと、
蛇さんからの攻撃、防ぐために、草木の壁を、建築する。
手でさばききれない蛇さんは、刀でばっさばっさするよ。

エーミールさん、逃げないでねーっ!



●Case.3 毒蛇退治、おしまい!

「むぅ……セクレト機関の人たち、過労で倒れないかな……大丈夫かな……」
 神殿のある島にやってきた唯嗣・たから(忌来迎・f35900)はそわそわとセクレト機関のメンバー……特にエルドレットの心配をしていた。
 突然開いた大穴によってもたらされたいくつもの小さな事件はセクレト機関にとっては予想外の出来事故、|調査人《エージェント》達どころか上層部もかなりのストレスを抱えている。
「……あっ。だから、機械の身体に、したのかな? 胃に穴、あかないように」
 機械の身体になった理由を閃き、ぽん、と手を叩いて納得したたから。実際のところはまだよくわからないが、たぶん、きっと、ストレスで潰れないようにするためなんだろうな、と1人で納得。
 それなら機械の身体になってもストレスが一番の敵だから、急いで事件を解決しよう! とたからは意気込んだ。

「とは言え、毒蛇の退治はあらかた終わってるよねぇ……」
 合流したレティシエル・ベル・ウォールが呟く。
 先程合流してくれた猟兵が毒蛇を退治してくれたおかげで、100匹近くいた毒蛇は既に25匹近くにまで減っており、あとはちまちまと倒していくだけだと。
 ……だが、毒蛇達も自分達の縄張りを人間たちに荒らされご立腹。いつから住み着いているかはわからないが、長年住んでるのは自分達だぞと言わんばかりに威嚇をし始めた。
「ここには人は来ないらしいけど、退治しといたほうがいいかもね」
「蛇さん、ごめんね……!」
 襲いかかってきた生き残りの毒蛇達に向けてユーベルコード『凌遅腐敗ノ刑』を使い、地獄よりいずる怨霊の腕で草木の壁を作り出し、蛇達の攻撃を絞っていく。
 毒蛇達は草木の壁を焼き尽くそうと、コントラ・ソール《|火炎《フラム》》でたからとレティシエルに向けて火の玉を射出。壁を焼いて、2人揃って逃さないようにしていた。
「わっ! あぶない!」
「おっとっと。流石にこれの消火は僕の風でも難しそうだな」
「ど、ど、どうしよう……!」
 たからが作り出した草木の壁がみるみるうちに大きな炎に包まれていく。やがてその炎は周りの草木にも燃え移り、少しずつ2人の逃げ場をなくしていった。
 慌てるたからと、冷静に状況を判断するレティシエル。少しずつ足元の草にまで火が燃え移ると、レティシエルは小さく呟いてたからを片手で抱きかかえた。
「仕方ない、ちょっとだけ高く飛ぶよ!」
「わぁ」
 たからを抱いて、ぐっと足に力を込めて高くジャンプするレティシエル。風を操って木々の高さを余裕で超え、眼前が木々で広がる景色を見つめると……ふと、たからが神殿のある一画を指差して叫んだ。
「エーミールさん、みつけた!」
「おっ、さっきの男かな? 蛇退治が終わったらそっちに行ってみようか」
「うん!」
 一本の木に着地し、先程の毒蛇達がまだ炎の前にいることを確認したレティシエルは地上にたからを下ろし、一緒に毒蛇達を討伐していく。
 怨霊の腕で触れて腐らせ、焼いて肉を固められる前にざくざく刀で切り落とし、反撃してくる毒蛇はレティシエルの風で近づけないようにして、とにかく完膚なきまでに叩き潰しておいた。



●Case.4 そうなった理由

「エーミールさん、逃げないでー!」
 今現在、たからはおいかけっこをしている。
 リベリオン・エネミーとなってしまったエーミール・アーベントロートと。
「なんで続けて2人目に出くわすんだか……!」
 焦りに焦ったエーミールは木々を上手く避けながら、たからから逃げ続けている。まるで今は彼女に会いたくない、と言うように。
 けれどそんな願いも一瞬のうちに潰えるもので、気づいた時にはエーミールは追い込まれていた。神殿の閉ざされた入り口とたからに挟まれて。
「くっ……」
「つかまえた。エーミールさん、ちゃんとお話、しよう?」
「……私が世界の敵だと知っていても?」
「たから、サンタさんだから。エーミールさん、連れ戻すって、決めたんだよ」
 少し前。セクレト機関にクリスマスというイベントを教えたたからは、彼の義妹と義弟にプレゼントをあげた。
 その時、少し寂しそうにした2人の表情を今でも忘れることは出来ない。だからこそ必ずエーミールを連れ戻すと、エーミールを敵のままにはしないと決めた。
 ……けれど、エーミールは知っている。赤い本に自分の名が載ってしまっている以上、世界からの意志を伝えられたセクレト機関が止まることはないのだと。

「そもそもだけどさ」
 ここで、レティシエルから声が上がる。何故そんなにも、エーミールは世界を壊したがるのか、と。
 『兄を捨てたエルドレットへの怒り』『世界の護り手を自称するエルドレットへの報復』。それらがエーミールの認定理由だとしても、じゃあ、何故そんなにもエルドレットへ怒るのかと。
「エルドレットさん、とってもいい人。なのに、なんで?」
「…………」
 視線を逸らし、意地でも話そうとしないエーミール。何度もたからが「なんで?」と聞いても、視線を逸らしていく。
 何度も繰り返されてぷんすこぷんになったたから。そのうち両手の指をわやわやと動かして、じりじりとエーミールににじり寄っていく。
「……あの、たからさん。何を考えてらっしゃいます?」
 その雰囲気にただならぬ空気を感じたのか、エーミールが後退りをするが、残念ながら彼の背後にあるのは閉ざされた神殿の入口。逃げ場など、何処にもない。
 わやわや動かす手指、ジリジリ近づくたから。ここから導き出されるたからの次の行動は……。
「エーミールさん、すっごく、くすぐりやすそう!」
「私の服見て言ってますね!?」
 どうやったら喋ってくれるだろうかと考えた結果、子供のたからは『くすぐると喋ってくれるかも』と判断。逃げ場のないエーミールをここでくすぐり倒して、情報を引きずり出そうとしたようだ。
 流石にくすぐられるのは勘弁して欲しいと叫ぶエーミール。じゃあ、話してくれるかと言われたらそうでもなかったので、ここらで一発くすぐっておいた。
「あ"ー! わかりました、わかりました! 喋りますから、喋りますからァ!!」
「ほんと? ほんとに?」
 こちょこちょ、こちょこちょとくすぐって数分。観念したエーミールは息を切らし、満足そうなたからはレティシエルとハイタッチをして情報獲得を喜ぶ。

 ぽつぽつと昔話をし始めたエーミール。燦斗とエルドレットが実の親子であること、エーミールは燦斗に拾われた子供であること、そして……エルドレットは幼い燦斗を捨てたことがあることを明かす。
「……エルドレットさん、燦斗さん、捨てちゃったの……?」
「ええ、捨てました。それをあの男は、今一度親の顔をして兄さんの前に立っていますからね。ああ、腹立たしい」
 再び怒りに身を任せそうになったエーミール。だが、左手で自分の頭を抑え込んで無理矢理にその怒りを少しずつ収めていく。今はたからが、話をしてくれる相手が目の前にいるからと。

 そんなたからは、考え込んだ。
 これはきっと、ちゃんとお話していないのが原因かもしれない。
 エルドレットとエーミールの間には、何かすれ違いが起きているのかもしれない。
 色々と頭の中で考え込むうちに、自分が何をすればいいのかも閃いていく。


 けれど、時間というのはとても残酷だ。
「……ああ、ダメみたいですね」
「え」
 エーミールがそう呟いた途端。彼の左目が、じわり、反転していく。
 黒くなった目の中に、白の瞳孔。それは彼が『世界の敵』である証明。
「エーミールさん!」
 それをどうにか出来ないのかとたからが叫んでも、|今は《・・》どうすることも出来ないと答えたエーミール。


 ――証明されてしまったら最後、世界が認識を変えるまでは彼は敵であり続ける。




***************************************

 ・毒蛇の群れの討伐が終了しました。
 →以後、神殿に向かう時はレティシエル・エーミールとの会話のみとなります。
 →なおエーミールとは明確に戦う宣言がなければ戦えません。

 ・エーミールはエルドレットに怒りを感じているが故に、世界を破壊しようとしています。
 →この話を燦斗、エルドレットにしてみると……?

 ・エーミールに異変発生。
 →少しずつ、左目が反転しています。
 →この事象は『セクレト機関の人間は』誰も心当たりがありません。
 →なお『異世界の人間は』知っているかもしれません。

***************************************

大成功 🔵​🔵​🔵​


●幕間 ある人物の謎

 同時刻、セクレト機関の司令官室にて。
 エルドレット・アーベントロートはある人物と通信を繋いでいた。
「じゃあ、あの本はお前さんの親父……フォルカーが保管してたってことか」
『そういうことです。マーシアに取りに行かせようか悩んだけど、開けるのは俺かアルムかジャックじゃないと無理だから、アルムに向かわせたんすよ』
「そういうことはちゃんと俺に相談しろって言っただろう、トア」
 大きなため息をついて通信相手――ベルトア・ウル・アビスリンクを窘めるエルドレット。
 大穴が開いた直後、|何故か《・・・》箱庭世界との繋がりを得たため、管理者であるベルトアに連絡を入れて現在の状況を説明した。
 ……もちろん、ベルトアが世界の敵『リベリオン・エネミー』に認定されたこともすべて。
 けれどベルトア自身、そのことに関してはあまり興味はなさそうだった。まるで最初から自分自身が認定されることを知っていたかのような、そんな雰囲気を出していた。

『しかし、マルクスまで認定されてるんすね。普通の執事なのに』
 次にベルトアが目につけたのは、赤い本に記されたリベリオン・エネミー達の中に1人だけ異質に存在しているアビスリンク家の執事マルクス・ウル・トイフェルについてだ。
 司令官システムにいるナターシャやスヴェン、箱庭研究に従事していた燦斗やエーミールやフェルゼンやベルトアはまだ認定されるのも仕方がないだろう。
 では、マルクスは何故認定されているのか? 2人の議題はその部分へと移っていく。
「確かゼンとゼルとマリアちゃんの面倒も見てくれてたよな、マルクスって」
『ええ、はい。先生が来れなかった日にはマルクスが様子を見てくれましたよ。……おじさんとおばさんが、ああだったし』
「うーん、ごく普通の執事だよな……。飯も作ってくれてたって聞くし」
 考えれば考えるほど、マルクスがリベリオン・エネミーとして認定される理由が結びつかない。普通に執事としての仕事を、しかも元来仕えるアビスリンク家だけでなくヴェレット家にまで手を伸ばしているというのだから、世界の敵と認定される理由が何処にもない。

『……あ、でも』
 ふとベルトアはあることを思い出した。なんてことはない、マルクスがいつからアビスリンク家に仕えているかという情報。
 マルクス・ウル・トイフェル。彼はベルトアが生まれる前、もっと言えば彼らの父親が生まれる前から仕えているのだと。
「いつから仕えているかわかるか?」
『確か、一番最初に仕えたのはフェルディナンド・ウル・アビスリンクって言ってたような……』
 幼い頃にマルクスに聞いた話を思い出しながら、彼の過去を探っていくベルトア。しかし、フェルディナンドの名を聞いたエルドレットが通信の向こう側で驚く声を上げた。

 フェルディナンド・ウル・アビスリンク。200年前の天才と呼ばれており、その昔は|侵略者《インベーダー》を1人で一斉掃討した実力者であり、司令官システムの存在そのものを構築したとも言われている。
 だが、そんな男にマルクスが仕えていたということは、生身の存在のまま200年もの時を過ごしたことになる。|燦斗《エーリッヒ》のように、コントラ・ソールの力を用いることなく。
「《|無尽蔵の生命《アンフィニ》》はリヒの誕生で初めて観測されたコントラ・ソールだ。それよりも前の人物に仕えていた……ってことは」
『この世界の住人じゃなく、外の世界から来たことになる……?』
「だとしたら、エネミー認定を食らったのは……」
 事実を少しずつ組み立てて、マルクスが何故リベリオン・エネミーに認定されたのかを考えるエルドレット。
 もしベルトアが言うように200年前から生きていたのだとしたら、世界は最初から彼の存在を警告し続けていたことになるわけで……。

「どういうこった。マルクスは本当に世界に害をなす人物だってのか……?」
『うーん。あの雰囲気だと敵になる気はしないんだけどなぁ……』
 新たに浮かんだ真実に頭悩ませるトップの2人。

 そんな状態となっていることをつゆ知らず、マルクスはファムの村で巨大化野菜の処理に当たっている……。


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 ・マルクスについての情報が更新されました。
  トップページ→その他→NPC説明→『猟兵達の協力者と敵の存在』より確認が可能です。

 ・以後、ファムの村にいるマルクスに事情を聞くことが可能です。
 →『マルクスについて』『200年も生きていることについて』などなど。
 →他、質問が浮かぶならば色々聞くことも出来そうな気がします。

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バルタン・ノーヴェ
アドリブ連携歓迎

ふむふむ。大穴でありますか。大変デスネー。
それでは、ワタシは【ファムの村】の異常を解決しに行きマース!

これは活きのいい作物であります! 採り甲斐がありマスネー!
ここはワタシにおまかせくだサーイ!
蔦をファルシオンで斬り落とし、持ち前のパワーで引っこ抜き、美味しく料理していきマース!
野菜嫌いのマルクス殿も味わえるようベーコン巻きやハンバーグin野菜で口にできるようにしマショー!
皆さん、お召し上がりくだサーイ!

ドーモ、アマベル殿! バルタン・ノーヴェであります!
……そういえばこの人、児童誘拐の容疑がかかってマシタナ?
自画自賛ながら滅茶苦茶美味しい料理を捧げマスゆえ、情報提供プリーズ!



●Case.5 村の大きな異常

 東方諸島の中央に位置する村、ファムの村。
 農業と畜産を主に行うこの村にはいつもいろんな人々が食材を買い付けに来る。
 だが、しかし、空に大きな穴が空いたその瞬間には、畑に植わっていた野菜が巨大化するという事件が起きてしまっていた。
「おーう、大穴……巨大な野菜……大変デスネー」
 そんな惨状に駆けつけてくれたのはバルタン・ノーヴェ(雇われバトルサイボーグメイド・f30809)。野菜をどうにかして調理して欲しいというお願いに、彼女はいち早くこの現場へと訪れていた。
 隣では異世界からの旅行者アマベル・オル・トライドールもポカーンとしており、「これ、どうするの?」という表情を見せている。

 なお近くでは蔦から逃げるアビスリンク家執事長マルクス・ウル・トイフェルが走って逃げている様子が伺える。相応の野菜嫌いのようで、自分が食べられるジャガイモ以外は受け付けないと言った様相だ。
「いーーやあぁーーーー!!!」
「あの人、大変そうだねぇ……」
「うーむ。活きが良い作物でありますなー」
「そこのっ! おふたり! みて! ないで! たすけてくださーーーい!!」
 バルタンとアマベルがずっとマルクスを見ていることに気づいたのか、マルクスは逃げ惑いながらも助けてと連呼する。自分じゃどうしようも出来ないし、何より野菜の蔦が痛い。
 そこでバルタンはまず、ファルシオン風サムライソードでマルクスを追いかける野菜の蔦を叩き切り、引き抜きやすいように葉を軽く削いでからぐるぐると腕に巻き付ける。
「な、なにしてるの?」
「こういう野菜は、こうするのが一番デーーース!!」
 ぐるぐるに巻き付けた蔦を握りしめ、力の限りに蔦を引っ張るバルタン。それに合わせて地面に転がるカボチャやピーマンがゴロゴロとバルタンの方に引き寄せられて、降参だと言うように鎮座する。
 また蔦が絡んでいたブロッコリーやキャベツも一緒にゴロゴロと転がり落ちて、バルタンの周囲へ落ちてきた。材料にしてくださいと言わんばかりに。

「ふーむふむ。この材料ならば、スープも出来マスガー……」
 ファムの村の巨大野菜は本当に種類が多く、大きさも相まって調理するのも一苦労。村の人達もどう調理したものかと悩んでいる様子が見えた。
 そこでバルタンはユーベルコード『バルタン・クッキング』を使い、10秒で151品の料理を作り出す。
 定番のポトフに始まり、シチュー、ポタージュ、肉野菜炒め、ピーマン肉詰め焼き、野菜入りハンバーグ、ベーコン巻き、チャプチェ、サラダ、パンケーキ……数え切れないほどの品々がファムの村のテーブルに並べられた。
「さあさあ、マルクス殿!」
「えっ!? 僕は食べませんけど!?」
「野菜嫌いでも食べられるようにお作りしマシタ! さあさあ!」
「あっ、これ食わされる流れ!? うわああたすけてーーー!!」
 再び逃げようとするマルクス。しかしバルタンが彼の逃げ道を塞ぐように前へと居座り、絶対逃さないフィールドを作り上げる。
 そのうちバルタンも忙しくなり始めたので、もちゃもちゃと先に食べてたアマベルに助力を得ることに。
「アマベル殿、マルクス殿を抑えておいてくだサーイ!」
「はーい」
「うわあぁー!?」
 結局、アマベルに拘束されたマルクスはバルタンにそぉい! と口に突っ込まれ、ポトフと野菜入りハンバーグを食べることになった。
 なお野菜入りハンバーグを食べたマルクス曰く、野菜は食べれなくもない、と多少認識を変えてくれたようだ……。



●Case.6 誘拐犯の正体

「そういえば、アマベル殿」
「ん?」
 食事の最中にふと、バルタンはあることを思い出した。
 それは『アマベル・オル・トライドールがマリネロの街の子供達を誘拐した犯人候補』であるということ。
 まだ完全に犯人が決まったわけではない誘拐犯。もし、アマベルからその話が聞けるのならばお話を聞きたいと、そっとお好み焼きを差し出してみる。
「んーんん……ええと……ごめん、何のことかな?」
「え」
 アマベルは眉根を寄せて、どういう意味かわからないと告げる。言葉通りだとバルタンが告げても、やっぱり彼の表情はあまり変わらない。

 ……と、いうのも。アマベル曰く、自分とレティシエルは|初めて《・・・》この世界に来たと言う。
 彼らは自分達が『箱庭世界に閉じ込められた研究者』だとは覚えていない。元々の世界が箱庭世界の方だと伝えるほど。
 故に、アマベルは一度もこのエルグランデの地に足を踏み入れたことはない、と答えた。
「ふーむ……? しかし、犯人と合致する……」
「この世界の人達のことは僕にはわからないけど……その犯人って何か共通点でもあったのかな?」
「そうデスネー……」
 この情報を言ってもいいのかな、とぼうっと空を眺めていると、エルドレットからの言葉が伝えられる小さなウィンドウが現れた。
 どうやら情報提供の許可が出たようで、特徴に関する情報をアマベルにもわかりやすく並べてくれた。

 マリネロの街とヴィル・アルミュールの子供達の誘拐事件の犯人の特徴は4つ。
 『推定160cm前後の背の高さ』『長い髪』を持った『コントラ・ソール《|妨害《サボタージュ》》』を持った『時折咳き込む』者。
 アマベル・オル・トライドールの身長は162cm、腰までの長い髪を持っているためほぼ合致するが、最後の2つの特徴を見てアマベル自身が首を傾げていた。
「うーん? 僕、そんな力は持ってないんだけど……」
「おや? 燦斗殿曰く、所持していたらしいデスガ……」
「そんな力を持ってたら、ベルトアの作業妨害しまくって遊んでるよぉ」
「オーウ……」
 かなりのやんちゃな人間の様子のアマベル。その合間にもバルタンはもう一つの特徴『時折咳き込む』と言う部分もきっちりと確認を取っていた。

 結論から言えば、アマベルは優良健康児だ。これまでずっと彼のそばにいたが、咳き込む様子もなければ喉や肺の調子が悪いなどもない。
 では燦斗が用意した情報は何だったのだろうか? そればかりが頭に巡っていたところで、マルクスが声をかけてくれた。
「アマベル様は箱庭世界に移転した際、記憶喪失と同時に肉体が健康に戻ったそうですよ」
「フム? それはどなたからの情報デショウ?」
「ベルトア様からご連絡を頂いております。間違いはありません」
 口元を村人が《|創造主《クリエイター》》で用意してくれた紙ナプキンで拭いつつ、マルクスはベルトアからの情報をバルタンに送る。
 アマベルには記憶と肉体に変化が起き、ベルトア自身は記憶喪失にはなっていないが肉体時間が停止するなどの変化が起こっているのだそうだ。
「なるほど……ということは、レティシエル殿も?」
「おそらく。……ココだけの話、根暗な二人が反転したみたいなことを言ってました」
「ワーオ……」
 ベルトアが根暗だと言っていた過去のアマベルとレティシエルがどんな人物だったのか。今のアマベルを見るだけでも相当な根暗だったのかもしれないと思うと、反転してくれたのは……よかったのかもしれない。


「ああ、そうだ」
 食事を終えたマルクスは席を立つ前に、自分のメモ用紙に一筆。
 野菜嫌いを少しだけ克服できたお礼にと、バルタンにある情報を手渡した。

 ――【|模倣者《ミメーシス》】に気をつけて。

 ただ、その一言だけを。


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 ・ファムの村の野菜は徐々に処理されています。
 →以後は食事制作の必要はありません。
 →食べたい方はご自由にどうぞ。

 ・アマベルとレティシエルは『エルグランデに来るのは初めて』だそうです。
 →児童誘拐犯の候補からアマベルが外されます。

 ・異世界転移メンバーの3人は何かしらの変化があるようです。
 →アマベルは記憶がなく、性格が好転し、体調が健康そのものに。
 →レティシエルは記憶がなく、性格が好転の他、何かが変化しています。
 →ベルトアは記憶はそのままですが、肉体年齢が止まっているそうです。

 ・マルクスから『【|模倣者《ミメーシス》】に気をつけて』とメモを残されます。
 →|模倣者《ミメーシス》の情報を知っている人は限られているようです。

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大成功 🔵​🔵​🔵​

ナルニア・ネーネリア
>マリネロ平原

猫は猫です。猫にとってウサギは獲物です。
なので狩ります。ご飯です。
猫は猫なので喋りません。
猫は猫なのでそれが問題解決行動だと意識してません。
猫はただご飯がたくさんあるので、たくさん狩って、食べるだけです。
とくにネーネリアはグリムなのでものすごく食べます。

他、まるっとお任せします!

※NG:虐待行為(戦闘による負傷はOK)



●Case.7 マリネロコエリオ

 マリネロの港町を出て、すぐそばにある草原。通称マリネロ平原。
 そこでは50匹ぐらいのウサギ――マリネロコエリオと呼ばれる品種に追いかけられるルナールの姿があった。
「きゅい!」
「きゅ!!」
「あっ、キミ達そんな声で鳴くんだね!?」
 コントラ・ソール《|突風《ラファール》》による一撃を喰らいつつも、なんとか50匹の大群から逃げ続けているルナール。まさかのマリネロコエリオの鳴き声を聞けたので、実はちょっと学会発表モノだなとか思っていたりする。
 だが流石に50匹全員の《|突風《ラファール》》を食らうのは元研究者だった身ではちょっとしんどいところ。早く誰か来てくれないと、彼の服が弾け飛ぶ。

「うわー、とんでもないことになってる」
「にゃーん」
「ぐるにゃー」
 そんな中、レティシエルに抱かれて平原にやってきたナルニア・ネーネリア(GoGo★キャッツ・f41802)。猫は猫なので、なんでここに連れてこられたのかはわからない。
 しかしレティシエルはエルドレットから預かった猫達と一緒にマリネロ平原のトラブルを解決してこい! と言われてやってきたようで、50匹のマリネロコエリオが巻き起こす突風を眺めていた。
 マリネロの港町の人々もルナールを助けようとしたが、あいにくと彼らは戦闘の経験はない。生活用でしかコントラ・ソールを使うことがなかったため、手も足も出せずにいた。
「どーしよ。猫ちゃん達をこんなのに巻き込ませたら危ないなあ」
 流石に突風吹き荒れる中で猫達を離したら、猫達が危ないだろう。……そう考えていた矢先のこと。

「みゃっ!」
「あいたァーー!?」
 なんとネーネリアがレティシエルの手に爪を立てて脱走!
 あまりの痛みに2匹の猫を手放してしまったレティシエル。自由の身となったナルニアとネーネリア。どちらが素早く動き出せるのかは明白である!!
「きゅぃ!?」
「きゅ!?」
 マリネロコエリオ達はナルニアとネーネリアという狩人に狙われていることに気づき、猛ダッシュで逃げ始めた。一部はナルニアとネーネリアの爪に引っかかれて大ダメージを負い、そのまま餌になってしまったが。
 猫とウサギの速さは人のそれでは追いつけないほど素早い。時には俊敏なターンを、時には俊敏なカーブを描いて走る動物達はだだっ広い草原の中で狩って狩られてを繰り返す。
「なんだあれ……」
 ルナールの方も何が起こったのかわからずに混乱しているが、ひとまず自分が突風地獄から抜け出せたことには安堵していた。
 《|観察眼《ディサーニング》》による観察を続けてみれば、マリネロコエリオ達はナルニアとネーネリアのコンビに恐れを抱いているようで、このまま追いかけ続けてもらえば事態は収束に向かうかもしれない、とのこと。
「となれば……」
 辺りを見渡し、自分とレティシエル、そしてナルニアとネーネリアとマリネロコエリオしかいないことを確認したルナール。雑草や土嚢などで壁を創れば、より効率よくマリネロコエリオを仕留められると作戦を立てた。
 しかし問題は誰が壁を作るか。ルナールは《|創造主《クリエイター》》は所持していないし、レティシエルもその手の力は持っていない。街の人の力を借りるには少々危険なのでどうしたものかと悩んでいた。

 そんな現場に唐突に現れた、1匹の赤く輝く猫。
 光り輝く猫はナルニアとネーネリアが追いかけるマリネロコエリオの前に立つと、壁のような役割を果たして急カーブを促させる。
「えっ、あの猫何!? 光ってるんだけど!?」
「あれは《|精霊猫《ガイストカッツェ》》か!? ってことは……」
 ルナールが周囲を見渡せば、港町からやってきたのはヴィオット・ウィンストン・シュトルツァー。赤く輝く猫は彼の持つコントラ・ソール《|精霊猫《ガイストカッツェ》》で呼び出されたもので、ナルニアとネーネリアの動きに合わせた壁を作って急旋回させるならこれがいいだろう、と急にひらめいたそうだ。
 こうすることで壁を作ることなく、自由な範囲でナルニアとネーネリアの2匹も自由気ままに狩りを楽しめるよな、と笑っていたヴィオットだが……1つ、ルナールには疑問が。
「……キミ仕事中だよな?」
 そう、ヴィオットは本来ならこの街にはいないはず。もっというなら|調査人《エージェント》指令降りていないから、セクレト機関の外に出るのは許されないはず。
 だけど彼は今ここにいて、コントラ・ソールを使って解決している。規定違反では!? と焦ったルナールだったが、ヴィオットはドヤ顔を見せつけてこう言った。

 「猫ちゃんおるところにシュトルツァー家ありやぞ!!」と。



●Case.8 異常発生原因

「ふう~、満足」
 自分が呼んだ精霊猫をなでつつ、ナルニアとネーネリアにもご飯をあげてご満悦そうなヴィオット。倒してもらったマリネロコエリオの皮を剥いで、丁寧に処理をして餌としてお渡しする。
 ちゃもちゃもちゃもちゃもとお肉を食べて満足になったナルニアとネーネリアは、そのままごろんと横になって寝始める。猫は猫なので、自由気ままに生きるのだ。
 ちなみにそんな猫の気質と同じなヴィオットは、ヴォルフからの通信でしこたま怒られた。

「……しかし、妙だな」
 そんな猫達の自由気ままな生活を気にすることなく、ルナールは今回の騒動に関しての疑問点を述べた。
 マリネロコエリオという種はこれまでコントラ・ソールの所持が確認されておらず、ただのウサギ同然の存在だったが……今回初めて、風を操るコントラ・ソール《|突風《ラファール》》の所持が確認された。
「ええと、コントラ・ソールっていうのはこの世界の力だっけ? 発現条件とかわかってるのかい?」
「発現条件に関しては不明だ。いつ、どんなときに、どのような力を得るのかさえ不明とも言われている」
「ふぅん……じゃあ、発現タイミングに関しては僕の集めた情報でなんとかなるかも」
「ほう?」
 レティシエルは神殿に向かってみて1つわかったことがある、と前口上を述べたうえで空を見上げる。
 空は未だに、真っ黒な大穴が開いている。あれが何かを吸い込むわけでもない、行き先も何も無い『ゴミ箱』と評したのはレティシエルだが、ルナールの言葉を聞いて1つだけ仕組みが理解できたそうだ。
「あの大穴は傷だよ。世界そのものについた、ね」
「世界そのものについた傷、だと? ……すまん、話が飛躍しすぎている」
「OK、じゃあまずは色々と相互確認を取ろうか」
 猫ちゃん達もしばらくお勉強に付き合ってね、とゆるゆるとネーネリアを撫でていくレティシエル。お勉強会が始まるとなっては邪魔をするしかあるまいと、すっと立ち上がったナルニアはルナールの肩に飛び乗って邪魔をし始めた。
 だがさすがは子供達を相手にするルナール教授。猫の邪魔も慣れているのだろうか、肩に乗っても気にすることなく話を続けていた。

「まず、最初に言っておくと……さっきのウサギ達、あの穴と同じ感じを僕は受け取ったんだ」
 レティシエル曰く、神殿にいた蛇たちとマリネロ平原のウサギ達、どちらも同じ力を持っていると感じ取ったという。
 それはコントラ・ソールという力があるからじゃないか? と考えたルナールだったが……いや、ちょっと待てと。『能力が別なら同じ力はありえない』と気づいた。
「そちらは《|火炎《フラム》》、こちらは《|突風《ラファール》》。モノが違えば中身が違うじゃないか」
「そう。でも僕はどちらも『同じ』と感じ取った。……で、僕はあの穴を『傷』と表現したのは、傷から落ちた欠片が蛇やウサギに宿ることでコントラ・ソールと呼ばれる物が作られるんじゃないかなと」
「…………」
 レティシエルが上げた新説に対して考え込む様子のルナール。本当にそんなことがあり得るのか? なんて考えていたが、これまでコントラ・ソールの研究をしてきた彼にとっては新たな説を受けて神妙な面持ちになる。
 そんな彼のアホ毛がびよんびよん跳ねているのがちょっと楽しくなって、ナルニアがてしてし叩いていた。


 ――コントラ・ソールの生まれ方。
 ――それはエルグランデの人間は誰も知らない。

 ――ただ、脳を捧げた者達以外は。



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 ・マリネロコエリオ50体討伐完了!
 →剥がした皮などは後々セクレト機関用の装備に使われます。
 →一部は殺さずにルナールが引き取ったようです。

 ・コントラ・ソールの生まれ方について、新たな説が出ました。
 →『世界に傷ができた時、剥がれた欠片が人やモノに宿って生まれる』とレティシエルが説を挙げました。
 →この件についての真相は後々に解明されます。

 ・現時点をもってシナリオが終了となるので、アルミュール海域のトラブルは自動解決となりました。
 →この現場で獲得予定だった情報は燦斗のペットのサメが持っています。
 →サメの言葉が理解できない限りは一生獲得はできません。

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  『旅行者と大穴の謎』 complete!

     Next Stage →

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●Case.EX アルミュール海域の竜巻

「なあ、オスカーくん」
「なんですか、おじさん」
 ヴィル・アルミュールより南部の海域。《|突風《ラファール》》を駆使した飛行術でスヴェンとオスカーが対処にあたっていた。
 彼らは的確に竜巻の内部に攻撃を加えていくのだが、チラホラと大暴風の隙間から見える何かが気になって仕方がないという。
 その内部に見えるものとは、トライアングルをちりんちりん鳴らして踊るサメ。
 あまりにも不可思議すぎる光景にスヴェンは思わずオスカーに問いかける。
「……なんでサメがダンスしてるんだ?」
「俺が聞きたいんやけど! 俺が聞きたいんやけど!!」
 なんでトライアングル持ってるのかとか、なんでサメが踊ってるのかとか、色々とツッコミを入れたいところはあったそうだが、まずはこの竜巻を止めなければツッコミ入れる前に自分達が危険だ。
 そのため2人は全力で、特にスヴェンは司令官システムに収められたコントラ・ソールをすべて使ってでも竜巻を食い止めた。
 援軍が来れない以上、このツッコミを入れなきゃいけない存在には2人で立ち向かわなければならないと。

「しゃーく……」
 その後、なんとか竜巻の根源となっていたサメを沈静化。途中で参戦した燦斗のペット・サメのエーデルトラウトとの共闘によりなんとか竜巻を消すことに成功していた。
「しゃーく?」
「しゃ!」
「しゃーく……」
「しゃ……」
「なんかサメ同士で会話してへん??」
 サメ同士、何か心が通じるものがあるのだろう。燦斗もびっくりの光景だそうで。
 だがかのサメは何かあったらしく、それを必死に伝えようとしている。時には恐怖に怯え、時には怒りに震え、様々な感情が入り混じった情報を渡してくれた……のだが……。
「スヴェンさん、わかります?」
「オレにはわからん。オスカーくんは?」
「アンタらがわからんかったら俺もわからんよ」
 当然ながらサメの言葉なんてわからない人間3人衆、何があったのかわからず途方に暮れる。
 サメの言葉がわかる者がいない限りは一生ここで起こったことはわかることはないだろう……。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年05月01日


挿絵イラスト