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勇者の船の伝説~ゴンドラに揺られて

#アックス&ウィザーズ #群竜大陸 #勇者 #勇者の伝説探索

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●勇者の船の伝説
 その船は、数多の英傑猛者を乗せて、偉大なる航海に旅立った。
 その船は、どんな荒波逆風も物ともせず、数多の冒険を乗り越える。
 その船は、人々の希望と声援を帆に受けて、竜の大陸に辿り着く。
 その船が、偉大なる航海から帰還した時、世界には青空が戻っていた。


「こんな勇者の伝説をご存知ですか? リムは猟兵に調査を要請します」
 集められた猟兵達の前で四行の詩を口ずさむと、グリモア猟兵のリミティア・スカイクラッド(人間の精霊術士・f08099)は淡々とした口調で語りだした。
「これはアックス&ウィザーズに伝わる、かつて群竜大陸に渡ったという『勇者の一行』にまつわる伝説の一つです。かの勇者達は群竜大陸にて帝竜ヴァルギリオスとの決戦に挑み、数多の犠牲の末これを滅ぼしたと言います」
 そして現在のアックス&ウィザーズでは、帝竜ヴァルギリオスがこの群竜大陸と共に蘇ったという噂が広まっている。もし帝竜がオブリビオン・フォーミュラだとするならば、群竜大陸の発見は必須となる。
「そこで皆様には、かつて帝竜と戦った『勇者の一行』の痕跡を探してもらいたいのです。世界中に残された『勇者の伝説』を解き明かし、そこに残された勇者達の意志を集めることで、グリモアの予知精度を高めることができます」
 たとえ伝説がデマだったとしても、その一つ一つの積み重ねは必ず群竜大陸の発見、ひいては帝竜ヴァルギリオス討伐へと繋がることだろう。

「帝竜ヴァルギリオスとの決戦で命を落とし、勇者として称えられた冒険者の数は数千人を超えると言います。当然、勇者の伝説の数も膨大になるのですが、リムが聞いたのはその中の一つ。『勇者の一行』を群竜大陸まで送り届けたという『船』の伝説です」
 群竜大陸がどこにあるにせよ、そこへ辿り着くには移動手段が必要なはず。そのために勇者達が乗り込んだのがこの『船』だという。
「その船の名は残念ながら伝わっていません。『魔竜に抗う勇者号』や『伝説に挑む冒険者の船』など様々な呼び名がありますが、全て後世に付けられた呼称です」
 伝説においてその船は、群竜大陸まで勇者の一行を送り届け、帝竜との決戦の後には、数少ない生き残りの冒険者を連れて帰還したという。
「それ以上の伝説の詳細はほとんど残されていません。『船』がどのような形状をしていたのか、そもそも一隻の船のことを指すのか、複数の船団だったのかも分かっていません」
 だが、その船が群竜大陸から『帰還した』と言うなら、その痕跡がどこかに残されている可能性はある。
「リムがこの伝説を耳にしたのは、とある港町です。そこで詳しい調査を行えば、より確かな伝説の痕跡を見つけられるかもしれません」
 その港町には町中に水路が張り巡らされており、主な交通手段としてゴンドラが使われている。
 風光明媚な町並みでも有名で、各地から観光に訪れる旅人も多いという。
「ゴンドラ操縦を体験できるコースや、ゴンドラに揺られながら地元の魚料理を食べられるサービス等もあるそうです。調査のついでに、町の観光や景色を楽しむのも良いかもしれません」
 猟兵にも羽休めは必要ですから、と告げて、リミティアは手のひらにグリモアを浮かべる。
「転送準備完了です。リムは吉報を祈っています」



 こんにちは、戌です。
 今回はアックス&ウィザーズにて、伝説の勇者の一行の痕跡を追う依頼となります。
 勇者の一行を乗せたという船とは一体どのような物だったのか。その真実の一端が明らかになる……かもしれません。

 一章ではゴンドラで有名な風光明媚な港町で、日常を過ごしながら伝説にまつわる調査を行います。
 観光を楽しみつつ調査を進めれば、伝説にまつわる新たな情報をゲットできます。
 第二章、第三章では、その情報に基づいて更なる調査を進めたり、障害を排除することになります。

 それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『ゴンドラに揺られて』

POW   :    ゴンドラを漕いでみる。

SPD   :    ゴンドラに乗ってみる。

WIZ   :    街の観光や景色を楽しむ。

👑5
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

アマータ・プリムス
十六夜様(f10620)、アリス(f02153)と連携「ゴンドラですか。ちょっと乗ってみましょうアリス」
UCを発動してアリウスに【情報収集】を任せようとするが出てきたのはネロ
景色につられて出てきたようです
しかもそのままアルジェントムから飛び出してゴンドラを飛び越えていく
「はぁ、十六夜様お願いします」
あの子のことはもう知りません
十六夜様に回収を任せて当機はアリスとゴンドラへ
アリスを膝の上に載せながら二人で歌でも歌いながらゆったり楽しみます
時折窓の外に南瓜頭の案山子とゴンドラを足場に飛びまわる人影が見えますが無視
今はアリスとの時間を楽しみます
「……帰ったらあの子はオーバーホールですね」

アドリブ歓迎


月代・十六夜
「テンション上がっちゃったかー。まぁ自分も飛び回るつもりではあったし、ついでに行ってくるわ」
「ちょいとごめんよ!」(ゴンドラを足場にしながら)

アマータ嬢(f03768)、アリス嬢(f02153)と連携。
観光とのんびりするのは二人に任せて【韋駄天足】で街中を飛び回って何か隠されたものでもないか探そうかねー。
ん?アマータ嬢どうかした?何、ネロ君が飛び出した?
うーん、のどかなゴンドラの上をあの風貌で昼間っから飛び回るとか、ハロウィンでもあるまいし怪奇以外の何物でもねぇしなぁ。
オッケー回収行ってくるわ。二人はごゆっくり。
んじゃまぁゴンドラとか其の辺の壁とか足場にして、ネロ君を追うとしますかね。


アリス・レヴェリー
十六夜さん(f10620)、アマータさん(f03768)と連携
「これがゴンドラ……とっても楽しみだわ!そうね、乗ってみましょう!」
折角観光名所の都に来たんだし、アマータさんと一緒にゴンドラに乗り込んで、アマータさんのお膝の上で歌を歌ったり景色をみたり、飛び回る人影に驚いたりしながら観光を楽しむわ。
丁度水路だし、【友なる白鯨、悠然の調べ】で大型犬くらいのサイズになった白鯨のムートを召喚して水路で乗り込んだゴンドラと並ぶ様に自由に泳がせてあげるわ。
「ほら、ムート。こういう賑やかなところ好きでしょう?……楽しい?ふふっ、良かった!」
※アドリブ歓迎



 網の目のように広がる水路と、趣を感じさせる優美な建物が一体となった美しい港町。
 この町に伝わる『勇者の一行の船』の伝説を求めて、猟兵達はやって来た。

 町への入場を果たして最初に目につくのはやはり、この町の主要な交通手段であるゴンドラだろう。
 細長い船体を持つ手漕ぎボートが幾つも、人や荷物を乗せて水路を行き交っている。
「ゴンドラですか。ちょっと乗ってみましょうアリス」
 それに目を留めたアマータ・プリムス(人形遣いの人形・f03768)は、一緒にやってきたアリス・レヴェリー(真鍮の詩・f02153)に声をかける。
 アリスも、初めて見るゴンドラに興味津々といった様子で目を輝かせている。
「これがゴンドラ……とっても楽しみだわ! そうね、乗ってみましょう!」
「ええ、ですがその前に……来なさい、登壇のお時間です」
 観光と平行して情報収集も進めようと、アマータは銀のトランク「アルジェントム・エクス・アールカ」から人形の「アリウス・プーパ」を呼び出そうとする。
 しかし、トランクの中から出てきたのはアリウスではなく、彼女の「弟」ネロ・フラーテルであった。
「……何故あなたが」
 思わず半目になるアマータをよそに、意思持つ人形であるネロはぴょーん、と町へ飛び出していく。
 町の景色につられて出てきたか、あるいはお前らだけ観光なんてズルい、ということかもしれない。
「うおっ、なんだぁ?」
 南瓜頭の案山子の人形がゴンドラを飛び越え、町中を飛び回るのを目にした住人は吃驚仰天である。

「ふふっ、ネロさんも楽しそうね!」
 どこかへ飛んでいくネロを微笑みながら見送るアリスと対照的に、アマータはため息をひとつ。
「はぁ、十六夜様お願いします」
「テンション上がっちゃったかー。まぁ自分も飛び回るつもりではあったし、ついでに行ってくるわ」
 そう答えたのは月代・十六夜(韋駄天足・f10620)。のんびりゴンドラに揺られるよりも自分の足で駆けるほうが性に合う彼は、アマータの頼みを快く引き受ける。
「のどかなゴンドラの上をあの風貌で昼間っから飛び回るとか、ハロウィンでもあるまいし怪奇以外の何物でもねぇしなぁ」
 二人はごゆっくり、とアマータとアリスに言い残すや否や、十六夜は得意の韋駄天足でその場から消える。
「ちょいとごめんよ!」
「おわっ?!」
 水路を行き交うゴンドラを足場にしてさらに跳躍。橋の欄干、壁の凹凸、果ては洗濯紐まで足場にして、町を飛び回る十六夜。
 水場が多く徒歩での移動には向かないこの町も、彼にとってはちょっとしたアスレチック程度のものだ。
 糸の切れた風船のように飛んでいくネロを追いながら、十六夜は町に隠された伝説にまつわる「何か」はないかと探し回る。

「よかったの? 戻ってくるのを待たなくても」
「あの子のことはもう知りません」
 ネロと十六夜が追いかけっこを繰り広げる一方で、アリスとアマータは船上の人となっていた。
 町の漕ぎ手が操るゴンドラの中央にアマータが座り、アリスはその膝の上に。その乗り心地は思った以上に快適で、ゆりかごのような穏やかな揺れが心地良い。
 ゆったりと流れていく町の風景を眺めながら、二人は一緒に歌を歌う。水音のメロディに乗るシンフォニア達の歌声に、すれ違うゴンドラや岸辺にいる人々からも拍手や口笛が上がった。
「ほら、ムート。こういう賑やかなところ好きでしょう?」
 アリスが呼びかけるのは、彼女達のゴンドラと並んで泳ぐ純白の友達。本来ならば目を見張るサイズの大鯨は、今は大型犬くらいのサイズになって、自由に水路を泳ぎまわっている。
 問いに答えるようにムートが潮を吹くと、鮮やかな虹がゴンドラの上に架かった。
「……楽しい? ふふっ、良かった!」
 動物たちと心通わす少女は嬉しそうに微笑み、そんな少女をアマータは慈しみの眼差しで見つめる。
 彼女たちの楽しい時間は穏やかに過ぎていく――。

 ひゅーん。

 ――不意に二人のゴンドラの上を、二つの影が勢い良く通り過ぎていった。
「あっ悪ぃ、お邪魔しました」
 すれ違う刹那、南瓜頭の影を追いかけるもう一つの影がそんなことを言うのが聞こえた、ような。
「ねえアマータさん、今のって……!」
「気のせいです、アリス。……帰ったらあの子はオーバーホールですね」
 驚きで目を丸くアリスに、何も見なかったことにしてぼそっと呟くアマータ。
 ……そんな一幕を挟みつつも、二人の港町観光は平和であった。

「やっと捕まえたぜネロ君や――うん、どうしたよ?」
 一方の十六夜は、この港町で最も高い時計塔のてっぺんで、ようやくネロを捕獲していた。
 そのネロが何かを指し示すようにじたばたと暴れるのを見て、彼はそちらを振り返る。
 その方角にあったのは、海だ。この時計塔からならば、港町と接する大海原のかなり先まで見渡せる。
「あれは……島か?」
 よく見える視力で十六夜が捉えたのは、その海原にぽつんと浮かぶ小さな島だった。
 野生の勘とでも言うのだろうか、ただの小島にしか見えないそれが、十六夜には妙に気になった。
「一応、ネロ君も情報収集はしてたのかね」
 半分はやはり遊びたかっただけかもしれないが。ともかく十六夜はその島の存在を心に留めておくことにしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

クリスティアーネ・アステローペ
【Wiz】
伝説の調査、ねえ
結構面白そうね
散策がてら調べてみましょう

……川の流れる音を聞いていると頭痛がするから少し離れて、ですけど


・行動
地図を見ながらゴンドラで行けないような場所を散策するわ
荷物にならない程度に買い物をしながら街の人に船の伝説や旧い場所を訊ねて
もし史跡なりがあればそこにも行ってみましょう

「勇者の一行やその船のお話について調べているのだけれども何かご存じないかしら?
「昔からある建物や場所でもいいのだけれど



あまり芳しくなければいっそ路地に入ってガラの悪いのを相手に、でもいいかしら
質より量で何か知っているのが居ればいいのだけれども
情報の対価?…お金でも、痛苦でもお好きな方を、ね



「伝説の調査、ねえ。結構面白そうね、散策がてら調べてみましょう」
 観光客向けに売られていた地図を手に、クリスティアーネ・アステローペ(朧月の魔・f04288)は港町を己の足で歩いていた。
 そちらの方が便利だろうに、彼女があえてゴンドラを利用しないのには理由があった。
「……この距離なら頭痛もしないわね」
 ヴァンパイアの血を色濃く継ぐダンピールの彼女は、吸血鬼の伝承さながらに流水を苦手としていた。
 それこそ、川の流れる音を聞いているだけで頭痛がするレベルで。

 とはいえ、ゴンドラでは行けない場所を徒歩で調べるのも調査には重要である。
 クリスティアーネはまず、近くにあった適当な店に目を留め、買い物をしながら店主に質問する。
「勇者の一行やその船のお話について調べているのだけれども、何かご存じないかしら?」
「勇者の話? うーん、知らないね」
 どうやら『船』の伝説は、この港町でもそれほど有名というわけではないらしい。
 購入した品物を仕舞うと、クリスティアーネは情報を求めてさらに町の奥へと向かう。

 水辺から離れるように歩いていると、徐々に街路は迷路のように狭く入り組んでいく。
 ふとクリスティアーネは、自分に向けられている幾つかの視線に気が付いた。
「丁度いいわ。あなたたちにも話を聞きたいのだけれども」
 姿を見せたガラの悪い男たちは、にやついた笑みを浮かべてクリスティアーネに刃物を向ける。
「……そう。情報の対価には痛苦がお好みのようね」
 ――数分後。クリスティアーネの前にはボロボロになった男達がひれ伏していた。

「ああ、その話ならウチの爺さんにガキの頃よく聞かされたぜ……」
 もう随分昔だからうろ覚えだが、と前置きしつつ、一人の男がクリスティアーネの問いに答える。
「この町の伝説だと、帝竜との戦いを生き延びた冒険者達が、船に乗って流れ着いたのがここだったらしい」
 当時はまだこの辺りに今の港町はなく、海岸の付近に小さな漁村があるだけだったらしい。
 群竜大陸からボロボロになって帰還した冒険者達を、漁村の人々は手厚く介抱し、快くもてなしたという。

「その当時から残ってる物は何かあるの? 建物や場所でもいいのだけれど」
「いやあ、そういうのは知らねえなぁ」
 この伝説は町の住人の間で口づてに伝えられてきたもので、その根拠となるような物証はないらしい。
 それを語った当の男も、それが事実だとはあまり考えていないようだ。
「昔の人間が町の歴史にハクを付けるためにでっちあげたんじゃないか? お、俺が知ってるのはこれで全部だぜ!」
「そう。でも面白い話だったわ、ありがとう」
 行っていいわよ、とクリスティアーネが告げると、男達は蜘蛛の子を散らしたように逃げていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ロベリア・エカルラート
●心情
勇者の伝説か……良いね、そういうロマンのある話はキライじゃないよ
ま、今回は実益もあるし、色々調べてみようかな

●行動
WIZ
街の観光をしながら情報収集

人通りの多い所で歌を披露して、人を集めるよ
折角だから吟遊詩人でも気取ってみよう
歌の合間にこの街に伝わる勇者の痕跡に関して、面白い話を知らないか集まった人に聞いてみるよ

歌うのは猟兵の活躍を伝える歌。いい機会だし宣伝もしないとね

「さ、折角だから聞いていってよ」
「ん、素敵な街だね。やっぱり知らない世界を旅するのは良いね」

「そうだ!この街で新しい曲を作りたいんだけど、なにか面白い話を知ってる人は居ない?」


●仕様技能
歌唱、存在感、誘惑

※アドリブ、協力可


キケ・トレグローサ
「伝説の勇者、かぁ…!」
 旅芸人であるキケが伝説の類に興味を持たない訳がない
「そういった伝説は、詩人が伝承して、根付くもの、だよね」
 酒場や広場などで伝承に詳しい詩人を探し、移動中ゴンドラに揺られながら愛用のリュートを奏でて名を売ろう。噂になれば情報も集めやすいし
『彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ。刃が煌めき、盾は破れぬ。英雄の他に値する名、他になし』
 UCの持ち主エドの人格でないため発動はせず召喚も起きないが、エドがよく歌う『英雄達の詩』を奏でて歌う
「お気持ち分のお代と聴いてくださった皆様の幸せが私の糧となります。ところで皆さんは勇者を運んだ『船』の話など耳にしたことはありませんか?」



「伝説の勇者、かぁ……! そういった伝説は、詩人が伝承して、根付くもの、だよね」
「良いね、そういうロマンのある話はキライじゃないよ。ま、今回は実益もあるし、色々調べてみようかな」
 旅芸人と吟遊詩人に扮して、町の広場にやって来たのはキケ・トレグローサ(たった一人の流浪の楽団・f00665)とロベリア・エカルラート(花言葉は悪意・f00692)。
 人の集まるこの場所で、二人は得意の演奏や歌を通じて情報収集を行っていた。

「さ、折角だから聞いていってよ」
 まずはロベリアが披露するのは猟兵の活躍を伝える英雄譚。
 飾りボタン型の音響機器「スヴニール・エテルネル」から伴奏を流し、凶悪なモンスター退治や人助けの話を、時に勇ましく時に情感たっぷりに歌い上げる。
(いい機会だし宣伝もしないとね)
 こうして猟兵の良い噂が広まることは、この世界での今後の活動においてプラスになるだろう。
 冒険やロマンを愛する港町の人々からの反応も上々のようだ。

 歌唱を終えたロベリアが拍手喝采を受けた次は、キケが愛用のリュートを奏でながら歌い始める。
「彼の者らに名はなく、彼の者らに名誉あれ。刃が煌めき、盾は破れぬ。英雄の他に値する名、他になし」
 それは肉体に同居する彼の兄、エドの十八番である『英雄達の詩』。かき鳴らされるリュートの音色は、戦場に立つ戦士達の鬨の声や剣戟の響きを表すように。
 剣を振るう騎士の勇ましさを、盾を掲げる歩兵の頼もしさを、キケは見事に歌い上げる。
 精一杯に歌い切ったキケが一礼すれば、彼にも大きな拍手が浴びせられた。

「いやぁあんたたち、良い歌だったよ!」
 素晴らしい歌を披露したロベリアとキケに、港町の人々は惜しみない賛辞を送る。
「おねえちゃん、これあげる!」
 歌を聴いていた幼い少女が、おひねりの代わりにビスケットをロベリアに差し出す。
 観光地という性質もあってか、この町の住人は旅人に友好的で、明るく開放的な人々が多いようだ。
「ん、素敵な街だね。やっぱり知らない世界を旅するのは良いね」
 ビスケットを受け取ったロベリアは、微笑みながら美しい町並みと笑顔の人々を見回す。
「そうだ! この街で新しい曲を作りたいんだけど、なにか面白い話を知ってる人は居ない?」
 そう言って彼女は集まった人々から情報を集めていく。

「お気持ち分のお代と聴いてくださった皆様の幸せが私の糧となります。ところで皆さんは勇者を運んだ『船』の話など耳にしたことはありませんか?」
 投げられたおひねりを受け取りつつ、キケも人々から話を尋ねる。
「伝説の『勇者号』の事かね。それならこんな話を聞いたことがあるのう」
 そう言って語りだしたのは、自身もかつて詩人をやっていたという、老齢の男性だった。
「昔々、勇者号に乗って群竜大陸から帰還した冒険者達が、この辺りに流れ着いたそうな」
 その際に助けてくれた人々の恩に報いるべく、幾人かの冒険者はこの地に留まったという。
 周辺に蔓延るモンスターを退治し、建築や造船の知識を伝え、運河を引いて集落を発展させていった。
「そうして出来上がったのがこの町だと言われておる。古い言い伝えじゃから、本当の事は分からんがのう」
 伝説も風化し、この話を知っている町の人間もほとんどが年寄りだそうだ。

「興味深い話を聞けた、ね。他の場所でも尋ねてみよう、かな」
「そうだね。人が多そうだし、酒場なんかにも行ってみようか」
 人々にお礼を言って、キケとロベリアはゴンドラに乗り込み広場を後にする。
 移動中、ゴンドラに揺られながらキケはリュートを奏で、それに合わせてロベリアが歌う。
 二人の名前と音楽は、水の流れに乗って港町中に広まっていくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

ファルネーゼ・アトラス
伝説の勇者…!
わあ…とても素敵なお話です
ふふ、伝説いうだけでわくわくしちゃいますね
街の様子を眺めては瞳をきらきら煌かせて
ゴンドラに、魚料理に、気になるものは沢山
勿論調査の事だって忘れていませんよ?
でも…羽休めも大事と言われましたから
ならば、そうしなければ損です
さあエチカ、一緒に行きましょう!

相棒と美しい景観を楽しみつつ街を探索
工芸品等の中にも伝説の痕跡が残っているかも知れません
そういえば…ゴンドラにも何か変わった特徴等あるのでしょうか

様々な場所を歩いていると――不意の腹の虫
まあ、エチカ…小腹が空いちゃいました?
それでは一緒にご飯を食べに行きましょうか
ふふ、どの様な魚料理があるか
今から楽しみです



「伝説の勇者……! わあ……とても素敵なお話です。ふふ、伝説というだけでわくわくしちゃいますね」
 ロマンに胸を膨らませながら港町を訪れたのはファルネーゼ・アトラス(星謡・f06256)。
 美しさと同時に人々の活気に満ちた街の様子を眺めては瞳をきらきら煌かせて、まずはどこから見て回ろうかと心躍らせる。
 その傍らで、彼女の大切な友達である星の聖獣エチカがきゅいっと鳴く。それを聞いたファルネーゼは笑顔で答え。
「勿論調査の事だって忘れていませんよ? でも……羽休めも大事と言われましたから」
 ならばそうしなければ損だろうと、少女は賑やかな雑踏に向かって駆け出した。
「さあエチカ、一緒に行きましょう!」

 美しい景観を楽しみつつ、ファルネーゼとエチカは街を探索する。
 ふと目に留まったのはガラス工芸の店。細かな装飾が施された美しいガラス細工が、日の光を浴びてキラキラと輝く。
「まあ、素敵」
「お嬢ちゃん、気に入ったかい? こいつはこの町の伝統工芸でね」
 店主の話によると、この町の基礎を作ったという異郷の冒険者の一人が、この技術を伝えたという。
「それはひょっとして、勇者の伝説と関係があるのでしょうか……」
 ガラスの品々を眺めながらファルネーゼが考え込んでいると、不意にくぅ、と腹の虫が聞こえる。
「まあ、エチカ……小腹が空いちゃいました?」
 気付けば時刻は昼下がり。思えば随分と歩き回っていたし、昼食を取るのにもよい時間だ。
「それでは一緒にご飯を食べに行きましょうか」
「おや、その子腹減りかい? 何か買ってくれたらついでに美味い店の情報もサービスするぜ」
「あら、でしたらこちらのコップを」
 営業トークに乗せられてつい財布を緩めるファルネーゼであった。

 店主に教わったのは、ゴンドラ上で料理を食べられるサービスをやっている料理店だった。
「ふふ、どの様な魚料理があるか、楽しみです」
 期待に胸を膨らませるファルネーゼの前に出てきたのは、この町で取れた新鮮な魚介類をトマトやオリーブ油などと煮込んだスープ――所謂アクアパッツアだった。
 デザートには冷たいレモンシャーベットも付いてくる。
 船上から流れる景色を眺めながら、魚介の旨みがぎっしり詰まったスープに舌鼓を打つファルネーゼとエチカ。
「……あら? これは何でしょう」
 ふと彼女は、ゴンドラに小さく掘り込まれている紋章のようなマークを見つけた。
 それは船の錨を意匠化したようにも見える。
「ああ、そのマークはこの町のゴンドラには必ず付ける慣わしになってるんすよ」
 ゴンドラを漕いでいた若い男が彼女の疑問に答える。
「俺っちは意味は知らないんすけど、まぁこれも伝統ってやつっすかね」
「なるほど……あら、エチカ、おかわりが欲しいの?」
 ふと見やれば、相棒が空のお皿をくわえて自己主張をしてくる。
「ふふ。それじゃあもう一杯頂きましょうか」
 伝統という単語に気を留めつつも、ファルネーゼは今は港町の料理と景色を堪能することにしたのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エメラ・アーヴェスピア
伝説の勇者の船…ね。興味あるわね
実際あるとしたら一体どんな船か…
私の兵器のアイデアになりそうな物が組み込まれていればいいのだけど

【WIZ】
あら…綺麗な町ね。折角だから観光していきましょうか
ゴンドラに乗って街を案内する商売をしている人はいないかしら?
綺麗な景色の見える場所を探すなら、やはり専門の人に頼むのが一番よね
そのような仕事をしているのだから、町の歴史には詳しいでしょうし…
ついでに伝説の事を尋ねてみましょうか
なにかしら【情報収集】できればいいのだけど…
まぁ、今は観光を楽しむとしましょう

※アドリブ・絡み歓迎



「あら……綺麗な町ね。折角だから観光していきましょうか」
 優美な町並みを見渡しながら、町のゴンドラ乗り場にやって来たのはエメラ・アーヴェスピア(歩く魔導蒸気兵器庫・f03904)。
「ゴンドラに乗って街を案内する商売をしている人はいないかしら?」
 綺麗な景色の見える場所を探すなら、やはり専門の人に頼むのが一番だろう、と。
 そうした観光ガイドとゴンドラ乗りを兼任する者から経験豊かな人物を選ぶと、エメラは港町の名所巡りに出発する。
(伝説の勇者の船……ね。興味あるわね。実際あるとしたら一体どんな船か……私の兵器のアイデアになりそうな物が組み込まれていればいいのだけど)
 その胸の内に技術者としての知的好奇心を秘めながら。

「この町で一番景色のいい場所なら、やっぱり鐘楼ですよ、お客さん」
 エメラを乗せたゴンドラの漕ぎ手は、彼女の質問にそう答える。
 それは、この町に残る中でも最も古い建物だという。
「昔々、この町がまだ小さかった頃、町の創始者のおひとりが建てられたそうですよ」
「詳しいのね」
「そりゃあ、こんな仕事してれば多少はね」
 笑いながらオールを漕ぐ男に、エメラはついでにと尋ねてみる。
「なら、伝説の勇者の船のことも知ってる?」
「勿論でさぁ。なにせ今言った鐘楼を建てたお人ってのも、その『伝説の船』に乗ってた冒険者の一人だって言われてますから」
 ゴンドラ乗りはすらすらとこの町に残る伝説について語ってくれる。
 かつてこの地に流れ着いたという伝説の勇者の船の話。そしてこの地に留まり、現在の港町の発展の基礎となったという冒険者達の話を。

「ですがまぁ、自分のようなゴンドラ乗りにとって一番有名なのは『最初のゴンドラ』の話でしょうね」
「最初のゴンドラ?」
「ええ。伝説じゃあある年に大嵐がやってきて、港町――当時はまだ漁村でしたが――にあった船がほとんど壊れちまったそうで」
 海辺に暮らす人々にとって、船は生活の手段であり大切な財産である。それが壊れたとなれば一大事であろう。
「困り果てていたまさにその時、件の冒険者達が流れ着いたそうです。彼らは自分たちを受け入れてくれた御礼に、自分たちの『船』を解体して、新しい船を作ればいいと言ったそうです」
 人々は驚いた。勇者たちの船をそんな事のために使ってしまっていいのかと。
 だが彼らは答えた。もうこの船は役目を終えた。このままただ朽ち果てるよりも、誰かの未来のために使われるほうが幸せだと。
「群竜大陸で散った仲間達も、きっと喜んでくれると――そうして『船』の材木から作られたのが、最初のゴンドラだったって話です」
「そうなの……」
「古い話なんで、有名っつっても今じゃゴンドラ乗りの中でも若手にゃ知られてなかったりしますがね。っと、つい話しすぎちまった。着きましたぜお客さん」
「いえ、ありがとう」
 目的地への到着を告げられ、エメラは微笑みながらゴンドラを降りる。

 高くそびえ立つ古いその鐘楼は、今は誰でも中に入れるようになっているようだ。
 階段を上り鐘のある最上階にたどり着くと、そこは360度町の風景を見渡せる、まさに絶好のスポットだった。
 町中に張り巡らされた水路や整った町並み、そこを行き交うゴンドラと人々、キラキラと輝く海原まで一望できる。
「綺麗ね……」
 穏やかな海風を浴びながら、エメラはしばしその景色を堪能するのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

セリオン・アーヴニル
ゴンドラに乗りながら観光ついでに情報収集と行くか。
あながち、歴史というのは古くからの遊びや事業に隠れているモノだ。

と、言う訳で可能な限り様々な乗り手が操るゴンドラに乗り、
多少チップを弾ませつつ、船頭に町の歴史や伝説の話を聞いて回ろう。
俺が特に注目したいのは、舟歌――要するに、
『船乗り達に代々伝わってきた伝説や出来事を元にした歌』
があるかどうかだ。
口伝をするのに歌はもってこいだろう?

なので船頭に関しては老若男女、大手だろうが個人だろうが区別せず、
色々な所をあたってみたい。



 他の猟兵らと同様、セリオン・アーヴニル(平行世界のエトランジェ・f00924)もまた、ゴンドラに揺られて港町の観光と情報収集に励んでいた。
「あながち、歴史というのは古くからの遊びや事業に隠れているモノだ」
 彼が着目したのは、舟歌――つまりは『船乗り達に代々伝わってきた伝説や出来事を元にした歌』があるかどうかだった。
 伝説を後世に口伝していくならば、歌はもってこいだろうと。

 漕ぎ手の老若男女や有名無名を問わず、様々なゴンドラを乗り継いで尋ね回った結果、セリオンが辿り着いたのはとある老齢のゴンドラ乗りだった。
「古い舟歌ねぇ……あるにゃぁあるが、しかし聞いて面白いようなもんではないぞ?」
「構わない。聞かせてほしい」
 学術的な興味があると語るセリオンの頼みに、最初は渋っていた老人はやがてゆっくりと歌いだした。
 ――それは、一言で言うならば船乗り達の鎮魂歌(レクイエム)だった。
 海に生き、海で亡くなった者達の魂を慰め、安らかな眠りを祈る歌。
 優しくも物悲しく、穏やかで寂しい歌であった。

「この歌にはな、歌詞の意味とは別に、もう一つ裏の意味があると言われておる」
「裏の意味?」
「そう。この町の創始者である冒険者の仲間――かの勇者達のための鎮魂歌だとな」
 帝竜と決死の決戦に挑み、沈みゆく大陸と命運を共にしたという数多の勇者達。
 この町の創始者は、その決戦を生き延び、この地に流れ着いた冒険者だという。
「遠い異郷の海の底に眠る仲間達の魂が安らぐように、創始者のひとりがこの歌を残したと言われておる」
 今や口伝する者も少なく、裏の意味を知る者もほとんど居ないらしいが。

「勇者にまつわるものと言えば……ほれ、あの鐘楼もそうじゃよ」
 船乗りが指差すのは、この町の建物の中でもひときわ高い鐘楼だ。
「あの鐘楼を建てたのもやはり、創始者のおひとりでな。彼はこう言ったそうじゃ――『遠い海の底まで届くような、立派な鐘の音を響かせたい』と」
 この鐘の音を道しるべにして、肉体は帰れぬ身となった勇者達が、せめて魂だけでも帰ってこれるように、と。
「鐘楼の完成を見届けた後、その冒険者は人々の前から姿を消したそうじゃ」
 自身の故郷に帰ったとも、仲間達の眠る海に帰ったとも、様々な説があるそうだが、真実は不明のままである。

「すまんな、お若いの。わざわざ来てくれたのに、こんな辛気臭い話しかできんで」
「いや。興味深い話だった」
 礼にチップをいくらか弾んで、セリオンは老人に別れを告げる。
 からん、からん、と、鐘楼の鐘の音が港町に響いた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

エルス・クロウディス
うーん、情報が少ないなぁ。
まぁ、この手の伝説が回りくどい伝承だけっていうのはよくあることだけど。

あ、こんにちはー、おいしいお店知りません?

荒波逆風をものともしないって聞くと、操舵の腕がよかったのか、あるいはUCを使える人間がいたのか……。
一応、大型の船を使う、複数つなげるとか、色々方法はあるけどなぁ。

あ、すみません、この町の名物ってあります?

話を聞くなら船乗りか、特に高齢の方がいいのかなー。
伝承の研究者とかがいれば、そこをあたるのもいいなぁ。

あ、どもども、ゴンドラってどこから乗れます?

ま、何にしても人伝だな。
<世界知識>を活かして話の起点作り、<コミュ力>で広げていこう。

アドリブ・連携(?)〇



「うーん、情報が少ないなぁ。まぁ、この手の伝説が回りくどい伝承だけっていうのはよくあることだけど」
 勇者の船の伝説を追って、港町のあちこちを訪ね歩くのはエルス・クロウディス(昔日の残響・f11252)。
 この町の伝承はすでに風化しつつあり『船』の話を知らないという住民も多い。
 とにかく多くの人に尋ねて人伝に情報を集めることに決める。
「あ、こんにちはー、おいしいお店知りません?」

 紹介されたお店でグリル焼きにした魚の盛り合わせを食べながら、エルスは伝承の考察を続ける。
「荒波逆風をものともしないって聞くと、操舵の腕がよかったのか、あるいはユーベルコードを使える人間がいたのか……」
 皮までパリパリに焼きあがった魚に噛り付くと、香ばしくて実に美味である。
「一応、大型の船を使う、複数つなげるとか、色々方法はあるけどなぁ」
 グリル焼きの他には魚介のフライもある。
 スナック感覚でサクサクとつまめて、こちらも美味い。
「あ、すみません、この町の名物ってあります?」
 その他にも様々な名物料理を食べ歩くエルスであった。

 腹ごしらえを済ませたエルスは、次にどこに行くか考える。
「話を聞くなら船乗りか、特に高齢の方がいいのかなー。伝承の研究者とかがいれば、そこをあたるのもいいなぁ」
 残念ながらそう言った研究者の情報は聞けなかったため、船乗りの集まる海辺に向かうことにする。
「あ、どもども、ゴンドラってどこから乗れます?」
 たまたま「ゴンドラ漕ぎ体験コース」なる観光客向けのサービスを見つけたので、折角なので挑戦してみる。
 ゴンドラの操船は見た目より難しく、なかなか思った方向に進めない。
 しかしエルスは極限の集中力で水路の流れを見極め、次第にコツを掴んでいく。
「兄ちゃんスジがいいな。ウチで修行してみないか?」
「いやぁ、それは遠慮しとく」
 操船を教えていたゴンドラ乗りの勧誘に、苦笑しながらエルスは答えた。

 そうこうして港までやってきたエルスは、さっそく船乗りに話を聞こうとする。
 だが、様子が騒がしい。落ち着きのない者や不安そうな表情をした者が多い。
「何かあったのか?」
「ん、いやぁな。どうも波風の様子が怪しくてな……」
 船乗りに話を聞いたところによると、海が荒れていて船を出せないらしい。
 この辺りの海は基本的に穏やかだが、不定期に大荒れを起こすことがあるという。
「こりゃぁ嵐が来るかもしれんな。アンタも海辺には近づかないほうがいいぜ」
 そう言って慌しく去っていく船乗りを見送るエルス。どうやら今ここで話を聞くのは難しそうだ。
「仕方ない、他のところで聞き込みするか」
 踵を返す彼の背後では、水平線の向こうから怪しい雲が近付いて来ていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
伝説の勇者の船――なァ。
なんとも心躍る響きだ。

では、観光がてら仕事と行こう。
酒と料理は一番のコミュニケーションツールってな。
ゴンドラに揺られながら、どこぞの冒険者と一緒に飯でも食えば、話も弾むであろう。
他愛のない世間話の一環で、ひとつ訊いてみようではないか。
勇者一行を導いた伝説の船というのを知らんか?
なに、その手の伝説が好きなのだ。噂でも何でも、聞かせてくれるとありがたい。

しかしゴンドラとは優雅なものよ。
初めて乗ったが、これはなかなか……次は仕事のないときに来てみよう。
ふはは、案外、伝説の船もこんな風だったりするかもなァ。



「伝説の勇者の船――なァ。なんとも心躍る響きだ」
 ニルズヘッグ・ニヴルヘイム(世界竜・f01811)は、ゴンドラに揺られながら伝説に思いを馳せる。
 彼が情報源として目をつけたのは職業柄そういった伝承にも耳聡い冒険者だった。
 モンスター退治から宝探しまで様々な依頼を引き受ける彼らは、もちろんこの港町にもいる。
「では、観光がてら仕事と行こう。酒と料理は一番のコミュニケーションツールってな」

 ニルズヘッグは適当な酒場に寄ると、そこに居合わせた冒険者に飯と酒をおごりながら世間話に連れ出す。
 ゴンドラに揺られながら景色を眺めつつ、美味い料理を味わえば、自然と話も弾むというもの。
「いやぁ、アンタ気前いいな! この町には観光でかい?」
「まあ、そのようなものだ」
 他愛のない世間話にひととおり花を咲かせ、頃合を見て彼は話を切り出す。
「勇者一行を導いた伝説の船というのを知らんか?」
「勇者の船、ねぇ? うーん、『宝島』の伝説は聞いてもそっちは初耳だな」
「宝島?」
「興味あるか? この町の冒険者の間じゃ有名な話だぜ。と言っても勇者と関係あるかは分からねぇが……」
「構わんよ。なに、その手の伝説が好きなのだ。噂でも何でも、聞かせてくれるとありがたい」
 ニルズヘッグが相手のジョッキに酒を注ぐと、それで良いならと彼は話しだした。

「ほら、この場所からでもうっすら見えるだろ? この町の沖合いにある小さい島、あれが宝島さ」
 冒険者が指差したのは海の方角。確かに海原にぽつんと小さな点のように浮かぶ、島らしき影が見える。
「あの島には昔から、金に換えられないほどの価値を持つすげぇお宝が眠ってる、って伝説があるのさ」
「確かめた者はいないのか? この町からそれほど離れていないように見えるが」
 流石に泳いで向かうのは無理でも、船を出せばすぐに着けそうな距離である。
 しかし冒険者は首を振る。
「誰も確かめられなかったのさ。あの島には危険なモンスターがうようよしてる。宝の話を聞いて島に向かったヤツらはみんな手ぶらで逃げ帰ってくるか、さもなきゃ二度と戻らなかった」
「なるほど……」
 モンスターの蔓延る宝島……それが伝説の勇者の船と関係するかは不明だが、調べる価値はあるかもしれない。
 一般人では太刀打ちできないモンスターも、猟兵であれば対処可能だろう。

「面白い話を聞かせてもらった。感謝するぞ」
「なぁに、酒の礼としちゃ安いもんさ」
 ニルズヘッグと冒険者はニッと笑いあい、揃って酒のジョッキをあおる。
「しかしゴンドラとは優雅なものよ。初めて乗ったが、これはなかなか……」
 心地よい舟の揺れに身を任せ、次は仕事のないときに来てみようと彼は思う。
「ふはは、案外、伝説の船もこんな風だったりするかもなァ」
「そりゃぁいい、コイツに乗れば俺たちも勇者様気分ってわけだ!」
 笑い声の絶えぬ船上の酒宴は、その後も長く続いたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

月宮・ユイ
世界を旅する旅好きの冒険者として町を訪れます
口下手な私は話をするのは苦手ですが、お話を聞くのは好きです
なので訪れた地の話を聞く今回の任務、とても楽しみです

最近よく話題に上る勇者の伝説があると聞き訪れた形を取ります。
”コミュ力、情報収集”
話を聞く方は割と得意ですので観光しつつ情報収集
港町でゴンドラで町並みを見て回りながらのお魚料理、楽しみです
”医術、救助活動、優しさ、聞き耳、誘惑”【癒し手】
港の方も見て回ってみます。小さな騒動等も多そうですが、回復手段を持つ冒険者として、それらを利用しても良いかもしれません。
繋ぎが出来れば、宴会などに参加するのも楽しそうです

アレンジ・アドリブ絡み歓迎



「このお料理、とても美味しいです」
 新鮮な魚介類をたっぷりと具材に使ったリゾットを口に運びつつ、月宮・ユイ(死ヲ喰ラウ連星・f02933)はゴンドラの漕ぎ手に素直な感想を告げた。
「そうかい、そりゃぁ良かった! そいつは俺のカミさんが作ったやつでな。俺が舟を漕ぎ、アイツが飯を作る。そうして二人一緒に商売してんのさ」
 楽しげに語るゴンドラ乗りの男の話に、ユイは微笑みながら耳を傾ける。
 口下手な彼女は話をするのは苦手だが、誰かの話を聞くのは好きだった。
 ゴンドラの上から美しい町並みを眺めながら美味しい料理を口にすれば、心も体も満たされていく。

 ユイは世界を旅する旅好きの冒険者という触れ込みで、勇者の伝説について尋ねてみる。
「最近よく話題に上るので、気になって」
「そうなのかい? うーん、俺が昔爺さんから聞いた話はアレだな。勇者の墓の話」
「墓、ですか?」
「おう。っと、メシが不味くなりそうならこの手の話はやめとくか」
「いえ、気になります」
「そうかい? んじゃあまぁ……」
 本人もうろ覚えらしい様子で頭を掻きながら、ゴンドラ乗りはぽつりぽつりと話しだす。

「昔々、この町がまだ出来たばかりの頃にな。町の創始者である冒険者の一人が、帝竜の戦いで死んだ勇者達の墓を作ったんだと」
 その冒険者は何でも、かの伝説の勇者の仲間だったらしい。
 散っていったかつての仲間を弔うために、この地に墓を建てたのだという。
「ところが、誰もその墓が何処にあるのか知らねぇのさ。町のどこを探してもそれらしい遺跡も痕跡もねぇ。正直この話はガセなんじゃねぇのかって俺は思うがね」
「なるほど……」
 誰もその場所を知らない勇者の墓。奇妙な話ではあるが、気に留めておいたほうがいいのかもしれない。
「ありがとうございました。ご馳走様でした」
「おう、また来いよ嬢ちゃん!」
 食事と話の礼を言って、ユイはゴンドラを降りるのだった。

 次にユイが見に行ったのは港の方だった。小さな騒動や怪我人でもいれば、回復能力を活かして住民との繋ぎを得ようと考えたのだ。
 しかし実際に港で彼女を待っていたのは「小さな騒動」どころではなかった。
「おい、大丈夫か?!」
「医者呼んで来い、医者!」
 人だかりの中心には、ずぶ濡れになって動かない船乗りらしき格好の男がいる。どうも一刻を争う容態のようだ。

 ユイは早足に人の輪をかき分け、倒れている男に近寄る。
「お、おい、何だアンタ?!」
「大丈夫です。癒しの光よ……」
 彼女が手をかざすと優しい光が男を包み込み、蒼白だった顔色に血の気が戻る。
 おお……! と周囲から歓喜のどよめきが上がる。
「助かった……! アンタすげぇな、感謝するよ!」
「いえ。それより何があったのですか?」
「嵐さ。でっかい嵐がこの町に近付いてきてる。コイツは沖でそれにぶつかっちまったのさ」
 彼が乗っていた船はあえなく海の藻屑となり、他の船員もまだ見つかっていない。
「この様子じゃ町も危ない。アンタも早く避難しな!」
 そう告げて人々はどこかへ駆けていく。
 ユイがふと海の方角を見れば、沖から真っ黒な雲が、恐ろしいほどのスピードでこちらに近付いて来ていた――。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 冒険 『嵐の前に』

POW   :    力仕事で建物を補強する

SPD   :    安全な場所へ物資や人々を移動させる

WIZ   :    祈祷や魔法の力などで嵐の規模を抑える

👑11
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 ゴンドラと己の足で港町を巡り、勇者の船にまつわる伝説を調査する猟兵達。
 調査の結果、それらしい伝説の痕跡は幾つも聞くことができたが、まだ確認が取れていない情報の中で気になるものがひとつ。
 港町の沖合いに浮かぶ小島――そこにお宝が眠るという伝説だ。
 それが勇者の伝説と関連があるかは分からないが、確かめてみる価値はあるだろう。島にはモンスターが生息するというが、猟兵ならばその対処も可能だ。

 だが『宝島』へと渡るための船を探そうとする猟兵達の耳に、慌てた住民達の叫び声が届く。
「嵐が来るぞ! こいつはでかい……十年、いや五十年に一度の大嵐だ!」
 海原の沖から迫ってくる黒雲。さっきまで穏やかだった波は荒れ始め、そよ風はビュウビュウと唸る強風へと変わる。

 迫り来る大嵐の気配に怯える港町の住民達。
 猟兵であれば、その力で住民の避難を助けたり、嵐の被害を抑えることもできるかもしれない。
 勿論それは義務や使命などではないが――この町がもし壊滅的な被害を受ければ『宝島』の伝説を確かめるのも難しくなるだろう。

 果たして、猟兵達の行動は――。
クリスティアーネ・アステローペ
【SPD】

頭が痛いとか言っている場合じゃなさそうねえ
私が捧げる祈りは正者のためのものではないことですし
安全そうな高台までの路の確認して避難の誘導、手伝いましょうか


さっきの男達でもいれば彼らに、居ないなら他の人達に手伝ってもらって
避難できてない人はいないかの確認と
荷物が多くて動きが遅い人が居たらその手伝いを
手分けして進めていきましょう

あの人が逃げ遅れているかも、と気づけるのも
この街の区画を効率的に訊ねて周れるのも
地元の人間である貴方たちだけですもの

私は地理には疎くてそのあたりでは役に立てない分
腕っぷしは確かですし
誘導の後は荷運びや障害物の撤去にでも移りましょうか



 平和だった港町は、今まさに風雲急を告げていた。
 空は雨雲に覆われ、風は荒れ狂い、波が水路に押し寄せる。
 突然の天候の急変に人々は戸惑う。特に嵐の経験の少ない若者ほど動揺が大きい。

「頭が痛いとか言っている場合じゃなさそうねえ」
 迫る雨と波――流水の気配に治まらない鈍痛をおして、クリスティアーネは動く。
「私が捧げる祈りは正者のためのものではないことですし、避難の誘導、手伝いましょうか」
 まずは安全そうな高台への路を確認して、と思ったものの、異邦人である彼女はこの町の地理には疎い。
 できれば現地民の手を借りて――と考える彼女の前に見覚えのある人影が現れる。

「あら、貴方たち」
「げぇっ、アンタは……!」
 それは路地でクリスティアーネにちょっかいをかけた結果、対価を痛苦で払われたかわいそうなチンピラ――もとい、情報提供者たちだった。
「丁度良かったわ。手伝ってちょうだい」
「何をだよ?! 見りゃ分かんだろ、嵐がくるんだぞ! さっさと避難しねぇと……」
「それを手伝えと言ってるのよ。あの人が逃げ遅れているかも、と気づけるのも、この街の区画を効率的に訊ねて周れるのも、地元の人間である貴方たちだけですもの」
 ぐっと言葉に詰まる男たちに、クリスティアーネは穏やかだが有無を言わせぬ微笑で告げる。
「嵐が来るなり尻尾を巻いて自分たちだけで逃げるなんて格好悪いわよ? この街の住人の意地を見せてみなさいな」
「……チッ。仕方ねぇな!」
 その言葉に後ろめたさとプライドを擽られるところもあったのだろう。男たちはあっさりと彼女の手足になった。

「オラ、こっちだジジババ共!」
「そンなデケェ荷物は置いてけ! どうしてもってんならあっちの姐さんに頼め!」
 こうしてクリスティアーネが引き連れたチンピラ共は、思いのほか役に立った。
 蛇の道は蛇とでも言うのか、路地をナワバリとしていた彼らは水路に頼らない街の移動経路に詳しい。
 いちいち指示を出さずとも、勝手に手分けして避難路の確認と誘導を進めていく。
「姐さん、こっちのヤツも頼む!」
「はいはい」
 クリスティアーネの仕事は主に、その腕っぷしを活かした荷運びや、強風で飛ばされてきた障害物の撤去だ。
 なぜかいつの間にか姐さんと呼ばれているのに首をかしげながらも、長槍戦斧を振るい避難路を切り開くのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

月代・十六夜
「なんとかの天気は変わりやすい。いやこれ山だっけ?まぁいいや」
「何が役に立つか分かんねぇなぁいやマジで」

アマータ嬢(f03768)、アリス嬢(f02153)と連携。
ネロ君との追いかけっこで街の構造は大体【情報収集】して【学習】したしな。
【韋駄天足】と【スカイステッパー】で飛び回って片っ端から資材やら逃げ遅れた人やらを集めるとしましょうかね。
【鍵のかかった箱チェック】で回収して、ある程度集めたらアリス嬢のムートの上で解放、そこでアマータ嬢の指示を貰って再度の回収って流れで。
【視力】【聞き耳】を駆使すれば取り逃しもそうそう無いだろ。


アマータ・プリムス
十六夜様(f10620)、アリス(f02153)と連携
「早急に救助に当たります。お願いしますねアリス、十六夜様」
アリスの召喚したムート様の上に乗り空中からメガホン型に【武器改造】で変形させたイーリスで避難勧告
「でき得る限り当機たちが回収しますので避難される方々は外に出てください」

当機は鋼糸を伸ばし逃げ遅れた方を【敵を盾にする】要領で回収
糸が届かない場所にいる方は十六夜様に場所を伝え救助していただきます
UCを発動してネロにも救助を手伝わせる
「あれだけ飛びまわったんだから街の構造くらい覚えているでしょう?働きなさい!」
思わずネロに素の口調が出てしまいますが気にしません
……聞かれてないですよね?


アリス・レヴェリー
十六夜さん(f10620)、アマータさん(f03768)と連携。
「わたし達に任せてちょうだい!久しぶりのフルサイズよ!お願いね、ムート!」
【友なる白鯨、悠然の調べ】でシロナガスクジラの最大サイズ(34m)程の本来のサイズの白鯨のムートを召喚して、アマータさんや月代さん、二人によって回収された住民や物資をムートの背中に乗せて街の上空を遊泳するわ。
風で物や人が落っこちたりって危険や、上空の寒さはムートがお得意の魔法で防護してくれるから心配いらないはずよ。
「分かってると思うけど、いつもみたいにアクロバティックな泳ぎ方はしちゃダメよ……?」
※アドリブ歓迎



「なんとかの天気は変わりやすい。いやこれ山だっけ? まぁいいや」
 一変した港町の天候を眺めながら、十六夜が呟く。
 その傍らには、ギター型マイクを携えたアマータと、真鍮のホルンを構えたアリスが並ぶ。
「早急に救助に当たります。お願いしますねアリス、十六夜様」
「あいよ、そんじゃ行ってきますか」
「ええ、わたし達に任せてちょうだい! 久しぶりのフルサイズよ! お願いね、ムート!」
 アマータの呼びかけに応じ、韋駄天足で飛び出す十六夜。
 そしてアリスがホルンを奏でると、水路から顔を出した白鯨ムートが空に舞い上がっていく。

 突如として頭上に影がかかった人々は、最初それを雨雲によるものと思ったろう。
 だがすぐにそれが誤りであると知り、一様に驚愕する。彼らの見上げた先にいたのは、幻想的な威容を誇る純白の大鯨。
 悠々と空を泳ぐ白鯨ムートの背中には、ホルンを奏でる金髪の少女と、ギターをメガホン型に変形させた灰髪のメイドの姿がある。
「でき得る限り当機たちが回収しますので避難される方々は外に出てください」
 アマータはメガホンで住民に避難勧告を行いつつ、鋼糸を伸ばし逃げ遅れた者達を回収していく。
「うぉわぁぁっ?!」
 突然空に引き上げられた人々は驚くが、白鯨の背中の上は高所であるにも関わらず寒くはなく、吹き荒れる風もほとんど感じない。
「ムートがお得意の魔法で防護してくれるから心配いらないはずよ!」
 すごいでしょ、と友達のことを得意げに説明するアリス。それに同意するように白鯨も歌うように鳴く。
「分かってると思うけど、いつもみたいにアクロバティックな泳ぎ方はしちゃダメよ……?」
 無論だとも、と言うように、アリスの注意にムートはもう一度鳴いた。

 アマータの糸では届かない場所にいる住民は、十六夜がその俊足を活かして回収に向かう。
 彼の頭の中には、ネロとの追いかけっこの最中に把握した街の構造が既に叩き込まれている。
「何が役に立つか分かんねぇなぁいやマジで」
 風雨をものともせず、追いかけっこの時よりも一層速いスピードで街を飛び回る十六夜。
 雨で足場が滑りやすくなろうとも、空中そのものを足場にする彼には関係のないことだ。
 そして彼は発見した人々に、すっと鍵のかかった箱を差し出す。
「とりあえずこの中に入っててくれ」
「この中に……? うぉっ?!」
 触れた瞬間、人々は箱の中に吸い込まれていく。UDCから借りてきた謎の箱の力だが、おそらく危険はない。謎だが。
 同様の手段で資材や物資なども回収していき、ある程度集めると上空を泳ぐムートの元に戻る。

「おかえりなさい!」
「ただいまー。とりあえずこんだけ回収してきた」
 出迎えるアリスに応じつつ、箱の中の住民たちや物資を解放する十六夜。
 謎の空間を経由して白いクジラの背中の上に移動してきた人々はぽかんとしていたが、助けられたことを理解すると安堵と感謝を猟兵たちに告げる。
「十六夜様、あちらの区画にも何人か避難に遅れた方がいます。お願いできますか」
「おう。片っ端から回収するとしましょうかね」
 上空から要救助者を探すアマータの指示を受けて、十六夜は再びムートの背から飛び出し、空を駆ける。
 暗い嵐の中でもその目は救うべき人を見逃さず、その耳は助けを呼ぶ声を決して聞き逃さない。

 しかし港町は広い。住民だけでなく観光に訪れていた人々も含めれば、救うべき人の数は膨大である。
 救助の手を増やすべく、アマータはトランクを開けてネロを召喚する。
「あれだけ飛びまわったんだから街の構造くらい覚えているでしょう? 働きなさい!」
 "姉"からの一喝にネロは肩をすくめるような仕草をすると、嵐の町に飛んでいく。
 それを見送ったアマータは思わず素の口調が出てしまったことに気付く。
(……聞かれてないですよね?)
 ちらっと見やるのはムートに進路の指示を出すアリス。アマータの視線に気付いた少女はてこてこと彼女に近づく。
「アマータさん、どうかしたの?」
「……いえ、何でもありません」
 まさか聞こえました? と質問するわけにもいかず。
 アマータはそれ以上気にしないことにして、人々の救助に専念するのだった。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

神宮寺・絵里香
≪心情≫
・嵐か…。風はともかく雨雲に関しては専門家だ
・雲の無力化…それだけは何とかやってみるか
・水は世界に遍く存在するものだ、無くすことはできん
 だが…形を変えることはできる

≪対応≫
・【祈り】を込めて【全力魔法】のUCを発動
 オレの力を強化する湖沼を生み出す
・そして【力溜め】【全力魔法】からの『水神権限』を発動。
 強化内容は『状態異常強化』
・『水を自在に歩く力』で神域の上に立ち、『祈り』を込めて
 【全力魔法】【範囲攻撃】での『水の三態』を操る力を発動
 雲を水蒸気に変化させ続ける
・さらに周囲の水を氷に変えて地表を冷やし上昇気流の発生を防ぐ
・【激痛耐性】で苦しくても我慢。可能な限り雲を散らす



「嵐か……。風はともかく雨雲に関しては専門家だ」
 時と共に激しさを増す風雨の中、神宮寺・絵里香(雨冠乃巫女・f03667)はじっと天を見上げていた。
 彼女は水の神を奉じ、雨や雷の力を操る者。相手が大いなる自然の驚異であっても、抗する手立てを持ち得ている。
「雲の無力化……それだけは何とかやってみるか」
 これ以上の災害の拡大を抑えるため、絵里香は神器を手に祈りを紡いでいく。

「いと深き深き湖沼の主、大いなる水を司りし白蛇の神よ! 汝が住処をここに顕現させよ!」
 祝詞と共に絵里香が召喚したのは、とぐろ巻く白き大蛇の神格。
 白蛇は彼女の目の前の空間に水のブレスを放ち、その地形を底なしの湖沼に塗り替えていく。
 それは白蛇神域。白蛇とその巫女たる絵里香の力を高める領域である。

 続けて絵里香は水神の力を今度は自らの身に顕現させる。
「大いなる水を司る白蛇の名の下に、水よ我が支配下となれ」
 白蛇の姿が絵里香の体に吸い込まれるように消えていき、水を操る力を得た絵里香はゆっくりと白蛇神域の上に立つ。
 その両足は地面を踏みしめるのと変わらぬように、湖沼の水面に立っていた。
 神域の上で自らの力を高める絵里香は、祈りを奉げながら水神顕現の第二の力を行使する。
「水は世界に遍く存在するものだ、無くすことはできん。だが……形を変えることはできる」

 その時、嵐から避難する港町の住人のひとりが、ふと声を上げた。
「見ろ……雲が!」
 上空を覆う雨雲の一部が、霞のように薄れ消えていく。絵里香が雲を構成する水の三態を操り、水蒸気に変化させたのだ。
 絵里香の立つ神域の上空とその周囲には雲の切れ間が生まれ、陽光が差し込む。
 それはまさしく神秘の光景であった。

 絵里香は上空の雲を散らすのと同時に地表の水分を氷に変えて冷やす。
 急激な気圧の変化で上昇気流が発生し、新たな雨雲が生まれるのを防ぐためだ。
「く……っ!」
 度重なる大規模な神の力の行使を続ける絵里香の心身の負荷は大きい。
 だがまだ止める訳にはいかない。雨雲は今も海から押し寄せているのだから。
 せめて避難が完了するまではと、絵里香は苦しさを我慢しながら可能な限り雲を散らし続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

エメラ・アーヴェスピア
へぇ…同僚さん達の話からするとこの鐘楼にも色々とあるのね…
それに最初のゴンドラ…残念ながら、私の興味のありそうなものは乗ってなさそうね
…まぁ、今はそれ所ではない訳だけど

さて、困ったわね
こうまで時間が無いと工事をするわけにもいかないし…
大人しく、避難誘導の手伝いをしましょうか
『我が工房に帳は落ちず』、既に強風で被害が出ている可能性があるわ
避難路を塞いでいたりするとそれだけで遅れるわよね
と言う訳でそういう物を排除する為に工兵を散らばらせて探索に当たらせるわ
まぁ、なければ工兵で避難誘導ね

私は鐘楼にて偵察ドローンと視認で逃げ遅れている人が居ないかを確認よ
居たら工兵を向かわせるわ

※アドリブ・絡み歓迎


セリオン・アーヴニル
即席協力・アドリブ『可』

建造物の補強…特に『鐘楼』の崩壊対策を行う。
先刻あんな話を聞いた直後だ。
コイツだけはしっかりと守ってやろうか。

町の組合員や大工衆に声をかけ、人手と道具を揃え補強に向かう。
人手が足らない等の理由で断られたら上手い補強方法を本職の人間に聞き、自前の知識もとい『世界知識』を頼りに、フック付きロープでの固定や風避けを設置。
嵐が過ぎるまでは、その場で文字通り身体を張り補強作業をする予定だ。

作業と平行し嵐が来た方向の天候や周囲の状況を肉眼又は望遠鏡で確認。
大きな変化があれば近くの者に注意を促す。

無事に嵐が過ぎたら…
鐘楼の無事を知らせる為に、大きく鐘を鳴らしてやろうか。



「へぇ……同僚さん達の話からするとこの鐘楼にも色々とあるのね……」
 港町を一望できる鐘楼の上で、エメラは収集された情報を確認していた。
「それに最初のゴンドラ……残念ながら、私の興味のありそうなものは乗ってなさそうね……まぁ、今はそれ所ではない訳だけど」
 確認を終えて嵐に襲われる町を見下ろす。この場所からならば町の何処で被害が発生し、何処で避難の遅れが出ているかも一目瞭然だ。
 それを見ながらエメラは己にできることを考える。
「さて、困ったわね。こうまで時間が無いと工事をするわけにもいかないし……大人しく、避難誘導の手伝いをしましょうか」

 そこに、駆け足で鐘楼を上ってきたセリオンがエメラに声をかける。
「町の組合員や大工衆に声をかけてきた。これから建造物の補強に向かう」
「わかったわ。人手が必要よね、私からも出すわ」
 そう言ってエメラが発動したのはユーベルコード【我が工房に帳は落ちず】。
 召喚された魔導蒸気工兵の部隊が、彼女の指示に従って行動を開始する。

「助かる……まずはこの鐘楼の崩壊対策からだな」
 頷くと、セリオンもフック付きロープを握り締め、嵐の町に飛び出した。
 本職の人間と協力し、自身の知識も頼りに適切な防風・倒壊対策を行っていく。
 特にこの強風下では危険すぎて一般人には行えない高所等の作業は、猟兵である彼の出番だ。
「先刻あんな話を聞いた直後だ。コイツだけはしっかりと守ってやろうか」
 風雨が吹き付ける中で文字通り身体を張りながら、セリオンはロープでの固定や風除けの設置を行っていく。

 鐘楼の補強が完了すれば、次は町中の建物だ。
 既に強風によって建造物の破壊や街路樹の倒壊といった被害が出ており、それらは障害物となって人々の避難を妨げている。
 その排除に力を発揮するのがエメラの魔導蒸気工兵だ。避難路を塞ぐ障害物を発見すれば、工兵は直ちに解体・撤去を行う。
 道が開通すれば人々の避難が捗るだけでなく、セリオンが率いる大工衆も速やかに現場に急行できる。

『東に二区画先に大きな橋があるわ。これが落ちると水路を渡れなくなって、避難に悪影響が出るわね』
『了解した、直ちに補強に向かう。こちらは倒壊した家屋に閉じ込められている人間を見つけた。人力のみでの救助は難しい、工兵を何機か送ってくれ』
『分かったわ。すぐに向かわせる』
 鐘楼にて偵察ドローンと視認で町全体の状況を確認するエメラと、現場から被害と周辺状況を確認するセリオンは、互いに連絡を取りながら補強に救助に避難誘導にと奔走する。
 この体制ならば逃げ遅れた人間がいてもすぐに発見でき、状況の変化にも即座の対応が取れる。
 即席であったにも関わらず、二人の行動は高い連携を見せていた。

「無事に嵐が過ぎたら……鐘楼の無事を知らせる為に、大きく鐘を鳴らしてやろうか」
『良いわね』
 作業の合間に嵐の来た方向の天候を確認しながらセリオンが呟き、鐘楼よりエメラも頷く。
 この町から鐘の音を絶やさぬため、二人は人と町を守り続ける。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

月宮・ユイ
嵐の到来ですか…
オブリビオンの仕業ではなく自然現象となると嵐自体への下手な手出しは後々の影響に不安がありますね

”世界知識、情報収集、拠点防御、早業、高速詠唱、全力魔法、2回・範囲攻撃”
【記録再現、簡易創造】
本格的な到来までは多少の猶予があるようですし、なるべくなら許可を貰い
使い方を応用しつつ、他世界で集めた情報・知識等も基に防波堤や消波ブロック等を作成、波に備える
自前の備えもあるでしょうが常以上となると補強も有効でしょう
動きが無い物ですし規模が大きくともなんとかしてみせます。協力出来る方がいれば是非に
折角の法則の外側の力UC、人々は勿論、この綺麗な町も護りたいですね

アレンジ・アドリブ協力歓迎



「オブリビオンの仕業ではなく自然現象となると嵐自体への下手な手出しは後々の影響に不安がありますね」
 到来した嵐を港から見つめながらユイは考える。
 規模を考えればやむを得ないところもあるが、それでも理を超えた力による自然への干渉は最小限に留めるに越したことはないだろうと。
 ――だが、同時にふと、ある考えが彼女の脳裏をよぎる。
 猟兵たちが調査に訪れたタイミングで、突如として起こった例年にない大嵐。これは果たしてただの自然現象なのか、と。

 しかし今はそれを考えても埒は明かない。港町を守るためにユイは自らのユーベルコードを発動する。
(共鳴接続機能正常稼働。感覚意識同調共有準備完了。投影開始)
 他世界で集めた情報・知識等も基に、保管された記録を現実へと実体化させる。
「現れよ……」
 虚空より出現したのは防波堤や消波ブロックの数々。それは嵐と共に海から押し寄せる荒波を受け止め、町への被害を防ぐ。
 既に港の責任者に許可は取っている。ユイは繰り返し投影術を発動し、波打ち際をぐるりと囲うように防波堤を作成していく。

 港町にも当然、嵐に対する自前の備えはある。だがこれほどの規模の大嵐を経験したことは過去にも稀であり、十分とは言えない。
 しかしユイの持つ知識に基づき投影された防波設備は、UDCアース等の高度な技術やノウハウの蓄積の産物であり、この世界の水準を大きく上回る。
 その補強のおかげで、港町への波の被害は最小限に食い止められていた。

 とはいえ応用的なユーベルコードの使い方をしている上、投影するものの規模が規模だ。術士であるユイへの負担は小さくない。
(動きが無い物ですし規模が大きくともなんとかしてみせます)
 強く大きい波が打ちつけるたび、ノイズが走ったように防波堤の姿がブレる。それでもユイは負荷に耐えて投影を維持し続ける。
「折角の法則の外側の力ユーベルコード、人々は勿論、この綺麗な町も護りたいですね」
 多くの人々の努力と想いを礎にして、発展を遂げたのであろうこの町を。
 必ず護ってみせると決意して、ユイは海よりの猛威を阻み続ける。

成功 🔵​🔵​🔴​

エルス・クロウディス
相変わらず便利に使われております……ってげぇっ、ガチ嵐!?
家の補強もそうだけど、船大丈夫かこれ!
あいや、港町だし、そこら辺の対策は万全か?
とりあえず、一度見るだけ見てみて、<世界知識>と照らし合わせて十分な処置がされてるか確認しておこう。

そっちが終わったら、物資の移動や家屋の補強だな。
俺には嵐そのものをどうこうする能力はないからなぁ。
劉迅に<騎乗>して東奔西走といこう。
人型に変形すれば、相当重いものとか高い位置とかにも手が出せる。
飛べるから移動も楽だし……まぁ、バイク形態よりは遅いんだけど。

やること全部やったら……まぁ、後は<覚悟>決めて、外で物理的な被害防ぐのに終始しますか。

アドリブ・連携〇



「相変わらず便利に使われております……ってげぇっ、ガチ嵐!?」
 暴風と雨を切り裂きさくように、一台のバイクが港町を疾走する。
 その乗り手――エルスはその機動力を活かして町の各所の状況を確認して回っていた。
 彼のバイクは骸装の形態のひとつである「劉迅」。文字通り骸装と人機一体となってエルスは東奔西走する。

「家の補強もそうだけど、船大丈夫かこれ! あいや、港町だし、そこら辺の対策は万全か?」
 まずは港に向かったエルスだが、そちらの補強は既に行われていた。船もすべて陸に上げられてしっかりと固定されており、流される心配は無さそうだ。
 自身の知識と照らし合わせても十分な処置だと判断した彼は、すぐさま劉迅に跨って他の場所へ急行する。

「俺には嵐そのものをどうこうする能力はないからなぁ」
 エルスの強みは劉迅による機動力と運搬力。それを活かすべく彼は物資の移動や家屋の補強を手伝っていた。
 元々この町の運搬は、水路のゴンドラがその多くを担っていた。それが使えない現状、人力を超える速度と量で物資や補強用の資材を運べる劉迅は重宝される。
「っと、こっちの道は大分荒れてるな。それなら……」
 運搬の途中、吹き飛ばされてきた障害物が立ち塞がる道に出くわすとエルスは劉迅をバイク形態から人型に変形させた。
 スピードは低下するが、こちらにはバイク形態にはないパワーと飛行能力がある。
 荷物を担いだまま障害物を押しのけ、あるいは飛び越えることで、迂回するよりも遥かに早く運搬を続行する。

 エルスが運んだ物資は、高台などに設営された避難所に届けられる。
 食糧にはじまり、暖を取るための乾いた薪や毛布、怪我人を治療する包帯や薬――避難民に必要な物資を届けてくれたエルスに、人々は心からの感謝を口にする。
「ありがとうございます! 助かりました!」
「どういたしまして。さぁて、そんじゃもう一度行くとしますか」
 手ぶらになった彼は再び雨風が舞う外に出る。
 せっかく物資を運んでも、この避難所自体が破壊されてしまえば意味はない。
 覚悟を決めて、エルスは嵐がもたらす物理的な被害から避難所を守ることに終始するのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
呪詛の力では嵐は収まらんよなァ……。
避難に注力するとしようか。

人……人?ともかく手は多い方が良い。
【リザレクト・オブリビオン】で呼び出した騎士と蛇竜に、人と物資を運ばせよう。
ご老人や子供がいるなら、そちらを優先する。
死霊どもの見た目は、少し怖いが、私の忠実な配下だ。
家族のもとにしっかり送り届けるから、安心してくれ。
限界まで積んだら、巻き込まれんうちにとっとと移動だ。
ええい、貴様ら死霊であろう!へばっていないで運べ運べ!

私も抱えられるだけの物資を持って役に立とうか。
死霊どもほどギリギリまで往復は出来んが、幾らかは運び出せるであろうよ。



「呪詛の力では嵐は収まらんよなァ……。避難に注力するとしようか」
 顔をしかめて雨雲を一瞥してから、ニルズヘッグもまた、残された人々の救助と避難に力を尽くす。
 猟兵の活躍によってほとんどの人々は避難を完了している。それでもまだ町に取り残されているのは、何かしらの故あっての者達。
 多くは体の不自由な老人や、幼い子供だった。

「人……人? ともかく手は多い方が良い。来い!」
 ニルズヘッグはリザレクト・オブリビオンによって召喚した死霊の騎士と蛇竜と共に、そうした逃げ送れた人々の避難を助ける。
 最初に見つけたのは、親とはぐれて物陰で震えてうずくまる少女。ニルズヘッグが引き連れる死霊を見たときには思わず泣き出しそうになったが。
「死霊どもの見た目は、少し怖いが、私の忠実な配下だ。家族のもとにしっかり送り届けるから、安心してくれ」
「……う、うん」
 彼の力強く優しい言葉に励まされると、こくりと頷いてぎゅっと蛇竜の体にしがみつく。
 それからも足腰の弱った老人や、迷子になった観光客などを見つけては、限界まで死霊に背負わせる。

「よし、巻き込まれんうちにとっとと移動だ」
 自身も運べる限りの物資を持ちながら、ニルズヘッグは死霊と人々を連れて避難所へと向かう。
 別働の猟兵が雨や波の被害を抑えているうちに、可能な限りの人と物資を運ばなければならない。
 避難所まで人々を送り届ければ、すぐさま町に戻って逃げ遅れた者を探す――ハードな往復作業である。
 さしもの騎士と蛇竜も、徐々に動きが鈍ってくる。
「ええい、貴様ら死霊であろう! へばっていないで運べ運べ!」
 ニルズヘッグはそんな配下に渇を入れるが、彼自身の疲労も大きい。
 それでも彼には弱音を吐くつもりも足を止める気もなかった。そこにまだ、助けを求める人がいる限り。お人好しな彼はそれを無視できない。
「大丈夫だ。このニルズヘッグ様に、万事任せておくが良い!」
 心細げな人々を自信に満ち溢れた宣言で鼓舞し、彼は救助活動を続けるのだった。

成功 🔵​🔵​🔴​

ロベリア・エカルラート
●心情
これはまた面倒な事になってきたね……
ま、手がかりがなくなっても困るし、少しは協力しようかな

私は住人の避難誘導と治療を手伝おうかな
海から離れた安全な建物まで住人を避難させて、避難の際に怪我をした人が居たらシンフォニック・キュアで治療

避難所での生活は結構ストレスが溜まるみたいだし、歌でも披露しよう
避難した人の気が紛れるなら、ちょっとは役に立つしね

あとは子供の世話、かな。親とはぐれた子とか、不安で泣き出す子供もいるだろうし。こういう場所で子供の泣き声って聞いてる方も良い気がしないものだからね。

「さて、嵐が過ぎるまでの時間つぶしだ」
「良ければ歌でも聞いていってよ。ちょっとは自信があるんだよね」


ファルネーゼ・アトラス
先程までとても良い天気でしたのに…
何故、この様な嵐が突如現れたのでしょう
…いいえ、考えている暇はありませんでした
今は兎に角、人々の安全を優先しなければ!
エチカ、どうか貴方も力をお貸し下さいませね

避難された皆様の内、怪我をされている方がいらっしゃいましたら治療を行います
【生まれながらの光】で人々の傷を癒しながら
弱気になっている方々には鼓舞する様に、優しく声を掛け続けます
ファルの祈りに災厄を止める力があれば…人々の平穏を心から祈りながら
少しでも安心して貰えたら良いと歌声を響かせて
…ファルも、勿論怖いです
けれど、皆様の前で弱音等吐いてはいられませんもの
絶対に誰も犠牲にはさせません
ファルがさせません!



 猟兵たちの尽力もあって嵐から避難した人々は、水害や風の被害を受けにくい場所に設営された避難所に集まる。
 嵐が治まるまではここで身を寄せ合って時間を過ごすしかない。だが、大勢の人でひしめきあう避難所の生活は快適とは言えず、物資も十分とは言えない。
 避難の途中で怪我をした者もいる。避難を終えても人々の苦難はまだ続くのだ。

「これはまた面倒な事になってきたね……ま、手がかりがなくなっても困るし、少しは協力しようかな」
 住人の避難誘導を手伝ってきたロベリアは避難所の様子に眉をひそめると、その改善のために動きだす。
 まずは親とはぐれた子供の世話を。彼らの不安が周囲に伝播していかないよう心を配る。
(こういう場所で子供の泣き声って聞いてる方も良い気がしないものだからね)
 そして怪我人の治療を。彼女の紡ぐシンフォニック・キュアの歌声は、共感した人々の傷を優しく癒していく。

 同様に治療に当たるのは、生まれながらの光を放つファルネーゼ。
「先程までとても良い天気でしたのに……何故、この様な嵐が突如現れたのでしょう」
 あまりに急激な天候の変化に彼女は疑問を抱くが、すぐにかぶりを振って意識を切り替える。
「……いいえ、考えている暇はありませんでした。今は兎に角、人々の安全を優先しなければ! エチカ、どうか貴方も力をお貸し下さいませね」
 人々に優しい声を掛け続けながら傷を癒すファルネーゼの傍らで、相棒のエチカも包帯や薬を持って飛び回る。

 二人の猟兵の治療によって、避難民たちから生命の危機はひとまず去った。だが、彼らの表情は今だに暗い。
 この避難生活はいつまで続くのか。嵐が止んでも、果たして元の生活に戻れるのか。自宅や船は無事なのか――。
 尽きることのない不安に、苛立ちを見せる住人や泣き出す子供もいた。

(あまり良くないね、これは)
 泣き出す子供をあやしながら、ロベリアはすっと立ち上がる。
「さて、嵐が過ぎるまでの時間つぶしだ」
 飾りボタン型の音響機器から伴奏を流す。何事かと振り返る人々に、彼女は笑顔を浮かべて。
「良ければ歌でも聞いていってよ。ちょっとは自信があるんだよね」
 紡ぐのは、この町で聞き集めた伝承や物語を題材にした歌。港町の開拓史や数々の偉人の逸話、そしてゴンドラの揺れる町の美しさを、明るいメロディに乗せて歌い上げる。
 それは港町の人々に日常を思い起こさせ、心を安らぎに満たしていく。

 ふと、ロベリアの歌声にもうひとつの歌声が重なった。
 それは人々の心を鼓舞する優しい歌声。聖獣エチカを伴ったファルネーゼの声だ。
 握りしめたその手は、微かに震えている。彼女もまた、この状況に恐怖を覚える少女のひとりだった。
(ファルの祈りに災厄を止める力があれば……)
 それでも決して弱音は吐かない。人々の平穏を心から祈りながら歌声を響かせる。
(絶対に誰も犠牲にはさせません。ファルがさせません!)

 二人のシンフォニアの歌声は人々の希望となって避難所に響き渡る。
 不安に苛まれていた人々の表情は、今は明るい。
 歌い終えたロベリアとファルネーゼが一礼すると、大きな拍手が沸きあがった。

 それから、どれだけの時間をすごした事だろう。
 ふと避難所の人々の耳に、からん、からん、と耳慣れた鐘の音が届いた。
 いったい誰が鳴らしているのだろう。それは、港町をずっと見守り続けてきた鐘楼の鐘の音だった。

 窓を見やれば空には再び太陽が輝き、海は穏やかさを取り戻している。
 嵐が過ぎ去ったことを知った人々は、晴れやかな笑みを浮かべて、割れんばかりの歓声を上げるのだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​




第3章 集団戦 『戯れる仔竜』

POW   :    じゃれつく
【爪 】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD   :    未熟なブレス
自身に【環境に適応した「属性」 】をまとい、高速移動と【その属性を纏わせた速いブレス】の放射を可能とする。ただし、戦闘終了まで毎秒寿命を削る。
WIZ   :    可能性の竜
「属性」と「自然現象」を合成した現象を発動する。氷の津波、炎の竜巻など。制御が難しく暴走しやすい。

イラスト:marou

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 突如訪れた大嵐から、港町の人々を守ることに尽力した猟兵たち。
 彼らの活躍の甲斐もあって、町への被害は最小限に抑えられることができた。

 数日後には港の船の運航も再開され、猟兵たちは船上の人となる。
 目指すは、港町の沖合いに浮かぶ『宝島』だ。船乗りたちも町を救ってくれた恩人とその仲間の頼みとあれば、喜んで船を出してくれた。
「ただ、くれぐれも用心してくだせぇ。宝はともかく、あの島に危険なモンスターがいるらしいってのは、どうもマジみたいですから」
 船長の警告に頷いて、猟兵たちは『宝島』に上陸する。

 モンスターに警戒しながら小島の探索を行う猟兵たち。
 全域を調べつくすのにさほどの時間はかからず、ほどなくして彼らが見つけたのは、しかし金銀財宝のたぐいでは無かった。
 それは――外洋を見渡せる切り立った崖の上に、まるで墓標のように立てられた、一本の船の錨だった。
 長い年月を潮風に晒されていたのであろうそれは、しかし今だ錆び付くことなく形を保つ、不思議な素材でできていた。
 その傍らには小さな石碑がある。

『私はこの場所で、あの町の平和を見守り続ける
 この海の向こうで眠る仲間が取り戻した平和な世界を、いつまでも見守り続けよう
 それが、生き延びてしまった私の――"勇者"になれなかった私の使命だから』

 石碑に刻まれた言葉と、港町で得られた情報から、この場所の意味を猟兵たちは推測する。
 おそらくこの島は――かつて群竜大陸から『船』に乗って帰還したという冒険者の終の住処だったのだろう。
 故郷に帰ることなくこの地の発展に貢献し、現在の港町の基礎を築いたというその冒険者は、ある時ふと姿を消したと言われていたが、実際にはこの島で港町を見守っていたのだ。
 かつての仲間の眠る海がよく見えるこの場所で、最期の時を迎えるまで。
 そして『船』と冒険者の伝説が風化するにつれて、この島の事実も歪曲して伝えられ――いつしか『宝島』と呼ばれるようになったのだろう。

 そこでふと、猟兵は自分たちの周りを囲む幾つもの気配に気付く。
 姿を現したのは、青いウロコを持つ仔竜の群れ――この島にはびこるというモンスターの正体はこれか。
 本来、仔竜は無邪気でそれゆえに染まりやすい性質を持つと言うが、この仔竜たちからは敵意と殺気しか感じられない。
 間違いなくオブリビオンだ。先日の嵐も恐らくは彼らが引き起こしたものだろう。

 仔竜たちは一斉に牙を剥き、海水のブレスを吐きながら襲い掛かってくる。
 猟兵たちは即座に戦闘体制を取り、これを迎え撃つのだった。
エメラ・アーヴェスピア
そう…ここは墓標だった、と言う訳ね…
情報はあまりなかったけど貴方が見守り続けた町、私もしっかりと見せてもらったわ
…できれば錨の調査だけはしておきたいけど…まぁ置いておくわ
それじゃ、お礼に墓標に群がる無粋な者の掃除をしましょうか

そうね…今回はあえてコレを使わせてもらおうかしら
大型砲を一門と小型の機関砲(攻撃回数重視)を多数召喚
最初の一撃は大型砲で行わせてもらうわ
…貴方が見守り続けた町の未来が明るくありますように、『我が砲火は未来の為に』!
…らしくない事をしたかもしれないわね
後は機関砲でオブリビオンを薙ぎ払うだけよ
ここは『町の勇者』の眠る場所、速やかに骸の海へと還りなさい

※アドリブ・絡み歓迎



「そう……ここは墓標だった、と言う訳ね……情報はあまりなかったけど貴方が見守り続けた町、私もしっかりと見せてもらったわ」
 伝説の船の遺物を前に、脳裏にはこの数日で見た港町の光景を思い浮かべながら、エメラは呟く。
「……できれば錨の調査だけはしておきたいけど……まぁ置いておくわ」
 後からゆっくりと調べる機会もあるだろう――この場所が無事でさえあれば。
 振り向いた彼女の視界に入るのは、爪牙を剥き出しにする悪しき仔竜の群れ。
「それじゃ、お礼に墓標に群がる無粋な者の掃除をしましょうか」
 それが、開戦を告げる合図となった。

「そうね……今回はあえてコレを使わせてもらおうかしら」
 エメラが召喚したのは、浮遊する小型の魔導蒸気機関砲が数門に、偉容を誇る大型の魔導蒸気砲が一門。
 大型砲の照準をサイバーコンタクトとリンク。彼女の視線の先へと砲身が向けられ、蒸気と魔力がチャージされていく。
 その脅威を本能で感じ取ったか、仔竜の群れも堰を切ったように襲い掛かる。
 まだ幼体といえど、その爪は紛れもない竜の爪。肉を切り骨を裂き命を絶つ、十分な鋭さを秘めている。
 だが――仔竜が爪の間合いに到達するよりも、エメラの大砲が火を噴く方が早い。

「……貴方が見守り続けた町の未来が明るくありますように、『我が砲火は未来の為に』!」

 耳を劈くようなその砲声は、蒼穹と蒼海に響き渡り、港町にまで届いたという。
 雲霞のごとく押し寄せた仔竜の群れを砲火が貫き、暗雲を払うように群れの一部に穴が開いた。
「……らしくない事をしたかもしれないわね」
 そう呟きながらもエメラは続けて、展開した機関砲による一斉射撃を放つ。
 幾つもの砲を自在に召喚し操るその姿は、まさに歩く魔導蒸気兵器庫の称号にふさわしい。
 一撃で多くの仲間を消し飛ばされた仔竜たちは、その動揺も覚めやらぬまま弾幕に薙ぎ払われていく。
「ここは『町の勇者』の眠る場所、速やかに骸の海へと還りなさい」
 そう呼ばれるに相応しき者の安息を乱す者たちを、エメラの弾丸は容赦なく撃ち抜いていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

キケ・トレグローサ
碑の前でキケがUCを使って兄エドと妹ルナを実体化(JC参照)し対峙。
キケ「街を作った冒険者たちの意志、僕たちが守るよ!」
キケがリュートを奏でエドが歌うのは街で聞いた船乗りたちの鎮魂歌。その旋律に合わせ、ルナが戦場をひらひらと舞う。
エド「碑を刻んだ冒険者たちは勇者ではなかったのかもしれないが、あの町を作った偉大な人物だ」
ルナ「彼らの思いを引き継いで、私たちがあの町を守るのよ!彼らが安らかに眠り続けられるように!」
戦闘する猟兵たちを鼓舞するように演奏を続ける。エドの歌声は力強く、聞いた仲間を癒し、ルナの踊りは可憐で隣に立つ猟兵に勇気を与える。それらをキケの演奏が増幅させ戦場に音色を響かせる


セリオン・アーヴニル
即席協力・アドリブ『可』

集団戦となれば攻撃は最大の防御…であれば、この場はアイツが丁度いい。
「支配率変更――『解放』」
【無窮流転】を攻撃強化を重視して発動。
副次効果で髪を赤く染め上げつつ近接戦が得意な別人格に切替える。

敵の間合い(特に30センチ圏内)に入らない様注意し、
手にした槍剣のリーチを生かし『フェイント』を織り交ぜた『2回攻撃』を主体に攻め重視の戦闘を行う。
戦闘不能レベルの致命傷を与えたら即座に次の獲物に強襲…
という行動を繰返し、戦場を縦横無尽に駆け巡って戦おう。
「数で来るなら好都合。『閃紅』とも呼ばれたその所以、思い知らせてやるよ!」

この戦いが、せめてもの手向けになる事を願いながら。


エルス・クロウディス
なーるほどなー。
この島自体が、その人の墓標でもあるわけだ……ってーなると、
「荒らさせるわけには、いかないな」

数が多いなら、こいつで行こう。
初手は<ダッシュ><ジャンプ>で敵中央に飛び込んで、骸驟佚式で<なぎ払う>。
展開状態を維持するから骸装は使えなくなるけど、<範囲攻撃>ならこいつが一番手っ取り早い。
移動を阻害するわけでもないから、敵の動きを<見切り>、<カウンター>で機先を制する。

……でそのために使うのが疑似全段観測なんですよねぇ。
何か、何か代わりになる便利なUCを作らないと……!(

あ、敵の攻撃は骸驟佚式の視界不良に<残像>混ぜて回避、ウィルを<槍投げ>などして対処します。

アドリブ・連携歓迎



「なーるほどなー。この島自体が、その人の墓標でもあるわけだ……ってーなると」
 仲間を撃ち落されながらも迫る仔竜の群れを前に、エルスは骸装の形態を解き、螺旋状に広がる黒い帯へと展開し。
「荒らさせるわけには、いかないな」
「うん。街を作った冒険者たちの意志、僕たちが守るよ!」
 力強く頷きながらキケがリュートを奏でると、その魂に宿る兄エドと妹ルナの人格が実体化する。
「集団戦となれば攻撃は最大の防御…であれば、この場はアイツが丁度いい」
 同じく多重人格者のセリオンは、呪術を用い近接戦が得意な人格に切替える。
「支配率変更――『解放』」
 髪を赤く染め上げながら、槍剣『オルファ』を手に彼は駆ける。

「碑を刻んだ冒険者たちは勇者ではなかったのかもしれないが、あの町を作った偉大な人物だ」
 3兄弟「流浪の楽団」の長兄エドが歌うのは、港町で聞いた船乗りたちの鎮魂歌。
 伴奏を奏でるのはリュート弾きのキケ。そして二人の旋律に合わせ、末妹のルナが戦場をひらひらと舞う。
「彼らの思いを引き継いで、私たちがあの町を守るのよ! 彼らが安らかに眠り続けられるように!」
 彼らの演奏は思いを同じくする者に力を与え、前線に出る猟兵たちを強化する。

「数が多いなら、こいつで行こう」
 3兄弟の支援を受けながら、エルスは展開状態の骸装を纏ったまま敵の群れの中央に飛び込んだ。
 闘争本能に満ちた仔竜たちは、格好の獲物とばかりに我先にエルスに襲い掛かる。
 だが、疑似全段観測を発動中の彼はその動きを見逃さない。極限の集中力で敵の動きを見切り、その爪が己を引き裂く前に機先を制する。
「――――廻れ、俺の――――!」
 技の名は骸驟佚式。展開された骸装の力が解き放たれ、黒い帯が螺旋の渦を巻く。
 それはさながら漆黒の竜巻のごとく、仔竜の群れを吹き飛ばした。

「数で来るなら好都合。『閃紅』とも呼ばれたその所以、思い知らせてやるよ!」
 赤髪の人格に交代したセリオンは、好戦的な笑みを浮かべながら槍剣を振るう。
 肝要なのは敵の間合いに入らないこと。鋭いが短い仔竜の爪と自身の武器のそのリーチの差を活かし、フェイントを織り交ぜた連続攻撃を仕掛けていく。
 成す術のない仔竜に致命傷を与えれば、即座に次の獲物へと狙い定め強襲する。
 決して足を止めることなく戦場を駆け巡りながら戦うその姿は、紅の閃光のようであった。

「ギィィッ!」
「ガァッ!」
 近接戦で猟兵に圧倒される仔竜。だが彼らが咆哮を上げると周囲の大気が震えた。
 巻き起こるのは「水」属性の「嵐」。可能性の竜たる彼らはその身に馴染んだ属性と自然現象を操る力を持つ。
 港町を襲ったそれと比べれば格段に規模は小さいが、それでも強烈な風雨が前線で戦うエルスとセリオンを襲った。

 吹き飛ばされそうになる二人を支えたのは、「流浪の楽団」の演奏だった。
 エドの歌声は力強く、たとえ嵐の中でも掻き消されることなく、聞いた仲間の肉体を癒す。
 ルナの踊りは可憐で、吹き荒れる暴風と戯れるように舞い続け、仲間の心に勇気を与える。
 それらをキケの演奏が増幅させ、戦場に音色を響かせる。どんな嵐にも決して屈さぬ船乗りたちの歌を。

 心身から力が漲るのを感じたエルスは、再び骸驟佚式を発動させ嵐の勢いに抵抗しながら、その手に自らの意志――ウィルを顕現させる。
 湧き上がる勇気を乗せて投げ槍のように放たれたそれは、嵐を引き起こす仔竜の一体を貫く。
 同時に、風雨に真っ向から立ち向かうように駆ける『閃紅』のセリオンが、また別の仔竜に肉迫する。
(この戦いが、せめてもの手向けになる事を願う)
 此の地に眠る者への鎮魂の想いを込め、振り下ろされた槍剣が仔竜を両断する。

 ユーベルコードを発動させていた仔竜が倒れ、嵐が止む。
 再び姿を現した晴天の下で、猟兵たちは戦い続ける。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

月島・彩希
【組合討伐隊】で参加
組合の皆さんとご一緒出来るのは頼もしいですね

『戦闘』
私はスピードによる敵の撹乱と攻撃を担う
鍛えた【ダッシュ】と雷迅槍(UC)を用いて高速戦闘
蓄積した【戦闘知識】と【野生の勘】を駆使して敵の行動を予測し、敵のブレスを放つ前に【氷属性】を纏わせた短槍を【槍投げ】に用いて攻撃、敵を凍結させる
敵攻撃は【残像】を用いて回避
攻撃や回避は【フェイント】を交ぜることで相手を【釣り】、敵が特定の位置に集まるように十六夜さんと協力して誘導、絵里香さんの範囲攻撃で一網打尽にする
また離脱する際に【雷属性】を纏わせた槍を敵集団の中心に【投擲】、雷の魔力解放による【麻痺攻撃】で敵が逃げないようにする


神宮寺・絵里香
【組合討伐隊】で参加
≪心情≫
・さてこの間の嵐の借りを熨斗をつけて返すとしよう。
・最近はサポートメインだったが、今回はアタッカーで行かせてもらおう。
≪戦闘≫
・以前交戦した【戦闘知識】を基に攻撃を【見切り】、爪の一撃等は
 薙刀で【武器受け】して逸らす。
・海水のブレスは【高速詠唱】からの『水神権限』で霧化させて無力化。
 雲を霧散させるのに比べればなんともない。
・彩希や十六夜と連携して集団に斬り込む
・役割は速度特化の2人に掻きまわされた敵を一網打尽にすること
【水属性】をつけた薙刀で【薙ぎ払い】、離れた敵は【槍投げ】で対処。
・敵が纏まったら【力溜め】【全力魔法】からの【範囲攻撃】UCで一気に
 焼き払う。


アリス・レヴェリー
【組合討伐隊】で参加。
「分かったわ、アマータさん!精一杯頑張るわね!」
可愛らしいけれど、竜の怖さや凄さはダイナ達に聞いて知っているつもりよ。
外見に油断せずに【歌唱】を込めた【ミレナリオ・リフレクション】を使って、アマータさんとわたしで【可能性の竜】を打ち消すわ。
実際に自然現象を起こすところは先程の大嵐の時にムートの上から充分見たし、わたし自身も自然現象を扱うUCを使えるから、しっかり【学習】出来ているわ。
仔竜や仔竜の攻撃がこちらに来たり、皆に攻撃が通りそうな場合は【刻名の懐中時計】のⅠ~Ⅻの結界で遮断するわ。
「サポートはわたし達に任せてちょうだい!」
※アドリブ歓迎


アマータ・プリムス
【組合討伐隊】で参加

誰かに害を為すというのなら申し訳ありませんが退治させていただきます
「いきますよ、アリス。今回は当機が合わせます存分に唄いなさい」
イーリスを【楽器演奏】で掻き鳴らし【武器改造】でアンプに変形させたアルジェントムに接続。
今回はアリスの歌に合わせて【歌唱】今回の当機はコーラス。
UCを発動して当機とアリスの歌声で可能性の竜は全て打ち消し。
先の嵐もおそらくこのUCによるものでしょうから対策は【学習力】で既に練っています。

「サポートは万全です。皆様存分に戦ってください」
《Ars longa, vīta brevis》と《Facta, non verba》も併用し他の方にバフと回復


月代・十六夜
「あれ?これもしかしてやることなくない?」

【組合討伐隊】で参加。
サポート二人の打ち消しに水属性にガン刺さりするアタッカー二人。
……ちょっと自分の存在意義を考えたが、まぁ気にしないでお仕事するとしますかね。
【韋駄天足】と【スカイステッパー】で集団の中に飛び込んで【時間稼ぎ】に努めるぜ。
サポート二人の歌に合わせて飛び回って【フェイント】を入れながら【視力】で間合いを【見切っ】て【聞き耳】で視界外からの攻撃を避けよう。いい感じに敵が集まったら適当な攻撃を【ルアーリング】して隙を作ってアタッカー二人に取ってもらおうかね。
あとは投げられた槍の回収とか細々と雑用雑用っと。



「さてこの間の嵐の借りを熨斗をつけて返すとしよう」
 白蛇の意匠がついた薙刀「叢雲」を構え、敵集団に斬り込んでいくのは絵里香。
 嵐の到来の際にはサポートに徹していた彼女だが、今回はアタッカーとして前線に出る。
「組合の皆さんとご一緒出来るのは頼もしいですね」
 彼女と並走するのは戦場に合流した月島・彩希(灰色狼・f12810)。
 その手に握りしめた灰狼の槍には、今は氷と雷の二重の魔力が宿っている。

「誰かに害を為すというのなら、申し訳ありませんが退治させていただきます」
 二人の後方で、アマータはイーリス・カントゥスをアンプに変形した銀のトランクに接続。
 いつでも必要な支援の歌と演奏を戦場に響かせる用意を整える。
「可愛らしいけれど、竜の怖さや凄さはダイナ達に聞いて知っているつもりよ」
 仔竜の外見に油断しないよう気を引き締め、アリスはアマータの隣に立つ。
 その手には、文字盤にⅠからⅫの結晶が嵌め込まれた、真鍮製の刻命の懐中時計が握られている。

「あれ? これもしかしてやることなくない?」
 敵の属性と相性の良いアタッカー二人と手厚いサポート二人の陣容に、十六夜はふと自分の存在意義を考えたが。
「まぁ気にしないでお仕事するとしますかね」
 いつもと変わらぬ軽快な身のこなしで、敵集団の中に飛び込んでいく。

「グルルルルッ!」
 猟兵相手に劣勢の仔竜たちは、怒りの唸りを上げながらその身に水の属性を纏う。
 その身のこなしは流水のごとく加速し、口からは青い魔力が迸る。
 未熟ながらも竜としての真の力を解き放った仔竜は、次々に猟兵たちに襲い掛かっていく。

「サポートは万全です。皆様存分に戦ってください」
 敵が自己強化を発動させたのを見るや、アマータはすかさずギターをかき鳴らして歌を紡ぐ。
「―――この歌を聴いた皆様に力と祝福を」
 奏でる曲の名は「Facta, non verba」。心身を昂ぶらせる歌と旋律が前衛の戦闘力を強化する。
 これならば彼我の戦力差は五分――否、それ以上。

「速さなら負けはしません」
 灰狼の槍の穂先に纏わせた雷の魔力が、彩希の全身を包み込む。
 雷光と化した彼女のスピードは今の仔竜にも劣らない。鍛えた脚力で標的の懐に飛び込むと、速度を落とすことなく一撃を加え、即座に離脱する。
 水を纏う仔竜は槍から迸った凍気と電撃によって凍りつくか、あるいは感電させられていく。
「そら、こっちだぞっと」
 十六夜は空を舞う仔竜の周りを挑発するように跳び回り、敵の注意を自身に引き付けていく。苛立った仔竜が襲い掛かっても、彼の韋駄天足には追いつけない。
 素早くはあっても幼さゆえにか直線的な動きは簡単に見切られ、たとえ視界の外から飛び掛かっても、十六夜の聴覚はその接近を聞き逃さず回避する。
「こいつらとは前にやりあったことがあるな」
 絵里香は以前の交戦で得た戦闘知識を元に仔竜の動きを見切り、突進してくる相手の爪牙を薙刀で受け流す。
 そして水を纏う薙刀を振るい、彩希の攻撃で動きの鈍った敵や、十六夜の動きに気をとられた敵を一網打尽に薙ぎ払っていく。

 やはり接近戦においては、武術や体術を練磨した猟兵たちに分がある。
 ならばと仔竜たちは上空に飛び上がると、一斉に口内に水の魔力を溜め始める。
 竜の象徴たる攻撃手段、ブレス。たとえ未熟であってもこれだけの数ならば、その威力は一頭の成竜にも匹敵しよう。

「やらせません……!」
 ブレスの兆候を見た彩希はすかさず短槍を取り出すと、その穂先に氷の魔力を纏わせ投げ放つ。
 投槍は狙い過たずに空中の仔竜を貫通し、その体を凍結させていく。
「ガアアッ!!」
 仲間を凍らされた怒りに震え、残りの仔竜が一斉にブレスを放つ。
 その射線上に飛び込んだのは絵里香。一瞬の詠唱で水神権限を発動させた彼女は、怒涛の勢いで押し寄せる水流に手をかざす。
 その瞬間――水のブレスは液体から気体へと変わり、文字通りに「霧散」した。
「雲を霧散させるのに比べればなんともない」
 余裕の表情で霧を振り払う絵里香を見た仔竜たちが戦慄する。
 その隙を突いて彼女も短槍を投擲し、上空の敵を撃墜していく。
「よっと」
 標的を貫いて落下する短槍は、十六夜が空中でキャッチすると、元の持ち主に投げ返していく。

 ブレスを無効化された仔竜たちだったが、それでも彼らはまだ諦めない。
 ならばより強大な一撃を叩き付けてやれば、流石に耐えられまいと。
「ギャオオオオオオオオオオオオオオッ!!!!!!!!!」
 幼きその身に宿る可能性を総動員し、仔竜たちは咆哮する。先日、港町を襲った大嵐にも匹敵する暴風と豪雨を呼び寄せるために。

 戦場に吹き荒れる嵐の前兆に、アマータは歌唱を一時中断すると、傍らに立つアリスに呼びかける。
「いきますよ、アリス。今回は当機が合わせます、存分に唄いなさい」
「分かったわ、アマータさん! 精一杯頑張るわね!」
 緊張気味に小さく息を吸ってから、アリスは静かに歌い始めた。
 自然現象を操るユーベルコードは仔竜の専売特許ではない。彼女は世界を奏で想いを詩う者。町を襲った嵐の件を含め、敵の能力はしっかり学習し理解している。
 仔竜が咆哮にて嵐を操るならば、アリスは歌唱にてそれを相殺する。それが彼女のミレナリオ・リフレクション。
「聴きなさい、彼女の歌を。味わいなさい、歌の力を」
 コーラスと伴奏を担当するのはアマータ。アリスの歌声を支えるように、爪弾く旋律は寄り添うように。
 ゴンドラに揺られながら歌ったあの時のように、二人の歌声は唱和し戦場に音楽が満ちる。
 再び戦場を覆わんとした暗雲はかき消され、空には太陽の輝きが蘇る。

 大技が不発になった隙を見逃さず、飛び出したのは十六夜と彩希。
「そんじゃ追い込みますかね」
「ええ!」
 軽やかな空中機動で仔竜に接近した十六夜はレガリアスシューズで蹴りを放つ。
 思わず身構える仔竜だったが、それはフェイント。隙が生じた次の瞬間には、槍と共に一迅の雷と化した彩希が獲物を貫く。
「グル、ゥ……ッ!」
 息絶える直後、仔竜は最後の力を振り絞ってブレスを吐いた。
 至近距離からの鉄砲水に、避け切れないと彩希が身構えた直後、眼前に現れた結界がブレスを遮った。
「サポートはわたし達に任せてちょうだい!」
 文字盤のⅠに嵌められた世界の雫を代償に、刻命の懐中時計の力で仲間を護ったアリスが叫ぶ。
 アマータも再び「Facta, non verba」で味方の強化に徹している。
「ありがとうございます」
「ならこっちはこっちの仕事を、だな」
 支援と防御を後衛に任せ、彩希と十六夜はそのまま円を描くような動きで仔竜の攻撃と撹乱に専念する。
 二人の速さと挙動に対応できない仔竜たちは、徐々に一箇所に追い込まれていく。

 十分に敵を纏めたところで、彩希は雷を纏わせた槍を投擲した。
 槍は群れの中心で雷の魔力を解放し、周囲に迸った雷光が仔竜たちを麻痺させる。
「今です!」
「後よろしく!」
 敵の動きが止まったのを確認した彩希と十六夜が離脱する。その直後、合図を受けた絵里香が真言を唱える。
「ナウマク・サマンダ・ボダナン・インダラヤ・ソワカ! 神々の王の裁きよここに! 魔を滅ぼせ因達羅の矢よ!!」
 天上より雷鳴を轟かせて降り注いだ青白き稲妻が、仔竜たちを焼き払う。
 十分な力を溜めて放たれたその威力たるや、落雷の中心付近にいた仔竜は断末魔さえ上げられず消滅したほどである。
 雷鳴の余韻がおさまった時、生き残った仔竜の数は戦闘開始時の三割程にまで激減していた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

ニルズヘッグ・ニヴルヘイム
なるほど、仔竜でも、これだけ集まれば結構な力になるものだな。
敵意しかないのはやりやすくて良い。
そちらが売った喧嘩だ。貴様らの命ごと買ってやるから、感謝しろ。

ここを終の棲家にしたらしい冒険者には悪いが、ま、あの街を守るためだ。
少々荒らすが、許してくれよ。

竜には竜で対抗と行こう。往くぞ蛇竜!
槍で【串刺し】にしたら、そこから【ドラゴニック・エンド】を発動する。
少々忍びないが、かき集めた【呪詛】も載せてやれば、結構な威力になるであろう。
後はいつも通りだ。
炎と尻尾の【なぎ払い】で一掃するとしよう。
海水が何だ、水ごと焼き払ってくれるわ!



「グルルルルルルル……」
 猟兵らの活躍によって次々と撃破されていく仔竜たち。だが当初より大幅に減ったとはいえ、その数の力は今だに健在。
 寧ろ倒された仲間の仇を討たんと、殺意をいや増して襲い掛かってくる。

「なるほど、仔竜でも、これだけ集まれば結構な力になるものだな」
 未熟ながら嵐を呼ぶほどの彼らの力を目の当たりにしたニルズヘッグは、しかし自信に満ちた笑みを崩さずに告げる。
「敵意しかないのはやりやすくて良い。そちらが売った喧嘩だ。貴様らの命ごと買ってやるから、感謝しろ」
 黒の長槍「Ormar」を構え、その穂先に呪詛の力を迸らせながら。

「ここを終の棲家にしたらしい冒険者には悪いが、ま、あの街を守るためだ。少々荒らすが、許してくれよ」
 ちらと墓標の錨に視線を向けてから、ニルズヘッグは仔竜の群れに突進する。
 迎撃の爪が振り下ろされるよりも速く、彼の槍は先頭にいた一匹の仔竜を貫いた。
「ギ、ギギィッ……!」
 串刺しにされた仔竜が上げる断末魔をニルズヘッグは聞き届け、己が力とする。
 それは生者の情念と死者の怨嗟を呪詛に変える、彼が忌み子と呼ばれた所以。
「竜には竜で対抗と行こう。往くぞ蛇竜!」
 取り込んだ呪詛を槍に載せ、ニルズヘッグはドラゴニック・エンドを発動する。
 長槍はその真の姿を顕わし、黒き蛇竜へと姿を変え――動揺する仔竜の群れを睥睨すると、灼熱の炎を吐き出した。

 今の蛇竜に力を与えているのは、仔竜一匹分の死の呪詛だけではない。
 大嵐に襲われた港町の人々が感じた、恐怖や悲嘆といった数多の負の情念――救助に奔走する過程でかき集めた彼らの呪詛も上乗せされている。
「海水が何だ、水ごと焼き払ってくれるわ!」
 彼が豪語する通り、蛇竜のブレスは仔竜の纏う水の魔力など意にも介さず本体ごと蒸発させていく。
 さらにその尾が一薙ぎする度、何匹もの仔竜が木の葉のように宙を舞う。
 これこそが"仔"ではない、真の竜の力だと誇示するように。
 蛇竜は咆哮を上げ、脅える仔竜の群れを蹂躙していく。

成功 🔵​🔵​🔴​

月宮・ユイ
まったく、仲間を、町を思い眠る人がいる場所で無粋ね…
錨はどうやら特別製で頑丈そうだけど、石碑や周りの土地を壊し荒らさないよう気をつけましょう

▼武装
[星剣]蛇腹剣:薙ぎや”衝撃波で範囲攻撃”も
[兵装・倉庫]暗器・ナイフ”投擲”

”視力、暗視、聞き耳、第六感”
感覚を研ぎ澄ませ敵の動きを”見切り、情報収集”戦闘中も”学習力を基に戦闘知識”経験を蓄積、最適化
”高速詠唱、全力魔法、早業、ロープワーク”【縛鎖】
動きを”見切り、追跡”暴れまわれないよう縛っていく
石碑等を壊されそうなら鎖で周囲を囲い”かばう”

戦い終わったら荒れた周囲を”掃除”
最後に”祈り、覚悟”を『今度は私達が護ります…』

アドリブ・絡み協力歓迎


クリスティアーネ・アステローペ
まったく、冗談じゃないと嘆くべきかしら
思いつく限り特に相性がよろしくないブレスですこと!
可愛らしいだけに色々残念ねえ

とはいえこの程度に後れを取るのもあってはいけないことですし
ちょっとした訓練だとでも思おうかしらね


【咎力封じ】でその口を縛り付けてあげましょう
封じ切るまでに何度かは吐かれるでしょうけど直撃は避けたいわね
じゃれつきに寄ってきたら【咎を穿て、赫き杭】で串刺しにして
動きが止まったのなら首を刎ねておしまい、ね


それにしても
仮に生き延びたことが罪だとしても
既にそれは灌がれているでしょう
骸の海ででも、己の成果を誇って欲しいわ
とても綺麗な、いい街だったわ
(錨に街で購入した小さな酒瓶を供え短く祈り


ファルネーゼ・アトラス
今回の嵐をこの子達が起こしたならば
再び起こり、今度はもっと被害が出る可能性があります
…可哀想ですが、放置する訳には参りません
おいたをしては駄目ですよ
めっ、です!

仔竜様方の手数が多い分、皆様の怪我が心配です
ならば、ファルは【シンフォニック・キュア】で回復を試みます
竜へ果敢に挑む勇者達を鼓舞する様に、声高らかに歌い上げます
ファルに出来るのはこれだけ――けれど、喉だけは丈夫ですので大丈夫です!
ファルが歌う事しか出来ない分、何かあればエチカが皆様へ御報告
暴走し易いという自然現象…特に被害が広範へ至りそうなものがありましたら直ぐに知らせて貰いましょう

戦闘後、この地で眠る冒険者様へ一礼して
…どうか安らかに



「まったく、仲間を、町を思い眠る人がいる場所で無粋ね……」
 安息の地を荒らす仔竜たちを冷たい眼差しで見据え、ユイは自らのコアから星剣「ステラ」を創生する。
 これ以上この地を壊し荒させはしないと、冒険者の石碑を背にしながら。
「今回の嵐をこの子達が起こしたならば、再び起こり、今度はもっと被害が出る可能性があります」
 そう口にするのはファルネーゼ。彼女が危惧する通り、万が一この仔竜の何匹かでも生き延びれば、成長しより大きな災厄を齎す恐れもある。
「……可哀想ですが、放置する訳には参りません。おいたをしては駄目ですよ。めっ、です!」
 精一杯の怒りを表情に浮かべて、仔竜たちにびしりと指を突きつける。

 生き残った仔竜の数はもはや少ない。しかし、だからこそ死に物狂いで猟兵たちに襲い掛かってくる。
 全力を振り絞って水の魔力を纏った仔竜たちは、流水のブレスを次々と発射する。
「まったく、冗談じゃないと嘆くべきかしら。思いつく限り特に相性がよろしくないブレスですこと!」
 断頭斧槍"救済者フランツィスカ"を振り回し、ブレスを弾くクリスティアーネが思わず叫んだ。
 水路の町に大嵐、そして水の竜。思えば今回の依頼は彼女の頭痛のタネの連続であった。
「とはいえこの程度に後れを取るのもあってはいけないことですし、ちょっとした訓練だとでも思おうかしらね」
 ブレスを切り払った直後、クリスティアーネは咎力封じの拘束具を取り出し放つ。
 猿轡が仔竜の口を縛り付け、ブレスを封じる。その隙に彼女は標的へ接近すると、ぶおんと得物を一閃し。
 処刑人の斧刃が、颶風と共に仔竜の首を刎ね飛ばす。

(保管庫へ接続。対象を分析解析、読取取込、情報収集。縛鎖強化更新最適化)
 一方のユイは感覚を研ぎ澄ませ、高速で飛び回る仔竜たちの動きを見切り、情報を収集。戦闘中も自身の経験を蓄積、最適化していく。
「永久の縛りを……」
 虚空より彼女が召喚したのは黒、銀、金の三色からなる無数の鎖。
 それらは逃げ回る仔竜をどこまでも追尾し、暴れまわれないよう縛り上げていく。
「ギュゥゥゥゥッ!」
 身動きが取れなくなった仔竜たちは、もがきながら闇雲にブレスを放った。
 鉄砲水――否、もはやウォーターカッターのような水流が四方八方に襲い掛かる。
「くっ……!」
 ユイは咄嗟に冒険者の石碑の周りを鎖で囲い、ブレスによる破壊からかばう。
 だがその結果自身への攻撃の対処が遅れ、ブレスに肩を貫かれる。
「可愛らしいだけに色々残念ねえ」
 クリスティアーネもまた、残った仔竜の口すべてを封じ切るのは間に合わず、直撃を避けながらも幾らかの手傷を負っていた。

 二人が守勢に回った隙に、仔竜は拘束から逃れ、一斉に可能性の竜を発動する。
「ギャオオオオオオッ!!!!」
 三度戦場に吹き荒れんとする嵐。暗雲が空を覆い、海は荒れ、風が逆巻く。
 ユイとクリスティアーネの表情に緊張が走った――その時、高らかな歌声が戦場に響く。

 それはファルネーゼの歌うシンフォニック・キュア。
 竜へ果敢に挑む勇者達を鼓舞するその調べは、傷ついた二人の身体を癒していく。
(ファルに出来るのはこれだけ――けれど、喉だけは丈夫ですので大丈夫です!)
 嵐の音にもかき消されぬよう、ありったけの声量と想いを込めて歌い続ける。
 そんな彼女に代わって、星の聖獣エチカがその輝きで仔竜の群れの一点を示す。
「あの竜を狙え、ということですか?」
 ユイは咄嗟に兵装倉庫からナイフを取り出すと、輝きが示した仔竜に投げ放つ。
「ギィッ?!」
 悲鳴を上げて落下していく仔竜――その瞬間、嵐が乱れた。
 どうやらあの仔竜は、群れ全体のユーベルコードを統率し制御する、司令塔の役割を担っていたらしい。

 敵のユーベルコードが制御を失った、その隙を見逃す猟兵ではない。
 再びユイは縛鎖を、クリスティアーネは拘束具を放ち、仔竜の群れを今度こそ完全に拘束していく。
 嵐を操る咆哮もブレスも放てぬよう、口を封じる鎖と猿轡はより念入りに。
 仔竜たちのユーベルコードは封印され、嵐の雲は消滅する。

「これ以上、この地で暴れさせはしません」
 無防備となった標的目掛けて、ユイは蛇腹剣の形を取った星剣を振るう。
 しなる刃と共に放たれる衝撃波が、仔竜たちを薙ぎ払っていく。
 そこにクリスティアーネが追撃のユーベルコードを発動させる。
「汝を裁くは顕世の法理。贖え、己が血潮と痛苦を以て」
 咎を穿て、赫き杭――血と呪詛と祈りで作られた無数の杭が、地面より仔竜たちを串刺しにする。

「ガ、グゥゥ、アァ……」
 最後に残った仔竜に、ユイは星剣を、クリスティアーネは処刑人の剣を構え。
「これで――」
「おしまい、ね」
 二つの斬光が同時に閃き――斬り捨てられた仔竜の骸は水のように溶けて消え、後には元通りの平和な海と空だけが残ったのだった。

 戦いが終わると、ユイは荒れた周辺の掃除を行う。
 そして石碑が破壊されなかったことに安堵すると、最後にその前で祈りを捧げ、覚悟を誓う。
(今度は私達が護ります……)
 同様に、この地で眠る冒険者に向けて一礼するのはファルネーゼ。
 相棒のエチカも、彼女の傍らで静かに瞑目する。
「……どうか安らかに」
 そしてクリスティアーネは、街で購入した小さな酒瓶を錨の前に供えて呟く。
「仮に生き延びたことが罪だとしても、既にそれは灌がれているでしょう。骸の海ででも、己の成果を誇って欲しいわ」
 短く祈り、そして優しく微笑み。
「とても綺麗な、いい街だったわ」

 その時、その場にいた全ての猟兵たちは、錨から暖かな光が放たれるのを見た。
『私たちの町を護ってくれて、ありがとう』
 潮騒の音にかき消されてしまいそうな囁きは、しかし決して幻聴などではないと、誰もが確信する。

 ――この地に残された『勇者』の意志を、猟兵たちは確かに受け取ったのだ。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2019年03月13日


挿絵イラスト