ヤジュル・ヴェーダは黄金に反照す
エレイン・アイディール
エレインがヴェロキラ・ゴールドブリンガーでキャバリアファイトするノベルをお願いします。
ヘレナも一緒です。
アドリブ・改変歓迎です。
困難・不明な点の解釈はお任せします。
●場所
クロムキャバリアならどこでもOKです。
海鶴マスター様のシナリオで登場した舞台だったりNPCが登場したりしても楽しいかも知れません。
海鶴マスター様のPCに登場頂いてもOKです。
●友軍と敵軍
特に指定はありませんのでいい感じに見繕ってください。
●その他
以下は執筆時の参考資料としてください。
●エレイン
エルネイジェ王国の有力貴族のひとつであるアイディール侯爵家の令嬢です。
士官学校を優秀な成績で卒業しました。
エルネイジェ王国軍に所属していました。
現在は同軍の聖竜騎士団所属です。
階級は中尉です。
少し前に猟兵となりました。
戦艦も操縦出来るので、聖竜騎士団では貴重な人材です。
●性格
無自覚にヘイトを振り撒く高飛車貴族令嬢です。
プライドが高く傲岸です。
家柄と血筋を誇りとしており、自分に強い自信を持っています。
「わたくしは誇り高きアイディール侯爵家の女よ!」
頑固で負けず嫌いです。
「おふざけでない! わたくしがいつ負けを認めたっていうの!?」
「くっ! 殺しなさい!」
●思想
貴族主義的な思想を持ち、高潔な精神と優れた能力を持つ者が民衆を導くべきと考えています。
「庶民はすぐに迷い、騙され、争ってしまうものよ。わたくし達のような高潔な信念を持つ者が先に立ち、導かなければならないのよ!」
●人間関係
性格が災いして、軍では上下からも横からも嫌われてしまいました。
虐められてるのですが、本人に自覚は無く、認めようとしません。
「誰もわたくしの信念を理解しようとしない! こんなのは間違っているわ!」
「わたくしに能力が無いですって!? あり得ないわ! わたくしはアイディール家の女なのよ!」
●戦闘傾向
高潔なる者は率先して戦場に立ち、武功を示すべきと考えています。
なので好戦的です。
「ハーブ畑? キャバリアの製造? そんなものは庶民の仕事だわ! わたくし達は戦場で名誉を勝ち取るべきよ!」
正々堂々とした戦いを好みます。
「さあ! かかってらっしゃい! このわたくしに出会った事を後悔させて差し上げるわ!」
●ヘレナとの関係
ヘレナが大嫌いです。
顔を合わせれば嫌味ばかり言います。
暗殺・諜報・隠密は恥ずべき非道だと考えているからです。
「あんな穢らわしいキツネが栄光の聖竜騎士団の一員だなんて信じられないわ」
「卑しい暗殺者が騎士を騙るだなんて!」
「まったく! ソフィア殿下はどういったお考えなのかしら!」
あまり名前で呼びません。
「ミラージュテイルの穢らわしいキツネ」や「キツネ」呼ばわりします。
「やれやれ……暗殺だけでは飽き足らず、わたくしの手柄さえも横取りしなければ気が済まないのかしら?」
「わたくしの闘い振りをコソコソ隠れて見ていればよろしくてよ!」
●アイディール家
古い歴史を持つ家系です。
侯爵の爵位を持ちます。
エルネイジェ王国の様々な業界や軍需産業分野に太いパイプを持ちます。
資産家としても有名です。
「アイディール家は王国に無くてはならない家系よ」
聖竜騎士団に多額の出資を行っています。
「ソフィア殿下もわたくしの家の重要性をよくご存知の筈だわ」
●実際は
軍内で虐められているエレインを両親が憐れみ、出資を条件に聖竜騎士団へ引き取らせました。
これには王室と深い繋がりを持ちたいというアイディール家側の思惑もあります。
資金難だったソフィアはこれを承諾しました。
名目上は戦艦を扱える人材をスカウトしたという扱いになっています。
エレインはこの事を知りません。
●アイディール家が王室と繋がりを深めたくなった動機
エルネイジェ王国の政治の実権は議会側に大きく比重が傾いています。
しかし昨今は王家の人間と、王家直轄の聖竜騎士団から猟兵が立て続けに出現しています。
猟兵が持つ人材的価値の大きさはこれまでの第六猟兵の物語が示す通りです。
アイディール家はその価値の可能性を高く評価しており、いずれ政界にも影響を及ぼすと予想し、今の内に取り入りたいと考えました。
●ヴェロキラ・ゴールドブリンガー
エレインが両親のコネを濫用し、実家の私財を湯水の如く注ぎ、無理矢理作らせた特別仕様専用機です。
「高潔な者には高潔なキャバリアが相応しいのよ! 当然の身嗜みだわ! それともドレスコードというものをご存知無いのかしら?」
全身をゴールド・オリハルコニウム製の黄金装甲で覆っています。
この金属はビームを弾く性質を持ちます。
当然ながら隠密性は皆無です。
「何か問題? わたくしに隠れる必要なんてないわ!」
装甲以外もエレイン監修の元で機体全体に徹底的な改修が加えられました。
製造コストが非常に高額で、ゴールドブリンガーを一機作るのに通常のヴェロキラの30機以上のコストが必要とされています。
エレインはこの機体を非常に気に入っています。
「すばらしいわ! まるでアイディール家の権威と財力が形になったかのようだわ!」
「行くわよゴールドブリンガー! わたくしと共にアイディール家の威光を世界へ示すのよ!」
●性能
機体本体は運動性能と耐久性に優れ、激しい格闘戦が得意です。
重装甲の敵や多数の敵と交戦する状況を想定し、機動力の低下と引き換えに重武装化しました。
顎に内蔵するハイパープラズマバスターは非常に強力ですが、発射中は移動出来なくなる欠点があります。
●戦闘方法
まず撃ちまくります。
「お〜っほっほっほ! 弾丸のシャワーはいかがかしら!?」
格闘戦の方が有利と判断すれば武装をパージして身軽になります。
「やはり騎士の戦いはこうでなくては!」
ビームは弾きます。
「あらあら? 火力が足りていないようね?」
シンプルな力押しが基本です。
「小細工なんて必要ないわ!」
ヘレナ・ミラージュテイル
ヘレナがヴェロキラ・ディアストーカーでエレインに付き添うノベルをお願いします
ヘレナは脇役でもOKです。
●何人合わせ?
エレイン
ヘレナ
以上2名です
同背後キャラの合わせなので扱いの公平性等は気にしないでください。
●付き添う理由
猟兵となったばかりのエレインの補助をソフィアから言い付けられました
「あーあ、殿下も楽しい仕事を押し付けてくれちゃって……」
●エレインとの関係
呼び方は「アイディール家のお嬢様」「エレインお嬢様」「ご令嬢」「性悪」「あの金ピカ」など。
気が合いません。
「ねぇねぇ、あの金色みた? ホント趣味が良いわよねぇ……アイディールのご令嬢の感性には脱帽だわー」
「何を食べたらあんな幸せな性格になれるのかな〜?」
「流石エレインお嬢様は勇敢ね〜? あんな馬鹿正直な戦い方、あたしには真似できませーん」
「あたしキツネだからわかんな〜い」
●戦い方
基本的に遠距離狙撃でヴェロキラ・ゴールドブリンガーを支援します。
「ディアストーカー、狙い撃つわよぉ」
エレインとは気が合いませんが、仕事は仕事なのでちゃんとやります。
「つくづく善いキツネ過ぎるわよねぇ……あたしって」
でも意地悪したくなったので獲物を横取りしまくります。
「ごめんね〜? 手こずってるみたいだったから撃っちゃった」
レーダーで敵の位置を把握していますが、ヴェロキラ・ゴールドブリンガーの背後から接近する敵などが居たらわざと黙っています。
「あら〜? アイディール家の女なんだから気付いてると思ったんだけど?」
●犬猿の仲
「あーあ、殿下も楽しい仕事を押し付けてくれちゃって……」
ヘレナ・ミラージュテイル(フォクシースカウト・f42184)は嘆息した。
彼女の主たる聖竜騎士団団長にして皇女の命令であれば、彼女は喜んで受けただろう。
今回だってそうだ。
彼女の命だからこそヘレナは恭しくも拝命したのだ。
でも、それにしたって限度ってもんがあるのである。
ローエングリン級大型戦艦『ローエングリン』――皇女殿下が所持する大型戦艦の一隻。そのカタパルトデッキが旋回する。
すでに自身は『ヴェロキラ・ディアストーカー』でもって出撃し、狙撃地点を確保している。
さらに機体が出撃するというのならば、これの援護に回らなければならない。
発艦のタイミングというのはいつだって狙われやすい。
近頃頻発している『エルネイジェ王国』近郊におけるオブリビオンマシンの湧出。
これに自分たち聖竜騎士団が対処に出ているのだ。
敵は無人機の『イカルガ』である。
「皇女殿下が言うには、高性能機みたいだけど、これを無人機にする意味ってあるのかしらね~」
ヘレナは少しだけ考える。
こういうことは自分よりも上の人間が考えるべきことである。けれど、と思うのだ。
『エルネイジェ王国』の前線基地にも嘗てオブリビオンマシンが出現していた。
これは自分が秘密裏に処理したため、まだ国内でも問題にされていない。
「もしかして、この国境付近でのオブリビオンマシンの出現は……」
国内にて蠢動するオブリビオンマシンから注意をそらすための陽動なのではないか。
そう考えるのが自然であった。
だが、不自然なことはもう一つある。
「哨戒ご苦労さまと言っておこうかしら」
高飛車な声がする。
嫌な声だとヘレナは心底思った。もうなんで、と皇女殿下を恨む。
自分と彼女の相性は良くないと思える。ハッキリ言って水と油である。相容れないとわかっている。
というか、自分はそうではないけれど、あちらが勝手に突っかかってくるのだから相手をしているだけなのだ。
「はいはい、亀のようにのろまに足並み揃えるのは退屈でした。こんなお仕事なら丁稚でもできるわよね~」
「丁稚奉公がお似合いではなくって?」
あ? とヘレナはこめかみのあたりが、ビキとひきつるのを感じた。
通信を切ってからヘレナは毒づく。
「ほんと嫌味なやつ」
「何か言いまして?」
「いいえ~アイディール家のお嬢様のエスコートを仰せつかりましたので。|淑女《レディ》の伴するのは騎士として当然のことですから」
ヘレナの言葉に通信先のエレイン・アイディール(凛とした傲岸・f42458)の頬がひきつる気配がした。
そう、彼女の性格はハッキリいって傲岸不遜である。
プライドが高く、己が貴族であることに誇りを持っている。
家柄を重視するところは、流石お貴族様であると言えるだろう。己に対する強い自信を持っていることがうかがえる。
だが、あれはないわ、とヘレナは『ローエングリン』のカタパルトから出現した一騎のキャバリアを見やる。
黄金の『ヴェロキラ』――『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』である。
特別仕様専用機であることは言うまでもない。
その威容は装甲から装備に至るまで高級装備に類するものであった。
ハッキリ言って、聖竜騎士団においては破格の性能を有する機体であると言えるだろう。
装甲のゴールド・オリハルコニウムは希少金属である。
これを全身の装甲に配しているおかげで、堅牢さは言うまでもなく。ビームを弾く性質と相まって実弾兵装でなければ傷をつけることが難しい。
だが、その実弾兵装すらも強固な装甲は弾く。
堅牢性でいうのならば、そこらのキャバリア火力ではどうしようもないだろう。
「それに、その硬そうなドレスが汚れるといけませんものね。東方の小国家には金色の立像があるそうですが、それと同じでお屋敷に飾っておいた方がよろしくはございませんか~?」
「僻みが過ぎますわねぇ、キツネ。まあ、あなたのその貧相な機体からすれば? わたくしの『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』は? 至高の高みにある機体ですものねぇ?」
ぐんぐんとエレインの鼻が伸びている気配を感じヘレナは辟易する。
いいから、とっととカタパルトから出撃してくんないかな~と思った。
でもまあ、此処でなにか言い返そうものなら、長くなりそうだったので黙っていた。その沈黙にエレインは気を良くしたようだった。
ぐうの音もでない程に言い負かしたと思っているのだろう。平和なことである。
「我がアイディール家の資産をつぎ込んで作り上げた至高のキャバリアですもの。わかりますわよ。高潔なものには高潔なるキャバリアが相応しいというもの! これぞ貴族には当然の嗜みだわ! キツネにも少しはドレスコードというものが理解できているようね?」
まーた、とヘレナは思ったが我慢した。
いいから、はよ出撃しろ、とも思った。敵オブリビオンマシンの群れとの接敵まではまだ距離がある。
だが、いい加減にしないと、と思っていたところにヘレナは己の『ヴェロキラ・ディアストーカー』のセンサーに急速に接近する機影を捉える。
「ご令嬢!」
「なんです? そんなに改まって? わたくしの高貴さ、『ゴールドブリンガー』の威容に漸く……」
「『ローエングリン』が狙われてる! 一騎、単騎で飛び込んでくるバカがいるっての!」
ヘレナは理解した。
あの無人機のオブリビオンマシン『イカルガ』は陽動だ。
大層な大群でこちらの注意を惹きつけるだけ惹きつけた間隙を突くように通常のキャバリアでは考えられない速度で荒野を疾駆し、己たちの母艦である『ローエングリン』を戦おうとしている敵がいる!
「……は?」
「理解が遅いっての!」
ヘレナは『ヴェロキラ・ディアストーカー』の折りたたみ式大型狙撃砲を構える。
大地に打ち込んだ脚部アンカーで射撃姿勢を固定する。
ジャミングスモークで『ローエングリン』を覆うのは無理だ。時間がかかる。その間に、あの一騎のオブリビオンマシンは『ローエングリン』を潰す。
スナイパーセンサーでもって敵機を捉える。
「あれは……」
「『インドラ』!?」
エレインも気がついたのだろう。『イカルガ』の大群とは反対側から単騎で『ローエングリン』を潰すように大地を凄まじい速度で疾駆する『インドラ・ナイトオブリージュ』の姿に。
まるで『閃光』のように白い『インドラ・ナイトオブリージュ』が大型突撃槍を構えている。
やばい、とヘレナは直感的に理解しただろう。
近づけさせてはダメだ。
スナイパーライフルから放たれた光条が空中を走る。
だが、その一射を白い『インドラ・ナイトオブリージュ』は躱す。
「躱された?!」
「しっかりなさい、キツネ! 単騎で迫るなど!」
カタパルトからエレインは『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』と共に飛び出す。
「あっ! こらっ! 勝手して! 性悪お嬢様!」
「今性悪って言いまして!?」
「細かいところは気がつくんだから! キャバリア建造はどんぶり勘定だったくせに!」
「ど、どんぶり……!?」
「そういうのが隙が多いっていうのよ! その機体の装備は対多でしょ! なら、無人機『イカルガ』の対処に当たるのが……」
「問答御無用ですわ! わたくし、ああいう卑劣、陰湿な不意打ちが大の大嫌いなのよ!」
ヘレナの制止を振り切るようにして『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』が『ローエングリン』に迫る白い『インドラ・ナイトオブリージュ』へと飛び出す。
「あ~も~! やっぱりこうなるんじゃん! ……え、うそ、もしかして殿下ってば、こうなるってわかってて私をあの金ピカにつけたって……コト!?」
仕方ない、と『ヴェロキラ・ディアストーカー』を援護するためにヘレナはヘッドマウントディスプレイを起動する。
自身の機体は確かに隠密性能に優れている。
多数との戦い、というよりは標的を打倒する戦い方が本来のものである。
不向き、と言っても良い。
けれど、やってやれないことはないのだ。
「つくづく善いキツネすぎるわよねぇ……あたしって」
ヘレナは嘆息する。
今日何度目かわからない嘆息であった。確かに気乗りしない任務である。けれど。
「この程度の数、しかも無人機……如何に高性能機だからってさぁ……私を舐めすぎでしょ!」
『ヴェロキラ・ディアストーカー』のアイセンサーがユーベルコードに輝く。
「一撃集中(ブルズアイ)……よーく狙って……」
ドン! ヘレナは引き金を引く――。
●アイディール伯爵家
エレインは確かに優秀だった。
『エルネイジェ王国』の有力貴族の一つに数えられる家柄だった。
士官学校は首席で卒業したことからもうかがえるように彼女は優秀だったのだ。
特に目を引くのは戦艦の運用能力である。
だが、その性格が災いしているのだ。
彼女はプライドが高い。
幼少から貴族としての教育を受けていたこともあるが、己の血筋というものを過信していたとも言える。
なんでもやってこれた。
なんでも成功させることができた。
挫折というものを知らず。苦難を苦難とも思わず。冷遇を冷遇とも思わなかった。
「わたくしは誇り高きアイディール伯爵家の女よ!」
その言葉に彼女の全てが集約されていた。
何かに付けて家柄を持ち出す。
確かに彼女は優秀だったが、自身の能力と他者の能力を推し量る時、最初にあがるのが家柄であった。
「当然ですわ。貴族とは優れたるもの。迷わず、騙されず、不要な争いはしないもの。それはこの高潔な精神が宿るからこそ。庶民はすぐに迷いますわ。騙され、争って滅びていく。それは愚かなことですが、しかし、だからこそ、わたくしたちのような高潔な信念を持つ者が先に立ち、導かなければならないのよ!」
その思想は立派なものであっただろう。
誰かの前に立たなければならない。導かねばならぬという思想は、愚者にとっては導となる光であっただろう。
だが、全ての人間が愚かしいわけではないのだ。
ならば、その考えは調和を考えない。個としての人間の輪は考えられても、社会という群の調和を考えることができないのだ。
ヘレナ曰く、『そりゃ上からも下からも横からも嫌われるわよね~』とのことである。
高潔な精神と優れた能力。
それは確かに認めるところであるが、しかし、全ての人間がそれを受け入れることができるものではないのだ。
故に。
「わたくしの信念を理解しようとしない! こんなのは間違っているわ!」
『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』と共にエレインは飛び出す。
大地に激震走らせるほどの装甲と共に『ローエングリン』に迫る白い『インドラ・ナイトオブリージュ』と対峙する。
凄まじい加速と急旋回、そして、急制動。
まるで、それは獰猛な鬼蜻蜓を思わせる挙動であった。
「さあ! かかってらっしゃい1 このわたくしに出会ったことを後悔させて差し上げるわ! このアイディール伯爵家の私財をなげうって建造された……!」
次の瞬間、機体が揺れる。
「ご令嬢!」
「なんの! これしき、ゴールド・オリハルコニウムの装甲が撃ち抜けるわけが!」
だが、エレインは見ただろう。
白い『インドラ・ナイトオブリージュ』のアイセンサーが間近に迫る様を。
凶悪なる威容を。重圧を。
これは。
「『エース』だとでもいうのかしら! だったら、何だというのですわ!!」
咆哮するように『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』がキラークローを振るう。
その一撃を白い『インドラ・ナイトオブリージュ』は、ラウンドシールドで受け止める。
だが、強靭な爪の一閃はラウンドシールドすら両断してみせた。
「すばらしいわ! まるでアイディール家の権威と財力が形になったかのようだわ!」
「だから、それブラフだってば!」
「何をおっしゃっているのかしら、あのキツネは! お~ほっほっほっほ! お次は弾丸のシャワーはいかがかしら!?」
腕部の二連装ビームキャノンと背面に背負ったガトリングキャノン、懸架されたミサイルランチャーが火を吹く勢いでもって迫る敵機へと放たれる。
爆煙が巻き起こり、視界を黒々とした煙で立ち込める。
「馬鹿みたいにバカスカ撃ちまくるから、視界塞がれてるでしょ! 敵に隙を与えてどうすんの!」
「これだから、駄目キツネは。あら? 今、バカって二回言いませんでした?」
「良いから! こっちは陽動! そっちが本命ってんなら、そいつ『エース』でしょ! 機を逸する前にそこから離れて……!」
「騎士たる者に小細工など必要なし! それを見せてやりますわ! ゴールドブリンガー!」
その言葉に呼応するようにして『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』のアイセンサーが煌めく。
顎部に装備されたハイパープラズマブラスターが展開される。だが、次の瞬間――。
爆煙切り裂くようにして白い『インドラ・ナイトオブリージュ』が迫る。
「ほら! やっぱり!」
「駄目キツネはちょっとおだまりになってくださいません!?」
確かに大口径荷電粒子砲は強力だが、発射中は移動できない。それは欠点であったが、放つ前であるのならば、とエレインはイオンスラスターを噴射させる。
「あっ! まさか! やめなってば! それ!」
「騎士の戦いはこうでなくてはなりません! 真っ向勝負!」
ヘレナの声もすでにエレインには届かない。
顎部をあらわにした『ヴェロキラ・ゴールドブリンガー』が白い『インドラ・ナイトオブリージュ』へと迫る。
組み付くようにして噛み付いたのだ。
噛み付いたのならば、敵は逃れられない。
己の放つ荷電粒子砲の一撃は確実に叩き込めるのだ。
だが。
「ラウンドシールド……!? 先程切り裂いたはずでは!?」
噛み付いたのは二枚のラウンドシールドだった。いや、元は一枚。エレインの放った一閃で切り裂かれたことで両断されたシールドをサブアームで重ねて顎部へと押し込んできたのだ。
「撃ちなさい、そのまま!」
エレナが手こずるエレインを援護する。
「言われなくとも!」
放たれる荷電粒子砲の一撃。
その光条の中に白い『閃光』の如きキャバリアはなかった。躱された、と思った瞬間、すでに無人機オブリビオンマシンの大群は退却していったようだった。
ほぼゼロ距離の荷電粒子砲をかわした『インドラ・ナイトオブリージュ』は猟兵の駆る二騎のキャバリアから即座に距離を取っていた。
鮮やかな退却だとヘレナは思ったが、しかし、エレインは違った。
「お~ほっほっほ! やはり小細工など無用! わたくしたちの力を前に逃げ帰るがよいのですわ!」
そうですわよね!? と同意を求めるエレインにヘレナは、愛想よく『そうですね~』と応えることしかできなかった――。
成功
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