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バトル・オブ・オリンピア⑳〜天高く純白の球今日ぞ飛ぶ

#アスリートアース #バトル・オブ・オリンピア #ベースボール・フォーミュラ『Mr.ホームラン』

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●最強のナイン
 グリモアベースの一画にて、大宝寺・朱毘(スウィートロッカー・f02172)がホワイトボードにずらずらと何やら書き込んでいる。

『1番ファースト:ウィリアム・ローグ(足が速い)
 2番セカンド:時宮・朱鷺子(なんでもできる)
 3番ショート:宮本・武蔵(バット二刀流+守備が強い)
 4番ライト:Mr.ホームラン(打率9割5分本塁打率1……つまり打てば必ずホームラン)
 5番ピッチャー:エル・ティグレ(暗黒星雲ボール)
 6番サード:ダークデュエリスト(打球や投球の軌道を直感で察知)
 7番レフト:ダークスナイパー(狙撃のような正確な送球)
 8番キャッチャー:デスリング総統(肩が強い)
 9番センター:キャンピーくん(腹に入れた球をデスリング総統まで転移する)』

「……これが何かっていうと、猟兵に野球勝負を挑んできたMr.ホームランのチームのオーダーだ」
 朱毘は言った。新生フィールド・オブ・ナイン。フォーミュラは七人なので、六番と七番だけはその辺のダークリーガーをスカウトして穴埋めしてはいるが、恐らくは現在のダークリーガーサイドで編成し得る最強のチームであろう。
 このドリームチームを相手に、野球で勝つ。
 それが、猟兵に与えられたミッションというわけである。
「殴り合いでもなけりゃ、殺し合いでもねぇ。混じりっけなしのスポーツ対決ってわけだ。気楽っちゃ気楽だが……まあ、何しろボスラッシュだからなぁ」
 生前は野球においては負け知らずだったというMr.ホームランは言うに及ばず、他の面々も野球の専門家でこそないものの、理外の身体能力を誇る怪物ばかりだ。楽なゲームなど望むべくもない。
 それでも、これまでオブリビオン・フォーミュラを倒してきた猟兵なら。
「一つ注意してほしいのは、問題は単に敵が強いってだけじゃなく、この戦いの題材はあくまで野球であり、スポーツだってことだ」
 居並ぶ猟兵たちに鋭い視線を投げかけつつ、朱毘は言う。
「スポーツってのは、スポーツマンシップがあって初めて成立する。当然、この戦いでもそれは重視される。つまり、スポーツマンシップを欠く真似をする奴は、戦う資格なしと見なされてつまみ出されるってことだ」
 もちろん、それは相手側にもいえることなので、不意に乱闘を仕掛けてくるなどの突拍子もない戦術への対応は考えなくていい、というメリットはある。
「バトル・オブ・オリンピアも佳境だ。ここが踏ん張りどころだぜ」


大神登良
 オープニングをご覧いただき、ありがとうございます。大神登良です。

 これは「バトル・オブ・オリンピア」の戦況に影響を与える戦争シナリオで、1章で完結する特殊な形式になります。

 このシナリオには下記の特別な「プレイングボーナス」があります。
『プレイングボーナス……スポーツマンシップに則り、正々堂々戦う/新生フィールド・オブ・ナインの「それぞれの能力を使った野球」に対処する』
 敵チームのオーダーはOPの通りですが、分量の都合もありますので、敵の九人全員に対応したプレイングを書く必要はありません。投手なり守備なり打者なりの立場で、九人の中の誰かしらをターゲットにして勝負を仕掛けるという内容であれば、ボーナス条件を満たしているものと判定します。
 この際、Mr.ホームランでない相手を選んだ場合は、敵の行動はMr.ホームランのユーベルコードに準拠するわけでないと想定して大丈夫です。
 また、あくまで正々堂々のスポーツ対決なので、野球のルールから大きく逸脱するようなダーティプレイ、スポーツマンシップに欠ける行為は反則と見なされ、処分の対象になる点にも注意してください。

 それでは、皆様のご参加を心よりお待ちしております。
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第1章 ボス戦 『Mrホームラン』

POW   :    大回転暗黒竜巻打法
自身の【バット】に【オブリビオン・ストーム】を宿し、攻撃力と吹き飛ばし力を最大9倍まで強化する(敗北や死の危機に比例する)。
SPD   :    ブラックホール打法
【超重力塊化しながら飛ぶ打球】が命中した箇所を破壊する。敵が体勢を崩していれば、より致命的な箇所に命中する。
WIZ   :    誓いのスーパー打法
【最強無敗の野球選手であり続ける】という願いを【試合を見守る全世界の人々】に呼びかけ、「賛同人数÷願いの荒唐無稽さ」の度合いに応じた範囲で実現する。

イラスト:カツハシ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

印旛院・ラビニア
守備:ショート 打順:2番あたり
「野球だったら、ゲームでもやったことあるしね。ゲームプレイヤーとしては得意分野だよ」
野球場という【地形の利用】をして、UCで強化した機動力で攻撃や守備に動き回る

攻撃
エル・ティグレの投球の癖や動きなどを【学習力】で学び、味方にタイミングを伝え打球の威力上昇を狙う
「予備動作で球種が絞れてくるよ」
走塁は上がった機動力と【ダッシュ】で駆け、ホームベースで総統が待ち構えられた場合は【ジャンプ】も組み合わせて、ホームイン狙い
「危なかった…」
守備
機動力3倍で捕球を頑張る。【集団戦術】で味方と守備位置をずらしてわざと守備の穴を作って狙いやすくして誘うかな
「易々とは通さないよ」


ルドラ・ヴォルテクス
大神登良マスターにおまかせします。かっこいいルドラ・ヴォルテクスをお願いします!



二対の剣、未来を奪還する『ストームブリンガー』、終末を破壊する『デスブリンガー』を持つ、救世を使命として再誕した戦闘型。
武人や強者と対峙した際は、凛然と誇り高く振る舞い、邪悪、世界や人々の未来を奪うものへは容赦なく果敢に挑む。
闘神の如き激しい戦いが流儀であり、限界を超えリミッターを外した戦いをする。


この一投に、アストラを賭して。
正々堂々、競技者として、俺の限界を超えた力で戦わせてもらおう。
投球にエネルギーを与え、無限の軌道と光輝の力を込めて投げ抜いて見せる。


ペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード
ふむ、最後は野球で勝負か。
まあMr.ホームランがバッターなんだから、正々堂々ピッチャーとして挑もうか。

さて、特別凄かったり変わった投げ方は持ち合わせがないからね。
ただシンプルに【飛衝放撃】で直球勝負するしかないかな。
発電器官を使って電撃を乗せて、単純な速度で衝撃波を発生させて、
並大抵の打法ならバットが逆に吹き飛ぶか折れるかする威力の直球。
あえて名前を付けるなら|轟雷嵐投《サンダー・ストーム》って所かな。

あとは3球、全力で投げ込むだけだね。
あたしの嵐とアンタの竜巻、どっちが強いか試してみようか。


空桐・清導
POW
アドリブ歓迎

「ラストは野球か!良いねえ!
全力で楽しもうぜ!新生フィールド・オブ・ナイン!」
UCを発動して光焔で出来た野球ユニフォームに身を包む
こめる願いは「楽しむほどに野球が上手くなる」だ
正々堂々と楽しむほどに清導は加速度的に野球が上手くなる

勝負をするのはMrホームラン!
つまりオレがピッチャーになる訳だ!
投げる球は全力のストレート
凄まじい打率に小細工は通じない
己の全力を叩き込む!
仮に打たれたのであれば即座に[ジャンプ]して空中で取る
奴の球は絶対にゴロにはならないからな

バッターでは狙うはホームランだ
エル・ティグレ対策で
UCを使わずに自前のセンスで勝負
レフトめがけて[限界突破]でかっ飛ばす!


フェリチェ・リーリエ
バトル・オブ・オリンピア⑳のシナリオで使ってやってください。👿世界最強のナインフレーム希望。
アドリブ、連携歓迎

最後は野球対決だべか!…いやルール1ミリも知らんわ!しかも1チーム9人!?分身できるユベコの持ち合わせねえし8人も呼べんわ!
ま、まあ向こうも微妙に人数足りなかったみてえだし?どうしてもチーム組めなかったら最悪現地のアスリート連れてくるべか…

ルールはよー分からんけどもえーと、とりあえず打って投げて走ればいいだべな!
指定UCによる時速14000キロの疾走で駆け、必要なら自由農夫のピッチング技術で球投げたりリア充への怒りを込めたフルスイングで球を打つ!
リア充チームには負けねえべー!



●一球に一打に懸けて
 三回表、新生フィールド・オブ・ナインの攻撃。
 一死でバッターは三番、宮本・武蔵。二塁にはランナーは超絶の俊足ランナー、ウィリアム・ローグ。長打でなくとも、一気に本塁を陥れられかねないという状況である。
 このピンチの中、猟兵チームの投手を務めるのは、先発のルドラ・ヴォルテクス(終末を破壊する剣“嵐闘雷武“・f25181)である。
「敬遠は厳しいねぇ」
 マウンド上に歩み寄った、キャッチャーのペトニアロトゥシカ・ンゴゥワストード(混沌獣・f07620)が言う。
「ランナー二人で四番のMr.ホームランに回すことになる。四番も敬遠して満塁策ってのも、なくはないけど……」
「まあ、誰ならば相手に容易いということもない」
 神妙な面差しで、ルドラは言う。
「ここは勝負しよう」
「だね。まあ、気楽に投げなよ。点なんて、取られたって取り返せばいいんだからさ」
 ひらりと手を振って、ペトはポジションに戻った。
 確かにその通りだと、ルドラも思わないではない。そもそもどう考えても、彼ら超絶のダークアスリートらで構成されたチーム相手に無失点ピッチングなど、不可能といっていいだろう。
 しかし、だからといって取られるつもりで投げるつもりもない。
「プレイ!」
 アンパイアの発声。
 ルドラは大きく振りかぶった。
「この一投に、アストラを賭して……!」
 握りしめたボールに【解き放たれし力(アストラ)】が込められる。
 常であれば、その力はオブリビオンの滅殺に使われるものだ。しかし、今はスポーツマンとして、正々堂々の全力プレーを行う者としてそれを振るう。エネルギーを注ぎ込まれ、グラブの中でもそれとわかるほどに、ボールがサファイアブルーの輝きを放つ。
「生命の光よ――我が敵を撃ち破る力を象らん!」
 袈裟斬りのように鋭いオーバースローから、レーザーのような直球が投げ放たれた。
 対する武蔵。カミソリのような眼差しでルドラの一挙手一投足を見つめ、そしてボールがその手を離れた刹那。
「――見切った!」
 風を断ち斬るような超速度のスイング。野球選手のするようなバットコントロールではなく、剣豪が太刀を振るうような。
 力学を持ち出すなら、ボールを叩いて飛ばすのには不向きな動作であるはずだ。だが、超常なる無双の剣豪には、そんな常識は通用しない。超速度の直球を真正面から打ち抜いた打撃によって、ボールは投げられた際と同じかそれ以上の速度で飛んだ。
 センター返し。いや、軌道の低いライナーはピッチャー返しと呼ぶべきコースか。
 抜ければ長打もあり得る――どころか、体のどこかに直撃すれば肉も骨も砕け散りかねない。
 しかし。
「――ぬぅっ!」
 ルドラもまた超常なる猟兵。理外の反応速度でグラブを構え、己に襲いかからんとする打球を捕らえる。
 どごっ! と、凄まじい炸裂音が鳴り、ルドラは後方に吹っ飛んで倒れた。
 打球の勢いを思えば、それでもセンター前に落ちる安打になる――と誰もが思ったところ、しかし、ルドラのグラブはウェブがちぎれかけの状態になりつつも、ボールをつかんで離さなかった。
「アウト!」
「――何!?」
 審判の宣言に驚いたのはアウトになった武蔵と、それから当然安打になるものと思って二塁から飛び出していたウィリアムである。
 慌てて急ブレーキをかけ、回れ右して二塁に戻ろうとする。
 しかし、そんなウィリアムに先んじてショートの印旛院・ラビニア(エタらない人(仮)・f42058)が二塁に至っており、グラブを構えていた。
「ボールを二塁に!」
 強烈なライナーを捕球し、手どころか全身に痺れるようなダメージのあったルドラだが、それでもどうにか倒れた姿勢からボールを放る。
 そのボールがラビニアのグラブに収まるのと、ウィリアムがヘットスライディングで二塁に帰ったのは、ほとんど同時だった。
 際どいタイミングだが、判定はアウト。ダブルプレーでスリーアウトとなった。
「よく捕れたね、あんなの。いい反応だったよ」
「そちらこそ……見事なカバーだった」
 ルドラとラビニアは互いを讃えた。
 内野手の中で、およそ守備に関わる全ての能力を要求されるポジションが、ショートである。まず何より打球への反応速度。そして、ゴロだろうがライナーだろうが捕球できるだけのグラブさばきなど。
 【ガンバレル・コマンダー】を利するラビニアは、身のこなしの面では申し分のない働きを見せている。
「次はこっちの攻撃だね。気合い入れていこう!」

●白熱の力ぞ技ぞ
 六回裏、猟兵チームの攻撃。
「……おら、野球のルールとか何とか、あんまりわがんねんだども……」
 この回の先頭打者、九番バッターのフェリチェ・リーリエ(嫉妬戦士さんじゅうはっさい・f39205)は不安げな表情を浮かべた。
 そこへ、電子野球ゲームをそれなりにやりこんでいる廃ゲーマーでもあるため、一通りの野球知識もあるラビニアが歩み寄る。
「大丈夫。要は、エル・ティグレの投げたボールをこのバットで打てばいいわけで」
「だども、さっきから凄い球投げてくるべ!」
「それはまあ、確かに……」
 新生フィールド・オブ・ナインの投手はエル・ティグレ。暗黒星雲ボールという何やら凄く凄い魔球を操り、これまで猟兵打線は完全な沈黙を強いられており、四球以外のランナーを出せていない。
 しかし、だからといってこれまでただやられっぱなしだったわけでもない。猟兵の誰もがじっくりとエル・ティグレの投球を観察し、何かしら打開の糸口をつかもうとしていた。
「でも、凄いパワーを持ったボールを投げてくるけど、それでも『ボールを投げてる』っていうのには違いはないよ。負けないくらいの力でバットを振れば、必ず打ち返せる!」
 あとは、コースと球種。
「……多分、急ごしらえの投手だからなんだろうけど、予備動作にちょっと癖がある。腕の角度がスリークォーターだとストレートかフォーク、サイドスローだとスライダーを投げてくるんだよ。ちょっとの差だけどね」
「そうなんだべか?」
「うん。だから狙い球を絞っていけば、きっと打てるはず!」
「や、やってみるべ!」
 フェリチェはうなずき、打席に立つ。
 ラビニアの言葉通りであれば、ストレートとフォークの二択があるスリークォーターより、スライダー一択に絞れるサイドスローを待つのが上策だろう。
「作戦会議は終わったかい――ましたか? じゃあ、行くぜ――ますよ!」
 エル・ティグレが第一球を投げる。
(あれは……スリークォーターだべか?)
 フェリチェがそう思った刹那、黒く輝く星の砂めいた軌跡を残し、超絶の速度の暗黒星雲ボールがキャッチャーミットへと突き刺さった。
 その軌跡の示す球種は、ストレート。
(……じゃあ、やっぱり言ってた通りなんだべか)
 ぐっ、とフェリチェの両手に力が入る。
 エル・ティグレの第二球――サイドスロー。
(これだべ!)
 スライダー。今日初めて知った単語だが、覚えているし、横から見てもいた。横方向に滑るように曲がっていく変化球。
「大体この辺に来るべ!」
 渾身の山勘打法。そのスイングの軌道上に、吸い込まれるように漆黒のボールが曲がってくる。
 ごぎぃん!
 鉄パイプ同士が打ち合ったような音を響かせ、ボールは右中間へと飛んだ。
「――馬鹿な!?」
 誰の驚いた声か知れない。綺麗に伸びた放物線の後、ワンバウンドでフェンスに当たる長打コースである。
 クッション処理をしてボールを手にしたのはセンターのキャンピーくんだった。
「セカンド――いや、サード! サードだ!」
 キャッチャーのデスリング総統が叫んだ。
 フェリチェの疾走は、一瞬彼らの度肝を抜くほどに速かった。今はリア充を追い詰めているわけでない【嫉妬戦士は止まらない(ジェラス・ハイ)】ながら、それでも十二分に凄まじいスピードが出ている。ゆえにデスリング総統は、二塁どころか三塁も危ないと断じたわけだ。
 ところで、キャンピーくんの能力は腹に入れたボールをデスリング総統の元へ転送することである。
「あっ」
「えっ」
 三塁方向を指差した姿勢のデスリング総統の眼前に、急にボールが出現する。
 ごっ!
「あべしっ!」
 顔面にボールを受けてデスリング総統がスッ転んでいる間に、フェリチェは三塁に到達した。
「……ぐう、ワガハイとしたことが……すまぬ」
「気にするな。まだ点を取られたわけではない!」
 セカンドの朱鷺子が声を掛ける。
 とはいえ、無死三塁。猟兵チーム絶好の得点チャンスで、次の打席に入るのはトップに帰って空桐・清導(ブレイザイン・f28542)である。
「おっしゃあ、全力全開で行くぜ!」
 その体は【全力全開!不撓不屈たる証明を此処に!!(オール・トランセンデンタル)】の光焔のユニフォームに包まれており、やたらに金ピカの光を放っており目に痛いくらいである。
 このユニフォームには、試合を楽しむほどに野球が上達するという願いが込められている。実は清導は、打席ではこのユーベルコードに頼らずに己のセンスで挑んでいたのだが、これまでの二打席いずれも三球三振してしまっていた。
 今度ばかりはユーベルコードを使って、万全で挑まねばなるまい。
「ふん。今度は好きに打たせねえぜ――ですわ!」
 ギリギリと力をみなぎらせたエル・ティグレが清導への第一球。
 三塁ランナーが俊足のフェリチェであることから、スクイズを警戒したのだろう、それは外角高めに外れていくボール球だった。
 しかし、エル・デスリングバッテリーにとっては誤算だったろう、この段にあっても清導の頭にあったのはホームランのみであった。
「おりゃあ!」
 飛びつくような姿勢から、鉞でも振るようなモーションでバットを振る。
「んなっ!?」
 敵味方含め、誰にとっても予想外。それでも苛烈なる炎をまとったバットに叩かれ、ボールはレフト方向へと飛んでいく。
 勢いはある――かに見えたが、しかしやはり無理な体勢でのスイングによる打球だからだろうが、伸びが足りない。
 レフト、定位置からやや浅め。
「タッチアップ!」
「バックホーム!」
 レフトのグラブにボールが収まった刹那、ラビニアとデスリング総統が同時に叫ぶ。
 さらに同時、必死の形相のフェリチェが本塁へと向かってダッシュする。
「たぁっ!」
 半瞬遅れて、レフトのダークスナイパーの返球。矢のような――どころではない、それこそライフルの弾丸のような超高速のボールが、ホームのデスリング総統目がけてストライクコースで飛ぶ。速度、制球、どれを取っても申し分ない返球だ。
 それでも、それをもってしてもフェリチェの足の方が早い。
「負けねえべ――絶対、生還してやるべ!」
 デスリング総統のキャッチャーミットにボールが収まったのは、フェリチェが本塁を駆け抜けた一瞬後のことである。

●潔し微笑む希望
 九回表、新生フィールド・オブ・ナインの攻撃。
「お疲れ」
 キャッチャーの装備を外したペトが、マウンドへと歩み寄る。
 投手は、既に先発のルドラから清導へと代わっていた。ルドラにとっては不本意だったろうが、限界突破しつつの彼のピッチングは、流石に完投できるような代物ではなかったからだ。後を継いだ清導もまた、完全燃焼の力投を見せていた。
 しかし、その清導もまた、限界を迎えている。
「……俺なら、まだ……」
「変身解いたら即死するようになるまで、疲労を溜め込むわけにいかないでしょ。外野にでも行って休んでなよ」
「ち……最後に、戦いたかったんだけどな」
 ちらりと打席を見やる。
 二死。ランナーは、三塁に朱鷺子、二塁に武蔵。一点ビハインド。その状況で打席に立つのは、Mr.ホームランである。
 敬遠が定石だろう。しかし、巡り巡って最後のシーンで彼が打者であるならば、勝負以外の選択肢はない。しかしだからこそ、あと一球でも投げたら死にかねない清導には、任せられないのだ。
 かくして猟兵チームの投手はペトとなる。
「この状況で勝負してくれるのかい? 嬉しいね」
 どっしり構えつつ、Mr.ホームランは言った。そのバットには黒のような青のような赤のような、名状しがたい色合いのオーラが纏わり付いている。
「空気を読んだまでだよ……とはいえ、特別な投げ方ができるわけじゃないんだよね」
 ロジンバッグを弾ませつつ、ペトがぼやく。
 肉体を異形化できる彼女だが、今の彼女は限りなく当たり前の人間に近い。動物のうちで投擲力に優れているのは、実は人間であるからだ。。
 違いといえば、手の甲にステゴサウルスの背にあるような骨板が備わっていることだ。それは、ある種の怪獣が持つ発電器官である。
 ロジンバッグを置いてボールを握り、ペトは双眸を尖らせた。
「それじゃあ第一球、行くよ――飛んでけ!」
 全身を鞭のようにしならせ、【飛衝放撃(キャスト・アウェイ)】によって弾き出されたボールが奔る。超速度が衝撃波を生み、発電器官から発された雷撃を纏ったそれは、内角高め一杯を突く直球となる。
「――!」
 Mr.ホームランは動けなかった。つまり、彼をして『打てる』という確信を持たせなかった球だということだ。
「……特別じゃないなんて、どの口で言ったんだ? 凄い魔球だ」
「魔球ってことはないと思うんだけどね。あえて名前を付けるなら、轟雷嵐投――サンダーストーム、かな?」
 キャッチャーからの返球を受け取り、ペトは言った。
 皮膚が焦げるような緊迫感の中、第二球。なまじの球が通用しない以上、同じ轟雷嵐投を放つ。今度は外角低め。
「二度は通じさせない! Mr.ホームランの名に懸けて!」
 荒れ狂う漆黒の暴風をともなう【大回転暗黒竜巻打法】のスイングが放たれる。
 バットの先端。遠心力の掛かったスポットでボールの真芯を捉えられる――が、嵐と竜巻のぶつかり合いの中で、めぎり、と何かが軋む音がした。
 それは恐るべき球威により、Mr.ホームランのバットにヒビが入った音だ。
「――!? ぬ、おぉ!」
 Mr.ホームランが咆吼を上げる中、ばきゃん! とバットが粉々になった。
 そしてボールは、フラフラとレフト方向への飛球となる。折れたバットで振り抜いたとて、ボールに勢いが乗る道理はない。
 ない――のだが。
「……え?」
 打球を目で追ったペトが、唖然とする。
 今にも落ちそうなほどにフラフラと頼りない飛球だというのに、いつまでも落ちない。山なりに落ちていくその先は、恐らくフェンスをギリギリで越える。
「フッ……バットが折られようが、これがMr.ホームランだ!」
 Mr.ホームランが、勝ち誇ったように口の端を歪める。
 しかし。
「来ると思ってたぜ!」
 と、フェンス際にあった清導が吠える。
 打てば全てがホームラン。つまり、安打狙いのゴロを打つなどということはしないだろうことは、わかっている。来るならば大飛球。ゆえに、阻止できるとすればここしかない。
 今度は、Mr.ホームランが唖然とする番だ。
「――まさか……」
「うぉっ!」
 フェンスに寄りかかるような格好で、清導はジャンプした。
 そうしてフェンスの上に突き出たのは、わずかにグラブ一つ分に過ぎなかった。が、その数十センチ分をもって、グラブのウェブの先端がボールに届く。
 清導が着地した時、ボールはグラブからこぼれることなく、ウェブの中へ収まったままだった。

 スリーアウト。この時点でリードしていた猟兵チームの九回裏の攻撃はキャンセルされ、試合終了。猟兵チームの勝利をもって、幕が引かれた。
「ははは……やられた。完敗だ」
 ヘルメットを脱ぎつつ、Mr.ホームランは微苦笑を浮かべた。
「だが、かえって安心したよ。思っていたより、未来は明るいらしい」
 サイレンが高々と鳴る中、新生フィールド・オブ・ナインは誰もが清々しい顔で整列していくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月31日


挿絵イラスト