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カイタイ🔨オブリビオンキャッスル💪💥🏰💥💪

作者：空白革命

　ウフフフフ――
　ウフフフフ――
　翼のはえた女が踊る。七色の薔薇が咲く庭で踊る。
　人々は血の涙を流しながら楽器を奏で、踊りに付き合い、拍手をしていた。
　なかのひとりが首を振り、自らに絡みついたイバラのツタを引きちぎって走り出した。もういやだ。ゆるしてくれ。そう言って走り出した彼に、恐ろしい速さで薔薇のツタと花弁が襲いかかった。肉体は切り裂かれ、骨すらもすりつぶされ、七色の薔薇園に撒き散らされていく。
　人々はその光景を目の当たりにし、血の涙を流し、恐怖に震えながらも、終わらないダンスパーティーのしもべになっていた。
　ここはヴァンパイアの城。
　薔薇の花さく、支配者の城。

「よし、その城ぶっ壊そう！」
　手のひらをポンと叩き、ナンシー・アラタメはスマイルした。
　所変わってグリモアベース。背景にはバラの花がわっしゃわっしゃ絡みついたクソでかい城がそびえ立っている。
　地球で例えるならフランスのロワール古城の上に巨大な薔薇のオブジェがくっついたような、悪趣味な建物である。
「なんかクソムカつくじゃねえか。
　多分俺らが突入したらこの薔薇で操った人々を盾にしたり拷問したりして俺らにマウントとってくるんだぜ。
　俺そういうことする奴ムカつくんだよ。皆も大なり小なりそういうとこあるだろ？」
　ナンシーはシャドウボクシングをしながら見えないヴァンパイアをがしがし殴りはじめた。
「だからよー。あいつの城？　いかにもプライドのシンボルですって感じの城？　まずぶっ壊してやろうぜ。
　そしたらあいつも余裕こいてらんなくなる筈だ。慌てて出てきたり、別の城かなんかに潜り込んだ所を更にぶっ壊してドン！　だ！」
　拳をするどく突き出し、ナンシーは獰猛に笑った。
「解体準備はオッケーか？　よっしゃ、テレポートいくぜ！」

第1章 冒険 『創造のための破壊』

POW   :    心を鬼にしてパワフルに破壊だ！ SPD   :    気持ちを切り替えてスピーディーに破壊だ！ WIZ   :    いろいろ考えたけどマジックで破壊だ！ 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　テレポートによって飛ばされたのはオブリビオンの城の前。
「ナンダテメェ！」
「グルルァ！」
　人間と獣が混じったような魔物が城の周囲から飛び出し、迎撃態勢をとってくる。
　が、ユーベルコードもつかえぬパンピーモンスターなど敵ではないわ！
　埃でもはくように蹴散らして、一緒に城をぶっ壊そう！
　さあ、解体ショーのはじまりだ！

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　この章ではオブリビオンの城をそれはもう景気よくぶっ壊していきます。
　破壊方法と、手下のパンピーモンスターを蹴散らす方法を同時にプレイングに書いていきましょう。

　🔵を取得するほど破壊が進み、👑の値まで達することで条件はクリアとなります。
　この時点で自動的に城でパーティーしていたオブリビオンは別の城へ撤退し、手下と城だけになります。
　成功値を突破したところから、目的はとらわれた人々の救出にシフトします。
　（メタ情報になりますが、どれだけ派手に破壊しても捕らわれた人々は無傷で保護することができるようになっています。遠慮せず派手にいこう！）
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　暗雲の空に現われた、銀と青の銃士を見よ。
　スカートを翻し、宙返りをはさみ着地したセルマ・エンフィールドの姿を見よ。
「ッダオラァ！」
「スッゾラー！」
　獣と人が混ざったような恐ろしい魔物たちが牙や爪をむき出しにして襲いかかるも、セルマの目には恐怖も迷いも、まして絶望などひとかけらも無かった。
　抱えたマスケット銃を発射。飛びかかる熊のような魔物が吹き飛んでいく。
　更に数で押せとばかりに左右から取り囲もうとする魔物たちに、セルマは膝のホルスターからデリンジャーピストルを二丁抜き、同時に発砲。
　その間頭上に放り投げていたマスケット銃を胸でトスすると、高速でリロード。正面から駆け寄ってくる鹿の魔物を銃殺した。
「強え！」
「それでも人間だ。血が出るなら死ぬ筈だ！　城には傷一つつけさせな――」
「残念ですが」
　セルマはデリンジャーピストルを足下に落とし、一度深く目を閉じた。
「超常の力を扱うのは慣れていないもので、『何が起こるか』私にも分からないのです」
　カッと開いた目の奥に、遠い世界の吹雪が映り込んだ。
　と同時に、暗雲立ちこめた空に直径１２センチ台の氷塊が大量に生まれ、雹となって降り注いだ。
　民家にこんなの降ってきたらどうなるか、みんなも知ってるはずだ。
「「ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛！！」」
　振り返った魔物たちが絶叫した。

　現在のオブリビオン城：窓ガラス全損

成功 🔵​🔵​🔴​

「雹を止めろォ！」
「すみません自分でもちょっと」
「ええい窓ガラスくらい作り直せる！　屋内にさえ入らなければセーフだ！」
　魔物たちは異形の翼を広げ、城を守ろうと飛び立っていく。
　そんな彼らをフツーにスルーして、バンシィ・ルフェイはその辺の窓から城の屋内へと侵入していた。
「さぁて、屋体崩しは柱からってね」
　バンシィは頑丈そうな木の柱を見つけるとあちこちの家具の影へ向けて魔力の籠もったささやきを伝えた。
「『陰に潜みし小さきしもべよ。群れよ。増えよ。地に満ちよ。人知れず安寧を蝕み破壊をもて。さあ――おいき』」
　バンシィのささやきに応じて周囲の影が変化していく。
　それらは盛り上がるように影絵の鼠へと変じると、柱に群がってがじがじと囓り始める。
「ぐああああ！　こんな所に！　このフェアリー野郎！　その鼠をどけろ！」
　魔物が部屋に飛び込み、爪を振り上げて襲いかかる。
　が、ただの魔物が爪を振った程度、バンシィにとっては草花が風に揺れるのとかわらない。
　ふわりと攻撃を回避し魔物の背後をとると、振り向いて手を翳した。
「レディに向かって失礼な奴だねぇ」
　魔法衝撃。
　魔物と、そしてほっそーくなった柱が同時にぽっきりといった。

　現在のオブリビオン城――大事な柱がイッた

成功 🔵​🔵​🔴​

　三千世界の鐘の音が、陰に籠もっておそろしく。
　空に空いた光の輪より、聖護院・カプラが降臨した。
「これが支配者の城……」
　目にグリーンの光を宿してあげた顔に、窓ガラス全損かつちょっと傾いてる城が映った。
「この世界に生けとし生きる人々を脅かすその行い、アラタメさせねばなりません」
「ナーニィ！？」
「ヤッテミロォ！」
　魔物たちが振り返り、牙をむき出しにして襲いかかる。
「ご覧なさい」
「「ギャー！？」」
　が、座禅姿勢のまま存在感を放ったカプラによってなんかしらんけどのけぞって倒れた。
　で、なにを出したのかと言えば、同じく光の輪から降臨させた特定宇宙通常兵器使用禁止制限条約抵触兵器マニ車レーザーチェーンガンであった。
「あっ、あれは！」
「知っているのか！」
「知らないが……！」
　知らないが！
　かつて巨大な宗教惑星集合銀河が大宇宙スパゲッティ教をあがめる宗教戦争にあたって使用した兵器とされ回せば回すほど祈りとなるマニ車理論を利用した徳の高い兵器である。あまりに徳が高すぎるが故に悪しき者はその状態如何に問わず強制的に爆殺するのだ。
　ちなみにダークセイヴァーは条約の範囲外なので使用できる。やったね。
「祈りなさい」
「「ギャアアアアアアアアアアアアア！！」」

　現在のオブリビオン城――なんということでしょう。前衛的で開放的な廃墟に！

成功 🔵​🔵​🔴​

「ふーん、あのお城を解体すればいいのねぇ……お城？」
　開放的な廃墟と化したオブリビオン城に目を細めるアララギ・イチイ。
　が、廃墟感こそあるもののまだお城としてのテイは保っているらしく、魔物も次から次へとわき出ていた。
「これ以上は壁一枚たりとも破壊させギャアアアアア！？」
　アララギのアララギタックルが炸裂した。
　熊みてーな魔物が爆発四散しその後ろにあった『偉大なる姫様の像』みたいなのが木っ端みじんになりついでにその先にあった煉瓦の壁が崩壊し豪華なタンスが砕け散りさっきぽっきりいった柱を更にバッキリやった。
　そして反対側の壁を突き抜けていくアララギ。
「な、なんだあいつは。暴走列車か何かか！」
　とか言っていたら、アララギがクルッと反転してもう一度突っ込んできた。
「うわあまた来た！」
「二度も同じ手は食わなギャアアアアアアアア！？」
　今度はアララギは巨大な龍に変化した。
　城の壁ってゆーか棟をぶちこわして突き抜けていく。
　ついでに浮遊機関砲や速射砲が異空間格納庫から射出され周囲に展開。城に致命的な射撃を叩き込んでいく。

　現在のオブリビオン城――人間で言えばお腹に穴が空いた状態

成功 🔵​🔵​🔴​

　お城のてっぺんにくっついていた巨大なバラのオブジェががっくんと傾いた。
　デナイル・ヒステリカルはその様子を前に、眼鏡のブリッジを小さくつつくように押す。
「なるほど。人質をとるようなオブリビオンに対してこの苛烈な破壊。
　精神的なマウントをとるという意味では有効かもしれませんね。では、僕も行きましょう」
　手のひらを広げ、眼前で一文字を描くようにスライドしていくデナイル。
　薄緑色の網膜投射式疑似立体ウィンドウがデナイルの目にだけ浮かび上がる。
「うおー！　これ以上は一棟たりとも破壊させんぞ！」
　両腕を振り上げて泣きながら突撃してくる魔物を敵と認識。自動ターゲット。スマートガンを突き出しトリガーを引くことで、発砲座標を自動変更した架空弾が同時に二十発打ち出され魔物たちを一度に撃滅した。
　それを片手間に、デナイルはウィンドウの一つをタップ。
　電子精霊がロードされ、現実改変プログラムが作動した。
「派手に行きましょう」
　デナイルの頭上に架空形成された突撃槍が約１３０本出現。その全てが一斉に城へと突っ込んでいった。

　現在のオブリビオン城――バラのオブジェが木っ端みじんに

成功 🔵​🔵​🔴​

「お前らァ！　ひとさまの家をここまで壊して悪いとおもわんのかァ！」
「ヴァンパイアの手下がよくいう」
　フラウロス・ハウレスは口の片端を引きつらせるように笑うと、ゆっくりと歩み寄った。
「これ以じょギャー！？」
　飛びかかるモンスターを蹴りと裏拳で粉砕していくフラウロス。
「で、解体工事だったな？」
「待ちなさい」
　魔物とは異なる、鋭く美しい声が響いた。
　誰もが思わず手を止めてしまうよな、美しくも恐ろしい、それはヴァンパイアの声であった。
　城の塔から飛び立ち、空を舞うように現われたヴァンパイアの女。
「これほどの無礼を受けたのは初めてよ。けど今なら許してあげる。今やめて許しを請――」
「それ」
　フラウロスのアースシェイクパンチ。
　大地がひび割れお城が真ん中でぱっくり割れた。
「アアアアアアアアアアアアアアアアア！？」
　振り返って絶叫するヴァンパイア。
「何か言ったか？」
「普通今のは聞くところしょう！？　これ以上お城を壊したら殺――」
「破ッ」
　フラウロスのアースシェイクスタンピング。
　大地にクレーターができ噴水やブランコや庭がべっこりいった。
「アアアアアアアアアアアアアアアアア！？」
　ヴァンパイアが再び絶叫した。
「あ、あなたこれ、作るのに何年かかったと思ってるの！？」
「しらんな。物も信頼も壊れるのは一瞬だという」
「そういう話をしてるんじゃない！」
　ヴァンパイアは地団駄をふむように暴れると、きびすを返して遠い森へと飛び去っていった。
「もういいわ！　こんなの遊び場にもならないもの！　せいぜい地下からわき出した恐ろしい魔物たちに食い散らかされて後悔するがいいわ！」
　とかいいながら小さくなっていく声。
　フラウロスは耳をとんとんと叩いて。
「知らんな」
　『姫様を称える像』とかいうものを蹴りで粉砕した。

　現在のオブリビオン城――真っ二つになった

　※これより一般市民救出パートが始まります。
　※オブリビオンの撤退を確認したため、ここからは自動で複数のボーナスダイスが追加されます。

成功 🔵​🔵​🔴​

「調子に乗ったなイェーガーどもよ！」
「ここからが本当の地獄だ！」
　大量の魔物が近から這い上がり、一斉に飛びかかってくる。
　ばっくり割れた建物の間に立っていたコノカ・ハギリガワに、まずはその狙いが集中した。
　魔物の集中攻撃！　窮地！
　とみせかけて。
「本当、分かりやすいお仕事ね」
　纏っていたマントを脱ぎ捨てると、ぴったりとしたボディスーツが露わになった。
　スーツの各部に走るエメラルドグリーンの理力発光伝達線。血流のごとく手首に走ったフォトンラインの先に握った黒い剣。
　刀身に同色のフォースフォトンが刃となって走る。
　魔物たちが目視できたのはそこまでだ。
　コノカが既に翠色の軌跡を長く引いていて、魔物たちは既に輪切りにされていた。
　ばらばらと崩れ落ちる魔物たち。
「つまり、全部吹き飛ばせばいいのよね」
　グリーンの超次元ゲートが開き大きな棺型の兵器パックが出現。コノカの背部ハードポイントに接続されると、グリーンのフォトンラインがパック全体へと走った。
　展開。理力機関砲四門がそれぞれ肩と腰にセットされ、天空に向けて一斉発射された。
　むろん、間にあった城は当たり前のように突き抜けていく。

　現在のオブリビオン城――ホームレスでも住まないレベル

成功 🔵​🔵​🔴​

「貴様ー！　死人にむち打ちという言葉をしらんのか！」
　無限ポップでもするかのように飛び出してくる魔物たち。
　彼らが両腕を振りかざし飛びかかろうとしたその瞬間、額を聖なる光が突き抜けていった。
　あふんと言って灰と散る魔物。
　その向こうには、光る指さすベイメリア・ミハイロフ。
「人々を縛り、操り、宴を開く。きっと目も当てられない有様なのでしょう……と思いましたが」
　振り返ると、廃墟以下の建造物が目の前にあった。
「確かに目も当てられない……」
「ええい動くなァ！」
　ベイメリアの後ろ。
　魔物が、バラのツタに縛られた男を引きずって、がれきの中より現われた。
「こいつがどうなってもいいのかァ！」
　もっと早くやればいいのに、今になって人質戦法をとってきたらしい。
「人を、盾にしようというのですね」
　ベイメリアは振り返り、腰からメイスを抜いた。
　血のように赤いシスター服からもわかるように、彼女の信仰は地球一般のそれとは大きく異なる。メイスの形状もまた、叩ききることを目的とした鉄の重剣であった。
「僭越ながら」
「おい貴様武器を捨――」
　瞬間。魔物の頭が消え去った。
　時既に、ベイメリアは魔物の背後へと過ぎ去り、メイスを振り切っていた。
　崩れ落ちる魔物。男を縛っていたツタは切り落とされている。
「ぶっこわさせていただきます」
　言い終わったその時に、やっと、ベイメリアの先にあった柱が斜めに切断され、崩れ落ちていく。

　現在のオブリビオン城――放って置いてもそのうち砕け散りそう

成功 🔵​🔵​🔴​

「姫様親衛隊総勢２０名見参！」
「ちみどろ強行軍総勢２０名見参！」
「俺！　総勢１名見参！」
「はいウィザードミサイル」
「「ギャアアアアアアアアア！？」」
　五行で塵と消えた魔物たちを背景に、火土金水・明はウィッチハットのつばをつまんで回した。
　魔力の高い樫の木から掘り出されたというロッドをつき、クエスチョン型の先端部分で空を払うように振っていく。
　描き出された魔法の力が魔方陣となって形成され、食い込まれた魔法式が炎となって顕現する。
「矢も余っていることですし、派手に燃やしていきましょう」
　振り込んだ杖の先。
　広大なバラ園に、炎の矢が殺到する。
　燃えさかるバラ園。
　その大地がばっくりと割れ、地下から無数の檻が飛び出してきた。
「ククク、調子に乗っていられるのも今のうちだぞ。これ以上城を破壊すればここにいる連中で血の海を作ることになるだろう」
　爪の長い熊みたいな魔物が舌なめずりしながら檻の中の一般市民たちに爪を向けた。
　卑怯な！　とか言ってくれる親切なイェーガーはいなかった。
「わかった。ぶっ壊すぜー」
　いつのまにか城の屋根にのぼっていた須藤・莉亜がぴょんと飛び、ひとりで動くマントが風を捕まえて彼の身体を浮遊させる。
　小さなナイフで指先を切れば、流れ出た血が巨大な魔方陣へと変化した。
「薙ぎ払え、腐蝕竜」
　魔方陣から飛び出す巨大なドラゴン。
　毒のブレス（ささやき）を行使すると、たちまち城が腐敗していった。
　柱の木が、金属部が、耐久年数を重ねきったビルのようにがっくんと傾いた。
　東京に建っていたらとっくに取り壊し命令が出るくらいの老朽化である。
「うわあああああああああああなにすんだ貴様ーーーーーー！」
　魔物が血の涙を流した、かと思えば、いつのまにか周囲にたかっていた蜘蛛型ドローンの群れが魔物を取り囲み、派手に食らいつくしていく。
　ふわりと着地した莉亜は檻の鍵をライフルを使って破壊。とらわれていた人々を救出した。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「なに？　薔薇？　吸血鬼？　あたしとキャラ被ってるでしょ今すぐ焼き払っ……て……」
　ハート型のゲートを通ってテレポートしてきたミルラ・フランが、ぴたりと動きを止めた。
　燃えさかるバラ園。
　傾いて落ちる巨大バラオブジェ。
　ずごーんと音を立てて庭の噴水をたたきつぶしたオブジェを前に、ミルラは暫く沈黙した。でもって膝を突いてすんすん泣いていた魔物と目が合った。
「みんなひどくない？」
「魔物が可哀想に見えたの初めてかもわかんない」
「と見せかけて死ねェ！」
　爪をビャッて出してバッと襲いかかってきた魔物を、ミルラは華麗なる回し蹴りによって弾いた。
　靴底に仕込まれた十字のプレートが聖なる力場を生み出し、魔物を派手に吹き飛ばしていく。
　ぱっと手を翳すと、同じくゲートから大きな鎌が飛び出してくる。
　回転しながら飛んでくるそれをキャッチすると、刃接続部にがっつりと添えつけられた銀の薔薇型オブジェが炎に照ってきらめいた。
　炎の中から飛び出してくる魔物たちを右へ左へと切り払い、振り抜く動作のまま鎌を深緋の薔薇花弁へと変化させる。
「さあ、舞い踊れ！」
　嵐となって吹きすさぶ花弁。庭の炎は消し止められたが、代わりに庭も消し飛んだ。

　現在のオブリビオン城――更地一歩手前

大成功 🔵​🔵​🔵​

「いい加減にしろォ！　ここにいる女子供がどうなってもいギャアアアアア！？」
　一行で死ぬ魔物の群れ。
　満月・双葉がチャッと眼鏡を外しただけで起きた現象である。
　再び眼鏡を装着すると、銃を抜いて背後に三度発砲。
　背後をとろうとしていた魔物たちが崩れ去る。
「パーティーは終わりですか？　僕と遊んでくださいよ。派手なパーティー、隙なんでしょう？」
　双葉は懐（？）から大根を取り出すと、虹色の翼を羽原貸せて飛翔した。
　空中で舞うように回転。大根を野球のバットのように構えると、ばっくり割れた城の片方（まだマシな方）に向けて叩き付けた。
　たった一発で走る巨大なヒビ。
　そして崩落していく城。
　双葉は再び眼鏡を外すと、冷酷なまなざしで城を見下ろした。
　ただそれだけのことで、城が恐ろしい速度で朽ちていく。
　まるで波に浚われる砂の城が如く、みるみると粉になっていった。
「あれは……まさか城の耐久年数を奪っているのか！」
　さっきまでとらわれていた子供の一人がすごく大人びた顔で叫んだ。
「聞いたことがある。イェーガーの中には対象の寿命を削り取る目を持ったオラトリオがいると。きっと城の『寿命』を削り取っているんだ！」
「おまえ詳しいな子供なのに」
「まあ、そういうことですよ」
　双葉は眼鏡をちゃきっとつけると、粉と化した城から目をはなし、遠くの城を見やった。
　先程吸血鬼（オブリビオン）が撤退していったもう一つの城である。

　現在のオブリビオン城――控えめに言って粉

大成功 🔵​🔵​🔵​

　※第一の城が粉と化しました
　※第一の城にとらわれていた一般市民を全て救出しました
　※これ以降の行動にはさらなるボーナスダイスが追加されます


「フフフ。たとえイェーガーでもこの城までたどり着くことはできないわね？」
「ハイ。魔術で構成された薔薇園結界が三重にはられ鉄壁の防御を誇るこの要塞を破壊することなど、高位の魔物でも不可能。奴らは今頃指をくわえてこれから先のパーティを眺めることになりましょグギャアアアアアアアアアア！？」
　召使いの魔物が真っ二つになった。
　その後ろに立っていたのは、月山・カムイ。
　真っ赤な刀身をもつ刀を振り切った姿勢を解き、肩にかつぐ。
　ファーのついたジャケットには、不思議と魔物の血がうつらなかった。
「あ、あなたどうやってあの結界を」
「結界？」
　カムイは一度振り返り、いい具合に切断されたイバラの壁たちを見た。
「斬りましたけど、ダメでしたか？」
　刀を僅かに浮かせるようにして言うカムイ。なろう系主人公かな？
「さて、解体していきましょうか」
　再び刀に両手をかけ、握り込む。
　吸血鬼の姫は翼をはやして飛び退き、周囲の魔物を呼び寄せた。
「この男を殺し――いや、とらえなさい！」
「「ハッ！」」
　土から飛び出すように現われる魔物たち。
　カムイは右を見て、左を見て、腰をわずかにひねり――豪快な回転斬りを繰り出した。
　魔物たちが、そして周囲のバラ園が切り裂かれていく。
「もろいな」

　現在のオブリビオン城２――結界ってなんだっけ？

大成功 🔵​🔵​🔵​

「このっ……！」
　吸血鬼は身につけていた薔薇を投げ捨て、魔術を行使した。
　大量の石壁が地面から飛び出し、城を要塞のように覆っていく。
　どうやら無敵の要塞というのは嘘では無いらしい。
「で、これを解体すればいいわけですね！」
　が、相手が悪すぎた。
　零落・一六八が『冥治おいしい血液』と書かれた紙パックをストローでちゅーちゅーしながら現われたかと思えば、片手で雑に振るった刀で石壁が斜めに切断された。
　更にもう一発振り込めば、豆腐でも斬るように壊れ、崩れていく。
「そーれぶっこわせー！」
　残った石壁を、石ころでも蹴るようにして粉砕。
　自らへ勝手に設定したパワーで、一方的に物理破壊をしかけているらしい。
　次々に、そして何重にもせり上がっていく石壁を、しかし一六八は蹴りと刀で踊るように破壊しながら突き進んでいく。
　どちらかというと吸血鬼の方が必死そうだった。
「めっちゃくちゃ楽しいですねこれ！　テーマパークみたいだー！」
　雑にはやりの言葉をいうと、一六八は手にした刀をぶん投げた。
　魔力の籠もった石で作られたという巨大な城。その塔のひとつに直撃し、爆発でもするように粉砕していった。

　現在のオブリビオン城２――防御壁が意味を成していない

大成功 🔵​🔵​🔵​

　巨大なバラのオブジェが添えられた古城、ローゼンキャッスル・ツヴァイ。
　七色の魔力障壁と魔力石によるドーム状シェルターが再び発生し城を覆っていく努力もむなしく、たった二つの――いや、二つものイェーガーによって即座に壁は砕けて散った。
「これは単なる暴力ではありません。支配下に置かれていた人々の恨み辛みを晴らす――癒やしの儀式です！」
　翼を広げた姿勢のまま着地し、青い目を開くレコ・エアライネ。
　本を手にその隣に着地するヒューゴ・ソルンフォーフェン。
「ぼ、僕は、その手伝いに……」
「ンッダオラー！」
「スッゾラー！」
　丸太のような腕を持つ魔物たちが庭に飛び出し、石でできた丸太を武器に襲いかかる。
　ヒューゴは中指と親指で眼鏡のブリッジをつまむようにしてわずかにずれた位置をなおすと、レコの前へと歩み出た。
「わ、悪いけど」
「「アアン！？」」
「……燃えて、ね」
　ヒューゴが手を翳した途端、暴風にあおられたように白衣が靡いた。
　吹いた風などない。ヒューゴが生成した数十本の魔力メスによって空気がいっぺんに押し出されたがゆえの風である。
　魔力メスが真っ赤に燃え、一斉に発射される。
　襲いかかる魔物も、彼らの抱えた石の丸太も、氷をピックで打ち砕くように破壊されていく。
「アルフェルトム教三大教義――癒し、学び、戦い。
　さあ、破壊（戦い）と再生（癒し）をもたらすのです！」
　地面を蹴る勢いと、翼で羽ばたく勢いと、聖なる力による浮力と、その全てが混じり合った複合的な力によってレコは螺旋を描いて４５角度で発射され、教団のエンブレムが刻まれたメイスを突きだした。
　城の中央を、レコという聖なる弾丸が貫いていく。
「ヒッ！？」
　城内に籠もっていた吸血鬼がこんな声を上げてもしょうがないと、思う。
「さあ、どんどん破壊です！　再生のための、破壊です！」
「楽しそう……」
　ヒューゴはこっくりと頷くと、炎の魔術を唱えてバラ園や城に火を放ち始めた。

　現在のオブリビオン城２――城の風通しがすごくいい

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　石と土と雑草を踏みつけて、風と夜をかき分けて進む。
　夜を切り裂くようなエンジン音は、大型バイクのそれである。横広に分厚いタイヤが石をはね、ハンドルを握り前傾姿勢をとるレナ・ヴァレンタインは帽子が飛ばないようにと片手でそれを押さえた。
「ああ、前々から思っていたのだ。ああいう悪趣味で派手な建造物が吹き飛ぶさまが、どれだけスッキリするか」
　眼鏡レンズの奥で目を細めると、レンズに映る無数の魔物を補足。
　翼を広げて、接近するレナを撃退すべく飛びかかるコウモリ人間の群れである。
　が、しかし。
「悪いが、小雨程度の邪魔にならない」
　懐から抜いたリボルバー拳銃が、水平に連射される。
　正確に打ち抜いた魔物たちの額が、はじけるように破裂していく。
　飛び散る血肉すらもすりぬけて、走るバイク。
「さて、と」
　バイクに固定していた巨大な剣。もとい、剣の柄。
　およそ２メートル弱はあろうかという柄はそれだけで既に武器のようではあったが、レナが両手でしっかりと握り込んだその途端、彼女（ないしは彼）から流れ込んだフォースエネルギーが大出力のエネルギーブレードとなって伸びた。その構造を知らぬものなら、それをビーム砲か何かだと勘違いしたことだろう。
　レナはおよそ２０メートルほど伸びた『刀身』を、派手に、そして水平に振り込む。
　追撃を試みようとしていた魔物も、その先の城も、まとめて切り裂いてしまうほど、強引に。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「ま、吸血鬼は見つけ次第たたきつぶすって決めてたけど……」
　腕組みをするロベリア・エカルラート。
　見上げた城の大きな塔が、音を立てて斜めに崩れていくのが分かるだろうか。
　さらには、めちゃくちゃに荒れ、燃えさかるバラ園から無数の魔物がはえいずる様が見えるだろうか。
　焦げ付いたイバラ人形たちが、ロベリアを取り囲もうと展開を始める。
「私の舞台にしては、少し汚いな。庭師が必要かな？」
　余裕そうに、肩から下がったストロベリージャムのような髪を右手でもてあそぶロベリア。
　出方をうかがっていたであろうイバラ人形たちはしびれを切らしたように一斉に飛びかかる……が。
　ロベリアが地面になにかを突き立てた途端、彼女の周囲にイバラの壁が高速で発生、形成されていく。
　イバラ人形たちはたちまちその中に呑まれ、沈黙した。
「うんうん、派手なだけの薔薇よりはこっちの色のほうが落ち着くよね。けど、城も壊すだけとはもったいない。今度見かけたら貰ってしまおうかな？」
　そんな風に言いながら、地面にさしていた大きなハサミを抜いた。イバラがぐるぐると巻き付いて固定された、禍々しいハサミであった。
「で？」
　壁を乗り越え、襲いかかろうとする魔物たち。
　ロベリア片眉を僅かに上げて、首を傾げて見せた。
「来ないのかな？　なんなら、こっちからいってもいいけど」
　ロベリアの周囲に、大量のイバラがわき上がっていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　魔物たちの悲鳴が夜の廃墟にこだまする。
　いや、廃墟ではなかった。吸血鬼の城ローゼンキャッスル・ツヴァイというらしい。
　アリス・セカンドカラーは謎めいた馬車にことことと揺られながら現場に到着すると、パチンと指を鳴らした。
「かつて強力なゴーストレディがいて、その力で能力者達を苦しめたと言う……まだ祭りは終わらない、さぁ、銀の雨の時代を越えて今甦れ――『GSL21（ゴーストレデイトゥエンティワン）』！」
　途端、大地を突き破り天をさす一本の腕。
　はえいずる大樹のごとく悠然と大地に立ち上がった霊（ゴースト）は、大地から巨大な剣を抜き取ると表面に描かれた紋章を素早く撫でる。模様が次々に輝き、宙へと紋章を浮かべていく。
　もうこれ完全に内輪ネタみたくなるけど、よく覚えてたねこの子らのこと。
『flame！　melt！　boost！　freeze！　ice！　marine！　thunder！　Spark！　plasma！　wind！　sonic！　jet！　leaf！　rock！　metal！　mist！　flash！　white！　gravity！　smoke！　black！　――completed！！』
「我が名はアルティメットシャイニングサバイブブラスターキングアームドハイパークライマックスエンペラーコンプリートエクストリームアースたん！　であえであえー！」
　うおーと言いながら一斉に突撃していく個性豊か（？）なゴーストたち。いけいけーとだけ言って働かないでいるアースたんの肩を、アリスはぽんと叩いた。
「オ（HA）・シ（TA）・オ（TA）・キ（KE）☆」

　にゅわーと叫ぶアースたんを馬車の中に引きずり込むと、馬車がごわんごわん揺れた。

成功 🔵​🔵​🔴​

　お城はもうちょっとした祭りまだった。
　ゴーストが領事館を襲う暴徒並に暴れているし、魔物という魔物はイバラのオブジェと化しているし、お城はなんか斜めにカットされて失敗した合成写真みたいになってるし。
「うんうん、いい感じに熱があがってきたかも」
　小読・灯はそんなドサクサにマギマギして、お城の周囲にこう、なにとは言わないけど、すごく可燃性の高い液体を撒いてまわった。
　さらには地面にさくっとさしたピンからリールで導火線をくるくる伸ばし、充分な距離まで離れてから、腕を傷付けるかのようにマッチをピッとこすった
　数センチ大の工業マッチとは思えないほどの炎が燃え上がり、儚く投げたマッチ棒は導火線に火をつけた。

「いい加減にしなさい！　お城をいくつ壊したら気が済むていうの！？
　この卑怯者！　直接私の所に来れば直々に血祭りにあげてあげたものを……！
　いい？　これ以上私の大事な城に傷でもつけたら、この城に封印してある魔物を解き放って皆殺しにし――」

　ダークセイヴァー世界のどっかに、巨大な爆煙があがった。
　『はぎゅ！』と言いながらかなたの空に飛んでいく吸血鬼。
「あーらら……やりすぎちゃいました？」
　きっとお城の中に可燃物が沢山あったのだろう。
　燃えさかるお城だったものを眺めて、灯はほっこりと笑った。




　そうして、炎の中からイバラの巨人が立ち上がる。
「助けてくれ！　だれかー！」
　巨人の中に混ぜ込まれているのは、城にとらわれていたであろう一般人たちだ。
　イェーガーたちの破壊は、まだまだ終わらない。

　現在のオブリビオン城２――織田討伐後の本能寺って確かこんな風だったはず

大成功 🔵​🔵​🔵​

　イバラの巨人が足を振り上げ、燃えさかるバラ園を踏みつける。
　高坂・透は大きく飛び退くと、フードの先端を小さく引いた。
『好きなだけ暴れていいってなぁサイコーの依頼じゃねーかァ！なぁ？「俺」よォ？』
「うるさいなぁ。……ほどほどにしといてよね」
　ため息のように呟くと、透はポケットからカードを取り出した。
　解除コードを呟いたその途端、彼が押さえていたサイキックの力が間欠泉のように吹き上がっていく。
「さ、て？　ヒヒ――巻き込まれんなよォ！？」
　トランプカードでも広げるように取り出した五色ダガーペン。それらを恐ろしい速度で投擲すると、ペンはイバラの巨人を派手に切り裂いて抜けていく。透自身のサイキックエナジーが莫大な破壊力と攻撃性を与えているのだ。
「一般人には当ててないよね」
『甘ったれェんだよ』
　そう言いながらも、キッチリと（しかし大雑把に）一般人の居ない場所だけを突き抜けていくダガーペン。
　一般人たちは拘束をとかれて転げ落ち、地面へと転落するが――。
「はーい！　まかせてまかせてー！」
　両手を高く上げぱたぱたを降ったユキ・スノーバーが、吹き上がる吹雪の風圧によって落ちてくる一般人たちを柔らかく受け止めた。
「ひ、ひい！　今度はなんだ！？」
　混乱して寒さに震える一般人たち。
「大丈夫だよー。今暖かくしてあげるからね！」
　ユキはポケットから小銭を取り出すと、すぐ近くに置いてあった自動・販売機にじゃこんじゃこんと投入していった。
「なに飲む？　コーラ？　あったかいのがいいよね」
　そう言って『くりーむしるこ』と書いてある缶詰飲料を選択すると、うーんと背伸びして、それでも届かないのでピックの先端でぽちっと押した。
　一回しか押していないのになんでか二十個くらい飛び出してくる缶しるこ。
「わあ！？　こんなに買ってないのに！　……まって？　なんでこの世界に自販機あるの？」
　すごく今更なことに気付いて二度見するユキ。
　自動販売機表面のパネルに、電光掲示板よろしく右から左へ文字が流れていく。
『お金を入れてください』
「入れたけど……え、もっと要るの？」
『お金を入れてください』
「いいけど……お小遣いもうあんまりないよ？」
　小銭を再びポケットから取り出すと、ユキは自動販売機にちゃりんこした。
　途端。
　自動販売機の両側面から重機に用いられるような体勢固定用伸縮脚が伸び大地にざくざくと突き刺さった。
　さらには自動販売機の体勢がゆっくりと傾き、頭頂部（？）が開いて真っ赤な砲台が突き出た。商品サンプル設置窓が一度ブラックアウトし、それぞれの商品に『高射砲』や『迫撃砲』といったサンプルが提示された。
　でもって、ボタンに『発射』の文字が点灯する。
　どうでもいいがパネルの下部には『あたたか～い』と書いてあった。
『ご希望の商品のボタンを押して下さい』
「え、じゃあ……」
　ユキはとりあえず、端から全部押してみた。

　全部出た。

　現在のオブリビオン城２――なにここアフガニスタン？

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　吸血鬼がゼーゼー言っていた。
　想像してみて欲しい。ある日突然自宅が粉々にされ、別荘に逃げたら焼け野原にされ、やっと第二の別荘へと逃げ延びたさまを。
　いや、マフィアのボスとかでもそんなこと滅多に無いと思うけど。
　３０人規模のイェーガーがカチコミかけてくるというのは、オブリビオンにとってそういうことなのだ。
「こ、ここまで来ればさすがに追ってこないでしょう。暫くは身を隠して、こっそりオモチャで遊んでいれば……」
　そう呟く吸血鬼を、激しい地震が襲った。

「そらそらぁ！　解体解体！　豪快な解体ショーを見せてやるぜ！」
　地面をどかどかとパンチし続けるロルフ・ロートケプヒェン。
　殴るたびに大地が揺れ、揺れはそのまま大地震のそれへと変わっていく。
　バラの巨大オブジェが三つくっついた古城ローゼンキャッスル・ドライがいい具合に傾き始めていた。
　なんだろう。この調子で薔薇が増えていく仕組みなんだろうか。
「なるほど、これを丸ごと壊していい、と……そういうわけだな……」
　黒いガーデンチェアに腰掛け、ティーカップを口元へ運ぶリーヴァルディ・カーライル。
　周囲は激しい揺れに見舞われているというのに、ティーカップの水面は波一つたっていなかった。
　というのも、リーヴァルディが椅子ごと宙に浮かんでいるからである。
　同じような椅子に腰掛け、前後にきいこきいこと揺れるルナ・ファルファッレ。
　胸に抱っこしたウサギのぬいぐるみに、転がる鈴のような声で語りかけた。
「ねぇ、聞いた？　デリア。初めてのお仕事。ヴァンパイア退治よ。あのよく分からないお城、全部壊していいんだって。頑張ろうね。頑張ったらきっと……」
　ぎゅっとぬいぐるみを抱きしめると、ルナの周囲に無数の死霊騎士たちが発生した。
「さあ、行きましょう」
　空から舞い降りた死霊蛇竜に飛び乗ると、ルナは揺れる城を指さした。
「あのお城を壊すのよ。あなたの破壊を、私が許すわ」

　城から飛び出していく大量の魔物が、死霊騎士たちとぶつかり合っていく。
　そんな様子を辰神・明は遠くから呆然とした様子で眺めていた。
「あ、ああ……ア、アキラおねえちゃん、お願いします、です、よ」
　明（メイ）はお守りを握りしめ、目の色を変え明（アキラ）となった。
「っしゃ！　要するにギッタンギッタンにすりゃいいんだろ！？　まずは連中からだ！」
　明は右腕を覆うように変形した呪剣を大きな獣の腕のように変えると、魔物の群れへと突撃していった。
　腕を振り回して突き進む明。
　猛スピードで走るダンプカーに誰が通せんぼしても無意味なように、魔物たちはぶちぶちと破壊されていく。
　そこへ加わったロルフが特別な肉切り包丁を握り、回転しながら突っ込んでいく。
　はしるたび血しぶきが舞い上がり、スプリンクラーのごとく枯れた庭を染めていく。
「ヤベェわ、すっげー楽しい！暴れまくるの楽しいー！」
「同の感！」
　二人はそのまま城へと飛び込むと、彫像やら絵画やらを手当たり次第に破壊していった。

　一方。
「丁度いい……試してみたい呪法があった……」
　リーヴァルディは手を翳し、虚空に真っ赤な魔方陣を発生させた。拡大。および増幅の術式を用いて巨大な魔方陣へと変えると、大地を強烈に蹴って城を見下ろすような高さまで飛び上がった。
　自らに眠る吸血鬼の力と、周囲をめぐる精霊の力、それらを結びつける魔術。
　流れる世界の渦の中から熱の要素のみを引きずり出して、手を、魔方陣を天空へ翳した。
　たった一瞬だけ円形にかき分けられる雲。
　生まれたのは、巨大な炎の球だった。星、と言い換えてもいいかもしれない。
「広域攻撃呪法。天空轟け、裁きの矢…！」
「手伝ってあげて」
　竜に横乗りしていたルナが背をそっと撫でてやると、竜は破壊のブレスを唱えた。
　巨大な炎の球が加速し、城へと直撃する。
　とてつもない爆発と揺れが、周囲を包んだ。

　現在のオブリビオン城３――控えめにいって粉

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　無言で飛び去る吸血鬼がピットインした巨大な城。でっかい薔薇のオブジェが四つもついてる所からお察しの通り、ローゼンキャッスル・フィーアである。
　ここまで来ればもう大丈夫。とかもう言わない。
　なぜなら、もう城の空には二人のイェーガーがスタンバイしていたからだ。
　巨大な人型魔導機械式ゴーレムに搭乗した月凪・ハルマと、炎の翼を広げたユーリ・ヴォルフである。
「可哀想に。この城も粉になるのか……」
「やる前から言うことはないだろう。もしかしたらひときわ強い防御が張られているかも知れない」
　油断するなよ。
　ユーリはそう呟くと、両腕を大きく広げた。
「内に眠りし竜の焔よ。我が剣となりて、敵を穿ち焼き尽くせ！」
　燃え上がる空気。否、炎の中からはえるように飛び出した炎の剣たちが、ユーリのまわりに展開していく。
　狙いは勿論、吸血鬼の城だ。
「『メギドフレイム』！」
　最初から大技。
　真面目も真面目。
　ゆえに。
「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア！？」
　吸血鬼の悲鳴が響き渡った。
　ついでに城は半分ほど爆発して吹き飛んだ。

「思ったよりも爆発が広いな。可燃物を多く置いていたんだろうか」
「感想そこですか？」
　お城が半分無くなっている光景を前に、ハルマは苦笑した。
「テメェ！」
「姫様泣いてんだろうが！」
　翼を生やした魔物の群れが半壊した城から飛び出し、一斉に襲いかかってくる。
「ユーリさんはちょっと休んでてください。見せ場が無くなると困りますんで！」
　剣を構えるユーリの前へ出るゴーレム。
　その操縦席では、ハルマが周囲のスイッチを素早く操作していく。
「全機合体解除。迎撃開始！」
　途端にハルマの搭乗していた機械たちが分離し、大量の飛行ゴーレムとなり魔物たちへと襲いかかった。
　マシンガンやビーム砲、サーベルやハンマーを駆使して魔物たちを撃退するゴーレム軍団。
　腰から下だけの飛行ゴーレムに搭乗していたハルマは、魔物たちが倒されたのを確認してから城へと突進した。
「全機合体！」
　ハルマが操縦席に魔導蒸気式旋棍を差し込むように接続。
　エネルギーを循環させると、沢山のゴーレムが合体し胴体のプレートに『ＨＬＭ２３』と表示された。
「ここはシンプルに――！」
　ハルマの巨大人型兵器が、城を今度こそ粉砕した。

　現在のオブリビオン城４――ちょっと粗い砂利道

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「も、もう本当に！　いい加減にしなさいよ！
　何件壊せば気が済むのよ！　もうさっ――四件目よ！」
　砂利道と化したお城の中心で、吸血鬼は怒りと共に立ち上がった。
「こんなもの、建てるのが悪い、です」
　念動力によってふわふわと浮遊して語るナイ・デス。
「いくらなんでも、こんなに壊されるなんて思わないでしょう！？
　建てるのにどれだけかかったと思ってるのよ！」
「調子に、乗ったので、おしおき」
　キラキラひかる星空のローブを靡かせて、同じように浮遊する星羅・羽織。
「まあでも、随分と愉快で痛快だったよ？」
　城の前に到着した装甲車から、ユエイン・リュンコイスが顔を出す。
「で、次はどこ？」
「もうこうなったらこの土地ごと破壊し尽くしてやるわ！」
　ラスボスが追い詰められたときに言うようなことをこのタイミングで言うと、吸血鬼は大地にバラの剣を突き立てた。
　それをキーにして、巨大な城が建ち上がる。
　巨大薔薇オブジェを五つもくっつけた古城ローゼンキャッスル・フュンフは魔力障壁と砲台を備えた無敵の最終要塞である。多分このシナリオで最後に出るはずだったやつだと思う。
「よし、分かった。行こうか」
　ユエインは牽引していたコンテナから黒鉄機人をスタンドアップさせると、同じく牽引していた単発式127mm単装速射砲『月墜』を装備させた。
「駆逐艦の主砲だよ。派手だろ？」
　そう言いながら指をきりりと動かすと、黒鉄機人が大砲を次々に発射。
　魔力障壁を物理でぶち破って城に着弾した。
「ああああああああああああああああああああああああ！？」
　振り向いて悲鳴をあげる吸血鬼。
　誰だって最終兵器が秒で爆発したらそうなる。
「テメェすこしは手加減をしろぉ！」
「姫様泣いてんだろうが！」
　城から次々に出撃する魔物の群れを、ナイと羽織は同じように首を傾げて見下ろしていた。
「やっちゃう？」
「やっちゃう」
　羽織は出撃した魔物たちの群れに立ちはだかるように着地すると、大地の底から大量の矢を呼び出し、空へと射出させた。
　星の力は大地の力。射出された矢がそれぞれ分離した星に定義され、重力を纏って魔物たちへと殺到していく。
「ひい！？」
　ユベコももたない魔物たちに、これらを避けるすべは無い。
　次々と爆発していく魔物の群れをまえに、両手を爪のような形にして口を大きく開けてみせる。
「がおー。私は、オオカミ。逃げ惑え、こぶたたち」
「次は、お城、です」
　隣に着地したナイが、身体に聖なる光を纏わせた。
　城から発射される砲撃を、体当たりと高速自己再生によって粉砕しながら突き進み、力を奪うようにして建材をぼろぼろに崩れさせていく。
　そこへ、ユエインは装甲車を発進。牽引する黒鉄機人に砲撃を継続させながら全速力で突っ込んでいく。
　三人がそれぞれ城へ突っ込んでから数秒。
　まばゆい光が広がり、城は木っ端みじんに吹き飛んだのだった。

　現在のオブリビオン城５――吸血鬼ちゃん泣いちゃってるでしょ！

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

第2章 冒険 『侵入経路はどこにある？』

POW   :    周囲をくまなく探して回る SPD   :    鍵開け穴開け道具と技術でこじ開けろ WIZ   :    構造から入れそうな場所を予想する 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​

「うわあああああああああああああああん！　ひどいひどい！　ひどいじゃないのよ！　私が何したって言うのよ！」
　シナリオが終わってからいうようなことをこのタイミングで言っちゃう吸血鬼。
　そりゃ通常の五倍近い戦力が一気に押し寄せたら誰だってこうなる。
「けど、もう大丈夫……もう大丈夫よ。ついに完成したんだから」
　先程地面に突き刺した薔薇の剣と同じものを、がれきの上に突き立てる。
　すると、粉々になったはずの五つの城（だったもの）が天空に舞い上がり、集まり、そこへ途方も無いほど大量のイバラが絡みつくことで……。

「完成！　ローゼンキャッスル・タオゼント！」

　千の瓦礫と千の薔薇が絡み合い、ついに完成したというかせざるをえなかった魔の最終兵器。雲を突くほどの巨大さを持つ石の巨人。
　吸血鬼はその巨人の中へとテレポートするように入り込むと、大きく腕を振り上げてイェーガーたちへと襲いかかった。
「私のお城を破壊したこと、後悔なさい。この巨人は今までのようには壊せないわよ！」

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
　とんでもない数のイェーガーが衝撃的なビフォーアフターをかましまくった結果吸血鬼が軽く自棄になったようです。
　自らの魔力をガンガンに注ぎ込んだ巨人を作り上げ、イェーガーたちに襲いかかります。
　巨人は魔力砲撃と巨体による打撃、そして魔物の召喚によって攻撃をしてきますが、イェーガーの力があればそれを弾いたりかわしたりすることは容易なはず。
　巨人は吸血鬼による本気の魔力でコーティングされており破壊がとっても難しくなっています。五件も城を壊されればこうもなる。

　ですが肝心なのは巨人の内部に籠もった吸血鬼へ到達し、『来ちゃった☆』することです。
　お城をもう五つもぶっ壊されたところですから、吸血鬼も慎重に慎重を重ねて、何重もの隔壁を突破しなければ侵入できないようになっています。
　隔壁は『力業で破壊する』か『込められている魔力を解析してロックを解除する』ことで開くことができます。
　その間、巨人内部では「もう頼むから帰ってくれ」と言いながら襲ってくる魔物たちが襲いかかってくる筈なので、こちらの対処も考えておきましょう。

　『外で巨人との戦いに専念するメンバー』『隔壁を突破するメンバー』に分かれて行動するととってもはかどります。得意分野で行きましょう。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝


「なにがイェーガーよ！　イェーガーなんか恐くないわ！　粉々にしてやる！」
　アニメ最終回でとち狂ったラスボスみたいなことを音声伝達魔術（スピーカー）ごしに言いながら巨人の腕を振り上げる吸血鬼。
　高所よりそれを見ていた聖護院・カプラはこっくりと頷き、座禅姿勢のまま瞬間移動した。
　巨人の拳は空をきり、カプラは巨人の背後に出現する。
「ドーモ」
　万能の祈りが籠もった言葉と共に作った、手刀の構え。
「ニッポーズサラリマンはたとえ二百パーセントを超える密集地帯であっても、この祈りによって道を切り開いたといいます。かのモーセ（仏であるという説あり）が海を割るかのごとく、に」
　カプラが一度手刀を下ろせば、背にあったハッチが僅かに、ほんの一ミリだけ開いた。
「モーセ（サラリマンであるという説あり）もたった一度の祈りで海を割ったりなどしなかったはず」
　ドーモドーモ。スミマセンスミマセン。万能かつ絶大な威力を誇るニッポーズの祈りを言葉にしながら、カプラは手刀を繰り返し前後させ、そして小刻みにオジギをした。
　するとどうだろうか。
　巨人の背にあったハッチの魔術ロックの方が『しょうがないにゃあ』と折れ、カプラに道を開いたではないか。
　おおカプラよ。現代のモーセ（通勤快速常連という説もあり）よ。
「満員電車であるローゼンキャッスル・タオゼントが阻むという”因”と阻まれた末に中に入れない聖護院カプラという”果”を断ち切る……これぞ、サラリマンの祈り」

成功 🔵​🔵​🔴​

「ひいっ！　もう入ってきた！　でていけ！　でていけぇ！」
　家に虫が入って来ちゃった一人暮らしのＯＬみたいな反応をしながら、ローゼンキャッセル・タオゼントが腕を振り回す。
　そのありさまを、アララギ・イチイはあくびでもするようなのんびりとした様子で見上げていた。
「あははぁ……この際だから、とっくべつに、コレを使ってあげる」
　アララギは自らの存在情報を強制的に書き換えると、突如巨大な龍へと変換した。
　空気を引き裂くような咆哮をあげ、尾を振るアララギ。否、アララギラ。
　腕を叩き込む巨人に、自らの腕を叩き付けることで威力を相殺。
　咆哮と共にはき出したプラズマ砲を至近距離で浴びせていく。
　砲撃を受けたローゼンキャッセル・タオゼントはあまりの衝撃に吹き飛ばされる……が、そこは吸血鬼が必死でこしらえた最後の要塞。表面がひどく焦げ付いただけで済んだ。最初の城だったら秒で粉砕する威力だったはずだ。がんばったね吸血鬼。
「――――――――――！！」
　が、アララギラは休む暇も与えずチャージレーザーブレスを発射。ローゼンキャッセル・タオゼントとその周辺区域が大爆発を起こし、ローゼンキャッセル・タオゼントは舞い上がる土煙の中に埋もれた。
　咆哮が響き渡る。
　もうこの子ラスボスでもいいんじゃないかっていう迫力だった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

「さっきの、鮮やかな、ぶっ壊れ祭。大変、元気で、華やかで、心がすっとした。敵ながら、あっぱれ」
　咆哮がやばいお外の状況とはうってかわって、星羅・羽織は巨人内部第一階層へと到達していた。
　内部はなんというか、やはりお城からできてるんだなと分かるくらいながーい廊下が続いている。
「うおおおおお姫様を守れええええええ！」
「イェーガーなんかこわくねええええ！」
　そこを、涙目になりながら突撃してくるパンピー魔物たち。
「羽織ポイント１００点、付与」
　対して、羽織は羽織ポイントを発射して魔物を瞬間殺菌した。
　具体的には手の中に握り込んだ星の力を撒くことで炸裂魔術を連続発生させ吹き飛ばした。
「（生き残って）沢山集めると、はおりんグッズと交換」
　こちらが１００ポイントで手に入るはおりんラバーキーホルダーでございます。通常バージョン、眼鏡バージョン、真の姿バージョンの四種取りそろえ。

　とかやってる間に、羽織は次なるゲート前へと到着した。
　ひどい魔術ロックがかかっている。引きこもった中学生の部屋くらい扉が硬い。
「私の、魔力解析と、どちらが、優秀か、勝負」
　羽織は扉にぐーるぐーるとゆびで渦巻きを描き、時空湾曲を起こしていく。
　ロックがかかった扉に対し、ロックがかかっていない時空から強制的かつ部分的に置換。ナチュラルに扉を開けて、扉が既に開いたことにした。
「どやあ」
　羽織はラバーキーホルダーを（こちらを遠隔視聴魔術で見ているであろう）吸血鬼に向けて振った。

成功 🔵​🔵​🔴​

　爆発に巻き込まれ派手に転倒したローゼンキャッスル・タオゼント。
　むくりと起き上がる巨人の膝に、月山・カムイが素早く飛び乗っていく。
「ひ、ひい！　離れなさい！　離れろー！」
　膝をばしばしと叩く巨人。
　カムイは残像をつくるほどの速度でそれを回避すると、巨人の身体を器用に駆け上がっていく。
「むしろ哀れになってきましたが……あの城も薔薇園もおそらく人々を奴隷化して作らせたもの。自業自得の行く先として、骸の海へ帰っていただきましょう」
　カムイは小太刀『絶影』を握り込むと、巨人の肩から跳躍した。
　空中で上下反転、前後反転、目をしっかりと見開いて――。
「『無響剣舞・絶影（アウトレイジ・ソードダンス）』！」

　刹那。
　閃き。
　斬撃交差。

　巨人の顔面にあたる部分が複雑に切りつけられ、吸血鬼によるガチの魔力コーティングをもってしても押さえきれない刀傷が何本も刻み込まれた。
　くるくると回転し、着地。
　半狂乱になって暴れ出す巨人から走って逃れると、あとから駆け込んできた別のイェーガーへとすれ違いながらハイタッチを交わした。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ハイタッチした手は巨大な機械のそれだった。
　ユエイン・リュンコイスが後の操縦席から特殊な糸と魔力伝達によって操作する黒鉄機人。
　その右手には、超高熱を発するという兵器が搭載されていた。
「少しばかりは同情するけど……容赦も手加減もしてあげられないんだ。悪いね？」
　人差し指と親指を背面を向けて立てるようにサインを作ると、機人の足から魔力を噴射。
　背後のハッチから回り込むように侵入し、第二隔壁へと到達した。
　第二隔壁のある部屋はまるで大きなダンスホール。
　黄金の扉には薔薇の模様が描かれ、近づくだけで相手を引き裂くような強烈な魔力ロックがかかっていた。
「なるほど、ね」
　ユエインはその分析結果を眼球デバイスに表示。
「もう一度働いてもらうよ、月墜」
　装着した大砲を連射。
　扉のマジックロックが砲撃を接触寸前で崩壊させていく。
　吸血鬼の必死さが伝わるような抵抗力だ。
　が、それでもこじ開けるのがイェーガー。そしてユエインの黒鉄機人である。
「力尽くだ、押し込もう」
　繰り出された手のひらから高熱が発射される。
　扉の反発に対し、少しずつだが押していた。
　が、それで終わりではない。
「『絶対昇華の鉄拳（サブリメーション・インパクト）』」
　絶対昇華の炎が魔力ロックを強制的に分解、昇華させ、扉もろとも破壊した。
「猟兵配送サービスだよ。待っててね。すぐに行くから」

成功 🔵​🔵​🔴​

　崩壊したベンチの端っこに座り、あったかい缶しるこをくぴくぴやるユキ・スノーバー。
　どっから呑んでるのかなんてやぼなこと聞くなぃ。
　ふはー、と言ってフェイスモニターに『＞＜』な顔をうつすと、ユキはベンチからぴょんと飛び降りた。
　耐久力の限界が来たのか、ばらばらと崩れていくベンチ。
　見上げると、暴れる巨人。ローゼンキャッスル・タオゼント。
「ぼくも頑張ってひてひえにしないとね。吸血鬼も最初のドサクサでどうにかなっちゃったみたいだし、目を覚まさせてあげなくっちゃ」
　ユキがえいっと空き缶を投げると、かろうじて残っていたくずかごにホールイン。
　アイスピックを握り、巨人めがけて走り出した。
「ひい！　こないで！」
　間違ってもラスボスのオブリビオンが第二章で言っちゃいけないことを大声で叫びながら、巨人がずしんと足踏みを仕掛ける。
　ユキは自らに吹雪の暴風を纏って高速で足下をすり抜けると、大地をアイスピックで長く大きくひっかいた。
　地面が薄雪に覆われる。
　都会暮らしの人は経験があろうか。ひときわ寒い日、スニーカーで外出したら凍った水たまりに足を滑らせて転倒したことが。
　足裏がゴムになってるわけでもない石巨人は、ものの見事に片足をつるっとやった。
「あっ」
「あっ――！？」
　その後どうなるかは、いわずとも分かった。

成功 🔵​🔵​🔴​

　人間。片足を滑らせて転びそうになったとき、必然的に腕をばたつかせてバランスをとるものである。
　石巨人も同じように腕を振り、ギリギリのところでバランスをとることに成功した。
　片足は大きく滑って前に蹴り出し、上半身は大きくのけぞってはいるものの、もう一方の足はしっかりと地面についている。
　……そのさまを見て、ベイメリア・ミハイロフはすごく思った。

　ああ、あの膝、裏から打ったら絶対転ぶな。

「こう考えてしまうわたくしは、いわゆる脳筋思考の持ち主なのでしょうか」
　ああ、いけません。大きな剣にも似たメイスを握りしめ、聖痕を輝かせるベイメリア。
　聖なる光をスタスターのように吹き出し、地面を豪速で駆け抜けると、ベイメリアは石巨人の裏へと回り込んだ。
　かろうじて残る岩壁を駆け上がり、派手に跳躍。
「赦し給え。呑み給え。我が振りかざす、この蛮行」
　宙をまうほんの一瞬。
　ベイメリアは自らを光の弾丸と変え、石巨人ローゼンキャッスル・タオゼントの膝の裏を強烈に叩いた。
　と同時に、天空からほとばしる巨大な光が巨人の脳天を打ち、ものの見事にローゼンキャッスル・タオゼントは仰向けに転倒したのである。

成功 🔵​🔵​🔴​

　派手に転倒した巨人の内部。第三階層。
　地面と壁が９０度入れ替わったことで、ミルラ・フランは転がるように壁だった場所へと着地した。
「おっと、随分慌ててるね。城にローンでも残ってたんかい？　吸血鬼暮らしも楽じゃあなさそうだね……なんて」
　同じく転がり、しかし着地に失敗していた魔物たちに膝から抜いたスローイングナイフを投擲。
　さくさく撃退すると、今まさに足下にある扉へアクセスを開始した。
「ふうん？　大雑把な外見してる割に、繊細な作りをしてるじゃないか……」
　炎や氷の魔術にだけ反応するロックバーが内部に複数配置され、複合した魔術を特定の配合で流し込まないと鍵が回らない仕組みになっているらしい。
　ミルラはそれを、金庫破りがダイヤルロックを音と手触りだけで探るかのような丁寧さで慎重にサーチしていった。
　扉（というか地面）に耳を当て、鍵穴に細長いピンナイフを差し込み、魔術を少しずつ流し変えながらである。
　そして……。
「bingo」
　カチリ、となにかが合った音がした。
　ナイフを１８０度ねじってみれば、扉はまるで落とし穴のごとく開いていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

　開いた第四回層は『箱庭』であった。
　といっても、薔薇園が上下左右にびっしりと広がる文字通りの箱の庭。
　そのあちこちからイバラを人型に組み上げた人形がはえ、侵入者へと襲いかかっていく。
「カエレ！」
「カエレ！」
「カエらねえ！」
　飛びかかるイバラ人形を喧嘩キックで突き飛ばすロルフ・ロートケプヒェン。
「具体的にはドリンクバーで六時間居座る迷惑客くらいに帰らねえ！　しかも――ダチを呼んでダベる！」
　親指と小指を立ててテレフォンジェスチャーをすると、ロルフはにやりと笑った。
「そぉら、狼が出たぞ！」
　どこからともなく。
　全身を赤い体毛で覆った狼男が現われ、イバラ人形を腕力によって引き裂いていく。
「で、次の扉はどんなモンだ？　っつーかどこにあんだ！？」
　入ってきた扉を除けば、上下左右薔薇園だらけ。
　くまなく探そうにもイバラ人形が無限にわき出すせいで難しい。
「仕方ねえ。いっぺん綺麗に掃除してみるか！」
　狼男が腕を振り上げる。同じく、ロルフもまた腕を振り上げる。
　空間に対して明らかに大きすぎる狼男の肉体が、前後左右関係なくめちゃくちゃに暴れ回った。
　土が、バラが、人形が、ミキサーにかけられたかのように崩れていく。

成功 🔵​🔵​🔴​

「………………」
　庭から出てきた庭太郎。
　じゃなくて。
　土にごっそり埋まっていたナイ・デスが、ぽっこりと顔を出した。
　ぷるぷると首を振り、残った土を払っていく。
「たす、かった」
　ナイはあらためて部屋の様子を観察すると、イバラでびっしりと覆われた壁を発見。そっと手を触れてみる。
「…………」
　どうやら生命や物体のエネルギーを吸収するイバラが壁一面を覆い、扉を強固にロックしているようだ。
　試しに剣を用いて高速で切りつけても、切りつけるエネルギーを吸収して元通りに再生してしまう。
　厄介なロック。だが。
「得意、分野」
　ナイはイバラの一つを掴んで引っ張ると、大きく口を開けてかじりついた。
　イバラがエネルギーを吸い上げる速さと、ナイなイバラのエネルギーを吸い上げる速さ。どちらが早いかの純粋な勝負だ。
　そしてその勝負は、数秒の拮抗の後、ナイがイバラのエネルギーを全て残らず吸い上げる形で決着した。
　イバラによって唇についた傷を、親指でぬぐう。
「こんなもの、たてるのが悪い、です」
　ぬぐった時には既に、傷は癒えていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

「がん細胞を知ってるかい」
　バンシィ・ルフェイは新たに開放された広い食堂のようなエリアへと侵入すると、自らの影から石壁を引っ張り出した。
　食堂エリアは重力が無いかのように机や椅子がふわふわと浮かび、上下左右の区別無くゆっくりと回転している。
　バンシィはその端。絵画の前にとまってそっと手を触れてみた。
　魔術を感知できる目で凝視すれば、部屋中の魔力がこの絵画を通して窓をあけたかのように循環していることがわかったからだ。
　しかしあらゆる物質に抵抗する魔術がかかっているのか、触れてもそれ以上沈み込むことはできない。
「がん細胞は健康な細胞に義体することで免疫細胞の攻撃を逃れるのさ。より高度になると、人体の細胞と同化して分離不能になっていく」
　バンシィは石壁と自分を魔術的に接続すると、そのまま石壁と一緒に絵画の中へと沈み込んでいく。
「この壁は、吸血鬼が防御のために展開した防壁のひとつさ。つまり、巨人の細胞のひとつ。こうして紛れ込めば……」
　ぱ、と絵画が消え、部屋に重力が戻る。
　絵画があった場所には、ぱっくりと大きな穴が空いていた。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ピンポーンピンポーンピポポポポポポポポポ――！
　インターホンのベルを連打する男。彼の名はピザデリバラー久原！　熱き炎のピザ配達人である！
「お客さあああああああああん！　猟兵ピザでーす！　あけてくださーい！　チッ、居留守を決め込みやがった！　ピザを注文して居留守を決め込む客と消防署にイタズラ通報するやつは地獄行きって知らねえのか！」
　ガンガンとスチール製の扉を蹴りつける久原。
　が、この物語の主人公は彼ではない！
「うーまうーま……てりやきじゃーまんぴざうまうま☆」
　配達ボックスに入り込んで勝手にピザ食ってるセラエノ・メイクピースである。
「ちょ～！　セラエノすぁ～ん！　商品食うのマジ勘弁してくださいよ～！」
「えー。でもこのままだったら冷めちゃうし」
　手についた照り焼きソースをぺろぺろやるセラエノ。
　三輪スクーターのあの、後ろンとこについてる収納ボックスあるじゃん？　あそこかの中でお腹をぽんぽんと叩いて満腹をアピールしつつ、セラエノは久原の鼻っ面に指を突きつけた。
「だいたいおかしいよ！　ピザ屋さんだったら相手のところまで一直線にお届けするものでしょ！」
「ンなこと言われましても……あとよその人に勝手にピザを送りつけるのってそれ深刻な嫌がらｓ」
「しゃらーっぷ！」
　セラエノびんたが炸裂した。
　１センチくらいの手のひらがぺちーってするやつである。
「大丈夫だよ妖精ちゃん！」
　テルプ・ステップアップがすんごい柔軟ポーズで呼びかけてきた。
　一旦呼びかけるためにつま先を頭頂部にぴったりくっつけるポーズはふつう必要ないと思うが、こういうポーズで話しかけられて耳を貸さないひとはいない。
「ドアが開かないなら、こじ開ければいいだもぐもぐこのシーチキンマヨピザ最高にウマウマ！」
「ちょ～テルプすぁ～ん！」
　配達する筈だったピザが全部食われたことで軽く存在意義を失ったピザデリバラー（猟兵でも無いくせによく喋るなこいつ）を放置して、テルプはその場でくるくると回り始めた。
　つま先を頭頂部につけて回転しはじめる人が居たら誰だって注目するし、何をしようとしているのか見守るものである。
　で、マジに何をしようとしているのかと言えば、戦闘用小型機械が数十体ごっそり現われ、扉のあちこちをドリルやカッターでがりがりやり始めたでは無いか。
「僕知ってるんだよ。ドアが開かないときは油圧カッターで切ればいいって！」
「うわー、リアルー！」
　ここまで一生懸命魔術ロックとか属性暗号とか幻術とかやってきたのはなんだったのかってくらいマジで物理的にドアを開けると、テルプとセラエノはドアをとやーと蹴り開けた。
「「おまたせー！」」
　あと、ピザ屋は帰った。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　ちょうどその頃。
「この！　私に逆らってただで済むと思ってないでしょうね！」
　吸血鬼ちゃんはこの期に及んで乙女ゲーの悪役令嬢みたいなことを言っていた。
　没落する未来でも確定しているんだろうか。
　石巨人ローゼンキャッスル・タオゼントを再び立ち上がらせると、辺り構わず拳を叩き込みまくった。
　大地がひっぺがされ、木々が舞い散り、空が土色に染まっていく。
　が、その中にあってなお、傷一つつかぬものがいた。
　フラウロス・ハウレス。ダンピールの女である。
　長所は！
　腕力！
「くくっ……懲りぬやつだな。どれだけ強固な城に立て籠もろうとも、妾の拳の前では紙くず同然だと知れ！」
　石巨人のパンチに対抗し、フラウロスは跳躍からのパンチを繰り出した。
　サイズは比べる間部も無く相手が上。
　しかしフラウロスは一ミリたりとも引くこと無く、相手の拳を打ち返してしまった。
　砕ける巨人の拳。
　大きくよろめき、しかし踏みとどまる石巨人。
「一発で壊れんか、少しは骨があるらしいが……」
「一人で壊せぬものならば、二人でならば壊せるだろう！」
　一瞬。
　天空に穴が空いた。
　暗雲を突き抜け、流星の如く大地に立つ人型のシルエット。
　真っ赤なボディ。
　発光する目。
　それはまさしく、人型のロボットであった。
「目には目を、歯には歯を、巨大ロボには巨大ロボを！
　プラモビルダー――富良野・経嗣朗、推参！！」
　手のひらを強く翳す姿勢から、経嗣朗は……否、周囲の砕けたがれきと合体し全長３メートル半のロボと化した経嗣朗ロボは吠えた。
　ピッケルとスコップをそれぞれ装備した経嗣朗ロボは、ただいまの流行に乗って背後に三角形のパーツをくっつけ跳躍。魔術エネルギーで飛行した。
「く、くるな！」
　今から負ける人みたいなことを言って、無事な拳を振り込む巨人。
　経嗣朗ロボ。そしてその肩に立ち乗りしたフラウロスは、それぞれのピッケルと拳を、巨人の拳へと叩き付けた。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​

　膝を突き、うつむく巨人。
　完全に動きをとめた石巨人ローゼンキャッスル・タオゼントの内部は、もっと大変なことになっていた。
「ふむふむなるほど。最後の最後はかなり色んな魔術を複合したロックをかけていたんですねえ」
　ストローで血液をちゅーちゅー飲んで喉を潤すと、零落・一六八はマンホールのような扉に次々と電脳魔術を打ち込んでいった。
　スパークをおこし、いくつもの結界が解除されていく。
「テメェ！　俺たちの存在を忘れてるんじゃあねえぜ！」
　魔物たちが思い出したように一斉に飛びかかるが、一六八は扉に片手を添えたまま、抜いた刀で魔物の爪を受け止めた。
「悪いですねえ。もう、アンタの出る幕じゃあないんですよ」
　一瞬のエネルギースパークで魔物たちが一斉に吹き飛ばされ、はじけるように消滅していく。
　一六八はふうと息をつくと、最後のロックにクナイを突き立てた。
　バチンとスパーク。
　開かれる扉。
「はーい、こんにちは、這い寄る猟兵、零楽・一六八くんですよー」
「ひい！？」
　さあ、これからが本当の地獄だ（オブリビオン視点で）。

成功 🔵​🔵​🔴​

第3章 ボス戦 『愛姫』

POW   :    サイレントローズ 見えない【 薔薇の蔓】を放ち、遠距離の対象を攻撃する。遠隔地の物を掴んで動かしたり、精密に操作する事も可能。 SPD   :    華踊 自身の装備武器を無数の【 薔薇】の花びらに変え、自身からレベルm半径内の指定した全ての対象を攻撃する。 WIZ   :    薔薇の報せ 【対象の周囲に薔薇の香りを漂わせることで】対象の攻撃を予想し、回避する。 イラスト：善治郎 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「ななななによ！　私が何したって言うのよ！」
　コックピット（？）の赤いソファで膝を抱えてぷるぷる震える吸血鬼。通称『歌姫』。
　たぶんぜったいこんなキャラじゃなかった筈だが、自宅が五軒も壊された上に最終秘密兵器が中と外から同時に攻略されたら誰だってこうなる。大国の大統領だってこうなる。
「こ、こうなったら……！」
　手元にあった『じばく』というボタンをグーで押し、歌姫はステンドグラスの窓からクロスアームで脱出した。
「逃げるが勝ちよーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー！！！！」

＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝
　とんでもない規模の戦力にボッコボコにされた吸血鬼『歌姫』は完全崩壊したお城とキャラを放棄し、翼を使って逃げだしました。
　ええい逃がすな！　追え追え！　そしてヤれェ！！

　空を飛んで逃げる奴を飛行能力やダッシュで追いかけて倒そう！
　飛べるか飛べないかなんて些細な問題ですが、『俺は飛べる』と言い張れば飛べることにしますしましょう。理由も考えると楽しいですよ。魔法とかジェットとか旋風脚とか。

※歌姫ちゃんの心はバッキバキに折れているので、ボーナスダイスがどんぶりいっぱい追加されます。
＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝＝


「待てェー！」
　爆発する石巨人ローゼンキャッスルトラなんとかを背景に、ハリウッド映画もかくやっつーダイブで飛び出すロルフ・ロートケプヒェン。
　おまえ……飛べるのか……！？　あのマントをこう、なに、マー○ル映画の魔法使いみたいにこうアレして！？
「ぐおおおおおおおおお！？」
　ロルフは愛姫の足をきゃっちしそびれてそのまま墜落した。
　マントはアレしなかった。
　地面になんかヒトガタの穴（耳つき）を作ったロルフはむっくりと起き上がると、空中ダッシュで逃げる歌姫をダッシュで追跡した。
「おーおー、どうやったらそんなに早く翔べるんだ？　随分立派な翼だなぁ！？　その羽むしって枕とかに入れ込んでやろうか！」
「ひい！？」
　やくざやさんでもそんな脅しはしないっていう勢いで追跡するロルフに、歌姫は薔薇の花をばらまいて発射した。
　雨のように降り注ぐ薔薇をれいの人斬りのこぎりで振り払い、ギラギラと笑う。
「その花も立派じゃん？　どうやって育てたんだ？　うちに持って帰ったらいい飾りになりそうだなァ！」
「ヒィ！」
　まてやー！　と言いながらすごいスピードで追いかけるロルフ。その頭上を――

大成功 🔵​🔵​🔵​

「おお、オブリビオンよなさけない。この期に及んで逃避など」
　座禅フォームで地面と水平に飛行移動する聖護院・カプラ。
「ひい！　また来た！」
「そこのオブリビオン、とまりなさい」
　高速道路で呼びかけてくる白バイと同じくらいの存在感で大声を発するカプラ。
　止まれと言って止まるオブリビオンはおるまい。だって止まったら死ぬし。
「こ、来ないでぇ！」
　最初の『フフフ』って言いながら一般人を踊らせてた歌姫ちゃんはどこへいったの。そんな悲しみと共に放たれるサイレントローズ。
　ひとりぼっちの悲しみに軋んだ網が心で揺れ――ってそれはサイレ○トヴォイス。
　大地からびゃんびゃん伸びたバラの蔦がカプラに絡みつくが、カプラは後光ユニットから存在感を照射。
　知ってるかい坊や。人より馬は早く駆け、馬より光が早く駆ける。けれど存在感ってやつは、光より早く駆け抜けるんだぜ。
「はぎゅ！？」
　普通だったら絶対出さない悲鳴をあげ、歌姫に存在感ビームが直撃した。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　ギャオンという轟音を残し空を駆けるスペースアララギ号。
　Ｘ字翼のどっか既視感のある宇宙戦闘機が四門のレーザー砲をばしばしうちながら歌姫を追跡した。
「ひい、こないでこないで！」
　歌姫は大量のがれきをバラの花びらに変化させると、あたり一面に広げて散らせた。鉄をも切り裂く巨大な刃が画面を埋めるレベルで広がったのだ。画面？
　スペースアララギ号は無残にも切り裂かれ、爆発四散し塵と化した！
　おお！　なんということだ！　イェーガーが敗北してしまったのか！？
「とみせかけてぇ」
　半透明に点滅しながらひゅいーんとコンテニューするスペースアララギ号。
「ひい！　倒したはずなのに！」
　ボムを使い切って追い詰められた人みたいに震える歌姫。
　が、震えるのはまだ早いぜ。
　スペースアララギ号が歌姫を囲うように合計２７機も出現し、一斉に誘導ミサイルを発射したではないか。
「さーあ、楽しいシューティングゲームのはじまりよぉ」
　アララギ・イチイはコックピットのひとつで足を組み、悲鳴をあげる歌姫に目を細めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　大量のミサイルの爆発によって墜落する愛姫。
　地面をバウンドする愛姫に、猛烈なダッシュで追いかけてくる猛獣……じゃなくて辰神・明がいた。
「逃げんじゃねェェェ！！！　スカートの中見えんぞ、バーカ！　バーカ！」
「ひいいっ」
　呪剣を振りかざし凶悪なスマイルで追いかけてくる明を見ておびえない奴ぁいない。実際城が粉になって行き場を喪っていた魔物たちはダッシュで逃げた。
「おら待てェ！」
　飛びかかる明。
　咄嗟にバラの花弁と甘い香りで空間掌握をしかける愛姫。
　明の斬撃を二度三度と回避するが……。
「逃げて勝ちにさせるかっての、大人しく負けを認めやがれ！」
　明は闇の呪槍を１００本まとめて召喚すると、愛姫めがけて一斉に発射した。
　残像を作る勢いで五十本連続で回避する愛姫だが、残る五十本は回避仕切れなかった。というか飛びかかる明の凶悪さに足がすくんだ。
「オラァ！」
　槍のように投擲する剣が愛姫に突き刺さり、さらなる槍が次々と突き刺さる。

大成功 🔵​🔵​🔵​

　激しい攻撃を受け、死んだかに見えた愛姫。（割とさっきまで歌姫と誤表記しててごめんね）
　しかしこれでもオブリビオン。人類を恐怖に陥れた吸血鬼である。
　愛姫は血まみれの翼を広げ、必死の形相で肉体を引きちぎると、バラの花弁で強制的に肉体を補強しながらさらなる逃避を続けるのだった。






　翼を広げ全力で空へ飛び上がる愛姫。
　なぜそんなに急ぐのかと言えば。
「アーッハッハッハ！！！！！」
　目を見開いて笑うミルラ・フランが豪速で追いかけてくるからである。
「ほらキャラ被り、薔薇被りの落とし前を付けるときが来たよ！！　――ジャッジメントクルセイドォ！」
　翼を打つ光。
　対して愛姫は歯を食いしばり、纏った薔薇の花弁で翼を補強、飛行速度を維持する。
　さらには周囲に展開したバラの香りで次なる光線を接触の直前で回避した。
「ハッハッハッハッハ！　もっと踊りたいってェ！？」
　振りかざした鎌が、天空に向けて投げられる。
　反転して張る魔力防壁。
　突き刺さる銀の鎌。
　跳躍したミルラは鎌の柄を足場にすると、ぐわりと広げた手を翳した。
　赤いマニキュアの塗られた美しい爪が、鮮血のように光る。
　見開いた目が、紅をさした唇が、同じ色に光った。
　食い込む爪。食い破られる防壁。
　愛姫はぶんぶんと首を振った。
「さあ！　ほら！　追いかけっこは――」
「終わりだ！」
　二人の頭上。
　破壊された防壁の上。
　ユーリ・ヴォルフが、剣を振りかざし存在していた。
　広げた翼が炎を纏い、翳した剣も炎を纏い。
　見ればはるか天空もまた、炎のように赤く燃えていた。
「もう逃がさん！　打ち落とす！」
　叩き付けられた剣が炎のオーラとなって愛姫を焼き、同時に二人を炎の鎖が繋いだ。
　共に墜落する愛姫とユーリ。
　再び繰り出したユーリの剣を、しかし愛姫は魔術防壁で食い止めた。
　急降下し、大地にぶつかる。
　巻き上がる砂と土。
　それを払って飛び出す無数のツタ。
　剣を握るユーリに、ツタが大量に巻き付いた。
「う、動くな！」
「断わる――『ファフニール』！」
　燃え上がる炎の中から飛び出した槍が愛姫に直撃。腹に突き刺さり、貫いていく。
「い、痛……！」
　血の涙を流し、拳を握りしめる愛姫。
　拳を振り上げたと同時に、周囲のがれきが巨大な拳へと編み上がった。
　生み出したツタでがれきを集め、操っているのだ。石巨人と同じ原理である。
　ジャイアントパンチ。
　が、しかし空中で止められる。
「ククク、どこに逃げようと言うのだね！　逃げるだけ無駄だぞ！」
　吸血鬼の翼を広げ凄まじい速度で追いついてきたフラウロス・ハウレスが、右の拳を繰り出していた。
　がれきを集めてつくった巨大な拳が、フラウロスの美しい細腕一本に粉砕された。
「貴様も他の奴らと同じ目にあうが良い！」
　殴り抜いた勢いのまま回転し、蹴りの追撃を叩き込む。
　拳どころか腕部までもが連鎖的に崩壊し、爆風をもって吹き飛んでいく。
　ユーリと繋いでいたオーラの鎖もまた爆風によって千切れ、愛姫は舞うように吹き飛んだ。
「そこか」
　飛行し、まるで流星のように突っ込むフラウロス。
　愛姫は喉の奥から絞り出したような悲鳴をあげ、地面と水平に飛び退くことで直撃を回避した。
　大地が爆ぜ、クレーターを作る。
「じ、冗談じゃないわ……！　出てきなさい、お前たち！」
　愛姫はバラの花弁をばらまくと、インスタントの魔物を大量に生み出し、魔物の翼をもぎとって自らに接続。その場から飛行して逃走を続けた。
　

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「イェーガーども！　これ以上姫様を追いかけさせねえぞ！」
「魔物の意地ってやつを見せてやヒャアアアアアアアン！？」
　今から見せ場を作ろうって息巻いていた魔物たちがいきなり氷に閉ざされた。
　誰のものかってそりゃあ、ユキ・スノーバーのものである。
　氷は魔物たちを埋めただけに留まらず、うまいことこう……なんていうの？　ジャンプ台？　が出来ていた。
「よーし、いくよー！」
　ユキはフェイスモニターに３からのカウントダウンを表示すると、氷のスキー板とボトルを腰と足に装備した。
　ボトルの先端をピッケルでこんこんと叩き、吹雪の噴射を開始。
　猛スピードで飛び出したユキは、ジャンプ台を使って派手に空へと飛び出した。
「まってまってー！　まだオブリビオン倒してないからー！」
「ひいい！？」
　このテンションで追っかけてくるのはまあ恐い。本人に悪意とか邪気とかが無いのがより恐かった。

　と、その一方。

「時限信管三秒設定。発射」
　ユエイン・リュンコイスは黒鉄機人に装備させた単発式127mm単装速射砲『月墜』からの砲撃を一通り行なうと、外装をパージ。
　身軽なフォームに切り替えると、ボトルタンクに蓄積したガスを噴射。
　黒鉄機人で氷のジャンプ台を滑り抜け、大胆に空へと飛び上がった。
　その肩にしがみつくユエイン。
　飛行する愛姫は地面に魔力の種を投下し、巨大なツルの腕をふたつ同時に生やした。
　飛んできたユキとユエインをそれぞれキャッチし投げ返すためだ。
　が、しかし。
　はえた腕はきっかりと着弾した砲弾の爆発によって吹き払われた。
　黒い爆煙を抜け、ユキが、そしてユエインの黒鉄機人がそれぞれピッケルと腕を振り上げる。
「折角こんな高さまで来たんだ。是非とも当たってくれ」
「ひえひえピッケルー！」
　振り返る愛姫に、氷のピッケルと灼熱の掌が同時に直撃した。
　咄嗟にはられた魔法防壁を粉砕し、愛姫は斜めに、地面へ向けて吹き飛ばされていく。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　地面に突き刺さり、かつて美しいバラ園だった場所を爆発四散させていく愛姫。
　燃え尽き炭すら残らなかったバラ園は、もはやただの大きくえぐれた土。
　そこへ、二人のイェーガーが飛び込んでいった。
「ここまできて見逃すって選択肢は、俺らにはないんですよ」
　魔導蒸気式旋棍からの蒸気エネルギー噴射で加速しながら追いかけてきた月凪・ハルマ。
　そして。
「ここまでベッコリいかれると申し訳ない気持ちになるけど……しょうが無いよねぇ、『俺』？」
　彼に引っ張って貰うことで追いついてた高坂・透が、飛び込む直前で表層人格をチェンジした。
　目の色と表情ががらりと変わり、のこぎり状のナイフを握りしめる。
「手の届く所へ下りてきてくれたなァ……もう少し遊んでいけやァ！」
　猛烈な速度で飛びかかる透のナイフを、愛姫は地面から高速ではやしたツタで払いのけた。
　が、払われたそばからダガーペンを投擲。
　愛姫の翼に深く突き刺さる。
　更に、ジェット噴射で勢いをつけたハルマのキックが炸裂。
　直前で腕を翳した愛姫だったが、勢いに負けて蹴り飛ばされた。
　翼で制御しそこね、地面を滑るように転がる。
「こいつで――！」
　大量に掴んだナイフを投擲しようと透が構えた、途端、
　違和感に気づいて透は大きく飛び退いた。
　伸びた大量のツタに花がさき、その花弁が舞い散ることで周囲全ての物体を切り裂き始めたのだ。
「下がって！」
　ハルマは自らの本体である宝玉を二十四に複製して周囲に展開すると、高速で周回させて飛来する花弁の刃を弾き始めた。
　周回軌道の内側に入り込んだ透はハルマと身を寄せ、無差別攻撃状態（第二人格）をカードへと再封印した。
「うわあ、あっぶない……ありがとね。反撃できそう？」
「どうだろ。今はしのぐので精一杯みたい。さすがは吸血鬼って感じだね。けど――」
　ハルマは回転する宝玉たちの中で鋭く手裏剣を投擲。花弁を操る愛姫の腕を掠っていく。
「少しずつなら削れそうかな」
「……！」
　花弁を暴れさせながら、愛姫は再び空へと飛び上がった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　空へ逃げれば安全なんてこたあない。
　が、人は危険を察知すると大体空に逃げたくなってしまうものである。
　そして大体の場合。
「おやおや、どこへ逃げようというのですか？」
「オネーサンイイカラダしてるねー」
　空中を蹴って三段ジャンプするテイェーガーに追いつかれたりする。
　月山・カムイとテルプ・ステップアップの二人である。
　インラインスケートシューズで空圧を掴んで蹴り出すテルプ。
　それを同じく蹴りで相殺する愛姫。
　反対側からはカムイが小太刀を繰り出し、魔術防壁を何重にも纏った愛姫の手がそれを受け止めた。
「で、本当にどこへ逃げるつもりなんです？　猟兵は例え世界を渡っても貴方を追い詰めると思いますし、本当にどこへ逃げても無駄だと思うのですが。城を構えて隠れても無駄なのは、すでに……」
　カムイは黒く笑った。
「わかっているでしょう？」
「ひい！？」
　五回（プラスアルファ）もお城をぶっ壊された経験が愛姫の脳裏をよぎる。
　本能的な拒絶なのだろうか。地上から巻き上げた大量の『切り裂く花弁』が、カムイたちへと襲いかかった。
　カムイは再び空を蹴って回転。
　小太刀を高速で振り込むことで飛来する大量の花弁を切り払った。
　一方でテルプは同じようにくるくる回転して周囲に電脳ベールを展開。花弁の侵入を拒む。
「そ、そこで大人しくしていなさい！」
　愛姫はギリギリ修復させた翼でその場を離れようとする……が。
「逃がしませんよ？」
「ちょっとでいいから触らせてー♪」
　花弁の中を切り抜けた二人が、割と当たり前のように追尾してきた。
　愛姫。拡散魔力砲撃。
　電脳ベールと呪いのオーラでそれらを振り払った二人は至近距離へと迫り、テルプは右肩を、カムイは左肩をそれぞれ掴んだ。
「言ったはずです。――『逃げ場は無い』」
　小太刀を握ったカムイの手が、わきわきとしたテルプの手が、それぞれ高く振り上がった。
「いいいいいいいいいいいいやーーーーーーーーーーー！」
　なんか、吸血鬼から乙女みたいな悲鳴があがった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　墜落した愛姫。
　視聴者諸兄はそろそろこんな風に思っているのではないだろうか。
　ヤダー愛姫ちゃん可哀想！　多分もっとミステリアスで余裕のあるオブリビオンとしてイェーガーたちと互角の戦いとスリルを見せてくれる筈だったのにもうなんか被害者じゃん。と！
　だが案ずるなかれ。
　腐っても鯛。負けてもオブリビオン。
　愛姫はむくりと起き上がり、大地にバラの花弁をまき散らした。
「よくも、やりたい放題やってくれたわね……」
　広げる翼は傷だらけだが、大地を割って飛び出した無数のバラがまとわりつき、巨大な翼へと変化していく。
　空へと舞い上がる愛姫の手にはイバラの剣。
「やっと追いつきましたよ！　そんなに逃げなくても先っぽだけですから先っ――うわあなんだかシリアスな感じに！？」
　燈夜・偽葉ガチナンパシリーズ第一弾が到着アンドブレーキ。
　そんな偽葉に愛姫が豪速で接近、イバラの剣を繰り出した。
　素早く抜いた茜色の刀を斜めに翳し、愛姫の下をすり抜けるようにやりすごす偽葉。
　直後反転し、翳した手からバラの花弁を放射した。
　嵐となって吹きすさぶ花弁。触れるものを全て切り裂く魔力の刃だ。
　剣で簡単に破壊できるような強度でないことが、偽葉は直感で分かった。
「剣よ――！」
　両手でしっかりと握り込んだ刀で突きを繰り出すと、時空を引き延ばす形で超高速かつ超大量の突きを一瞬のうちに繰り出した。
　まるで掘削ドリルが土を掘り進めるようにバラの花弁を破壊し至近距離まで迫る偽葉。イバラの剣と偽葉の刀が、先端でぶつかり合って互いを弾いた。
　後退する愛姫。
　と、そんな彼女の背後に羽久依・集葉とナイ・デスが同時に飛びかかった。
「素早さなら忍者！！　忍者なら拙者でござる！！！　逃がさないで――ござる！」
　集葉の繰り出した大量のクナイ。
　そして、全く同時に放ったナイの短剣が射出された。
　気配を敏感に察知した愛姫は素早く反転。
　イバラの剣で飛来する武器を打ち払う。
　が、それはあくまで囮に過ぎなかった。
「蜜ぷにさん」
　ナイが虚空に呼びかけると、大量の蜜ぷにが召喚され、愛姫へと降り注いでいった。
　切り裂く……が、斬撃を与えたところで蜜ぷににダメージはない。分離し、再び結合し、愛姫を飲み込むかのように集合していく。
「……っ！」
「バラの蜜で、癒しを提供、です。なんて」
　更に追加された巨大な蜜ぷにさんが、愛姫へと落下。ドドンという激しい音と共に足場の土もろともはじけ飛んだ。
　剣を捨て、上空へ逃げる愛姫。
　巨大な翼を羽ばたかせ再びバラの放射を仕掛け――ようとするが。
「遅いでござるな」
　背後で集葉が囁いた。天翔る足袋によって僅かながら空を飛んでいた集葉が、素早く背後に回り込んでいたのだ。
　その気配を察し大きく飛び退く愛姫だが、集葉は既にクナイを投擲していた。
　クナイの狙いは愛姫――の、翼であった。
　巨大なバラの花とツタで作られた翼に突き刺さり、形成魔術を強制的に破壊する。
「飛ぶ鳥を落とすとは……まさにこのことでござるな！」
　愛姫は空中でコントロールを失い、転落を始めた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

「さあて、いよいよ出番かねぇ」
　飛行して追いついていたバンシィ・ルフェイが、冥府の煙に包まれた。
　抜け出たのは一人の女。バンシィの真の姿である。
　バンシィは指輪の形を確かめるように、ようにゆっくりと指でなぞっていくと、自らの背後に大きな門を形成した。
「『死せる猟師、猟犬、嵐の夜を駆ける者ども。我が示す敵を汝ら討ち倒すべし、疾く！』――『嵐の夜（ワイルドハント）』」
　地の底より響くような声で宣言すると、門より死せる猟師と死せる猟犬がそれぞれ出現。
　猟犬は空を駆け、愛姫へと襲いかかる。
　バラの翼を一度パージし、最低限の飛行能力を残して回避行動をとる愛姫。
　そこへ猟師の銃撃が追い打ちをかけた。
「そいつらは朝陽が出るまで帰らないよ。せいぜい頑張りな」
　ダークセイヴァーにおいて朝陽がさすことはない。それは永遠に終わらないハンティングを意味していた。
　空で猟犬から逃げ続ける愛姫を見上げ、ベイメリア・ミハイロフは小さく首を振った。
「なんだか、たいへん気の毒になって参りましたが……ここで手を緩める理由には、なりませんね」
　ベイメリアは星の輝きを自らに纏うと地面から僅かに浮き上がった。
「人生、逃げに回ってしまっては、うまくいかないものでございます。いつでも攻める強い心を持ち合わせていなくては。――『ジャッジメント・クルセイド』！」
　天空をさすように突きだした指が契約となり、逃げ続ける愛姫に次々と天からの光が打ち落とされていった。
　対する愛姫はそれをギリギリのところで回避しているようだ。
「打ち落とされる光より早く動いているということでしょうか？　そんな筈は……」
「違うわ。あれを見て」
　リーヴァルディ・カーライルが愛姫の周囲にできる光の歪みを指さした。
「彼女が纏っているバラの香りが延長身体となって攻撃の接触をいち早く感知しているのよ」
「なるほど……けれど、未来予知というわけではないのですよね？」
「そうね。だから」
　リーヴァルディは魔方陣を自らの周囲に展開。それらを複合したひとつの魔方陣として成立させると、凄まじく巨大な魔方陣を大地へ一瞬にして描き込んだ。
　しかし、魔方陣など所詮は舞台。
　真の力は、リーヴァルディの血にこそあった。
「……『限定解放・血の獄鳥（リミテッド・ブラッドフェネクス）』」
　胸元に突如としてはしる縦の傷。吹き出た血に、白血球構造の中に巧みに練り込まれた超高密度の呪術回路が起動し、黒炎の獄鳥となって顕現した。
　接近を関知できたとて、追い回す対象から永遠に逃げ続けることはできない。
　それに……。
「…ん。逃げられると思わないことね。別れを告げなさい。この世界の全てから…」
　鳥が接近と同時に自爆。凄まじい爆発の球が愛姫をも飲み込み、そこへ猟師の銃撃や天からの光が集中した。
　感知できたとして、逃れようとしたとして、もはや回避できるものではなかった。
「けど、あの耐久力。マトモに闘えば結構な強敵だったかも……？」
「まあ、そうだねぇ」
「あれだけ直撃をうけておきながら……」
　愛姫はぼろぼろになってはいたものの、しかし未だ空に健在であった。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　やあみんな、シリアス空気のお兄さんだよ。
　場がシリアスになった時にシリアスめの背景トーンを張るのがお仕事サッ☆
　今日はダークセイヴァー世界で民をオモチャにする悪い吸血鬼との決戦だってことでそういうトーンを沢山持ってきたんだけどナニコレ。
「さぁ、男の娘×男の娘に目覚めて堕ちてしまいなさい。禁断のミルフィーユ状態に性癖を歪み尽くすのよー」
「ふふふ、私から、逃げようなんて、甘々。甘々と、言えば、飴ちゃん、食べる？　いちごあじがいい？　それとも銀河皇帝味？」
「プラモは飛べる！　なぜなら飛ぶものを模したからだ！　いいか、特にこのクシィーは戦艦に搭載するような推進装置を超小型化して積み込むことで大気圏内における無変形超高速飛行を可能とし一撃離脱の鬼と化した画期的な――」
「なんなのこの人たちいいいいいいいいいい！！」
　全速飛行モードで離脱をはかっているのにアリス・セカンドカラーと星羅・羽織と富良野・経嗣朗という三人が同じくらいの速度で横を飛んでいた。
　しかも修学旅行中の新幹線みたいなノリで話しかけてきた。
　実際速度もそのくらいなのでコミュ障気味の女子へ濃いクラスメイトがグイグイいってるようにも見えた。
　特に羽織は身の丈より大きな杖に跨がり、魔女のように飛んでいた。推進力にしている球体は超越物語理論によって作成された小宇宙そのものであり世界でおこるすべての現象エネルギーが潜在的に内包されていた。
　高速で空を飛ぶことなど、ましてイチゴ味のキャンディを取り出すことなど容易なのだ。
「くまさん味も、あるよ？」
　一方でアリスは超宇宙バタフライ泳法で宇宙を泳いでいた。
　この特殊な泳法は宇宙の鎖を海に見立て重力を泳ぐというものであり大気圏内を泳ぎ移動することなど容易中の容易。この世界に星とか宇宙とかあるかは知らん。剣の形してたって驚かねえぞ僕ぁ。
「男の娘ラブがいやなら百合っこしましょ！　ひとさまには見せられないグリカになりましょ！」
　そしてその一方で経嗣朗は……え、経嗣朗はなんでそんな速度で飛んでるの？
「プラモは飛ぶ。なにもおかしいことは無い」
　はい。
「愛姫よ君は自らビルドした五つの城と変形合体した巨大ロボを私たちに見せた。つまりビルダー勝負を仕掛けたのだ！　であればビルダーである私はビルドで勝負を受けるのは当然の理。宇宙開闢より定められた使命！　見よ、自由なプラモの小宇宙を！」
　最初に仕掛けたのは経嗣朗だった。
　１６体のプラモをアタッシュケース型プラモボックスからそれぞれ取り出すとその全てを変形合体。
　君は見たことがあるか。１６体ものプラモが変形合体するさまを。それがきわめて頑丈かつバランスのとれた自立をおこなう様を。
　奇跡、もしくは神業である。
「完成――富良野十六型ＧＲスペシャル！」
　大量に接続され拳銃ほどの大きさになった武装から超高威力のエネルギービームを発射。
　愛姫は咄嗟に展開したバラの魔法障壁でガードを試みる……が、破壊。アリスの打ち込んだあれやこれやが魔法障壁を分解してしまったのだ。
　回避行動をとろうとする愛姫を、しかし網のように広がった巨大な布が阻んだ。
　羽織が２５に複製した星空のローブである。袖と袖が手を繋ぐように結びあい網のように広がったローブが、愛姫を包み込んでいく。
　もはや、逃げられぬ。
　終わりの時が、近づいていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

　みんなお待ちかねトドメのシーンだ！　アニメでいえばオープニングテーマがバックで流れ始めたりして仲間たちが全員集合し必殺技をこうなんかいいかんじにアレしてオブリビオンが青白い光に包まれ歪みながら消えていくあのアレだ！
　そんなシーンを勤めるのは……そう！
「ピザデリバリー久原！」
　サンバイザーのつばを掴み、赤い制服なびかせて、スクーターを颯爽ととめる久原。おまえまだ出番あったのかよ。もう帰れよぉ！
「あ、そっすね。もうピザないし。店長に怒られるし」
「あきらめちゃだめだ！」
　バイクの計器の上でセラエノ・メイクピースがすっくと立ち上がった。
「どうしてそこで諦めるのだめだめだめ諦めちゃあとすこしの所なんだから諦めないで絶対でき――ねばーぎぶあっぷ！」
　セラエノはピザボックスから三種のチーズピザを取り出すと、とりあえずひと囓りしてみた。
「おいひー」
「ちょ～っセラエノすぁ～ん！」
「このおいしさを愛姫に――思い知らせてやるんだ！」
「思い知らせてやるぜ！」
　どんなことでも『思い知らせてやるぜ！』とあとにつけるとなんか踏ん切りがつく。島本○彦調に描かれた久原は決意を燃やした。まてなんでお前の見せ場みたいになってんだセラエノちゃんをもっと見せろ。
「うおおおおおおおおおいくぜええええええええ！　ピザあああああああああおまったっしゃっしゃああああああああああああああああ！」
　後半ほぼ言えてない叫びによって、ハンマー投げスタイルで投擲されるピザ。
　その上に乗ってくるくる回るセラエノ。
「もぐっ！？」
　巨大な布（？）にくるまでた愛姫に、それはいいかんじに命中した。
　……いや食えよ！

大成功 🔵​🔵​🔵​

　ここに、零落・一六八という青年がいる。二十歳である。
「ね、佳いじゃ無いですか。一回だけ。一回だけですから」
「で、でも……」
「大丈夫ですって変なことしないし、ちょっとだけですから」
「で、でも……」
　一六八は魔物の肩に腕を回し、ナイフを頬にぺちぺち当てながら顔を近づけていた。
「ボクたちズッ友ですよね？」
「さっきまで敵だったんですけど」
「昨日の敵はきょうの友って言うでしょう？」
「まだ一時間も経ってないですし」
「ボクたちはズッ友だょ☆」
「ギャルっぽく言ってもダメで――ヒイ！？」
　ナイフがポン刀に変わったところで魔物は悲鳴をあげた。
　パックブラッドジュースをちゅるちゅるぷはーする一六八。
「飛んでくれますよねぇ？」
「は、はい……」
「ボクたちはズッ鴨だょ☆」
「えっ」
「飛んで。ナウ」
　悲鳴を上げて空に舞い上がる魔物。
　その背と頭に足をのっけてサーフボードみたいに乗りこなす一六八。
「さーて、ちょっと出遅れちゃいましたけど愛姫さんどうなってますかね。まだ倒されないといいんですけ……ど……」

　そこには、まだ倒されてない愛姫がいた。
　布にぐるぐる巻きにされモザイクのかかった人ににじり寄られプラモを解説する人ににじり寄られピザが顔に張り付いた愛姫がいた。
「…………あの」
「…………はい」
　もう逃げるのも無理だと気づいたらしい愛姫に、一六八は眼鏡（伊達）を中指でちゃきっとやった。
「『ハイパーなぎ払い』！」
　なんか可哀想になってきた一六八は、愛姫もろとも周囲の一切合切をぶっ壊してあげることにした。
　次に生まれて来るときにはもっとクールで冷酷で、こうなんないいかんじに強い奴になるんだょ☆

　――完！

大成功 🔵​🔵​🔵​

最終結果：成功 完成日:2019年03月10日 宿敵 『愛姫』 を撃破！