背筋を伸ばす理由
菫宮・理緒
ちょっと遅くなりましたが、
『フィーア』さんとのクリスマスあんどハッピーニューイヤー、なノベルをお願いします!
WBC最中だし、クリスマス本番は五月雨のみんなとの予定もあるだろうから、
クリスマスはイブイブの23日。
ハッピーニューイヤーは、初詣で1月1日にお誘いするけど、
これは五月雨のみんなと初詣に行きたいな。
●クリスマス
ここはもちろん、『フィーア』さんとのデートだよ!
わたしの衣装は白いブラウスに青のリボンタイ。
下は青のロングスカートと琥珀色のウエストリボンで、
ちょっとお姉様風のコーディネート。
『フィーア』さんをエスコートするよ!(ふんす)
デートコースはオーソドックスに、
まずは『フィーア』さんのお洋服を見に行こう。
五月雨のみんなとのパーティーにも着ていけるような感じだけど、
『フィーア』さんの魅力をめいっぱい引き出すガーリーなイメージのを選びたいな。
でもアウターだけは、わたしとお揃いで、
ポケットたくさんのダッフルコートをチョイスするよ!
工具やパーツ、プラモデルも入るように、ねー♪
ごはんは『フィーア』さんの好みに合わせたいけど……。
そういえば、好みとか聞いたことなかったね。
この機会にそういうのも聞いて、美味しいお店を検索していこう!
エスコートするって言ったのに、リサーチ不足でごめんね!
さ、さすがに「わたしが好み」とか言われちゃったらどうしようー(くねくね)
って、ダメダメ。今日はりおりお封印なんだから!
最後は夕暮れのイルミネーション、かな。
さすがにあまり遅くまで連れ回すのは、怒られそうだから、
ちょっと早いかなーと思いつつ来てみたけど、
夕焼けとイルミネーション、それと『フィーア』さん。すっごい綺麗だね!
いっしょに写真撮らせてもらいたけど、おっけーなら、
『フィーア』さんを支えるようにして、猫背を矯正。
チャームポイントでもあるんだけど、しっかり背中を伸ばしてもらうと……。
うん。やっぱりとっても美人!
……これは、隠しておかないとライバル増えちゃうかな?(笑
え?なにかいつもと違う雰囲気?
あはは、今日はりおりお封印だからね。しっかりデートしたくて!
と、必死に我慢して、『フィーア』さんとのクリスマスは終えるよ!
●初詣
五月雨のみんなといっしょに初詣。
や、2人きりでもいいだけど、五月雨のみんなは仲良しだからね。
初詣に混ぜてもらうような感じでいこう。
衣装は薄い青を基調にした、菫柄の振り袖。
祈るのはもちろん、『フィーア』さんの活躍とWBC優勝!
あと……。
今年も『フィーア』さんと、たくさんりおりおできますように!
あれ?声に出てた!?
き、気にしないでいいから、ねー!
な、なんでみんなで『フィーア』さんガードするの!?
だいじょぶだから!自重するから! ……たぶん(ぼそっ)
●
いろいろと書いてしまいましたが、最終的には海鶴さまの自由に書いていただいておっけーです。
指示のないところやわからないところも、全て海鶴さまにお任せいたします。
アドリブ・改変も大歓迎です!
お★さまの数もあまり気にせず書いてくださいませ。
文字数めいっぱいでなくても、ぜんぜんおっけーです!
足りなかったら……ごめんなさい!
●未定の予定の余白
アスリートアースは超人アスリートたち跋扈する世界である。
スポーツにおいて全てが決まると言っても良い。
未公式競技『プラモーション・アクト』、通称『プラクト』のアスリートである『フィーア』と呼ばれる少女は年齢にしては高い身長を気にするようにして身を縮こまらせる。
同じ『五月雨模型店』の女の子たち……『アイン』と『ツヴァイ』は年相応な身長をしていた。
それに明るい。利発的でもあった。
彼女たちといつだって『フィーア』は比べてしまう。
『五月雨模型店』によくやってくる猟兵達だってそうだ。
みんな美しく、気高い女性たちが多いように思える。ああなりたいと思う。けれど、小学生なのに、もうこんなに背丈だけが成長してしまっている自分は、ああはなれないのだとも思うのだ。
そんな自分が『五月雨模型店』にやってくる猟兵の一人、菫宮・理緒(バーチャルダイバー・f06437)からクリスマスの前日、即ち、クリスマス・イヴの、さらに前日に呼び出されたのだ。
なんだろう。
何をするのだろうと思う。
こんな自分にあんなにもかまってくれる人。
大人の人なんだけど、なんだかいつも明るくって勢いがあって、行動力があるように思える。
「おまたせ!『フィーア』さん!」
声に振り返るとそこには理緒がいた。
白いブラウスに青いリボンが目を引く。ロングスカートが風に揺れて、琥珀色のリボンがなんとも上品だ。
どこかの令嬢がやってきたのではないかと思った。
そう、『令嬢』……自分はそれに憧れていたように思えたけれど、いつ憧れたのかを思い出せない。
背が高いだけの女の子なんて、いいことなんて何一つ無い。
学校では男子に誂われてしまうし。
『ドライ』はそんなことないけれど、やっぱり男の子というのは愛らしく理緒のようにおしとやかな雰囲気の女性が好きなんだろうと思う。
自分には縁のないことだと思う。
けれど、理緒の姿に声が溢れる。
「こ、こここんにちは! り、理緒さん……その、す、素敵です!」
「そ? ありがと! ふふ、今日は『フィーア』さんをエスコートしようってやる気満々だからね、わたし!」
ふんす、おと理緒は息巻いていた。
エスコート。
あ、おでかけって言っていたけれど、おまかせしていいのかな、と『フィーア』は思った。
彼女にとってもこうやって誰かと出かけるのは『五月雨模型店』のみんな以外とは初めてだった。今更だけれどドキドキする。
「まずは、『フィーア』さん。お洋服見に行こう!」
「え、お洋服、ですか?」
「そう!」
別に理緒は『フィーア』の服装がダメだとは思っていなかった。
ただ、趣味である。
お姉さんぶって上げたい気持ちもあったのかもしれない。
「さあ、行こう!」
ぐいぐいと理緒は『フィーア』の手を引いて商店街のアパレルショップへと連れ立つ。
浮足立つようにスキップしているのは、彼女が楽しいからだろうと『フィーア』は思う。
「で、ででも、私……理緒さんのようにお洒落、無理です」
「なんで? そんなことないよ。『フィーア』さん可愛いもの」
「そ、そんなこと! ない、です。私、こんなだし……」
んー? と理緒は首を傾げる。
『フィーア』は高身長なのがコンプレックスなのだろう。小学生ながら、すでに理緒の身長に近い。
周囲と頭一つ以上抜けている、ということは軋轢を生むのだろう。
違う、ということはやはり浮く、ということだ。
浮いた存在は常に注目される。
注目されるということは、きっとよいことばかりではないのだろう。『フィーア』にとってはそうなのだ。
だから、理緒は笑っていうのだ。
確かに今はみんなと違うかもしれない。
小学生の頃だ。特に敏感かもしれない。けれど、だからこそ理緒は笑って言う。
自分が笑って示さなければならない。
成長すれば、今の彼女が抱えているコンプレックスは強みに代わる。その時が必ずやってくる。
体のバランスだって『フィーア』は素晴らしいものだ。
身を屈めてはいるけれど、背筋を伸ばせばきっと彼女は誰もが見惚れる美女になるだろうと確信しているのだ。
「大丈夫。永遠に変わらないことなんてないんだから。いつかきっとみんなが『フィーア』さんに追いつくんだから。今はね……ほら、やっぱり似合う!」
合わせた服を見て理緒が笑う。
おしゃれって楽しいのだというように、あれこれと試着を試していく。
まるできせかえ人形になった気持ちだった。
あ、と『フィーア』は思う。
そうだ。『プラクト』を始める前は、自分もお人形のきせかえが好きだった。
大人になったら、こんなふうに、と思っていたのだ。
だから。
「ねー、こっちとこっちどっちがいいかな!?」
「……理緒さんの、選んでくれたのが好きです」
「えっ!」
理緒は目を見開く。
え、そんな、と彼女はわたわた……いや、くねくねしていた。あ、違う、と思ったが、否定しきれない。
理緒は、ぐっとこらえていた。
そう、今日はりおりおするのはこらえると決めたのだ。大人のデート! 大人の品格! いつも見せているりおりおはちょっと封印!
理緒はでもニヨニヨしていた。
嬉しい。
自分の選んだ服を、喜んでくれる。それで十分だったのだ。必死に我慢していたけれど。
でも、と思うのだ。
自分の言葉で。自分の行動で『フィーア』が喜んでくれるのならば、そのはにかむような、遠慮するような笑顔だって最高に可愛いと思ったのだ。
「……ハッ!」
理緒は思った。この後夕焼けイルミネーションを見に行くのだ。
いつもと違った雰囲気でしっかりデートしないとなのだ。
だから、我慢。我慢。我慢。
なんだけれども! やっぱりニヨニヨしてしまう。無理。こんな可愛い生物前にして顔ニヤけないの無理!
「あ、あの……?」
「な、なんでもないよ! ふふっ、背筋も伸ばすとね、格好良く見えるよ。かっこいいって、可愛いとは違うって思うかもだけれど……でもね、かっこいい女の人が居ちゃダメだなんてことないんだよ」
理緒は彼女とおそろいのダッフルコートを羽織って、イルミネーションが煌めく道を駆け出す。
『フィーア』の魅力を隠しておきたいと思った。
自分の腕のうちで囲い込んでしまいたいと。
でも、それは土台無理な話だ。彼女の魅力は今は自身のコンプレックスでひた隠しにされているけれど、いつか花咲くこともあるだろう。
その時、自分は言うのだ。
彼女の素敵な部分をずっと前から知っているのだと。
それを磨く栄誉に預かったのだと――。
●初詣
クリスマス・イヴのイヴから数日たった日……新年から理緒は大忙しだった。
なぜならアスリートアースで大いなる戦い『バトル・オブ・オリンピア』が開催されているからだ。
『プラクト』の世界大会『WBC』準決勝も三が日の後に控えている。
なので、今日しかないのである!
「おまたせー!」
理緒が待ち合わせした神社の前に『五月雨模型店』の面々が揃っていた。
みんな思い思いの格好をしている。
そこで理緒は見ただろう。自分がクリスマス・イヴ・イヴに『フィーア』に贈ったダッフルコートをアウターとして着ている『フィーア』の姿を。
「あけましておめでとうございます」
「あけおめ!」
「うむ! 今年もよろしくお願いします!」
「わ、私も、よ、よろしくお願いします」
四人の言葉に理緒も頷く。
今日も元気で四人とも仲良しだ。本当は二人きりがよかったなんて理緒はおくびにも出さない。
そう、わたしは大人。
分別ある大人。
「り、理緒さんの振り袖、素敵、です……」
「本当だ。青の菫柄なんだなー。落ち着いていいな!」
「塗装で表現するなら、マスキング地獄ですね」
「まあ、いいじゃあないか! 早速お参りと行こう!」
彼らの言葉に押されるようにして理緒は共に初詣に向かう。その途中で理緒は『フィーア』のアウターを軽く引っ張る。
「気に入ってくれたんだねー?」
「あ、は、はい。その、とっても暖かくて……ポケットがたくさんあって、使いやすくって。ふふ、お気に入りです」
そういって微笑む『フィーア』の笑顔は、はにかむようであったが、しかし以前と少しだけ違うようだった。
自信が生まれてきているような。
その萌芽を見せるような笑顔だった。これは、と理緒は思う。
ライバルが増えるやつだ、と。
でも、わたしは大人。
そう、大人。
大人は余裕がないといけない。だから、と理緒は微笑む。よかった、と。
でもね。
何度でも言うけれど。
いや、祈るけれど。からんからんと軽やかな音がする。
賽銭が投げ入れられ、掌を叩く音が響く。
新年の祈りを何にするかと問われたら、理緒は迷いなく祈る。『フィーア』の活躍と『五月雨模型店』のWBCでの優勝を。
その祈りは『バトル・オブ・オリンピア』で妨げられるのだとしても。
それでも祈るのだ。
「……今年も『フィーア』さんと、たくさんりおりおできますように!」
「……声出てるよ」
「出てますよ」
「出ているな!」
「……」
「あれ!? 声に出てた!? き、気にしないで……」
うえ、と理緒は自分が声に出していたことに気がついて、恥ずかしそうに笑う。
気にしないでいいからねーと、ごまかすようであったが、『フィーア』が顔を寄せてはにかみながら、その耳元にささやくのだ。
「……たくさん応援、してくださいね」
その声色に。
とんでもない何かを感じて理緒の頭には宇宙が広がっていた。
何かが切れる音がしたような気がする。主に理性とかそういうの。気がついていたら手をワキワキさせていた。
「その手の動き何!?」
「だいじょうぶだから! 自重するから!」
「何を持って大丈夫なんですか!?」
「だいじょうぶ……だいじょうぶだから……たぶん」
「今、多分と言ったな!」
『フィーア』をガードする『五月雨模型店』の面々。
騒がしい新年が始まる――。
成功
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