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ティタニウム・マキアの追走

#サイバーザナドゥ #ノベル #猟兵達のクリスマス2023 #巨大企業群『ティタニウム・マキア』

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#巨大企業群『ティタニウム・マキア』


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ステラ・タタリクス




●恋人たちの聖夜
 所謂、性の6時間とも言うあれである。
「待て待て待て! 何ってんの!?」
 亜麻色の髪の男『メリサ』はセーフハウスの一つにて、じりじりと迫る紫のメイド……いや、紫のミニスカへそ出しサンタメイドを前に壁に追い込まれていた。
 なんつー格好してんだ! と彼は思った。
 いやまあ、露出度がって意味ではない。
 なんだサンタメイドって。
 属性の渋滞である。玉突き事故である。

 彼のセーフハウスは最早セーフしていない。
 セキュリティどうなってんの。
「メイドの進化率を舐めすぎでは?」
 そうです。
 毎度おなじみ貴方のお隣にデリバリー。誰が呼んだか、呼んでないけれど参上、ステラ・タタリクス(紫苑・f33899)である。
 彼女はニコリと微笑んでいる。

 今日はクリスマスである。
 |襲いに《プレゼントしに》来たのである。
 まるでやってることがハロウィンと変わっていない。よいことは何度在っても良い。いやさ、『メリサ』にとっては二度あることは三度あるという具合なので、次なる蹴撃もあるんだろうなと最早諦観にも似た感情を覚えている。
「なんだよ、進化率って」
「それは些細なことでございます。おまたせしました『メリサ』様! クリスマスです! |メリークリスマス!《プレゼントは私です!!》」
「聞いてないし、聞いちゃいないよな。ていうか、セキュリティ!」
「メイドなのですもの。愛する者のためにはサイバーいつまでも苦手とか言ってられないのです」
 全部解除して突破してきました♡
 みたいな顔をステラはしている。ハート、じゃないが。

「あ、元に戻してきましたので他からの追跡は振り切れているかと。足をつくような真似はしておりませんので!」
「いや、そこを心配しているわけじゃないんだけど。セキュリティ担当『ケートス』のことなんだけど!」
「妹様とクリスマスを満喫中でございます。私と分からぬように、卒なく。抜かりなく」
「根回し怖い」
「邪魔はございませんよ、今回は」
 舌なめずりするステラに『メリサ』は猛一歩後ずさろうとして、背に壁を背負っていることに今更気がつく。

 やばい。
 本当にやばい。
 ステラの目がマジである。いやいつもマジだけど、今夜は特にやばい。
 やばすぎる。
「え? チラ見せより全裸のほうがお好みですか!?」
「幻聴でも聞こえてんのかなぁ!? 言ってないけど!?」
「そんな。いくらなんでも性急過ぎませんか? 21時にはもう暫くございますが……いえ、私、覚悟は決まっておりますので!」
「勝手に覚悟決めないでくれるかな!?」
「今すぐ脱ぎます!!」
「やめようか」
「あっ、真剣な目つきも素敵です♡」
 ぬぎぬぎしましょうね、とステラが『メリサ』の着衣に手を掛けたのを彼は渾身の力を込めて阻止する。
 じゃあ、自分が、とステラがいそいそと脱衣しようとするのも止めた。
 本当に! マジで! やばいんだって!

「まぁそれはともかくプレゼントなど」
「いきなり落ち着くよなぁ……情緒どうなってんの」
「『主人様』のことしか考えておりませんが? 今回はシンプルに苺ケーキです。大丈夫です媚薬くらいしか入れてません♡」
「ナチュラルに盛るの、やば……」
「どのみち『メリサ』様の義体ならば無効化できますでしょう? 問題ないかと」
「倫理観の話してんだけど」
 辟易した顔をする『メリサ』であったが、ステラはいそいそと切り分けていく。
 あ、そこまで看破されていても、普通に食わせようとするんだ、と思わないでもなかった。

「最近悪だくみしておられませんか?」
「してませーん。清く正しく生きての、こっちは。ナチュラルにヤってる前提にしないでくんない?」
「逃亡生活にお疲れになられましたらいつでも私が囲いますけれど」
「さらっと怖いこと言わないでくれる?」
「あ、世界をまたいでもよろしいですよね?」
「良いわけ無いだろ!」
 もーさー、と『メリサ』は諦めていた。いや、最初から諦めていたが。
「そのお役目。そろそろ外れてしまってもいい、と私は」
 思うのですが、というステラの唇は塞がれていた。

 むぐ、とステラは塞がれた口を動かそうとしたが難しかった。
『メリサ』に塞がれていたのだ。
 有無を言わず。
 強引に。
 それもしっかりと己の手首を掴まれて。
「……」
 彼の瞳が見える。
 星映す黒い瞳。

「もご」
「うん、ケーキ。言っても媚薬なんて盛ってないんだろ?」
 そう、ステラの口を塞いでいたのは切り分けられたケーキだった。『メリサ』が鷲掴みして彼女の口に押し付けていたのだ。
 だが、ものすごい勢いでステラがケーキを平らげる。
 すごかった。
 一瞬だった。『メリサ』の指を食べる勢いであった。やばかった。

「いいえ。ちゃんと盛っておりますので♡ お手つきのご責任、取ってくださいましね♡」
 そう言って始まるのは逃走の6時間。
 即ち、それは媚薬の効果が切れるまでの熾烈なるチェイスだった――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月21日


挿絵イラスト