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バトル・オブ・オリンピア⑲〜魔王はぐるぐるしている！

作者：にゃあら

●ガチデビル、悶々とする
　魔王ガチデビル――かつて、7th KING WARにて悪逆の限りを尽くしたオブリビオン・フォーミュラである。猟兵達の活躍によって彼の目論見は水泡と帰してしまったが、彼自身はかろうじて生き延びる事に成功していた。彼はアスリートアースにて『ダークリーガー』の能力に目を付け、新たな『KING宝珠』を作り、ダークリーガーを他世界にばら撒く為の計画を練っていたようだ。しかし！　嗚呼、滑稽なる哉、ダークリーガー達は『スポーツをすること』以外に興味を抱かなかったのだ！　仕方がないので彼は単体で猟兵に挑もうと試みていたが……。彼は忘れているのではないか？　猟兵は何処までも埒外だと謂う事を。
　……未完成宝珠なのは承知の上だ。フォーミュラを造れなくとも、ダークリーガーを召喚する事くらいは容易な筈。いや、実際、ダークリーガーの軍団を召喚する事には成功したが……。な、なあ、貴様等、その珍妙な姿勢は何だ？？？
　何……？　ぐるぐるバット……？　き、貴様等はいったい何を謂っている？　せめて此処は野球ではないのか？　ホームランの未完成宝珠だぞ？？？　そ、そうだ。魔球を投げてみせろ。私に貴様等の強さを見せてくれ。
　え……？　ぐるぐるバット以外には興味がない？　何を謂っているのだ。わ、私にも理解出来る事と理解出来ない事がある。……くそっ！　使えない奴等め！
　あっはっは！　どうやら本当に『運と実力』が足りなかったみたいだね～。いいじゃない、ぐるぐるバット！　うん、な～んか自我を取り戻せそうだしこのまま滅茶苦茶にしてあげるよ！　ガチデビル！！！
　……貴様もか！　やめろ、頼む、これ以上面倒事を増やすな……！
　もう……私の許容範囲は……限界なんだ！！！

●グリモアベース
「勇者リリリリ……に、憑依した魔王ガチデビルとの直接対決よ！　相手は宝珠を使ってくるけど未完成らしいから身構える必要は無いわ！　まあ、それでも『普通なら』化け物みたいに強いんだけどね」
　グリモア猟兵、吐院・ぐるめは猟兵達にバットを渡そうとする。
「未完成宝珠は『Mr.ホームラン』のものよ。ダークリーガーの軍団を召喚するらしいわ。それでね、どうやら召喚されたのは『ぐるぐるバット』のダークリーガーみたいなの。うん、そういうこと。可哀想だよね、ガチデビル。あ、それと『勇者の洗脳解除されているタイミング』でダメージを与えると宝珠を奪えるらしいわ。それこそ目を回している時とか🌈ってる時とか」
　改めて説明しよう！　ぐるぐるバットとは！　その他スポーツの一種である！
　ぐるぐるバットはレースではなく『得点』を競い合うスポーツであり、回転の美しさ、長さ、回った後のリアクションなどが重要視されるスポーツだ。ちなみに『リアクション』なので、目が回ったとか、🌈ったりとかしても問題ない。
「それじゃあ皆、あの魔王様の目を回してやろうじゃないの。レッツ・ゴー・サイクロン！！！」
　グリモアが輝いて。

第1章 ボス戦 『勇者リリリリ』

POW   :    5thKINGブレイド 霊力を帯びた【斬霊刀 】で斬る。対象にこの斬撃を防ぐ装備や能力があれば、全て無効化し、更に威力を増大する。 SPD   :    堕天シールド（ガチデビル形態） 【宝珠のついた盾 】から、斬撃・投擲・盾受けに使える【小さなガチデビルの顔がついた空飛ぶ小型盾】を具現化する。威力を減らせばレベル×1個まで具現化可能。 WIZ   :    大罪魔法「六つの大罪」 戦場全体に【大罪を司る無数の祭壇 】を発生させる。レベル分後まで、敵は【祭壇より現れる『六大罪獣』】の攻撃を、味方は【祭壇より放たれる『闇色の炎』】の回復を受け続ける。 イラスト：hoi 👑11 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​

　私が……私が『ぐるぐるバット』など、するものか！
　ええい、忌々しい、こうなったら私一人で貴様等を滅ぼしてくれる！
　そもそも、私は宝珠の力に頼らずとも十分に『強い』のだ！！！
　それはどうかな～。ほら、運の実力の内って謂うからね～。
　ああ、この｜勇者《※※※※》め！
　易々と洗脳を解きおって……！
　勝手にぐるぐるバットをするな……！　剣はそうやって使う物ではない！！！
　えっへっへ～、こうしたら僕の身体を乗っ取っていても目が回ってフラフラだよね～。
　おい、いい加減にしてくれ、もう限界なんだ！！！


　諸悪の根源として恐れられてきた｜魔王《ガチデビル》も地に落ちた、たくさんの｜配下《ぐるぐるバッター》に囲まれて早く回れと急かされている。洗脳されている勇者様の大爆笑が脳内に響く頃、ようやく、彼は猟兵の存在に気が付けた。ガチデビルさん……何と言いますか……。これほどまでに筆舌に尽くし難い、度し難い無様をオマエは知らない。強大で凶悪なガチでマジな悪魔も目を回していてはただの人型か。まあ、この世界も貴方に微笑みかけてはくれなかったと言うことですわねぇ……。おお、アガメムノンよ、この憐れな、哀れな裸の王様に現実とやらを教えてやると宜しい。溜息をこぼすと同時にやってきた｜斬霊刀《えもの》……。此処でオマエは嫌な予感に苛まれる。あれを受けてはならない、あれを防いではならない……！　歴戦の猟兵は心に眼を宿している、無限の魔力は｜感知《かいひ》にも使えるのだ。蝶のように舞い蜂のように踊る。さあ、ガチデビルさん、お仕置きの時間です！　叩き付けろよオマエの拳、勇者の｜咲《え》みに応えるのだ。
　宝珠が此方側へとやってきた。それ即ち『ぐるぐるバット』のダークリーガーが味方に成った事を意味する。やっておしまいなさい！　ガチデビルさんにぐるぐるバットの面白さを教えてあげるのですわ！！！　そうとも、勝利は約束されている。魔界制覇の為のカリスマが十二分に揮える場面なのだ。
　レッツ・ゴー・サイクロン！
　世界が塗りたくられる。世界が｜眩暈《ぐるぐる》と染まっていく。強制的な｜目回し《ぐるぐる》がガチデビルに降り注いだ！！！　エンドレスでプレゼントです！！！　この悪女め、泥濘のような堕天使め、振盪しているのは勇者のカタツムリか、或いは、ガチデビルのカタツムリか……。ところで三半規管ってカタツムリじゃない方でございませんこと？
　リ・バース！！！　魔王の🌈！！！
　はあ、これが1stKINGの姿とは……わたくしも、めまいがしそうですわ。
　｜巨大飛行艇《イーオケアイラ》の吶喊、トマト・ジュースだ！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　泣きっ面に蜂、なんて諺が存在しているが、まさに、ガチデビルにとっての現状は『それ』である。｜目を回《混乱》していると謂うのに、其処に、その儘の意味が圧し掛かってきたら戻す以外に選択肢を赦されない。私はダーティ！　ダーティ・ゲイズコレクター！　凶悪で極悪で劣悪で最悪な魔王ダーティとは私のことです！　遥か彼方より諸悪の根源へと絶望の二文字がやってきた。何故なのかと問われたならば、嗚呼、応えてあげねば悪魔ではない。ダーティ・ゲイズコレクターはぐるぐるバットその他の経験者である！！！　ガチデビルさんまだ生きていたんですね！　その往生際の｜悪《●》さ憧れちゃいます！　これはまったく正統な悪魔ちゃんだ。流石は666人もの悪魔を水溜まりにドボンさせた新星！　私がワルを越えたワルになるため、更なる悪行を重ねるため、貴方には礎になっていただきます。そうか、この私を倒そうと謂うのか。よかろう、全身全霊でかかってこい……！　魔王じみた科白！　かっこいい！！！　この「ぐるぐるバット」で！　は？？？
　ダーティ・ゲイズコレクターは生粋の『ワル』である。故に「ぐるぐるバット」での勝負を強制したのだ。その宣言に応えてくれた勇者の｜身体《にくたい》が無理矢理｜基本姿勢《ポーズ》を晒している。おい、待て、おかしいではないか。其処はシリアスに戦う場面だろう？　重要なのは回る事だ。如何に回り、如何にリアクションをするのかだ！！！　ではいざ尋常に！　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　煌々と――神々と――美しい｜槍《エモノ》を構え、地面に尻尾を突き刺した。この｜技《スキル》は……そう、無限独楽である！　悪魔の特徴をしっかりと活かした永久の如きぐるぐる！　その回転力はガチデビルの｜盾《つら》すらもはじき、打ち返すレベル。どうですか？　そろそろ、目が回りましたか？　私はまだまだいけますよ！！！　な……な……と、謂うか、これは私の身体ではないだろう？　勇者が目を回しているのならわかるが、何故、私まで……？　それはアレだよ、僕の身体から離れられないからさ！
　ぐぬ、ぐぬぬぬぬ……うっ。
　ガチデビル――勇者の貌は真っ蒼だ。今にも🌈ってしまいそうな状況。其処にダメ押しとばかりに｜矢印《オーラ》が花を咲かせた。おお！　大輪！　大輪が旋回している。これでオマエは高得点間違いなし……！　ついでに攻撃された宝玉も此方のものだ。バック・スピンとしてぐるぐるバットアスリート達が応援してくれている！
　お、おのれ……おのれ猟兵……！？
　｜勇者《ガチデビル》再びの🌈！
　彼の敗因はひとつ、そう、ぐるぐるバットに全力で挑めなかった事だ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　ぐるぐるバットをする際には基本姿勢が要と謂えよう。
　腰を痛めてはならない。
　栄光を掴む為には、勝利の味を知る為には、虹色の彼方にまで到達しなければ成らない。プライド・レースに中てられたガチデビルはこのトンチキな具合、別の意味で目を回していた。私は……私は何を間違えたと謂うのか。私はいったい、何を起こしてしまったのだ。頭を抱える腕すらも今では｜勇者《からだ》のものと成っている。アハハ！　いや～、本当に、莫迦みたいだよね。勇者からの精神攻撃がひどく突き刺さる。いや、違う、この感覚は、勇者以外の存在からも精神的な｜汚染《こうげき》を受けている……？　ざぁこ、ざぁこ、ざこざこ魔王、小娘ひとり洗脳出来ない。う、うぐぐぐ……なんだ、これ、は……ッ！　あら、あらあらあら、そういうのが好みなのね、魔王様は。あれは猟兵か、オブリビオンか、違う。アリス・セカンドカラーだ！　トンチキを乱痴気にでも染めようと謂うのか、オマエ。
　｜再定義《マジック》の時間だ、種も仕掛けもアリまくりな、アリスの埒外性が発揮される。｜勇者《リリリリ》と｜魔王《ガチデビル》の境界が『ハッキリ』とされ、此処に｜分離《サヨウナラ》は完遂される。ね、こうなったら貴方、ユーベルコードを使うどころじゃないんじゃない？　嗚呼、濡れている、ありとあらゆる箇所が麻痺している。何処の誰に虐められたのだ、苛まれたのだ、弄ばれたのだ……！　この頭セカンドカラーめ！！！
　ではでは、別の別の意味で｜目を回している《ぐるぐる》になった貴方への贈り物よ。無理矢理にでも引き剥がしてやって勢いの儘に｜肉体改造《チキチキ》だ。ま、待て待て待て、そんなのは聞いていない。知りたくもない。誰か私の記憶を消去してくれ！！！　男の娘！！！　とってもカワイイ男の娘だよこれ！！！
　混迷極まった｜彼《あなた》に跨ってお馬さんごっこだ。ガチデビルのバットでぐるぐるしてやるとよろしい。あー！　困ります猟兵様！！！　これ以上の地獄絵図はお見せ出来ません猟兵様！！！　高速回転だなんて生温いもんじゃない、おめめぐるぐるな男の娘最高ヤッター！　えっちなのうみそおいしいです❤

成功 🔵​🔵​🔴​

　のうみそを撹拌するには回すしかない。
　ミキサーかマドラーか、否々、酷使すべきはバットである。
　……さぁ、出番よ。悪夢のようなパレードを此処に晒せ！
　世界がひっくり返るほどの衝撃だった。えっちなのうみそとして啜られたガチデビルは『なんとか』元の姿を――この場合は勇者への憑依だが――取り戻す。勇者リリリリ本人も「やれやれ」とため息をこぼすレベルの所業だ。はーい、では今度は『お見せ』できる範囲でぐるぐるしましょ。ちょっとした賢者モードだ。アリス・セカンドカラーが賢者モードだって？？？　明日は雨が降って虹が出るのかもしれない。
　兎にも角にも、改めて、仕切り直しとして『祭壇』が戦場に出現する。罪を模った祭壇は六つの獣を召喚し賢者モードな猟兵へと牙を剥いた。はっはっは。六大罪獣？　ああ、片腹痛い。この程度の罪でオマエを喰い散らかすなんて、失笑するしかない。そう、私の欲望の前ではどんな『罪』だって些細な事のように萎縮する。だから、ええ、お望み通りぐるぐるするわ。両腕をひろげて、振り回して、地球独楽みたいに軸をしっかりとさせて。だーいかーいてーん、いえーい！　🌈まみれなバターになっちゃった、トーストに塗ってくれよ女の子。
　獣がつるりと足元を掬われたところでお救いして魅せましょう勇者様。悪魔よりも悪魔らしく、埒外よりも埒外らしく、混沌よりも混沌らしく、這い寄ってやると好い……。付喪神どもの百鬼夜行だ。おい、いい加減にしてくれ、今度は『なに』をやるつもりだ……？　ぐるぐるバットに決まってるじゃない。ねえ、｜ぐるぐるバットの付喪神《みんな》？　ダークリーガー軍団も一緒にレッツ・ゴー・サイクロン！　これが本当の赤い回転流の神ども！
　もはやぐるぐるは止まらない止められない。あ、ぐるぐるは回転エネルギーなのでエネルギーとして私に充填されるわ。だから、そう、ダメージはぜろってわけ。いやでも折角だし🌈は出しておくわ。オエーって。orzおえー……。
　我慢の限界に到達していたガチデビル、これはもらうしかない。

成功 🔵​🔵​🔴​

　HAHAHAHA！
　HA――HAHAHA！！！
　声だ――笑い声が戦場に響いている。既に精神的にズタボロなガチデビルに対し『この哄笑』は効果的だった。ああ、なんだ？　今度は何処の｜乱痴気《だれ》だ。質問をされたのならば、自己紹介を要求されたのならば、猟兵よ、堂々と名乗るのがお約束である。7thKINGの一角、バルタンデース！　1stKINGと5thKINGのお二人にはお目に掛かれて光栄！　さっきまで目を回していたのだから『目が合う』なんて事は難しいのではないか。と、まあ、挨拶もそこそこに――ほう？　人類の造り上げた知恵を、銃火器を使うつもりか？　よかろう。その悉くを私が無に帰してくれ――？　ぐるぐるバット！　レディゴー！！！　き、貴様もか！！！　貴様もなのか？　ええい、勇者共々※※※※な！！！
　勝手に起動した宝珠が何度目かの召喚を行う。ぐるぐるバット大好きなダークリーガーは集るようにして｜基本姿勢《ポーズ》の構えだ。ふ、ふん、上等ではないか、そんな珍妙な動きでは私の｜剣《ユーベルコード》を躱せまい！！！　確実に叩き斬らんと揮われた斬霊刀、嗚々、されど、その一刀は虚空を撫でるだけ――機動力において敵無しな｜滑走靴《レッグガード》の出番だ。空中を文字通りぐるぐると舞ってやれ、回ってやれ。これでワタシを捉える事は出来ないデース！　それに、ワタシを追いかければ必然、ぐるぐる出来ないのでスポーツ的にもアナタの負けになりマスヨ！　さあ、回りマショー！　く、くそ……仕方がない。私もぐるぐるバットで勝負をしてやるか……！
　その瞬間、猟兵の偉大なるブレインに｜過去の光景《フラッシュ・バック》。以前、ぐるぐるした時は百回転半ばで🌈っている。その手前辺りで急ブレーキだ。いや、🌈くほどの気分の悪さではないが、これでも、目が回っていてたまらない……！　ふ、ふはは、貴様も目を回しているではないか。フラフラしているぞ。それは｜勇者の肉体《ガチデビル》も同じである！　グレネードランチャー、眩暈がしていても相手が動けないなら問題ない！
　六式武装展開、闇の番！
　存分に回転したのだ、三半規管は勿論の事、弾倉も愉快なまでに撹拌されている。さあ、何が出るかはお楽しみであります！　ぐぅ……こ、この煙は……うっ……。大当たりだ！　吐き気を催す発煙弾！！！　盛大な🌈🌈🌈🌈！！！
　これでもワタシは戦闘のプロなのデス！
　酸いも臭いも噛み分けていマース！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　諸悪の根源――その最下、災禍より逃れられた、ポツンとしていたお店にノックノック。千本ノックの刺客でもやってきたのかと店の主は身構えたが、なんと吃驚、入店してきたのは可愛らしいお狐様であった。油揚げはないよ、此処には胸肉があるだけさ。フライド・チキンなんて頼んだらきっと憤懣に駆られてしまうだろう。いえいえ、私が持ち帰りたいのは『大佐』のお人形です。ああ、このお狐様は何を謂っているのだろうか。店頭にて突っ立っている、あの『大佐』をお持ち帰りだなんて、テイクアウトだなんて……。呆然としているお店の人を余所に、よっこいしょ、抱えてバイバイ告げると宜しい……。
　で――えーと。場面転換、此処にきてようやく勇者リリリリinガチデビルと顔合わせだ。これは、どっちのお目目を見て話せばいいのでしょう。こっちが街でビルさんでしたっけ？　既に切れまくった血管が悲鳴を上げている。だ、誰が街でビルさんだ！！！　私はガチデビル。まさか、名前を忘れたとは謂わせないぞ、猟兵よ！　さっきまで目を回していた魔王様は勇者の肉体の中で蒼白な状態だ。とりあえずですね。まずはこの大佐が相手よ！　ほう……？　強そうな肩書きだな、さぞ、悪い存在なのだ……ろ……う……？　ガチデビルの前に立ち塞がっているのはオジサマである。相も変わらず白いお髭で、たまには染めてもいいじゃないかとはオマエ曰く――き、貴様！　莫迦にしているのか？
　さあさあさあ！！！　見事、この大佐の壁を討ち取ってごらんなさい！　くそが！　ちょこまかと動きおって！　まあいい、貴様が如何様な策を企てようともこの一刀の前では無力……！　邪魔なものをズンバラリとやったなら、これで、残るはお狐様だけ……。む？　おかしい。私の先制攻撃が発動しないだと……？　ま、まさか、さっきのフザケタ言動は『このため』の伏線か……？　その通り、あなたは既に先制攻撃をしているの！
　重要視すべきは距離だ。幾等勇者の肉体であっても『遠方への攻撃手段』は｜会得《POWでは》していない。霊力を帯びた得物は空を撫で、骨や肉の味わいを知る事が出来なくなった。そこ……！　良い頃合いになったところで急速に肉薄、宝珠を狙っての｜一閃《ひかり》は神獣の眸が如く……。それじゃあダークリーガーさん、よろしくね！
　テキトウなボールを握り締め、宣言するのは反則中の反則！
　大ビーンボール一号をくらえぇ！！！
　き、貴様……！　やめろ……！　私はバッターでもな……ッ！
　ゴッッッッッ！！！　脳挫傷不可避ッッッ！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　バッドエンドではない、バットエンドだ。カタストロフを企てた化け物が下手物によって、如何物によって振り回され、酔っているサマは、無様さは、何処か哀愁を漂わせる蝉の成虫のようでも在った。ぐるぐるバットと聞いて！　熱血スポーツ漫画の脇役みたく、すっかりあちしの出番もないかと思ってたッスけど、まさかのまさかッスね！　おお、魔王様は絶望している。こんな茶番がまだ続くと謂うのか。これなら、シリアスに、格好良く、猟兵に殺されていた方がマシだったのではないか……？　行くっすよー！　リリリリちゃん！！！　ああ、そもそも、勇者の名前からして莫迦みたいではないか。テキトウに名付けられた勇者がこんなにもトンチキ大好きだなんて、聞いていない。あ～あ、これじゃどっちが魔王かもわかんないよ。運も実力の内だって謂うけど、こりゃ、ダイスの女神にでも嫌われたね～。魔王は頭を抱えている！　仕掛けるなら今だ！　ぐるぐるバットの先輩がしっかり🌈のなんたるかを身を以て披露するっす！　今直ぐにスルーしたい。こんな時、キャンプ・フォーミュラの宝珠が完成していたら、きっと、私も世界間の移動を……！
　さあ、ダークリーガー軍団の皆さんもご一緒に！
　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　ええい、クソ、連中、奪われていないと謂うのに、勝手に、ぐるぐるバットを始めおって……！　魔王の悪態を無視して開催されるぐるぐるバット、そう、こんなにも大きな舞台なのだから此処は｜時の精霊さん《ユーベルコード》を使わなければ勿体ない。魔王様のお顔が盾として先にやってくるって……？　それはあれッスよ、ダークリーガー軍団の皆さんが意識せずとも壁に成ってくれるっす。見よ！　ぐるぐるバットをしている選手達は周囲の事をまったく把握出来ていない！　主人たるガチデビルが命令をしても目を回していてフラッフラだ！！！　こうした集団でのぐるぐるバットの醍醐味は、ぐだぐだになった選手達のカオスな衝突！！！　おお、ドミノだ。ドミノによって魔王様のお顔が潰れる！　ところで自我を取り戻した勇者も参加していないか？
　う～ん、すごいよね、ぐるぐるバット。本当に目が回って何も出来そうにないんだもん。
　ふふん、どうっすか。リリリリちゃんもぐるぐるバット選手にジョブチェンジするッスよ！
　笑い合っているのは結構だがお互い、ぐるぐるしたおめめで別々の方向へと言葉を投げている。言葉を投げていると如何なる？　そうだね、目が回っていたら吐き気が加速するよね。
　ドミノでなければ将棋倒しか、もう、何も見たくない。
　最後――蒼白極めた彼等彼女等と共に空の彼方を知れ。
　決めポーズだ……🌈のシャワーを、噴水を、ブチ撒けると宜しい。
　ま……待て……それは駄目だ。かかる、私にかかってしまう！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　血気盛んな罪どもが血肉を求めて駆けている。祭壇よりこぼれおちた人間道がコキュートスの真似事を晒して、懸命に、シリアスとやらを取り戻そうと試みている。そんな虚しい努力を拭い去らんとやってきたのは一人の妖艶な女であった。獣ちゃんがいっぱいねぇ。微笑みかける、言の葉をかける、流れる儘に催眠をかける。餓えて渇いた獣どもは狂気でも患っていたのか、煩わしく思っていたのか、お互いの尻尾を貪ろうと、ぐるぐる周回を始めた。そういう勝負だものねぇ、仕方がないわぁ。あれぞ人間には出来ない、二足歩行では出来ない、自然的なぐるぐるだ。催眠に陥っているのだから、しっかりと『ご主人様』を悦ばせなければならない。そうして、とろけた獣どもは果てしなきバター・ロード。虹色の彼方よりも辿り着くのが困難なコミカルな沙汰に達したのだ。……そ、そんな莫迦な話があるか！　わ、私のユーベルコードが、私の｜六罪《ちから》が易々と……！？　魔王ちゃんももっと激しく回りましょうねぇ……。この女は何を謂っているのだ。もしや、この女も回り過ぎて頭がおかしくなっているのか……？　呆然としていたところに、ぐるりと、真っ黒いものが這い寄る。これは……まさか……貴様の『髪』か！　意外でもなんでも無くなった、文字通り『身体の一部』のように扱える鞭。背を打つのか、首を絞めるのか……違う。
　レッツ・ゴー・サイクロンなんて叫ばずとも『追乱』は可能だ。お、おい、ちょっと待て、追乱とは何だ？　説明をしろダークリーガー！　追乱とは『猟兵ブレード』において伝説級の技とされるシュートを示します。良かったですね、魔王様、この技を体験する一人になれるなんて……。はあ？　また回るのか？　わ、私もだが、良いのか？　これは勇者の肉体だぞ？　勇者が再起不能になっても……。あれ、謂った筈だよね。僕はぐるぐるしてガチデビル、君を無茶苦茶にするってさ！　そういう事よねぇ、それじゃあ、回すわよぉ。あ、アタシも体験したことがあるからぁ、期待してくれていいわよぉ……。何を期待しろと？　めまいが気持ちいいだなんて、そんな、気の触れた事を宣うのかこの女は！！！
　芸術点が足りない。回っても回っても、🌈塗れになっても、同じようなオチは審判を白けさせる要因だ。そうねぇ、折角「宝珠も奪えた事だしぃ」――手伝ってもらうのが正解か。ダークリーガー軍団の一人一人に指示を出しタイミングを計って……！　大回転により浮かんでいる｜勇者《ガチデビル》の足へと跳躍！！！　組体操とぐるぐるバットを融合させたまったく新しい競技の完成だ！　超人間独楽の組体側的ぐるぐるバット！！！　これで🌈は魔王ちゃんのものねぇ……。
　おお、神だ、回転の神が降臨している。
　勇者のボディが美しいのもあって、神のように視える！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　勇者は心の底からぐるぐるバットを楽しんでいるようだ。
　ダークリーガー達もそれに応えるかのように振る舞っている。
　この状況で唯一、別の意味で目を回しているのがガチデビルだった。
　宇宙からの色彩――所以を地獄だと定めたならば――果たして、オマエこそが魔の皇に相応しい。それは諸悪の根源へと這い寄った、降臨した、恐怖の大王と描写しても過言ではない不定形か。……魔界で一度は覇を唱えた汝が憐れなものよな。おお、ガチデビルは歓喜した。訳の分からない『ぐるぐるバット』やら『猟兵ブレード』やらと戯れるよりも、ラスボスらしいラスボスとの決戦の方がマシなのだ。貴様、貴様ならば、私をシリアスに引き戻してくれるだろう。さあ、貴様の埒外性を、貴様の強さを、このガチデビルに魅せてみよ……！　祭壇より何度目かの獣の到来、その牙は、その爪は、罪は、何もかもを血祭に晒さんと、まずはオマエに襲い掛かった。肉が剥がれる。肉が爛れる。肉がこぼれおち、それの繰り返しだ。フハハハハハ！　貴様、いつまで耐えるつもりだ。如何なる頑強さでも私の『罪』からは逃れられない……！　先程も謂った筈だが、汝、本当に憐れなものよな。獣の動きが鈍った。それと同時にガチデビルの内側、勇者リリリリが自我を取り戻す。あれ、あれあれあれ？　良かったのかな～このタイミングで僕に主導権を奪われて。あ、猟兵、今が宝珠を傷つけるチャンスだよ。伸縮自在な触手が｜切り札《ジョーカー》を掠め取った！！！
　さあ、ダークリーガー達よ、汝等、思う存分に『ぐるぐるバット』を愉しむが良い！　世界が『ぐるぐるバットの法則』に書き換えられる。その刹那、勇者の意識は奥へと引っ込みガチデビルが押し出された。……なぁ！？　お、己勇者リリリリ！　これを狙っていたのか。不自由なく｜基本姿勢《ポーズ》を決める破目になった｜勇者の肉体《ガチデビル》。もう勘弁してくれ！　私はもう何もかもを吐き尽くしたのだ！！！
　魔王は――真なる魔王は――刻印を、王笏を手にして現れる。銀を湛えた魔王は笏を剣へと持ち替えて、阿呆みたいに回っている『憐れなもの』を両断した。さらばだ、ガチデビル。汝の『実力』とやらを知りたくはあったが、世界の危機は赦し難いのだ。
　その精神――勇者リリリリに憑いている、ガチデビル概念への執刀。
　さて、オマエの超越性は成就するのか否か。
　全ては神様の『采配』次第と謂える。

成功 🔵​🔵​🔴​

　悪鬼羅刹、その四文字の相手に相応な、途轍もないほどの強者との邂逅だ。はじまりを冠する魔王は、ガチデビルは、おそらく、シンプルな強さをその身に宿している。いや、現状、その身体は勇者リリリリのものだが、勇者リリリリ自身もガチデビルに匹敵する強さの持ち主か。これが単純な足し算の類であれば猟兵に勝ち目は殆どないだろう。それに、宝珠が完全であったなら勝負にすら成らなかったのかもしれない。だが――現実は如何だ。ガチデビルは憔悴し、勇者リリリリの胃袋、食道は痛めつけられている。うん、このバットがあるとなんだか安心するっぽい！！！　おお、悪鬼羅刹よ、オマエも、言わずもがな、ぐるぐるに狂わされた猟兵の一人なのだ。いつも通りにぐるぐるすれば何とかなるとゆー安心感！　そ、そんな安心感はサッサと捨ててしまえ！　ガチデビルからの鋭いツッコミだ、この不憫枠め！！！　と、ゆーことで、ぐるぐるしていくですよ！！！　話を聞けとガチデビルが『罪』を放つが、そんな獣は軽く退けてやれ。良いですか、この場は神聖な『ぐるぐるバット』のステージなのですよ。敵も味方もかんけーねー、虹色の彼方へと至る為の道程なのです。そう、ぐるぐるバットに存在するのはバットと己のみ！！！　熱く語っているところ悪いがガチデビルは思考を完全に放棄している。ぐるぐるしてぐるぐるする自分に打ち勝つのがぐるぐるバットなのです！！！　いや知らないが？？？　それだけの事なのに理解出来ないとは、ええ、僕がしっかりとぐるぐるバットがなんたるかを教えてやるっぽい！！！　｜颯駆之術《ポーズ・セット》！　レッツ・ゴー・サイクロン！！！
　圧縮空気の放出によりあとは野となれ山となれ、イカレタ独楽のようにオマエは回転する。なるようになれと吶喊したオマエは、さて、勇者が自我を取り戻す瞬間に攻撃を加える事が出来た。ヨシ！！！　リリリリさんも僕と一緒にぐるぐるバットすると良いっぽい！　いいね、これでもっとガチデビルの目を回す事が出来そうだよ！　勝敗なんぞは関係ない、そう、重要なのはぐるぐるバットにより交流を深める事なのだ……！
　ガチデビルが勇者の乗っ取りを再度した、改めて圧し掛かってくる振盪と嘔気！　ぬ……ぬぅ……ま、またなのか……。悪鬼羅刹さんも並んで🌈！！！　うーん、これがぐるぐるバットの醍醐味だよね。もっと回ろう！　イケルイケル！！！　いい加減にしてくれ、もう限界だ！！！

成功 🔵​🔵​🔴​

　勇者も魔王もぐるぐるバットの前では等しくぐるぐるおめめ。
　えっちだろうと、えっちじゃなかろうと、のうみそがどろどろするのはおんなじか。
　人類の最も旧く最も強烈な感情は恐怖であり、恐怖の中で最も旧く最も強烈なものは未知なるものへの恐怖である――超自然と遭遇した者の心境はその一言で表現する事が出来るのだが、さて、超自然がより超自然的なものと遭遇した場合は如何なる。人類的な感性を持つ者が恐れを抱いてしまうのが真理と謂えよう。ええい、またか。また、貴様なのか。ガチデビルは三度目の正直ではなく、二度あることは三度あるとしてアリス・セカンドカラーの弩ピンクな具合を認めてしまった。ガチ虐たーのしー♪　この女、この猟兵、この怪物は「私をいじめたいが為に態々、三度もやってきた」と謂うのか。うぐぐ……勇者の身体だと謂うのに、私自身の胃が痛くなるではないか。｜蒼汁《アジュール》いる？？？　頭セカンドカラーさんからのお土産はスライムポーション。その蛍光ピンクな不定形は何処か🌈にも似ていた。やめろ、そんなものを私に見せるな！！！　今にもぶり返してしまいそうでたまらない。まぁ、味は魂が抜けそうで抜けないいっそ抜けた方がマシな宇宙的かつ狂気的なお味だけど……。ふ、ふざけるな。誰が好き好んで貴様の口車なんぞに……。いらない？　そう、でも、そろそろ許容範囲がリミッター解除してついでに限界突破してるんじゃないかしら？　ええい、その余裕そうな面、私は既に「切ってやった」ぞ……！
　両断されたアリス・セカンドカラーは生きていた。ぶつりと千切れたプラナリアか何かみたいに、平然と、呼吸とやらをしていたのだ。こ、この化け物め！　コメディ、カートゥーンの住民め！！！　悪魔よりも悪魔な所業を、いとも容易く、えげつなく、やりおって！　憤死するのが先かぐるぐるして🌈くのが先か、チキンレースと洒落込むが好い。終焉を終焉させる為には理不尽を殺す力を想像しなければ成らない。それは最初から創造されている。そう、これは轆轤だ。轆轤に乗せられた｜勇者の肉体《ガチデビル》の撹拌だ……！
　遠心力を埒外的に解釈すれば再びの｜分離《パージ》、かなり目を回している勇者さんを如何にかして治したらウレタンポカポカめいて囲んで回すとよろしい。宝珠は気が付いたらオマエのものだ。出現したダークリーガーの手伝いもあってか｜魔王《ガチデビル》は何も出来ない。それじゃ、最後にぐるぐるぐるぐるしてもらうわね。
　そういえばさ、猟兵、君の身体は大丈夫なのかい。
　わたしは｜寄生体《ダンピール》よ、この程度のぐるぐるじゃ止まれないわ。
　む……無理だ……いっそ殺してくれ。

成功 🔵​🔵​🔴​

　マグナ・マーテルの妖艶さはぐるぐるバットにおいても発揮される。いや、オマエは『ぐるぐるバット』で律儀に勝負する気は無いし、この愛撫はガチデビルに対しての慈しみとも考えられた。憑依しているのならば、そう、同じような｜憑依《ちから》で戦いを挑むのが正解なのではないか。戦闘力と同時に魅力を倍加させ罪の獣とやらを抱き寄せる。ムンムンと放たれたオマエのフェロモンが罪の鼻腔を満たし、悦ばせ、同士討ちと呼ばれる｜最後《エンディング》を迎えさせた。これで、あとは私とアナタ達だけね。き、貴様は……貴様はさては｜色欲《つみ》の類か。成程、私の罪を己の従者と、ペットとするなど前代未聞だが……。貴様ならば、私を、今度こそシリアスとやらに引き込んでくれる筈だ！　転がっているケダモノどもを飛び越えて｜勇者の肉体《ガチデビル》に接近する。フハハハハ！　良いぞ、貴様、そのいんらんな肉体をこの一撃で葬ってくれるわ！　握り締めた剣が揮われるか、揮われないかの瀬戸際、ガチデビルは身体が｜麻痺《しび》れている事に気付く。ぬぅ……貴様、この肉体が動けなくなるほどの｜念動力《パワー》を秘めていたのか？　そう、そして、私の狙いは『これ』よ……。勇者の肉体を抱き着き、押し倒す。このタイミングで勇者が自我を取り戻した。う、うん……？　あ、あれ、あの、動けないんだけど、なんで？？？
　なんだかスースーとする。うん、自由になったのだから、清々しい気分なのに間違いはない。だが、この風通しの良さは些か、いや、かなり筆舌に尽くし難いものだ。うふふ……これ、なんだと思う？　イタズラ大好きな悪魔めいた笑み。ちょっと！！！　それ！！！　僕のアレじゃないか！！！　面の皮を、布一枚を剥いでしまえば、それこそ皆々ケダモノだ。いや、いやいやいや！！！　それはおかしい。ほら、幾等なんでも猟兵、それはダメだと思うんだ！！！？　召喚された｜聖母《バビロン》の目に映ったのはいつもの光景。ルルがいつものようにオブリビオンのホニャララをうんたらしている……。
　ついで宝珠を掻っ攫ってぐるぐるバッター、色欲塗れにするとよろしい。大罪は七つ。六つで妥協した貴女の敗因よ……。ちょ、しまうな！！！　そして舐めるな！！！　なんだこれ。ガチデビル！！！　いいから乗っ取ってくれ！！！　溺れる者は藁をもつかむ、魔王は初めて魔王らしく、勇者の懇願を無視した。
　後で報酬にルルのも貰うわね。おお、色欲！　アスモデウスのテク！
　勇者はぐるぐるしている！

成功 🔵​🔵​🔴​

　理由はまったくの不明だが｜勇者リリリリ《ガチデビル》は息を荒げていた。先程までのホニャララに随分と身体をほぐされてしまったのだろう。脱力に脱力を重ねた結果、それこそ、オマエのダラダラとしたモードよりもドロドロにとろけている。なるほど……？　これはぐるぐるバットをした方が良い状況かな。嗚呼、その通り！　宝珠の効果で出現したダークリーガー軍団がウンウンと頷いている。彼等彼女等は全員ぐるぐるバットが大好きなのでその一言には大賛成だ。それに、リリリリさんもぐるぐるバットやるよねきっと。素晴らしい推理ではないか猟兵。勇者リリリリ本人も喜んでぐるぐるバットに挑戦してくれるだろう。目を回している状態でガチデビルに交代すれば、最早、赤子の手を捻るよりも容易な戦闘になるに違いない。これなら、別の宝珠も使ってくれたら良かったのになぁ……。
　ふ、ふん、そんな面構えで私に挑むとは笑止！　貴様の自慢のアスリート魂諸共、打ち砕いてくれるわ！！！　ガチデビル・フェイスがオマエに向かって飛んできた。ケタケタと嗤う盾は先制攻撃として扱われており、故に、オマエは幾等かの傷を負う破目には成った。ふ、フハハハハ！　こんなものか猟兵よ！　どくどくと、側頭部あたりから生ぬるい物が垂れてきたがそれでもオマエはゆるさを忘れない。此処からはわたしの番よ。ゆっくり、珈琲でも飲みながら……果報は寝て待つねぇ……。中ったのは最初の一撃だけだ。その次からのガチデビルの攻撃はまったく通らない。こ、このユーベルコードは……キャンプ・フォーミュラと同じタイプ……！　いや、正確には違うだろうが、これでは……。
　そう、猟兵は勇者リリリリが自我を取り戻すまでほんわりしていれば良いのだ。
　絵に描いた餅は喰えないと魔王はハンケチを噛む……！
　あ、ようやく戻って来れたよ。いや～さっきは酷い目に遭ったけど、今度はちゃんとぐるぐるバットしてくれそうだね。リリリリさん、宜しくね♪　ついでに宝珠を握り締めたら｜ぐるぐる世界《フィールド》の完成だ。それじゃ、早速だけどいつもの掛け声いくよ！　レッツ・ゴー・サイクロン！！！　側頭部怪我した状態でぐるぐるバットは危なくないか？　そんなこと今更、宣う必要はない。
　あとは常日頃から練習してきた『神との同一化』を願うのみ。リリリリはバットの代わりに剣を使うようだが、姿勢が同じなら問題ない。うん、リリリリさんもやる気十分だね。この勝負、何方が勝つのかは本当に神のみぞ知ると謂うワケか。
　……目が回る、猟兵、あとは任せた。
　勇者の自我は引っ込み、再び、魔王は蒼白とする。
　そうして何度目かのスプラッシュだ。わたしも神と同化する日が来るのかなぁ。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

　勇者リリリリ――彼女を洗脳し、肉体を乗っ取った魔王ガチデビルは這う事すらも出来ずにいた。ズタボロにされた三半規管を如何にかして治めようと、蹲る他になかったのだ。未だ、永遠とも思える目眩感に、動揺病に苛まれてガチデビルは無意識的に勇者の頭を抱えた。お、おのれ……己猟兵め……この私を散々虚仮にしおって……！　そんな魔王を侮蔑するかのように、憐れむようにひとりの猟兵が、オマエが睥睨している。無様なものね。ああ、何処かで繰り広げた、ひどく楽しかった戦いを振り返りながら目の前の醜態を見つめる。まあ、何で在れ、私はあなたの事を赦さないけれど。勿論、ガチデビル自身もオマエに慈悲を乞うつもりはない。此処までたっぷりと吐き尽くしてきたのだ。最早、臓腑はからっぽで、たとえぐるぐる回ったとしても🌈の彼方への導きはない。
　あの平和な……まぁ、うん、たぶんだけど、平和な。魔界を統べた王様で勇者。そんな存在に対して悪党如きが、邪悪風情が働いた無礼、万死に値すると知りなさい。フハハハハ！　猟兵、この私にシリアスで、本気で挑むと謂うのか？　よろしい。私は既に虫の息だが、貴様一人くらい道連れにしてくれるわ……！　ガチデビル・フェイスの嘲笑だ。盾として、投擲武器として、オマエのハラワタを引き摺り出さんと貌が迫ってくる。
　瞬間――世界はオマエを祝福した。
　違う――オマエが世界を祝福したのか。
　プライド・レースに参加したのは何も、｜傲慢《ガチデビル》だけではない。オマエも傲慢な属性を孕んでおり、嗚々、解かれた封印はまさしく｜超克《オーバーロード》の沙汰と描写出来よう。六の翼は何を魅せる。六の翼は何を齎す。｜天変地異《コキュートス》だ。裏切り者への鉄槌として神罰、この身に、この世に宿し｜魔王《ダイモーン＝スルタン》を打ち滅ぼすが為！　数を増やそうと、数を絞ろうとオマエの｜知識量《けいけん》の前では塵芥に等しい。さあ、これで、あなたを守る『もの』は無くなった。宝珠に関しては……もう少し後でも大丈夫だろう。ダークリーダー達はぐるぐるバットにしか興味を抱いていない。それに元より速攻が得手、回っているだけの無害を態々殴る理由などない。
　権能を｜付与《エンチャント》した大剣は、只、ものを壊す事に特化している。猟兵の膂力によって揮われた｜怪物《モンスター》は勇者の装甲すらもブチ破った。ぐらりと、｜勇者の肉体《ガチデビル》がバランスを崩す。私からすればね、目を回していなくても、あなたの『隙をつくる』事くらい簡単なのよ。森羅万象は等しく頭を垂れ、断たれる時を待つのみだ。秒間148もの多重斬撃が｜概念《ガチデビル》を捉え、刻々とする……。
　……こ、此処までなのか？
　この私が……1thKINGたる、この、ガチデビルが……！
　あ～あ、やっぱり、実力も足りなかったようだね。
　おのれ、おのれ、おのれぇぇぇ……！
　ガチデビルは文字通り🌈の彼方へと消失した。

　……ところで。
　味方してくれたリリリリはキング・ブレインやエンケロニエルと違ってオブリビオンではなかったりするのかしら。もしそうなら後でサインでも……？
　オマエがトドメを刺したのはガチデビル『のみ』だ。
　だが、勇者リリリリが残されているのか否かは。
　誰にもわからない。

成功 🔵​🔵​🔴​

最終結果：成功 完成日:2024年01月21日