バトル・オブ・オリンピア⑮〜開催・カッパーカップ
この戦いにおける最大の試練を最初に挙げておく。
それは『頭上に乗せた皿状のものに注いだ水を決して溢すことなく、宮本武蔵へ挑め』というものである。
仔細は下記に記す。
が、その前に私は此処に宣言する。
バトル・オブ・オリンピアにおける大魔術詠唱儀式「テニス」|カッパー《河童》|カップ《杯》の開催を!
●開催・カッパーカップ
サムライエンパイアにおける伝説の剣豪『宮本・武蔵』が死後アスリートアースにて蘇り、刀をラケットに持ち替え、大魔術詠唱儀式「テニス」を極めたことは、既に多くの猟兵が知る事となっているだろう。
何故にラケット。どうしてテニスが大魔術詠唱儀式――などと深くつきつめてはならない。
現実は、眼前にある事実が全てである。そのゆるぎなさの前に、仮定の域を出ない推察や考察は意味を為さないのだ。
その宮本武蔵が、古代バトリンピア遺跡のテニスコート、人呼んで「ネオ巌流島」で猟兵たちを待ち受けている。
「というわけで、あなた方には河童になって頂こうと思う。河童というからには、頭上の皿から水を零してはならないよ。大事な生命線だからね」
虚空蔵・クジャク(快緂慈・f22536)、至極サラリと言う。唐突に言う。脈絡もなく言う。
しかしこれでクジャク、智慧を菩薩を崇める身だ。
突拍子もないにも過ぎる提案にも、きちんとした理屈がある。
対すべき相手は、伝説の剣豪から究極の大魔道士へと|進化《ジョブチェンジ》した宮本武蔵だ。
大魔術詠唱儀式「テニス」を極める、己が流派「二天一流」と全身に刻んだ刺青型ユーベルコード「五輪書」を究極まで鍛え上げしフォーミュラである。
操る変幻自在の「二天一流テニス」は、文字通りのラケット二刀流。そこから放たれるショットの一本一本には、都市破壊級の魔術が込められている。
猟兵たちはこの破壊力に耐え、なおかつこれを上回る威力のユーベルコードをショットに籠めねばならない。
生半可な覚悟では成せぬだろう。
故に、河童なのである。
頭上に皿を戴いた姿でコートへ参ずれば、さしもの武蔵とて度肝を抜かれるだろう。
ただしこれによる油断を狙っているのではない。
皿に入れた水を決して溢してはならない、という極限の集中力が、皆の限界を超えた力を引き出すとクジャクは踏んでいるのだ。
なお、あくまで皿|状《・》のもので構わない。
髪で複雑に編み込んでみたり、未知の機構を用いたり、魔法を使うのもありだ。
もちろん、|大きさ《サイズ》も形状も自由である。
「空空寂寂――無我の境地へ至れば、勝機も見いだせるだろうさ。そう、ゾーンに入れれば、ね」
意味深にわらったクジャクは、猟兵たちを決戦の地へ送り出す。
なお彼女の本心が「何だこれ面白い。めちゃくちゃ面白い」だということは、まあ、知らぬが花ってやつだ。
七凪臣
お世話になります、七凪です。
出オチ感満載ですが、まあ、うん。カッパー。
●プレイング受付期間
OP公開と同時にプレイングの受付を開始します。
受付締切は任意のタイミング。
●シナリオ傾向
全力でネタ。
ただし創意工夫は全力で反映します。
なお公序良俗に反する行動や、迷惑行為はNGです。
●プレイングボーナス
「二天一流テニス」から繰り出される超威力の魔術に対抗する。
●カッパー
頭上にどんな皿(皿状のもの)を乗せ、どうやって溢さないようにするか。
スキルやUCを駆使するもよし、根性爆発させるもよし。
全ては皆様次第です。
●採用人数
全員採用はお約束しておりません。
オーバーロードは非推奨。
●同行人数について
最大お二人まで(ダブルス想定)。
なお最近の一日で作業可能な人数は平均三名様です。
プレイング送信前に一度、個別ページをご一読頂けますと幸いです。
皆様のご参加、心よりお待ちしております。
宜しくお願い申し上げます。
第1章 ボス戦
『宮本・武蔵』
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POW : 二天一流「燕返し殺し」
【ふたつのラケットの間に生じる超魔力球】が命中した敵をレベル×10m吹き飛ばす。
SPD : 二天一流「ホーミングファントム」
【二振りのテニスラケット】から発射した【無数のテニスボール】を、レベル回まで跳弾できる。跳弾回数に比例して命中率・致死率が向上。
WIZ : 二天一流「五輪の極み」
【刺青型ユーベルコード「五輪書」】に封じた【地水火空風の5属性の都市破壊級魔術】と合体し、あらゆる攻撃に対しほぼ無敵になる。ただし解除時にダメージを全て受ける。
イラスト:紙乙
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
別府・トモエ
「お皿か。お皿は丸いな。そういえばテニスボールって丸いな。……テニスボールってお皿だなよし」大きさサイズも形状も自由と言ったな?
自前のテニスボールひったひた水に浸して頭に乗っけてっと
「行ってくるわ」
「テニスボールは友達。怖くない。……よぉ武蔵ちゃん私は別府・トモエ。いざ尋常勝負じゃい」
燕返し殺し、ホーミングファントム、五輪の極み、良いじゃね〜の
「たまんねぇな」
ぐんぐん湧いてくるぜ無我のオーラ
こいつの扱いにはこちとら一日の長があるんだ
腕に、脚に、頭脳に、そしてラケットに集中して、テニスプレイヤーのUCってのを魅せてやる!
わかってるよクジャクさん
「ここだぁ!」
勝負どころで濡れたテニスボールを打つ!
●1セット目『大魔王をテニスした女』
テニスバカの両親の元に生まれ、哺乳瓶より先にラケットを握ったのが別府・トモエ(ミステニス・f16217)だ。
もちろん、猟兵としての始まりもテニスにある。近ごろは「テニス猟兵……流行れ、流行れ」とずっと念じていた。
となれば、今は黄金期。多少の難癖なぞ、どこ吹く風。
(わかる、わかっているよ。あなたの意図、思惑、理想。私には全て|理解《わか》る!)
赤髪のグリモア猟兵の事を思い出しながら、トモエはボールバックから真新しいテニスボールを取り出すと、水をひたひたに満たしたドリンククーラーの中へ沈める。
お皿は円い。
テニスボールも丸い。
円いと丸いでちょっと違うが、そもそも形状も大きさも自由って聞いている。
つまりテニスボールもお皿ってことだ。
「――行って来るわ」
湯舟に浮かべるアヒルよろしく、黄色いテニスボールを頭に乗せたトモエは、颯爽とコートへ踏み出す。
いつも以上に伸ばした背筋が、少しぎこちない。だが髪を湿らせる重みが裏切らないことを、誰よりトモエは知っている。
(テニスボールは友達。怖くない)
「……よぉ武蔵ちゃん、私は別府・トモエ」
スイッチの入ったトモエは、もはや無敵だ。色んな意味で。
眇めた眼差しに、チラチラと闘志が燃える。ネットの向こうで、武蔵が気圧されたように鼻白む。
「いざ尋常勝負じゃい」
「――、宜しい。宮本・武蔵、参る……!」
限界まで研ぎ澄まされた聴覚で、トモエは武蔵が喉を鳴らしたのを聞く。唾を飲むのは緊張の表れだ。
既に勝負は互角。戦いは幕を開けたばかりなれど、気持ちはタイブレークのフォーティー・フォーティー。
(たまんねぇな)
武蔵が構えた二本のラケットに、トモエの口角が上がる。
二天一流、実に面白い。
――YOU STILL HAVE LOT MORE WORK TO ON.
高揚が転じた無我のオーラがトモエを包む。いい、やはりいい。テニスって面白い。テニスって最高。
全身が昂る。しかしトモエの心は真っ新だ。
(こいつの扱いにはこちとら一日の長があるんだ)
腕に、脚に、頭脳に、ついでの頭上と、何よりラケットにトモエは集中し、武蔵の手元で数を膨れ上がらせるテニスボール達を注視する。
決するのは一瞬。
「いざ!」
「――」
解き放たれた黄色の乱舞の軌跡を、トモエは見切る――否、如何な跳弾だろうと届き得ぬ高みへ飛翔した。
成る程、これならば確かに被弾は無い。けれど同時に、打ち返すべき球もない。
違う。トモエには虎の子の一球があった。何処に。頭の上に!
(真のテニスプレイヤーのUCってのを魅せてやる!)
「ここだぁ!」
むんず。
トモエ、落とさずにいたテニスボールをやおら掴むと、空高くへ真っ直ぐトスをした。ふわりと散った水飛沫に、虹がかかる。
「まさか!?」
「そのまさかさ!」
全身のバネを撓らせ、トモエは天上より究極のサーブを打つ。
慄いた宮本・武蔵に躱す術は無い――。
大成功
🔵🔵🔵
紫・藍
藍ちゃんくんでっすよー!
ベリーダンスな藍ちゃんくんなのでっす!
正気か!?
と思われるやもでっすがー。
ベリーダンス、セクシーな印象を持たれがちですが、アイソレーション=体の部位をそれぞれ独立させて動かすことが重要なのでっすよねー。
なので頭の皿を揺らさず、されど踊ることも可能なのでっす!
腕一本指一本髪の毛の一つ一つにいたるまで、艶やかに舞う動きで破壊力を逃しつつも、都市破壊級魔術を構成する地水火空風という自然現象にまつわる5属性をも魅了して打ち返して魅せるのでっす!
もちろん、おにいさんが合体した魔術も藍ちゃんくんのファンにして解除して魅せるのでっす!
王子様な藍ちゃんくんはテニスでも輝くのでっす!
●2セット目『降臨・ベリーダンスの王子様』
「藍ちゃんくんでっすよー!」
「――は?」
しゃらしゃらしゃらしゃらん。
首元に、腕に、腰にまとった精緻な装飾を歌わせて現れた一人のダンサーに、さすがの宮本・武蔵も絶句した。
サムライエンパイア生まれな|彼《か》の剣豪が既知か否かは不明だが、装飾過多かつ比較的際どい衣装を身にまとったダンサーが舞うのは、ベリーダンスである。
どこか煽情的でありながら、細かな動作が多い分、見目に反して運動量の多いダンスだ。ダイエットに効果的なことも知られている。
そんなダンスを踊りながらテニスの武蔵さまに挑むなど、正気を疑われて当然だ。
しかし、紫・藍(変革を歌い、終焉に笑え、愚か姫・f01052)は至極正気であった。
「おにいさん、遠慮なく来るといいでっすよー!」
しゃらしゃらしゃらん。
刻んでいたアップテンポを、いくらかスローへ変えて、藍は武蔵へ華やかに笑みかける。
その間、頭上に乗せた(そう、乗せていた)古式ゆかしい白磁の皿をぴくりと動かない。それどころか、満たされた水が波紋を立てることすらない。
「――成程」
ふ、と。武蔵の口元が引き締まる。さすがは伝説の剣豪。テニスコートの端と端という距離感でも、藍の妙技に気付いたようだ。
ベリーダンスの真髄は、その美しさにはない。美しく見せる為の動き――アイソレーションにあるのだ。
ちなみにアイソレーションとは、体の部位をそれぞれ独立させて動かすことである。でもって藍は、四肢や腰、肩などの関節部のみならず、髪の一筋に至るまで自在に操り、艶やかに、華麗に、舞う。
可能の是非を考えてはならない。藍が藍であり、藍がやるというからには、出来るのだ。
そして――。
「いざ、参られよ」
「藍ちゃんくんでっすよー! 皆々様を藍ちゃんくんのファンにしちゃうのでっす!」
五輪の極み。あらゆる攻撃に対して無敵になった武蔵へ対し、藍は命を燃やしてベリーダンスを舞い踊った。
其は、生物のみならず、無機物、自然現象までをも魅了する究極の技。無論、五輪書に封じられた『地水火空風の5属性の都市破壊級魔術』も、自然現象の属性を有す以上、例外なく魅了される。
「――な!?」
身を守るものが引き剥がされる感覚に、武蔵が慄くのも一瞬だ。
何故なら武蔵もまた、藍に魅了されてしまうのだから。
「ふっふっふー、王子様な藍ちゃんくんはテニスでも輝くのでっす!」
斯くして藍はテニスコートでも無敵であった。なおこの間、一滴もお皿の水は溢しませんでしたよ。当然ですネ!
大成功
🔵🔵🔵
馬飼家・ヤング
※アドリブトンチキ大歓迎!
何やよー分からんけど、要は「考えるな、感じろ!」ってことやな?
ほなカッパや!
わいは今からカッパになるんや!
頭のお皿だけやのうて、全身を緑色に塗ったカッパコスプレでな!
なりきりは形から!
【ぽよよん☆ポップ】でのびーるのびーる!
テンプラ一流の一撃を食らってよろけたらかなわん
頭のお皿が傾かんようにバランス取りつつ体をぐにょんと曲げて球筋を避け
コートの端ギリギリを責めるショットは腕を伸ばして残さず拾うで!
……はっ、見えた!
B・A・K・A・U・K・Eゾーン!!
(ナニワの虎球団が逆転サヨナラ場外ホームランキメるビジョン)
ゴム状になった腕の弾力を全力に込めてスマーーーッシュ!!
●3セット目『炸裂・ナニワ魂』
馬飼家・ヤング(テレビウムのちっさいおっちゃん・f12992)の登場に、世紀の大決戦を見届けに来た観客たちがどっと沸いた。
だってカッパである。全身緑の小柄なカッパである。頭の上のお皿には、ちゃんと襞みたいなのもついている。
ちなみに全身緑なのは、全身隈なく塗料を塗りまくったせいだ。全身タイツなんて楽はしていない。
(よっしゃよっしゃ、掴みはまずまずやな)
老若男女入り乱れた快哉に、ヤングの|顔《液晶モニター》には『(≧∇≦)』が表示された。
そもヤング自身、何がなんだかよく分かっていない。が、要は「考えるな、感じろ!」ってことだけは理解していた。大正解である。
故にヤングは、身も心もカッパになりきるのに躊躇いはなかった。笑いを取りにゆくなら、全力で! 腹の足しにもならない端や外聞なんて、道頓堀へダイヴである。
「――その覚悟や、好し」
(くるでくるでくるで――)
さすがは宮本・武蔵。ヤングの出オチに怯まず(嘘だ、ちょっと口元が笑ってる)、二刀流のラケットを構えた。
ヤングも負けじとラケットを構える。中腰の姿勢に、背中の塗料がちょっと引き攣れたが、気にしない。
高まる緊張感に、一帯が水を打ったように静まり返った。ヤングのお顔も『(`・ω・´)』ってなる。
胃がキリキリするような、重い沈黙の帳が世界を包んだ。
だが、しかし。
「いざ、参る」
「わいのお腹はまんまるボディ~♪ おもちみたいに無限に伸びるで~♪」
「「「!?」」」」
「伸びて縮んでメタボルフォーゼ♪ やわらかパワーでぽよよんよ~ん♪」
「「「!!!!」」」
武蔵が無数のテニスボールを撃ち放った途端、周辺は再び笑いの渦へ包まれる。
詠唱自体がとっても緩い。挙句、その間延び加減で気が弛んだところに、ヤングが伸びた。文字通り、伸びた。
これぞヤングの|奥義《UC》のひとつ、ぽよよん☆ポップ。テレビウムの無機質な肉体を、脂肪で丸々と太ったモチモチ体型へと変化させ、全身タイツじゃとうてい間に合わない高い伸縮性と弾力性を得る妙技。
「な、んだ――と」
のびーるのびーる。びよよん、みよよん。
(ほらほら、どうやどうや!!)
ぐにょんぐにょんの身体でヤングは、数多の球を避けに避ける。避け捲る。ただしお皿の水は溢さないよう、頭だけはしっかりホールド。
やろうと思って出来ることではない。だからこそ武蔵は息を飲んだ。でも、観衆にとっては、笑いを誘う珍妙なダンスである。なれどその笑いこそ、ヤングの力の源。
(わろぉてる。みんな、わろぉてる!!!)
誰も『親父ギャグじゃん』なんて冷めた目で見ていない。スベらないって素晴らしい。そしてこの歓喜が、ヤングに新たな世界の扉を開かせる。
「……っはっ、|( ✧Д✧)《見えた》!」
――B・A・K・A・U・K・Eゾーン!!
この時ヤングの脳裡には、「テナモンヤ・ナニワ・シティ」で大人気の球団が、鶏肉を売るヒゲのおじさんの呪いから解放されるビジョンが浮かんでいた。
「わいも決めるで、逆転サヨナラ場外ホームラン!!!!」
テニスの場合、場外ホームランはアウトな気がしないでもないが。とにもかくにもヤング、今にもベースラインを超えんとする一球に、ぐううんっとゴムのように伸ばした手で追いつき、その撓りを活かし渾身のスマッシュを放つ。
まさかこんな戦い方があったとはと柔軟運動を始めた武蔵へ、ヤングが直々のレッスンを行ったのは、これからしばらく後の話である。多分。なお、受講料が|無料《タダ》ではなかったことを最後に記しておく。
大成功
🔵🔵🔵
天瀬・紅紀
手にした皿は骨董品な古伊万里の大皿
水を零さぬ、だけじゃ燃えないじゃない?
うっかり割ったら諭吉が何十人飛ぶか…この財布的な緊張感、良いね(頭に載せ
二枚有るけど君もやる?
ハンデで勝っても嫌でしょ(巻き込む姿勢
とは言え集中力とはそう長くは保たない
――そう、二分で終わらせよう
刀の如くラケット構え、UC発動
増幅した体幹にて頭上の皿を傾けぬ様、全集中
向こうの放つレシーブを極限まで高めた視覚と反射神経にて食らいつき、燃え滾る炎熱の力を球に籠め居合いの如く武蔵目掛け打ち返す!
剣士としては楽しいし嬉しいし燃えるんだ、アンタに挑める事が!
僕と其方、どちらかが倒れるまで全力出し合おうか!
(割れた皿の代金で財布も炎上
●ファイナルセット『炎上勝負師🔥』
「――、――!?」
宮本・武蔵にきっちり二度見されて、天瀬・紅紀(蠍火・f24482)は燃える炎が如き赤の双眸を、猫のように細めた。ただし猫は猫でも、大型肉食獣のそれである。
「ハンデで勝っても嫌でしょ?」
口振りはたおやかなれど、紅紀の物言いは、相手に有無を言わせぬそれだ。
そして武蔵もまた、こうまで明確に煽られて、おめおめ退き下がるような男ではない――例えその手に、如何にもお高そうな大皿を持たされていたとしても、だ。
「ちなみにこの皿、古伊万里の骨董品だよ」
にっこり微笑む紅紀の頭の上にも、武蔵と対の大皿がある。多くの色を使い、精緻な柄を描いたものだ。うっかり割ったら、何十人の諭吉(※UDC通貨単位。もしかしたら近々栄一さんに変わるかもしれない)がグッバイするか分からない。
(……いいね、うん。良い。この財布的な緊張感)
こくり。いつの間にか口の中に溜まっていた唾を、紅紀は静かに嚥下する。
(水を零さぬ、だけじゃ燃えないじゃない?)
紅紀の心の裡で、大型猫獣が爪を研ぐ。
そう。更なる高みを目指すべく、紅紀は勝負に打って出たのだ。この男、とんだ勝負師である。
だが紅紀も一介の剣士である。宮本・武蔵を相手取るには、それだけの覚悟が必要だった。
故に、大皿が二枚あったのは偶然だ。せっかくだから一緒に河童になっちゃえ、と思い至ったのも偶偶だ。死なばもろとも、なんて思ってない。多分。
結果から言えば、武蔵を同じ舞台に立たせた時点で、紅紀の勝利は確定していた。
だって頭上に古伊万里だよ? 如何な大剣豪あらため大魔道士とて、早々メンタルは整わない。
端から腹が括れている分だけ、圧倒的に紅紀が有利だ。あれ、もしかしてこの男、勝負師ではなく策士?
とは言え、紅紀にもアドバンテージがある。意図的な生を受けた代償として色素が欠落している紅紀、お日様が得意じゃない。そしてここで戦争マップを確認しよう。ネオ巌流島に屋根はない。ナイター設備はあるけど、屋内競技場じゃない。つまりダイレクト日光。
(――そう、二分で終わらせよう)
「一瞬だけ――この生命、燃やし尽くす!」
重みに耐えかねた首がぽっきり逝かぬよう、紅紀は発動した|疾火迅炎《ナーヴ・オブ・アルニヤト》で体幹を強化し、武蔵の球に食らいついた。
ラリーが続く緊張感に肌がひりつく感覚が心地よい(太陽に焼かれているせいじゃない、きっと)。
「俺は今、心から燃えている――アンタに挑める事が!」
楽しい。嬉しい。武蔵と打ち合う紅紀の魂は、歓喜に震え昂る。
武蔵もまた、真っ直ぐな熱量をぶつけられ、清々しくも歓天喜地の心地であった。
時に男という生き物は、興が乗るあまり、大事なことを忘れがちになる生き物だ。武蔵とて例外ではなかった。何が言いたいかというと。
「僕と其方、どちらかが斃れるまで全力を出し合おうか!」
「承っ――あ」
ぱりん。
どうにか御せそうになってたんだ。なれど打ち合いに夢中になった途端、気持ちが逸れたんだ。だもんだから、頭から水――どころか、皿が落っこちたんだ。武蔵の頭から古伊万里の大皿が。
「ああああああああ」
「そこだあああっ!」
木っ端みじんになった古伊万里に武蔵が動揺した好機を、紅紀は見過ごさない。
渾身の一撃を繰り出すのに注力するあまり、紅紀の方の古伊万里も落っこちたけど。
斯くて紅紀は武蔵との熱戦を制したが、彼の財布もまた大炎上したのだった。おあとがよろしいようで?
大成功
🔵🔵🔵
アレクシス・ミラ
アドリブ◎
何だこれ
いや、これが伝説に挑み境地へ至る覚悟…なのだろうね
『白夜』で『重騎士形態』の兜を…他の世界の美術館で見た合子形兜を参考に皿上の物がついた物で生成
剣をラケットに持ち替えよう
今この時はテニスの騎士
貴殿に試合を申し込む!(騎士は真面目であった)
ラケットにオーラ防御を纏わせ籠手と重騎士の力で守りを高め
己と水が一体となるよう集中…明鏡止水、だ
足運びは流れる水の如く
静かにされど舞うように
【光の速さで】
呼吸を合わせ、ボールの軌道を予測
返し、捌いてみせよう
…衝撃が重くとも
激痛耐性で受け止める
一球も水の一滴も落とさない…守り抜く
ボールに込めるは限界突破の光の速さ
受けてもらおう、テニスの武蔵殿!
●エキシビジョンマッチ『テニスの騎士様』
合子形兜という兜がある。読みは「ごうすなりかぶと」である。いや、読みはどうでもいい。問題はその形状だ。
ずばり、ひっくり返したお椀だ。もちろん、高台にあたる部分もある。つまり合子形兜を被ると、頭上に程よい大きさの水受け皿が出来るのだ。
両手で持った兜――いつものやつを、いつもの不思議アイテムでちょちょいと合子形兜に変形させたものだ――を睥睨するアレクシス・ミラ(赤暁の盾・f14882)の眼差しは遠い。
率直な感想は『何だこれ』だ。幼馴染に見られたら、絶対に笑われるヤツである。
だが、しかし。
「いや……」
アレクシスはゆるりと首を振ると、お椀を――もとい、合子形兜を恭しく被る。
ちゃぷん。既に満たしておいた水が揺れて、跳ねた。途端、きゅっと身が引き締まる。
そこでアレクシスは納得した。これが伝説に挑む境地に至る覚悟なのだろう、と。
「――ふぅ」
傍らに置いたラケットを手に取ると、全身が武者震いに戦慄いた。
珍妙な絵面が脳裏を掠めるが、アレクシスはもう気にしない。
静かに立ち上がり、神聖な|戦場《テニスコート》へと踏み出す。
斯くて緑の芝に立ったアレクシスは、剣の切先を向けるが如く、宮本・武蔵へラケットをずびしっと突き付けた。
「今この時はテニスの騎士。故に私は貴殿に試合を申し込む!」
「その勝負、受けて立つ」
双方、真顔。合子形兜を被る方も、眺める方も真顔。河童isどこ吹く風。
アレクシスも武蔵も、とんでもなく真面目であった――……。
「打ち返せるなら、打ち返してみせよ!」
乱れ飛ぶテニスボールを、|テニスの騎士《アレクシス》は目で懸命に追う。
全てを躱すのは難しい。光の速さを得た思考で瞬間的に判断したアレクシスは、いくつかのボールを我が身で受け止める。
要はベースラインを割らせなければいいだけだ。ならばやりようは幾らでもある。
(――ここだ)
流れるような足運びで、致命傷たりえるボールへラケットを合わせた。重い衝撃に、手首が悲鳴を上げる。だが明鏡止水の境地に至ったアレクシスに痛みは無い。
(私は、水。私こそが、水)
我が身を水に喩えれば、骨が砕けようはずもなく。何より、頭上の水との一体感が、アレクシスを自由にさせる。
(……彼だったら、水の方から離れたがらないんだろうけどね)
各所に数多散らばる不条理も、アレクシスの脳内で煌めく一等星パワーの前では裸足で逃げ出す。
何より、|彼《・》の対である為には、誰にも負けるわけにはいかないのだ!
「伝説の剣豪、宮本武蔵――否、テニスの武蔵殿っ」
氷上を滑るペンギンのような俊敏さでアレクシスは黄色い軌道の雨の中を駆け、狙いを定めた一球へ全霊を傾ける。
「受けてもらおう、テニスの騎士の|魂《一球》を!!!」
テニスの騎士の渾身のショットは、テニスの武蔵の|心臓《ハート》を射抜いた。
勝者は騎士だ。なれど騎士とは礼節の塊。
「ありがとう、いい試合だった」
「――ああ。我も礼を言おう」
テニスの騎士に差し伸べられた手を、膝をついたテニスの武蔵もしっかり握り返す。
感動の一幕に、観衆が天を突くほどの喝采を叫んだのは言うまでもない。
その時になってようやく零れたひっくり返ったお椀の水は、爽やかな汗のようであり、清々しい涙のようでもあった。
ところで、アレクシスさん。
本当に良かったんですかね? 良かったんですかね? 良かったんですかね!? 私、知りませんよおおおおお(地の文、魂の叫び)。
大成功
🔵🔵🔵