バトル・オブ・オリンピア⑭〜速さの中に見える『魂』とは
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「いい目をするようになったわね。行けるわ、今のあんたらなら、レース・フォーミュラ……『ウィリアム・ローグ』。あらゆるモータースポーツの頂点に到達しながら、不慮の事故により還らぬ人となった伝説のレーサー……らしいけど」
マリア・ルート(紅の姫・f15057)が猟兵達を前にそう語りだす。
「改めて言うけど、奴は速さを極めた生涯の果てに得た究極の能力――『アルカディア・エフェクト』を使ってくるわ」
ブルーアルカディアでも出てきたその言葉、なぜここで出るのかは、わからないが。
「ただ一つわかるのは、この力は死者には意味がない、生者にこそ意味がある……らしいこと」
ま、それが何なのかはわかんないけどね、とマリアは嘆息する。
「ここに集まったみんなは覚悟をもって彼とのレースに挑むんだろうけど……はっきり言って、勝てるかはわかんない」
戦えるとは言ったが勝てるとは言ってない。何せ相手が相手だ。
「……でも、あんたらが『魂』を見せることができれば、きっと満足してあんたらに与えると思うわ――アルカディア・エフェクト」
えっ、って声が上がる。そりゃそうだ。
「ああ、ごめん誤解させたかもね。予知で分かったのよ、奴を満足させたら『アルカディア・エフェクトの後継者』になれるって。奴の狙いからしてあり得そうじゃない? 尤も、すぐに使えるわけじゃないと思うけど」
いずれは覚醒するのかもしれない。だが、今はまだ。そもそも、彼を満足させないと意味のない皮算用なのだ。
「何はともあれ、まとめると、奴に勝つこと――それが難しくても、奴に『魂』を見せる事。 頼んだわよ!」
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――ローグ・ファクトリー。
ウィリアム・ローグが建造した広大なガレージであらゆるモータースポーツのテストが可能なサーキットが併設されているその工房。
「死を越えた後に、得られるものもある……富や栄光をかなぐり捨て、速さだけを追い求めたグランプリレーサーだけが到達できる至高の領域……私が生涯をかけて追求し、死後漸く得られた「スピードの向こう側」……その名は、『アルカディア・エフェクト』」
ローグは愛車を走らせながら想起する。
「だが、これは死者には無用の長物……命ある者達が纏いし時のみ光輝くこの力を、私は君達に伝えたい……故に、君達に懇願する。全力で私に挑み、私を越えてゆけ……!」
ローグは今か今かと待っている。
伝授すべき『魂』を持つ者の到来を。
結衣謙太郎
ローグ・ファクトリーへようこそ。
結衣(戦争モード)です。
レースの中に見える『魂』とは何か。
以下詳細。
●メイン目標
レースを通じてウィリアム・ローグに自身の『魂』を示す。
特別プレイングボーナスも兼ねています。
レース自体の勝敗は不問。
●章構成
このシナリオは、「戦争シナリオ」です。
1フラグメントで完結し、「バトル・オブ・オリンピア」の戦況に影響を及ぼす、特殊なシナリオとなります。
改めて言いますが、ローグは本当に強いです。
並大抵の実力では勝つことはできません。
このシナリオのメイン目標は彼に勝つことではなく、ローグが皆さんになんらかの『魂』を見出すことです。
アルカディア・エフェクトの後継者に相応しい、魂を。
なおレースの種類は何でも構いません。結衣はF1想定で今このオープニング書いてますが別に飛行機でも競馬でも大丈夫といえば大丈夫です。ローグは多分それも修めているでしょう。
ちなみに今回実況解説はいません。ここ工房付属のサーキットなので。公的なサーキットじゃないので。
なお、万が一クラッシュすると苦戦以下の判定になると思います。
そこはまあ、レースなので。ご了承ください。
まかり間違ってローグがクラッシュすると大成功激アツです。まあないと思うけど!
※このシナリオに参加し成功した人は『アルカディア・エフェクトの後継者』となります。いますぐ使用できるわけではありませんが、いずれ覚醒する事があるかもしれません。
●備考
プレイングはオープニング公開後から受け付け開始します。
ただし全採用できない可能性がいつもより大きい点、ご了承ください。
オーバーロードは納期の都合により後回しになる可能性もあります。
以上、プレイングお待ちしております。
走り屋達よ、『魂』を見せよ!
第1章 ボス戦
『ウィリアム・ローグ』
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POW : アルカディア・エキゾースト
レベルm半径内を【アルカディア・エフェクト】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【何者にも縛られぬ風】で加速、もしくは【置き去りにされた過去の光景】で減速できる。
SPD : ブラック・インフェルノ
【レーシングマシン】から、戦場全体に「敵味方を識別する【漆黒の炎】」を放ち、ダメージと【強制進化】の状態異常を与える。
WIZ : ヴォイド・リフレクション
【超加速能力】を宿した【車載兵器からの一斉砲撃】を射出する。[車載兵器からの一斉砲撃]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
イラスト:秋原 実
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
櫟・陽里
スピードの向こう側に何があるか
そりゃ俺だって知りたい
そんでそれは自分の実力で掴むもの
そうだろ?
さぁグリッドに着いてくれ
俺の相棒は宇宙バイクのライ
人生全部を注ぎ込んできた
あんたが格上だろうが関係ないんだ
今の俺に実現できる限り最高のマシンで
持てる技術をミスなく発揮しベストラインを走り切れば良い
これでもレース経験は豊富なんだ
無駄な時間は過ごさせないぜ!
路面も気温も天気もチェック済み
集中力判断力を研ぎ澄ますためのイメトレもした
スタートを上手く抑えられたら一気に逃げに出るけど
加速で勝てないようならそれはそれで弱者の戦略ってもんがある
追い抜くコース取りの駆け引きで神経すり減らす
ミラーに映る俺をよく見とけ!
伝説のレーサーなら知ってるはずさ
レースは独りじゃ意味がない
この駆け引きと負けねえって意地のぶつかり合いが最高に楽しいって!
コース上では誰もがライバル
敵の攻撃は必ず飛んでくるだろう
なるべく炎が弱い所を見極め一気に加速し突っ切る
多少のダメージが何だってんだ!
攻撃なんて余計な動作で隙を見せた事が敗因だぜ!
●
『来たか……』
ウィリアム・ローグがやってきた猟兵達と相対する。
その姿は堂々としており、何かを仕掛ける様子もない。
だが、その威圧感。その迫力は、歴戦の猛者であることを感じさせるには十分だった。
重い空気の中、最初に切り出したのは櫟・陽里(スターライダー ヒカリ・f05640)だった。
「スピードの向こう側に何があるか……そりゃ俺だって知りたい。
そんでそれは自分の実力で掴むもの……そうだろ?」
『ああ……だからこそ私も己が思うままに我武者羅に目指した……そしてアルカディア・エフェクトへと至った……』
「だったら……俺は――俺達は、そんなローグを超えて、お前を越えてみせる。そして、スピードの向こう側を手に入れてみせる!
さぁグリッドに着いてくれ」
ローグが嘆息した気がした。それは安堵か呆れかそれとも……ヘルメット越しでは全く分からない。
だが、無言のままピットへと向かう辺り、戦う気はあるようだ。他の猟兵達も続々とグリッド(レースのスタート地点に停車位置的に白線が引いてある、アレ)へと向かっていく――己が愛機と共に。
このレースにフォーメーションラップはない。
だが、ローグは己が愛機――ローグ・インターセプターに乗り、グリッドの最後方に停車した。余程の自信が現れているのだろう。
『はじめよう』
その言葉と共にサーキットにあるランプが点灯していく。
(路面も気温も天気もローグと話す前にチェック済み、集中力、判断力を研ぎ澄ますためのイメトレもした……あとは)
今の彼に実現できる限り最高のマシンで、持てる技術をミスなく発揮しベストラインを走り切れば良い!
――ブラックアウト! マシンが一斉に走り出した!
(……ん? ローグ、追ってこないな)
陽里が後ろを見ながら訝しむ。ローグのことだから圧倒的力量で追いかけてくると思ってた。だが、来ない。スタートは明らかに陽里たちが抑えた。ではローグはどうなったか?
『……復活したばかりだからかガタがきてたか……』
なんとロケットスタートに失敗してスリップしていた! 弘法にも筆の誤りとはまさにこのこと! すぐにスタートしなおしたが、レースはこの一瞬が致命傷ともなりえる。
(なら、一気に逃げに出る!)
陽里が一気にペースを上げ、逃げに出る。レースで『逃げる』は誉め言葉だ。先行逃げ切り型というのがあるように。豊富なレース経験は予想外の時にどう出るべきかも自分に教えてくれていた。
――だが。そんな安直な戦いを許してくれるわけがない。
「うぉっ、なんだあの黒い炎は!」
後ろから急加速してくる黒い炎を放つマシン! ローグだ! 遅れを取り戻そうと急加速し、あっさりと陽里の脇につけた!
「はっ、伊達じゃない……ってのかよ! それにああそうだ、これは超人スポーツだったな!」
超人スポーツの共通ルール――アスリートや猟兵達は、ボール等の道具を壊さないようユーベルコードを使うことができる。ならばローグが追いかけながらコードを使ったところで何の問題もない。
ほんの一瞬呆気にとられた陽里をあっさり追い越したローグ。それに笑みを浮かべる陽里。
「上等! 加速で勝てないようならそれはそれで弱者の戦略ってもんがある!」
――レーサー魂に火が付いたようだ。
ローグ・ファクトリー付属テストサーキットはテストに使うだけあり、様々なコース形状が存在する。さながら実際のレースサーキットのように。それは即ち、追い抜きに使えるような形状もあるという事――例えば、カーブ。内側を取れば有利なそれは勿論内側の取り合いとなるが、陽里の意地がローグの放つ炎を突っ切って内側を取ってローグを追い抜くこともあれば、直線で勝負の加速をしてローグが追い抜くこともある――逆もまた然り。
陽里の目的はこの駆け引きによるメンタルダメージ。冷つく戦いというのはなかなかどうして、精神をすり減らすものだ。僅差の戦いを制して安堵のため息をつくように。
「ローグ、伝説のレーサーなら知ってるはずさ。レースは独りじゃ意味がない――この駆け引きと負けねえって意地のぶつかり合いが最高に楽しいって!」
『ああ、確かに……この駆け引き、久しく得た体感だ……』
……スピードを追い求めたローグは、それ故にきっといつも優勝をしていたのだろう。それはつまり、並び立つ者がないということ。それは必ずしもいい事ではない、むしろプレッシャーと『楽しめない』という思いからどうしても辛くなるものだ。
だからこそ、今このレースでしている『駆け引き』に、ローグは久しく興奮しているのかもしれなかった。
成功
🔵🔵🔴
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
アルカディア・エフェクトか……
ウィリアム、アンタを決して貶すわけじゃない。
ただ、アタシにとってはそれを得る事以上のご褒美が目の前にあるってだけでね。
レーサーとして、この勝負ができる事こそ至上ってもんさ!
アタシが騎乗るのはもちろん、宇宙カブ。レギュレーションに制限がないなら、これ以外考えられないさ。
相手が二輪でも四輪でも構わないよ。どの道リミッターを解除した後は、純粋な運転と操縦技術、ついでにお互いの覚悟のぶつかり合いになるだろうからね。
無茶は承知の上。アタシの心臓とカブのエンジンが唸り、回すタイヤが地を蹴る限り、速さの探究と勝利への執念が消えるものか!
追いつけ、追い越せ!
と、その時、外側から宇宙カブが競り合いに割り込んできた。
こちらもレーサーである数宮・多喜(撃走サイキックレーサー・f03004)が乱入してきたのだ。
時折ローグのマシンと激突することもあるが、多喜は激突ダメージを無視するコードを使っているため影響はない。それどころか、今か今かと追い抜くタイミングを見計らっている。
『なかなか野心溢れた顔をしている……いいレーサーのようだな……』
「ハッ、それはどーも! だと言って手加減するつもりもないけどな!」
ヘアピンカーブ、マシンたちが火花を上げる中、多喜がここぞとばかりに勝負をかける!
「抜かせてもらうぜ、ウィリアム・ローグ!」
多喜がここで一気に抜き去っていく――!
『だが、まだ青いな……』
しかしローグが漆黒の炎で多喜の視界を揺らがせ、その隙に抜いていく!
『勝つことだけに縛られ続けている……私が見たいのはそんなのではない……』
この依頼ですべきことはローグに勝つことではない。ローグに『魂』を見せる事だ。
勿論、勝利への渇望という面で魂は出しているが、そういうものを見たいわけではない――ローグはそんなものなど見飽きているのだから――ほかならぬ、自分で、自分を抜こうとするライバルで。
『アルカディア・エフェクトの後継者にいいたまs』
「うおおおおお……!」
呟く間に多喜がめっちゃ追い上げてるんですが!?
「ウィリアム、アンタを決して貶すわけじゃない……ただ、アタシにとってはそれを得る事以上のご褒美が目の前にあるってだけでね……レーサーとして、この勝負ができる事こそ至上ってもんさ!」
即ち、アルカディア・エフェクトの後継者となるよりも、ウィリアム・ローグとのレースができることに心をワクワクさせている多喜。追いつけ、追い越せ、その執念が必死な競り合いをしていた。
が。
『やはり、私の昔のライバル達と同様だ……勝とうとするばかりに大切なものを失っている』
呆れたかのように多喜を突っ放すローグ。
戦いたい、追い抜きたい。それはスポーツマンとしてはごく普通だ。だが、ローグが見出す魂としては、まだ弱い。勝利に、戦いに目を向けるあまりに大事なものを見失ってきた者をローグはきっと何人でも見てきたのだから……
苦戦
🔵🔴🔴
ティティス・ティファーナ
SPDで判定
*アドリブ歓迎
「勝敗よりも“魂の在り方”だと…生き様を示せとは何様だ、不愉快だ」
最高速度を急加速で飛翔で発進して『ウィリアム・ローグ』の様子を見て“虚言や嘘では無い様だ”と感じ取って『アストラル・エレメント・トランスフォーメーション』で最適化して追加ブースターも装備してファンネルビット/シールドビット/リフレクタービットを創造して展開し敵の行動と攻撃を1分先の未来を見ながら予期して ブラック・インフェルノ に対して反射対抗パルスを照射してを『ウィリアム・ローグ』に反射します。
空間飛翔とファンネルビットとの入れ替わりを駆使して「より速く、より先に」と知らずに集中して勝負よりも夢中に。
「勝敗よりも“魂の在り方”だと……生き様を示せとは何様だ、不愉快だ」
多喜の後ろから飛翔、急加速で接近していくティティス・ティファーナ(召喚獣「アストラル・エレメント(幽魔月精)」・f35555)。これだけ見るとこれはレースに使う車とかではないのではないか、ただキャバリアのように飛翔しているだけでは、レギュレーション違反ではと思う方もいるのではないだろうか。だが、彼女のコードは『自身の身体部位ひとつを【アストラル・エレメント・エネルギー】に変異させ、その特性を活かした様々な行動が可能となる』というもの……つまり、今彼女は身体をマシンのような体にして走っているのでノープロブレムなのである。核が霊体のようなものでガワを色々変えられるからできること――閑話休題。
(……虚言や嘘では無い様だ……)
ティファーナは不愉快さを言葉に出しつつも様子を観察し、ローグの様子から彼の考えが何の偽りもない本心であることを何となく察した。
――なら、自分も『召喚獣』が1体としてそれに応えるしかない。追加ブースター、ファンネルビット、シールドビット、リフレクタービット……自分が出せるものは全て展開していく。我武者羅に、対抗しようとする。だがローグに勝つことを望んでいるわけではない。あくまで、不愉快な態度を見せるローグに一泡吹かせるために!
ローグ・インターセプターから迫りくる黒い炎、それをティファーナはパルスで反射させていく。と同時に、ブースターと入れ替えて加速していく。レースを疎かにすることなく、かといって攻撃による妨害も疎かにすることなく。嗚呼、それは『超人スポーツ』としてあるべき姿なのかもしれない。
より速く、より先に。いつしかティファーナは勝負などどうでもよくなっていた。集中のしすぎで周りが見えなくなる、アレに近いようなものだが――この場合はどっちかというと……
『無心……か……』
そう、無心。ただひたすらに前を向く、野心とはまた違うそれ。
『無心にあの集中具合、あれはきっと……楽しんでいる者以上に「楽しんでいる」のだろうな……』
ローグが思わず感嘆する。まるで昔の自分を見ているような気がした。ただスピードのその先へ、勝敗とはまた違う、その先の次元。それはまさに――
『アルカディア・エフェクトの後継者として、相応しい、か……』
思わずそう言わせてしまうほどに、彼女の無心さは彼の心を揺るがした。追い抜いたとかそういうのがどうでもよくなるほど……
大成功
🔵🔵🔵
ロジャー・カニンガム
スーパーカー型拡張ユニット「D.A.T.T.」ストライダーに搭乗
[情報収集]でコースやマシンのコンディションを注視しつつ、[瞬間思考力]で割り出した最も効率よく走れるコース取りを行い消耗を抑えます
コースを把握できた中盤以降、[ダッシュ]や[スライディング]のような攻めた機動も織り交ぜてペースアップ
そして勝負を賭けるのは最後の直線
【ハイテール・ブースト】を発動して大幅に加速、
電脳が焼き切れそうな感覚、鳴り止まぬアラートさえも無視して、更に[リミッター解除]
限界を越えた走りを!
伝説と言う名の輝き…スピードの向こう側に、数字の羅列では計り知れない世界がある
だから何度だって挑みましょう…辿り着くまで!
レースは気が付けば終盤へと差し掛かっており、もうあと何周かすれば終わりというところ。
順位は目まぐるしく入れ替わっており、ローグに勝つのもワンチャンあるかないかまで行っていた。どこかローグも楽しそうである。多分。
そんな中、スーパーカー型拡張ユニット『D.A.T.T.』ストライダーに搭乗して――否、接続されて走っているのがロジャー・カニンガム(兎型歩行戦車RIT-17/S・f36800)だ。彼はその演算能力でコースやマシンのコンディションを注視しつつ効率のいいコース取りをすることによりこれまで負担を最小限にして進んできた。意外と長距離戦になると後先考えないやり方よりもこのような基本に忠実に、走り続けることを考えた方が割と結果的によくなったりする。尤もそれだけでは置いてかれるので適度に攻めた機動はしていたのだが。
そんなロジャーがローグに追いつく。それからしばらくして直線がもうすぐ見えるという時、いきなりロジャーはローグに話しかけた。
「ウィリアム・ローグさん、あなたはスピードの向こう側を見たと言いました」
『……そうだな……』
「それはつまり……ウィリアムさんも憧れるほどの、伝説と言う名の輝き……スピードの向こう側に、数字の羅列では計り知れない世界があるということ」
ロジャーは頭脳戦車である。数字の羅列が脳をよぎることは珍しくはないしそういう世界で生きている。機械的な意味で。
「でしたら私にも意地というものはあります」
瞬間、ロジャーが真紅のオーラをまとい、加速していく。
「例え何度追い抜かれようとも、何度だって挑みましょう……辿り着くまで! |高速機動《ハイテール》モードに移行!」
直線コース、ローグ・インターセプターの放つ黒い炎など目にもしない、する余裕がない中をすさまじい勢いで加速する! ローグも遅ればせながら負けじと加速してそれに追随していく!
「うぁあああ……!」
電脳が焼き切れそうな感覚がする。自らのプログラムが脳内に響かせるアラートが鳴り止まない。だけど、それがどうした。限界を超えていかなければ――というより、『超えようと足掻く意志を見せなければ』! ローグが求めるような本気の『魂』など、魅せられるわけがないだろう!
『限界を超えたその先……いや、限界を超えようとするその強靭な心……己がどうなってもいい、だから――なるほど……』
だがローグには不審に思う点もあった。
ロジャーの先ほどまでの堅実な動きからすれば、こんなところで勝負にかける必要などないはずだ。自分がいつスリップなどするかもわからない、未来は予測できるけど予知はできないように。ならなぜ――
そこまで思考して、はっと気が付いた。
『まさか、「私に見せるためだけに」……?』
そう、ロジャーがもし自分の堅実な戦いを捨ててでもローグに限界を超えようと足掻く姿を見せれば、それは確かにローグに対してこれ以上ない『魂』の見せ方になる。ある意味、この依頼に最高のアプローチである。
『……なるほど、面白い……』
必死に追いつこうと競り合いながらローグは何度もロジャーを見るのだった。
なおこの後ロジャーがオーバーヒートしてバチバチいいながらピットで休んでたのは言うまでもない。
大成功
🔵🔵🔵
疋田・菊月
うーむ、レース競技ですかー
私は歩兵ですから、本来は走り回るのが得意なのですが……
いえいえ、私の戦場は接客
なればこそ、給仕の道を示しましょう!
さあ、輜重車輌はるちゃんの出番ですよ
デリバリー用なので、ユーベルコードと併用してなんとかでしょうかねー
運転テクはないので……カミオさん、コースの誘導を
魂、果たして私に魂があるのか……
それでも、お客さんに笑顔をお届けするために
たとえ私が、風のようになったとしても、私が居たことを覚えていてほしいのです
ウィリアムさん
貴方も、自分らしさを貫いたからこそ、死して尚も速さを求め続けているはず
私の風を、貴方にもお見せしましょう
光量子砲後方斉射、ラストスパートです!
「魂、果たして私に魂があるのか……」
ローグに追いつこうとする疋田・菊月(人造術士九号・f22519)がそう呟く。もうすぐローグに追いつこうというところだが、どこか汗が出てきているのは気のせいか。
「私に魂があるのかはわかりません……ですがそれでも、お客さんに笑顔をお届けするために……たとえ私が、風のようになったとしても、私が居たことを覚えていてほしいのです」
言いながらローグに並ぶ菊月とその愛車たる輜重車輌『はる』。
「ウィリアムさん――貴方も、自分らしさを貫いたからこそ、死して尚も速さを求め続けているはず」
『……どうだかな……』
「自分らしさを貫いているからこそ、アルカディア・エフェクトの後継者に私達を見出そうとしているはず」
『……』
あくまで無言のローグ。興味がないとでもいうのか、それとも――そんな様子にしびれをきらしたか、菊月の傍からクロウタドリのような悪魔が出てきた。
『おみゃー、こいつがどんな思いで、どんな苦労をしてここにおるかわかっとんのか!? おみゃーにはわからんかもしれんけど、今こいつは命を削りながら走っとるんじゃ!』
時間はレース前に遡る。
「うーむ、レース競技ですかー。私は歩兵ですから、本来は走り回るのが得意なのですが……」
『ならなんでこの依頼志願したんだで』
クロウタドリの悪魔にして相棒であるカミオが呆れたように声を出す。だが菊月はプラス思考。
「いえ、解釈を変えましょう。私の戦場は接客。なればこそ、給仕の道を示すのが使命だと!」
その考えにカミオはため息をついた。
『あーあ、こうなると止まらん。もう好きにしたらええ……』
というわけでレースに参戦することにしたのだが、彼女が出したのは、
「さあ、輜重車輌はるちゃんの出番ですよ!」
『いやそれデリバリー用じゃにゃーか!』
「ええ、なのでユーベルコードと併用して何とかですかね。クロックアップ・スピードでいいでしょうかね」
『……おい、それ、確かデメリットが』
「運転テクはないので……カミオさん、コースの誘導を」
『はぁ!? なんで私がそこまでせにゃああかんのだ! レースなんだで自分で判断しろ!』
とは言いつつも、意気揚々と『はる』に乗り込んでグリッドへ行く菊月を見て、カミオは嘆息した。クロックアップ・スピードは確かにスピードは上がる、だが――解除するまで毎秒寿命を削るデメリットがある。
カミオは彼女の使役する悪魔だ。彼女が死ぬことは――本意ではないまでは言いすぎだが――どうにも寝覚めが悪い。
『……今回だけだでな』
カミオが菊月の肩に乗り、羽を広げる。それに優しく微笑む菊月が指を鳴らした瞬間、彼女の電極に『あの日魂が覚醒した時』のような感覚がして――スピードの世界へ彼女は誘われた。
……己が寿命を、コード中――即ち、このレース中ずっと削っていく犠牲と共に……!
『マシンを見ぃ! こんなの到底おみゃーのそれに対抗できるものではにゃー! |こいつ《菊月》の力で無理にここまで戦わせとるだけじゃ! それにこいつはもういつ「風にな」ってもおかしにゃーようなもんなんだで! それに対してなんとも思わん言うのか!』
熱弁するカミオ、それをそっと撫でる手。それは紛れもなく菊月のものだった。
「……ありがとうございます、そこまで言ってくれて。ですが、ここまで言ってまだウィリアムさんが無反応なら、もうそれは行動で見せるしかないでしょう」
『……おみゃー、まさか』
「ええ、ウィリアムさん……」
菊月が構えたのは、光量子砲。
「私の風を、貴方にもお見せしましょう」
構えた光量子砲を菊月が後方斉射して一気にスピードを上げる! レースも残りわずかというところで、黒い炎をぶっ飛ばしていくようなラストスパートをかけてきた!
この様子にローグが一人呟く。
『……勝利への執念、意地、だがそれだけではない……他の者達と同様、魂を削ってでも輝かせる……それにそのうえで――』
ローグの瞳に残る、菊月の笑顔。どう見ても無理をしているはずなのに、汗をかいているのはわかっているのに。嗚呼、なんで彼女の顔はあんなに笑顔なんだ。
『――他の者にそれを悟らせない、普段通りだと思わせる、その「魂」……』
ふっ、と嘆息した。
気づけばゴールまであと僅か、長いようで短いレースの幕が閉じようとしている。
そのゴールを、最初に通り過ぎたのは。
『私の――』
ローグ――
――ではなく。
『負けだ……』
菊月、だった。
『しゃああ! 見たか! これが我々の魂じゃあ!』
「カミオさん、あの、その辺で……」
カミオが暴れようとするのを息も絶え絶えで体もふらふらな中ピットに向かう菊月。やがて周回遅れでゴールしたロジャーを含め今回参加した猟兵達がゴールをして集ってくる。
『……いいものを見せてもらった……』
レースの疲れを休めている猟兵達の前にローグが姿を現した。
『認めよう、君達は強い……命ある者達が纏いし時のみ光輝くこの力――アルカディア・エフェクト。今こそ、君達に伝えよう……』
そして、ローグから伝授されたアルカディア・エフェクト。
これが『覚醒』するのは、果たしていつになるか――それを知る者は、まだ、どこにもいない。
成功
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