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幸せ、重ねて

#アリスラビリンス #ノベル #猟兵達のクリスマス2023

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ラフィ・シザー



アリア・モーント
ラフィお兄様(f19461)と
『🍩』

関係性/お兄様。血の繋がりなんてそこまで重要ではないのだわ
相手への印象/優しくて気配りの出来るお兄様

ラフィお兄様とリースを作るのよ?作るのだわ!
食べられるのならお茶会にも飾ることができるもの、とっても素敵ね、お兄様

どれも魅力的だけれど……今回はバームクーヘンがいいのだわ!
きらきら星のアラザン、飴細工のリボン、砂糖菓子のお花
まぁ、ラフィお兄様とわたしなのね?わたしたちなのだわ!

大切な家族、大事なお兄様
これまでがなくても、これからをバームクーヘンの層みたいに家族で重ねていけばいいのだわ?



 キラキラと流れる涼し気な川はソーダ水。クラッカーで出来た橋を渡り、チョコレートの石畳を進み、カステラの丘を越えると、目の前に広がるのは色とりどりの砂糖菓子の花が咲き乱れる花畑。そんな甘い香りが漂う花畑の真ん中には、お菓子の家が建っている。クッキーで作られた壁と、ストロベリーチョコレートで飾られたピンク色の屋根。ウェハースの扉を開けて中に入れば、テーブルやイスなどの家具もぜーんぶお菓子で出来ていた。

「アリアと一緒にリース作りをするのにはぴったりな場所だな♪」

 感心した様子で部屋の中をぐるりと見回し、黒いウサギの耳をぴょこんと立て、ラフィ・シザー(【鋏ウサギ】・f19461)は嬉しそうに大切な『妹』に笑顔を向ける。
 大好きな『兄』と一緒に過ごすクリスマスがとても嬉しくて、アリア・モーント(四片の歌姫・f19358)も満面の笑みを浮かべ、大きく首を縦に振った。

「ええ、ラフィお兄様とリースを作るのよ? 作るのだわ!」
「リースっていってもただのリースじゃないぜ――今日作るのは、『食べられるリース』だ」

 ラフィはパチリとウィンクを決め、「|この世界《アリスラビリンス》らしいと思わないか?」とアリアに笑いかける。
 まぁ! と驚いていたアリアも、パッと手を合わせてニコニコと楽しそうに目を細めて口を開いた。

「食べられるリースならお茶会にも飾ることができるもの、とっても素敵ね、お兄様」

 ――そう、|ここ《アリスラビリンス》にはお菓子の家だってあるのだから、クリスマス・リースだってお菓子でいいに決まっている。

 リースを作り始める前に、ラフィとアリアは紅茶を飲んで一休み。
 まずはどんなリースを作るかを決めなくてはならない。ラフィは手に持っていたカップを音を立てないようにソーサーに置くと、腕を組んで考え込む。

「さて……二人でどんなリースを作ろうか?」

 丸くてリース作りに使えそうな食べ物といえば……ドーナツ? それともバウムクーヘン? パンというのもいろいろアレンジがきいて面白そうだ。

「アリアはどれで作るのがいいと思う?」
「そうねぇ……」

 顎に人差し指をあて、アリアは暫し考えを巡らせる。ドーナツを可愛らしくデコレーションする? ラフィお兄様と一緒にリースみたいなパンを作ってみる? 他にはないかしら……? どれも魅力的に思えるけれども、アリアが一番心惹かれたのは……。

「今回はバウムクーヘンがいいのだわ!」

 バウムクーヘンといえば、時間をかけて何層にも重なっていく年輪になぞらえて、『繁栄、長寿、長いお付き合い』というおめでたい意味合いも持つ縁起の良いお菓子。ラフィと一緒に作るリースにもピッタリではないか、とアリアは考えたのだ。
 ラフィはというと、アリアが選んだものに異論などあるわけがない。
 早速、バウムクーヘンを使ったリースのデザインをあれこれ考えているアリアを見ているだけで、ラフィは満足しそうになったが、まだ何も始まっていないと気づき、苦笑いを浮かべる。
 ――二人の楽しい時間は、まだ始まったばかり。

 ラフィとアリアは残っていた紅茶を飲み干すと、リースのベースとなるバウムクーヘン探しへと出かけることにした。このお菓子の家から少し歩いた先にバウムクーヘンの森があったので、リースにぴったりなものをそこで調達すればよいだろう。
 二人は、リース用のバウムクーヘンを探しながら、デコレーションに使えそうなお菓子も一緒に探すことにする。何しろここにはお菓子は何処にでもあるので、好きなものを選び放題、食べ放題。
 リース作りの材料探しをするだけのつもりだったのに、あっちにフワフワのマシュマロの雪を見つければ、思わずパクリと頬張り、こっちにグミのキノコがあると気づけば、両手いっぱいに抱え込み。あれもこれも、気になるものを見つけては、齧って、舐めて、味見をして。アリアが持ってきた籠が飾り用のお菓子やフルーツでいっぱいになった頃には、二人のお腹もいっぱいになっていたのだった。
 お菓子の家へと戻って来たラフィとアリアは色違いのエプロンを身に着け、リース作りの準備は万端といった様子で台所に立つ。
 今回のリースのベースとなるバウムクーヘンは、森の古い切り株を程良い厚さに切ったものを使うことにした。
 まず最初に、湯煎で溶かしたホワイトチョコを丁寧にバウムクーヘンに塗っていく。バウムクーヘンが見えないように、チョコレートは惜しまずたっぷりと。
 ラフィとアリア、二人のリースということもあり、少し大きめな切り株を選んでみたが、手分けをすればチョココーティングもあっという間。そして、チョコレートを塗り終えたら、チョコが乾かないうちにデコレーションを始めなければいけない。

「砂糖菓子のお花を飾って、その隙間を縫うようにリボンで彩るのだわ!」

 早速、飴細工で作られた繊細なリボンが割れぬように細心の注意を払いながら、アリアは丁寧にリースを飾り付ける。
 その傍らで、ラフィはナッツを使って松ぼっくりを作ると、アリアが飾った甘い砂糖の花の横にそっと並べた。そして、ギザギザした柊の葉に似た抹茶味のクッキーにフルーツをあしらうと、まっしろなリースに彩を添える。
 そこに、アリアがキラキラと光る小さなアラザンをパラリと降りかけた。小さなキラキラ星の煌めきに包まれ、ラフィとアリア、二人だけのリースが完成した――かのように見えたけれど。

「……最後にこれを飾らないとだな」

 そう言ってラフィが取り出したのは、小さなマジパン人形たち。その人形を見たアリアは、目を丸くして息を飲む。その次の瞬間、ふわふわの甘い笑みを浮かべ、ラフィの腕にギュッとしがみついた。
 ――だって、そのマジパン人形は、黒いウサギと、赤い髪の女の子だったから。それは、すなわち……。

「ラフィお兄様とわたしなのね? わたしたちなのだわ!」

 はしゃぐアリアに見守られながら、ラフィはリースの一番目立つところに人形を飾る。
 二人仲良く並んでちょこんと座る姿は、仲良し兄妹の姿そのままで。
 嬉しそうに人形を見つめるアリアの頭を優しく撫でながら、ラフィは幸せな時間を噛み締めていた。

「ラフィお兄様? どうかしたのかしら?」

 ちょこんと首を傾げて見つめるアリアに、ラフィは「何でもないよ」と笑いながら答える。
 ただ、こうしてアリアと過ごすクリスマスがとても楽しくて、幸せで。……そして。

「――やっぱり、アリアは『家族』だなって」

 血は繋がっていないし、来歴だって定かではない。それでも、アリアはラフィの大切な『家族』だ。
 しみじみと呟くラフィを見つめ、アリアは「あら」と意外そうな声をあげ、鈴を転がすような声でころころと笑った。

 「これまでがなくても、これからをバウムクーヘンの層みたいに『家族』で重ねていけばいいのだわ?」

 屈託のない笑顔の花を咲かせるアリアに、ラフィはそうだな、と顔を綻ばせて大きく頷いた。
 アリアと過ごす時間は、まだまだあるのだから。
 これからも、このバウムクーヘンみたいに、二人の幸せを、幾重にも重ねていこう、と――。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月19日


挿絵イラスト