バトル・オブ・オリンピア⑭~エンド・オブ・スピード
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「皆様、おいでくださりありがとうございます。『バトル・オブ・オリンピア』にて予知を致しましたので、お知らせをいたします」
フェイト・ブラッドレイ(DOUBLE-DEAL・f10872)は、自らの呼びかけに応じた猟兵にそう礼を述べると、緑色の左目をきらりと光らせて自らの予知を語り始めた。
「皆様に向かっていただきたいのは『レース・フォーミュラ「ウィリアム・ローグ」』の元。アスリートアースに存在する「ローグ・ファクトリー」です」
かつてアスリートアースにて、F1、バイク、エアレースなどというあらゆるモータースポーツの頂点に到達した伝説のレーサーが存在した。死を厭わぬまでに速さに固執した彼は不慮の事故により還らぬ人となったが、レース・フォーミュラとしてここに復活したのである。
「“速さ”を極めた彼が生涯の果てに得たのは、何の因果か『アルカディア・エフェクト』の能力でした。彼は自らが開発したエアカー『ローグ・インターセプター』を操り、触れたものを消滅させる雲海『アルカディア・エフェクト』を機体から噴出させながら襲い掛かってきます、ですが……」
ウィリアム・ローグに、そしてアルカディア・エフェクトに立ち向かった者は、「アルカディア・エフェクトの後継者」になる。そう少年の予知は語ったのであるという。
「勿論、いますぐに『アルカディア・エフェクト』を使用できるわけではありません。いずれ覚醒することがある……というところでしょうか」
ウィリアムの開発した『ローグ・インターセプタ―』はドリルや銃器などを満載している。そしてウィリアムは超高速の絶対先制攻撃を放ってくるのだと、少年は告げた。
「これはレース勝負ではありません。故に命のやり取りに長けた皆様の出番です。超高速の先制攻撃に対処する必要はありますが、スポーツの決まりごとを守る必要性は全くなく、直接戦闘でウィリアムを撃破する必要があります」
エアカー『ローグ・インターセプタ―』からの触れたものを消滅させる「アルカディア・エフェクト」の噴出への対策。そして、レース・フォーミュラであるところのウィリアム・ローグ本人の繰り出してくる超高速の先制攻撃への対処。どちらも容易くはないが、それさえ抑えれば戦いは格段に楽になるであろうと少年グリモア猟兵は言う。
「ウィリアム・ローグは富にも栄光にも興味を示さず、ただ速さだけを追い求めた究極のレーサー。彼が『スピードの向こう側』に至ったのが死の果てというのは皮肉なものですが、彼は|猟兵《みなさま》を殲滅するために攻撃してくるのではなく……そう、自らの至った、何者にも追いつけない『アルカディア・エフェクト』の力を『伝える相手』を探し求めている様子」
ですから遠慮なく戦いを挑み、自らこそが相応しいと名乗りを上げるのも良いのでは?
そんなことを言ってのけた少年は、転移の門を開きながら猟兵たちに告げる。
「転移は僕が承ります。ですので皆様は、何にも憂うことなく本気で戦ってきてくださいませ」
そうして少年は、綺麗な綺麗な笑みを浮かべるのであった。
遊津
遊津です。アスリートアースの戦争シナリオをお届けします。
レースとかなんにもわかりません。ので普通に|戦《ころしあ》って下さい。
ボス戦一章構成、難易度は普通となっております。
当シナリオには以下のプレイングボーナスが存在します。
※プレイングボーナス……敵の超高速先制攻撃に対処する/アルカディア・エフェクトの噴出に対処する。
「☆注意☆」
マスターがレースについて無知であるため、検索しても出てこないレース用語はまったくわからず描写できないことがあります。
そのためこちらはレースを行わない純然たる戦闘シナリオとなります。
レース勝負目的のプレイングは採用できない可能性があります。あらかじめご了承ください。
「戦場について」
アスリートアースに存在する無人のサーキットです。舗装された地面、それ以外は芝に覆われています。観客席がありますが、観客はいません。
レースに必要な設備は全て取っ払われており、戦闘の邪魔になるもの、人はなにもありませんしいませんが、同時に戦闘に利用できそうなものもほとんどありません。それでも何かを利用する場合、「何を」「どうやって使うか」明記していただけたら指定されたものがあったことにします。
サーキットは屋外であり、太陽光が降り注いでいます。天気は快晴であり、暗闇ではありません。
開けた場所であるため、大規模攻撃を行うことも空中戦を行うことも邪魔されることなく可能です。
「レース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』について」
富や栄光をかなぐり捨て、速さだけを追い求めた究極のレーサーです。
死後、ついに『スピードの向こう側』たる何者も追い付けぬ『アルカディア・エフェクト』に至り、その力を伝える相手を探し求めています。
猟兵がユーベルコードを使うよりも先に超高速の先制攻撃を行ってきます。先制攻撃の発動タイミングは「猟兵がユーベルコードを使用する」より前としますので、技能やアイテムの使用による何らかの準備行動やウィリアムとの会話は可能です。
こちらの戦場ではレースではなく自身が手に入れた「アルカディア・エフェクト」を受け継ぐものを見つけるため、触れたものを消滅させる「アルカディア・エフェクト」を使用してきます。
このシナリオに参加して成功以上の結果を出した場合、「アルカディア・エフェクトの後継者」となります。(すぐに使用できるわけではありません。いずれ覚醒することがあるということなります)
猟兵がユーベルコードを一切使わず、技能とアイテムだけで攻撃した場合でも先制攻撃は行ってきます。ユーベルコードを使わない事=先制攻撃の対策とはなりません。
当シナリオのプレイング受付開始は、このシナリオの公開から即時となります。
シナリオの公開時間によっては上記タグやマスターページに受付中の表記がないことがありますが、公開されていればプレイングを送って下さって構いません。
諸注意はマスターページに書いてありますので、必ずマスターページを一読の上、プレイングを送信してください。
また、送られてきたプレイングの数によっては全員採用をお約束できない場合がございますので、あらかじめご了承ください。
それでは、皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『ウィリアム・ローグ』
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POW : アルカディア・エキゾースト
レベルm半径内を【アルカディア・エフェクト】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【何者にも縛られぬ風】で加速、もしくは【置き去りにされた過去の光景】で減速できる。
SPD : ブラック・インフェルノ
【レーシングマシン】から、戦場全体に「敵味方を識別する【漆黒の炎】」を放ち、ダメージと【強制進化】の状態異常を与える。
WIZ : ヴォイド・リフレクション
【超加速能力】を宿した【車載兵器からの一斉砲撃】を射出する。[車載兵器からの一斉砲撃]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
イラスト:秋原 実
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
空桐・清導
SPD
アドリブや連携も大歓迎だ
「とんでもないマシンを持ち出してきたな!
超イカしているぜ!ぜひとも乗せて貰いたいが、
そうも言ってられないか!!」
光焔と[オーラ防御]を身体に纏わせて向きあう
「勝負だウィリアム!
アルカディア・エフェクトは必ず受け継がせてもらう!」
超スピードで雲を纏っているならば、
動きの軌跡は多少見やすくなる
更に早すぎるが故に曲がるのにも距離が必要だ
攻撃を勘と[根性]で避ける
漆黒の炎は避けられないから[気合い]で耐える
強制進化はブレイザインが分析して[限界突破]のエネルギーに変換
先制攻撃を捌いたらUC発動
極光を収束させてウィリアムを討つ!
「じゃあな最速。アンタの技、無駄にはしない!」
●
「とんでもないマシンを持ち出してきたな!超イカしてるぜ!」
空桐・清導(ブレイザイン・f28542)は、ウィリアム・ローグの作り上げたエアカー「ローグ・インターセプター」を見るなり目を輝かせてそう叫んだ。仕方がない。モンスターマシンはいつだって少年の心をときめかせるし、男はいつだって心は少年だ。
「ぜひとも乗せてもらいたいが……くそぉ!!いーなー!!乗りたいなー!!」
『フッ、|理解《わか》るかボーイ。このマシンの“良さ”が』
「ああ……最高にイカしてるぜ……!」
『だが乗せるわけにはいかない。なぜならコイツが今から『アルカディア・エフェクト』を振り撒くからだ』
「だよなあ!」
清導は輝ける炎「光焔」を纏い、その上から防護の光を纏ってウィリアムに、そして「ローグ・インターセプター」に向き合う。ドルルルルとエンジン音を響かせたローグ・インターセプターは|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》を撒き散らし始める――。
「勝負だウィリアム!アルカディア・エフェクトは必ず受け継がせてもらう!」
超スピードで疾走しながら|雲海《アルカディア・エフェクト》を撒き散らすローグ・インターセプター。清導が見出した攻略法、その要は『ローグ・インターセプター』が超速で雲海を纏っているその一点にある。
(超スピードで雲を纏っているのならば、動きの軌道は少しは見やすくなる……!それに、あのマシンは「|超速《はや》すぎる」。曲がるのにも距離が必要だ……!)
超高速でアルカディア・エフェクトを噴き出しながら突進してくるモンスターマシン「ローグ・インターセプター」は前面に取り付けられたドリルを高速回転させながら清導に向かって突進してくる。そしてウィリアム・ローグはそのモンスターマシンからサーキット場全体に漆黒の炎を放った。清導はローグ・インターセプターの軌道を読みきってアルカディア・エフェクトとモンスターマシンの突進を勘と根性でギリギリ避けきる。しかし、戦場全体に撒き散らされた漆黒の炎までは、避けることはできない!
「く……っ……!耐えろ、耐えろ、耐えろ……!」
炎に炙られる機械鎧の中、生身の清導は蒸し焼きになりそうな灼熱を|魂の熱量《気合い》だけで耐え続ける。そうしている間にも漆黒の炎が持つ『強制進化』の力が清導を蝕んでいくのを、「“超鋼真紅”ブレイザイン」は分析し続け、エネルギーに変換する。そして灼熱の中、清導は自身の限界を、人間が生きていく為に無意識に掛けているリミッターを外す。
「げほっ、がっ……!」
喉奥から鉄錆の味がして、咳き込んだ拍子に赤黒い血の塊がマスクの内側に貼り付く。変換されたエネルギーが清導の肉体を巡り、筋力を強化する代わりに内臓を犠牲にしたのだ。限界を超えることに代償が伴わない筈がない。眼球の毛細血管が切れて、目の前が赤く染まる。耳の奥でぶちぶちと末端神経が断裂する音が聞こえる。それらを代償に、ブレイザインが分析・解析した強制進化のエネルギーは確かに清導の力になっていた。
漆黒の炎の中、真紅の機械鎧は膝をつかない。
「“煌めく光輝を身に纏い、ブレイザインは進化する……!!」
清導の全身が、真紅の機械鎧が、紅のヒーローブレイザインが、漆黒の炎の中で白き光を放つ。それは悪しき者の五感を灼く燦然たる正義の炎。純白の極光は漆黒の炎を飲み込み、収束し、ウィリアム・ローグへと向かっていく!
「じゃあな最速、アンタの技、無駄にはしない!――“コイツがぁっ!!ブレイザイン・ブリリアントシャインモードだァァァァ!!!”」
白い極光が、レース・フォーミュラの全身を撃ち抜いた――!!
大成功
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数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】
動員数0の大観衆、か……良いね、悪くない。
これからおっぱじめる事を考えれば、さ。
ウィリアム、アタシゃアンタに敬意を払わない理由がこれっぽっちもないんだ。
偉大なる伝説、スピードの向こう側を見た男。
だからこそ全力で挑まなきゃ、嘘ってもんだよなァ!
宇宙カブに『騎乗』し、サーキットを駆け巡りながらアルカディア・エフェクトと一斉砲撃に対して『カウンター』の『衝撃波』を放って吹き散らし、できるだけ相殺するよ。
そうして運転と操縦に集中しつつも、サイキックエナジーを練り上げて全力で解放し、【闇払う旋風】を巻き起こす!
ウィリアムともども、空にいる連中はクラッシュしないよう気を付けな!
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其処はアスリートアース、レース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』の拠点「ローグ・ファクトリー」。
此処は無人のサーキット場だ。グリモア猟兵はそう予知した。観客席はあるが、観客はいない。そう言った。けれど、数宮・多喜(撃走サイキックレーサー・f03004)の耳には違うものが聞こえていた。それは大歓声。生前の、いや死後も伝説となったウィリアム・ローグを愛した人々の「想い」、|ファン《熱狂者》の情熱だけが歓声となって、サーキット場を埋め尽くしている。
「……はは、」
その「愛」に、多喜は気圧されることなく唇の端を釣り上げた。
「愛されてんじゃないか、ウィリアム」
『ああ、喜ばしいことだ。嬉しくて泣きだしそうだよ』
「動員数ゼロの大観衆か、……いいね、悪くない。これからおっぱじめる事を考えれば、さ」
『――覚悟はいいか?』
ドルルン、とウィリアム・ローグの傍らのモンスターマシン「ローグ・インターセプター」のエンジンが興奮した馬が鳴くようなエンジン音を立てる。ウィリアムは愛馬を落ち着かせるようにその車体を撫で、フルフェイスマスクの下からギラリとした視線を多喜に寄越した。
|スピードの最果て《エンド・オブ・スピード》で「アルカディア・エフェクト」に辿り着いた男。そんな男に、多喜は刃を交える前の最後にと言葉を紡ぐ。これだけは言っておきたかった。自分は既に彼の敵としてここにいる、けれどそれでも、彼は多喜のことを「自身の後継者候補」として見ていてくれるのならば――。
「なあウィリアム。アタシゃアンタに敬意を払わない理由がこれっぽっちもないんだ。偉大なる伝説、スピードの向こう側を見た男。……だからこそ!」
――全力で挑まなけりゃ、嘘ってモンだよなァ!!
多喜は宇宙カブに騎乗し、アクセルをベタ踏みする。「|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》」を撒き散らしながら多喜へと向かって最高速度、最短距離で突っ込んでくるローグ・インターセプターは超加速能力を有している。マジかよこの上まだ速くなんのかよと心の中だけで中指を立てた。「コース上を走る」その最低限の決まり事すらローグ・インターセプターには枷にしかならない。故に、芝もコースも関係なく激走するモンスターマシンは、その車体から一斉砲撃を多喜と宇宙カブに向かって吐き出した。【ヴォイド・リフレクション】、その一斉砲撃は149回までの加速・減速・軌道変更を可能にする。――たとえ空に逃げても、砲撃は追ってくる、ならば!!
多喜は自らを追ってくる砲撃の雨霰に向かって衝撃波を放つ。相殺しきれなかった弾丸が多喜の頬すれすれを掠め……そして軌道を変えて180度ターンして背中から穿ちに来るのを、もう一度衝撃波でもって相殺する。衝撃波は多喜自身を消滅させようと手を伸ばしてくるアルカディア・エフェクトをも散らした。宇宙カブの運転と操縦に集中しながら、多喜は自らの中のサイキックエナジーを練り上げてゆく。そして、宇宙カブの浮力でもって空中に浮きあがり、叫んだ。
「“アタシの全力、舐めるんじゃねぇよ!”」
【|闇払う旋風《サイキネティック・ストーム》】。サーキット場全体に極限まで増幅されたサイキックエナジーの嵐が巻き起こる。吹き荒れる嵐は多喜にサイキックオーラによる鎧を、宇宙カブにオーラによる武装を与え、そして戦場全体の敵を嵐で翻弄する!
ウィリアムをサイキックエナジーの嵐が襲う。嵐に飲まれて右往左往する|ファン《熱狂者》たちの声に向かって、多喜は声を張り上げた。
「――空にいる連中!クラッシュしないよう、気をつけな!!」
大成功
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宇宙空間対応型・普通乗用車
スピードの向こう側か
速さより安定を取る|普通乗用車《オレ》とは異なる哲学だが…
それが乗客の安全に繋がる防衛力になるなら、受け継ぐのもいいかもな
ということでエンジン全開で吹かしてスタートダッシュ!
しょっぱなから最高速で敵の攻撃を回避しつつ逃走させてもらうぜ!
なにいきなり逃げてんだって?
まぁすぐ反撃するから慌てなさんな
まずオレには【地中走行モード】というのがあってだな?
地中に潜ることができてだな?
アルカディア・エフェクトも地中まで影響するとは思えなくてだな?
そのまま地中から襲撃してその勢いでまた潜ってだな?
後は好き放題やり放題の掘り放題って寸法なわけだ!
ヒャハハァ!穴だらけにしてやるぜぇ!
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「スピードの向こう側か。速さよりも安定を取る|普通乗用車《オレ》とは異なる哲学だが……」
(それが乗客の安全に繋がる防御力になるなら、受け継ぐのもいいかもな?)
宇宙空間対応型・普通乗用車(スペースセダン・f27614)は思った。ウォーマシンなのである。スペースセダン、なのである。|宇宙《スペースシップワールド》生まれのイケメン車両、なのである。
陸海空、そして宇宙。あらゆる環境に対応し、どんな道でも乗客と運転手に快適な乗り心地を提供するのが信条だ。
『ほう。君は車そのものか。俺一人ではスピードを極められなかった。敬意を払うべき存在だ』
「だが、生身だったらアンタは死ななかったな」
『それは些事というものだ。どのみち速さを求めた俺はベッドの上では死なない覚悟は出来ていたさ』
「アンタとはどうも話が合わない。乗客を快適なままベッドまで送り届けるのが、俺の信条だからな」
――じゃあ、そういうわけで。
『あっ』
普通乗用車はエンジン全開でスタートダッシュを切る。つまり、ウィリアムの前から逃げた。話もそこそこに、最高速を出して逃走する。そう、|逃走《・・》である。おまえなにしにきたんだ、地の文さんが地の文に徹する役割を放棄してツッコミを入れた。ここの地の文さんはそういう性質なのでお目こぼし願いたい。
ウィリアム・ローグは瞬間逡巡するそぶりを見せたが、まあ素質のない奴はアルカディア・エフェクトで消滅するからいいかなとローグ・インターセプターを発進させる。ドルルルルン、と興奮した馬の鳴き声のような音を立て、モンスターマシンが触れたものを消滅させるアルカディア・エフェクトを撒き散らしながら普通乗用車の後を追いかけてくる。
「ああ、何いきなり逃げてんだって?」
そうだよ。地の文さんもびっくりだよ。なにしにきたのかな? もしかして特に勝算はないけどアルカディア・エフェクトを受け継ぎたいだけでここに来たの? 今からでも君を「却下」送りにしてあげようか?
「まあそう事を急くなよチャンネー、すぐに反撃するから慌てなさんな」
地の文さんを女の子扱いするんじゃないやい。地の文さんがそう言っている間にも普通乗用車のスピーカーから別の音声が聞こえる。
「“回転力よし!熱力変換効率よし!防圧防塵防熱性能まぁ多分よし!”――まずオレには、【地中走行モード】というのがあってだな?」
そうか。それはともかくそのへんが多分よしでいいのか? 君は乗客の安全が第一のスペースセダンじゃなかったのかな?
「それは些事というもんさ!」
普通乗用車はウィリアム・ローグと同じことを言った。もしかしてかっこいいと思った?
「うるせぇやい、つまりオレは|地中に潜ることが出来てだな《・・・・・・・・・・・・・》?」
――アルカディア・エフェクトも地中まで影響するとは思えなくてだな?
そう言った普通乗用車は自らに穿孔機・熱力変換型推進装置・防圧防塵防熱装甲を施して地中に消える。地面を掘り進み、180度のヘアピンカーブを描く。己を追いかけるモンスターマシンと地上と地中とですれ違い、もはや普通でも何でもなくなった普通乗用車はウィリアム・ローグを地中から地面を掘り抜いてきたドリルで抉り抜く。
『――グアッ……!?』
「ヒャハハハハァ!!」
ウィリアム・ローグはアルカディア・エフェクトを手に入れたとはいえアスリートだ。体をドリルで貫通されるような怪我を生前に負ったことがあったかどうか。あったかもしれないな。マシン事故の一度や二度くらい経験してそうだもんな。
『くッ、地中から来たか……!』
「おーっと、怖い怖い。じゃあまた潜りまーす」
そのまま地中潜行と地上に出ての襲撃を繰り返す普通じゃねえ乗用車。彼は思っていた。
(後は好き放題やり放題の掘り放題って寸法なわけだ!ヒャハハァ!穴だらけにしてやるぜぇ!)
ふーん、そうかそうかキミはそういうやつなんだな。地の文さんの声が普通乗用車に聞こえた。繰り返す。地の文さんの声がである。
「なんだよチャンネー、ここまで書いてオレっちを「却下」送りにする気かい? それは惜しいんじゃねえの? そもそも書き始める前にそういうのの分別ってつけとくもんじゃねえのかなあ!」
普通乗用車は地の文さんに言い返す。ああその通りだねと地の文さんは返した。完全に会話になっている。
普通乗用車。キミはこれまでにウィリアム・ローグと複数に渡って戦いを繰り返してきたみたいじゃないか。そんなにもアルカディア・エフェクトが欲しいのかな。まあいいよ後継者になるがいい。だが君は……「アルカディア争奪戦」には参加していないみたいじゃないか。
「それがなんだってんだ、参加するかしないかはオレの勝手だろう?」
勿論だとも。だから知らない君に教えてあげよう。
触れたものを消滅させる「アルカディア・エフェクト」というのはね、拒絶の「雲海」だ。もともとはそういうものなんだよ。それをウィリアムはローグ・インターセプターから撒き散らすようにしている。さて、今ウィリアム・ローグが手にしているアルカディア・エフェクトがどういう性質を持つかわかるかい?
「な、なにが言いてぇんだよ……? ここはプレイング通りにオレっちがウィリアムをボコボコのボコにする展開じゃあねえのかよぉ……!?」
地の文さんもそうしたかったさ、キミの|行為《プレイング》によって|ウィリアム・ローグを倒せる《必要成功数が満たせる》ならばね。だが現実はそうじゃないんだ。つまりね、まだキミのターンではウィリアム・ローグは倒れない。
先ほどの地の文さんからの問いかけの答えだ、宇宙空間対応型・普通乗用車。
アルカディア・エフェクトは雲海――すなわち、水蒸気である。地面を掘りまくった普通乗用車を追いかけるローグ・インターセプターは触れたものを消滅させる「水蒸気」を振りまきながら普通乗用車を追跡しようとしているが、ローグ・インターセプターには地上を走るという機能はない。だが、「雲海」――水蒸気にはどうだ。しかもそこに、他でもない普通乗用車が地中に逃れるために掘った穴と、ウィリアムを攻撃するために出て来た穴があるのなら――「触れたものを消滅させる」|アルカディア・エフェクト《水蒸気》は、そこから|侵入《はい》り込む!!
「ゲェェッ!?」
――そういうことさ、普通乗用車。
普通乗用車に地の文さんの声が聞こえたのはそこまでだった。アルカディア・エフェクトは確かに地中には入ってこない。本来ならばそうだった。だが、ほかならぬ普通乗用車が地面に穴をあけたことで、アルカディア・エフェクトが入れる道が出来てしまった。今、アルカディア・エフェクトは耽々と――アルカディア・エフェクト自身に意思などないのであるが――普通乗用車を地下から追いかけてきている……!
「地面掘ってる場合じゃねえ!!」
普通乗用車は飛び出した。諸共にぶち抜いてやるとウィリアムを狙ったドリルは寸前で躱される。とはいえ一方的な普通乗用車の地下からの攻撃によって、ウィリアムは決して浅くない怪我を負ってはいたが――
『よう、乗客の安全がポリシーのマシン。また会ったな』
「クッソがァ……」
普通乗用車は吐き捨てた。
スピードの為に安全を捨てた乗り手と、乗り手の安全を信念とするマシン。
我々の預かり知らぬところで。第二ラウンドが始まったのかもしれなかった。
大成功
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ロジャー・カニンガム
まるで|私の世界《サイバーザナドゥ》の|戦闘車《デスレース》ですね
ならば遠慮なく、こちらの流儀でやらせていただきます
スーパーカーユニット「D.A.T.T.ストライダー」に搭乗しての高速戦闘
先制攻撃と拒絶の雲海は《音響弾》による音圧や《砲撃》で生じた爆風と、《地形破壊》によってめくれ上がったアスファルトを盾にして少しでも遮断
防げなかった分は[スライディング][ジャンプ]の機動で回避
《索敵》でセンサーに捉えたローグ=サンが次に通過するであろう地点を予測
そこに向けてガトリングガン、キャノン砲、そして【誘導弾斉射】…
こちらが搭載するすべての火力を叩き込んでやりましょう
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「ふむ。そのマシン。なかなか趣がありますね」
ロジャー・カニンガム(兎型歩行戦車RIT-17/S・f36800)はローグ・インターセプターを見てそう感想を漏らした。ガッチガチにドリルやら銃口やらで武装したモンスターマシン「ローグ・インターセプター」はあらゆる少年と少年だった大人と少年の心を持つ者の心を擽ってやまない、そんな造形をしている。頭脳戦車であるロジャーもまた、少年の心を持っていた。
『ほう、この良さがマシンのアンタにもわかるかい? そいつは嬉しいことだな』
「ええ、|サイバーザナドゥ《私の世界》の|戦闘車《デスレース》によく似ています」
『む、そいつは俺にはよくわからないが……』
「ですので遠慮なく、こちらの流儀でやらせていただこうかと」
ロジャーは改造スーパーカー、もとい元スーパーカーだった頭脳戦車専用高速地上走行拡張ユニット「D.A.T.T.ストライダー」に騎乗、もとい自身を連結させる。同時にドルルルルンと興奮した馬の鳴き声のようなエンジン音がして、ローグ・インターセプターがロジャーに向かって最高速・最短距離で走り出す。シュウウウウと蒸気――否、触れたものを消滅させる「アルカディア・エフェクト」が機体から噴き出している。
(流石に速い……!もっと距離を取ってからこうしたかったのですが、仕方ありません!)
ロジャーは自らと連結した「D.A.T.T.ストライダー」から音響弾と砲撃とを同時に放つ。超高音と超低音の音圧の壁と砲弾の発射の余波で生まれた爆風がアルカディア・エフェクトを文字通り雲散させ、そして迫りくるウィリアムひいてはローグ・インターセプターからの【ヴォイド・リフレクション】――超加速能力を有した車載兵器の一斉砲撃の壁になる。そこで止まらなかった砲撃は、まだ合計138回の加速と減速、軌道変更能力を有したままロジャーに襲い掛かる!
「美しいサーキット場を壊すのは忍びないですが、これも業務!失礼を!」
対空戦闘の要領で空中に砲弾を打ち上げると、戦場に砲撃の雨が降る。それによってめくれあがったアスファルトを盾にして砲撃をやり過ごし、それでも防げなかった分を走り回り飛び回り機動戦闘に持ち込むことで躱す。そうしている間も頭脳戦車たるロジャーに搭載されたセンサーは索敵を続ける。
「捉えました、ローグ=サン!」
ウィリアムが次に通過するであろう地点を予測し、ロジャーはそこへ向かって背部ユニットに搭載されたガトリングガンからのガトリング砲、そして標準搭載のキャノン砲を発射する。
極めつけはロジャーの【|誘導弾斉射《ミサイル・サーカス》】。675本の追尾式ミサイルは、着弾する前に次々と爆発していく性質を持つ。ミサイル本体を超スピードで避けても、戦場全体に広がっていく誘爆から逃れることは難しい。
ロジャーがその身に搭載するすべての火力を叩きこんだそれからきっかり三秒後。危険区域から離脱したロジャーはカツラギ・アーマメンツ製の機械仕掛けの頭脳を激震させる。
「素晴らしい。今の攻撃で生身のあなたが四散していないこと、燃え尽きていないこと、その程度の損傷に留まっていること、すべて称賛に値します、ローグ=さん」
『生憎、爆発には慣れてる。速さを追い求めてると、マシンが事故ることも一度や二度じゃあなくってな』
そう言ったローグはにやりと笑う。さあ、続きを始めようか。
『安心しろ、君はきっと選ばれる』
アルカディア・エフェクトに。
「ならば胸を張ってあなたに餞を送るのが、次代からの礼儀でしょうか」
そう言ってロジャーは、ウィリアムに対して叩き込むことの出来る残り火力をどうにかひねり出す算段をその頭脳で計算し始めるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
カシム・ディーン
やれやれ…速さを追い求めるなら戦いなんぞナンセンスだろうが…だがいい
やるからには叩き潰してやる!
「その意気だぞ☆」
【情報収集・視力・戦闘知識】
之までのウィリアムの戦いの記録を確認
そしてアルカディアエフェクトの性質を分析
【属性攻撃・武器受け・念動力・弾幕】
風属性による暴風を展開させアルカディアエフェクトを吹き飛ばし
漆黒の炎を念動力で相殺
強制進化だけは受け入れる!
きついが…こなしてやるよ!
【二回攻撃・空中戦・切断・盗み攻撃・盗み・電撃】
UC発動
その速さ…超えてやる!
超絶速度で飛び回りメルシーとの鎌剣と太刀の超連続連携斬撃と電撃を叩き込む!
魂
生き抜く
生き続ける事こそ我が魂の在り方だ
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「やれやれ……速さを追い求めるなら戦いなんぞナンセンスだろうが……」
呆れた声で言うカシム・ディーン(小さな竜眼・f12217)。その腕には銀髪の少女が絡みついていた。
『それは少し訂正させてもらおうか、ボーイ。俺は速さを追い求めた末に『アルカディア・エフェクト』に至った。しかし俺は『アルカディア・エフェクト』は生きる者が活かすモノだと思っている。それゆえに猟兵、君たちを試すが……あらゆる世界の出身である君たち猟兵相手に|この世界《アスリートアース》流の試練だけを与えるのは不公平だと思っただけだ』
「まあいい。やるからには叩き潰してやる!」
「その意気だぞ☆」
『気になっていたんだが、そのガールはボーイのバディなのか?』
「…………」
「なんでそこで黙るの!? 運命だよね!?」
「Okey dokey,理解した。では、行くぞ」
犬に食われたくはないと両手を上げるウィリアム・ローグ。銀髪の少女――キャバリア「メルクリウス」の少女形態であるメルシー(愛称)はぷくぅと頬を膨らませる。それらを一切まるっと無視して、ウィリアム・ローグの作り上げたモンスターマシンはドルルルルと興奮した馬の鳴き声のようなエンジン音を立て、蒸気を噴き出しながら無人のサーキット場を最高速、最短距離でカシムらの元へと突進してくる。そのマシンから吐き出されるは、漆黒の炎。
(――解析開始。――完了)
カシムはこれまでのウィリアムの記録を確認し、そして即座に分析を終える。
(これ迄のウィリアムの戦いの記録――解析完了、「ウィリアム・ローグに、闘いの記録は|無い《・・》」、だと!?)
「――チッ」
思わぬ結果に舌打ちをして。だがカシムはこれまでの知識からすぐに考え方を変える。
(だが元々はアスリートアースのレーサーだ。まともに戦ったことなんざなくても仕方がないかッ? ……いや、レース・フォーミュラとしてそれはどうなんだ。奴はどうして猟兵にケンカを売ってきた? 戦いを挑むからにはそれなりの戦闘力と戦闘経験がある筈だ……解析、収集、理論を組成しろ、相手を見ろ!)
その思考速度たるや、モンスターマシンがカシムたちの元に届くよりも、マシンから吐き出された炎が戦場を覆い尽くすよりも速く。
(出た。今のウィリアム自身に戦闘能力はないが、一度死んだことによってちょっとやそっとじゃ斃せない――恐らくはオブリビオンと同じ属性の「存在力」を得ている。だからこそ複数回の戦闘を行わなければ奴は倒せない。そして、アイツは自身のマシンに戦闘能力を全振りしてる!)
「は、ピーキーなことしやがる。つまりは|AGI《アジリティ》全振りかよ」
(ならアルカディア・エフェクトの性質はどうだ……いや、考えるまでもない、俺は「|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》」を知っている)
カシムはアルカディア争奪戦の参加者だ。そしてかの戦争で「大空を覆うもの」とも刃を交えている。ならば、ウィリアム・ローグの至った「アルカディア・エフェクト」とは――。
(最初から、見えてる!あのマシンの吐き出す、|蒸気《・・》――|雲海《・・》、|雲《・》、|水蒸気《・・・》。……繋がった。だったら、あの蒸気に触れるのは、めちゃくちゃにマズい!)
|念動力《テレキネシス》に纏わせた暴風を展開させ、ローグ・インターセプターから噴き出すアルカディア・エフェクトを吹き飛ばす。そして、念動力でもってサーキット場を侵食する漆黒の炎を相殺し――けれど。
(何が出るかはわからねぇが、「強制進化」だけは受け入れる!)
ダメージだけを弾き飛ばし、状態異常を受け入れるカシム。「強制進化」。その言葉は強欲なカシムにとっては甘い蜜だった。しかし、次にカシムを襲ったのは全身を襲う激痛であった。
「ガァッ……!?」
キリンは何故首が長くなったのか。それは『進化』に纏わる議論のタネとしてよく使われる。UDCアースでは人間は類人猿、サルから進化したと言われている。ならば獣人前線の獣人たちはどうか。複数の世界を股にかける猟兵にしかわからぬ知見であるが、それが「適者生存」の結果であったなら。
サルを筆頭に、オオカミが、クマが、トラが、シカが、ウサギが、何らかの理由あって進化を迫られたとして――進化を果たして生き残り、人間という種に到達できたのが、UDCアースではサル、類人猿のみだったとしたらどうだ。
「強制進化」とは何か。カシム・ディーンはそれを考えただろうか。ウィリアム・ローグのユーベルコードによって引き起こされる|状態異常《バッドステータス》の「強制進化」とは、アルカディア・エフェクトに到達するために既存の生命を無理矢理に進化させるものであるとするならば!
「が、がががぎぎぎ、げぇええっ、がががああああ……!!」
カシムの口から要領を得ない単語が撒き散らされる。それは苦悶から出た叫びにもならない呻きであった。
「強制進化」が敵対者にお手軽な力を与えるものであるはずがない。カシムの肉体は進化しようとしている、恐らくはアルカディア・エフェクトを扱いこなせる肉体に。だが、その肉体の急激な変化に、カシムの本来の肉体が耐えられるのか。否である。そうであったなら、数多の世界の生命が「種族」の軛を失っている。
内臓が引きちぎられるような痛み。全身の筋肉がこね回され引きのばされ、進化先に適した形に変えられていく痛み。カシムが猟兵という生命の埒外の存在でなければ既に絶命していておかしくなく、そして猟兵であるがゆえに苦痛は続く。いっそ死んだほうが楽だとまで思えるような苦痛が、カシムの全身、神経、そして脳への信号となって襲い来る。それが「進化」を強制されたものに与えられる痛みであった。
けれど。
(俺は、「生き抜く」)
――カシムの魂は、生き続けるという意地にかじりついている。だからカシムは、そもそも猟兵という生命の埒外の存在であるカシムが普通の存在のように死ねるかすら不明であるが、死ぬことを自分に許さないし、意識を失うことも許さない。
(生き続けることこそが、我が魂のあり方だ――!きついが、こなしてやるよ……!)
――斯くして。「強制進化」を受け入れたカシムの肉体には、確かに何かが残った。それが何かは、今は語られる術を持つものではないが――
「……メルシー!」
「信じてたっ☆!!」
激痛を魂の意地でもって抑え込み、カシムは愛機の名前を呼ぶ。銀髪の少女はそれに付き従い、カシムと共に超絶速度でサーキット場を駆ける。
「“行くぞメルシー、魔力と思考をリンクさせろ!”」
「“ラジャったよご主人サマ♪メルシーとご主人サマのスペシャルアタック見せちゃうぞ☆”」
その飛翔速度、時速44700キロに届く。ウィリアムの元まで一気に肉薄した二人。メルクリウス少女形態の持つ|鎌剣《ハルぺー》とカシムの刀「|魔禍祓霆裏《まかふっていうら》『|神雷《じんらい》』」が超連続高軌道連携攻撃――高速の斬撃と電撃とを、幾度も幾度もウィリアムに叩き込み続けた――!
大成功
🔵🔵🔵
フィオナ・ウンベカント
助かるよ、こちらに合わせてくれて
スピードに自信がないわけじゃあないけれど、レースとなると素人だからね
拒絶の雲海、また厄介な物を…
ぼくのサイキックで生じた[衝撃波]や、フォースセイバーの[斬撃波]で吹き飛ばしてしまおう
更に[オーラ防御]を展開して漆黒の炎に耐え、UCを発動する!
ぼくが創造するのは究極のスピードも、全てを消し去る雲海だってものともしない無敵の|想像《イマジネーション》
過去をなぞるだけの|伝説《ゴースト》を塗り変える、最強の鎧だ!
ローグのマシンの動きを[念動力]でねじ伏せ、全力の[ランスチャージ]で貫いて見せる!
●
「助かるよ、こちらに合わせてくれて」
スピードに自信がないわけじゃあないけれど、レースとなると素人だからね。
フィオナ・ウンベカント(マスター・オブ・ジークヴァルト・f21922)はそうウィリアム・ローグに告げる。
『礼には及ばない。元より「アルカディア・エフェクト」は命あるものたちが纏った時にこそ光り輝く力だ。私のような死者には、本来無用の長物だ』
この戦いは、最初からウィリアムの猟兵達への「懇願」である。どうか力ある、命あるものこそが、この力を受け継いでくれ、と。
――だからこそ、全力で自分に挑み、越えられない者にやすやすと渡せない。それはウィリアムが死してなお高潔な心をもって力と向き合う人格であることをフィオナに伺わせた。
『すまないが、君を試させてもらう。行くぞ』
そうウィリアムが言うや否や、ドルルルルンと興奮した馬の鳴き声のようなエンジン音を轟かせ、ウィリアムが作り上げたモンスターマシン「ローグ・インターセプター」が発車する。最高秒速・最短距離でフィオナに迫るローグ・インターセプターは、噴射口から蒸気を吐き出し、その蒸気がサーキット場全体を覆う――だが、フィオナは気づく。蒸気は不自然に途切れていることを、ならば、それこそがユーベルコードの範囲上限。つまりこの噴出される蒸気こそが、
(|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》……!また、厄介なものを)
フィオナはその蒸気の正体にすぐに思い至る。元よりフィオナは、「アルカディア争奪戦」にてこの|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》の厄介さを骨身に染みて理解しているがゆえに――行動は早かった。サイキックによって衝撃波を放ち、フォースセイバーを振るって斬撃波を生み出して立ち込めた蒸気を吹き飛ばす。自らの体にオーラの防護膜を纏う。本来ならば彼女の行動を阻害するはずの「置き去りにされた過去」。それはフィオナの目の前で何かの像を結ぼうとして、けれど端から霧散していく。それは、彼女に過去の記憶がないからか、それとも。
フィオナはすぐにユーベルコードを発動させる。【アリスナイト・イマジネイション】。無敵の戦闘鎧を創造から想像する、信じる限り無敵の護りを与えてくれる力。
「ぼくが創造するのは究極のスピードも、全てを消し去る雲海だってものともしない無敵の|想像《イマジネーション》。過去をなぞるだけの|伝説《ゴースト》を塗り変える、最強の鎧だ!」
アルカディア・エフェクトに蝕まれぬようにと作り上げた|全身鎧《プレートメイル》はフィオナを白銀の騎士へと変える。その姿を見て、ウィリアムはヒュウと口笛を吹いた。
「そうだ。私という存在はもう過去なんだ。死者の私が自分の記録を更新してもむなしいだけだ。だから、このスピードの果てに得た力は生きる君たちが使うべきなんだ」
――継いでくれ。この|力《アルカディア・エフェクト》を。
フィオナの鎧はローグ・インターセプターから突き出された回転するドリルを耐えきり、そしてフィオナは地を蹴り駆ける、自らが力を示すべき相手――ウィリアム・ローグの元へと――
「はああああっ!!」
全力でチャージしたランスの一撃。美しき|白銀の槍《アリスランス》が、ウィリアムの心臓を穿ち抜いた――!
大成功
🔵🔵🔵
皇・絶華
速さが自慢の相手だぞ!私も速さには一家言ある
だから…挑むとしようか
「それなら俺の次元転移能力で」(黒髪少女)
それは流石に反則だろうさっちゃん
今回は応援していてくれ
速さならあれで挑むとしよう
という訳で挑ませて貰おう(チョコもぐもぐ
【戦闘知識・念動力・第六感】
念動障壁展開
直感を駆使して炎を回避やダメージ軽減
おお…これが進化か…力が漲ってくるぞ!
UC発動
【弾幕・乱れ打ち・空中機動・バーサーク】
超絶速度で飛び回りながらアルカディアエフェクトを回避し念動光弾を乱射
【二回攻撃・切断】
極限速度の世界の中で鎌剣で連続斬撃を叩き込む!
命さえ犠牲にして得られたものが之か
お前はどのような悟りを得たのだろうな?
●
「成程、速さが自慢の相手か!私も速さには一家言ある!」
『ほう?』
神機たる黒髪の少女を隣にした皇・絶華(影月・f40792)がそう言うと、ウィリアム・ローグは興味深そうにヘルメットの下でギラリと瞳を輝かせた。なおウィリアム・ローグのメットの下の詳細は不明である。何せ死を越えて来た男なので、ヘルメットの下の髑髏フェイスが|マジモン《本物》の顔だとしてもそうなのかー、としか。まあ眼球がない場合もワンチャンあるが、そこはそれ、比喩表現として受け入れていただきたい。
『君はNINJAか。マシンを使わずに身一つで高速移動ができると聞くぞ。実に興味深い』
「高速移動がしたいのか? なら俺の次元転移能力を使うといい」
黒髪少女が絶華とウィリアムとの会話に割って入る。ウィリアムは肩をすくめた。
「それは流石に反則だろうさっちゃん、今回は応援していてくれ」
「わかった」
素直に頷く黒髪少女、さっちゃん。
『本物のNINJAと話が出来る貴重な機会だったが……長い時間をとってはいられないようだな』
「そうだな、私はウィリアム、お前に挑むとしよう」
『ならば君がアルカディア・エフェクトを受け継いでくれると信じて、行くとしようか』
「あー、そうだな。アルカディア・エフェクトか。それがあったな。よし、先に聞いておこう」
『何かあるのか?』
「命さえ犠牲にして得られたものが其だというならば、お前はどのような悟りを得た?」
『悟り。ZENの言葉だな。……ふむ、それに答えるのならば「特に何も」だ』
「何も……? 何もなかった、だと?」
『ああ、私はアルカディア・エフェクトを目指してスピードに拘ったんじゃない。速さを追及していたら死んでいた。私の心臓が止まるのとマシンがクラッシュするのとどっちが先だったのかはわからないが。その結果、気づいたら至っていたのさ、このアルカディア・エフェクトに。失望したかな?』
もとよりここはアスリートアース。殺し合いでなく、競い合うことで高め、文明を発展させてきた稀有なる世界。ウィリアム・ローグはひたすら過去の己の出した最高記録を越えるために自らを鍛え上げて来ただけだった。
ウィリアム・ローグは競技者であり、求道者ではないが故に――死後アルカディア・エフェクトに到れたのは、恐らく偶然だった。
「ならば、なぜ猟兵に挑んだ!なぜ殺し合いをも構わないと言った?」
『|簡単なことだ《Piece of cake》。その方が、アルカディア・エフェクトを受け継ぐものへの門戸がより広く開かれる』
――これでいいか? では、行くぞ。
ウィリアムがそう言うと、傍らのモンスターマシン「ローグ・インターセプター」がドルルルルルルンと興奮した馬の鳴き声のようなエンジン音を響かせる。そして、最高速かつ最短距離で凶器だらけのマシンが白い蒸気を噴き上げながら絶華に向けて発進した。マシンから漆黒の炎が吐き出され、サーキット場全体を燃え上がらせていく。
「速さならあれで挑むとしよう……!」
自作の超高濃度カカオ・漢方配合の狂気のチョコレートを咀嚼し、自らの体を超強化した絶華は念動力の障壁を展開し、炎を回避してダメージを軽減する、が――。
(これだけはいただいていくとするか)
「強制進化」の|状態異常《バッドステータス》だけは受け入れる。
「おお……これが進化か……!力が漲ってくるぞ――が、ががががっ!?」
全身に力が膨れ上がる。そう感じたのは強化された神経が感じたほんの始めだけであった。いびつに膨れ上がる筋肉によって、神経が断裂する激痛が絶華を襲う。突然に発達した骨が皮膚を千切らんばかりに張り詰めるが、固くなった皮膚はそう簡単には突き破れずに、結果神経を傷つけて激痛が走る。胴体でも同じことが起こり、異常発達した骨と筋肉によって内臓が傷つけられ、赤黒い血液が絶華の喉から滝のように逆流する。
(痛い――痛いクルシイ、イタイイタイイタイ!!なぜこんなことが起きている!? 私は進化したはずではなかったのか!?)
混乱する絶華。しかしそれは当然の現象だ。ウィリアムのユーベルコードの「強制進化」はあくまでも状態異常だ。そもそも、絶華は猟兵ではあるが「地球人」だ。そしてアスリートアースの種族は全て「人間」だ。猟兵の種族は数あれど、例えばエンドブレイカー世界の種族がエルフとバルバ・ピュアリィ以外はすべてが「人間」であるように地球人であることと人間であることは殆どイコールである。進化によって急速に力を得られるのならば、地球人である|人間《ホモサピエンス》はなぜ40万年前から姿が変わっていない――進化していないのか。この姿が生存において最も適正であるからだ。そのように出来ているものを、「強制的に」進化させる「状態異常」を受け入れて、無事であれるはずがない。絶華は人間で――現状の地球人類で無くなることを、受け入れたのと同じことだ。
関節に無数に出来た不要な骨は人類の肉体には不要でしかないため、神経は激痛を訴える。しかし進化した肉体にはそれは必要不可欠なものかもしれない。自分の体がどうなるのかわからないブラックボックスを、力を得られるという判断だけで排除しなかったのだ、絶華は。
生命の埒外である猟兵が果たして死ねる存在であるのかすら不明であるが、しかし、そう――猟兵、生命の埒外の存在であるがゆえに絶華は一命をとりとめる。外見的には変化もない。けれど、絶華は確かに進化している。
「終わらせる……!終わらせるぞ……!“四門……『窮奇』……開門!!……グ……ガ……ガァァァァァ!!!!”」
時速148キロの世界で、絶華は理性を捨てた。自身の根源からこみあげる衝動だけに従い、戦場を飛び回りながら念動光弾を乱射する。理性を捨ててバーサーカーとなった絶華に、アルカディア・エフェクトがどこにあるか何であったかそもそも理解できたのか。バーサークした絶華は自分に向かってくるものすべてを外敵と見做して回避していたがゆえに、結論としてはまとめてアルカディア・エフェクトも回避していた、と言うほかない。
極限速度の中で飛び回り続け念動光弾を乱射し続ける、理性を失った怪物。それが今の絶華だ。敵も味方もない。ちょうど都合よく理性が働くなど、バーサーク状態では起こり得ないからだ。ここが無人のサーキット場で、ここにいるのが既に死者であるウィリアム・ローグと神機である黒髪の少女――サートゥルヌスでなければ、甚大な被害を出していたかもしれなかった。絶華が戦いの前にウィリアムに問うていたのもこれを見越しての事か。バーサークした絶華に、理性ある問いかけなどできる筈がなかったから!
時速148キロ。それは絶華の飛翔速度である。しかし絶華のユーベルコード【|四門『窮奇』《ぜっちゃんマッハモード》】の速度はそれにとどまらず、さらに三倍に加速して神器である鎌剣『ハルぺー2』が絶華の手の中に生まれる。極限速度の世界の中で、絶華はウィリアムをズタズタに切り裂いた――!
大成功
🔵🔵🔵
夜刀神・鏡介
相手はレースを極めた男。そいつとレースで戦うよりは、まだ勝ち目がある……か?
だが、車輌相手に徒歩で挑む訳にもいかない。バイク『八咫烏』に騎乗して、神刀の封印を解除
アルカディア・エフェクトの発生源は敵のマシンだから敵機体から距離を取るように走りつつ、斬撃波を放ち漆黒の炎を切り裂き回避
尤も攻撃範囲は広いし、ウィリアム・ローグもただ座している訳でなし
強制進化は、神気によって暫く抑え込めるだろうが
とにかくずっとは凌げないのだから、早々に反撃に移ろう……廻・弐の秘剣【金翼閃】を発動
複数の斬撃波で炎とアルカディア・エフェクトの雲海を切り裂き、残る斬撃痕で敵の走行を妨害
その間に接近して斬撃を叩き込もう
●
「ふむ、ひどく大層な戦いが繰り広げられていたようだな」
ずたぼろになったサーキット場にたどり着いた最後の挑戦者、夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)はサーキット場の主であるレース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』に言った。まだ間に合うか? そう尋ねたくなるくらいには、ウィリアム・ローグは満身創痍であった。
『オーケイさ、|ボーイ《少年》……失礼、|青年《ガイ》か。しかし君が最後のチャレンジャーのようだ』
ウィリアムはフルフェイスのマスクの下で笑ってみせた。そして、鏡介はウィリアムと相対する。
(相手はレースを極めた男。そいつとレースで戦うよりは、まだ勝ち目がある……か?)
車輛相手に徒歩で挑むわけにもいかないと、鏡介はバイク『八咫烏』に騎乗する。それはアポカリプスヘル製の大型バイク。鏡介が得意とする刀を握りながらでも動かしやすいように改造された逸品だ。そして鏡介は、神刀【無仭】をその力を封じる白鞘から抜き放つ。自身の生命を代償に、斬るべきものを斬る――覚悟は決めて来た。神刀より溢れ出す神気は、鏡介に限界を超えた力を齎す――。
『準備は出来たか? ならば行くぞ、ボーイ』
そうウィリアム・ローグが言い放つが早いか、ドルルルンと馬の鳴き声のようなエンジン音が轟き、白い蒸気を噴き出しながらモンスターマシンが最高速度・最短距離で鏡介の乗った八咫烏に接近してくる。漆黒の炎をサーキット中に吐き出しながら。
(流石に速い、だが――!)
アルカディア・エフェクトの発生源がこのモンスターマシン、ローグ・インターセプターであることはグリモア猟兵も言っていた。ならばマシンから絶えず噴出されるこの白い蒸気こそが「|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》」であることは間違いない。最高速度で疾走するマシンから距離を取るために全力で八咫烏を走らせながら、漆黒の炎を神刀から放つ斬撃によって斬り裂いた。そして鏡介は気づく。自身を追いかけるローグ・インターセプターに、ウィリアム・ローグが騎乗していないことに。
「何だって――じゃあ、ウィリアムはどこに……!?」
『私は逃げも隠れもしない。最初から最後まで、ここにいるとも』
「……嘘だろう!」
ウィリアム・ローグもただ座している訳でなし。そう思っていた鏡介は瞠目する。ウィリアム・ローグは。最初に鏡介と会話を交わした場所から、動いていない。
『簡単なことだ。私が乗ればそれだけ、そのマシンは遅くなる』
――アスリートアースは、人間が殺し合いでなく競い合うことによって文明を栄えさせてきた稀有なる世界である。
その最速レーサー――速さだけを追い求めてきた競技者であるウィリアム・ローグに、戦いの術はない。
あるのはただ速さへの絶えぬ欲求。その果てにたどり着いた「アルカディア・エフェクト」を、ウィリアムは死者である自分ではなく生きている|猟兵《たたかうもの》たちが使うべきだと言って、猟兵に戦いを挑んだのだ。彼のロマンと速度と戦う術は全てマシンに搭載されている。そして、ウィリアム自身が乗ればその体重分だけマシンが減速するというのなら。
『俺は乗らない。そういう結論に至った。それだけだ――俺の代わりに、インターセプターが戦う。それは俺と戦っているのと何が違う?』
事実、漆黒の炎を斬り裂いた鏡介は炎によるダメージこそ免れているものの、強制進化という状態異常を神気で抑え込み続けていた。
「ああ、この世界で普通に戦うのはやり難いな……!」
『すまないな。何せ全ての諍いは|競技《スポーツ》によって片づけられてきたからな、戦いの流儀を知るやつはそういない』
私以外の「フィールド・オブ・ナイン」ならば別かもしれないが、私は|レース《速さ》にしか興味がなくてね。
「……皮肉だな。そんなあなたが死の果てにアルカディア・エフェクトに至ったなんて」
『ああ、だから早いところ私でない誰かに受け継がせてしまいたい。こんなもの、この世界の死者には本当に無用の長物なのさ』
――それが君たちであることを、私は心から願っているとも。
そう言ったウィリアムを、鏡介は斬らねばならない。なぜなら彼は、既に死者だからだ。彼自身、在り続けることを望んではいないように見えた。
奥歯を噛むその瞬間も、戦い慣れた鏡介の腕は刃を振るい、八咫烏を駆け、モンスターマシンとそれが吐き出すアルカディア・エフェクト、そして弾丸を放ち続けるマシンからの攻撃を捌き続けている。
どちらにせよ。「敵の攻撃」は続いている。これをどうにかしなければ、始まってしまった戦いは終わらないのだ。
「“神刀解放。煌めき舞え、金色の翼”――|廻《かい》|・《・》|弐の秘剣《にのひけん》【|金翼閃《きんよくせん》】――!!”」
鏡介は神刀でもって剣技を振るう。金色の斬撃波がいくつも現れ、漆黒の炎と噴出され続けるアルカディア・エフェクトを斬り裂いて、その場に残るった翼の如き煌めく斬撃痕によって、モンスターマシンをバラバラにする。
八咫烏から降りた鏡介は、歯を食いしばる。
「俺はあなたをもう一度殺す、ウィリアム・ローグ」
『問題ない、既に一度死んだ身だ』
そうして。防御行動もとらないウィリアムの心臓を、鏡介の神刀は真っ直ぐに貫き。
森羅万象の悉くを斬る刃は、その胴を薙いだ。血が飛沫き、鏡介の頬を赤く濡らした。
――レース・フォーミュラ、ウィリアム・ローグは、ここに再び眠った。
|疾走《はし》り続けた男は、ようやくここに動きを止めたのだ。
彼に挑んだ者の中から、真に「アルカディア・エフェクト」を受け継ぐものが覚醒するかどうかは。
また、未来の話となるだろう。
大成功
🔵🔵🔵