あくまでクリスマス・ソングを
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全ての世界に、クリスマスは等しくやってくる。
それは勿論、このデビルキングワールドだって例外ではない。
街は煌びやか――少々、いやかなりデザインが毒々しいような気もするが――に飾りつけられ、各地でクリスマスを盛り上げるべくイベントが行われている。
クリスマスのイベントと言えば、人によって思い浮かべるものは違うだろうが。例えば、クリスマスライブなんかもそのひとつだろう。
ここでもライブが行われ、流れる音楽が街を賑わわせている。楽しげなクリスマスソングから、しっとりとしたクリスマスキャロルまで――否。
忘れてはいけない。
ここがデビルキングワールドである、ということを。
「サイコーだぜ、デビルキングワールドッ!!」
「「「ウオオオオオオーーーーーー!!!!!!」」」
オープニングナンバーが終われば、その瞬間に熱気と大歓声がどっと押し寄せる。
それは凡そ、王道のクリスマスライブで上がるものとは思えないものであったが。
アルゼブ・アズモリィ(玉座を見据えし|悪魔《デビル》・f31513)は寧ろ満足げに、ニッと口角を釣り上げた。
「だがライブはまだまだこれからだ。クリスマスソング? クリスマスキャロル? いやいや、デビルキングワールドのクリスマスライブはそんなしっとりしたモンじゃない!」
その口上に、観客の期待も大いに高まる。
彼は傍らでギターを掲げるプリ・ミョート(怪物着取り・f31555)へとひとつ目配せした。頷きが返ってくるのを認めて、再び観客と向き合い。
「最初から最後まで悪カッコイイ、バリバリのロックでクリスマスを祝っちゃうぜ!!」
「「「イエエエエエエイ!!!!!!」」」
そう。
ワルさこそ美徳、反骨精神こそ至高。
これがデビルキングワールド流、クリスマス・ロックだ!
王道からも躊躇なく外れて、少し喧しいくらいが丁度いい!
「ばいぶす? 上げていくべよ!!」
使い慣れない単語を辿々しくも声高に張り上げて、プリがギターを掻き鳴らす。
今の彼女はギタリスト。普段の布の下からは、色素薄く美しくも妖艶な女性の姿が覗く――余談だが、これもまた亡き友人から剥ぎ取った皮を継ぎ接ぎして、知恵の布として被ったものなのだとか。
ともあれ、プリはそうして得た人の手指を存分に使いこなし、ギターを存分に歌わせる。
「プリ、行くぜ!!」
「了解だべ、アルさん!!」
ワル友の二人は息もぴったり。
「みんなー、準備はいいべかー!?」
「さあ、次のナンバー! 行くぜ!!」
「「「ワアアアアアアーーーーーー!!!!!!」」」
観客の興奮が、波のようにビリビリと伝わってくる。
ならばその熱狂ぶりにお応えして、二曲続けてお届け!
アルゼブが激しく高らかに歌い始め、それに合わせてプリが弦を巧みに掻き鳴らせば、熱狂の波はより盛り上がりを見せていく。
歌と音の届き、響き渡る周囲の一帯が、高揚と共に一体となっていく。
だが、まだまだ足りない。
アルゼブも、プリもこんなものでは満足していない。今でさえ半ば狂乱状態の観客達でさえ、それは同じだろうと解る。
もっと、もっと盛り上げていかなければ。観客達の脳を、興奮で焼き切ってしまうくらいの勢いで。
最高に、クールに、ロックに――何より、とびっきり、悪カッコよく!
「まだまだァ!!」
「盛り上がっていくべよ!!」
そして、忘れてはいけないのが。
「「メリー・クリスマス!!!!!!」」
「「「メリー・クリスマス!!!!!!!!!!!!」」」
ナンバーはワルワルのロックでも、クリスマスを盛り上げ祝うという、その気持ち!
そう、これは『あくまで』クリスマスライブだ。
だからまだまだ、ライブが終わることはない。
クリスマスの夜が、更けるまで!
成功
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