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人よ、忘るるなかれ。
常春のデルメロスの地に、平穏を齎した兄妹勇者を。
群竜大陸へと赴き、彼の地で散った勇猛な英雄たちを。
鋼の肉体、黄金の心、一振りの剣。
そして、
その身に纏うた薄衣は、勇気と信仰の証なり。
人よ、忘るるなかれ。
真の勇気とは、その行いで以って表すものだということを。
彼の英雄兄妹の勇姿を讃え、詠い続けたまえ。
『伝承詩 ~デルメロスの兄妹勇者~』より。
●
帝竜ヴァルギリオスと共に蘇ったという、未だ所在の掴めない『群竜大陸』。帝竜がもしオブリビオン・フォーミュラだとすれば、群竜大陸の発見は必須と言えよう。
だが、いまの猟兵たちに残された大陸へと至る手がかりは、かつて帝竜との決戦に挑み、彼の地にて散った幾千の勇者たちの伝説だけだ。
「アックス&ウィザーズにデルメロスという町がある。群竜大陸にて帝竜との決戦に臨んだ、ある二人の兄妹勇者の故郷だ」
一篇の詩を朗読した羅刹の娘は、グリモアベースに集った猟兵たちにそう告げると、なにやら腑に落ちない表情を浮かべながら包みをほどき始めた。
なかから現れたのは、一見するとヒモのような物品である。だが広げてみれば、それは水着のように身につける衣服であることがわかった。
「ビキニアーマーって言うんだと。その兄妹勇者は己の勇気と神々への信仰を示すために、あえて重々しい防具ではなく、この格好で帝竜との決戦に臨んだそうだ。兄妹勇者は群竜大陸で果てたが、なかなかの活躍を見せたと伝わっている。だから、故郷のデルメロスでは今でも勇者たちの偉業を讃えて、ビキニアーマー姿こそが真に勇気ある者の格好だと尊敬されているんだ」
説明を口にしたあとで、羅刹の娘は「ワケわかんねえよ」と小声で呟いた。彼女の名は、グリモア猟兵のショコラッタ・ハロー。グリモアの術で視得た光景を、猟兵たちに伝える役目を負った娘。
「いまデルメロスでは、ビキニアーマー勇者祭とかいう催しが行われている。職人が丹精込めて作ったビキニアーマーを身に着けて、男子部門、女子部門それぞれで一番似合っているヤツを選ぶコンテストだ。おまえたちには、こいつに参加してもらいたい。勇者の伝説に触れることで、群竜大陸を探し出す手がかりが得られる……かもしれないから」
いまいち歯切れの悪い物言いをしたショコラッタは、続けてコンテストのルールを説明する。
一つ、年齢性別種族は問わない。
一つ、男子は腰を覆うビキニアーマー、女子は胸部と腰を覆うビキニアーマーを必ず着用すること。その他の装備は適宜身につけて構わないが、あくまで主体はビキニアーマーでなければならない。
一つ、単に肉体美を誇るだけでは真の勇者足り得ない。出場者は、何らかの手段で己の勇気や情熱や武勲をアピールするべし。
一つ、観客として訪れた小さい子どもたちの手本となれるよう、勇者として恥ずかしくない格好や言動を心掛けること。
ちなみにチャンピオンには『かつて兄妹勇者のビキニアーマーを作った職人の子孫』が手がけた、勇者のレプリカビキニアーマーが贈呈されるそうだ。
ショコラッタは「何事もなく調査が終わればいいが、どうも不穏な影が裏で動いている気がする」と表情を引き締める。グリモアベースに映し出された光景には、謎のゴリラっぽい連中が映っていた。なんだコイツら。
それはさておき、勇気ある猟兵たちは、次世代のビキニアーマー勇者になるべくデルメロスへと旅立つのだった。
扇谷きいち
こんにちは、扇谷きいちです。
リプレイの返却スケジュールを紹介ページでご連絡する場合があります。お手数をおかけしますが、時折ご確認いただければ幸いです。
●補足1
ビキニアーマー勇者祭のステージに立つ場面から始まります。
我こそがビキニアーマーの勇者である、という情熱をアピールしてください。ビキニアーマーは事前に街の職人に作って貰った品でも、自前の品でも構いません。
●補足2
コンテストですが、チーム参加もOKです。
ただし、チャンピオンはチーム参加、個別参加を問わず男女共に一人だけです。
●補足3
えっちなのはダメです。
●補足4
日常章、冒険章における「POW」「SPD」「WIZ」の行動は一例です。
思いついたことは何でも試してみて頂いて構いません。
ただし、シナリオの性質上、行動は一点集中に絞ることをお勧め致します。
●補足5
第一章の開始時刻は昼。
天候は晴れ。
時刻と天候による有利・不利は存在しません。
以上、皆様の健闘をお祈りしております。
よろしくお願いいたします。
第1章 日常
『ビキニアーマー職人の朝は早い』
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POW : 天が与えた大いなる至宝を毎日の節制とトレーニングで磨いた、これこそ最高の形なり。
SPD : あまり大きいものは実用的ではない、アッパーミドルクラス釣鐘型、これ。
WIZ : 貧しいではなく品のある胸、それが時代の選択です、それを分からずして何が職人か。
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種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
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気が多い娘のように、冬と春のあわいに吹く風の温もりは揺れ動きやすいもの。しかして、数多の詩人に"常春"と称されたデルメロスにおいては、暦も三月ともなれば身を包む風は微睡みを誘うほど暖かい。
デルメロスの中央にある円形広場には、足の踏み場もないほどの大観衆が詰めかけていた。言うまでもなく、皆ビキニアーマー勇者祭を見るために町の内外から訪れた人々である。
広場に設けられたステージに掲げられた幕には『第○○回 ビキニアーマー勇者祭』という大会名が、堂々たる筆使いで揮毫されている。この文体一つをとっても、この催しが勇猛な勇者に捧げられた祭であることを、如実に表していると言えよう。
『さあ、今年もいよいよ始まりました、ビキニアーマー勇者祭!』
『今年はどのような勇猛果敢なビキニアーマーの勇者たちに出会えるのでしょうか! わたくし達も司会という立場でありながら、一人のビキニアーマー崇拝者として胸の高鳴りが抑えられません!』
『ですが、お集まりの皆様もわたくし達と全く同じお気持ちだと確信しております!』
『ならば開幕の口上は早々に切り上げて、さっそく始めましょう!』
『第○○回、ビキニアーマー勇者祭の開幕です!!!』
正装に身を包んだ司会者の男女が声高らかに祭の開催を宣言すると、黒山の如き観衆がワッと大歓声を上げた。会場のボルテージはすでに最高潮で、一足早い春どころか二足早い夏のような熱気に包まれつつあった。
ちなみに司会者の男女は、過去にこの祭で優勝経験のあるビキニアーマー・チャンピオンだそうだ。審査員の半数も元チャンピオンで構成されており、残りの半数が町長や商工会会長などの街の要人、それに加えてビキニアーマー職人の親方や、ビキニアーマー研究家や、兄妹勇者の物語を詠い継ぐ詩人などの有識者が並んでいる。
皆、ビキニアーマーに対して一家言あるプロフェッショナルたちばかりである。審査の目も、それだけ厳しいものになるということだ。
かくして、猟兵たちも参戦するビキニアーマー勇者祭の幕が上がるのだった。
アメリア・イアハッター
凄い兄妹もいたものね
でもビキニアーマーには興味あるかも!
だって踊りやすそうだもんね!
規約に則ったビキニアーマーを着込み、自分が踊りやすいように調整
特に足が綺麗に見えるかは大事なポイント
後は本体の帽子を被って準備よし!
情熱をアピールって言ったわね
私達スカイダンサーは、まさに情熱を力にする猟兵!
空も舞台にしたダンスに情熱を込めるわ!
たっぷり見て行ってちょうだいな!
地上では最近お気に入りのタップダンス
音と脚を使って注目を集めよう
あは、いつもより脚が軽い気がする!
ビキニアーマーって楽しいね!
地上で踊った後はUCで空へ
観客の上を飛んだりしちゃおう!
目があったら手をふり返す
勇者は全員を気にかけるものってね
●エントリーNo.8『アメリア・イアハッター』
開幕から一般参加のビキニアーマー選手が続いたが、八番手にはいよいよ最初の猟兵参加者であるアメリア・イアハッターがステージに登場した。
見渡す限りの大観衆に対して、アメリアは春を思わす甘やかな顔に笑顔の花を咲かせて歓声に応えてみせる。
「みんなこんにちは! 今から私がお見せするのは、ビキニアーマーの勇者にも負けない情熱を込めたダンスよ! 地だけではなく空も舞台にしたとっておきのダンス……たっぷり見て行ってちょうだいな!」
アメリアが堂々と述べると、再び歓声が巻き起こる。彼女が身につけたビキニアーマーは、なんら奇を衒わない王道を往くデザインの一品だ。金属片を鱗状に重ねた胸当ては陽光を浴びてキラキラと輝き、高い位置で結ばれた腰紐の絶妙な角度は、すらりとした彼女の脚線美をより魅力的に演出している。
シンプルゆえに着こなしの難しいビキニアーマーに、審査員たちもメモを取りながら好意的な頷きを見せていた。
本体である帽子の角度を微調整したアメリアは、さっそくステップを踏み始める。最初に披露するものはタップダンスだ。帽子とおそろいの赤い靴が時に激しく、時に滑らかにステージの床を打つたび、心地よい軽快な音色が会場に響き渡る。
――あは、いつもより脚が軽い気がする!
ステージの上を大きく巡りながら、アメリアは歌うようにクランプロールを刻んでいく。普段よりも足捌きのノリがいいのも、動きやすいビキニアーマーの持つ力なのだろうか。
汗をきらめかせて跳ね踊るアメリアの姿につられて、観衆も身体を揺すってリズムに乗っている。彼女は難易度の高いステップの音を高らかに響かせるなり、ダンスの舞台を空へと移した。
宙を舞い踊る彼女の勇姿に、皆の視線が釘付けになる。
目を輝かせて手を振るこどもたちに、アメリアも笑顔で手を振り返した。優雅で力強く、そして優しい彼女の姿を見詰めるこどもたちの表情に浮かぶものは、紛れもない憧れと尊敬の念だ。
それに気がつけば、叶う限り応じるのが勇者というものだろう。アメリアは力の限り空にて踊り、皆の歓声に応えるのだった。
やがて地上へと降りて情熱の舞踏を終えたアメリアに、観衆から惜しみない拍手と賛辞の声が寄せられる。審査員たちの表情も明るい。アメリアは手を振って大歓声に応えると、その日一番の笑顔を見せた。
「ビキニアーマーって楽しいね!」
成功
🔵🔵🔴
クラリス・ポー
ビキニアーマー勇者祭…はっ!
何となく復唱してしまいましたが
つまりは健康美のコンテストということですね?よね?
ということであれば
パッd…いえ、偽造は行えません
【WIZ】で挑みたいと思います
ビキニアーマーは協力してくれる町のお店があれば
見立てをお願いしましょう
勇者ですもの
堂々が大事…(深呼吸)
ビキニアーマーに
性別も種族の垣根もありません!
鍛え上げた鋼の肉体であれば防具は最小限でいい
そして牙
邪悪な竜の喉元へ突き立てるには一振りの剣で足りる
そのどちらもを扱い立ち向かう勇気こそ
まさに黄金の心と言えるでしょう
胸を打つ生き様、カッコイイです!
だから私も今日、此処で立ち上がります!
と、観客を元気良く鼓舞します
●エントリーNo.10『クラリス・ポー』
続いて出番が回ってきたのは、ケットシーのクラリス・ポーだ。小さな身体の彼女の姿を観客が見やすいように、ステージ上には台座が用意される。
「これがビキニアーマー勇者祭……」
熱気に包まれる会場を目の当たりにしたクラリスは、思わずその名を呟いた。そして、ハッとした様子で気持ちを引き締める。
クラリスが身につけたビキニアーマーは、街の職人が手がけた一品だ。シスターである彼女に合わせて、装飾は極力少なく、色も濃紺と白をベースにした清廉なデザインである。
試着した際には、慎ましやかな胸元を盛ろうかと一瞬だけ考えたこともあったけれど、それは無用だったようだ。この祭はセクシーさを競うものではない。クラリスの瑞々しくも厳かなビキニアーマー姿に、審査員たちの反応も良い。
大舞台に立ったクラリスは、「勇者ですもの、堂々が大事……」と己に言い聞かせるように胸中でつぶやく。それから気持ちを落ち着かせるために深呼吸をすると、観衆が静まるのを待ってから、声を張り上げた。
「皆さんこんにちは! 私はケットシーのクラリス・ポーと申します! 見ての通り私は体も小さくて、一目見ただけでは勇者には程遠い姿に見えるかもしれません。けれど、私は思うのです! ビキニアーマーに、性別や種族の垣根なんて、ないのだと!」
鍛え上げた肉体であれば、防具は最小限でいい。それは、例え小柄な身だとしても同様だ。そして邪悪な竜に喰らいつく牙も、大袈裟な得物など必要ではないのだ。ただ一振りの剣、そして邪悪に立ち向かう勇気。それさえあれば、人は誰しもが勇者になれる。
「――その何物にも屈しない勇気こそが、まさに黄金の心と言えるでしょう!!」
クラリスの真っ直ぐな主張に、会場から拍手が巻き起こる。勇気の大きさは、体の大小に縛られない。特に彼女の主張に共感したのは客席にいたフェアリーの人々だ。「そのとおりだー!」「勇気が貰えました!」と共感の声がクラリスの耳にも聞こえてきた。
「ビキニアーマーを身に着けて帝竜に立ち向かった兄妹勇者……その胸を打つ生き様、カッコイイです! だから私も今日、此処で立ち上がります!」
クラリスが片手を高々と上げて宣言すれば、最高潮に達した歓声は会場全体を震わせるほど大きなものになった。
成功
🔵🔵🔴
イネス・オルティス
自前の〔一族伝統の鎧〕で参加
「私の故郷以外にもビキニアーマーに思い入れがある処があったのね。なんだか親近感わくわ」
「この鎧は私の一族で一人前になった証、他ので参加するのはちょっとね」
昔から着ていて大勢から見られても”恥ずかしさ耐性”ガできている
堂々と”存在感”あるボンキュボンの肢体をさらす
「この鎧は私の体の一部、まったく動きを阻害しないし過不足なく守ってくれるわ」
そしてステージ上で”ダッシュ”し”なぎ払い”や”串刺し”などの槍の演武を行い
鎧との一体感をアピール。その際巨乳が揺れたりして周りを”誘惑”
してしまっても仕方がない事なのだ(イネスにそのつもりはありません)
「どう? 私の戦い方」
●エントリーNo.11『イネス・オルティス』
「私の故郷以外にもビキニアーマーに思い入れがある処があったのね。なんだか親近感わくわ」
盛り上がりを見せる会場の歓声を耳にしながら、イネス・オルティスは舞台裏に設えられた姿見の前で最後の確認を行っていた。
イネスが身につけたビキニアーマーは町の職人に仕立てて貰ったものではなく、彼女が普段から着用している品だ。
よく磨かれた板金は華美な彫刻こそ施されていないものの、滑らかな曲線は芸術的な流麗さを誇り、これを手がけた甲冑職人の技術力の高さを伺わせる。
なにより、そのビキニアーマーに着られることなく、見事に着こなしてみせているイネスの鍛え抜かれた肢体もまた、彼女自身が作り上げた一つの芸術作品と言えよう。
そんなイネスのビキニアーマー姿の妙は、見る者が見れば一目で伝わるものだ。無言のままステージに立った彼女に、幾人かの審査員が「ほう」と感心したように唸った。
数千の衆目を一身に浴びても、イネスの凛とした表情は変わらない。昔から身に着けていたビキニアーマーだから、肌の露出が多いことに対する羞恥心の耐性はとっくにできている。
名乗りと挨拶を済ませたイネスは、「この鎧は私の体の一部、まったく動きを阻害しないし過不足なく守ってくれるわ」と一族の誇りでもある己がビキニアーマーを謳い上げると、それが誇張ではないことを行動で示していく。
一族伝統の鎧と同じく、愛用する巨獣の槍を用いて演武を披露すれば、見事な技の数々に観客達が湧き立った。
イネスが鎧を「体の一部」と称したのは嘘偽りなく、ゆえに激しい演武のさなかに張りのある豊かな胸がゆっさりと弾むのも致し方のないこと。
審査員を始め、ビキニアーマーを篤く信仰する生粋のデルメロス町民こそ気に止めないものの、他所の町から来訪した観客の何割かは、彼女の熟れた肉体を目にして鼻の下を伸ばすのだった。
「どう? 私の戦い方」
期せず邪な男心をくすぐっていたことなど露知らず、演武を終えたイネスは常の通りの生真面目な声音で審査員と観衆に尋ねる。
すると、審査員に連なっていたビキニアーマー職人の親方が「見事だった。コンテストの行方はさておき、貴女のための甲冑をぜひ作ってみたいものだ」と賛辞を述べた。対するイネスは、肩にかかった赤髪を払うと、気取った様子もなくこう答えるのだった。
「この鎧は私の一族で一人前になった証、他の鎧に袖を通すのは、ちょっとね」
成功
🔵🔵🔴
ルルティア・サーゲイト
ふむ、ビキニアーマーとは。素材はレザー、防御力は低いが元より覆う面積の少ないビキニアーマーなら関係なかろう。
上は所謂乳ベルトである。かなり太いベルトを胸に巻くだけのアレじゃ。普通のビキニで動くと簡単にずれるのでな……理由は、聞くな! 言うな!
下は革の腰巻で行くか。覆う面積はビキニパンツよりは広くなるが……この、腰巻の下がどうなっているかが分からない所がポイントである。
何、ミスコンではないとな。然り、妾はこの姿で戦闘に行ける装備である。その証拠に残影舞踏陣による高速斬撃を木人か何かに叩き込んでしっかり戦闘できる事をアピールしよう。
なお、当然はいてない。UCの条件だから仕方ないのう?
●エントリーNo.14『ルルティア・サーゲイト』
祭も中盤に差し掛かり、会場もますます熱を帯び始めていた。数名の一般参加者を挟んでから登場したのは、ルルティア・サーゲイトである。
小柄な体格ながら、勝ち気な微笑みを浮かべてステージの中央に歩み出るルルティアの姿は、威風堂々と呼ばうにふさわしい。そんな彼女に興味を惹かれたのか、女性司会者が彼女に質問を投げかける。
『ルルティアさんは普段は東国伝来の華やかな召し物を愛用しているとプロフィールに書いてありますが、今回身につけているビキニアーマーはだいぶ質実剛健な仕立てですね。これには、なにか理由が?』
「然り。此度の祭はミスコンではない。妾が身につけたこのビキニアーマーは、戦装束である。帝竜に挑んだ兄妹勇者も、このように華美を省いた装束にて戦場に参じたと聞き及んでおる。これは、勇者たちに対する敬意と思っていただこう」
『なるほど、そういう理由でしたか!』
投げかけられた質問に対するルルティアの受け答えに、女性司会者も観客たちも納得したようだ。
ルルティアのスレンダーな柔肌を覆うものは、全て革造りのビキニアーマーである。胸部を守るアーマーは厚手で幅広のなめし革をベルト状に仕立てた拵えで、着用者の胸囲に合わせて調整が利くようになっている。
ちなみに、ルルティアが身につけている現状では、バックルの留め具が通されているベルト穴は最奥だ。その理由は……彼女の名誉を慮り、あえてここでは著述しまい。
「しからば、刮目せよ。我が残影の舞踏を!」
ルルティアの複雑な乙女心はさておき、彼女はビキニアーマーの勇者として、己の装いが戦のためのものであることを演武によって示していく。
ステージ上に用意された木型の等身大人形を相手に、ルルティアは自身の身長以上に長大な大鎌を軽々と振るってみせる。その得物を持ち上げるだけでも驚嘆に値するというのに、一振りごとにキレを増していく動きに、審査員も観客も目を丸くする。
――まだまだ序の口よ。なにしろ、"はいていない"からな。妾の残影舞踏陣の真骨頂は、これからじゃ。
胸元を覆う、乳ベルト。片や、下腹部を覆うものは革の腰巻き。
この腰巻きをビキニと呼ぶかどうか識者によって意見が分かれるところだが、それがルルティアの力の根源であるから致し方ない。力強く躍動する彼女の太ももの付け根を隠す闇こそが、力と勇気のヒミツである。
やがて武術の披露を終えた細腕のルルティアに対して、観客たちは惜しみない感動の拍手を送った。彼女の勇ましい猟兵としての姿は、やはり、本物なのだ。
成功
🔵🔵🔴
境・花世
神妙な顔で舞台に立つ
うん、最初は絶対ツッコむべきだって
そう思ってたんだ――けど
真剣にビキニアーマーと向き合う、
職人の真っ直ぐな背中を
伝説を信じてビキニアーマーに憧れる、
子供たちの無邪気な眸を
わたしには壊せなかっ……
覚悟を決めてマントを払い
ひらりと風に露わにする姿
職人が丹精込めた鎧は、
精緻な百花の紋様が美しい
人々の想いを背負ってこそ!
勇者! だから!
翻す扇から散らす花弁は
春を寿ぐ透きとおるよな薄紅
ああ、この沢山の笑顔を守るためなら
後悔なんかするわけが、
いや、普通に恥ずかしいからね???
ショコラッタの微妙な顔を思い出して、
後で絶対奢って貰おうと決意すれば多分
きりりと勇者に相応しい表情に見えるはず
●エントリーNo.15『境・花世』
この祭の話を聞いたとき、境・花世の胸中に浮かんだのは「なによそれ」というツッコミの声だった。
なにしろ、ビキニアーマー勇者祭である。デルメロスの住人を除けば、この祭の話を耳にした九十九パーセントの人間が、花世と同じ感想を真っ先に思い浮かべることだろう。
けれど、嗚呼、けれど。
「……あんなに、皆が真剣になっている。職人の視線も、観客の歓声も、こどもたちの無邪気な眸も、決して冗談なんかじゃないんだね」
舞台袖からも窺えるその熱気は、花世の"勇気"を奮い立たせるに十分な光景だった。マントに体を包んだ彼女は、不思議な覚悟に突き動かされて、名を呼ばれるやステージへと駆け上がる。
――集まったみんなの純な心……わたしには、わたしには、ああ、わたしには、壊せなかっ……。
胸中で渦巻く感情がはっきりと言葉になる前に、花世は体を覆っていたマントをバッと勢いよく払い除けた。春風のなか、たなびくマントの下から現れたのは、精緻を極める百花の文様を刻み込んだビキニアーマー姿だ。
鮮やかで華のある一品ながら、猟兵として確かな経験と実力を誇る花世が身につけると、決して浮ついた装いには見えない。美しい彼女の佇まいに、審査員たちも感心した様子で何やら言葉を交わし合っている。
――人々の想いを背負ってこそ! 勇者! だから!
とはいえ、元々はこういう露出の高い装束を着る機会が多いわけではない花世である。堂々とした振る舞いこそ崩さないものの、心の中は決して穏やかではない。
……というか、普通に恥ずかしい。
キリッとした表情を花世がキープ出来ているのも、ビミョーな態度のままこの依頼に自分を送り込んだ、あのグリモア猟兵の顔を思い出しているからこそ。
――後で絶対おごって貰おう……そうじゃなきゃこの埋め合わせにならないもの。
そんな固い決意を引き締まった表情に昇華して、花世が披露するのは麗しき花扇の舞。一振りごとに宙を彩る薄紅色の花弁は、まるで春の訪れを寿ぐ豊穣の女神の睦言のよう。
ステージをちらりと見やれば、こどもたちも花世の姿を見て歓声をあげている。この沢山の純粋な笑顔を守るためならば、少しばかりの羞恥心など大したことではない。大したことではないハズなのだが……。
――やっぱり! 普通に! 恥ずかしいし!!
見事こどもたちの期待を裏切らずに出番を終えた花世だったが、その顔の火照りはステージを降りたあともなかなか引かなかったという。
成功
🔵🔵🔴
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
ビキニアーマー
斯様な物が勇者の証とはまた奇怪な伝承よな
いやなに、何も民を揶揄する心算はない
それ程彼等にとっては由緒正しきもの
ならば…宴に加わるのもまた一興
…ジジ、本当に問題ないな?
我が玉体を晒す事には抵抗ないが
ただの鎧では満足に私を輝かせる事は叶わぬ
ならばコイン飾りや鈴等で美しく飾った鎧を装備
暗いヴェールを纏い、神秘的な雰囲気を演出
とんと音を鳴らした足先で魔方陣を展開
【女王の臣僕】たる青き蝶を傍らに舞わせたならば
我が美も煌びやかに映えるであろう
ジジの業により掲げられれば尚更輝き放ち
ふふん、気分はそう悪くはない
誘惑の類も得手でな
余興として此処は一つ、歌でも披露してやろうか?
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
…この祭は何だ
世界は広すぎるにも程があろう
美の形といえば師
果たして己は此の場に相応しかろうか――
葛藤から呼び戻され覚悟を決める
一片の躊躇いも無き師の姿に、いっそ羨望を覚えながら
その対の様な、金の装飾が揺れる飾り布を纏い
アーマー自体は翼と尾との一揃いであるかのような
竜の鱗を模したもの
…筋骨隆々というには未だ及ばぬが
未熟な俺とて、美も、退かぬ覚悟とて識っている
【餓竜顕現】を使用し
餓竜の腕で、蝶を侍らす師を高く掲げる
模ってみせるは伝承か神話の一節
竜をも傅かせる魔術王
歓声が上がれば餓竜の腕(師)を、そちら側へ
舞台は変われど従者であり守護者の役割は不変
我を見失わぬように胸中で誓う
●エントリーNo.22&23『アルバ・アルフライラ』『ジャハル・アルムリフ』
女性猟兵たちのエントリーが続いたなか、男性猟兵の出番がやってきた。アルバ・アルフライラとジャハル・アルムリフの二人である。
「民を揶揄する心算はないが、斯様な物が勇者の証とはまた奇怪な伝承よな」
「全くもって……世界は広すぎるにも程があろう」
しかし、盛大に沸き立つ観衆の眼差しは真剣そのもので、この祭がただの伊達や酔狂ではないことはアルバもジャハルも肌で感じ取っていた。
「ならば……宴に加わるのもまた一興、ジジ、本当に問題ないな?」
「無論。御身がその気ならば、付き従うまで」
二人は頷きを交わし合うと、体を冷やさぬよう纏っていた外套をスタッフにあずけてステージへと登っていく。
どこか中性的な雰囲気を漂わすアルバの身体は華奢ではあるが、決して貧相というわけではない。絵画に描かれる少年神のような姿を彩る鎧は、煌めくメダリオンや鈴をふんだんにあしらった一品だ。
己の美貌に絶対的な自信を持つアルバにとって、玉のような肌を晒すことはなんら抵抗はない。むしろ非日常の舞台に立つことで、よりいっそう輝きを増しているかのよう。
片や、一歩引いてアルバに付き従うジャハルは彼と対を成す堂々たる体躯を誇る。ガチガチに鍛え抜いた巨漢に比べれば筋肉の盛り上がりこそ及ばぬものの、実戦で身につけた引き締まった肉体は彫刻に象られた戦神のそれを思わせる。
果たして己は此の場に相応しかろうか……などと疑問を抱くジャハルは、躊躇も見せず振る舞う師父に対して尊敬と羨望の念を抱く。さりとて、ジャハルの竜翼竜尾と揃いになった竜鱗の鎧は様になっていて、審査員や観客達の反応も上々だ。
深々と腰を折ってオーディエンスに挨拶をするアルバと、彼の後ろに立って目礼のみを会場に送るジャハル。仰々しい口上は無用とばかりに二人が演じ始めたものは、神話に詠われる魔術王の舞踏である。
貴人の顔を隠す御簾のようにアルバが頭から下げた暗いヴェールが、彼の跳躍やターンに合わせて妖しげにひるがえる。壇上に浮かび上がる魔法陣が足先のノックに応えて、異界と現界を隔てる扉を開けば、ステージ上に広がるは淡い燐光を宿す無数の青い蝶たち。
その幻想的な光景に、観客が息を呑む気配がステージ上にも伝わってきた。
師父がこれだけ堂々と振る舞っているのだ。彼のことを間近で見続けてきたジャハルもまた、退かぬ覚悟が美を際立たせることを痛いほど識っていた。
ならば己も、それに負けぬように振る舞わねばなるまい。ジャハルはそう覚悟を決めて、伝承の魔術王に傅いたという竜を演じてみせる。
ジャハルが壇上に召喚せしめた竜の腕は、常ならば敵を屠るために振るわれるもの。いまはそれを魔術王に扮したアルバの身を掲げるために用いる。アルバが侍らせる蝶たちも、元は死をもたらす手立ての一つに過ぎない。
だが、こどもらが舞台上の二人の姿を見て、ワッと興奮した様子で声を上げる。戦士としての力が、ただ無味乾燥な死ではなく、斯様な感動を呼び起こすことも出来るとは。アルバは満更でもない快さを味わい、ジャハルは慣れぬ感覚に折り合いをつけようと、改めて師の守護者としての役割に意識を向ける。
極上の舞台と呼んで差し支えないだろう。雄々しくも端麗な二人の舞踏に対して、観客たちは万雷の拍手を送る。ビキニアーマーの勇者としてのアピールとしては賛否が分かれるところだろうが、司会者二人や審査員たちの反応も決して悪くない。
改めてアルバとジャハルは観客に礼を送り、ステージを後にする。二人の姿が見えなくなったあとも、拍手は暫く鳴り止まなかった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
リヴェンティア・モーヴェマーレ
【華麗なる西風】
私もレッド!!
え…同じ色で揃えるのではないのデスか?
はわぁ!そですカ!
失礼しましタ!(都合で来れなかったお友達に似た人形抱えて)
ならば私はビキニブルー!(キラキラ光を纏って魔法少女の様に見せかけ早着替え)
どデすカ?
ちょっと踊り子さん風味にアレンジしてしましタ
オシャレも大事ですヨね!
踊って舞う事も出来るビキニアーマーな気持ち♪
(笑顔で観客の皆さんに手を振って)
あぁ!マリアさぁん!ツカサセンパイの魅力にやられてしまいましたカ?!見事なレッドですヨ!(急いでティッシュ渡し
センパイ、マリアさんの事は頼みましタ!
後は私と焔さんで頑張りマス!(期待に満ちた表情を焔さんに向け合わせてポーズ
マリア・アリス
【華麗なる西風】
ビキニアーマー…。こ、これってかなり大胆な恰好よね。でも、この衣装は自信をもって胸を張らないと逆にみっともないわね。…それなら情けない姿見せるわけにはいかないわ!しっかり胸を張って皆の為にこの姿見せつけてあげるわ!
私は黒!冷静沈着に情熱の炎を傍で支える黒よ!ブラスターでガンプレイなんかもしちゃって、クールにいくわ!ふふ、ツカサとお揃いの色じゃないのはちょっと残念だけど…。もともとみんな赤が多いししかたないわ…んん…!?(好きな人でもあるツカサのビキニ姿は幼い少女には刺激が強すぎた。迸る鼻から赤色。染まるビキニ。)あ…!私もレッドに!?おそろいに!?み、みんなごめんなさいー!?
甲斐・ツカサ
【華麗なる西風】組
冒険は一人でするものじゃない……パーティを組んでするもの!
つまりオレ達はビキニアーマー兄妹ならぬ、ビキニアーマーパーティさ!
ある程度共通点を持ちながらも色や細部の違う特製のビキニアーマーは、別世界で言うところの戦隊のスーツのようなもの
オレは赤!
普段からお目にかけている膝下どころかふとももまでの少年らしい瑞々しさ溢れる脚を見せながら、上には風にはためく赤いマント!
そして幼馴染から貰った正義の証のマフラー!
それじゃあ、オレ達がこれから織りなす冒険譚を聞いていってよ!
…あれ?
マリア、なんで鼻血出してるの?
ゴメン、ちょっと病院連れてってくるー!
そう、そんな優しさも勇者には大事だよね!
神薙・焔
【華麗なる西風】
ビキニアーマー…強く、そしてセクシー。美しさも強さも諦めないという強い意志と、それを貫き通す勇気と力の象徴…。
実用性がないとか無駄な露出とか宣うヒトもいるけど、ロマンが分かってないわよね、もちろんあたしも諦めない。もうちょっと背がほしいと思ってるけど、身体に自信がないわけじゃないわ(胸張り)。
あたしの髪と同じ真紅の、ファイヤーパターンの装飾を施したビキニアーマー、職人の一品物で、ビキニアーマーパーティとして参加。
なぜかツカサくんとマリアちゃんが病院に行ってしまったので(いや、だいたい理由は分かるけど…若いわね)、真紅とリヴェンティアちゃんの蒼の対照的なコンビになるわね。
●エントリーNo.28,29,30&31『リヴェンティア・モーヴェマーレ』『マリア・アリス』『甲斐・ツカサ』『神薙・焔』
一般参加者を含めて全三十五名の参加者が集まったビキニアーマー勇者のうち、猟兵として最後にエントリーされた四名の出番が回ってきた。
『本大会においては最多人数のチーム出場です。なんと女性三名、男性一名の黒一点! 果たして、このなかから見事チャンピオンの座を勝ち取ることが出来る勇者が誕生するでしょうか。それではご紹介しましょう、平均年齢十四歳のフレッシュなチーム、【華麗なる西風】の四名です!』
司会者の紹介を受けて、舞台上に姿を見せる四名の猟兵たち。
普段はボディスーツに身を包み、肌の露出は顔くらいしかないマリア・アリスは、自身の柔肌に注がれる幾千もの視線に恥じらいを覚えずにはいられない。
「こ、これってかなり大胆な恰好よね。でも、この衣装は自信をもって胸を張らないと逆にみっともないわね……」
箱入り娘という言葉を体現するような出自のマリアだが、それゆえに己に対する自信と責任感は人一倍だ。「情けない姿を見せるわけにはいかないわ!」と、己を鼓舞するように物理的にも比喩的にも胸を張って、黒のビキニアーマーを身に着けた瑞々しい身体を観衆たちにアピールしていく。
「その意気よ、マリアちゃん。ビキニアーマーの本質は、美しさも強さも諦めないという強い意志! そしてそれを貫き通す勇気と力の象徴なんだから」
臆すること無くステージに上がり、観衆や審査員たちに笑顔を振り撒く神薙・焔が身につけたビキニアーマーは、彼女のアイデンティティをよく表すファイアパターンが描かれた職人の一品である。
ステージに上がった四人のなかで、ただ一人の男子である甲斐・ツカサが代表して観客達に口上を述べる。
「みんな、こんにちはー!! 自慢じゃないけど、オレ達は一人一人が立派な勇者だって胸を張れるくらい、大冒険を繰り広げてきた冒険者たちなんだ。だけど、だからこそ気づいたことがある! 冒険は一人でするものじゃない……パーティを組んでするものだってね! つまりオレ達はビキニアーマー兄妹ならぬ、ビキニアーマーパーティさ!」
ツカサの言葉に、観客たちも納得している様子だ。帝竜に挑んだ兄妹勇者も、二人きりで戦ったわけではない。頼もしい別の勇者たちと助け合って戦場を駆け抜けたという話が広く伝わっている。
ツカサが身につけたアーマーも焔と同じく赤色ではあるが、色調と細部のデザインが異なるために被っているという印象はない。四人が並んでみれば、それは別世界で言うところの戦隊ヒーローのそれを思わせる。
ところが、である。
「私もレッド!!」
今日、この場に来られなかった友人の代わりに、と抱えてきた人形をずらしてビキニアーマー姿を披露したリヴェンティア・モーヴェマーレの格好もまた、赤色だった。大慌てで焔がツッコミを入れる。
「いやいや、違うでしょ! 四人中三人が赤の戦隊ってなによそれ!」
「え……同じ色で揃えるのではないのデスか?」
「形は似せて、色は別々にするのがミソなのよ……!」
「はわぁ! そですカ! 失礼しましタ!」
焔の言葉を受けて、口元に手をあてがい目を丸くするリヴェンティア。ともあれすでにステージの上だ。今から引っ込むのも勇者らしくない。彼女は「ならば私はビキニブルー!」と眩い光を放つと、魔法少女の変身よろしく身に着けていた衣装を青いビキニへと変えていく。
そんなハプニングもあったが、四人それぞれが個性を活かしたビキニアーマー姿を披露すれば、観客たちも熱い声援を投げかけてくれる。
「実用性がないとか無駄な露出とか宣うヒトもいるけど、ロマンが分かってないわよね」
そうビキニアーマーの尊さを力説する焔に、観衆も賛同の足踏みを鳴らして応える。強さと美しさを諦めない強い意志は、焔の胸の中でも燃え盛っている。願わくばもう少しだけ背丈が欲しいが、さりとて己の肉体に自信がないわけではない。
「あたしだって、誰にも負けない立派なビキニアーマー勇者だという自信があるわ!」
そう言って観衆に手を振る焔の肢体はなるほど、小柄ながらも女性らしい表情豊かなラインを描いている。
焔と共にステージを横断し、観客たちの歓声に手を振って応えるリヴェンティアが纏ったビキニアーマーは踊り子風のアレンジが加えられたきらびやかなもの。
「踊って舞う事も出来るビキニアーマーな気持ち♪」
と、その機能性と芸術性をアピールするようにくるりと一回転して見せれば、親しみやすい笑顔と清々しい元気の良さと相まって、若い観客たちの心をグッと掴んだようだ。
場を温めた年上の少女二人に代わり、ステージの中央に歩み出るツカサ。春風に吹かれてはためくマントが勇気の証なら、首に巻いたマフラーは正義の証だ。まだまだあどけなさの残る顔に浮かべた自信満々の笑顔は、まさに少年勇者といった様相である。
「それじゃあ、オレ達がこれから織りなす冒険譚を聞いていってよ!」
ツカサがそう告げると、彼らが紡ぐ熱い物語を期待する大観衆が沸き立った。
すかさず、羞恥心を振り切ってみせたマリアが黒鋼のブラスターを取り出して、目にも留まらぬ鋭い所作でガンプレイを披露してみせる。残念ながら発砲は出来ないが、その早業の卓越した技量は銃を知らない庶民たちにも伝わったようだ。
轟く拍手に満更でもない笑みを浮かべて、ツカサのほうへと視線を向けるマリア。その途端、彼女の鼻からブバッと赤色が迸る。
「……あ、あれ? マリア、なんで鼻血出してるの?」
マリアの異変に気がついたツカサが大慌てで彼女の元へと駆け寄る。すると、マリアはますます血を噴き上げて、とうとう目を回しながらその場で失神してしまったではないか。
まだ純朴な少年であるツカサが、その理由がわからないのも無理はない。いまの彼の格好は、普段身につけている膝下丈のハーフパンツではない。健康的な太ももも露わなショート丈のアーマーなのだから。
好きな男の子のあられもない(?)姿は、年若いマリアには劇物毒物刺激物。あえなく黒ビキニアーマーは真っ赤に染まり、期せずしてマリアが望んでいたツカサとおそろいのレッドビキニに袖を通したことと相成った処で、彼女とその介抱に付き添うツカサはステージを降りることとなる。
「あぁ! マリアさぁん! ツカサセンパイの魅力にやられてしまいましたカ?!見事なレッドですヨ!」
どよめく観客と一緒になってどよめくリヴェンティアは、餞別代わりにティッシュをマリアに渡してやりながら、ノンキなフォローの言葉を二人の背中に投げかける。それから、期待に満ちた眼差しをこの場を託された相方である焔へと差し向けた。
「ここからが正念場デスね! 私と焔さんの勇者ぶりをお披露目する絶好の機会ですヨ!」
ぐっ、と拳を握るリヴェンティアに、焔もまた苦笑半分愉快半分といった表情で応えてみせた。
「仕方ないわね。あたしの真紅と、リヴェンティアちゃんの蒼の対照的なコンビ……バランス的には悪くないわ。いいじゃない、こういうピンチをチャンスに変えてこそ、勇者が勇者たる所以なんだから。やってやるわよ!」
不敵な笑みを浮かべて腰に手をあてがった焔は、アクシデントに動揺する観客や審査員たちに向かって底抜けに明るい笑顔を見せながら、大声を張り上げた。
「なぜかツカサくんとマリアちゃんが病院に行ってしまったけれど、心配ご無用! 大冒険にはこういう不測の事態もつきものなんだから! でも安心して、あたしとリヴェンティアちゃんの、とっておきの冒険譚を皆さんに披露しちゃうわよ!」
「そのトーリ! です! いまの私たち、まさに帝竜に挑む兄妹勇者な気持ち♪」
リヴェンティアも、焔と同じように笑顔の力でもって混乱するステージを持ち直してみせた。彼女たち二人の力強い姿を目にして、一時は出番の中断も検討していた司会者たちも、安心した様子で彼女らにステージを任せるのだった。
●
そしてビキニアーマー勇者祭の全出場者の出番が終わった。
正午前に始まった祭だが、すでに陽は西の空へと下りつつある。
今年のコンテストは猟兵たちの健闘もあってか、例年よりも白熱したようだ。審査員たちによる議論もなかなか決着を見せず、チャンピオンの選出までしばらくの時間がかかった。
しかし、ようやく結審がついたらしい。三十分ほどの審議時間の間、会場の空気をもたせるために正装を脱いで見事なビキニアーマー姿を披露していた元・チャンピオンの司会者二人へ、スタッフが審議結果を記したカードを手渡す。
それを開いた司会者は、ざわめく観客達をなだめるように手をかざして微笑みを浮かべた。
そして、審査の結果発表を始める。
『近年稀に見る盛り上がりを見せた、第○○回ビキニアーマー勇者祭の優勝者がついに決定いたしました!』
『今年は誰が名誉あるチャンピオンの称号に輝いたのでしょうか!』
『それでは、さっそく発表します! まずは女子部門からいきましょう!』
それまでの歓声が嘘のように、しんと静まった会場に鼓笛隊のドラムロールが鳴り響く。たっぷりと時間をかけて引き伸ばしたあと、司会者は栄えある女性チャンピオンの名を会場に謳い上げた。
『第○○回ビキニアーマー勇者祭、女性部門チャンピオンは――エントリーNo.10! 勇者クラリス・ポーです!』
発表と同時に、会場全体が大振動を起こすほどの大歓声が鳴り響いた。
興奮冷めやらぬ観衆の声を割りながら、審査委員長が選考理由を述べる。曰く、生まれつきの体格差や身体的特徴、性差などを物ともしない、全人類が持ちうる普遍的な勇気と誇りを高々と謳い上げた姿勢が、まさに帝竜に挑んだ兄妹勇者の武勇と合致するということだ。
続いて、男子部門のチャンピオンの発表が行われる。残念ながら、こちらは猟兵参加者からの選出は逃してしまった。だが、アルバ、ジャハル、ツカサらのパフォーマンスは特筆に値すべきものとして、伝統あるこの祭の歴史の一幕として永く語り継がれることだろう。
本大会チャンピオンの発表も終わり、続いて祭は授賞式に移る。デルメロスの町長が歩み出て、クラリスと男性チャンピオンの栄誉を讃える祝辞を述べた。そして、司会者から手渡された包みを持って、クラリスらの前へと歩み寄る。
しかし、そこで事件は起こった。
「ど、どういうことだ? これは……違う! 兄妹勇者の複製ビキニアーマーじゃないぞ!!」
包みから取り出されたビキニアーマーを手にした町長と司会者が、顔色を変えて叫んだ。素人目にはわからないが、これは彼らが見知った由緒あるビキニアーマーとは全く違うものらしい。
しかし、決してビキニアーマーに対して明るいわけではない猟兵たちも、町長が手にした兄妹勇者のレプリカビキニアーマーから漂う禍々しい気を確かに感じ取れた。
「偽物だ。誰かが本物のレプリカビキニアーマーではなく、この呪われたビキニアーマーを大会に寄越したんだ! 一体だれがそんなことを……!?」
驚愕のあまり腰を抜かす町長。その姿を目にした観客たちの間に、不穏なざわめきが広まっていった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴
第2章 冒険
『違法市場』
|
POW : 違法取引の現場を抑える
SPD : 影にまぎれて情報を拾う
WIZ : 袖の下などで元締めに会いに行く
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴
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種別『冒険』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
ビキニアーマー勇者を選ぶ祭は終わったが、猟兵たちの真の戦いはむしろここからが始まりだった。
グリモア猟兵の予知の通り、祭の裏では不穏な影が蠢いていたようだ。
祭のチャンピオンのためにレプリカビキニアーマーを作成する名工が、実は少し前から姿を見せなくなっていたそうだ。
もともと、彼は弟子もほとんど取らない孤高の職人だったという。しばらく姿を見せなくとも、「一人でどこかに籠もってビキニアーマーを作っているのだろう」と周囲からは疑問にも思われていなかったらしい。
だが、この大会優勝者のために工房に残されていたビキニアーマーは、かの名工の作風とは似ても似つかぬものだった。完成度の高い仕上がりは確かに彼の手仕事に違いないのだが、品物に宿った魂は太陽と月ほどの違いがある。
つまり、兄妹勇者のビキニアーマーを作った子孫である名工は、何者かの脅しを受けて無理やりこの闇のビキニアーマーを作らされた可能性が高いのだ。
「勇者たちよ、どうか調査をしてくれないだろうか」
悲痛な表情で、町長は猟兵たちに訴えかける。町の伝統を守るためにも、なにより、町に住む一人の民を守るためにも、ステージの上で武勇を示した彼らに町長は望みを託したのだ。
コンテストもなにも関係ない。弱き者たちを守るためにその力を振るうことを厭わない猟兵たちは、二つ返事で町長を始めとするデルメロス住民たちの声に応える。
猟兵らが向かった先は、ビキニアーマー工房を始めとする仕立て屋や鍛冶屋、革職人の工房が並ぶ町の一角だ。
一見するとただの職人街だが、実はこの地区の地下には、厳しい職人修業から逃げ出した半グレのビキニアーマー職人どもや、正道の物づくりを良しとしない邪道に堕ちたビキニアーマー職人たちが集まる闇市場が広がっているという。
「誰が、どんな意図をもって本物のビキニアーマーと擦り替えたのかわからないが、この犯人をどうにかして違法ビキニアーマー市場で見つけて欲しい。本物の名工はきっと、犯人に拉致されて無理やり邪悪なビキニアーマーを作らされてしまったのだろうから」
町長の言葉を受けて、猟兵たちは地下市場へと足を踏み入れる。
『名工に闇のビキニアーマーを作らせた犯人は誰なのか?』そして、『名工はどこに拉致されてしまったのか?』この二点を、猟兵たちは悪徳が蠢く地下違法ビキニアーマー市場で探るのだった。
無論、全員、ビキニアーマー姿のままだ!
イネス・オルティス
イネスにとってビキニアーマーで行動する事は普通の事です
「大変な事になったわね、早く救出しないと邪悪なビキニアーマーが世に蔓延ってしまうかもしれないわ」
:行動:
胸元に袖の下用のお金を仕込んでおく
「これは保険、保険よ」
男の半グレのビキニアーマー職人に対し”情報収集”を試みる
胸の谷間から出したお金の入った袋を袖の下として渡し”誘惑”
「件の名工作のビキニアーマーが取引されるって噂聞いたけど本当? 場所を知ってる?」
と聞いてみる
「教えてくれたら私の泊ってる宿、教えてあげるんだけどなあ」
答えてくれたらもう引き払ってしまった宿を教えておく
「じゃあまたね」(ウィンク)
得た情報で”追跡”開始
アドリブ・絡み、可
●
デルメロスの地下に広がる空間は思いのほか広く、複雑に入り組んだ構造をしていた。なんでも、戦乱が起きた際に籠城をするために築かれた地下要塞なのだという。
いまでこそ遺跡と成り果てて違法ビキニアーマー職人と売人の巣窟になってはいるが、その昔ビキニアーマーを身に着けた兄妹勇者が帝竜に挑む前に、この地下遺跡に巣食うモンスター相手に腕試しをしたという逸話が残っている、伝説の地でもある。
「大変な事になったわね、早く救出しないと邪悪なビキニアーマーが世に蔓延ってしまうかもしれないわ」
常の通りビキニアーマー姿で地下の違法市場を歩くイネス・オルティスは、雑然と並ぶ違法ビキニアーマー職人の工房を見渡しては、そっと溜息をつく。
――どれもこれも、戦場のことを何も知らない者が作った品ばかり。彼らが手がけるビキニアーマーには魂が籠もっていないわ。
工房の軒下に下げられていた一着のビキニアーマーを前にして、イネスは眉間にシワを寄せる。細いヒモ状の生地に申し訳程度の金属プレートがつけられただけのビキニだ。身を守るためではなく、身に着けた女性を辱めるために作られたことが一目瞭然の、まさに外道のビキニアーマーである。
「姐さん、お目が高いね。そいつが気になるんで?」
「なんですって?」
「へっへっへ、図星でしょう。姐さんが身につけているビキニアーマーも悪かないが、そんなプレートをゴテゴテ付けた格好は野暮ってもんだ。どうです、コイツを試着してみませんか」
客だと思われたのだろう。工房で作業をしていた男がニヤけながらイネスに声をかけてきた。一族の誇りそのものであるビキニアーマーを「野暮」などと言われては黙っていられないが、イネスは喉元まで出かかっていた言葉を呑み込んで、男に話を合わせる。
「ええ、とても素敵な品ね。試着してみたいのは山々だけど、いま私が求めているのは別の品なの。あなた、知らないかしら……"上のビキニアーマー職人"の名工が手がけた品が、この地下市場で取引されているって噂」
「へえぇ、そんな話があるんで? いや、聞いたことねえな。姐さんがコイツを買ってくれたら、なにか思い出せるかもしれませんがねぇ」
男はイネスの見事な肢体を視線で舐め上げる。無遠慮なその態度にイネスは心中で溜息をつくと、濃い影を落とす胸の谷間へおもむろに手を差し込み、中から数枚の銀貨を取り出した。こんなこともあろうかと、保険のために仕込んでおいたお金だ。
生唾を呑み込んでその仕草を見つめていた男に、イネスは艷やかな藍色の瞳を細めて囁き声をかける。
「いいわ、買ってあげる。あとで私の泊まっているお部屋を訪ねて頂戴。二人きりで、じっくり……これを着るところを見せてあげるわ。もちろん、お話を聞かせてくれたら、だけどね?」
「へへ、そうこなくっちゃな」
鼻の下を伸ばした男は、イネスの演技に引っかかって知っていることをベラベラと話しはじめた。
男いわく、名工の作品がこの違法市場で出回っているのは本当だそうだ。
だが、取引が行われているのはこの周辺ではなく、違法市場でも特に目の肥えた職人やバイヤーが集う、さらにディープなマーケットらしい。そこでは銀貨どころか、金貨を積まねば買えないようなビキニアーマーが取り扱われているとか。
「ありがとう、じゃあまた後でね」
聞けるだけの話を聞いたイネスは、嘘の宿を男に告げたあと、ウィンクを残してその場をあとにした。
ひとけのない辺りで、購入した下品なビキニアーマーを捨てようとしたイネスだったが、思いとどまる。造り手こそ下衆な男だったが、生み出されたこのビキニアーマーに罪はない。
イネスは、暗がりで震えていた物乞いの少年に「これを売ったお金を、上の世界で暮らす足掛かりになさい」と品物を渡すと、違法市場の奥へと向かうのだった。
成功
🔵🔵🔴
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と
職人は…あの衣一つで身を立てているのか
そして闇の…?
いや、今はそれを考えてはならん
…。別に寒くはない、が命令ならば仕方が無い
外套で人心地つくのが口惜しい
師の用心棒を気取りながら
闇市場であからさまに怪しい連中を探す
交渉中は、師の背後から
眼光鋭く真剣であることを主張しておく
そんな話は聞いていない…が抗議は押し込めて
必要あらば外套の下を見せれば…良いのか?
その間にも、第六感も活かしながら耳を澄ませ
近くで名工と思しき者についての話や
こそこそと受け渡しを行う者などがいないか周囲を伺っておく
近くで不穏な空気あらば師父に耳打ち
師父もろとも、ここまで身を張ったのだ
逃しはしない
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
闇だか光だか知らぬが放置出来る問題ではなかろう
もしかすると『群竜大陸』の情報に繋がるやも知れぬ
従者に外套を羽織らせ共に闇市へ
常に聞き耳を立て怪しい会話がないか警戒
己と従者の第六感を頼りに
いかにも怪しい者を発見した場合は会話を試みる
闇市場のアーマーについて、祭について
媚びる様に誘惑を試み、コミュ力で相手を立て良い気にさせ交渉へ持込む
…所で、折り入って御相談が
私、我が用心棒に見合う闇のビキニアーマーを探しておりまして…
なに、只とは申しません
手持ちの宝石を幾つか握らせ
足りぬならば、倍はお渡し致しましょう
心配せずとも深追いはせぬ
耳打ちあれば魔術を行使
軽く麻痺させ荒事は従者に託そう
●
猟兵たちは違法ビキニアーマー市場の奥へと調査の手を伸ばす。無数のビキニアーマーを取り揃えた店が立ち並ぶ路地を、正道のビキニアーマーでは満足できなくなった客たちが、所狭しと行き交っていた。
「職人たちがこの衣一つで身を立てているのも驚きだが……闇や光と言った区分まであるとはな」
「やめておけジジ、考えても我らにはわからん世界だ。しかし闇だか光だか知らぬが放置出来る問題ではなかろう」
どこを見ても視界に飛び込んでくるビキニアーマーのせいで、ジャハル・アルムリフの思考も否応なくビキニアーマーに囚われつつあった。そんな沈思を中断させたのは、彼の師父であるアルバ・アルフライラの声だ。
しかしアルバも、足を踏み入れたこの未知の世界に困惑は隠せない。周囲を探る視線はどことなくジットリとした目つきになっていた。
二人はいま、闇市場で行われているであろう違法な取引現場を抑えるべく、意識を集中させていた。この雑踏だ。頼るものは己の目と、直感のみ。
「師父よ、明らかに周りの視線を気にしている怪しい男がいた。あの建物の中へ入っていったようだ」
「でかしたジジよ。後を追うぞ」
怪しさで言えば、この一帯にいる全員が変人連中なのだが、そのなかでも特に怪しい、とジャハルの第六感が告げていた。二人は人の波をかき分けて道を突っ切ると、男の後を追って建物の中へ入っていく。
二人が踏み入れた建物の一室には、先程の怪しい男の他に、濃い化粧を施した妖艶な女がいた。室内にはボンデージ風のビキニアーマーが掛けられたトルソーが並んでいる。表に商品を並べない、一見お断りの店のようだ。
「失礼、その商談に私も一枚噛ませて頂けますか」
「なっ……! 突然なんだ、お前たち! ここはお前たちのようなヤツが来る場所じゃないぞ! マ、マダム、私の背中に隠れてください! 強盗かも!」
アルバのセリフに、例の男が慌てふためきながら怒声を上げて、太った身体を盾に女をかばう。片や、深いスリットの入ったドレスを纏った女は動じた様子もなく、煙管を一息吹かせてから口を開いた。
「いいえ、ゴルモズさん。案外そうとは言えないみたいよ。貴方達……さっき"上の祭"に出てた子たちでしょう。見ていたわよ。いいステージだったわ」
「お褒めに預かり光栄です。さすがこれだけ立派な店を構える商家の御主人、見る目が違う。思い切ってここまで潜ってきた甲斐がありました」
紅を引いた女の唇の端が上がると、アルバもまた蒼い光を散らす目を細めて応えた。
「ふふっ。あたしは、美と妖と力こそが無上の芸術だと信じているの。その点で言えば、貴方達二人が男性チャンピオンとして相応しかった。"上の連中"は見る目がないのよ。それで? あたしとおしゃべりするためにここまで来たワケじゃないんでしょう」
「はい。単刀直入に申しましょう、マダム。私が求めるものは"上の名工"が手がけたという闇のビキニアーマーです。察するに、こちらにあるのでは? 金品に糸目はつけません。それを是非、お譲り頂きたい」
「あら、大胆ね。もう少し遠回しに探ってくるかと思ったけれど」
女主人は、突然の闖入者であるアルバとジャハルに興味をいだいたようだ。ゴルモズと呼ばれた先客の男そっちのけで、アルバとの交渉に乗ってくる。
男が不満げに息を荒げてアルバに掴みかかろうと踏み出すが、ジャハルが一睨みすると「ぐっ」と呻きながらその場で立ちすくむ。退室することも、再度着席することもできず、事の成り行きを黙って見守るばかりだ。
アルバが闇のビキニアーマーを購入するにあたって用意した宝石類を、女主人は真剣な面持ちで鑑定する。
「この辺りじゃ見かけない宝石ね。純度も高い。"上の世界"じゃ相当な高値がつくでしょう。けれど、これだけでは足りないわ」
「では、この倍をお支払いしましょう。それでは如何かな」
「ふふふ、太っ腹ね。でも、違うのよ。さっき言ったように、あたしが好むものは『美と妖と力』。この宝石では、最後の一つの『力』が足りないと思わなくって?」
女主人はそう言って煙管の灰を盆に落とすと、意味ありげな視線をジャハルに差し向ける。
――なるほど、そういうことか。アルバは内心で舌打ちしながら、表情を笑顔の形にした。
「元より、闇のビキニアーマーは我が従者たる彼に見合う品を探してのこと。その出で立ちを独り占めするのは、マダムの誠意に対する礼を欠きますね。ならば……ジジよ、マダムにお前の勇姿をお見せして差し上げろ」
と、言うことらしい。
このような話はまったく聞いていなかったジャハルは、少々面食らってしまう。だが、どうして地下市場に降りる前に己だけ再び外套を羽織うようにアルバに命じられたのか、ようやく合点がいった。勿体つけていたのだ。
自身がそれだけこのビキニアーマー世界で評価の高い肉体を有していることに対して、そして師父がそれを見出していたことに対して、ジャハルは誇らしく思うと同時に面映ゆくも思う。
元より、師父もろともここまで身を張って来たのだ。手がかりを逃すわけにはいかない。ジャハルはささやかな抗議の声を抑えて「承知した」と外套を脱ぐ。中から現れた引き締まった肉体を目にした途端、女主人が初恋相手を見詰める乙女のように頬を染めて、うっとりと呟いた。
「ああ……素晴らしいわ。貴方の雄々しい姿を一目見て、あたしは心を鷲掴みにされていたの。良いでしょう、アルバさん。この宝石を闇のビキニアーマーの代金として、そして、彼が披露してくれる舞踏を貴方の誠意として受け取りますわ」
そう言って、女主人はテーブルの中央に置かれた包みを解いていく。なかから現れたのは、艷やかな黒革と黒鋼、そして闇の魔力を微かに宿した貴石で飾られた男性用のビキニアーマーだ。長い前垂れには、何らかの呪文が刻印されている。
これが、名工が手がけたという闇のビキニアーマーの一つのようだ。
「ジャハルさんと仰ったわね。どうぞ着替えはあちらの別室を使って頂戴。ゴルモズさん、悪いけど今日の貴方との取引はなかったことにして。それから、このテーブルと椅子を動かしていただける? 舞踏のためにスペースを空けなければ」
「ぐぐぅ……!! わ、わかりました、マダム……」
惚れた弱みというやつか。屈辱に顔を歪めながらも、男は女主人の命に大人しく従う。その姿はなんとも哀れで、ジャハルは多少の同情の念を抱きながらも着替えのために別室へ消えるのだった。
かくして、闇のビキニアーマーの一つをアルバとジャハルは手に入れた。ジャハルの見事な舞踏に感激した女主人は「祭のチャンピオンに贈呈される偽のビキニアーマーを作るまでに、"上の世界の名工"が手がけた闇のビキニアーマーの試作品が何点か市場に出回っているのよ」という情報を教えてくれた。
「では、誰が名工に闇のビキニアーマーを作らせているのだ? それを突き止めねばな」
「ああ、急ごう。長居していては、この格好が当たり前だと心と体が認識してしまいそうだ」
ビキニアーマー姿で裏路地に出た二人。その背中を追いかけてくる騒々しい足音が一つ。
「貴様らあ! 許さんぞ! 闇のビキニアーマーだけではなく、ま、マダムの心までオレから奪いやがって! 絶対に絶対に許さっ、げふう!!」
いきなり後ろから襲いかかってきた哀れなゴルモズを、ジャハルは振り向きざまにワンパンでKOした。あっ、と思う間もなかった。師父を守るための反射的な一撃だった。
「やれやれ。怪しいヤツだったが、よく考えたら別に悪事を働いていたワケではなかったな、此奴。すまなかったゴルモズ。これで美味い酒でも買うがいい」
大の字になってのびているゴルモズの手に、アルバは立ち去り際に余った小粒の宝石を握らせるのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニヒト・ステュクス
闇市場で入手したビキニアーマー改造パーツなる物で
師匠(f12038)をごてごてデコってくよ
ボクは
フリルで胸と腰を覆う事で貧相さを誤魔化し
尚且つ見えそうで見えない
A・ZA・TO・Iという邪念を纏ったゴスパン風のビキニアーマー姿
(ちょんと足を組みキョトンと首を傾げ
郷に入れば郷に従え…って言うでしょ
地下ではこれがイケてるんだから恥ずかしくないって(多分
ビキニアーマーも
作らせた人間に似ると思うんだよね
大会景品の偽物を見た印象をそのまま口に
こんな感じのが欲しいんだけど誰が作ってるかなぁ?
って聞こう
監禁場所や偽物を作らせる設備があるなら
犯人は結構リッチ
大会に偽物送りつける程目立ちたがりだから
案外有名かもね
レイ・ハウンド
弟子(f07171)の手により世紀末デストロイ改造されてくおっさん
屈強な肉体に用途不明の肩パッド
至る所に機能性を無視したトゲトゲが搭載され
強面も相まり邪悪なオーラを放っている!
何 で だ よ !
っつーかお前は恥ずかしくねぇのか?
くそっ
こういう時だけ女の子ぶるんじゃねぇ
だが虎穴に入らずんば虎子を得ず
闇市場に潜入捜査だ…!
恥を忍び(ドスの利いた声で)聞き込むぞ…!
屈強な職人を誘拐したなら集団犯行の可能性が高い
頭がいて半グレ共を金で動かしてるのか?
前はこの辺で見たんだが…
噂じゃ表に出ねぇすげぇ話が…等
最近見なくなった顔や
企みを探る
相手が言い渋れば
素直に吐いてくれりゃぁ悪い様にはしねぇ…
とコミュ力発揮
●
さらわれた名工が作らされた闇のビキニアーマーは、一つだけではない。
その情報を得た猟兵たちは、名工に闇のビキニアーマーを作らせている犯人を探すべく違法ビキニアーマー市場での調査を進めていく。
地下市場の片隅に開かれていた掘り出し物市に足を運んだニヒト・ステュクスは、目につく次第にかき集めてきた『ビキニアーマー改造パーツ』と謳われたブツを抱えて、調査拠点に定めた廃屋に戻ってくる。
そこには、どんよりした表情を浮かべてカソックの前身頃をはだけたゴツいおっさんがいた。彼は名をレイ・ハウンドという。四十八歳、天秤座。
「おい、本気でソイツを俺に着せるつもりか」
「もちろん。この界隈じゃそのほうが自然だし、郷に入れば郷に従え……って言うでしょ」
「何 で だ よ ! 表にはビキニアーマー姿じゃない連中も多かっただろ! 自分で着る以外の目的のヤツも結構いるんじゃねえか!?」
「そうかもしれないけど、師匠は着るべきだと思う。体格いいし、似合うと思うんだ」
最後の抵抗を見せるレイに対して、ニヒトは平然と言ってのける。ちなみに彼女はすでにビキニアーマー姿だ。フリルをたっぷりあしらったゴシックパンク風のビキニは、この違法ビキニアーマー市場にも良く似合っている。
レイの対面のソファに腰掛けたニヒトは、白い肌が眩しい脚を軽く組んで可愛らしく小首をかしげた。
「ほら、ボクもこの通り着ているわけだし……ね?」
「くそっ、こういう時だけ女の子ぶるんじゃねぇ」
レイは盛大に溜息をついて、眉間を指でつまんだ。どうやら抵抗しても無駄のようだ。観念したようにカソックを脱ぎ、ニヒトのプロデュースの下、ビキニアーマーに着替えていくのだった。
そして表通りに現れた二人の姿を見て、違法市場の面々が一斉にザワついた。正確には、レイの姿を見て、だが。
ガッチリしたレイの逞しい肉体を包むものは、鋲が打たれたレザーのビキニアーマーだ。更には、用途不明のトゲがびっしり生えた肩パッドやら篭手、鎖鉄球が繋がった具足、頭には黒羽根を盛大に並べた兜。目元は鏡のようにギラギラしたサングラスを着用し、おまけにどこぞから拾ってきた太い鎖を首に巻いている。
「や、やべえ……」
「なんだアイツは……マジでぶっ飛んでやがる……!」
「め、目を合わせちゃダメよ」
――あれ? なんか思っていたリアクションと違くねえ?
自分を避けるように割れていく人混みを前に、レイはなんとも言えない気分になる。違法市場の住人たちの反応が肯定的なものなのか否定的なものなのかも、素人目にはわからない。
すると、レイの隣を歩いていたニヒトが「あーあ」と小さく溜息をついた。
「これ……師匠、"ヤベーやつ"だと思われてるぽいね。やりすぎたかな」
「冷静に分析すんな! 完全にドン引きされてるじゃねぇか!!」
「まあまあ。わかる人にはこの良さがわかると思うんだ。……ほら、誰か近づいてくるよ」
不満げに鼻を鳴らすレイをなだめるニヒト。見れば、二人を囲む人混みから商人風の男が揉み手をしながら歩み出てきた。
「いやあ、お兄さんすごい気合が入った格好だね。アンタみたいなタフガイを見るのは久しぶりだよ。そちらのお嬢さんのビキニアーマーも、可憐で毒っ気があって見事なもんだ。自分の魅せ方がわかっているね」
「そいつはどうも。それで? わざわざ話しかけてきたってことは、なにか用があるんだろう。まどろっこしいことは抜きにしようぜ」
見た目通りの無頼漢を装い、低く、ドスの利いた声で応対するレイ。人の良さそうな笑顔を浮かべる商人は、動じた様子はない。イリーガルな世界に身を置くだけあって、肝っ玉は座っているようだ。
立ち話もなんなので、という商人に従って彼の店についていくレイとニヒト。応接間の椅子に腰掛けた二人の前に、商人はさっそく商品を並べていく。
「お兄さん、お嬢さん、あんたたちを見たとき、ピンと来たんだ。オレと同じ人種だってね」
商人が並べたビキニアーマーは、錆びた金属部品や得体の知れない染みが付いた革や生地で作られた品々だ。それを目にしたニヒトの眉が、かすかに動く。
「これ……血の錆?」
「わかるかい。へっ、へっ、へへっ、こいつは処刑された殺人鬼が身に着けていた拘束具を素材にしているんだ。こっちは、異端狩りで拷問死した女の囚人服、それでこっちは――」
「いや、説明は結構。大体わかったから。悪いけど、ボクたちが探しているのはこういうのじゃない。闇深きビキニアーマーではあるけれど、もっと綺麗で洗練されたデザインのを求めていて」
商人の売り込みを遮ったニヒトは、祭の賞品として出された偽のレプリカビキニアーマーの見た目を元にして、求める品物のイメージを伝えた。
ニヒトの見立てでは、黒幕は監禁場所や工房設備を用意できる、それなりに財力のある存在だ。それに、わざわざ祭の会場に偽物を送りつけるあたり、強い自己顕示欲も持ち合わせている。そういう人間は、広い違法市場においてもそう多くないはずだ。
「……とまあ、そういう品物を作っている人や、取り扱っている商人を知らない?」
「はあ……。まあ、心当たりがないわけじゃないが……」
あまり取引に乗り気ではない様子の二人を見て、商人は明らかに気が削がれた態度になっていた。レイは、並んだ商品のなかから、血脂で毛羽立った革ベルトを手に取る。
「ずいぶん汚れてしまっているが、革質自体は悪くねえ。一応確認するが、コイツを作った職人もお前も、自分で殺しを働いて素材を調達しているワケじゃねえんだよな?」
「当たり前だよ。ちゃんと役人から素材を買い取って作っているんだ。こいつは芸術作品だ。生と死、罪と罰の螺旋をテーマにした哲学の体現なんだ。綺麗事ばかり言う"上の連中"は理解しようともしないがね」
またぞろ熱っぽく語りだした商人に、レイは内心でうんざりしながら財布を取り出す。素直に吐いてくれるなら、恫喝も必要あるまい。
「わかったわかった。こいつを一つ譲ってくれ。その代わり、話を聞かせてくれるか? お前と違って暴力も厭わない集団が此処らで活動しているとか、聞いたことないか」
代金を受け取った商人はコロッと上機嫌な表情に戻り、二人の質問に答えてくれた。
「闇のビキニアーマーの試作品のことだろう? 噂は聞いたことあるよ。だが、誰がどこで作っているかまでは知らない。取り扱っている商人は何人かいるけれど、そのなかで一番の大店をあたってみるのがいいんじゃないかな」
購入したての禍々しいベルトをレイに装着させながら、商人は言葉を続ける。
「それと、アンタの言ってた『暴力も厭わない集団』だが……明らかに人間じゃない物騒な連中を雇ったヤツがいるって専らの噂だ。もしかしたら、偽のレプリカビキニアーマーを送りつけたヤツかもしれないな」
「そう、教えてくれてどうもありがとう。ついでだから、その大店の場所を教えて貰える?」
用事は済んだ。席から立ち上がったニヒトが最後にそう尋ねると、商人は肩をすくめながら無言でイヤリングを指し示す。ニヒトは苦笑して、銀貨を数枚テーブルに置いた。
「毎度。この大通りをずっと真っ直ぐいけば見つかるよ。でも、そこはホントの上客しか立ち入れないような店なんだ。門前払いを受けても泣くなよ」
「ご心配どうも。大丈夫、ちょっとしたアテがあってね」
さらに極悪そうな見た目になってしまったレイはにやりと笑みを浮かべると、店をあとにした。彼に続いたニヒトも、細長い針が下がったイヤリングを耳に着けている。
「さて、それじゃあ仲間に情報を共有しに行くか。大店には俺らじゃ入れまい」
「そうだね。ところで師匠、これ、ボクに似合ってるかな」
「あ? まあ……悪くないんじゃねえの。知らねえけど。そのぶら下がっている汚え針、なんだよ」
地面に落ちていた鏡片を手にして自身の顔を見ていたニヒトは、「アイアン・メイデンの針の先端だってさ」と事も無げに答えた。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
クラリス・ポー
勇者に選んでくださって、ありがとう御座います!
噂に聞く名工は信念をもち一心に研鑽を積んで
魂のビキニアーマーを作り続けていたのでしょう
…無理やりに作らせるなんて、許せません!
コミュ力と聞き耳で情報を集め
違法取引の現場に乗り込みましょう!
あっ、コンテストで顔が割れているかも…
じゃあ変装に仮面をつけて行きます!
このビキニアーマーを着ている限り
私は一人じゃなくて
街の職人さん達と一緒な気がします
だからマントは着れません!
取引現場に名工の作品があれば話が早いですが
無くても何らかの情報を持っている可能性があるので問い詰めます
いいですか?
私は本気です!
おとなしく白状しない人は、ぺろぺろ舐めるんですからね!?
●
仲間からの情報を受けて、クラリス・ポーは違法ビキニアーマー市場の奥へと向かう。目指す先は、闇のビキニアーマーを最も多く取り扱っているという、違法市場で随一の大店だ。
――不安がないと言えば嘘になります。でも、このビキニアーマーを着ている限り、私は一人じゃない……街の職人さん達、それにたくさんのビキニアーマーの勇者達と一緒なんです。
だから、クラリスは身を隠すマントを着用していない。面が割れているのを考慮して、変装用のマスクこそ着けているが、祭の舞台に立った時と同じビキニアーマー姿で、彼女は違法市場を往く。
ふんす、とクラリスが鼻息荒く見上げる先には、地下遺跡の中らしからぬ豪奢な作りの店。ドアマンが彼女の姿に気が付き、ジッと睨みを利かせてくる。だが、その瞳が何かに気がついて、丸く見開かれた。
「もしや……あなたはチャンピオン!?」
「えっ、なんでバレたんですか? ちゃんと変装しているのに」
「それはもう、チャンピオンのオーラは変装だけで隠し通せるものではありませんから。さあ、どうぞ中へ! オーナーもきっとお喜びになります」
「あ、ありがとうございます」
変装がバレたのは残念だが、それが逆に良かったようだ。ただの客では入れない大店であっても、"上の世界のチャンピオン"は別格らしい。
難なく入店を果たすことに成功したクラリスは、外観と同様に豪華な内装がほどこされた店内へと通される。
そこでクラリスを待っていたのは、褐色の肌に長い耳を持つダークエルフの女商人だった。黒地に金の刺繍が施されたビキニアーマーを纏っている様は、闇の女魔術師を思わせる。
「あなたが、この地下市場で一番の商人さん……ですね? クラリス・ポーと申します。あなたにお尋ねしたいことがあってやって来ました!」
「チャンピオンをお迎えすることが出来て、わたくしどもも光栄ですわ。わたくし、当店のオーナーを務めておりますレディ・ローズと申します。以後お見知りおきを……して、わたくしにお聞きしたいこととは?」
「これの出処を教えてください、レディ。この闇のビキニアーマーを名工さんに作らせたのが誰なのか、あなたならご存知のはずですよね」
勧められたソファにちょこんと飛び乗ると、クラリスは祭の賞品として贈呈された闇のビキニアーマーを卓上に置いた。それを目にした途端、端正なレディの顔にいびつな笑みが浮かぶ。
「ああ、これは……。一目だけでも見てみたいと願っていた、究極の闇のビキニアーマー……! わたくしが手に入れた試作品とは比べ物にならない完成度……まさに、至宝だわ!」
「……私には、そうは思えません。噂に聞く名工は信念をもち、一心に研鑽を積んで、魂のビキニアーマーを作り続けていたと聞いています。……だから、誘拐して無理やりに作らせたこの闇のビキニアーマーに、価値があるとは思えません」
囚われの名工がどんな気持ちで闇のビキニアーマーを作っていたのか、そのことを思えばクラリスは義憤が抑えられなかった。そんな彼女を見て、レディは「チャンピオンは、まだまだお若くてらっしゃる」と嘲るような笑みを浮かべた。しかし、すぐに商売人としての冷徹な表情に変わる。
「いいでしょう、貴女の望む情報をお教え差し上げます。その代わりと言ってはなんですが、この究極の闇のビキニアーマーをわたくしに譲ってくださいまし。もちろん、タダとは申しませんわ。情報と共に金貨三十枚をお支払い致しましょう」
レディの申し出に、クラリスは首を横に振った。
「お金は結構です。このビキニアーマーも差し上げます。私が欲しいのは、名工の居場所の情報だけなんですから」
クラリスの無欲に過ぎる言葉に、レディは信じられないと言った様相を浮かべた。そして、なにか裏があるのではと表情を険しいものに変える。
「……一つ伺っても? チャンピオンは名工の居場所を知って、どうするおつもりで?」
「無論、助け出します。それ以外に何があると言うのでしょう」
「……」
クラリスの目を見つめていたレディは、そっと溜息をついて、おもむろに手元のベルを鳴らした。すると、部屋の奥の扉が開け放たれ、ビキニアーマー姿の屈強な男たちがゾロゾロとやってきたではないか。
「これは……どういうおつもりですか、レディ?」
「ほほほ、バカな子猫ちゃん。勇者ごっこはお祭りのなかだけにしておけば良かったものを……名工を助けるですって? そんなこと許さないわ! 彼には一生、闇のビキニアーマーを作り続けて貰わなくっちゃね! あんたたち、チャンピオンに少しばかり社会勉強をつけておやりなさい!」
「はっ!」
本性を顕にしたレディは、配下の男たちをクラリスにけしかけてきた。
しかし、逞しい男たちとはいえ所詮はただの人間。クラリスの敵ではない。
「これが闇のビキニアーマーに魅せられた人間の本性ですか……なんて卑怯なんでしょう! もう怒っちゃいました。謝ってくれるまで、私、ぺろぺろ舐めちゃうんですからね!?」
襲いかかってきた男たちの腕をかいくぐり、クラリスはぺろり、ぺろりと"猫の毛づくろい"を食らわせていく。すると、摩擦係数がゼロになった男たちは床の上をツルツルと転がり始め、立ち上がることすら出来なくなる。
「なっ、なっ、なにが起きているの……!?」
「レディ、今度はあなたの番ですよ。名工の居所を教えてくれるまで、床の上を転がって貰います!」
「い、いやぁああ~!!!」
……ぺろっ、つるっ、どてっ!
かくして、クラリスはレディから『名工を誘拐した違法市場の元締め』の場所を聞き出すことに成功したのだった。
成功
🔵🔵🔴
ルルティア・サーゲイト
ふふふ、楽しげな展開じゃのう。こう言う時はカラダを使うんじゃよ。まずは何か知ってそうな奴を捕まえる必要があるが……これに関しては他の猟兵を頼る。妾は口を割らせる方に専念する。
まあ、男にしか使えぬ手ではあるが……まず、下着は予めはいておく。そして、口を割らせたい男の前で脱ぐ。
「ふふふ、それならカラダに聞くしかない、のう?」
魅了技能の出番じゃな。まー、思わせぶるだけで割るならそれでも良いが、割らぬなら脱いだ下着を顔に押し付ける。
「さて、この先つまらん嘘を付くと痛い目に会う。なんなら、試しても良いが……どうする?」
カラダに聞く、この手に限るのう。
●
「いよいよ黒幕の居場所が割り出せたか……ふふふ、楽しげな展開じゃのう」
名工を誘拐して闇のビキニアーマー制作を強要しているのは、違法市場の元締めとして振る舞う男だった。名をバスバッハと言うらしい。
ルルティア・サーゲイトは相手に不足なし、と言わんばかりに口の端を上げると、元締めの住居兼工房の様子を伺う。
元締めは、ビキニアーマー作りに欠かせない素材類の問屋を営んでいた。彼に睨まれたら、この違法市場での商売は一切できなくなるというわけだ。
「店の使用人も多いし、客の出入りも多いのう。下手に乗り込めば大騒動になりかねん。さて、どうしたものか……おや、あれは?」
どう攻略するものかとルルティアが思案していると、店先で忙しなく使用人に指示を飛ばしていた番頭の男が、数名の手下を連れて表に出てきた。どうやら夕方の休憩の時間らしい。
これを逃す手はなかった。ルルティアは番頭の後を追っていくと、ひとけのない路地裏に差し掛かったところで声をかけた。
「お主、しばし待たれよ。ちと話がある」
「あァん? なんだお前は。こちとらお前みたいなガキにかまっているヒマはねえんだ、失せな!」
「が、ガキ……。貴様、バカにしおってからに。まあよい、足を止めたのは好都合。いいか、単刀直入に言うぞ。妾をバスバッハに取り次いで貰おう。イヤとは言わせんぞ?」
「何だと? 俺がお前を? バスバッハさんに? 冗談も休み休み言え! おい、お前たち、ちょいと痛い目みせて追い返してやんな」
不機嫌そうに顔を歪めた番頭は、手下に命じてルルティアを追い払おうとする。元より、相手が簡単に口を割ったり言うことを聞くとは思っていなかった彼女は、慌てる素振りも見せない。それどころか、あどけない顔にどこか嫣然とした表情を浮かべてみせる。
「また妾をガキと言うたか。ふふふ、妾が本当にガキかどうか確かめてみるか? お主らのカラダで、のう?」
そう言うなり、ルルティアは股下の幅も際どい腰巻タイプのビキニアーマーの中に両手を差し込み、指先に引っ掛けた"中身"を腰を折りながらゆっくりと下ろしていく。視線はジッと、上目遣いで男たちを見つめたまま。
「お、お前……いきなり何してるんだ!?」
ルルティアの突然の行動に、手下二人は気圧されたように動きを止めた。その表情は、ほんのり赤らんでいる。ルルティアの瞳に射抜かれて、魅了技能にすっかりあてられてしまったようだ。
だが番頭はそれだけではルルティアに屈しなかった。
「情けねえヤツらだ、こんなガキのストリップに狼狽えやがって。ただの商人だと思って舐めんじゃねえぞ、ガキンチョが! こちとら切った張ったの修羅場を幾度も掻い潜ってきたんだ、てめえなんざ片手一本で、へぶっ!」
「ええい、何度もガキガキ言うでないぞ、デリカシーのないヤツじゃ。まー、思わせぶるだけで言うことを聞くとは妾も思っておらん。ならば、やっぱりカラダに聞くしかあるまい」
ルルティアがあらかじめ履いておいた、偽装用下着……脱ぎたてのそれが、見れば番頭の顔面に仮面のように張り付いているではないか。彼女が投げつけた下着はただの下着ではない。ネイキッド・デュエルという、れっきとしたユーベルコードなのである。
「さて、この先つまらん嘘を付くと痛い目に会う。なんなら、試しても良いが……どうする?」
「ぐ、ぐぐぐ……一体なにが望みなんだ……」
下着を引っ剥がそうともがく番頭だが、ただの人間にはそれは不可能だ。尻もちをついて後ずさる彼に、目を細めてサディスティックな笑みを浮かべるルルティアがゆっくりと近づいていく。ちなみに手下二人は、そんな彼女の姿にすっかりお熱らしい。まったく手出しをしてこない。
「簡単じゃ。妾と、妾の仲間をバスバッハの下へと案内せよ。騒ぎを起こさぬよう、特別な客だと紹介してな……出来るな?」
「わ、わかった。お前の言う通りにするから、こいつを外してくれ……い、痛だだだだッ!?!?」
「ほれ、言うたじゃろ。嘘をついたら痛い目を見るとな。安心せい、痛くなくなるまで、同じ質問を続けてやるからのう、ふふふ」
赤い瞳を爛々と輝かせるルルティアの笑い声が、暗い路地裏に響いた。
成功
🔵🔵🔴
境・花世
違法なびきにあーまーとは一体……
奥が深いね、この世界
再び神妙な顔で地下へ滑り込み
コミュ力活かして情報収集し
得意の視力で、一際精巧で高額な
禍々しい鎧を売る軒先を探そう
もっと闇深いのが欲しいな、と
店員を見つめれば催眠術の虜
どこから手に入れれば、いい?
元締を教えてよと微笑みかけて
居場所を知れたらしめたもの
ところで、闇のやつを着ると
一体どうなるの……?
あっいや教えてくれなくていいです
着ないから! 違うから!
追跡ダッシュで元締のところへ
見事辿り着けたなら
催眠術を駆使……いやもうなんか、
――名工の居場所、吐いてもらおうか
ぎりぎり締め上げるのは
依然脱げないこの格好への
ちょっとした八つ当たりも含めて、うん
●
脅しにすっかり参ってしまった番頭の案内で、猟兵たちは事件の黒幕である元締め・バスバッハの顧客専門ギャラリーに招かれることに成功した。
まるで美術館のように照明まで考慮されたギャラリーには、良し悪しはともかく、手間もお金も掛かっていそうなビキニアーマーが飾られている。
「これが違法なびきにあーまー、かぁ……」
「違法とは人聞きが悪いですな。新時代のビキニアーマーと呼んで頂きましょう」
おそらく本物の動物の骨……もしかしたら、人間のそれかもしれない素材を用いたビキニアーマーを前にして、境・花世は気疎い声音で呟いた。彼女のつぶやきに反論した、初老ながらがっちりとした体躯を誇るヘビ柄のビキニアーマー姿の男が、元締めのバスバッハである。
猟兵の代表としてギャラリーに通された花世はいま、バスバッハと闇のビキニアーマー商談の真っ最中だった。
「それは失礼。知れば知るほど奥が深いね、この世界。わたしもビキニアーマーにはうるさいほうだけど、ここに並ぶビキニアーマーは全く未知の世界で新鮮だよ」
もちろん、ウソだ。花世がビキニアーマーを着たのは今日が初めてだ。しかし、職人芸が光る百花のビキニアーマーを身に着けた花世の姿は、誰もが羨む見事なスタイルと相まって、実に様になっている。目が肥えているであろうバスバッハも、彼女がビキニアーマー初心者だとは見抜けないようだ。
「これも禍々しくてすてき。でも……ちょっと違うかな」
「ほう、これは私が扱う品物のなかでも特に手間がかかっている一品。屍竜の血で染め上げた竜革を用いたビキニアーマーですぞ。それもお眼鏡に適わないとなると、貴女様が満足できる品をご紹介することは難しいやもしれません」
幾らかの皮肉を込めた慇懃無礼な口調。バスバッハは花世を横目で見ながら酷薄な笑みを浮かべる。価値のわからない客なら相手にしない、というワケなのだろう。
花世は元締めの態度には反応を見せず、余裕たっぷりな足取りでギャラリー内を巡っていく。そして、くるりとバスバッハに向き直り、意味深な笑みを浮かべた。
「もっと闇深いのが欲しいな。例えば、そう、デルメロス一の名工が手がけた闇の一着とかね。できれば試作品じゃないのがいい。大会の賞品になったヤツもダメ。最新作、あるんでしょう? 見せてくれる?」
「ふむ、そういうことでしたか。うちの番頭が特別な客、と言っていた理由がわかりましたよ」
「そういうこと。せっかくここまで来たの。ビキニアーマー界の風雲児であるバスバッハさんが、まさか『ありません』だなんて、そんな男が廃るようなセリフは言わないよね?」
花世の挑発的な言葉に、バスバッハも観念したように「参りましたな。そう言われては致し方がない」と苦笑する。そして、ギャラリーの奥へ通じる扉へと彼女を促した。
通された部屋に飾られていたものは、三着のビキニアーマーだった。
素人目にもわかる、蠱惑にして艶麗、そして異形の美。闇の魔力を宿していた。花世の右目の奥が、じくりと痛むほどの。
「これが……真の闇のビキニアーマー。これを着ると、一体どうなるの……?」
思わず、そう問わずにはいられない。バスバッハは一着のビキニアーマーを手に取ると、花世の側へと歩んでくる。
「これの生地には、百年前に殉教した聖職者の遺髪が編み込まれています。皮肉なものです。神々に殉じたというのに、遺髪に残されていたものは恐るべき呪詛と怨念だ。着るとどうなるか? 私も是非知りたい。どうです、花世さん……試着してみますか? もしかしたら、神々の国へと至る道が開けるかも知れませんよ」
「うっ……いや、結構です。わたしは知りたくないです。というか、なんでにじり寄ってくるの!? 着ないから! 違うから!」
「ははは、そう言わずに。あんた、本当はただの客じゃないんだろう? 何の目的でここに来たのか知らないがちょうどいい、あんたの肉体でたっぷりと闇のビキニアーマーの真の姿を確かめさせて貰おうか!!」
そう叫ぶなり、バスバッハが花世に飛びかかってきた。その動きをバックステップで難なく避けた花世は、彼の関節を瞬時に極めて床に叩きつける。
「はー……、いや、もうなんか、わたしもずっとこの格好で過ごしていて、溜まっているモンがあるの。いつ八つ当たりでポキっとやっちゃうかわからないから。それを踏まえて、よく考えて答えてね」
「うっ、ぐうううっ」
「――名工の居場所、吐いてもらおうか」
痛みに脂汗を流すバスバッハ。花世がさらに腕を絞ってみせれば、とうとう耐えかねた男が叫ぶ。いや、それは叫びではなく、哄笑だった。
「ぐは、はははっ、もう手遅れだ! 彼はもう、闇のビキニアーマーの魅力にすっかり心囚われている! 最初こそ強要されてイヤイヤだったが……下らない倫理観や正義感の枷から解き放たれた作品作りに、いまや夢中になっている! はははは、助け出すなんて、無意味だぞ!」
「なんですって?」
バスバッハの勝ち誇ったような言葉を受けて、拘束する花世の腕の力が一瞬だけ緩んだ。その隙を突いて、彼はもんどり打ちながらギャラリーの小部屋から逃げ出す。そして、「せ、先生方! 先生方! お願いします、出番です!!」と大声で叫んだ。
成功
🔵🔵🔴
第3章 集団戦
『戦闘種族『護理羅』』
|
POW : 魔闘武術『瞬力』
【自身の属性+武術を合体させた技】による超高速かつ大威力の一撃を放つ。ただし、自身から30cm以内の対象にしか使えない。
SPD : 魔闘武術『歩闘』
【自身の属性+武術を合体させた技】で対象を攻撃する。攻撃力、命中率、攻撃回数のどれを重視するか選べる。
WIZ : 魔闘武術『連魔』
【属性攻撃】が命中した対象に対し、高威力高命中の【自身の属性+武術を合体させた技】を放つ。初撃を外すと次も当たらない。
イラスト:FMI
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔴🔴🔴🔴🔴🔴🔴
|
種別『集団戦』のルール
記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
●
バスバッハが助けを求めると、ギャラリーの奥から人間とよく似たシルエットの、しかし明らかに人間ではない巨躯を誇る人外の者どもが現れた。
戦闘種族『護理羅』と呼ばれる、武を極めるために各地を放浪する獣人族である。バスバッハは彼らを雇い、名工をデルメロスから拉致したのだろう。もしかしたら、それよりももっと前に、彼らの武力を背景にして今の地位を築いたのかもしれない。
『任せろ、強敵と戦うのが我らの務め、そして報酬である』
泣きつくバスバッハを背中にかばいながら、護理羅はスケッチブックに書いた文字を彼と、猟兵たちに見せる。見た目はゴリラなのに意外と達筆だ。
バスバッハを捕らえるのも、名工の居場所を探し出すのも、まずは目の前の敵を倒さねば始まらない。
護理羅とほぼ時を同じくしてギャラリーに集結した猟兵たちは、各々の武器を構えて戦いに臨む。
無論、全員、引き続きビキニアーマー姿のままだ!
ルルティア・サーゲイト
ふむ! 強敵と戦うのが報酬とは面白い奴らじゃ。よかろう、ならば
本気で遊んでやる。
なお、下着はさっきの男に張り付けたままくれてやった。そのうち剥がれるじゃろ、たぶん。
初手はあの会場で見せた残影舞踏陣である。技のキレもあの時と変わっておらん。それ故に、強者を自称するならば対応はしてくるじゃろう。妾が大鎌を使った武器戦闘しかしてこないと考えるはずじゃ。
実際、妾の大鎌は素手の格闘家とは相性が悪い。懐に入られればそれまでじゃ。故に、そこまで分かっているなら対策できん妾ではない。
答えは蹴り技じゃ。元より隙を埋める為の蹴り技は備えておるが、新技としてこのLDSを一発カマしてやろう。
●
相対する猟兵と護理羅は、ほぼ同人数だ。多対多の集団戦ではあるが、この戦は個々人の能力差の優劣が勝敗を決めると言って過言ではあるまい。
絶妙なバランスの上で成り立っている腰巻の裾を調整すると、ルルティア・サーゲイトは肩に担いでいた大鎌を改めて構え直す。
「ふむ! 強敵と戦うのが報酬とは面白い奴らじゃ。期せず戦力差も僅少。よかろう、ならば妾が先鋒として本気で遊んでやる。我こそはという剛の者は名乗り出るがよいぞ」
一歩前に出たルルティアの呼びかけに応じて、最前列の一体が歩み出る。燃える赤毛を鶏冠のように逆立てた道着姿の護理羅だ。
体格差は歴然。身長も肩幅もルルティアの倍以上、体重に至っては三倍はあるだろう。だが互いに覚悟を決めた武人同士、戦に臨む構えが出来ていると見るや、それ以上の言葉を交わすことなく双方同時に地を蹴った。
「遅い!」
ルルティアの体捌きは、祭の壇上で見せたものと同等……いや、実戦の場ゆえかそれ以上だ。偽装下着は番頭の男にくれてやったまま、というのもあるだろう。彼女の力の根源は、そこにある。
護理羅の炎纏う拳を横飛びで避けざま、ルルティアは大鎌を振るう。舞い踊るような流麗な刃の閃きが、屈強な護理羅の身体に深い裂傷を負わせた。
その頑健さは見た目通りらしい。護理羅はそれでも怯まず、一声吼えると再度ルルティアに押し迫ってきた。
――ふん、やはり妾の得物を見て至近戦が有利と見たか。じゃが、その程度の対策ができん妾ではない。
速攻でルルティアの大鎌の間合いの内側に潜り込もうと試みる護理羅。ルルティアはそれを真正面から迎え撃つと、おもむろに大鎌を床に放った。思わぬ行動に、一瞬、護理羅の動きが鈍る。
「これが、答えじゃ!」
その隙を見逃すルルティアではない。床を蹴り上げた彼女はドロップキックの要領で護理羅の顔面に襲いかかると、相手の頭を脚の付け根でがっちりホールドする。そのまま身を捻って後ろへ回転すれば、護理羅の巨躯は難なく宙を回った。
「ふふ、妾の秘密を見たからには、生かして返す訳にはいかんからのう?」
頭から床に叩きつけられた護理羅は、そのままぴくりとも動かなくなる。激しい大技で際どいレベルを超えてしまった腰巻の裾を、人に気づかれぬうちに直しつつ、ルルティアは倒れ伏した護理羅を見下ろしながらニヤリと笑うのだった。
成功
🔵🔵🔴
イネス・オルティス
一族伝統のビキニアーマーで堂々登場
「名工が闇のビキニアーマーの魅力にすっかり心囚われている?
闇の力か何かで洗脳されてしまったのかも。すぐに助け出して目を覚まさせないと」
まず【薄衣甲冑覚醒】を攻撃力重視で使用
「ビキニアーマー勇者兄妹、凄い人たちだわ。その人たちの故郷でこんな暴挙許せない!」
身体に似合わない”怪力”を発揮しビキニアーマー属性の”属性攻撃”で”串刺し”を狙う
「これが正しいビキニアーマーの力よっ!」
:真の姿:
きらきら光るなんか強そうなオーラを纏っている
アドリブ・絡み・可
クラリス・ポー
【WIZ】
戦闘種族『護理羅』…!
バスバッハさんの思想に共感してか
単に雇われているのかは知りませんが
趣味嗜好の追求で許される領分を超えています
貴方達のそれが闇のビキニアーマーだとするなら
わたし達のビキニアーマーは光
ビキニアーマーと兄弟の伝説という希望に
熱狂する人達の素敵な顔をわたしは知りました
光に闇はつき纏うのかもしれない…
でも諦めません
恐れず立ち向かう勇気こそ、黄金の心だから!
貴方達の野望は
今日、ここで挫きます!(ビシッ
瞬力がある以上組み合うのは不利
野生の勘と第六感にダッシュで出来るだけ距離を保ちます
わたしの持てる力と動物と話す能力の全てで相手を引付け
複数のチームワークに攻撃の隙を作りますね!
●
「初戦は私たちの勝利。これに続かねばビキニアーマーの勇者とは言えないわね、クラリスさん」
「はい、イネスさん! 正義は必ず勝ちます! 行きましょう!」
戦いの火蓋は切って落とされた。猟兵と護理羅は狭いギャラリーで入り乱れるように戦いを繰り広げていく。イネス・オルティスとクラリス・ポーは、互いの死角をかばい合いながら護理羅たちと相対する。
『護理羅さん! あなたたちはなぜ、バスバッハさんに加担しているのですか? 彼は自分の欲望のために悪事を働くような人なんですよ! あなたたちが武道を追求しているとしても、許される領分を超えています!』
イネスが攻撃をする隙をつくるため、クラリスは護理羅たちの意識を引き付けながら動物会話を試みる。彼女の流暢なゴリラ語(?)に護理羅は驚いた様子だが、覆面をつけた一体がウホウホと言葉を返してきた。
『人の世の法は我らには関わりなきこと。我らの力が望まれ、我らの力を振るう戦場があれば、そこに赴くまで』
『そうですか……ならば私たちはやはり、あなたたちと戦わねばなりません。人の法と安寧を守るのが、私たちビキニアーマーの勇者の使命なのだから!』
会話はそのやりとりだけだった。あとは拳で語り合うのみ、と言わんばかりに覆面護理羅は豪快な体術をクラリスに放ってくる。
それらを巧みにかわしてみせるクラリスに立ち代わり、イネスが護理羅たちに迫った。
「ビキニアーマー勇者兄妹、凄い人たちだわ。その人たちの故郷でこんな暴挙、許せない!」
祭会場で見た人々の熱気と尊敬の念。それを目の当たりにした以上、例えどんな理由があろうとイネスは黒幕一味を許すつもりはなかった。
その身に未知の力が湧いてくるのを、イネスは実感する。一族を守護する精霊への信仰心が、ビキニアーマーの精霊への信頼が、そしてビキニアーマーの兄妹勇者への畏敬の念が、イネスと、彼女が纏う一族伝統の鎧に力を授けていくのだ。
覆面護理羅ともう一体の護理羅が、並々ならぬ力を宿したイネスの気配に圧倒される。猛然と敵に迫ったイネスが繰り出したる技は特別なものではない。槍術では基礎の基礎となる重槍による一文字突きだ。しかし、ビキニアーマーの力を宿したその一撃は、竜巻が如く暴威を以って護理羅どもを纏めて貫通せしめる。
「さすがです、イネスさん! バスバッハさんたちが信奉するのが闇のビキニアーマーだとすれば、これこそがビキニアーマーの光……! 強敵にも、陰謀にも恐れず立ち向かう勇気こそ、兄妹勇者が遺した黄金の心!」
神々しきビキニアーマー姿に変じたイネスの姿に鼓舞されたクラリスは、その小さな身体に収まりきらない黄金の心を輝かせる。にくきゅうも愛らしい指先を天に向ければ、彼女の指先に光の粒子が集まってくる。
深手を負いながらも、一矢報いようと捨て身の連携攻撃を食らわさんとする護理羅たち。そんな敵の眼前に、クラリスは天より下る裁きの光柱を下した。
「貴方達の野望は! 今日、ここで挫きます!」
光に闇はつきまとうもの。だが、その闇だって、光輝く魂があれば打ち払うことができる。諦める理由が、どこにあろうか? クラリスが齎した光は、まさにその体現だった。
「これが正しいビキニアーマーの力よっ!」
真の力を宿したイネスの身体は光り輝き、直視するのも叶わぬほど。光柱で足止めを喰らった二体の護理羅は完全に動きを止めてしまっている。
こうなれば、完全に的だ。光のビキニアーマー戦士として覚醒したイネスを阻むものはなにもない。焔が如き赤髪をなびかせ戦場を駆ける彼女の姿は、伝承に語られる妹勇者の再来のよう。横薙ぎに揮った重槍の穂先は護理羅どもの胴体を確実に捉え、一刀のもとに両断する。
断たれるやいなや、真っ白な灰となって躯の海へと散っていく護理羅ども。
イネスの猛々しき姿に、他の護理羅どもも狼狽える。
そんな敵たちに槍を向けながら、イネスは驕るでもなく静かな口調で告げる。
「闇の力かなにかで洗脳されてしまったのかもしれない、名工……彼を目覚めさせるために、止まっているヒマはないの。さあ、次は誰? 真のビキニアーマーの力を知りたい者から、かかってくるがいいわ」
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アルバ・アルフライラ
ジジ(f00995)と
あれはゴリラだ、それ以上は考えるでない
…とは云え彼奴等は相当の手練と見受けられる
油断は死を招くぞ、ジジ
――出でよ、死霊ども
デュラハンにジジの隙を埋めるようサポート
『瞬力』の射程内に従者がいた場合は庇わせる
ドラゴンゾンビに己の護衛を任せつつ護理羅を攻撃
範囲攻撃で三匹纏めて蹂躙してやるが良い
――ああ、任せよ
『連魔』の初撃は第六感、見切りで回避
難しければ私へ攻撃が通らぬよう屍竜に守らせよう
ふふん、中々言うではないかジジよ
まるで伝承に残る勇者の様だぞ?
等と揶揄しつつも支援の手は緩めぬ
…今年の夏服は少しばかり露出を高めにするか
おっと何でもないぞ?
さあ件の名工を迎えに行こうではないか
ジャハル・アルムリフ
師父(f00123)と組み
既に訳の分からんものばかり見ているが
いよいよ何だあれは
承知、こんな面妖なものに負ける気は欠片もない
【怨鎖】を先ず一体へと放ち鎖を繋ぐ
接近しての攻撃は
第六感も活用し怪力で鎖を引き
体勢を崩し、タイミングをずらす事で回避率を上げる
獣…?どもが振り回せぬ重量なら
伸ばし撓めたそれを鞭のように用いて
別個体の妨害を兼ねた攻撃も行い
師の喚んだ下僕らと連携を図る
行ったぞ、師父
師の賛辞にも何故か心が奮いきらず
…俺は従者で良い
そこまで達者なら書で身を立ててもよかったろうに
貴様等の敗因は
……。
――勇者の衣を纏わぬ故だ
堕ちたという名工は無事だろうか
そして、いつまでこの姿で居ればいいのだろうか
●
デルメロスに来てから、色んなことがあった。色んなものを見てきた。
ビキニアーマーの兄妹勇者。ビキニアーマーを信奉する人々。違法なビキニアーマー市場。そして、護理羅。
……いや、ゴリラ?
「何だあれは」
「だから、それ以上はやめておけジジ、考えても我らにはわからん世界だ」
将来の生真面目さゆえに目の前の事象をまっすぐに受け止めがちなジャハル・アルムリフに、師父であるアルバ・アルフライラは嘆息混じりに応える。
相手の見た目はともかく、護理羅たちの戦闘能力は決して侮れない。手練と言って良いだろう。「油断は死を招くぞ、ジジ」とアルバが発した警句は、己に言い聞かせた言葉でもある。ビキニアーマーのギャラリーでゴリラに殺されたとあれば、悔しさのあまり、躯の海から滲み出る類の連中の仲間入りをしてしまいそうだ。
「――出でよ、死霊ども」
杖の一振りで魔法陣を描いてみせたアルバは、死を纏うた者どもを召喚する。首なしの騎士は彼の命令に従ってジャハルの傍らに寄り添い、屍竜は彼自身の身を守るために狭いギャラリーのなかで身を屈め、迫る護理羅たちに剛爪を振るっていく。
アルバの警告をよく胸に刻み込んだジャハルは、屍竜に薙ぎ倒された護理羅たちに慎重な手立てを講ずる。「こんな面妖なものに負ける気は欠片もない」とは言ったものの、相手を甘く見るつもりは彼にはなかった。
血の雫を肌の下に潜む悪しきもので撚り固め、ジャハルが生み出したるは怨鎖。体勢を立て直さんとしていた一体の護理羅にそれを放って動きを止めると、抵抗もさせずに床へ引きずり倒す。
炸裂した鎖の呪詛に護理羅は呻き声を上げたが、抵抗をする力はまだ残っているらしい。鎖に繋がれながらも、ジャハルと力比べをするつもりのようだ。
一方、屍竜の一撃を耐えた別の護理羅が、目標をアルバと見定めて襲いかかってきた。「行ったぞ、師父」というジャハルの言葉を受ければ、アルバは口の端を上げて「――ああ、任せよ」と余裕を含んだ声音でささやく。
召喚術を使っている以上は避ける余裕もなく、彼は繰り出される護理羅の連撃を、屍竜の腕にいだかれることで防いでみせた。
苦々しげに顔を歪めて間合いをとる護理羅に、横手から黒鎖が襲う。敵を自由に動かしていてはラチが明かないと断じたジャハルが、護理羅どもの行動を阻害するべく、鞭振るうように鎖で面制圧を試みたのだ。
「ふふん、ジジよ。まるで伝承に残る勇者の様だぞ? 構わん、このまま一気に片付けてやるとするか!」
「勇者? ……俺は従者で良い。だが、後半の言葉には賛成だ」
師父のからかい言葉をマジメに受け取り、奮い立たぬ心に戸惑いながらも、ジャハルは己がすべきことに意識を集中させる。
共に戦う首なし騎士の力を借りて、ジャハルが力任せに護理羅どもを鎖で一纏めに絡め取ると、ギャラリー全体を震わすほどの咆哮が響いた。そして、アルバに命じられてあぎとを大きく開いた屍竜が、拘束された護理羅どもをたった一口でバクリと丸呑みにしてしまう。
「見た目通りの怪力だが、遅れは取らずに済んだか。貴様らの敗因は……勇者の衣を纏わぬ故だ」
呑み込んだ護理羅ともども虚空に消える屍竜と首なし騎士。大会で纏っていたビキニアーマー姿のジャハルが、己の姿を見下ろしながら感慨深く呟いた。そのセリフの合間に、意味深な間が空いたのは致し方のないところ。
「この格好のおかげかどうかはわからんが、今年の夏服は少しばかり露出を高めにするのも悪くないやもしれん」
ジャハルの言葉に可笑しげに顔を緩めたアルバ。訝しげにこちらを見やる従者の視線を、涼しい顔をして受け流した彼は、しかし、すぐに表情を引き締めなおす。
まだ、戦いは終わっていない。闇に堕ちたという名工を救うには、未だ道半ばだ。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
アメリア・イアハッター
へぇ、獣人族なんて人達もいるんだ!
興味はあるけど、今はそこをどいてもらおうかな
職人さんが本当に作りたくて作っているのか、確かめさせてもらうよ!
・方針
武を極めた護理羅でも、足で踏ん張れなければ腰が入らず思った通りの攻撃はできない筈
敵の足を凍らせ回り攪乱し、味方が攻撃しやすいように
・行動
自身にUC使用
地面を滑りジャンプも織り交ぜて敵の攻撃を回避しつつ、敵の足に対してUC使用
足から摩擦を奪ってしまえば、まともに攻撃も、あわよくば立つ事もできないでしょう!
敵の隙間を掻い潜り凍らせ回る
隙あらばバスバッハの足も凍らせて逃げられないようにしちゃおっか
ビキニアーマーだと、いつもより風を全身に感じられていいや!
境・花世
一刻も早く眼前の敵を倒そう、
そしてビキニアーマーを脱……もとい、
名工を助けてみせる
早業ダッシュで敵へ向かって、
ひらり扇を翻して舞わすは
鮮やかに咲き散る花の嵐
この鎧には祈りが籠められてる
世界に百花綻ぶ春を齎し給えと
懸命に生きる人々の祈りを、
わたしは今、纏ってるんだ
傷をも恐れず、さらに飛び込む敵の懐
投擲する花の種が過たず届いたら
悪も闇も歪んだ熱意も何もかも、
爛漫の春へ埋めてしまおう
――咲け!
この地を守った勇気の在り処を
誰もが思い出したなら
きっと本当の春が、来るだろう
いや、愛着とか湧いてないから
本気でいらな、あっやめて哀しい顔しないで
……大事にするね、うん……
※アドリブ・絡み大歓迎
●
戦の流れは猟兵たちにある。
激しい戦闘で無茶苦茶に荒れ果てたギャラリーを見て、バスバッハは頭を抱えながら何事か喚いていた。彼が逃げ出したりしないよう注意を払いながらも、アメリア・イアハッターは見事な足捌きで護理羅たちの攻めをいなしていく。
「獣人族の護理羅かあ。あなたたちにも興味はあるけど、そろそろここをどいてもらおうかな! わたしたちにはまだ、やるべきことが残っているんだ」
アメリアの言葉に対する護理羅の答えは、氷気を宿したレイピアによる一突きだ。その刺突を、彼女は上体を後ろに反らすことでかわしてみせる。
――ふうん、そっちは冷気使いか。それなら、こっちも同じ能力で応えてこその勇者だよね!
追撃に移ろうと一気に踏み込んできた氷剣の護理羅。その大柄な身体を、アメリアは指一本触れずに転ばしてみせる。みれば、鏡を張ったかのような滑らかな氷が、二人の合間の床を覆っているではないか。この魔法の氷は、不注意に踏み込んだ者の抵抗力を無くす力を秘めているのだ。
「面白いじゃない、その魔法。これは、わたしも負けていられないね」
その魔氷を目にした境・花世は、扇を広げて笑みを浮かべる。共にビキニアーマー勇者祭の舞台に立ち、古の勇者の魂を纏った者同士。肌を守るものが少ない心細さを補って余りあるほど、肩を並べる相手としては心強い。
――一刻も早く眼前の敵を倒そう、そしてビキニアーマーを脱……もとい、名工を助けてみせる。
花世は隠しきれない心情を胸の中で零しながら、花あしらう扇を片手に敵へと立ち向かう。視線の先には、全身を風の奔流で覆った護理羅。魔氷で転倒した仲間への攻撃を防ごうというのか、魔闘武術の構えを見せていた。
「仲間を護ろうとするその意志、嫌いじゃないよ。でも、悪いけど共々散ってもらう!」
吹き荒れたものは春の嵐。疾く距離を縮めた花世が扇を翻して舞えば、彼女が着けたビキニアーマーに刻まれた文様のごとき百花が繚乱する。
それは祈りだ。あまねく世に春をもたらしたまえと、冷たき冬に別れを告げる人々の祈りを、花世は纏い、舞ってみせる。
「おっと、花世ちゃんの舞はまだ終わってないよ! それに、退場する前に私の氷上ダンスも見ていってくれないとね」
ともすれば陰鬱な空気漂う地下ギャラリーは、いまやアメリアと花世の美芸極まる戦ぶりによって、きらびやかな舞台と化していた。それはまるで、上の世界で催されていた祭の続きのよう。
氷結した床を滑走するアメリアはまさに氷上の妖精だ。炎を飛ばす護理羅の拳はステップで回避し、捨て身のスライディングは四回転アクセルで飛び越える。彼女を止めようとする護理羅どもは氷魔に足元をすくわれ、彼女の舞踏にただただ翻弄されるばかり。
「ビキニアーマーだと、いつもより風を全身に感じられていいや!」
健康美そのものを体現したかのような肢体で風を浴び、快く戦場を舞うアメリア。その氷結魔法は、隙を見て逃げ出そうと試みていたバスバッハにまで及んでいた。
剥き出しの柔肌が傷つくことも覚悟をしていた花世だが、それは杞憂に済みそうだ。アメリアの氷走演舞に、護理羅どもはすっかり抵抗する力を失っている。
無防備な相手に攻撃を仕掛けることは、勇者としていかがなものかと心の片隅で思わないこともないけれど、戦場で相対した者同士、むしろ情けは非礼にあたるだろう。
――悪も闇も歪んだ熱意も何もかも、爛漫の春へ埋めてしまおう。
アメリアほどの達者ではないが、姿勢を低く保って氷上を駆ける花世の姿もまた、美妙。かろうじて体勢を整えることに成功した護理羅の懐目掛け、花世は迷わず迫っていく。
この地を守った勇気の在り処。いま、それを身に付けている。邪な企みを討ち滅ぼし、黄金の心を改めて人々に示したとき、きっと本当の春がデルメロスに訪れるのだろう。
「――咲け!」
花世がすれ違いざまに護理羅たちに投擲したものは、花種。それは瞬く間に敵の血と狂気と命を喰らいて絢爛な花を咲き誇らせる。
乱れ飛ぶ花弁と舞い散る細氷のなか、絶命した護理羅たちが灰と化していった。花世は心身に灯る戦の熱に頬を染めながら、胸を包む百花の鎧に手をそえて、ふ、と苦笑する。
愛着なんてない。本気でいらない。でも、"この子"は少なくとも今日という日の相棒だった。
――ああ、ここまで来てしまったら。仕方ないな。大事にしてあげようか。これを作ってくれた職人さんの哀しむ顔は、見たくないしね、うん……。
そんな花世のそばに寄り添ったアメリアは、いまだ続く戦の流れに気を配りながら言葉を紡ぐ。
「あの名工の職人さんも、いま私たちが身に付けているビキニアーマーを作ってくれた職人さんたちのように、本当に闇のビキニアーマーを作りたくて作っているのか、確かめなくちゃね」
きっとこの調子ならば護理羅たちは退けられることが出来るだろう。
その先に待ち受ける事実こそが、アメリアと花世たちを始めとする猟兵たちの、真の目的だ。二人の娘は頷きを交わし合い、この戦いを終わらせるべく再び戦場に身を投じていく。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
ニヒト・ステュクス
好みって人それぞれだね
ボクらの逢った商人には確かな『こだわり』があったし
それを否定は出来ないや
まぁボクはこっちの方が好みだけど
と邪魔なフリルは脱ぐ※真の姿
現れるのは
艶消しされた黒鋼を薄く叩き上げ
黒革で繋げたシンプルで軽い頑丈なアーマー
えっ、今何か期待した?
…えっち(目潰し
攻撃は第六感を駆使し見切る
時に師匠(f12038)を盾に
ヤマアラシの刃は
懐に飛び込ませぬカウンターとして操る
怪力も当たらなきゃどうって事ないね
か弱い女の子一人捕まえられない?
現し身と共に
フェイント交え敵を翻弄
躍起にさせ絡繰意図の餌食に
積極的に挑発してたボクが偽物
師匠、今だよ
…邪道?
でもこれがボクらしい戦い方
自分自身が武器なんで
レイ・ハウンド
邪魔な改造パーツは全て取り去る
残るのは弟子(f07171)と揃いの腰のアーマーのみ
――体が…軽い…!?※真の姿
美しさの如何は俺にはさっぱりだが
武器や防具の真価は
戦いの中で発揮されるのは分かる
戦い方も千差万別だがな
…要は
自分らしさを最大限に魅せられるもんがそいつの一番じゃね?
今の名工は
自分が迷子みてーだな
屋内で精鋭の武闘派供相手じゃ重火器はお荷物
剣一本で挑む
敵の攻撃は剣で盾受けし極力威力軽減
武器は打ち払う
体術で剣を受け止められても
咄嗟の2回攻撃で頭突きによる捨て身の一撃
脆そうな仲間はかばうぞ
今更傷が増えようが痒くもねぇ…!
弟子が敵の隙を作ったら
偽物諸共鎧砕きの一撃で叩き斬る!
これが
俺達のやり方だ
●
「わ、私のギャラリーが……くそぉ、闇のビキニアーマーで街を私のものにする計画が……!」
「こんなもんで街を支配? そんなこと考えてたのかよ、お前」
氷に脚を取られて転んでいたバスバッハを拘束したレイ・ハウンドは、足元に転がっていた殉教者のビキニアーマーをつまみ上げると、呆れたように鼻を鳴らした。
バスバッハいわく、闇のビキニアーマーの魔力を用いてデルメロスに違法ビキニアーマーを流行らせることで、地下のみならず地上のビキニアーマー市場も支配下におく企みだったらしい。
「だったら、そんな違法に手を染めないで、正々堂々と自分のこだわりを主張すればよかったのに」
細い腰回りを彩るフリルスカートを指先で撫でながら、ニヒト・ステュクスは肩をすくめる。
好みというのは人それぞれだ。ニヒトたちが逢った商人には確かな『こだわり』があった。上の世界の住人だって、同じビキニアーマーの士なのだ。受け入れられるまで時間はかかるだろうが、その全てを否定されることもあるまい。
「美しさの如何は俺にはさっぱりだが、闇のビキニアーマーも、俺らが身に付けているビキニアーマーも、防具には違いない。モノの来歴や見栄えなんざ、戦場では意味がねえ。武具の真価は戦いの中で発揮されるもんだろう」
レイは後ろでへたりこんでいるバスバッハに言葉を投げかけながら、ゴテゴテと装着させられていた改造パーツを一つずつ外していく。
頑健なレイの肉体を覆うものは、黒鋼甲冑を黒革で繋いだだけの、極々シンプルなビキニアーマーだ。
「そうだね。ボクも、こっちの方が好みだし」
レイの言葉にうなずきを返したニヒトは、突如胸元を飾っていたフリルビキニを脱ぎ去った。その下から現れたのは、微かに肋の浮いた儚げなからだ――ではなく、レイと同じく黒鋼黒革の装備である。
あんぐりと口を開けてその様を見上げていたバスバッハに、ニヒトは「えっ、今何か期待した? ……えっち」と、後ろに跳ね上げた踵で顔面に蹴りを食らわせる。
残る護理羅はごく少数だが、彼らには退くつもりはないようだ。むしろ、この戦場に立つために躯の海より蘇ったと言わんばかりに、嬉々としているようにも見える。
「――身体が……軽い……!? なんてな」
炎を纏って突進してくる護理羅の連撃を、レイは無骨な刀剣で立ちどころに防いでいく。冗談めかして口にした言葉だが、真の姿を取り戻したいま、実際に身体は軽い。それだけ余計なモノをデコられていたわけだ。
お返しとばかりにレイが払った黒刃が、護理羅の胸元に一筋の刀傷を負わせる。その重い一太刀にたじろいだ相手の虚を突き、彼は鬼神が如き形相で間合いを詰めた。
刹那、狭いギャラリーに断末魔の絶叫が響く。
赤の護理羅はレイの剣戟の前に斃れ、残る護理羅は雷を宿した黒の護理羅のみ。
「あは、か弱い女の子一人捕まえられない?」
その護理羅も、現し身にて分かれた二人のニヒトに翻弄されるばかりで、まともな戦いを繰り広げるには至っていない。
ニヒトは護理羅が一歩踏み込めば三歩下がり、かと思えば吐息がかからんばかりに間合いを詰めては、笑みを浮かべるだけで離れてみせる。
苛立ちも隠さず怒りに震える護理羅の顔は、『こんなものは我々が待ち望んでいた戦いではない』と叫んでいるかのよう。
とは言え、これもまた戦いなのだ。ビキニアーマーの可能性が無限であるように、人の戦い方もまた無限にある。
だが。
「――師匠っ」
……だが、命懸けの鬼ごっこの果てに、ニヒトの身体は護理羅の腕のなかに捕らわれてしまった。焦りに顔を歪めて、彼女はレイを呼ばう。
助けは間に合わない。護理羅は暑苦しい獣面に笑みに似た表情を浮かべて、力任せに彼女の華奢な体躯を一息に圧し折った――。
そして白い灰となって消え失せる護理羅を見やりながら、ニヒトは「……邪道だなんて言わないでよ。ボクは自分自身が武器なんだ。これがボクらしい戦い方でね」と、ずれたキャスケットの位置を正した。
「俺達のようなやり方を知らなかったのが、こいつらの敗因ってヤツだな。せいぜいあの世で復習するがいいさ」
剣に付着した灰を振り払ったレイが、肩をぐるりと回しながらつぶやく。
護理羅が捕らえた相手は、ニヒトの現し身だったのだ。倒せば陽炎のように消え失せる相手を嬉々として仕留めた護理羅は隙だらけで、それはレイの断頭の格好の餌食だった。
かくして、猟兵たちは全ての護理羅どもを完封せしめた。黒幕であるバスバッハも、こうなった以上は観念しておとなしくしている。
デルメロスの街を騒がせた闇のビキニアーマー事件は、こうして結末を迎えたのだった。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴
●
「これが……これが、闇のビキニアーマーの末路、ですか」
戦いを終えた猟兵たちの背に、聞き慣れぬ声が届く。振り返りて見れば、ギャラリーの入り口にエプロンをかけた髭面の男が立っていた。
「ロノヴェル。いつからそこにいたんだ……?」
その髭面の男を見て、拘束されたバスバッハが憔悴しきった声音で尋ねた。
ロノヴェルと呼ばれた男は、「騒音が聞こえてきてから、すぐに」と答えると、恐る恐るといった足取りでギャラリーへと入ってきた。
この髭面の壮年男性こそが、デルメロスの兄妹勇者にビキニアーマーを作ったという職人の子孫。事件に巻き込まれていたこの街の名工だと、誰もが瞬時に察した。
ロノヴェルは荒れ果てたギャラリーと、拘束されたバスバッハ、床に打ち捨てられた闇のビキニアーマー、そして正道のビキニアーマーを身に着けた猟兵たちを順繰りに見遣って、「ああ」と苦しみを吐き出すように息をついた。
「全ては、私が間違っていたのですね。何事にも縛られない真の自由を体現したビキニアーマーを作ることこそが、デルメロスを発展させるためになると信じて、バスバッハの下で制作に打ち込んでいました。ですが……やはり、邪道は邪道。このような結末になるのは、必定だったのでしょう」
悔いを滲ませた表情を浮かべて、ロノヴェルは猟兵たち一人一人の顔を見詰める。そして、その一人一人に対して深々と頭を下げるのだった。
皆様には、大変なご迷惑をおかけして、申し訳ない。街の人々に対しても、合わせる顔がない、と。
猟兵の一人が、「あなたは闇のビキニアーマーの魔力に洗脳されてしまったのではないのか」と尋ねると、ロノヴェルは緩く首を横に振った。
「私は護理羅たちに連れ去られ、バスバッハの工房にて無理やり邪道のビキニアーマーを作らされてきました。しかし、嫌々作っていたのは最初のうちだけ……私は、伝統に縛られたデルメロスの職人の常識ではあり得ない、自由な発想が許された制作環境に次第に魅了されていったのです」
そして、バスバッハが求めるまま、次々と闇のビキニアーマーを作っていったのだという。それが邪な力を秘めた防具であることなど、知らぬまま。いや、半ば知りながらも、新しい技術と創作を求める職人の性がロノヴェルの目を盲目にさせていったのだ。
「皆様の戦いを見ているうちに、私は己の過ちを知りました。奇抜な発想や、特別な素材を用いたビキニアーマーそのものには、価値がないのだと。全ては、ビキニアーマーを身につける者が価値を決めるのだと。そう……伝説に残る兄妹勇者が身に纏っていたビキニアーマーは、何の変哲もない鉄と革の甲冑だったのです。それ自体には、なんの価値もない防具だった」
ロノヴェルはその場に崩れ落ちると、ボロボロと涙を零しながら唸るように言葉を続ける。
「勇気……! 真の防具とは、勇気だったのです。何物も恐れぬその黄金の心を、私は皆様の姿のなかに見ました。私は愚かだった。子供のころから聞かされ続けてきた勇者たちの黄金の心を……この歳になって忘れ、そして思い出すなんて……!」
この過ちは、必ず償います。
兄妹勇者の黄金の心を、そして、あなた達が見せてくれた黄金の心を、正しきビキニアーマーで以って一生かけて伝えていくことで、償います。
ロノヴェルの言葉に、猟兵たちは頷きを返す。過ちは過ちだったかもしれない。だが、この事件で命を落とした者はおらず、傷ついた者も……ごく一部はいるが、それは概ね自業自得なので致し方ない、と。
猟兵たちの温情を受けたロノヴェルは、涙が枯れ果てるそのときまで、むせび泣き続けるのだった。
事件は解決した。
バスバッハ一味は悪しき者と結託した罪と、闇のビキニアーマー云々に関わらず法に触れる商売をしていた罪で、デルメロスを追われることとなった。
ロノヴェルは街に長年貢献してきた功績もあり、道を誤ったとはいえ重い刑罰は下されなかった。罰金刑は科せられるそうだが、それも彼ほどの腕前の職人ならば、ほんの数ヶ月で苦もなく納められる程度のものだそうだ。
そして、事件からしばらくの時が経ったあと。
街役場のエントランスに、十着を超えるビキニアーマーが飾られた。
革と鋼だけで作られた、ごく質素な、けれど頑健を極めたその甲冑。
それは、幻となってしまった祭のチャンピオンに贈るためのレプリカビキニアーマー。そして、デルメロスの街の危機を救った新しい時代の勇者――猟兵たちの栄誉を讃えるビキニアーマーだった。
ビキニアーマーを飾る台座のプレートには、こう記されている。
人よ、忘るるなかれ。
真の勇気とは、その行いで以って表すものだということを。
ただ一つ勇気だけを纏いて、常春のデルメロスの地に平穏を齎した冒険者たちを。
人よ、忘るるなかれ。