バトル・オブ・オリンピア⑭〜Vers l'enfer
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――アスリートアース、「ローグ・ファクトリー」。
其は究極のレーサー『ウィリアム・ローグ』が、究極のエアカーを作る為に建造した広大なガレージで、あらゆるモータースポーツのテストが可能なサーキットが併設されている。
その一つである「ローグリンク北コース」は、コース長25.81km、全体で約350mの高低差と、180の多種多様なコース数、バンクが付いた擂鉢状のヘアピンを有する等、変化に富むコースレイアウトによって究極の難関コースを作り上げていた。
『常に死と隣り合わせるグランプリレーサーが求めるものは、莫大な賞金ではあるまい』
富、栄光……モータースポーツで得られる全てを手に入れた男が、その全てを棄てて追い求めたのが、誰にも辿り着けぬ「速さ」。
それは決して塗り替えられぬスピードの記録や、感動のレースの記憶といった相対的なものでなく、己が肉体と精神を削り尽くし、多大な負荷を耐えきった先にある「スピードの向こう側」の景色――レーサーの至高の領域。
命を代償にその極致に至ったウィリアムは、然し我が手に掴んだ力の陰りも同時に知る事となった。
『私が生涯をかけて追い求めた「アルカディア・エフェクト」は、命ある者達が纏いし時のみ光輝く』
死人には無用の長物。
これは死の境界を踏み越えずして極致に至れる者に譲られるべきと決意したウィリアムは、今こそ懇願する。
『如何な方法でも構わない。全力で私に挑み、私を越えてゆけ……!』
イカしたフルフェイスヘルメットの奧、虚の眼が黒々とオーラを迸っていた。
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「アルカディア・エフェクト……私達はこの名を、嘗て帝竜『大空を覆うもの』から聞いたわ」
あの時は慥か『|拒絶の雲海《アルカディア・エフェクト》』と云っていた――と、静かに言ちるニコリネ・ユーリカ(花屋・f02123)。
レース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』がスピードの向こう側で掴んだものが其と全く同じかどうかは判明らないが、とまれ、今はその名を口にした男と戦ってきて欲しいと切り出した彼女は、是非に彼の後継となるべしと拳を固める。
「ウィリアムに勝負を挑んで認められた者は、いつか『アルカディア・エフェクトの後継者』として覚醒する筈……」
究極のレーサーが速さを極めた生涯の果てに得た「究極の能力」を使えるようになる――。
死者のウィリアムには「無用の長物」である力を、生者たる猟兵が使用すれば、それはきっと美しく輝くだろうと花唇に微笑を湛えたニコリネは、語気を強めて説明を続けた。
「勝負はレースでも戦闘でも、猟兵が望むカタチで良いそうよ。とにかく、全力で挑んで欲しいみたい」
自前の乗り物やキャバリアで勝負を挑むも良し。
ファクトリーにある「ローグ・インターセプター」以外のマシンなら借りられよう。
得意の戦闘スタイルで挑みたいなら、コーナーで待ち構えるのが良いだろうと言を添えたニコリネは、ぱちんとウインクするやグリモアを喚ぶ。
「彼が見たいのは、速さではなく魂……大トルクを発するエンジンより凄まじいタマシイのチカラだと思うの」
全てを掴み、全てを棄ててきた男を満足させるもの――。
皆なら必ず持っていると笑顔を咲かせた花屋は、一縷の不安なく送り出すのだった。
夕狩こあら
オープニングをご覧下さりありがとうございます。
はじめまして、または、こんにちは。
夕狩(ゆうかり)こあらと申します。
こちらは『バトル・オブ・オリンピア』第十四の戦場、レース・フォーミュラ『ウィリアム・ローグ』と戦う、一章で完結する戦争シナリオ(難易度:普通)です。
●戦場の情報
アスリートアース、ウィリアムが建造した広大なガレージ「ローグ・ファクトリー」。
あらゆるモータースポーツのテストが可能なサーキットが併設されており、本シナリオはそのうち最長&最多コース数を誇る「ローグリンク北コース」を走行します。また、空戦を含む様々な戦闘が可能です。
●敵の情報:『ウィリアム・ローグ』(ボス戦)
富や栄光をかなぐり捨て、速さだけを追い求めた究極のレーサーです。彼は死後、ついに『スピードの向こう側』たる何者も追い付けぬ『アルカディア・エフェクト』に至り、その力を伝える相手を探し求めています。
●プレイングボーナス:『レースを通じてウィリアム・ローグに自身の「魂」を示す』
このシナリオフレームには、特別な「プレイングボーナス」があります。
これに基づく行動をすると、戦闘が有利になります。
●リプレイ描写について
フレンドと一緒に行動する場合、お相手のお名前(ID)や呼び方をお書き下さい。
二名様以上は【グループ名】を冒頭に記載願います。この場合も呼称があると大変助かります。
また、このシナリオに導入の文章はありません。
成功度の高い方から数名程度の採用とし、サポートも採用しつつ早期の完結に努めます。
以上が猟兵が任務を遂行する為に提供できる情報です。
皆様の武運長久をお祈り申し上げます。
第1章 ボス戦
『ウィリアム・ローグ』
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POW : アルカディア・エキゾースト
レベルm半径内を【アルカディア・エフェクト】で覆い、範囲内のあらゆる物質を【何者にも縛られぬ風】で加速、もしくは【置き去りにされた過去の光景】で減速できる。
SPD : ブラック・インフェルノ
【レーシングマシン】から、戦場全体に「敵味方を識別する【漆黒の炎】」を放ち、ダメージと【強制進化】の状態異常を与える。
WIZ : ヴォイド・リフレクション
【超加速能力】を宿した【車載兵器からの一斉砲撃】を射出する。[車載兵器からの一斉砲撃]は合計レベル回まで、加速・減速・軌道変更する。
イラスト:秋原 実
👑11
🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵🔵
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠山田・二十五郎」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
夜刀神・鏡介
また何を考えているのか分からない奴が出てきたが……
越えていけなんて、言われるまでもないだろう
自身のバイク『八咫烏』に騎乗してレースに挑む
相手は生涯走り続けた究極のレーサー。一方で俺がバイクに乗り出したのはここ数年
そりゃ勝ち目も薄いだろうが、だからといって戦わない理由もない
一応、事前にできるだけコースマップを頭に叩き込む事にして
刀を振るうのと同じか、或いはそれ以上に。精神を極限まで研ぎ澄ませてレースに集中
己の全技術を、或いは敵が扱う技術をその場で見て模倣、どうにか追い縋る
僅かでも失敗すればたちまちクラッシュするだろうが……一瞬でも追い抜いてみせる
その為には、それくらいやってやるとしよう
――“|地獄《Inferno》”。
ローグ・ファクトリーに併設されるリンクの中で最長を誇る「ローグリンク北コース」がそう呼ばれるのは、長さは勿論の事、最高難度の複雜なコーナーを幾つも伴う爲、先ずコースを覺える事に精神が擦り減らされるからだ。
然し夜刀神・鏡介(道を探す者・f28122)は、先ずそこに挑戰しよう。
(「コースマップは事前に頭に叩き込んだ。あとは如何に操縦にフィードバックするか……」)
|反應《こた》えてくれ――と意志を預けるは、自身の大型二輪『八咫烏』。
艶やかな濡羽色の機体を傾けつつ、巧みな重心移動で鋭いコーナーを切り抜けた鏡介は、既に次のコーナーを攻め掛かる前方の対戰相手『ウィリアム・ローグ』の背を烱瞳に射る。
「……越えていけなんて、言われるまでもない」
このウィリアムという男も何を考えているのか判然らない手合だが、走ってみれば實力は瞭然。力差は歴然。
鏡介がバイクに乗り出したのはここ数年の話で、生涯走り続けた究極のレーサーに先行を許すのは仕方ない事だが、蓋し勝ち目が薄いからと云って、勝負そのものを諦める男では無い。
(「刀を振るうのと同じか、或いはそれ以上に――精神を極限まで研ぎ澄ませる」)
幅員の狭く、荒れた路面が超高速で視界に飛び込む中、続々と押し寄せる情報を全集中して“捌く”。
ウィリアムが先行する裡は、彼の技術をその場で模倣するのも手だと注力した鏡介は、全力全開ッ! 己の全技術を解放し、最速の男が描く究極のラインを|捺擦《なぞ》るようにバイクをコントロールした――!
「僅かでも失敗すれば、忽ちクラッシュする死の疆界……俺も渡らねばなるまい」
『……ッ!! 私の軌跡を……!?』
「追い縋り、追い付き、一瞬でも追い抜いてみせる」
『速度が……上がっているッ!!』
鏡介が見せたのは、強い決意と胆力。
「向こうが望んだ事だ。やってやる」
ウィリアムのマシンから迸る|漆黑の炎《ブラック・インフェルノ》を『八咫烏』の羽搏きに切り裂いた彼は、スリップストリームによって極限まで肉薄! 双方のタイヤが觸れ合う超至近距離に迫り、逆に圧を掛けた――!
『……フ、フフ……これぞ生者の魂の輝き……ッ!!』
鏡介の意志力を間近に感じた男は、既に死した我が身が感動に震えるのを慥かに味わうのだった。
大成功
🔵🔵🔵
ベルト・ラムバルド
アドリブ上等
…速さを求めた男か!
ならば私は騎士道!…まだ道半ばだがそれを求める者だ!
ベルト・ラムバルドがスポーツ魂に乗っ取って相手する!
レーシングマシンを操縦し発進!
マシンの高性能を駆使して相手に追いつくぞ!
…黒い炎だと!?まさか|あの人《アンナさん》の地獄の炎じゃあるまいし!
…だがこの私を舐めるなよ!こんな所で止まる訳にはいかないんだよ!
窮地の閃きでUCを発動
マシンごとカリスマオーラを纏いてリミッター解除し限界突破!
正々堂々とレースで競い敵の炎と状態異常を吹き飛ばす!
勝とうが負けようが…貴様とレースで競う事に意義がある!
我が騎士道は…はるか遠くて果てしない浪漫なんだよッ!!!
究極のレーサーとして『スピードの向こう側』に到達した男は、然し勝負はレースでなくとも良いと云う。
相手の得意を受けて立つとは器が大きいと、かの男も乗ったであろうレーシングマシンでスタートを切ったベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)は、フルフェイスの下で小気味良い麗笑を浮かべた。
「私こそ君の得意に挑もう。このベルト・ラムバルドがスポーツ魂に則って相手する!」
道半ばながら、己は騎士道を目指す身。
同じ求道者として先ず礼節を尽したベルトは、忽ち先頭を取る対戰相手に「流石だ」と称賛を送ると、己も斯くあるべきと後続に付き、マシンの高性能を駆使して追い掛けた。
「君が見た至高の領域、見せて貰おう!」
『……|端緒《はな》から引き離されても挫けぬとは中々の胆力』
ウィリアムが肩越しにベルトを見遣り、称賛を返して間もなく。
直ぐにサイドミラーから消して遣るとダークオーラを解放した彼は、愛騎より漆黑の炎を迸るや、「|地獄《インフェルノ》」と呼ばれる超難関コースをその異名通りの景色に變えた――!
『体力と精神力を限界まで擦り減らせ。そしてスピードの涯で進化するのだ』
「……黑い炎だと!? まさか、|あの人《アンナさん》じゃあるまいし!」
ハッとする藍の虹彩に、地獄の炎に搖らめく麗人が過る。噫、我がマドンナよ。
その美しさと恐ろしさを充分に知るベルトは、眼路に広がる黑炎にハンドルを切るかブレーキを踏みそうになる処、克己――ッ! ヘルメット越しにも輝ける後光を全開に、マシンごと聖光に包み込んだ!
「私を舐めるな! こんな所で止まる訳にはいかないんだよ!」
『これが、今を駆ける者の魂の輝き……ッ!!』
情熱が迸る一方、次は直線だったとは冷靜な判斷。
恐怖を打ち砕くようアクセルを踏み込んだベルトは、光彈の如く突貫突破――!
獄炎に飛び込んで、一秒……二秒……三秒後! 勃ッと噴く炎の中から颯爽と機影を現した!!
「此の戰い、勝とうが負けようが……貴樣とレースで競う事に意義がある!」
『ッここで……迫るか……!!』
ベルトのカリスマオーラを纏ったマシンは、敵機のリヤにベタ付け!
猛々しく吼えるエキゾーストノートを間近に聽かせ、鮮烈な存在感を示した!
「我が騎士道は……遥かに遠くて果てしない浪漫なんだよッ!!!」
――浪漫!!
そう確言する男の魂は、大トルクを発するエンジンより力強かった。
大成功
🔵🔵🔵
四王天・燦
安心してあの世に走って逝けるよう本気でやるか
真紅のオフロードバイクでスタートするぜ
|ガソリン《重量》は10㎞分でいいや
ローグの真後ろに着けるよ
スピードを追求するなら急停車はないと確信しとる
漆黒の炎を神鳴で斬り払いながら追うスタイルだ
後半勝負だよ
フォックスファイア・漆式を発動し跳んで紅狐様に乗り換えて猛追するぜ
アタシと生命力を共有しているのだ
機械と違って限界突破ができる
アタシたちは強制進化を置き去りにして自分の意志で進化する!
白髪化するほどリミッター解除して命の炎を燃やしまくってダッシュだ
漆黒の炎を裂いて紅狐様の真紅の炎の蹴爪で一撃くれてやる
アンタの炎、温いぜってな
アタシの前を走るやつはいねえ!
『矢張り、彼等には永らえてきた者の力がある……』
猟兵と勝負を重ねるウィリアムが、キツい|凸凹《バンプ》のあるカーブに差し掛った時、後続に一際の気配を捉える。
肩越しに見れば、鋭いエンジン音を唸らせる眞紅のオフロードバイクが一騎。
目下の複雑な路面に素早い反應を返す操縦者は、四王天・燦(|月夜の翼《ルナ・ウォーカー》・f04448)その人だ。
「アンタが安心してあの世に走って逝けるよう、本気でやってやる」
金彩の瞳を烱々と輝かせて対戰相手を射る燦は、|ガソリン《重量》は10㎞分を魂と共に燃やしながら、最速の男が描く究極のラインを|捺擦《なぞ》って疾る。
『……やるな!!』
「地獄と呼ばれるこのリンクでハードブレーキングは不可能。スピードを追求するアンタに急停車の選択肢は無い」
『然う、|私には《・・・》な』
眞後ろにつけてプレッシャーを掛ける燦めがけ、須臾、|漆黑の炎《ブラック・インフェルノ》が噴き出す。
眼路に飛び込む灼熱の渦を前に、本能がハンドルを切るかブレーキを踏み掛かるところ、燦は片手に携えた『神鳴』を一振り! 紅蓮の電撃で黑炎を斬り払い、その裂け目より機影を現して云った。
「次の直線で勝負だ!」
重大事故の多さで知られる、悪名高いポイントで――仕掛ける!
自身が走行する眞隣に、狐火で模った千本鳥居を竝べた燦は、【フォックスファイア・漆式】――身丈一丈の紅蓮の狐が鳥居を潜って駆けるのに並走すると、颯然と跳び移って乗り換えた。
「アタシと紅狐樣は一心同体。鐵の塊と違って、どれだけでも限界を超えられる!」
『成程、それが君の……!!』
「アタシたちは! 自分の意志で! 進化するんだ!」
命という炎を熾々と燃やして走れば、風に靡く灰色の髪は輝くような月白に。
呼吸すら要らぬと猛追した燦は、間に挟まれる黑炎を紅狐樣の爪撃に裂かせると、力強く跳ねざま炎爪一閃――!
ウィリアムの究極マシンのリヤを鋭く剔抉したッ!!
「アンタの炎、温いぜ」
『ッッ……後輪が、もってかれる……ッ!!』
カッと焔光を迸る劫火が、燦の麗顏を照り上げたのは一瞬。
ウィリアムは巧みなハンドル捌きで持ち堪えるが、長い直線の直後にある右コーナーに減速を強いられた彼は、遂に燦に並ばれる。
「アタシの前を走るやつはいねえ!」
その横顏の弓張月の如き美しさに、ウィリアムは|時間《とき》が止まるようだった。
大成功
🔵🔵🔵
ヴォルフガング・エアレーザー
ウィリアム・ローグ。命を懸けて「究極」を追い求めたお前の志、しかと受け取った。
俺も全力で勝負を挑み、その期待に応えて見せよう。
【蒼き大神】に変身
翼を広げ、疾風を纏い、全速力で駆け抜ける。
障害物は翼から放つ突風でいなし、多少の怪我や衝突も厭わず果敢に攻める
全てを捨てても、己が命すら投げ打ってでも掴みたかったもの、望む未来。
俺にもあるさ。
最愛の妻、ヘルガの存在。
彼女の笑顔、彼女の涙。
それらが俺に往くべき道を示してくれた。
今まで知ることのなかった、愛と言う名の光を
置き去りにして良い過去など無い。
全てを背負い、全てを乗り越え、俺たちは共に未来へと駆け抜けてゆく。
故に俺は、何者にも臆することはない……!
リードとビハインドを繰り返し、TOPを變えながらコースを駆け抜けるレース・フォーミュラと猟兵達。
此度もキレのある走行を魅せるウィリアムが、死亡事故件数最多のジャンプスポットに差し掛かった折に背後に迫ったのが、全長134mの【蒼き大神】に變身したヴォルフガング・エアレーザー(蒼き狼騎士・f05120)だった。
「ウィリアム・ローグ。命を懸けて『究極』を追い求めたお前の志、聢と受け取った」
『なんと、勇壮な靑き狼……!!』
「俺も全力で勝負を挑み、その期待に應えて見せよう」
雄々しき翼に嵐を巻き起こして翔ける、巨狼の英姿に惹きつけられるウィリアム。
フルフェイスの奧に隱れる虚の眼が注視すれば、ヴォルフガングは彼に嚙み付かん勢いで肉薄し、後方からプレッシャーを掛ける事で、最速の男が描く究極のラインを切り崩さんとした。
「多少の怪我や衝突など。厭うものか」
『……ッッ、アルカディア・エフェクトよ、私に風の翼を――!!』
刹那、その語尾を搔き消すエキゾーストが兩者の間に距離を生み出す。
先行する有利を活かし、進路上にある夥しい落書きを追い風に變えたウィリアムは、クレストから大ジャンプ!
華麗に着地して後は、この最恐スポットで散った者達の最期を投影し、ヴォルフガングを牽制せんとした。
――果して彼は。
「成程。これが置き去りにされた過去の光景というなら、俺は否定しよう」
置き去りにして良い過去など無い、と藍の彩瞳は烱々と。
唯だ眞直ぐにウィリアムが駆るマシンに結ばれている。
「全てを背負い、全てを乗り越え、俺達は未來へと駆けてゆく。故に俺は、何者にも臆する事はない……!」
『!! 更に加速している――ッ!!』
全てを棄てても、己が命を擲ってでも摑みたかったもの、望む未來。
ウィリアムが速さを追い求めたように、己にもそのような存在があると、靑狼は雄渾と確言しよう。
「最愛の妻、ヘルガ――彼女の笑顏、彼女の涙。それらが俺に往くべき道を示してくれた。今まで知る事のなかった、愛と言う名の光を」
『それが君の魂の輝きか』
是を頷く代わり、ヴォルフガングは哮るような羽搏きをひとつ。
刹那に吹き荒れた突風が追い風を蹴散らすと同時、アウト・イン・アウト――! 巨躯を壁に擦りながら捻じ込み、今度はウィリアムの眞橫についてプレッシャーを掛けるのだった。
大成功
🔵🔵🔵
エミリィ・ジゼル
たまにはギャグを置いて挑みましょう
ローグにレースで挑戦
速さを求めるならば立場も戦いも捨て、スピードに身を任せるのが一番です
レースはサメ子に騎乗
飛行可能なサメですが、今回はコースに沿ってホバーします
地形の利用と操縦を駆使してアウトインアウトでコーナーの速度低下を抑え、下り坂の加速を徹底
更にローグの背面をキープして風の抵抗を防ぎます
おそらくローグ相手に優位に立つのは難しいでしょう
勝負を仕掛けるなら最終ストレート
直線に入る瞬間にUC発動、竜巻をまとって加速
スリップストリームでローグを抜きゴールまで突っ切ります
このレースで猟兵と、そしてサメの生き様を見せつけます
「いけ、サメ子!シャークトルネード!」
レース。其はチープなスリルに身を任せる行爲では無いッ。
君達の得意で勝負をしようと云う最速の男ウィリアムに対し、彼が極めたレースでこそ勝負に挑もうと胆力を見せたエミリィ・ジゼル(かじできないさん・f01678)は、ピットインした彼の前でスッと鮫に跨った。
「眞に速さを求めるならば、立場も戰いも棄て、スピードに身を任せるのが一番です」
『それは?』
「サメ子です」
其は鮫魔術で改造された鮫。エミリィとおんなじ、おんなのこだよ。
宇宙でも活動できる飛行可能な鮫だが、此度はホバーで行くと鮫膚を撫でたエミリィは、ウィリアムがピットアウトするに合わせて走り出した。
『今度の相手は鮫……!! 初めて鮫と走るが、果して其処に宿る魂や如何!』
既に猟兵に興味を抱き始めたウィリアムなれば、これまた奇抜な乗り物(生き物)に跨るエミリィにも注目するが、彼女の操縦は極めて精緻。
「後ろからプレッシャーを掛けられたら良いのですが」
超高速で目に飛び込む路面状況と情報に合わせ、素早くレスポンスする判斷力と反射は勿論、アウト・イン・アウトでコーナーの速度低下を抑え、下り坂の加速を徹底し、更に敵の後ろについて空気抵抗を防ぐ技術にも目を瞠ろう。
『私の後続にピッタリと……まるで航跡を追尾する魚雷のようだ!!』
「スピードの涯を見た相手に、優位に立つのは至難の業……仕掛けるなら最終ストレートですね」
『――來る!!』
勝負は2,500mのストレート。
ウィリアムも警戒する中、直線に入る瞬間に白銀の髪を颯ッと躍らせたエミリィは、【轢き殺すサメイドの術】――螺旋の風を巻き起こすやモーレツな竜巻に、その渦動によって最高速度14,000km/hまで超加速!
スリップストリームを利用してサメ子をグンと推進させると、遂にウィリアムと並んだ――!
「いけ、サメ子! シャークトルネード!」
『ッッ!? これが……鮫のチカラ……ッ!?』
「わたくし達猟兵、そしてサメの生き樣をご覧下さい」
『さめのいきざま』
擦れ違い樣に注がれる流眄の美しきこと!
フルフェイスの下の虚眼が陶然と花顏を追う中、エミリィは颯爽とゴールまで突っ切るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
スターレイル・エストレジャ
キャバリアに搭乗します
規定速度は破る為にある!行ってくるよ…アウラ
『限界を越えよう!お姉さん!』
アウラが応援してくれているのを聞きながらプロトスターに乗り込む
【レースのスタイル】
UCに頼らないスタイルの場合は〘視力〙でコースのカーブや障害物を見る〘心眼〙は敵の動きや感知しにくい仕掛けを感じ取る〘推力移動〙は真っ直ぐのコースの時に加速する為に使用
UCを発動する場合はキャバリアに付与します
【敵のUCの対策】
〘オーラ防御〙で防御しながら〘聖水属性攻撃〙の〘弾幕〙を放ち漆黒の炎を消す
私は皆の幸福を願っている…私自身は皆に迷惑ばかりかけているけど…誰かが側にいてくれるだけで嬉しいから守りたいんだ!と叫ぶ
常識とルールは壞す爲にある。
規定速度は破る爲にある。
人間が作り上げたものを超越する事に、神は一縷の躊躇も無い。
「スピードの涯にある至高の領域に……行ってくるよ、アウラ」
龍型のキャバリア、星虹神機『プロトスター』の|操縦席《コクピット》で、先刻に告げた言葉を再び花唇に|捺擦《なぞ》ったスターレイル・エストレジャ(星虹の超越者・f40527)は、金彩の瞳を射る先、擂鉢状のヘアピンに消えるマシンを追うべく操縦桿を傾ける。
(「アウラが応援してくれている。彼女に應えたい」)
戰いに向かう己を送り出してくれたフラワースライム『アウラ』の笑顏と佳聲は、今も胸にある。
距離を隔てた彼女からチカラが送られてくるようだと凛然を兆したスターレイルは、ヘアピンカーブに進入した瞬間に襲い掛かる【|漆黑の炎《ブラック・インフェルノ》】を眼路いっぱいに映しつつ、アウラの|映像《ヴィジョン》を瞭然と描いた。
――限界を越えよう! お姉さん!
「――今、疆界を打ち破る」
刻下、烱々と冱える金瞳が虹彩を星型に變える。
極限まで精神を研ぎ澄ませたスターレイルは、灰白の艶髪を赫々たる焔光に輝かせた『星虹神』に覺醒すると同時、我が力と権能を『プロトスター』へと注いで加速した。
(「強制的に進化させる黑炎は、|覇気《オーラ》で防禦しながら……聖水の彈幕で搔き消す!」)
刻々と變わる路面状況、周辺環境を瞬時に把握し、即座に対応する。
相殺された炎が散り散りとなってプロトスターの機体を掠めゆく中、バンク付きヘアピンを抜けたスターレイルは、その先に見えたストレートで【|原初の神速星虹《オリジン・クイック・フォース》】ッ!
先行するウィリアムめがけ、神速の速さで空を飛び眞橫につけた――!!
『ッ! 一瞬で――!』
「私は皆の幸福を願っている……」
最速の男がフルフェイスの奧で喫驚を見せる中、彼の領域に踏み入った星虹神が小さく言ちる。
普段は無口で無表情なスターレイルは、胸にあるものを暴くように叫んだ。
「皆に迷惑ばかりかけているけど……誰かが側にいてくれるだけで嬉しい。――だから、皆を守りたいんだ!」
アウラや、話し掛けてくれる友達。冒険で出会った仲間。
大切な人達を「守りたい」という想いが、今の速度を叩き出したのか――その爆発的推進力を目の當たりにしたウィリアムは、
『……見事だ!』
と、惜しみない称賛を送るのだった。
大成功
🔵🔵🔵
フレスベルク・メリアグレース
良いでしょう、ウィリアム・ローグ閣下!
私の魂…見せてあげます!
ノインツェーンに乗り込み、UCで加速していく
ッ!時の加速ですら、振り切るというのですか…!
ですが、わたくしにも譲れないものがあります
わたくしはーーわたくしの目が届き手が届く所で誰も泣かせたくはない
泣いたことに意味を持たせるのではなくーー泣かせないように駆け間に合う!
加速の果に、その流される涙と血を流させない!
それがわたくしの魂ーー『誰も泣かない世界を作りたい』というのが?わたくしの最重要本質です!
その為に、アルカディア・エフェクトの後継者となります!
命ある者達が纏いし時のみ光輝く力を伝えたい――。
スピードの向こう側に至った男が斯く懇願すれば、フレスベルク・メリアグレース(メリアグレース第十六代教皇にして神子代理・f32263)は凛然と應えよう。
「良いでしょう、ウィリアム・ローグ閣下! 私の魂……見せてあげます!」
伝説の神騎『ノインツェーン』を駆り、|地獄《Inferno》と呼ばれるローグリンク北コースを走る、疾る。
月白と黃金に輝く機体に『帰天』なる円環の光を纏ってアスファルトを滑り出したフレスベルクは、我が信仰心を炎と燃やしてチカラに――重力を支配し、時を加速させて敵機を追った。
『……新たな挑戰者か』
その聖性溢れる神騎の存在を振り返らずして捉えたウィリアムは、【|漆黑の炎《ブラック・インフェルノ》】を迸って後続を引き剥がすと同時、コースを知り尽くしたならではのマシンコントロールでトップを堅守する。
『まだだ! 私が見る景色に來い……ッ!』
「ッ! 時の加速ですら振り切るというのですか……!」
機影を捉えるのがやっとだと翠緑の瞳を瞠るフレスベルクは、息は飲むものの諦めはしない。
彼が富や榮光をかなぐり捨て速さを求めたように、己にも譲れないものがあると玉瞳を煌々と輝かせた少女教皇は、熱く迸る想いをノインツェーンの力と共響させながら叫んだ。
「わたくしは――わたくしの目が届き手が届く所で誰も泣かせたくはない」
花唇から發せられる|佳聲《こえ》は小鳥のように淸らかに。
蓋し繊美ながらも芯のある、純然とした力強さを感じよう。
「泣いたことに意味を持たせるのではなく――泣かせないように駆け、間に合わせる!」
頬を伝う涙を拭うのでは遅い。
愛する者たちが睫を濡らさぬよう全力を尽くすのが己の役儀であると、凛々しい語調で言い放ったフレスベルクは、【|澄み渡り世界の果てまで見渡せそうな空は蒼く《スカイ・ブルー・スカイ》】――これから辿るが、意志の力で變えられる未來に向かわんと一気に加速した!
「遥かなる時の果、その流される涙と血を流させない!」
誰も泣かない世界を作りたい――。
其が己の最重要本質であると確言したフレスベルクは、その爲の手段が一、『アルカディア・エフェクト』の後繼者にならんと魂を燃やして疾る。
斯く英姿を見たウィリアムは、
『――眩しいな』
と、光を失った筈の虚の瞳が灼かれる想いだった。
大成功
🔵🔵🔵
数宮・多喜
【アドリブ改変大歓迎】
ウィリアム……
伝説のレーサー。
あのサーキットの名前にまでなった傑物とありゃ、相手にとって不足はないね。
アタシもレーサーの端くれだ、真っ向勝負で挑ませてもらうよ!
ああ、そうさ。
このレース、いつもながら小細工なんて出来やしない。
勝手知ったる宇宙カブに騎乗し、刻々と変化するコースの情報を肌で掴み、最適なラインを辿るよう操縦する。
そんな愚直な走りこそが、最後にゃ最速を掴めるはずさ……!
炎もアルカディア・エフェクトも、覚悟の上で受け止めて。
ただひたすらに走りを極める進化の姿をみせてやる!
そしてっ、勝利を掴むのはアタシ達だ!
ローグリンク北コースが「地獄」と呼ばれる所以は、レイアウトを見れば瞭然。
マシン性能は勿論、何より乗り手の技量が求められると、スタート前に頭に叩き込んだコースデータを思い起こした数宮・多喜(撃走サイキックレーサー・f03004)は、刻々と變化する路面状況や環境を肌膚で感じつつ、落書きだらけのアスファルトに最適なラインを見出し、走り続けていた。
「気力も体力も極限状態に晒される中、愚直な走りを徹底する。そうすりゃ最後にゃ最速を摑める筈さ」
噫、然うだ。
このレースで小細工なんて出來やしない。いつもながら。
反應と反射、冷靜と大胆を選ぶ判斷力――0.001秒も気の抜けないレースを約7分も走り続けるなど、成程地獄だと竊笑を零した多喜は、共に走ってくれるのが相棒で良かったと、宇宙カブJD-1725のエンジン音に佳聲を挟む。
「ウィリアム……あのサーキットの名前にまでなった傑物とありゃ、相手にとって不足はないね」
前方、見惚れるほど美しいラインを描く男を烱瞳に射る。
自ずと背中に重ねるは、伝説の男の英姿か――己もレーサーの端くれとして昂らずにはいられないと、フルフェイスの下で小気味佳く笑った多喜は、心底にある憧憬を棄てて「狩り」に行かんと凛然を兆した。
「追い縋るだけじゃ駄目だ。捕えて、喰らいついて、引き離す……!」
『……來たか、猟兵!』
或いは殺意にも似た鬪爭心をウィリアムが捉えたのは間もなく。
肩越しに虚の瞳を注いだ男は、漆黑の炎を迸って彼女を突き放すが、多喜は猛炎の奔流めがけて突進! 人騎一体の自らを槍の如くして灼熱を潜り抜けた!!
『ふむ、これだけ眼路を塞がれてはブレーキを踏むかハンドルを切りそうな処……コースを把握している』
「炎も、アルカディア・エフェクトも! すべて覺悟の上で受け止めてやるよ!」
その瞳が見た景色に、辿りついて見せる――!
轟々と唸るエンジン以上に魂を燃やした多喜は、散り散りとなる炎がドライビングスーツを掠める中で更に加速し、迅く、速く、疾く!! 間もなくしてウィリアムのマシンと竝んだ!!!
「ただ一向に走りを極める姿をみせてやる!」
『……おお、走る最中に進化を……!』
「そしてっ、勝利を摑むのはアタシ達だ!」
輝かしきその走りは、【一走懸命】――The only neat route to WIN!!
身ごと突撃槍の如くして疾る彼女に「魂のカタチ」を見たウィリアムは、エキゾーストに強い快哉を示すのだった。
大成功
🔵🔵🔵
龍巳・咲花
拙者の魂の力、それ即ち猟兵として覚醒するために積み上げた研鑽の日々とムシュマフの首との絆でござる!
拙者等の全力、とくと見るでござるよ!
全力のムシュマフを身に宿しウィリアム・ローグを待ち構えるでござる
加速は力、速さを追い求め至高の領域までたどり着いた者のソレは想像を絶する物でござろう!
地より生やした龍脈鎖と自分を繋ぎ、龍陣剣で起こした龍脈の奔流を背に受け、籠手と手甲からエネルギーを放出し、防具の強度を限界まで高め、正々堂々正面から受け止めるでござる!
受けた後も停止するまで、身に降ろしたムシュマフに喰らい付かせ振り払われぬようにするでござる!
今まで積み重ねたモノ全てを出し切り魅せるでござろう!
ウィリアムは「地獄」と呼ばれる本コースの180のコーナー、ブラインドポイント、バンク、ジャンプセクション等、コースレイアウトを全て記憶している。故に究極のラインを描いて走行できる。
その彼が最も緊迫し、最も興奮するポイント――連続ブラインドの超高速S字セクションに進入する直前、データにない景色が眼路に飛び込んだ。
「最速の男よ! 拙者等の全力、篤と見るでござる!」
『あれは……!』
暁の如く燃ゆる黃龍を從えて立つは、龍巳・咲花(バビロニア忍者・f37117)。
炎竜ムシュマフの耀きに白皙を照り上げた佳人は、肌膚を震わすエキゾーストに緋瞳を研ぎ澄ませるや、龍陣忍法「災龍憑依」ッ! 眞の姿を暴いて正對した!
「全力のムシュマフを身に宿し、拙者の全力を以て止めるでござる!」
『止める……だと!?』
リードを獲り合うでなく、スピードを殺す!
相手はレース・フォーミュラ。速さを追い求め、至高の領域まで辿り着いた者のソレは想像を絶する物があろうが、推力の塊・加速の鬼を見据える花顏は凛然。死と隣り合わせた覺悟に滿ちている。
『はは、君のような者は初めてだ! |壮快《おもしろ》いッ!』
「いざ、參るでござる!」
ウィリアムが巧みなマシンコントロールで前進する中、大地より生やした龍脈鎖と自身を聢と繋いだ咲花は、同時に突き立てた龍陣剣より漲溢する「龍脈の奔流」を背負って巨壁の如くとなる。
――無論、無謀でも無手でも無い。
彼女は更に籠手と手甲から膨大なエネルギーを放出し、防具の強度を限界まで高めた上、突撃槍の如く驀進する男を待ち構えた!
『いい表情だ! さぁ私を越え、自らの限界を超えていけ!』
「今まで積み重ねたモノ全てを出し切ってみせるござるっ!」
衝突、そして角逐――ッ!
神速の域にあるマシンを受け止めた咲花は、まるで王蟲の怒りを受け止める靑き衣の者の如き超衝撃に貫かれるが、龍脈に結ばれた佳人は吹き飛ばされず――鎖をブチブチと千切りつつ、大きく後退しつつも耐える、堪える!!
「……拙者の魂の力っ……夫れ即ち猟兵として覺醒する爲に積み上げた研鑽の日々と、ムシュマフの首との絆……っ」
『ッッ! 減速している――!?』
「お主が停止するまで、ムシュマフ共々、振り払われぬようにするでござる……っ!」
まさか、まさかッ! マシンが停止するなど!!
目尻を飛んでは過ぎる景色が止まって見えた瞬間、嘗てスピードの頂に昇りつめた男は、初めて見る世界に時間まで止まったようだった。
大成功
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エル・クーゴー
この【L95式4Dプリンター】は『有効』『最適』を追及したマシンの超高速成型を可能とします
・コードの力と【メカニック】知識とをふんだんに投入、紅白カラーに猫耳テイストなリアを備えた、招き猫を車体化したみたいなマシンを仕上げる(マシン名『マネギGO』)
・尋常に出走、手堅いライン取りとコーナリングで臨む
そして、当該コースレイアウトに対し理論値最優を追及したこのマシンの設計思想を――ここでかなぐり捨てます
・強制進化の状態異常を車体へふんだんに取り込み、好き放題にモンスターマシン化させ、それをアドリブで【操縦】し挑む
カタログスペックの、その更に先へ
当機はそれを、型通りの機械ではない、魂と解釈しています
究極のエアカー「ローグ・インターセプター」が、超高速S字セクションを食い破りながら停止する――。
嘗て無い光景にウィリアムが愕然とする中、コース眞隣にあるガレージから轟音が噴き上がると同時、一騎のマシンが爆炎を連れて登場した。
「躯体番号L-95_ならびに『マネギGO』_最終レースにエントリーします」
『すごいマシンきた!』
おめでたい紅白カラーをベースに、愛らしい猫耳一対。招き猫をそのまま車体化したみたいなマシンと、その操縦者として現れたエル・クーゴー(躯体番号L-95・f04770)は、正月太りが懸念される翼猫『マネギ』をセーフティーとして先導させながら、兩者のマシンをスタート地点まで走行させる。
最終戰は仕切り直してからの勝負となった訳だが、エルが出走ギリギリまで改造と調整を重ねたGOは、成程、最速の男と互角に戰うに相應しい超高性能機だった。
『ッ……キャラ寄りマシンと思いきや、ブラインドもバンクも難なく走り抜ける……!』
「当マシンに追及したのは『有効』及び『最適』_偏に本レース仕樣です」
本來はレーサーが覺える180のコーナーと各ポイントに潜む悪魔、その攻略の全てを電腦魔術で入力すれば、GOは手堅いライン取りとコーナリングでアスファルトを滑り、インターセプターの後続にぬるんっと吸い付く。
その猫の如き滑らかさに、ぞわりと「圧」を受け取ったウィリアムは、漆黑の炎を迸って振り払わんとするが、GOはまろやかな表情のまま灼熱の渦へダイブ――! 進路を違えず突進したッ!
『矢張り、突発的事故には対応しきれぬか……ん、いやっ、あれぇ!?』
「これより本コースレイアウトに対し理論値最優を追及したこのマシンの設計思想を――かなぐり捨てます」
『こ、これは――ッ!』
黑炎を貫き、ぼふっと爆ぜる焦熱の中から現れるは、黑地に金を輝かせた『マネギGO type Black』!
強制進化の状態異常を車体へふんだんに取り込んだ結果、魔除け厄除けにオススメな黑の招き猫となったのだ!
『ならば、もういっちょう!』
「GO機の進化は“止まりません”」
二度目の黑炎にもそのまま突っ込み、今度は黃金色に輝く金運招き猫に變身! Oh,モーレツ!
斯くして自由奔放に進化するモンスターマシンには、其を即興で操らんとエルがハンドルを巧みに捌き、炎に気流が煽られる中を全速前進――! スリップストリームを使って遂にTOPに躍り出るッ!
而してこの瞬間、抜きざまに置かれる科白が小気味良かろう。
「カタログスペックの、その更に先へ――当機はそれを、型通りの機械ではない、魂と解釈しています」
『――噫、嗚呼! 全く|痛快《おもしろ》い!! 私に新しい景色を見せてくれた君達にこそ、この力を託そう!』
スピードの向こう側にあった力を預けたい――。
フルフェイスの下、虚の瞳に確かな光を見た男は、颯爽と走りゆく機影にそう言葉を贈るのだった。
大成功
🔵🔵🔵