ドラゴンライダー・コーデ
●イベント演出
それは初心者クエストを進行させるイベントのようなものであった。
「おい、あれって……」
ゲームプレイヤーの一人が何かに気がついたように声を上げる。
地面に落ちた影。
飛翔するは『ライドドラゴン』であり、騎乗するは見慣れぬ女性NPCだった。
トイツオック地方はゲームプレイヤーにとって初心者エリアとも言われるほどにゲームに不慣れな者たちをサポートするシステムが網羅されている。
お助けNPCも、そのシステムのうちだ。
『聖剣士のフオン』が呟く。
「ああ、あれは『|欲望竜《ディザイアドラゴン》の花嫁』の一人。名前はわからないが、相当の手練と聞く」
「そうなのか……ん?」
あれ? と初心者ゲームプレイヤーは思った。
今、花嫁の『一人』って言わなかったか?
その疑問に『聖剣士のフオン』は応えない。
そう、空飛ぶ『ライドドラゴンに乗っている女性』は初心者クエストその2に出てきた『重騎士のハイン』なのだ。初心者クエストその2をクリアしているのならゲームプレイヤーは『重騎士のハイン』と出会っているのだ。
伏線というやつだ。
だが、『重騎士のハイン』は黙して語らぬNPC。
それ故にゲームプレイヤーだけが『ライドドラゴンの女性』と『重騎士のハイン』を結び付けられないのだ。
「さあ、いくぞ。此処から先はただのおつかいと違って、戦闘の可能性だってある」
「お、おう!」
ゲームプレイヤーは『聖剣士のフオン』に促されてクエストを進めていく。
そして、この初心者クエストを進めていったゲームプレイヤーは知ることになる。
この一連の初心者クエストの行く先は『欲望竜』である。
「あら、いらっしゃい。遅かったわね。私は『欲望竜の花嫁』、『魔喰者のニャー』よ」
新たに現れたNPCの姿にゲームプレイヤーは驚愕する。
いや、正確には。
「は、ハーレム……だと!?」
だから、『欲望竜の花嫁』の『一人』と言っていたのだ!
あんな美人がまだ嫁にいる!?
ゲームプレイヤーはなんとも言えない感情を覚える。いや、ゲームの中の世界なのだが、そんなの関係ねぇ!
「ゆ、許せねぇ!『欲望竜』……! 絶対に倒してやる!!」
燃える初心者ゲームプレイヤー。
そんな意図せぬゲームプレイヤーたちにやる気に油を注ぐなんて知らず、今日もギルドで、ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)は盛大にくしゃみをするのだった――。
成功
🔵🔵🔵🔵🔴🔴