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バトル・オブ・オリンピア②〜激走! F1テニス!

#アスリートアース #バトル・オブ・オリンピア #モーターレース

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●アスリートアース――ローグライク・サーキット
 1列目のレッドシグナルが、灯る。

 観客席からあふれる熱狂の歓声が、サーキットのスタート地点に立つ|F1カー《フォーミュラ1カー》、そしてレーサーたちを包む。

 2列目のシグナルが、灯る。

 レーサーたちは、神経を研ぎ澄ませる。

 3列目のシグナルが、灯る。

 レースの度にコースが変形する「不思議のサーキット機構」。それを搭載したこのサーキットでは、下見による構造の把握は役に立たない。
 信じられるのは、己の運転技術、条件反射、そして、決断する覚悟だけだ。

 4列目のシグナルが、灯る。

 スタートダッシュを決めるための、最重要なタイミングを逃してはならない。レーサーたちはハンドルを握りしめる。

 5列目……すべてのシグナルが、灯った。
 と同時に、レーサーの何人かが、ボールのようなものを上空へと飛ばした。

 直後、5列のレッドシグナルが消灯し、レース開始を告げた!

 響くブザー。
 うなるエンジン。

 そして、ラケットとテニスボールによって発せられた、軽い打撃音。

 スタートラインをF1カーが、
 そして、テニスボールが通過していく!

「うえッ!?」

 突如現われたテニスボールに思わず変な声を出すひとりのレーサー。
 テニスボールは見事にレーサーに命中。スタートダッシュのスピードを乗せたスイングから放たれるサーブは、ヘルメットごしにも関わらず命中したレーサーを車体から転落させた。

 サーキットに飛び交うテニスボールと混乱。
 クラッシュが至るところで発生する中、彼らは先頭を独走していた。

 彼らはヘルメットの代わりにヘッドハンド、レーシングスーツの代わりにテニスウェアを纏った……テニスプレイヤーの集団だ!

「俺たちはついに! この絢爛魔法領域『ウィンブルドン』までたどり着いたんだ! 俺たちのラリーでこのコートを制覇してやろうぜッ!!」
「「「「「「「うおおおッ!!」」」」」」」

 テニスプレイヤーたちはF1カーで、コースを爆走していった。

●グリモアスペース
「……もう一度言っておきますが、今回予知された場所は『ウィンブルドン』ではなく『ローグライクサーキット』です。テニスコートではなくF1レースサーキットです。」

 集まった猟兵たちに対して、ノキ・エスプレッソ(色を求めて走るレプリカント・f41050)は改めて今回の舞台について確認を取る。
「彼らは元々、絢爛魔法領域『ウィンブルドン』に出場予定のテニスプレイヤーでした。そんな彼らがなぜこの場所にいるのか……」
 |愛車《ハイスピードバイク》に腰掛け、ノキは猟兵たちの表情を伺う。既に何人かは、その理由に心辺りがあるようにうなずいた。
「……新生フィールド・オブ・ナインのひとり、『レーシング・フォーミュラ』の洗脳によるものと考えた方が妥当でしょう」

 新生フィールド・オブ・ナイン。
 魔王ガチデビルのデビルパワーで目覚め、その力で古代バトリンピア時代の祭典『バトル・オブ・オリンピア』の復興させた、ダークリーガーの首魁たち。
 そのうちの1人である『レーシング・フォーミュラ』は未だ姿を現していないが、アスリート達のスポーツ能力を鍛え上げるために動き出していることは間違いない。テニスプレイヤーたちは洗脳によってダーク化、『ダークリーガー』となってしまったのだ。
 1度ダーク化したアスリートは、殺しても戻らない。
 元に戻す唯一の方法、それは……超人スポーツで、正々堂々と倒すことだ。

「みなさんにはローグライクサーキットに向かってもらい、ウィンブルドンでの試合が始まる前に、彼らとのレースに勝利してもらいます」

 ノキは猟兵たちに依頼内容を述べた後、「ボクが様々な色を見たいように、彼らも本当のウィンブルドンを見たいはずだから……」とまぶたを閉じる。が、すぐにいつもの無表情に戻り、そのままレースの詳細と現状について解説を始めた。

 舞台となる『ローグライクサーキット』は、レースの度にコースが変形する「不思議のサーキット機構」が搭載されている。|直線走路《ストレート》を走っていたら、いきなり急カーブへと変形していたことも日常茶飯事だ。
「気をつけるのはコースだけではありません。先ほどの予知のように、彼らはみなさんに攻撃してくるでしょう」
 彼らテニスプレイヤーによって放たれたテニスボールはコースを飛び回り、他のレーサーを攻撃する……一種の|乱暴行為《ラフプレー》とも言える攻撃。それだけでなく、レーシング・フォーミュラに洗脳された彼らはユーベルコードの使用や体当たりによる機体の破壊も躊躇しないだろう。

「変化するコースに対応しつつ、彼らのラフプレーに対処すること、それがこのレースを制覇するための重要なポイントです」

 自身の手のひらにあるグリモアと呼ばれるエネルギー体を出現させながら、ノキは再び猟兵たちを見る。
「今回はF1レースということで、|F1カー《フォーミュラ1カー》に乗ってもらいます。乗り慣れていない方もいると思いますが、車体を損傷しても修理すればリタイアにはなりません。恐れずにいきましょう」

 説明を終えたノキは、グリモアをかかげる。

「みなさん、レースの準備はよろしいですか」

 猟兵たちがうなずけば、レース開始の合図だ。


オロボ
 こんにちは、オロボです!
 マスターとして2回目のシナリオかつ初の戦争シナリオとなりますが、今回もよろしくおねがいします!

 今回の舞台はアスリートアースで開催されているバトル・オブ・オリンピア。その中の「ローグライク・サーキット」が舞台となっております。
 シナリオ形式は集団戦の一戦のみ。本来は絢爛魔法領域『ウィンブルドン』で出場予定だった、洗脳されたテニスプレイヤーたちとF1レースで勝負。勝利してその洗脳を解きましょう!
 ノキも言っていましたが、『突如出現するカーブに対処する』・『洗脳テニスプレイヤーによるサーブ攻撃、ユーベルコード、体当たりなどのラフプレーに対処する』ことによってプレイングボーナスが与えられます。
 なお、今回はアスリートアースの超人スポーツ、およびモーターレースのルールに則り、使用できる乗り物はF1カーだけとなります。

 それではみなさん、準備はいいですか?
 テニスボール飛び交うローグライク・サーキット、開幕です!
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第1章 集団戦 『洗脳テニスプレイヤー』

POW   :    死神の瞳
対象のユーベルコードの弱点を指摘し、実際に実証してみせると、【死神の幻影】が出現してそれを180秒封じる。
SPD   :    一人ダブルス
【もうひとりの自分】が現れ、協力してくれる。それは、自身からレベルの二乗m半径の範囲を移動できる。
WIZ   :    デッドエンドデスティニー
攻撃が命中した対象に【ターゲットマーク】を付与し、レベルm半径内に対象がいる間、【どこからか高速で飛来する硬式テニスボール】による追加攻撃を与え続ける。

イラスト:鴇田ケイ

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。

風吹・香織
 なんだい、|P-38ライトニング《相棒》に乗ろうと思ったのに出来ないのかい。
 退屈そうな競技だねぇ、ふわぁ(欠伸)
 とはいえ、友人の頼み事には応えてやりたい。仕方ないね。ここはF1カーで出るとしよう。
 相棒用に特化したテクニックとはいえ、私は【操縦】には自信がある。そう簡単にはやられないよ。
 最近お世話になってるライダーズモーテルの影響でバイクでの走行も練習中なのさ。【悪路走破】で下手なギミックやカーブくらい難なく攻略してやる。

 残るは敵対策だが。
 走り出すと同時にUC発動。
 敵の進路上に爆弾やロケット弾をお見舞いして地形を破壊、スリップさせてやろう。
 何人に増えようが、相棒の方が多いよ!



「なんだい、|P-38ライトニング《相棒》に乗ろうと思ったのに出来ないのかい。退屈そうな競技だねぇ」

 スタート地点付近のピットガレージの中で、|風吹《かぜふき》・|香織《かおり》(怠惰な「双胴の悪魔」乗り・f39889)はふわぁと欠伸をする。相棒である双発単座戦闘機『P- 38ライトニング』で挑めないことに落胆している……といったところか。
「とはいえ、友人の頼み事には応えてやりたい。仕方ないね」
 だが、このレースに対するやる気を失ったわけではない。彼女をこのローグライクサーキットに転送したグリモア猟兵であり、友人でもあるノキの顔を浮かべながら、香織はF1カーに乗車する。
 
「私は操縦には自信がある。そう簡単にはやられないよ」
 
 香織はアクセルを踏み込み、目の前に広がるコースへと飛び込む。
 ――その後ろを、飛行機の影が次々と追いかけていた。

「おい! 次の試合相手がやってきたぞ!」
「ちょうどよかった! まだまだ暴れたりないからな!」

 テニスプレイヤーたちの後列が見えると、向こうもこちらに顔を向ける。
 彼らは声を掛け合うと、手元にテニスボールとラケットを取り出す。と同時に、その人数が2倍に増えた! ユーベルコード『一人ダブルス』によって増えた彼らの分身は速度を落とし、香織の後ろへと下がる。前後からの挟み撃ちラリーを仕掛けようとしているのか。
 後ろに下がったテニスプレイヤーの分身たちは、上空へとテニスボールを放り投げる。

 ――が、上空にあるものを見て、目を見開いた。

「さぁいくよ、僚機たち。爆撃開始だ」

 香織の声とともに、前方から爆音が響き渡った。
 彼女、そしてテニスプレイヤーの上空を飛んでいたのは……

「「「「……せ……戦闘機ィ!?」」」」

 P-38! その数121機!!
 香織のユーべルコード『|P-38爆撃部隊《ライトニングバクゲキブタイ》』で召喚されたP-38たちは、ミサイルと2,000lb爆弾を進路上に落としていく!!

 上空に気を取られたのだろうか。爆破によって破壊された地形に、次々とスリップしていくテニスプレイヤーと分身たち。
 その中を、香織は慎重かつ大胆なコース取りハンドルさばきで突き進んでいく。UDCアースに存在する宿泊施設『ライダーズモーテル』に訪れたことをきっかけに始めたバイクの運転。その知識が、悪路の走破を可能としていた。

 そんな彼女の先に存在していた直線が、破壊された地形ごとヘアピンカーブへと変わった。コースに搭載された『不思議のサーキット機構』による、地形変化によるものだ。

「……ッ!」

 香織はアクセルを踏み込んだ。
 本来ならばブレーキの必要がある、ヘアピンカーブ。にも関わらず香織は悪路だらけのカーブへと突っ込み……!!

 コーナーの先端に出来たクレーターをジャンプ台にし、宙へ飛び出した。

 P-38たちとともに、香織を乗せたF1カーは空を舞い――

「「「なッ!!?」」」

 最前列を走っていたテニスプレイヤーたちの前に、着地!
 ショートカットを成功させたのだ!

 出し抜くことができたことに対する達成感からか、はたまたF1カーによる空中散歩に対する満足感か。香織は笑みを浮かべながら、サーキットを駆け抜けていった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ベルト・ラムバルド
アドリブ上等

…レースやばない?
ともかくだ!ベルト・ラムバルドは騎士!今回キャバリアはナシだが…
モーターレースでも騎士道って奴を見せてやるのよ!…操縦の仕方は…よしわかった!

F1カー操縦し参戦!
高性能を駆使しコースを駆け抜ける!
カーブなんぞ瞬間思考力と窮地での閃きで落ち着いて華麗に抜けるのよ!

…テニスレーサー!分身した!?卑怯だろ?!
くそー!スポーツでも天才ってのを見せつけてやる!

UC発動しマシン諸共カリスマオーラを纏って相手のマシンに体当たり!
テニスボールなんぞ破裂させてついでに相手マシンを転倒させてクラッシュさせてやるー!

…やりすぎたかな?悪く思うなよ?騎士道の邪魔するとこうなるんだよ!



 サーキット・ビジョンに映る、サーキット上を飛び交うテニスボール。さらに、香織の呼び出したP- 38によって破壊された地形。

「……レースやばない?」

 ガレージからサーキット・ビジョンを見ていたベルト・ラムバルド(自称、光明の暗黒騎士・f36452)の口からは、そんな感想しか出てこなかった。
 口頭による予知からは想像できない光景。並のレーサーであれば棄権を考えても仕方ないだろう。だが。
「ともかくだ! ベルト・ラムバルドは騎士! モーターレースでも騎士道って奴を見せてやるのよ!」
 ベルトは意気揚々とF1カーに乗り込む。慣れない手つきでハンドルや機械をいじっていたが、「よしわかった!」と叫べばアクセルを全開、コースへと跳びだした。

 騎士道に憧れ、光明の暗黒騎士を自称するベルト・ラムバルド。
 だが、そのセンスは本物だった。人型兵器『キャバリア』のパイロットである彼にとってF1カーは専門外。にもかかわらず、その性能を最大限引き出す運転技術を即興で身につけてみせた。

 地形変化によってストレートからスプーンカーブの中に放り込まれても、瞬間思考力と窮地での閃きで鮮やかなグリップを見せる。観客たちの目には、最初からコース変化を予測していたかのように映っていただろう。
 
「……テニスレーサー!」
 先頭を走る香織を追いかけていたテニスプレイヤーの群れ。彼らの元にたどり着くまで、そう時間はかからなかった。
「!! また新手が来たぞ!!」
「ああ、こういう状況こそ燃えるんだよなッ!」
 テニスプレイヤーたちも考えなしに突き進んでいただけではない。すぐに後列がユーベルコード『一人ダブルス』を発動させた!
「分身した!? 卑怯だろ?!」
「「ユーベルコードは認められているんだ! 俺たちの実力を思い知れぇッ!」」

 すぐに周囲をテニスプレイヤーたちに囲まれ、サーブによって放たれたテニスボールが四方から飛んでくる。
 ベルト、まさに絶体絶命。

 ……だが。

「こんの~!! こうなりゃ自棄だ! ベルト・ラムバルドは男だ! いっちょ暴れてやる~!」

 サーキット中に、ベルトの叫びが響き渡った。

 瞬間、ベルトの操るF1カーが光り輝くカリスマオーラに包まれた!
 ユーベルコード『|カリスマど阿呆大暴れ《キシドウオトコオオアバレノマキ》』である!!

 オーラに触れたテニスボールは木っ端微塵!! ……だけではない!

「「うおぉぉぉ!!?」」
 
 その破片が、テニスプレイヤーとその分身たちに襲いかかる!
 彼らの目へ向かって飛んできた破片を回避しようと、反射的にハンドルを動かす……が、ハンドルを切りすぎてコースアウトだ!

「スポーツでも天才ってのを見せつけてやる! ど~なっても知らんからな!?」

 さらにベルトの騎士道は止まることを知らない。
 カリスマオーラを身に纏い前方のテニスプレイヤーへと体当たりを仕掛ける! オーラによって破壊されたF1カーに乗っていたテニスプレイヤーだけでなく、その破片によって周辺のF1カーも玉突き事故の如く次々とクラッシュしていく!

「……やりすぎたかな? 悪く思うなよ? 騎士道の邪魔するとこうなるんだよ!」

 コースの外れで転がる、F1カーの残骸と失神したテニスレーサーたち。
 彼らに向かってベルトは高らかに声を張り上げた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

数宮・多喜
【アドリブ改変・連携大歓迎】

レースに…テニスぅ!?
魔王戦だけじゃ飽き足らず、他の種目にまで被せてくるんじゃねーよ!
……いや、魔王戦を上書きできるからそれよか簡単か?ぐぬぅ。
まぁ良いさ、クルマ乗りとしちゃ黙ってられないからね。
コースをカートにされてたまるものかよ!

ここは二輪はダメか、ならF1を駆るしかないね。
なーにメットを被って乗るし、エンジンがあってタイヤで走るんだ。
アタシが『操縦』できないはずがない!
ヘアピンサーブだろうが連続コーナーだろうが、【無限走破】中のアタシを止められると思うなよ?
こちとら走りに命賭けてるんだ、お前らがテニスに賭けてる位はな!
レーサーにレースをとり戻させて貰うよ!



 猟兵たちによって、次々とリタイアしていくテニスプレイヤーたち。
 だが、彼らはまだ全滅していなかった。

「くそっ! おまえたちの魂は、俺たちが引き継いでやるッ!」
 彼らは仲間が脱落している姿を見て、涙を飲み、F1カーを走らせる。
 散っていった仲間のために、必ず『ウィンブルドン』を制覇する……そう胸に刻んで。

 ……繰り返すようだが、ここは『ウィンブルドン』ではなく『ローグライク・サーキット』である。

「おまえらぁッ! 他の種目にまで被せてくるんじゃねーよ! 」

 そんな彼らの後ろ姿を捉えて、F1カーを操る|数宮《かずみや》・|多喜《たき》(撃走サイキックレーサー・f03004)は叫ぶ。
 おまえら、とは言っているものの、実際にはテニスプレイヤーたちではなく彼らを洗脳しているレーシング・フォーミュラに対しての言動であろう。別種目の競技が混じるならまだしも、それによって普通にレースするはずだったレーサーたちがリタイアしていく。グランプリレーサーである多喜にとって黙っていられない状況なのだ。
「コースをカートにされてたまるものかよ!」
 アクセルを踏み込み、多喜は車体ごとテニスレーサーの群れに身を投じた。
 彼らも新たな試合相手を見つけた目つきで振り返り、臨戦態勢へと移る。

 そのタイミングを見計らったように、地形変動が発生する。
 現われたのは、左カーブ……の先に、右カーブ。さらにもう一度左カーブ。鋭いカーブが連続する|シゲイン《鋭い角度のS字コーナ》だ。

「「「俺たちのテニスにかける思い!! 思い知れッ!」」」

 シゲインに入る瞬間、テニスプレイヤーたちは一斉にサーブを放った!
 テニスボールはカーブの壁で跳ね返り、多喜の周辺を飛び回る。途中で外れ、戻ってくるボールに対してもテニスプレイヤーたちはユーベルコード『一人ダブルス』で出現させた分身とともにラケットで打ち返す!

 ……だが、多喜は動じなかった。
 突如現われたシゲインにも、飛び回るテニスボールにも気を取られず、ボールをかわしつつも極限まで無駄をそぎ落としたコース取りを見せる。

 それもそのはず……彼女は、レーサーなのだ。

「こちとら走りに命賭けてるんだ、お前らがテニスに賭けてる位はな!」

 バイクとF1カーという違いはあれど、エンジンとタイヤが存在する乗り物。さらに愛用のスカルメットを装着している彼女は、バイクによるレースと同じ集中力を発揮していたのだ。

「レーサーにレースをとり戻させて貰うよ!」
 そう宣言した直後に入る、ストレート。多喜も反撃を仕掛ける。
 前方を陣取るF1カーに向かってアクセルを全開。普通ならば後ろから突撃した多喜の車体も無事ではすまないが……!
 
 前方のテニスプレイヤーは衝撃でコースアウトした一方、多喜はコントロールを失うことなく直進し続けていた!

 ユーベルコード『|無限走破《ホイーリング・ディーリング》』。
 それを発動させた多喜の車体は、たとえどんな防護を施したものでも無視して攻撃できる。タイヤが存在する機体であれば、それを運転する彼女を止める者はいない!

 やがて現われる、ヘアピンカーブ。
「アタシを止められるなら止めてみなァ!」
 ボールの包囲網をかいくぐり、先を走るテニスプレイヤーたちを、多喜は体当たりで蹴散らしながらカーブを攻略していった!

成功 🔵​🔵​🔴​

ロジャー・カニンガム
残念ながらここはサーキット。貴方がたの得意な|公道レース《ラリー》ではありませんよ?

不規則に変化するコースは瞬間思考力で即座に最善の対応を割り出し、
スライディングやダッシュ、ジャンプといった特殊な機動も織り交ぜクラッシュやコースアウトを回避します

ライバルの攻撃には、こちらも|砲弾《タマ》をうって応戦しますか
と言っても、反動を加速に利用する為に後方に発射するだけです
ただし…私のインテリジェントキャノンは131回まで曲がりますよ
軌道を操作した砲弾の爆発による攻撃、さらに爆煙で視界を塞ぐ事により正常な運転を阻害します



 猟兵たちに差を付けられようとも、まだ諦めずにアクセルを踏むテニスプレイヤーたち。
 そんな彼らの後方から、新たな挑戦者が迫ってくる。
 
 それは、短い前脚でハンドルを操る兎型の機械。カツラギ・アーマメンツ製兎型歩行戦車『カニンガム』の特別仕様機、ロジャー・カニンガム(兎型歩行戦車RIT-17/S・f36800)だ。
「残念ながらここはサーキット。貴方がたの得意な|公道《ラリー》レースではありませんよ?」
「どんな|敵地《アウェイ》だろうが、攻略してやるんだよ!」
 洗脳によってここを『ウィンブルドン』と思い込んでいる彼らに、説得は不可能だ。人間がため息をつくように、ロジャーは首を振った。

 テニスプレイヤーのひとりが、ボールを宙に放り投げる。

 彼らがロジャーにお見舞いしようとしているのは、ボールが命中した対象に|照準《ターゲットマーク》を付与し、絶え間なく出現するボールによる追撃が襲いかかるユーベルコード『デッドエンドデスティニー』。
 ひとたび命中してしまえば、出現場所を特定できない神出鬼没の追撃から逃れることはできないだろう。

「そちらが打ってくるのなら、こちらも|砲弾《タマ》を打って応戦しますか」

 突然動き出したロジャーの頭脳戦車キャノン砲に、彼らは一瞬だけひるむ。
 だがその砲弾は彼らではなく、ロジャーの後ろへ発射した。発射の反動によるスピードでボールを回避、テニスプレイヤーたちを追い抜いていく。
「逃がすかよ!」
 次のボールを取り出すテニスプレイヤー。その一方でロジャーは「あ、そうそう」と特徴的な機械音声で呟く。

「私のインテリジェントキャノンは131回まで曲がりますよ」
「「「……え?」」」

 思わず振り返ったテニスプレイヤーたちが目にしたのは……こちらに戻ってくる砲弾!
 ロジャーのユーベルコード『インテリジェントキャノン』によって、発射した砲弾の軌道が変わったのだ!

 慌てて横へと避けるテニスプレイヤーたち。砲弾は地面に落ち、爆発!

 付近にいたテニスプレイヤーたちが空を舞ったのはもちろん、直撃を免れた者たちもタダではすまなかった。
「前……前が見えん!」
 爆煙によって視界を塞がれた彼らの車体は、ふらふらと左右に揺れていた。
 ……それだけではない。

「この! とにかく当たれッ!」
「ッ!?」

 錯乱したテニスプレイヤーが、でたらめにサーブを放ってしまったのだ。
 サーブから放たれたボールは、隣のテニスプレイヤーに命中。車体に赤い照準が現われ、『デッドエンドデスティニー』によるボールの追撃が飛んでくる!

「や、ヤツの攻撃かッ!?」

 仲間に攻撃されていることに気づいていないのだろうか。爆煙の中でそのテニスプレイヤーもサーブを放つ。
 彼らの同時撃ちにより、爆煙からクラッシュした彼らと車体が次々と飛び出す!

 そんな彼らをバッグに、ロジャーは高性能AIによる予測で最善の対応でコースを攻略していた。
 走っていたスプーンカーブが地形変化で鋭くなり、反対方向へのヘアピンカーブへと変わろうとも、砲撃の反動を生かしたジャンプでダートを飛び越し、凌いだのだ。

大成功 🔵​🔵​🔵​

国栖ヶ谷・鈴鹿
オロボマスターにおまかせします。かっこいい国栖ヶ谷・鈴鹿をお願いします!



ハイカラさんの天才発明家&パテシエイルの多才なパーラーメイド。
お手製の二挺銃の扱いと、小回りの利くフロヲトバイの紅路夢、空鯨型航空巡航艇ヨナ、ワンオフのスーパーキャバリア阿穹羅と、守護稲荷きこやんの護法術、ハイカラさんの後光のパワーを駆使した、発明と天性の才能を武器に明るくも自信に溢れた心持ちで挑みます。

テニスボールの妨害はユーベルコヲドで地形を作り変えて、防護壁に、改変を戦場全体に波及させつつ、急カーブを作り変えてショートカットに変え、一気に乗り切っちゃおう。



 レースはまもなく、終盤を迎えようとしていた。
 その終盤こそ、僅かなミスで番狂わせを引き起こす勝負所でもある。

「このまま負けるわけにはいかねぇッ!」
「俺たちにだって、アスリート魂はあるんだッ!」

 赤黄色の閃光を目に宿し、ロジャーが発生させた爆煙から生き残ったテニスプレイヤーたちが飛び出してくる。
 洗脳されていても、彼らはこのアスリートアースで活躍するアスリート。テニスにかける情熱は変わらないのだ。

「――やっと追いついたぁ!」

 そんな彼らに続き、薄れていく爆煙から飛び出したのは|国栖ヶ谷《くずがや》・|鈴鹿《すずか》(命短し恋せよ|乙女《ハイカラさん》・f23254)。他の猟兵たちには遅れを取ったものの、フロヲトバイの紅路夢を初めとした運転技術と自他ともに認める多彩な才能、それに対する揺るぎない自信によって、テニスプレイヤーたちに食らいついていたのだ。
「レースでも天才であること、見せてあげるよ!」
 テニスレーサーたちに宣言する鈴鹿。テニスレーサーたちは振り返り、まるでそれに答えるかのように『一人ダブルス』による分身を呼び出した。

 ――ラストスパートが、始まる。
 
 一斉に放たれるテニスボールたち。
 それは分身たちのラリーによって繋げられ、鈴鹿へと襲いかかる……!

 そんなテニスボールを見つめて、鈴鹿は静かに右手を上げた。

「ここはぼくの領域、さぁ、君の魂をあるべき姿へ」

 瞬間、鈴鹿の背後から光が差す。
 感情によって後光が光る、ハイカラさんと呼ばれる人間の突然変異体。そのひとりである鈴鹿の後光が、周辺を照らす!

 鈴鹿のユーベルコヲド『|厭穢欣浄《プレヰング・ヱデン》パラダヰムシフト』で発生した理想世界再構築型ハイカラさん御光。それは、性質・形状の改変能力を持つ。

 突如、鈴鹿の前方のアスファルトが変形し、正方形の壁へと変わった。
 その壁はボールを受け止める! と同時に、鈴鹿は左へと避けて壁を避ける。
「「まだだっ! もういっぱつ……」」
「おい! コースが変わるぞ!」
 再び攻撃しようとするテニスプレイヤーに、仲間が忠告する。前方には、コースによる地形変化で左カーブが現われていた。すぐさま彼らはカーブに対応した。

 その時、彼らの目に鈴鹿の姿が目に映った。
 鈴鹿は彼らの横に並んだかと思うと、すぐに離れていき……彼らを引き離していく!

 それもそのはず! 鈴鹿は彼らとは別のコースを走っていた!
 後光による改変は、ボールを防ぐための壁を作っただけではない。その先に本来のコースとは別の、ひとり分しか入れない幅のショートカットを、改変によって作り替えたのだ!

「ぼくの|設計図《レシピ》は特別製! このままゴールまで……いかせてもらいます!」
「……くっそおおおおお!!!」

 その口調の変化は、鈴鹿もテニスプレイヤーたちと同じく真剣にこのレースに向き合った結果であろう。天才といえど、怠けることは許されない。このコース改変も、研究に研究を積み重ねがショートカットを作る発想力を生み出したのだ。
 鈴鹿とテニスプレイヤーたちは、目の前まで迫ったゴールへ向かってアクセルを踏み込む……!

 ゴールラインを見つめていたレース審査員の目に、先に映ったのものは――

 先にゴールした、鈴鹿たち猟兵だ。

「ちくしょおおおぉぉ!! ……ハッ!!? 俺たちなんでF1カーを運転しているんだ!?」
 テニスプレイヤーのひとりが悔しさで雄叫びをあげるが、ふと、自身の握っているハンドルを見て目を見開く。それとともに彼らの目から赤黄色の閃光が消える。
 と、同時に、ふらふらとした運転になり、ゴール先で互いにぶつかり合い結局クラッシュしてしまった。レーシング・フォーミュラによる洗脳が解かれたのだ。

 すっかり使い物にならなくなったF1カー。
 だが、この程度ではアスリートである彼らを再起不能にすることはできない。
「……ふーっ、間一髪だった」
「日頃の練習で鍛えた動体視力、また役に立っちまったぜ!」
 彼らは受け身を取り、|最小限の怪我《かすりきず》で済ませたのだ。
 そして、彼らより前にリタイアしたテニスプレイヤーたちもまた、受け身を取り、衝撃による気絶以上の負傷を追った者は誰もいなかった。

 やがて、他の仲間たちと合流した彼らは互いの無事を喜び合う……が、ある肝心なことに気づく。

「ちょっと待て、今気づいたんだけどさ……ここってウィンブルドンじゃなくね?」
「どう見たってF1のサーキットだよな……ここ」

 しばしの沈黙。

「「「「「「――ぁぁぁぁぁぁあああ!!! 会場間違えたああああああ!!!」」」」」」

「どうする!? 今から走っても間に合わないぞ!?」
「そうだ! このF1カーで行こうぜ! さっきはミスったけど、コツは掴んでる!」
「よし! みんなで予備のF1カーを借りに行くぞ! あと迷惑かけた謝罪を忘れるなよ!」
 目が覚めた彼らは、ウィンブルドンに向かうため行動を始める。
 そんな中、何人かがレースを終えた猟兵たちの元へと走ってくる。
「あんた達にも迷惑をかけてすまなかった! その上で悪いが、乗ってたF1カー貸してくれ!!」
 一斉に頭を下げるテニスプレイヤーたち。その後、彼らは猟兵たちの乗っていたF1カーへと乗り込んだ。
「いろいろあったが、あんたたちとの試合、楽しかったぜ! 今度はテニスで勝負してくれよ! もちろん、テニスコートでな!!」

 F1テニス。
 奇妙ながらも熱き試合を終え、テニスプレイヤーたちは次なる舞台へと走り去っていった。

成功 🔵​🔵​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月15日


挿絵イラスト