バトル・オブ・オリンピア⑨〜対決! ミス・ゴリーン!
●絢爛魔法領域『ウィンブルドン』
美しい芝のコート。
その周りを囲むように配置された客席は、これからの戦いを今か今かと待ち望む観客によって埋められていた。
アスリートアースにおいて、テニスとは超次元魔術競技であり、その試合に耐えるコートは魔術防御の張られた特殊な儀式場である。
そして、最も格式が高く、豪華絢爛なテニスコート、すなわち『最も絢爛にして深遠なる魔法儀式場』がこのウィンブルドンだ。
そのコートの中に、ひとりの女性ダークリーガーが立っている。
勝利を示す月桂冠を頭にかぶり、闘志あふれる鋭い眼光で、相対する猟兵を見据える。その手に握られたラケットのグリップが、小さくキシリと音を立てた。
「来るがいい、猟兵よ! そして、この私の筋肉の前に無様にひれ伏すがいい!」
雄たけびを上げる彼女から、繰り出される玉はおそらくすさまじいだろうと、誰もが見てとれる。
その体は、ゴリラであった。
そう彼女は、超人スポーツで優勝するため、自らの身体にゴリラの遺伝子を組み込んだのだ。
狂気の肉体改造により彼女が手に入れた魅惑の肉体――ゴリラボディを前に、猟兵たちはいかに戦うのであろうか。
●グリモアベース
「まずは集まってくれたことに感謝を」
プレケス・ファートゥム(森を去りし者・f02469)が、猟兵たちに軽く頭を下げる。
「皆には、これから、アスリートアースへと向かい、戦争……というかスポーツの祭典『バトル・オブ・オリンピア』へと参加してもらうことになる」
プレケスが、何とも言えない、しいて言うのであれば困惑気味の表情を浮かべていた。
ダークリーガーの首魁である『新生フィールド・オブ・ナイン』たちは、デビルパワーを戦争ではなく、古代バトリンピア時代の祭典『バトル・オブ・オリンピア』の復興に使用したため、ぱっと見ではただのお祭り騒ぎになっているのであった。
「いずれ異世界より侵略者が来たときの為に、アスリートたちのスポーツ能力を鍛え上げることが目的らしい。……住民が襲われるような事態が起こっていないことは、喜ばしいのだが」
とはいえ、このままではアスリートアースが消滅してしまうのは今までの戦争と同じ。それを防ぐためにも、スポーツでダークリーガーたちを倒さなければならない。
プレケスが、表情を引き締め、猟兵たちを見る。
「皆に向かってもらうのは、絢爛魔法領域『ウィンブルドン』だ」
過酷なアスリートアースのテニスが行われる会場は、幾重にも魔術防御が張り巡らされている。当然、最高峰のコートであるウィンブルドンの防御は桁違いだ。
だが、それほどの場所であっても、猟兵とダークリーガーとの頂上決戦には耐えられない。
猟兵が、ダークリーガーが、一打放つごとに、大地は鳴動し、ひび割れ、マグマが吹き上がり、隕石が降り注ぐこととなる。
「そんな中で、テニスもやり続けなければならない。かなり大変なことだとは思うが、君たちなら無事やり遂げてくれると信じている」
そういうとプレケスは自身の肩に留まっていたグリモアを指でつつく。
つつかれたグリモアは出番だなと言わんばかりに、プレケスの頭の上をクルリクルリと旋回したあと、猟兵たちのほうへと飛んでいく。
「君たちの無事の帰還を待っている」
その言葉を合図に、プレケスのグリモアがきらきらと光を放ち、猟兵たちを戦場へと送り出した。
白月 昴
目を通していただきありがとうございます。マスターの白月・昴です。
この依頼は、一章完結の戦争依頼となります。
●転移場所:絢爛魔法領域『ウィンブルドン』
コートのすぐ近くに転移します。
即座に試合を開始してください。
●プレイングボーナス:コート上の地形変化に適応する。
プレイングには「このように変わった地形に、このように対応する」といったことを書いてください。
それ以外にも、自分の攻撃でどのように地形を変形させ、それをどう利用するか書いていただけると、より楽しく攻撃ができるかと思います。
●技能について
技能は、技能名だけを並べるのではなく、その技能で何をするかを書いていただけると、より参加者様の思ったものに近い描写ができると思いますので、よろしくお願いします。
この依頼で書かれるのはテニスの試合ではありますが、アスリートアースのテニス(つまり何でもあり)ですので、ルールなどはあまり気にせず、参加していただければと思います(私も詳しくはありません)。
また、どうしてもややギャグ系になるかと思われます。ご注意ください。
なお、この依頼は戦争依頼ということもあり、シナリオの完成を優先させます。やむをえずプレイングを返却する可能性があります。時間が許す限り採用いたしますが、大成功、成功を優先させていただきます。
皆様のプレイングをお待ちしております。
第1章 ボス戦
『霊長類最強アスリート『ミス・ゴリーン』』
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POW : アタシは霊長類最強のアスリートだよ!
【身体能力をレベル倍に強化したゴリラボディ】に変身する。変身後の強さは自身の持つ【勝利への執着心】に比例し、[勝利への執着心]が損なわれると急速に弱体化する。
SPD : アタシの爆弾ボールを受けてみな!
着弾点からレベルm半径内を爆破する【爆破のオーラを纏ったボール】を放つ。着弾後、範囲内に【触れると爆発するオーラの残滓】が現れ継続ダメージを与える。
WIZ : ここからはアタシの独壇場だ!
レベルm半径内を【ゴリラボディのみを強化するゴリーンゾーン】とする。敵味方全て、範囲内にいる間は【自分を含むゴリラの肉体を持つ者の身体能力】が強化され、【ゴリラ以外の肉体を持つ者の身体能力】が弱体化される。
イラスト:La Lune
👑11
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種別『ボス戦』のルール
記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。
| 大成功 | 🔵🔵🔵 |
| 成功 | 🔵🔵🔴 |
| 苦戦 | 🔵🔴🔴 |
| 失敗 | 🔴🔴🔴 |
| 大失敗 | [評価なし] |
👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。
※このボスの宿敵主は
「💠穂村・耶子」です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。
アニカ・エドフェルト
テニスプレイヤーとして、負けるわけには、いきません、ね。
気合いを入れて、いきましょうっ
さて、地形が変わったり、するのは…
正直、羽を広げて、〈空中浮遊〉したり、各種〈耐性〉で、なんとか、するしか、なさそう…ですが、
ここは、もう、「やられる前にやれ」、です。
《庭球天使》に、ひたすら《破壊天使》を、乗せて、打っていって…
打ち損ねたら、ひび割れ他に、加えて、ユーベルコード効果でも、コートが、ぼろぼろ、試合続行不可…
になって、くれないかなぁ…と。
もちろん、わたしが、打ち損ねたら、わたしが試合続行不可に、なっちゃうわけで。
ものすごい、緊張感、ですが…なんとか、耐えて、みせますっ
「テニスプレイヤーとして、負けるわけには、いきません、ね」
アニカ・エドフェルト(小さな小さな拳闘士見習い・f04762)はぎゅっとラケットのグリップを握る。
一球でもミスれば、それは即、試合続行不可につながるだろう。緊張にグリップを握る手が汗ばむ。
(ものすごい、緊張感、ですが……なんとか、耐えて、みせますっ)
瞳に闘志を宿し、ミス・ゴリーンを見据えるアニカ。その姿に、ミス・ゴリーンが、小さく、だが楽し気な笑みを浮かべた。
初球は、アニカだ。
(気合いを入れて、いきましょうっ)
すうっと息を吸う。そして。
「取ってみて、くださいっ」
アニカの一打は放たれる。【|破壊天使《デストロイエンジェル》】を乗せた、重い重い力の籠められたボールは、バウンドすると同時にコートを砕く。衝撃に吹き飛ばされた土塊が、ミス・ゴリーンへと襲い掛かった。
(コートが、ぼろぼろ、試合続行不可……になって、くれないかなぁ……)
アニカの脳裏に、そんな考えが一瞬浮かぶ。
だが、この世界のスポーツはその程度の事では終わらない。
そして、それに参加する者たちも。
「甘いよ!」
ミス・ゴリーンが、コートのひび割れなど、存在しないかの如く、軽やかな動きでコートを駆ける。
伸ばされたラケットは、重いボールを正確にとらえた。
「アタシの爆弾ボールを受けてみな!」
ミス・ゴリーンの剛腕から、燃え上がるような一撃が放たれた。
ボールがコートへ着弾すると同時に、激しい爆発が起こり、コートがマグマの大地へと変貌していく。
「きゃっ!」
爆風に思わず悲鳴をあげながらも、アニカは翼を羽ばたかせ、高く飛んだボールへと飛びつく。
(ここは、もう、「やられる前にやれ」、です)
マグマの熱気に耐性のあるアニカですら、玉のような汗が出る。長期戦は得策ではない。だが、打つだけではゴリラパワーにより、再び打ち返されるだろう。
(それなら)
アニカは、小さな翼を精一杯大きく広げる。
「思いっきり、いっちゃいますっ」
重いボールに、さらに重さを乗せて、アニカは渾身の一撃を高所から打ち込む。狙いはミス・ゴリーンの足元だ。
にやりと、ミス・ゴリーンが笑う。どれほど重くても、ゴリラパワーを得た彼女には、問題ではない。
「うぉ!」
だが、強い光がミス・ゴリーンの目を刺し、視界を眩ませる。
それは太陽の光。
アニカが翼を利用し、太陽を隠していたのだ。
残念なことに、ゴリラパワーで目は強化されていなかった。目の利かぬまま、それでもと振られたミス・ゴリーンのラケットは、むなしく空を薙いだ。
ボールはコートを破壊しながら跳ね、ラインを越えて転がった。
「やりましたっ!」
ふわりとコートに舞い降りたアニカが、歓声をあげた。
大成功
🔵🔵🔵
クロア・ルースフェル
今日もわたしは美しい……
なるほど、自信に違わぬ美しい筋肉ですね
ですケド、魔術競技にはいささか不向きなのでは?
指定UCで地形変化を自分で操りましょう。急激な地面の隆起です
しかし、おっと、玉にはUCが重なるんでしたね
ゴリーンさんの一打で、わたしの足元が隆起します
彼女ははるか下の平地を狙うはずですが、
玉がワンバウンドする瞬間にその直下を隆起させましょう
身体能力が下がっているようですが、術でカバーするのですよ
わたしの隣まで上がった玉を、ゴリーンさんよりずっと上、
彼女のコートが隆起した部分にスマッシュすれば届きますまい
んふふふ、自然を友としてこその精霊術士
術士に魔術競技で敵うなどとは思わないコトですよ?
「今日もわたしは美しい……」
髪をなびかせクロア・ルースフェル(十字路の愚者・f10865)は、美しいフォームでミス・ゴリーンに向けて、ボールを打つ。
【|女帝《ジ・エンプレス》】を宿したボールは、ワンバウンドと共にミス・ゴリーンのコートを隆起させ、小山を作りだす。
「試合に集中しろ!」
そんなクロアに怒鳴りながら、不安定な足元などものともせず打ち返すミス・ゴリーン。
クロアのUCを宿したボールが、地面を揺らし盛り上がらせ、同時にひび割れを生み出した。
だが、クロアはそれを気にすることもなく、逆にミス・ゴリーンを見る、いや観察する。
「なるほど、自信に違わぬ美しい筋肉ですね。……ですケド、魔術競技にはいささか不向きなのでは?」
打ち返しながらのクロアの言葉に、ついにミス・ゴリーンが切れた。
「不向きかどうか、試して見るがいいさ! ここからはアタシの独壇場だ!」
ミス・ゴリーンが咆える。
彼女の気迫が、闘争心が、周囲の空間を染め上げていく。
それは、ゴリラボディの者には強化を、それ以外の者には弱体化をもたらす魔の領域――ゴリーンゾーン。
「おや、なかなか面白いことをされますね」
負荷がかかってなお、余裕の態度を崩さないクロアに、ミス・ゴリーンがさらに声を上げる。
「このゴリーンゾーンで、アタシに勝てると思うなよ!」
強化されたゴリラボディから放たれるボールは、凄まじい力をもって、クロアのコートへと突き刺さる。
「おっと」
そのパワーは、クロア側のみならず、ミス・ゴリーン側のコートをも隆起させていく。
それはまさしく造山活動。
上に運ばれながらも打ち返したクロアのボールは、弱体化の影響もあり、ふらふらとした速度でミス・ゴリーンに向かい飛んでいく。
それをミス・ゴリーンがやすやすと打ち返す。狙うのはいまだ平らなままの、クロアから見れば、遥か下となる場所だ。
身体能力の落ちたクロアが、切り立った崖と化した斜面を駆け下りられないことなど明白だ。ミス・ゴリーンは勝利を確信した。
だが、クロアは口の端に優雅な笑みを浮かべる。
「んふふふ、自然を友としてこその精霊術士」
ボールがワンバウンドする瞬間、クロアは、直下の地面を隆起させた。当然ボールは上へと押し上げられる。そう、クロアの隣、つまりは丁度打ちやすい場所へと。
――スパンッ!
ボールは、小気味いい音を立てて、打ち返される。
打ち下ろされるだろうと身構えていた、ミス・ゴリーンの予想を裏切り、ボールは高く高く放たれた。
狙ったのは、隆起されたコートの一番高い場所。そこは同時に、ラインが存在していた。
「しまった!」
そのことに気づいたミス・ゴリーンが、慌てて急勾配の斜面をよじ登る。
「遅いですよ」
だが、クロアの言葉通り、遅かった。
ラインのうちにバウンドした玉はあっけなく、ライン外へと飛んでいく。
「術士に魔術競技で敵うなどとは思わないコトですよ?」
太陽を背に、クロアは勝者の笑みを浮かべていた。
大成功
🔵🔵🔵
柏宮・晴仁
アドリブ/連携可
(ラケットを手にテニスユニフォーム姿。戦う前から勝者のカリスマを漂わせている。)
「へー、カノジョかわいいじゃん。ゴリラボディもイケてる・・・って今はそんな場合じゃないか」
召喚術で大地の悪魔を召喚し、簡易的な地形耐性と環境耐性を自身に付与。
武器改造でラケットの耐久性を上げる。
「気休め程度だけど、無いよりマシじゃね?」
試合開始。初球はゴリーン。コートに着弾すると同時に敵UC発動。
「ふーん、爆発かー。ならこっちは!」
UC発動。【悪魔召喚「アスモデウス」】をボールに込める。
地形変化とオーラの残滓は見切りで回避。
「ゴリーンの爆発とオレらの獄炎、どっちが強いか試してみる?」
「へー、カノジョかわいいじゃん。ゴリラボディもイケてる」
コートの正装ともいえるテニスユニフォーム姿の柏宮・晴仁(柏宮家の御曹司・f42421)が、敵であるミス・ゴリーンを見た感想がこれである。
呑気なことを言っているが、彼はもちろん観客ではない。その証拠に、手にはラケットが握られている。
それはともかく、性格がチャラいのは事実である。試合前まで、観戦に来ている女性たちと楽しくお話していたぐらいだ。
晴仁の軟派な言葉が聞こえたのだろう、ミス・ゴリーンの額に青筋が浮かぶ。
「……って今はそんな場合じゃないか」
とはいえ、TPOの見極めは完璧である。
即座に意識を切り替えて、大地の悪魔を召喚する。攻撃のためではない。ここはテニスコート。戦いはテニスで行われなければならない。
だが、その過酷さに対策を打つことは許される。
だからこそ、大地の悪魔の力を使い、簡易的ではあるが、地形と環境の悪化に対する耐性を自分へと付与する。
気休めにすぎないかもしれないが、ないよりはましだろう。
ラケットも、武器改造で耐久性を上げてある。
そして、晴仁はコートへと足を踏み出した。
先程までの緩い空気はない。身に纏うのは、圧を伴った勝者のカリスマ。
「やる気になったか」
軟派な態度をがらりと変えた晴仁の様子に、ミス・ゴリーンが闘志をむき出しにする。自分と戦うに相応しい相手だと認めたのだ。
「アタシの爆弾ボールを受けてみな!」
ゴリラボディから爆破のオーラを纏った、強烈な一打がコートに打ち込まれる。
――ドオン!
凄まじい音を放ちながら爆発が起こり、コートが歪み、ひび割れていく。それと同時に周囲に、オーラの残滓がまき散らされた。
「おっとっと」
割れた大地も広がるオーラも、あっさりと見切り、避けていく晴仁。この程度の動きは、彼にとってはたやすいもの。
それはそれとして、反撃をどうするか、だが。
「ふーん、爆発かー。ならこっちは!」
ダイモンデバイスを使い、獄炎の悪魔【アスモデウス】を召喚する。
「ゴリーンの爆発とオレらの獄炎、どっちが強いか試してみる?」
その言葉に、アスモデウスは愚かしいことをと言わんばかりの顔をすると、ボールの中に入っていく。
途端、ボールは獄炎に包まれた。
「行くぜ!」
勝利を確信した笑みを浮かべ、晴仁がスマッシュを放つ。狙うのはラインぎりぎりだ。
させまいと、ミス・ゴリーンがラケットを伸ばす。だが、それは届かない。
――ゴオンッ!
ボールをを取り巻く獄炎が、一気に爆発した。
「うぉ!」
凄まじい熱、凄まじい勢いで広がる炎に、ミス・ゴリーンの巨体が吹き飛ばされた。
邪魔なものなど何もなかったかのように、ボールはライン手前にワンバウンドし、ライン外へと転がっていった。
「よっし、オレらの勝ちだ!」
歓声を上げる観客たちに手を振りつつ、晴仁が勝利を宣言した。
大成功
🔵🔵🔵
黒影・兵庫
(敵の爆弾ボールがコートに叩き込まれると爆発が起き、その爆風で巨大な竜巻が発生するとボールを飲み込み、そのまま黒影に襲い掛かる)
くっ!この竜巻を打ち破り、敵に打ち返す必要がありますね!やりましょう!せんせー!
(「ごめんさっぱりわからないんだけどこれって絶対テニスじゃないわよね?爆弾撃ち込まれて明確にぶっ殺しにきてるじゃん。テニスボール打ち返すんじゃなくてあの女に直接攻撃を叩き込みなさいよ」)
それはテニスじゃないですよ!せんせー!
(UC【蜂蜜色の奔流体】を発動)
伸縮自在のオーラ状の体になることで暴風で体がねじ切られることはなく!そして俺の心が折れない限り!絶対に打ち返すことができるのです!
(『気配察知』で暴風の中のボールの位置を検知すると、『武器改造』でオーラを纏わせ強化したラケットを手に持ち、テニスボールに渾身の一撃を叩き込む)
くらえ!必殺の!イエロー・ハニー・スマッシュ!
(蜂蜜の津波とともにテニスボールを相手に打ち返す)
「行くよ!」
ミス・ゴリーンの剛腕から、爆発のオーラを纏ったボールが、コートへと叩きこまれた。それは、コートにはねた途端、大爆発を起こす。
いや、それだけではとどまらない。爆風は、大気を揺らし、荒れ狂い、大竜巻を生み出した。
「くっ!」
周囲に吹き荒れる風に吹き飛ばされまいと、黒影・兵庫(不惑の尖兵・f17150)は大地を踏みしめる。
ボールを見逃さぬよう、眼を凝らす兵庫の視線の先で、激しく渦巻く巨大竜巻は、周囲のものを吸い込みながら、兵庫へと襲い掛かってくる。
ボールもまた吸い寄せられ、ぐるぐると渦の中で回っていた。
大竜巻はじわじわと移動している。このままラインを出れば、その時点で兵庫の負けである。
勝つためには、この竜巻を打ち破り、敵に打ち返す必要がある。
「やりましょう! せんせー!」
難題に、しかし兵庫は逆にやる気を出していた。
だが、兵庫に呼びかけられた彼の『せんせー』――頭の中の教導虫、スクイリアはあからさまに困惑していた。
『ごめんさっぱりわからないんだけどこれって絶対テニスじゃないわよね?』
混乱にやたら早口になりながら、スクイリアが兵庫に尋ねる。
己の中の常識と、あまりにも違うアスリートアースのテニスを、彼女は受け入れられないでいた。
「え、テニスですよ?」
『爆弾撃ち込まれて明確にぶっ殺しにきてるじゃん』
「テニスですし」
『テニスボール打ち返すんじゃなくてあの女に直接攻撃を叩き込みなさいよ』
「それはテニスじゃないですよ! せんせー!」
スクイリアの必死のツッコミは、あっさりと流される。
そして、残念なことに、ここはアスリートアース。兵庫の認識のほうが、正しいのである。
「よっし、いきますよ、せんせー!」
兵庫はUC【|蜂蜜色の奔流体《イエローハニー・オーラボディ》】を使い、その肉体をオーラ状のものへと変え、巨大竜巻の中へと足を踏み入れる。
途端、物理的な圧力を伴って、風が兵庫に打ち付ける。
『ま、待ちなさい。この風じゃ、危険よ!』
「大丈夫ですよ、せんせー! 俺の心が折れない限り、俺の体は無敵です!」
柳が風をいなすかのように、伸縮自在の兵庫の肉体は、凄まじい竜巻のエネルギーを受け流していた。
そして、風に絡め取られ回転するボールを、兵庫の目が捉える。
その速度はすさまじく、うっかりあたりでもすれば、普通なら骨の一つや二つ折れるだろう程だ。
凶器と化したボールを前に、けれど兵庫は引いたりはしない。
「俺の心が折れない限り! 絶対に打ち返すことができるのです!」
強風を受け流しながら、兵庫がラケットを振り上げる。そして、目の前にボールが流れてきた瞬間。
「くらえ! 必殺の! イエロー・ハニー・スマッシュ!」
兵庫の渾身の一撃は、蜂蜜の津波を生み出し、相手を飲み込まんとする。
「な、なにっ!」
水とは違う、粘度を持った蜂蜜の波にのまれたミス・ゴリーンは、それでも蜂蜜をかき分けボールを追おうとする。
だが、毛だらけのゴリラボディはより多くの蜂蜜を含み、その動きを押しとどめてくる。
――タンッ!
いっそ軽い音をたて、ボールがコートを跳ねる。
それは蜂蜜に囚われたミス・ゴリーンの目の前でラインを超えていく。
――ゲームセット!!
周囲から歓声とともに、試合終了が宣言される。
ここに、ミス・ゴリーンの敗北が、すなわち、猟兵たちの勝利が決定したのである。
「やったー! 勝ちましたよ、せんせー!」
『あ、うん、おめでとう』
ラケットを振り上げ、勝利の喜びを全身で表す兵庫に、スクイリアは賞賛の声を送る。その声は、たいそう複雑な響きを宿したものであった。
大成功
🔵🔵🔵