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請請請 我らを恐れよ

#ケルベロスディバイド #原罪蛇メデューサ

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#原罪蛇メデューサ


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●桃栗三年柿八年
 闇夜の町。僅かな街灯と月の光の下で、路上に佇む少女が一人。
 その姿はまるで童話の赤ずきんのようだが、手には巨大な鍵のようなものを持っており、その胸にはモザイクがかぶせられている。
 そして彼女の前の地面にはおびただしいほどの血が撒き散らされ、その中央には胸に大穴をあけて絶命した人間の死体が転がっていた。
 その顔は目も口も裂けんばかりに見開かれ、顔からあらゆる液体を垂れ流しながら負の感情全てを溢れさせたような表情。対して少女は、何にも心動かされないような微笑を湛えたまま。
「今回も駄目なのね。心を抉れば狂うだけだし、体を抉ればすぐに死ぬ。恐怖を引き出すには人間は弱すぎる」
 そう言ってつまらなさそうにその死体を見下ろす少女。
「せっかくノットスケアリー様がわざわざ手をお付けになられたのに」
「体から出る汚い液体なんていらないのよ。欲しいのは心から染み出る恐怖」
 口々に言いながら暗がりから別の少女達が姿を現す。その姿はまるでアニメの魔法少女のようだが、やはり胸には輝くモザイクがかかり、手には鍵の形をした武器を持っていた。
「あのお方が我らの目的を買って力を添えて下さったというのに……このまま失敗を重ねては……」
 表情は変わらず、しかし遺憾を滲ませた声で言う赤ずきん。
「沈沈沈 あせるな しもべよ」
 突如彼女らの脳内に別の女の声が響いた。その声が聞こえた瞬間、赤ずきんと魔法少女は一斉にその場に跪く。
「申し訳ありません。次こそは必ず……」
「続続続 次で終わらせずともよい 時間をかけよ」
 平伏する赤ずきんを宥めるように、あるいは誘惑するように声は囁いた。
「刻刻刻 一時に膨れたものは一時に消える 時をかけ沁みついたものは永劫に消えない」
 その示唆を少女たちは黙って聞く。
「穫獲獲 実を求むらば種を蒔け おそれの花はそこに咲く」
 その言葉が彼女らの心に深く刻まれるのは、そこに想像もできないほどの実感と経験が込められているからか。
 声が聞こえなくなり、少女たちは立ち上がる。
「今夜はもう引き上げましょう。一晩に一人……いえ、たまには増やしたり休むのもいいかしら。広く、多く、だけど隙間を開けて……そうすれば、私達の胸を埋めるものが実るはずよ」
 『神』の教示に従い計画を練り直しつつ、少女達は|欠落《モザイク》を抱えたまま闇の中へ消えていった。

●愛し虞は幾星霜
「こんにちは、依頼をするわ」
 子豚・オーロラ(豚房流剣士・f02440)が集まった猟兵たちに言う。
「ケルベロスディバイドで、「姿の見えない殺人」というのが起きているの。闇夜に紛れ人が無残に殺されるのだけど、その犯人は全く見つからない。基本は一夜に一人だけど、時折起きないことも、逆に二人殺されることもある。場所は数日固まって起きたと思えばいきなり全く離れた場所で発生することもあるし、被害者も成人男性ばかりだったのが突然女性が混ざったり、年齢も上がったり下がったり……と予測を立てるのは難しいわ」
 法則性があるようで例外も多い。その不安定さは単なる無差別よりさらに不安を掻き立てる。
「これは十二剣神『原罪蛇メデューサ』がしかけたもの。彼女は人々の『おそれ』を利用して地上に顕現するのだけど、その時の強さは集めた『おそれ』の量で変わる」
 『原罪蛇メデューサ』、それは地上の全ての存在を『愛し子』と呼び、自身のために育て上げた極上の餌と見る強大なデウスエクスだ。
「それ故彼女は配下に命じ、不安をあおる形での殺人を繰り返させているの。だから、その配下たちとメデューサ本人を討伐してきてちょうだい」
 既に顕現に必要なおそれは溜まってしまった。これ以上の強化を許さず迅速に討伐する必要がある。

「まず最初に、各地に散って場を整えている『ネガティブハンター』の集団との戦いになるわ。彼女たちは魔法少女みたいな服を着てるけど、実際には相手の負の感情を利用して攻撃したり、前向きな意欲を奪ってくるむしろ魔法少女の敵役側みたいな攻撃が得意よ」
 物理的な力はさほどでもないが、精神攻撃を多用し相手に十全な力を出させない戦法を好むという。

「彼女たちを倒したら次の殺人の場所が予知できる。そこへ転送するから、そこで殺人の実行犯である『ノットスケアリー』と戦って。彼女もまた相手を恐怖させるような攻撃が得意だけど、それをより避けづらい形で放ってくるわ。本人の戦闘力も相応に高いから、油断しないで」
 ネガティブハンターの上位種と呼ぶべき能力。まさに両者は同じ『ドリームイーター』という種族で、その特徴である『欠落』を示すモザイクをその胸に抱え、種族の本能に従いそれを満たすため行動している。
 そして両者の欠落は『恐怖』。メデューサにとっては彼女たちの目的はそのまま己の強化につながる。
 好きにさせておけばそれだけで自己を強化してくれる配下と、己の目的を全肯定しその機会を与えてくれる神。これ以上ない最高の……あるいは最悪の主従関係と言えるだろう。

「そしてそれも退けたら、ついに『原罪蛇メデューサ』が顕現する。彼女は恐怖を利用するほか、単純な戦闘力も極めて高いわ」
 まさに神の名乗りに相応しい実力者。しかし注意すべき点はそれだけではない。
「それと一つ注意してほしいのは、この時出てくるメデューサの力量はネガティブハンターとの戦いにかかった時間で変わるわ。ネガティブハンターの仕事は殺人そのものではなくそれによる恐怖の拡散。彼女たちが生きながらえるだけでおそれは溜まっていき、メデューサはどこまでも強くなる。手に負えなくなる前に、急いで彼女を引きずり出してちょうだい」
 最速で顕現させてもボス級。それが強化され続ければ、いったいどれほどになるか。

 否が応にも緊張を高める仲間の前で、オーロラはふっと笑った。
「アドバイス? そうね、敵は後に出てくる奴ほど胸が大きくなっていくわね。逆に服はどんどん貧相になっていって、メデューサに至っては全裸よ。トレードオフにしているのかしら」
 そこからの突然のふざけたような言葉。何事かと訝る猟兵にオーロラは続ける。
「なんてね。彼女たちの武器と望みは相手のおそれ。気持ちの問題と言えばそれまでだけど、相手の欲しいものを与えないと考えれば案外馬鹿にできたものでもないかもね」
 油断はせず、されど恐れるな。過剰に構えず相手を見透かしてやるくらいでちょうどいい。
 常に心に余裕を持ち相手に飲まれないようにと、そう告げてからオーロラはグリモアを起動し猟兵を送り出した。


鳴声海矢
 こんにちは、鳴声海矢です。
 今回はケルベロスディバイドでの三連戦となります。

 第一章では『ネガティブハンター』との集団戦。彼女たちは人間社会に紛れ込み様々な手段で「姿の見えない殺人」の恐怖を煽っています。居場所も各所に散っていますが、戦闘が始まれば一般人は逃げるので周囲を気にする必要は基本的にありません。彼女たちは恐怖心を与えた相手に対し、ダメージやUC封印で追撃してきます。

 第二章では『ノットスケアリー』とのボス戦。時間は夜、場所は人通りの少ない裏路地となります。被害者予定の人間がいますが、殺人の瞬間に割り込めば救出可能です。恐怖を与えてくる攻撃が多いのは配下と同じですが、彼女の場合それがなくても無理矢理植え付けてきます。

 第三章では『十二剣神『原罪蛇メデューサ』』とのボス戦です。舞台は第二章からの連戦となります。彼女は恐怖を利用するほか、直接的な攻撃も強いので注意してください。

 三者とも『恐怖』に対してこだわりがありますが、ドリームイーターたちは欠落、メデューサは圧倒的実力のため本人が恐怖することはありません。

 大きな注意点として、『このシナリオは、「第1章完結までにかかった実際の日数」に応じて第3章で登場する『原罪蛇メデューサ』の強さが変化します』。
 実時間基準となりますので、戦闘で速攻をかけても意味はありません。
 意図的に遅延はさせませんが、無理矢理進めもしないのでご了承ください。また、最速で章が進んでも上位のボス級並みの強さは保証されています。強化幅については青天井です。

 それでは、プレイングをお待ちしています。
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第1章 集団戦 『ネガティブハンター』

POW   :    ポジティブブレイク
【精神干渉のエネルギー】を籠めた【心を抉る鍵】による一撃で、肉体を傷つけずに対象の【ポジティブな感情】のみを攻撃する。
SPD   :    ネガティブイーター
【負】の感情を与える事に成功した対象に、召喚した【モザイク塊】から、高命中力の【モザイク弾】を飛ばす。
WIZ   :    ネガティブファントム
対象に【醜く恐ろしい姿の怪物】の幻影を纏わせる。対象を見て【負の感情】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。

イラスト:すずや

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『集団戦』のルール
 記載された敵が「沢山」出現します(厳密に何体いるかは、書く場合も書かない場合もあります)。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 その者たちはどこにでもいる。喫茶店で話に花を咲かせる若者。バスの中で大声で会話するマナー知らず。ネットカフェに籠ってパソコンに張り付いている少女。
 それにことさら注目する者は誰もいない。しかし、話している声、送信した匿名の書き込みがふと耳目に入ることはあろう。
『あの殺人事件、だんだんこの街に近づいてるんだってさ』
『なんか女子高生が殺されたから外出るなって親がうるさくて』
『速報:例の殺人鬼、男女両刀イケた件について』
 くだらない。事実無根。意識の上ではそう切り捨てる者がほとんどだろう。だが、命を奪うものが自分の近くに迫っている可能性が僅かでもあるとしたら。
 まして|この世界《ケルベロスディバイド》には人の命を奪いくる|侵略者《デウスエクス》が現実に存在しているのだ。もしそれが、奴らにしか分からぬ目的をもって自分の近くにいたら……
 無意識の奥にふと揺らぐそれを止められるものはいない。例え日常と常識の蓋で覆い隠しても、一度芽吹いた『それ』はそこにあり続けるのだ。
 その種を撒き散らすのは、『|それ《おそれ》』を知らぬ少女達。それを神の依代とするために。それがいつか自分の|胸《欠落》を満たすと信じて。
 彼女がこの地にある限り『|それ《おそれ》』は撒き散らされ続けるだろう。一日の遅れは、|彼女らの神《原罪蛇メデューサ》が力の階梯を一段上るのと同じ。
 猟兵よ、そしてケルベロスよ。市井に紛れた『ネガティブハンター』たちの元へ散り、恐怖の種を刈りつくすのだ。
夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
確かに急いだ方が良さそうですねぇ。
『FPS』により現地のデウスエクスの居場所を探知、発見次第向かいつつ『メディック』を要請、民間人避難と共に『通り魔はデウスエクスの仕業で、現在対処中』と流布、混乱を抑える様願いましょう。

交戦開始と共に『FLS』の空間歪曲障壁と『FXS』の結界を展開、『鍵』自体の接触を防いで対処、仮に届いても攻撃集中が難しい以上、精神干渉遮断の結界を破るのは困難ですぅ。
『FMS』のバリアは戦域を覆い逃走を阻止、【搾薢】を発動し多数の『蔓』を形成し纏めて[範囲攻撃]、一気に捕縛しますねぇ。
そのまま『吸収』すると共に『FBS』の斬撃で[追撃]し仕留めますぅ。



「確かに急いだ方が良さそうですねぇ」
 夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は『姿の見えない殺人』の流言を拡散する者たちの居場所を突き止めるべく、『FPS』による情報収集を急いでいた。
 事件に関する情報や、その出所。身元確かな情報機関ではなく、街の噂、無根拠な風説を撒く者。そしてそれがデウスエクスか。
 それと思しき場所を見つけ、特務機関DIVIDEへのメディック要請を行いながらるこるはそこへと乗り込んだ。

「それでさ、次の話なんだけど……」
 セルフ式の喫茶店で、テーブルを囲み話す少女達。そのテーブルの傍らに、圧倒的な肉体が立つ。
「見つけましたよぉ」
 何事かと見上げる少女の前には、全く手の付けられていない飲み物とケーキ。そしてそれ以外のテーブルについていた客は、続いて店になだれ込んできた大勢によって立ち上がらされ店から強制的に退出させられていた。
 困惑する客たちに、彼らは告げる。
「通り魔はデウスエクスの仕業で、現在対処中」
 形のない不安が目の前の脅威に変わった時、恐怖は一時に膨れはする。しかし同時にその正体が滅されたと知れれば、それと共におそれは萎んで消え失せるのだ。
 それは少女達『ネガティブハンター』が神より受けし教唆の真逆。それをせんとする相手が何者か、彼女たちはすぐに察した。
「ケルベロス? 猟兵? どっちにしろ、私達の邪魔はさせない!」
 テーブルを蹴り飛ばし、撒き散らされたその上のもので一瞬だけ姿が隠れる。その一瞬の間に少女たちの服はアニメのヒロインのようなものに変わり、その手には長い鍵が握られていた。
「落ちろ、沈め!」
 豊かな胸を狙い突き出されるいくつもの鍵。それはそのまま胸に突き立つと思われたが、その寸前でまるで表面で滑るかのように狙いがそれた。
「嘘!?」
 さらに少女たちは鍵を振り回すが、それも当たる寸前に捻じ曲げられたように届かない。『FLS』による空間歪曲障壁により、正確に狙えば狙う程に体に届く時には見当違いの位置に鍵が振りまわされているのだ。
 しかし、それでもネガティブハンターたちは諦めない。恐怖を持たない彼女たちだがそれ故にそれ以外の感情は強いのか、焦りに突き動かされるように滅茶苦茶に鍵を振り回し何とか一発でも当てようとする。
 そして空間の歪みと乱雑な狙い、二つのマイナスが偶然噛み合ったか、その鍵の先端がるこるの体をついに掠めた。
 ドリームイーターの象徴である心を抉る鍵。ネガティブハンターたちのそれは抉った場所からポジティブな感情を流れ出させるもの。
 しかし、るこるはそれにも対策を施していた。
「やっぱり、こいつら全然怖がらない……!」
 『FXS』による精神干渉を防ぐ結界。当たりを浅くし、当たった時の防御も布くことでユーベルコード【ポジティブブレイク】の効果を最小限にとどめる。それがるこるの取った策。
 それでも、全く無効化できるわけではない。何度も繰り返されれば、あるいは時間をかけられれば、やがては戦う意思、依頼遂行の意欲さえ破壊しつくされるだろう。
 最もそれは、相手にそのつもりがあったのであればの話だが。
「無駄よ……私たちの役目はこいつを殺すことじゃない。逃げるわよ!」
 ネガティブハンターたちは、不利を悟り早々に逃げる構えを見せ始めた。そしてその瞬間こそ、守りに徹したるこるが動くべき時。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『魔樹の加護』をお与え下さいませ」
 るこるは【豊乳女神の加護・搾薢】を発動、白色の蔓を周囲に敷き詰め、それによってネガティブハンターたちを捕らえようとした。
「植物の恐怖なんていらないわ、さよなら……え!?」
 それに構わず撤退を図るネガティブハンター。しかし、その体は店の扉をくぐろうとした瞬間何かにはじき返された。
 るこるは一般人の退避が完了すると同時に、バリア『FMS』を、店の出入り口を塞ぐように配置していた。
 肝心なのは相手が観測されたこの場で全員を逃さず滅すること。もし逃げて再び市井に紛れられれば、彼女たちは今度は自らの存在を使って恐怖を煽りだすだろう。見つけて、滅ぼした。その過程と結果を必ずこの場で成すために、るこるは『防御』ではなく『捕縛』と『殲滅』の為にユーベルコードを用いたのだ。
 窓や裏口から逃げようとした者も次々跳ね飛ばされ、店内に戻る。そしてその体は蔓に囚われ内部破壊を起こされ、力を奪われていった。
「私たちが死んだって、まだ……」
 負け惜しみ……あるいは自らが死してなお残る禍根を吐こうとするネガティブハンター。その口を封じるかの如く、『FBS』がモザイク諸共その胸を裂き貫き、少女達を消滅させた。
 突如として始まった戦い。それは『姿なき殺人犯討伐が始まった』という情報となって、この場にいた者の胸に刻まれたのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘グロ×
素敵な魔法少女ちゃん達♪
私と愛し合いましょ♥

『欲望解放』で愛欲に比例して強化
でもあえて彼女達の一撃を受けるわ

一体いつから……
愛がポジティブな感情だと錯覚していたの?

私の『人外に対する愛』は
時をかけて沁みついた『人類への憎悪』から成る狂気
愛し愛されたい共依存への渇望

救済失敗を恐れるようになっても
自信を失った分、慢心も消える。
守護霊の【鼓舞】もあって普段以上の【気合い】が乗った
フェロモン【誘惑・催眠術・範囲攻撃・全力魔法】で魅了

スベスベした美脚
お尻の肉感
蜜を帯びた花弁の味
両頬を挟んでくる太股
甘く淫らな悦びの声

あぁん、たまらない♥

【化術】で肉の鍵を生やし
【串刺し・慰め・生命力吸収・大食い】



 恐怖、不安とは未知から来るものである。それを煽るためには、情報を発信している現場を押さえられてはならない。それ故、人目につかない場所で活動するネガティブハンターの一団もいた。
 だが、予知にかかればその場所さえ見通せることもある。ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は、そう言った集団を探し当てその前に姿を見せていた。
「素敵な魔法少女ちゃん達♪私と愛し合いましょ♥」
 人に紛れる必要がない故に、本来の姿である魔法少女スタイルのままのネガティブハンターたちにそう言うドゥルール。
「ここまで見つけてくるなんて……」
 ネガティブハンターたちは手に鍵を持ち、戦いの構えをとる。恐らく自身の言葉を挑発、あるいは挑戦として取ったのだろう彼女たちを前に、ドゥルールは躊躇なく自分の服に手をかけた。
「ありのままの私を見せてあげる!」
 そのまま服を脱ぎ去り【欲望解放】を発動。これにより戦闘力の増強と飛行能力さえもを得たドゥルールだが、なぜかそれを発揮せず裸体を曝したままネガティブハンターたちを待ち受ける。
「何よ、私達を脅かすつもり?」
「そんなくだらないことで恐がれたら、私達のモザイクはとっくに晴れてるわ!」
 怯えも恐れもなく、その代わりに湧き上がる怒りに任せネガティブハンターたちは次々と鍵をドゥルールに突き立てた。
 突き刺さった鍵は肉体を傷つけず、その内に秘められた心を抉る。彼女たちの鍵が破壊するのは、恐怖を遠ざけるポジティブな感情全てだ。
 ドゥルールの胸の内から正の感情が消えていく。それを掻きだすようにネガティブハンターたちが突き刺さった鍵を抉りまわしていくが、その彼女たちに低く冷たい声でドゥルールは告げる。
「一体いつから……愛がポジティブな感情だと錯覚していたの?」
「……は?」
「私の『人外に対する愛』は時をかけて沁みついた『人類への憎悪』から成る狂気。愛し愛されたい共依存への渇望」
 オブリビオンを愛好する彼女だが、そうなった理由はその来歴による人間への憎しみと背中合わせ。負の感情から生まれた負の愛なのだとし、ネガティブハンターへ向かう意思を絶やさないようにするドゥルール。
「ポジティブでもネガティブでも、恐怖じゃないなら私たちには関係ない」
「それなら戦う意思を捨てて、このまま死になさい!」
 発生がネガティブであろうと、目的に向かうのは正の意思。それが消されて行けば、ドゥルールは目の前の少女達を救えるという自信も削がれていく。
 今発動しているユーベルコードもその原動力となるのは『愛欲』。それに比例して力が増すということは、それを消し去られればそれだけ力を失っていくということでもある。
(これは……余裕見せてる場合じゃないかも……)
 代わりに湧き上がる焦りと危機感。最早この戦いでポジティブな感情に浸っている余裕はない。
「あなた達……気合を入れて!」
 ドゥルールは死霊術で守護霊に呼びかけ、自分を叱咤するよう命じる。それに答え、守護霊の中でも厳格なものや高圧的なものの声が愛の鞭としてドゥルールの心を打ち据えた。
 慢心や遊び心の消えたドゥルールは、尻を叩く負の感情を原動力に前へ一歩出る。
「焦りも怒りもいらないの! 私たちが、あの方が求めるのはおそれ! ただそれだけ!」
 鍵を抜き、今度は純粋な武器としてネガティブハンターたちはそれを振るう。それを人数分受けたら流石に耐えきれないだろうと、焦燥という名の気合をもってその長いリーチの奥にその身を突っ切らせるドゥルール。
「スベスベした美脚、お尻の肉感、蜜を帯びた花弁の味、両頬を挟んでくる太股、甘く淫らな悦びの声……」
 己が彼女らに望むもの、このままでは手に入れられなくなるものを思い、鍵の内側から誘惑術を放つ。
 急がなければ、全力を振り絞らなければ、そんな穏やかならぬ心に乱れ撃たれたそれは。
「あぁん、たまらない♥」
 ネガティブハンターたちを捕らえ、自らの『鍵』で貫くことを成功させていた。
 その状態から生命力を吸い上げれば、肉体は頑健ではないネガティブハンターたちは長時間は抗しきれず消えていく。
 『手に入れよう』というポジティブを打ち砕かれても、『手に入れられないかも』というネガティブを持って目的へと走ったドゥルール。あるいはこの戦いは、『ネガティブハンター』同士の戦いと言えたのかもしれなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

皇・絶華
うむ…恐れを誘い不安をあおるとは恐ろしいものだ

決戦配備
キャスター
主に行動不能の結界や魔法の展開

【戦闘知識】
敵の動きとモザイク塊の動きと攻撃の方向性も解析

ただ…現状の感情は正まっしぐら!
純粋なる善意という狂気

ああ…判っている
お前達はその欠落を埋めたいのだろう?

喜ぶがいい…お前達のグラビティチェインの不足も…その欠落も
圧倒的なパワーを宿せば満たされる!
【空中機動・念動力・弾幕】
UC発動
超絶速度で飛び回りながら念動光弾を叩き込みその動きを封じて
【二回攻撃・切断】
TCで切り刻み
真・ぜっちゃんチョコを口に捻じ込み捻じ込み
さあ!圧倒的なパワーに酔いしれ宇宙を感じるがいい!
安心しろ!お代わりは自由だからな!



 人の多い雑踏。そこでは周囲の人間の会話など耳に入ってこない。
 だが、無数の声の中からでも僅かな単語、短文は聞こえる。
『殺人鬼』
『近くに』
『狙われやすい』
 絶対安全のフィクションではなく現実にそれが実在している以上、その言葉とその存在を切り離しては考えられない。一度差した影は、想像力を糧にそのまま大きくなり続けるのだ。
 だから、ネガティブハンターたちは町中に紛れ、その言葉を振りまきおそれの種を人々にばらまいている。
「うむ……恐れを誘い不安をあおるとは恐ろしいものだ」
 そんな彼女たちに、声がかかった。
 振り向いた彼女たちの前にいたのは皇・絶華(影月・f40792)。
「別に、私達は……」
 関係ない一般人だ、と言おうとする少女達の言葉が止まる。あれだけ人がいたはずの町中が、この一瞬で静まり返っている。
「ケルベロス……!」
 戦場の隔離や非戦闘員の退避は彼らの特技。そしてそれが為された上で自身の前に堂々と現れるのは、それを超える驚異。
「得意げに人間ども逃がして、正義の味方気取り? そうやって自分を正当化して、私達を嬲り殺しにする下衆の癖に!」
 煌びやかな衣装と長い鍵を装備し、過剰に相手を貶す少女、ネガティブハンターの集団。
 その言葉は相手への怒りからだけではない。これは相手に対して暴言を吐き、怒りや不愉快さ……『負の感情』を呼び覚まそうとする彼女たちの策。既に戦いは始まっていたのだ。
 しかし、絶華は彼女たちに罵声を返さない。
「ああ……判っている。お前達はその欠落を埋めたいのだろう?」
 それは否定でも肯定でもない、全く噛み合わぬ会話にならない言葉。
 絶華の感情は正まっしぐら、純粋なる善意という狂気。相手の言葉など聞きもせず、ただ己の善意だけを押し出す狂った善行。
 話していても埒が明かぬ。ネガティブハンターたちは鍵を構え、それを長柄として突き出し攻撃にかかった。
 だがそれは、躱され、掴み取られ、叩き落とされる。
 それはそこまで強くないドリームイーターが、鍵を武器として使う際にどう動いてくるかを熟知しているかの如き先読みの動き。たとえ会話が通じなく狂気に満たされていようとも、それと蓄えられた知識はまた別物と言わんばかりの動きであった。
「喜ぶがいい……お前達のグラビティチェインの不足も……その欠落も、圧倒的なパワーを宿せば満たされる!」
 そのまま絶華は浮き上がり、自身の周囲に光弾を出現させる。
 一方でその攻撃姿勢を敵意、害意という負の感情と取ったか、ネガティブハンターたちの胸からも金色のモザイクが溢れ出した。
「行け、モザイク弾!」
 その巨大モザイク塊からモザイクの弾丸が連続で撃たれる。それは絶華の体を確実に捉え、次々とその身に突き刺さった。
「四門…『窮奇』……開門!!…グ…ガ…ガァァァァァ!!!!」
 それに対しても絶華は反応しない。ただ、作戦通りに【四門『窮奇』】を発動するのみであった。
 屋外を戦場に選んだのはこれが理由。上空を14800km/hという超高速で飛び回りながら念動光弾をを射出する。ネガティブハンターたちはそのスピードを視認することもできず、高速の光弾に撃ち抜かれその場に倒れていく。
「く……モザイク弾……!」
 ネガティブハンターたちが倒れながらも、なおモザイク弾は放たれる。それに対し、絶華はあろうことか真正面から飛び込んでいった。
 このドリームイーターの力量なら己を殺すほどのモザイク弾は放てまいという、遥か過去からの戦闘知識。そしてそれ以上に相手が何を考え、何をするかなど一顧だにせず前以外の一切を見ぬ正の感情。
 さらに三倍された速度から、ジャマダハル状の短剣『TC』が二度振るわれ、ネガティブハンターたちを切り裂く。
 その体、とりわけ口元に深い切創を刻まれ倒れたネガティブハンターたちに覆い被さり、絶華はその切り裂かれた口に何かを捻じ込んだ。
「さあ! 圧倒的なパワーに酔いしれ宇宙を感じるがいい!」
 それは絶華お手製『真・ぜっちゃんチョコ』。一般的な感覚ではおよそ食えたものではない味と組成を持つ狂気のチョコレート。
 自分の作ったチョコを食わせたかった。それが彼がネガティブハンターたちに挑んだ唯一の理由であった。
 その目的に最短、直線で進むために、キャスターたちには行動阻害と人払いの結界を指示したし、過去の知識を持って相手の力量を図り、回避や防御の要不要も決めた。
「安心しろ! お代わりは自由だからな!」
 そう言いながら命尽きようとしている少女たちにチョコを捻じ込み続ける絶華。その余人が見れば恐怖するであろう光景は果たして彼女らの胸を満たすものたり得たか、それは誰にも分らなかった。

成功 🔵​🔵​🔴​

儀水・芽亜
各種メディアのニュースから、次の事件現場になりそうな位置を特定し待ち伏せます。

ネガティブハンターが現れたら、「全力魔法」深睡眠の「属性攻撃」「範囲攻撃」「精神攻撃」「結界術」でサイコフィールドを展開。
さあ、デウスエクスはさっさと眠ってくださいな。

その間に被害者候補や私と同じ結論に行き着いてここに来た警察関係者にも避難を促します。

さて、社会に恐怖を振りまく殺人者の皆さんには、ここで退場してもらいましょう。
この領域で、眠りに抵抗し続けることが出来ますか? 私はただ、逃がさないようにしながら、あなた方が眠りに落ちるのを待てばいいのです。
その後は、この裁断鋏で夢も見ない永遠の眠りへ導いてあげましょう。



 当然のことではあるが、殺人は重大な事件である。テレビや新聞、その他各種媒体で大きく取り上げられ、警察も力を入れて捜査を行う。それはデウスエクスによる殺人が頻発するこの世界でも同様であった。
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)はそれらの情報を精査し、今回の事件に関係ありそうなものから相手の動向を探ろうと考えた。
 幸いにして相手は完全な無差別ではなく、ある程度傾向を付けることで恐怖感を煽る材料としている。それを元に次の殺人が起きそうな場所を巡るうち、芽亜の前に若い少女の集団が現れた。
 恐らく次の場所の選定中だったのだろう、デウスエクスとしての姿である魔法少女衣装と胸のモザイクを隠さず行動していたネガティブハンターたちに、芽亜は有無を言わさず攻撃を仕掛けた。
「私の世界で勝手はさせません」
 内部の敵に強烈な睡魔を齎す、鴇色の陽炎を纏ったドーム状の結界、【サイコフィールド】をその場に展開。突然のことにネガティブハンターたちは対処もできず、体をふらつかせる。
「な、何よ、いきなり……!」
 手にした鍵を杖に何とか体を支えるネガティブハンターたち。そんな彼女たちに、芽亜は落ち着いて告げる。
「さて、社会に恐怖を振りまく殺人者の皆さんには、ここで退場してもらいましょう」
 相手を前に余裕の表情。そしてそれ以上の追撃はせず、周囲に人間が来ないかを確認する。するとどうやら芽亜と同じ捜査方針を取っていたのか、警察関係者がやってくるのが見えた。
「ご苦労様です。ですがこれはデウスエクス案件、相手の対処は任せ周囲の避難誘導を」
 警察たちに芽亜はそう告げる。被害者になりうる一般人や、彼ら自身の避難を促した後で相手を見ると、ネガティブハンターたちは鍵こそ立てて持っているが既に膝を突き座り込んでいた。
「この領域で、眠りに抵抗し続けることが出来ますか? 私はただ、逃がさないようにしながら、あなた方が眠りに落ちるのを待てばいいのです」
 既に抵抗が限界に達していると見た芽亜は彼女たちにそう言いながら、裁断鋏を取り出す。
「その後は、この裁断鋏で夢も見ない永遠の眠りへ導いてあげましょう」
 そう言って目の前で鋏を開閉させる芽亜。そのまま少し待ち、そろそろいいだろうと思い一体のネガティブハンターへ近づき鋏を開いた。
 その瞬間、そのネガティブハンターの胸からモザイクの塊が溢れ出し、芽亜の目の前に広がった。
「なっ……」
 相手を殺そうという『|殺意《負の感情》』、それに反応し、敵の【ネガティブイーター】が発動したのだ。
 そのモザイクから、金色のモザイク弾が連続して放たれる。相手からの攻撃を一切想定していなかった芽亜は、それをまともに受け吹き飛ばされてしまった。
 そのまま連続でモザイクが叩きつけられ芽亜にダメージを与えていくが、そのモザイク弾の勢いも少しずつ弱まっていく。
「し……んで……!」
 ネガティブハンターもまた、極限の睡魔で意識は途切れる寸前。殺意を向けたのが単体ということもあって一人からしかモザイク塊は現れておらず、彼女の意識さえ切れれば攻撃は止むだろう。
 防御手段を何も講じていなかったこともあり芽亜にも攻撃は直撃し続けるが、サイコフィールドのもう一つの効果である夢幻のもたらす癒やしによってダメージは多少なりとも相殺される。
 やがてがくりとネガティブハンターの頭が垂れモザイク塊の姿が薄れた時、芽亜は体を引きずってネガティブハンターに迫りその首に裁断鋏を深々と突き刺した。
 目を閉じたまま倒れ、消えていくそのネガティブハンター。何とか首を巡らせて辺りを確認するが、幸い今の戦闘で勢いづくことはなく他のネガティブハンターは動かないままだ。
 だが、同じような奇襲を次受けたら今度は回復も間に合わず倒されるかもしれない。それ故に芽亜はユーベルコードを全力で維持し、相手の完全な眠りと自身の回復をじっと待つ。
 無防備に見える敵を前に手を出せないもどかしい時間。その時の果てに再び振るうであろう鋏を、芽亜は強く握るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
人の命を玩具にしやがって
胸糞悪い
デウスエクスを倒すぜ

決戦配備
ジャマー

過去の殺人の場所
ネットやリアルの噂
目撃情報
監視カメラ映像
等々の情報から敵の潜伏場所を特定するよう
DIVIDEへ協力を要請

奇襲をかける

戦闘
爆炎で一気に間合を詰め
獄炎纏う焔摩天で薙ぎ払う

もし一般人がいるんなら
避難を助けるよう盾になる位置どり

鍵攻撃に対して
大剣で受けたり
炎の壁で防御

もしポジテイブ感情を傷つけられても
内なる炎で心を燃やして復活だ
その程度じゃ地獄の炎を鎮火させられないぜ

心が燃えれば火力も高まる
燃え盛る地獄の炎が炙り
鍵を高熱で持てなくさせたり
融解させる

もう鍵の役目は果たせないな

他者から奪った感情で
自分のを埋められるもんかよ
感情は震えるハートから生まれるんだぜ
あんたらには
分かんないんだろうけどな
紅蓮に抱かれて眠れ

事後
鎮魂曲を奏でる
一先ずは安らかに

さて転送か



 ネガティブハンター、そしてその後ろに控える者たちにとって殺人とは恐れを産み、溜める手段でしかない。殺したい人間がいるわけでもなく、それが最もおそれを溜めるのに効率がいいと考えたからそうしているにすぎない。
「人の命を玩具にしやがって、胸糞悪い。デウスエクスを倒すぜ」
 木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は彼女らの行為にそう憤る。
 だが、ここで闇雲に駆けまわっても相手を捕らえられないことはウタにも分かっていた。DIVIDEにジャマーを要請し、過去の殺人の場所、ネットやリアルの噂、目撃情報に監視カメラ映像と言った集められる情報を全て集めての分析を依頼、相手の居場所に当たりを付けることにした。
 既にほかの猟兵も掃討作戦を始めていたこともあり、DIVIDEにも急速に相当数の情報を集めることに成功。残る敵を倒すため、ウタは敵がいると思しき場所へと向かった。

 地方の大きめの空港。そこの今はあまり使われなくなったコイン式パソコンにずっと張り付いている少女と、その近くの待合席に座って大声で話し、どこ行きの飛行機が来ようとも保安検査場へ向かわない少女達。
 そんな少女の耳を、突如激しい爆音が貫いた。
「な、何!?」
 驚いて立ち上がった少女達。その眼前には、炎を纏う巨大な鉄塊が迫っていた。
 それはそのまま横薙ぎにされ、少女の一人をなぎ倒す。
「急いで終わらせて貰うぜ。飛行機が止まっちまってるからな」
 そう言ってウタは少女たちの前で鉄塊剣『焔摩天』を構えた。周囲には炎が舞い、そしてその向こうではこの場にいた人間が逃げていくのが見える。その前に立つウタの姿は、後ろには行かせないという彼の意思を如実に表していた。
 空港なら開放された通信端末もあり、通りすがりに声を聴かせられる人間も多く、かつ長期滞在する者は少ないので存在を意識されづらい。彼女たちにとっては格好の『仕事場』ではあったが、大きな公共交通機関だけに一度事が起こってしまえば否応なしにその情報は広く拡散される。
「ふざけないで……死はいつまでも続くのよ。あのお方がこの地球に現れ、私達の胸が満たされるまで!」
 ネガティブハンターたちは手に鍵を表し、それを構え一斉にウタへと突き刺しにかかった。ウタはそれを自らの前に炎の壁を噴き上げることで防ぎ、さらにそれを超えて強引に突き出されたものは幅広の大剣で受け止めた。
 こうなってしまえば密かに不安を煽る、というのは完全に失敗だろう。だがここを切り抜ければ『殺人鬼は大規模テロまで起こす』という別の形での恐怖を煽ることはできるかもしれない。彼女たちの目的を考えれば、おそれを溜められれば手段は何でもいいのだ。
 だから、ネガティブハンターたちはこうなっても諦めない。炎を恐れることなく踏み越え突き出された鍵が、ついにウタの体に届いた。
 その瞬間、ウタの心の中に燃える炎、ポジティブな感情がみるみるうちに消えていく。相手に向かう意思やデウスエクスを止めようとする戦意、前向きな心が萎んでいくのが自分でもわかった。
「ほら、もういいでしょ、帰りなさい! 帰って私たちの恐ろしさを喧伝するといいわ!」
 挿しこんだ鍵を抉り、ウタの意思を完全に挫こうとするネガティブハンター。
 ウタはその心、そしてその身に、さらなる炎を宿して答えた。
「その程度じゃ地獄の炎を鎮火させられないぜ」
 ウタの身からさらなる地獄の炎、【ブレイズブラスト】が巻き起こる。指定した全ての対象を燃やすその炎が燃やすのは、ネガティブハンターたち、そしてウタ自身の心身であった。
 心という内面にさえ炎を届かせるのはオーバーロードの力。そして自身の身さえ炎にまくことで、自身への叱咤、こうせざるを得ない状況に追い込まれたのだというネガティブな前進の意思を燃やす。
 自信に刺さった鍵を掴み、そこに紅蓮の炎を移すウタ。
「もう鍵の役目は果たせないな」
 金属製に見えるその鍵が溶けていき、床に滴り落ちる。並の鋼よりよほど固いだろうそれさえ焼くのもまた、オーバーロードとウタの炎の力か。
 その炎が移り焼け消えていくネガティブハンターだが、その後ろから残った仲間が鍵を抱えて襲い来る。
「他者から奪った感情で自分のを埋められるもんかよ。感情は震えるハートから生まれるんだぜ。あんたらには分かんないんだろうけどな」
「ええ、分からないわ……そのハートとかいうのがないのよ、私達には!」
 ドリームイーターは全て何がしかの『欠落』を抱えている。それは絶対に自分の中から生まれてくることはないため、他者から奪う以外の手段はないのだ。
 その境遇に哀れみを覚えながら、ウタは剣に炎を宿した。
「紅蓮に抱かれて眠れ」
 一閃された剣に導かれるように大量の爆炎が上がり、ネガティブハンターたちを飲み込んだ。
「ノットスケアリー様……どうか、おそれを……あのお方と共に……!」
 己の悲願をボスと神に託し、少女達は炎の中に消えた。最期まで恐れを知らず怒りと無念、そして悲しい希望の果てに消えた彼女たちにウタは鎮魂歌を捧げる。
 そしてそれが終わった時、ウタは搭乗口の方を見る。
「さて転送か」
 まるで狙ったかのように、そこにはグリモアの転移の光が現れていた。話通りネガティブハンターが倒れたことで、そのボスの居場所が予知にかかったのだろう。
 その先にいる恐怖の収穫者を止めるため、ウタはその中へと乗り込んでいくのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『ノットスケアリー』

POW   :    Fear
【心を抉る鍵】が命中した敵に、「【デウスエクスが怖い、戦いたくない】」という激しい衝動を付与する。
SPD   :    Terror
【前方に展開した巨大モザイク】に映し出された【己の辛い過去や手と顔だけの巨大な怪物の姿】を見た対象全てに【耐え難いレベルの恐怖】を与え、行動を阻害する。
WIZ   :    Phobia
【胸元のモザイク】から、戦場全体に「敵味方を識別する【モザイクの霧】」を放ち、ダメージと【デウスエクス恐怖症】の状態異常を与える。

イラスト:しらゆき

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主はクローネ・マックローネです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 そこはまるで人気のない路地裏。表通りから相当に離れた所なのだろう、人の声どころか足音や車の通る音すら聞こえない。
 恐らく昼間はただの何でもない道だろうそこは夜の闇と静けさに染められ、治安云々と違う言い知れない不安を煽るような空気に支配されていた。
 その道を、足早に一人の女が歩いていく。この辺りに住んでいるのだろうか、あるいは何かここを通らなければならない理由でもあるのか。
 その女の顔の前に、冷たい金属製の何かが突き出された。
「ねぇ、あなた、今どんな気持ち?」
 街灯の光を受け鈍く光る鍵を手に、暗がりから現れた少女。その服装はまさに童話から抜け出してきた赤ずきんそのものだが、その胸には虹色のモザイクがかかっている。そして表情は、まるで感情が読み取れない微笑を湛えていた。
「これから私はあなたを殺すのだけど、やっぱり怖い? 怖いってどういう感じ?」
 変わらない笑顔のまま女に迫る赤ずきん。殺す、という言葉に女は何かに思い当たったように息をのむ。
「ふふ、話を知ってるのに出歩くなんて馬鹿な人。それとも……関係ないって思ってた?」
 噂の殺人鬼。その行動に一貫性があるのかないのか、それさえ分からない存在。それ故に自分に都合のいい部分だけを信じ勝手に自分は安全だとでも思っていたのだろうか。
「大丈夫、あなたがだめでも、次のお話の導入にしてあげる。きっとあの子たちが、素敵な話を考えてくれるはず」
 選定や宣伝は配下の役目。自分はただ、人を殺して恐怖を引き出すのみ。
 だが、彼女は知らなかった。その役目を任じた者たちが、既にこの世にいないことを。その討伐はおそれを広める間もなく、迅速になされたことを。
 女を挟んだ少女の目の前に、突如として光が溢れる。そしてその中から、見知らぬ者たちが次々と現れた。
「……誰? ああ、そう……」
 その存在にも少女は慌てた様子はない。だが、この様なことができる存在が何者かはすぐに思い当たった。
「あなたたちは嫌いよ。だって怖がらないんだもの。でも、もしかしたら、あの方ならあなた達さえも……」
 猟兵、ケルベロス。デウスエクスの天敵であり、その目的を阻む者。
 少女は女につきつけていた鍵を引き、来訪者の方へ向ける。
「ねぇ、教えて? 私におそれを。私を恐れて? 私を……恐れさせて?」
 ただ『おそれ』を望む彼女は『ノットスケアリー』。ネガティブハンターと同じ欠落をより深く、強く抱える者。
 ネガティブハンターが種を蒔く者なら彼女は実を捥ぐ者。そしてそれが捧げられるのはやはり|彼女たちの神《原罪蛇メデューサ》。
 猟兵よ、この『姿なき殺人者』を討ち、その黒幕を白日の下に引きずり出せ!
儀水・芽亜
『|怖いもの知らず《ノットスケアリー》』が他人に恐怖を振りまきますか。
いいでしょう、この裁断鋏で相対します。

「霊的防護」「狂気耐性」を込めた「オーラ防御」で強固に身を守ります。先程のような醜態はごめんです。

裁断鋏を縦横に振るって彼女の鍵と打ち合います。
おかしいですね。鍵と鋏。どちらも日用品なのに、私達はそれを振るって戦っている。「受け流し」「なぎ払い」剣戟を重ねていきましょう。
彼女の鍵を突き刺されたら、「落ち着き」で恐怖を抑え込み、裁断鋏で自身を切り裂きます。状態異常を打ち消す、目覚めの時間。

さあ、恐怖はもういなくなりました。
『怖いもの知らず』、あなたは死の瞬間もそれを知らずに逝くのでしょう。



 姿なき殺人、その目的は不気味な殺人を繰り返すことで人々を広く、深く恐怖させること。その喧伝役を倒した猟兵たちは、次は要となる実行犯、胸にモザイクを抱えた赤ずきんの少女と相対していた。
 そしてその赤ずきんの名は、同時にその|本質《欠落》を表すものでもあった。
「『|怖いもの知らず《ノットスケアリー》』が他人に恐怖を振りまきますか」
 儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)は彼女の名、そしてその意味と行動について言う。
「ええ、そうよ。知らないから見せてもらうの。それが私達と、あのお方の望み」
 そう言って鍵を剣の様に構えるノットスケアリー。それに対し、芽亜も自分の武器を見せ応えた。
「いいでしょう、この裁断鋏で相対します」
 互いの武器が向き合った次の瞬間、それらは高い金属音を立てて打ち合った。
 胸元を狙いつき込まれるノットスケアリーの鍵を、芽亜の裁断鋏が縦横に振るわれ打ち払う。そこから武器をはねられ空いた体になぎ払いを見舞うも、ノットスケアリーもバランスを整え即座に足を引いて皮一枚を切らせるに留めた。
 一合ごとに高音が鳴り攻防の繰り返される様は、正に剣戟と呼ぶに相応しい戦い。しかし、それを行うのは剣ではない。
「おかしいですね。鍵と鋏。どちらも日用品なのに、私達はそれを振るって戦っている」
 鍵も鋏も、戦いとは無縁の世界にもいくらでも転がっているもの。その辺りの店で僅かな金を出せば簡単に手に入るありふれた道具。
 あるいはそんな日用品で殺し合うことこそが、死と隣り合わせの青春を駆け抜けそして再びその世界に舞い戻ったことの証左か。
「おかしい? それは多分おそれに繋がらない感情。もっと別のをあげるわ」
 張り付いた微笑のまま、ノットスケアリーは一歩踏み込み一際鋭い突きを放った。それは過たず芽亜の胸を抉る、それを確信できる一撃。
 しかし、それは懐に近づいた瞬間何かに阻まれたように速さを失い、その身に届かぬまま振り下ろされた鋏に叩き落とされた。
「……先程のような醜態はごめんです」
 ネガティブハンターとの戦いでは防御を忘れ不覚を取った芽亜。決して同じ轍は踏まぬと、強固に張り巡らされたオーラの壁がその身を守っていた。
「そう。ならますます見たいわ。ねぇ……見せて。あなたの|恐怖《Fear》。」
 鍵を両手持ちにし、細い腕、小柄な身からは想像できないほどの力を込めてノットスケアリーは鍵を再度芽亜につき込む。それはついにオーラの壁を貫いて芽亜の身に届き、その胸にある恐怖心を抉った。
 その瞬間芽亜の目の前にいる滑稽な少女が、突如として形容しようもない恐怖の対象へと変わった。この少女が恐ろしい、戦いたくない、その感情が芽亜の心を支配していく。
「ねぇ、どう? 私が怖い? それはどんな感じなの? 教えて?」
 必殺の一撃が決まったと確信し、欲するところを迫るノットスケアリー。
「そうですね……なるほど、確かに強力な技です。相手の戦意を完全に失わせるというのはある種の一撃必殺。あなた自身弱くはないのだから、それで十分なアドバンテージを得られるものでしょう」
 それに対し、芽亜は望み通り自らの胸の内を『教えて』やることで答えた。しかしそれはノットスケアリーが望んだものとは間違いなく違う答え。
「しかし、この力に直接の殺傷能力はない……それ故に、取る手段はこうです」
 落ち着き切った声で言いながら芽亜は裁断鋏を自らに向け、そしてためらいなくその刃を自分の胸に突き立てた。
「夢も悪夢ももうお仕舞い。本当のあなたに戻りましょう」
 正も負も関係なくあるがままでないものを切り裂く刃が、肉体を傷つけることなく心の中に植え付けられた恐怖を切り裂いていく。
 芽亜が防御を布いたのは体だけではない。相手の力が有無を言わさず恐怖を植え付け戦意喪失させるものと事前に分かっているならば、霊的防御と狂気耐性で心を守る。その防御は相手の必殺を受けても致命に至る前に対処に移るための落ち着きを生み、【目覚めの時間】を迎えるまでの余裕を心に与えていた。
 芽亜が鋏を抜けば、そこには僅かな傷もない。ただノットスケアリーのユーベルコードの効果である恐怖心だけが完全に切り取られたのみであった。
「さあ、恐怖はもういなくなりました。『怖いもの知らず』、あなたは死の瞬間もそれを知らずに逝くのでしょう」
 ノットスケアリーが相手を恐怖させ、己が恐怖を知るための手はここに文字通りに断ち切られた。そのまま『怖いもの知らず』に終われと、一瞬次手を迷った少女の身に二つの刃が深く食い込むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
この様な稼業をしていれば、荒事には慣れますからねぇ。

『FAS』により飛行、『FLS』の空間歪曲障壁と『FXS』の精神干渉遮断結界、『FPS』の探査を展開しまして。
『FMS』のバリアを路地裏の両側に展開し封鎖、逃亡を阻止すると共に、FES』の結界で狙われていた女性を保護しますねぇ。

【繃炗】を発動、『刀』を抜いて『光波霊』に変化し超光速での移動と交戦を可能にしましょう。
彼女の【Fear】は『鍵の命中』が条件、超光速の回避であれば捉えるのは極めて困難な上、命中しても二重の防御、破る為の連続命中も先ず不可能ですぅ。
後は『刀』による斬撃でヒット&アウェイ、確実に追い詰めますねぇ。



 ノットスケアリーは猟兵を見た時、嫌いと言った。その理由は自分たちを怖がらないからだとも。
「この様な稼業をしていれば、荒事には慣れますからねぇ」
  恐怖とは経験のなさから来る部分も大きい。故に、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)の様にいくつもの世界を渡り強大な敵と何度も戦った歴戦の猟兵ならば、一介のボス級を前にして過剰に恐怖しないのはある種当り前とも言えた。
 そして今回もその数多い戦いの一つだと言わんばかりに、るこるは空中に浮き上がり周囲に各種の兵装を展開する。
 その空中のるこるに、ノットスケアリーは地を蹴って跳びあがり肉薄した。
「空に逃げれば届かないと思った?」
 空中で鍵を振るいるこるを突き刺そうとするノットスケアリー。だがそれはるこるの丸く豊かな輪郭を撫でるかのようにそれ、その身に触れることはなかった。
「あら?」
 不思議がるような声を上げ着地するノットスケアリー。そのまま再度飛び上がり、空中で一回転して再度鍵を振り下ろすが、真ん中に向けて打ち下ろしたはずのそれはやはり体の横を滑るように逸れてその身に届くことはなかった。
「そう、これだからあなた達は嫌なの。しょうがないわ……放っておいてごめんなさい。やっぱり、あなたを殺すことにするわ」
 攻め手の効かないるこるに見切りをつけ、最初の標的であった通りがかりの女の方に向き直るノットスケアリー。離れたところに座りこんでいた女に近づいて鍵を振り上げるが、それは突き出した瞬間何かに弾かれたように跳ね返った。
「……本当に、嫌な人」
 女の前には『FMS』のバリアと『FES』の結界。ネガティブハンターたちが叶わないと見るや逃げ出そうとしたように、ノットスケアリーも手間取ると見れば一般人の方に狙いを移すかもしれない。それを見越してるこるは戦場自体を隔離、さらに被害者予定であった女を結界で守ることで相手を自身に専念せざるを得ない状況に追い込んだのだ。
 改めてノットスケアリーがるこるに向き合い鍵を構えたところで、るこるも本格的な交戦に入る。
「大いなる豊饒の女神、あなたの使徒に『玉光の加護』をお与え下さいませ」
 敵の攻撃の前に、【豊乳女神の加護・繃炗】を発動、刀を抜いて『光波霊』に変化し超光速での移動を開始した。
 いかにノットスケアリーがボス級とは言えさすがにその速度は捉え難く、突き出す鍵は何も抉ることができない。
 そのカギとすれ違うように刀で切りつければ、防具としての性能はない衣服は容易く切り裂かれその下の肉体に深い切創が刻まれた。
「あぁ……これは普通なら怖いと思うのかしら。でも、私は傷つくのも死ぬのも怖くない……」
 その傷は決して浅くないはずだが、それでもノットスケアリーの表情は変わらぬ微笑のまま。まるで何も変わらないように、ノットスケアリーは鍵を片手剣の用に構えた。
「やっぱり、引きだして貰うしかないの。あなたから、恐怖を」
 その状態から、立てたままの鍵を自分の体をカバーするように突き出す。それは攻撃してきたるこると丁度ぶつかる形となり、さらに深い傷を負う代わりに光となったその身にさえ鍵を触れさせることに成功した。
 自分の体を狙ってくることは分かっているのだ。差し違えるつもりで行けば一撃与えるくらいはできる。恐怖を知らない彼女は、その捨て身の策を取ることに躊躇はなかった。
 そして鍵のリーチは片手剣並み。一般的な刀よりやや短く【繃炗】のダメージ軽減も潜り抜けられる。確かに突き立った鍵が、るこるの心にデウスエクスへの恐怖と戦いを拒絶する心を植え付けようとした。
「なるほど、恐ろしいお力ですねぇ」
 その力を、恐るべきものと率直にるこるは認める。そして戦いをこれ以上続るのも好ましくない。
 そのため、急いで終わらせるべくより強く深い一撃を敵へと叩き込んだ。
「な、んで……?」
 ばっくりと開いた傷から流れ出る大量の血に、ノットスケアリーは純粋に疑問だけを浮かべる。確かに鍵は相手の心に恐怖と逃避を植え付けたはずなのに。
 その種はある種簡単。るこるは敵のユーベルコードを受けた時のことを考え、装備による精神遮断を張っていたのだ。そしてそれはネガティブハンターとの戦いで用いた手段と全く同じ。
 それだけではない。バリアによる戦場の隔離や空間歪曲による狙いの攪乱など、用いた手段のほとんどはネガティブハンターに用いたものと同じものを使っていた。
 ノットスケアリーはネガティブハンターが全滅したことを知らなかった。当然その時猟兵が用いた戦法など知る由もない。そしてネガティブハンターと違い彼女は一人。ネガティブハンターの時は唯一の打開策となり得た、まぐれ当たりを期待した数頼みの滅多打ちも彼女は用いることは出来ない。
 今回の作戦の要とも言える迅速な敵配下討伐。それはおそれだけでなく、猟兵側の情報の拡散さえも防いでいたのだ。
 そのまま迅速かつ的確に、ヒット&アウェイを繰り返していくるこる。
 恐怖を求めたドリームイーターは、代わりに解けない疑問を胸から湧きださせながらその命を刻まれて行くのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レラ・フロート
デウスエクスを恐れてケルベロスはできないよ!
まして、元ダモクレスなら猶更ね
いざ尋常に勝負!

ケルベロスからDIVIDEへ
「ジャマー」を要請します!
相手の必殺の鍵の命中を阻害してね

DIVIDEの援護を受けられる位置をキープしつつ
エネルギー充填からの切り込みでダメージを重ねるね
共に戦う仲間がいれば積極的に連携
無理はけしてしないけれど、勇気はフルパワーだ!
心を燃やして斬りこみ相手の消耗を重ねていくよ

掴むは勝機、いずれ平和を掴み人々の未来を拓くため
十二剣神だって超えてみせるから。
まずは、貴女をね!気合全開ッ

想いを全開に剣に乗せ、相手の鍵をすんででかわし、
こちらの必殺の一撃だよっ
《雷穿》、つらぬけぇーっ!



「デウスエクスを恐れてケルベロスはできないよ! まして、元ダモクレスなら猶更ね。いざ尋常に勝負!」
 レラ・フロート(守護者見習い・f40937)は敵を恐れない理由をはっきりとそう言い、ノットスケアリーと相対する。
「ケルベロスからDIVIDEへ、「ジャマー」を要請します! 相手の必殺の鍵の命中を阻害してね」
 そしてレラは、DIVIDEの人員に相手への妨害結界を依頼し、剣を構えて向き合った。
「だから相手にしたくないの。向かってこないで欲しいわ」
 それに対し微笑みのまま鍵を構えるノットスケアリー。静々と構える彼女と、レラは武器を向け合った状態で睨み合う。
 そしてしばらくの後、間合いを測るように相手を見ていたレラが一瞬のうちにノットスケアリーの懐まで切り込み、その脇腹に切りつけた。ノットスケアリーはそれを縦にした鍵で受けるが、その力強さに押され完全な防御はできず刃が体に触れる。
 一撃を与えた後剣を引き、さらにもう一撃。それもノットスケアリーはどうにか防御するが、やはり力負けし押し込まれていく。
 最初からレラはただ構えていたわけではない。その身にエネルギーを滾らせ、一撃を重くする。そうして繰り返し攻撃することで相手の消耗を狙っていたのだ。
 守り続けても埒が明かないと思ったか、ノットスケアリーは叩きつけられた剣を強引に払って反撃に転じた。突き出された鍵がレラに向けて突き出される。攻撃しようと剣を振りかぶっていたレラはその胴を狙われるが、一瞬鍵の動きが鈍ったのを見てとっさに身を引き、直撃を免れた。
「あら……怖いの?」
 その様子を、臆したかとノットスケアリーが問う。ジャマーの妨害で僅かに太刀筋が鈍った所で身を引いたは、傷つくのを恐れたからかと。
「無理はけしてしないけれど、勇気はフルパワーだ!」
 勇気と無謀は違うのだと、レラはそれに言い返した。
「掴むは勝機、いずれ平和を掴み人々の未来を拓くため。十二剣神だって超えてみせるから」
 勝つためには引くも戦略。いずれ全てを倒すため、ここで倒れることはあってはならない。しかして、ノットスケアリー自身もまた倒さねばならぬ強敵であることは違いない。
「まずは、貴女をね! 気合全開ッ」
 気合を滾らせ、力を込める。睨み合いの時溜めたエネルギーの残りを、ここまでの攻撃で十分温まった体と技に乗せる。
 それは勝負を決めに行く必殺の構え。
「《雷穿》、つらぬけぇーっ!」
 思いを乗せた光刃、【雷穿】の一撃が放たれた。
 その刃は、確かに彼女の体を深く穿った。
 しかし。
「……良かった。私はまだ、死んでないわ」
 ほとんど密着する距離で、ノットスケアリーの鍵もまたレラを捕らえていた。すんでのところで直撃ははずすも、ジャマーの妨害だけでは流石にボス級デウスエクスの必殺を完全には抑え込めず、零距離からクロスカウンター状態で鍵をつき立たせることに敵は成功していた。
 勇気を持ち、されど無理はしなかったレラ。一方で恐怖を知らないノットスケアリーには勇気も無謀も変わらないものだった。
 技の入りの深さの差は歴然。ジャマーの妨害と直前の回避のお陰でレラへの鍵の刺さりは浅いのに対し、防御を捨てて無謀に突進してきたノットスケアリーには雷穿が完璧に決まっている。
 それでもノットスケアリーは笑顔を崩さず、自分の一撃から相手に染みているはずの恐怖を問う。
「ねぇ、私が怖い? どうなの?」
 血を流しながら笑顔で迫るノットスケアリー。彼女にとっては自身の深手よりも相手から引き出せる恐怖の方がよほど大事なのだ。
 その敵から、レラは黙って剣を抜き突き飛ばす。
「どっちかっていうとかわいそう、かな」
 既に重傷のノットスケアリーはそのまま尻もちをついて座り込み、同時に彼女の鍵も抜ける。
 敵の一撃で萎みそうになる勇気を叱咤し、レラは目の前の少女をしっかりと見るのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

木霊・ウタ
心情
欠落を埋めたいって気持ちは判るけど
命を奪う理由にはならないぜ
ぶっ倒す

決戦配備
メディック

被害予定者を庇う位置どりで登場
DIVIDEが避難を完了させるまで
大剣や炎の壁で守る

もう大丈夫だ
俺たちが守る

戦闘
避難完了したら遠慮なく行くぜ

全身を獄炎で覆い
低空飛行で路面を衝撃波で砕きながら
一気に距離を詰める

行き掛けの駄賃として
モザイクの霧を
速さと炎が生む風で吹き飛ばす

例え霧に包まれても
全身を覆う獄炎がすぐに霧をかき消すだろう

万が一恐怖症になっても
内なる炎を燃やせば
状態異常を焼却して復活

先の戦いで学習済みだぜ
未来への希望がある限り
俺の内の灯火が消えることは決してない

大剣の間合に入りざま
突撃の勢いを乗せて
獄炎纏う焔摩天を叩きつける

避けられたり受けられても気にせず
ヒットアンドウェイで畳み掛ければ
撃ち合うにつれ火力と剣速が徐々に高まる

宙を切り裂き
怪鳥の如き音を放ちながら急降下

速さを乗せた一閃で
胸元のモザイクごと一刀両断
そのまま紅蓮に包んで灰に還す

事後
鎮魂曲を奏でる
ひとまずは休め

次は蛇退治だ
行くぜ



 幾度の戦いで傷を負っても、ノットスケアリーの表情は変わらない。それは彼女が恐怖という感情を知らないからと、それ以上に欠落を埋めることを何よりも優先するドリームイーターの性質からであった。
「欠落を埋めたいって気持ちは判るけど命を奪う理由にはならないぜ。ぶっ倒す」
 そのどうしようもない、叶わぬ願いに盲従せざるを得ないその宿命を哀れみつつも、木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は彼女たちの凶行を断罪すべく剣を取った。
「だって人間は死ぬのが一番怖いのでしょう? 私の望みは一つだけ、遠回りはしたくないの」
 そう言って鍵を構えるノットスケアリー。無傷の時とまるで変わらないその様子は、自身が傷つき倒れることそれ自体を恐れていない証だろう。
 それに相対するウタの後ろには、周辺の隔離を行うDIVIDEたちがいた。
「もう大丈夫だ、俺たちが守る」
 その前でウタは大剣を盾にするような構えを取り、さらには炎の壁を自分の周りに反り立たせる守りの姿勢を取った。
「倒す……って言ったくせに」
 そのウタに、ノットスケアリーは鍵を構えて突きを入れる。それは構えた大剣の腹に当たり金属音を立ててはじき返された。
 正面突破は難しそうと見たノットスケアリーはちらとウタの後方を見るが、そこには炎の壁が立っており向こうの様子は見えない。
「おっと、あんたの相手は俺だぜ」
 その様子からノットスケアリーが被害者予定の女やDIVIDEに標的を移そうとしているのを感じ取ったウタは、さらに剣を押し付け自分に注目せざるを得ない状態を作る。
 やがて後ろで被害予定者が連れ出されて行くのを確認し、ウタは押し返すように大剣を突き出してノットスケアリーを下がらせると、炎の壁を自らの身に纏い、その炎で自らを吹き飛ばし低空飛行でノットスケアリーへと迫った。
 地面を抉るほどの衝撃が周囲の全てを吹き飛ばし、一瞬で両者の距離が詰まる。
「そう。それじゃああなたも、私の|欠落《モザイク》を感じて?」
 ノットスケアリーの胸元から虹色のモザイクが溢れ出し、霧となって周囲を包み込んだ。それは歌の撒きあげる炎とせめぎ合い散り、散らせ合うが、それらが取り巻くのは向かい合う二人のみ。
 被害者諸共DIVIDEは下がらせた。戦場全てを覆うモザイクでもその中に誰もいなければそれを受けるのはウタ一人のみ。
 霧に紛れて下がり、代わりにそれで包むようにノットスケアリーはウタを迎え撃つ。オーバーロードの炎と速さの有無風はそのモザイクを散らせ続けるが、その発生源が目の前にあるノットスケアリー自身と会っては、やがてそれさえ超えウタに届くものも出始めてきた。
 それはウタの体に突き刺さり、そこから染みわたるようにノットスケアリー、ひいてはデウスエクス全てへの恐怖をその身に植え付けていく。
 体を傷つけず心の中にあるものを壊すネガティブハンターとは違い、体に傷を、心に恐怖を明確に刻むより破壊力を持った技。
 それに対し、ウタは自身の体にさらに焔を纏って答える。
「先の戦いで学習済みだぜ。未来への希望がある限り俺の内の灯火が消えることは決してない」
 先では消えた炎を灯した心に、今度は新たに捻じ込まれたものを焼き滅ぼす。オーバーロードと己の炎の技量をもってすれば、心さえも焼けることは既に実践したことだ。
「何度も言わせないで。そういうことができるから、あなた達は嫌いなの。でも……体の傷はどうかしら?」
 ノットスケアリーの言う通り、心の恐怖は燃やせても体の傷は開いたまま。それでも、意気がくじけなければ力は出せる。
 ウタはその炎を焚き付けにし前に進み、大剣の間合いに入るや突撃の勢いを乗せて獄炎纏う『焔摩天』を叩きつけた。
 爆発の勢いが乗った一撃はノットスケアリーの足をさらに一歩下がらせる。だがウタはその身を超えてさらに彼女の後ろまで飛び去った。
「嵐のお通りだ。ちょいと荒っぽいぜ?……焔摩天、転生!」
 【焔摩天W】を発動し全身が地獄の炎に包まれた姿となったウタは、再度切り返してノットスケアリーに迫る。
「このモザイクは私の核なの……焼き払ってみて、できるなら」
 その突撃はモザイクの霧の噴出元に自ら突っ込んでいくに等しい。溢れ続ける虹色を紅蓮の赤が切り裂いてはその大元を打ち、そしてまた炎の軌跡を残して離れる。
 一度の突撃の度に少しずつ速度を速めていき相手の受ける手を痺れさせていくが、一方で僅かに霧が触れるたびその部分が炎と違うもので爛れ、そこから恐怖が染み込んでくる。
 相手が倒れるか、自分の炎が飲み込まれるかのせめぎ合い。それを何度か繰り返したのち、高高度まで上がったウタはついに最高速度で宙を切り裂き、怪鳥の如き音を放ちながら急降下した。
「飲まれて……恐怖に……!」
 虹色の霧を貫き、速さを乗せた一閃でモザイク溢れる胸を一気に切り裂いた。
 ノットスケアリーが倒れるその後方で、ウタの体を包んでいた炎がそれに纏わりつく虹色の霧ごと消える。
「ひとまずは休め」
 オーバーロードした身さえ刻まんとした霧。それを出すほどに己の目的に一途だった少女に歌を捧げる。
 しかし、それをいつまでも続けるわけにはいかない。
「次は蛇退治だ。行くぜ」
 炎は、既に次の燃え上がる時を待っていた。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
オーバーロードで背中に黒炎の翼。
守護霊の憑依【ドーピング】の効力と【気合い】が
『永遠の愛』によって爆発的に高まり
母亡き後に私を育ててくれた|吸血鬼様《ごしゅじんさま》や
私の守護霊となった子達の別個体が猟兵に惨殺される映像を
見せられても、湧き上がる感情は怒りと決意

私には|守護霊《このこ》達が、|守護霊《このこ》達には私が居る。
恐れているのは、貴女を取り零す事だけ。
今、私に宿る全ての魂の鼓動が一つになっている。
私達の目的は唯一つ。貴女を救う事よ!!

ピスティス・ブラスターの【呪詛・レーザー射撃】で映像を消し
相手を【念動力・マヒ攻撃】で
金縛りにして引き寄せ【誘惑・催眠術・全力魔法】

そこは常春。広大な花畑。
無邪気な少年少女に手を引かれて行けば
|異形の歌姫《ハーピーやアルラウネ》と爆乳吹奏楽部の音楽会。
メイド達の料理。ねとねとの温泉。
平穏、刺激、快楽……全てが此処に在る。
それは至福の夢。醒めてしまう事が恐ろしくなる程の

怖がらないで。
私達と来れば、夢は現実に変わるから
【慰め・生命力吸収・大食い】



「とうとう、駄目だったのかしら」
 満身創痍の体で夜空を見上げ、ノットスケアリーが呟く。その頭上には、夜闇さえ塗り替える黒い翼がはためいていた。
 それはドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)がオーバーロードで顕現させた黒炎の翼。猟兵は稀にその埒外すら超える何かを持ち出して来るとたった今身をもって知ったノットスケアリーは、それが己にとどめを刺しに来たのだと思った。
「でもね……知ってる? |私たち《ドリームイーター》は凄く諦めが悪いの。だって諦めたら……私が私でなくなってしまうから」
 仰向けのままのノットスケアリーの胸から、モザイクの塊が溢れ出した。それは空中にいるドゥルールにまで届き、その身を飲み込んだ。
 それはまるで全周囲モニターのようにドゥルールを囲み、そこに様々な映像を映し出す。
 最初に出てくるのは手と顔だけの巨大な怪物。だがドゥルールがそれに一瞥もくれないでいると、それは瞬く間に形を変え寸劇を始めた。
 両手が姿を変えたのは手に武器を持つ人間。そして顔が変わったのは、最愛の母亡き後にドゥルールをそだてた|吸血鬼様《ごしゅじんさま》であった。
 人間たちは手にした武器で吸血鬼を串刺しにし、二度と復活させぬための呪いのつもりか頭を砕き、胸に杭を打ち、その身を灰になるまで焼き尽くす。
 その残酷劇を見せつけたうえで、さらに役者は姿を変える。今度は奇抜なビキニをつけた胸の大きな女たちが、ある者は叩き潰され、ある者は微塵に刻まれ、ある者は体を粉々に砕かれ死んでいく。
 さらには愛妻を目の前で何度も惨殺される夫、翼を捥がれ地に堕とされる天使、愛し合いながら体を爆破され引き裂かれる姉妹など、多くの者たちがドゥルールの目の前で無残な死を遂げていく。
 これはドゥルールが見てきた残酷な記憶。彼女が人間を憎悪するようになった根源とその続き。あるいはその憎悪によって、実際に起こったことよりもさらに無残に、彼女が嫌がるような形に改変されているかもしれない。それをじっと直視するドゥルールの心にあるのはやはり恐怖か。
 その様子を、ノットスケアリーは変わらぬ微笑みで見物していた。
「随分素敵なものを見てきたのね。それはどれだけ恐ろしかった?」
 笑顔で言うノットスケアリーに、ドゥルールは決然とした声で返す。
「私には|守護霊《このこ》達が、|守護霊《このこ》達には私が居る。恐れているのは、貴女を取り零す事だけ」
 それを見せられても、湧き上がる感情は怒りと決意。これは現実でないと分かっているから。
「そう……困ったわ。死ぬのは怖くないけど、死んだら私の胸を満たせない」
 もし自分の死で恐れてくれるならそれで構わないが、胸を満たす前に死んでは本末転倒。どこまで本気か分からない調子のノットスケアリーに、ドゥルールはなお真っ直ぐに本気をぶつけていく。
「今、私に宿る全ての魂の鼓動が一つになっている」
 【永遠の愛】で宿すのは、たった今夢の中で無残な死を遂げた者たち。その運命から救い、自らの中に吸収した魂の欠片。
 ユーベルコードの域に至ったその|憑依《気合い》は、モザイクが見せる恐怖を心から追い出した。
「私達の目的は唯一つ。貴女を救う事よ!!」
 そしてその中に目の前の少女もまた加えんと、ドゥルールはモザイクの囲みの中はばたいた。
 周囲に現れた『ピスティス・ブラスター』がモザイクにレーザーを打ちかけ、それを破壊していく。そしてノットスケアリーが次を繰り出す前に倒れるその体を念動力で引き寄せ、黒い翼を畳んでその中に包み込んだ。
 ようやく眼前に手繰り寄せた少女の目を通し、ドゥルールは夢を見せる。
 そこは常春。広大な花畑。
 無邪気な少年少女に手を引かれて行けば|異形の歌姫《ハーピーやアルラウネ》と爆乳吹奏楽部の音楽会が来る者を歓迎する。
 わがまま少女さえ唸らせたメイドたちの料理の後には肌を潤すねとねとの温泉が待っている。
 この程度はまだ序の口。ドゥルールが今まであらゆる世界を巡り集めた平穏、刺激、快楽……全てが此処に在る。
 もちろんこれは現実ではない。それは至福の夢。醒めてしまう事が恐ろしくなる程の。
 恐怖を奪うため夢の恐怖を撒いた夢喰いに、夢を与え失う恐怖を教える。
「怖がらないで。私達と来れば、夢は現実に変わるから」
 そして知ったからにはその恐怖を現実にはしない。この夢の中幸せたれと、相手の技を反転させたが如くに夢の中にいるままに相手の命を吸うドゥルール。
「そうね、私は怖がらないまま、この胸の|欠落《モザイク》と一緒に消えるの……大丈夫よ、私達の分まで、きっとあのお方がおそれを喰らってくださるわ……」
 |配下《ネガティブハンター》が彼女にそうしたように、彼女もまた|神《メデューサ》に願いを託す。
 その願いを聞いてドゥルールが閉じていた翼を広げた時、そこには恐怖も、モザイクも、何もなくなっていた。
 しかし彼女らが今まで蒔いたおそれは確かにまだここにある。そして今、それが形を結ぶ時……!

大成功 🔵​🔵​🔵​




第3章 ボス戦 『十二剣神『原罪蛇メデューサ』』

POW   :    蛇蛇獄魔獄狡兎殺
【全身から染み出す「超次元の蛇」】で近接攻撃し、与えたダメージに比例して対象の防御力と状態異常耐性も削減する。
SPD   :    朧朧蛇蝎奇霊夜行
自身が対象にとって未知の存在である限り、通常の行動に追加して「【広域感染型の金縛り】」「【鎮火できず永遠に追尾する鬼火】」の心霊現象を与える。
WIZ   :    歓歓禍禍大虞呪咒
【底知れぬ恐怖をもたらす笑い声】を放ちダメージを与える。命中すると【「おそれ」】を獲得し、自身が触れた対象の治癒or洗脳に使用できる。

イラスト:カス

👑11
🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​

種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠山田・二十五郎です。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。


 猟兵たちの活躍により、ついに『姿なき殺人』実行犯であるノットスケアリーは倒された。これでもう犠牲者が出ることはなく、その恐怖もこれ以上増すことはないだろう。
 しかし、既に撒かれてしまった『おそれ』はある。
 その『おそれ』は|未知の世界《呪咒哭哭哭大内裏》からの呼び声に答え、それを地球に形作る器としてここに結集した。
「労労労 しもべよ 大義であった」
 それは黒き澱のような眼に見えるものとなり、細く長く蛇の如く伸びて女の声を出す。
「咒咒咒 おそれたか 愛し子よ しもべを 私を」
 その蛇の先端に、裸の女が実を結んだ。
 女は蛇の髪を持つ頭部を巡らせ、その場にいる者全てを睥睨する。
「禍禍禍 誰にも 誰にもやらぬ 愛し子達は皆私の飯なのだから」
 その女の名は十二剣神『原罪蛇メデューサ』。地上の全てを己が慈しみ育てた愛しき餌とし、それを熟成させるための手段を教示したデウスエクスの神。
「禍禍禍 禍禍禍 禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍禍!」
 高らかに笑うその姿は、ただ見ているだけで恐怖を誘う悍ましきものであった。
 だが、それに震えぬ力と胆を持つ者は見切る。
 この女は確かに強い。夢喰い共など及びもつかぬ、神の名にふさわしき力を持つ。
 なれど、それは他35の世界に置いて既知のレベルに留まる強さであると。今まさに競技の世界で跳梁する者どもと比べればもしかしたら下位にすら位置するかもしれぬ程度とも。
 グリモアがネガティブハンターを捕らえてから167時間と47分。それはこの存在を触れることすら能わぬ最高神、先制を許さざるを得ない絶対の強者に押し上げるには到底足りぬ時間であった。
 今のこの相手の力量は、十全な策と技をもってすれば通常の手段で滅し得る程度。おそれを知らぬ言い方をするなら、『変なギミックのないめっちゃ強いだけの一般ボス』。
 恐れることはない。敵はただとてつもなく強いだけの一介のデウスエクスとして顕現した。かつて他の世界でそうしたように、あるいはこれから続く更なる激戦を見据え、臆することなくこの強敵に立ち向かうのだ!
儀水・芽亜
十二剣神の降臨ですね。
それでは真の姿で相対いたしましょう。

「全力魔法」「範囲攻撃」悪夢の「属性攻撃」「精神攻撃」「回復力」で蝶霊跋蠱。
近接攻撃の範囲に入らないよう常に位置取りを注意し、喚び出した黒揚羽の群れを全力で“原罪蛇”にたからます。
まとわりついていない蝶は、視界を塞ぐように“原罪蛇”を包み込ませましょう。
この技は、防御力強化も状態異常耐性ももたらしません。ただ、私が回復して、密集する蝶たちが倍増するのみ。あなたにとっては相性が悪いのですよ。
「足場習熟」で上手くステップを踏みながら、ひたすら“原罪蛇”の攻撃範囲外から黒揚羽による攻撃を続けます。
さあ、そろそろ意識が途切れてきませんか?



 ドリームイーターたちが撒いた恐れを触媒に、ついに原罪蛇メデューサが顕現した。
「十二剣神の降臨ですね。それでは真の姿で相対いたしましょう」
 まずそれに立ち向かうのは儀水・芽亜(共に見る希望の夢/『|夢可有郷《ザナドゥ》』・f35644)。その外見は15歳ほどにまで若返っているが、その身には常以上の力が滾っている。
「餌餌餌 愛し子よ 実を持って私を迎えるか」
 メデューサはその姿、その力を上質な餌と見たらしい。髪となっている蛇が一斉に鎌首をもたげる仕草を見せた時、芽亜はそれを見逃さず一歩距離を取る。
「漆黒の会堂に我は求めん。濁世に満つる、罪に染まりし汚れた生魄どもを喰らい尽くし、栄光なる清浄な世界へと導かんことを!」
 芽亜の体からさらなる力が溢れ、その背に黒揚羽の翅が展開された。【蝶霊跋蠱】にて現されたこの姿こそが芽亜の『真の姿』。そしてそれに付き従うように多数の黒揚羽が周囲を舞う。
「虫虫虫 小さき羽虫に食いでなし」
 その蝶を頭部の蛇がついばむように噛みついて追い払おうとするが、黒揚羽たちは恐れる様子はなく次々とメデューサに纏わりついていく。
 蛇たちはそれを一噛みに散らし続けるが、自分で言う通り蝶ではまるで満たされないのか、メデューサは自身の口を開けて芽亜にすり寄った。
「目目目 よく見せや その実 その魂」
 一噛みに仕留めてしまおうというのだろう。牙だらけのその口に噛まれれば、人など肉は削がれ骨まで断たれかねない。その大口を開けた顔に邪魔をするようにまた多くの蝶が群がった。
「障障障 目障りなり虫 食いたきは愛し子」
 視界を塞ぐように顔に纏わりつく黒揚羽を噛み潰し、さらに芽亜へ近づこうとするメデューサ。しかし芽亜は背の羽根をはためかせ、飛ぶようにしてそこから距離を取った。
「咒咒咒 おそれるか 私を 食われるを」
 逃げ回っているようにも見える芽亜の動きにそう漏らすメデューサ。だが、芽亜はそれに動じない。
「いいえ、あなたなど恐れるに足りません」
 ふわりとさらに距離を取ると、それに反応するようにメデューサにたかる蝶の数が一気に倍加した。
 その蝶たちを打ち払うように、メデューサの全身から『超次元の蛇』が滲みだす。それは黒揚羽たちを瞬く間に食らいすり潰していくが、その穴を埋めるように蝶は増え、メデューサの体を、顔を覆っていく。
「戯戯戯 しもべを捨て逃げる それをおそれと言わずして如何に」
 ただ黒揚羽を捨て駒にして逃げ続けているようにしか見えない芽亜にメデューサは言う。
 逃げ続けているという指摘そのものはある種正解。だが、それはおそれ故の逃避に非ず。
「この技は、防御力強化も状態異常耐性ももたらしません。ただ、私が回復して、密集する蝶たちが倍増するのみ。あなたにとっては相性が悪いのですよ」
 メデューサの超次元の蛇は体から滲みだし、近接したものを侵す。故にその間合いは至近。遠距離攻撃には弱いだろうことは容易に予想がついた。精密な操作の必要ない遠距離攻撃を絶えずけしかけ己は回避に徹するは、まさに敵の能力を見極めた的確な一手と言えよう。
 しかしメデューサの実力は高い。蝶と自らの蛇のせめぎ合いに焦れたように蝶の囲みを突っ切り、牙だらけの口で芽亜へと噛みかかった。
 それを芽亜は翅と足を使って大きく飛び、直撃することを免れた。メデューサの高い力量故かその足の衣服が破れ切創が刻まれているが、その場を選びバランスを崩さず着地する。
 そしてその傷も、飛び掛かる黒揚羽が増えるに従いすぐに塞がっていった。
 一撃受けたが故、傷は塞がってもその部分の守りは弱くなっている。次に同じところに受ければ今度は骨、あるいは足そのものを持っていかれるかもしれない。
 そしてそれをさせないが故の黒揚羽。
「さあ、そろそろ意識が途切れてきませんか?」
 躱しやすい足場を選び、ステップを踏みながらの黒揚羽の舞い。黒揚羽はたかり続けるうちにメデューサの意識を眠りに誘い、そしてそれは敵の無理攻めの狙いをかき乱し、そしてそれが躱すのをより容易にする。
 防御や状態異常耐性の低下も、受けなければ関係ない。そしてそれは時を経るごとに当たり難くなっていく。
 地上を餌とするため長く待った原罪蛇に、待って狩るのは己だけではないと示すように黒揚羽が夜の道に舞う。目の前のおそれが、ただ沈むのを待ちながら。
 やがてその高き力も振るえぬほどに鈍った時、芽亜はメデューサの意識を刈り取るのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

夢ヶ枝・るこる
■方針
・アド/絡◎

■行動
大変な相手では有りますが、やってみましょう。

【炳輦】を発動し飛行、周囲を『防御結界』で包むと共に『FPS』による探査で原罪蛇の動向と性質を察知しますねぇ。
更に『FLS』の空間歪曲障壁と『FXS』の結界を重複、遠距離攻撃と精神攻撃に備えますぅ。
『超次元の蛇』は『近接攻撃』前提、原罪蛇から飛行で距離を取ると共に、『蛇』が体から離れて接近可能な場合に備え『時空切断の嵐』に巻込み、召喚元の『超次元』諸共[切断]しますねぇ。
後はそのまま『FPS』で調べた『攻撃の通り易い位置』を狙い『時空切断の嵐』で傷口を開き、全攻撃用『祭器』による[部位破壊]の集中攻撃を仕掛け[追撃]しますぅ。



 餌と見ていた存在に抵抗され、不覚さえとったメデューサ。目元こそ蛇に隠れ見えないが、それでもその表情は不気味な笑いを浮かべたまま。
「噛噛噛 捥ぐ手に食いつく それでこそ食うに相応しい」
 その強さこそ自らの糧に相応しいと、未だ十二剣神たる彼女の自信は微塵も揺らいではいなかった。
「大変な相手では有りますが、やってみましょう」
 例え不完全な顕現であったとしてもその自信を持つに相応しい実力はあると、夢ヶ枝・るこる(豊饒の使徒・夢・f10980)は相手を見据える。
「肉肉肉 実りし愛し子 だれにもやらぬ」
 るこるの体をまさに彼女らしい観点で見定め、メデューサは下半身をうねらせた。
 その身が伸び来る前に、先んじてるこるは動く。
「大いなる豊饒の女神の象徴せし欠片、その衣を纏いて典礼を捧げましょう」
 るこるは【豊乳女神の加護・炳輦】を発動、周囲に防御結界を張りながら飛行し距離を取った。
 そしてそれと同時に、メデューサの周りに涙滴方の水晶を配置する。それを振り払いながらメデューサは下半身をばねの様に使いるこるに飛び掛かるが、高速で飛行するるこるを追いきれずただ宙を飛ぶにとどまった。
「浮浮浮 如何なもの 如何にする」
 そのまま一度着地するメデューサ。歯をかみ合わせ何かを訝っているようなその様子は、ただ攻撃を外したことを苛立っているわけではなさそうだ。
「歪歪歪 ずらすか 阻むか」
 再度下半身を使い跳躍するメデューサ。その跳躍は一見外した場所を狙っているように見える。しかしるこるは、とっさに瞬間移動することでメデューサの軌道から大きく離れたところまで移動した。
「なるほど、もう見破りましたかぁ」
 それはメデューサの攻撃の軌道が『正確な位置』を狙っていたためであった。ネガティブハンター、ノットスケアリーとの戦いでも用いた『FLS』の空間歪曲障壁と『FXS』の精神防御を含めた結界。ドリームイーターたちはそれにかかり、大技をるこるに直撃させることができなかった。
 今回もるこるは浮き上がった時それを布いたのだが、メデューサは最初の一撃を外したところでその防御法に気づき、力による結界の強引な突破と攻撃位置の偏差による結果的な直撃を狙った。
 単純な力だけでない、戦闘における知識や勘も配下たちとは一線を画する実力者。もしこれが完全な力を持って顕現したらと考えると、想像するだに恐ろしい。
 そしてメデューサの体の輪郭が僅かにぶれた。そう感じた瞬間、るこるは時空切断の嵐をメデューサに向けて滅多撃ちにした。
「『超次元の蛇』は『近接攻撃』前提、ですがぁ……」
 メデューサの操る超次元の蛇は至近でなければ効果はない。しかし目に見えぬ『おそれ』を媒体にしたメデューサのこと、それを伝って離れた位置すら『近距離』と見なしてくる可能性がある。ならば遠くから、そして元から、『時空』をもって『次元』を切らんとした。
「空空空 此処か 其処か 切れるか 愛し子」
 それは間違いなくメデューサの体を刻む。しかしメデューサも怯む様子はない。知恵や力だけでなく、その防御力もまた一級。
「通通通 届くぞ 見えたぞ 今喰らおう」
 その切断を乗り越え、その身から蛇を滲ませながらメデューサは三度の跳躍をかけた。
 今度は瞬間移動してもそれさえ追ってきかねない。ならば、どうするか。
「こちらも、見えましたよぉ」
 その軌道、攻撃に移るため身を開いたメデューサの胸。その真ん中に、渾身の時空切断が放たれた。それは相手が最も隙を曝し、避けられない一瞬を貫く刹那の一撃。
 それを放つに至ったは、最初から配置していた『FPS』による情報収集の賜物。戦いながら相手の情報をつぶさに集め、強敵の一瞬の隙、攻撃の通りやすい位置を見極め、るこるはその瞬間をものにしたのだ。
 胸元を深く刻まれ落ちていくメデューサ。そしてその落下を追うように、残る全ての兵装が傷口を開くように追撃をかけた。
 いかな実力者と言えど、幾度となく急所を抉られては地に縫い留められざるを得ない。
 敵は情報を広め、猟兵はそれを押しとどめることでメデューサの強化を防いだ。そして今度は敵の情報を集めることでその残った力さえ届かせずに地に伏させた。
 知恵や技と同等以上に、情報は力。そしてその力比べに、るこるは勝利したのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

レラ・フロート
ケルベロスからDIVIDEへ
「クラッシャー」を要請します!
相手が本調子じゃないからって油断なんてしない
全力全開!勝利を掴むよっ!

原罪蛇さま、元連合軍所属のダモクレス、レラです
今の私の使命を、地球の人々を守る己の信念の下
全力で貴方に勝利してみせますっ!

気を張ってエネルギー充填からの斬撃波で機先を制し、
以後も間合いを保って攻撃を続けるよっ

「超次元の蛇」が体を包めばきっと悲鳴を上げちゃう
きゃぁぁっ!!

けれど、負けるもんか。エネルギーを開放!
お姉ちゃんに似た姿の――真の姿:紅蓮の守護者となって
超次元の蛇の拘束を引きちぎるっ

何度だって立ち上がる
全力全開ッ!想いを込めた《閃光烈波》を
叩き込み勝利を掴むよ!



 ついに顕現した原罪蛇メデューサ。それは本来の実力とは程遠い不完全な顕現であったが、それでもその力は相当なもの。
「ケルベロスからDIVIDEへ、「クラッシャー」を要請します! 相手が本調子じゃないからって油断なんてしない。全力全開! 勝利を掴むよっ!」
 レラ・フロート(守護者見習い・f40937)はその状態をして全力を持って戦うべきと、決戦体制で臨む。そしてその背後には、満を持して配備されたDIVIDEの精鋭戦闘部隊。
 ノットスケアリーとはまた別種の笑みを絶やさぬメデューサに、レラは真剣な顔で向かい合う。
「原罪蛇さま、元連合軍所属のダモクレス、レラです。今の私の使命を、地球の人々を守る己の信念の下、全力で貴方に勝利してみせますっ!」
「機機機 しもべよ 不死を捨て下ったか ならば愛し子よ」
 己の出自、かつてはメデューサの配下とも言える存在であったことを告げたレラに、メデューサは元がどうあれそうならば今は|愛し子《餌》であるとして答えた。
 そのメデューサに、レラは素早く踏み込んで最初の一撃を刻み込む。名乗りの間にも溜めていたエネルギーを剣圧に乗せ、斬撃波として叩きつけた。
 その一撃にも、メデューサは僅かに上体をのけぞらせるだけ。やはり相手の実力は相当と、レラは間合いを離し剣のリーチを活かした遠間の攻撃でメデューサの体力を削る作戦に出る。
 武器を持たぬメデューサは、間合いを離されれば取れる手は少なくなる。少しずつ、着実にその体には切創が刻まれていき、その強靭な体にダメージが積み重なっていった。
「遅遅遅 遠くに待つときは過ぎた」
 そのまま削り切れるか。そう見えた瞬間、メデューサは素手で剣の刃を掴み、強引にそれを払いのけてしまった。
 その力強さにレラの姿勢が大きく崩れる。その一瞬のスキを突き、メデューサはレラに肉薄。その首を掴み締め上げた。
「絞絞絞 蛇蛇獄魔獄狡兎殺」
 その掴んだ手、さらにはメデューサの全身から『超次元の蛇』が滲みだし、レラの体に纏わりつき始めた。
 蛇が触れた場所から体が崩れ、生命が吸われていく。これもまたメデューサの捕食の一つなのか、その部分から体を守るための防御力や気力、抗体や免疫などの耐性まで流れ出し体が弱らされていくのが分かった。
「きゃぁぁっ!!」
 思わず悲鳴を上げるレラ。振りほどこうにもメデューサの力は強く、さらに守りを崩されているとあってダメージは時間を経るごとに加速していく。元々回避と攻撃に気を割いていたこともあり、一度崩されてからの切り返しは困難な状態に陥っていた。
「禍禍禍 禍禍禍禍禍!」
 笑い声をあげ大口を開けるメデューサ。その牙がレラの身に突き刺さり肉を食いちぎろうとする。
 その瞬間、メデューサの顔が横に逸れた。
「攻めろ、撃て!」
 それは配備されていたクラッシャーたちの決死の銃弾。大口径の銃による一斉射撃でなお頬を押すだけの効果しかないが、それでも彼らは命懸けで攻撃を繰り返す。
「駄駄駄 小粒の群れ 愛い囀り」
 メデューサが効かぬと言わんばかりにちらとそちらを見た。そのわずかな一瞬、レラへの拘束が緩んでいた。
「負けるもんか……エネルギーを開放!」
 その一瞬で、レラは残された全ての力を解放した。レラの体が変形し、ダモクレスの『姉』に似た姿となる。
 それはケルベロスの暴走とは違う、猟兵の『真の姿』。意思を残したまま秘められた力全てを引き出す新たな奥の手。
 湧き出た力が、超次元の蛇を引きちぎりメデューサを突き飛ばした。
「何度だって立ち上がる。全力全開ッ! 想いを込めて!」
 要請に答え|DIVIDE《仲間》が必死に作ってくれたチャンス。そこに元ダモクレスとして、猟兵としての思いを込めて。
「わたしの想い、この光に込めた! めいっぱい持っていけーっ!」
 【閃光烈波】のオーラが、メデューサに叩きつけられた。威力は一切手加減せず、しかし意思は過去から現在、そして未来へ向けた全てを乗せて。
「時時時 しもべよ 愛し子よ 何処へ行く……!」
 二つの陣営を渡った機兵の心が、不変であり続けるデウスエクスの神を押しのけ伏させたのであった。

成功 🔵​🔵​🔴​

死絡・送
POW アドリブ絡み共闘OK
■行動:真っ向勝負。
「恐怖は乗り越える物、真っ向勝負あるのみ!」
悪を狩る怪物、闇の貴族、ノーブルバットに変身して参加。
仲間がいれば紳士的に接して、協力して立ち向かう。
ノーブルアンカーを振るい、重量攻撃。
念動力は防御に使う。
相手のユーベルコードに対して、光子魚雷一万発発射!!
を叩き込む。




 メデューサは配下に広めさせたおそれを媒体に顕現した。ドリームイーターたちが倒れた以上それが増えることはもうないが、恐怖は彼女の武器であり望むものである。
「恐怖は乗り越える物、真っ向勝負あるのみ!」
 死絡・送(ノーブルバット・f00528)は相手の押し付けて来るそれを乗り越えんと、悪を狩る怪物、闇の貴族、ノーブルバットに変身し真正面からメデューサに立ち向かった。
「愚愚愚 私に向かうそれ自体が愚行なり」
 メデューサは嘲りの笑顔でそれを迎える。そのメデューサに、送は『ノーブルアンカー』を構えて向き合った。
「喰らえ!」
 送はそれを振り上げ、重さを乗せて叩きつける。メデューサは手を掲げてそれを受け止めるが、その勢いに上体が下半身の蛇部分にめり込むほどに沈みこんだ。
 その一撃に手応えを感じた送は、さらにもう一撃ノーブルアンカーを振り下ろす。仲間がいれば紳士的に接して協力して立ち向かうつもりだったが、単独であるなら行儀よくする必要はない。相手を逆に恐れさせてやろうとばかりに、繰り返し送は武器を相手の上から叩きつけた。
「直直直 上のみ来るなら流せばよし」
 何度目かの振り下ろしの瞬間、メデューサはアンカーの側面に手を当て、軽く横に押すことでそれを受け流した。狙いを外した先端が地面にぶち当たり、アスファルトを砕き大きく陥没させる。
 その勢いの余り武器は深く地に突き刺さり、また重さに釣られて送の体制も崩れる。そのがら空きになった首を、素早くメデューサの腕が掴んだ。
「ぐっ……!」
 凄まじい怪力。瞬く間に息が詰まり、目の前が白くなっていく。
「締締締 食うに締めるは常道なり」
 家畜を締めるかのようにそう言って、メデューサは大口を開ける。そのまま喉元に食らいつこうと顔を近づけるが、それは何かに押し返されるような抵抗を受けた。
「やられるわけには……!」
 送は念動力を振りまき、敵の攻撃に抵抗する。首を絞める手と噛みつこうとする口、それに押し当て何とか防御しようとするが、メデューサの力はそれ以上に強かった。
 鋭い牙が送の首元に突き立ち、スーツを貫いて肉を穿った。
「ぐあぁっ!!」
 闇夜を塗り替える鮮血が噴き出す。メデューサはそれを口に含み、牙を立てたまま顔を引いて肉を抉ると顔を緋に濡らして笑んだ。
「紅紅紅 鍛えし肉 湧いた血 良く実った」
 ついに口にした|愛し子《餌》の血肉の味に歓喜の声を上げるメデューサ。だがその笑顔も満足に見えないほどに、送の視界は薄れていく。
「供供供 差し出す為に来た 愛し子の鑑よ」
 自身の肉をわざわざ食わせに来たかと嘲るメデューサ。もちろん送はそんなつもりはない。だが、結果的にはそうなってしまった。
 真っ向勝負と意気込んできた送だが、そのために立てて来た策はたった三つ。武器を振るい、念動力を撒き、ユーベルコードを使う。それはDIVIDEの支援も得ず十二剣神に立ち向かうには余りにも無策が過ぎた。それにそもそもメデューサは人間を同格などと見なしていない。相手が真っ向から来ようとも、それに応えることなどあるはずもないのだ。
 送は決して弱くない。数多の装備、多数の技能を持つ熟練の猟兵だ。だがどんな装備も技も、使わなければそれはないも同じなのだ。そしてその鍛えれど用いられなかった技は、メデューサにとってはただ差し出されただけに等しい上質の肉。
 その肉を味わい尽くそうと、メデューサの全身から超次元の蛇が染み出す。肉を柔らかくし、余計な邪魔を削ぎ、上質な肉をより良く味わう為の|料理法《ユーベルコード》。
 その蛇が己を侵し始めたその瞬間、送が最後の意思を見せた。
「全てを光に変えて消す!!光子魚雷、射て~~~~~~~っ!!」
 己は餌になるために来たのではない。その意地を込めた【光子魚雷一万発発射!!】が、メデューサの顔面に至近から炸裂した。
「何何何!?」
 こちらのものと油断し切っていたメデューサはそれをまともに受け、超次元の蛇諸共のけ反り送から離れる。
 ユーベルコードは相手のそれに対応し放つ。それを曲げることなく完遂した送は、真正面から見せた意地を残し闇に消えるのであった。

苦戦 🔵​🔴​🔴​

木霊・ウタ
心情
命を蔑ろにする外道を
燃やし尽くすぜ

決戦配備
ジャマー
街のあちこちの屋外スピーカーから流れるは
様々な聖句

聖職者や僧侶、陰陽師に魔術師等
神秘の力の持ち主達が
とっかえひっかえ(なんせ神様相手だから)
破邪の祈りを唱えてくれて
心霊現象をキャンセルさせたり
弱めるぜ

ちょいと騒がしいけど
面白いBGMだろ(にやり

戦闘
そもそもメデューサってのは有名だし
デウスエクスで
俺たちを餌にしようってんだろ
そんだけ判ってりゃ十分だ

様々な聖句のリズムに乗りながら
獄炎纏う焔摩天を振るって
蛇女を薙ぎ払う

もし心霊現象が起こっても
金縛りを起こす感染を燃やして焼却し
鬼火を獄炎で喰らって取り込む
これなら鎮火できなくても関係ない

アンタは決して勝てない
俺たちを自分の餌としか見てないからな

大剣一閃
炎孕む剣風を放つ

もし避けられても
爆炎噴射で直ぐに位置変えをして
射線上に捉える
当たるまで何度でも剣を振るぜ

命と命が創り出す未来を奪った罪を
その身で贖え

紅蓮で灰に還す

事後
これまでの犠牲者と蛇女へ
鎮魂曲を奏でる

DIVIDEもサンキュ
助かったぜ(ぐっ



 メデューサにとって人は己の餌にするために育てた家畜である。そしてそのおそれは自身が地球に現れるための触媒であり、そのために恐怖を与えながら虐殺することに何の躊躇いもない。
「命を蔑ろにする外道を燃やし尽くすぜ」
 その姿勢に木霊・ウタ(地獄が歌うは希望・f03893)は怒りを燃やしそう言うが、メデューサは変わらぬ不気味な笑顔のまま。
「同同同 愛し子は畜肉を食って増え私は愛し子を食う 何も変わらぬ」
 メデューサにとってそれは人が家畜にしていることをそのまま人にしているだけ。あるいは彼女が人に知恵を与えたというなら、自身のそれを真似るよう人に入れ知恵したのかもしれない。確かに正論かもしれないが、しかし彼女に因らぬ知恵を持つ世界の身なればそれを許すことは出来ない。
 しかし、己と縁遠き者にこそ効果を表す技を彼女は持っている。
「未未未 朧朧蛇蝎奇霊夜行」
 メデューサの周囲に暗き影、謎の存在がまとわりつく。そしてメデューサがウタににじり寄ると同時に、それは形を持ってウタへと襲い掛かった。
 ウタの体が動かなくなり、周囲に青白い炎が巻き起こる。メデューサが未知の存在である限り彼女のあらゆる行動に追従し起こる心霊現象。彼女の起源など知る由もない異世界の相手にはほとんど無条件と言ってもいいほどに刺さる技だろう。
 動けなくなった相手が消えぬ炎で焼かれるのを待つ。まるで肉を焼いて調理しているかのようなその攻撃にウタが捕らわれた時、突如として闇夜の静寂を破る大爆音が鳴り響いた。
 町内放送用のスピーカーから流れてくるのは様々な聖句。あらゆる宗教、教派のそれがごちゃ混ぜに、入れ代わり立ち代わり鳴り響くそれは神々しさとは縁遠い騒がしさだが、それ故に『おそれ』とは程遠い。
 そしてそれに抑えられるように、鬼火が縮まりウタの体に少しずつ自由が戻ってくる。
「ちょいと騒がしいけど、面白いBGMだろ」
 僅かに動くようになった顔でウタはにやりと笑った。これはDIVIDEのジャマーたちの支援。そして彼らが行うのだからもちろんただの声でなく、聖職者や僧侶、陰陽師に魔術師等神秘の力の持ち主達が自身の能力を乗せて放つ本物の力。本質は『心霊現象』であるメデューサの今の力を抑え込むにはうってつけの支援であった。
 そして、大元であるメデューサ本人も。
「そもそもメデューサってのは有名だし、デウスエクスで俺たちを餌にしようってんだろ。そんだけ判ってりゃ十分だ」
 十二剣神『原罪蛇メデューサ』について全ては知らねども、ギリシャ神話に登場するゴーゴン三姉妹が一人メデューサは誰もが知る魔物。蛇の髪を持つ元美女で石化の力を操る怪物として、元の神話のみならず様々な創作に登場する有名どころだ。さらに猟兵の知る『予兆』にて彼女はわざわざ自己紹介をしてくれた。
 既に敵は全くの道ではないとし、敵のユーベルコードを抑え込みウタは動き出す。
「アンタは決して勝てない。俺たちを自分の餌としか見てないからな」
 さらにオーバーロードした炎で自身に感染した金縛りを焼き、敵の炎はそれに飲み込ませる。相手の炎が完全に消えずとも、炎はより大きな炎で飲み込めるとばかりに青を赤で覆い尽くす。
 そして流れる声が聖歌になった時、そのリズムに乗ってついに大剣が振りまわされた。
「然然然 餌を餌と見るは至極当然」
 メデューサはそれを自らの腕で叩いて払う。異能でない単純な力も上級である彼女は力比べにも負けないが、力を炎で補うことでウタはそれと切り結んでいく。
 そして何度かの打ち合いの後、上段に構えた大剣が一閃された。
 頭上から真っ直ぐ相手を両断する、それが確信できるほどの太刀筋。だがそれさえ、メデューサは自らの手で取ってのけた。
「非非非 その火では私を焼けぬ」
 そのまま剣を跳ね上げウタの胸元に食いつこうとするメデューサ。ウタはとっさに自身の前に爆発を起こし、その爆風で自ら吹き飛ぶことでそれを避けた。
 視界を塞ぐ炎をメデューサが振り払った時、ウタは既にずれた位置にいた。だがメデューサもすぐに軸を合わせ、組み付く構えを取る。
 そこから剣閃と炎を放ってはそれの勢いでの移動を繰り返し相手を振り回すウタ。しかしDIVIDEの力はあくまで支援程度、メデューサの金縛りもいつまでも封じておけるわけでもない。敵を、十二剣神を断つには一瞬をものにしなければならない。
 そして、戦いの果てに待っていた時が来た。一直線に射線が通り、相手がこちらへ向かう動作に入っている。
「紅蓮で送ってやる。海へ還れ」
 その直線に、【ブレイズスラッシュ】が放たれた。その炎は退魔の祈りさえ超える、神殺しの地獄の炎。己より強い敵を焼くそれは、デウスエクス最高の称号十二剣神たるメデューサにとってはまさに誂えたような特効であった。
「命と命が創り出す未来を奪った罪をその身で贖え」
 その紅蓮で灰に還れとばかりの炎。
「熱熱熱 私が」
 短いながらそれに己が焼かれることを信じられぬという言葉を、メデューサは炎の中で漏らす。
 紅蓮の中確かにその人型が頽れるのを見て、ウタは彼女の為にこれまで犠牲となった者たち、そして彼女自身へ鎮魂の歌を捧げる。
「DIVIDEもサンキュ、助かったぜ」
 同時に共に戦った組織に親指を立てると、それに答えるようスピーカーの聖句も止むのであった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

ドゥルール・ブラッドティアーズ
共闘×
オーバーロードで背中に黒炎の翼
守護霊の憑依【ドーピング】で更に強化

『略奪愛』で147秒の時止めと共に唇を奪い
メデューサ様の生命力も『おそれ』で得た力も吸収

時が動き出しても
私の唾液に含まれる媚毒の【呪詛】と生命吸収による脱力で
【怪力・捕縛】の抱擁を振り解けず
キスで唇を塞いでるから恐怖を齎す笑い声も出ない

髪の蛇が嚙みつきや首絞めをしてきても【オーラ防御】で防ぎ
略奪愛の洗脳効果と【誘惑・催眠術・全力魔法】で彼女もろとも魅了

私はこの世界の民ではありませんが
あえて申し上げます

貴女の最大の失敗は
いずれ喰らう為とはいえ
知恵という神殺しの力を人類に与えた事

唯一の成功は……私に出会えた事。
『おそれ』以上の力と、永遠の|救済《アイ》を貴女に

彼女の巨乳にしゃぶりつき、反対側の乳頭も指で【慰め】
【化術】で生やした肉の|小剣《グラディウス》で秘部を【串刺し】
実質無限の【継戦能力・気合い】で
媚毒体液を【乱れ撃ち】ながら【生命力吸収・大食い】

素敵な喘ぎ声♥
可愛いですよ、メデューサ様♥
んっ♥ あっ♥ あぁんっ♥♥



 原罪蛇メデューサの真の実力は計り知れない。しばしばいる確定の先制攻撃を行ってくるオブリビオンや、絶対に倒すことができないので相手の撤退を誘えと言われる超強敵。あるいはそれらさえ超えるかもしれない。
 もし彼女の目論見通り時間をかけその全てをもって顕現していたら、およそこのような手段は取れなかったであろう。
「いただきまぁす♪」
 ドゥルール・ブラッドティアーズ(狂愛の吸血姫・f10671)は背に黒炎の翼を負ってユーベルコード【略奪愛】を真っ先に使い、時間を止めることで確実にメデューサに詰め寄り、相手の力を吸収することから戦いを始めていた。
 牙だらけの口に傷つけられぬままに自分の唇を重ね、そこから生命力を奪い取る。抵抗されぬまま自分だけが知覚できる時間の中それを続け、そして時が動き出した瞬間重なった唇が動き中にだけ聞こえるくぐもった声を出した。
「奪奪奪 喰ったか 私を」
 突如として目の前に現れた相手に驚愕や誰何などせず、まず自分がどうなったかを確かめ瞬時に何をされたか理解するメデューサ。
 奪ったのは唇と生命力だけでなく、相手の力をより押し上げる|強化《バフ》。メデューサは『おそれ』を持って強化される。そしてそれは彼女が地球に現れるための媒体でもある。強化を奪うということは彼女の存在そのものを奪うにも等しく、単なる弱体化に留まらぬ|攻撃《捕食》と言えた。
 メデューサにとっては己が為そうとしたことを返されたような形だが、それで彼女が激昂するような様子はない。十二剣神たる己が|愛し子《餌》如きに怒りを露わにするなどありえない。その態度は今持ってなおその自信と矜持を失っていないことの表れか。
 そしてそれはつまりこの状況からでも切り返す手がメデューサにあるということ。
「呵呵呵 歓歓禍禍大虞呪咒」
 メデューサの喉が蠢き、そこが激しく振動する。それは紛れもない哄笑。それは喉から舌に伝い悍ましき笑い声となって口から迸らんとするが、そうなったときドゥルールはより強く顔と唇を押し付けた。
 声を出すための唇を抑え、舌を舌で絡めとる。そこに呪詛を乗せた体液を送り込んで体内を侵し、さらに体を抱きしめることで振りほどき離れることも防ぐ。頭上の蛇がドゥルールの目や首を食いちぎろうとすれば、それはオーラを張って抑え込んだ。
 圧倒的な実力を持つメデューサだが、それを吸われて帰されては時がたつほど不利になる。ユーベルコードの効果とそれを齎すための構えの双方を持って、ドゥルールはメデューサを虜にしていた。
 これはドゥルールがメデューサの攻撃を防ぐための戦法であると同時に、彼女が一途に望み、求めた接触そのもの。
「私はこの世界の民ではありませんがあえて申し上げます」
 そして伝えたかったことを重ねた口を動かして彼女に言う。
「貴女の最大の失敗は、いずれ喰らう為とはいえ知恵という神殺しの力を人類に与えた事」
 人は弱い。単騎で全力のメデューサを倒せる人間は地球上にいないだろう。しかし人は全力を出させない策を学び、DIVIDEという|組織《バベルの塔》を作り、そして猟兵という埒外を呼び込んだ。それは全てメデューサの与えた時と知恵が実らせてしまった禁断の果実。暗黒の世界でヴァンパイアがそうされたように、知恵を得た人は上位者さえも屠り去るのだ。
「不不不 熟しすぎた実に中ったと言いたいか」
 それに返すメデューサ。その傲岸な態度は彼女の域がなお挫けていない証。されど、喋っている暇があるのに嗤わぬはこれもまたドゥルールのユーベルコードの洗脳効果が如実に表れていること。
「唯一の成功は……私に出会えた事。『おそれ』以上の力と、永遠の|救済《アイ》を貴女に」
 そしてその禁断を己もまた。ドゥルールはここにきてついにメデューサの口から顔を離し、それをより下の裸体へうずめた。
 胸は大きくなり、衣服はなくなっていく。おそれに対抗するためあえて言われた敵のそんな特徴。そこに顔を埋めて先端を吸い、もう片方を指で弄りまわす。示唆通りそこにあるのはおそれではなく愛欲。
 そして己の身に生やした|小剣《グラディウス》で相手を串刺しにし体液を乱れ撃ちながら生命力吸収する。
「阿阿阿 喰らうか 肉を 愛し子」
 それに対しメデューサはやはり嗤う。自由になった口から洩れる笑い声は繋がった部分に響き、そこから体液に乗せて生命力を啜り返していく。
「素敵な喘ぎ声♥可愛いですよ、メデューサ様♥」
 その声を恐れず、ドゥルールはもう彼女の口を塞がない。メデューサとドゥルール、両者の使った力は原型となる部分は|同じもの《ブラック・グリード》。それにて奪い合い、食らい合うは無限に続く食い食われの連鎖か。
 しかし、それにも終わりは訪れる。
「過過過 育ちすぎたか愛し子よ 手を噛むまで 袂を離れるまで」
 既知の領域に留まる不完全な顕現と、異世界の埒外との連戦。その果てに、神の|命《おそれ》はついに尽きようとしていた。
「んっ♥ あっ♥ あぁんっ♥♥」
「禍禍禍 果果果 華可化刈咬菓嚙瑕迦󠄀訶歌痂燬!」
 生命力の取り合いの果て、二人は共に『果てた』。
 メデューサの身が顕現した時を逆にたどるように崩れ、黒く淀み、消えていく。そしてその姿がおそれとともに完全に消え失せた時、ドゥルールもまた黒炎の翼と共に闇に解けるようその場から消え去った。

 こうしておそれの正体、姿なき殺人の真実は白日の下にさらされ、全ては詳らかに記された。
 人々がおそれを膨らませ眠れぬ夜は、もう訪れない。

大成功 🔵​🔵​🔵​



最終結果:成功

完成日:2024年01月31日


挿絵イラスト