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|彩愛《さいわい》ミルキー・ウェイ・トレイン

#シルバーレイン #ノベル #アイスジュエルとデイドリームカフェ

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八坂・詩織
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アドリブ歓迎
学園の冬休みを利用して岩手県へ一人旅に来た詩織。
岩手県といえば有名な児童文学『銀河鉄道の夜』の作者ゆかりの地ということで持参した文庫本を片手にふらりと立ち寄ったカフェは疲れた大人も癒してくれそうな安らぎの空間で。

個室を選び、贅沢に二人用ベッドを一人占め。
布団は手触りのよい毛布で。

おすすめはアンバーアップルのようですが…
アイスはダブルでも頼めるんでしょうか。
可能ならサファイアブルーベリーとトパーズシトロンをダブルで。それとシナモンアップルティーを注文。
注文した品が届いたら鍵をかけてまったりおひとり様タイムを満喫。

なぜサファイアとトパーズかといえば銀河鉄道の夜に登場するアルビレオがサファイアとトパーズに例えられる二重星だから。自身が一番好きな二重星でもある。そしてりんごもまた銀河鉄道の夜に登場する果物。
宝石のようなアイスを目でも舌でも味わい、アップルティーの香りを楽しみながら本のページを捲れば物語の世界により没入できるようで…

天文のみならず動植物や鉱物、地質学など幅広い科学知識に精通していた作者が描く幻想的な光景は理科教師となった今なお胸をときめかせるもの。
でも美しいだけではなく根底にある自己犠牲の精神や幾度も繰り返される『ほんとうのさいわい』という言葉にはいつも胸を締め付けられる。

私にとってのほんとうのさいわいってなんだろう、大切な友人達には自己犠牲なんてしてほしくない、でも大切な皆のためだったらこの身に代えてもという気持ちも分かる…

…少し眠たくなってきましたね。
物語の情景を浮かべながら眠ったら、銀河鉄道に乗って旅をする夢が見られるでしょうか。




 銀誓館学園も、今は冬休み。
 この長期休暇を利用して、銀誓館学園教師である八坂・詩織(銀誓館学園中学理科教師・f37720)も岩手県へ一人旅に来ていた。
 片手には、表紙に瞬く星々が描かれた文庫本。ここ岩手県は、かの有名な児童文学の作者ゆかりの地。
 愛読書と共に散策を楽しんでいた詩織は休憩にと『|Rêverie scintillant《レヴリ・サンティアン》』――煌めく白昼夢、の看板を掲げるカフェに立ち寄った。しかし、眼前に広がったカフェと言うには変わった内装に、首を傾げる。
 店員に聞けばここは、睡眠カフェ。カフェインレスの飲み物やアイスを楽しみつつ、睡眠も取れる。疲れた大人にも癒しを提供する、安らぎの空間であるのだと。
「では席は個室で……二人用ベッド一台のブースでお願い出来ますか?」
「はい、かしこまりました。それでは11番の……」
 折角の一人旅なのだ。二人用ベッド一人占め、なんて偶の贅沢を堪能してみたりして。 
 布団は手触りのよさそうな毛布をチョイス。それから、飲み物とアイスの注文へ。
(「おすすめはアンバーアップルのようですが……」)
 ポスターパネルに飾られたそれは、とろり蕩けるような琥珀色の煌めきが綺麗で、美味しそうではあったが。
「あの、アイスはダブルでも頼めるんでしょうか」
「はい、可能でございますよ」
「でしたら、サファイアブルーベリーとトパーズシトロンをダブルで。飲み物はシナモンアップルティーでお願いします」
 注文を終え、指定された個室で荷物を下ろしていると、硝子製のレトロアンティークな器に盛り付けられた、|青宝玉《サファイア》と|黄玉《トパーズ》のアイスが、甘くスパイシーな香りのするお茶と共に運ばれてきた。
 退室する店員にお礼の言葉を告げて、部屋に鍵をかける。アイスと紅茶を楽しみながら、おひとり様タイムを満喫する、癒しの時間。
(「サファイアとトパーズは、アルビレオの二重星。ふたつの宝石に例えられる、私の一番好きな二重星……」)
 林檎もまた、この愛読書の中に登場する果物だから、何かの形で頼んでおきたかった。
 宝石のようなアイスが室内の光に照らされ煌めくのをまずは目で楽しみ、滑らかでいて、それぞれの果物特有の甘味や酸味がしっかりと乗った味わいを舌で楽しむ。
 紅茶の香りも豊かで、心地のよい空間が形成されていく。その中で本のページを捲れば、物語の世界により深く、没入出来るような気がした。
 天文のみならず、動植物や鉱物、地質学など幅広い科学知識に精通していた作者の、知識に裏打ちされた描写は幻想的でありながら、立体感を持って思い描くことが出来る。その光景に、詩織は理科教師となった今なお胸をときめかせてやまない。
(「でも……」)
 これは美しいだけの物語ではない。その根底にある自己犠牲の精神や、幾度も繰り返される『ほんとうのさいわい』という言葉に詩織は、いつも胸を締め付けられるのだ。
(「私にとってのほんとうのさいわいってなんだろう、大切な友人達には自己犠牲なんてしてほしくない」)
 嘘偽りのない本心だ。
 だが、反面。
(「大切な皆のためだったらこの身に代えてもという気持ちも分かる……」)
 そんな考えが、過るのだ。
「……少し眠たくなってきましたね」
 空になった器をテーブルに戻す。少し冷めてしまった紅茶も飲み終え本を置き、広く柔らかいベッドに身を沈めた。温かな毛布に包まれて、うとうとと微睡む。
(「物語の情景を浮かべながら眠ったら、銀河鉄道に乗って旅をする夢が見られるでしょうか」)
 アルビレオはそこで、出迎えてくれるだろうか。
 希望を胸に、銀河の夢へと旅に出る。

成功 🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔴​🔴​🔴​



最終結果:成功

完成日:2024年01月07日


挿絵イラスト