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御薔薇たぶらかし~赤薔薇の匙の上

#エンドブレイカー! #封神武侠界 #戦後 #薔薇世界ロザガルド

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「猟兵はどうやら、此処ではない別の世界で起きた危機を跳ね除けたみたいね」
 其処は閉ざされた丸い部屋。中央の床には円、そして宗教的にも見える木の紋様が描かれており、その円の上に三つの豪奢な椅子がある。まるで木を中心として三角形を描くように。
 其の内の一つ、黒を意匠した簡素な椅子に座るのは黒薔薇領主――アネクシヤ・ノワレ。
「そうなの? |黒薔薇《あーちゃん》って凄く目と耳がイイんだね! ボクはー……目が片方しかないからなぁ」
 もう一つ、白薔薇で飾り付けた何処か幾何学的な椅子に座って足をゆらゆら揺らすのは、白薔薇領主、|C-11《シー・イレブン》。
「別に、たまたまよ。別の世界があると聴いた時から、色々と情報を収集していたの」
「ふーん? 何の為に?」
「……シーヴ。情報はね、あればあるほど時に有利になるのよ」
 黒薔薇は静かに、飲んでいた紅茶のカップをを膝のソーサーに置いて言い聞かせるように言う。しかし白薔薇は上の空、「|赤薔薇《しゃどちゃん》は?」と無邪気に話の水を其の少女に向けた。
 金色の長い髪。薔薇を各所に散りばめた真紅のドレス。真紅の瞳に、真っ赤な血液が巡る桃色の唇。これでもかと満開の赤い薔薇で玉座を飾り立てた少女は、フン、と白薔薇の言葉を鼻で笑った。
「シーヴ、アンタには判らないでしょうけどね。其処の|黒薔薇《しょうわる》が言う通り、情報っていうものは時に金よりも力を持つのよ。|黒薔薇《しょうわる》が探知していなかったら、アタシたちは見えない敵にいつまでも警戒する羽目になっていたでしょうね」
「……其れは褒めているのかしら?」
「評価してやってんのよ。この赤薔薇サマがね。で、元通り平和な世界はおいといて……アンタたち、どう思ってるの? |猟兵《アイツら》のこと。結構評価してるんでしょ、どうせ」
「どうせってなんだよー! 猟兵の人達はね、ボクの領民が増えるのを手伝ってくれたんだよ!」
「……シーヴとは違う方向性からフォローさせて貰うと、彼等の強さは折り紙付きよ。其れは貴方も“|第二席《かのじょ》”から聞いているんじゃないかしら」
 貴方の領も、猟兵によってエリクシルの攻勢を脱したでしょう。
 そう黒薔薇は言外に言っている。赤薔薇はつまらなそうに肘をつく。そうして、二人を見ると唇を上げた。
「|まぐれ《・・・》かもしれないじゃない。だからアタシね、丁度気に食わないのがいるから猟兵にお願いしてみようと思っているのよ。最近|上層《コロセウム》で暴れてるあの女……って言ってもアンタたちには判らないか」
「誰かさんが赤薔薇領には|情報統制《ジャミング》を掛けてくれてるおかげで判らないわ。……でも、貴方は基本的に|闘技場《そちら》には不干渉なんじゃなかった?」
「今回ばかりは話が別よ。どうもね、あれは元から赤薔薇の民ではなかったみたい。差し詰めパワーバランスを崩そうと入り込んだエリクシルでしょうね。だから猟兵に掃除をお願いしようと思って」
「……」
 笑いながらそう言う赤薔薇を、|白薔薇《シーヴ》はじっと見詰めていた。

 シャードリーネ・SR・ロゼローズ。

 誰よりも生命の赤が似合う、赤薔薇で|最も強い《・・・・》統治者を。



「久し振りだねえ、この手紙も」
 ヴィズ・フレアイデア(ニガヨモギ・f28146)は集まった猟兵に、既に割れてしまった封蝋を見せた。薔薇の意匠だ。
「薔薇世界ロザガルド。覚えているかな? 最初は黒薔薇領、そして赤薔薇領、白薔薇領と一通り回って貰った訳だが……今回は赤薔薇領の統治者から直接依頼が来た。えっとね、名前は……シャードリーネ。|白薔薇《シーヴ》いわく『しゃどちゃん』だね。といっても余り物騒な依頼じゃない。子どもたちに戦い方を教えてくれないか、って」
 薔薇世界ロザガルドの中でも、“力”を重視する。其れが赤薔薇領の特色である。上層である|闘技場《コロセウム》、そして下層の|退廃街《スラム》に二分されており、この二つに住まう人間たちのあり方は相互の誤解に満ちていた――とは、以前の依頼で体験したものも多いだろう。
「力を重視する赤薔薇領だからこそ、次代を担う子どもたちの育成に力を入れているようなんだ。この時ばかりは闘技場も退廃街も関係なく、赤薔薇領中の子どもが集められるらしい。そして普段は上層の民が戦っているコロセウムを使って、子どもたちに武道家たちが其の技を教えるんだって。……伝統行事みたいに言ってるけど、この試みは今回が第一回。赤薔薇領の第二席、コルネリエの提案らしいが……この際だ。お前達も戦闘訓練がてら行って来ると良い。赤薔薇領の民はエンドブレイカーでも何でもない一般人だが、其れなりに腕が立つようだ。純粋に戦闘力を上げるにはこの上ない相手だと思うよ」
 子どもたちに教えるか、赤薔薇領の民に教わるか。
 どちらかをこなしてお昼ご飯を食べた後は、模擬戦を観戦する予定になっているという。
「赤薔薇領の猛者がサドンデスマッチをするみたいだからさ、其れを子どもたちと観戦しておいで。子どもがいるから殺しはナシって話だ。……ただ、少し嫌な予感がする。少しは備えて行った方が良いかもね」
 ヴィズが指を振る。
 たちまちに白磁の扉が立ち上がり、青い薔薇が蔓を伸ばして其の枠に絡み付く。
 扉が開けば、芳醇な薔薇の香りがした。そういえば、この頃は薔薇の季節か。
「子どもたちの訓練中には来ないけど、後半の観戦には赤薔薇領主も来る予定だ。挨拶の一つくらいしておいても良いかもね」
 そう言って、ヴィズは猟兵たちを送り出す。
 真紅の薔薇が咲き乱れる、薔薇世界ロザガルド――其の赤い領へと!


key
 こんにちは、keyです。
 SRはスーパーレアのSR。

●目的
「闘技場で戦闘訓練をしよう」

●各章
 赤薔薇領の上層、|闘技場《コロセウム》での修行と戦闘になります。
 前半では子どもたちに戦闘技術を教えたり、赤薔薇領の猛者と戦闘訓練をする事が出来ます。
 後半では赤薔薇領の猛者たちがぶつかり合う模擬戦を子どもたちと観戦することになるのですが……?

●プレイング受付
 受付、〆切はタグ・マスターページにて適宜お知らせ致します。

●注意事項(宜しければマスターページも併せてご覧下さい)
 迷子防止のため、同行者様がいればその方のお名前(ID)、或いは合言葉を添えて下さい。
 また、アドリブが多くなる傾向になります。
 知らない人と共闘する事なども在り得ますので、ソロ希望の方はプレイング冒頭に「🌼」を添えて頂けると助かります。

●ロザガルドってなに?
 赤・黒・白、三色の薔薇領からなるエンドブレイカー世界の小世界国家です。
 中央には巨大な木が聳え立っています。
 これまでのシナリオはこちら。
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=45812
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=46059
 https://tw6.jp/scenario/show?scenario_id=47422


 此処まで読んで下さりありがとうございました。
 皆様のプレイングをお待ちしております。
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第1章 日常 『功夫孩児(カンフーキッズ)!』

POW   :    体術を教えてあげる!

SPD   :    武器の使い方を教えてあげる!

WIZ   :    仙術の神秘を見せてあげる!

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🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​🔵​

種別『日常』のルール
「POW・SPD・WIZ」の能力値別に書かれた「この章でできる行動の例」を参考にしつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



 エンドブレイカーの小世界、薔薇世界ロザガルド。
 其の内の一つ、赤薔薇領――上層|闘技場《コロセウム》にて。
「しっかしよお、ラゼル」
「どうした、ヴァイジャン」
 屈強な戦士たちが、邪魔にならないように物々しい武器を仕舞いこみ、愛らしい柔らかい素材で出来た剣や鈍器を用意する。
 元々戦う為の場所だ、このコロセウムには何もないのだが、其処に飾りつけをする筋骨隆々の大男という図はなかなかにシュールだ。
「コルネリエ様の一声――って訳じゃねえ気がするんだよな、これ」
「児童を招いての武力学習か。どうした、またお得意の勘か?」
 大男が振り返った先には、エルフ耳の痩せた男がいる。男は子どもたちに配る予定の模擬武器をチェックしていた。こいつはでかい魔術を軽々と撃つくせに、実は細々とした作業が好きだというのだから、人は勝負になると性格が変わるというものだ。
「勘だけどよ。これまでの赤薔薇――シャードリーネ様はコルネリエ様の一言|ごとき《・・・》で動く方じゃなかったろ。この前エリクシルが来た時にも自分は降りて来ずに、コルネリエ様に一任してたし」
「さあな……其処は私には何ともいえないところだ。或いはコルネリエ様と赤薔薇様との関係性が変わったのかもしれないし、こうして数度トラブルを解決してくれた猟兵たちに対する赤薔薇様の思いが変わったのかもしれない」
「其処だよ。確実に赤薔薇様は猟兵に対して|何か考えてる《・・・・・・》。其れが善意か悪意かは判ンねぇけどよぉ、……突然降りて来て『アンタ達死刑よ!』って言ってもおかしくねぇお方だからさ」
「手が止まってるぞ、ヴァイジャン。子どもたちが来るまであと僅かだ。――まあ、其の印象には不本意ながら私も同意する。あの方は何を考えているのか判らないところがある。そもそもこの赤薔薇領の作りに関しても私には理解出来ないからな」
「|上層《コロセウム》と|下層《スラム》、か……確かにな。最初から一つの領だったなら、きっと前の騒ぎの時にスラムの奴が神とやらに惑わされる事も……」


「「「「こんにちはーっ!」」」」


 ヴァイジャンが僅かに呟いていた言葉は、元気の良い幼い声にかき消された。
 小綺麗にした子ども、貧しそうな子ども。やせ細った子どもに、眼鏡をした子ども、様々な子どもが……十数人だろうか。いずれもキラキラと輝く瞳を隠さずにコロセウムの闘士を見ている。
「こんにちは、今回は宜しくお願い致します。私、引率のクラリネと申します」
 眼鏡をかけた、如何にも教育係といった女性が前に出て、しゃなりと頭を下げる。ラゼフは模擬武器をしまい、ヴァイジャンは最後の飾りつけを終え――闘士たちもまた子どもたちの前に集まる。
「ようこそ、ミス・クラリネ。そして子どもたち。我々は赤い薔薇の名のもとに、いずれ共に戦う闘士を歓迎しよう」
「おう! 俺様はヴァイジャン! 宜しくな!」
「わー! よろしくねおじさん! おじさんきんにくすごーい!」
「おじ……」
 ひっそりと傷付くヴァイジャン。其処に別の闘士が猟兵が来た、と知らせにやって来る。
 さあ、今は互いの闘志は少しばかり忘れよう。子どもたちの為に戦う術を教える時間だ。
 
シモーヌ・イルネージュ
赤薔薇の世界か。久しぶりだな。
前来たときはギスギスしたところだったけど、少しは良くなったのかね?

今日は戦闘訓練だということだから、手伝いに来たよ。
子供達に槍の使い方を教えてあげよう。

アタシだって初めから槍を使いこなしていたわけじゃない。
ちょうど今の子供たちぐらいの年から初めたから、今から鍛錬すれば十分に使えるようになるはずさ。
まずは子供たちに槍を触ってもらって、適当に回したり、打ち合ったりして、手に馴染ませよう。
槍の動きの見本も見せれば、子供たちもそれを目標にしてくれるかもしれない。
こういう機会はあまり無いから新鮮だね。




「赤薔薇の世界。久し振りだな」
 シモーヌ・イルネージュ(月影の戦士・f38176)は嘗て、|上層《コロセウム》と|下層《スラム》の誤解とエリクシルによる騒動を鎮めた事がある。とはいえ騒ぎは下層で起きたので、こうして上層に招かれるのは初めてだ。
 一見普通の闘技場に見える。が、外の様子を伺う事は出来ない。どのような街並みをしているのかは判らない。
「まあいいか。よし、じゃあ槍を使ってみたい子はこっちにおいで!」
「やり! わーい!」
「やりってあれでしょ、長くて、先っちょがトゲトゲしてて」
「そうそう、其の槍さ。アタシもね、アンタたちくらいの歳から槍を使い始めたんだよ。だからいまから鍛錬すれば、十分に使えるようになるはずさ。ほら、まずは触ってみな」
 猛者の一人が気を利かせて、穂先をつぶした槍を持ってくる。子どもたちはえっちらおっちらとそれを持つと、重いとか言いながらぶんぶんと振ったりしている。
「そうそう。あとはこうやって回してみな。仲良しの子がいたら打ち合っても良い。穂先にだけは気を付けてな」
「はーい!」
 子どもたちは至って素直にシモーヌの言った通り、槍を回したり知り合いと槍の柄を打ち合せ始めた。其の中に一際真剣に、槍を持つ子どもがいるのをシモーヌは見付ける。
「よう」
「!」
「随分と熱心だね。知り合いに槍つかいでもいるのかい?」
 黒髪の其の子どもは、言うべきか言うまいか、ともじもじしたあと……小さく「とうさんが」と呟いた。
「とうさんは、むかし槍を使ってたって。誰にも負けなかったんだって」
「へえ。じゃあ其の父親に憧れて、アンタも槍を使いたいってわけか」
「……うん。お姉さん、ぼく、とうさんみたいになりたい。槍の使い方、おしえてください」
 ぺこ、と頭を下げる子ども。其の願いを無碍にするほど、シモーヌは冷徹ではない。
 そっと手を伸ばすと、子どもの黒髪をわしゃわしゃと撫でて。
「いいよ。でもアンタを特別扱いはしない。皆で訓練する中で、アンタが頑張るんだ。良いね?」
「――うん!」
「よし。ほら皆、こっち向いてごらん。アタシが槍を振るから、其の真似をするんだ。出来るか?」
 出来るもん、と意地を張る子どもは少なくない。子どもとは言え、強さがものをいう赤薔薇領らしい気性と言えるだろう。
 これは将来が楽しみだとシモーヌは笑い、しかし悪戯心を抑える事もせず、敢えて最初は難しい動きを繰り出して、子どもたちを惑わすのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

アンゼリカ・レンブラント
薔薇世界ロザガルドを訪れるのは初めてだが、
それだけに良い想い出を作りたいね

子どもたちの為に戦う術をとのことだった
剣を振るうのも良いが、今日は体術を教えよう

まずは
遠慮はいらないからお姉さんに拳でも蹴りでも
いや、武器を使っていいから打ちかかっておいで

回避もせず鍛え上げた己の肉体で攻撃を全て受け止めるよ
《クラッシュ成功!》の用意もあるがそれも必要ないかな

鍛え上げた肉体は、ここまで強くなれる
そしてただ闇雲に鍛えてもこうはならない
理想の自分をイメージし、
いつしかそのようになれると心に強く持つんだ

それじゃあ心構えはここまで
功夫の技の訓練に入ろうか
傷めない拳の握り方、重心の乗せ方など
子どもに優し教えていくよ




「ここが薔薇世界、ロザガルドか」

 薔薇の香りがする。
 アンゼリカ・レンブラント(黄金戦姫・f38980)は噎せ返るような香りを感じながら、初めてなら良い思い出を作りたいと子どもたちのもとへ向かう。

 子どもたちに戦う術を教える。
 其れは剣術でも槍術でも何でも良いのだが――アンゼリカは敢えて、体術を教える事を選んだ。

「よし、じゃあまずは――遠慮はいらないから、お姉さんに拳でも蹴りでも。いや、武器を使ってもいいから打ちかかっておいで」
「えー、でもお姉さん武器持ってないよ? 良いの?」
「大丈夫、お姉さんはとても強いからな。遠慮なく来て構わない」

 じゃあ、と数人の子どもたちは武器を取りに行く。数人の子どもたちは素手で挑むつもりのようだ。

「じゃ、じゃあ行くよ、お姉さん! えーいっ……!!」

 恐らくまともに殴り合った事もないのだろう。そんな子どもがててて、とアンゼリカの近くまで来ると、渾身の力を込めて殴りつけて来た。
 しかし、アンゼリカの身体は揺らぎもしない。

「……あ、あれ?」
「バッカだなあ。素手じゃ勝てる訳ないだろ? この棒ならどうだ、お姉さん!」

 素手で挑んできた子をアンゼリカはそっと横に逸らし、今度は武器で挑んできた子どもの一撃を受ける。
 子ども用とは言え武器は武器。其れなりの強度はあるはずなのだが、矢張りアンゼリカはびくともしない。
 其の後も子どもが次々とアンゼリカに挑んでみたが、まったくびくともしないのである。子どもたちの中には、支えがあるんじゃないかとアンゼリカの背後を確認する子までいる始末。

「はは、お姉さんはズルはしないよ。いいかい、鍛え上げた肉体というものは、此処まで強くなれるんだ。でも、ただ闇雲に鍛えても強くはなれない。理想の自分をイメージして、いつしかそのようになれると心に強く持つんだ」
「理想の自分?」
「そうだ。例えばどんな攻撃を受けても倒れない自分だとか……どんな防御も貫ける自分だとか……色々あるだろう? 皆はどんな自分になりたい?」
「……僕、皆を護れるような自分になりたい! えっと、つまり、どんな攻撃も防いでみせる自分!」
「じゃあ俺はどんな防御も貫く自分!」

 子どもたちが次々と声を上げる。
 うん、と一つ一つの言葉にアンゼリカは頷いて。

「じゃあ其れを心構えとして、功夫の技の訓練をしよう。守りも攻撃も、基礎は同じだ。今日は少しでも覚えて帰ろう」

 そうしてアンゼリカは、少し勇ましい顔になった子どもたちに基礎の基礎を教えていく。
 傷めない拳の握り方。踏み込みの際の重心の乗せ方。子どもたちは真剣に、なりたい自分のためにアンゼリカの教えを飲み込んでいくのだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

インディゴ・クロワッサン
きゃっほーい!
ロザガルドだー!
最近、手加減無しでしか戦ってないし、可能な限り抑えた状態で戦いたいねー

な・の・で!
僕は|Pisces《愛用の鎖付き短剣》で、赤薔薇の領民さん達と訓練だー!
基本はnot本気でいきまーす!よろしくー!(礼儀作法
「だって、手加減無しだと胴体から真っ二つとかザラだし…」
武器無しで怪力と限界突破だけで戦っても楽に引き裂けちゃうからねぇ…

えーと、とりあえずはナイフ投げと投擲を併用して、短剣2本が時間差で別の方向から襲ってくる感じにロープワークで鎖を操って…
それを嫌って接近されたら、鎖の部分で武器受けした後に咄嗟の一撃で短剣を引き戻して、死角から2回攻撃!
後は、的確に攻撃を見切りながら、フェイントも織り混ぜたカウンターで地道に反撃してくよー!
「うー…|Vergessen《愛用の黒剣》で戦いたーい…」
でも、たまには力押しに頼らない技量の腕前も磨かないとね!
あ、UCは吹っ飛んできた領民さんや子供達のクッションにするつもりで先に|喚んで《召喚して》おくよー




「わーーーーい! ひっさしぶりのロザガルドだー! 相変わらず薔薇の匂いすっごいね!」
「お! 懐かしい顔が来たな」

 筋骨隆々とした男――彼の名はヴァイジャンである――が腕組みをして、インディゴ・クロワッサン(藍染め三日月・f07157)を出迎える。以前は世話になったな、と律儀に言う彼に、大丈夫だよとインディゴは笑顔で返して。

「此処では子どもたちの訓練だけじゃなくて、領民さんと訓練出来るって聞いたけどホント?」
「おう、ホントだぜ! 子どもたちだけじゃなくて、俺たちの戦力増強も目的の一つだからな、ほら、あっちでは自主的に打ちあいしてるだろ」

 ヴァイジャンが示した先では、赤薔薇の闘士だろう男二人が棒で打ちあっているのが見えた。
 ほうほう、とインディゴは頷き、瞳を輝かせる。

「僕もやりたい!!」
「お、良いねえ。じゃあ俺が相手で良いか? アンタも刃付きの得物を使っていいからよ、俺もこいつを使わせて貰うぜ」
「やったー! じゃあ僕はこれを使うね!」

 インディゴが取り出したのは愛用の短剣。銘は“Pisces”。鎖で繋がれた二本の短剣、という見目をしている。
 対してヴァイジャンが取り出したのは巨大なアックスだ。力技を得意としそうな彼らしい得物。

「よし――じゃあ、行くぜ!!」
「よっしゃこーい!」

 手加減はしてあげるからね! とは心の中。猟兵のインディゴは、その気になれば其の怪力だけで人間一人くらいは引き裂けてしまうし、|愛用の剣《Vergessen》を用いれば上半身と下半身を斬り分けることだって出来てしまう。しかし其れでは訓練にならないので、敢えて技術を磨くためにPiscesを用いている。

 インディゴはまずPiscesの短剣を二本とも投擲する。ヴァイジャンは一歩、二歩踏み込んで、其のナイフをアックスにぶつけて上空へとカチ上げた。
 其のまま一気にヴァイジャンは加速すると、アックスの刃がインディゴを狙う。ぎりぎりまで引き付けて、インディゴはアックスの軌道から後ろに外れつつ鎖を引く。Piscesの鎖は伸縮自在。ヴァイジャンの背後から短剣が襲い掛かる!

「成る程な……! 良い武器じゃねえか!」

 其処で敢えてインディゴから短剣へ視線を移したのは、ひとえにヴァイジャンの胆力がなせる業といっても良いだろう。
 アックスを振り抜いた其の軌道で、迫りくるPiscesを弾く。短剣たちは緩く弧を描いて、インディゴの手元に戻って来た。

「でしょー! 僕の自慢の武器だよ!」
「おう! だけどよ、俺の武器だって負けてねえぜ! ……おん? そういやあ、お前、確か剣を使ってなかったか?」
「ん? Vergessenの事? うん、僕の愛用の剣だよ! でも……力押しに頼らない技量だって大事でしょ?」
「――へっへ。へへ! 良い心がけじゃねえか! 良いぜ、お前さんが飽きるまでとことん付き合ってやらあ!」

 そうしてインディゴとヴァイジャンは、何度も打ちあいを続けるのだった。
 ちなみに各所に突如現れた薔薇のクッションは、インディゴが吹き飛ばされた人用にと召喚したものである。あ、さっき棒で打ちあっていた男の片方が吹き飛んで、クッションに埋まった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
教わる、なんてお上品な事は考えちゃいない。
サドンデス観戦前に赤薔薇の猛者を相手に俺と|一曲《ケンカでも》どうだ?
四の五の言わずとも剣を交えれば分かる事ってのもあるだろ?
手取り足取り丁寧に教えて貰うより、こっちの方が俺向きなのさ。

相手は誰でも良い。
この場に居る連中の誰が強いのかも俺は知らない。
闘技場の流儀に則って――赤薔薇の実力ってのを教えてくれ。

【怪力】を持って魔剣を振るい、相手の武器の挙動を【見切り】躱し。
銃もUCも使用せず。祭り気分さ。じゃれ合ってるだけだと思ってくれて良い。
俺の剣と相手の武器との比べ合い。勿論、殺し合いに発展させる気はないし、万一の場合は寸止めで剣を止めるぜ。
負けた場合は適当に両手を挙げて降参の意でも示そうか。

流石は赤薔薇領。
日々、ケンカに明け暮れるってのは伊達じゃあない。
只の人間で俺とこうも打ち合えるなんざ、記憶の限りじゃ初めての経験だ。
あぁ、それと。万一、女性が相手の場合は怪我や傷の一つなど残さないように気に掛けるぜ。
それで隙を突かれて負けても、一切気にしないね




「俺は“教わる”なんてお上品な事は考えちゃいなくてな」

 背中に携えた魔剣を片手に持ちながら、|闘技場《コロセウム》の闘士たちにカイム・クローバー(UDCの便利屋・f08018)は語り掛ける。

「サドンデス観戦前に、俺と|一曲《ケンカでも》どうだ? 四の五の言わずとも、剣を交えれば判る――そういうものだってあるだろ」
「へえ。猟兵ってのは基本的に“助ける”ために世界に介入するって話だけど」
「案外好戦的な人もいるのね? ボクたち好きよ、そういう人」

 前に出てきたのは双子の少年少女だった。同じおかっぱ髪に、くりくりとした丸い瞳。ただ、片手にはまるで鋏を分解して片方ずつ武器として仕上げたようなものを持っている。

「俺たちは二人で一人の闘士。俺はカストラ」
「ボクはポルシア。お兄さんの剣、ボクたちがハサミ斬ってあげる」
「へえ。あんた達も猛者の一人なのか。教わる側にしては目がギラついてると思った」
「赤薔薇様は、強さに年齢を問わない」
「だから、強ければボク達が赤ん坊だったって、|闘技場《コロセウム》に招き入れて貰えるのさ」
「成る程な。じゃあ其の|闘技場《コロセウム》の流儀に則って――赤薔薇の実力ってのを教えてくれ」

 ――ひょう、と鋭い刃が風を切る音がする。
 敢えて今回、カイムは銃を使わないと決めていた。同じように、ユーベルコードも使わない。だってこれは、赤薔薇なりの|祭り《・・》だからだ。
 仰け反ってカストラの刃が前髪を掠めていくのを見届けると、降ろしていた腕を一気に振り上げ、掬い上げるようなポルシアの刃を跳ね上げ、軌道をずらす。

「あはは! お兄さんすごいね、多対一に慣れてる動きだ!」
「むー。ボクたち、連携で相手を攪乱するのが得意なのに。お兄さん、ずっと落ち着いてる」
「お褒めの言葉をどうも。戦場では平常心――といいたいところだが、これでも結構テンションが上がってるんだぜ? 俺も剣には自信があるもんでな、此処まで打ち合える奴には初めて会ったかも知れねぇ」

 実際、初めてなのではないかと思う。
 日々喧嘩に明け暮れているというのは伊達ではないという事だろう。猟兵であるカイムの動きに、エンドブレイカーでもない二人は見事についてきている。
 寧ろ二人である事を利用して、カイムを攪乱させようとフェイントを織り交ぜて来ている。

 ポルシアの剣戟が続く。
 確かこっちが女性だったか、とカイムは頭の隅で考えつつ其の剣を捌いていく。ポルシアの太刀には一切迷いがない。其れは恐らく、|もう一人《カストラ》も同じだが――違うのは、ややこちらの方が無謀だという事だ。
 剣と剣が噛み合って、其の隙をカストラが狙って切りかかる。

「おっと」
「きゃあ!?」

 カイムは其の瞬間、|剣を手放した《・・・・・・》。バランスを崩したポルシアの手首を掴んで引き寄せ、カストラの方を向く。
 カストラは直ぐに片割れが囚われた事に気付き、剣が二人に当たらぬように刃を背に隠して着地する。

「こらー! 離せー! カストラ、助けてぇー!」
「はは、そういう所はまだ子どもらしいな。ほら」

 強く掴んで悪かったな。
 カイムはポルシアを解放する。ポルシアはすぐさまカストラへと駆け寄り、其の背中に隠れる。

「――成る程。これ以上は遊びじゃなくなるかも知れないってお兄さんは思ったんだね」
「さて、どうだかな。其の辺りは闘士のあんた達の方が、膚で覚えてるんじゃないか?」
「……ぅー……確かに、これ以上打ち合ってたら殺す気になってたかも」
「大丈夫? ポルシア」
「うん、ボクは大丈夫だよ、カストラ。……お兄さん、名前は?」
「名前?」
「うん。俺も聞きたい。お兄さんの名前、教えてくれないかな」
「……俺はカイム。カイム・クローバー」

 落とした魔剣を拾い上げ、肩に担ぎながらカイムは言う。

「猟兵でもあるが、……ただの便利屋さ」

大成功 🔵​🔵​🔵​




第2章 ボス戦 『『恋病み』エデンローズ』

POW   :    『これで私たち、ずっと一緒にいられるのね』
【恋の虜にする薔薇の荊 】で敵の肉片を捕食する。自身の身体部位ひとつが変異し、敵のユーベルコードひとつを使用可能になる。
SPD   :    『だってあなたも私に恋しているでしょう?』
対象に【己が最も恋しい者 】の幻影を纏わせる。対象を見て【愛情や恋情、慈しみ】を感じた者は、克服するまでユーベルコード使用不可。
WIZ   :    『私があなたの悲しみを消し去ってあげるわ』
異空間「【対峙する者の最も辛い記憶が刻まれた一瞬 】」に通じる不可視の【薔薇のアーチ】を3つ作成する。自分のみ入場可能で、内部では時間が経過しない。

イラスト:toumin

👑11
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種別『ボス戦』のルール
 記載された敵が「1体」出現します。多くの場合、敵は、あなたが行動に使用したのと「同じ能力値」の戦闘方法で反撃してきます。
 それらを踏まえつつ、300文字以内の「プレイング」を作成してください。料金は★0.5個で、プレイングが採用されなかったら全額返金されます。
 プレイングが採用されたら、その結果は400文字程度のリプレイと「成功度」で表現されます。成功度は結果に応じて変化します。

 大成功🔵🔵🔵
 成功🔵🔵🔴
 苦戦🔵🔴🔴
 失敗🔴🔴🔴
 大失敗[評価なし]

👑の数だけ🔵をゲットしたら、次章に進めます。
 ただし、先に👑の数だけ🔴をゲットしてしまったら、残念ながらシナリオはこの章で「強制終了」です。

※このボスの宿敵主は💠エルシェ・ノンです。ボスは殺してもシナリオ終了後に蘇る可能性がありますが、宿敵主がボス戦に参加したかつシナリオが成功すると、とどめを刺す事ができます。
※自分とお友達で、それぞれ「お互いに協力する」みたいな事をプレイングに書いておくと、全員まとめてひとつのリプレイにして貰える場合があります。



「どうもありがとうございました」
「「「ありがとーございました!!」」」

 夕暮れ時。
 一通り戦闘訓練は終了し、引率のクラリネが子どもたちの数と傷を確認し、闘士と猟兵に頭を下げる。金髪にモノクルの、まさに理知的な女性という印象だ。

「ではこの後は、皆さんの雄姿を拝見するという事で」
「ええ、宜しくお願いします」
「子どもたちが見てるからな! 殺しはナシって方向で一致してんだ、安心して見てくれてて良いぜ!」
「ありがとうございます。さ、皆さん。では観客席にあがりましょうか」
「はーい!」
「お兄さん、お姉さん、頑張ってねー!!」
「ああ。――猟兵の皆さんも、宜しければ私たちの戦いを見て行って頂きたく。赤薔薇でどういう日常が行われているのかを確認して欲しい」

 エルフ耳の男性がそう言うので、猟兵たちもまた、子どもたちとクラリネに続いて観客席にあがる。
 どうやら此処からは殺しはなしのサドンデスマッチ――降参したものから闘技場を去っていく戦いが繰り広げられるようだ。
 闘士たちは各々の得意武器を持つ。子どもたちに教える時に用いたものと同じ、刃を潰し軽量化した武器だ。
 審判だろう男性が闘技場へと姿を現す。闘士たちはそれぞれ得意な間合いを取る、ヴァイジャンは比較的全員と近い距離。ポルシアとカストラは少し離れた場所。

「其れでは……始め!」

 其の瞬間だった。
 屈強な闘士――ヴァイジャンの胸元から血飛沫が散ったのは。

「ヴァイジャン!?」
「……な、に」

「――ふふっ。良いわよね。強い男性……私、好きよ。ああ、でも貴方はちょっと屈強過ぎて私好みではないかもしれないわ」

 桃色の服を纏った少女の手首から、荊が複数伸びていた。其の荊がヴァイジャンの胸を貫いたのである。赤い血液滴る荊をしゅるりと操りながら、桃色の少女は蠱惑的に笑った。
 ヴァイジャンはどさり、と前のめりに倒れる。じわり、と大地に広がり砂に沁みていく血の赤色に、きゃあ、と観客席の子どもたちが悲鳴を上げた。

「ヴァイジャン!!」
「ああ、駄目よ。近付いては駄目」

 駆け寄ろうとした闘士を、少女が手首から放った荊が掠める。まるで檻のように荊を織り上げて、重傷のヴァイジャンを囲い込んでしまった。

「みんな、伏せて! 見ては駄目! ああ、なんて事……!」

 クラリネは子どもたちが見ぬように指示を出しながらも、戦闘員ではないゆえに手出しが出来ない。
 おろおろと周囲を見回していると……薔薇の香りが一段と濃くなった。

「猟兵。今回のアンタたちの獲物はアレよ」

 少女の声が割り込む。
 猟兵とクラリネが振り返ると、其処には長い金髪に真っ赤な薔薇のドレスを纏った少女がいた。赤い薔薇を飾ったボンネットを優雅に被り、真紅の瞳はしん、と静かな湖面のよう。

「――あ、赤薔薇様!!?」

 驚いたようにクラリネが声を上げ、はっとして平伏する。

「クラリネ、構わないわ。アンタは子どもたちの保護を優先して。――エリクシルだかマスカレイドだか知らないけど、数か月前からアレは|闘技場《コロセウム》に入り込んでいたの。……アタシはアンタ達の実力をまだ認めた訳じゃない。だから丁度良い機会よね。見せて頂戴、アンタ達は強いんだって証拠を」

 そうしたらヴァイジャンを助けてあげる。大丈夫よ、あのデカブツだもの、数時間放っておいても死なないわ。
 “赤薔薇”を名乗った少女は、言うと美しく、薔薇が咲くように笑った。
マチルダ・バレンタイン(サポート)
ケルブレ世界から来たヴァルキュリアの鎧装騎兵
普段着がメイド服
外見から想像出来ないが大食い
戦闘前に余裕が有れば事前に【情報収集】をする
戦闘時はバスターグレイブと23式複合兵装ユニットの【エネルギー弾、誘導弾】の【一斉発射、砲撃】で攻撃。接近戦になったらゲシュタルトグレイブの【なぎ払い】で攻撃
敵の攻撃は【ジャストガード】で受けるか回避する。

 ユーベルコードは指定した物をどれでも使用し、多少の怪我は厭わず積極的に行動します。他の猟兵に迷惑をかける行為はしません。また、例え依頼の成功のためでも、公序良俗に反する行動はしません。
 あとはおまかせ。よろしくおねがいします!




「“闘技場”ですか。なんとなく心惹かれる響きですね」
 マチルダ・バレンタイン(ヴァルキュリアの鎧装騎兵・f40886)は言いながら、観客席から飛び降りてエデンローズに向かい合う。
「怪我人を解放してください!」
「嫌よ」
 にべもなく言われる。どうして、とあくまで臨戦体勢を崩さないままマチルダが沈黙で問うと、だって、とエデンローズは娘のように唇に指を添え、ぴょんと一歩跳ぶ。
「解放したらみんな、そっちに夢中になってしまうじゃない。其の隙に赤薔薇の首を取るのも面白そうだけど、其れってなんだかスマートじゃないわ。貴方もそう思うでしょう?」
 二歩。そして三歩……飛ぼうとしたところで、ゲシュタルトグレイブを手にしたマチルダが立ちふさがる。
 払うように腕から伸ばした荊でゲシュタルトグレイブの刃を受けるエデンローズ。
「あら、……|気付いていた《●●●●●●》の?」
「私の悲しみは私のものです。あなたに勝手に触れられるのは……嫌です!」
「そう。折角悲しみを消し去れる良い機会だと思うのに」
 じゃらららっ、と鉄の蛇が絡み合うような音を立てて、荊がゲシュタルトグレイブを払う。後ろへ悠々と跳ぶエデンローズをマチルダは光の翼で負う。其の翼から放たれる粒子は“二ーベルング粒子”と呼ばれる。即ち、癒しの力である。
「……そう言った割には、嫌な事をするのね」
「傷付いた人がいれば癒し、傷付けた人がいれば戦う。私はそういうものです。私はそのためにいます!」
 マチルダは飛翔する。
 幾何学模様を描いて予測不能な軌道を飛び、一気にエデンローズへと肉薄する!
「……ッ!!」
 其れを防ぐ術を、エデンローズは持たない。超高速の薙ぎの一撃を、荊で己の前面を覆っていなそうとしたが、|荊ごと《●●●》身体の前面を薙がれた。真っ赤な血が飛び散って、エデンローズはぎり、と歯噛みをした。

成功 🔵​🔵​🔴​

インディゴ・クロワッサン
うひょー!赤薔薇様ってば想像より遥かに気高くて強そ~♪
「|ご指名《オーダー》も入った事だし、頑張りますか!」
気合いを入れて一対二翼を生やしたら、突撃だー!

…何この幻影?邪魔だしウザいんだけどー!
「だってキミ、僕にとってただのご飯だもん」
Piscesをぶん回して邪魔な幻影を霧散させて
僕の|手番《ターン》になったら、Piscesはさっさと投擲!
ロープワークも駆使して巻き付かせて、身動きに制限かけちゃおー
「ふふふ、技量を見せつけると思ったぁ?
僕、本来は力でゴリ押す方が得意なんだよねー☆」
と言う訳で、UC:絶える事無き血の渇望 を発動ー!
素早~く背後に回り込んだら、怪力で押さえ付けて…
「頂きま~す☆」




「わ~、赤薔薇様ってば想像より遥かに気高くて強そ~!」
 インディゴは興奮していた。赤薔薇――シャードリーネは金色の髪をかきあげて、悪くなさそうにふふん、と笑う。
「そうよ、アタシは気高くて強い赤い薔薇。アタシに見せてみなさいよ、アンタの強さを」
「おっけー! よーし、|ご指名《オーダー》も入った事だし、頑張りますか!」
 インディゴの背に、ばさり、と一対の翼が生える。そのままインディゴは一気に|闘技場《コロセウム》へと飛び込んだ。
「あら、無粋な人。他の闘士が頑張るのを応援するとかあるでしょうに」
 桃色の薔薇――エデンローズが口元に手を添えながら笑う。そうして己に、インディゴが最も恋しいと思う者の幻影を――
「……何? この幻影」
「……は?」
「邪魔だしウザいんだけどー!」
「……な、どういう事……? あなた、愛という感情を知らないの?」
「そんなの知らないよ。だってキミ、僕にとってただのご飯だもん」
 インディゴが取り出したのは|鎖付きの短剣《Pisces》。伸縮自在の鎖を勢いづけて投げ、エデンローズの身体に巻き付ける。
「……恋を知らないなんて! 人生を損しているわよ、貴方!」
「知らないよ。……実は僕、本来は力でゴリ押す方が得意なんだよねー☆」

 ああ、喉が渇く。

 其れは常闇に住まう|吸血鬼《ヴァンパイア》が如く。血が欲しい、いのちが欲しい。素早くエデンローズの後ろに回り込んだインディゴは、口を大きく開けて――
「いっただきまーす☆」
 がぶり、とエデンローズの白い首筋に噛み付いた。
「ッ、な……!? やめ……この!」
 よもやそのような真似に出るとは思わなかったのだろう。エデンローズは必死に身を捩ると、首筋の肉を僅かに持っていかれながらインディゴから逃れる。
「貴方、……愛も知らない、吸血の真似事……一体何者なの!」
「ん~? 僕はただの猟兵だよ☆ ま、人生には色々あったけどね!」

「……へぇ」
 赤薔薇は其の様を見て、口端を上げた。
 インディゴの悪性に興味を持ったようだった。

大成功 🔵​🔵​🔵​

シモーヌ・イルネージュ
エリクシルも赤薔薇も皆して、アタシらをテストかい?
信用無いんだね。
猟兵を品定めしようなんて、後悔させてやるよ。

黒槍『新月極光』で戦おう。
荊が来たら、あえて受けよう。
人のUCなんてものは案外使いにくいもの。
むしろ【怪力】で掴んで、こちらに引き寄せてやる!

荊は1本とは限らない。
他のはUC【神燕武槍】を発動して、弾きつつ、エリクシルに槍を叩き込んでいこう。

子供たちに槍を教えた手前、無様な戦いはできないな。
きっちり決めていきたいね。




「エリクシルも赤薔薇も皆して、アタシらをテストかい? 信用ないんだねぇ」
「まぁ。私と赤薔薇様を一緒にしてしまったら、貴方、首を刎ねられるかもしれないわよ?」
 恋する少女のように、エデンローズはシモーヌの言葉にくすくす笑う。
 シモーヌもまた口端を上げる。首を刎ねる? やれるものならやってみろ。
「猟兵を品定めしようなんて、後悔させてやるよ」
「恋に後悔は付き物よ。――ああ、勇ましい貴方。貴方も恋をした事はあるのかしら」
 エデンローズが真っ直ぐ腕を伸ばす。真っ黒な荊が波打ってシモーヌへと迫り――肩に突き立つ。
「槍のおねえちゃん!!」
 子どもたちが叫ぶ。
 だがシモーヌはこれこそ作戦通りだと、笑ってみせた。
「人のユーベルコードってのは、案外使いにくいものなのさ。……其れとアンタ……|闘技場《コロセウム》に来たのは最近かい? 戦い慣れてないのが、見え見え、だよッ!!」
 シモーヌが荊を掴み、思い切り引く。エデンローズはいとも簡単に引っ張られ、シモーヌへと飛び込み……シモーヌの黒槍『新月極光』の柄がエデンローズの腹部へと思い切り叩き込まれた。
「んぐっ……!?」
「其れとも、|闘技場《コロセウム》のやつらがお行儀良い戦いしかしなかったとか? ま、そんな事はないだろうけどね」
 闘士たちはシモーヌ達猟兵が戦っている間に、ヴァイジャンを包み込む荊をどうにかできないかと悪戦苦闘している。
 誰もが戦っている。そして、槍を教えた子どもたちが見ているのだ。無様な戦いは出来はしない。
 突き刺さっていた荊を抜き、放り投げるようにエデンローズを解放する。エデンローズは腹部を押さえ、しかし獰猛に笑った。
「嗚呼、私、貴方に恋をしそう……素敵な方……! 戦いましょう! 互いの血潮で互いが濡れるまで!」
 エデンローズが黒い影に覆われていく。魔法で伸ばした影はエデンローズの桃色をすっかり黒色に染め上げて、其の影から散弾が放たれる。
「(影朧隠爪……!)」
 シモーヌのユーベルコードを食ったというのは真実であるらしい。だがシモーヌとて負けてはいない。奪った借り物を我が物面して使うような女に惚れられるのも、負けるのも御免だ。
 槍の柄で散弾を丁寧に弾いていく。一、二、三。そうして其れを|柄による《●●●●》神速の突きで弾き飛ばし、エデンローズへとお返しする。
 エデンローズの身体が二、三度揺れる。
「うふ、うふふふふふ……! とても素敵だわ貴方……!」
「そうかい。出来ればそのまま、いい気分で斃されて欲しいもんだ」

「……」
 赤薔薇は真剣に、腕組みをしてシモーヌの槍技を見ていた。
「成る程。技量で逆境を跳ね返す。黒薔薇の評価はあながち間違っていないわね」

大成功 🔵​🔵​🔵​

カイム・クローバー
赤薔薇サマ直々に依頼されたんじゃあ、断るって選択肢は無さそうだ。
不敬者として縛り首になるのは御免でね。

闘技場に降りる。
ご丁寧に入り口から、なんて真似はしない。観客席からの飛び込みさ。
適当に歩いて闘技場の真ん中。ぐるりと見渡して。
今日の視線は寂しいが、普段はこの闘技場が客一杯で埋まるとなると――なかなか悪くない。
アンタももう少し、人が居るタイミングを狙えば良いのに。
これだけの人数しか居ない状況で骸の海に還されるのはちょいと寂しいだろ?なんて【挑発】。

屈強過ぎて好みじゃない割には大事そうだな。
アレか?アンタ、素直じゃないタイプ?
笑いながら、隙を晒す【パフォーマンス】。
荊を誘って、触れる直前にUC、魔剣の炎で【焼却】。
――悪いが、ずっと一緒ってのは無理だ。ヴァイジャンを囲う檻の荊も何もかもを黒銀の炎で包み込んで。
大きく踏み込んで彼女の胸を魔剣で【串刺し】。黒銀の炎が闘技場を覆う間、彼女が骸の海に還るまではお姫様抱っこで寂しさを紛らわせて。
大勢の観客じゃなく、見送るのが俺一人で悪いがな、なんて。




「赤薔薇サマ直々に依頼されたんじゃあ、断るって選択肢はなさそうだ」
 胸に手を当て、仰々しいお辞儀をしながらカイムは笑う。
「不敬者として縛り首になるのは御免でね」
「あら、アタシがそんなに狭量に見える? 黒薔薇、白薔薇からアンタ達の武勇伝は聞いてるわ。だからこそね、アタシは自分の目で確かめたいの。アタシの可愛い子たちよりも強いのか。アタシ達の敵よりも強いのか。……見せてくれるわよね?」
「イエス、マイ・レディ」
 カイムは闘技場に飛び降りる。観客席から飛び込んで、ヴァイジャンを、エデンローズをすり抜けて真ん中に立つ。そうして周囲を見回した。
「今日の死線は寂しいが……普段はこの闘技場が客一杯で埋まるとなると、なかなか悪くない。なぁ、アンタももう少し、人がいるタイミングを狙えば良かったのにな」
 そうしてカイムはエデンローズを振り返る。エデンローズはいいえ、と頭を振った。
「今日でなければダメだったの。私はこの|闘技場《コロセウム》の闘士と恋に落ちたい……其れなのにみんな、赤薔薇って子に夢中でしょう? 赤薔薇って子がいなくなれば、私に恋してくれるかもしれないじゃない」
「……なるほどね。アンタの狙いは最初から、あそこにおわす赤薔薇サマだった訳だ。だが、計画は失敗に終わって……アンタはこれから骸の海に還る。寂しいな、観客は数十人しかいない」
「……」
 其の沈黙は、挑発に乗ったと取る。
 カイムは心中で笑った。恋する乙女というものは、どうにもこうにも軽口や冗談、挑発に乗りやすいところがある。多感なお年頃というやつか。
「しかしアンタ、あの……ヴァイジャンだっけか? 屈強過ぎて好みじゃないって言ってた割には大事に守ってるな。素直じゃないタイプか?」
「そんな訳ないじゃない。あれは人質よ。私は口数が多い男も嫌いなの――いい加減、黙って!」
 エデンローズが荊を放つ。計算通り。見事に挑発に乗り、こちらに矛先を向けてくれたという訳だ。
 カイムは其の荊がこちらに触れる前に握っていた魔剣を振った。背中から前方へ向けて長くとられた軌道に生まれた黒銀の焔は、荊をあっという間に灰に――いや、灰すら残さない。焔は一気に飛び散って、エデンローズを燃やし、ヴァイジャンを包む荊を燃やした。
「きゃあ……!!」
「なあ、一緒にいて欲しいのか?」
「……え?」
 エデンローズが黒銀の中で見たのは、カイムの紫色の瞳。……吸い込まれそうな其の色を見詰めていたエデンローズの身体が、ぐらり、と揺れた。
「悪いな。そいつは無理な話だ」
 胸から腹を串刺しにされたエデンローズの服が、桃色から赤色に染まっていく。倒れそうになる痩躯をそっとカイムは抱えて、ゆっくりと横抱きにする。

「……どうして?」

 弱弱しい声でエデンローズが問う。
 どうして大地に放っておいたり、追撃したりしないのかと。
 カイムは其れを聴くと、口端を上げて笑った。
「女性には優しく。これが俺のモットーでね。――この火事の中だ。大勢の観客じゃなく、見送るのが俺一人で悪いがな。……いや」
 カイムはエデンローズの身体を抱き、観客席の方を向いた。
 其処には深紅の少女がいる。
「エデンローズ」
「……赤薔薇、さま」
「アンタは確かに敵よ。でも、アンタの闘いが|闘技場《コロセウム》を盛り上げたのは事実! 故に――深紅を纏って逝く事を許すわ。桃色の薔薇よ、深紅に染まって散りなさい。誰もがアンタを忘れても、アタシはアンタを忘れないわ」
「……」

 赦してくれるというの?
 貴方を殺そうとした私に、深紅を赦してくれるというの?
 ああ、其れは……

「とても、素敵ね……」
 エデンローズは僅かに笑うと、ヴァイジャンを覆っていた荊ごと、青黒い灰になって散った。

大成功 🔵​🔵​🔵​



「猟兵たち、見事だったわ」
 シャードリーネが降りて来て、観客席から|闘技場《コロセウム》へと飛び降りる。
「黒薔薇と白薔薇からアンタ達の活躍は聞いていたわ。でも、アタシは自分の目で見た事しか信じない。だけど……成る程ね。世界を渡るというだけあって流石の実力みたい。さ、ヴァイジャン。起きなさい」
 言うとシャードリーネは横たわった大男の傍へと屈みこみ、……己の親指を噛み千切って、傷跡に血を垂らす。
「……ん、お……?」
 傷が治った訳ではない。
 だが、ヴァイジャンは|目を覚ました《●●●●●●》。身体全体から溢れるような活気が目に見えるかのようだった。
「俺は……ってうわ! 赤薔薇様!」
「どう? 気分は」
「すこぶる良好です!」
「なら良いわ」
 子どもたちには少し刺激の強いものを見せてしまったわね、とシャードリーネは立ち上がる。
「……猟兵。貴方がたに依頼があるのよ。御薔薇全員が其の力を目にしたわ。御薔薇全員が其の力を認めたわ。だからこそ、貴方達にしか頼めない」

「この世界を、ロザガルドは緩やかな滅びに向かっている。其れを救って欲しいの」

 ざああ、と葉擦れの音がした。
 其れは遠く遠くに見える、大樹のものだったろうか。

最終結果:成功

完成日:2024年07月28日


挿絵イラスト