クリスマスが過ぎれば、あっという間に1年の終わり。
店に並んでいたケーキやデコレーションはすぐに撤去され、門松やおせち商材などが並ぶのを見ると「もうすぐ新年になるな」と感じるのは特有のものかもしれない。
龍臣もそのうちの1人。
年明けにはスッキリと綺麗な部屋で過ごしたいという思いから、朝早く自身の部屋を掃除していた。
しかし掃除を続けると色々と気になってしまうところが増えてしまい、いつしか廊下を、やがては別の部屋を掃除していた。
新たな1年を迎えるため、必要な物と不要な物に分けてから不要な物をゴミ袋に詰め込んで、絶対に開かないように強くしっかりと袋の口を縛る。
趣味の筋トレによって培われた筋肉は一切の妥協を許さず、ギリギリと袋をシメた。もう一度開いてしまわないように、ゴミをゴミとして認識出来るように。
「これでよし、と」
誰にも解かせないように縛った袋や頑丈にビニール紐で括った雑誌の束を一箇所にまとめて、すぐにゴミ出しが出来るように準備しておく。
年末はどうしてもゴミを出す家庭が多く、出すタイミングによっては大変なことになるため早めにゴミを集めておくことが重要だ。
「えーっと、あと出すものは……」
家族からもコレまとめておいて、アレまとめておいてと指示を受けていたので、かなりの数のゴミを集めた龍臣。
本当なら自分の部屋だけを掃除する予定だったが、気づけば別の部屋にまで手を伸ばしていたのでそのまま流れるように家中のゴミを集めていた。
自分の家にこんなにもたくさんのゴミがあったのかと思うと少しだけ頭がクラクラしたが、ここが踏ん張りどころなのだからと入念にチェックしていく。
1年の終わり、せめてゴミの出し忘れがなく綺麗な家の中で新たな一年を迎えることが出来るように。
「ん、よし。大丈夫そうだ」
大きなゴミ――いらないものを集めたごみ袋や、まとめた雑誌等を捨てる準備は終わった。
残るは床に落ちている細かなゴミを集めたり、雨や砂埃で汚れた窓を拭き上げるだけ。
これが意外と大変な作業。腕の筋肉が悲鳴を上げる理由の1つでもあるが、筋トレが趣味な龍臣にとっては腕の筋肉を鍛えるのには十分な作業となるだろう。
じゃばじゃばとバケツに水を入れて、窓拭き用の雑巾を準備した龍臣。
と言っても、真冬に冷たい水を使うのは正直しんどい。あとからじんわりとぬくもりっぽい感覚がやってくるにせよ、バケツの水に手を入れるあの瞬間はいつになっても慣れないものだ。
あとになってからお湯にしておけば……なんて考えるのも一瞬のうちで、ササッと窓拭きを終わらせる。
薄っすらと黒くなった雑巾をバケツに放り込み、洗濯しやすいように少しだけぐるぐるとかき混ぜて汚れを取っておいた。
●
掃除を終えて部屋に戻ってきた龍臣。
夕方近い時間となってしまったため、スマホに通知が届いていないかを見たところ、同級生達からの連絡が入っていた。
と言っても、もう年末。こんな時期に届く連絡と言えば、初詣に行こうぜというお誘いの連絡だ。
「初詣か。じゃあ、何処に集合する……と」
メッセージを打ち込んで同級生達との約束を取り付け、当日の動きに関していくつか共有しておく。
初詣に行く。それは日本人ならだいたい誰もが行う行為だが、この日は非常に迷子になりやすく、非常にはぐれやすく、人が多すぎて合流が難しくなりがちだ。
そこで龍臣は率先して初詣に向かう前の合流場所を取り決め、はぐれた時の合流場所を数カ所、また何かあったときに備えて周辺地図できっちり印をつけて写真で共有。
初詣とは言え自分達は高校生。下手に動けば警察の世話になりかねないため、その辺りも注意しながら当日の動きを共有しておいた。
『さすが委員長、頼りになるな~』
『じゃあ最初の集合場所はここで~』
『ありがとう委員長!』
「どういたしまして、と……」
ポンポンと飛んでくるメッセージの音が途絶えるまで、龍臣は同級生達との会話を楽しんだ。
今は冬休み。学校がなければ会うことも少ないが、それでもメッセージのやり取りだけでも彼らと会話できるのは良いものだ。
あんな事があった。こんな事があった。いろんな友人達の声に耳を傾ける度に、学校にいるのと変わりなく会話できるのがとにかく楽しくなっていた。
●
友人達のやり取りを済ませた龍臣は夕食を頂いて、お風呂にゆったりと浸かる。
みんな元気に過ごしていることを実感できて良かったと思う反面、冬休みだからと気を抜いて事故にあったりしないでほしいと願うばかりだ。
風呂から上がって、あとは自由な時間。
今日は毎年恒例の年末特番があるため、録画もしっかり済ませてリアルタイム視聴を行う。
龍臣が見ているのは、視聴者参加型のスポーツバラエティ。
制限時間内に番組側が用意した様々な障害を乗り越え、ゴールを目指す至極単純な番組だ。
と言ってもかなりの筋力が必要になるため、相応のテストを乗り越えてから番組に参加できるのだが。
「今年もすっごいな……!」
龍臣の目が輝く。毎年恒例のこの番組の仕掛けはほとんど変わらないが、出場者は年々パワーアップして挑戦しているのがわかる。
中には初出場ながらにクリアしたりする者もいて、今年の出場者はなかなかの強豪のようだ。
斜めに立てかけられた板を蹴って走り、ロープを握っててっぺんまで登り、1本のロープで向こう岸をわたり、大きな丸太で転がって坂の下へ降りて、反り立つ壁を一気に駆け上る。
一度失敗してしまえば水の中へと落ちてしまい、挑戦権はそこでおしまい。一発限りの筋力勝負がそこにはあるのだ。
「……俺も来年応募してみても……」
そんな中、龍臣はソワソワとした様子で画面に食いついていく。
筋トレが趣味な彼にとってこの番組に出ることは一種の夢。自分の筋肉が何処まで活躍できるのかを知りたくて、ついつい番組の公式サイトをスマホで見ながら、番組を見ていた。
気づけば特番の終わりの時間。
それでも興奮冷めやらぬ様子の龍臣は寝る前の筋トレをしっかりと行って、眠りにつく。
おかげさまで、とても寝付きはよかったそうな。
成功
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