編まれた贈り物の環
●良い子の元へ
贈り物というのは巡り巡るものである。
最初に誰かが、誰かのために心を配るからこそ意味がある。連なるようにして心は繋がっていく。
そうやって世界は温まっていくのだと思うのだ。
少なくとも『陰海月』はそう思ったかも知れない。
自分が誰かのために何かをしたいと思ったことは、きっと最初の気持ちが、最初の波があったのと同じように、大きく膨れ上がっていくのだ。
なら、今目の前にあるのは。
「ぷっきゅ!」
「クエ!」
友達であるヒポグリフ『霹靂』と共にいつも使っているパソコン部屋へと戻る。
すると、そこにあったのは、2つの箱。
赤と緑の金色のクリスマスカラーな包み紙に包まれた箱。
「クエ?」
こんなの置いてあったっけ? と『霹靂』が首を傾げている。朝まではなかった。
屋敷の居間で馬県・義透(死天山彷徨う四悪霊・f28057)たちにサプライズプレゼントを成功させてきたばっかりなのだ。
此処に隠してあったプレゼントは、しっかりと彼らに手渡したし、取りに来たときにはこんなものはなかった。
「ぷきゅ?」
「クエ?」
二人は顔を見合わせる。
恐る恐る近づいていくと、そこにはメッセージカードが差し込まれている。
『陰海月へ』
『霹靂へ』
二つのカードがそれぞれ互いに贈られたものであることを理解する。
慌てて包装紙を外す。
すると、そこにあったのは鮮やかでいて、荘厳なパッケージイラストのプラモデルの箱。
そう、それは。
「ぷきゅー!?」
『大将軍シリーズ 大名Ver.』
それは『陰海月』がアスリートアースや、UDCアースなどで買い集めているホビーだった。
豪華版ということもあって、予算がどうしてもお小遣いの範囲を越えていたのだ。
しかし、ホビーというのは一期一会である。
今日あるものが明日もあるとは限らない。
そういうものなのだ。
だからこそ、『陰海月』は恐らくすぐに手に入れることはできないだろうと思っていた。けれど、今、目の前にある!
「きゅー!」
「クエクエ!」
こっちも、と『霹靂』が大騒ぎしている。
まさか、と思って包装紙を嘴で破いた『霹靂』が示したのは箱に詰められた『草原模様のまんまるクッション』であった。
それって! と『陰海月』もテンションが上がってしまう。
そうなのだ。
『霹靂』も手が出させなかった雑誌で見つけたクッション!
「おや、もう見つけましたか」
義透たちの声に振り返る。
にこやかに笑うおじーちゃん! これってもしかして、と『陰海月』たちは目をまん丸くする。
「さぷらーいず、というやつですね」
どうです? と義透たちは笑っている。
どうやら、自分たちがサプライズプレゼントを仕掛けたと思っていたら、逆にサプライズを仕掛けられていたのだ。
「ぷきゅきゅ!」
「クエクエ!」
「ふふ、そうですか、気に入りましたか。よかった。二人が良い子であったから、きっとその御褒美なのでしょう」
良かったですね、という義透に二人は、ひしと抱きつく。
どれだけ感謝の言葉を伝えても伝えきれないと思った。喜びと驚きがないまぜになった感情のまま、彼らは義透に抱きついて離れないのだ。
「これこれ。床が抜けてしまいますよ、そんなに張り切っては」
そういう彼の言葉に構わず『陰海月』と『霹靂』は喜びに満ちて踊り続く。
『玉福』や『夏夢』もどうしたことだろうとやってきている。
けれど、すぐにわかる。
それがどんなに喜びに満ちたことであるかを。
喜びは伝播していく。悪意ほど素早くはないけれど、しかし確実に伝わっていくのだ。そうやって世界は冬の寒さも乗り越えていく。
それがクリスマスプレゼントというもなのだ――。
成功
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