ペルソナ・コーデ
●仮面
人は誰しも仮面というものを持っている。
真実の素顔というものがあるのだとしても、それを誰かに詳らかにすることはない。幾多もの仮面を付け替え、社会に適合していく。
それが人というものだ。
ならば、ゴッドゲームオンラインの管理者――すなわちゲームマスターでもあるドラゴンプロトコルはどうだろうか?
そう、ヌグエン・トラングタン(欲望城主・f42331)……彼もまた仮面をかぶる者である。
「クエストの受注ですか」
慇懃無礼とまでは行かないが、真面目さを示すようにヌグエンは冒険者ギルドにやってきたゲームプレイヤーを出迎える。
杓子定規なセリフ。
もう何度となく紡いできたセリフだ。淀みなく言える。
けれど、やってきたゲームプレイヤーの表情を見てヌグエンは首を傾げる。
「えっ!?」
……えっ?
ヌグエンもまた心中で思った。
なんでこのゲームプレイヤーは己を見て、そんなに驚いているのだろう。
「どうかされましたか」
「い、いや、なんでもない! こっちのクエストを受注するから!」
そう言って慌てて彼はクエストを受注して出ていく。
その理由がよくわからない。
いや、彼に落ち度はない。
仮に落ち度が在ったとすれば、ヌグエンにあった。
そう、彼の見た目は今こそギルド職員めいた格好をしている。けれど、かつて彼が期間限定高何度レイドボスとしてゲームプレイヤーたちに立ちふさがったのだ。
その時のことをゲームプレイヤーは覚えていたのだ。
「……あれって絶対そうだよな? なんでギルド職員の格好してんだ……?」
ヌグエンはまだそんなゲームプレイヤーのつぶやきを知らない。
彼の管理者としての働きは、なんていうか、その……とってもマッチポンプだったのだ。
たしかに。
たしかに、だ。
ドラゴンプロトコルは、ゲームプレイヤーを楽しませるためのAIである。
けれど、全て万能ではないのだ。
経費だけではどうしようもない、トリリオンがたくさん必要になるのだ。
食費、服飾費、その他諸々はトリリオンがあってもあっても足りないのだ! だからこそ、ヌグエンはこうしてギルド職員としても働いている。
そう、全部トリリオンが無いのが悪いのである。
「さっきのあいつなんだったんだ……? もしかして俺のことがバレた……?」
いや、そんなことあるわけない、とヌグエンはちょっと能天気に今日もギルド職員として立ち振る舞うのだった――。
成功
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