ヤジュル・ヴェーダは暗闇に消ゆ
ヘレナ・ミラージュテイル
エルネイジェ王国内に沸いたオブリビオンマシンをヘレナが秘密裏に処理するノベルをお願いします
アドリブ改変その他色々お任せします
●つまり?
エルネイジェ王国領内の軍事基地にオブリビオンマシンが出現しました。
これを察知したソフィアはオブリビオンマシンを秘密裏に排除する事を決定。
聖竜騎士団のヘレナに極秘任務を与えました。
任務内容は一人の死傷者も出さずにオブリビオンマシンのみを殲滅する事です。
勿論発見されてもいけません。
エルネイジェ王国軍の、ましてや王家直轄の聖竜騎士団が自国の基地を襲撃した事が露呈すれば、周辺諸国をも巻き込んだ重大な国際問題に発展してしまうからです。
現場に一切の証拠を残さずに遂行しなければならない隠密任務です。
舞台となるのは小規模な軍事基地。
時刻は草木も眠る丑三つ刻。
闇夜に紛れて暗い緑の影が蠢きました。
ヘレナのヴェロキラ・ディアストーカーです。
機体の隠密性能を駆使して基地の近くにずっと潜んでいたのです。
「ふあぁ〜……隠れんぼも飽きて来ちゃった」
ヘレナは大きく欠伸して首をゴキゴキ鳴らします。
この数日間、ヘレナは基地の様子を観察してきました。
監視カメラの位置や歩哨の順路や交代等を調べ尽くしたヘレナは、いよいよ任務を開始します。
「まったく、団長もキツい仕事ばっかり押し付けてくれちゃって……じゃあ始めるわよぉ」
ヴェロキラ・ディアストーカーは折り畳んでいたスナイパーキャノンを展開しました。
「よぉ〜く狙って……ドン!」
狙い澄ました一撃で監視塔に繋がる電線を撃ち抜き、電力供給を遮断しました。
続いてサーチライトや監視カメラを次々に破壊していきます。
突然の襲撃に基地は混乱に陥りました。
その隙にヘレナは場所を変えます。
狙撃地点を見破られないようにするためです。
「来た来た」
基地のキャバリアが緊急出動してきました。
作戦目標のオブリビオンマシンです。
これらをヴェロキラ・ディアストーカーが狙撃で行動不能にしていきます。
ですが相手も間抜けではありません。
遮蔽物に隠れて射線を切ってきます。
反撃も完全に闇雲とは言えず、それなりの精度でヴェロキラ・ディアストーカーの位置に届きます。
「おっと危ない。我が国ながらよく訓練されてるわね〜」
しかしヘレナはレーダーとユーベルコードの影狐によってオブリビオンマシンの位置を正確に把握していました。
「これで最後!」
最後の一機を撃破したヘレナは影狐に基地の状況を確認させます。
「はーい死傷者ゼロ。あたしったら完璧ね。ヴェロキラもよく頑張りました」
任務を終えたヘレナはその場を去ります。
「これにてお仕事完了。さよーならー。あーあ、早く帰ってお風呂入りたーい」
ヴェロキラ・ディアストーカーは闇に消えていきました。
だいたいこんな感じでお願いします。
以下は執筆時の参考資料程度に扱ってください。
●ヘレナって?
狐のおねーさんです。
聖竜騎士団の一人です。
潜入に諜報にハニートラップに狙撃にと色々な仕事をこなします。
「狙撃は専門外なんだけどな〜? なんちゃって」
悪戯好きでノリは緩いですが仕事は徹底してやります。
「だってお給料がいいんだもーん」
ソフィアとメルヴィナとメサイアとは旧知の仲で昔から過激な悪戯ばかりしていました。
悪戯の内容は刺客の首を送り付けるなど。
「あの時のソフィア殿下の顔ったら、今思い出しても笑っちゃうわね〜」
●ミラージュテイル家?
昔からエルネイジェ王家に影として支えて来た家です。
主に諜報や暗殺など後ろ暗い仕事ばかりやってきました。
一応貴族と言える家系ですが、上記の理由により周囲から向けられる眼は冷ややかです。
王家と敵対する勢力や要人にとっては忌まわしい畏怖の対象です。
御先祖様は遠い昔に獣人戦線から転移してきたそうです。
●ヴェロキラって?
エルネイジェ王国軍で広く普及している標準的な機体です。
分類は量産型キャバリアです。
インドラとヴリトラの設計を基礎に開発されました。
機体本体は基本性能のバランスを重視しつつも運動性能と格闘戦能力を高め、任務に適した装備を腕部と背中と脚部に搭載する事であらゆる場面に対応可能です。
時代に合わせた改良を加えながら百年以上も運用が続いています。
周辺国にも大量に輸出しています。
軍事的にも経済的にもエルネイジェ王国に欠かせないキャバリアの一機です。
●ヴェロキラ・ディアストーカーって?
ヴェロキラを元に軽量化し運動性能を更に向上させ、ステルス塗料で隠密性を、レーダーで索敵能力を、センサーとスナイパーキャノンで狙撃能力を高めた特務仕様機です。
分類はクロムキャバリアです。
頭部のスナイパーセンサーの照準補正と背面のスマートレーダーによる情報収集能力、そして大型のスナイパーキャノンを連動させて超精密狙撃を可能としています。
装備を排除する事で元々のヴェロキラが得意とする格闘戦も可能です。
軽量化と引き換えに装甲が薄くなっています。
しかし隠密性を活かして敵に発見されず、索敵性能を駆使して敵の位置を捕捉し、敵の射程外から狙撃し、不利な状況になれば高い運動性で直ちに離脱する戦闘スタイルを想定している為、問題にならないとされています。
●ヴェロキラって喋るの?
喋りませんが吠えます。
動物的な人工知能があります。
●自国なら普通に頼んでオブリビオンマシンを破棄して貰えばいいのでは?
猟兵でないとオブリビオンマシンの存在を認識出来ないそうです。
また、オブリビオンマシンが人々に破滅的思想を植え付けている仕組みが一般人に証明可能な形で判明していません。
なので事情を説明しても一般人からすると「キツネじゃ! キツネの仕業じゃ!」と言われているようなものとなってしまうかも知れません。
●薬莢とか調べたら正体バレるのでは?
製造元不明の弾丸を使用しています。
●現場に残された足跡でバレるのでは?
隠密任務では毎回爪の部品構成を無作為に変更しています。
●シャドウフォックス
「ふあぁ~……」
欠伸が出る。
コクピットの中というのはどうしてこう窮屈なのだろうかと思う。居住性の欠片もない。モニターとコンソール。それとなんやかんやの機器が密集している。
自分が閉所恐怖症でなかったことにヘレナ・ミラージュテイル(フォクシースカウト・f42184)は感謝するほかなかった。
とは言え、こうやって数日間を己のキャバリア『ヴェロキラ・ディアストーカー』の中で過ごすのも正直鬱屈たる思いが堆積してきているのを感じる。
ごきごきと背骨が音を立てる。
同じ体勢を取る、というのは、体の健康のためにはよろしくない。
わかっている。
けれど、それが必要であるというのならば、そうするだけのことだ。
並大抵のことではない。
閉所でただ息を潜めて、身動きを取らない、ということはそれだけ人としての神経であったり、精神であったりというものを削ぎ落としていくのだ。
心の均衡を崩せば、体は不調を訴える。
しかし、鍛え上げられた精神は、いずれ肉体さえも凌駕するのだ。
そういう意味ではヘレナは驚異的な兵士であると言えただろう。
そして、それを彼女は誇らない。
彼女の主であるエルネイジェ王国において、このような振る舞いは騎士としても、実力主義なる気風があるのだとしても。
それでも彼女の類まれなる資質は評価されない。
わかっていることだ。
別にそれが苦になったわけではない。
ヘレナにとって重要なのは、己の主たるエルネイジェ王国が誇る『聖竜騎士団』の団長の命令のみである。
彼女が是と言ったのならば、どんなことだってやってのける。
それだけの精神性が彼女には宿っている。
「かくれんぼも飽きてきちゃった」
すでに彼女の主である『聖竜騎士団』の団長の命令であるエルネイジェ王国領内の軍事基地の監視は終えている。
情報収集は十二分に行ったと言える。
なぜ、と疑問に思うことはない。
自国の軍事基地を何故監視しなければならないのか。
それは奇異なる命令であったが、しかし、彼女には関係ない。団長が、そうしろ、と言ったのだからするだけのことだ。
そして、その理由も彼女は理解している。
エルネイジェ王国の軍事基地内にオブリビオンマシンが出現しているのだ。
どういった経緯でいつのまにすり替わっていたのかは判明していない。だがすでに彼女は目視でオブリビオンマシンを認識していた。
それは彼女が猟兵でなければ不可能なことだった。
「ま、わからないでもないけれど。あたしに姫様が命令する意味っていうのも」
そう、オブリビオンマシンは猟兵にしか認識できない。
そして、自国の軍事基地……それも軍事的にも経済的にも欠かせぬ存在である『ヴェロキラ』を自国兵士が破壊したことが露見すれば世情は一気に動く。
上級貴族連中がまたぞろ騒ぎ出すのが目に見えていた。
そうでなくても、出奔していた皇女が戻ってきて戴冠式を執り行い、政争に忙しい貴族たちは大慌てなのだ。
こういうきな臭い出来事が起こるのも頷けることだった。
「妙……とまで行かないけど、変よねぇ」
確かに団長……皇女ソフィア殿下の命令が無茶振りでキツい仕事なのは今に始まったことではない。
観察につぐ観察でわかったことは多く在る。
監視カメラ等の位置や歩哨の順路や後退のタイミング。
そうしたことは前提条件に過ぎない。彼女が感じ取った違和感というのは、他国の気配である。
「バーラント、じゃあないわよねぇ……このやり口。やるなら真っ向勝負って感じだろうし。この……なんていうか、裏口からこっそり侵入してくる感じ。ゆっくり足元からずぶずぶにしていくやり口……」
オブリビオンマシンだけではない。
巧妙なやり口だ。知らず知らずの内に足元が泥濘んでいたかと思えば、いつのまにか膝上まで埋まっているような感覚。
「まるで罠に嵌められてるような気がしないでもないのよねぇ……でもま、この絵図の背後にいるのが誰であれ。喧嘩売った相手が悪かったってことを思い知って貰いましょうか」
ヘレナは『ヴェロキラ・ディアストーカー』のコクピットで体を伸ばす。
またゴキゴキと背骨がなる。
目が覚めた。
微睡みの時間は終わりを告げ、ヘレナは己の乗機の背部に備えられたスナイパーキャノンの折りたたまれていた銃身を展開する。
スマートレーダーの内部で周辺情報が次々とコクピットのヘッドマウントディスプレイに表示されていく。
風速、湿度、風塵の状況。
彼我の距離。
多くの情報を彼女は視線で一瞥して、唇をしめらせる。
「よぉ~く狙って……ドン!」
引き金をためらいなく引く。
狙いは監視塔に繋がらう電線の一本。それは深夜たる状況を考えても尋常ならざる一射であった。
放たれた一撃は見事に電線を寸断させる。
供給される電力が経たれたことにより刹那の混乱。
その刹那の間にヘレナは次々とサーチライトを打ち抜き、さらには監視カメラさえも貫いていくのだ。
襲撃という二字が軍事基地に詰める兵士たちに俄に走り抜ける。
暗闇に落とされ、混乱という渦中に叩き込まれてもなお、彼らは動揺を抑え込む。
「さっすが、我が国の兵士たちは優秀ねぇ。でも……その優秀さが仇となるなんて思わないでしょうねぇ」
このような状況を我が国の兵士たちが想定していないはずがない。このような状況下でも動けるように訓練されているのだ。
故に動揺は僅かな時間だった。
しかし、その僅かな時間だけでヘレナは十分だった。
一気に『ヴェロキラ・ディアストーカー』と共にキャバリア格納庫へと走らせる。この様な事態になった時、真っ先に動くのはキャバリアだ。
歩哨の巡回や情報を末までもなく、軍事基地から『ヴェロキラ』たちが姿を表す。
「来た来た。やっぱりキャバリアじゃなくなってる。オブリビオンマシンよねぇ、これは」
ヘレナの瞳には『ヴェロキラ』たちがオブリビオンマシンへと変貌していることがわかる。
破壊しなければならない。
暗闇に乗じて格納庫から出てきたところを狙撃する。一撃で『ヴェロキラ』の頭部を打ち抜き、沈黙させる。
狙撃されている、ということを即座に理解したオブリビオンマシン『ヴェロキラ』たちは、散開しようとするが。
「左右に広がるってこと、わかりやすいわよねぇ。あそれ」
重たい音を立てて、スナイパーキャノンの一撃が『ヴェロキラ』の頭部をまた正確に撃ち抜く。
だが、彼らもよく訓練されている。
格納庫の壁をぶち抜いて、基地を遮蔽物にして此方の射線を切ってくるのだ。
「あらまあ、我が国ながらよく訓練されてるわね~。でもまあ、それでどうってこともないんだけど」
彼女の瞳がユーベルコードに輝いている。
そう、この状況に置いてただレーダーの情報だけを彼女は頼りにしていない。
レーダーはレーダー。
情報は情報。
結局、センサーだろうがなんだろうが不測の事態であったり、計器の不調で十分に情報を得られないことだってあるのだ。
だが、今の彼女は違う。
影狐(シャドウフォックス)たる狐の影たちが軍事基地の周辺にすでに展開済みなのだ。
五感を共有する狐の影たちは、ヘレナに目視でもってオブリビオンマシン『ヴェロキラ』の姿を捉えているのだ。
「隠れていても、はい、ズドンってねぇ。はい、これで最後!」
『ヴェロキラ・ディアストーカー』の射撃は一発も狙いを違えることなく軍事基地内のオブリビオンマシンたちの頭部を貫き見事に破壊し尽くす。
センサーレーダーと狐の影たちの目視でもって軍事基地内の様子を探るヘレナ。
どうやら死傷者の類は出ていないようである。
電源の供給を断ったというのに、すぐさま軍事基地内の兵士たちは復旧作業に移ったようだった。よく教練が行き届いていると言えるだろう。
「うん、これにてお仕事完了。発つ狐跡を濁さずってねぇ。さよーならー。あーあ、疾く返ってお風呂入りたーい」
ちょっと自分の体臭が気になるヘレナは、暗闇の中に『ヴェロキラ・ディアストーカー』と共に消えていく。
後の処理は『聖竜騎士団』の団長たちがうまくやってくれるだろう――。
●湯船
ヘレナはソフィア皇女へと任務を終えたことを報告し、湯船に浸かっていた。
ここ数日間に及ぶ缶詰めいた任務は彼女の精神を摩耗させることはなかったが、如何ともし難いのが、体臭の問題であった。
「はぁ~良いお湯……」
バスタブの中でヘレナは息を吐き出す。
お風呂は命の洗濯とも言うが、本当だな、と彼女は思うのだ。
温かいお湯を贅沢に使えるのは、ミラージュテイル家という貴族身分があってのことだろう。とは言え、この家は今回もそうであったユニ後ろ暗い仕事ばっかり任される家系なのだ。
まあ、お給金が良いので、こんな贅沢ができているのであるが。
他の貴族からは忌まわしくとも畏怖たる存在であるのは言うまでもない。でもまあ、いいのである。
「でも、あの『ヴェロキラ』たち……」
軍事基地のことを思い出す。
オブリビオンマシン化していたのはエルネイジェ王国で普及している標準的な機体だ。
所謂量産型キャバリア。
確かに大量に周辺国へと輸出されるほどに経済の要となっているのだが、それが今回の事件の原因なのだろうか。
とは言え、それは百年前から変わらぬことだ。
今更?
「タイミングがタイミングよねぇ……『フルーⅦ』では『インドラ』のそっくりさんも出たって話だし」
一体どこの馬鹿が喧嘩売ってるのかしらねぇ、とヘレナは浴槽で大きく伸びをする。
今はわからないことばかりだ。
けれど、この件も含めて突き詰めていけば、自分たちを踊らせているつもりの者の喉元へと食らいつくことができるだろう。
なら、自分はその時を待つまでだ。
「は~……本物の温泉入りたーい!」
ヘレナは一仕事終えての疲れを癒やすように泡に沈むのだった――。
成功
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